(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】棒材取出し装置及び棒材取出し方法
(51)【国際特許分類】
B65G 59/02 20060101AFI20221206BHJP
B23B 13/10 20060101ALI20221206BHJP
B21D 43/02 20060101ALN20221206BHJP
【FI】
B65G59/02 A
B23B13/10
B21D43/02 J
(21)【出願番号】P 2018204378
(22)【出願日】2018-10-30
【審査請求日】2021-09-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000127042
【氏名又は名称】株式会社アルプスツール
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】弁理士法人インテクト国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100120237
【氏名又は名称】石橋 良規
(72)【発明者】
【氏名】山口 光義
(72)【発明者】
【氏名】近藤 義盛
(72)【発明者】
【氏名】小林 和義
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 由里子
【審査官】小川 悟史
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-289649(JP,A)
【文献】特開平07-076420(JP,A)
【文献】特開平06-000704(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 59/02
B23B 13/10
B21D 43/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の棒材から1本の棒材を取り出す棒材取出し装置において、
前記棒材取出し装置は、複数の棒材を収納すると共に棒材を下方から支持する底部を備えた収容溝を有する収納部と、前記底部に支持された棒材を挟み込む挟持手段を具備し、
前記底部に支持された棒材と挟持手段とは上下方向に相対的に接近可能に構成し、
前記挟持手段は、前記収容部の上方に且つ前記複数の棒材の一端側のうち前記収容溝からはみ出した部分の上方に配置されると共に相対向する挟持部材が開閉可能に構成され、
これら挟持部材の間には、一方が先細り状となり、他方が前記複数の棒材に向けて末広がりに構成された空間が形成され、かつ、末広がりに形成された前記空間は前記底部に支持された棒材全部を挟み込み可能に広げられ、
前記挟持手段は、前記底部に支持された棒材と相対的に接近させて、かつ、前記空間の幅が狭められるよう前記挟持部材の少なくとも一方を他方に対して相対移動させて、前記底部に支持された棒材全部の前記はみ出した部分を、前記空間内に挟み込むように閉鎖したとき、前記挟持部材の最下端部が前記底部に支持された棒材全部よりも下方になるように、挟み込み、
前記挟持部材を閉鎖しながら前記挟持手段と前記底部とを上下方向に相対的に遠ざけるよう構成し、
前記挟持手段は、前記棒材の長手方向断面において、前記棒材の長手方向と直交する方向から
前記棒材の他端側に向かって所定の角度傾いた方向に沿って移動可能に構成されたことを特徴とする棒材取出し装置。
【請求項2】
請求項1に記載の棒材取出し装置において、
前記挟み込まれた前記棒材は、案内部を介してガイドパイプに供給され、
前記案内部には、前記挟持部材から落下した前記棒材を前記案内部内に保持するゲートストッパを有し、
前記ゲートストッパは、任意のタイミングで前記棒材を前記ガイドパイプに供給することを特徴とする棒材取出し装置。
【請求項3】
請求項2に記載の棒材取出し装置において、
前記ゲートストッパは、前記長手方向の周方向に回動自在に組み付けられることを特徴とする棒材取出し装置。
【請求項4】
請求項1から3の何れか1項に記載の棒材取出し装置において、
前記挟持部材は、前記棒材の長手方向と直交する方向から3°から15°傾いた方向に沿って移動可能に構成されたことを特徴とする棒材取出し装置。
【請求項5】
複数の棒材から1本の棒材を取り出す棒材を取り出す棒材取出し方法であって、
複数の棒材を収納すると共に棒材を下方から支持する底部を備えた収容溝を有する収納部を用意し、
開閉可能な相対向する挟持部材で構成し、これら挟持部材の間に、一方が先細り状となり、他方が前記複数の棒材に向けて末広がりに構成された空間を形成し、かつ、末広がりに形成された前記空間を、前記底部に支持された棒材を挟み込み可能に形成した挟持手段を用意し、
前記挟持手段を前記収容部の上方に且つ前記複数の棒材の一端側のうち前記収容溝からはみ出した部分の上方に配置し、
前記挟持手段と前記底部に支持された棒材とを相対的に近接させて、前記底部に支持された棒材全部の前記はみ出した部分を挟み込むように、少なくとも前記挟持部材の一方を他方に対して相対移動させて前記挟持部材の最下端部を前記底部に支持された棒材全部よりも下方に位置決めし、
前記挟持部材を閉じつつ、前記挟持手段を前記棒材の長手方向断面において、前記棒材の長手方向と直交する方向から
前記棒材の他端側に向かって所定の角度傾いた方向に移動させることを特徴とする棒材取出し方法。
【請求項6】
請求項5に記載の棒材取出し方法において、
前記挟み込まれた前記棒材を、案内部を介してガイドパイプに供給し、
前記案内部には、前記挟持部材から落下した前記棒材を前記案内部内に配置されたゲートストッパによって前記案内部内に保持され、
前記ゲートストッパは、任意のタイミングで前記棒材を前記ガイドパイプに供給することを特徴とする棒材取出し方法。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の棒材取出し方法において、
前記挟持部材は、前記棒材の長手方向と直交する方向から3°から15°傾いた方向に沿って移動されることを特徴とする棒材取出し方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の棒材の束から1本の棒材のみを取出す棒材取出し装置及び棒材取出し方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、棒材加工においては、棒材を1本ずつ加工するため、複数の棒材がまとめて置かれている場合には、この棒材の束から1本のみの棒材を取出す必要がある。
【0003】
従来、収納部に収納された複数の棒材の束から1本の棒材を取り出す棒材取出し装置や棒材取出し方法については、種々の形態が知られており、例えば、特許文献1に記載されているように、収納部に収納された棒材を挟み込む挟持手段を具備し、挟持手段は、収納部の上方に且つ複数の棒材の一端側のうち収納部の収容溝からはみ出した部分の上方に配置されると共に相対向する挟持部材が開閉可能に構成され、これら挟持部材の間には、一方が先細り状となり、他方が複数の棒材に向けて末広がりに構成された空間が形成され、かつ、末広がりに形成された空間は収納部に収納された棒材全部を挟み込み可能に広げられ、挟持手段は、収納部に収納された棒材と相対的に接近させて、かつ、空間の幅が狭められるよう挟持部材の少なくとも一方を他方に対して相対移動させて、収納部に収納された棒材全部のはみ出した部分を、空間内に挟み込むように閉鎖したとき、挟持部材の最下端部が収納部に収納された棒材全部よりも下方になるように、挟み込み、挟持部材を閉鎖しながら挟持手段と収納部とを上下方向に相対的に遠ざけるよう構成されている。
【0004】
このような構成を有する棒材取出し装置は、複数の棒材の束から1本の棒材を取出す際に、挟持手段が棒材の束を挟み込むようにして挟持部材を閉じ、先細りに形成された空間の頂部に1本の棒材を残して、この1本のみを挟持するようにしたので、手間をかけず、しかも装置の機構も複雑にすることなく、極めて容易に1本の棒材を取出すことが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の棒材取出し装置では、収納部に収納された複数の棒材を挟持手段で挟持した後、挟持手段を閉鎖しながら挟持手段を収納部から上方に引き上げるように操作し、挟持手段が2本以上の棒材を挟持していないかセンサ等を用いて判定を行っている。ここで、2本以上の棒材を挟持して取出し不良であると判定された場合には挟持している全ての棒材を一度解放して収納部へ戻し、再度収納部に収納された複数の束の棒材を挟持するように操作を行っている。
【0007】
このとき、従来の棒材取出し装置では、棒材の一端側のうち収納部の収容溝からはみ出した部分を上方へ持ち上げているため、
図7に示すように、棒材の他端側は一端側の持ち上げによって一端側へ棒材後退量L分だけ移動してしまい、取出し不良の判定後の棒材解放動作によって、一端側が開放されると、収納部の長手方向の一端側に棒材が移動してしまい、収納部の縁部に棒材が乗り上げてしまう可能性があり、正確な挟持動作に支障が出る可能性があるという問題があった。
【0008】
また、従来の棒材取出し装置では、挟持手段によって1本だけ取り出された棒材は、棒状分離部材が一端側から他端側へ移動することで、1本だけ分離されて取出され、案内部に落とされて棒材を供給するガイドパイプに案内されて旋盤などの加工機へ供給されるが、挟持手段が挟持していない棒材の他端側の端部は、分離途中で先にガイドパイプ内に落ちるため、挟持手段が棒材を放した際にガイドパイプに落下しない可能性があり、安定した材料供給に問題があった。
【0009】
さらに、従来の棒材取出し装置では、新材供給の度に棒材の取出し動作を行っていることから、棒材の取出し動作に時間がかかるという問題があることに加え、上述したように棒材の取出し不良が生じた場合には、挟持した棒材を解放して再度挟持動作を行うが、この間も新材の供給を行うことができず時間のロスが生じているという問題があった。
【0010】
そこで本発明は、上記問題点に鑑みてされた発明であり、棒材の取出し不良が生じた場合であっても確実に再度の挟持動作を行うことが可能であり、棒材の取出し時間による時間のロスを低減すると共に、安定した棒材の供給を行うことができる棒材取出し装置及び棒材取出し方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る棒材取出し装置は、複数の棒材から1本の棒材を取り出す棒材取出し装置において、前記棒材取出し装置は、複数の棒材を収納すると共に棒材を下方から支持する底部を備えた収容溝を有する収納部と、前記底部に支持された棒材を挟み込む挟持手段を具備し、前記底部に支持された棒材と挟持手段とは上下方向に相対的に接近可能に構成し、前記挟持手段は、前記収容部の上方に且つ前記複数の棒材の一端側のうち前記収容溝からはみ出した部分の上方に配置されると共に相対向する挟持部材が開閉可能に構成され、これら挟持部材の間には、一方が先細り状となり、他方が前記複数の棒材に向けて末広がりに構成された空間が形成され、かつ、末広がりに形成された前記空間は前記底部に支持された棒材全部を挟み込み可能に広げられ、前記挟持手段は、前記底部に支持された棒材と相対的に接近させて、かつ、前記空間の幅が狭められるよう前記挟持部材の少なくとも一方を他方に対して相対移動させて、前記底部に支持された棒材全部の前記はみ出した部分を、前記空間内に挟み込むように閉鎖したとき、前記挟持部材の最下端部が前記底部に支持された棒材全部よりも下方になるように、挟み込み、前記挟持部材を閉鎖しながら前記挟持手段と前記底部とを上下方向に相対的に遠ざけるよう構成し、前記挟持手段は、前記棒材の長手方向断面において、前記棒材の長手方向と直交する方向から前記棒材の他端側に向かって所定の角度傾いた方向に沿って移動可能に構成されたことを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る棒材取出し装置において、前記挟み込まれた前記棒材は、案内部を介してガイドパイプに供給され、前記案内部には、前記挟持部材から落下した前記棒材を前記案内部内に保持するゲートストッパを有し、前記ゲートストッパは、任意のタイミングで前記棒材を前記ガイドパイプに供給することができる。
【0013】
また、本発明に係る棒材取出し装置において、前記ゲートストッパは、前記長手方向の周方向に回動自在に組み付けられると好適である。
【0014】
また、本発明に係る棒材取出し装置において、前記挟持部材は、前記棒材の長手方向と直交する方向から3°から15°傾いた方向に沿って移動可能に構成されると好適である。
【0015】
また、本発明に係る棒材取出し方法は、複数の棒材から1本の棒材を取り出す棒材を取り出す棒材取出し方法であって、複数の棒材を収納すると共に棒材を下方から支持する底部を備えた収容溝を有する収納部を用意し、開閉可能な相対向する挟持部材で構成し、これら挟持部材の間に、一方が先細り状となり、他方が前記複数の棒材に向けて末広がりに構成された空間を形成し、かつ、末広がりに形成された前記空間を、前記底部に支持された棒材を挟み込み可能に形成した挟持手段を用意し、前記挟持手段を前記収容部の上方に且つ前記複数の棒材の一端側のうち前記収容溝からはみ出した部分の上方に配置し、前記挟持手段と前記底部に支持された棒材とを相対的に近接させて、前記底部に支持された棒材全部の前記はみ出した部分を挟み込むように、少なくとも前記挟持部材の一方を他方に対して相対移動させて前記挟持部材の最下端部を前記底部に支持された棒材全部よりも下方に位置決めし、前記挟持部材を閉じつつ、前記挟持手段を前記棒材の長手方向断面において、前記棒材の長手方向と直交する方向から前記棒材の他端側に向かって所定の角度傾いた方向に移動させることを特徴とする。
【0016】
また、本発明に係る棒材取出し方法において、前記挟み込まれた前記棒材を、案内部を介してガイドパイプに供給し、前記案内部には、前記挟持部材から落下した前記棒材を前記案内部内に配置されたゲートストッパによって前記案内部内に保持され、前記ゲートストッパは、任意のタイミングで前記棒材を前記ガイドパイプに供給すると好適である。
【0017】
また、本発明に係る棒材取出し方法において、前記挟持部材は、前記棒材の長手方向と直交する方向から3°から15°傾いた方向に沿って移動されると好適である。
【0018】
上記発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではなく、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた発明となり得る。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る棒材取出し装置及び棒材取出し方法は、挟持手段が棒材の長手方向断面において、棒材の長手方向と直交する方向から所定の角度傾いた方向に沿って移動可能に構成されているので、棒材の一端を挟持手段によって持ち上げた場合であっても他端側が一端側へ棒材後退量L分だけ移動することがなく、取出し不良の判定後の棒材解放動作によって、一端側が開放された場合であっても、挟持前の位置に棒材を戻すことができる。この解放後の棒材の位置が移動しないことで、再度挟持手段によって棒材を挟持する場合であっても、正確な挟持動作を行うことが可能となる。
【0020】
また、本発明に係る棒材取出し装置及び棒材取出し方法によれば、棒材加工中に挟持手段によって案内部に設けられたゲートストッパに棒材を取出しておくことができ、また、ゲートストッパからガイドパイプへの棒材の投入は短時間でできるため、新材導入にかかる時間を短縮することができる。
【0021】
また、挟持手段によって取出された棒材は、案内部に設けられたゲートストッパによって案内部にガイドパイプと略平行な姿勢で保持されているので、ゲートストッパを回動させて棒材をガイドパイプに供給する際に、より安定した棒材供給を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施形態に係る棒材取出し装置を備えた棒材供給装置の斜視図。
【
図2】本発明の実施形態に係る棒材取出し装置の動作を説明するための側面図。
【
図3】挟持手段による棒材の挟持動作を説明するための図。
【
図5】本発明の実施形態に係る棒材取出し装置の棒材分離装置の動作を説明するための図。
【
図6】本発明の実施形態に係る棒材取出し装置の挟持手段による棒材の挟持後の動作を説明するための斜視図。
【
図7】従来の取出し動作による棒材の他端部の移動を説明するための拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0024】
図1は、本発明の実施形態に係る棒材取出し装置を備えた棒材供給装置の斜視図であり、
図2は、本発明の実施形態に係る棒材取出し装置の動作を説明するための側面図であり、
図3は、挟持手段による棒材の挟持動作を説明するための図であり、
図4は、
図3におけるA部拡大図であり、
図5は、本発明の実施形態に係る棒材取出し装置の棒材分離装置の動作を説明するための図であり、
図6は、本発明の実施形態に係る棒材取出し装置の挟持手段による棒材の挟持後の動作を説明するための斜視図である。
【0025】
図1に示すように、本実施形態に係る棒材取出し装置1を備えた棒材供給装置は、複数の棒材が収納され、当該複数の棒材から1本の棒材を取出して隣接する図示しない棒材加工装置(例えば旋盤など)に供給する供給部5を有する本体部2と、本体部2を支持する一対の脚部3と、本体部2の下方に設けられ、種々の操作を行う操作部4とを備えている。
【0026】
図2に示すように、本体部2の内部には、長手方向に直交する断面の形状がほぼ正方形に形成され、装置全体を支持するための頑丈な形鋼からなる基台部Bと、この基台部Bの上面に設けられ、複数の棒材W・・Wを束ねて収納している収納部10と、基台部Bの長手方向の一端側に支持され、収納部10の複数の棒材W・・Wの中からただ1本の棒材Wを取出すための挟持装置20と、基台部Bの側部に設けられ、取出された棒材Wを残りの棒材W・・Wと分離してガイドパイプPに供給する為の棒材分離排出装置30とを備えている。
【0027】
収納部10は、基台部Bの上面の棒材分離排出装置30側の側縁部に沿って延びるように設けられ、棒材Wを下方から支持する底部11と、棒材Wが棒材分離排出装置30の方へ崩れ落ちるのを防止するため、底部11の側面に取り付けられた板状のストッパ12と、底部11の逆側の側面に取り付けられ、ほぼL字に形成され、当該収納部10に供給するため薄板状の棒材供給板13とによって構成されている。そして、底部11と、ストッパ12と、棒材供給板13の底部11に取り付けられる縦板部131とによって収納溝14が構成されている。棒材W・・Wは、この収納溝14に積み上げられるようにして収納されていて、長手方向の挟持装置20が存する一端側の先端部分が、当該収納溝14の端部から外側に突出するようにして収納されている(
図6)。また、棒材供給板13は、縦板部131の上端から棒材分離排出装置30と逆側に水平に張り出した棒材案内面132を有している。
【0028】
さらに、この収納部10においては、収納溝14の幅が、挟持装置20を備えた棒材Wの長手方向の一端側の幅より他端側の幅が末広がりになるように形成されている。このように収納溝14の幅を末広がりになるように形成したことによって、棒材W・・Wを他端側では、相互に絡み合わないようにほぐして収納することができ、1本の棒材Wを取出すことを容易にしている。ただし、上述した形態に限らず、一端側の幅を他端側の幅と同寸法にして、一端側の幅方向の途中にストッパを別途立設させて、当該ストッパと棒材供給板の縦板部との間に棒材の一端側を入れて棒材を収納しても構わない。
【0029】
挟持装置20は、基台部Bの一端側に立設され、挟持装置20を支持するブラケットと、このブラケットに下端部が取り付けられ、前記挟持手段23を上下動させるための伸縮可能に取り付けられたロッド22を有するエアシリンダ21と、このロッド22によって上下に移動させられ、棒材Wを挟持するためにはさみのように形成された挟持部23と、挟持部23の上部に挟持部材231,232の上端とリンク機構233を介して取り付けられ、挟持部材231,232を開閉させるエアシリンダ24と、を備えている。
【0030】
挟持部23は、先端が先細りに形成された2つの挟持部材231,232が収納溝14の幅のほぼ中央の支点部230にて相互に枢動可能に連結されるようにして形成され、その先細り部分を下側に向けて取り付けられている。また、挟持部材231,232の上端には、リンク233,234の各々の一端がそれぞれ枢動可能に取り付けられていて、これらリンク233,234の各々の他端は、挟持部23の幅方向の中心位置の連結部235で枢動可能に連結されている。
【0031】
さらに、この挟持部23は、挟持部材231,232を開閉させるためのエアシリンダ24を備えている。エアシリンダ24は、外観が縦長のほぼ直方体に形成されたチューブ241と、このチューブ241の内部を長手方向に沿って摺動するシリンダロッド242を具備している。シリンダロッド242の先端部は、挟持部23に取り付けられたリンク233,234の連結部235に取り付けられている。挟持部23は、このシリンダロッド242が上下することによって挟持部材231,232が支点部230を中心に相互に枢動して、開閉する。そして、この図から明らかなように、挟持部材231,232の間に形成される空間は、三角形を成している。即ち、上部が先細りになる形状に空間が形成されている。なお、この実施形態では、挟持手段23の上下移動をロッド22により、開閉をエアシリンダとリンク機構を使用して行っているが、これには限られず、モータによりベルトやチェーンを使用した巻掛け伝導装置を駆動させたり、送りねじや、歯車の組み合わせによりこれらの動作を行わせても構わない。
【0032】
棒材分離排出手段としての棒材分離排出装置30は、基台部Bの側縁に沿って延びるロッド311(
図5参照)と、このロッド311に挿通されるようにして取り付けられ、ロッド311に沿って移動する移動体312とを備えたシリンダ装置31と、移動体312の上部に取り付けられ、薄板が折り曲げられて形成された棒材分離排出部材32と、挟持装置20によって挟持された1本の棒材WをガイドパイプPまで案内する案内部33と、案内された棒材WがガイドパイプPの反対側に落下するのを防止するくの字に屈曲する板状の落下防止板34とを備えている。そして、棒材分離排出部材32には、外側下方に向けて傾斜する傾斜面321が形成されている。なお、棒材分離排出部材32は、薄板状の部材には限定されず、細長い棒材を折り曲げて形成してもよい。
【0033】
また、案内部33には、長手方向の周方向に回動自在に組み付けられたゲートストッパ40を備えている。ゲートストッパ40は、長手方向に沿った回動軸41に回動自在に取り付けられており、
図2において点線で示すように案内部33に棒材Wを保持している。また、図示しない制御部からの信号によって
図2において実線で示した方向に回動することで、任意のタイミングで棒材WをガイドパイプPに供給することができる。
【0034】
棒材分離排出装置30は、棒材分離排出部材32の傾斜面321を挟持装置20により挟持された1本の棒材を下側から支持しつつ、長手方向(
図2の紙面を貫く方向)に沿って摺動させて、収納部の残りの棒材W・・Wと絡み合っている場合であっても、これらから完全に分離して隣接する棒材供給機のガイドパイプPに供給する。
【0035】
なお、ゲートストッパ40は、
図5に示すように棒材Wの長手方向に沿って所定の間隔で設けられている。このように所定の間隔でゲートストッパ40が設けられているので、案内部33に排出された棒材Wは、ガイドパイプPに対して略平行の姿勢に整えてからガイドパイプPへ棒材を供給することが可能となるので、安定した棒材供給が可能となる。
【0036】
また、棒材加工装置で加工をしている間に、次に加工する棒材を収納溝14から挟持装置20でゲートストッパ40へ取出しておくことができるため、任意のタイミングでゲートストッパ40を回動するだけで棒材WをガイドパイプPへ供給することができ、導入時間の短縮を図ることが可能となる。
【0037】
次に、
図2から
図6を参照して収納部に収納された複数の棒材W・・Wの中からただ1本の棒材Wを取出す際の挟持装置2の作用の詳細を説明する。
【0038】
先ず、挟持装置20のロッド22を降下させて、挟持部23を束ねられた複数の棒材W・・Wが収納される収納溝14の棒材W・・Wの一端側が収納溝14の端面からはみ出している位置まで下げて、挟持部材231,232の間に形成される先細り形状の空間にこれら複数の棒材W・・Wの一端側の先端部分を収容する。次に、エアシリンダ24のシリンダロッド242がチューブ241の内部に収容されるように摺動させ、複数の棒材W・・Wをすべて挟み込むようにして挟持部材231,232を閉じながら挟持部23を徐々に上昇させる。すると、上側に位置し、挟持部材231,232と接触する棒材W・・Wは、上方へと徐々に移動して挟持部材231,232の間に形成される空間の形状に沿った形状(この場合は三角形)に形成される。さらに、挟持部材231,232を閉じながら挟持部23を徐々に上昇させると、下側の棒材W・・Wは落下して収納部10に返却され、先細りの空間の頂部付近に数本の棒材W・・Wが残される。そして最後に頂点部にただ1本の棒材Wのみが残って、挟持部材231,232の間に形成される先細り形状の空間の頂部にこの1本の棒材Wが挟持される。その後、挟持部23の下方をガイドパイプPの方向へ揺動させて、挟持された棒材Wを案内面33に落としやすいようにする。そして最後に、棒材分離排出部材32を備えた移動体312をロッド311に沿わせて挟持装置20を備えた一端側から他端側に移動させてこの1本の棒材Wを他の複数の棒材W・・Wから分離し、棒材取出し装置1から排出して、ガイドパイプPに供給する(
図5,6参照)。
【0039】
図3に示すように、挟持装置20は、棒材Wの一端側を挟持した後、棒材Wの長手方向断面において、棒材の長手方向と直交する方向Zから所定の角度α傾いた方向に沿って移動する。このように挟持装置20が棒材の鉛直方向から所定の角度α傾いた方向に沿って移動するので、挟持された棒材Wの一端側が挟持装置20によって持ち上げられた場合に、
図4に示すように、棒材Wの持ち上げに伴って棒材の他端側が一端側へ移動する量が最小限に抑えることができるので、複数の棒材の挟持不良が生じて、再度棒材の挟持を行う場合であっても、解放された棒材を正しい位置へと戻すことができ、安定した挟持動作を行うことが可能となる。なお、所定の角度αは、望ましくは挟持された棒材Wの他端側を基点として棒材Wが円運動を行うことができるように、他端側を中心とし、棒材Wの長さを半径とする円の接線方向に持ち上げることが望ましいが、棒材Wの自重による撓みなどを考慮して、例えば3~15°程度に構成すると好適である。
【0040】
また、本実施形態に係る棒材取出し装置1は、挟持部が確実に所望の太さの棒材を1本のみ挟持するように、棒材の数、太さの正誤を判断して、誤っている場合には、棒材の挟持をやり直すように制御されている。棒材が正しく挟持されているかの判断は種々の構成を採用することが可能であり、例えば棒材Wが正しく挟持されているか否かを平行光リニアセンサでセンシングする構成を採用しても構わない。センサは、投光センサと受光センサとからなり、投光センサから受光センサに向けて所定幅を有するレーザー光を投光することで投光センサから投光されるレーザー光のうち、投光センサと受光センサとの間に有る物体により遮られたレーザー光の遮光量を測定し、これを電圧として出力することで物体の幅を測定することで判定することができる。
【0041】
ここで、所定の棒材が挟持されていないと判定された場合には、挟持している棒材W・・Wを解放して収納部(
図1参照)に返却し、再度棒材Wの挟持をやり直し、確実に棒材Wを1本だけ挟持するようにしている。
【0042】
なお、センシングの方法は、平行光リニアセンサを使用するものには限られず、レーザーマイクロメータ、光センサ、磁気センサ等その他のセンサを使用しても構わない。
【0043】
なお、以上の実施の形態では、挟持手段の挟持部材の双方が運動するものについて説明したが、これには限定されず、挟持部材の一方のみを運動させてもよい。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれうることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0044】
1 棒材取出し装置, 2 本体部, 3 脚部, 4 操作部, 10 収納部, 20 挟持装置, 21,24 エアシリンダ, 22 ロッド, 23 挟持手段(挟持部), 230 支点軸, 231,232 挟持部材, 30 棒材分離排出装置, 31 シリンダ装置, 32 棒材分離排出部材, 321 傾斜面, 40 ゲートストッパ, B 基台部, W 棒材, P ガイドパイプ。