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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】コイル部品
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/255 20060101AFI20221206BHJP
   H01F 27/32 20060101ALI20221206BHJP
   H01F 17/04 20060101ALI20221206BHJP
   H01F 37/00 20060101ALI20221206BHJP
   H01F 1/24 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
H01F27/255
H01F27/32 170
H01F17/04 F
H01F37/00 A
H01F1/24
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2017220161
(22)【出願日】2017-11-15
(65)【公開番号】P2018110215
(43)【公開日】2018-07-12
【審査請求日】2020-09-24
(31)【優先権主張番号】10-2017-0000439
(32)【優先日】2017-01-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ-メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クウォン、スーン クワン
(72)【発明者】
【氏名】ユー、ヨン ソク
(72)【発明者】
【氏名】セオ、ジュン ウク
【審査官】久保田 昌晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-239189(JP,A)
【文献】特開2016-219781(JP,A)
【文献】特開昭59-031006(JP,A)
【文献】特開2003-272922(JP,A)
【文献】特開2012-043971(JP,A)
【文献】特開2009-009985(JP,A)
【文献】特開平06-338416(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0307686(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 1/20-1/26、3/08、17/00-19/08
H01F 27/255、27/32、37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻線型コイルを含む本体と、
前記本体の外部面に配置され、前記巻線型コイルの巻軸と平行な長さ方向に対向する外部電極と、を含むコイル部品であって、
前記本体は、前記巻線型コイルが巻かれた磁心と、前記巻線型コイルを封止する封止体と、を含み、
前記磁心は形状磁気異方性を有する複数の第1磁性粉末を含み、前記封止体は形状磁気異方性を有する複数の第2磁性粉末を含み、
前記封止体は、前記第2磁性粉末を含む複数の磁性シートを前記長さ方向に直交する幅方向に積層した積層構造を有しており、
前記磁心は、前記第1磁性粉末を含む複数の磁性シートを前記封止体の積層方向と同じ方向に積層した積層構造を有し、
前記磁心の外部面のうち、前記長さ方向に対向する両面は前記外部電極によってカバーされ、前記長さ方向と平行な残りの面上に前記巻線型コイルが配置され、
前記第1磁性粉末及び前記第2磁性粉末それぞれの少なくとも一部は、長軸が、前記巻線型コイルの磁場が形成される方向と平行になるように整列され、
前記第2磁性粉末の少なくとも一部は、前記巻線型コイルの磁場方向と垂直な短軸を有する、コイル部品。
【請求項2】
前記第1磁性粉末と前記第2磁性粉末は複数の長軸を含み、前記長軸の少なくとも1つの長軸は、他の長軸と直交するように構成される、請求項1に記載のコイル部品。
【請求項3】
前記封止体の前記複数の磁性シートは、硬化性樹脂中に複数の前記第2磁性粉末が分散された構造を有し、隣接する前記第2磁性粉末が互いに接触する構造を有する、請求項1または2に記載のコイル部品。
【請求項4】
前記巻線型コイルの内部における磁場の方向に沿った前記磁心の長さは、前記巻線型コイルの内部における磁場の方向に沿った前記巻線型コイルの長さよりも長い、請求項1から3のいずれか一項に記載のコイル部品。
【請求項5】
前記磁心の両端部面は前記本体の外部面に露出している、請求項1から4のいずれか一項に記載のコイル部品。
【請求項6】
前記本体は、前記巻線型コイルの内部領域と定義されるコア中心部と、前記コア中心部を囲む外側部と、で構成されており、前記磁心は、前記コア中心部及び前記外側部の少なくとも一部を構成する、請求項1から5のいずれか一項に記載のコイル部品。
【請求項7】
前記コア中心部内の前記第1磁性粉末の少なくとも1つの長軸は、前記外側部内の前記第1磁性粉末または前記第2磁性粉末の少なくとも1つの長軸と互いに直交する、請求項6に記載のコイル部品。
【請求項8】
前記本体は、厚さ方向に互いに対向する上面及び下面、前記長さ方向に互いに対向する第1端面及び第2端面、前記幅方向に互いに対向する第1側面及び第2側面を含み、前記巻線型コイルの内部における磁場の方向は前記長さ方向と平行である、請求項1から7のいずれか一項に記載のコイル部品。
【請求項9】
前記磁心内の前記第1磁性粉末は1つの短軸を有し、短軸は前記本体の幅方向と平行に配置される、請求項8に記載のコイル部品。
【請求項10】
前記磁心の外部境界面は、前記磁心を形成させた金型の内部境界面と対応する表面粗さを有する、請求項8または9に記載のコイル部品。
【請求項11】
前記磁心は、前記長さ方向と平行に配置される軸を含む柱状からなる、請求項10に記載のコイル部品。
【請求項12】
前記磁心内に含まれる前記第1磁性粉末はコア-シェル構造を有しており、前記第1磁性粉末のコアは少なくとも1つの金属を含む化合物を含み、シェルはエポキシ樹脂を含み、前記第1磁性粉末の前記コアはシェルによって囲まれ、前記コアの表面上に前記シェルが直接配置される、請求項10または11に記載のコイル部品。
【請求項13】
前記封止体内の前記第2磁性粉末は1つの長軸を有し、短軸は前記本体の幅方向と平行に配置される、請求項8から12のいずれか一項に記載のコイル部品。
【請求項14】
前記第1磁性粉末及び前記第2磁性粉末はフレーク粒子またはリボン状粒子である、請求項1から13のいずれか一項に記載のコイル部品。
【請求項15】
前記外部電極のそれぞれはアルファベットのC字状を有する、請求項1から14のいずれか一項に記載のコイル部品。
【請求項16】
前記外部電極のそれぞれはアルファベットのL字状を有する、請求項1から14のいずれか一項に記載のコイル部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル部品に関するものであって、具体的には、モールディング型インダクターと積層型インダクターを結合した方式のハイブリッド型パワーインダクターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常、インダクターに用いられる磁性材料は、フェライト(ferrite)や金属粉末が球状に近い形状を有するため、磁場が加えられると、特定の方向ではなく全体方向に同一に磁場が分布される。この際、長軸と短軸の長さが互いに異なる板状のフレーク(Flake)磁性粉末を用いると、短軸の距離が長軸に比べて近いため、短軸よりは長軸に磁化されやすくなる。このような形状磁気異方性を有する板状のフレーク粉末を含む磁性シートを用いると、高い透磁率のインダクターを製作することができる。
【0003】
上述のように板状のフレーク粉末を含む磁性シートを積層して高い透磁率を確保するために、下記特許文献1には、上部及び下部のカバー部に、片状化された金属粉末のシートを配置させることが記載されているが、複数のシートを積層する過程で内部に埋め込まれるコイルが変形される恐れがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】韓国特許公開第2014-0077346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする様々な課題の一つは、コイルの変形を防止して信頼性を改善し、高透磁率を有するコイル部品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一例によるコイル部品は、巻線型コイルを含む本体と、上記本体の外部面上に配置される外部電極と、を含む。上記本体は、上記巻線型コイルが巻かれた磁心と、上記巻線型コイルを封止する封止体と、を含み、上記磁心と上記封止体はそれぞれ、形状磁気異方性を有する第1磁性粉末と第2磁性粉末を含む。また、上記封止体は、上記第2磁性粉末を含む複数の磁性シートを積層した積層構造を有する。上記第1及び第2磁性粉末の長軸は、上記巻線型コイルの磁場が形成される方向と平行になるように整列される。
【発明の効果】
【0007】
本発明の様々な効果の一効果は、磁性粉末として形状磁気異方性を有するフレークを使用し、上記フレークの長軸が、コイルの中心部とコイルの外側部を含む全体領域でコイルの磁場の方向と平行になるように配置することで、透磁率を改善し、且つコイルの変形を最小化して構造信頼性を確保したコイル部品を提供することができることである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一例によるコイル部品の概略的な断面図である。
図2a】磁性粉末の形状磁気異方性を示す。
図2b】磁性粉末の形状磁気異方性を示す。
図3a】磁性粉末の形状磁気異方性を示す。
図3b】磁性粉末の形状磁気異方性を示す。
図4図1の一例によるコイル部品の概略的な分解図である。
図5図1の一変形例によるコイル部品の概略的な分解図である。
図6図1の他の変形例によるコイル部品の概略的な断面図である。
図7】本発明の一例によるコイル部品の概略的な工程を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下では、添付の図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。しかし、本発明の実施形態は様々な他の形態に変形されることができ、本発明の範囲は以下で説明する実施形態に限定されない。また、本発明の実施形態は、当該技術分野で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面における要素の形状及び大きさなどはより明確な説明のために誇張されることがある。
【0010】
なお、本発明を明確に説明すべく、図面において説明と関係ない部分は省略し、様々な層及び領域を明確に表現するために厚さを拡大して示し、同一思想の範囲内において機能が同一である構成要素に対しては同一の参照符号を用いて説明する。
【0011】
さらに、明細書全体において、ある構成要素を「含む」というのは、特に異なる趣旨の説明がされていない限り、他の構成要素を除外する趣旨ではなく、他の構成要素をさらに含むことができるということを意味する。
【0012】
以下では、本発明の一例によるコイル部品を説明するが、必ずしもこれに制限されるものではない。
【0013】
図1は本発明の一例によるコイル部品100の概略的な断面図である。
【0014】
図1を参照すると、コイル部品100は、本体1と、上記本体の外部面上に配置される第1及び第2外部電極21、22と、を含む。
【0015】
図1には、第1及び第2外部電極21、22がアルファベットのC字状の構造を有するように示されているが、これに限定されるものではなく、本体の実装面にのみ配置される下面電極、すなわち、アルファベットのL字状の構造を有するように変形され得ることは言うまでもない。
【0016】
上記本体1は、厚さ(T)方向に互いに対向する上面及び下面、長さ(L)方向に互いに対向する第1端面及び第2端面、幅(W)方向に互いに対向する第1側面及び第2側面を含み、実質的に六面体で構成されることができるが、本発明はこれに限定されず、上記本体の外形には何ら制限がない。
【0017】
上記本体1は内部に巻線型コイル11を含む。巻線型コイルの巻線方式としては、特に制限されないが、例えば、アルファ巻線(alpha winding)、エッジワイズ巻線(edgewise winding)、整列巻線の方式を用いることができる。
【0018】
その構造を説明すると、上記巻線型コイルは、磁心12に巻かれるように構成され、封止体13によって埋め込まれる。また、上記磁心12は形状磁気異方性を有する第1磁性粉末12aを含み、上記封止体13は形状磁気異方性を有する第2磁性粉末13aを含む。
【0019】
上記第1磁性粉末12a及び上記第2磁性粉末13aは、同一の組成及び成分比からなる粒子を有することができるが、これに限定されず、互いに異なる組成及び/または成分比からなる粒子を有することもできる。
【0020】
上記第1及び第2磁性粉末12a、13aが形状磁気異方性を有するとは、粒子の長軸と短軸が区別可能な形状を有し、特定方向に磁束が集中し得ることを意味する。
【0021】
図2a~図3bは磁性粉末の形状磁気異方性を示す。以下では、図2a~図3bを参照して、形状磁気異方性を有する上記第1及び第2磁性粉末12a、13aの長軸の概念を詳細に説明する。説明の便宜のために、磁心内に含まれる第1磁性粉末12aを基準として説明する。上記第1磁性粉末についての内容は上記第2磁性粉末13aにもそのまま適用され得る。
【0022】
図2a及び図2bを参照すると、第1磁性粉末12aは板状を有し、断面が円形(round)である。上記第1磁性粉末の断面が円形である場合、3次元構造の中心軸であるT軸、L軸、及びW軸の交差点にフレークの中心Oを対応させた時に、上記第1磁性粉末において、W軸に延びる最大長さLが最も短く、L軸に延びる最大長さLとT軸に延びる最大長さLは実質的に同一であり、LとLのそれぞれは、W軸に延びる最大長さよりも長い。
【0023】
したがって、図2a及び図2bに示された板状の第1磁性粉末は複数の長軸を有し、そのうち一部はT軸とL軸のそれぞれと平行になるように形成されることが明確である。
【0024】
次に、図3a及び図3bは図2a及び図2bに示された第1磁性粉末12aの一変形例による磁性粉末12a'を示す。図2a及び図2bの第1磁性粉末12aを図3a及び図3bの第1磁性粉末12a'と混合して用いることができ、図2a及び図2bまたは図3a及び図3b以外の形状として、コイルから発生する磁束と長軸を平行にすることができる形状を有する磁性粉末であれば、制限されずに用いることができることは言うまでもない。
【0025】
図3a及び図3bを参照すると、第1磁性粉末12a'の断面は楕円形(oval)であることができる。断面が楕円形である場合、3次元構造の中心軸であるT軸、L軸、及びW軸の交差点にフレークの中心Oを対応させた時に、第1磁性粉末において、W軸に延びる最大長さLが最も短く、L軸に延びる最大長さLは、T軸に延びる最大長さLより短く、且つW軸に延びる最大長さLよりは長い。すなわち、第1磁性粉末において、T軸に延びる最大長さLが最も長い。
【0026】
したがって、図3a及び図3bの板状の第1磁性粉末12a'は、1つの長軸を有し、T軸と平行になるように形成されることが分かる。
【0027】
つまり、第1磁性粉末の断面形状がどうであれ、本発明の磁心内に含まれる第1磁性粉末は、W軸に延びる最大長さLが、その他のL軸とT軸に延びる最大長さに比べて常に短く形成されると、コイルの磁束を集中させるように配列することが可能となる。換言すると、磁性粉末の長軸が、W軸ではなく、T軸及び/またはL軸と平行になるように配置されると、磁束の流れがT軸とL軸に交互に形成され、T軸またはL軸に磁束を集中させることができる。
【0028】
図2a~図3bを参照して説明したように、粒子の外形を変更することで、第1磁性粉末の長軸が1つ以上で構成されるようにすることができ、上記長軸に沿って磁束が集中する特性を用いて、1つ以上の特定方向に磁束を集中させることができる。これは、コイル部品の透磁率を著しく改善する一方法であることが明らかである。
【0029】
図2a~図3bで説明したことに基づき、再び図1を参照すると、上記磁心12内に含まれる上記第1磁性粉末12aは、2つ以上の長軸を有し、そのうち第1長軸V1と第2長軸V2は互いに直交する。上記第1及び第2長軸V1、V2が互いに直交するため、上記磁心12は、コイル11の内部に該当する領域であるコア中心部領域31、及び上記コア中心部を除いた領域32の全体にわたって、コイルから発生する磁束を集中させることができる。
【0030】
同様に、上記封止体13内に含まれる上記第2磁性粉末13aは、2つ以上の長軸を有し、そのうち第1長軸V3と第2長軸V4は互いに直交する。上記第1及び第2長軸V3、V4が互いに直交するため、上記封止体13は、コイル11の上部及び下部に該当する領域だけでなく、コイルの側面に該当する領域の全体にわたって、コイルから発生する磁束を集中させることができる。この場合、コイルの上部及び下部のそれぞれは、封止体内において厚さ(T)方向を基準としてコイルよりも高い位置及び低い位置に配置される領域を意味し、コイルの側面は、封止体内において長さ(L)方向及び幅(W)方向に沿ってコイルよりもさらに延びた位置に配置される領域を意味する。
【0031】
また、上記本体1の長さ方向における上記磁心12の長さL1は、上記本体1の長さ方向における上記巻線型コイルの長さL2よりも長く構成され、上記磁心の両端部面が上記本体の外部面に露出することがある。この場合、磁心の長さL1が巻線型コイルの長さL2より長いため、上記磁心内で上記巻線型コイルから発生する磁束の方向が変更され得るが、上記コイル部品100の場合、磁心内に長軸が複数個で構成されているため、巻線型コイルの内部だけでなく、巻線型コイルの外側部でも磁束の方向と磁性粉末の長軸の方向を平行に制御することができる。その結果、コイル部品の透磁率とインダクタンスを著しく改善することができる。
【0032】
次に、図4図1のコイル部品の概略的な分解図を示す。図4を参照して、図1の本体1を構成する磁心12と封止体13をより詳細に説明する。
【0033】
図4では、本体の構造をより効果的に説明するために、上記磁心12に巻かれた巻線型コイルは省略して示す。
【0034】
図4を参照すると、上記磁心12は、形状磁気異方性を有するように形成された第1磁性粉末12aとポリマーを予め準備した金型内に充填させ、上記第1磁性粉末の長軸が一貫して配列されるように加圧成形することで形成されたものである。これにより、上記磁心は第1磁性粉末とポリマーを含む一体型の構造を有する。また、上記磁心の外面形状は、上記磁心の外形を決定する上記金型の内部境界面の形状に対応する。例えば、上記磁心の外面の表面粗さは、それに対応する位置における上記金型の内部境界面の表面粗さと実質的に同一である。
【0035】
図4では、上記磁心12が直六面体形状を有するように構成されている。これは、上記磁心を形成させる金型のキャビティ(cavity)の形状が直六面体形状であることを意味する。図面には示していないが、上記磁心12は、長さ(L)方向と平行に配置される中心軸を含む柱状からなることができることは言うまでもなく、例えば、円柱状であることができる。
【0036】
一方、上記磁心12内に含まれる第1磁性粉末12aは、少なくとも1つの金属を含み、磁性特性を有するものであれば制限されずに適用可能であって、例えば、Fe-Ni系パーマロイ(Permalloy)合金、Fe-Si-Al系センダスト(sendust)合金、Fe-Si系合金などを活用することができる。また、上記第1磁性粉末の周囲にはポリマーが含まれることができ、上記第1磁性粉末の表面上にエポキシ樹脂がコーティング処理されることができる。この場合、コーティング処理されるエポキシ樹脂は、上記第1磁性粉末の表面上に別の無機絶縁層なしに直接配置することができる。上記第1磁性粉末の表面上にエポキシ樹脂が直接コーティングされる構造をコア-シェル構造と称する。上記コアは上述の合金の1つ以上であればよく、上記シェルはエポキシ樹脂であればよい。
【0037】
次に、上記磁心12に巻かれた巻線型コイルを封止する封止体13を説明する。図4を参照すると、上記封止体13は、第2磁性粉末13aを含む複数の磁性シート131、132・・・を積層した積層構造を有する。上記磁性シートは上記幅(W)方向を積層方向として積層する。この場合、上記磁性シート内の第2磁性粉末の短軸が上記幅(W)方向に延びる。
【0038】
上記封止体13を構成するために、幅(W)方向を積層方向として磁性シートを積層する理由は、上記封止体により封止される巻線型コイルの磁束方向と、上記磁性シート内に含まれる上記第2磁性粉末の短軸とが互いに直交するように配置するためである。
【0039】
一方、上記封止体13内のそれぞれの磁性シートは、硬化性樹脂中に複数の第2磁性粉末が分散された構造を有し、隣接した第2磁性粉末が互いに接触する構造を有する。
【0040】
上記封止体を構成する磁性シートの数やサイズなどは、要求される特性値、例えば、チップサイズ、透磁率などを考慮して適宜選択することができ、磁性シート中に含まれた硬化性樹脂は、例えば、エポキシ樹脂であることができ、第2磁性粉末は、例えば、パーマロイであることができる。
【0041】
次に、図5図1のコイル部品100の一変形例によるコイル部品300の概略的な分解図である。図5に示されたコイル部品300は、図1のコイル部品100と比較して、磁心312が一体型ではなく、積層構造を有するという点で異なる。したがって、以下では、図1のコイル部品と同一に適用される技術内容は省略し、図5の磁心312を中心に説明する。
【0042】
図5では、図4と同様に、本体の構造をより効果的に説明するために、上記磁心12に巻かれた巻線型コイルは省略する。
【0043】
図5を参照すると、磁心312は、一体型ではなく、積層構造を有する。上記磁心312は、第1磁性粉末312aを含む複数の磁性シート3121、3122、・・・を幅方向に積層した積層構造を有する。上記第1磁性粉末は複数の長軸を有し、それぞれの長軸が、巻線型コイルから発生する磁束の方向と平行になるように配置されることは言うまでもない。これに対し、上記第1磁性粉末は単一の短軸を有し、上記短軸は、巻線型コイルから発生する磁束の方向と直交するように配置されることが好ましいため、幅(W)方向に配置することが好ましい。
【0044】
一方、図5に具体的に示されていないが、上記磁心312が積層構造で構成されるため、磁心の外面において、磁心とそれに隣接した封止体との間の境界面上には、磁性シート間の段差(step)が不可避に存在する。これは、段差なしに複数の磁性シートを積層することは物理的に不可能であるためである。
【0045】
図5に示されたコイル部品300は、図1に示されたコイル部品100と比較して異なる磁心構造を有するが、上記コイル部品100と同様に、本体内の全体領域にわたって、巻線型コイル311から発生する磁束の方向と、本体内の磁性粉末の長軸の方向とが互いに平行に配列されることができるため、透磁率を著しく向上することができる。
【0046】
次に、図6図1のコイル部品のさらに他の変形例によるコイル部品500の概略的な断面図である。図6に示されたコイル部品500は、図1のコイル部品100と比較して、実質的に同一の外観の本体51を有することと、磁心512が一体型であることは共通するが、上記本体51の長さ方向における磁心512の長さが短く構成されるという点で異なる構造を有する。したがって、以下では、図1のコイル部品と同一に適用される技術内容は省略し、図5の磁心512の長さ、及びその長さによって変形され得る第1磁性粉末の形状を中心に説明する。
【0047】
図6を参照すると、上記本体51の長さ方向における上記磁心512の長さL3は、上記本体51の長さ方向における巻線型コイル511の長さL4と実質的に同一である。これは、巻線型コイル511の内部領域と定義されるコア中心部が、上記磁心512と一致することを意味する。上記磁心512が巻線型コイルのコア中心部にだけ配置されれば十分であるため、上記磁心内に含まれる第1磁性粉末512aの長軸は、巻線型コイルの内部における磁場の方向と平行であればよい。そのため、上記磁心内に含まれる第1磁性粉末512aは、複数の長軸を有することを必須要件とせず、巻線型コイルの内部における磁場の方向と平行な1つの長軸を有することができる。例えば、上記第1磁性粉末512aは、長さ方向に長いリボン(ribbon)状を有することができる。
【0048】
図6に示されたコイル部品500は、図1に示されたコイル部品100と比較してより小さいサイズの磁心を含むが、上記コイル部品100と同様に、本体内の全体領域にわたって、巻線型コイル511から発生する磁束の方向と本体内の磁性粉末の長軸の方向とが互いに平行に配列されることができるため、透磁率を著しく向上することができる。
【0049】
図7は本発明の一例によるコイル部品を製造する製造工程を概略的に示すフローチャートである。これは、上述のコイル部品100、300、500の製造方法を限定するものではなく、様々な製造方法の一方法を例示するものである。したがって、当業者であれば、工程条件及び環境を適切に考慮してコイル部品の製造方法を多様に変形可能であることは言うまでもない。
【0050】
先ず、形状磁気異方性を有する第1磁性粉末を含む磁心を形成する。上記磁心を形成する段階では、金型内に上記第1磁性粉末と硬化性樹脂をともに充填した後、約1~2ton/cm程度の成形圧で加圧してから硬化処理することで製作するか、または硬化用樹脂に上記第1磁性粉末を分散した複数の磁性シートを積層及び硬化し、ダイシングすることでバー(bar)形態の磁心を製作することができるが、これに限定されない。
【0051】
次に、上記磁心に巻線型コイルを所定の巻線回数で巻く。この際、巻線方式は適宜選択することができ、制限されない。但し、この場合、巻線型コイルの内部で磁束が形成される方向が、上記磁心内の第1磁性粉末の短軸の方向と平行に配列されないようにする。これは、磁束と磁性粉末の短軸とが互いに平行に配列される場合、磁束を集中させることができないためである。
【0052】
表面に巻線型コイルを含む磁心を得た後、形状磁気異方性を有する第2磁性粉末を含む複数の磁性シートが上記磁心を封止することができるように、磁性シートを積層、圧着して硬化する。この際、磁性シートを積層する方向は、上記磁心内の上記第1磁性粉末の短軸が配列される方向と同一の方向と設定することが好ましい。一方、巻線型コイルが、予め硬化が完了した磁心に巻かれている状態であるため、磁性シートを積層、圧着するなど、巻線型コイルを加圧してもコイルの損傷や潰れなどの変形を最小化することができる。
【0053】
次に、通常の仕上げ工程として、ダイシングにより、内部に埋め込まれた巻線型コイルの引き出し部が外部に露出するようにし、上記引き出し部の表面上に外部電極を形成することで電気的連結を可能とする。
【0054】
上記の説明を除き、上述の本発明の一例によるコイル部品の特徴と重複する説明はここで省略する。
【0055】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の範囲はこれに限定されず、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から外れない範囲内で多様な修正及び変形が可能であるということは、当技術分野の通常の知識を有する者には明らかである。
【0056】
一方、本発明で用いられた「一例」または「他の一例」という表現は、互いに同一の実施例を意味せず、それぞれ互いに異なる固有の特徴を強調して説明するために提供されるものである。しかしながら、上記提示された一例は、他の一例の特徴と結合して実現されることを排除しない。例えば、特定の一例で説明された事項が他の一例で説明されていなくても、他の一例でその事項と反対であるか矛盾する説明がない限り、他の一例に関連する説明であると理解されることができる。
【0057】
なお、本発明で用いられた用語は、一例を説明するために説明されたものであるだけで、本発明を限定しようとする意図ではない。このとき、単数の表現は文脈上明確に異なる意味でない限り、複数を含む。
【符号の説明】
【0058】
100、300、500 コイル部品
1、51 本体
21、22 第1及び第2外部電極
11 巻線型コイル
12 磁心
13 封止体
図1
図2a
図2b
図3a
図3b
図4
図5
図6
図7