(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】配線モジュール
(51)【国際特許分類】
H01M 50/569 20210101AFI20221206BHJP
H01M 50/519 20210101ALI20221206BHJP
H01M 50/249 20210101ALI20221206BHJP
H01M 50/284 20210101ALI20221206BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20221206BHJP
H01G 2/02 20060101ALI20221206BHJP
H01G 4/228 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
H01M50/569
H01M50/519
H01M50/249
H01M50/284
H01M10/48 P
H01M10/48 301
H01G2/02 101E
H01G4/228 J
(21)【出願番号】P 2021536890
(86)(22)【出願日】2020-07-10
(86)【国際出願番号】 JP2020027041
(87)【国際公開番号】W WO2021020079
(87)【国際公開日】2021-02-04
【審査請求日】2021-09-27
(31)【優先権主張番号】P 2019141130
(32)【優先日】2019-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019196048
(32)【優先日】2019-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 秀夫
(72)【発明者】
【氏名】高瀬 慎一
(72)【発明者】
【氏名】下田 洋樹
【審査官】守安 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-114464(JP,A)
【文献】特開2019-083166(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105895849(CN,A)
【文献】特開2019-029173(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/50
H01M 50/20
H01M 10/48
H01G 2/00
H01G 4/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極端子を有する複数の蓄電素子に配設される配線モジュールであって、
前記電極端子に電気的に接続されるとともに可撓性を有する少なくとも1つの第1基板と、
前記第1基板に電気的に接続されるとともに、機器に電気的に接続され、かつ可撓性を有する第2基板と、を備え、
前記第1基板には、前記電極端子にそれぞれ電気的に接続される複数の第1電圧検知線が形成されており、前記複数の第1電圧検知線は、それぞれの前記複数の第1電圧検知線が接続された前記電極端子の電位順に並んでおらず、
前記第2基板には、前記複数の第1電圧検知線にそれぞれ接続される複数の第2電圧検知線が形成されており、
前記第2基板は前記機器に接続される接続端部を有し、前記接続端部では、前記複数の第2電圧検知線が、前記複数の第1電圧検知線を介して電気的に接続された前記電極端子の電位順に並んで
おり、
前記第2基板は、前記第1基板とは別体に構成されている配線モジュール。
【請求項2】
前記第1基板には、前記第1電圧検知線とは異なるとともに、電位順に並んでいない第1導電路が形成されており、
前記第2基板には、前記第2電圧検知線とは異なるとともに、前記第1導電路に電気的に接続される第2導電路が形成されており、
前記接続端部において、前記第2導電路の配置が、前記第1基板における前記第1導電路の配置と異なっている請求項1に記載の配線モジュール。
【請求項3】
電極端子を有する複数の蓄電素子に配設される配線モジュールであって、
前記電極端子に電気的に接続されるとともに可撓性を有する少なくとも1つの第1基板と、
前記第1基板に電気的に接続されるとともに、機器に電気的に接続され、かつ可撓性を有する第2基板と、を備え、
前記第1基板には、前記電極端子にそれぞれ電気的に接続される複数の第1電圧検知線が形成されており、前記複数の第1電圧検知線は、それぞれの前記複数の第1電圧検知線が接続された前記電極端子の電位順に並んでおらず、
前記第2基板には、前記複数の第1電圧検知線にそれぞれ接続される複数の第2電圧検知線が形成されており、
前記第2基板は前記機器に接続される接続端部を有し、前記接続端部では、前記複数の第2電圧検知線が、前記複数の第1電圧検知線を介して電気的に接続された前記電極端子の電位順に並んでおり、
前記第1基板には、前記第1電圧検知線とは異なるとともに、電位順に並んでいない第1導電路が形成されており、
前記第2基板には、前記第2電圧検知線とは異なるとともに、前記第1導電路に電気的に接続される第2導電路が形成されており、
前記接続端部において、前記第2導電路の配置が、前記第1基板における前記第1導電路の配置と異なっており、
前記第1導電路には、前記蓄電素子の温度を検知する測温センサが接続されており、
前記第2導電路は、前記複数の第2電圧検知線のうち最も電位の低い第2電圧検知線に近接して配され
る配線モジュール。
【請求項4】
前記第1基板と、前記第2基板とは、半田により電気的に接続されている請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の配線モジュール。
【請求項5】
前記半田は、絶縁性の合成樹脂を含む封止部で覆われている請求項4に記載の配線モジュール。
【請求項6】
前記第1基板は表面と裏面とを有し、前記第1電圧検知線は前記第1基板の前記表面にのみ形成されており、
前記第2基板は表面と裏面とを有し、前記第2電圧検知線は前記第2基板の前記表面にのみ形成されている請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の配線モジュール。
【請求項7】
前記第1基板および前記第2基板は、絶縁性を有するプロテクタに配されており、
前記第1基板と前記第2基板とが重なる重畳領域には、前記第1基板を貫通する第1基準孔と、第2基板を貫通する第2基準孔とが整合して設けられており、
前記第1基板のうち前記重畳領域と異なる領域には、前記第1基板が延びる延び方向に細長い形状をなす長孔が設けられており、
前記プロテクタは、前記第1基準孔および第2基準孔に挿通されて前記第1基板および前記第2基板を抜け止め状態で保持する基準突起と、前記長孔に挿通されて前記第1基板を前記延び方向に移動可能に保持する保持突起と、を有する請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の配線モジュール。
【請求項8】
車両に搭載されて用いられる車両用の配線モジュールであって、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の配線モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、配線モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の蓄電素子に取り付けられる配線モジュールが知られている。配線モジュールは、可撓性基板に複数の電圧検知線が形成されている。複数の電圧検知線は、蓄電素子の電極端子にそれぞれ電気的に接続されている。複数の電圧検知線は機器に接続され、機器により蓄電素子の電圧が検知される。このような配線モジュールとして、例えば国際公開第2014/024452号に記載のものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
蓄電素子においては、幅方向の両端部に、正極および負極の電極端子が離れて形成されている場合がある。また複数の蓄電素子が直列接続されたり、並列接続されたりすることにより、電極端子の電位が蓄電素子ごとに複雑に異なる場合がある。すると、複数の蓄電素子に取り付けられた配線モジュールにおいて、各電極端子に接続された電圧検知線は、各電圧検知線が接続された電極端子の電位の順序と異なる順序で並ぶ場合がある(国際公開第2014/024452号の
図4参照)。
【0005】
一方、蓄電素子の電圧を検知する機器の内部においては、電圧を検知する回路またはマイクロコンピュータの端子は、電位順に形成されている場合がある。そこで、電位と無関係に配された電圧検知線を、電位順に配列しなおすことが考えられる。
【0006】
可撓性基板において電圧検知線を電位順に配列するために、例えばジャンパ線を用いることが考えられる。しかしこの手法によると、部品点数の増大や配線の複雑化により、配線モジュールの製造コストを増大させるおそれがある。
【0007】
本開示は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、配線モジュールの製造コストを低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、電極端子を有する複数の蓄電素子に配設される配線モジュールであって、前記電極端子に電気的に接続されるとともに可撓性を有する少なくとも1つの第1基板と、前記第1基板に電気的に接続されるとともに、機器に電気的に接続され、かつ可撓性を有する第2基板と、を備え、前記第1基板には、前記電極端子にそれぞれ電気的に接続される複数の第1電圧検知線が形成されており、前記複数の第1電圧検知線は、それぞれの前記複数の第1電圧検知線が接続された前記電極端子の電位順に並んでおらず、前記第2基板には、前記複数の第1電圧検知線にそれぞれ接続される複数の第2電圧検知線が形成されており、前記第2基板は前記機器に接続される接続端部を有し、前記接続端部では、前記複数の第2電圧検知線が、前記複数の第1電圧検知線を介して電気的に接続された前記電極端子の電位順に並んでいる。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、配線モジュールの製造コストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施形態1にかかる蓄電モジュールが搭載された車両を示す模式図である。
【
図2】
図2は、実施形態1にかかる蓄電モジュールを示す平面図である。
【
図5】
図5は、第1基板と第2基板との接続構造を示す一部拡大断面図である。
【
図6】
図6は、仮想的な技術にかかる蓄電モジュールを示す平面図である。
【
図7】
図7は、実施形態2にかかる蓄電モジュールを示す平面図である。
【
図8】
図8は、第1基準孔および第2基準孔に挿通された基準突起、および長孔に挿通された保持突起を示す一部拡大
断面図である。
【
図9】
図9は、第1基準孔および第2基準孔に挿通された基準突起、および長孔に挿通された保持突起を示す一部拡大
平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様が列挙されて説明される。
【0012】
(1)本開示は、電極端子を有する複数の蓄電素子に配設される配線モジュールであって、前記電極端子に電気的に接続されるとともに可撓性を有する少なくとも1つの第1基板と、前記第1基板に電気的に接続されるとともに、機器に電気的に接続され、かつ可撓性を有する第2基板と、を備え、前記第1基板には、前記電極端子にそれぞれ電気的に接続される複数の第1電圧検知線が形成されており、前記複数の第1電圧検知線は、それぞれの前記複数の第1電圧検知線が接続された前記電極端子の電位順に並んでおらず、前記第2基板には、前記複数の第1電圧検知線にそれぞれ接続される複数の第2電圧検知線が形成されており、前記第2基板は前記機器に接続される接続端部を有し、前記接続端部では、前記複数の第2電圧検知線が、前記複数の第1電圧検知線を介して電気的に接続された前記電極端子の電位順に並んでいる。
【0013】
上記の構成によれば、第1基板と、第2基板とを接続するという簡易な手法により、第2基板の接続端部において、複数の第2電圧検知線を、蓄電素子の電位順に並べることができる。これにより配線モジュールの製造コストを低減できる。
【0014】
(2)前記第1基板には、前記第1電圧検知線とは異なるとともに、電位順に並んでいない第1導電路が形成されており、前記第2基板には、前記第2電圧検知線とは異なるとともに、前記第1導電路に電気的に接続される第2導電路が形成されており、前記接続端部において、前記第2導電路の配置が、前記第1基板における前記第1導電路の配置と異なっていることが好ましい。
【0015】
上記の構成によれば、第1基板では電位順に並んでいなかった第1導電路の配置と、第2基板の接続端部における第2導電路の配置とを、異ならせることができる。これにより、第1基板における第1導電路の配置と、第2基板における第2導電路の配置について、設計の自由度を向上させることができる。
【0016】
(3)前記第1導電路には、前記蓄電素子の温度を検知する測温センサが接続されており、前記第2導電路は、複数の前記第2電圧検知線のうち最も電位の低い第2電圧検知線に近接して配されることが好ましい。
【0017】
測温センサに接続される第1導電路、および第2導電路の電位は、第2電圧検知線のうち最も低い電位に比較的に近い。このため、接続端部において、第2電圧検知線と第2導電路とを、ほぼ電位順に並べることができる。
【0018】
(4)前記第1基板と前記第2基板とは、半田により電気的に接続されていることが好ましい。
【0019】
第1基板と第2基板とを、半田付けという簡易な手法により電気的に接続できるので、配線モジュールの製造コストを低減できる。
【0020】
(5)前記半田は、絶縁性の合成樹脂を含む封止部で覆われていることが好ましい。
【0021】
上記の構成によれば、合成樹脂によって覆うという簡易な手法により、半田を封止できるので、配線モジュールの製造コストを低減できる。
【0022】
(6)前記第1基板は表面と裏面とを有し、前記第1電圧検知線は前記第1基板の前記表面にのみ形成されており、前記第2基板は表面と裏面とを有し、前記第2電圧検知線は前記第2基板の前記表面にのみ形成されていることが好ましい。
【0023】
第1基板の表面にのみ第1電圧検知線が形成され、第2基板の表面にのみ第2電圧検知線が形成されているので、第1基板および第2基板として片面にのみ導電路が形成された可撓性基板を用いることができる。これにより、配線モジュールの製造コストを低減できる。
【0024】
(7)前記第1基板および前記第2基板は、絶縁性を有するプロテクタに配されており、前記第1基板と前記第2基板とが重なる重畳領域には、前記第1基板を貫通する第1基準孔と、第2基板を貫通する第2基準孔とが整合して設けられており、前記第1基板のうち前記重畳領域と異なる領域には、前記第1基板が延びる延び方向に細長い形状をなす長孔が設けられており、前記プロテクタは、前記第1基準孔および第2基準孔に挿通されて前記第1基板および前記第2基板を抜け止め状態で保持する基準突起と、前記長孔に挿通されて前記第1基板を前記延び方向に移動可能に保持する保持突起と、を有することが好ましい。
【0025】
第1基板と第2基板とが、重畳領域において、第1基準孔および第2基準孔の内部に挿通された基準突起によって抜け止め状態で保持されているので、第1基板と第2基板とが相対的に移動することが抑制される。これにより、第1基板と第2基板との電気的な接続信頼性を向上させることができる。
【0026】
第1基板の延び方向に延びる長孔内に、プロテクタの保持突起が挿通されていることにより、第1基板は、プロテクタに対して延び方向に相対的に移動可能になっている。これにより、第1基板とプロテクタとの間の位置ずれに対応できる。
【0027】
(8)配線モジュールは、車両に搭載されて用いられる車両用の配線モジュールであってもよい。
【0028】
[本開示の実施形態の詳細]
以下に、本開示の実施形態が説明される。本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0029】
<実施形態1>
本開示を車両1に搭載される蓄電パック2に適用した実施形態1が
図1から
図6を参照しつつ説明される。蓄電パック2は、電気自動車、またはハイブリッド自動車等の車両1に搭載されて、車両1の駆動源として用いられる。以下の説明においては、複数の部材については一部の部材にのみ符号を付し、他の部材の符号を省略する場合がある。
【0030】
[全体構成]
図1に示されるように、車両1の中央付近には蓄電パック2が配設されている。車両1の前部にはPCU3(Power Control Unit)が配設されている。蓄電パック2とPCU3とは、ワイヤーハーネス4によって接続されている。蓄電パック2とワイヤーハーネス4とは図示しないコネクタによって接続されている。蓄電パック2は複数の蓄電素子11を備えた蓄電モジュール10を有する。
【0031】
本実施形態にかかる蓄電モジュール10は、複数の蓄電素子11と、配線モジュール12と、機器13と、を備える。以下の説明において、矢線Zで示される方向が上方とされ、矢線Yで示される方向が前方とされ、矢線Xで示される方向が右方とされる。また、複数の同一部材については一部の部材にのみ符号を付し、他の部材については符号を省略する場合がある。
【0032】
[蓄電モジュール10]
図2に示されるように、蓄電モジュール10においては、複数(本実施形態では
6つ)の蓄電素子11が前後方向に並んでいる。蓄電素子11は長方形状をしている。蓄電素子11の内部には図示しない蓄電要素が収容されている。蓄電素子11は特に限定されず、二次電池でもよく、またキャパシタでもよい。本実施形態にかかる蓄電素子11は二次電池とされる。
【0033】
蓄電素子11の上面の左右両端部には、電極端子14が形成されている。電極端子14の一方は正極で、他方は負極である。電極端子14には、接続バスバー15または出力バスバー16が電気的に接続されている。
【0034】
[接続バスバー15および出力バスバー16]
接続バスバー15および出力バスバー16は、金属板材が所定の形状にプレス加工されてなる。金属板材を構成する金属としては、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等、任意の金属を選択できる。接続バスバー15および出力バスバー16の表面には、図示しないメッキ層が形成されていてもよい。メッキ層を構成する金属としては、スズ、ニッケル、半田等、任意の金属を選択できる。
【0035】
接続バスバー15は、隣り合う電極端子14同士に跨った状態で電極端子14に接続される。出力バスバー16は、1つの電極端子14に接続されて外部機器へ電力を出力する。本実施形態における出力バスバー16は2つであって、最後列の蓄電素子11の左端部に形成された電極端子14に接続されたものと、最前列の蓄電素子11の左端部に形成された電極端子14に接続されたものとされる。本実施形態においては、5つの接続バスバー15が隣り合う電極端子14同士を接続している。これらの接続バスバー15により、複数の蓄電素子11は直列接続されている。
【0036】
出力バスバー16および接続バスバー15と、電極端子14とは、半田付け、溶接、ボルト締結等の公知の手法により、電気的かつ物理的に接続されている。
【0037】
図2において、接続バスバー15および出力バスバー16に付された0から6までの番号は、接続バスバー15および出力バスバー16が接続された複数の蓄電素子11それぞれの、電位の順を示している。0が付された出力バスバー16に接続された電極端子14の電位が最も低く、1から5へ順に高くなっており、6が付された出力バスバー16に接続された電極端子14の電位が最も高い。
【0038】
図2に示されるように、前後方向に並ぶ複数の蓄電素子11の左端部に配された出力バスバー16および接続バスバー15に接続された電極端子14の電位の序列は、0、2、4、6となっており、複数の蓄電素子11の右端部に配された接続バスバー15に接続された電極端子14の電位の序列は、1,3,5となっている。このように、電極端子14の電位は、低い順に、右と左とに分かれて、交互に並んでいる。
【0039】
[機器13]
機器13は、詳細には図示しないが、内部に電圧検知用の回路、または、マイクロコンピュータを備える。機器13には、配線モジュール12の接続端部に設けられたモジュール側コネクタ17が接続されるようになっている。
【0040】
[配線モジュール12]
図2に示されるように、複数の蓄電素子11の上面には、配線モジュール12が載置されている。本実施形態にかかる配線モジュール12は、可撓性を有する第1基板18と、可撓性を有する第2基板19と、第2基板19に接続されたモジュール側コネクタ17と、を備える。
【0041】
[第1基板18]
図3に示されるように、第1基板18は可撓性を有する絶縁性のシートの表面18Aにプリント配線技術により第1電圧検知線20および第1測温導電路21(第1導電路の一例)が形成された、フレキシブルプリント基板である。第1基板18は前後方向に細長く延びて形成されている。第1基板18の裏面18Bには、第1電圧検知線20および第1測温導電路21を含めて他の導電路は形成されていない。
【0042】
第1基板18には、複数(本実施形態では7つ)の第1電圧検知線20が形成されている。第1電圧検知線20の一方の端部は、それぞれ、接続バスバー15または出力バスバー16に接続されている。第1電圧検知線20と、接続バスバー15または出力バスバー16とは、半田付け、溶接等、任意の手法により、電気的かつ物理的に接続されている。
【0043】
図2に示されるように、電極端子14は、前後方向に並べられた複数の蓄電素子11の、左右に分かれて交互に並んでいる。このため、例えば、第1基板18の左端部寄りに形成された4つの第1電圧検知線20の中で比較すると、4つの第1電圧検知線20は後方から前方に向かうに従って電位順に並んでいるが、第1基板18全体として見ると、第1基板18の左端部寄りに形成された4つの第1電圧検知線20と、第1基板18の右端部寄りに形成された3つの第1電圧検知線20とは、複数の第1電圧検知線20のそれぞれが接続された電極端子14の電位順に並んで形成されていない。
【0044】
第1基板18の左端部寄りに形成された4つの第1電圧検知線20のうち、出力バスバー16または接続バスバー15に接続された端部と異なる端部は、第1基板18の左右方向の中央寄りの領域であって、かつ第1基板18の前後方向の中央寄りの領域に配線されて、第1電圧検知ランド22とされる。
【0045】
第1基板18の右端部寄りに形成された3つの第1電圧検知線20のうち、接続バスバー15に接続された端部と異なる端部は、第1基板18の左右方向の中央寄りの領域であって、かつ第1基板18の前後方向の中央寄りの領域に配線されて、第1電圧検知ランド22とされる。
【0046】
図3に示されるように、第1基板18の表面18Aには、プリント配線技術により、第1電圧検知線20とは異なる第1測温導電路21が形成されている。第1測温導電路21には、第1基板18の後部に配された後部サーミスタ23A(測温センサの一例)と、第1基板18の前部に配された前部サーミスタ23C(測温センサの一例)と、後部サーミスタ23Aと前部サーミスタ23Cの間の位置に配された中部サーミスタ23B(測温センサの一例)と、が並列接続されている。
【0047】
第1測温導電路21は、前部サーミスタ23Cの機器13側に設けられた前部第1測温導電路21Cと、中部サーミスタ23Bの機器13側に設けられた中部第1測温導電路21Bと、後部サーミスタ23Aの機器13側に設けられた後部第1測温導電路21Aとを含む。第1測温導電路21は、前部サーミスタ23C、中部サーミスタ23B、および後部サーミスタ23Aのうち、機器13と反対側に設けられたグランド第1測温導電路21Gをさらに有する。
【0048】
図3に示されるように、前部第1測温導電路21Cのうち前部サーミスタ23Cと反対側の端末は前部サーミスタ23Cよりも後方の位置に配線されている。中部第1測温導電路21Bのうち中部サーミスタ23Bと反対側の端末は中部サーミスタ23Bよりやや後方の位置に配線されている。後部第1測温導電路21Aのうち後部サーミスタ23Aと反対側の端末は後部サーミスタ23Aよりも前方の位置に配線されている。前部第1測温導電路21Cの端末、中部第1測温導電路21Bの端末、後部第1測温導電路21Aの端末、および、グランド第1測温導電路21Gの端末は、第1測温ランド24とされる。
【0049】
[第2基板19]
図2に示されるように、第1基板18の上には第2基板19が重ねられている。
図4に示されるように、第2基板19は可撓性を有する絶縁性のシートの表面19Aにプリント配線技術により第2電圧検知線25および第2測温導電路26(第2導電路の一例)が形成された、フレキシブルプリント基板である。第2基板19は前後方向に細長く延びて形成されている。第2電圧検知線25および第2測温導電路26は、第2基板19の表面19Aにおいて、概ね、左右方向に間隔を空けて並ぶとともに、前後方向に延びて形成されている。第2基板19の裏面19Bには、第2電圧検知線25および第2測温導電路26を含めて他の導電路は形成されていない。
【0050】
第2基板19の後端部にはモジュール側コネクタ17が接続されている。第2基板19の後端部は、モジュール側コネクタ17を介して機器13と接続される接続端部27とされる。
【0051】
第2基板19には複数(本実施形態では7つ)の第2電圧検知線25が形成されている。第2電圧検知線25は、第2基板19の右端部から左方へ、左右方向に間隔を空けて並ぶとともに、前後方向に延びて形成されている。第2電圧検知線25の後端部は、第2基板19の接続端部27に左右方向に並んで配されている。第2電圧検知線25の前端部には、第2電圧検知ランド28が形成されている。
【0052】
図5に示されるように、第1基板18の第1電圧検知ランド22の上方には、第2基板19の第2電圧検知ランド28が位置するようになっている。第2電圧検知ランド28には上下方向に貫通する貫通孔29が形成されている。第1基板18と第2基板19とが重ねられた状態で、貫通孔29からは第1基板18の第1電圧検知ランド22が露出するようになっている。
【0053】
貫通孔29内には、半田30が、溶融した後に固化した状態で充填されており、半田30の下部は第1基板18の第1電圧検知ランド22と接触している。半田30は貫通孔29の孔縁から漏出して第2電圧検知ランド28と接触している。これにより、第1基板18の第1電圧検知ランド22と第2基板19の第2電圧検知ランド28とが電気的かつ物理的に接続されている。
【0054】
図5に示されるように、半田30の上部は、絶縁性の合成樹脂からなる封止部31により覆われている。これにより、半田30が、塵埃や水分から保護されるようになっている。
【0055】
図4に示されるように、第2基板19の表面19Aには、プリント配線技術により、第2電圧検知線25とは異なる複数(本実施形態では4つ)の第2測温導電路26が形成されている。第2測温導電路26の後端部は、第2基板19の接続端部27に左右方向に並んで配されている。第2測温導電路26の前端部には、第2測温ランド32が形成されている。
【0056】
第1基板18の第1測温ランド24と、第2基板19の第2測温ランド32とは、上記した第1電圧検知ランド22と第2電圧検知ランド28との接続構造と同様にして、電気的かつ物理的に接続されているので、重複する説明を省略する。
【0057】
第2測温導電路26のうち、第2測温ランド32、半田30、および第1測温ランド24を介して、後部第1測温導電路21Aと接続されたものは後部第2測温導電路26Aとされ、中部第1測温導電路21Bと接続されたものは中部第2測温導電路26Bとされ、前部第1測温導電路21Cと接続されたものは前部第2測温導電路26Cとされ、グランド第1測温導電路21Gと接続されたものはグランド第2測温導電路26Gとされる。
【0058】
[第2基板19の配線構造]
第2基板19の接続端部27には、第2測温導電路26と、第2電圧検知線25とが、左右方向に並んで配されている。第2測温導電路26が、第2基板19の左端部から順に間隔を空けて並んで配されており、第2測温導電路26の右方に、第2電圧検知線25が配されている。
【0059】
第2基板19の接続端部27に配された第2電圧検知線25は、第2電圧検知ランド28、半田30、第1電圧検知ランド22、第1電圧検知線20、および、出力バスバー16または接続バスバー15を介して、電極端子14と電気的に接続されている。接続端部27に配された第2電圧検知線25に付された数字は、これらの第2電圧検知線25と電気的に接続された電極端子14の電位の序列を示すものである。
【0060】
第2基板19の接続端部27の右端部に配された第2電圧検知線25には数字6が付されており、7つの第2電圧検知線25のうち最も電位が高い。第2電圧検知線25の電位は、接続端部27の右端部から左方に向かうに従って、順に、6,5,4,3,2,1,0と、低くなっている。隣り合う第2電圧検知線25の間の電位差は、1つの蓄電素子11の起電力に対応する。このため、本実施形態にかかる隣り合う第2電圧検知線25の間の沿面距離は、隣り合う第2電圧検知線25の間の電位差が2つ以上の蓄電素子11の起電力に対応する場合に比べて小さくすることができる。
【0061】
第2基板19の接続端部27において、0が付された第2電圧検知線25の電位が最も低い。0が付された第2電圧検知線25の電位は、本実施形態にかかる蓄電モジュール10において基準となる電位である。0が付された第2電圧検知線25の電位は、グランド電位、すなわち0Vでもよい。本実施形態にかかる蓄電モジュール10と、他の蓄電モジュール10とが直列接続された場合には、0が付された第2電圧検知線25の電位は、他の蓄電モジュール10との相対的な電位差に基づくので、0Vよりも大きくなる場合がある。
【0062】
第2基板19の接続端部27の左端部にはグランド第2測温導電路26Gが配されており、グランド第2測温導電路26Gの右方には、左から順に、前部第2測温導電路26C、中部第2測温導電路26B、および後部第2測温導電路26Aが順に配されている。
【0063】
グランド第2測温導電路26Gの電位はグランド電位、すなわち0Vとなっている。接続端部27において、a,b,およびcの符号がそれぞれ付された後部第2測温導電路26A、中部第2測温導電路26B、および前部第2測温導電路26Cの電位は、それぞれ、後部サーミスタ23A、中部サーミスタ23B、および前部サーミスタ23Cの抵抗値に基づいて定まる。
【0064】
[本実施形態の製造工程]
続いて、本実施形態にかかる蓄電モジュール10の製造工程の一例について説明する。蓄電モジュール10の製造工程は以下の記載に限定されない。
【0065】
複数の蓄電素子11が前後方向に並べられる。蓄電素子11の電極端子14に、出力バスバー16と接続バスバー15とが接続される。
【0066】
第1基板18に前部サーミスタ23C、中部サーミスタ23B、および後部サーミスタ23Aが接続される。第1基板18の上に第2基板19が重ねられる。第1電圧検知ランド22と第2電圧検知ランド28とが半田付けされるとともに、第1測温ランド24と第2測温ランド32とが半田付けされる。半田30が封止部31により封止される。
【0067】
第2基板19の接続端部27にモジュール側コネクタ17が接続される。これにより配線モジュール12が完成する。
【0068】
前後方向に並べられた複数の蓄電素子11の上に配線モジュール12が配置される。第1基板18の第1電圧検知線20が、出力バスバー16、または接続バスバー15に接続される。モジュール側コネクタ17が機器13に接続される。これにより蓄電モジュール10が完成する。
【0069】
[本実施形態の作用効果]
本実施形態の作用効果について説明する前に、
図6に示される仮想的技術にかかる蓄電モジュール50を用いて、従来技術にかかる課題について説明する。
図6においては、特に言及しない限り、本実施形態に用いた符号と同じ符号が用いられる。
【0070】
仮想的技術にかかる配線モジュール51においては、1つの可撓性を有する基板52の表面52Aに、出力バスバー16または接続バスバー15に接続される複数の電圧検知線53と、前部サーミスタ23C、中部サーミスタ23B、および後部サーミスタ23A、に接続されるそれぞれ接続される前部測温導電路54C,中部測温導電路54B,および後部測温導電路54A、前部サーミスタ23C、中部サーミスタ23B、および後部サーミスタ23Aに並列に接続されたグランド測温導電路54Gとが形成されている。
【0071】
モジュール側コネクタ17と接続される基板52の接続端部27においては、複数の電圧検知線53と、前部測温導電路54C,中部測温導電路54B,後部測温導電路54A、およびグランド測温導電路54Gとが左右方向に間隔を空けて並んで配されている。
図6に示されるように、左右方向に並ぶ電圧検知線53は、各電圧検知線53が電気的に接続される電極端子14の電位の順には並んでいない。また、前部サーミスタ23C、中部サーミスタ23B、および後部サーミスタ23Aは蓄電素子11の温度を検知するので、基板の内側寄りの部分に配されることがある。このため、グランド測温導電路54Gの右方に5番目に電位の高い電圧検知線53が配されており、前部測温導電路54Cの左方に、数字6が付された最も電位の高い電圧検知線53が配されている。
【0072】
機器13においては、電圧検知線53の電位が検知されたり、前部測温導電路54C,中部測温導電路54B,および後部測温導電路54Aの電流または電圧から蓄電素子11の温度が検知されたりする。この場合において、機器13内に配された、図示しない検知回路またはマイクロコンピュータの端子は電位順に形成されている。このため、モジュール側コネクタ17から入力された電圧検知線53、前部測温導電路54C,中部測温導電路54B,および後部測温導電路54Aを配線しなおすことが想定される。この場合に、例えばジャンパ線といった公知の手法を採用することが考えらえる。しかしこの手法によると、部品点数の増大や配線の複雑化等により、配線モジュール12の製造コストが増大することが懸念される。
【0073】
そこで、本実施形態は、電極端子14を有する複数の蓄電素子11に配設される配線モジュール12であって、電極端子14に電気的に接続されるとともに可撓性を有する少なくとも1つの第1基板18と、第1基板18に電気的に接続されるとともに、機器13に電気的に接続され、かつ可撓性を有する第2基板19と、を備え、第1基板18には、電極端子14にそれぞれ電気的に接続される複数の第1電圧検知線20が形成されており、複数の第1電圧検知線20は、それぞれの複数の第1電圧検知線20が接続された電極端子14の電位順に並んでおらず、第2基板19には、複数の第1電圧検知線20にそれぞれ接続される複数の第2電圧検知線25が形成されており、第2基板19は機器13に接続される接続端部27を有し、接続端部27では、複数の第2電圧検知線25が、複数の第1電圧検知線20を介して電気的に接続された電極端子14の電位順に並んでいる構成とした。
【0074】
上記の構成によれば、第1基板18と、第2基板19とを接続するという簡易な手法により、第2基板19の接続端部27において、複数の第2電圧検知線25を、蓄電素子11の電位順に並べることができる。これにより配線モジュール12の製造コストを低減できる。
【0075】
また、本実施形態によれば、第1基板18には、第1電圧検知線20とは異なるとともに、電位順に並んでいない第1測温導電路21が形成されており、第2基板19には、第2電圧検知線25とは異なるとともに、第1測温導電路21に電気的に接続される第2測温導電路26が形成されており、接続端部27において、第2測温導電路26の配置が、第1基板18における第1測温導電路21の配置と異なっている。
【0076】
上記の構成によれば、第1基板18では電位順に並んでいなかった第1測温導電路21の配置と、第2基板19の接続端部27における第2測温導電路26の配置とを、異ならせることができる。これにより、第1基板18における第1測温導電路21の配置と、第2基板19における第2測温導電路26の配置について、設計の自由度を向上させることができる。
【0077】
本実施形態においては、第1基板18には、蓄電素子11の電極端子14に接続される第1電圧検知線20と、蓄電素子11の温度を検知するためのサーミスタ23および第1測温導電路21とが形成されている。サーミスタ23および第1測温導電路21は、第1基板18の左端部寄りに形成された第1電圧検知線20と、第1基板18の右端部寄りの形成された第1電圧検知線20との間に配されている。このため、第1電圧検知線20と、第1測温導電路21とをほぼ電位順に並び替えるためには相当の工夫を要する。
【0078】
上記の点につき、実施形態において、第1測温導電路21には、蓄電素子11の温度を検知するサーミスタ23が接続されており、第2測温導電路26は、複数の第2電圧検知線25のうち最も電位の低い第2電圧検知線25に近接して配される。
【0079】
サーミスタ23に第1測温導電路21を介して接続される第2測温導電路26の電位は、第2電圧検知線25のうち最も低い電位に比較的に近い。このため、接続端部27において、第2電圧検知線25と第2測温導電路26とを、ほぼ電位順に並べることができる。
【0080】
また、本実施形態によれば、第1電圧検知線20には第1電圧検知ランド22が設けられており、第2電圧検知線25には第2電圧検知ランド28が設けられており、第1電圧検知ランド22と第2電圧検知ランド28とは半田30により接続されている。
【0081】
また、本実施形態によれば、第1測温導電路21には第1測温ランド24が設けられており、第2測温導電路26には第2測温ランド32が設けられており、第1測温ランド24と第2測温ランド32とは半田30により接続されている。
【0082】
第1基板18と第2基板19とを、半田付けという簡易な手法により電気的に接続できるので、配線モジュール12の製造コストを低減できる。
【0083】
また、本実施形態によれば、半田30は、絶縁性の合成樹脂を含む封止部31で覆われている。
【0084】
上記の構成によれば、合成樹脂によって覆うという簡易な手法により、半田30を封止できるので、配線モジュール12の製造コストを低減できる。
【0085】
また、本実施形態によれば、第1基板18は表面18Aと裏面18Bとを有し、第1電圧検知線20は第1基板18の表面18Aにのみ形成されており、第2基板19は表面19Aと裏面19Bとを有し、第2電圧検知線25は第2基板19の表面19Aにのみ形成されている。
【0086】
第1基板18の表面18Aにのみ第1電圧検知線20が形成され、第2基板19の表面19Aにのみ第2電圧検知線25が形成されているので、第1基板18および第2基板19として片面にのみ導電路が形成された可撓性基板を用いることができる。これにより、配線モジュール12の製造コストを低減できる。
【0087】
本実施形態にかかる配線モジュール12は車両1に搭載されて用いられる車両用の配線モジュール12である。
【0088】
<実施形態2>
続いて、実施形態2について
図7から
図9を参照しつつ説明する。
図7に示されるように、実施形態2にかかる蓄電モジュール80の配線モジュール60は、第1基板61および第2基板62が配置されるプロテクタ63を有する。プロテクタ63は、絶縁性の合成樹脂が射出成型されてなる。本実施形態においては、プロテクタ63は、前後方向に延びる板状に形成されている。プロテクタ63の外形状は、第1基板61および第2基板62の外形状よりも大きく形成されている。
【0089】
図7に示されるように、第1基板61と第2基板62とが上下に重なる領域は、重畳領域64とされる。
図8に示されるように、この重畳領域64には、第1基板61を貫通する第1基準孔65と、第2基板62を貫通する第2基準孔66とが、それぞれ設けられている。第1基準孔65と、第2基準孔66とは、上下方向について整合した位置に配されている。
図9に示されるように、第1基準孔65および第2基準孔66は、上方から見て円形状をなしている。
【0090】
本実施形態においては、第1基準孔65および第2基準孔66は、重畳領域64のうち左右両端部寄りの位置に、それぞれ、設けられている。また、第1基準孔65および第2基準孔66は、重畳領域64のうち後端部寄りの位置に設けられている。換言すると、重畳領域64のうち、モジュール側コネクタ17に近い端部寄りの位置に設けられている。
【0091】
図8に示されるように、プロテクタ63には、第1基準孔65および第2基準孔66に対応する位置に、上方に突出する基準突起67が形成されている。基準突起67は、第1基準孔65、および第2基準孔66を上下方向に貫通している。
【0092】
図8に示されるように、基準突起67は、上方に延びる円柱形状をなす軸部68と、軸部68の上端部において拡径された頭部69と、を有する。軸部68の直径は、第1基準孔65の直径および第2基準孔66の直径と同じか、またはやや小さく設定されている。頭部69の外径は、第1基準孔65の直径および第2基準孔66の直径よりも大きく設定されている。これにより、第1基板61および第2基板62は、基準突起67の頭部69によって、上方へ抜け止め状態で保持されている。
【0093】
図7に示されるように、第1基板61には、重畳領域64と異なる領域に、前後方向(延び方向の一例)に細長い形状をなす長孔70が貫通されている。本実施形態においては、4つの長孔70が、第1基板61の4つの隅部寄りの位置に設けられている。
【0094】
図8に示されるように、プロテクタ63には、長孔70に対応する位置に、上方に突出する保持突起71が形成されている。保持突起71は、長孔70を上下方向に貫通している。
【0095】
図9に示されるように、保持突起71は、上方に延びる円柱形状をなす軸部72と、軸部72の上端部において拡径された頭部73と、を有する。軸部72の直径は、長孔70の短径(左右方向の差し渡し寸法)よりも小さく設定されている。頭部73の外径は、長孔70の短径よりも大きく設定されている。これにより、第1基板61は、保持突起71の頭部73によって、上方へ抜け止め状態で保持されている。
【0096】
保持突起71が長孔70内に貫通して、保持突起71が長孔70内を前後方向に移動することにより、プロテクタ63と、第1基板61とは、前後方向について相対的に移動可能になっている。
【0097】
上記以外の構成については、実施形態1と略同様なので、同一部材については同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0098】
本実施形態によれば、第1基板61および第2基板62は、絶縁性を有するプロテクタ63に配されており、第1基板61と第2基板62とが重なる重畳領域64には、第1基板61を貫通する第1基準孔65と、第2基板62を貫通する第2基準孔66とが整合して設けられており、第1基板61のうち重畳領域64と異なる領域には、第1基板61が延びる前後方向に細長い形状をなす長孔70が設けられており、プロテクタ63は、第1基準孔65および第2基準孔に挿通されて第1基板61および第2基板62を抜け止め状態で保持する基準突起67と、長孔70に挿通されて第1基板61を延び方向に移動可能に保持する保持突起71と、を有する。
【0099】
第1基板61と第2基板62とが、重畳領域64において、第1基準孔65および第2基準孔66の内部に挿通された基準突起67によって抜け止め状態で保持されているので、第1基板61と第2基板62とが相対的に移動することが抑制される。さらに、第1基準孔65および第2基準孔66が円形孔とされ、基準突起67の軸部68が円柱状とされているので、基準突起67の軸部68を基準として、第1基板61と、第2基板62の位置決めを行うことができる。これにより、第1基板61と第2基板62との電気的な接続信頼性を向上させることができる。
【0100】
前後方向に延びる長孔70内に、プロテクタ63の保持突起71が挿通されていることにより、第1基板61は、プロテクタ63に対して前後方向に相対的に移動可能になっている。これにより、第1基板61とプロテクタ63との間の位置ずれに対応できる。以下に詳細に説明する。
【0101】
上記のように、第1基準孔65は円形孔であり、この第1基準孔65に挿通される基準突起67の軸部68は円柱形状なので、第1基準孔65と基準突起67との間の寸法精度は高くなっている。一方、第1基準孔65および基準突起67から離れた位置では第1基板61とプロテクタ63との間に種々の原因で位置ずれが生じる。位置ずれの原因としては、例えば、第1基板61の製造公差、プロテクタ63の製造公差、第1基板61とプロテクタ63との組み付け公差、第1基板61の熱膨張率とプロテクタ63の熱膨張率との差等が挙げられる。また、プロテクタ63が前後方向に伸縮可能な構成を有する場合には、プロテクタ63の伸縮変形によっても、プロテクタ63と第1基板61との間の位置ずれが生じるおそれがある。
【0102】
上記のような場合でも、第1基板61が、プロテクタ63に対して前後方向に相対的に移動することにより、第1基板61とプロテクタ63との間の位置ずれに対応できる。
【0103】
本実施形態においては、第1基準孔65および第2基準孔66は、重畳領域64のうちモジュール側コネクタ17に近い端部寄りに形成されている。これにより、モジュール側コネクタ17に加えられた力が、第1基板61と第2基板62とが半田30により接続された部分に伝わる前に、第1基準孔65および第2基準孔66に挿通された基準突起67によって受けることができる。この結果、重畳領域64において第1基板61と第2基板62との接続部分にモジュール側コネクタ17からの力が伝達されることを抑制できるので、第1基板61と第2基板62との電気的な接続信頼性を向上させることができる。
【0104】
<他の実施形態>
(1)1つの蓄電モジュール10に含まれる蓄電素子11の個数は6個に限定されず、2個から5個、または7個以上でもよい。
【0105】
(2)蓄電素子11は並列接続されてもよい。また、直列接続された複数の蓄電素子11が並列接続されてもよいし、並列接続された複数の蓄電素子11が直列接続されてもよい。
【0106】
(3)第1基板18は2つ以上の複数でもよい。
【0107】
(4)サーミスタ23は、1つ、2つ、または4つ以上でもよい。温度センサとしてサーミスタ23以外のものを用いてもよい。
【0108】
(5)モジュール側コネクタ17は省略してもよい。この場合には、第2基板19の接続端部27が、機器13に設けられたカードエッジコネクタ内に挿入される構成としてもよい。また、第2基板19の接続端部27が機器13に配された回路基板に半田付けされてもよい。
【0109】
(6)第1基板18の裏面18Bに導電路が形成されていてもよい。また、第2基板19の裏面19Bに導電路が形成されていてもよい。
【0110】
(7)第2基板19の表面19Aの全体が、絶縁性の合成樹脂で覆われることにより半田30が封止される構成としてもよい。絶縁性の合成樹脂は、フィルム状またはシート状の合成樹脂を第2基板19の表面19Aに貼付してもよいし、流動性を有する合成樹脂を第2基板19の表面19Aに塗布した後に合成樹脂を固化させてもよい。
【0111】
(8)第1基板18および第2基板19の、双方または一方はフレキシブルフラットケーブルでもよい。
【0112】
(9)第1基板18および第2基板19には、電圧検知線、および測温導電路と異なる導電路が形成されていてもよい。
【0113】
(10)図中における方向は説明の便宜のために用いたのであって、本明細書に開示された技術を限定しない。
【0114】
(11)実施形態2にかかるプロテクタ63は板状をなす構成としたが、これに限られず、プロテクタ63は任意の形状とすることができる。
【0115】
(12)実施形態2においては、第1基準孔65および第2基準孔66は、重畳領域64のうち、モジュール側コネクタ17に近い端部寄りの位置に設けられる構成としたが、これに限られず、第1基準孔65および第2基準孔66は、重畳領域64のうち任意の位置に形成することができる。
【0116】
(13)実施形態2においては、第1基板61に2つの第1基準孔65が設けられ、第2基板62に2つの第2基準孔66が設けられる構成としたが、これに限られず、第1基板61に1つの第1基準孔65が設けられ、第2基板62に1つの第2基準孔66が設けられてもよく、また、第1基板61に3つ以上の第1基準孔65が設けられ、第2基板62に3つ以上の第2基準孔66が設けられてもよい。
【0117】
(14)実施形態2においては、第1基板61には4つの長孔70が設けられる構成としたが、これに限られず、1つ、2つ、3つ、または5つ以上の長孔70が設けられる構成としてもよい。
【0118】
(15)実施形態2にかかるプロテクタ63は、複数の基板部同士が、隣り合う基板部同士の間隔を調整可能なピッチ調整手段によって連結されていてもよい。この場合、複数の基板部同士の間隔が変動しても、プロテクタ63の保持突起71が長孔70内を前後方向に移動することにより、プロテクタ63と第1基板61との位置ずれに対応することができる。
【符号の説明】
【0119】
1: 車両
2: 蓄電パック
3: PCU
4: ワイヤーハーネス
10、50、80: 蓄電モジュール
11: 蓄電素子
12、51、60: 配線モジュール
13: 機器
14: 電極端子
15: 接続バスバー
16: 出力バスバー
17: モジュール側コネクタ
18、61: 第1基板
18A: 第1基板の表面
18B: 第1基板の裏面
19、62: 第2基板
19A: 第2基板の表面
19B: 第2基板の裏面
20: 第1電圧検知線
21: 第1測温導電路
21A: 後部第1測温導電路
21B: 中部第1測温導電路
21C: 前部第1測温導電路
21G: グランド第1測温導電路
22: 第1電圧検知ランド
23: サーミスタ
23A: 後部サーミスタ
23B: 中部サーミスタ
23C: 前部サーミスタ
24: 第1測温ランド
25: 第2電圧検知線
26: 第2測温導電路
26A: 後部第2測温導電路
26B: 中部第2測温導電路
26C: 前部第2測温導電路
26G: グランド第2測温導電路
27: 接続端部
28: 第2電圧検知ランド
29: 貫通孔
30: 半田
31: 封止部
32: 第2測温ランド
52: 基板
52A: 基板の表面
53: 電圧検知線
54A: 後部測温導電路
54B: 中部測温導電路
54C: 前部測温導電路
54G: グランド測温導電路
63:プロテクタ
64:重畳領域
65:第1基準孔
66:第2基準孔
67:基準突起
68:軸部
69:頭部
70:長孔
71:保持突起
72:軸部
73:頭部