(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】変形量検知装置
(51)【国際特許分類】
G01B 17/00 20060101AFI20221206BHJP
【FI】
G01B17/00 B
(21)【出願番号】P 2022541489
(86)(22)【出願日】2021-07-29
(86)【国際出願番号】 JP2021028100
(87)【国際公開番号】W WO2022030356
(87)【国際公開日】2022-02-10
【審査請求日】2022-08-04
(31)【優先権主張番号】P 2020133888
(32)【優先日】2020-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安藤 正道
(72)【発明者】
【氏名】森 健一
【審査官】信田 昌男
(56)【参考文献】
【文献】特許第5658061(JP,B2)
【文献】特開2003-256135(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極及び第1変形部を含んでいる入力部と、
第2電極及び第2変形部を含んでいる出力部と、
前記第1変形部から伝達部に弾性波を伝達でき、かつ、前記伝達部から前記第2変形部に弾性波を伝達できる伝達部であって、可撓性を有していることにより、基準状態から変形できる伝達部と、
検知部と、
を備えており、
前記第1電極に入力信号が入力され、
前記第1変形部は、前記入力信号により変形することにより、弾性波を発生し、
前記伝達部は、前記第1変形部から前記第2変形部に前記弾性波を伝達し、
前記第2変形部は、前記弾性波により変形することにより、前記第2電極に出力信号を発生し、
前記検知部は、前記出力信号
が有する電気パラメータに基づいて、前記伝達部の前記基準状態からの変形量を検知
し、
前記出力信号が有する前記電気パラメータは、前記出力信号の振幅、前記出力信号の周波数、又は、前記出力信号のQ値である、
変形量検知装置。
【請求項2】
第1電極及び第1変形部を含んでいる入力部と、
第2電極及び第2変形部を含んでいる出力部と、
前記第1変形部から伝達部に弾性波を伝達でき、かつ、前記伝達部から前記第2変形部に弾性波を伝達できる伝達部であって、可撓性を有していることにより、基準状態から変形できる伝達部と、
検知部と、
を備えており、
前記第1電極に入力信号が入力され、
前記第1変形部は、前記入力信号により変形することにより、弾性波を発生し、
前記伝達部は、前記第1変形部から前記第2変形部に前記弾性波を伝達し、
前記第2変形部は、前記弾性波により変形することにより、前記第2電極に出力信号を発生し、
前記検知部は、前記出力信号に基づいて、前記伝達部の前記基準状態からの変形量を検知
し、
前記第1変形部の材料及び前記第2変形部の材料は、ポリ乳酸である、
変形量検知装置。
【請求項3】
前記入力信号の電圧は周期的に変化する、
請求項1
又は請求項2に記載の変形量検知装置。
【請求項4】
前記検知部は、前記入力信号が入力されてから前記出力信号が出力されてくるまでの時間に基づいて、前記伝達部の前記基準状態からの変形量を検知する、
請求項1
ないし請求項
3のいずれかに記載の変形量検知装置。
【請求項5】
前記第1変形部の材料及び前記第2変形部の材料は、圧電材料である、
請求項
1に記載の変形量検知装置。
【請求項6】
前記第1変形部の材料及び前記第2変形部の材料は、ポリフッ化ビニリデンである、
請求項
5に記載の変形量検知装置。
【請求項7】
前記第1変形部、前記第2変形部及び前記伝達部は、1枚のフィルムである、
請求項1ないし請求項
6のいずれかに記載の変形量検知装置。
【請求項8】
第1電極及び第1変形部を含んでいる入力部と、
前記第1変形部から伝達部に弾性波を伝達でき、かつ、前記伝達部から前記第1変形部に前記弾性波の反射波を伝達できる伝達部であって、可撓性を有していることにより、基準状態から変形できる伝達部と、
検知部と、
を備えており、
前記第1電極に入力信号が入力され、
前記第1変形部は、前記入力信号により変形することにより、弾性波を発生し、
前記伝達部は、前記第1変形部からの前記弾性波を前記第1変形部に前記反射波として伝達し、
前記第1変形部は、前記反射波により変形することにより、前記第1電極に出力信号を発生し、
前記検知部は、前記出力信号
が有する電気パラメータに基づいて、前記伝達部の前記基準状態からの変形量を検知
し、
前記出力信号が有する前記電気パラメータは、前記出力信号の振幅、前記出力信号の周波数、又は、前記出力信号のQ値である、
変形量検知装置。
【請求項9】
第1電極及び第1変形部を含んでいる入力部と、
前記第1変形部から伝達部に弾性波を伝達でき、かつ、前記伝達部から前記第1変形部に前記弾性波の反射波を伝達できる伝達部であって、可撓性を有していることにより、基準状態から変形できる伝達部と、
検知部と、
を備えており、
前記第1電極に入力信号が入力され、
前記第1変形部は、前記入力信号により変形することにより、弾性波を発生し、
前記伝達部は、前記第1変形部からの前記弾性波を前記第1変形部に前記反射波として伝達し、
前記第1変形部は、前記反射波により変形することにより、前記第1電極に出力信号を発生し、
前記検知部は、前記出力信号に基づいて、前記伝達部の前記基準状態からの変形量を検知
し、
前記第1変形部の材料は、ポリ乳酸である、
変形量検知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変形量検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の変形量検知装置に関する発明としては、例えば、特許文献1に記載のロータリーエンコーダや特許文献2に記載のジャイロセンサ等が知られている。特許文献1に記載のロータリーエンコーダ及び特許文献2に記載のジャイロセンサは、例えば、第1画面と第2画面とを折り畳むことができる折り畳み式のスマートフォンに適用可能である。すなわち、特許文献1に記載のロータリーエンコーダ及び特許文献2に記載のジャイロセンサにより、第1画面と第2画面との間の角度を検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6578499号
【文献】特開2018-80958号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、第1画面と第2画面のような2つの部材の位置関係を検出することができる検知装置が求められている。
【0005】
そこで、本発明の目的は、2つの部材の位置関係を検知できる新たな変形量検知装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態に係る変形量検知装置は、
第1電極及び第1変形部を含んでいる入力部と、
第2電極及び第2変形部を含んでいる出力部と、
前記第1変形部から伝達部に弾性波を伝達でき、かつ、前記伝達部から前記第2変形部に弾性波を伝達できる伝達部であって、可撓性を有していることにより、基準状態から変形できる伝達部と、
検知部と、
を備えており、
前記第1電極に入力信号が入力され、
前記第1変形部は、前記入力信号により変形することにより、弾性波を発生し、
前記伝達部は、前記第1変形部から前記第2変形部に前記弾性波を伝達し、
前記第2変形部は、前記弾性波により変形することにより、前記第2電極に出力信号を発生し、
前記検知部は、前記出力信号に基づいて、前記伝達部の前記基準状態からの変形量を検知する。
【0007】
本発明の一形態に係る変形量検知装置は、
第1電極及び第1変形部を含んでいる入力部と、
前記第1変形部から伝達部に弾性波を伝達でき、かつ、前記伝達部から前記第1変形部に前記弾性波の反射波を伝達できる伝達部であって、可撓性を有していることにより、基準状態から変形できる伝達部と、
検知部と、
を備えており、
前記第1電極に入力信号が入力され、
前記第1変形部は、前記入力信号により変形することにより、弾性波を発生し、
前記伝達部は、前記第1変形部からの前記弾性波を前記第1変形部に前記反射波として伝達し、
前記第1変形部は、前記反射波により変形することにより、前記第1電極に出力信号を発生し、
前記検知部は、前記出力信号に基づいて、前記伝達部の前記基準状態からの変形量を検知する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、2つの部材の位置関係を検知できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、変形量検知装置1の外観斜視図である。
【
図2】
図2は、変形量検知装置1の外観斜視図である。
【
図3】
図3は、第1コンピュータシミュレーションに用いたモデルを示した図である。
【
図4】
図4は、シミュレーション結果を示したグラフである。
【
図5】
図5は、シミュレーション結果を示したグラフである。
【
図6】
図6は、シミュレーション結果を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の一実施形態に係る変形量検知装置1について図面を参照しながら説明する。
図1及び
図2は、変形量検知装置1の外観斜視図である。
図1では、変形量検知装置1の伝達部16が平坦形状を有している。
図1のような伝達部16の状態を基準状態と呼ぶ。
図2では、基準状態から伝達部16が下方向に曲げられている。
【0011】
以下では、方向を以下の様に定義する。基準状態である伝達部16の法線方向を上下方向と定義する。上下方向に見て、変形量検知装置1の長辺が延びる方向を左右方向と定義する。上下方向に見て、変形量検知装置1の短辺が延びる方向を前後方向と定義する。上下方向、左右方向及び前後方向は、互いに直交している。なお、本明細書の方向は、変形量検知装置1の使用時の方向と一致していなくてもよい。
【0012】
変形量検知装置1は、伝達部16の基準状態からの変形量を検知する。本実施形態では、変形量検知装置1は、
図2に示すように、伝達部16が曲げられたときの角度θを検知する。角度θは、例えば、後述する入力部12の上主面と出力部14の上主面とが形成する角度である。このような変形量検知装置1は、例えば、第1画面と第2画面とを折り畳むことができる折り畳み式のスマートフォンに適用可能である。すなわち、変形量検知装置1は、第1画面と第2画面とが形成する角度θを検出することができる。また、変形量検知装置1は、ゲーム用のコントローラや、ロボットアームの関節等にも適用可能である。変形量検知装置1がゲーム用のコントローラに適用された場合、変形量検知装置1は、ユーザによるコントローラの操作量を検知する。また、変形量検知装置1がロボットアームの関節に適用された場合、変形量検知装置1は、ロボットアームの関節の曲げ量を検知する。
【0013】
変形量検知装置1は、
図1に示すように、入力部12、出力部14、伝達部16、信号入力部17及び検知部18を備えている。入力部12は、第1電極120、第3電極122及び第1変形部124を含んでいる。第1電極120及び第3電極122は、上下方向に見て、長方形状を有する導体層である。第1電極120の外縁及び第3電極122の外縁は、上下方向に見て、互いに一致している。第1電極120及び第3電極122は、例えば、ITO(酸化インジウムスズ)、ZnO(酸化亜鉛)等の無機電極、PeDOTや導電ポリアニリン等の有機電極、蒸着、メッキによる金属皮膜、銀ペーストによる印刷電極膜である。
【0014】
第1変形部124は、第1電極120と第3電極122との間に設けられている。より詳細には、第1変形部124は、上下方向に見て、長方形状を有する層である。第1変形部124は、上主面及び下主面を有している。第1電極120は、第1変形部124の上主面に設けられている。第3電極122は、第1変形部124の下主面に設けられている。第1変形部124の材料については後述する。
【0015】
出力部14は、第2電極140、第4電極142及び第2変形部144を含んでいる。第2電極140及び第4電極142は、上下方向に見て、長方形状を有する導体層である。第2電極140の外縁及び第4電極142の外縁は、上下方向に見て、互いに一致している。第2電極140及び第4電極142は、例えば、ITO(酸化インジウムスズ)、ZnO(酸化亜鉛)等の無機電極、PeDOTや導電ポリアニリン等の有機電極、蒸着、メッキによる金属皮膜、銀ペーストによる印刷電極膜である。
【0016】
第2変形部144は、第2電極140と第4電極142との間に設けられている。より詳細には、第2変形部144は、上下方向に見て、長方形状を有する層である。第2変形部144は、上主面及び下主面を有している。第2電極140は、第2変形部144の上主面に設けられている。第4電極142は、第2変形部144の下主面に設けられている。第2変形部144の材料については後述する。
【0017】
伝達部16は、第1変形部124から伝達部16に弾性波を伝達でき、かつ、伝達部16から第2変形部144に弾性波を伝達できる。そこで、伝達部16は、第1変形部124及び第2変形部144に接続されている。本実施形態では、第1変形部124、第2変形部144及び伝達部16は、1枚のフィルム150である。フィルム150の材料(第1変形部124の材料、第2変形部144の材料及び伝達部16の材料)は、例えば、圧電材料である。以下に、フィルム150についてより詳細に説明する。
【0018】
フィルム150は、フィルム150が左右方向に伸張されたときに発生する出力電圧の極性が、フィルム150が前後方向に伸張されたときに発生する出力電圧の極性と逆極性となる特性を有している。具体的には、フィルム150の材料は、キラル高分子である。キラル高分子とは、例えば、ポリ乳酸(PLA)、特にL型ポリ乳酸(PLLA)である。キラル高分子からなるPLLAは、主鎖が螺旋構造を有する。PLLAは、一軸延伸されて分子が配向する圧電性を有する。フィルム150は、d14の圧電定数を有している。フィルム150の一軸延伸方向(配向方向)は、変形量検知装置1の構成材料、変形量検知の対象により設定され、出力信号の電気的パラメータの変形量に対する応答性が良くなるように設定されるのが好ましい。
【0019】
伝達部16は、可撓性を有していることにより、基準状態から変形できる。基準状態の伝達部16は、
図1のように、平坦形状を有している。そして、伝達部16は、上方向又は下方向に曲げられることができる。また、伝達部16は、左右方向に延びる直線周りに捩じられることもできる。
【0020】
信号入力部17は、電圧が周期的に変化する入力信号(すなわち、音声信号)を生成する。この入力信号は、設計時において設計者により設定された振幅及び周波数を有している。入力信号の周波数は、例えば、可聴域から超音波である。信号入力部17は、入力信号を第1電極120及び第3電極122に印加する。これにより、第1電極120と第3電極122との間に電圧が周期的に変化する入力信号が入力される。
【0021】
第1変形部124は、入力信号により変形することにより、弾性波を発生する。より詳細には、入力信号は、電圧が周期的に変化する信号である。これにより、第1変形部124は、左右方向の伸張及び圧縮を繰り返す。その結果、第1変形部124は、弾性波を発生する。伝達部16は、第1変形部124から第2変形部144に弾性波を伝達する。
【0022】
第2変形部144は、弾性波により変形することにより、第2電極140と第4電極142との間に出力信号を発生する。より詳細には、第2変形部144は、弾性波により左右方向の伸張及び圧縮を繰り返す。これにより、第2変形部144は、電圧が周期的に変化する出力信号を発生する。
【0023】
入力信号により変形量検知装置1の外形に応じて励振が発生する場合がある。そこで、第2電極140及び第4電極142の左右方向の大きさは、励振波長付近に設定される。これにより、出力信号の振幅を増大させることができる。出力信号の振幅が増大すると、S/Nが改善し、後述する角度θの検知の精度が高くなる。
【0024】
検知部18は、出力信号に基づいて、伝達部16の基準状態からの変形量を検知する。本実施形態では、検知部18は、出力信号の振幅に基づいて、伝達部16が曲げられたときの角度θ(
図2参照)を検知する。検知部18は、例えば、CPU(Central Processing Unit)である。以下に詳細に説明する。
【0025】
図2のように曲げられた状態における伝達部16から第2変形部144に出力される特定の周波数の弾性波の振幅は、基準状態における伝達部16から第2変形部144に出力される特定の周波数の弾性波の振幅と異なる。この理由について、ミュージックソーを例に挙げて説明する。ミュージックソーでは、演者は、ミュージックソーの曲げ量を変化させることにより、ミュージックソーが発生する音の音程を変化させることができる。これは、ミュージックソーが曲げられることにより、ミュージックソーにおいて振動する領域の長さが変化し、ミュージックソーの共振周波数が変化するからである。すなわち、ミュージックソーの曲げ量が変化すると、ミュージックソーが発生する音の周波数がシフトする。換言すれば、特定の周波数の音の振幅に着目すると、ミュージックソーが曲げられると特定の周波数の音の振幅が変動する。すなわち、特定の周波数の音の振幅とミュージックソーの曲げ量との間には相関関係が成立する。本願発明者は、この相関関係に着目した。そして、本願発明者は、基準状態における伝達部16から第2変形部144に出力される特定の周波数の弾性波の振幅が、
図2のように曲げられた状態における伝達部16から第2変形部144に出力される特定の周波数の弾性波の振幅と異なることに思い至った。そして、本願発明者は、これら2つの振幅を比較すれば、伝達部16の基準状態からの変形量を求めることができると考えた。
【0026】
そこで、本願発明者は、以下に説明する有限要素法による第1コンピュータシミュレーションを行った。
図3は、第1コンピュータシミュレーションに用いたモデルを示した図である。第1コンピュータシミュレーションに用いたモデルは、第3電極122及び第4電極142も備えている。ただし、第3電極122及び第4電極142の図示を省略した。また、第1コンピュータシミュレーションでは、基材160をフィルム150に貼り合わせた。図示を省略するが、第1電極120及び第2電極140は、フィルム150と基材160との間に位置している。第1コンピュータシミュレーションの条件は以下のとおりである。
【0027】
フィルム150の材料:圧電性L型ポリ乳酸
フィルム150の厚み:50μm
フィルム150の分子の配向方向:左右方向に対して22.5°
基材160の材料:PET
基材160の厚み:100μm
入力信号の周波数:100kHz
入力信号の振幅:5V
本願発明者は、上記の条件下で、100kHzにおける出力信号の振幅と角度θとの関係を調べた。
図4は、シミュレーション結果を示したグラフである。
図4では、出力信号の振幅と角度θとの関係を示した。
図4の横軸は角度を示す。
図4の縦軸は振幅を示す。
【0028】
図4に示すように、角度θが大きくなるにしたがって、100kHzにおける出力信号の振幅が減少することが分かる。そこで、検知部18は、出力信号の振幅に基づいて、角度θを検知することができる。具体的には、検知部18は、
図4のグラフに相当するテーブルを記憶している。テーブルは、出力信号の振幅と角度θとの関係を示している。検知部18は、出力信号を取得すると、テーブルを参照して、角度θを特定する。これにより、変形量検知装置1は、例えば、入力部12に接続された部材と出力部14に接続された部材との位置関係を検知することができる。
【0029】
変形量検知装置1では、信号入力部17は、伝達部16の基準状態からの変形量を検知したいときにだけ入力信号を入力部12に印加すればよい。従って、変形量検知装置1では、消費電力の低減が図られる。
【0030】
また、出力信号の値は、絶対量であり、相対値ではない。そのため、変形量検知装置1の繰り返しの使用によって出力信号にドリフトが発生することが抑制される。
【0031】
また、入力部12、出力部14及び伝達部16により構成されるセンサは、フィルム150が用いられるので、薄型である。
【0032】
フィルム150の材料がポリ乳酸であるので、環境負荷が少ない。
【0033】
なお、検知部18は、伝達部16の基準状態からの変形量として、角度θを検知している。しかしながら、伝達部16の基準状態からの変形量は、角度θに限らない。伝達部16の基準状態からの変形量は、例えば、伝達部16の捩じり角であってもよい。また、伝達部16の基準状態からの変形量は、伝達部16の左右方向の伸張量であってもよい。また、伝達部16の基準状態からの変形量は、伝達部16の前後方向の伸張量であってもよい。
【0034】
なお、検知部18は、出力信号の振幅に基づいて、伝達部16の基準状態からの変形量を検知している。しかしながら、検知部18は、出力信号の振幅以外の出力信号が有する電気的パラメータに基づいて、伝達部16の基準状態からの変形量を検知してもよい。出力信号が有する電気的パラメータは、例えば、出力信号の周波数である。伝達部16の基準状態からの変形量が変化すると、伝達部16の共振周波数が変化する。この場合、出力信号の周波数が変化する。従って、検知部18は、出力信号の周波数に基づいて、伝達部16の基準状態からの変形量を検知することができる。検知部18は、例えば、出力信号をスイープすることにより、出力信号の内の最も強度の大きい周波数を特定すればよい。以下に説明する。
【0035】
本願発明者は、以下に説明する有限要素法による第2コンピュータシミュレーションを行った。第2コンピュータシミュレーションでは、第1コンピュータシミュレーションに用いたモデルと同じモデルを用いた。ただし、第2コンピュータシミュレーションでは、入力信号の周波数をスイープさせた。また、第2コンピュータシミュレーションでは、フィルム150の配向方向を45度とした。第2シミュレーションの条件は以下の通りである。
【0036】
フィルム150の材料:圧電性L型ポリ乳酸
フィルム150の厚み:50μm
フィルム150の分子の配向方向:左右方向に対して45°
基材160の材料:PET
基材160の厚み:100μm
入力信号の周波数:13kHz~20kHz
入力信号の振幅:5V
本願発明者は、上記の条件下で、複数の角度θの変形量検知装置1において、入力信号をスイープさせた。そして、本願発明者は、角度θ毎に出力信号の振幅を計測した。
図5及び
図6は、シミュレーション結果を示したグラフである。
図5は、入力信号の周波数と出力信号の振幅との関係を示したグラフである。
図5の横軸は、周波数を示す。
図5の縦軸は、振幅を示す。
図6は、角度θと共振周波数との関係を示したグラフである。
図6の横軸は角度θを示す。
図6の縦軸は、共振周波数を示す。
【0037】
図5に示すように、角度θが大きくなるにしたがって、共振周波数が変化することが分かる。検知部18は、出力信号の共振周波数に基づいて、角度θを検知することができる。具体的には、検知部18は、
図6のグラフに相当するテーブルを記憶している。テーブルは、出力信号の共振周波数と角度θとの関係を示している。検知部18は、出力信号の共振周波数を取得すると、テーブルを参照して、角度θを特定する。これにより、変形量検知装置1は、例えば、入力部12に接続された部材と出力部14に接続された部材との位置関係を検知することができる。
【0038】
また、出力信号が有する電気的パラメータは、例えば、出力信号のQ値である。出力信号のQ値は、共振周波数における出力信号の振幅を半値幅で除した値である。伝達部16の基準状態からの変形量が変化すると、出力信号の共振周波数が変化する。この場合、出力信号のQ値が変化する。従って、検知部18は、出力信号のQ値に基づいて、伝達部16の基準状態からの変形量を検知することができる。なお、検知部18は、出力信号の複数の電気パラメータに基づいて、伝達部16の基準状態からの変形量を検知してもよい。
【0039】
ところで、伝達部16の基準状態からの変形量が変化すると、弾性波の伝達速度が変化する。そこで、検知部18は、入力信号が入力されてから出力信号が出力されてくるまでの時間に基づいて、伝達部16の基準状態からの変形量を検知してもよい。
【0040】
なお、フィルム150の材料(第1変形部124の材料、第2変形部144の材料及び伝達部16の材料)は、ポリフッ化ビニリデンであってもよい。また、フィルム150は、非圧電フィルムに無機系の圧電材料(例えば、窒化アルミ)をスパッタリングして作製されてもよい。
【0041】
なお、第1変形部124、第2変形部144及び伝達部16は、1枚のフィルム150でなくてもよい。伝達部16は、弾性波を伝達できればよく、電気信号により変形できなくてもよい。この場合、伝達部16は、ステンレス、アルミ系合金、銅系合金などの薄板金属でもよい。或いはPETフィルムや、ポリカーボネート(PC)、アクリル(PMMA)からなるフィルムを使用しても良い。この場合、伝達部16は圧電性を有していないので、第1変形部124及び第2変形部144は、PLLAやポリフッ化ビニリデン、或いはPZTなどのセラミック系圧電材料からなる、弾性波の入出力部材を更に備える。例えば、伝達部16がPETフィルムである場合、伝達部16の上主面の左端部に入力部12が貼り付けられる。伝達部16の上主面の右端部に出力部14が貼り付けられる。このような変形量検知装置1においても、入力部12で発生した弾性波は、伝達部16を介して、出力部14へと伝達される。また、伝達部16が、フレキシブルディスプレイの基材であってもよい。この場合、入力部12及び出力部14は、フレキシブルディスプレイの基材に貼り付けられる。
【0042】
なお、「伝達部16は、第1変形部124から伝達部16に弾性波を伝達でき、伝達部16から第2変形部144に弾性波を伝達できる」とは、伝達部16、第1変形部124及び第2変形部144が1枚のシートにより作製されている場合に限らない。例えば、伝達部16は、第1変形部124及び第2変形部144に接触していてもよい。また、伝達部16は、別の部材を介して第1変形部124に固定され、別の部材を介して第2変形部144に固定されていてもよい。この場合、伝達部16は、第1変形部124及び第2変形部144に直接に接触していない。
【0043】
なお、入力部12、出力部14及び伝達部16により構成されるセンサの形状は、上下方向に見て、長方形状に限らない。入力部12、出力部14及び伝達部16により構成されるセンサの形状は、上下方向に見て、正方形、ひし形、円形、楕円形等であってもよい。
【0044】
なお、基準状態の伝達部16は、平坦形状を有している。しかしながら、基準状態の伝達部16は、上方向又は下方向に曲げられていてもよいし、捩じられていてもよい。
【0045】
なお、変形量検知装置1において、伝達部16に保護フィルムが貼り付けられてもよい。保護フィルムのサイズや材料を調整することにより、伝達部16の基準状態からの変形量と出力信号との関係を調整することが可能である。また、曲げられた状態の伝達部16の内周面に保護フィルムが貼り付けられてもよい。この保護フィルムは、PETやポリカーボネート等の硬い樹脂により作製されていることが好ましい。また、曲げられた状態の伝達部16の外周面に保護フィルムが貼り付けられてもよい。この保護フィルムは、ウレタン等の軟らかい樹脂により作製されていることが好ましい。これにより、伝達部16が曲げられたときに、伝達部16に伸張応力が働くようになる。
【0046】
なお、変形量検知装置1は、以下に説明するバッテリの膨らみの検知に用いてもよい。バッテリは、数か月から数年という長い時間をかけて膨らむように変形することがある。一般的なセンサは、このような長い時間にわたる変形を検知することが難しい。そこで、変形量検知装置1の伝達部16をバッテリの表面に貼り付ければよい。そして、信号入力部17は、定期的に入力信号を入力部12に印加すればよい。
【0047】
なお、変形量検知装置1において、入力信号の入力タイミングと出力信号の出力タイミングとを異ならせる場合(すなわち、時分割する場合)には、第2電極140及び第4電極142は、必須の構成ではない。第1電極120及び第3電極122を有する入力部12を出力部としても用いることができる。すなわち、入力部12から入力された弾性波が伝達部16を伝わり、端部に達した弾性波が反射して戻ってくるのを、改めて入力部12で捉える。そこで、伝達部16は、第1変形部124から伝達部16に弾性波を伝達でき、かつ、伝達部16から第1変形部124に弾性波の反射波を伝達できる。具体的には、伝達部16は、第1変形部124からの弾性波を第1変形部124に反射波として伝達する。第1変形部124は、反射波により変形することにより、第1電極120に出力信号を発生する。このように、入力部12は出力部として動作する。
【0048】
なお、変形量検知装置1において、フィルム150の一軸延伸方向(配向方向)は、左右方向のそれぞれに対して45度以外の角度を形成していてもよい。フィルム150の一軸延伸方向(配向方向)は、左右方向と平行であってもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 :変形量検知装置
12 :入力部
14 :出力部
16 :伝達部
17 :信号入力部
18 :検知部
120 :第1電極
122 :第3電極
124 :第1変形部
140 :第2電極
142 :第4電極
144 :第2変形部
150 :フィルム