(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】情報処理方法、プログラム、および情報処理システム
(51)【国際特許分類】
G01S 19/43 20100101AFI20221206BHJP
G01C 15/00 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
G01S19/43
G01C15/00 102C
(21)【出願番号】P 2018134580
(22)【出願日】2018-07-17
【審査請求日】2021-06-08
(73)【特許権者】
【識別番号】516304883
【氏名又は名称】エアロセンス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】518253886
【氏名又は名称】株式会社快適空間FC
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】真栄城 朝弘
(72)【発明者】
【氏名】菱沼 倫彦
(72)【発明者】
【氏名】佐部 浩太郎
(72)【発明者】
【氏名】鵜飼 尚弘
【審査官】山下 雅人
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-337155(JP,A)
【文献】特開2006-329644(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0090828(KR,A)
【文献】特開2016-138826(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 19/00-19/55
G01C 15/00-15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のGNSS衛星から
同じ時間に信号を受信する同時観測を実行した複数の観測装置により受信された
前記信号に基づいて前記観測装置の設置点に係る位置情報、および既知基準点に係る位置情報を取得することと、
前記既知基準点が電子基準点である場合、取得された前記観測装置の設置点に係る位置情報、および前記電子基準点に係る位置情報を用い、基準点測量に係る点検計算の方式に則って、前記電子基準点間を結合し、結合する辺の数が最小となるように点検路線を生成することと、
取得された前記観測装置の設置点に係る位置情報、および前記既知基準点に係る位置情報を用い
、プロセッサが、
前記設置点と前記既知基準点との間を結合し、観測単位であるセッションを囲む点検網を生成することと、
を含む、情報処理方法。
【請求項2】
前記点検網が正常に生成されなかったことをユーザに対し通知すること、
をさらに含む、請求項1に記載の情報処理方法。
【請求項3】
前記生成された点検網に基づいて実行された
、前記設置点の間の長さと方向とを決定する計算である第1の基線解析に係る結果を用い、
基準点測量の三次元網平均計算の方式に則って、平均計算網を生成すること、
をさらに含み、
前記平均計算網は、三次元網平均計算の実行に用いられる、
請求項1に記載の情報処理方法。
【請求項4】
生成された前記平均計算網に基づいて実行された
、前記設置点の間の長さと方向とを決定する計算である第2の基線解析に係る結果に関して、一部または全部の基線にFIX解が存在するか否かを判定することと、
前記第2の基線解析に係る結果に関して、一部または全部の前記基線に
、一定の条件を満足する厳密解であるFIX解が存在しないと判定された場合、前記第1の基線解析に係る結果を用い、
基準点測量の三次元網平均計算の方式に則って、前記平均計算網とは異なる平均計算網を生成することと、
をさらに含む、請求項
3に記載の情報処理方法。
【請求項5】
前記第2の基線解析に係る結果に関して、前記一部または全部の基線にFIX解が存在しないと判定されたことをユーザに対し通知すること、
をさらに含む、請求項
4に記載の情報処理方法。
【請求項6】
前記平均計算網に係る情報を、ユーザに対し通知すること、
をさらに含む、請求項
3に記載の情報処理方法。
【請求項7】
前記平均計算網に係る情報を、基準点測量の成果物として出力すること、
をさらに含む、請求項
6に記載の情報処理方法。
【請求項8】
前記観測装置の設置点に係る位置情報を、同時観測が実行された
前記セッション毎に分割することと、
取得された前記観測装置の設置点に係る位置情報、および前記既知基準点に係る位置情報を用い
、プロセッサが、前記セッション
の各々を囲む前記点検網を生成することと、
をさらに含む、請求項1に記載の情報処理方法。
【請求項9】
前記同時観測は、スタティック法、RTK法、またはキネマティック法のいずれかにより実行される、
請求項1に記載の情報処理方法。
【請求項10】
飛行撮像装置により撮像された前記観測装置を含む撮像画像から前記観測装置を検出し、検出された前記撮像画像中の前記観測装置の位置と前記観測装置の設置点に係る位置とを対応付けること、
をさらに含む請求項1に記載の情報処理方法。
【請求項11】
コンピュータを、
複数のGNSS衛星から
同じ時間に信号を受信する同時観測を実行した複数の観測装置により受信された
前記信号に基づいて前記観測装置の設置点に係る位置情報、および既知基準点に係る位置情報を取得する情報取得部と、
前記既知基準点が電子基準点である場合、取得された前記観測装置の設置点に係る位置情報、および前記電子基準点に係る位置情報を用い、基準点測量に係る点検計算の方式に則って、前記電子基準点間を結合し、結合する辺の数が最小となるように点検路線を生成し、
取得された前記観測装置の設置点に係る位置情報、および前記既知基準点に係る位置情報を用い、
前記設置点と前記既知基準点との間を結合し、観測単位であるセッションを囲む点検網を生成する自動生成部と、
を備える、情報処理装置、
として機能させるためのプログラム。
【請求項12】
複数のGNSS衛星から
同じ時間に信号を受信する同時観測を実行する観測装置と、
前記観測装置により受信された
前記信号に基づいて前記観測装置の設置点に係る位置情報、および既知基準点に係る位置情報を取得する情報取得部と、
前記既知基準点が電子基準点である場合、取得された前記観測装置の設置点に係る位置情報、および前記電子基準点に係る位置情報を用い、基準点測量に係る点検計算の方式に則って、前記電子基準点間を結合し、結合する辺の数が最小となるように点検路線を生成し、
取得された前記観測装置の設置点に係る位置情報、および前記既知基準点に係る位置情報を用い
、プロセッサが、
前記設置点と前記既知基準点との間を結合し、観測単位であるセッションを囲む点検網を生成する自動生成部と、
を備える、情報処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、情報処理方法、プログラム、および情報処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、GNSS(Global Navigation Satellite System)衛星から送信された電波信号を利用して基準点測量を行う技術が普及している。
【0003】
例えば、特許文献1には、基準点測量において算出された誤差が事後的に確認可能となる技術が開示されている。また、特許文献2には、基準点測量の結果に関する情報を管理することが容易となる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-172978号公報
【文献】特開2017-172979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来技術において、例えば基準点測量で用いる種々の図を作成する作業などは、人の手で行うため、多くの手間が必要である。
【0006】
そこで、本開示は、上記に鑑みてなされたものであり、基準点測量における図の作成をより効率的とすることが可能な情報処理方法、プログラム、および情報処理システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示によれば、複数のGNSS衛星から同じ時間に信号を受信する同時観測を実行した複数の観測装置により受信された信号に基づいて観測装置の設置点に係る位置情報、および既知基準点に係る位置情報を取得することと、既知基準点が電子基準点である場合、取得された観測装置の設置点に係る位置情報、および電子基準点に係る位置情報を用い、基準点測量に係る点検計算の方式に則って、電子基準点間を結合し、結合する辺の数が最小となるように点検路線を生成することと、取得された観測装置の設置点に係る位置情報、および既知基準点に係る位置情報を用い、プロセッサが、設置点と既知基準点との間を結合し、観測単位であるセッションを囲む点検網を生成することと、を含む、情報処理方法が提供される。
【0008】
また、本開示によれば、コンピュータを、複数のGNSS衛星から同じ時間に信号を受信する同時観測を実行した複数の観測装置により受信された信号に基づいて観測装置の設置点に係る位置情報、および既知基準点に係る位置情報を取得する情報取得部と、既知基準点が電子基準点である場合、取得された観測装置の設置点に係る位置情報、および電子基準点に係る位置情報を用い、基準点測量に係る点検計算の方式に則って、電子基準点間を結合し、結合する辺の数が最小となるように点検路線を生成し、取得された観測装置の設置点に係る位置情報、および既知基準点に係る位置情報を用い、設置点と既知基準点との間を結合し、観測単位であるセッションを囲む点検網を生成する自動生成部と、を備える、情報処理装置、として機能させるためのプログラムが提供される。
【0009】
また、本開示によれば、複数のGNSS衛星から同じ時間に信号を受信する同時観測を実行する観測装置と、観測装置により受信された信号に基づいて観測装置の設置点に係る位置情報、および既知基準点に係る位置情報を取得する情報取得部と、既知基準点が電子基準点である場合、取得された観測装置の設置点に係る位置情報、および電子基準点に係る位置情報を用い、基準点測量に係る点検計算の方式に則って、電子基準点間を結合し、結合する辺の数が最小となるように点検路線を生成し、取得された観測装置の設置点に係る位置情報、および既知基準点に係る位置情報を用い、プロセッサが、設置点と既知基準点との間を結合し、観測単位であるセッションを囲む点検網を生成する自動生成部と、を備える、情報処理システムが提供される。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように本開示によれば、基準点測量における図の作成をより効率的とすることが可能になる。
【0011】
なお、上記の効果は必ずしも限定的なものではなく、上記の効果とともに、または上記の効果に代えて、本明細書に示されたいずれかの効果、または本明細書から把握され得る他の効果が奏されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1の実施形態に係る情報処理システムの構成例を示す図である。
【
図2】第1の実施形態に係るGNSS受信装置100の機能構成例を示すブロック図である。
【
図3】第1の実施形態に係る測量計算サーバ300の機能構成例を示すブロック図である。
【
図4】複数のGNSS受信装置100を用いたスタティック法に従った同時観測の方法について説明するための図である。
【
図5】自動生成アルゴリズムに従って点検網および点検路線を生成する動作の一例について説明するための図である。
【
図6】点検網が正常に生成されなかったことをユーザに対し通知する一例について説明するための図である。
【
図7】自動生成アルゴリズムに従って平均計算網を生成する動作の一例について説明するための図である。
【
図8】FIX解が得られなかったことをユーザに対し通知する一例について説明するための図である。
【
図9】スタティック法を用いた観測に関する作業の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図10】第1の実施形態に係る測量計算サーバ300による測量計算に係る動作の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図11】第2の実施形態に係る三次元網平均計算を実行した際に用いた平均計算網に係る情報を、ユーザに対し通知する一例について説明するための図である。
【
図12】第3の実施形態に係るGNSS受信装置100の機能構成例を示すブロック図である。
【
図13】第4の実施形態に係る飛行撮像装置を用いた観測の概要を説明するための図である。
【
図14】本開示の一実施形態に係る測量計算サーバ300のハードウェア構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の好適な実行の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。また、実質的に同一の機能構成を有する複数の構成要素を区別するために、同一の符号の後に異なるアルファベットが付されている場合がある。
【0014】
なお、説明は以下の順序で行うものとする。
1.第1の実施形態
1-1.情報処理システムの概要および構成例
1-2.GNSS受信装置100の機能構成例
1-3.測量計算サーバ300の機能構成例
2.観測及び測量計算の動作例
2-1.観測に関する動作例
2-2.測量計算に関する動作例
3.動作の流れ
3-1.観測に関する作業の流れ
3-2.測量計算に関する動作の流れ
4.第2の実施形態
5.第3の実施形態
6.第4の実施形態
7.ハードウェア構成例
8.まとめ
【0015】
<1.第1の実施形態>
(1-1.情報処理システムの概要および構成例)
以降では、本開示に係る情報処理システムの概要および構成例について説明していく。
図1は、第1の実施形態に係る情報処理システムの構成例を示す図である。
【0016】
まず、GNSS衛星から送信された電波信号を用いる基準点測量の概要を説明する。本実施形態に係る情報処理システムでは、複数のGNSS衛星からの電波信号を用いた基準点測量が可能である。ここで、基準点測量とは、平面位置または標高の定まった点である既知基準点に基づいて、新たな基準点の平面位置または標高を決定する作業をいう。基準点測量の作業工程は以下の通りである。まず、測量対象の現場においてGNSS受信装置がGNSS衛星からの電波信号を受信することで観測を行う。次に、GNSS受信装置は、観測により受信した電波信号から、基準点測量に必要なデータ(以下、観測データと称する)を抽出する。次に、測量計算サーバは、抽出された観測データに基づいて、各種測量に関する計算(以下、測量計算と称する)を実行し、新たな基準点での平面位置または標高を決定する。そして、測量計算の結果に基づいて、各種成果物を生成し、基準点測量に関する作業は完了する。
【0017】
ここで、観測とは、事前に計画された複数の新たな基準点(以下、設置点と称する)にそれぞれGNSS受信装置を設置し、複数のGNSS受信装置にGNSS衛星からの電波信号を受信させる作業をいう。また、測量計算とは、基線解析、点検計算および平均計算をいう。ここで、基線解析とは、観測データに基づいて、設置点間の長さと方向を決定する計算である。また、点検計算とは、基線解析の結果の良否を点検するために、観測作業が終了した後に実行される計算である。また、平均計算とは、最終的な測量結果を求めるための計算である。なお、GNSS衛星から送信される電波信号を用いて観測を実行する測量方法をGNSS測量という。GNSS測量の場合、平均計算として、三次元網平均計算を実行する必要がある。ここで、GNSSとは、GPS、GLONASS、Galileoまたは準天頂衛星等の衛星測位システムである。GNSS測量においては、複数の衛星測位システムが基線解析に用いられる。
【0018】
なお、GNSS測量では、測量計算として、まず1回目の基線解析を実行し、次に当該基線解析の結果に対する点検計算を実行する。当該点検計算の実行後、2回目の基線解析を実行し、当該基線解析の結果を用いて、三次元網平均計算を実行する。
【0019】
なお、GNSS測量で必要な上記で説明した種々の計算を実行するためには、設置点の位置情報および既知基準点の位置情報の取得、並びに網図の生成が必要となる。網図とは、測量計算で実行する各々の計算に対応する、設置点および既知基準点間の関係性を示す図をいう。
【0020】
以上が、GNSS衛星から送信される電波信号を用いた基準点測量の概要である。次に、本実施形態に係るシステム構成例を説明していく。
図1に示すように、本実施形態に係る情報処理システムは、GNSS受信装置100、リムーバブルメモリ130、クライアント端末200、測量計算サーバ300、およびネットワーク500を備える。
【0021】
本実施形態に係るGNSS受信装置100は、複数のGNSS衛星から電波信号を受信することが可能な観測装置である。なお、本実施形態では、複数のGNSS受信装置100が、同時観測を実行する。ここでの同時観測は、複数のGNSS受信装置100が同じ時間にGNSS衛星からの電波信号を受信することをいう。また、GNSS受信装置100は、電波信号から抽出された観測データを、当該GNSS受信装置100に挿入された後述するリムーバブルメモリ130に記憶する機能を有する。
【0022】
なお、GNSS受信装置100は、例えば
図1のGNSS受信装置100a~100cに示されるような複数の円が同心円状に配置された形状でもよい。また、GNSS受信装置100、互いに隣接した円の色彩に対応する色相は所定の閾値以上異なるか、一方が黒であるような特徴を有してもよい。
【0023】
本実施形態に係るリムーバブルメモリ130は、各種情報を記憶する記憶媒体である。具体的には、リムーバブルメモリ130は、GNSS受信装置100に挿入され、電波信号から抽出された観測データを記憶する。また、リムーバブルメモリ130は、クライアント端末200に挿入され、クライアント端末200へ観測データを提供する。
【0024】
本実施形態に係るクライアント端末200は、GNSS受信装置100から観測データを提供され、当該観測データを測量計算サーバ300に送信する情報処理装置である。また、クライアント端末200は、測量計算サーバ300から送信された通知に基づいて、測量計算に係る情報をユーザに対し表示する機能を有する。また、クライアント端末200は、ユーザに対し測量計算に係る情報を表示するためのディスプレイを備えてよい。
【0025】
ここで、測量計算に係る情報とは、例えば点検網が正常に生成されなかったこと、一部または全部の基線にFIX解が存在しないと判定されたこと、平均計算網に係る情報、など測量計算の成否に係る情報をいう。上記詳細については、後述する。
【0026】
本実施形態に係る測量計算サーバ300は、複数のGNSS受信装置100が実行した同時観測に関する測量計算を実行する情報処理装置である。また、測量計算サーバ300は、GNSS衛星から受信した電波信号に基づいて同時観測を実行した複数のGNSS受信装置100により計算されたGNSS受信装置100の設置点に係る位置情報、および既知基準点に係る位置情報を取得する情報処理装置である。
【0027】
本実施形態に係るネットワーク500は、クライアント端末200と測量計算サーバ300とを接続する機能を有する。また、測量計算サーバ300が電子基準点に係る情報を取得する際に用いられる。ネットワーク500は、インターネット、電話回線網、衛星通信網などの公衆回線網や、Ethernet(登録商標)を含む各種のLAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)などを含んでもよい。また、ネットワーク500は、IP-VPN(Internet Protocol-Virtual Private Network)などの専用回線網を含んでもよい。また、ネットワーク500は、Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)など無線通信網を含んでもよい。
【0028】
(1-2.GNSS受信装置100の機能構成例)
次に、本実施形態に係るGNSS受信装置100の機能構成例について説明する。
図2は、本実施形態に係るGNSS受信装置100の機能構成例を示すブロック図である。
図2を参照すると、本実施形態に係るGNSS受信装置100は、アンテナ110、処理部120、およびリムーバブルメモリ130を備える。
【0029】
アンテナ110は、GNSS衛星からの電波信号を受信するGNSS受信部として機能し、当該電波信号を後述する処理部120に提供する機能を有する。
【0030】
処理部120は、アンテナ110が受信した信号から、GNSS衛星からの信号を抽出する機能を有する。また、処理部120は、抽出した観測データを後述するリムーバブルメモリ130に提供して記憶させる機能を有する。
【0031】
リムーバブルメモリ130は、処理部120が抽出した観測データを記憶する機能を有する。なお、当該リムーバブルメモリ130は、情報処理システムの構成例で説明したリムーバブルメモリ130と同一である。リムーバブルメモリ130は、上述したようにGNSS受信装置100に挿入されることが可能な記憶媒体である。リムーバブルメモリ130は、GNSS受信装置100から取り外され、クライアント端末200へ挿入される。つまり、GNSS受信装置100の観測データは、リムーバブルメモリ130によりクライアント端末200へ提供されることが可能である。
【0032】
(1-3.測量計算サーバ300の機能構成例)
次に、本実施形態に係る測量計算サーバ300の機能構成例について説明する。
図3は、本実施形態に係る測量計算サーバ300の機能構成例を示すブロック図である。
図3を参照すると、本実施形態に係る測量計算サーバ300は、通信部310、記憶部330、自動生成部340、網計算部350、成果物生成部360、および処理制御部370を備える。
【0033】
通信部310は、クライアント端末200から観測データを受信する情報取得部としての機能を有する。また、自動生成部340、網計算部350または成果物生成部360がユーザに対し各種情報を通知する際に、当該各種情報をクライアント端末200へ送信する機能を有する。
【0034】
また、通信部310は、ネットワーク500を用いて、電子基準点に係る位置情報を取得する機能を有する。通信部310により取得された電子基準点に係る位置情報は、測量計算に用いられる。
【0035】
記憶部330は、通信部310がクライアント端末200から受信した観測データを記憶する機能を有する。また、記憶部330は、自動生成部340、網計算部350または成果物生成部360が生成した成果物を記憶してもよい。
【0036】
自動生成部340は、クライアント端末200から提供された観測データを用いて単独測位による測位処理を実行し位置情報を取得する。また、自動生成部340は、観測データを用いたスタティック法による基線解析を行いGNSS受信装置100が設置されていた設置点に係る位置情報を取得する機能を有する。
【0037】
また、自動生成部340は、単独測位により取得されたGNSS受信装置100の設置点の位置情報および通信部310が取得した既知基準点の位置情報を用い、種々の自動生成アルゴリズムに従って、点検計算を実行する際に用いられる点検網、または電子基準点間を結合する点検路線を生成する機能を有する。
【0038】
また、自動生成部340は、GNSS受信装置100の位置情報および既知基準点の位置情報を用い、他の自動生成アルゴリズムに従って、平均計算網を生成する機能を有する。ここで、平均計算網とは、平均計算の一種である三次元網平均計算の実行に用いられる網図である。
【0039】
また、自動生成部340は、生成された点検網、点検路線または平均計算網を、例えばクライアント端末200に表示させることでユーザに対し通知してよい。また、自動生成部340は、点検網または平均計算網の生成が失敗した場合、当該生成の失敗を、例えばクライアント端末200に表示させることでユーザに対し通知してよい。
【0040】
網計算部350は、自動生成部340が生成した点検網または点検路線に基づいて、点検計算を実行する機能を有する。また、網計算部350は、自動生成部340が生成した平均計算網に基づいて、三次元網平均計算を実行する機能を有する。また、網計算部350は、自動生成部340が生成した点検網に基づいて、当該点検網のGNSS受信装置100および既知基準点間の基線解析を実行してよい。
【0041】
成果物生成部360は、網計算部350の計算結果に基づいて各種成果物を生成する機能を有する。ここで、成果物とは、観測手簿や観測記簿などをいう。また、成果物生成部360は、生成した成果物を、例えばクライアント端末200に表示させることでユーザに対し通知してよい。
【0042】
処理制御部370は、測量計算サーバ300が備える各構成を制御する機能を有する。処理制御部370は、例えば、各構成の起動や停止を制御する。
【0043】
(2.観測および測量計算の動作例)
(2-1.観測に関する動作例)
以下、本実施形態に係る基準点測量に関する動作について説明していく。まず、現場での観測作業について説明する。まず、複数のGNSS受信装置100は、スタティック法に従って、同時観測を実行し、設置点での観測データを受信する。
【0044】
スタティック法とは、複数の観測装置によって4台以上のGNSS衛星からの信号が所定時間(例えば、1時間)以上受信され、GNSS衛星の時間的位置変化に基づいて搬送波波長の整数値バイアスが決定される方法である。スタティック法については、測位に要する時間が他の方法よりも比較的長いが、ミリメートル程度の高い精度が期待され得る。なお、観測、測位処理および測量計算は、RTK法またはキネマティック法でも行うことが可能であり得る。ここでRTK(Realtime Kinematic)法とは、観測開始時に搬送波波長の整数値バイアスが決定され、その後、観測装置間の無線通信によって観測データの交信が行われることで、リアルタイムに測位処理が行われる方法である。また、キネマティック法は、RTK-GPSともいい、既知基準点からの補正観測情報を携帯電話や無線通信装置を利用して観測装置である移動局に送信し、移動局の位置をリアルタイムで測定する方法をいう。なお、以降本明細書では、スタティック法による観測、測位処理および測量計算が行われる場合の動作について説明する。
【0045】
図4は、複数のGNSS受信装置100を用いたスタティック法に従う同時観測の方法について説明するための図である。
図4には、GNSS受信装置100a~100dに対応する観測時間MT1~MT4が示されている。ここで、GNSS受信装置100a~100dは、それぞれ事前に計画された設置点に設置されているとする。またここで、観測時間MT1~MT4は、それぞれのGNSS受信装置100a~100dがGNSS衛星から電波信号を受信している時間である。
【0046】
観測にスタティック法が用いられる場合、複数のGNSS受信装置100が同時に電波信号を受信している時間において、GNSS受信装置100a~100dの各々の抽出される観測データが、その後の測量計算に用いられる。具体的には、複数のGNSS受信装置100a~100dの全てが複数のGNSS衛星からの電波信号の受信を実行している状態になってから、GNSS受信装置100a~100dうち、いずれかの電波信号の受信が停止するまでの時間の観測データが、その後の測量計算に用いられる。
図4の一例において、測量計算に用いられる時間帯は、観測時間MT1~MT4が存在している時間である開始時間T1から終了時間T2の間の1時間である。
【0047】
上記のような、複数のGNSS受信装置100a~100dにより実行される同時観測の単位をセッションという。ここで、同時観測とは、複数のGNSS受信装置100a~100dが同じ時間にGNSS衛星からの電波信号を受信する観測をいう。なお、終了時間T2の後、GNSS受信装置100a~100dは回収される。全ての計画されたセッションでの同時観測が完了している場合、現場での作業は終了となる。全てのセッションでの同時観測が完了していない場合、GNSS受信装置100a~100dは別の設置点に設置され、再び同様の観測が開始される。
(2-2.測量計算に関する動作例)
【0048】
上記では、現場での観測に関する作業について説明した。上述したように、観測の完了後は、観測データの良否を確かめるために、点検計算の実行が必要である。まず、上述したようにリムーバブルメモリ130は、クライアント端末200へ挿入されることで、観測データをクライアント端末200へ提供する。次に、クライアント端末200は、測量計算サーバ300へ当該観測データを送信する。測量計算サーバ300の自動生成部340は、通信部310を介して、観測データを受信する。そして、自動生成部340は、点検網および点検路線を生成する。
【0049】
ここで、測量計算サーバ300が点検網および点検路線の生成する、もしくは基線解析を実行するためには、測量計算サーバ300に生のデータである観測データを提供することが求められる。なお、観測データは「RAWデータ」とも呼ばれる。RAWデータには少なくとも、GNSS衛星から受信した信号の搬送波の位相データが含まれる。
【0050】
その後、当該RAWデータは、所定の方法によってGNSS受信装置100から取り出され、クライアント端末200を介して測量計算サーバ300に提供される。そして、測量計算サーバ300は、当該RAWデータを用いて単独測位による測位処理を行うことでGNSS受信装置100の位置情報を取得することができる。また、測量計算サーバ300は、当該RAWデータを用いてスタティック法による測量計算を行うことでGNSS受信装置100のより詳細な位置情報を取得することができる。このように、測量計算サーバ300が、より負荷の大きい測位処理を担うことによって、GNSS受信装置100の負荷を低減させることができる。換言すると、GNSS受信装置100は高性能な処理機能を有していなくてもよいため、計算コストがより低減され得る。
【0051】
ここで、自動生成アルゴリズムに従って、点検網および点検路線を生成する動作について説明する。
図5は、自動生成アルゴリズムに従って点検網および点検路線を生成する動作の一例について説明するための図である。
図5左側には、設置点P1~P5および電子基準点位置EP1~EP3が示されている。また、
図5右側には、セッションS1~S3および点検路線L1~L2がさらに示されている。以下、既知基準点が全て電子基準点である場合の一例について説明する。
【0052】
本実施形態に係る自動生成部340は、GNSS受信装置100からクライアント端末200を介して提供された観測データを用いて単独測位による測位処理を実行し位置情報を取得する。次に、自動生成部340は、計算した位置情報および既知基準点に係る位置情報を用い、第1の自動生成アルゴリズムに従って、点検網を生成する。ここで、既知基準点が電子基準点である場合、自動生成部340は、位置情報、および電子基準点に係る位置情報を用い、第2の自動生成アルゴリズムに従って、点検網を生成する。
【0053】
具体的には、自動生成部340は、自動生成部340は、設置点および電子基準点位置から、基準点測量に係る点検計算の方式に則って、点検網もしくは点検路線を生成する。また、電子基準点位置とは、ネットワーク500を介して取得した設置点近傍の電子基準点の位置をいう。なお、設置点近傍の電子基準点の位置は、電子基準点の位置情報により確認される情報である。
【0054】
点検計算の方式に則った点検路線の生成方法の一例として、異なるセッション間で重複した辺の較差を比較する方法が存在する。他には、既知基準点として電子基準点を用いられている場合、電子基準点間を結合させる点検路線を生成する方法が存在する。なお、点検路線は最小辺数となるように生成される。
【0055】
図5左側の一例において、電子基準点位置EP1~EP3は、通信部310が取得した設置点近傍の3か所の電子基準点の位置情報に基づいて、判明した当該電子基準点の位置である。自動生成部340は、基準点測量の点検計算の方式に則るように点検網を生成するアルゴリズムに従って、各々のセッションS1~S3を囲む点検網を生成している。また、自動生成部340は、既知基準点が電子基準点であるため、点検計算の方式に則るように点検路線を生成するアルゴリズムに従って、点検路線L1~L2を生成している。ここで、セッションは、それぞれP1、P2、P3で同時観測が実行され、次にP2、P3、P4で同時観測が実行され、最後にP3、P4、P5で同時観測が実行された情報から確認される。
【0056】
なお、自動生成部340が点検網または点検路線の生成が正常にできない場合がある。自動生成部340が点検網または点検路線の生成に失敗する原因として、一例として以下の場合が考えられる。ある設置点でのGNSS受信装置100による観測が正常に実行されなかった。そのため、当該設置点での観測データを測量計算に用いることができず、結果として、点検計算の方式に基づく、点検網または点検路線の生成が不可能となった。しかし、点検計算の方式を満たす点検網または点検路線の生成方法は、一つではない場合がある。その場合は、自動生成部340は、他の生成方法を用いて点検網または点検路線の生成を試みてよい。
【0057】
上記のような場合に、自動生成部340は、当該生成が正常に行われなかったことをユーザに対し通知してよい。
図6は、点検網が正常に生成されなかったことをユーザに対し通知する一例について説明するための図である。
図6には、ディスプレイ210が備え付けられたクライアント端末200が示されている。当該ディスプレイ210は、エラーメッセージM1およびエラー
図M2を表示している。
図6の一例において、エラーメッセージM1は、点検網が正常に生成されなかったことを示すメッセージであり、エラー
図M2は、点検網が正常に生成されなかった原因である設置点の箇所を示す画像である。
【0058】
図6において、測量計算サーバ300の自動生成部340は、点検網が正常に生成されなかったことをユーザに対し通知している。以下具体的に説明する。まず、自動生成部340による点検網が正常に生成されなかった場合、自動生成部340は、通信部310を介して点検網の生成に失敗した旨および点検網の生成に失敗した原因を示す図を、クライアント端末200に表示させることでユーザに対し通知する。一方、クライアント端末200は、当該通知の受信に応じて、例えばディスプレイ210にエラーメッセージM1およびエラー
図M2を表示する。
【0059】
このように、測量計算サーバ300は、GNSS受信装置100から観測情報を受信後、点検網もしくは点検路線を自動的に生成する機能を有する。係る機能によれば、観測の結果を入力する、および点検計算のための網図をユーザが作成する手間を省くことができ、測量業務をより効率化することが可能になる。
【0060】
上記では、点検計算において、点検網および点検路線を自動生成する場合を説明してきた。上述したように、本実施形態に係る情報処理システムによる基準点測量において、点検網および点検路線の生成後、基線解析および点検計算が実行される。次に、当該点検計算の実行後は、三次元網平均計算の実行に必要な平均計算網を生成する。当該基線解析には、観測データが用いられる。
【0061】
また、スタティック法による基線解析では、原則としてPCV(phase center variation)補正を行う必要がある。なお、PCVとは、GNSS衛星からの電波信号の入射角によってGNSS受信装置100の受信アンテナの位相中心が変動することである。
【0062】
ここで、自動生成部340は、三次元網平均計算に用いられる平均計算網を、自動生成アルゴリズムに従って、生成することが可能である。
図7は、自動生成アルゴリズムに従って平均計算網を生成する動作の一例について説明するための図である。
図7左側には、設置点P1~P5および電子基準点位置EP1~EP3が示されている。また、
図7右側には、平均計算網を構成する網平均計算基線L3~L9がさらに示されている。
【0063】
本実施形態に係る自動生成部340は、生成された点検網または点検路線に基づいて実行された基線解析に係る結果を用い、第3の自動生成アルゴリズムに従って、平均計算網を生成する。また、自動生成部340が生成した平均計算網は、当該基線解析および三次元網平均計算に用いられる。具体的に説明する。自動生成部340は、網計算部350により実行されたスタティック法による基線解析の結果を用いた平均計算網の生成が可能である。
【0064】
図7左側には、
図5と同様に設置点P1~P5および電子基準点位置EP1~EP3が表示されている。一方、
図7右側において、自動生成部340は、設置点P1~P5および電子基準点位置EP1~EP3を用い、基準点測量の三次元網平均計算の方式に則るように平均計算網を生成するアルゴリズムに従って、平均計算網を構成する網平均計算基線L3~L9を生成している。
【0065】
このように、測量計算サーバ300は、平均計算網を自動的に生成する機能を有する。係る機能によれば、平均計算のための網図をユーザが作成する手間を省くことができ、測量業務をより効率化することが可能になる。
【0066】
次に、網計算部350は、生成された平均計算網を用いて、基線解析を実行する。また、網計算部350は、当該基線解析に係る結果に関して、一部または全部の基線にFIX解が存在するか否かを判定する。GNSS衛星からの電波信号を用いた基線解析の結果は、FIX解である必要がある。ここで、FIX解とは、一定の条件を満足する厳密解をいう。
【0067】
ここで、網計算部350が、一部または全部の基線にFIX解が存在しないと判定した場合、網計算部350は当該判定の結果をユーザに対し通知してよい。
図8は、FIX解が得られなかったことをユーザに対し通知する一例について説明するための図である。
図8には、ディスプレイ210が備え付けられたクライアント端末200が示されている。ディスプレイ210は、当該判定を知らせて他の平均計算網を生成する旨を知らせるエラーメッセージM3を表示している。
【0068】
次に、網計算部350は、FIX解を得た基線解析の結果を用いて、三次元網平均計算を実行する。なお、網計算部350は、GNSS衛星からの電波信号を用いた実用三次元網平均計算として、既知基準点1点を固定する仮定三次元網平均計算および、既知基準点2点を固定する厳密三次元網平均計算を実行する必要がある。なお、既知基準点が電子基準点のみである場合、網計算部350は、仮定三次元網平均計算に関しては実行する必要が無い。
【0069】
網計算部350は、厳密三次元網平均計算の実行後、当該実行の結果を成果物生成部360へ送信する。成果物生成部360は、当該実行の結果に基づいて、各種成果物を生成し、基準点測量に関する測量計算は終了する。
【0070】
このように、測量計算の途中結果をユーザに対し通知することで、測量作業を効率化させるだけでなく、ユーザが測量計算の状況をより正確に把握することが可能となる。
【0071】
(3.動作の流れ)
(3-1.観測に関する作業の流れ)
次に本実施形態に係るGNSS受信装置100による観測に関する作業の流れについて説明する。
図9は、スタティック法を用いた観測に関する作業の流れの一例を示すフローチャートである。
【0072】
図9を参照すると、まず、観測者が観測対象となる区域周辺の地図情報等を参考にして、GNSS受信装置100を設置する複数の設置点を事前に計画する(S1001)。次に、観測者はGNSS受信装置100を各々の設置点に設置し、GNSS受信装置100はGNSS衛星からの電波信号の受信による観測を開始する(S1002)。
【0073】
GNSS衛星からの電波信号の受信開始から一定時間経過後、GNSS受信装置100はGNSS衛星からの電波信号の受信による観測を完了する(S1003)。次に、観測者は、事前に計画された全ての設置点での観測が完了したか確認し(S1004)、全ての設置点での観測が完了している場合(S1004:YES)、観測に関する作業は終了する。一方、全ての設置点での観測が完了していない場合(S1004:NO)、ステップS1002へ戻る。
【0074】
(3-2.測量計算に関する動作の流れ)
次に本実施形態に係る測量計算サーバ300による測量計算に係る動作の流れについて説明する。
図10は、本実施形態に係る測量計算サーバ300による測量計算に係る動作の流れの一例を示すフローチャートである。
【0075】
図10を参照すると、まず、通信部310は、複数のGNSS受信装置100からクライアント端末200を介して提供された、複数のGNSS受信装置100が同時観測により受信した電波信号から抽出した観測データを受け取る(S1201)。次に、通信部310は、以降の測量計算において、既知基準点として電子基準点を用いるか否かを確認する(S1202)。既知基準点として電子基準点を用いると確認した場合(S1202:YES)、通信部310は設置点近傍の電子基準点を検索し、当該電子基準点に係る情報を取得する(S1203)。一方、既知基準点として電子基準点を用いないと確認した場合(S1202:NO)、通信部310は当該同時観測において使用する既知基準点の位置情報の入力を、例えばクライアント端末200から受信する(S1204)。次に、通信部310は、観測データを自動生成部340へ提供する。
【0076】
次に、自動生成部340は、単独測位を実行し、当該単独測位により得られたGNSS受信装置100の複数の設置点に係る各時点における位置情報に基づいて、複数の異なるセッションに属する位置情報を取得し、セッション毎に分割する(S1205)。次に、自動生成部340は、セッション毎に分割された位置情報を用い、点検計算の方式に則った自動生成アルゴリズムに従って、点検網および点検路線を生成する(S1206)。
【0077】
次に、自動生成部340は、点検網および点検路線が正常に生成されたか否かを判定する(S1207)。点検網および点検路線が正常に生成されなかったと判定された場合(S1207:NO)、当該判定の内容および観測に関する作業の再実行が必要である旨をユーザに対し通知し(S1208)、動作は終了する。一方、点検網および点検路線が正常に生成されたと判定された場合(S1207:YES)、網計算部350は、観測データ、生成された点検網および点検路線を用いて、基線解析を実行する(S1209)。次に、網計算部350は、生成された点検網および点検路線、並びにステップS1209で得られた基線解析の結果を用いて、点検計算を実行する(S1210)。
【0078】
次に、自動生成部340は、ステップS1209で得られた基線解析の結果を用いて、三次元網平均計算の方式に則った自動生成アルゴリズムに従って、平均計算網を生成する(S1211)。網計算部350は、ステップS1211で生成された平均計算網および観測データを用いて、再び基線解析を実行する(S1212)。次に、網計算部350は、ステップS1212で得られた基線解析に係る結果に関して、一部または全部の基線にFIX解が存在するか否かを判定する(S1213)。一部または全部の基線にFIX解が存在しないと判定された場合(S1213:NO)、ステップS1211へ戻る。一部または全部の基線にFIX解が存在すると判定された場合(S1213:YES)、網計算部350は、ステップS1212で得られた基線解析の結果およびステップS1211で生成された生成された平均計算網を用いて、三次元網平均計算を実行する(S1214)。次に、成果物生成部360は、基準点測量の成果物を生成し(S1215)、動作は終了する。
【0079】
<4.第2の実施形態>
上記では、本開示に係る第1の実施形態について説明した。続いて、本開示に係る第2の実施形態について説明する。基本的に、第1の実施形態の説明と重複する内容は省略し、第1の実施形態との差分について説明する。
【0080】
第1の実施形態においては、測量計算サーバ300は、点検網および点検路線が正常に生成されたか否か、並びに基線解析の結果としてFIX解が得られたか否かの結果をユーザに対し通知していた。一方で、第2の実施形態では、測量計算サーバ300の網計算部350は、三次元網平均計算を実行した際に用いた平均計算網に係る情報を、ユーザに対し、例えば基準点測量の成果物として、さらに通知することが可能である。
【0081】
図11は、三次元網平均計算を実行した際に用いた平均計算網に係る情報を、ユーザに対し通知する一例について説明するための図である。
図11において、測量計算サーバ300の網計算部350は、三次元網平均計算を実行した際に用いた平均計算網に係る情報を、ユーザに対し通知している。具体的に説明する。まず、網計算部350は、生成され三次元網平均計算に用いられた平均計算網を、例えばクライアント端末200にユーザに対し表示させることで通知する。一方、クライアント端末200は、当該通知の受信に応じて、例えばディスプレイ210に生成された平均計算網を用いて三次元網平均計算が完了したことを伝える完了メッセージM4、および当該平均計算網の情報を示す平均計算網
図M5を表示している。
【0082】
このように、測量計算に用いた平均計算網に係る情報をユーザに対し通知することで、測量作業を効率化させるだけでなく、ユーザが計算の状況をより正確に把握することも可能となる。
【0083】
<5.第3の実施形態>
続いて、本開示に係る第2の実施形態について説明する。同様に、第1の実施形態の説明と重複する内容は省略し、第1の実施形態との差分について説明する。
【0084】
図12は、第3の実施形態に係るGNSS受信装置100の機能構成例を示すブロック図である。
図12には、無線通信部140をさらに備えたGNSS受信装置100が示されている。第1の実施形態では、処理部120が抽出した観測データは、リムーバブルメモリ130を介してクライアント端末200へと提供されていた。一方、第3の実施形態は、GNSS受信装置100の無線通信部140がクライアント端末200へ無線通信により観測データを送信する実施例である。本実施形態に係る無線通信部140は、処理部120が抽出した観測データを、例えば全ての同時観測が完了した後に、クライアント端末200へ無線通信により送信する機能を有する。
【0085】
このように、本実施形態に係る無線通信部140に係る機能によれば、リムーバブル記録媒体を必要としない位置情報の移動が可能となり、観測に関する作業が完了した後の手間をさらに省くことができる。
【0086】
<6.第4の実施形態>
続いて、本開示に係る第4の実施形態について説明する。同様に、第1の実施形態の説明と重複する内容は省略し、第1の実施形態との差分について説明する。
【0087】
第1の実施形態では、GNSS受信装置100がGNSS衛星から受信した電波信号および既知基準点の位置情報を用いて、測量業務が行われる。一方、第4の実施形態に係る情報処理システムでは、飛行撮像装置600をさらに備え、当該飛行撮像装置600のカメラ610により撮像された地上の撮像画像を用いた測量の実行が可能となる。
【0088】
図13は、本実施形態に係る飛行撮像装置を用いた観測の概要を説明するための図である。
図13には、GNSS受信装置100a~100d、電子基準点400a~400bおよびカメラ610を備える飛行撮像装置600が示されている。ここで、飛行撮像装置600は、例えばUAV(Unmanned aerial vehicle)でもよい。また、飛行撮像装置600は、GNSS受信機を備えてもよい。
【0089】
図13の一例において、飛行撮像装置600は、事前に計画された飛行経路に従って、測量の対象となる区域の上空を飛行する。次に、飛行撮像装置600は、GNSS受信装置100を含む区域をカメラ610を用いて撮像する撮像画像を生成する。なお、飛行撮像装置600は、GNSS受信装置100a~100dの全てがGNSS衛星からの受信を実行している状態になってから、GNSS受信装置100a~100dのうち、いずれかのGNSS受信装置100の受信が停止するまでの観測時間中に撮像する。観測に関する作業が終了した後、飛行撮像装置600は、クライアント端末200を介して、測量計算サーバ300へ撮像画像を提供する。次に、測量計算サーバ300の自動生成部340は、撮像画像中のGNSS受信装置100a~100dを検出し、検出された撮像画像中のGNSS受信装置100a~100dの位置と、GNSS受信装置100a~100dの設置点とを対応付けて、3Dモデルデータを生成する。
【0090】
このように、飛行撮像装置600を用いた観測を実行することで、より詳細な測量の実行が可能となる。
【0091】
<7.ハードウェア構成例>
次に、本開示の一実施形態に係る測量計算サーバ300のハードウェア構成例について説明する。
図14は、本開示の一実施形態に係る測量計算サーバ300のハードウェア構成例を示すブロック図である。
図14を参照すると、測量計算サーバ300は、例えば、プロセッサ871と、ROM872と、RAM873と、ホストバス874と、ブリッジ875と、外部バス876と、インターフェース877と、入力装置878と、出力装置879と、ストレージ880と、ドライブ881と、接続ポート882と、通信装置883と、を有する。なお、ここで示すハードウェア構成は一例であり、構成要素の一部が省略されてもよい。また、ここで示される構成要素以外の構成要素をさらに含んでもよい。
【0092】
(プロセッサ871)
プロセッサ871は、例えば、演算処理装置又は制御装置として機能し、ROM872、RAM873、ストレージ880、又はリムーバブル記録媒体901に記録された各種プログラムに基づいて各構成要素の動作全般又はその一部を制御する。
【0093】
(ROM872、RAM873)
ROM872は、プロセッサ871に読み込まれるプログラムや演算に用いるデータ等を格納する手段である。RAM873には、例えば、プロセッサ871に読み込まれるプログラムや、そのプログラムを実行する際に適宜変化する各種パラメータ等が一時的又は永続的に格納される。
【0094】
(ホストバス874、ブリッジ875、外部バス876、インターフェース877)
プロセッサ871、ROM872、RAM873は、例えば、高速なデータ伝送が可能なホストバス874を介して相互に接続される。一方、ホストバス874は、例えば、ブリッジ875を介して比較的データ伝送速度が低速な外部バス876に接続される。また、外部バス876は、インターフェース877を介して種々の構成要素と接続される。
【0095】
(入力装置878)
入力装置878には、例えば、マウス、キーボード、タッチパネル、ボタン、スイッチ、及びレバー等が用いられる。さらに、入力装置878としては、赤外線やその他の電波を利用して制御信号を送信することが可能なリモートコントローラ(以下、リモコン)が用いられることもある。また、入力装置878には、マイクロフォンなどの音声入力装置が含まれる。
【0096】
(出力装置879)
出力装置879は、例えば、CRT(Cathode Ray Tube)、LCD、又は有機EL等のディスプレイ装置、スピーカ、ヘッドホン等のオーディオ出力装置、プリンタ、携帯電話、又はファクシミリ等、取得した情報を利用者に対して視覚的又は聴覚的に通知することが可能な装置である。また、本開示に係る出力装置879は、触覚刺激を出力することが可能な種々の振動デバイスを含む。
【0097】
(ストレージ880)
ストレージ880は、各種のデータを格納するための装置である。ストレージ880としては、例えば、ハードディスクドライブ(HDD)等の磁気記憶デバイス、半導体記憶デバイス、光記憶デバイス、又は光磁気記憶デバイス等が用いられる。
【0098】
(ドライブ881)
ドライブ881は、例えば、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、又は半導体メモリ等のリムーバブル記録媒体901に記録された情報を読み出し、又はリムーバブル記録媒体901に情報を書き込む装置である。
【0099】
(リムーバブル記録媒体901)
リムーバブル記録媒体901は、例えば、DVDメディア、Blu-ray(登録商標)メディア、HD DVDメディア、各種の半導体記憶メディア等である。もちろん、リムーバブル記録媒体901は、例えば、非接触型ICチップを搭載したICカード、又は電子機器等であってもよい。
【0100】
(接続ポート882)
接続ポート882は、例えば、USB(Universal Serial Bus)ポート、IEEE1394ポート、SCSI(Small Computer System Interface)、RS-232Cポート、又は光オーディオ端子等のような外部接続機器902を接続するためのポートである。
【0101】
(外部接続機器902)
外部接続機器902は、例えば、プリンタ、携帯音楽プレーヤ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、又はICレコーダ等である。
【0102】
(通信装置883)
通信装置883は、ネットワークに接続するための通信デバイスであり、例えば、有線又は無線LAN、Bluetooth(登録商標)、又はWUSB(Wireless USB)用の通信カード、光通信用のルータ、ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)用のルータ、又は各種通信用のモデム等である。
【0103】
<8.まとめ>
以上で説明してきたように、本実施形態に係る測量計算サーバ300は、点検網、点検路線または平均計算網を、種々のアルゴリズムに従って、自動的に生成する機能を有する。係る機能によれば、観測者は、基準点測量をより効率的に遂行することが可能となる。
【0104】
以上、添付図面を参照しながら本開示の好適な実施形態について詳細に説明したが、本開示の技術的範囲はかかる例に限定されない。本開示の技術分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0105】
例えば、上記の各フローチャートに示した各ステップは、必ずしもフローチャートとして記載された順序に沿って時系列に処理する必要はない。すなわち、各ステップは、フローチャートとして記載した順序と異なる順序で処理されても、並列的に処理されてもよい。
【0106】
なお、以下のような構成も本開示の技術的範囲に属する。
(1)
GNSS衛星から同時観測を実行した複数の観測装置により受信された信号に基づいて前記観測装置の設置点に係る位置情報、および既知基準点に係る位置情報を取得することと、
取得された前記観測装置の設置点に係る位置情報、および前記既知基準点に係る位置情報を用い、第1の自動生成アルゴリズムに従って、プロセッサが、点検網を生成することと、
を含む、情報処理方法。
(2)
前記既知基準点が電子基準点である場合、取得された前記観測装置の設置点に係る位置情報、および前記電子基準点に係る位置情報を用い、第2の自動生成アルゴリズムに従って、前記電子基準点間を結合する点検路線を生成すること、
をさらに含む、前記(1)に記載の情報処理方法。
(3)
前記点検網が正常に生成されなかったことをユーザに対し通知すること、
をさらに含む、前記(1)または(2)に記載の情報処理方法。
(4)
前記生成された点検網に基づいて実行された第1の基線解析に係る結果を用い、第3の自動生成アルゴリズムに従って、平均計算網を生成すること、
をさらに含み、
前記平均計算網は、三次元網平均計算の実行に用いられる、
前記(1)~(3)のいずれか1項に記載の情報処理方法。
(5)
生成された前記平均計算網に基づいて実行された第2の基線解析に係る結果に関して、一部または全部の基線にFIX解が存在するか否かを判定することと、
前記第2の基線解析に係る結果に関して、一部または全部の前記基線にFIX解が存在しないと判定された場合、前記第1の基線解析に係る結果を用い、第3の自動生成アルゴリズムに従って、前記平均計算網とは異なる平均計算網を生成することと、
をさらに含む、前記(4)に記載の情報処理方法。
(6)
前記第2の基線解析に係る結果に関して、前記一部または全部の基線にFIX解が存在しないと判定されたことをユーザに対し通知すること、
をさらに含む、前記(5)に記載の情報処理方法。
(7)
前記平均計算網に係る情報を、ユーザに対し通知すること、
をさらに含む、前記(4)~(6)のいずれか1項に記載の情報処理方法。
(8)
前記平均計算網に係る情報を、基準点測量の成果物として出力すること、
をさらに含む、前記(7)に記載の情報処理方法。
(9)
前記観測装置の設置点に係る位置情報を、同時観測が実行されたセッション毎に分割することと、
取得された前記観測装置の設置点に係る位置情報、および前記既知基準点に係る位置情報を用い、第1の自動生成アルゴリズムに従って、プロセッサが、前記セッション毎の点検網を生成することと、
をさらに含む、前記(1)~(8)のいずれか1項に記載の情報処理方法。
(10)
前記同時観測は、スタティック法、RTK法、またはキネマティック法のいずれかにより実行される、
前記(1)~(9)のいずれか1項に記載の情報処理方法。
(11)
飛行撮像装置により撮像された前記観測装置を含む撮像画像から前記観測装置を検出し、検出された前記撮像画像中の前記観測装置の位置と前記観測装置の設置点に係る位置とを対応付けること、
をさらに含む前記(1)~(10)のいずれか1項に記載の情報処理方法。
(12)
コンピュータを、
GNSS衛星から受信した信号に基づいて同時観測を実行した複数の観測装置により計算された前記観測装置の設置点に係る位置情報、および既知基準点に係る位置情報を取得する情報取得部と、
取得された前記観測装置の設置点に係る観測情報、および前記既知基準点に係る位置情報を用い、自動生成アルゴリズムに従って、点検網を生成する自動生成部と、
を備える、情報処理装置、
として機能させるためのプログラム。
(13)
GNSS衛星から受信した信号に基づいて同時観測を実行する観測装置と、
前記観測装置により計算された前記観測装置の設置点に係る観測情報、および既知基準点に係る位置情報を取得する情報取得部と、
取得された前記観測装置の設置点に係る観測情報、および前記既知基準点に係る位置情報を用い、第1の自動生成アルゴリズムに従って、プロセッサが、点検網を生成する自動生成部と、
を備える、情報処理システム。
【符号の説明】
【0107】
100 GNSS受信装置
110 アンテナ
120 処理部
130 リムーバブルメモリ
200 クライアント端末
210 ディスプレイ
300 測量計算サーバ
310 通信部
330 記憶部
340 自動生成部
350 網計算部
360 成果物生成部
370 処理制御部
400 電子基準点
500 ネットワーク
600 飛行撮像装置
610 カメラ