(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】車両用心電検出装置
(51)【国際特許分類】
A61B 5/26 20210101AFI20221206BHJP
A61B 5/0245 20060101ALI20221206BHJP
A61B 5/304 20210101ALI20221206BHJP
A61B 5/308 20210101ALI20221206BHJP
【FI】
A61B5/26 100
A61B5/26 200
A61B5/0245 C
A61B5/304
A61B5/308
(21)【出願番号】P 2018208188
(22)【出願日】2018-11-05
【審査請求日】2021-05-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】原田 敦
【審査官】▲高▼原 悠佑
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/128559(WO,A1)
【文献】特開平05-095923(JP,A)
【文献】国際公開第2011/018855(WO,A1)
【文献】特開2012-050585(JP,A)
【文献】特開2009-201788(JP,A)
【文献】特開2008-237379(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0125002(US,A1)
【文献】特開2009-050679(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/24-5/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者の左右の手に対応してステアリングホイールに設けられた一対のステアリング電極と、
着座した運転者の心臓の位置より車両下側の車両用シートに設けられたシート電極と、
接地された接地電極と、
2つの入力の差動電圧を検出する検出部と、
前記一対のステアリング電極、前記シート電極、及び前記接地電極のうち心電波形を導出可能な2つの電極を前記検出部の入力として選択的に切り替えて接続する接続部と、
を含
み、
前記接続部は、前記一対のステアリング電極と前記シート電極の各々に対応した複数のスイッチング部を備え、前記スイッチング部の各々は何れも前記検出部の+端子、-端子、及びグランド端子に切替可能とされた車両用心電検出装置。
【請求項2】
前記一対のステアリング電極、前記シート電極、及び前記接地電極のうち予め定めた2つの組み合わせを順次切り替えて、前記検出部によって検出された前記差動電圧の強度が予め定めた閾値以上となる組み合わせを選択するように、前記接続部を制御する制御部を更に含む請求項1に記載の車両用心電検出装置。
【請求項3】
運転者の左右の手に対応してステアリングホイールに設けられた一対のステアリング電極と、
着座した運転者の心臓の位置より車両下側の車両用シートに設けられたシート電極と、
接地された接地電極と、
2つの入力の差動電圧を検出する検出部と、
前記一対のステアリング電極、前記シート電極、及び前記接地電極のうち心電波形を導出可能な2つの電極を前記検出部の入力として選択的に切り替えて接続する接続部と、
前記一対のステアリング電極、前記シート電極、及び前記接地電極のうち予め定めた2つの組み合わせを順次切り替えるように前記接続部を制御し、前記検出部によって検出された前記差動電圧の強度が予め定めた閾値以上となった場合に、当該組み合わせを選択する制御部と、
を含む車両用心電検出装置。
【請求項4】
運転者を識別する識別部を更に含み、
前記制御部が、前記識別部によって識別された運転者毎に前記制御部による制御結果から前記2つの組み合わせを順次切り替える切替順を学習し、前記識別部の識別結果に応じて学習した前記切替順で順次切り替えるように前記接続部を更に制御する請求項2又は請求項3に記載の車両用心電検出装置。
【請求項5】
前記一対のステアリング電極、前記シート電極、及び前記接地電極のうち予め定めた2つの組み合わせを順次切り替えて、前記検出部によって検出された前記差動電圧の強度が最大となる組み合わせを選択するように、前記接続部を制御する制御部を更に含む請求項1に記載の車両用心電検出装置。
【請求項6】
前記検出部を複数含み、
前記接続部が、複数の前記検出部の各々の入力として、前記一対のステアリング電極、前記シート電極、及び前記接地電極のうち2つを選択的に切り替えて接続する請求項1~4の何れか1項に記載の車両用心電検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載され、運転者の心電波形を検出する車両用心電検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ステアリングホイールや車両用シートに電極を設けて、乗員の心電波形を検出する技術が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、車両のステアリングホイールに取り付けられ、運転者の身体電位を検出する第1、第2、及び第3の直接電極と、前記車両のシートに取り付けられ、非接触により前記運転者の身体電位を検出する静電容量結合型電極と、前記第1及び第2の直接電極間の電圧を測定する第1の電圧測定手段と、前記第3の直接電極及び前記静電容量結合型電極の電圧を測定する第2の電圧測定手段と、を備え、前記第1の電圧測定手段の測定結果と前記第2の電圧測定手段の測定結果の、双方又はいずれか一方に基づき運転者の心電図波形を計測する、車両用心電計測装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術では、ステアリングホイールの把持方法や、シートの座り方、着衣の厚さ等によって、生体と生体外の金属板との間でコンデンサを形成し難い場合があり、生体内の電気信号を正確に計測するためには、改善の余地がある。
【0006】
本発明は、上記事実を考慮して成されたもので、生体内の電気信号をより正確に検出可能な車両用心電検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために第1の態様は、運転者の左右の手に対応してステアリングホイールに設けられた一対のステアリング電極と、着座した運転者の心臓の位置より車両下側の車両用シートに設けられたシート電極と、接地された接地電極と、2つの入力の差動電圧を検出する検出部と、前記一対のステアリング電極、前記シート電極、及び前記接地電極のうち心電波形を導出可能な2つの電極を前記検出部の入力として選択的に切り替えて接続する接続部と、を含む。
【0008】
第1の態様によれば、一対のステアリング電極は、運転者の左右の手に対応してステアリングホイールに設けられ、シート電極は、着座した運転者の心臓の位置より車両下側の車両用シートに設けられ、接地電極は接地されている。
【0009】
検出部では、2つの入力の差動電圧が検出される。そして、接続部では、一対のステアリング電極、シート電極、及び接地電極のうち心電波形を導出可能な2つの電極を検出部の入力として選択的に切り替えて接続される。すなわち、接続部により検出部の入力の組み合わせを選択的に切り替えることができるので、検出部の信号強度がより高い組み合わせに接続部を切り替えることにより、生体内の電気信号をより正確に検出することが可能となる。
【0010】
なお、一対のステアリング電極、シート電極、及び接地電極のうち予め定めた2つの組み合わせを順次切り替えて、検出部によって検出された差動電圧の強度が予め定めた閾値以上となる組み合わせを選択するように、接続部を制御する制御部を更に含むようにしてもよい。
【0011】
また、運転者を識別する識別部を更に含み、制御部が、識別部によって識別された運転者毎に制御部による制御結果から2つの組み合わせを順次切り替える切替順を学習し、識別部の識別結果に応じて学習した切替順で順次切り替えるように接続部を更に制御してもよい。
【0012】
また、一対のステアリング電極、シート電極、及び接地電極のうち予め定めた2つの組み合わせを順次切り替えて、検出部によって検出された差動電圧の強度が最大となる組み合わせを選択するように、接続部を制御する制御部を更に含むようにしてもよい。
【0013】
また、検出部を複数含み、接続部が、複数の検出部の各々の入力として、一対のステアリング電極、シート電極、及び接地電極のうち2つを選択的に切り替えて接続してもよい。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように本発明によれば、生体内の電気信号をより正確に検出可能な車両用心電検出装置を提供できる、という効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】第1実施形態に係る車両用心電検出装置の概略構成を示す図である。
【
図2】心電波形生成装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】第1実施形態に係る車両用心電検出装置における差動増幅器の入力端子に接続する電極の組み合わせを示す図である。
【
図4】差動増幅器から出力される心電波形に対応する波形の一例を示す図である。
【
図5】第1実施形態に係る車両用心電検出装置の制御部で行われる処理の流れの第1例を示すフローチャートである。
【
図6】第1実施形態に係る車両用心電検出装置の制御部で行われる処理の流れの第2例を示すフローチャートである。
【
図7】第1実施形態に係る車両用心電検出装置の制御部で行われる処理の流れの第3例を示すフローチャートである。
【
図8】第2実施形態に係る車両用心電検出装置の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施形態に係る車両用心電検出装置の一例を詳細に説明する。
【0017】
(第1実施形態)
まず、第1実施形態に係る車両用心電検出装置10について説明する。
図1は、本実施形態に係る車両用心電検出装置の概略構成を示す図である。
【0018】
本実施形態に係る車両用心電検出装置10は、心電波形生成装置12、一対のステアリング電極16A、16B、及びシート電極18A、18Bを備えている。
【0019】
一対のステアリング電極16A、16Bは、車両の操舵操作を行うためのステアリングホイール14の周方向全域に渡って設けられている。一対のステアリング電極16A、16Bは、運転者の左右の手に対応してステアリングホイール14に設けられている。すなわち、一方のステアリング電極16Aは、ステアリングホイール14の運転者の左手に対応する領域に設けられ、他方のステアリング電極16Bは、ステアリングホイール14の運転者の右手に対応する領域に設けられている。
【0020】
運転者がステアリングホイール14を把持すると、運転者の手がステアリング電極16A、16Bに近接され、運転者の手とステアリング電極16A、16Bとの間に容量結合が生じてコンデンサを形成する。また、ステアリング電極16A、16Bは、心電波形生成装置12に電気的に接続されており、心電波形生成装置12は、ステアリング電極16A、16Bから、心臓の心拍における電気活動に伴うイオン電流変化(交流電流)を電流信号として検出する。
【0021】
シート電極18A、18Bは、車両用シート20に着座した運転者の心臓の位置より車両下側の車両用シート20のシートクッションに設けられており、シートカバー(図示省略)に被覆されている。シート電極18A、18Bは、乗員が車両用シート20に着座することで、乗員の着衣及びシートカバーを介して、乗員の臀部と近接する。一方のシート電極18Bは、心電波形生成装置12に接続され、他方のシート電極18Aは接地されている。なお、
図1では、車両の幅方向(運転者の左右)にシート電極18A、18Bを配列した例を示すが、配列はこれに限るものではない。例えば、車両前後方向(運転者の前後)にシート電極18A、18Bを配列してもよい。或いは、他の方向にシート電極18A、18Bを配列してもよい。また、シート電極18A、18Bは車両用シート20のシートクッション以外の位置に設けてよい。例えば、車両用シート20のシートバックに設けてもよい。
【0022】
心電波形生成装置12は、ステアリング電極16A、16B及びシート電極18Bから入力される電流信号に基づいて、運転者の心電波形を生成する。
【0023】
続いて、心電波形生成装置12の構成について説明する。
図2は、心電波形生成装置12の構成を示すブロック図である。
【0024】
心電波形生成装置12は、接続部24、ボルテージフォロワ26A、26B、検出部としての差動増幅器22、ADC(Analog to Digital Converter)28及び制御部30を備えている。
【0025】
接続部24には、ステアリング電極16A、ステアリング電極16B、及びシート電極18Bが入力側に接続され、出力側にはボルテージフォロワ26A、26Bが接続されている。ボルテージフォロワ26A、26Bは、それぞれ差動増幅器22の入力端子に接続され、インピーダンス変換を行って差動増幅器22の入力信号の強度を強くする。
【0026】
接続部24は、複数(本実施形態では4つ)のスイッチング部24A、24B、24C、24Dを含んで構成され、ボルテージフォロワ26A、26Bに接続された差動増幅器22の入力端子に接続するための電極を選択的に切り替える機能を備えている。本実施形態では、接続部24は、一対のステアリング電極16A、16B、シート電極18B、及び接地電極としてのグランドGNDのうち心電波形を導出可能な2つの電極を差動増幅器22の入力として選択的に切り替えて接続する。
【0027】
スイッチング部24A、24B、24Cは、それぞれ4つの接点を有し、スイッチング24Dは2つの接点を有する。
【0028】
スイッチング部24Aのそれぞれの接点は、ステアリング電極16A、ボルテージフォロワ26A、ボルテージフォロワ26B、グランドGNDに接続されている。
【0029】
また、スイッチング部24Bのそれぞれの接点は、ステアリング電極16B、ボルテージフォロワ26A、ボルテージフォロワ26B、グランドGNDに接続されている。
【0030】
また、スイッチング部24Cのそれぞれの接点は、シート電極18B、ボルテージフォロワ26A、ボルテージフォロワ26B、グランドGNDに接続されている。
【0031】
また、スイッチング部24Dのそれぞれの電極は、ボルテージフォロワ26B、グランドGNDに接続されている。
【0032】
そして、接続部24は、差動増幅器22の入力端子に接続するための電極を選択的に切り替える。接続部24は、電極の組み合わせを選択して各スイッチング部24A~24Dの接続を切り替えることにより、各電極の組み合わせが電極間に運転者の心臓が位置するため、差動増幅器22によって心電波形を検出することができる。
【0033】
本実施形態では、差動増幅器22の入力端子に接続する電極の組み合わせとして、
図3に示す組み合わせが可能とされている。なお、
図3は、本実施形態に係る車両用心電検出装置10における差動増幅器22の入力端子に接続する電極の組み合わせを示す図である。また、
図3では、ステアリング電極16AをEL1、ステアリング電極16BをEL2、シート電極18BをEL3として示す。
【0034】
詳細には、接続部24は、差動増幅器22の+端子にステアリング電極16A及びステアリング電極16Bを接続し、差動増幅器22の-端子にシート電極18Bを接続する。この接続は、運転者の状態としては両手でステアリング操作している状態の場合に行う。
【0035】
また、接続部24は、差動増幅器22の+端子にステアリング電極16Aを接続し、差動増幅器22の-端子にシート電極18Bを接続する。この接続は、運転者の状態としては左手のみでステアリング操作をしている状態の場合に行う。
【0036】
また、接続部24は、差動増幅器22の+端子にステアリング電極16Bを接続し、差動増幅器22の-端子にシート電極18Bを接続する。この接続は、運転者の状態としては右手のみでステアリング操作をしている状態の場合に行う。
【0037】
また、接続部24は、差動増幅器22の+端子にステアリング電極16Aを接続し、差動増幅器22の-端子にステアリング電極16Bを接続する。この接続は、運転者の状態としては生地の厚いズボン等の理由で臀部とシート電極18Bとの距離がある状態の場合に行う。
【0038】
また、接続部24は、差動増幅器22の+端子にステアリング電極16Aを接続し、差動増幅器22の-端子にグランドGNDを接続する。この接続は、運転者の状態としては左手のみでステアリング操作し、かつ臀部とシート電極18Bとの距離がある状態の場合に行う。
【0039】
また、接続部24は、差動増幅器22の+端子にステアリング電極16Bを接続し、差動増幅器22の-端子にグランドGNDを接続する。この接続は、運転者の状態としては右手のみでステアリング操作し、かつ臀部とシート電極18Bとの距離がある状態の場合に行う。
【0040】
また、接続部24は、差動増幅器22の+端子にシート電極18Bを接続し、差動増幅器22の-端子にグランドGNDを接続する。この接続は、運転者の状態としてはステアリングホイール14をしっかり把持していない状態の場合に行う。
【0041】
一方、差動増幅器22は、2つの入力端子に接続された電極の差動電圧を検出してADC28に出力する。具体的には、差動増幅器22は、2つの入力端子に接続された電極からの2つの入力信号の差分を一定係数で増幅する。
【0042】
ADC28は、差動増幅器22から得られるアナログの電気信号をデジタル信号に変換して制御部30に出力する。
【0043】
また、制御部30は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、及びフラッシュメモリ等の不揮発性メモリを含むコンピュータで構成されている。CPUは、メモリに予め記憶されたプログラムを実行することにより、接続部24を制御して、差動増幅器22の入力端子に接続する電極を選択的に切り替える処理を行うと共に、心電波形を生成して出力する。具体的には、制御部30は、上述の
図3の電極の組み合わせに順次切り替えて、信号強度としてのS/N比が予め定めた閾値以上、またはS/N比が最も高い接続に切り替える制御を行う。詳細には、差動増幅器22から出力される心電波形に対応する波形は、
図4に示すように、R波(最大ピーク値)とS波(最小ピーク値)を含むので、制御部30は、S/N比としてR-S波の電位差が閾値以上、或いは最大の電極の組み合わせを検索して切り替える制御を行う。
【0044】
続いて、上述のように構成された本実施形態に係る車両用心電検出装置10の制御部30で行われる具体的な処理について説明する。
図5は、本実施形態に係る車両用心電検出装置10の制御部30で行われる処理の流れの第1例を示すフローチャートである。なお、
図5の処理は、例えば、図示しないイグニッションスイッチがオンされた場合に開始してもよいし、心電波形の検出開始を表す指示が制御部30に行われた開始してもよい。
【0045】
ステップ100では、制御部30が、接続部24の切り替えを行ってステップ102へ移行する。接続部24の切替は、
図3に示す電極の組み合わせの中から1つの電極の組み合わせとなるように切り替える。
【0046】
ステップ102では、制御部30が、差動増幅器22による差動増幅結果を取得してステップ104へ移行する。
【0047】
ステップ104では、制御部30が、接続部24によって電極の組み合わせについて、全ての切り替えが終了したか否かを判定する。該判定は、
図3に示す電極の組み合わせに切り替えて差動増幅結果を取得したか否かを判定する。該判定が否定された場合には、ステップ100に戻って、上述の処理を繰り返して、接続部24の切り替えを変更して差動増幅結果を取得し、判定が肯定された場合にはステップ106へ移行する。
【0048】
ステップ106では、制御部30が、接続部24による接続切り替えを行って一連の処理を終了する。第1例では、制御部30が、全ての電極の組み合わせに切り替えて取得した差動増幅結果のうち、S/N比が最も大きい電極の組み合わせを特定し、当該組み合わせになるように接続部24の切り替えを制御部30が制御する。これにより、生体内の電気信号をより正確に検出することが可能となる。
【0049】
図6は、本実施形態に係る車両用心電検出装置10の制御部30で行われる処理の流れの第2例を示すフローチャートである。なお、
図6の処理は、例えば、図示しないイグニッションスイッチがオンされた場合に開始してもよいし、心電波形の検出開始を表す指示が制御部30に行われた開始してもよい。また、
図5の処理と同一処理については同一符号を付して説明する。
【0050】
ステップ100では、制御部30が、接続部24の切り替えを行ってステップ102へ移行する。接続部24の切替は、
図3に示す電極の組み合わせの中から1つの電極の組み合わせとなるように切り替える。
【0051】
ステップ102では、制御部30が、差動増幅器22による差動増幅結果を取得してステップ103へ移行する。
【0052】
ステップ103では、制御部30が、ステップ102において取得した差動増幅器22による差動増幅結果、すなわち、心電波形のS/N比が予め定めた閾値以上であるか否かを判定する。該判定が否定された場合にはステップ100に戻って、上述の処理を繰り返して、接続部24の切り替えを変更して差動増幅結果を取得し、判定が肯定された場合にはそのまま一連の処理を終了する。すなわち、S/N比が閾値以上の電極の組み合わせに接続部24の切り替えを行うことができる。
【0053】
図7は、本実施形態に係る車両用心電検出装置10の制御部30で行われる処理の流れの第3例を示すフローチャートである。なお、
図7の処理は、例えば、図示しないイグニッションスイッチがオンされた場合に開始してもよいし、心電波形の検出開始を表す指示が制御部30に行われた開始してもよい。また、
図5、6の処理と同一処理については同一符号を付して説明する。
【0054】
ステップ96では、制御部30が、運転者を識別してステップ98へ移行する。運転者の識別は、例えば、運転者に対応する複数のスイッチ等を設けて各スイッチの操作状態から運転者を識別してもよい。或いは、運転者を撮影するカメラを車室内に設けてカメラの撮影画像から予め登録した運転者を識別してもよい。或いは、指紋や顔などの生体認証を行う生体認証部を設けて予め登録した運転者を識別してもよい。なお、ステップ96は識別部に対応する。
【0055】
ステップ98では、制御部30が、識別した運転者に対応する接続部24の切替順を読出してステップ101へ移行する。例えば、
図5に示す第1例の処理を運転者毎に予め行ってS/N比が高い順の切替順を求めて制御部30に記憶しておき、運転者に対応する接続部24の切替順を読み出す。
【0056】
ステップ101では、制御部30が、読み出した切替順に従って接続部24の切り替えを行ってステップ102へ移行する。
【0057】
ステップ102では、制御部30が、差動増幅器22による差動増幅結果を取得してステップ103へ移行する。
【0058】
ステップ103では、制御部30が、ステップ102において取得した差動増幅器22による差動増幅結果、すなわち、心電波形のS/N比が予め定めた閾値以上であるか否かを判定する。該判定が否定された場合にはステップ101に戻って、上述の処理を繰り返して、接続部24の切り替えを次の切替順の電極の組み合わせに変更して差動増幅結果を取得し、判定が肯定された場合にはステップ108へ移行する。すなわち、S/N比が閾値以上の電極の組み合わせに接続部24の切り替えを行うことができる。また、運転者毎の切替順で接続部24の切替を行うので、運転者の癖等を考慮して、S/N比が高い電極の組み合わせに早急に切り替えることができる。
【0059】
ステップ108では、制御部30が、接続部24の切替順を更新して一連の処理を終了する。すなわち、S/N比が高い順に切り替えるので、通常は直ぐに電極の組み合わせを決定できるが、直ぐに決定されない場合には、接続部24の切替順を学習して更新する。例えば、決定した電極の組み合わせの切替順を1つ繰り上げる、或いは、切替順を最初に変更する等のように切替順を更新する。これにより、学習によって切替順が順次更新されて、S/N比の高いで電極の組み合わせを早期に検出することができる。
【0060】
(第2実施形態)
続いて、第2実施形態に係る車両用心電検出装置について説明する。
図8は、本実施形態に係る車両用心電検出装置の概略構成を示す図である。なお、上記実施形態と同一部分については同一符号を付して説明を省略する場合がある。
【0061】
上記の実施形態では、差動増幅器22の入力端子に接続する電極の組み合わせ全てについて信号強度(S/N比)を検出する必要があり、接続部24の切り替えを決定するまでに時間を要する。そこで、本実施形態では、複数の差動増幅器22A、22B、22C(
図8では3つ)と複数のADC28A、28B、28Cを備えて、接続部25の切り替えを決定する時間の短縮を図る。
【0062】
本実施形態に係る心電波形生成装置13は、
図8に示すように、接続部25、ボルテージフォロワ26A~26F、差動増幅器22A~22C、ADC28A~28C、及び制御部31を備えている。
【0063】
接続部25には、ステアリング電極16A、ステアリング電極16B、及びシート電極18Bが入力側に接続され、出力側にはボルテージフォロワ26A~26Fが接続されている。ボルテージフォロワ26A~26Fは、それぞれ差動増幅器22A~22Cの入力端子に接続され、インピーダンス変換を行って差動増幅器22A~22Cの入力信号の強度を強くする。
【0064】
接続部25は、複数(本実施形態では3つ)のスイッチング部25A~25Cを含んで構成され、ボルテージフォロワ26A~26Fに接続された差動増幅器22A~22Cの各入力端子に接続するための電極を選択的に切り替える機能を備えている。本実施形態では、接続部25は、一対のステアリング電極16A、16B、シート電極18B、及びグランドGNDのうち心電波形を導出可能な2つの電極を各差動増幅器22A~22Cの入力として選択的に切り替えて接続する。
【0065】
スイッチング部25A~25Cは、それぞれ4つの接点を有する。また、ステアリング電極16Aは、ボルテージフォロワ26Aに接続され、ステアリング電極16Bはボルテージフォロワ26Cに接続され、シート電極18Bはボルテージフォロワ26Eに接続されている。
【0066】
スイッチング部25Aのそれぞれの接点は、ステアリング電極16B、ボルテージフォロワ26B、シート電極18B、グランドGNDに接続されている。
【0067】
また、スイッチング部25Bのそれぞれの接点は、ステアリング電極16A、ボルテージフォロワ26D、シート電極18B、グランドGNDに接続されている。
【0068】
また、スイッチング部25Cのそれぞれの接点は、ステアリング電極16B、ボルテージフォロワ26F、ステアリング電極16A、グランドGNDに接続されている。
【0069】
そして、接続部25は、3つの差動増幅器22A~22Cの各入力端子に接続するための電極を選択的に切り替える。接続部25は、電極の組み合わせを選択して各スイッチング部25A~25Cの接続を切り替えることにより、各電極の組み合わせが電極間に運転者の心臓が位置するため、各差動増幅器22A~22Cによって心電波形を検出することができる。
【0070】
本実施形態では、3つの差動増幅器22A~22Cで分担して、上述の
図3に示す電極の組み合わせのうち両手でステアリング操作の状態以外の組み合わせによる差動増幅結果を得るようになっている。なお、スイッチング部を更に追加して、
図3に示す電極の組み合わせ全ての差動増幅結果を得る構成としてもよい。
【0071】
一方、差動増幅器22A~22Cのそれぞれは、2つの入力端子に接続された電極の差動電圧を検出してそれぞれに対応して設けられたADC28A~28Cに出力する。具体的には、差動増幅器22A~22Cは、2つの入力端子に接続された電極からの2つの入力信号の差分を一定係数で増幅する。
【0072】
ADC28Aは、差動増幅器22Aの出力端子に接続され、ADC28Bは、差動増幅器22Bの出力端子に接続され、ADC28Cは、差動増幅器22Cの出力端子に接続されている。各ADC28A~28Cは、差動増幅器22A~22Cの各々から得られるアナログの電気信号をデジタル信号に変換して制御部31に出力する。
【0073】
また、制御部31は、上記の実施形態と同様に、CPU、ROM、RAM、及びフラッシュメモリ等の不揮発性メモリを含むコンピュータで構成されている。CPUは、メモリに予め記憶されたプログラムを実行することにより、接続部25を制御して、差動増幅器22A~22Cの各入力端子に接続する電極を選択的に切り替える処理を行うと共に、心電波形を生成して出力する。具体的には、制御部31は、差動増幅器22A~22Cの入力端子に対して、上述の
図3の電極の組み合わせ(両手でステアリング操作状態を除く)に順次切り替えて、S/N比が予め定めた閾値以上、またはS/Nが最も高い接続に切り替える制御を行う。本実施形態においても、制御部31は、S/N比としてR-S波の電位差が閾値以上、或いは最大の電極の組み合わせを検索して切り替える制御を行う。本実施形態では、3つの差動増幅器22A~22Cで分担して、電極の組み合わせ毎の差動増幅結果を検出できるので、上記の実施形態よりも短時間で、S/N比が高い電極の組み合わせを検出することが可能となる。S/N比が高い電極の組み合わせの検出方法としては、上記実施形態のように、全ての電極の組み合わせに切り替えて信号強度が最大の電極の組み合わせを選択してもよい。或いは電極の組み合わせを順次切り替えて閾値以上の組み合わせを選択するようにしてもよい。また、信号強度が閾値以上の電極の組み合わせに切り替える場合には、切替順を上記実施形態のように学習してもよい。
【0074】
なお、上記の各実施形態では、2つのシート電極18A、18Bを備える例を説明したが、これに限定されるものではなく、接地されたシート電極18Aは省略してもよい。接地されたシート電極18Aによりノイズを抑制することが可能であるが、シート電極18Aを省略しても心電波形を生成することは可能である。
【0075】
また、上記の実施形態における制御部30、31で行われる処理は、ソフトウエアの処理として説明したが、これに限るものではない。例えば、ハードウエアで行う処理としてもよいし、ハードウエアとソフトウエアの双方を組み合わせた処理としてもよい。
【0076】
また、上記の実施形態における制御部30、31で行われる処理は、プログラムとして記憶媒体に記憶して流通させるようにしてもよい。
【0077】
さらに、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0078】
10・・・車両用心電検出装置、12・・・心電波形生成装置、13・・・心電波形生成装置、14・・・ステアリングホイール、16A・・・ステアリング電極、16B・・・ステアリング電極、18B・・・シート電極、20・・・車両用シート、22・・・差動増幅器、22A~22C・・・差動増幅器、24・・・接続部、25・・・接続部、30・・・制御部、31・・・制御部、GND・・・グランド