(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】電子部品および実装構造体
(51)【国際特許分類】
H01G 4/30 20060101AFI20221206BHJP
H01G 2/06 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
H01G4/30 201G
H01G4/30 201F
H01G4/30 513
H01G4/30 516
H01G2/06 500
(21)【出願番号】P 2021516090
(86)(22)【出願日】2020-04-17
(86)【国際出願番号】 JP2020016963
(87)【国際公開番号】W WO2020218218
(87)【国際公開日】2020-10-29
【審査請求日】2021-10-11
(31)【優先権主張番号】P 2019086480
(32)【優先日】2019-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019181340
(32)【優先日】2019-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132252
【氏名又は名称】吉田 環
(72)【発明者】
【氏名】黒田 茂之
(72)【発明者】
【氏名】荒川 裕介
(72)【発明者】
【氏名】山本 千秋
(72)【発明者】
【氏名】大谷 慎士
【審査官】田中 晃洋
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/132965(WO,A1)
【文献】特開2016-076582(JP,A)
【文献】特開2004-083955(JP,A)
【文献】特開平04-334007(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 4/30
H01G 2/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品本体と、
該部品本体の表面に設けられた外部電極と
を備え、
前記外部電極は、少なくとも1つの第1金属と少なくとも1つの第2金属との合金を有する層を含み、
前記少なくとも1つの第1金属は、元素周期表の第9族~第11族の金属からなる群より選択され、
前記少なくとも1つの第2金属は、前記少なくとも1つの第1金属よりも高い融点を有し、
前記合金を有する層において、前記外部電極の厚さ方向に、前記少なくとも1つの第2金属の濃度が連続的に変化し、かつ、該金属の濃度の増加する部分および減少する部分がそれぞれ少なくとも1つ存在
し、
前記少なくとも1つの第2金属は、W、Re、Os、Mo、Nb、Ir、Ru、Rh、Cr、Pt、Ti、Lu、Pd、Fe、およびCoからなる群より選ばれる少なくとも1つである、電子部品。
【請求項2】
前記少なくとも1つの第1金属は、Ni、Co、AgおよびCuからなる群より選ばれる少なくとも1つである、請求項1に記載の電子部品。
【請求項3】
前記合金を有する層に含まれる合金は、Ni-Fe系合金である、請求項1または2に記載の電子部品。
【請求項4】
部品本体と、
該部品本体の表面に設けられた外部電極と
を備え、
前記外部電極は、少なくとも1つの第1金属と少なくとも1つの第2金属との合金を有する層を含み、
前記少なくとも1つの第1金属は、元素周期表の第9族~第11族の金属からなる群より選択され、
前記少なくとも1つの第2金属は、前記少なくとも1つの第1金属よりも高い融点を有し、
前記合金を有する層において、前記外部電極の厚さ方向に、前記少なくとも1つの第2金属の濃度が連続的に変化し、かつ、該金属の濃度の増加する部分および減少する部分がそれぞれ少なくとも1つ存在し、
前記合金を有する層に含まれる合金は、Ni-Fe系合金である、電子部品。
【請求項5】
前記合金を有する層において、前記外部電極の厚さ方向に、前記少なくとも1つの第1金属の濃度が増加する部分および減少する部分がそれぞれ少なくとも1つ存在する、請求項1
~4のいずれか1項に記載の電子部品。
【請求項6】
前記合金を有する層において、前記外部電極の厚さ方向に積層した前記少なくとも1つの第2金属の濃度の異なる層が複数存在する、請求項1
~5のいずれか1項に記載の電子部品。
【請求項7】
前記合金を有する層において、前記少なくとも1つの第2金属の濃度の異なる領域が複数存在する、請求項1
~5のいずれか1項に記載の電子部品。
【請求項8】
前記合金を有する層において、該層に含まれる前記少なくとも1つの第2金属の比率が、1~99質量%の範囲にある、請求項1~
7のいずれか1項に記載の電子部品。
【請求項9】
前記少なくとも1つの第2金属の濃度の増加する部分が、1μmあたり1~100個存在する、請求項1~
8のいずれか1項に記載の電子部品。
【請求項10】
電子部品が基板に実装されている実装構造体であって、
前記電子部品は、
部品本体と、
該部品本体の表面に設けられた外部電極と
を備え、
前記外部電極は、少なくとも1つの第1金属と前記少なくとも1つの第2金属との合金を有する層を含み、
前記少なくとも1つの第1金属は、元素周期表の第9族~第11族の金属からなる群より選択され、
前記少なくとも1つの第2金属は、前記少なくとも1つの第1金属よりも高い融点を有し、
前記合金を有する層において、前記外部電極の厚さ方向に、前記少なくとも1つの第2金属の濃度が連続的に変化し、かつ、該金属の濃度の増加する部分および減少する部分がそれぞれ少なくとも1つ存在し、
前記外部電極が、前記基板に形成された電極部にはんだ接合部により接合されて
おり、
前記少なくとも1つの第2金属は、W、Re、Os、Mo、Nb、Ir、Ru、Rh、Cr、Pt、Ti、Lu、Pd、Fe、およびCoからなる群より選ばれる少なくとも1つである、実装構造体。
【請求項11】
前記少なくとも1つの第1金属は、Ni、Co、AgおよびCuからなる群より選ばれる少なくとも1つである、請求項10に記載の実装構造体。
【請求項12】
電子部品が基板に実装されている実装構造体であって、
前記電子部品は、
部品本体と、
該部品本体の表面に設けられた外部電極と
を備え、
前記外部電極は、少なくとも1つの第1金属と前記少なくとも1つの第2金属との合金を有する層を含み、
前記少なくとも1つの第1金属は、元素周期表の第9族~第11族の金属からなる群より選択され、
前記少なくとも1つの第2金属は、前記少なくとも1つの第1金属よりも高い融点を有し、
前記合金を有する層において、前記外部電極の厚さ方向に、前記少なくとも1つの第2金属の濃度が連続的に変化し、かつ、該金属の濃度の増加する部分および減少する部分がそれぞれ少なくとも1つ存在し、
前記外部電極が、前記基板に形成された電極部にはんだ接合部により接合されており、
前記合金を有する層に含まれる合金は、Ni-Fe系合金、Ni-Pd系合金、またはNi-W合金である
、実装構造体。
【請求項13】
前記合金を有する層に含まれる合金は、Ni-Fe系合金である、請求項10~
12のいずれか1項に記載の実装構造体。
【請求項14】
前記外部電極と前記はんだ接合部との界面付近に、外部電極由来の金属とはんだ接合部由来の金属との金属間化合物が存在する、請求項10~
13のいずれか1項に記載の実装構造体。
【請求項15】
前記金属間化合物が、FeSn
2
系合金である、請求項14に記載の実装構造体。
【請求項16】
電子部品が基板に実装されている実装構造体であって、
前記電子部品は、
部品本体と、
該部品本体の表面に設けられた外部電極と
を備え、
前記外部電極は、少なくとも1つの第1金属と前記少なくとも1つの第2金属との合金を有する層を含み、
前記少なくとも1つの第1金属は、元素周期表の第9族~第11族の金属からなる群より選択され、
前記少なくとも1つの第2金属は、前記少なくとも1つの第1金属よりも高い融点を有し、
前記合金を有する層において、前記外部電極の厚さ方向に、前記少なくとも1つの第2金属の濃度が連続的に変化し、かつ、該金属の濃度の増加する部分および減少する部分がそれぞれ少なくとも1つ存在し、
前記外部電極が、前記基板に形成された電極部にはんだ接合部により接合されており、
前記外部電極と前記はんだ接合部との界面付近に、外部電極由来の金属とはんだ接合部由来の金属との金属間化合物が存在し、
前記金属間化合物が、FeSn
2系合金である
、実装構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品および電子部品を含む実装構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、電子部品は、部品本体と、その表面に設けられた外部電極とを含み、電子部品を基板に実装する場合、外部電極が、基板に形成された電極部(例えばランド)にはんだ接合され得る(本明細書において、これにより形成される接合部を「はんだ接合部」とも言う)。例えば、特許文献1には、内部電極層および誘電体層から形成された積層体(部品本体)の端部に端子電極(外部電極)を有する積層セラミックコンデンサにおいて、端子電極が、Ag系導体膜(下地膜)、Niめっき中間層、および外部めっき層(Snめっき層)から形成されることが記載されている。特許文献1には、Niめっき中間層の厚さを所定厚さ以上とし、かつそのばらつきを低減することにより、はんだ接合時に起こり得るAg系導体膜のはんだ食われを有効に防止でき、耐熱性(例えば270℃で10秒)に優れた端子電極を形成できる旨が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電子部品を基板に実装した実装構造体は、例えば自動車のエンジンルームの電子燃料噴射制御の回路部に使用される場合のように、より一層過酷な温度環境下での使用に耐えることが求められている。かかる過酷な高温環境下で実装構造体が使用されると、特許文献1のような構成では、Niめっき中間層に含まれるNiがはんだ接合部に比較的大きい速度で拡散(熱拡散)し得、これにより、Ag系導体膜(下地膜)からAgもはんだ接合部に拡散し得る。このように、はんだ材料でははんだ接合部への拡散によりAg系導体膜からAgが喪失する「はんだ食われ」が、実装構造体の使用の間にも起こり得、この結果、電子部品の部品本体(積層体)とAg系導体膜との間の接続が不十分になり得、電子部品の接続信頼性が低下し得る。
【0005】
本発明は、電子部品を基板に実装した後に高温環境下に曝した場合にも、外部電極からはんだまたははんだ接合部への金属原子の拡散を効果的に抑制することができて、電子部品および基板間において高い接合強度が得られる電子部品を提供することを目的とする。更に、本発明は、かかる電子部品が基板に実装された実装構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
部品本体と、
該部品本体の表面に設けられた外部電極と
を備え、
前記外部電極は、少なくとも1つの第1金属と少なくとも1つの第2金属との合金を有する層を含み、
前記少なくとも1つの第1金属は、元素周期表の第9族~第11族の金属からなる群より選択され、
前記少なくとも1つの第2金属は、前記少なくとも1つの第1金属よりも高い融点を有し、
前記合金を有する層において、前記外部電極の厚さ方向に、前記少なくとも1つの第2金属の濃度が連続的に変化し、かつ、該金属の濃度の増加する部分および減少する部分がそれぞれ少なくとも1つ存在する、電子部品、を提供する。
【0007】
一の態様において、本発明は、
部品本体と、
該部品本体の表面に設けられた外部電極と
を備え、
前記外部電極は、Ni-Fe系合金を有する層を含み、
前記Ni-Fe系合金を有する層において、前記外部電極の厚さ方向に、Fe濃度が連続的に変化し、かつ、Fe濃度の増加する部分および減少する部分がそれぞれ少なくとも1つ存在する、電子部品を提供する。
【0008】
別の態様において、本発明は、
電子部品が基板に実装されている実装構造体であって、
前記電子部品は、
部品本体と、
該部品本体の表面に設けられた外部電極と
を備え、
前記外部電極は、少なくとも1つの第1金属と前記少なくとも1つの第2金属との合金を有する層を含み、
前記少なくとも1つの第1金属は、元素周期表の第9族~第11族の金属からなる群より選択され、
前記少なくとも1つの第2金属は、前記少なくとも1つの第1金属よりも高い融点を有し、
前記合金を有する層において、前記外部電極の厚さ方向に、前記少なくとも1つの第2金属の濃度が連続的に変化し、かつ、該金属の濃度の増加する部分および減少する部分がそれぞれ少なくとも1つ存在し、
前記外部電極が、前記基板に形成された電極部にはんだ接合部により接合されている、実装構造体、を提供する。
【0009】
別の態様において、本発明は、
電子部品が基板に実装されている実装構造体であって、
前記電子部品は、
部品本体と、
該部品本体の表面に設けられた外部電極と
を備え、
前記外部電極は、Ni-Fe系合金を有する層を含み、
前記Ni-Fe系合金を有する層において、前記外部電極の厚さ方向に、Fe濃度が連続的に変化し、かつ、Fe濃度の増加する部分および減少する部分がそれぞれ少なくとも1つ存在し、
前記外部電極が、前記基板に形成された電極部にはんだ接合部により接合されている、実装構造体、を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、電子部品を基板に実装した後に高温環境下に曝した場合にも、外部電極からはんだまたははんだ接合部への金属原子の拡散を効果的に抑制することができて、電子部品および基板間において高い接合強度が得られる電子部品を提供し得る。更に、本発明は、かかる電子部品が基板に実装された実装構造体を提供し得る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1(a)に本発明の1つの実施形態における電子部品の概略断面図を、
図1(b)に
図1(a)で表される電子部品における外部電極7bのA-A面に沿った概略断面図を示す。
【
図2】
図2(a)に本発明の1つの実施形態における実装構造体の概略断面図を、
図2(b)に
図2(a)で表される実装構造体における、外部電極7b’のB-B面に沿った概略断面図を示す。
【
図3】横軸にPoint numberを、縦軸にFe濃度を設けた、Fe濃度の変動を示すグラフを示す。
【
図4】実施例2で得られた外部電極に含まれるNi-Fe系合金を有する層の断面図を示す。
【
図5】
図5(a)に実施例1で得られた外部電極に含まれるNi-Fe系合金を有する層におけるFe濃度の変動を示すグラフを示し、
図5(b)にNi濃度の変動を示すグラフを示す。
【
図6】
図6(a)に実施例2で得られた外部電極に含まれるNi-Fe系合金を有する層におけるFe濃度の変動を示すグラフを示し、
図6(b)にNi濃度の変動を示すグラフを示す。
【
図7】
図7(a)に実施例3で得られた外部電極に含まれるNi-Fe系合金を有する層におけるFe濃度の変動を示すグラフを示し、
図7(b)にNi濃度の変動を示すグラフを示す。
【
図8】試験例3で得られた外部電極に含まれるNi-Fe系合金を有する層の断面図を示す。
【
図9】
図9(a)に試験例1で得られた外部電極に含まれるNi-Fe系合金を有する層におけるFe濃度の変動を示すグラフを示し、
図9(b)にNi濃度の変動を示すグラフを示す。
【
図10】
図10(a)に試験例2で得られた外部電極に含まれるNi-Fe系合金を有する層におけるFe濃度の変動を示すグラフを示し、
図10(b)にNi濃度の変動を示すグラフを示す。
【
図11】
図11(a)に試験例3で得られた外部電極に含まれるNi-Fe系合金を有する層におけるFe濃度の変動を示すグラフを示し、
図11(b)にNi濃度の変動を示すグラフを示す。
【
図12】
図12(a)に実施例4で得られた外部電極に含まれるNi-Fe系合金を有する層におけるFe濃度の変動を示すグラフを示し、
図12(b)にNi濃度の変動を示すグラフを示す。
【
図13】実施例3および比較例1~2で得られた電子部品と基板との固着性試験の結果を示すグラフを示す。
【
図14】試験例3および比較例3で得られた外部電極の耐熱性試験の評価結果を示す。
【
図15】実施例4で得られた外部電極の耐熱性試験の評価結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[実施形態1]
以下、実施態様1として、電子部品について説明する。
【0013】
本実施態様の電子部品は、
部品本体と、
該部品本体の表面に設けられた外部電極と
を備え、
前記外部電極は、少なくとも1つの第1金属と少なくとも1つの第2金属との合金を有する層を含み、
前記少なくとも1つの第1金属は、元素周期表の第9族~第11族の金属からなる群より選択され、
前記少なくとも1つの第2金属は、前記少なくとも1つの第1金属よりも高い融点を有し、
前記合金を有する層において、前記外部電極の厚さ方向に、前記少なくとも1つの第2金属の濃度が連続的に変化し、かつ、該金属の濃度の増加する部分および減少する部分がそれぞれ少なくとも1つ存在する。
なお、本明細書において、「合金を有する層」は、特に記載がなければ「少なくとも1つの第1金属と少なくとも1つの第2金属との合金を有する層」を意味する。
【0014】
本実施態様の電子部品において、部品本体は、その表面に外部電極を設け得るものであれば特に限定されないが、例えば、コンデンサ、インダクタ、抵抗、LC複合部品等として使用し得る電子部品の本体を挙げることができる。
【0015】
上記部品本体は、特に限定されず、通常行われる手法を用いて構成し得る。
【0016】
上記部品本体の材質は特に限定されず、通常用いられる材質を用いることができる。材質としては、例えば、セラミック、樹脂、金属、それらの複合材等を挙げることができ、具体的には、セラミックを挙げることができる。
【0017】
代表的には、本実施態様の電子部品は、例えば
図1(a)に示す積層セラミックコンデンサ10であり得る。積層セラミックコンデンサ10は、部品本体1と、部品本体の表面に設けられた外部電極7を備える。部品本体1は、内部電極3(
図1(a)では3a、3b)、誘電体部分(誘電体層)5を有する。なお、図面は一部模式的なものを含み、実際の寸法や比率を反映していない場合がある。
【0018】
上記外部電極の数は特に限定されず、複数の外部電極を設けることができる。
図1(a)では、外部電極7として、7aおよび7bが設けられる。
【0019】
本実施態様の電子部品における外部電極の断面図として、例えば、
図1(b)で表されるものを挙げることができる。
図1(b)に示すように、外部電極7は、合金を有する層(例えば、Ni-Fe系合金を有する層)22を有する。
【0020】
上記外部電極7は、合金を有する層22と接触する層23をさらに有してもよい。層23が存在する場合、層23は外部電極の最外層となり得る。層23としては、例えば、Snを含む層(Snめっき層)等を挙げることができる。この場合、実装を行うときに、はんだとの接合性が良好になり得る(言い換えると、「はんだ濡れ性」が良好になり得る)。
【0021】
上記外部電極は、合金を有する層22と接触する層21をさらに有してもよい。層21が存在する場合、層21は部品本体1(代表的には5)と直接接触し得る。層21としては、例えば、Agを含む層(より詳細には、Agペースト層)等を挙げることができる。この場合、部品本体1と外部電極7との接触が良好になり得る。本実施態様においては、層21として、例えばAgを含む層が設けられる場合、合金を有する層22を有することにより、Agを含む層からのはんだ食われを防止し得る。この場合、部品本体とAgを含む層との間の接続は良好であり、電子部品としての接続信頼性も良好であり得る。
【0022】
上記外部電極の厚さは、特に限定されないが、例えば、1~500μmの範囲にあってもよく、3~300μmの範囲にあってもよく、5~20μmの範囲にあってもよい。
【0023】
上記少なくとも1つの第1金属は、元素周期表の第9族~第11族の金属からなる群よい選択され、上記少なくとも1つの第2金属は、前記少なくとも1つの第1金属よりも高い融点を有する。
上記のような合金を有する層を含むことにより、外部電極からはんだ、または、はんだ接合部への金属原子の拡散を効果的に抑制することができ、電子部品および基板間において高い接合強度が得られる電子部品を提供し得る。
【0024】
融点は、示差走査熱量測定計(DSC)における吸熱ピークの温度として求めることができる。具体的には、DSCにおいて、例えば、窒素雰囲気下で3℃/分で昇温した際に観測される結晶融解ピークにおけるピークトップの温度として測定することができる。複数の吸熱ピークが観測される場合には、最も低い温度を融点とする。
【0025】
なお、少なくとも1つの第1金属が2種類以上の金属を含む場合、「少なくとも1つの第1金属」の融点は、該2種類以上の金属を含む合金の融点を示す。また、少なくとも1つの第2金属が2種類以上の金属を含む場合、「少なくとも1つの第2金属」の融点は、該2種類以上の金属を含む合金の融点を示す。
【0026】
少なくとも1つの第1金属は、例えば、Ni、Co、AgおよびCuからなる群より選択される。上記のような第1金属を用いることにより、電子部品および基板間において特に良好な接合強度が得られる。
【0027】
少なくとも1つの第2金属は、例えば、W、Re、Os、Mo、Nb、Ir、Ru、Rh、Cr、Pt、Ti、Lu、Pd、Fe、およびCoからなる群より選択される。上記のような第2金属を用いることにより、電子部品および基板間において特に良好な耐熱性が得られる。
【0028】
例えば、少なくとも1つの第1金属は、Ni、Co、AgおよびCuからなる群より選択され、かつ、少なくとも1つの第2金属は、W、Re、Os、Mo、Nb、Ir、Ru、Rh、Cr、Pt、Ti、Lu、Pd、Fe、およびCoからなる群より選択される。上記のような金属を組み合わせて用いることにより、外部電極からはんだまたははんだ接合部への金属原子の拡散をより効果的に抑制することができ、電子部品および基板間において高い接合強度が得られる電子部品を提供し得る。
【0029】
少なくとも1つの第1金属は、具体的には、Ni、Co、Ag、またはCuであり、より具体的には、Niである。
【0030】
少なくとも1つの第2金属は、具体的には、W、Re、Os、Mo、Nb、Ir、Ru、Rh、Cr、Pt、Ti、Lu、Pd、Fe、またはCoであり、より具体的には、Fe、PdまたはWである。
【0031】
例えば、少なくとも1つの第1金属は、Niであり、かつ、少なくとも1つの第2金属は、Fe、Pd、およびWからなる群より選択される。
具体的には、少なくとも1つの第1金属は、Niであり、かつ、少なくとも1つの第2金属は、Fe、Pd、またはWである。言い換えると、合金を有する層に含まれる合金は、Ni-Fe系合金、Ni-Pd系合金、またはNi-W合金であり、具体的には、Ni-Fe系合金である。
【0032】
上記合金を有する層において、外部電極の厚さ方向に、少なくとも1つの第2金属の濃度は連続的に変化し、かつ、少なくとも1つの第2金属の濃度の増加する部分および減少する部分がそれぞれ少なくとも1つ存在する。上記合金を有する層は、部品本体の表面から遠ざかる方向に形成され得る。
本明細書において、「少なくとも1つの第2金属の濃度は連続的に変化」するとは、該金属が複数の金属を含む場合(すなわち、合金を有する層に含まれる第2金属が複数ある場合)、該複数の金属のうち、1つ金属の濃度が連続的に変化すればよい。「少なくとも1つの第2金属の濃度が増加する」とは、該金属が複数の金属を含む場合、該複数の金属のうち、1つ金属の濃度が増加すればよく、「少なくとも1つの第2金属の濃度が減少する」とは、該金属が複数の金属を含む場合、該複数の金属のうち、1つ金属の濃度が減少すればよい。
【0033】
例えば、上記外部電極は、Ni-Fe系合金を有する層を含む。この場合、該Ni-Fe系合金を有する層において、外部電極の厚さ方向に、Fe濃度は連続的に変化し、かつ、Fe濃度の増加する部分および減少する部分がそれぞれ少なくとも1つ存在する(以下において、「Ni-Fe系合金を有する層」と称することがある)。上記Ni-Fe系合金を有する層は、部品本体の表面から遠ざかる方向に形成され得る。
【0034】
すなわち、外部電極がNi-Fe系合金を有する層を含む場合、電子部品は、
部品本体と、
該部品本体の表面に設けられた外部電極と
を備え、
前記外部電極は、Ni-Fe系合金を有する層を含み得、
前記Ni-Fe系合金を有する層において、前記外部電極の厚さ方向に、Fe濃度が連続的に変化し、かつ、Fe濃度の増加する部分および減少する部分がそれぞれ少なくとも1つ存在する。
【0035】
本明細書において、合金を有する層において、合金は、本発明の効果を妨げない範囲で、第1金属および第2金属以外の金属を含んでいてもよい。例えば、合金が、NiおよびFeを含む合金である場合(「Ni-Fe系合金」と称することがある)、本発明の効果を妨げない範囲で、Ni、Fe以外の他の金属原子を含んでいてもよい。
【0036】
合金を有する層において、第1金属および第2金属以外の金属原子の含有量は、特に限定されないが、合金の全質量に対して、例えば、10質量%以下、具体的には、1質量%以下である。上記第1金属および第2金属以外の金属原子の含有量の下限値は、該合金の全質量に対して、0質量%でもよい。
例えば、上記合金がNi-Fe系合金である場合、Ni-Fe系合金において、NiおよびFe以外の金属原子の含有量は、特に限定されないが、Ni-Fe系合金の全質量に対して、例えば、10質量%以下、具体的には、1質量%以下である。上記NiおよびFe以外の金属原子の含有量の下限値は、Ni-Fe系合金の全質量に対して、0質量%でもよい。
【0037】
一の態様において、上記合金(例えば、Ni-Fe系合金)は、不可避な不純物を除き、少なくとも1つの第1金属および少なくとも1つの第2金属(例えばNiおよびFe)以外の金属原子を含まない。本態様によると、耐熱性の良好な外部電極(特にNi-Fe系合金を有する層)を提供し得、さらに、該外部電極を含む電子部品と基板との間により良好な接合強度を提供し得る。
【0038】
別の態様において、上記Ni-Fe系合金は、Ni、Fe以外の原子、具体的にはSn、Ag、Cu、Co、Ti、Ba、Mn、Ca、Sr、Na、K、Mg、Al等の金属原子を含み得る。
【0039】
本明細書において、合金を有する層は、少なくとも1つの第1金属および少なくとも1つの第2金属を含む層であり、本発明の効果を妨げない範囲で、第1金属および第2金属以外の第3成分を含んでいてもよい。例えば、上記合金を有する層が「Ni-Fe系合金を有する層」である場合、該層は、「Ni-Fe系合金」を含む層であり、本発明の効果を妨げない範囲で、Ni-Fe系合金以外の第3成分を含んでいてもよい。
【0040】
上記第3成分としては、例えば、皮膜の応力低減に効果のあるS、または、C、O、Cl、P、B、N原子等を挙げることができる。
【0041】
上記第3成分である原子の含有量は、合金を有する層の全質量に対して、例えば0~10質量%の範囲で含まれ得、具体的には0~1質量%の範囲で含まれ得る。
【0042】
本実施形態の合金を有する層において、合金(例えばNi-Fe系合金)は、他の微量物質、例えば、不可避的に混入し得る微量元素等を含んでいてもよい。
【0043】
本実施態様の電子部品は、はんだを用いて基板に実装することにより実装構造体に用いられ得る。実装構造体としては、代表的には、
図2(a)に示されるような実装構造体を挙げることができる。
図2(a)において、実装構造体20は、電子部品、はんだ接合部9を有する。実装構造体20において、電子部品は、部品本体1と、部品本体の表面に設けられた外部電極7’を備える。部品本体1は、内部電極3、誘電体部分(誘電体層)5を有する。
【0044】
上記外部電極の数は特に限定されず、複数の外部電極を設けることができる。
図2(a)では、外部電極7’として、7a’および7b’が設けられる。
【0045】
はんだ接合部9は、9a、9bとして設けることができる。はんだ接合部9は、基板11と電子部品を接合するものであり、具体的には、基板11の表面に設けられた電極部13と直接接合する。
【0046】
電極部13の数は、電子部品の数に応じて適宜選択されるが、代表的には、2つ(13a、13b)であり得る。
【0047】
本実施態様の実装構造体における外部電極7’の断面図として、例えば、
図2(b)で表されるものを挙げることができる。上記
図2(b)において、外部電極は、合金を有する層(例えば、Ni-Fe系合金を有する層)22’を有する。
【0048】
上記の
図2(b)に示されるように、本実施態様の実装構造体において、外部電極7’は、合金を有する層22’と接触する層21をさらに有してもよい。層21が存在する場合、層21は部品本体1(代表的には5)と直接接触し得る。層21としては、例えば、Agを含む層(Agペースト層)等を挙げることができる。この場合、部品本体と外部電極との接触が良好になり得る。本実施態様の実装構造体は、合金を有する層22’と接触するはんだ接合部9を有する。
【0049】
上記の
図2(b)に示されるように、本実施態様の実装構造体において、合金を有する層(例えば、Ni-Fe系金属を有する層)22’とはんだ接合部9との界面は、凹凸状態を有し得る。これは、合金を有する層における、少なくとも1つの第2金属(例えば、Fe)の濃度の増加する部分および減少する部分に起因して形成される。本発明はいかなる理論にも限定されないが、少なくとも1つの第2金属の濃度の低い部分がはんだ接合部9に含まれやすいためと考えられる。本実施態様では、このような界面形状を有することにより、電子部品と基板との接合強度が強固になると考えられる。
【0050】
上記合金を有する層における少なくとも1つの第2金属の濃度は、走査型電子顕微鏡(FE-SEM/EDX)(株式会社日立ハイテクノロジーズ製、FE-SEM:SU8230/EDX:5060FQ)を用いて測定した値である。具体的には、以下のように行う。合金を有する層を、外部電極の厚さ方向に切断し、断面を研磨する。その後、FE-SEM/EDXを用い、加速電圧を3kVとし、系合金を有する層に含まれる金属元素の重量を測定する。少なくとも1つの第2金属の濃度は、外部電極に含まれる第1金属と第2金属との総重量に対する、第2金属の重量の割合を意味する。例えば、上記合金がNi-Fe系合金である場合、「Fe濃度」は、Ni元素とFe元素との総重量に対する、Fe元素の重量の割合を意味する。
【0051】
少なくとも1つの第2金属の濃度の測定は、以下のように行う。単位厚さ(具体的には1.0μm)あたりに、均等に複数のポイントを設け、外部電極の最外面に近い側(即ち、横軸が0の場合)に設けたポイントから、順次、少なくとも1つの第2金属の濃度を測定する。
測定した結果に基づいて、例えば、
図3に示すようなグラフを形成し得る。
図3は、合金としてNi-Fe系合金を用いた場合の、Fe濃度を測定したものである。
図3において、左側(横軸が0の場合)が外部電極の最外面に近い側を、右側が部品本体に近い側を示す。
図3では、横軸は「Point number」であり、これは上記のようにFe濃度を測定したポイントの順位に対応する。
図3では縦軸はFe濃度である。Fe濃度は、上記のようにFE-SEM/EDXを用いて求められる値である。
【0052】
図3に示すように、Fe濃度は極小値および極大値の間で連続的に変化する。なお、「連続的に」とは、測定点が離散せずに存在することを意味する。例えば、単位厚さあたり(1.0μmあたり)100点以上(具体的には130点以上、
図3に図示する例では236点)のFe濃度を測定し、ある測定点におけるFe濃度と、その隣の測定点に置けるFe濃度との変化量が30%以下であり得る。
【0053】
図3において、例えば、αで表される領域は、Fe濃度の値が極小値から極大値までFe濃度が連続的に増加する部分(「Fe濃度の増加する部分」)であり、βで表される領域は、極大値から極小値までFe濃度が連続的に減少する部分(「Fe濃度の減少する部分」)である。
【0054】
合金を有する層において、外部電極の厚さ方向に、少なくとも1つの第2金属の濃度の増加する部分および減少する部分が、それぞれ少なくとも1つ存在する。例えば、合金を有する層が、Ni-Fe系合金を有する層である場合、前記外部電極の厚さ方向に、Fe濃度の増加する部分および減少する部分は、それぞれ少なくとも1つ存在する。
【0055】
少なくとも1つの第2金属の濃度の増加する部分は、合金を有する層中において、外部電極の厚さ方向に、例えば1μmあたりで1~100個存在し得、具体的には1μmあたりで1~70個存在し得、より具体的には、1μmあたりで10~50個存在し得る。
例えば、合金がNi-Fe系合金である場合、Fe濃度の増加する部分は、Ni-Fe系合金を有する層中において、外部電極の厚さ方向に、例えば1μmあたりで1~100個存在し得、具体的には1μmあたりで1~70個存在し得、より具体的には、1μmあたりで10~50個存在し得る。
【0056】
少なくとも1つの第2金属の濃度の減少する部分は、合金を有する層中において、外部電極の厚さ方向に、例えば1μmあたりで1~100個存在し得、具体的には1μmあたりで1~70個存在し得、より具体的には、1μmあたりで10~50個存在し得る。
例えば、合金がNi-Fe系合金である場合、Fe濃度の減少する部分は、Ni-Fe系合金を有する層中において、外部電極の厚さ方向に、例えば1μmあたりで1~100個存在し得、具体的には1μmあたりで1~70個存在し得、より具体的には、1μmあたりで10~50個存在し得る。
【0057】
上記のような合金を有する層(例えば、Ni-Fe系合金を有する層)を有することにより、外部電極は良好な耐熱性を示す。その結果、本実施態様の電子部品を実装したときに、合金を有する層のはんだ食われを抑制し得る。さらに、上記のような合金を有する層を有することにより、本実施態様の電子部品を基板に実装したときに、電子部品と基板との接合強度が良好になり得る。
【0058】
一の態様において、合金を有する層(例えば、Ni-Fe系合金を有する層)において、外部電極の厚さ方向に積層した少なくとも1つの第2金属(例えば、Fe)の濃度の異なる層が複数存在する。本態様においては、少なくとも1つの第2金属の濃度の異なる層が複数存在することによって、少なくとも1つの第2金属の濃度の増加する部分および減少する部分が構成される。「少なくとも1つの第2金属の濃度が異なる」とは、該金属が複数の金属を含む場合、該複数の金属のうち、1つの金属の濃度が異なればよい。
【0059】
上記態様について、
図4に基づいてより詳細に説明する。
図4は、Ni-Fe系合金を有する層の断面写真であって、外部電極の厚さ方向に沿って切断したものである。
図4において右側が部品本体に近い面である。
【0060】
上記
図4は、Ni-Fe系合金を有する層の断面を、FE-SEM/EDXを用いて、元素マッピングしたものである。
図4では、Fe濃度が高くなると図面中の色が薄く表示され、Fe濃度が低くなると図面中の色が濃く表示されている。上記「Fe濃度の異なる層が複数存在する」とは、
図4に示されるように、Fe濃度のレベルが異なる層が部品本体の表面と略平行な方向に連続して層状態で存在することを意味する。
【0061】
少なくとも1つの第2金属の濃度の異なる層(例えば、
図4に示すようにFe濃度の異なる層)が複数存在するために、少なくとも1つの第2金属の濃度(例えば、Fe濃度)の特に高い層ではより耐熱性が良好になると考えられ、耐熱性の面では特に有利であると考えられる。また、上記合金を有する層(具体的には、Ni-Fe系合金を有する層)において、少なくとも1つの第2金属の濃度(具体的には、Fe濃度)が連続的に変化していることにより、該層においてクラックが生じた場合であっても、厚みに対する水平方向と垂直方向とで物性が違うことにより、クラックの進展を抑制し得る。
【0062】
一の態様において、合金を有する層において、少なくとも1つの第2金属の濃度が異なる領域は複数存在する。例えば、合金がNi-Fe系合金である場合、Ni-Fe系合金を有する層において、Fe濃度の異なる領域が複数存在する。本態様においては、少なくとも1つの第2金属の濃度の異なる領域が複数存在することによって、少なくとも1つの第2金属の濃度の増加する部分および減少する部分が構成される。
【0063】
上記態様について、
図8に基づいてより詳細に説明する。
図8は、Ni-Fe系合金を有する層の断面写真であって、外部電極の厚さ方向に沿って切断したものである。
図8において右側が外部電極の部品本体側の面である。
【0064】
図8は、Ni-Fe系合金を有する層の断面を、FE-SEM/EDXを用いて、元素マッピングしたものである。
図8では、Fe濃度が高くなると図面中の色が薄く表示され、Fe濃度が低くなると図面中の色が濃く表示されている。上記「Fe濃度の異なる領域が複数存在する」とは、
図8に示されるように、Fe濃度の高い領域と、Fe濃度の低い領域とが方向によらず混在して存在することを意味する。
【0065】
少なくとも1つの第2金属の濃度の異なる領域(例えば、
図8に示すようにFe濃度の異なる領域)が複数存在するために、外部電極の耐熱性が良好になるとともに、特に本実施態様の電子部品と基板との接着強度が良好になり得る。これは、少なくとも1つの第2金属の濃度(例えば、Fe濃度)の高い領域と低い領域とが混在して存在するために、はんだ接合部を設けた場合に、はんだ接合部と外部電極との界面に凹凸の領域が形成され易い。「少なくとも1つの第2金属の濃度の異なる領域」とは、該金属が複数の金属を含む場合(すなわち、合金を有する層に第2金属が複数含まれる場合)、該複数の金属のうち、1つ金属の濃度が異なればよい。
【0066】
上記合金を有する層において、好ましくは、外部電極の厚さ方向に、少なくとも1つの第1金属の濃度の増加する部分および減少する部分がそれぞれ少なくとも1つ存在する。例えば、上記合金がNi-Fe系合金である場合、上記Ni-Fe系合金を有する層において、好ましくは、外部電極の厚さ方向に、Ni濃度の増加する部分および減少する部分がそれぞれ少なくとも1つ存在する。ここで、少なくとも1つの第1金属の濃度(例えば、Ni濃度)の増加する部分および減少する部分の、増加する部分および減少する部分は、それぞれ、少なくとも1つの第2金属の濃度における増加する部分および減少する部分と同意義である。
【0067】
上記合金を有する層において、上記少なくとも1つの第1金属の濃度は、外部電極の厚さ方向に、連続的に変化することが好ましい。例えば、合金がNi-Fe系合金である場合、Ni-Fe系合金を有する層において、上記Ni濃度は、外部電極の厚さ方向に、連続的に変化することが好ましい。
【0068】
少なくとも1つの第1金属の濃度の増加する部分は、上記合金を有する層において、外部電極の厚さ方向に、例えば1μmあたりで1~100個存在し得、具体的には1μmあたりで1~70個存在し得、より具体的には、1μmあたりで10~50個存在し得る。例えば、合金がNi-Fe系合金である場合、Ni濃度の増加する部分は、上記Ni-Fe系合金を有する層において、外部電極の厚さ方向に、例えば1μmあたりで1~100個存在し得、具体的には1μmあたりで1~70個存在し得、より具体的には、1μmあたりで10~50個存在し得る。
【0069】
少なくとも1つの第1金属の濃度の減少する部分は、上記合金を有する層において、外部電極の厚さ方向に、例えば1μmあたりで1~100個存在し得、具体的には1μmあたりで1~70個存在し得、より具体的には、1μmあたりで10~50個存在し得る。例えば、合金がNi-Fe系合金である場合、Ni濃度の減少する部分は、上記Ni-Fe系合金を有する層において、外部電極の厚さ方向に、例えば1μmあたりで1~100個存在し得、具体的には1μmあたりで1~70個存在し得、より具体的には、1μmあたりで10~50個存在し得る。
【0070】
上記合金を有する層において、該層に含まれる少なくとも1つの第2金属の比率は、1~99質量%の範囲にあることが好ましく、例えば、15~99質量%の範囲、50~99質量%の範囲、または65~90質量%の範囲にあってもよい。例えば、上記比率は15~80質量%の範囲にあってもよい。例えば、合金がNi-Fe系合金である場合、上記Ni-Fe系合金を有する層において、該層に含まれるFeの比率は、1~99質量%の範囲にあることが好ましく、15~99質量%の範囲にあってもよく、50~99質量%の範囲、65~90質量%、または70~90質量%の範囲にあってもよい。
少なくとも1つの第2金属(例えばFe)の比率は、FE-SEM/EDXを用いて求めることができる。具体的には、以下のように行う。合金を有する層を、外部電極の厚さ方向に切断し、断面を研磨する。その後、FE-SEM/EDXを用い、加速電圧を3kVとし、合金を有する層に含まれる金属元素の重量を測定する。分析は、例えば、縦2μm横2μmの領域を設け、その領域内に含まれる金属元素を分析することで行い得る。少なくとも1つの第2金属の濃度は、少なくとも1つの第1金属と少なくとも1つの第2金属との総重量(すなわち、外部電極に含まれる第1金属および第2金属の総重量)に対する、少なくとも1つの第2金属の重量の割合を意味する。例えば、合金がNi-Fe系合金である場合、「Fe濃度」は、Ni元素とFe元素との総重量に対する、Fe元素の重量の割合を意味する。
なお、少なくとも1つの第2金属が複数の金属を含む場合、上記「少なくとも1つの第2金属の比率」は、合金を有する層に含まれる第2金属の総量の比率を意味する。
【0071】
上記合金を有する層(例えば、Ni-Fe系合金を有する層)の厚さは、特に限定されないが、例えば、1~30μmの範囲にあってもよく、1~15μmの範囲にあってもよく、1~8μmの範囲にあってもよい。このような厚さを有することにより、合金を有する層は良好な耐熱性を有し得、さらに、はんだを用いて本実施態様の電子部品と基板とを接合した場合に、該電子部品と基板との固着性が良好になり得る。
【0072】
上記外部電極は、上記合金を有する層に加え、その他の層を有し得る。即ち、外部電極は、複数の層を有し得る。
【0073】
上記外部電極が、その他の層を有する場合、該その他の層と、合金を有する層とは、外部電極の厚さ方向に積層されることが好ましい。
【0074】
上記他の層を構成する物質としては、例えば、Ag、Cu、Sn、Au、Ti、Cr、Mo、Ta、Zr、Nb、W、Al、Co、Ni、Fe、Pdから選択される少なくとも1つの金属またはこれらの合金を挙げることができる。
【0075】
一の態様において、外部電極は、合金を有する層を複数有し得る。具体的には、外部電極は、Ni-Fe系合金を有する層を、複数有し得る。
【0076】
上記外部電極の形成方法は、部品本体に該外部電極を適切に接合し得る方法であれば特に限定されないが、例えば、導電ペーストの塗布を含む方法、めっき方法(例えば、電解めっき方法、無電解めっき方法)、スパッタリング、蒸着等を挙げることができる。上記の方法は、通常用い得る手法を用いて行い得る。
【0077】
一の態様において、部品本体の表面に直接形成する層は、導電ペーストの塗布により、上記導電ペーストの塗布により設けられた層の上に形成する層は、めっき方法、具体的には電解めっき方法により設けられ得る。
【0078】
上記合金を有する層(例えば、Ni-Fe系合金を有する層)は、めっき方法により形成され得、具体的には電解めっき方法により形成され得る。
【0079】
上記態様によれば、第2金属の濃度が連続的に変化する部分の形成、例えば、第2金属の濃度の異なる層または領域の形成が容易になる。
【0080】
電解めっき方法としては、バレルめっき方法、ラックめっき方法等を挙げることができる。
【0081】
電解めっき方法においては、例えば、めっき処理の対象物に対して印加する電圧値を変動させて行う。
【0082】
特に限定されないが、例えば、バレルめっき方法は、外部電極の厚さ方向に積層したFe濃度の異なる層が複数存在するNi-Fe系合金を有する層の形成に適し得、ラックめっき方法は、Fe濃度の異なる領域が複数存在するNi-Fe系合金を有する層の形成に適し得る。
【0083】
本実施態様の電子部品は、基板(実装基板)に実装され、実装構造体となり得る。
【0084】
[実施形態2]
以下、実施態様2として、実装構造体について説明する。なお、特に断りのない限り、実施形態1と同様の説明が当て嵌まる。
【0085】
本実施態様の実装構造体は、
電子部品が基板に実装されている実装構造体であって、
前記電子部品は、
部品本体と、
該部品本体の表面に設けられた外部電極と
を備え、
前記外部電極は、少なくとも1つの第1金属と前記少なくとも1つの第2金属との合金を有する層を含み、
前記少なくとも1つの第1金属は、元素周期表の第9族~第11族の金属からなる群より選択され、
前記少なくとも1つの第2金属は、前記少なくとも1つの第1金属よりも高い融点を有し、
前記合金を有する層において、前記外部電極の厚さ方向に、前記少なくとも1つの第2金属の濃度が連続的に変化し、かつ、該金属の濃度の増加する部分および減少する部分がそれぞれ少なくとも1つ存在し、
前記外部電極が、前記基板に形成された電極部にはんだ接合部により接合されている。
【0086】
例えば、合金がNi-Fe系合金である場合、実装構造体は、
電子部品が基板に実装されており、
前記電子部品は、
部品本体と、
該部品本体の表面に設けられた外部電極と
を備え、
前記外部電極は、Ni-Fe系合金を有する層を含み、
前記Ni-Fe系合金を有する層において、前記外部電極の厚さ方向に、Fe濃度が連続的に変化し、かつ、Fe濃度の増加する部分および減少する部分がそれぞれ少なくとも1つ存在し、
前記外部電極が、前記基板に形成された電極部にはんだ接合部により接合されている。
【0087】
本実施態様において、基板は特に限定されず、通常用いられるものを使用できる。基板としては、例えば、アルミナ、エポキシガラス、ガラス、Siウエハー、フェライトウエハー等を挙げることができる。
【0088】
上記基板の表面に設けられる電極部は、特に限定されず、通常用いられるものを使用できる。電極部は、例えば、Ni、Cu、Ag、Sn、Au、Pd等の導電性物質、および場合により、プリフラックス等によって形成され得る。
【0089】
本実施態様の実装構造体において、外部電極と電極部との間には、はんだ接合部が存在する。はんだ接合部は、実質的にはんだからなり得、さらに、本実施態様の電子部品に含まれる外部電極に由来する金属原子の少なくとも1つを含み得る。
【0090】
本実施態様においては、実施態様1の電子部品が用いられる。本実施態様において、外部電極は、合金を有する層(例えば、Ni-Fe系合金を有する層)を有する。合金を有する層を有することによって、本実施態様の実装構造体を、長期間および/または高温環境下において使用した場合であっても、合金を有する層のはんだ食われを抑制し得る。
【0091】
本実施態様においては、外部電極が、合金を有する層(例えば、Ni-Fe系合金を有する層)と、さらに部品本体に直接接触する層(例えば、Agを含む層)を含む場合には、Agを含む層からのはんだ食われも防止し得る。この結果、実装構造体における接続信頼性も良好となり得る。
【0092】
本実施態様の実装構造体において、外部電極の合金を有する層(例えば、Ni-Fe系合金を有する層)と、はんだ接合部とが接合し得る。本実施態様の実装構造体では、上記外部電極の合金を有する層と、はんだ接合部との界面には、凹凸の領域が存在し得る。これは、はんだ接合部の形成時に、合金を有する層の一部が、はんだ接合部の一部として含まれ得るためと考えられる。
【0093】
はんだ接合部は、一般的な方法で形成し得るが、例えば、はんだペーストを用い、リフローして形成され得る。
【0094】
本実施態様において、はんだは特に限定されず、通常用いられるものを使用できる。はんだとしては、例えば、Sn-Ag系合金、Sn-Ag-Cu系合金(SAC)、Sn-Zn-Bi系合金、Sn-Cu系合金、Sn-Ag-In-Bi系合金、Sn-Zn-Al系合金、Sn-Sb系合金、Sn-Pb系合金等を用いることができる。
【0095】
好ましくは、外部電極とはんだ接合部との界面付近には、外部電極(例えば、実施態様1の電子部品に含まれる外部電極)、および、はんだ接合部を構成する金属原子に由来する合金(本明細書において「金属間化合物」と称することがある)が存在する。このような金属間化合物が存在することにより、電子部品と基板、具体的には、外部電極と電極部とがより強固に接合し得る。
【0096】
例えば、はんだとしてSnを含む合金、具体的には、Sn-Ag系合金、Sn-Ag-Cu系合金、Sn-Zn-Bi系合金、Sn-Cu系合金、Sn-Ag-In-Bi系合金、Sn-Zn-Al系合金、Sn-Sb系合金、Sn-Pb系合金等を用い、外部電極の合金を有する層にFeを含む場合、金属間化合物として、FeSn2系合金が存在する。FeSn2系合金が存在することにより、外部電極からはんだ接合部への金属原子の拡散をより効果的に抑制し得、電子部品と基板、具体的には、外部電極と電極部とがより強固に接合し得る。
【0097】
例えば、はんだとしてSnを含む合金、具体的には、Sn-Ag系合金、Sn-Ag-Cu系合金、Sn-Zn-Bi系合金、Sn-Cu系合金、Sn-Ag-In-Bi系合金、Sn-Zn-Al系合金、Sn-Sb系合金、Sn-Pb系合金等を用い、外部電極の合金を有する層にNiを含む場合、金属間化合物として、Ni3Sn4系合金が存在する。Ni3Sn4系合金が存在することにより、外部電極からはんだ接合部への金属原子の拡散をより効果的に抑制し得、電子部品と基板、具体的には、外部電極と電極部とがより強固に接合し得る。
【0098】
例えば、はんだとしてSnを含む合金、具体的には、Sn-Ag系合金、Sn-Ag-Cu系合金、Sn-Zn-Bi系合金、Sn-Cu系合金、Sn-Ag-In-Bi系合金、Sn-Zn-Al系合金、Sn-Sb系合金、Sn-Pb系合金等を用い、外部電極の合金を有する層にFeおよびNiを含む場合、金属間化合物として、FeSn2系合金およびNi3Sn4系合金が存在する。FeSn2系合金およびNi3Sn4系合金が存在することにより、外部電極からはんだ接合部への金属原子の拡散をより効果的に抑制し得、電子部品と基板、具体的には、外部電極と電極部とがより強固に接合し得る。
【0099】
例えば、はんだとしてSnおよびCuを含む合金、具体的には、Sn-Ag-Cu系合金、Sn-Cu系合金等を用い、外部電極の合金を有する層にNiを含む場合、金属間化合物として、(Cu,Ni)6Sn5系合金が存在する。(Cu,Ni)6Sn5系合金が存在することにより、外部電極からはんだ接合部への金属原子の拡散をより効果的に抑制し得、電子部品と基板、具体的には、外部電極と電極部とがより強固に接合し得る。
なお、(Cu,Ni)6Sn5とは、CuおよびNiと、Snとの比が6:5で存在することを意味する。
【0100】
上記金属間化合物の存在する層の厚さは特に限定されないが、例えば、0.01~20μmの範囲にあり得る。
【0101】
一の態様において、FeSn2系合金の存在する層の厚さは特に限定されないが、例えば、0.01~20μmの範囲にあり得る。
【実施例】
【0102】
以下、実施例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0103】
(実施例1)
Ag粉とガラスとが混合されたペーストに、チップ状のセラミック積層体を浸漬した後、引き上げ、ペーストを付着させた。その後、760℃で焼成し、セラミック積層体の表面に、Agとガラスとを含む複合層を形成した。
複合層を形成した後に、鉄塩(硫酸鉄7水和物:28g/L)、ニッケル塩(硫酸ニッケル6水和物:250g/L、塩化ニッケル6水和物:40g/L)、緩衝剤(ホウ酸:30g/L)、光沢剤(サッカリンナトリウム2水和物:2g/L)、および添加剤(マロン酸:5.2g/L)を含むめっき液を用いて、以下の方法(A1-1)を用いてNi-Fe系合金を有する層を形成した。
・方法(A1-1)
バレルめっき工法を用いてNi-Fe系合金を有する層を形成した。具体的には、バレル型のめっき装置に、処理対象物と、導通確保のための金属とを投入し、10A(平均電流密度0.29A/dm2)で60分間、電圧値を5~15Vの範囲で変動させて加工した。
Ni-Fe系合金を有する層を形成した後、Sn塩、錯化剤、および添加剤を含むめっき液を用いて、方法(A1-2)を用いてSnのめっき層を形成した。
・方法(A1-2)
バレルめっき工法を用いてSn層を形成した。具体的には、バレル型のめっき装置に、処理対象物と、導通確保のための金属とを投入し、6Aで75分間加工した。
上記のようにして、外部電極を有する電子部品を作製した。
【0104】
(実施例2)
Ni-Fe系合金のめっき層の形成において、鉄塩の濃度を硫酸鉄7水和物:56g/Lに変更した以外は、実施例1と同様に行い、外部電極を有する電子部品を作製した。
【0105】
(実施例3)
Ni-Fe系合金のめっき層の形成において、鉄塩の濃度を硫酸鉄7水和物:97g/Lに変更した以外は、実施例1と同様に行い、外部電極を有する電子部品を作製した。
【0106】
(実施例4)
Ni-Fe系合金のめっき層の形成において、鉄塩の濃度を硫酸鉄7水和物:117g/Lに変更した以外は、実施例1と同様に行い、外部電極を有する電子部品を作製した。
【0107】
(試験例1)
Cu板に、鉄塩(硫酸鉄7水和物:28g/L)、ニッケル塩(硫酸ニッケル6水和物:250g/L、塩化ニッケル6水和物:40g/L)、緩衝剤(ホウ酸:30g/L)、光沢剤(サッカリンナトリウム2水和物:2g/L)、および添加剤(マロン酸:5.2g/L)を含むめっき液を用いて、以下の方法(A4-1)を用いてNi-Fe系合金を有する層を形成した。
・方法(A4-1)
ラックめっき工法を用い、1.3A(平均電流密度4.0A/dm2)で4分20秒間、電圧値を2.0~2.6Vの範囲で変動させて加工した。
Ni-Fe系合金を有する層を形成した後、Sn塩、錯化剤、および添加剤を含むめっき液を用いて、方法(A4-2)を用いてSnのめっき層を形成した。
・方法(A4-2)
ラックめっき工法を用い、0.085A(平均電流密度0.25A/dm2)で40分間加工した。
上記のようにして、Ni-Fe系合金を有する層およびSn層を有する部品を作製した。
【0108】
(試験例2)
Ni-Fe系合金のめっき層の形成において、鉄塩の濃度を硫酸鉄7水和物:56g/Lに変更した以外は、試験例1と同様に行い、Ni-Fe系合金を有する層およびSn層を有する部品を作製した。
【0109】
(試験例3)
Ni-Fe系合金のめっき層の形成において、鉄塩の濃度を硫酸鉄7水和物:97g/Lに変更した以外は、試験例1と同様に行い、Ni-Fe系合金を有する層およびSn層を有する部品を作製した。
【0110】
実施例1~4で形成された電子部品、および試験例1~3で得られた部品をそれぞれ切断し、断面を研磨した。その後、断面の分析を以下のように行った。
<断面の分析方法>
・分析機器:走査型電子顕微鏡(FE-SEM/EDX)
株式会社日立ハイテクノロジーズ製
FE-SEM:SU8230/EDX:5060FQ
・加速電圧:3kV
【0111】
なお、上記の断面の分析は、それぞれ以下の表に示す数のポイントを設けて行った。
上記分析の結果に基づいて、実施例1~4のFe比率、Ni比率の分析結果をそれぞれ
図5(a)、
図5(b)、
図6(a)、
図6(b)、
図7(a)、
図7(b)、
図12(a)、
図12(b)に、試験例1~3のFe比率、Ni比率の分析結果をそれぞれ
図9(a)、
図9(b)、
図10(a)、
図10(b)、
図11(a)、
図11(b)に示した。また、分析結果から、Fe濃度の増加する部分の数を求めた。以下の表にFe濃度の増加する部分の数を記載する。なお、「Fe濃度の増加する部分」の数は、Fe濃度が一旦下がった後、増加しているもの、を数えた値である。
【0112】
【0113】
<Ni-Fe系合金を有する層におけるFeの比率>
Ni-Fe系合金を有する層に含まれるFe元素とNi元素との合計質量に対するFe元素の含有量を求めた。上記Feの比率は、Ni-Fe系合金を有する層の断面において縦2μm以上横2μm以上の分析用領域を設け、EDXを用いて該領域に含まれるFe元素およびNi元素の質量を測定し、測定値に基づいて計算したものである。EDXの条件は、上述した断面の分析方法と同じである。
【0114】
以下の表に実施例1~4および試験例1~3で得られたNi-Fe系合金を有する層の断面の分析結果を示す。
【0115】
【0116】
図4に実施例2で得られたNi-Fe系合金を有する層の断面図(倍率:50000倍)を、および
図8に試験例3で得られたNi-Fe系合金を有する層の断面図(倍率:50000倍)をそれぞれ示す。なお、
図6(a)、(b)は、
図4に記載している横線に沿ってポイントを設け、Fe濃度およびNi濃度を測定した結果であり、
図11(a)、(b)は、
図8に記載している横線に沿ってポイントを設け、Fe濃度およびNi濃度を測定した結果である。
図12(a)、(b)は、実施例4で得られたNi-Fe系合金を有する層の断面図に、
図4と同様に断面図にポイントを設け、Fe濃度およびNi濃度を測定した結果である。実施例1~4および試験例1~3において、Fe濃度は連続的に変化し、かつ、Fe濃度の増加する部分および減少する部分がそれぞれ少なくとも1つ存在するNi-Fe系合金を有する層が形成されていることが確認された。
【0117】
(比較例1)
Ag粉とガラスとが混合されたペーストに、セラミック積層体を浸漬した後、引き上げ、ペーストを付着させた。その後、760℃で焼成し、セラミック積層体の表面に、Agとガラスとを含む複合層を形成した。
複合層を形成した後に、ニッケル塩(硫酸ニッケル:240g/L、塩化ニッケル:45g/L)、および緩衝剤(ホウ酸、30g/L)を含むめっき液を用いて、以下の方法(B1-1)を用いてNi層を形成した。
・方法(B1-1)
バレルめっき工法を用い、0.17A(平均電流密度0.50A/dm2)で30分間加工した。
Ni層を形成した後、Sn塩、錯化剤、および添加剤を含むめっき液を用いて、方法(B1-2)を用いてSnのめっき層を形成した。
・方法(B1-2)
バレルめっき工法を用いてSn層を形成した。具体的には、バレル型のめっき装置に、処理対象物と、導通確保のための金属とを投入し、6Aで75分間加工した。
上記のようにして、外部電極を有する電子部品を作製した。
【0118】
(比較例2)
Ag粉とガラスとが混合されたペーストに、セラミック積層体を浸漬した後、引き上げ、ペーストを付着させた。その後、760℃で焼成し、セラミック積層体の表面に、Agとガラスとを含む複合層を形成した。
複合層を形成した後に、鉄塩(塩化第一鉄:240g/L)、導電剤(塩化カリウム:180g/L)を含むめっき液を用いて、以下の方法(B2-1)を用いてFe層を形成した。
・方法(B2-1)
バレルめっき工法を用い、1.2A(平均電流密度3.5A/dm2)で3分間加工した。
Fe層を形成した後に、ニッケル塩(硫酸ニッケル:240g/L、塩化ニッケル:45g/L)、および緩衝剤(ホウ酸、30g/L)を含むめっき液を用いて、以下の方法(B2-2)を用いてNi層を形成した。
・方法(B2-2)
ラックめっき工法を用い、0.17A(平均電流密度0.50A/dm2)で10分間加工した。
Ni層を形成した後、Sn塩、錯化剤、および添加剤を含むめっき液を用いて、方法(B2-3)を用いてSnのめっき層を形成した。
・方法(B2-3)
バレルめっき工法を用いてSn層を形成した。具体的には、バレル型のめっき装置に、処理対象物と、導通確保のための金属とを投入し、6Aで75分間加工した。
上記のようにして、外部電極を有する電子部品を作製した。
【0119】
(比較例3)
Cu板に、ニッケル塩(硫酸ニッケル:240g/L、塩化ニッケル:45g/L)、および緩衝剤(ホウ酸、30g/L)を含むめっき液を用いて、以下の方法(B3-1)を用いてNi層を形成した。
・方法(B3-1)
ラックめっき工法を用い、0.17A(平均電流密度0.50A/dm2)で10分間加工した。
Ni層を形成した後、Sn塩、錯化剤、および添加剤を含むめっき液を用いて、方法(B3-2)を用いてSnのめっき層を形成した。
・方法(B3-2)
ラックめっき工法を用い、0.085A(平均電流密度0.25A/dm2)で40分間加工した。
上記のようにして、めっき皮膜を有する部品を作製した。
【0120】
<固着性試験>
実施例3、および比較例1~2で得られた電子部品を、基板に実装し、電子部品と基板との固着性を測定した。固着性の評価方法は以下のとおりである。
【0121】
実施例3、比較例1および2で得られた電子部品を、プリント基板にSACを用いてリフロー実装した後に、横押し試験にて固着強度の測定を行った。
横押し試験の条件は以下のとおりである。
・装置
固着強度評価機(ボンドテスタDage4000;Dage製)
モジュール:BS5kg
ツール:SHR-187-2000(1mm幅)
・評価条件
モジュール:BS5kg
ツール:SHR-187-2000(1mm幅)
降下スピード(μm/s):100
シェアスピード(μm/s):100
シェア高さ(μm):100
破壊認識点:30%
n数:10
【0122】
固着性試験の結果を、以下の表および
図13に示す。数値は、n10の平均値である。
【0123】
【0124】
<耐熱性評価>
実施例4で得た電子部品、試験例3、および比較例3で得た部品を、150℃で1000時間、または200℃で1000時間それぞれ静置した。その後、以下の条件で、断面の元素マッピングを行った。
・分析機器:走査型電子顕微鏡(FE-SEM/EDX)
株式会社日立ハイテクノロジーズ製
FE-SEM:SU8230/EDX:5060FQ
倍率:10000倍
【0125】
図14および
図15に元素マッピングした結果を示す。「初期」は耐熱性試験前の断面図である。
図14に、試験例3および比較例3の結果、具体的には、初期、150℃1000時間経過後、および200℃1000時間経過後の結果をそれぞれ示す。
図15に、実施例4に関する結果、具体的には、初期、および200℃1652時間経過後の結果をそれぞれ示す。
試験例3では、各断面図の中央付近に白く見える層が確認できた(
図14)。これは、Ni-Fe系合金の存在する箇所である。試験例3において、初期の断面図、150℃1000時間経過後の断面図、および200℃1000時間経過後の断面図の、それぞれにおける白く見える層の幅を、A1、A2およびA3とする。150℃1000時間経過後には、初期の幅A1と同等の幅を有する、白く見える層(幅A2)が観測された。また、200℃1000時間経過後でも、初期の幅A1よりも少し減少しているものの、層の状態を維持していることが確認できた。
実施例4では、各断面図の中央付近に白く見える層が確認できた(
図15)。これは、Ni-Fe系合金の存在する箇所である。実施例4において、初期の断面図、200℃1652時間経過後の断面図における白く見える層の幅を、C1およびC2とする。200℃1652時間経過後でも、初期の幅C1よりも少し減少しているものの、層の状態を維持していることが確認できた。
比較例3では、初期、および150℃1000時間経過後の断面図において、中央付近に白く見える層が確認できた(
図14)。これは、Niの存在する箇所である。比較例3において、150℃1000時間経過後には、初期の断面図の白く見える層の幅B1と同等の幅を有する、白く見える層(幅B2)が観測された。しかしながら、
図14の比較例3の200℃1000時間経過後では、白く見える層状態を確認できず、Ni層が消滅していた。
【産業上の利用可能性】
【0126】
本発明は、電子部品と基板との結合性を求める用途において使用し得る。
【符号の説明】
【0127】
1 部品本体
3a、3b 内部電極
5 誘電体部分(誘電体層)
7a、7b 外部電極
7a’、7b’ 外部電極
9a、9b はんだ接合部
10 電子部品
13a、13b 電極部
20 実装構造体
21、23 Ni-Fe系合金を有する層22と接触する層
22、22’ Ni-Fe系合金を有する層