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特許7188688内視鏡用フード組立体、並びに、内視鏡用フード組立体に用いられる内視鏡用フード及び牽引用部材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】内視鏡用フード組立体、並びに、内視鏡用フード組立体に用いられる内視鏡用フード及び牽引用部材
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/00 20060101AFI20221206BHJP
【FI】
A61B1/00 651
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2018136313
(22)【出願日】2018-07-20
(65)【公開番号】P2020010911
(43)【公開日】2020-01-23
【審査請求日】2021-05-28
(73)【特許権者】
【識別番号】505227043
【氏名又は名称】野村ユニソン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】509329062
【氏名又は名称】藤田 欣也
(73)【特許権者】
【識別番号】000126643
【氏名又は名称】株式会社アダチ
(74)【代理人】
【識別番号】110002697
【氏名又は名称】めぶき国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100104709
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 誠剛
(72)【発明者】
【氏名】神澤 広樹
(72)【発明者】
【氏名】藤田 欣也
(72)【発明者】
【氏名】高野 剛
【審査官】北島 拓馬
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0000321(US,A1)
【文献】国際公開第2015/166984(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0035997(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0105726(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00 - 1/32
A61B 13/00 -18/18
A61F 2/01
A61N 7/00 - 7/02
G02B 23/24 -23/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡挿入部の先端部に装着される内視鏡用フード組立体であって、
クリップの爪に掛けることができるループ部を複数有し、全体として長尺状をなしており、一端側が前記ループ部に掛けられた前記クリップにより体内組織の被牽引部位にクリッピングされて他端側から当該被牽引部位を牽引することができるよう構成された牽引用部材と、
前記内視鏡挿入部の前記先端部が嵌合する側となる第1開口部、及び、該第1開口部の側が前記内視鏡挿入部の前記先端部に嵌合されたときに前記先端部の鉗子口から突出する処置具が出入する側となる第2開口部を有する略円筒状の内視鏡用フードと、を備え、
前記内視鏡用フードには、前記牽引用部材が収容される牽引用部材収容部、及び、該牽引用部材収容部に接続された第3開口部が設けられており、
前記牽引用部材の少なくとも一部は前記牽引用部材収容部に収容されており、
さらに前記牽引用部材は、前記内視鏡用フード組立体が前記内視鏡挿入部の前記先端部に装着されたときに前記牽引用部材の引出用掛部が前記内視鏡挿入部の先端面よりも前方の位置となるように前記内視鏡用フードの係止部において係止されており、
前記処置具として鉗子又は前記クリップの爪が前記牽引用部材の前記引出用掛部を引掛けて前進したときに、前記牽引用部材収容部に収容された前記牽引用部材の一部が前記第3開口部より引き出されるように構成されている、
ことを特徴とする内視鏡用フード組立体。
【請求項2】
請求項1に記載の内視鏡用フード組立体において、
前記牽引用部材収容部は、略円筒状の前記内視鏡用フードの外周壁と内周壁との間に形成された格納室によって構成されており、
前記第3開口部は、前記格納室に接続され、前記内視鏡用フードの前方側に面して開口していることを特徴とする内視鏡用フード組立体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の内視鏡用フード組立体において、
前記内視鏡用フードには、前記牽引用部材収容部が複数箇所設けられていることを特徴とする内視鏡用フード組立体。
【請求項4】
請求項3に記載の内視鏡用フード組立体において、
前記複数箇所の前記牽引用部材収容部には、
別個の前記牽引用部材がそれぞれ収容されていることを特徴とする内視鏡用フード組立体。
【請求項5】
請求項3に記載の内視鏡用フード組立体において、
前記牽引用部材は、前記一端側及び前記他端側にそれぞれ少なくとも1以上の前記ループ部が設けられ、前記一端側の前記ループ部と前記他端側の前記ループ部とが接続部によって接続されて形成されたものであり、
前記一端側の前記ループ部及び前記他端側の前記ループ部が、互いに異なる場所に設けられた前記牽引用部材収容部にそれぞれ収容され、
前記牽引用部材の前記接続部が前記第2開口部内を一部跨ぐようにして構成されており、
当該接続部が前記引出用掛部として構成されている、
ことを特徴とする内視鏡用フード組立体。
【請求項6】
内視鏡挿入部の先端部に装着される内視鏡用フードであって、
前記内視鏡用フードは、略円筒状をなして、前記内視鏡挿入部の前記先端部が嵌合する側となる第1開口部、及び、該第1開口部の側が前記内視鏡挿入部の前記先端部に嵌合されたときに前記先端部の鉗子口から突出する処置具が出入する側となる第2開口部を有しており、
前記内視鏡用フードには、体内組織を牽引するために用いられる牽引用部材が収容される牽引用部材収容部、及び、該牽引用部材収容部に接続され前記牽引用部材の引出口となる第3開口部が設けられており、
前記内視鏡用フードが前記内視鏡挿入部の前記先端部に装着されたときに、前記牽引用部材の引出用掛部が前記内視鏡挿入部の先端面よりも前方の位置となるように前記牽引用部材の一部を係止することができる係止部が設けられている、
ことを特徴とする内視鏡用フード。
【請求項7】
請求項6に記載の内視鏡用フードにおいて、
前記牽引用部材収容部は、略円筒状の前記内視鏡用フードの外周壁と内周壁との間に形成された格納室によって構成されており、
前記第3開口部は、前記格納室に接続され、前記内視鏡用フードの前方側に面して開口していることを特徴とする内視鏡用フード。
【請求項8】
請求項7に記載の内視鏡用フードにおいて、
前記格納室は、前記内視鏡用フードの略円筒の中心軸と平行な方向に沿って延びるように形成された空洞からなることを特徴とする内視鏡用フード。
【請求項9】
請求項6~請求項8のいずれかに記載の内視鏡用フードにおいて、
前記牽引用部材収容部が複数箇所設けられていることを特徴とする内視鏡用フード。
【請求項10】
内視鏡を用いた手技において体内組織の被牽引部を牽引する際に使用される牽引用部材であって、
前記牽引用部材は、
生体適合性の高い繊維を編み込んで形成されて全体として長尺状をなし、
クリップの爪に掛けることができるループ部を複数有し、
一端側が前記ループ部に掛けられた前記クリップにより前記被牽引部位にクリッピングされて他端側から当該被牽引部位を牽引することができるよう構成され、
前記内視鏡の内視鏡挿入部の先端部に装着される内視鏡用フードに設けられた牽引用部材収容部に収容されるものである、
ことを特徴とする牽引用部材。
【請求項11】
請求項10に記載の牽引用部材において、
前記牽引用部材は、一端側又は他端側のうち少なくとも一方の端の側において、複数の前記ループ部が連続的に連なるように構成されていることを特徴とする牽引用部材。
【請求項12】
請求項10又は請求項11に記載の牽引用部材において、
前記牽引用部材を水平面に正置したときに、前記複数の前記ループ部がそれぞれ形成する仮想的な面は、同一平面上にないことを特徴とする牽引用部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡用フード組立体、並びに、内視鏡用フード組立体に用いられる内視鏡用フード及び牽引用部材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、体内の局部的な処置を行う際に、外科的開腹術に依らず内視鏡の挿入部(以下、「内視鏡挿入部」という。)を経口的に体内に挿入して行う内視鏡用手術が広く行われている。特に、食道、胃、大腸等の消化管においては、転移を伴わずに局所に留まる早期癌に対して、内視鏡の処置具挿通路を通じて病変部まで誘導された処置具を用いて粘膜から限局した病変部を切除する手術が採用されている。
【0003】
このような内視鏡による切除術としては、大きく3つの手法に大別される。すなわち、(a)内視鏡的ポリープ切除術(ポリペクトミー)、(b)内視鏡的粘膜切除術(EMR:Endoscopic Mucosal Resection)及び(c)内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD:Endoscopic Submucosal Dissection)である。
このうち(c)内視鏡的粘膜下層剥離術(以下、単に「ESD」という。)は、病変部をその周囲の非病変部ごと完全に切除するために例えば次のようなステップを経て施術される。
(1)内視鏡挿入部を体外から消化管内に挿入し切除目的部位まで到達させる。
(2)マーキング等によって病変部を含む切除範囲を決定する。
(3)粘膜下層に生理食塩水等を注入して切除範囲を浮かせる。
(4)内視鏡の処置具挿通路を通じて切除範囲付近まで誘導された処置具(ナイフ等)を用い粘膜層を切開し、粘膜下層まで露出させる(粘膜層切開)。
(5)粘膜下層を、当該粘膜下層の下の層に位置する固有筋層から剥離する(粘膜下層剥離)。
これらのステップを繰り返すことにより切除範囲を切除して病変部を完全に摘除することができる。
【0004】
しかし、(5)粘膜下層剥離のステップにおいては、切除されつつある粘膜下層の一部が内視鏡挿入部の先端面等に覆い被さってくる(覆い被さり)。このため、次に切除しようとする部位を巨視的に直視することが困難又は不可能となる。つまり、内視鏡のカメラレンズの位置を切除部位から後退させた状態で、次に切除しようとする部位を他の部位も含めて全体的に俯瞰することができない。
粘膜下層剥離を行うにあたっては、下層にある固有筋層を傷つけることないよう細心の注意を払いながら施術する必要があるが、こうした「覆い被さり」という困難な状況を克服しながら施術することとなるため、施術者には、ESDの豊富な経験と高度な技術が要求される。
また、内視鏡を用いない外科的開腹術によって病変部を切除する場合には、左手で病変部の一端を把持し捲り上げることもできる。しかしながら、ESDによる場合には、一般に体内に挿入される内視鏡挿入部は1本であるため、外科的開腹術を施術する者の左手に相当するものは無い。このため、ESDの場合には左手に相当するもので病変部の一端を捲り上げることもできないという事情もある。
【0005】
これに対し、従来よりクリップ牽引法が提案されている。
図10は、従来用いられているクリップ牽引法を説明するために示す図である。
クリップ牽引法は、内視鏡挿入部620の処置具挿通路628に挿通されたワイヤ730の先端に取り付けられたクリップ710で、体内組織の被牽引部位《病変部、消化管粘膜(上層の粘膜、粘膜下層等)等であって牽引される部位をいう。上記の例で言えば切除されつつある粘膜下層の一部がこれに相当する。》を把持し、クリップ710の爪711に接続された糸740を体外から引っ張ることで被牽引部位を牽引し、病変部の一部を捲り上げるという方法である(図10及び非特許文献1~3を参照。)。
【0006】
しかしながら、クリップ牽引法を実施するには、ナイフで粘膜層切開を行った後に内視鏡挿入部620を一旦体内から抜去しなければならない。すなわち、クリップ牽引法を実施するには、(1)内視鏡挿入部620を体内から抜去し、一旦、体外に出す、(2)内視鏡挿入部620の先端面622の鉗子口623の外側に現れているクリップ710(クリップ710はワイヤ730と共に処置具挿通路628を挿通したものであってもよいし、鉗子口623から飛び出したワイヤ730の先端に別途外部から取り付けたものであってもよい。)の爪711に糸740を結ぶ、(3)糸740を内視鏡挿入部620の外側(シースの外側)に沿うようして這わせる、(4)再び内視鏡挿入部620を体内に挿入する、という一連の準備ステップを経る必要がある。
【0007】
このような準備ステップを経ることは、患者及び施術者の両者にとって大きな負担を強いることとなる。また、このような準備ステップは一定以上の時間を要するため円滑な牽引を行うことができない。このため、例えば出血時に病変部を牽引し出血部を展開して状況を内視鏡カメラで直視したい等のように緊急を要する場合にはクリップ牽引法を採用しづらい。
【0008】
また、クリップ牽引法の改良として、特殊なクリップにバネ及びループが取り付けられた特殊牽引部材を用いてESDを実施する方法も提案されている(図11参照。非特許文献4も併せて参照。)。
【0009】
図11は、従来用いられている特殊牽引部材900を説明するために示す図である。 図11(a)は、特殊牽引部材900の構成を説明する図である。図11(b)は、特殊牽引部材900を体内に導入するときの様子を示す図である。図11(c)は、特殊牽引部材900を用いて被牽引部位810を牽引するときの様子を示す図である。なお、符号822は粘膜、符号824は粘膜下層及び符号826は固有筋層をそれぞれ示している。これらをまとめて包括的に消化管壁820とし、さらにその上位概念で体内組織800として示している。
特殊牽引部材900は、図11(a)に示すように、クリップ914の一方の爪に、コイルバネ912の一端が取り付けられ、コイルバネ912の他端にナイロンループ910が取り付けられている。特殊牽引部材900は、図11(b)に示すように、クリップ914(バネ部915側)がワイヤ730の先端に取り付けられ、ワイヤ730と共に内視鏡挿入部620の処置具挿通路(図示を省略。)に挿通され、内視鏡の先端部621の鉗子口623から現れるようにして体内に導入される。
特殊牽引部材900によれば、図11(c)に示すように、クリップ914で被牽引部位810の一端をクリッピングし(締めリング712により爪を締めてクリップを固定することによりクリッピングする。)、ナイロンループ910を別のクリップ710の爪で引っ掛けながら別のクリップ710を矢印で示した方向に移動させることにより、被牽引部位810を牽引して病変部812に対応した部位の一部を捲り上げることができる。また、別のクリップ710を被牽引部位810とは反対側の消化管壁にクリッピングすることで、消化管内に特殊牽引部材900を張って、捲り上げた状態を維持することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【文献】小池良樹,外8名、「食道ESDにおける糸付きクリップ牽引法の有用性:無作為化比較試験」、日本消化器内視鏡学会雑誌、Vol.57 (1),Jan.2015、p.66-73
【文献】上里昌也,外17名、「食道内視鏡的粘膜下層剥離術におけるクリップ牽引法の有効性」、千葉医学雑誌、千葉医学会、2011年6月、第87巻、p.237-243
【文献】小山恒男,外6名、「胃EMRの適用拡大:大きさからみて 一括切除を目指した手技の工夫と成績」、胃と腸、医学書院、2002年8月、第37巻、第9号、p.1155-1161
【文献】坂本直人,長田太郎、”ESDにおけるトラクション法”、[online]、ゼオンメディカル株式会社ホームページ、[平成30年6月7日検索]、インターネット(URL: http://www.zeonmedical.co.jp/case_report/portal/circulation/pdf/0003.pdf)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特殊牽引部材900は、内視鏡600の処置具挿通路(図示を省略。)及び鉗子口623を通過できるものであることが前提であるため、特殊牽引部材900として適用することができるサイズ(径、長さ等)・形状において制約がある。つまり、処置具挿通路の内径よりも大きな外径をもつクリップ914/コイルバネ912は適用することができない。
また、比較的長い距離(牽引リーチ)で特殊牽引部材900を消化管内に張りたい場合には、長さの長いコイルバネを有する特殊牽引部材を改めて処置具挿通路に投入する必要があり、牽引リーチ調整のために特殊牽引部材900を出し入れする時間がとられてしまい、牽引を円滑に行うことができない。
さらに、特殊牽引部材900のナイロンループ910の径は比較的小さいものであるため、このループにクリップの爪を引掛けようとする動作を何度も繰り返さなければならない場合もあり、牽引を円滑に行うことができない。
【0012】
そこで本発明は、上記した事情に鑑みてなされたものであり、内視鏡を用いて体内組織の被牽引部位を牽引する際に、従来に比べてより円滑な牽引を支援することができる内視鏡用フード組立体、並びに、内視鏡用フード組立体に用いられる内視鏡用フード及び牽引用部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
[1]本発明の内視鏡用フード組立体は、内視鏡挿入部の先端部に装着される内視鏡用フード組立体であって、クリップの爪に掛けることができるループ部を複数有し、全体として長尺状をなしており、一端側が前記ループ部に掛けられた前記クリップにより体内組織の被牽引部位にクリッピングされて他端側から当該被牽引部位を牽引することができるよう構成された牽引用部材と、前記内視鏡挿入部の前記先端部が嵌合する側となる第1開口部、及び、該第1開口部の側が前記内視鏡挿入部の前記先端部に嵌合されたときに前記先端部の鉗子口から突出する処置具が出入する側となる第2開口部を有する略円筒状の内視鏡用フードと、を備え、前記内視鏡用フードには、前記牽引用部材が収容される牽引用部材収容部、及び、該牽引用部材収容部に接続された第3開口部が設けられており、前記牽引用部材の少なくとも一部は前記牽引用部材収容部に収容されており、さらに前記牽引用部材は、前記内視鏡用フード組立体が前記内視鏡挿入部の前記先端部に装着されたときに前記牽引用部材の引出用掛部が前記内視鏡挿入部の先端面よりも前方の位置となるように前記内視鏡用フードの係止部において係止されており、前記鉗子又は前記クリップの爪が前記牽引用部材の前記引出用掛部を引掛けて前進したときに、前記牽引用部材収容部に収容された前記牽引用部材の一部が前記第3開口部より引き出されるように構成されている、ことを特徴とする。
【0014】
本発明の内視鏡用フード組立体(以下、単に「フード組立体」ということがある。)において、内視鏡用フードには牽引用部材が収容される牽引用部材収容部及び該牽引用部材収容部に接続された第3開口部が設けられており、牽引用部材収容部に牽引用部材の少なくとも一部が収容されている。さらに牽引用部材は、内視鏡用フード組立体が内視鏡挿入部の先端部に装着されたときに牽引用部材の引出用掛部が内視鏡挿入部の先端面よりも前方の位置となるように内視鏡用フードの係止部において係止されている。このため、鉗子又はクリップを鉗子口から突出させ爪を開いた状態で前進させると、かかる爪で牽引用部材の引出用掛部を引掛けることができる。引出用掛部を引掛けながら更に鉗子又はクリップを前進させると、牽引用部材収容部に収容された牽引用部材の一部が第3開口部より引き出される。
こうしたことから、フード組立体を内視鏡挿入部の先端部に装着しておけば、内視鏡挿入部を体内に挿入して粘膜層の切開等を行った後も、内視鏡挿入部が体内に挿入された状態を維持しながら、鉗子又はクリップの爪で引出用掛部を引掛けて前進するだけで牽引用部材を内視鏡用フードから引き出すことができる。
よって、従来のように牽引用部材(糸)を体内に入れるためだけのために内視鏡挿入部を抜去・再挿入したり、特殊牽引部材を改めて処置具挿通路に投入するようなこともなく、容易に牽引用部材を体内に導入することができ、直ちに牽引操作に移行することができる。
したがって、本発明のフード組立体によれば、内視鏡を用いて体内組織の被牽引部位を牽引する際に、従来に比べてより円滑な牽引を支援することができる。
【0015】
[2]本発明の内視鏡用フード組立体においては、前記牽引用部材収容部は、略円筒状の前記内視鏡用フードの外周壁と内周壁との間に形成された格納室によって構成されており、 前記第3開口部は、前記格納室に接続され、前記内視鏡用フードの前方側に面して開口していることが好ましい。
【0016】
[3]本発明の内視鏡用フード組立体において、前記内視鏡用フードには、前記牽引用部材収容部が複数箇所設けられていることが好ましい。
【0017】
[4]上記[3]に記載の内視鏡用フード組立体において、前記複数箇所の前記牽引用部材収容部には、別個の前記牽引用部材がそれぞれ収容されていることが好ましい。
【0018】
[5]上記[3]に記載の内視鏡用フード組立体において、前記牽引用部材は、前記一端側及び前記他端側にそれぞれ少なくとも1以上の前記ループ部が設けられ、前記一端側の前記ループ部と前記他端側の前記ループ部とが接続部によって接続されて形成されたものであり、前記一端側の前記ループ部及び前記他端側の前記ループ部が、互いに異なる場所に設けられた前記牽引用部材収容部にそれぞれ収容され、前記牽引用部材の前記接続部が前記第2開口部内を一部跨ぐようにして構成されており、当該接続部が前記引出用掛部として構成されている、ことが好ましい。
【0019】
[6]本発明の内視鏡用フードは、内視鏡挿入部の先端部に装着される内視鏡用フードであって、前記内視鏡用フードは、略円筒状をなして、前記内視鏡挿入部の前記先端部が嵌合する側となる第1開口部、及び、該第1開口部の側が前記内視鏡挿入部の前記先端部に嵌合されたときに前記先端部の鉗子口から突出する処置具が出入する側となる第2開口部を有しており、前記内視鏡用フードには、体内組織を牽引するために用いられる牽引用部材が収容される牽引用部材収容部、及び、該牽引用部材収容部に接続され前記牽引用部材の引出口となる第3開口部が設けられており、前記内視鏡用フードが前記内視鏡挿入部の前記先端部に装着されたときに、前記牽引用部材の引出用掛部が前記内視鏡挿入部の先端面よりも前方の位置となるように前記牽引用部材の一部を係止することができる係止部が設けられている、ことを特徴とする。
【0020】
本発明の内視鏡用フードは、体内組織を牽引するために用いられる牽引用部材が収容される牽引用部材収容部が設けられ、牽引用部材の引出用掛部が内視鏡挿入部の先端面よりも前方の位置となるように牽引用部材の一部を係止することができる係止部が設けられている。
このため、牽引用部材を予め牽引用部材収容部に収容しておけば、鉗子又はクリップの爪で引出用掛部を引掛けて前進することにより、牽引用部材を第3開口部より体内に引き出すことができる。
よって、従来のように牽引用部材(糸)を体内に入れるためだけのために内視鏡挿入部を抜去・再挿入したり、特殊牽引部材を改めて処置具挿通路に投入するようなこともなく、容易に牽引用部材を体内に導入することができ、直ちに牽引操作に移行することができる。
したがって、本発明の内視鏡用フードによれば、内視鏡を用いて体内組織の被牽引部位を牽引する際に、従来に比べてより円滑な牽引を支援することができる。
【0021】
[7]本発明の内視鏡用フードにおいて、前記牽引用部材収容部は、略円筒状の前記内視鏡用フードの外周壁と内周壁との間に形成された格納室によって構成されており、前記第3開口部は、前記格納室に接続され、前記内視鏡用フードの前方側に面して開口していることが好ましい。
【0022】
[8]本発明の内視鏡用フードにおいて、前記格納室は、前記内視鏡用フードの略円筒の中心軸と平行な方向に沿って延びるように形成された空洞からなることが好ましい、
【0023】
[9]本発明の内視鏡用フードにおいては、前記牽引用部材収容部が複数箇所設けられていることが好ましい。
【0024】
[10]本発明の牽引用部材は、内視鏡を用いた手技において体内組織の被牽引部を牽引する際に使用される牽引用部材であって、前記牽引用部材は、生体適合性の高い繊維を編み込んで形成されて全体として長尺状をなし、クリップの爪に掛けることができるループ部を複数有し、一端側が前記ループ部に掛けられた前記クリップにより前記被牽引部位にクリッピングされて他端側から当該被牽引部位を牽引することができるよう構成され、前記内視鏡の内視鏡挿入部の先端部に装着される内視鏡用フードに設けられた牽引用部材収容部に収容されるものである、ことを特徴とする。
【0025】
本発明の牽引用部材は繊維を編み込んで形成されたものであるため、これを用いて牽引を行うと牽引用部材が適度に伸縮することとなり、穏やかに被牽引部位を引っ張ることができる。
また、本発明の牽引用部材は、繊維の編み込みにより表面に凹凸が形成されているため、編み込みしていない材料を用いた場合に比べて消化管等の内壁に密着しづらくなる。そのため、処置具で取り上げ易い牽引用部材となる。
したがって、本発明の牽引用部材によれば、内視鏡を用いて体内組織の被牽引部位を牽引する際に、従来に比べてより円滑な牽引を支援することができる。
【0026】
[11]本発明の牽引用部材においては、前記牽引用部材は、一端側又は他端側のうち少なくとも一方の端の側において、複数の前記ループ部が連続的に連なるように構成されていることが好ましい。
【0027】
[12]本発明の牽引用部材において、前記牽引用部材を水平面に正置したときに、前記複数の前記ループ部がそれぞれ形成する仮想的な面は、同一平面上にないことが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】実施形態1に係る内視鏡用フード組立体1を内視鏡挿入部620に装着するときの様子を示す図である。
図2】実施形態1に係る内視鏡用フード組立体1、並びに、これに用いられる内視鏡用フード200及び牽引用部材100を説明するために示す図である。
図3】実施形態1に係る内視鏡用フード組立体1の組立方法を説明するために示す図である。
図4】実施形態1に係る内視鏡用フード組立体1の使用例を説明するために示す図である。
図5】実施形態1に係る内視鏡用フード組立体1の使用例を説明するために示す図である。
図6】実施形態2に係る内視鏡用フード組立体2を説明するために示す図である。
図7】変形例に係る内視鏡用フード200b,200cを説明するために示す図である。
図8】変形例に係る牽引用部材100’,100b,100c,100d,100’’,100eを説明するために示す図である。
図9】変形例に係る牽引用部材100eを用いた内視鏡用フード組立体3を説明するために示す図である。
図10】従来用いられているクリップ牽引法を説明するために示す図である。
図11】従来用いられている特殊牽引部材900を説明するために示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の内視鏡用フード組立体、並びに、内視鏡用フード組立体に用いられる内視鏡用フード及び牽引用部材について、図に示す実施の形態に基づいて説明する。なお、各図面は模式図であり、必ずしも実際の寸法を厳密に反映したものではない。
【0030】
[実施形態1]
1.内視鏡用フード組立体1,内視鏡用フード200及び牽引用部材100の構成
(1)内視鏡用フード組立体1と内視鏡挿入部620との関係
図1は、実施形態1に係る内視鏡用フード組立体1(以下、単に「フード組立体1」という場合がある。以下、内視鏡用フード組立体2,3についても同様。)を内視鏡挿入部620に装着するときの様子を示す図である。図1(a)は内視鏡用フード組立体1と内視鏡挿入部620との装着関係を示し、図1(b)は内視鏡挿入部620の先端面622の一例として先端面622に垂直な方向から視たときの図を示している。
【0031】
図1(a)に示すように、実施形態1に係る内視鏡用フード組立体1は、内視鏡挿入部620の先端部621に装着されるものである。また、フード組立体1は、内視鏡挿入部620の先端部621に装着された後に先端部621から取り外すこともできる。フード組立体1は、いわば内視鏡挿入部620のアタッチメントとも言える。
フード組立体1は、略円筒状をなしており第1開口部(詳細は後述)側で内視鏡挿入部620の先端部621と篏合して装着される。
【0032】
内視鏡用フード組立体1を装着する内視鏡600としては、一般的な内視鏡を用いることができる。
内視鏡600は、図1(a)に示すように、大きく分けて内視鏡挿入部620、操作部610、外部機器630等を備える。内視鏡挿入部620は体内に挿入される部分であり、内部に処置具挿通路(図1では図示を省略。)等を有しシースで覆われている。操作部610は施術者が内視鏡用手術に関連した操作を行う部分であり、ボタン611、アングルノブ612、処置具投入口613等を有している。外部機器630は図示しない光源装置、画像処理装置、モニタ等を有している。
内視鏡挿入部620の先端部621は略円柱状をなしており、フード組立体1と篏合することができる。内視鏡挿入部620の先端面622には、例えば、処置具挿通路(図示を省略。)の出口である鉗子口623、体内に光を照らす発光部624、光学的情報を取り込む口となるカメラレンズ625、液体又は気体を体内に導入するためのノズル626等が設けられている《図1(b)参照。》。なお、処置具挿通路及び鉗子口623に通すことができる処置具としては、例えばナイフ、鉗子、クリップ等を挙げることができる。
【0033】
(2)内視鏡用フード組立体1,内視鏡用フード200及び牽引用部材100
図2は、実施形態1に係る内視鏡用フード組立体1、並びに、これに用いられる内視鏡用フード200及び牽引用部材100を説明するために示す図である。図2(a)は、内視鏡用フード組立体1を第2開口部202の側の斜め上より視たときの斜視図である。なお、第2開口部202の側を正面とし、第1開口部201の側を背面とする。図2(b)は、内視鏡用フード組立体1を第2開口部202の側から視た正面図である。図2(c)は、内視鏡用フード組立体1を右側から視て牽引用部材100を透視した右側面透視図である。図2(d)は、図2(c)において内視鏡用フード組立体1をA-A線に沿って切断してA-A視したときの断面図である。なお、図2(d)では、フード組立体1が内視鏡挿入部620の先端部621に装着されて、鉗子720又はクリップ710が鉗子口623から突出する様子も合成して示している。
【0034】
内視鏡用フード組立体1は、図2に示すように、内視鏡用フード200と、内視鏡用フード200の牽引用部材収容部220に収容された牽引用部材100と、を備える。
【0035】
(2-1)牽引用部材100
牽引用部材100は、クリップ710の爪711に掛けることができるループ部120を複数有する。牽引用部材100は、全体として長尺状をなしており、一端側がループ部120に掛けられたクリップ710により体内組織の被牽引部位にクリッピングされて他端側から当該被牽引部位を牽引することができるよう構成されている。
例えば、図2に示すように、牽引用部材100は、一端側及び他端側にそれぞれ少なくとも1以上のループ部120が設けられ、一端側のループ部120と他端側のループ部120とが接続部130によって接続されるように「連結型」として形成してもよい《図2参照、後述の説明及び図3等も併せて参照。》。
なお、牽引用部材100の詳しい構成及び使用方法については後述する。
【0036】
(2-2)内視鏡用フード200
(ア)第1開口部201及び第2開口部202
内視鏡用フード200は、第1開口部201及び第2開口部202を有する略円筒状をなしている。
第1開口部201は、内視鏡挿入部620の先端部621が嵌合する側となる開口部である。第2開口部202は、第1開口部201の側が内視鏡挿入部620の先端部621に嵌合されたときに先端部621の鉗子口623から突出する処置具が出入する側となる開口部である。内視鏡用フード200の内径は、装着を予定している内視鏡挿入部620の先端部621の外径の寸法、形状等に対応した寸法、形状等となるよう設計される。
なお、図2等において円筒の中心軸を符号AX1で示す。本明細書においては、第2開口部202の側を前とし第1開口部201の側を後ろという。また、第1開口部201の側から第2開口部202の側に向かう方向を「前方」といい、前方に向かって進むことを「前進」という。
【0037】
(イ)牽引用部材収容部220
内視鏡用フード200には、牽引用部材100が収容される牽引用部材収容部220が設けられている。牽引用部材収容部220は、牽引用部材100が収容できれば如何なる態様で構成されていてもよい。牽引用部材収容部220は、図2(d)等で示すように、略円筒状の内視鏡用フード200の外周壁205と内周壁206との間に形成された格納室222によって構成されていることが好ましい。この格納室222は、内視鏡用フード200の略円筒の中心軸AX1と平行な方向に沿って延びるように形成された空洞HLからなることがより好ましい。
【0038】
内視鏡用フード200において、牽引用部材収容部220が複数箇所に設けられていることが好ましい。図2等においては、牽引用部材収容部220が2箇所設けられた構成を示している。
また、それぞれの牽引用部材収容部220に対応するように、それぞれ後述する係止部230が設けられていることが好ましい。そうすることで、それぞれの牽引用部材収容部220に収容された個々の牽引用部材100を内視鏡用フード200に係止することができる。
【0039】
(ウ)第3開口部203
内視鏡用フード200には、牽引用部材収容部220に接続された第3開口部203が設けられている。第3開口部203は、牽引用部材収容部220から牽引用部材100が引き出される際にかかる引き出しを妨害するものでなれば如何なる態様で構成されていてもよい。第3開口部203は、格納室222に接続され、内視鏡用フード200の前方側に面して開口していることが好ましい。
【0040】
(エ)係止部230
内視鏡用フード200には、牽引用部材100を係止する係止部230が設けられている。係止部230は、牽引用部材100が内視鏡用フード200に対し着脱可能に仮固定するようにして牽引用部材100を係止する。係止部230は、牽引用部材100が係って内視鏡用フード200に仮止めできるものであれば如何なる態様で構成されていてもよい。例えば、内視鏡用フード200の第2開口部202の縁をU字、V字、円弧、鍵穴型等の凹部形状に形成して牽引用部材100を挟持できるようにしたものであってもよい《図2(c)等参照。》。また、ある程度の粘着力を持つ接着剤によって牽引用部材100を内視鏡用フード200の一部に仮固定できるよう構成したものなども係止部230のうちに含まれる。
【0041】
(2-3)牽引用部材100と内視鏡用フード200との関係
牽引用部材100の少なくとも一部は牽引用部材収容部220に収容されている。
図2に例示するフード組立体1においては、牽引用部材収容部220が複数箇所設けられており、またそれらに収容される牽引用部材100は「連結型」の牽引用部材である。このため、ここでは牽引用部材100の一端側のループ部120及び他端側のループ部120が、互いに異なる場所に設けられた牽引用部材収容部220にそれぞれ収容されている。すなわち、一端側のループ部120及び他端側のループ部120が図2の正面から視て右側の牽引用部材収容部220及び左側の牽引用部材収容部220にそれぞれ収容されている。このとき、牽引用部材100の一端側のループ部120は、外周壁205と内周壁206との間に形成された格納室222(さらに詳しくは空洞HL)の内部に、中心軸AX1と平行な方向に沿って収容されている《図2(c)参照。》。他端側のループ部120も同様に収容されている。
【0042】
図2(d)は、内視鏡用フード組立体1が内視鏡挿入部620の先端部621に装着されたときの様子も合成して示している。
牽引用部材100は、図2(c)及び図2(d)で示すように、内視鏡用フード組立体1が内視鏡挿入部620の先端部621に装着されたときに牽引用部材100の引出用掛部140が内視鏡挿入部620の先端面622よりも前方の位置となるように内視鏡用フード200の係止部230において係止されている。
ここで「引出用掛部140」とは、牽引用部材100の一部を構成する部位であり、牽引用部材100が牽引用部材収容部220より引き出される際に鉗子又はクリップの爪で引掛けられる部位である。例えば、図2に示すような「連結型」の牽引用部材100にあっては、牽引用部材100の接続部130が第2開口部内を一部跨ぐようにして構成されており、かかる接続部130が引出用掛部140として構成されている、
【0043】
以上の通りフード組立体1は、牽引用部材収容部220、第3開口部203、係止部230、引出用掛部140等が設けられ、鉗子又はクリップの爪が牽引用部材100の引出用掛部140を引掛けて前進したときに、牽引用部材収容部220に収容された牽引用部材100の一部(収容されている部分)が第3開口部203より引き出されるように構成されている。
なお、上記において引出用掛部140を引掛ける処置具としては「鉗子又はクリップ」としたが、本発明はこれに限定されるものではない。引出用掛部140を引掛けて牽引用部材100を引き出すことができるのであれば他の処置具であってもよい。例えば、フック状の処置具等であってもよい。このような処置具等による場合にも本発明の均等の範囲とする。
【0044】
2.内視鏡用フード組立体1の組立方法
図3は、実施形態1に係る内視鏡用フード組立体1の組立方法を説明するために示す図である。図3(a1)は、牽引用部材100を長手方向に延長したときの斜視図であり、図3(a2)は、牽引用部材100を水平面に正置したときの様子を、牽引用部材100の長手方向とは垂直な方向から水平面に沿って視たときの図である。図3(a3)は、内視鏡用フード200の斜視図である。図3(b)は、牽引用部材100を内視鏡用フード200に収容する前の状態を示す斜視図である。図3(c)は、牽引用部材100が内視鏡用フード200に収容され、内視鏡用フード組立体1の組立が完了した状態を透視したときの透視斜視図である。
【0045】
内視鏡用フード組立体1は、例えば、以下の工程を実施することによって組み立てることができる。
【0046】
(1)牽引用部材100の準備
まず、牽引用部材100を準備する。
牽引用部材100は、生体適合性の高い繊維を編み込んで形成し、全体として長尺状をなすように形成する。
牽引用部材100は、一端101側がループ部120に掛けられたクリップにより被牽引部位にクリッピングされて他端109側から当該被牽引部位を牽引することができるようするため、クリップの爪に掛けることができるループ部120を複数有するように形成する《図3(a1)参照。》。
【0047】
牽引用部材100は、一端101側又は他端109側のうち少なくとも一方の端の側において、複数のループ部120が連続的に連なるように(換言すると鎖状に)構成することが好ましい。図3の例では、一端101側において複数のループ部120a,120b,120c,120d,120eが連続的に連なり(5連)、更に、他端109側において複数のループ部120v,120w,120x,120y,120zが連続的に連なる(5連)よう構成されている。このように複数のループ部が連続的に連なるように構成することで、複数のループ部の中から適切なループ部を選択して牽引リーチを調整することができる(詳細は後述する。)。
そして、一端101側のループ部120a,120b,120c,120d,120eと他端109側のループ部120v,120w,120x,120y,120zとが接続部130によって接続されている。
【0048】
また、牽引用部材100は、図3(a2)に示すように、牽引用部材を水平面に正置したときに、複数のループ部がそれぞれ形成する仮想的な面が同一平面上にないように構成することが好ましい。例えば、注目する1つのループ部が形成する面の傾き・方向と、当該注目する1つのループ部と隣接する別のループ部が形成する面の傾き・方向とが、ループ部同士が結合する節の部分を境に、異なるものとなるよう構成する。
【0049】
牽引用部材100の実施例を次に説明する。
生体適合性の高い材料として例えばナイロン繊維を牽引用部材100の材料として採用して編み込みを行った。また、ループ部120の内径は、例えばクリップの爪の長さが10mm程度であり、爪を開いたときの爪の先端間が10mm程度であると想定した場合、5mm~10mm程度とした。隣接するループ部120同士は、互いに縛ることにより節の部分で結合するものとした。一端101側の5連のループ部全体の長さを30mm~50mm程度とした。他端109側についても同様に5連のループ部を形成した。
【0050】
(2)内視鏡用フード200の準備
(1)と並行して、内視鏡用フード200を準備する《図3(a3)参照。》。
内視鏡用フード200の構成についての詳細な説明は、これまで述べてきた説明がそのまま援用される。
【0051】
ここで準備される内視鏡用フード200は、これまで述べてきた内視鏡用フード組立体1に用いられるものであれば如何なる態様のものであってもよい。
【0052】
すなわち、「内視鏡挿入部620の先端部621に装着される内視鏡用フード200であって、内視鏡用フード200は、略円筒状をなして、内視鏡挿入部620の先端部621が嵌合する側となる第1開口部201、及び、該第1開口部201の側が内視鏡挿入部620の先端部621に嵌合されたときに先端部621の鉗子口623から突出する処置具が出入する側となる第2開口部202を有しており、内視鏡用フード200には、体内組織を牽引するために用いられる牽引用部材100が収容される牽引用部材収容部220、及び、該牽引用部材収容部220に接続され牽引用部材100の引出口となる第3開口部203が設けられており、内視鏡用フード200が内視鏡挿入部620の先端部621に装着されたときに、牽引用部材100の引出用掛部140が内視鏡挿入部620の先端面622よりも前方の位置となるように牽引用部材100の一部を係止することができる係止部230が設けられている」ものであれば如何なる態様のものであってもよい。
【0053】
(3)牽引用部材100の牽引用部材収容部220への収容
次いで、牽引用部材100を接続部130において折り込む。図3(b)においてはコの字形に折り込んだ様子を示している。
その上で、牽引用部材100の一端101側を、内視鏡用フード200の正面から向かって左側の第3開口部203より牽引用部材収容部220の内部に挿入し収容する。同様に他端109側を、正面から向かって右側の第3開口部203より牽引用部材収容部220の内部に挿入し収容する《図3(b)参照。》。
【0054】
(4)牽引用部材100の係止
次いで、内視鏡用フード200の正面から向かって左側の係止部230において接続部130を仮固定して牽引用部材100を係止する。同様に正面から向かって右側の係止部230においても接続部130を係止する《図3(c)参照。》。
【0055】
(5)以上の工程を実施することによって、内視鏡用フード組立体1を得ることができる。
なお、内視鏡用フード組立体1の組立方法は上記に何ら限定されるものではない。
【0056】
3.内視鏡用フード組立体1の使用例
次に、内視鏡用フード組立体1の使用例を説明する。
図4は、実施形態1に係る内視鏡用フード組立体1の使用例を説明するために示す図である。図5は、実施形態1に係る内視鏡用フード組立体1の使用例を説明するために図4に続いて示す図である。図4(a)~図4(d)及び図5(a)~図(e)の各図は各ステップを示す図である。
【0057】
(1)内視鏡用フード組立体1の装着
第1開口部201の側を内視鏡挿入部620の先端部621に篏合するようにして、内視鏡用フード組立体1を内視鏡挿入部620の先端部621に装着する《図4(a)参照。》。
【0058】
(2)内視鏡挿入部620の体内挿入
次いで、内視鏡用フード組立体1を装着した状態で、内視鏡挿入部620を体外から体内に挿入し、切除目的部位の付近まで到達させる(図示を省略。)。
【0059】
(3)粘膜層切開
次いで、ナイフ750を処置具挿通路(図示を省略。)を通じて切除範囲付近まで誘導し、当該ナイフ750を用いて粘膜層822を切開し、粘膜下層824まで露出させる《図4(b)参照。》。
なお、粘膜層切開に先立って、病変部812を含む切除範囲を決定して、必要に応じてマーキングをし、粘膜下層824に生理食塩水等を注入して切除範囲を浮かせるステップを実施する。
【0060】
(4)第1クリップ715の投入
次いで、第1クリップ715を内視鏡の操作部610の処置具投入口613より投入する《図4(c)参照。》。
【0061】
(5)牽引用部材100の引出し
次いで、第1クリップ715を、処置具挿通路628内で順次先送りをし、内視鏡挿入部620の先端面622の鉗子口623から突出させる。第1クリップ715を爪711を開いた状態で更に前進させ、爪711で牽引用部材100の引出用掛部140を引掛ける《図4(d)参照。》。引出用掛部140を引掛けながら更に第1クリップ715を前進させ、牽引用部材収容部220に収容された牽引用部材100を第3開口部203より引き出す(図2も併せて参照。)。
このようにして、牽引用部材100を前進させて体内の被牽引部位810付近(図5参照。)に引き出すことができる。なお、第1クリップ715の代わりに鉗子(図示を省略。)を用いて牽引用部材100を体内に引き出すものとしてもよい。
【0062】
(6)牽引用部材100の一端101側のループ部を引掛けながらのクリッピング
次いで、第1クリップ715の爪711で牽引用部材100の一端101側のループ部120を引掛けて、爪711をループ部(図ではループ部120a)の輪に通す。その上で、第1クリップ715を被牽引部位810の一部を把持する《図5(a)参照。》。
【0063】
(7)第1クリップ715の固定及び牽引用部材100の一端101側の係留
次いで、第1クリップ715の締めリング712により爪711を閉じて、第1クリップ715を被牽引部位810の一部に固定する。これと同時に第1クリップ715の爪711に引掛けられた牽引用部材100の一端101側も第1クリップ715に係留される《図5(b)参照。》。
【0064】
(8)第2クリップ716の投入
次いで、第2クリップ716を内視鏡の操作部610の処置具投入口613より投入する《図5(c)参照。》。
【0065】
(9)牽引用部材100の他端109側のループ部の引掛け
次いで、第2クリップ716の爪711で牽引用部材100の他端109側のループ部120を引掛けて、爪711をループ部120の輪に通す《図5(d)参照。》。
このとき、他端109側において複数のループ部120が連続的に連なるように牽引用部材100が形成されている場合には、想定している牽引用部材の張り長さ(牽引リーチ)に合わせて適宜の箇所のループ部を選択する《図5(d)の例では他端109から3番目のループ部120xを選択している。》
【0066】
(10)被牽引部位810の牽引及び牽引用部材100の他端109側の固定
次いで、第2クリップ716により牽引用部材100の他端109側を牽引する。
例えば、病変部812を含む被牽引部位810が一方側の消化管壁820aに分布していたとした場合、牽引をかけたい向きに位置する消化管壁820bの方向(他方側)に牽引して、その上で、当該他方側の消化管壁820bにクリッピングし第2クリップ716を固定してもよい。
このようにして病変部812を含む被牽引部位810の一部を牽引して捲り上げることができる。これにより、剥離等の処置を行うべき領域OS(ここでの例では剥離している最前線の領域)の視界を良好に確保することができる《図5(e)参照。》。
良好な視界を提供することができるため、剥離し過ぎ、血管損傷等のトラブルの防止にも寄与することができる。
【0067】
(11)上記ステップ(1)~(10)の各作業は、施術者によって実施することができる。これらのステップを実施することによって、体内組織800の被牽引部位810を牽引することができる。なお、内視鏡用フード組立体1の使用方法は上記に何ら限定されるものではない。
参考までに、上記(10)で記載した「被牽引部位810の牽引及び牽引用部材100の他端109側の固定」のステップを実施した後、病変部812及び被牽引部位810が消化管壁820から完全に剥離されたならば、テンションが掛かっている牽引用部材100の他端109側の一部を電気メス等で切断することにより、病変部812、被牽引部位810、第1クリップ715及び牽引用部材の一部と、第2クリップ716と、を分離することができる(図示を省略。)。こうすることにより、病変部812を体内から回収する際に、病変部812と一体となって第1クリップ715及び牽引用部材の一部も併せて回収することができる。
【0068】
4. 内視鏡用フード組立体1,内視鏡用フード200及び牽引用部材100の効果
次に、内視鏡用フード組立体1,内視鏡用フード200及び牽引用部材100の効果を以下説明する。
【0069】
(1)実施形態1に係る内視鏡用フード組立体1の効果
実施形態1に係る内視鏡用フード組立体1において、内視鏡用フード200には牽引用部材100が収容される牽引用部材収容部220及び該牽引用部材収容部220に接続された第3開口部203が設けられており、牽引用部材収容部220に牽引用部材100の少なくとも一部が収容されている。さらに牽引用部材100は、内視鏡用フード組立体1が内視鏡挿入部620の先端部621に装着されたときに牽引用部材100の引出用掛部140が内視鏡挿入部620の先端面622よりも前方の位置となるように内視鏡用フード00の係止部230において係止されている(図2及び図3参照。)。このため、鉗子又はクリップを鉗子口から突出させ爪を開いた状態で前進させると、かかる爪で牽引用部材100の引出用掛部140を引掛けることができる。引出用掛部140を引掛けながら更に鉗子又はクリップを前進させると、牽引用部材収容部220に収容された牽引用部材100の一部が第3開口部203より引き出される。
こうしたことから、フード組立体1を内視鏡挿入部620の先端部621に装着しておけば、内視鏡挿入部620を体内に挿入して粘膜層の切開等を行った後も、内視鏡挿入部620が体内に挿入された状態を維持しながら、鉗子又はクリップを爪で引出用掛部140を引掛けて前進するだけで、牽引用部材100を内視鏡用フード組立体1から引き出すことができる。
よって、従来のように牽引用部材(糸)を体内に入れるだけのために内視鏡挿入部620を抜去・再挿入したり、特殊牽引部材を改めて処置具挿通路に投入することもなく、容易に牽引用部材を体内に導入することができ、直ちに牽引操作に移行することができる。
したがって、実施形態1に係るフード組立体1によれば、内視鏡を用いて体内組織の被牽引部位を牽引する際に、従来に比べてより円滑な牽引を支援することができる。
【0070】
(2)実施形態1に係る内視鏡用フード200の効果
実施形態1に係る内視鏡用フード200は、体内組織を牽引するために用いられる牽引用部材100が収容される牽引用部材収容部220が設けられ、牽引用部材100の引出用掛部140が内視鏡挿入部620の先端面622よりも前方の位置となるように牽引用部材100の一部を係止することができる係止部230が設けられている(図2及び図3参照。)。
このため、牽引用部材100を予め牽引用部材収容部220に収容しておけば、鉗子又はクリップの爪で引出用掛部140を引掛けて前進することにより、牽引用部材100を第3開口部203より体内に引き出すことができる。
よって、従来のように牽引用部材(糸)を体内に入れるだけのために内視鏡挿入部620を抜去・再挿入したり、特殊牽引部材900を改めて処置具挿通路628に投入することもなく、容易に牽引用部材を体内に導入することができ、直ちに牽引操作に移行することができる。
したがって、実施形態1に係る内視鏡用フード200によれば、内視鏡を用いて体内組織の被牽引部位810を牽引する際に、従来に比べてより円滑な牽引を支援することができる。
【0071】
(3)外周壁及び内周壁の間の格納室・前方側に面して開口する第3開口部の効果
実施形態1に係る内視鏡用フード組立体1において、牽引用部材収容部220は、略円筒状の内視鏡用フード200の外周壁205と内周壁206との間に形成された格納室222によって構成されており、第3開口部203は、格納室222に接続され、内視鏡用フード200の前方側に面して開口していることが好ましい。
また同様に、実施形態1に係る内視鏡用フード200において、牽引用部材収容部220は、略円筒状の内視鏡用フード200の外周壁205と内周壁206との間に形成された格納室222によって構成されており、第3開口部203は、格納室222に接続され、内視鏡用フード200の前方側に面して開口していることが好ましい(図2及び図3参照。)。
【0072】
例えば、牽引用部材収容部220が外周壁205に設けられた凹部で構成されている場合や、第3開口部203が外周壁205の側で開口している場合には、凹部や第3開口部203が外側に露出しているためフード組立体1が装着された状態で内視鏡挿入部620を体内に挿入する際には牽引用部材100が経口部等の組織に接触する可能性がある。また例えば、第3開口部203が内周壁206の側で開口している場合には、牽引用部材100を牽引用部材収容部220より引き出す際に内視鏡カメラの視野を妨げる可能性がある。
一方、実施形態1に係るフード組立体1においては、牽引用部材収容部220が略円筒状の内視鏡用フード200の外周壁205と内周壁206との間に形成された格納室222によって構成されており、第3開口部203は格納室222に接続され内視鏡用フード200の前方側に面して開口している。
このため、フード組立体1を装着した状態で内視鏡挿入部620を体内に挿入する際には牽引用部材100が経口部等の組織に接触することもなく、また、牽引用部材100を牽引用部材収容部220より引き出す際には内視鏡カメラの視野を妨げることもなく、内視鏡用フード200の前方側に面して開口した第3開口部203から牽引用部材100を円滑に引き出すことができる。
【0073】
(4)中心軸と平行な方向に沿って延びる空洞の効果
上記(3)に記載の内視鏡用フード組立体1又は/及び内視鏡用フード200において、格納室222は、内視鏡用フード200の略円筒の中心軸AX1と平行な方向に沿って延びるように形成された空洞HLからなることがより好ましい《図2(c)、図2(d)等参照。》。
【0074】
このような構成によれば、牽引用部材100は略円筒の中心軸AX1の方向と平行な方向(換言すると、牽引用部材100を引き出す方向と平行な方向。)に形成された空洞HLに収容されることとなる。牽引用部材100をこのような空洞HLに収容させることで、牽引用部材100が引き出されるときに生じる牽引用部材100と空洞HLを形成する内壁との間の抵抗を抑制することができる。
したがって、このように構成した内視鏡用フードを用いることにより、より円滑に牽引用部材を引き出すことができる。
【0075】
(5)複数箇所に設けられた牽引用部材収容部の効果
実施形態1に係る内視鏡用フード組立体1において、内視鏡用フード200には、牽引用部材収容部220が複数箇所設けられていることが好ましい。
また同様に、実施形態1に係る内視鏡用フード200において、牽引用部材収容部220が複数箇所設けられていることが好ましい(図2及び図3参照。)。
【0076】
このように内視鏡用フード200を構成することで、複数箇所の牽引用部材収容部220に別個の牽引用部材100をそれぞれ収容することができ、1つの内視鏡用フード200に複数の牽引用部材100を内蔵させることができる。
また、別の態様として、牽引用部材100の一端101側を第1の牽引用部材収容部に収容し、他端109側を第2の牽引用部材収容部に収容することもできる。こうすることで、比較的長い尺の牽引用部材であってもこれを内視鏡用フード200に内蔵させることができる。
【0077】
(6)連結型の牽引用部材を内蔵する効果
上記(5)に記載の内視鏡用フード組立体1において、牽引用部材100は、一端101側及び他端109側にそれぞれ少なくとも1以上のループ部120が設けられ、一端101側のループ部120と他端109側のループ部120とが接続部130によって接続されて形成されたものであり、一端101側のループ部120及び他端109側のループ部120が、互いに異なる場所に設けられた牽引用部材収容部220にそれぞれ収容され、牽引用部材100の接続部130が第2開口部202を一部跨ぐようにして構成されており、当該接続部が前記引出用掛部140として構成されている、ことが好ましい(図2及び図3参照。)。
【0078】
ここでは、一端101側のループ部120及び他端109側のループ部120を互いに異なる場所に設けられた牽引用部材収容部220にそれぞれ収容し、牽引用部材100の接続部130については第2開口部202内を一部跨ぐようにして構成している。このため、比較的長い尺の牽引用部材100であったとしてもこれを内蔵させることができ、鉗子又はクリップの爪で第2開口部202内を一部跨いでいる接続部130(引出用掛部140として構成されている)を引掛けて前進することにより、牽引用部材100を牽引用部材収容部220から引き出すことができる。
したがって、このようなフード組立体1を用いれば、比較的長い牽引リーチで牽引用部材を張らなければならない手技についてもその要請に応えることができる。
【0079】
(7)実施形態1に係る牽引用部材100の効果
実施形態1に係る牽引用部材100は、内視鏡を用いた手技において体内組織の被牽引部位810を牽引する際に使用される牽引用部材100であって、牽引用部材100は、生体適合性の高い繊維を編み込んで形成されて全体として長尺状をなし、クリップの爪に掛けることができるループ部120を複数有し、一端101側がループ部120に掛けられたクリップにより被牽引部位810にクリッピングされて他端109側から当該被牽引部位810を牽引することができるよう構成され、内視鏡の内視鏡挿入部620の先端部621に装着される内視鏡用フード200に設けられた牽引用部材収容部220に収容されるものである(図3参照。)。
【0080】
実施形態1に係る牽引用部材100は、繊維を編み込んで形成されたものであるため、これを用いて牽引を行う際には牽引用部材が適度に伸縮することとなり、穏やかに被牽引部位を引っ張ることができる。
また、かかる牽引用部材100は、繊維の編み込みにより表面に凹凸が形成されているため、編み込みしていない材料を用いた場合に比べて消化管等の内壁に密着しづらくなる。そのため、処置具で取り上げ易い牽引用部材となる。
したがって、実施形態1に係る牽引用部材100によれば、内視鏡を用いて体内組織の被牽引部位を牽引する際に、従来に比べてより円滑な牽引を支援することができる。
【0081】
(8)鎖状のループ部の効果
上記(7)に記載の牽引用部材100において、牽引用部材100は、一端101側又は他端109側のうち少なくとも一方の端の側において、複数のループ部120が連続的に連なるように構成されていることが好ましい(図3参照。)。
【0082】
複数のループ部が連続的に連なるように構成することは、換言すると、複数のループ部が鎖状に繋がるようにして構成することである。
牽引用部材100をこのように構成することで、クリップで引っ掛けるループの箇所を適宜選択することができるようになる。
したがって、1個の牽引用部材であっても、クリップで引っ掛けるループの箇所を適宜選択することにより、牽引用部材を張る長さ(牽引リーチ)を複数の段階で適宜調節することができる(牽引リーチの適宜選択)。
また、牽引用部材の一端を被牽引部位に固定しておけば、他端側のループの箇所を適宜選択ながら段階的にクリッピングすることにより、複数回にわたり牽引リーチを調節することもできる(事後的な牽引リーチの調節)。
したがって、従来のように別の特殊牽引部材で張り直すために改めて別の特殊牽引部材を処置具挿通路に投入する必要もなく、牽引リーチの適宜選択や事後的な牽引リーチの調節を行うことができる。
【0083】
(9)複数のループ部の構成の仕方による効果
上記(7)又は(8)に記載の牽引用部材において、牽引用部材100を水平面に正置したときに、複数のループ部120がそれぞれ形成する仮想的な面は、同一平面上にないことがより好ましい《図3(a1)参照。》。
具体的な構成としては、例えば、隣接するループ部120の仮想面同士が、互いに交差するように(互い違いに)構成してもよい。また例えば一のループ部のみ第1平面上にあるように構成し、他の複数のループ部は同一の第2平面上にあるように構成してもよい。
【0084】
このように牽引用部材を構成することにより、仮に牽引用部材の一部のループが消化管等の内壁に貼り付いたとしても、当該貼り付いたループとは同一平面上にない他のループは内壁に貼り付かずに内壁から浮かせることができ《図3(a2)においてはFLで示したループ部120が処置具で引っ掛けやすくなっている。》、鉗子、クリップ等の処置具で浮いた部分を引掛けて取り上げることができる。
したがって、消化管等の内壁に密着しづらく処置具で取り上げ易い牽引用部材とすることができる。
【0085】
[実施形態2]
次に実施形態2に係る内視鏡用フード組立体2を説明する。
図6は、実施形態2に係る内視鏡用フード組立体2を説明するために示す図である。図6(a)は内視鏡用フード組立体2の斜視図であり、図6(b)は内視鏡用フード組立体2を透視したときの透視斜視図である。
【0086】
実施形態2に係る内視鏡用フード組立体2は、基本的には実施形態1に係る内視鏡用フード組立体1と同様の構成を有するが、牽引用部材が複数個内蔵されている点において実施形態1に係る内視鏡用フード組立体1とは異なる。
【0087】
すなわち、実施形態2に係る内視鏡用フード組立体2は、内視鏡用フード200aには牽引用部材収容部220が複数箇所設けられており、これら複数箇所の牽引用部材収容部220には、別個の牽引用部材100a1,100a2がそれぞれ収容されている(図6参照。)。
【0088】
このように複数箇所の牽引用部材収容部220に、別個の牽引用部材100a1,100a2をそれぞれ収容しておけば、内視鏡挿入部を体内に挿入したままの状態で、牽引用部材100a1,100a2を次々と内視鏡用フード200aから取り出すことができ、それらを用いて被牽引部位の複数箇所を牽引することができる。
また、仮に牽引用部材100a1による牽引操作を1回失敗したとしても、バックアップとして内蔵している別の牽引用部材100a2を当該フード組立体2より取り出して牽引操作を再試行することもできる。
換言すると、フード組立体2をこのように構成しておけば、従来のクリップ牽引法のように別の糸740を接続するために内視鏡挿入部を抜去することもなく、被牽引部位の複数箇所を牽引することができる。また、従来の特殊牽引部材のように、別の特殊牽引部材を処置具挿通路に何度も導入しなくても、処置具を体内に導入した状態で牽引操作を再試行することができる。
【0089】
なお、複数箇所の牽引用部材収容部220には、互いに同じ仕様(長さ、ループ数、材質等)の牽引用部材をそれぞれ収容してもよいし、互いに異なる仕様の牽引用部材をそれぞれ収容しておいてもよい。
【0090】
以上、本発明を上記の実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。その趣旨を逸脱しない範囲において実施することが可能であり、例えば、次のような変形も可能である。
【0091】
なお、図7は、変形例に係る内視鏡用フード200b,200cを説明するために示す図である。図7(a)は内視鏡用フード200bの斜視図を、図7(b)は内視鏡用フード200cの斜視図を示す。また、図8は、変形例に係る牽引用部材100’,100b,100c,100d,100’’,100eを説明するために示す図である。図8(a)~図8(f)は、牽引用部材100’,100b,100c,100d,100’’,100eをそれぞれ示す図である。図9は、変形例に係る牽引用部材100eを用いた内視鏡用フード組立体3を説明するために示す図である。
【0092】
(1)上記実施形態において記載した構成要素の数、材質、形状、位置、大きさなどは例示であり、本発明の効果を損なわない範囲において変更することが可能である。
例えば、実施形態1及び実施形態2においては、牽引用部材収容部220を2箇所又は4箇所有する図(図2図3及び図6参照。)で説明したが、これに限られるものではない。例えば、牽引用部材収容部220を1箇所、3箇所、5箇所等適宜の数を選択することができる。
【0093】
(2)実施形態1に係る内視鏡用フード200及び実施形態2に係る内視鏡用フード200aとしては、略円筒状の内視鏡用フードの外周壁205と内周壁206との間に形成された格納室222によって牽引用部材収容部220が構成されているものであり、且つ、当該格納室222に接続された第3開口部203が内視鏡用フードの前方側に面して開口しているものであり、且つ、当該格納室222は内視鏡用フードの略円筒の中心軸AX1と平行な方向に沿って延びるように形成された空洞HLからなるものを一例に説明をした。
【0094】
しかしながら本発明はこれに限定されるものではない。例えば、図7(a)に示すように、第3開口部203bが外周壁205の外周面に開口するように設けられていてもよい。また、この第3開口部203bに対応するように係止部230bが設けられていてもよい。
また、内周壁206の内周面に開口するようにして第3開口部が設けられていてもよい(図示を省略。)。
さらに、図7(b)に示すように、牽引用部材収容部220cを構成する格納室222cが内視鏡用フード200cの略円筒の周方向に沿って延びるように形成された空洞によって構成されていてもよい。
【0095】
(3)実施形態1に係る牽引用部材100としては、一端101側に5連のループ部120を有し、他端109側に5連のループ部を有し、これらのループ部が紐状の接続部130によって接続されているものを一例に説明をした。また、個々のループ部120についてはループ部の輪郭が一平面に属するような(いわば平面的な)ループ部を一例に説明をした。
【0096】
しかしながら本発明をこれに限定されるものではない。
ループ部120が5連である必要はなく、例えば図8(a)に示すように、2連であってもよい。また、図8(b)に示すように、一端101側のみ単一のループ部120で構成してもよい。また、図8(c)に示すように一端101側のみ、他端109側のループ部120の径よりも大きな径を有するループ部120Aで構成してもよい。また、図8(d)に示すように、紐状ではなくリング状に形成して接続部130aを構成してもよい。
さらに、図8(e)に示すように、個々のループ部の輪郭が一平面に属さない(いわばポテトチップスの如く湾曲した形状)でループ部120kを構成してもよい。
【0097】
(4)実施形態1、実施形態2及び上記変形例(3)の各内視鏡用フード組立体は、牽引用部材が引き出されると、その全部が体内に引き出されるものを例に説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。牽引用部材の一端101側が体内に引き出される一方で、他端109側が体外に配置されるように構成されたものであってもよい。
例えば、図8(f)に示すように、一端101側に連続的に連なる複数のループ部120を設け、他端109側に糸等のリード150を接続するようにして牽引用部材100eを構成する。そして、牽引用部材100eの一端101側を係止部230で係止しつつ、最も一端101側にあるループ部120の一部を引出用掛部140として構成する。一方で、リード150を第3開口部203から引き出して内視鏡挿入部620の外側に沿うようにして這わせるようにして内視鏡用フード組立体3を構成する。
このように構成した内視鏡用フード組立体3及び牽引用部材100eによれば、リード150(牽引用部材100eの他端109側)を体外から術者の指によって直接牽引することができる。このため、より微妙な動きを伝えながら被牽引部位を牽引することができる。
【0098】
なお、各実施形態及び各変形例で開示した内視鏡用フード及び牽引用部材は、それぞれのバリエーションについて如何ようにも組み合わせて本発明の内視鏡用フード組立体に適用してこれを構成することができる。
【符号の説明】
【0099】
1,2,3…内視鏡用フード組立体(フード組立体)、100,100',100'',100a1,100a2,100b,100c,100d,100e…牽引用部材、101…(牽引用部材の)一端、109…(牽引用部材の)他端、120,120A,120a,120b,120c,120d,120e,120k,120v,120w,120x,120y,120z…ループ部、130,130a…接続部、140…引出用掛部、200,200a,200b,200c…内視鏡用フード、201…第1開口部、202…第2開口部、203,203b…第3開口部、205…(内視鏡用フードの)外周壁,206…(内視鏡用フードの)内周壁、220,220c…牽引用部材収容部、222,222c…格納室,230,230b…係止部、600…内視鏡、610…操作部、611…ボタン、612…アングルノブ、613…処置具投入口、620…内視鏡挿入部、621…(内視鏡挿入部の)先端部、622…(内視鏡挿入部の)先端面、623…鉗子口、624…発光部、625…カメラレンズ、626…ノズル、628…処置具挿通路、630…外部機器、710…クリップ、711…(クリップの)爪、712…締めリング、715…第1クリップ、716…第2クリップ、720…鉗子、730…ワイヤ、740…糸、750…ナイフ、800…体内組織、810…被牽引部位、812…病変部、820,820a,820b…消化管壁、822…粘膜層、824…粘膜下層、900…特殊牽引部材、910…ナイロンループ、912…コイルバネ、914…(特殊牽引部材の)クリップ、915…(特殊牽引部材のクリップの)バネ部
図1
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