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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】ビームホッピング同期システム
(51)【国際特許分類】
   H04B 7/185 20060101AFI20221206BHJP
【FI】
H04B7/185
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020522915
(86)(22)【出願日】2018-11-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-15
(86)【国際出願番号】 GB2018053438
(87)【国際公開番号】W WO2019106357
(87)【国際公開日】2019-06-06
【審査請求日】2021-11-24
(31)【優先権主張番号】17275189.3
(32)【優先日】2017-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】512276430
【氏名又は名称】エアバス ディフェンス アンド スペイス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロウズ、スティーブ
【審査官】佐藤 敬介
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-108375(JP,A)
【文献】特開2004-304287(JP,A)
【文献】特開2002-084223(JP,A)
【文献】特開平05-167487(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0026961(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第106385275(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/185
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
衛星用のペイロードであって、
複数のビームフォーミングネットワークと、
通信ネットワークの地上局からデータシーケンスにおけるデータを受信し、受信した前記データを前記複数のビームフォーミングネットワークにより生成されるそれぞれの複数の衛星ビームを介して伝送するように構成された通信手段と、
ビームホッピングシーケンスを格納するためのストレージ手段と、
前記地上局からの前記データシーケンスと同期された方式での、格納された前記ビームホッピングシーケンスに従った、前記通信手段によるデータの伝送を制御するように構成されたコントローラと、
前記ペイロードと前記地上局とに共通するマスタークロック信号から導出される予め定められた期間により分離されたクロックリセット時間において同期パルスを生成するための同期パルス生成器と
を備え、
前記コントローラは、
(i)前記地上局から前記ビームホッピングシーケンスの更新を受信し、
(ii)前記ビームホッピングシーケンスが更新されるそれぞれの前記複数の衛星ビームのうちの1または複数を決定し、同期パルスの受信に応答するそれぞれの前記複数の衛星ビームのうちの決定された前記1または複数に関連するそれぞれの1または複数のビームフォーミングネットワークを構成し、
(iii)前記同期パルス生成器に対して制御コマンドを発行して、生成された同期パルスを前記複数のビームフォーミングネットワークの各々にクロックリセット時間において放出することで、同期パルスの受信に応答するように構成された前記1または複数のビームフォーミングネットワークに、前記地上局において前記クロックリセット時間の観測が可能となるよう前記クロックリセット時間と同期された時間において、更新された前記ビームホッピングシーケンスを実装させ、
(iv)格納された前記ビームホッピングシーケンスを更新する
ように構成される、
ペイロード。
【請求項2】
前記マスタークロック信号を生成するためのマスタークロック生成器を備える、請求項1に記載のペイロード。
【請求項3】
格納されたビームホッピングシーケンスにより、それぞれの前記複数の衛星ビームの複数の滞留時間が定義され、前記複数の滞留時間は、前記マスタークロック信号に従って実装される、請求項1または請求項2に記載のペイロード。
【請求項4】
前記クロックリセット時間は、前記マスタークロック信号のクロックサイクルの開始と一致し、第1のクロックリセット時間と第2のクロックリセット時間との間の前記予め定められた期間は、前記第1のクロックリセット時間と前記第2のクロックリセット時間とが前記マスタークロック信号のクロックサイクルの整数倍だけ離れているようなものである、
請求項1から3のいずれか一項に記載のペイロード。
【請求項5】
前記コントローラは、前記第1のクロックリセット時間と前記第2のクロックリセット時間との間の第1の整数のクロックサイクルを決定するように構成され、かつ、前記第2のクロックリセット時間が前記ビームホッピングシーケンスを更新する時間に対応している場合、前記第1の整数を前記第2のクロックリセット時間において第2の異なる整数へ更新して前記第2のクロックリセット時間と第3のクロックリセット時間との間のクロックサイクルの数を定義するように構成される、
請求項4に記載のペイロード。
【請求項6】
前記予め定められた期間は、ビームホッピングシーケンスの持続時間の整数倍に対応する、請求項1から5のいずれか一項に記載のペイロード。
【請求項7】
前記制御コマンドは、前記マスタークロック信号に関連付けられたタイムタグにより定義される、次に生じるリセット時間の前の予め定められた時間において発行される、請求項1から6のいずれか一項に記載のペイロード。
【請求項8】
前記ストレージ手段は、少なくとも第1のメモリ位置および第2のメモリ位置を有し、前記第1のメモリ位置は、前記ビームホッピングシーケンスを格納するように構成され、前記第2のメモリ位置は、更新された前記ビームホッピングシーケンスを格納するように構成される、請求項1から7のいずれか一項に記載のペイロード。
【請求項9】
地上局であって、
アップリンクを介して複数のデータフレームを衛星ペイロードへ伝送し、制御チャネルを介して制御情報を前記衛星ペイロードへ伝送するための通信手段と、
前記地上局と前記衛星ペイロードとに共通するマスタークロック信号と同期されたデータシーケンスに従って前記複数のデータフレームを伝送し、前記衛星ペイロード用の更新されたビームホッピングシーケンスを定義する前記衛星ペイロードへ情報を伝送するよう前記通信手段を制御するためのコントローラと
を備え、
前記コントローラは、前記衛星ペイロードにおける前記ビームホッピングシーケンスの更新を観測し、前記ビームホッピングシーケンスを更新するための命令が出された第1の時点を決定するように構成され、
前記コントローラは、前記ビームホッピングシーケンスを更新するための将来の命令を出すことができる前記第1の時点に基づいて計算される一連の第2の時点を決定するように構成され、かつ、前記一連の第2の時点のうちの1つと同期された時間を発生させる前記ビームホッピングシーケンスのさらなる更新に応答して、前記一連の第2の時点のうちの1つに対応する時間において、1または複数のさらなる地上局により用いられるそれぞれのデータシーケンスを更新するようそれぞれの前記1または複数のさらなる地上局を構成するように構成される、
地上局。
【請求項10】
前記コントローラはさらに、
データフレームの伝送におけるデータシンボルレートを調節すること、
前記データフレームの伝送のデータフレーム開始時間を調節すること、
データフレームにパイロット信号を挿入するか、または前記データフレームから前記パイロット信号を除去すること
のうちの少なくとも1つにより、前記データシーケンスにおける前記データフレームを、ビームホッピングシーケンスにより定義される切り替えに揃えるように構成される、
請求項9に記載の地上局。
【請求項11】
請求項1から8のいずれか一項に記載のペイロードと、請求項9または請求項10に記載の地上局とを備え、前記ペイロードは、前記1または複数のさらなる地上局と通信するように構成され、かつ、前記地上局により提供される情報を用いて前記1または複数のさらなる地上局と同期するように構成される、通信システム。
【請求項12】
通信ネットワークの地上局において実行されるビームホッピングシステム同期の方法であって、
ビームホッピングシーケンスを実装するように構成された衛星ペイロードへ前記地上局からのデータを伝送するためのデータシーケンスを決定する段階であって、前記データシーケンスは、前記地上局と前記衛星ペイロードとに共通するマスタークロック信号と同期される、段階と、
更新されるビームホッピングシーケンスを前記衛星ペイロードへ伝送する段階と、
前記衛星ペイロードにおける前記ビームホッピングシーケンスの更新を観測し、前記ビームホッピングシーケンスを更新するための命令が出された第1の時点を決定する段階と、
前記第1の時点に基づいて計算される、前記ビームホッピングシーケンスを更新するための将来の命令を出すことができる一連の第2の時点を決定する段階と、
前記一連の第2の時点のうちの1つと同期された時間を発生させる前記ビームホッピングシーケンスのさらなる更新に応答して、前記一連の第2の時点のうちの1つに対応する時間において、それぞれの1または複数のさらなる地上局により用いられるそれぞれのデータシーケンスを更新するよう、前記1または複数のさらなる地上局を構成する段階と
を備える方法。
【請求項13】
前記地上局はさらに、
前記データの伝送におけるデータシンボルレートを調節すること、
前記データの伝送のデータフレーム開始時間を調節すること、
データフレームにパイロット信号を挿入するか、または前記データフレームから前記パイロット信号を除去すること
のうちの少なくとも1つにより、前記データシーケンスにおけるデータフレームを、ビームホッピングシーケンスにより定義される切り替えに揃える、
請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信システムの地上セグメントと衛星セグメントとの間の同期に関し、特に、通信システムの衛星セグメントにおいて使用されるビームカバレッジシーケンスの更新と、通信システムの地上セグメントにおいて使用されるデータ切り替えとの同期に関する。
【背景技術】
【0002】
衛星通信システムでは、スループットを最大化して利用可能なリソースの使用を最適化すべく、アンテナ切り替えシーケンスが典型的に使用される。アンテナ切り替えシーケンスは、特定の時間においてアンテナから伝送されるかまたはアンテナにより受信される特定の衛星ビームによりカバーされる地球上の地理的エリアを表す一組のカバレッジと、衛星ビームが特定の地理的カバレッジを維持すべき期間を定義した対応する一組の滞留時間とにより定義される。切り替えでは、衛星におけるビームフォーミングネットワークの適切な制御が、対応する滞留時間にわたって伝送ビームまたは受信ビームがシーケンスにおける次のカバレッジエリアに向けられることにつながる。切り替えは、予め定義されたシーケンスの終了までこのようにして続き、反対の命令が無い場合、その時点でシーケンスが再開される。
【0003】
このようにして、異なるそれぞれの位置における多数の異なる地上局が、同じ衛星と時分割ベースで通信し得るので、衛星通信システム内の利用可能なハードウェアによりこれらの位置の全てにサービスが提供され得ることが保証される。切り替えは、典型的には迅速なものであり、数ミリ秒程度の滞留時間がある。切り替えは、異なる領域間でサービスリソースを効率的に共有すべく、電力またはスペクトルの管理と併せて使用され得る。
【0004】
アンテナ切り替えシーケンスは、本明細書においてビームホッピングシーケンス(BHS)と称される。BHSでは、予め定められた一連の滞留時間に基づいて、衛星ビームがカバレッジエリア間で「ホップ」される。BHSは、地上制御センタからアップロードされ、衛星に格納される。
【0005】
そのようなアンテナ切り替えスキームにより提供される強化された接続を十分に利用すべく、対応する方式で通信ネットワークの地上セグメントを制御することが必要である。このことなくして、アップリンクを介して伝送されるデータは、目的地へ効率的に到達し得ない。なぜなら、当該データが特定のデータフレームでアップロードされ得る間、フレーム自体はBHSと揃えられ得ないからである。その影響は、地上セグメントのデータ切り替えに対して中間フレームである時間においてビームホッピングが衛星で生じ得るというものである。これにより、地上セグメントデータフレームが、BHSにおける切り替えのいずれの側でも異なるカバレッジエリアへ部分的に伝送されるが、単一のエリアへの伝送が意図されていることになる。
【0006】
故に、BHSを使用する衛星へ伝送されるデータのために時分割多重化(TDM)を用いると、ネットワークの地上セグメントの多重化方式とBHS内での切り替えの多重化方式との間の同期が必要となる。
【0007】
変化する環境、干渉源、トラフィック要件、利用可能な容量等に適合するよう、地上制御センタに完全な柔軟性および制御を提供するために、新しいBHSを衛星ネットワークにアップロードすることによりBHSを修正することが可能である。これにより、衛星ネットワークは、それに応じて適合し得る。故に、地上セグメントと衛星セグメントとの間で必要とされるさらなるレベルの同期、すなわち、BHSの更新と地上セグメントにおいて使用されるデータ切り替えスキーム(例えば、TDM)との間の同期が行われる。そのような同期がなされないと、異なるスキームに基づいてデータが衛星セグメントのアンテナ切り替えから地上セグメントにおいて切り替えられる期間が生じる。
【0008】
COMSAT Technical Review第22巻(1992年)は、衛星における動的なビーム切り替えを提供するための「衛星切り替え時分割多元アクセス(SSTDMA)」多重化方式を開示している。当該多重化方式は、地上セグメントにおいて使用されるTDMAスキームと同期され得る。SSTDMAスキームは、同期単位の取得を可能にして地上セグメントと衛星セグメントとの間の同期を決定するために同期データが伝送されるセクションを含むようにデータフレームを構造化することに依存する。従って、このスキームは、各データフレームのトラフィック保持部分を除去してそのような同期データ受け入れることを必要とするが故に、そのような同期データの取得とその後の処理とに必要とされる時間のせいで、アンテナ切り替えにおける連続的な変更を実装するのは不可能である。
【0009】
Airbus Defence and Space (Alberty他)著、System Synchronisation For Beam Hopping in Multi-beam Satellite Networksは、前のBHSの終わりにアクティブ化をするために新しいBHSが地上コントローラから衛星へアップロードされ得る技術を開示している。新しいビームホッピングプランの適用の予想時間は、衛星および地上のゲートウェイの両方に送信され、2つの予想適用時間の間の伝搬オフセットの対象となる。ゲートウェイと衛星との間で揃えることは、衛星およびゲートウェイが共通の時間基準をBHSシーケンスの持続時間の半分よりも良い精度で共有することに基づいて実現される。
【発明の概要】
【0010】
本発明の実施形態は、改良された手順および関連するハードウェアを提供することを目的とする。これらにより、衛星が予め定義されたそれぞれのシーケンスに従ってアンテナカバレッジを切り替えて、アンテナシーケンスの切り替えを地上データシーケンス切り替えと揃えることが可能になる。
【0011】
本発明の態様によれば、衛星用のペイロードが提供される。
ペイロードは、
複数のビームフォーミングネットワークと、
通信ネットワークの地上セグメントからデータシーケンスにおけるデータを受信し、受信したデータを複数のビームフォーミングネットワークにより生成されるそれぞれの複数の衛星ビームを介して伝送するように構成された通信手段と、
ビームホッピングシーケンスを格納するためのストレージ手段と、
地上セグメントからのデータシーケンスと同期された方式での、格納されたビームホッピングシーケンスに従った、通信手段によるデータの伝送を制御するように構成されたコントローラと、
衛星ペイロードと地上セグメントとに共通するマスタークロック信号から導出される予め定められた期間により分離された、地上セグメントにおいて観測可能なリセット時間において同期パルスを生成するための同期パルス生成器と
を備え、
コントローラは、
(i)地上セグメントからビームホッピングシーケンスの更新を受信し、
(ii)ビームホッピングシーケンスが更新される複数の衛星ビームのうちの1または複数を決定し、同期パルスの受信に応答する決定された1または複数の衛星ビームに関連するそれぞれの1または複数のビームフォーミングネットワークを構成し、
(iii)同期パルス生成器に対して制御コマンドを発行して、生成された同期パルスを複数のビームフォーミングネットワークの各々にリセット時間において放出することで、地上セグメントにおいてリセット時間の観測が可能となるようにし、同期パルスの受信に応答するように構成された1または複数のビームフォーミングネットワークに、リセット時間と同期された時間において、更新されたビームホッピングスキームを実装させ、
(iv)格納されたビームホッピングシーケンスを更新する
ように構成される。ペイロードは、マスタークロック信号を生成するためのマスタークロック生成器を備えてよい。
【0012】
格納されたビームホッピングシーケンスにより、それぞれの複数の衛星ビームの複数の滞留時間が定義されてよく、複数の滞留時間は、マスタークロック信号に従って実装されてよい。
【0013】
リセット時間は、マスタークロック信号のクロックサイクルの開始と一致してよく、第1のリセット時間と第2のリセット時間との間の予め定められた期間は、第1のリセット時間と第2のリセット時間とがマスタークロック信号のクロックサイクルの整数倍だけ離れているようなものであってよい。
【0014】
コントローラは、第1のリセット時間と第2のリセット時間との間の第1の整数のクロックサイクルを決定するように構成され、かつ、第2のリセット時間がビームホッピングシーケンスを更新する時間に対応している場合、第1の整数を第2のリセット時間において第2の異なる整数へ更新して第2のリセット時間と第3のリセット時間との間のクロックサイクルの数を定義するように構成されてよい。
【0015】
予め定められ期間は、ビームホッピングシーケンスの持続時間の整数倍に対応してよい。
【0016】
制御コマンドは、マスタークロック信号に関連付けられたタイムタグにより定義される、次に生じるリセット時間の前の予め定められた時間において発行されてよい。
【0017】
ストレージ手段は、少なくとも第1のメモリ位置および第2のメモリ位置を有してよく、第1のメモリ位置は、ビームホッピングシーケンスを格納するように構成されてよく、第2のメモリ位置は、更新されたビームホッピングシーケンスを格納するように構成されてよい。
【0018】
本発明の別の態様によれば、ゲートウェイが提供される。
ゲートウェイは、
アップリンクを介して複数のデータフレームを衛星ペイロードへ伝送し、制御チャネルを介して制御情報を衛星ペイロードへ伝送するための通信手段と、
地上局と衛星ペイロードとに共通するマスタークロック信号と同期されたデータシーケンスに従ってデータフレームを伝送し、衛星ペイロード用の更新されたビームホッピングシーケンスを定義するペイロードへ情報を伝送するよう通信手段を制御するためのコントローラと
を備え、
コントローラは、衛星ペイロードにおけるビームホッピングシーケンスの更新を観測し、ビームホッピングシーケンスを更新するための命令が出された第1の時点を決定するように構成され、
コントローラは、ビームホッピングシーケンスを更新するための将来の命令を出すことができる第1の時点に基づいて計算される一連の第2の時点を決定するように構成され、かつ、第2の時点のうちの1つと同期された時間を発生させるビームホッピングシーケンスのさらなる更新に応答して、第2の時点のうちの1つに対応する時間において、1または複数の地上局により用いられるそれぞれのデータシーケンスを更新するようそれぞれの1または複数の地上局を構成するように構成される。
【0019】
コントローラはさらに、
データの伝送におけるデータシンボルレートを調節すること、
データの伝送のデータフレーム開始時間を調節すること、
データフレームにパイロット信号を挿入するか、またはデータフレームからパイロット信号を除去すること
のうちの少なくとも1つにより、データフレームシーケンスにおけるデータフレームを、ビームホッピングシーケンスにより定義される切り替えに揃えるように構成されてよい。
【0020】
本発明の別の態様によれば、通信システムが提供される。
通信システムは、上記衛星ペイロードおよび上記ゲートウェイを備え、
ペイロードは、1または複数のさらなる地上局と通信するように構成され、ゲートウェイにより提供される情報を用いて1または複数のさらなる地上局と同期するように構成される。
【0021】
本発明の別の態様によれば、通信ネットワークのゲートウェイにおいて実行されるビームホッピングシステム同期の方法が提供される。
方法は、
ビームホッピングシーケンスを実装するように構成された衛星ペイロードへゲートウェイからのデータを伝送するためのデータシーケンスを決定する段階であって、データフレームシーケンスは、ゲートウェイと衛星ペイロードとに共通するマスタークロック信号と同期される、段階と、
更新されたビームホッピングシーケンスを衛星ペイロードへ伝送する段階と、
衛星ペイロードにおけるビームホッピングシーケンスの更新を観測し、ビームホッピングシーケンスを更新するための命令が出された第1の時点を決定する段階と、
第1の時点に基づいて計算される、ビームホッピングシーケンスを更新するための将来の命令を出すことができる一連の第2の時点を決定する段階と、
第2の時点のうちの1つと同期された時間を発生させるビームホッピングシーケンスのさらなる更新に応答して、第2の時点のうちの1つに対応する時間において、それぞれの1または複数の地上局により用いられるそれぞれのデータシーケンスを更新するよう、1または複数の地上局を構成する段階と
を備える。
【0022】
地上局はさらに、
データの伝送におけるデータシンボルレートを調節すること、
データの伝送のデータフレーム開始時間を調節すること、
データフレームにパイロット信号を挿入するか、またはデータフレームからパイロット信号を除去すること
のうちの少なくとも1つにより、データフレームシーケンスにおけるデータフレームを、ビームホッピングシーケンスにより定義される切り替えに揃えてよい。
【0023】
本発明の実施形態により、衛星と通信システムの地上セグメントとの間の接続を失うことなくBHSを変更することが可能になる。本発明の実施形態は、地上セグメントによるタイミング信号の解釈を必要としないが、BHSの変更が衛星において生じる正確な時間の予測に基づく方式でこの同期を実現する。実施形態は、現在利用可能なものよりも効率的かつ正確な地上セグメントと衛星セグメントとの間の同期を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
本発明の実施形態は、以下の例に関して、例としてのみ説明される。
図1】本発明の実施形態による通信システムを示す。
図2】本発明の実施形態によるゲートウェイを示す。
図3A】本発明の実施形態により用いられるビームホッピングシーケンス切り替えの原理を示す。
図3B】本発明の実施形態により用いられるビームホッピングシーケンス切り替えの原理を示す。
図4】本発明の実施形態によるビームホッピングシーケンスの更新を命令するための制御方法を示す。
図5】本発明の実施形態による衛星ペイロードを示す。
図6】本発明の実施形態によるビームホッピングシーケンスの更新を示すタイミング図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、本発明の実施形態による通信システム10を示す。通信システム10は、地上セグメント12および衛星14を備える。地上セグメント12は、衛星14を介して1または複数のユーザ端末18a-fにサービスを提供するものとして示される、本明細書において基準ゲートウェイと称されるゲートウェイ16を含む。しかしながら、サービスを提供され得るユーザ端末の数に制限がないことが理解されよう。基準ゲートウェイ16は、衛星14と通信し、アップリンクを介してデータを衛星14へ伝送し、ダウンリンクを介してデータを衛星から受信する。
【0026】
基準ゲートウェイ16は、以下に説明されるように、データ切り替えシーケンスの同期など、地上セグメント12の動作機能を制御および管理するネットワークコントローラ(不図示)を含む。本実施形態において、ネットワークコントローラは、以下で説明される衛星14の動作機能も制御および管理する。他の実施形態において、衛星管理制御機能は、基準ゲートウェイ16から地上セグメント12に別々に配置された衛星制御センタSCCにより実行される。
【0027】
衛星14は、通信システム10のニーズに対してサービスを提供するのに適切な任意の軌道または軌道の組み合わせで構成される。衛星14は、BHSに従って基準ゲートウェイ16と通信する。BHSでは、衛星14におけるビームフォーミングネットワークが、新しい対応する滞留時間にわたって異なる地理的エリア内の異なるユーザ端末にサービスを提供するよう切り替わる前に、対応する滞留時間にわたって特定の地理的エリア内の特定のユーザ端末にサービスを提供するよう伝送ビームまたは受信ビームを構成する。複数の伝送ビーム、複数の受信ビームまたは伝送ビームと受信ビームとの組み合わせの各々は、それぞれのBHSに従って構成され得る。
【0028】
衛星14の構成は、図1の実施形態では基準ゲートウェイ16である地上局から制御される。本実施形態における基準ゲートウェイ16は、トラフィック、環境、干渉、使用等の変化に応じた、衛星14へのビームホッピングシーケンスのアップロードと、周波数スキームおよび電力スキームなどの動作パラメータの構成とを担う。
【0029】
図2は、本発明の実施形態による図1の基準ゲートウェイ16の詳細な構成を示す。基準ゲートウェイ16は、アップリンク22を介して信号を衛星14へ放射するためのトランスミッタ21と、ダウンリンク24を介して信号を衛星14から受信するためのレシーバ23とを有する。衛星14との通信は、時分割、周波数分割またはそれらの組み合わせなどの多数の多重化方式のうちのいずれかを使用し得る。基準ゲートウェイ16は、アナログ-デジタル変換手段、デジタル-アナログ変換手段、増幅器、変調復調手段、フィルタリング等を含む、当技術分野において公知である、信号を伝送のために処理し、かつ、受信した信号を処理するための処理モジュール25を有する。基準ゲートウェイ16は、以下に説明されるネットワークコントローラ26およびフレームカウンタ27も有する。ネットワークコントローラ26は、1または複数のプロセッサおよび関連するメモリにより実装され、制御チャネル28で衛星と通信し、アップリンク22およびダウンリンク24において用いられるトラフィックチャネルから分離した処理モジュール25とも通信する。基準ゲートウェイ16は、ワールドワイドウェブなどの他の外部ネットワークと通信するための通信手段29を有してよい。
【0030】
処理モジュール25は、データ切り替えスキームを実装する。当該スキームでは、衛星への信号の伝送および衛星からの信号の受信のデータフレームにおけるタイムスロットに時分割多重化(TDM)などの多重化方式が適用される。
【0031】
図3Aは、第1のデータ切り替えシーケンス31に従って伝送されるデジタル信号のデータ切り替えシーケンスのフレームの例を示す。この例では、データが、時分割多重化スキームに基づいて、ローカルな地理的エリアにおけるユーザ端末から3つの異なる遠く離れた地理的エリアにおけるユーザ端末へと、衛星14を介して伝送される。タイムスロットtは、ユーザ端末Aへ伝送されるデータを含む。タイムスロットtは、ユーザ端末Bへ伝送されるデータを含む。タイムスロットtは、ユーザ端末Cへ伝送されるデータを含む。tの後に、新しいフレームが始まり、データがユーザ端末Aへ再び伝送される。タイムスロットtとtとの間の境界およびタイムスロットtとtとの間の境界は、本明細書において、データ切り替え時間と称される。
【0032】
図3Bは、第2のデータ切り替えシーケンス32に従って伝送される信号において用いられるデータフレームを示す。タイムスロットtは、ユーザ端末Aへ伝送されるデータを含む。タイムスロットtは、ユーザ端末Cへ伝送されるデータを含む。タイムスロットtは、ユーザ端末Bへ伝送されるデータを含む。
【0033】
図3Aおよび図3Bに示される例において、タイムスロットt~tは、持続時間が互いに等しくてもよく、各々が異なる持続時間を有してもよい。
【0034】
衛星14は、データをユーザ端末A、BおよびCへ時分割ベースで伝送すべく、BHSを実装する。衛星14におけるBHSをシーケンスA->B->CからシーケンスA->C->Bへと調節するには、図3Aの第1のシーケンスから図3Bの第2のシーケンスへの、地上データ切り替えシーケンスの対応する変更が必要となる。
【0035】
本発明の実施形態におけるユーザ端末へのデータのルーティングを最適化すべく、BHSは、以下でより詳細に説明される処理に従って、地上データ切り替えとアンテナ切り替えとが揃えられるように、信号伝送においてデータフレームのタイムスロットと揃えられる。この揃えることは、衛星内のマスター発振器から導出され得るマスタークロックに対してのものであるか、または、地上局または衛星セグメント内の別の衛星であり得る外部基準から提供されるクロック信号に対してのものである。地上データ切り替えとアンテナ切り替えとが揃えられる場合、地上セグメントにおけるデータ切り替え時間は、地上セグメントから衛星セグメントへの信号の伝搬を原因として、伝搬遅延τの対象となる衛星におけるデータ切り替え時間に対応する。伝搬遅延は、基準ゲートウェイのネットワークコントローラにより、衛星および基準ゲートウェイの相対位置の認識に基づいて、固定され得るか、または動的に決定され得る。
【0036】
図3Aの第1のデータ切り替えシーケンス31に対応する、衛星14における単一の伝送ビームのBHSの例が、図3Aに点線33で示される。これは、エリアAからエリアB、そしてエリアCへの伝送ビームのホッピングを示している。
【0037】
[アンテナ切り替えと地上データ切り替えを揃えること]
地上および衛星におけるシーケンス切り替えを揃える前に、以下でより詳細に説明されるBHS更新を反映するために、本発明の実施形態に従って、地上セグメントと衛星のアンテナとにおけるデータフレーム内の切り替えが揃っていることを検証すべく、処理が実行される。
【0038】
基準ゲートウェイ16は、シーケンスにおける少なくとも1つのホップの観測に基づいて、地上セグメント12全体についてデータ切り替えを揃える。基準ゲートウェイ16は、マスタークロックに対して、基準ゲートウェイ16が前に位置していたビームカバレッジエリアに存在しなくなる時間、または、基準ゲートウェイ16のカバレッジが始まる時間のいずれかを特定することにより、ビームシーケンスにおけるホップを観測できる。ホップの観測のタイミングは、伝搬遅延τに加えられる、衛星14に実装されたホップの時間に対応することになる。1つよりも多くのホップを観測することにより、基準ゲートウェイ16は、独自の観測時間の検証、平均化の実行等が可能になる。これにより、例えば、信号受信に対する瞬間的な障害により生じる観測上の問題を回避できる。
【0039】
観測される時間は、ネットワークコントローラ26により認識および制御される地上セグメント12のデータ切り替え時間と相関する。既に揃っている場合、調節する必要はない。しかしながら、地上セグメント12におけるデータ通信のフレームがホップのタイミングと揃えられていない場合、ネットワークコントローラ26は、時分割多重化スキームにおいて用いられるフレームの開始を進めるかまたは遅らせることにより、データシンボルレートおよびデータフレーム開始時間のうちの1または複数の調節を実行する。
【0040】
シーケンス切り替えを揃えることを実装する前にこの処理を実行するだけでなく、揃えることをトラフィック動作中に継続的に維持することもできる。これらの状況において、ネットワークコントローラ26は、例えば、基準ゲートウェイ16と衛星14との間の相対位置のわずかな変化に起因する小さなずれまたはクロック信号におけるドリフトを予測でき、上述のようにシーケンスを揃える前に使用され得る「粗調整」とは反対の「微調整」を実行できる。粗調整は、シンボルレートの調節とデータフレームへの時間の遅延または前進の適用とを用いて実行され得るが、微調整は、データストリームにおけるパイロット信号を用いて実行され得る。
【0041】
パイロットシンボルは、情報コンテンツを有しない効果的なダミー信号であり、単一のクロックサイクルを表す。パイロット信号は、データフレームの長さを増やすべくデータフレームに挿入され得るか、または、フレームの長さを減らすべくデータフレームから除去され得る。このようにして、データフレームの期間は、データフレームの情報コンテンツを変えることなく、かつ、多重化方式の使用を損なうことなく、特定の数のクロックサイクルに基づいて微調整され得る。
【0042】
地上セグメント12全体にわたるデータフォーマットの同期がまず、上述のように基準ゲートウェイ17および関連するローカルユーザ端末におけるデータフレームを衛星14におけるビームホップに同期させることにより実現され、次に、伝搬遅延の原因となる同期情報(マスタークロックに対するタイミングを指定する情報など)が、「順方向リンク」、すなわち、基準ゲートウェイ16と衛星14との間のアップリンク22および衛星14とユーザ端末18a-fとの間のダウンリンクでユーザ端末18a-fへ転送される。
【0043】
[ビームホッピングシーケンスの更新]
衛星14におけるビームホッピングシーケンスは、ネットワークコントローラ26により経時的に更新され得る。いくつかの実施形態において、ネットワークコントローラ26は、特定の通信スケジュールを反映した、1週間などの特定の将来の期間にわたって用いられる複数のBHSを格納する。例えば、伝送されるデータが複数の異なる地理的エリアに提供されるローカルテレビコンテンツを反映しているシステムの場合、テレビ番組のスケジュールに基づいて、複数の異なるBHSが使用され得る。例えば、サービスを提供されるユーザ端末の数は、日中よりも夜中に異なり得て、任意の特定の時間にサービスを提供されるユーザ端末の数は、ユーザ端末の地理的な位置に対応する特定の時間領域に基づいて変わり得る。しかしながら、ビームホッピングシーケンスは、伝送データへの不正アクセスを遮断することによるセキュリティの保全などの他の理由で調整され得る。
【0044】
基準ゲートウェイ16のネットワークコントローラ26は、上述のようにマスタークロックと同期され、例えば協定世界時(UTC)を用いて現在時間を決定できるが、他のタイミングシステムが用いられ得ることが理解されよう。ネットワークコントローラ26により格納されたBHSは、本明細書において「タイムタグ」と称される、対応する実装時間と共に格納される。これにより、ネットワークコントローラ26は、特定のBHSを使用する時間がいつであるかを現在時間から決定できる。本発明の実施形態において、ネットワークコントローラ26は、新しいBHSを遅延なく実装するよう衛星14を準備すべく、実装時間の前に、実装を一日などの実質的な時間だけ予め予測する。これにより、衛星14における迅速かつ予測可能なBHS更新時間が保証される。
【0045】
現在時間はスケジューリングされたBHS時間より前の、24時間などの予め定められた期間である、と決定した場合、ネットワークコントローラ26は、マスタークロックにより提供されるUTC時間のモニタリングに基づいて、図4を参照して以下で説明される「ロード」、「アーム」、「ファイア」という技術を開始する。当該技術は、現在時間は段階S41におけるBHSの実装の前の予め定められた時間である、という決定により開始される。「ロード」段階S42は、アップリンク22を介して1または複数の新しいBHSを衛星14へアップロードする段階を含む。BHSは、制御信号としてネットワークコントローラ26から衛星14へアップロードされ、ユーザ端末へのコンテンツなど(例えば、テレビコンテンツ、メディア、メッセージ、インターネットデータ等)のデータの伝送とは別個の周波数で制御チャネルに保持され得る。他の実施形態において、BHSは、トラフィックチャネル内に含まれ得る。更新されたBHSは、衛星に搭載されたメモリに格納される。
【0046】
アップロードされたデータは、更新されるBHSを有する特定のビームのインジケーションと、新しいBHSの新しいカバレッジ滞留時間と、UTCに基づくBHSのタイムタグとを含む。タイムタグの提供は、以下で説明される「ファイア」コマンドS44が、この例では、必要とされる1日前に、衛星14に効果的に保管されていることを意味する。ビームのインジケーションは、いくつかの実施形態において、ビームインデックススキームに基づき得る。当該スキームは、ネットワークコントローラ26と衛星14との間で予め定義および合意される。
【0047】
図5は、本発明の実施形態による衛星14の衛星ペイロード50を示す。衛星14の動作は、複数の伝送Txビームおよび受信RXビームを用いて地上局と通信するよう、通信アンテナ53用の受信および伝送ビームフォーミングネットワーク52を制御し、制御チャネル54を介して地上のネットワークコントローラ26と通信するコントローラ51により制御される。
【0048】
ビームフォーミングネットワーク52は、従来の形態のものであってよく、これにより、例えば同位相にされたアレイアンテナにおける要素の加重アドレス指定を用いて伝送ビームおよび受信ビームを方向付けることが可能になる。このことについての詳細な説明は、明確性のために省略される。伝送ビームおよび受信ビームの各々の向きは、それぞれのBHSに応じて制御される。コントローラ51は、当該要素の必要な加重アドレス指定と関連するシーケンシングとをそれぞれのBHSから導出できると共に、必要なシーケンスにおける加重アドレス指定を必要な通信ビームの各々に適用するようビームフォーミングネットワーク52を制御できる。コントローラ51は、そのそれぞれのBHSにより定義される伝送ビームまたは受信ビームの特定の滞留時間がいつ満了したかを決定すべく、かつ、当該ビームをその新しいカバレッジエリアへと向け直すようビームフォーミングネットワーク52に命令すべく、搭載型クロックにより提供されるホップカウンタ55を用いる。当該クロックは、基準ゲートウェイ16が同期されるマスタークロックとして機能する。
【0049】
コントローラ51は、切り替えシーケンスメモリ56に格納される1または複数のBHSを実装する。コントローラ51は、地上セグメント12における基準ゲートウェイ16と通信して、新しいBHSを含む制御情報をネットワークコントローラ26から受信できる。切り替えシーケンスメモリ56は、現在実装されているBHSと将来の時点で使用される更新されたBHSとのためのストレージを含む。ストレージは、2つの離散メモリ位置として、または単一のメモリのアドレス指定可能な構成要素として構成され得る。メモリは、ソリッドステートメモリまたはソリッドステートハードディスクなどの従来の手段を用いて実装されてよく、また、ネットワークコントローラ26から受信する、システム構成、伝送電力、干渉相殺命令等に関する制御情報などの追加の動作情報を格納してよい。
【0050】
BHSの更新では、前のBHSのストレージがクリアされ、ネットワークコントローラ26から新たに受信したBHSを格納するために、クリアされたメモリが用いられる。図4の「ロード」段階の後に、更新されたBHSが、利用可能なメモリ位置に格納される。故に、終了した前のBHSのストレージが置き換えられる。このようにして、切り替えシーケンスメモリ56は、アンテナ切り替えがシームレスに実行され得るように、現在のBHSおよび次のBHS(必要な場合)を各ビームのために常に利用可能にしておく。
【0051】
図4に示される次の段階は、「アーム」命令S43である。アーム命令は、更新される衛星14の通信ビームのサブセットを準備するためのメカニズムである。必要な通信ビームをアームすると、更新を命令するために単一のファイアコマンドS44が発行され得る。アームされたビームのみが、それぞれのビームフォーミングネットワーク52の対応する構成を通じて更新される。この技術により、必要なビームの各々に対して別個の更新命令を発行する必要が回避される。
【0052】
典型的には、アーム処理は、ファイアコマンドS44の発行の前に、数秒程度、一実施形態では3秒程度生じる。上記で説明されたロード動作S42を通じてファイアコマンドを先に登録しておくことは、衛星コントローラ51が、ファイアコマンドが必要となることを予測できると共に、必要とされるビームのアームを数秒だけ前もって準備できることを意味する。
【0053】
ビームのアームは、多数の態様で実行され得る。上述のように、切り替えシーケンスメモリストレージ56は、各ビームに適用されるBHSを格納する。例えば、伝送ビーム♯1は、地理的エリアA、BおよびCの間でサイクル得る。伝送ビーム♯2は、地理的エリアD、EおよびFの間で、伝送ビーム♯1と並行してサイクルされ得る。構成における必要な更新に起因して、本例では、伝送ビーム♯2は、新しいBHSに従って地理的エリアB、FおよびGの間でサイクルされるが、伝送ビーム♯1は変化しないままである。いくつかの実施形態において、コントローラは、特定のフラグを各ビームと関連付けて切り替えシーケンスメモリに格納するように構成される。ネットワークコントローラから新しいBHSが受信されると、フラグは、更新されないビームの場合にはゼロまたは「No」として、新しいBHSを有することになるビーム構成の場合には1または「Yes」として設定され得る。本例では、更新フラグ「0」は伝送ビーム♯1に関連して格納され、一方で、更新フラグ「1」は伝送ビーム♯2に関連して格納されるであろう。
【0054】
衛星コントローラ51は、ネットワークコントローラ26から受信する新たに受信したBHS情報を分析し、当該BHS情報を各ビーム用に現在使用されているBHSと、それらの間の差異を特定すべく比べることにより、ビームがアームされることを決定する。あるいは、新たに受信したBHS情報は、対応するビームインデックス/複数のインデックスも含む。これにより、更新されたビームは、受信したBHS情報から直接特定され得る。新たに受信したBHS情報は、更新されているかまたは前のBHSと同じであるかどうかにかかわらず、全てのビームに適用されるBHSの全てを含み得る。衛星コントローラ51は、上述のように受信した情報を処理する。あるいは、ネットワークコントローラから受信した情報は、「デルタ」または特定のビームのBHSを変更するための命令を既に反映していてよい。これにより、BHS変更命令がネットワークコントローラ26から提供されなかった場合、衛星コントローラ51は、現在アクティブなBHSの実装を継続する。
【0055】
一連の図4の最終段階は、ビームホッピングシーケンスの更新の実装に関連する「ファイア」段階S44、および、その後にBHSを更新して新しいサイクルを段階S41から開始するための新しい命令をシステムが待機する待機段階S45である。段階S45からのループは、S41が分割され、一連の図4がネットワークコントローラ26からのそのような制御信号の提供をもって終了するというものであり得る。
【0056】
ビームホッピングシーケンスの更新手順は、同期パルスを周期的に連続して生成する衛星ペイロード50における同期パルス生成器57により生成される同期パルスの放出により開始される。同期パルスは、予め定められた信号強度および信号持続時間の制御信号であるが、他の実施形態では、予め定められた制御シーケンスまたは制御ワードを含み得る。同期パルスは、衛星コントローラ51が解釈するために可能な限り容易になるように有利に構成される。これにより、不要な実装遅延が回避され、BHS更新がシームレスに生じることが可能になる。
【0057】
同期パルスの放出は、同期パルス生成器57とコントローラ51との間の有線データリンクまたは無線データリンクでのコントローラ51へのパルスの提供と、ビームフォーミングネットワーク52へのパルスの提供とを含む。同期パルス生成器は、命令を出すことなく、パルスを生成する。当該パルスは、バッファ等に登録されると共に、削除されるか、または後に生成されるパルスにより置き換えられる放出は、バッファから衛星コントローラ51およびビームフォーミングネットワーク52への伝送という形態を取り得るが、他の実施形態では、以下で説明されるカウンタ期間に応じて実装される切り替え制御を単に表し得る。カウンタ期間中は、同期パルス生成器57と衛星コントローラ51およびビームフォーミングネットワーク52との間のスイッチが周期的に閉じられる。
【0058】
パルスを周期的に生成するよう同期パルス生成器57を構成することにより、特に必要とされるときはいつでもパルスを生成するよう生成器57に命令する処理を実行する必要がなくなり、実装遅延に関連し得て、生成されたパルスが放出される時点を決定することのみが必要になる。
【0059】
いくつかの実施形態において、同期パルス生成器57は、複数の異なるカウンタ期間において、使用される複数のビームの各々について1つの同期パルスを生成するように構成される。他の実施形態では、複数の同期パルス生成器が用いられる。以下の説明では、同期パルス生成器57への言及は、複数の同期パルス生成器に適用可能であると理解されるものとする。
【0060】
同期パルスの放出に応答して、または、同期パルスの放出の後に予め定められた時間を置いて、シーケンス切り替えメモリ56に予めロードされている新しいBHSが、上述のようにアームされた特定のビームへの適用のために、衛星14のそれぞれのビームフォーミングネットワーク52に適用される。ビームフォーミングネットワーク52は、アーム段階S43において、例えば上記で示されるように、フラグの状態に基づいて、ビームフォーミングネットワーク52の全てに対する同期パルスの放出に(同期パルスを無視すること、または新しいBHSへ切り替えるよう命令されることを通じて)応答するように構成される。故に、BHSの更新は、同期パルスの放出と同期された(同期パルスの放出と同時、または同期パルスの放出からの既知の遅延のいずれかの)時間において実行される。
【0061】
ファイアコマンドS44は、衛星クロックに基づいて測定される特定のBHSのタイムタグと現在時間との間の比較に基づいて、衛星コントローラ41により、または、他の実施形態ではネットワークコントローラ26により、同期パルス生成器57に対して発行される制御コマンドである。本実施形態において、ファイアコマンドS44は、UTCスケジューリングにより設定される時間の予め定められた許容差(いくつかの実施形態では、500ms程度)内で発行される。
【0062】
ファイアコマンドS44により、シーケンスにおける次の同期パルスが生成および放出されるのに十分な時間を設けることが可能になる。いくつかの実施形態において、ファイアコマンドS44は、同期パルスのスケジューリングされた放出の前の1秒の十分の一程度、例えば100msで発行されることが望しく、カウンタ期間を認識した衛星コントローラ51により実現され得るが、他の実施形態では、一旦アンテナ切り替えと同期されると、ネットワークコントローラ26により実現され得る。
【0063】
一旦同期パルスがコントローラ51へ放出されると、新しいBHSが適用される。上述のように、いくつかの実施形態において、新しいBHSの開始時点は、同期パルスの放出の後の固定期間において生じ得る。いくつかの実施形態において、固定期間が新しいBHSが前のBHSの終わりに始まることを可能にするように構成されることにより、カウンタ期間がBHS中に満了した場合、当該BHSが完了する。
【0064】
いくつかの実施形態において、カウンタ期間は、ネットワークコントローラ26から提供されるBHS更新情報において定義される。他の実施形態では、カウンタ期間は、ネットワークコントローラ26により別々に提供され、衛星コントローラ51によりオンザフライで更新され得る。カウンタ期間は、放出の不確実性、すなわち、ファイアコマンドS44と同期パルスの放出との間の期間、および、同期パルスの放出とBHSの更新との間の更新間実装遅延の両方に対応して選ばれる。言い換えると、カウンタ期間は、望ましい同期パルス放出時点の十分はるか前にファイアコマンドS44が実行され得ることで実装が可能になるのを保証するのに十分な長さである。
【0065】
更新されたBHSは、前のBHSとは異なるカウンタ期間を有し得る。故に、カウンタ期間は、BHSが更新された場合にリセットおよび更新され得る。いくつかの実施形態において、カウンタ期間は、BHS期間の整数倍である持続時間を有するように構成される。そのような場合、同期パルスは、BHSの終わりに放出される。しかしながら、他の実施形態では、カウンタ期間は、そのように定義される必要がない。これにより、BHS更新が、前のBHS中、故に不完全なBHS中に生じ得る。
【0066】
BHS更新が完了した後に、例えば、さらなる新しいBHSが受信されるまで、各ビームの更新フラグのクリアを通じて全てのビームがアーム解除される。
【0067】
[アンテナシーケンス切り替えおよび地上データシーケンス切り替えの同期]
上記説明は、ビームホッピングシーケンスの更新が衛星14において実行される原理を示す。以下では、BHSの更新が地上データシーケンス切り替えの対応する更新と同期される処理を説明する。
【0068】
一般論として、シーケンス切り替えの同期の原理は、BHS更新が生じることを地上セグメント12が予期し得る一連の正確な将来の時間の決定に基づく。これにより、BHS更新は、地上データシーケンス切り替えにシームレスに反映され得る。
【0069】
ホップカウンタ55は、本明細書において「カウンタ期間」と称されるもの、すなわち、時点間の特定の数のクロックサイクルを表す予め定められた期間を示すために、衛星コントローラにより用いられる。当該クロックサイクルは、本明細書において「リセット時間」と称されるものとする。リセット時間は、カウンタ期間が新しいカウンタ期間へとリセットおよび調整され得る時点であるが、カウンタ期間は、リセット時間が生じる毎にリセットされる必要はない。カウンタ期間の長さの決定については、以下でより詳細に説明される。
【0070】
同期パルス生成器57は、コントローラ51により、カウンタリセットの時点で、すなわち、リセット時間において同期パルスを周期的に生成するよう制御される。生成された同期パルスは、BHSが更新される場合、放出、すなわち、上述のようにコントローラに提供される。故に、続いて、リセット時間に対して予測され得る時間においてBHS更新手順が開始されるので、地上セグメント12が必要とするのは、リセット時間の可視性およびリセット時間との同期である。
【0071】
これを実現すべく、基準ゲートウェイ16はまず、BHSの更新を観測することにより、同期パルスの放出の瞬間を捕捉する。BHSの更新の観測は、基準ゲートウェイ16により、上述の切り替えを揃える処理における1または複数のホップの特定と類似する方式で実行される。基準ゲートウェイ16は、例えば、特定のビームカバレッジの滞留時間の変化を観測することにより、または、特定のビームからの一連のビームカバレッジの変化を特定することにより、カバレッジシーケンスが変化したことを特定する。基準ゲートウェイは、衛星14におけるBHSの変化の認識された時間に対応する観測時間を記録する。観測時間は、マスタークロックに対して決定される。観測時間は、実際には、追加の伝搬遅延τと共に衛星14においてBHSが発生した時間に対応する。
【0072】
次に、基準ゲートウェイ16は、観測時間をそのデータ切り替えシーケンスにおける位置と関連付ける。地上データ切り替えとアンテナ切り替えとは、上記で示された揃える処理の結果として揃えられるので、伝搬遅延τが既知である場合、観測時間は、データ切り替えシーケンスと厳密に相関し得る。従って、BHS更新の開始は、データ切り替えシーケンスと同期され得る。
【0073】
上記のように、新しいBHSは、前のBHSとは異なる期間を有してよく、より多い数またはより少ない数のカバレッジエリアおよび/または滞留時間を反映する。BHS更新が衛星14において実行された場合、前のBHSに対する新しいBHSの持続時間の変化は、衛星コントローラ51によるカウンタ期間の更新により反映され、これにより、同期パルスが同期パルス生成器57により生成される期間が変わり、従って、一連の可能な同期パルス放出の瞬間が変わる。しかしながら、いくつかの場合において、更新後のカウンタ期間は、更新前のカウンタ期間と同じである。
【0074】
衛星コントローラ51により実装され、ホップカウンタ55に適用される新しいカウンタ期間は、ネットワークコントローラ26において、BHSと共に、予めプログラムされているとおりに基準ゲートウェイ16のネットワークコントローラ26に認識され、衛星14にアップロードされる。そのため、基準ゲートウェイ16は、一旦BHS更新が衛星14に実装されると、データ切り替えシーケンスに対する更新の位置、および、将来の更新が生じ得る期間の両方を認識する。当該期間は、観測時間から測定される新しいカウンタ期間の整数倍になる。
【0075】
基準ゲートウェイ16は、順方向リンクを介して地上セグメント12におけるユーザ端末18a-fへこの情報を伝達し、衛星14における更新されたBHSを反映すべく使用されるデータ切り替えシーケンスの変更を実装する。ユーザ端末18a-fは、データ切り替えシーケンスに対する新しいカウンタ期間および前のBHS更新の観測時間と、BHS更新が衛星セグメントにおいて生じ得る一連の潜在的な瞬間または時点とを基準ゲートウェイ16により通知されるので、BHS更新が生じ得る正確な時間を予測および観測し、リターンリンクのデータ切り替えシーケンスの変更をシームレスに実装することが可能である。
【0076】
将来のBHS更新時点で、基準ゲートウェイ16は、更新時点を予測して地上セグメント12を更新することにより動作できるが、将来のBHS更新の観測は必要とされない。
【0077】
BHS更新時点の予測は、カウンタ期間がBHSの持続時間の整数倍になるように選ばれる実施形態において特に有利に実行される。このようにして、BHS更新がBHSフレームの終わりにのみ実行されることが認識されるように、地上局は、BHSフレームのカウントに基づいて潜在的なBHS更新時点を予測することが可能である。いくつかの実施形態において、BHSフレームのカウントは、観測されたホップの発生のログを取って各発生についてフレームカウンタ27をインクリメントする、基準ゲートウェイ16におけるフレームカウンタ27などのフレームカウンタにより実行される。他の実施形態において、フレームカウンタ27は、基準ゲートウェイ16の処理モジュール25など、ゲートウェイの他の処理アーキテクチャと統合され得る。
【0078】
図6は、上述の原理に基づいて本発明の実施形態の衛星ペイロードにより具現化される信号のタイミング図を示す。この図は、(a)BHS更新の前のカウンタ期間P1およびBHS更新の後のより短い期間P2での同期パルス生成タイミング、(b)図4のフローチャートに従って「ロード」コマンド、「アーム」コマンドおよび「ファイア」コマンドがネットワークコントローラ26に対して発行されるタイミング、(c)同期パルス生成器57により生成される同期パルスの放出、(d)非アームビームMにおけるBHS(M1)の不更新、および(e)BHS N1からBHS N2への、アームされたビームNにおけるBHSの更新を示す。図6(b)において、図示の便宜上、「ロード」コマンドと「アーム」コマンドとの間のタイミングは、上述の実施形態から短縮されており、ロードコマンドは、アームコマンドの前に詰められている。図6(b)におけるアームコマンドの結果と図6(e)におけるビームNのアームの開始との間の実装遅延D1が示され、一方で、図6(c)における同期パルスの放出に対するビームNのBHSの更新の実行との間の予め定められた遅延D2が示される。図6(b)におけるファイアコマンドの結果と図6(c)における同期パルスの放出との間のタイムウィンドウD3も示される。
【0079】
[修正]
上述の実施形態に対する多数の修正が可能であり、特許請求の範囲により定義される本発明の範囲に含まれる。加えて、審査官により理解されるであろう適合する実施形態の特徴の組み合わせも、本発明の範囲に含まれる。
【0080】
衛星セグメントは、単一の衛星に関連して上述されたが、複数の衛星が存在してよく、衛星間リンクを介して互いに通信してよいこと、および、本発明における同期の原理は、単一の衛星と同じ態様で複数の衛星に適用され得ることが理解されよう。
【0081】
衛星ペイロードにおいて、上記実施形態ではコントローラが例示されたが、他の実施形態では、別個のコントローラが、切り替え制御のために用いられ、上述の原理を実装できる。一方、別個の搭載型コントローラOBCが、例えばネットワークコントローラへの制御情報の通信といったペイロードの他の機能を実装するために用いられ得る。
【0082】
地上局において、基準ゲートウェイはネットワークコントローラを備えることが説明された。他の実施形態では、衛星セグメント用のネットワークコントローラは、衛星セグメントの構成および管理に特化したスタンドアロンSCCの形態を取る。SCCは、UTCにより定義されるタイムテーブルで決定される命令に基づいて動作するように構成される。これに対して、衛星ペイロードにおける切り替えコントローラは、マスタークロック信号に基づいて動作するように構成される。
【0083】
本発明の実施形態の様々な構成要素は、ハードウェア、ソフトウェアまたは両方の組み合わせを用いて実装され得る。例えば、衛星コントローラは、ネットワークコントローラからプログラム可能であるソフトウェアでプログラムされるコンピュータプロセッサとして実装され得るが、他の実施形態では、論理ゲートおよびスイッチのアレイに基づいて実装され得る。
【0084】
故に、当業者であれば、特定の実装がネットワークアーキテクチャに依存し、特定のビームホッピングシーケンスが用いられること、および、本発明は、説明された特定の実施形態のいずれかに限定されないことを認識しよう。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6