(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】機械学習を用いた画像検査方法および画像検査装置
(51)【国際特許分類】
G06T 7/00 20170101AFI20221206BHJP
G01N 21/88 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
G06T7/00 350C
G06T7/00 610C
G01N21/88 J
(21)【出願番号】P 2018213622
(22)【出願日】2018-11-14
【審査請求日】2021-10-14
(73)【特許権者】
【識別番号】518405429
【氏名又は名称】株式会社ハイシンク創研
(74)【代理人】
【識別番号】100104695
【氏名又は名称】島田 明宏
(74)【代理人】
【識別番号】100121348
【氏名又は名称】川原 健児
(74)【代理人】
【識別番号】100114247
【氏名又は名称】奥田 邦廣
(74)【代理人】
【識別番号】100148459
【氏名又は名称】河本 悟
(72)【発明者】
【氏名】趙 翹楚
(72)【発明者】
【氏名】生駒 孝夫
(72)【発明者】
【氏名】中村 眞
【審査官】新井 則和
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-272971(JP,A)
【文献】特開2018-026679(JP,A)
【文献】特開平07-152862(JP,A)
【文献】Phat Nguyen Kieu et al.,Applying Multi-CNNs model for detecting abnormal problem on chest x-ray images,2018 10th International Conference on Knowledge and Systems Engineering (KSE),2018年11月03日,https://ieeexplore.ieee.org/document/8573404
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 7/00-7/90
G01N 21/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械学習を用いた画像検査方法であって、
教師画像と被検査画像を2値化する2値化ステップと、
2値化後の前記教師画像から第1方向に長い複数の第1短冊画像を抽出し、2値化後の前記被検査画像から前記第1方向に長い複数の第2短冊画像を抽出する短冊画像抽出ステップと、
前記第1短冊画像を前記第1方向に並ぶ複数の第1部分画像に分割し、前記第1部分画像を並び順に従いリカレントニューラルネットワークに与えて、前記リカレントニューラルネットワークに学習させる学習ステップと、
前記第2短冊画像を前記第1方向に並ぶ複数の第2部分画像に分割し、前記第2部分画像を並び順に従い前記リカレントニューラルネットワークに与えて、前記第2短冊画像の良否を判別する判別ステップと、
前記第2短冊画像の良否の判別結果に基づき、前記被検査画像の良否を判別する画像判別ステップとを備えた、画像検査方法。
【請求項2】
前記リカレントニューラルネットワークは、第1および第2リカレントニューラルネットワークを含み、
前記学習ステップは、前記第1部分画像を異なる並び順に従い前記第1および第2リカレントニューラルネットワークに与えて、前記第1および第2リカレントニューラルネットワークに学習させ、
前記判別ステップは、前記第2部分画像を異なる並び順に従い前記第1および第2リカレントニューラルネットワークに与えて、前記第1および第2リカレントニューラルネットワークの出力に基づき、前記第2短冊画像の良否を判別することを特徴とする、請求項1に記載の画像検査方法。
【請求項3】
前記短冊画像抽出ステップは、2値化後の前記教師画像から第2方向に長い複数の第3短冊画像を抽出し、2値化後の前記被検査画像から前記第2方向に長い複数の第4短冊画像を抽出し、
前記学習ステップは、前記第3短冊画像を前記第2方向に並ぶ複数の第3部分画像に分割し、前記第3部分画像を並び順に従い前記リカレントニューラルネットワークに与えて、前記リカレントニューラルネットワークに学習させ、
前記判別ステップは、前記第4短冊画像を前記第2方向に並ぶ複数の第4部分画像に分割し、前記第4部分画像を並び順に従い前記リカレントニューラルネットワークに与えて、前記第4短冊画像の良否を判別し、
前記画像判別ステップは、前記第2および第4短冊画像の良否の判別結果に基づき、前記被検査画像の良否を判別することを特徴とする、請求項1に記載の画像検査方法。
【請求項4】
前記リカレントニューラルネットワークは、第1~第4リカレントニューラルネットワークを含み、
前記学習ステップは、前記第1部分画像を異なる並び順に従い前記第1および第2リカレントニューラルネットワークに与え、前記第3部分画像を異なる並び順に従い前記第3および第4リカレントニューラルネットワークに与えて、前記第1~第4リカレントニューラルネットワークに学習させ、
前記判別ステップは、前記第2部分画像を異なる並び順に従い前記第1および第2リカレントニューラルネットワークに与えて、前記第1および第2リカレントニューラルネットワークの出力に基づき、前記第2短冊画像の良否を判別し、前記第4部分画像を異なる並び順に従い前記第3および第4リカレントニューラルネットワークに与えて、前記第3および第4リカレントニューラルネットワークの出力に基づき、前記第4短冊画像の良否を判別することを特徴とする、請求項3に記載の画像検査方法。
【請求項5】
前記2値化ステップは、対象画像に含まれる各画素について、短冊画像の短手方向に並ぶ所定範囲内の画素の画素値の統計量を閾値と比較することにより、前記対象画像を2値化することを特徴とする、請求項1~4のいずれかに記載の画像検査方法。
【請求項6】
前記短冊画像抽出ステップは、短手方向に重複する短冊画像を抽出することを特徴とする、請求項1~5のいずれかに記載の画像検査方法。
【請求項7】
前記短冊画像抽出ステップは、互いに重複しない短冊画像を抽出することを特徴とする、請求項1~5のいずれかに記載の画像検査方法。
【請求項8】
前記教師画像と前記被検査画像をグレースケール変換するステップをさらに備え、
前記2値化ステップは、グレースケール変換後の前記教師画像とグレースケール変換後の前記被検査画像を2値化することを特徴とする、請求項1~7のいずれかに記載の画像検査方法。
【請求項9】
前記教師画像と前記被検査画像は、2次元状に繰り返し構造を有する画像であることを特徴とする、請求項1~8のいずれかに記載の画像検査方法。
【請求項10】
前記教師画像と前記被検査画像は、サーマルヘッドを用いて市松模様を印刷した結果を撮影した画像であることを特徴とする、請求項1、2、5、および、6のいずれかに記載の画像検査方法。
【請求項11】
前記教師画像と前記被検査画像は、市松模様を表示する液晶パネルの表示画面を撮影した画像であることを特徴とする、請求項1~6、および、8のいずれかに記載の画像検査方法。
【請求項12】
前記教師画像と前記被検査画像は、多連充填機の各ノズルからの単位時間あたりの充填量の測定結果を示す画像であることを特徴とする、請求項1、2、5、および、7のいずれかに記載の画像検査方法。
【請求項13】
機械学習を用いた画像検査装置であって、
教師画像と被検査画像を2値化する2値化部と、
2値化後の前記教師画像から第1方向に長い複数の第1短冊画像を抽出し、2値化後の前記被検査画像から前記第1方向に長い複数の第2短冊画像を抽出する短冊画像抽出部と、
前記第1短冊画像が前記第1方向に並ぶ複数の第1部分画像に分割され、前記第1部分画像が並び順に従い与えられたときに学習を行い、前記第2短冊画像が前記第1方向に並ぶ複数の第2部分画像に分割され、前記第2部分画像が並び順に従い与えられたときに前記第2短冊画像の良否を判別するリカレントニューラルネットワークと、
前記第2短冊画像の良否の判別結果に基づき、前記被検査画像の良否を判別する画像判別部とを備えた、画像検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械学習を用いた情報処理に関し、特に、機械学習を用いた画像検査方法および画像検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、検査員が製品の外観や出力を目視で確認することにより、製品の欠陥の有無を判別する目視検査が広く行われている。近年では、目視検査を代替または補完する方法として、製品の外観や出力などを撮影した画像(以下、被検査画像という)の良否を判別することにより、製品の欠陥の有無を判別する画像検査も行われている。
【0003】
目視検査は、比較的導入しやすい検査方法である。しかし、目視検査には検査員が必要とされ、目視検査の精度を高くするためには熟練した検査員が必要とされる。このため、目視検査には検査員の分だけコストが高くなるという問題がある。また、目視検査には検査結果が検査員の主観的な判断に依存するという問題もある。
【0004】
画像検査は、目視検査において検査員が行う処理をコンピュータなどを用いて行うものである。従来の典型的な画像検査では、テンプレートマッチングが行われる。テンプレートマッチングでは、欠陥のない製品や欠陥のある製品の外観や出力などを撮影した画像がテンプレート画像として使用される。テンプレートマッチングによれば、被検査画像とテンプレート画像を比較することにより、被検査画像の良否を判別し、製品の欠陥の有無を判別することができる。
【0005】
近年では、機械学習を用いた画像検査も考案されている。例えば、特許文献1には、コンボリューショナル・ニューラルネットワークを用いた画像検査装置について記載されている。非特許文献1には、バリエーショナル・オートエンコーダと呼ばれるニューラルネットワークを用いて画像の特徴を分析し、分析結果を用いて画像の良否を判別する方法について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【非特許文献】
【0007】
【文献】T. Kumarage 、他4名、“Anomaly Detection in Industrial Software Systems Using Variational Autoencoders ”、Proceedings of the 7th International Conference on Pattern Recognition Applications and Methods 、2018年、pp.440-447
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
テンプレートマッチングを行う従来の画像検査には、検査精度が低いという問題がある。その原因として、被検査画像における欠陥の発生態様は無数にあるにもかかわらず、テンプレートマッチングでは被検査画像を限られた数のテンプレート画像とだけ比較することが挙げられる。
【0009】
また、微小かつ局所的で許容できる欠陥(以下、微小欠陥という)を製品が有する場合、従来の画像検査では製品に欠陥はないと判別される。しかし、微小欠陥が製造装置の不良に起因する場合には、画像検査によって微小欠陥も検出できることが好ましい。従来の画像検査では、製造装置の不良に起因する微小欠陥を検出することができない。
【0010】
それ故に、本発明は、高精度かつ容易に実行でき、製造装置の不良に起因する微小欠陥も検出できる画像検査方法および画像検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の局面は、機械学習を用いた画像検査方法であって、
教師画像と被検査画像を2値化する2値化ステップと、
2値化後の前記教師画像から第1方向に長い複数の第1短冊画像を抽出し、2値化後の前記被検査画像から前記第1方向に長い複数の第2短冊画像を抽出する短冊画像抽出ステップと、
前記第1短冊画像を前記第1方向に並ぶ複数の第1部分画像に分割し、前記第1部分画像を並び順に従いリカレントニューラルネットワークに与えて、前記リカレントニューラルネットワークに学習させる学習ステップと、
前記第2短冊画像を前記第1方向に並ぶ複数の第2部分画像に分割し、前記第2部分画像を並び順に従い前記リカレントニューラルネットワークに与えて、前記第2短冊画像の良否を判別する判別ステップと、
前記第2短冊画像の良否の判別結果に基づき、前記被検査画像の良否を判別する画像判別ステップとを備える。
【0012】
本発明の第2の局面は、本発明の第1の局面において、
前記リカレントニューラルネットワークは、第1および第2リカレントニューラルネットワークを含み、
前記学習ステップは、前記第1部分画像を異なる並び順に従い前記第1および第2リカレントニューラルネットワークに与えて、前記第1および第2リカレントニューラルネットワークに学習させ、
前記判別ステップは、前記第2部分画像を異なる並び順に従い前記第1および第2リカレントニューラルネットワークに与えて、前記第1および第2リカレントニューラルネットワークの出力に基づき、前記第2短冊画像の良否を判別することを特徴とする。
【0013】
本発明の第3の局面は、本発明の第1の局面において、
前記短冊画像抽出ステップは、2値化後の前記教師画像から第2方向に長い複数の第3短冊画像を抽出し、2値化後の前記被検査画像から前記第2方向に長い複数の第4短冊画像を抽出し、
前記学習ステップは、前記第3短冊画像を前記第2方向に並ぶ複数の第3部分画像に分割し、前記第3部分画像を並び順に従い前記リカレントニューラルネットワークに与えて、前記リカレントニューラルネットワークに学習させ、
前記判別ステップは、前記第4短冊画像を前記第2方向に並ぶ複数の第4部分画像に分割し、前記第4部分画像を並び順に従い前記リカレントニューラルネットワークに与えて、前記第4短冊画像の良否を判別し、
前記画像判別ステップは、前記第2および第4短冊画像の良否の判別結果に基づき、前記被検査画像の良否を判別することを特徴とする。
【0014】
本発明の第4の局面は、本発明の第3の局面において、
前記リカレントニューラルネットワークは、第1~第4リカレントニューラルネットワークを含み、
前記学習ステップは、前記第1部分画像を異なる並び順に従い前記第1および第2リカレントニューラルネットワークに与え、前記第3部分画像を異なる並び順に従い前記第3および第4リカレントニューラルネットワークに与えて、前記第1~第4リカレントニューラルネットワークに学習させ、
前記判別ステップは、前記第2部分画像を異なる並び順に従い前記第1および第2リカレントニューラルネットワークに与えて、前記第1および第2リカレントニューラルネットワークの出力に基づき、前記第2短冊画像の良否を判別し、前記第4部分画像を異なる並び順に従い前記第3および第4リカレントニューラルネットワークに与えて、前記第3および第4リカレントニューラルネットワークの出力に基づき、前記第4短冊画像の良否を判別することを特徴とする。
【0015】
本発明の第5の局面は、本発明の第1~第4のいずれかの局面において、
前記2値化ステップは、対象画像に含まれる各画素について、短冊画像の短手方向に並ぶ所定範囲内の画素の画素値の統計量を閾値と比較することにより、前記対象画像を2値化することを特徴とする。
【0016】
本発明の第6の局面は、本発明の第1~第5のいずれかの局面において、
前記短冊画像抽出ステップは、短手方向に重複する短冊画像を抽出することを特徴とする。
【0017】
本発明の第7の局面は、本発明の第1~第5のいずれかの局面において、
前記短冊画像抽出ステップは、互いに重複しない短冊画像を抽出することを特徴とする。
【0018】
本発明の第8の局面は、本発明の第1~第7のいずれかの局面において、
前記教師画像と前記被検査画像をグレースケール変換するステップをさらに備え、
前記2値化ステップは、グレースケール変換後の前記教師画像とグレースケール変換後の前記被検査画像を2値化することを特徴とする。
【0019】
本発明の第9の局面は、本発明の第1~第8のいずれかの局面において、
前記教師画像と前記被検査画像は、2次元状に繰り返し構造を有する画像であることを特徴とする。
【0020】
本発明の第10の局面は、本発明の第1、第2、第5、および、第6のいずれかの局面において、
前記教師画像と前記被検査画像は、サーマルヘッドを用いて市松模様を印刷した結果を撮影した画像であることを特徴とする。
【0021】
本発明の第11の局面は、本発明の第1~第6、および、第8のいずれかの局面において、
前記教師画像と前記被検査画像は、市松模様を表示する液晶パネルの表示画面を撮影した画像であることを特徴とする。
【0022】
本発明の第12の局面は、本発明の第1、第2、第5、および、第7のいずれかの局面において、
前記教師画像と前記被検査画像は、多連充填機の各ノズルからの単位時間あたりの充填量の測定結果を示す画像であることを特徴とする。
【0023】
本発明の第13の局面は、機械学習を用いた画像検査装置であって、
教師画像と被検査画像を2値化する2値化部と、
2値化後の前記教師画像から第1方向に長い複数の第1短冊画像を抽出し、2値化後の前記被検査画像から前記第1方向に長い複数の第2短冊画像を抽出する短冊画像抽出部と、
前記第1短冊画像が前記第1方向に並ぶ複数の第1部分画像に分割され、前記第1部分画像が並び順に従い与えられたときに学習を行い、前記第2短冊画像が前記第1方向に並ぶ複数の第2部分画像に分割され、前記第2部分画像が並び順に従い与えられたときに前記第2短冊画像の良否を判別するリカレントニューラルネットワークと、
前記第2短冊画像の良否の判別結果に基づき、前記被検査画像の良否を判別する画像判別部とを備える。
【発明の効果】
【0024】
上記第1または第13の局面によれば、教師画像を複数の第1短冊画像に分割し、第1短冊画像を複数の第1部分画像に分割し、第1部分画像を並び順にリカレントニューラルネットワーク(Recurrent Neural Network:以下、RNNという)に与えることにより、教師画像の変化パターンをRNNに学習させることができる。その後に、被検査画像を複数の第2短冊画像に分割し、第2短冊画像を複数の第2部分画像に分割し、第2部分画像を並び順に学習済みのRNNに与えることにより、被検査画像が教師画像と同様の変化パターンを有するか否かを判別して、被検査画像の良否を判別することができる。また、短冊画像を用いて学習と判別を行うことにより、演算量を削減しながら検査精度を高くすることができる。また、RNNの学習が完了した後に、学習済みのRNNを用いて画像検査を高速に行うことができる。また、第2短冊画像の良否の判別結果に基づき、被検査画像における欠陥の位置を特定することができる。また、製造装置の不良に起因して、被検査画像に第1方向に連続する微小欠陥が発生した場合に、この微小欠陥を検出することができる。したがって、高精度かつ容易に実行でき、製造装置の不良に起因する微小欠陥も検出できる画像検査方法または画像検査装置を提供することができる。
【0025】
上記第2の局面によれば、短冊画像を複数の部分画像に分割し、得られた部分画像を一端側から順に第1RNNに与え、他端側から順に第2RNNに与えることにより、2個のRNNを用いて2種類の学習と判別を行い、検査精度を高くすることができる。
【0026】
上記第3の局面によれば、教師画像と被検査画像を第1方向に長い短冊画像に分割して学習と判別を行うと共に、教師画像と被検査画像を第2方向に長い短冊画像に分割して学習と判別を行うことにより、検査精度を高くすることができる。また、製造装置の不良に起因して、被検査画像に第1方向に連続した微小欠陥が発生する場合だけでなく、被検査画像に第2方向に連続する微小欠陥が発生した場合にも、これらの微小欠陥を検出することができる。
【0027】
上記第4の局面によれば、第1方向に長い短冊画像を複数の部分画像に分割し、得られた部分画像を一端側から順に第1RNNに与え、他端側から順に第2RNNに与えると共に、第2方向に長い短冊画像を複数の部分画像に分割し、得られた部分画像を一端側から順に第3RNNに与え、部分画像を他端側から順に第4RNNに与えることにより、4個のRNNを用いて4種類の学習と判別を行い、検査精度を高くすることができる。
【0028】
上記第5の局面によれば、対象画像に含まれる各画素について、所定範囲内の画素の画素値の統計量を閾値と比較することにより、対象画像の特定の部分だけを考慮して、ノイズ耐性を高くしながら対象画像を2値化することができる。
【0029】
上記第6の局面によれば、対象画像から短手方向に重複する短冊画像を抽出することにより、短冊画像の良否の判別結果に基づき、被検査画像における欠陥の位置を高い精度で特定することができる。
【0030】
上記第7の局面によれば、対象画像から互いに重複しない短冊画像を抽出することにより、演算量を削減し、学習と判別を高速に行うことができる。
【0031】
上記第8の局面によれば、教師画像と被検査画像がカラー画像である場合に、これらの画像をグレースケール変換することにより、学習と判別を効果的に行うことができる。
【0032】
上記第9の局面によれば、教師画像と被検査画像が2次元状に繰り返し構造を有する画像である場合に、画像検査を高精度かつ容易に実行し、製造装置の不良に起因する微小欠陥も検出することができる。
【0033】
上記第10の局面によれば、教師画像と被検査画像がサーマルヘッドを用いて市松模様を印刷した結果を撮影した画像である場合に、画像検査を高精度かつ容易に実行し、サーマルヘッドの欠陥の有無を判別することができる。
【0034】
上記第11の局面によれば、教師画像と被検査画像が市松模様を表示する液晶パネルの表示画面を撮影した画像である場合に、画像検査を高精度かつ容易に実行し、液晶パネルの欠陥の有無を判別することができる。
【0035】
上記第12の局面によれば、教師画像と被検査画像が多連充填機の各ノズルからの単位時間あたりの充填量を示す画像である場合に、画像検査を高精度かつ容易に実行し、多連充填機のノズルの欠陥の有無を判別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る画像検査装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】
図1に示す画像検査装置に入力される被検査画像を示す図である。
【
図3】
図1に示す画像検査装置に入力される被検査画像を示す図である。
【
図4】
図1に示す画像検査装置の動作を示すフローチャートである。
【
図5】
図1に示す画像検査装置における短冊画像の抽出方法を示す図である。
【
図6】
図1に示す画像検査装置のRNN部の詳細を示すブロック図である。
【
図7】
図1に示す画像検査装置のRNN部の動作を説明するための図である。
【
図8】本発明の第2の実施形態に係る画像検査装置の構成を示すブロック図である。
【
図9】
図8に示す画像検査装置の動作を示すフローチャートである。
【
図10】
図8に示す画像検査装置における短冊画像の抽出方法を示す図である。
【
図11】
図8に示す画像検査装置のRNN部の詳細を示すブロック図である。
【
図12】
図8に示す画像検査装置のRNN部の動作を説明するための図である。
【
図13】本発明の第3の実施形態に係る画像検査装置に入力される被検査画像を示す図である。
【
図14】本発明の第3の実施形態に係る画像検査装置における短冊画像の抽出方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、図面を参照して、本発明の各実施形態に係る画像検査方法および画像検査装置について説明する。画像検査装置には、複数の教師画像と1枚以上の被検査画像とが入力される。画像検査装置は、RNN(Recurrent Neural Network)を備え、複数の教師画像を用いてRNNを学習させた後に、学習済みのRNNを用いて被検査画像の良否を判別する。RNNは、時系列データを扱うことができるニューラルネットワークの一種である。
【0038】
画像検査装置は、例えば、CPU、メインメモリ、記憶部、入力部、表示部などを含むコンピュータを用いて構成することができる。コンピュータの記憶部に教師画像、被検査画像、および、画像検査プログラムが記憶されている場合に、画像検査プログラムを記憶部からメインメモリに複写転送し、CPUがメインメモリに記憶された画像検査プログラムを実行することにより、コンピュータを画像検査装置として機能させることができる。また、学習と判別を高速に行うために、RNNに関する処理を行う専用回路を含むコンピュータを用いて画像検査装置を構成してもよい。画像検査方法は、このような画像検査装置を用いて実行される。
【0039】
(第1の実施形態)
第1の実施形態では、サーマルヘッドによる印刷結果を撮影した画像を検査することにより、サーマルヘッドの欠陥の有無を判別する画像検査方法および画像検査装置について説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る画像検査装置の構成を示すブロック図である。
図1に示す画像検査装置10は、2値化部11、短冊画像抽出部12、RNN部13、および、画像判別部14を備えている。
【0040】
サーマルヘッドは、用紙(感熱紙)に2値画像を印刷するサーマルヘッドプリンタに内蔵される。サーマルヘッドは、1次元状に配置された複数の発熱体を含んでいる。サーマルヘッドは、2値の画像データに含まれる1行分の画素データに応じて各発熱体の温度を切り替えることにより、白画素と黒画素を含む2値画像の1行分を用紙に印刷する。サーマルヘッドプリンタは、用紙を紙送りしながら2値画像の1行分を順に印刷することにより、用紙に2値画像を印刷する。
【0041】
図2および
図3は、画像検査装置10に入力される被検査画像を示す図である。本実施形態に係る被検査画像は、サーマルヘッドを用いて市松模様を印刷した結果を撮影したグレースケール画像である。
図2および
図3には、被検査画像の一部が拡大して記載されている。市松模様に含まれる白領域および黒領域のサイズは、サーマルヘッドによって印刷される1個の画素のサイズに等しい。教師画像は、被検査画像と同じ形式と同じ内容を有する。以下、サーマルヘッドの発熱体が並ぶ方向は図面の水平方向であり、サーマルヘッドプリンタの印刷順序の方向(紙送り方向)は図面の垂直方向であるとする。また、画像や矩形領域の長手方向が第1方向であるときに「第1方向に長い」という。
【0042】
サーマルヘッドの発熱体には、欠陥がランダムに発生する。欠陥のある発熱体は、固定的に低温または高温になるので、用紙に白画素または黒画素のいずれか一方しか印刷できない。このため、発熱体に欠陥が発生した場合、印刷結果には印刷順序の方向に延伸する白筋または黒筋が発生する。この場合、
図3に示すように、被検査画像にも同様の白筋または黒筋が発生する。
【0043】
画像検査装置10は、被検査画像が白筋または黒筋を含むか否かを含めて、被検査画像の良否を判別する。この判別を正しく行うために、被検査画像には印刷結果に含まれる画素が大きく写っている必要がある。以下の説明では、印刷結果に含まれる1個の画素は、被検査画像では被検査画像の(L×L)個の画素と同じサイズに写っているとする。
【0044】
図4は、画像検査装置10の動作を示すフローチャートである。
図4に示す処理を行う前に、教師画像の良否、および、教師画像に含まれる欠陥の位置は既知であるとする。画像検査装置10は、ステップS111~S115において、複数の教師画像を用いてRNN部13に含まれるRNNに学習させる。これにより、学習済みのRNNが得られる。画像検査装置10は、ステップS121~S126において、学習済みのRNNを用いて被検査画像の良否を判別する。これにより、サーマルヘッドの欠陥の有無を判別することができる。RNN部13は、2個のRNNを含んでいる(詳細は後述)。ここでは、2個のRNNを合わせてRNNという。
【0045】
画像検査装置10には、まず、1枚の教師画像が入力される(ステップS111)。次に、2値化部11は、入力された教師画像を2値化する(ステップS112)。次に、短冊画像抽出部12は、2値化後の教師画像から印刷順序の方向に長い複数の短冊画像を抽出する(ステップS113)。次に、画像検査装置10は、ステップS113で抽出した複数の短冊画像を順にRNN部13に含まれるRNNに与えて、RNNに学習させる(ステップS114)。次に、画像検査装置10は、すべての教師画像を入力済みか否かを判断し、Yesの場合にはステップS121へ進み、Noの場合にはステップS111へ進む(ステップS115)。
【0046】
前者の場合、画像検査装置10には、1枚の被検査画像が入力される(ステップS121)。次に、2値化部11は、入力された被検査画像を2値化する(ステップS122)。次に、短冊画像抽出部12は、2値化後の被検査画像から印刷順序の方向に長い複数の短冊画像を抽出する(ステップS123)。次に、画像検査装置10は、ステップS123で抽出した複数の短冊画像を順に学習済みのRNNに与えて、短冊画像の良否を個別に判別する(ステップS124)。次に、画像判別部14は、短冊画像の判別結果に基づき、ステップS121で入力された被検査画像の良否を判別する(ステップS125)。次に、画像検査装置10は、すべての被検査画像を入力済みか否を判断し、Yesの場合は処理を終了し、Noの場合にはステップS121へ進む(ステップS126)。
【0047】
サーマルヘッドによる印刷結果において白画素と黒画素が隣接している場合、白画素と黒画素の境界付近において、印刷物の色は白と黒の間の中間色になる。この場合、教師画像と被検査画像にも、白領域と黒領域の境界付近に中間色の画素が含まれる。教師画像と被検査画像が中間色の画素を含む場合、白筋や黒筋を認識しにくくなり、RNNによる学習が妨げられる。このため、2値化部11は、ステップS112、S122において教師画像または被検査画像(以下、対象画像という)を同じ方法で2値化する。
【0048】
2値化部11は、対象画像に含まれる各画素について、短冊画像の短手方向に並ぶ所定範囲内の画素の画素値の統計量を閾値と比較することにより、対象画像を2値化する。より詳細には、2値化部11は、対象画素を中心として発熱体が並ぶ方向に長い1次元のウインドウを設定し、ウインドウ内の画素の画素値の2乗平均値を求め、求めた2乗平均値を閾値と比較することにより、2値化後の対象画素の画素値を求める。ウインドウサイズをw、ウインドウ内の画素の画素値をX
-w~X
w としたとき、ウインドウ内の画素の画素値の2乗平均値X
rms は次式(1)で与えられる。
【数1】
2値化後の対象画素の画素値は、2乗平均値X
rms が予め定めた閾値TH以上のときには白に対応する値1に設定され、2乗平均値X
rms が閾値TH未満のときには黒に対応する値0に設定される。
【0049】
従来の典型的な2値化では、対象画像の全体について画素値のヒストグラムを求め、求めたヒストグラムに基づき閾値を決定し、決定した閾値を対象画像の全体に適用する。しかし、サーマルヘッドによる印刷結果では、画素値が同じでも、画素値の局所的な変化によって正常である場合と異常である場合とがあるので、2値化の結果に歪みが生じる。そこで、2値化部11は、ウインドウ内の画素の画素値だけを参照して2値化を行う。これにより、ノイズ耐性を高くしながら対象画像を2値化することができる。
【0050】
図5は、短冊画像抽出部12による短冊画像の抽出方法を示す図である。短冊画像抽出部12は、ステップS113、S123において対象画像から同じ方法で短冊画像を抽出する。
図5において、A1、A3、A5、…は、対象画像に写っている、印刷結果に含まれる画素の境界線を示す。A2、A4、A6、…は、対象画像に写っている、印刷結果に含まれる画素の中心線を示す。
【0051】
図5に示す例では、境界線A1と中心線A4に挟まれた部分が、i番目の短冊画像Siとして抽出される。次に、中心線A2と境界線A5に挟まれた部分が、(i+1)番目の短冊画像Si+1として抽出される。以下、同様に、境界線A3と中心線A6に挟まれた部分が(i+2)番目の短冊画像として抽出され、中心線A4と境界線A7に挟まれた部分が(i+3)番目の短冊画像として抽出される。
【0052】
短冊画像の高さは、対象画像の高さに等しい。短冊画像の幅は、対象画像に含まれる画素の幅の(1.5×L)倍に等しい。この幅は、印刷結果に含まれる画素の幅の1.5倍に相当する。短冊画像を抽出する間隔は、対象画像に含まれる画素の幅の(0.5×L)倍に等しい。この間隔は、印刷結果に含まれる画素の幅の0.5倍に相当する。このため、短冊画像は短手方向に重複し、短冊画像の境界線は印刷結果に含まれる画素の境界線または中央線に一致する。このように短冊画像抽出部12は、対象画像から短手方向に重複する短冊画像を抽出する。なお、Lが整数でない場合には、短冊画像抽出部12は短冊画像の抽出位置を微調整する。
【0053】
図6は、RNN部13の詳細を示すブロック図である。
図6に示すように、RNN部13は、フォワードRNN131、バックワードRNN132、出力連結部133、全結合層134、および、パラメータ制御部135を含んでいる。フォワードRNN131とバックワードRNN132は、ニューラルネットワークのパラメータ(図示せず)を記憶する。フォワードRNN131とバックワードRNN132には、対象画像から抽出された短冊画像Siが入力される。フォワードRNN131とバックワードRNN132は、入力された短冊画像Siに対して演算を行う。
【0054】
図7は、RNN部13の動作を説明するための図である。
図7には、短冊画像Siが、長手方向を図面の水平方向に一致させて記載されている。短冊画像Siは、m個の行(斜線部)を含む。
図7に示すSS1~SSmは、それぞれ、短冊画像Siの1~m行目である。このように短冊画像Siは、印刷順序の方向に並ぶ複数の部分画像に分割される。
【0055】
フォワードRNN131は、1つ前の時刻の出力と現在時刻の入力とに基づき、現在時刻の出力を求める。フォワードRNN131には、短冊画像Siの各行が行番号の昇順に入力される。フォワードRNN131は、行番号の昇順に入力された短冊画像Siの行と内部に記憶したパラメータとの間で行列演算を行う。バックワードRNN132は、1つ後の時刻の出力と現在時刻の入力とに基づき、現在時刻の出力を求める。バックワードRNN132には、短冊画像Siの各行が行番号の降順に入力される。バックワードRNN132は、行番号の降順に入力された短冊画像Siの行と内部に記憶したパラメータとの間で行列演算を行う。
【0056】
フォワードRNN131とバックワードRNN132は、短冊画像Siの入力が完了したときに、短冊画像Siに関する演算結果を出力する。出力連結部133は、フォワードRNN131から出力された演算結果とバックワードRNN132から出力された演算結果とを連結する。全結合層134は、出力連結部133の出力に基づき短冊画像Siの良否を判別し、判別結果Riを出力する。
【0057】
ステップS114では、パラメータ制御部135は、判別結果Riと教師画像の良否との間のクロスエントロピーを求め、求めたクロスエントロピーを用いてバックプロパゲーションを行うことにより、フォワードRNN131とバックワードRNN132に記憶されたパラメータを更新する。ステップS124では、RNN部13から画像判別部14に判別結果Riが出力される。
【0058】
画像判別部14は、ステップS125において、いずれかの短冊画像の判別結果が不良のときには「被検査画像は不良」と判別し、それ以外のときには「被検査画像は良品」と判別する。画像判別部14は、ステップS125において、以下の方法で被検査画像に含まれる欠陥の位置を求める。
【0059】
ここでは、i~(i+2)番目の短冊画像を、それぞれ、Sa、Sb、Scという。短冊画像Sa、Sbは良品、短冊画像Scは不良と判別されたときには、画像判別部14は「欠陥は短冊画像Scの右半分にある」と判別する。短冊画像Sb、Scは良品、短冊画像Saは不良と判別されたときには、画像判別部14は「欠陥は短冊画像Saの左半分にある」と判別する。短冊画像Saは良品、短冊画像Sb、Scは不良と判別されたときには、画像判別部14は「欠陥は短冊画像Sb、Scの重複部分にある」と判別する。短冊画像Scは良品、短冊画像Sa、Sbは不良と判別されたときには、画像判別部14は「欠陥は短冊画像Sa、Sbの重複部分にある」と判別する。短冊画像Sbは良品、短冊画像Sa、Scは不良と判別されたときには、画像判別部14は「欠陥は短冊画像Saの左半分または短冊画像Scの右半分にある」と判別する。短冊画像Sa、Sb、Scはすべて不良と判別されたときには、画像判別部14は「短冊画像Sbには必ず欠陥がある」と判別する。この場合、画像判別部14は、他の短冊画像の判別結果を参照して、短冊画像Sa、Scの欠陥の有無を判別する。短冊画像Sa、Scは良品、短冊画像Sbは不良と判別されたときには、矛盾が発生している。この場合、画像判別部14は、他の方法による検査結果を参照して、短冊画像Sa、Sb、Scの欠陥の有無を判別する。
【0060】
以上に示すように、本実施形態に係る画像検査方法は、教師画像と被検査画像を2値化する2値化ステップ(S112、S122)と、2値化後の教師画像から第1方向(印刷順序の方向)に長い複数の第1短冊画像(短冊画像Si)を抽出し、2値化後の被検査画像から第1方向に長い複数の第2短冊画像(短冊画像Si)を抽出する短冊画像抽出ステップ(S113、S123)と、第1短冊画像を第1方向に並ぶ複数の第1部分画像(短冊画像Siの行)に分割し、第1部分画像を並び順に従いRNN(RNN部13)に与えて、RNNに学習させる学習ステップ(S114)と、第2短冊画像を第1方向に並ぶ複数の第2部分画像(短冊画像Siの行)に分割し、第2部分画像を並び順に従いRNNに与えて、第2短冊画像の良否を判別する判別ステップ(S124)と、第2短冊画像の良否の判別結果に基づき、被検査画像の良否を判別する(判別結果Riを求める)画像判別ステップ(S125)とを備えている。本実施形態に係る画像検査方法は、同様の特徴を有する。
【0061】
したがって、本実施形態に係る画像検査方法および画像検査装置によれば、教師画像を複数の第1短冊画像に分割し、第1短冊画像を複数の第1部分画像に分割し、第1部分画像を並び順にRNNに与えることにより、教師画像の変化パターンをRNNに学習させることができる。その後に、被検査画像を複数の第2短冊画像に分割し、第2短冊画像を複数の第2部分画像に分割し、第2部分画像を並び順に学習済みのRNNに与えることにより、被検査画像が教師画像と同様の変化パターンを有するか否かを判別して、被検査画像の良否を判別することができる。また、短冊画像を用いて学習と判別を行うことにより、演算量を削減しながら検査精度を高くすることができる。また、RNNの学習が完了した後に、学習済みのRNNを用いて画像検査を高速に行うことができる。また、第2短冊画像の良否の判別結果に基づき、被検査画像における欠陥の位置を特定することができる。また、製造装置の不良に起因して、被検査画像に第1方向に連続する微小欠陥が発生した場合に、この微小欠陥を検出することができる。
【0062】
また、RNNは、第1および第2RNN(フォワードRNN131とバックワードRNN132)を含み、学習ステップは、第1部分画像を異なる並び順(行番号の昇順と降順)に従い第1および第2RNNに与えて、第1および第2RNNに学習させ、判別ステップは、第2部分画像を異なる並び順に従い第1および第2RNNに与えて、第1および第2RNNの出力に基づき、第2短冊画像の良否を判別する。このように短冊画像を複数の部分画像に分割し、得られた部分画像を一端側から順に第1RNNに与え、他端側から順に第2RNNに与えることにより、2個のRNNを用いて2種類の学習と判別を行い、検査精度を高くすることができる。
【0063】
また、2値化ステップは、対象画像に含まれる各画素について、短冊画像の短手方向に並ぶ所定範囲内の画素の画素値の統計量(ウインドウ内の画素の画素値の2乗平均値)を閾値と比較することにより、対象画像を2値化する。このように対象画像の特定の部分だけを考慮して、ノイズ耐性を高くしながら対象画像を2値化することができる。
【0064】
また、短冊画像抽出ステップは、短手方向に重複する短冊画像を抽出する。したがって、短冊画像の良否の判別結果に基づき、被検査画像における欠陥の位置を高い精度で特定することができる。また、教師画像と被検査画像は、2次元状に繰り返し構造を有する画像である。したがって、教師画像と被検査画像がこのような画像である場合に、画像検査を高精度かつ容易に実行し、製造装置の不良に起因する微小欠陥も検出することができる。また、教師画像と被検査画像は、サーマルヘッドを用いて市松模様を印刷した結果を撮影した画像である。したがって、教師画像と被検査画像がこのような画像である場合に、画像検査を高精度かつ容易に実行し、サーマルヘッドの欠陥の有無を判別することができる。
【0065】
(第2の実施形態)
第2の実施形態では、液晶パネルの表示画面を撮影した画像を検査することにより、液晶パネルの欠陥の有無を判別する画像検査方法および画像検査装置について説明する。
図8は、本発明の第2の実施形態に係る画像検査装置の構成を示すブロック図である。
図8に示す画像検査装置20は、2値化部21、短冊画像抽出部22、RNN部23、画像判別部24、および、グレースケール変換部25を備えている。
【0066】
液晶パネルは、2次元状に配置された複数の画素を含んでいる。画素は、薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor:以下、TFTという)と液晶容量を含んでいる。液晶パネルの駆動回路は、画素内のTFTをオン状態に制御して、画像データに含まれる画素データ応じた電圧を画素に書き込む。画素の光透過率は、画素に書き込まれた電圧に応じて変化する。液晶パネル内のすべての画素に画像データに応じた電圧を書き込むことにより、液晶パネルに所望の画像を表示することができる。液晶パネルがカラーフィルタを有する場合には、カラー画像を表示することができる。
【0067】
本実施形態に係る被検査画像は、市松模様を表示する液晶パネルの表示画面を撮影したカラー画像である。液晶パネルのカラー画素は、赤サブ画素、緑サブ画素、および、青サブ画素を含む。市松模様に含まれる白領域および黒領域のサイズは、液晶パネルの1個のカラー画素のサイズに等しい。教師画像は、被検査画像と同じ形式と同じ内容を有する。
【0068】
画素内のTFTには、欠陥がランダムに発生する。欠陥のあるTFTを含む画素は、固定色の画素になる。また、液晶パネルの製造装置で不良が発生したときに、1次元状に並ぶ複数の画素内のTFTに連続して欠陥が発生することがある。この場合、液晶パネルの表示画面には水平方向または垂直方向に延伸する固定色の筋が発生し、被検査画像にも同様の筋が発生する。
【0069】
画像検査装置20は、被検査画像が固定色の筋を含むか否かを含めて、被検査画像の良否を判別する。この判別を正しく行うために、被検査画像には液晶パネルに含まれるカラー画素が大きく写っている必要がある。以下の説明では、液晶パネルに含まれる1個のカラー画素は、被検査画像では被検査画像の(L×L)個のカラー画素と同じサイズに写っているとする。
【0070】
図9は、画像検査装置20の動作を示すフローチャートである。
図9に示す処理を行う前に、教師画像の良否、および、教師画像に含まれる欠陥の位置は既知であるとする。画像検査装置20は、ステップS211~S219において、複数の教師画像を用いてRNN部23に含まれるRNNに学習させる。これにより、学習済みのRNNが得られる。画像検査装置20は、ステップS221~S230において、学習済みのRNNを用いて被検査画像の良否を判別する。これにより、液晶パネルの欠陥の有無を判別することができる。RNN部23は、4個のRNNを含んでいる(詳細は後述)。ここでは、このうち2個のRNNを合わせて第1RNN、残りの2個のRNNを合わせて第2RNNという。
【0071】
画像検査装置20には、まず、1枚の教師画像が入力される(ステップS211)。次に、グレースケール変換部25は、入力された教師画像をグレースケール画像に変換する(ステップS212)。次に、2値化部21は、グレースケール変換後の教師画像を第1の方法で2値化する(ステップS213)。次に、短冊画像抽出部22は、ステップS213で求めた2値化後の教師画像から垂直方向に長い複数の短冊画像(以下、縦長短冊画像という)を抽出する(ステップS214)。次に、画像検査装置20は、ステップS214で抽出した複数の縦長短冊画像を順にRNN部23に含まれる第1RNNに与えて、第1RNNに学習させる(ステップS215)。
【0072】
次に、2値化部21は、グレースケール変換後の教師画像を第2の方法で2値化する(ステップS216)。次に、短冊画像抽出部22は、ステップS216で求めた2値化後の教師画像から水平方向に長い複数の短冊画像(以下、横長短冊画像という)を抽出する(ステップS217)。次に、画像検査装置20は、ステップS217で抽出した複数の横長短冊画像を順にRNN部23に含まれる第2RNNに与えて、第2RNNに学習させる(ステップS218)。次に、画像検査装置20は、すべての教師画像を入力済みか否かを判断し、Yesの場合にはステップS221へ進み、Noの場合にはステップS211へ進む(ステップS219)。
【0073】
前者の場合、画像検査装置20には、1枚の被検査画像が入力される(ステップS221)。次に、グレースケール変換部25は、入力された被検査画像をグレースケール画像に変換する(ステップS222)。次に、2値化部21は、グレースケール変換後の教師画像を第1の方法で2値化する(ステップS223)。次に、短冊画像抽出部22は、ステップS223で求めた2値化後の被検査画像から複数の縦長短冊画像を抽出する(ステップS224)。次に、画像検査装置20は、ステップS224で求めた複数の縦長短冊画像を順に学習済みの第1RNNに与えて、縦長短冊画像の良否を個別に判別する(ステップS225)。
【0074】
次に、2値化部21は、グレースケール変換後の教師画像を第2の方法で2値化する(ステップS226)。次に、短冊画像抽出部22は、ステップS226で求めた2値化後の被検査画像から複数の横長短冊画像を抽出する(ステップS227)。次に、画像検査装置20は、ステップS227で求めた複数の横長短冊画像を順に学習済みの第2RNNに与えて、横長短冊画像の良否を個別に判別する(ステップS228)。次に、画像判別部24は、2種類の短冊画像の判別結果に基づき、ステップS221で入力された被検査画像の良否を判別する(ステップS229)。次に、画像検査装置20は、すべての被検査画像を入力済みか否を判断し、Yesの場合は処理を終了し、Noの場合にはステップS221へ進む(ステップS230)。
【0075】
画像検査装置20に入力される被検査画像はカラー画像であるが、画像検査装置20はカラー情報を使用しない。そこで、グレースケール変換部25は、ステップS212、222において対象画像を同じ方法でグレースケール画像に変換する。ステップS212、S222では、対象画像に対して、次式(2)を用いたグレースケール変換が行われる。
P=0.21R+0.72G+0.07B …(2)
ただし、式(2)において、R、G、および、Bは、それぞれ、変換前のカラー画像に含まれる赤サブ画素、緑サブ画素、および、青サブ画素の画素値、Pは変換後のグレースケール画像に含まれる画素の画素値である。
【0076】
液晶パネルの表示画面をCCDを用いて撮影した場合、液晶パネルとCCDの間の画素ピッチの差によって、撮影された画像にモアレ(縞模様)が発生することがある。モアレが発生すると、固定色の筋を認識しにくくなり、RNNによる学習が妨げられる。このため、2値化部21は、ステップS213、S216において教師画像を2値化し、ステップS223、S226において被検査画像を2値化する。ステップS213、S223では、水平方向に長い1次元のウインドウが設定され、式(1)を用いた2値化が行われる。ステップS216、S226では、垂直方向に長い1次元のウインドウが設定され、式(1)を用いた2値化が行われる。ウインドウサイズwと閾値THは、モアレの発生状況に応じて好適な値に調整される。
【0077】
図10は、短冊画像抽出部22による短冊画像の抽出方法を示す図である。短冊画像抽出部22は、ステップS214、S224において対象画像から複数の縦長短冊画像を抽出し、ステップS217、S227において対象画像から複数の横長短冊画像を抽出する。
図10において、A1、A3、A5、…は、対象画像に写っている、液晶パネルに含まれる画素間の垂直方向に延伸する境界線を示す。A2、A4、A6、…は、対象画像に写っている、液晶パネルに含まれる画素の垂直方向に延伸する中心線を示す。B1、B3、B5、…は、対象画像に写っている、液晶パネルに含まれる画素間の水平方向に延伸する画素の境界線を示す。B2、B4、B6、…は、対象画像に写っている、液晶パネルに含まれる画素の水平方向に延伸する中心線を示す。
【0078】
図10に示す例では、境界線A1と中心線A4に挟まれた部分が、i番目の縦長短冊画像SViとして抽出される。次に、中心線A2と境界線A5に挟まれた部分が、(i+1)番目の縦長短冊画像SVi+1として抽出される。以下、同様に、境界線A3と中心線A6に挟まれた部分が(i+2)番目の縦長短冊画像として抽出され、中心線A4と境界線A7に挟まれた部分が(i+3)番目の縦長短冊画像として抽出される。また、境界線B1と中心線B4に挟まれた部分が、j番目の横長短冊画像SHjとして抽出される。次に、中心線B2と境界線B5に挟まれた部分が、(j+1)番目の横長短冊画像SHj+1として抽出される。以下、同様に、境界線B3と中心線B6に挟まれた部分が(j+2)番目の横長短冊画像として抽出され、中心線B4と境界線B7に挟まれた部分が(j+3)番目の横長短冊画像として抽出される。
【0079】
第1の実施形態における「印刷結果に含まれる画素」を本実施形態では「液晶パネルに含まれる画素」と読み替えたときに、短冊画像の高さおよび幅、並びに、短冊画像を抽出する間隔は、第1の実施形態と同じである。本実施形態でも、短冊画像抽出部22は対象画像から短手方向に重複する短冊画像を抽出し、短冊画像の境界線は液晶パネルに含まれる画素の境界線または中央線に一致する。
【0080】
図11は、RNN部23の詳細を示すブロック図である。
図11に示すように、RNN部23は、第1フォワードRNN231a、第2フォワードRNN231b、第1バックワードRNN232a、第2バックワードRNN232b、出力連結部233a、233b、全結合層234a、234b、および、パラメータ制御部235a、235bを含んでいる。第1フォワードRNN231aと第1バックワードRNN232aは第1RNNとして機能し、第2フォワードRNN231bと第2バックワードRNN232bは第2RNNとして機能する。
【0081】
第1フォワードRNN231aと第1バックワードRNN232aには、対象画像から抽出された縦長短冊画像SViが入力される。第1フォワードRNN231a、第1バックワードRNN232a、出力連結部233a、全結合層234a、および、パラメータ制御部235aは、縦長短冊画像SViに対して第1の実施形態に係るRNN部13と同じ処理を行う。第2フォワードRNN231bと第2バックワードRNN232bには、対象画像から抽出された横長短冊画像SHjが入力される。第2フォワードRNN231b、第2バックワードRNN232b、出力連結部233b、全結合層234b、および、パラメータ制御部235bは、横長短冊画像SHjに対してRNN部13と同じ処理を行う。
【0082】
図12は、RNN部23の動作を説明するための図である。
図12には、縦長短冊画像SViと横長短冊画像SHjが、長手方向を図面の水平方向に一致させて記載されている。縦長短冊画像SViはm個の行(左下り斜線部)を含み、横長短冊画像SHjはn個の列(右下がり斜線部)を含む。
図12において、SSV1~SSVmは、それぞれ、縦長短冊画像SViの1~m行目であり、SSH1~SSHnは、それぞれ、横長短冊画像SHjの1~n列目である。このように縦長短冊画像SViと横長短冊画像SHjは、長手方向に並ぶ複数の部分画像に分割される。
【0083】
第1フォワードRNN231aと第1バックワードRNN232aは、縦長短冊画像SViの入力が完了したときに、縦長短冊画像SViに関する演算結果を出力する。出力連結部233aは、第1フォワードRNN231aから出力された演算結果と第1バックワードRNN232aから出力された演算結果とを連結する。全結合層234aは、出力連結部233aの出力に基づき縦長短冊画像SViの良否を判別し、判別結果RViを出力する。
【0084】
ステップS215では、パラメータ制御部235aは、判別結果RViと教師画像の良否との間のクロスエントロピーを求め、求めたクロスエントロピーを用いてバックプロパゲーションを行うことにより、第1フォワードRNN231aと第1バックワードRNN232aに記憶されたパラメータを更新する。ステップS225では、RNN部23から画像判別部24に判別結果RViが出力される。
【0085】
第2フォワードRNN231bと第2バックワードRNN232bは、横長短冊画像SHjの入力が完了したときに、横長短冊画像SHjに関する演算結果を出力する。出力連結部233bは、第2フォワードRNN231bから出力された演算結果と第2バックワードRNN232bから出力された演算結果とを連結する。全結合層234bは、出力連結部233bの出力に基づき横長短冊画像SHjの良否を判別し、判別結果RHjを出力する。
【0086】
ステップS218では、パラメータ制御部235bは、判別結果RHjと教師画像の良否との間のクロスエントロピーを求め、求めたクロスエントロピーを用いてバックプロパゲーションを行うことにより、第2フォワードRNN231bと第2バックワードRNN232bに記憶されたパラメータを更新する。ステップS228では、RNN部23から画像判別部24に判別結果RHjが出力される。
【0087】
画像判別部24は、ステップS229において、いずれかの短冊画像の判別結果が不良のときには「被検査画像は不良」と判別し、それ以外のときには「被検査画像は良品」と判別する。画像判別部24は、ステップS229において、第1の実施形態で述べた方法を2次元に拡張して、被検査画像に含まれる欠陥の位置を求める。
【0088】
本実施形態に係る画像検査方法では、ステップS213、S216、S223、S236は2値化ステップに該当し、ステップS214、S217、S224、S227は短冊画像抽出ステップに該当し、ステップS215、S218は学習ステップに該当し、ステップS225、228は判別ステップに該当し、ステップS229は画像判別ステップに該当する。
【0089】
短冊画像抽出ステップは、2値化後の教師画像から第1方向(垂直方向)に長い複数の第1短冊画像(縦長短冊画像SVi)を抽出し(S214)、2値化後の被検査画像から第1方向に長い複数の第2短冊画像(縦長短冊画像SVi)を抽出する(S217)と共に、2値化後の教師画像から第2方向(水平方向)に長い複数の第3短冊画像(横長短冊画像SHj)を抽出し(S224)、2値化後の被検査画像から第2方向に長い複数の第4短冊画像(横長短冊画像SHj)を抽出する(S227)。学習ステップは、第1短冊画像を第1方向に並ぶ複数の第1部分画像(縦長短冊画像SViの行)に分割し、第1部分画像を並び順に従いRNN(RNN部13)に与えて、RNNに学習させる(S215)と共に、第3短冊画像を第2方向に並ぶ複数の第3部分画像(横長短冊画像SHjの列)に分割し、第3部分画像を並び順に従いRNNに与えて、RNNに学習させる(S218)。判別ステップは、第2短冊画像を第1方向に並ぶ複数の第2部分画像(縦長短冊画像SViの行)に分割し、第2部分画像を並び順に従いRNNに与えて、第2短冊画像の良否を判別する(判別結果RViを求める)(S225)と共に、第4短冊画像を第2方向に並ぶ複数の第4部分画像(横長短冊画像SHjの列)に分割し、第4部分画像を並び順に従いRNNに与えて、第4短冊画像の良否を判別する(判別結果RHjを求める)(S228)。画像判別ステップは、第2および第4短冊画像の良否の判別結果に基づき、被検査画像の良否を判別する。
【0090】
このように教師画像と被検査画像を第1方向に長い短冊画像に分割して学習と判別を行うと共に、教師画像と被検査画像を第2方向に長い短冊画像に分割して学習と判別を行うことにより、検査精度を高くすることができる。また、製造装置の不良に起因して、被検査画像に第1方向に連続する微小欠陥が発生する場合だけでなく、被検査画像に第2方向に連続する微小欠陥が発生する場合にも、これらの微小欠陥を検出することができる。
【0091】
また、RNN(RNN部23)は、第1~第4RNN(第1フォワードRNN231a、第1バックワードRNN232a、第2フォワードRNN231b、第2バックワードRNN232b)を含み、学習ステップは、第1部分画像を異なる並び順に従い(行番号の昇順と降順)第1および第2RNNに与え、第3部分画像を異なる並び順(列番号の昇順と降順)に従い第3および第4RNNに与えて、第1~第4RNNに学習させ、判別ステップは、第2部分画像を異なる並び順(行番号の昇順と降順)に従い第1および第2RNNに与えて、第1および第2RNNの出力に基づき、第2短冊画像の良否を判別し、第4部分画像を異なる並び順(列番号の昇順と降順)に従い第3および第4RNNに与えて、第3および第4RNNの出力に基づき、第4短冊画像の良否を判別する。このように第1方向に長い短冊画像を複数の部分画像に分割し、得られた部分画像を一端側から順に第1RNNに与え、他端側から順に第2RNNに与えると共に、第2方向に長い短冊画像を複数の部分画像に分割し、得られた部分画像を一端側から順に第3RNNに与え、部分画像を他端側から順に第4RNNに与えることにより、4個のRNNを用いて4種類の学習と判別を行い、検査精度を高くすることができる。
【0092】
また、画像検査方法は、教師画像と被検査画像をグレースケール変換するステップ(S212、S222)をさらに備え、2値化ステップは、グレースケール変換後の教師画像とグレースケール変換後の被検査画像を2値化する。このように教師画像と被検査画像がカラー画像である場合に、これらの画像をグレースケール変換することにより、学習と判別を効果的に行うことができる。また、教師画像と被検査画像は、市松模様を表示する液晶パネルの表示画面を撮影した画像である。したがって、教師画像と被検査画像がこのような画像である場合に、画像検査を高精度かつ容易に実行し、液晶パネルの欠陥の有無を判別することができる。
【0093】
(第3の実施形態)
第3の実施形態では、多連充填機の各ノズルからの充填量を示す画像を検査することにより、多連充填機のノズルの欠陥の有無を判別する画像検査方法および画像検査装置について説明する。本発明の第3の実施形態に係る画像検査装置は、第1の実施形態に係る画像検査装置10と同じ構成(
図1)を有し、画像検査装置10に類似した動作を行う。以下、第1の実施形態との差異を説明する。
【0094】
充填機は、液体を瓶詰めするときや、粉末を袋詰めするときなどに使用される。充填を高速に行うために、複数のノズルを有する多連充填機が使用されることがある。また、充填機の中には、各ノズルからの充填量を時系列的に測定して記録する機能を有するものがある。以下、各ノズルからの充填量を時系列的に測定して記録する多連充填機について検討する。
【0095】
図13は、本実施形態に係る画像検査装置に入力される被検査画像を示す図である。本実施形態に係る被検査画像は、多連充填機において各ノズルからの単位時間あたりの充填量の測定結果を示すグレースケール画像である。
図13において、横軸はノズル番号、縦軸は時間を示す。
図13に示す被検査画像は、8個のノズルからの単位時間あたりの充填量を12回測定することにより得られる。被検査画像に含まれる小領域は、1個のノズルからの充填量を所定時間について測定した結果に応じた色を有する。画素の色は、充填量が少ないほど黒に近く、充填量が多いほど白に近い。なお、図面の記載の都合上、
図13では画素の色をパターンで表現している。教師画像は、被検査画像と同じ形式と同じ内容を有する。
【0096】
充填機では、ノズルからの充填量が一時的または固定的に増加または減少することがある。例えば、ノズルに物理的な欠陥が発生したときや、ノズルが一時的に詰まったときなどにノズルからの充填量は減少し、ノズルの詰まりが解消したときなどにノズルからの充填量は増加する。本実施形態では、充填量が低下したノズルを欠陥のあるノズルと考えて、被検査画像を検査することにより、多連充填機のノズルの欠陥の有無を判別する。
【0097】
本実施形態に係る画像検査装置は、
図4に示すフローチャートに従い動作する。ただし、2値化部と短冊画像抽出部の動作は、第1の実施形態とは異なる。充填量の測定結果は、充填物の性質によって変化する。このため、充填量の測定結果をそのままRNNに与えてRNNに学習させても、ノズルの欠陥の有無を判別することは困難である。このため、本実施形態に係る2値化部は、教師画像と被検査画像を同じ方法で2値化する。
【0098】
2値化部は、対象画像に含まれる各画素について、短冊画像の短手方向に並ぶ所定範囲内の画素の画素値の統計量を閾値と比較することにより、対象画像を2値化する。より詳細には、2値化部は、対象画素を含む1行に1次元のウインドウを設定し、ウインドウ内の画素の画素値の平均値を求め、求めた平均値を閾値と比較することにより、2値化後の対象画素の画素値を求める。ウインドウ内の画素の画素値の平均値をXm としたとき、2値化後の対象画素の画素値は、平均値Xm が予め定めた閾値TH以上のときには白に対応する値1に設定され、平均値Xm が閾値TH未満のときには黒に対応する値0に設定される。ノズルが正常のときには、2値化後の画素の画素値はランダムに0または1になる。ノズルに欠陥が発生したときには、2値化後の画素の画素値には時系列的に変化するパターンが現れる。
【0099】
図14は、本実施形態に係る短冊画像抽出部による短冊画像の抽出方法を示す図である。短冊画像抽出部は、対象画像から同じ方法で短冊画像を抽出する。
図14において、A1、A2、A3、…は、対象画像におけるノズル間の境界線を示す。
図14に示す例では、境界線A1、A2に挟まれた部分が、i番目の短冊画像Siとして抽出される。次に、境界線A2、A3に挟まれた部分が、(i+1)番目の短冊画像Si+1として抽出される。以下、同様に、境界線A3、A4に挟まれた部分が(i+2)番目の短冊画像として抽出され、境界線A4、A5に挟まれた部分が(i+3)番目の短冊画像として抽出される。
【0100】
短冊画像の高さは、対象画像の高さに等しい。短冊画像の幅は、対象画像に含まれる画素の幅に等しい。短冊画像を抽出する間隔は、対象画像に含まれる画素の幅に等しい。このように短冊画像抽出部は、互いに重複しない複数の短冊画像を抽出する。
【0101】
本実施形態に係る画像検査方法では、短冊画像抽出ステップは、互いに重複しない短冊画像を抽出する。したがって、演算量を削減し、学習と判別を高速に行うことができる。また、教師画像と被検査画像は、多連充填機の各ノズルからの単位時間あたりの充填量の測定結果を示す画像である。したがって、教師画像と被検査画像がこのような画像である場合に、画像検査を高精度かつ容易に実行し、多連充填機のノズルの欠陥の有無を判別することができる。
【0102】
ここまで、各実施形態に係る画像検査方法および画像検査装置について説明してきたが、各実施形態に係る画像検査方法および画像検査装置の特徴をその性質に反しない限り任意に組み合わせて、各種の変形例に係る画像検査方法および画像検査装置を構成してもよい。また、教師画像と被検査画像は、以上に述べた画像には限定されず、製品の外観や出力などに基づく任意の画像でもよい。教師画像と被検査画像は、2値画像でも、グレースケール画像でも、カラー画像でも、マルチスペクトル画像でもよい。
【符号の説明】
【0103】
10、20…画像検査装置
11、21…2値化部
12、22…短冊画像抽出部
13、23…RNN部
14、24…画像判別部
25…グレースケール変換部
131、231…フォワードRNN
132、232…バックワードRNN
133、233…出力連結部
134、234…全結合層
135、235…パラメータ制御部