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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】ロータ、及び、ロータの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/2706 20220101AFI20221206BHJP
   H02K 15/02 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
H02K1/2706
H02K15/02 K
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021525392
(86)(22)【出願日】2019-06-14
(86)【国際出願番号】 IB2019000632
(87)【国際公開番号】W WO2020249994
(87)【国際公開日】2020-12-17
【審査請求日】2021-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 淳
(72)【発明者】
【氏名】池見 健
(72)【発明者】
【氏名】仲田 徹
(72)【発明者】
【氏名】犬塚 健太
【審査官】池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/198382(WO,A1)
【文献】特開2018-148746(JP,A)
【文献】国際公開第2018/163319(WO,A1)
【文献】特開2019-75930(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/2706
H02K 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータシャフトを備え、磁石挿入孔に挿入された永久磁石の磁力により回転駆動する回転電機に用いられるロータであって、
前記磁石挿入孔を有する円弧状の分割コアを周方向に並設して構成されたコアプレートを、軸方向に積層することにより構成されるロータコアと、
前記ロータコアの軸方向の端部のそれぞれに設けられるエンドプレートと、を有し、
前記エンドプレートは、前記磁石挿入孔に向かって突出し、前記磁石挿入孔の内径側の内壁面を係止する突出部を備える、ロータ。
【請求項2】
請求項1に記載のロータであって、
前記突出部は、径方向において前記磁石挿入孔よりも短く、前記突出部の外径側の端部は、前記磁石挿入孔の外径側の内壁面よりも内径側に位置する、ロータ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のロータであって、
前記突出部は、前記エンドプレートの径方向の面に対して傾斜する傾斜部を備え、
前記傾斜部は、前記磁石挿入孔の内径側の内壁面を係止する、ロータ。
【請求項4】
請求項3に記載のロータであって、
前記傾斜部は、前記エンドプレートの径方向の面からの傾斜開始部が、前記磁石挿入孔の内径側の内壁面よりも内径側となるように構成される、ロータ。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載のロータであって、
前記突出部は、前記エンドプレートの一方に設けられる、ロータ。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載のロータであって、
前記突出部は、前記エンドプレートの一部であり、
前記エンドプレートは、前記分割コアより硬度の低い材料で構成される、ロータ。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載のロータであって、
前記突出部は、前記分割コアに設けられる複数の前記磁石挿入孔のうち、前記周方向の両端の前記磁石挿入孔に向かって突出するように設けられる、ロータ。
【請求項8】
磁石挿入孔を有する円弧状の分割コアを周方向に並設して構成されたコアプレートを、軸方向に積層することにより構成されるロータコアを生成し、
ストッパを備えるロータシャフトに対し、前記ストッパが設けられる側とは反対側から、第1のエンドプレートと、前記ロータコアとを外挿し、
前記ロータコアの前記磁石挿入孔に永久磁石を挿入し、
前記ロータシャフトに対し、前記ストッパが設けられる側とは反対側から、第2のエンドプレートを外挿し、
さらに、前記第2のエンドプレートにおいて、前記磁石挿入孔に向かって突出し、前記磁石挿入孔の内径側の内壁面を係止する突出部を生成する、ロータの製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載のロータの製造方法であって、
前記突出部の生成は、前記第2のエンドプレートに荷重をかけることにより行われる、ロータの製造方法。
【請求項10】
請求項8または9に記載のロータの製造方法であって、
前記突出部の生成は、前記第2のエンドプレートの外挿の後に行われる、ロータの製造方法。
【請求項11】
請求項8から10のいずれか1項に記載のロータの製造方法であって、
前記永久磁石の挿入の前段において、前記磁石挿入孔の内壁に接着剤を塗布する、ロータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータ、及び、ロータの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
回転電機(モータ)のロータコアの中には、複数の円弧状の分割コアを環状に並設することで環状のコアプレートを構成し、構成されたコアプレートを積層するように構成されるものが知られている。コアプレートを積層する際には、円弧状の分割コアを周方向の位相をずらすように配置されており、このように配置することで、積層されたコアプレートにおいて、分割コア同士の境界がずれた状態で、ロータコアが形成される。
【発明の概要】
【0003】
分割コアにより構成されるロータコアにおいては、磁石挿入孔に挿入される永久磁石によって個々の分割コアが固定される。さらに、JP2013-169131Aには、コアプレートの外周縁部に設けた溝に、エンドプレートに設けた突起部を咬合させることで、コアプレートを固定する技術が開示されている。
【0004】
しかしながら、JP2013-169131Aの技術を用いる場合には、溝が設けられる位置のばらつきによっては、コアプレートにおいて、永久磁石と係合される磁石挿入孔の位置と、エンドプレートの突起部と係合する溝との位置が相対的にずれてしまい、分割コアの固定が十分とならないおそれがある。
【0005】
本発明のロータは、ロータシャフトを備え、磁石挿入孔に挿入された永久磁石の磁力により回転駆動する回転電機に用いられるロータであって、磁石挿入孔を有する円弧状の分割コアを周方向に並設して構成されたコアプレートを、軸方向に積層することにより構成されるロータコアと、ロータコアの軸方向の端部のそれぞれに設けられるエンドプレートと、を有する。エンドプレートは、磁石挿入孔に向かって突出し、磁石挿入孔の内径側の内壁面を係止する突出部を備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、第1実施形態のロータコアの分解斜視図である。
図2図2は、モータの軸方向の断面図である。
図3図3は、図2の領域Aの拡大図である。
図4図4は、突出部の構成前のエンドプレートの一部の斜視図である。
図5図5は、分割コア及びエンドプレートの平面図である。
図6図6は、ロータの製造方法を示すフローチャートである。
図7図7は、第1変形例における、分割コア及びエンドプレートの一例の平面図である。
図8図8は、第1変形例における、分割コア及びエンドプレートの他の一例の平面図である。
図9図9は、第2実施形態における、分割コア及びエンドプレートの他の一例の平面図である。
図10図10は、第2変形例における、分割コア及びエンドプレートの他の一例の平面図である。
図11図11は、第2変形例における、分割コア及びエンドプレートの他の一例の平面図である。
図12図12は、第2変形例における、分割コア及びエンドプレートのさらに他の一例の平面図である。
図13図13は、第3実施形態における、突出部が生成される場合のエンドプレートの断面図である。
図14図14は、突出部が生成される場合のエンドプレートの断面図である。
図15図15は、突出部が生成される場合のエンドプレートの断面図である。
図16図16は、突出部の構成前のエンドプレートの一部の斜視図である。
図17図17は、突出部が生成される場合のエンドプレートの断面図である。
図18図18は、別部材の突出部を有するエンドプレートの断面図である。
図19図19は、第4実施形態における、ロータの製造方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0008】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態における回転電機(モータ)のロータを構成するロータコア100の分解斜視図である。この図においては、ロータコア100に加えて、エンドプレート30が示されている。
【0009】
分割コア10は、円環状のコアプレート20の一部を構成するものであり、より詳細には、コアプレート20の1/4(90度)をなす一部である。4つの分割コア10が周方向に並設されることにより、1つのコアプレート20が構成される。そして、複数のコアプレート20が積層されるとともに、積層されたコアプレート20の端部にエンドプレート30が設けられることで、ロータコア100となるコアプレート20の積層体が構成される。
【0010】
なお、本図においては、図中の上部の第1層のコアプレート20については、コアプレート20を構成する4つの分割コア10のうちの1つのみが示されており、他の3つの分割コア10は可読性のために省略されている。また、エンドプレート30は、下方に位置する一方のみ記載されており、上方に位置する他方は省略されている。
【0011】
コアプレート20は、積層された状態においては、コアプレート20を構成する分割コア10の境界が所定の角度(本実施形態においては「90/4」度)だけ同じ方向に回転するように(本実施形態においては、上方に向かって反時計回りに回転するように)配置される。これは、ロータコア100が、例えば、16極のモータに用いられるものであることに起因する。分割コア10は環状に並ぶ4極分を構成するとともに、コアプレート20が周方向に1極ずつ位相をずらされている。そのため、コアプレート20は「90/4(=360/16)」度ずつ位相がずれて積層されている。
【0012】
図示されるように、ロータコア100の上部においては、第1層の分割コア10の時計回り方向(図右方)の端部11に対して、第2層の分割コア10の時計回り方向の端部11は、時計周りに所定の角度(90/4度)だけずれている。コアプレート20の位相がずれるように積層されることで、端部11が上下方向に整列することを妨げることができる。
【0013】
また、分割コア10の内周面には、軸方向に延在して凹むように構成される凹部13が周方向に複数設けられている。また、分割コア10には外周近傍に複数の(本実施形態では4つの)磁石挿入孔14が上下方向に貫通形成されている。磁石挿入孔14には永久磁石40が挿入されるので、磁石挿入孔14の数がモータの極数に相当する。さらに、分割コア10には、磁石挿入孔14よりも内径側に軽量孔15が設けられている。この軽量孔15により、ロータコア100の重量を軽くすることができる。
【0014】
周方向に並設された分割コア10からなるコアプレート20が積層されることにより、ロータコア100となるコアプレート20の積層体が構成される。コアプレート20の積層体は、その内周において軸方向(積層方向)に溶接された溶接部16を有する。なお、この図においては、溶接部16は1箇所設けられたが、複数(例えば、4つ)設けられてもよい。
【0015】
また、コアプレート20の積層体であるロータコア100の下方に示される円盤状のエンドプレート30の上面には、ロータコア100に向かって突出する突出部31が設けられている。ロータが構成される場合には、分割コア10の磁石挿入孔14の内部に向かって突出部31が突出するように配置される。
【0016】
図2は、ロータコア100を用いて組み立てられるモータ300の回転軸Oを通るような軸方向の断面図である。また、図3は、図2の領域Aの拡大図である。
【0017】
図2に示されるように、ロータコア100がロータシャフト101に外挿されて固定されることで、ロータ200が構成される。そして、ロータ200が、ハウジング102に固定されたステータ103に、回転可能に内挿されることで、モータ300が構成される。
【0018】
ロータシャフト101は、ロータコア100を支持するコア支持部104と、回転するロータ200の回転軸となるシャフト105と、コア支持部104と、コア支持部104とシャフト105とを接続する連結部106により構成される。このような構成により、ロータ200はステータ103の内部において回転軸Oとなるシャフト105を中心に回転する。
【0019】
ロータシャフト101のコア支持部104には、外周における軸方向の一方(図左側)の端部に、外径側に突出するストッパ107が設けられている。コアプレート20の積層体であるロータコア100は、磁石挿入孔14に永久磁石40が挿入されるとともに、両端においてエンドプレート30により固定された状態でロータシャフト101のコア支持部104に外挿される。そして、軸方向の他方側の端部において、リテーナ108によってエンドプレート30、及び、ロータコア100は固定される。このようにして、ロータ200が構成される。
【0020】
ここで、図3を用いて、リテーナ108が設けられる側のエンドプレート30の構成について説明する。
【0021】
エンドプレート30は、コアプレート20側に向かって磁石挿入孔14の内部へと突出する突出部31を備える。突出部31は、エンドプレート30の径方向の面に対して平行な平坦部311と、平坦部311とコアプレート20の本体との間を接続し、エンドプレート30の径方向の面に対して傾斜する傾斜部312とにより構成されている。そして、突出部31は、傾斜部312において、ロータコア100の最も外側に位置するコアプレート20と接触する。
【0022】
図4は、突出部31が構成される前のエンドプレート30の一部の斜視図である。エンドプレート30には、U字状の切り込み32が設けられており、切り込み32は、周方向にLの長さの周切り込み321と、径方向にWの長さの径切り込み322とを含む。図中に示されるように、切り込み32の内側の図中にて矢印で示される位置を押圧することにより、突出部31が構成される。
【0023】
再び図3を参照すれば、径方向において、エンドプレート30の周切り込み321の位置P1は、磁石挿入孔14の外径側の内壁面の位置P2よりも、内径側となる。そして、径方向において、突出部31は、平坦部311と傾斜部312とをあわせた径方向の長さLが、磁石挿入孔14の径方向の幅Mよりも短くなるように構成されている。このように構成されることで、突出部31の寸法ばらつきがあったとしても、突出部31を磁石挿入孔14の内部に突出するように構成することができる。
【0024】
また、傾斜部312の内径側の端部であり、エンドプレート30の径方向の面からの傾斜開始部の位置P3は、磁石挿入孔14の内径側の内壁面の位置P4よりも内径側となる。このようにすることで、エンドプレート30がコアプレート20と隣接する状態において、突出部31の傾斜部312を、任意の位置においてコアプレート20と接触させることができるので、コアプレート20の固定をより確実に行うことができる。さらに、傾斜部312が、磁石挿入孔14の内径側の内壁面と当接するように構成されているので、ロータ200の回転時において分割コア10が外径側へずれるのを抑制することができる。
【0025】
なお、周切り込み321の位置P1と、磁石挿入孔14の外径側の内壁面の位置P2との差と、エンドプレート30の傾斜開始部の位置P3と、磁石挿入孔14の内径側の内壁面の位置P4との差を比較すれば、位置P1とP2との差は、位置P3とP4との差よりも、はるかに大きい。そこで、突出部31の長さLと、磁石挿入孔14の幅Mとの差を明確にするために、長さLの下端の開始位置を、位置P3に換えて、幅Mの下端の開始点である位置P4として記載している。
【0026】
また、突出部31が構成されるエンドプレート30は、コアプレート20を構成する分割コア10よりも軟らかい金属で構成されている。そのため、突出部31が傾斜部312においてコアプレート20と接触すると、傾斜部312は磁石挿入孔14の内壁面の端部が食い込むように塑性変形するので、分割コア10の固定をより確実に行うことができる。なお、突出部31がエンドプレート30とは異なる部材である場合には、突出部31だけを軟らかい金属で構成すればよい。
【0027】
なお、この図においては、突出部31の平坦部311は、その外径側において、周切り込み321を介して、エンドプレート30の本体部と隣接するように構成されたが、これに限らない。突出部31の平坦部311と、エンドプレート30の本体部とは、離間してもよい。また、突出部31の形成は、エンドプレート30をロータシャフト101に外挿する前に行っても、後に行ってもよい。
【0028】
また、本実施形態においては、図2に示されるように、リテーナ108が設けられる側のエンドプレート30には、突出部31が設けられており、ストッパ107が設けられる側のエンドプレート30には、突出部31は設けられていない。
【0029】
この理由は、軸方向において、磁石挿入孔14は永久磁石40よりも僅かに長く、一般に、その差は、概ねコアプレート20の1枚の厚さであり、コアプレート20の2枚の厚さよりも長くなることはない。そこで、一方のエンドプレート30に突出部31を設けるだけで、永久磁石40によって固定されていない軸方向の端部に位置する分割コア10を固定することができるためである。
【0030】
また他の理由としては、ロータ200の製造工程において、永久磁石40は、接着剤の塗布された磁石挿入孔14へ、リテーナ108が設けられる側から挿入される。このような製造方向に起因して、後述の理由により、リテーナ108側において分割コア10の剥離のおそれが高くなるため、リテーナ108側のエンドプレート30に突出部31が設けられている。
【0031】
図5は、リテーナ108側の端部における分割コア10の平面図である。この図には、分割コア10、及び、その分割コア10に隣接するエンドプレート30の突出部31が示されている。この図から理解できるように、エンドプレート30には、磁石挿入孔14の全てと対応するように、突出部31が設けられている。
【0032】
図6は、ロータ200の製造方法を示すフローチャートである。
【0033】
ステップS1において、エンドプレート30に、図4に示される切り込み32を設ける。
【0034】
ステップS2において、エンドプレート30において、切り込み32の内部(図4の矢印で示される位置)を押圧し、突出部31を生成する。
【0035】
ステップS3において、4つの分割コア10を周方向に並設させることによりコアプレート20を構成し、さらに、層ごとに位相をずらしながらコアプレート20を積層させ、積層されたコアプレート20の内周における凹部13を溶接することにより溶接部16を形成し、ロータコア100(コアプレート20の積層体)を構成する。
【0036】
ステップS4において、ロータシャフト101に、ストッパ107が設けられる側とは反対側(リテーナ108が設けられる側)から、一方のエンドプレート30、及び、ロータコア100を外挿する。
【0037】
ステップS5において、ロータコア100において、磁石挿入孔14の内壁面に接着剤を塗布する。
【0038】
ステップS6において、磁石挿入孔14に、リテーナ108が設けられる側から、永久磁石40を挿入する。
【0039】
ステップS7において、ロータシャフト101に、リテーナ108が設けられる側から、磁石挿入孔14内に突出部31が挿入されるように、他方のエンドプレート30を外挿する。
【0040】
ステップS8において、ロータシャフト101に、リテーナ108が設けられる側から、リテーナ108を圧入させる。このようにすることで、ロータシャフト101において、磁石挿入孔14に永久磁石40が設けられたコアプレート20の積層体であるロータコア100は、両端にエンドプレート30が設けられた状態で、リテーナ108により固定され、ロータ200が製造される。
【0041】
磁石挿入孔14の内壁面に接着剤を塗布(S5)の後に、ロータコア100における磁石挿入孔14に、リテーナ108が設けられる側から永久磁石40が挿入される。そのため、磁石挿入孔14においては、内面に塗布された接着剤は永久磁石40の挿入に伴ってストッパ107が設けられる側に移動するので、接着剤の塗布量は、リテーナ108が設けられる側の方が、ストッパ107が設けられる側よりも少ない。その結果、リテーナ108が設けられる側の方が、ストッパ107が設けられる側よりも、溶接部16によって締結されたコアプレート20の積層体において、分割コア10が剥離しやすくなる。そこで、分割コア10の剥離のおそれが高いリテーナ108側のエンドプレート30に、磁石挿入孔14の内壁を係止する突出部31が設けられことで、分割コア10の剥離が抑制される。
【0042】
第1実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
【0043】
第1実施形態のロータ200によれば、エンドプレート30に、磁石挿入孔14に向かって突出し、磁石挿入孔14の内径側の内壁面を係止する突出部31を備える。ここで、分割コア10の位相をずらしながら積層することで構成されるコアプレート20の積層体であるロータコア100は、磁石挿入孔14に挿入された永久磁石40によって固定されている。
【0044】
しかしながら、永久磁石40が磁石挿入孔14において軸方向の一端側にずれてしまうと、他端側の端部に位置するコアプレート20は永久磁石40によって固定されずに分割コア10が剥離するおそれがある。そこで、エンドプレート30に、磁石挿入孔14の内径側の内壁面を係止する突出部31を備えることにより、ロータ200が回転する場合に発生する径方向外側へと向かう遠心力に対する強度を向上させることができるので、分割コア10の剥離を抑制することができる。
【0045】
さらに、端部における分割コア10の強度を確保するために、コアプレート20に対して溶接部16を設ける場合には、溶接部16以外にもコアプレート20の積層体の軸方向端部において追加溶接部を設ける必要があった。しかしながら、本実施形態のように構成する場合には、このような追加溶接部を設ける必要がなくなり、タクトタイムの低減や溶接の検査時間等を短縮することができるので、製造コストの低減を図ることができる。
【0046】
また、磁石挿入孔14の位置はモータの駆動トルクに影響するため、磁石挿入孔14は、軽量孔15よりも高精度で設けられる。この位置精度の比較的高い磁石挿入孔14の内壁面を係止する突出部31を設けることで、分割コア10の固定を確実にすることができる。さらに、軽量孔15と比較すると磁石挿入孔14は矩形であることが多く、その内径側の内壁面は平面となる。そのため、突出部31は、平面である内壁面と係止するように直線的に構成すればよい。さらに、突出部31と係止する溝を新たに設ける必要がないので、製造コストの低減を図ることができる。
【0047】
第1実施形態のロータ200によれば、径方向において、突出部31は磁石挿入孔14よりも短く、かつ、突出部31の外径側の端部の位置(図3のP1)は、磁石挿入孔14の外径側の内壁面の位置(P2)よりも内径側に位置する。
【0048】
このように構成されることで、突出部31の外径側の端部と、磁石挿入孔14の外径側の壁面とは、径方向において離間する。その結果、突出部31と磁石挿入孔14の寸法ばらつきがあったとしても、外径側において、突出部31と磁石挿入孔14の内壁面との干渉が抑制されるので、突出部31を磁石挿入孔14内に適切に配置することができる。
【0049】
第1実施形態のロータ200によれば、突出部31は、エンドプレート30の径方向の面に対して傾斜し、磁石挿入孔14の内径側の内壁面を係止する傾斜部312を備えるので、傾斜部312は、任意の位置において磁石挿入孔14の内径側の内壁面を係止すればよい。その結果、突出部31と磁石挿入孔14の寸法ばらつきがあったとしても、内径側において、突出部31の傾斜部312を磁石挿入孔14の内壁面と当接させることができ、分割コア10を固定することができる。
【0050】
第1実施形態のロータ200によれば、エンドプレート30の径方向の面に対する傾斜部312の傾斜開始部(図3のP4)は、磁石挿入孔14の内径側の内壁面(P3)よりも内径側となる。このように構成することで、エンドプレート30がコアプレート20と隣接する状態において、突出部31の傾斜部312がコアプレート20とが接触するため、傾斜部312の傾斜開始部と磁石挿入孔14の内径側の内壁面とが離間することが抑制され、コアプレート20の固定をより確実に行うことができる。
【0051】
第1実施形態のロータ200によれば、突出部31が構成されるエンドプレート30は、コアプレート20の積層体からなるロータコア100の一方の端部と隣接するエンドプレート30に設けられる。軸方向において、磁石挿入孔14と永久磁石40との長さの差は小さく、一般にコアプレート20の2枚の厚さよりも長くない。そのため、磁石挿入孔14において永久磁石40が存在しないコアプレート20は高々1枚であるので、一方のエンドプレート30にのみ突出部31を設けることで、永久磁石40によって固定されていない分割コア10を固定することができる。
【0052】
第1実施形態のロータ200によれば、ロータ200を製造する際に、永久磁石40の挿入(S6)の前段において、磁石挿入孔14の壁面に接着剤を塗布する(S5)。そして、突出部31は、磁石挿入孔14へ永久磁石40が挿入されるリテーナ108側のエンドプレート30に設けられる。
【0053】
そのため、磁石挿入孔14においては、内壁面に塗布された接着剤は永久磁石40の挿入に伴ってストッパ107が設けられる側に移動するので、接着剤の塗布量は、リテーナ108が設けられる側の方が、ストッパ107が設けられる側よりも少ない。その結果、リテーナ108が設けられる側の方が、ストッパ107が設けられる側よりも、溶接部16によって締結されたコアプレート20の積層体において一部の分割コア10が剥離しやすくなる。そのため、分割コア10の剥離のおそれが高いリテーナ108側のエンドプレート30に、磁石挿入孔14の内壁面を係止する突出部31が設けられことで、分割コア10の剥離を抑制しやすくなる。さらに、突出部31を片方のエンドプレート30のみに設けることになるので、加工コストの低減を図ることができる。
【0054】
第1実施形態のロータ200によれば、突出部31が構成されるエンドプレート30は、コアプレート20(分割コア10)よりも硬度が低い柔らかい材料で構成されている。そのため、突出部31が傾斜部312においてコアプレート20と接触すると、傾斜部312はコアプレート20の端部が食い込むように塑性変形するので、分割コア10の固定をより確実に行うことができる。
【0055】
(第1変形例)
第1実施形態においては、突出部31は、分割コア10の磁石挿入孔14の内壁面の大部分と接触するように設けられたが、これに限らない。図7に示されるように、突出部31は、磁石挿入孔14の内壁面の一部と接触するように設けられてもよい。また、図8に示されるように、突出部31は、1つの磁石挿入孔14と対応して、2つ以上設けられてもよい。
【0056】
(第2実施形態)
第1実施形態においては、エンドプレート30の突出部31は、分割コア10に設けられる磁石挿入孔14の全てと対応するように設けられたが、これに限らない。本実施形態においては、エンドプレート30の突出部31は、分割コア10に設けられる磁石挿入孔14の一部と対応するように設ける例について説明する。
【0057】
図9は、第1実施形態の図5と対応する図であって、分割コア10、及び、エンドプレート30の突出部31を示す平面図である。この図に示されるように、エンドプレート30の突出部31は、分割コア10に設けられる4つの磁石挿入孔14のうち、端部11の近傍に存在する磁石挿入孔14と対応する2つの位置に設けられている。このように構成しても、分割コア10を突出部31により固定することができる。
【0058】
第2実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
【0059】
第2実施形態のロータ200によれば、分割コア10においては、ロータ200の回転時において、周方向において端部の方が中心部よりも大きな応力が作用する。そのため、複数の磁石挿入孔14のうち周方向端部にある磁石挿入孔14において、分割コア10を係止するようにエンドプレート30に突出部31を設けることで、分割コア10の剥離を抑制することに加えて、突出部31の数を低減することにより製造コストの削減を図ることができる。
【0060】
(第2変形例)
第2実施形態においては、突出部31は、分割コア10の4つの磁石挿入孔14のうち、周方向端部に存在する磁石挿入孔14と対応する2つの位置に設けられたが、これに限らない。突出部31は、分割コア10における任意の磁石挿入孔14と対応する位置に設けてもよい。
【0061】
例えば、図10のように、分割コア10の4つの磁石挿入孔14のうちの、端部の1つを除く3つの磁石挿入孔14と対応する位置に、突出部31が設けられてもよい。図11のように、分割コア10の4つの磁石挿入孔14のうちの、端部を含み隣接する2つの磁石挿入孔14と対応する位置に、突出部31が設けられてもよい。図12のように、端部の1つの磁石挿入孔14と対応する位置に、突出部31が設けられてもよい。
【0062】
(第3実施形態)
第1実施形態においては、図3、4に示されるように、エンドプレート30においてU字状の切り込み32を設け、その内部を押圧することにより、突出部31を構成したがこれに限らない。
【0063】
図13は、第3実施形態における、突出部31が生成される場合のエンドプレート30の断面図である。この図に示されるように、切り込み32を設けていないものとする。そして、エンドプレート30の磁石挿入孔14と対応する位置を、コアプレート20が設けられる側とは反対側から押圧することにより、エンドプレート30の一部を破断させるとともに塑性変形により突出部31を設けてもよい。このような場合には、ステップS1を省略することができるので、製造工程の削減を図ることができる。
【0064】
また、他の例としては、図14に示されるように、切り込み32を設けず、エンドプレート30の磁石挿入孔14と対応する位置を、コアプレート20が設けられる側とは反対側において、エンドプレート30の径方向の面を押圧することにより、エンドプレート30の一部を破断させることなく、塑性変形により突出部31を設けてもよい。
【0065】
図15に示されるように、切り込み32を設けず、エンドプレート30の磁石挿入孔14と対応する位置を、コアプレート20が設けられる側から斜め方向に押圧することにより、エンドプレート30の一部を破断させることなく、塑性変形により突出部31を設けてもよい。
【0066】
図16図17に示されるように、図4に示されるような切り込み32に替えて、周切り欠き331と径切り欠き332とからなる切り欠き33を設け、切り欠き33の内部を押圧することにより、突出部31を設けてもよい。
【0067】
第3実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
【0068】
第3実施形態のロータ200によれば、突出部31は、エンドプレート30に荷重をかけ、塑性変形させることにより構成される。このように構成することで、突出部31を簡単に構成することができる。また、エンドプレート30に切り込み32や切り欠き33を設けない場合には、切り込み32を設ける工程(S1)を省略することで、さらに、製造コストの低減を図ることができる。
【0069】
(第3変形例)
第3実施形態においては、エンドプレート30に荷重を加えて塑性変形をさせて突出部31を設けたが、これに限らない。例えば、突出部31をエンドプレート30とは別部材として構成してもよい。
【0070】
図18は、別部材の突出部31を有するエンドプレート30の断面図である。エンドプレート30には、開口34が設けられており、この開口34に突出部31が圧入される。このようにして、突出部31がエンドプレート30に構成される。このように構成することで、突出部31を荷重負荷により製造する場合と比較すると、設計精度の向上を図ることができる。
【0071】
(第4実施形態)
第1実施形態においては、図6に示されるように、エンドプレート30の押圧による突出部31の生成(S2)を、突出部31が設けられたリテーナ108側のエンドプレート30のロータシャフト101への取り付け(S7)よりも前に行ったがこれに限らない。第4実施形態においては、エンドプレート30の押圧による突出部31の生成(S2)を、突出部31が設けられるリテーナ108側のエンドプレート30のロータシャフト101への取り付け(S7)よりも後に行う。
【0072】
図19は、本実施形態におけるロータ200の製造方法を示すフローチャートである。この図に示されるように、エンドプレート30の押圧による突出部31の生成(S2)は、突出部31が設けられるリテーナ108側のエンドプレート30のロータシャフト101への取り付け(S7)よりも後に行われている。
【0073】
このような第4実施形態のロータ200によれば、エンドプレート30の事前の加工作業を省略できるので、部品コストの低減を図るとともに、製造方法の自由度を向上させることができる。
【0074】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。また、上記実施形態は、適宜組み合わせ可能である。
図1
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図7
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図19