IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社村田製作所の特許一覧

<>
  • 特許-圧電素子 図1
  • 特許-圧電素子 図2
  • 特許-圧電素子 図3
  • 特許-圧電素子 図4
  • 特許-圧電素子 図5
  • 特許-圧電素子 図6
  • 特許-圧電素子 図7
  • 特許-圧電素子 図8
  • 特許-圧電素子 図9
  • 特許-圧電素子 図10
  • 特許-圧電素子 図11
  • 特許-圧電素子 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】圧電素子
(51)【国際特許分類】
   H01L 41/047 20060101AFI20221206BHJP
   H01L 41/187 20060101ALI20221206BHJP
   H01L 41/04 20060101ALI20221206BHJP
   H01L 41/09 20060101ALI20221206BHJP
   H01L 41/053 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
H01L41/047
H01L41/187
H01L41/04
H01L41/09
H01L41/053
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021546504
(86)(22)【出願日】2020-05-28
(86)【国際出願番号】 JP2020021062
(87)【国際公開番号】W WO2021053886
(87)【国際公開日】2021-03-25
【審査請求日】2021-12-20
(31)【優先権主張番号】P 2019168109
(32)【優先日】2019-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岸本 諭卓
(72)【発明者】
【氏名】池内 伸介
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 勝之
(72)【発明者】
【氏名】黒川 文弥
【審査官】小山 満
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-118730(JP,A)
【文献】特開2018-056349(JP,A)
【文献】特開2008-026274(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 41/047
H01L 41/187
H01L 41/04
H01L 41/09
H01L 41/053
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面と、該第1面と対向する第2面と、前記第1面から前記第2面まで貫通する貫通孔とを有する、圧電体層と、
前記圧電体層の第1面側に設けられた第1電極層と、
前記圧電体層の第2面側に位置し、少なくとも一部が前記圧電体層を介して前記第1電極層と対向し、かつ、前記貫通孔に面している、第2電極層と、
前記第2電極層のうち前記貫通孔に面している接続面上に設けられた接続電極とを備え、
前記第2電極層は、シリコンを主成分として含み、
前記接続電極は金属からなり、
前記接続面の表面粗さRaは、前記第2電極層の圧電体層側の面のうち前記接続面以外の部分である主面の表面粗さRaより大きい、圧電素子。
【請求項2】
前記接続面は、前記第2面に垂直な方向において、前記主面に対して前記第2電極層の内側に位置している、請求項1に記載の圧電素子。
【請求項3】
前記主面は、シリコン酸化膜で被覆されており、
前記接続面は、シリコン酸化膜で被覆されていない、または、シリコン酸化膜で被覆されており、
前記接続面を覆うシリコン酸化膜は、前記主面を覆うシリコン酸化膜より薄い、請求項2に記載の圧電素子。
【請求項4】
前記第2面に垂直な方向における、前記接続面と前記主面との最短距離は、5nm以上である、請求項2または請求項3に記載の圧電素子。
【請求項5】
前記接続面の表面粗さRaは、30nm以上1μm未満であり、
前記主面の表面粗さRaは、1nm未満である、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の圧電素子。
【請求項6】
前記主面の表面粗さRaは、0.05nm超である、請求項5に記載の圧電素子。
【請求項7】
前記第2面に平行な方向における、前記接続面上の前記接続電極の幅の寸法は、前記第2面に垂直な方向における、前記接続面と前記主面との最短距離の寸法より大きい、請求項4に記載の圧電素子。
【請求項8】
前記第2面に平行な方向における、前記接続面上の前記接続電極の幅の寸法は、前記接続電極と前記貫通孔の内面との最大距離の寸法より大きい、請求項2から請求項7のいずれか1項に記載の圧電素子。
【請求項9】
前記第2電極層は、前記第2面に垂直な方向において、前記接続面と前記主面とを互いに接続する内側面をさらに有し、
前記接続電極は、前記内側面上にも設けられている、請求項2から請求項4のいずれか1項に記載の圧電素子。
【請求項10】
前記接続電極と前記第2電極層の前記接続面とは、オーミック接触している、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の圧電素子。
【請求項11】
前記接続電極は、前記接続面上から、前記貫通孔の内面上および前記第1面上まで連続的に設けられている、請求項1から請求項のいずれか1項に記載の圧電素子。
【請求項12】
前記第2電極層は、ドープ型の単結晶シリコン層である、請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の圧電素子。
【請求項13】
前記圧電体層は、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)またはタンタル酸リチウム(LiTaO3)を含む単結晶材料からなる、請求項1から請求項12のいずれかに記載の圧電素子。
【請求項14】
前記第2電極層と前記圧電体層との間には、中間層が設けられている、請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の圧電素子。
【請求項15】
少なくとも前記第1電極層と、前記圧電体層と、前記第2電極層とを含む積層体を支持する基部をさらに備え、
前記基部は、前記積層体の第2電極層側に位置しており、かつ、前記積層体の積層方向から見て前記積層体の基部側の面の周縁に沿うように環状に形成されている、請求項1から請求項14のいずれか1項に記載の圧電素子。
【請求項16】
前記積層体には、前記積層方向から見て前記基部の内側に位置する開口に連通する、貫通スリットが設けられている、請求項15に記載の圧電素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電素子に関する。
【背景技術】
【0002】
圧電素子の構成を開示した文献として、特開2018-041788号公報(特許文献1)、特開2009-302661号公報(特許文献2)がある。特許文献1に記載の圧電素子は、圧電薄膜と、一対の電極とを備えている。圧電薄膜は、支持基板上に積層されている。一対の電極は、圧電薄膜を挟んで配置されている。圧電薄膜の裏面側に形成された電極は配線電極に接続している。電極および配線金属は、金属薄膜で形成することができる。
【0003】
特許文献2に記載された圧電素子は、シリコン基板と、圧電体膜と、導電体膜とを備えている。圧電体膜は、圧電体、たとえば窒化アルミニウム(AlN)からなり、シリコン基板上に設けられている。導電体膜は導電材料からなり、圧電体膜上に設けられている。導電体膜は、たとえば金属または合金からなる。導電体膜は圧電体膜上および圧電体膜間に配置されており、シリコン層のn型領域および圧電体膜に接している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-041788号公報
【文献】特開2009-302661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された圧電素子においては、配線電極および圧電薄膜の裏面側に形成された電極の各々が金属材料から構成されているため、配線電極と電極との密着性が確保されていた。しかしながら、特許文献2に記載された圧電素子のように、一方の電極層がシリコンを主成分として含んでいる場合においては、上記電極層と金属電極との密着性が十分でなく、上記電極層と金属電極との接合界面において電気抵抗が高くなっていた。
【0006】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、シリコンを主成分として含む電極層と、金属からなる接続電極との接合部において、電気抵抗が高くなることを抑制できる、圧電素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に基づく圧電素子は、圧電体層と、第1電極層と、第2電極層と、接続電極とを備えている。圧電体層は、第1面と、第2面と、貫通孔とを有している。第2面は、第1面と対向している。貫通孔は、第1面から第2面まで貫通する。第1電極層は、圧電体層の第1面側に設けられている。第2電極層は、圧電体層の第2面側に位置している。第2電極層は、少なくとも一部が圧電体層を介して第1電極層と対向している。第2電極層は、貫通孔に面している。第2電極層は、シリコンを主成分として含んでいる。接続電極は、第2電極層のうち貫通孔に面している接続面上に設けられている。接続電極は金属からなる。接続面の表面粗さRaは、第2電極層の圧電体層側の面のうち接続面以外の部分である主面の表面粗さRaより大きい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、シリコンを主成分として含む第2電極層と、金属からなる接続電極との接合部において、電気抵抗が高くなることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態1に係る圧電素子を示す概略平面図である。
図2図1の圧電素子をII-II線矢印方向から見た断面図である。
図3】本発明の実施形態1の第1変形例に係る圧電素子の構成を示す断面図である。
図4】本発明の実施形態1の第2変形例に係る圧電素子の構成を示す断面図である。
図5】本発明の実施形態1に係る圧電素子の製造方法において、圧電体基板を準備した断面図である。
図6】本発明の実施形態1に係る圧電素子の製造方法において、第2電極層を含む積層基板を準備した断面図である。
図7】本発明の実施形態1に係る圧電素子の製造方法において、第2電極層を含む積層基板に、圧電体基板を接合させた状態を示す断面図である。
図8】本発明の実施形態1に係る圧電素子の製造方法において、圧電体基板を削って圧電体層を形成した状態を示す断面図である。
図9】本発明の実施形態1に係る圧電素子の製造方法において、第1電極層を設けた状態を示す断面図である。
図10】本発明の実施形態1に係る圧電素子の製造方法において、貫通孔を設けた状態を示す断面図である。
図11】本発明の実施形態1に係る圧電素子の製造方法において、接続電極を設けた状態を示す断面図である。
図12】本発明の実施形態2に係る圧電素子の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の各実施形態に係る圧電素子について図面を参照して説明する。以下の実施形態の説明においては、図中の同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は繰り返さない。
【0011】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る圧電素子を示す概略平面図である。図2は、図1の圧電素子をII-II線矢印方向から見た断面図である。
【0012】
図1および図2に示すように、本発明の実施形態1に係る圧電素子100は、圧電体層110と、第1電極層120と、第2電極層130と、接続電極140と、外側接続電極145と、基部150とを備えている。
【0013】
図2に示すように、圧電体層110は、第1面111と、第2面112と、貫通孔113とを有している。第2面112は、第1面111と対向している。貫通孔113は、第1面111から第2面112まで貫通している。
【0014】
本実施形態において、圧電体層110は、ニオブ酸アルカリ系の化合物またはタンタル酸アルカリ系の化合物で構成されている。本実施形態において、上記ニオブ酸アルカリ系の化合物または上記タンタル酸アルカリ系の化合物に含まれるアルカリ金属は、リチウム、ルビジウムおよびセシウムの少なくとも1つからなる。本実施形態において、圧電体層110は、具体的には、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)またはタンタル酸リチウム(LiTaO3)を含む単結晶材料からなるが、圧電体層110は単結晶材料で構成されていなくてもよい。
【0015】
第1電極層120は、圧電体層110の第1面111側に設けられている。第1電極層120と圧電体層110との間には、密着層が位置していてもよい。第1電極層120は、たとえばAlまたはPtなどの金属で構成されている。上記密着層は、たとえばTiまたはNiCrで構成されている。
【0016】
第2電極層130は、圧電体層110の第2面112側に位置している。第2電極層130は、少なくとも一部が圧電体層110を介して第1電極層120と対向している。本実施形態において、第2電極層130は、圧電体層110と、後述する第2電極層130の自然酸化膜層とのみを介して第1電極層120と対向している。
【0017】
第2電極層130は、貫通孔113に面している。第2電極層130のうち、接続面131が、貫通孔113に面している。また、第2電極層130は、圧電体層110の第2面112に面している。第2電極層130のうち、主面132が、圧電体層110に面している。接続面131は、第2面112に垂直な方向において、主面132に対して第2電極層130の内側に位置している。第2面112に垂直な方向における、接続面131と主面132との最短距離は、5nm以上である。第2面112に垂直な方向における、接続面131と主面132との最短距離は、たとえば100nm以下であればよい。なお、接続面131と主面132との最短距離とは、接続面131上の点のうち第2面112に垂直な方向において最も主面132側に位置する点と、主面132上の点のうち第2面112に垂直な方向において最も接続面131側に位置する点との間の、第2面112に垂直な方向における距離をいう。第2電極層130は、第2面112に垂直な方向において、接続面131と主面132とを互いに接続する内側面133をさらに有している。
【0018】
本実施形態において、第2電極層130は、シリコンを主成分として含んでいる。具体的には、第2電極層130は、ドープ型の単結晶シリコン層である。第2電極層130において、主面132は、シリコン酸化膜135で被覆されている。シリコン酸化膜135の膜厚は、およそ2nm以下である。また、本実施形態においては、接続面131はシリコン酸化膜135で被覆されていない。なお、本明細書において、「シリコンを主成分として含む」とは、「シリコンを50atm%以上含有する」ことを意味する。
【0019】
なお、接続面131は、第2電極層130をに含まれるシリコンが第2電極層130の表面で自然に酸化することで形成されたシリコン酸化膜で被覆されていてもよい。図3は、本発明の実施形態1の第1変形例に係る圧電素子の構成を示す断面図である。図3に示すように、本発明の実施形態1の第1変形例に係る圧電素子100aにおいては、接続面131は、シリコン酸化膜135aで被覆されている。ただし、本変形例においては、接続面131を覆うシリコン酸化膜135aは、主面132を覆うシリコン酸化膜135より薄い。本変形例においては、第2面112に垂直な方向において、接続面131と主面132との最短距離は、5nm未満である。
【0020】
図2に示すように、本発明の実施形態1に係る圧電素子100においては、接続面131の表面粗さRaは、第2電極層130の圧電体層110側の面のうち接続面131以外の部分である主面132の表面粗さRaより大きい。具体的には、接続面131の表面粗さRaは、30nm以上1μm未満である。主面132の表面粗さRaは、0.05nm超であり、かつ、1nm未満である。
【0021】
本実施形態において、接続面131の表面粗さRaおよび主面132の表面粗さRaは、圧電素子100を主面132に対して垂直に切断したときの断面を透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)を用いて直接観察することにより算出する。本明細書において、表面粗さRaとは、粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さlだけを抜き取り、この抜き取り部分の平均線の方向にX軸を、縦倍率の方向にY軸を取り、粗さ曲線をy=f(x)で表したときに下記式(1)によって求められる値をマイクロメートルで表したものを言う。すなわち、本明細書における表面粗さRaの定義は、JIS B 0601:2013に従う。本実施形態において、上記表面粗さRaの算出における基準長さlは1μmである。
【0022】
【数1】
【0023】
図2に示すように、接続電極140は、第2電極層130のうち貫通孔113に面している接続面131上に設けられている。接続電極140は、内側面133上にも設けられている。そして、接続電極140は、接続面131上から、貫通孔113の内面114上および第1面111上まで連続的に設けられている。このため、第1面111に垂直な方向から見たときに、接続電極140の外縁は貫通孔113より外側に位置している。また、第2面112に平行な方向における、接続面131上の接続電極140の幅の寸法は、第2面112に垂直な方向における、接続面131と主面132との最短距離の寸法より大きい。なお、第2面112に平行な方向における、接続面131上の接続電極140の幅の寸法は、圧電体層110において互いに対向する内面114同士の間隔が最も小さくなるように圧電素子100を第2面112に垂直に切断したときの断面を、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて直接観察して、接続電極140のうち接続面131と接触している部分の長さを測定することにより求める。
【0024】
なお、接続電極は、貫通孔113の内面114と離れて位置してもよい。図4は、本発明の実施形態1の第2変形例に係る圧電素子の構成を示す断面図である。図4に示すように、本変形例において、接続電極140bは、貫通孔113の内面114から離れて位置している。第2面112に平行な方向における、接続面131上の接続電極140bの幅の寸法は、接続電極140bと貫通孔113の内面114との最大距離の寸法より大きい。
【0025】
図2に示すように、接続電極140は金属からなる。接続電極140は、たとえばAuで構成されている。接続電極140と第2電極層130との間には、密着層が形成されていてもよい。当該密着層は、たとえばTiまたはNiCrで構成でされている。また、接続電極140と第2電極層130の接続面131とは、オーミック接触している。
【0026】
図2に示すように、本実施形態においては、積層体101は、少なくとも第1電極層120と、圧電体層110と、第2電極層130とを含んでいる。積層体101は、接続電極140と外側接続電極145とをさらに含んでいる。基部150は、この積層体101を支持している。
【0027】
図2に示すように、基部150は、積層体101の第2電極層130側に位置している。図1に示すように、基部150は、積層体101の積層方向から見て積層体101の基部150側の面の周縁に沿うように環状に形成されている。
【0028】
図2に示すように、本実施形態において、基部150は、酸化シリコン層151と、基部本体152とを含んでいる。酸化シリコン層151は、第2電極層130に接している。基部本体152は、酸化シリコン層151の第2電極層130側とは反対側において、酸化シリコン層151と接している。本実施形態において、基部本体152を構成する材料は特に限定されないが、基部本体152は単結晶シリコンからなる。
【0029】
図2に示すように、開口103は、積層体101の積層方向から見て基部150の内側に位置している。図1に示すように、開口103の端縁は、上記積層方向から見て矩形状の外形を有し、上記積層方向に沿って延びている。また、開口103の外形の形状は特に限定されない。
【0030】
図1および図2に示すように、本実施形態においては、積層体101に、メンブレン部104が形成されている。メンブレン部104は、積層方向から見て、開口103と重なっており、基部150と重なっていない。積層体101には、積層方向から見て基部150の内側に位置する開口103に連通する、貫通スリット105が設けられている。より具体的には、メンブレン部104に貫通スリット105が設けられている。
【0031】
本実施形態に係る圧電素子100は、図2示す外側接続電極145と、接続電極140との間に電圧を印加することにより、図2に示す第1電極層120と第2電極層130との間に電圧が印加される。これにより、第1電極層120と第2電極層130との間に位置する圧電体層110が歪むように駆動する。これにより、メンブレン部104が、積層体101の積層方向に大きく屈曲振動することができる。
【0032】
以下、本発明の実施形態1に係る圧電素子の製造方法について説明する。なお、以下の図5から図11に示す各状態は、図2と同じ断面視にて図示している。
【0033】
図5は、本発明の実施形態1に係る圧電素子の製造方法において、圧電体基板を準備した断面図である。図5に示すように、圧電体基板110Sは、第1主面111Sと、第1主面111Sの反対側に位置する第2主面112Sとを有している。
【0034】
図6は、本発明の実施形態1に係る圧電素子の製造方法において、第2電極層を含む積層基板を準備した断面図である。図6に示すように、第2電極層130および基部150含む積層基板102Sを準備する。本実施形態において、積層基板102SはSOI(Silicon on Insulator)基板である。
【0035】
図7は、本発明の実施形態1に係る圧電素子の製造方法において、第2電極層を含む積層基板に、圧電体基板を接合させた状態を示す断面図である。図7に示すように、表面活性化接合または原子拡散接合により、積層基板102Sに圧電体基板110Sを接合させる。具体的には、第2電極層130に圧電体基板110Sを接合させる。より具体的には、第2電極層130上のシリコン酸化膜135上に圧電体基板110Sを接合させる。
【0036】
図8は、本発明の実施形態1に係る圧電素子の製造方法において、圧電体基板を削って圧電体層を形成した状態を示す断面図である。図8に示すように、グラインドおよびCMP(Chemical Mechanical Polishing)で圧電体基板110Sを研磨することにより、圧電体層110を形成する。
【0037】
なお、圧電体基板110Sを削る際には、圧電体基板110Sの第1主面111S側に、予めイオンを注入することにより、剥離層を形成していてもよい。圧電体基板110Sを第2電極層130に接合させる前に当該剥離層を形成しておくことで、接合後に当該剥離層を剥離して圧電体層110を形成することができる。上記剥離層をグラインドおよびCMPなどにより削ることで、圧電体層110を形成してもよい。
【0038】
図9は、本発明の実施形態1に係る圧電素子の製造方法において、第1電極層を設けた状態を示す断面図である。図9に示すように、フォトリソグラフィ法、または、蒸着リフトオフ法などを用いて、所望のパターンを有するように、第1電極層120を圧電体層110の第1面111上に形成する。
【0039】
図10は、本発明の実施形態1に係る圧電素子の製造方法において、貫通孔を設けた状態を示す断面図である。図10に示すように、たとえばRIE(Reactive Ion Etching)などのエッチングにより、圧電体層110に貫通孔113を設ける。このとき、貫通孔113の形成とともに、第2電極層130のうち貫通孔113に面している部分の一部を削り取る。これにより、第2電極層130のシリコン酸化膜135の全部が除去された接続面131が露出するように形成される。上記エッチングは、接続面131が、所望の表面粗さRaを有するように行う。なお、本発明の実施形態1の第1変形例においては、第2電極層130のシリコン酸化膜135の一部を除去すればよい。
【0040】
図11は、本発明の実施形態1に係る圧電素子の製造方法において、接続電極を設けた状態を示す断面図である。図11に示すように、フォトリソグラフィ法、または、蒸着リフトオフ法などを用いて、接続電極140および外側接続電極145を形成する。
【0041】
次に、RIEにより、積層体101に貫通スリット105を形成する。さらに、深掘り反応性イオンエッチング(Deep RIE)により、基部150の第2電極層130側とは反対側から、基部本体152を削る。最後に、酸化シリコン層151をRIEにより削ることで、開口103を形成する。
【0042】
上記の工程により、図1および図2に示すような本発明の実施形態1に係る圧電素子100が製造される。
【0043】
上記のように、本発明の実施形態1に係る圧電素子100においては、圧電体層110は、第1面111と、第2面112と、貫通孔113とを有している。貫通孔113は、第1面111から第2面112まで貫通する。第2電極層130は、圧電体層110の第2面112側に位置している。第2電極層130は、貫通孔113に面している。第2電極層130は、シリコンを主成分として含んでいる。接続電極140は、第2電極層130のうち貫通孔113に面している接続面131上に設けられている。接続電極140は金属からなる。接続面131の表面粗さRaは、第2電極層130の圧電体層110側の面のうち接続面131以外の部分である主面132の表面粗さRaより大きい。
【0044】
これにより、接続面131において、シリコンを主成分として含む第2電極層130と、金属からなる接続電極140との密着性が向上する。ひいては、第2電極層130と接続電極140との接合部において電気抵抗が高くなることを抑制できる。
【0045】
本実施形態において、接続面131は、第2面112に垂直な方向において、主面132に対して第2電極層130の内側に位置している。
【0046】
接続面131を上記のように位置させるために第2電極層130の圧電体層110側に位置する面を加工することで、接続面131においては、第2電極層130の自然酸化膜層が除去される。これにより、接続面131において第2電極層130と接続電極140との接触抵抗を低減することができる。
【0047】
本発明の実施形態1に係る圧電素子100および本発明の実施形態1の第1変形例に係る圧電素子100aにおいては、主面132は、シリコン酸化膜135で被覆されている。接続面131は、シリコン酸化膜で被覆されていない、または、シリコン酸化膜135aで被覆されている。接続面131を覆うシリコン酸化膜135aは、主面132を覆うシリコン酸化膜135より薄い。
【0048】
これにより、第2電極層130と接続電極140との接触抵抗を低減することができる。
【0049】
本発明の実施形態1に係る圧電素子100において、第2面112に垂直な方向における、接続面131と主面132との最短距離は、5nm以上である。
【0050】
上記のように、接続面131と主面132とが互いに十分に離れるように第2電極層130の主面132を加工することで、接続面131において第2電極層130の自然酸化膜層が十分に除去される。これにより、接続面131における第2電極層130と接続電極140との接触抵抗を十分に低減することができる。
【0051】
本実施形態において、接続面131の表面粗さRaは、30nm以上1μm未満である。主面132の表面粗さRaは、1nm未満である。
【0052】
接続面131の表面粗さRaが20nm以上1μm未満であることにより、第2電極層130と接続電極140との密着性がより向上し、第2電極層130と接続電極140との接触抵抗を低減できる。また、主面132の表面粗さRaが1nm未満であることにより、圧電体層110と、第2電極層130との接合強度が向上する。
【0053】
本実施形態において、主面132の表面粗さRaは、0.05nm超である。これにより、圧電体層110と、第2電極層130との接合強度が向上できる程度に、主面の表面粗さRaを設定することが容易になる。
【0054】
本実施形態において、第2面112に平行な方向における、接続面131上の接続電極140の幅の寸法は、第2面112に垂直な方向における、接続面131と主面132との最短距離の寸法より大きい。
【0055】
これにより、上記のような表面粗さRaを有する接続面131において、接続電極140と第2電極層130との接触面積を大きくすることができ、ひいては、接続電極140と第2電極層130との接触抵抗を小さくすることができる。
【0056】
本実施形態において、第2電極層130は、第2面112に垂直な方向において、接続面131と主面132とを互いに接続する内側面133をさらに有している。接続電極140は、内側面133上にも設けられている。
【0057】
これにより、内側面133においても接続電極140と第2電極層130とが互いに接合するため、第2電極層130と接続電極140との密着性がさらに向上する。
【0058】
本実施形態において、接続電極140と第2電極層130の接続面131とは、オーミック接触している。
【0059】
これにより、接続電極140と第2電極層130との間にショットキー障壁がないため、接続電極140と第2電極層130との接触抵抗が小さくなり、圧電素子100の電気機械変換効率が向上する。
【0060】
本実施形態において、接続電極140は、接続面131上から、貫通孔113の内面114上および第1面111上まで連続的に設けられている。
【0061】
これにより、第1面111上において、第1電極層120と共に第2電極層130の電極を取り出すことができる。ひいては、接続電極140に接続される図示しない外部電極を効率よく引き回すことができる。
【0062】
本実施形態において、第2電極層130は、ドープ型の単結晶シリコン層である。第2電極層130が単結晶であることにより、圧電体層110との接合強度が向上し、圧電素子100の電気機械変換効率が向上する。また、非ドープ単結晶シリコン層で構成される場合と比較して第2電極層130の電気抵抗を低くすることができる。
【0063】
本実施形態において、圧電体層110は、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)またはタンタル酸リチウム(LiTaO3)を含む単結晶材料からなる。これにより、圧電体層110と第2電極層130との接合強度が向上し、圧電素子100の電気機械変換効率が向上する。
【0064】
本実施形態において、圧電素子100は、少なくとも第1電極層120と、圧電体層110と、第2電極層130とを含む積層体101を支持する基部150をさらに備えている。基部150は、積層体101の第2電極層130側に位置しており、かつ、積層体101の積層方向から見て積層体101の基部150側の面の周縁に沿うように環状に形成されている。
【0065】
これにより、圧電体層110の駆動をメンブレン部104の屈曲振動に変換して、圧電素子100のデバイス特性を向上させることができる。
【0066】
本実施形態において、積層体101には、積層方向から見て基部150の内側に位置する開口103に連通する、貫通スリット105が設けられている。
【0067】
これにより、メンブレン部104の屈曲振動がより大きくなり、圧電素子100のデバイス特性を向上させることができる。
【0068】
また、本発明の実施形態1の第2変形例に係る圧電素子100bにおいては、第2面112に平行な方向における、接続面131上の接続電極140bの幅の寸法は、接続電極140と貫通孔113の内面114との最大距離の寸法より大きい。
【0069】
これにより、接続面131上における接続電極140と第2電極層130との接触面積が大きくなるため、接続電極140と第2電極層130との接触抵抗を小さくすることができる。
【0070】
(実施形態2)
以下、本発明の実施形態2に係る圧電素子について説明する。本発明の実施形態2に係る圧電素子は、中間層が設けられている点が主に、本発明の実施形態1に係る圧電素子と異なる。よって、本発明の実施形態1に係る圧電素子100と同様である構成については説明を繰り返さない。
【0071】
図12は、本発明の実施形態2に係る圧電素子の構成を示す断面図である。図12においては、図2と同じ断面視にて図示している。
【0072】
本発明の実施形態2に係る圧電素子200においては、第2電極層130と圧電体層110との間には、中間層260が設けられている。これにより、第2電極層130と圧電体層110との接合強度が向上する。中間層260は、金属層であってもよいし、SiO2などの誘電体層であってもよい。本実施形態においては、圧電体層110に設けられた貫通孔113と連続するように中間層260に貫通孔が設けられる。
【0073】
上述した各実施形態においては、上部電極層と下部電極層との間に電圧を印加したときの、メンブレン部の挙動によって、接続電極と第2電極層との接触状態を評価することができる。
【0074】
上述した実施形態の説明において、組み合わせ可能な構成を相互に組み合わせてもよい。
【0075】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0076】
100,100a,100b,200 圧電素子、101 積層体、102S 積層基板、103 開口、104 メンブレン部、105 貫通スリット、110 圧電体層、110S 圧電体基板、111 第1面、111S 第1主面、112 第2面、112S 第2主面、113 貫通孔、114 内面、120 第1電極層、130 第2電極層、131 接続面、132 主面、133 内側面、135,135a シリコン酸化膜、140,140b 接続電極、145 外側接続電極、150 基部、151 酸化シリコン層、152 基部本体、260 中間層。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12