(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】ガス発生装置
(51)【国際特許分類】
B01D 53/047 20060101AFI20221206BHJP
C01B 13/02 20060101ALI20221206BHJP
B01D 53/26 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
B01D53/047
C01B13/02 A
C01B13/02 Z
B01D53/26 100
(21)【出願番号】P 2018156201
(22)【出願日】2018-08-23
【審査請求日】2021-08-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000241795
【氏名又は名称】北越工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591264429
【氏名又は名称】コフロック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002398
【氏名又は名称】弁理士法人小倉特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平田 紫織
(72)【発明者】
【氏名】竹内 幸司
(72)【発明者】
【氏名】堀田 知郁子
【審査官】小川 慶子
(56)【参考文献】
【文献】特開平8-141087(JP,A)
【文献】特開2005-304862(JP,A)
【文献】特開2010-17476(JP,A)
【文献】特開2009-268738(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/047,53/26
A61M 16/10
C01B 13/02
F04B 41/00-41/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮空気を生成する圧縮機と,前記圧縮機より導入された圧縮空気中の成分を分離して製品ガスを生成するガス発生機と,前記圧縮機及び前記ガス発生機を搭載するフレーム及び該フレーム上を覆うボンネットにより構成された防音箱を備えたガス発生装置において,
前記ボンネット内の空間を仕切壁によって前記圧縮機が収容される圧縮機室と,前記ガス発生機が収容されるガス発生機室に区画し,
前記圧縮機室内に,前記仕切壁に形成した連通口を介して前記ガス発生機室と連通する機関室と,該機関室と連通すると共に前記ボンネットに設けた排風口を介して機外と連通する排風室を設け,前記機関室内に前記圧縮機を構成する圧縮機本体及び該圧縮機本体の駆動源を収容すると共に,前記機関室又は前記排風室に,前記機関室から前記排風室に向かう冷却風の流れを生じさせる冷却ファンを設け,
前記圧縮機に熱交換器を設け,該熱交換器を前記排風室内に配置し,
前記ガス発生機室を画成する前記ボンネットのいずれかの壁面に,冷却風の導風口を設け,
該導風口から前記ガス発生機室,連通口,機関室,及び排風室を経て前記排風口に至る冷却風の流路を,前記機関室を通過する唯一の冷却風の流路として形成したことを特徴とするガス発生装置。
【請求項2】
前記導風口と前記仕切壁に設けた前記連通口間に,前記ガス発生機に設けた圧力容器を配置することを特徴とする請求項1記載のガス発生装置。
【請求項3】
前記圧縮機に,前記圧縮機本体より吐出された圧縮空気の除湿を行うドライヤを設け,
前記ボンネットのいずれかの壁面と前記機関室間に,前記ドライヤを収容するドライヤ室を,前記圧縮機室内に更に設けたことを特徴とする請求項
1又は2記載のガス発生装置。
【請求項4】
前記ガス発生機において製品ガスを分離した後の残りのガスを排出ガスとして放気する放気口を前記ガス発生機室内に配置すると共に,
前記圧縮機本体の吸気口に一端側を連通し,他端側を機外に向けて開口するダクトを設けたことを特徴とする請求項
1~3いずれか1項記載のガス発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はガス発生装置に関し,より詳細には空気(圧縮空気)を原料として,この空気に含まれる成分を分離することによって生成したガスを製品ガスとするガス発生機と,前記ガス発生機に原料である圧縮空気を供給する圧縮機を,共通の防音箱内に収容してパッケージ化した,圧縮機付のガス発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
空気を原料とし,これに含まれる酸素,窒素,アルゴン等の各成分を分離して製品ガスを製造する方法としては,深冷分離法,吸着分離法,膜分離法があり,中・小規模の製品ガスの製造には,通常,吸着分離法と膜分離法が用いられる。
【0003】
このうちの吸着分離法を利用したガス発生機は,吸着剤のガスに対する吸着特性の違いを利用して,加圧と減圧の圧力変動を交互に繰り返す圧力スイング吸着(PSA:Pressure Swing Adsorption)によって酸素や窒素を分離するもので,使用する吸着剤の種類により,酸素を吸着して窒素ガスを製造する窒素PSA,窒素を吸着して酸素ガスを製造する酸素PSA,空気中の水分を吸着して乾燥空気を製造するPSAドライヤ等がある。
【0004】
また,膜分離法を利用したガス発生機は,微細な孔を有する透過膜に対する空気中の各ガス成分の透過速度の差を利用して,空気中に含まれるガスのうち酸素,二酸化炭素,水分等の透過速度が速いガスと,窒素,アルゴン等の透過速度の遅いガスを分離するもので,透過膜として中空糸膜を使用することで,透過速度が速く中空糸膜を通り抜けたガスを製品ガスとして取り出し,及び/又は,透過速度が遅く中空糸膜内に止まるガスを製品ガスとして取り出すことができる。
【0005】
以上で説明した吸着分離法及び膜分離法のいずれの分離法においても,製品ガスを製造するためにはガス発生機に対し原料である圧縮空気を供給する必要がある。
【0006】
このようなガス発生機に対する圧縮空気の供給は,ガス発生機を圧縮空気の供給源とは別個に構成しておき,工場設備等に設けられている既存の圧縮空気の集中供給システム等からガス発生機に対し圧縮空気を供給できるようにすることも考えられる。
【0007】
しかし,中・小規模の製品ガスの製造に使用される吸着分離法や膜分離法を利用したガス発生機は,小規模の工場や,大学や企業の実験・研究室等で使用される場合も多く,別途,圧縮空気の供給源を確保することが難しい場合も多い。
【0008】
そのため,ガス発生機と圧縮機を,いずれも共通の防音箱内に収容してパッケージ化した,圧縮機付のガス発生装置も提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
以上で説明したようにガス発生機と圧縮機を共通の防音箱内に収容してパッケージ化したガス発生装置では,別途,圧縮空気の供給源を確保することなく製品ガスの製造が可能であると共に,圧縮機とガス発生機とを別々に設置する場合に比較して設置面積を減少させることができ,しかも,ユーザは,圧縮機とガス発生機間の配管作業や調整作業等を行うことなく,ガス発生装置の導入後,直ちに製品ガスの製造を開始できる等,使い勝手の良いものとなっている。
【0011】
しかし,ガス発生機と圧縮機とを別個に設けた構成であれば騒音の大きな圧縮機を別室に設置し,ガス発生機のみをこれを使用する作業空間内に配置する等して,作業空間の騒音を低減させることができた。
【0012】
これに対し,ガス発生機と圧縮機を共通の防音箱内に収容してパッケージ化した,圧縮機付のガス発生装置では,ガス発生機だけでなく圧縮機も必ず作業空間内に配置されることとなるため,圧縮機が発生する騒音によって作業環境が悪化する。
【0013】
特に,中・小規模の製品ガスの製造に使用される吸着分離法や膜分離法によるガス発生装置は,大学や企業の研究室や実験室等の比較的狭い空間に設置される場合も多く,より一層の静寂性が要望される。
【0014】
このようにガス発生機と圧縮機を共通の防音箱内に収容してパッケージ化したガス発生装置の騒音の低減,特に圧縮機が発する騒音の低減が強く要望されているが既存のガス発生装置の静寂性は十分に満足のいくものとはなっていない。
【0015】
そこで本発明は,上記従来技術における欠点を解消するためになされたものであり,共通の防音箱内にガス発生機と圧縮機を共に収容してパッケージ化した圧縮機付のガス発生装置において,圧縮機が発する騒音を機外に漏れ難くすることができる構造を備えたガス発生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
以下に,課題を解決するための手段を,発明を実施するための形態で使用する符号と共に記載する。この符号は,特許請求の範囲の記載と,発明を実施するための形態の記載との対応を明らかにするためのものであり,言うまでもなく,本発明の技術的範囲の解釈に制限的に用いられるものではない。
【0017】
上記目的を達成するための本発明のガス発生装置1は,
圧縮空気を生成する圧縮機10と,前記圧縮機10より導入された圧縮空気中の成分を分離して製品ガスを生成するガス発生機20と,前記圧縮機10及び前記ガス発生機20を搭載するフレーム31及び該フレーム31上を覆うボンネット32により構成された防音箱30を備えたガス発生装置1において,
前記ボンネット32内の空間を仕切壁33によって前記圧縮機10が収容される圧縮機室34と,前記ガス発生機20が収容されるガス発生機室35に区画し,
前記圧縮機室34内に,前記仕切壁33に形成した連通口33aを介して前記ガス発生機室35と連通する機関室341と,該機関室341と連通すると共に前記ボンネット32に設けた排風口36を介して機外と連通する排風室342を設け,前記機関室341内に前記圧縮機10を構成する圧縮機本体11及び該圧縮機本体11の駆動源12を収容すると共に,前記機関室341又は前記排風室342に,前記機関室341から前記排風室342に向かう冷却風の流れを生じさせる冷却ファン17を設け,
前記圧縮機10にオイルクーラ14bやアフタクーラ15等の熱交換器を設け,該熱交換器を前記排風室内に配置し,
前記ガス発生機室35を画成する前記ボンネット32のいずれかの壁面(実施形態において側壁32b)に,冷却風の導風口37を設け,
該導風口37から前記ガス発生機室35,連通口33a,機関室341,及び排風室342を経て前記排風口36に至る冷却風の流路を,前記機関室341を通過する唯一の冷却風の流路として形成したことを特徴とする(請求項1)。
【0018】
上記構成のガス発生装置1において,前記導風口37と前記仕切壁33に設けた前記連通口33a間には,前記ガス発生機20に設けられた吸着塔T1,T2やバッファタンク23等の圧力容器を配置することが好ましい(請求項2)。
【0019】
なお,本発明における「圧力容器」には,圧力が加わった状態で使用される容器全般を含み,前述した吸着塔T1,T2やバッファタンク23の他,後述する活性炭塔22はいずれも圧力容器であると共に,ガス発生機20として膜分離式のガス発生機を採用する場合には,中空糸膜モジュールの外殻等も本発明でいう圧力容器に含まれる。
【0021】
また,前記圧縮機10が,前記圧縮機本体11より吐出された圧縮空気の除湿を行うドライヤ16を備える場合,前記ボンネット32のいずれかの壁面(実施形態において側壁32b)と前記機関室341間に,前記ドライヤ16を収容するドライヤ室344を,前記圧縮機室34内に更に設けることが好ましい(請求項3)。
【0022】
なお,前記ガス発生機20において製品ガスを分離した後の残りのガスを排出ガスとして放気する放気口21aを前記ガス発生機室35内に配置する構成を採用すると共に,前記圧縮機本体11の吸気口11aに一端側を連通し,他端側を機外に向けて開口するダクト40を設けるものとしても良い(請求項4)。
【発明の効果】
【0023】
以上で説明した本発明の構成により,本発明のガス発生装置1によれば以下の顕著な効果を得ることができた。
【0024】
ガス発生機室35を画成するボンネット32のいずれかの壁面(実施形態において側壁32b)に冷却風の導風口37を設け,該導風口37からガス発生機室35,連通口33a,機関室341,及び排風室342を経て前記排風口36に至る冷却風の流路を,機関室341を通過する唯一の冷却風の流路として形成したことで,機関室341内に収容された圧縮機本体11やモータ12等の駆動源より生じた騒音が直接,機外に漏出することがなく,騒音は導風口37や排風口36に至る前に必ずガス発生機室35や排風室342を通過して減衰されることで,機外に漏出する騒音を低減することができた。
【0025】
特に,前記導風口37と仕切壁33に設けた連通口33a間に,
図6に示すようにガス発生機20に設けた吸着塔T1,T2やバッファタンク23等の圧力容器を配置した構成では,これらの圧力容器が消音材として機能することで騒音が更に減衰され,機外に漏出する騒音より一層低減することができた。
【0026】
圧縮機10にオイルクーラ14bやアフタクーラ15等の熱交換器を設ける場合,前記排風室342内にこの熱交換器を配置することによって,機関室341内で生じた騒音は排風口36に至る前に排風室342内で熱交換器と衝突することで減衰され,排風口36を介して機外に漏出する騒音についても低減させることができた。
【0027】
圧縮機室34内に更にドライヤ室344を設けた構成では,機関室341とボンネットの壁面(図示の例では側壁32a)との間に,ドライヤ室344が介在することで,機関室341内で生じた騒音を,より一層機外に漏出し難くすることができた。
【0028】
なお,ガス発生機20より排出ガスを放気する際には,消音器を介して放気を行ったとしても耳障りな放気音が騒音として発生する。
【0029】
その一方で,放気音の低減を目的として排出ガスの放気口21aをガス発生機室35内に配置すると,放気された排出ガスが機関室341に導入されて圧縮機本体11に吸入されることとなるが,ガス発生機20が放気する排出ガスは,圧縮空気から製品ガスの成分が除去された残りの成分により構成されたものであるため,この排出ガスを吸入した圧縮機10が生成した圧縮空気をガス発生機20に導入すると,製品ガスの製造効率が大幅に低下する。
【0030】
しかし,圧縮機本体11の吸気口11aに一端側を連通し,他端を機外に向けて開口させたダクト40を設けた本発明の構成では,排出ガスの放気口21aをガス発生機室35内に配置する構成を採用した場合であっても,圧縮機本体11が排出ガスを吸入することを防止して,効率的に製品ガスを製造することができる一方,放気口21aを防音箱30内に収容したことで,ガス発生機20の放気に伴う騒音についても低減することができた。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明のガス発生装置を構成する圧縮機とガス発生機の構成要素の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下に,添付図面を参照しながら本発明のガス発生装置1の構成について説明する。
【0033】
なお,以下の説明では,圧縮機10としてモータ駆動型の油冷式スクリュ圧縮機を搭載していると共に,ガス発生機20として吸着式(PSA式)の酸素発生機(酸素PSA)を搭載した場合を例に挙げて説明するが,本発明のガス発生装置1に搭載する圧縮機10は,上記構造のものに限定されず,既知の各種の圧縮機が採用可能であると共に,ガス発生機20としても吸着式のガス発生装置の他,膜分離式のガス発生装置についても採用可能である。
【0034】
〔ガス発生装置の全体構成〕
本発明のガス発生装置1は,
図1に示すように原料ガスである圧縮空気を生成する圧縮機10と,この圧縮機10より供給された圧縮空気より窒素を吸着除去して酸素ガスを製品ガスとして生成するガス発生機20を備える。
【0035】
そして,これらの圧縮機10とガス発生機20を
図2~
図7に示すようにいずれも共通の防音箱30内に収容してパッケージ化することで,圧縮機付のガス発生装置1として構成されている。
【0036】
〔圧縮機〕
本発明のガス発生装置1に搭載する前述の圧縮機10としては,必要な圧力の圧縮空気を必要量生成して後述のガス発生機20に供給することができるものであれば既知の各種構成の圧縮機を採用することができる。
【0037】
本実施形態のガス発生装置1は,一例として,モータ駆動型の油冷式スクリュ圧縮機を搭載しており,このモータ駆動型の油冷式スクリュ圧縮機10は,
図1に示すように吸入した空気を潤滑油と共に圧縮して吐出する圧縮機本体11,前記圧縮機本体11を駆動する駆動源であるモータ12の他,圧縮機本体11が潤滑油との気液混合流体として吐出した圧縮空気を貯留して圧縮空気と潤滑油を分離するためのレシーバタンク13を備えている。
【0038】
このように圧縮機本体11が潤滑油との気液混合流体として吐出した圧縮空気をレシーバタンク13内に導入することで圧縮空気から分離された潤滑油は,オイルフィルタ14aやオイルクーラ14bを備えた給油流路14を介して再度,圧縮機本体11に給油することで,潤滑油を循環使用することができるように構成されていると共に,レシーバタンク13で潤滑油が分離された圧縮空気は,レシーバタンク13に設けたオイルセパレータ13aを通過して圧縮空気中にミストの状態で残る潤滑油を除去した後,更に,アフタクーラ15で圧縮空気を冷却し,ドライヤ16によって圧縮空気を除湿してガス発生機20に導入することができるように構成されている。
【0039】
〔ガス発生機〕
前述した圧縮機10によって生成された圧縮空気は,ガス発生機20に導入されてその成分が分離され,目的とする製品ガスが製造される。
【0040】
前述したように圧縮機10として油冷式のスクリュ圧縮機を採用した本実施形態では,ガス発生機20に活性炭塔22を設け,ガス発生機20に導入された圧縮空気を,先ず,活性炭塔22に導入することで,圧縮空気中に含まれる油分や有機物を吸着させて除去することができるようにしている。
【0041】
本発明のガス発生装置1に搭載するガス発生機20としては,膜分離法,吸着分離法のいずれの方式でガスを生成するものであっても良いが,本実施形態では前述したようにガス発生機20として吸着分離法(PSA法)により圧縮空気から窒素を除去して酸素ガスを生成する,酸素PSAを搭載している。
【0042】
この酸素PSA20は,吸着剤が充填された複数の吸着塔(図示の例では一対の吸着塔T1,T2)を備えたガス発生機本体21を備え,このガス発生機本体21に設けられた吸着塔T1,T2を数十秒単位で交互に加圧と減圧(圧力スイング)を繰り返し行うことで,一の吸着塔(例えばT2)において吸着剤の再生を行っているときに,他の吸着塔(例えばT1)を使用して目的とするガスを製造することで,製品ガスを連続して製造することができるように構成されている。
【0043】
このような圧力スイングによる吸着と再生を可能とするために,ガス発生機本体21は,前述の吸着塔T1,T2を並列に接続する空気回路を備え,該空気回路に設けた電磁弁SV1~SV8を所定のシーケンスに従い開閉制御することで,各吸着塔T1,T2に対し圧縮空気を還流させて吸着塔内の吸着剤に窒素を吸着させる還流・吸着工程,窒素を吸着除去して生成された酸素を製品ガスとして吸着塔より取り出す取出工程,両吸着塔T1,T2を連通して均圧にする均圧工程,放気口21aを介して前記吸着塔T1,T2を大気開放することにより吸着剤に吸着された窒素を排出ガスとして放気することで吸着剤を再生する再生工程,及び,両吸着塔T1,T2を連通して均圧にする均圧工程を各吸着塔T1,T2に交互に行わせるように構成されている。
【0044】
このようにして,ガス発生機本体21において生成された製品ガス(酸素ガス)は,バッファタンク23に送られて脈動が取り除かれた後,製品ガス取出口24より提供することができるように構成されている。
【0045】
一方,吸着塔T1,T2内に充填された吸着剤に吸着した窒素ガスは,吸着塔T1,T2を大気開放して行う前述の再生工程時に,サイレンサを備えた放気口21aを介して排出ガスとして放気される。
【0046】
〔防音箱〕
以上で説明した圧縮機10やガス発生機20を収容する防音箱30は,
図2~
図5に示すように圧縮機10やガス発生機20を搭載するフレーム31と,このフレーム31の上部を,四つの側壁32a~32dと天板32eによって構成された箱型のボンネット32によって覆うことにより構成されている。
【0047】
この防音箱30内に形成された空間は,
図3及び
図4に示すように仕切壁33によって長手方向に二分されており,そのうちの一方を圧縮機室34と,他方をガス発生機室35として,圧縮機室34内に前述した圧縮機10を収容すると共に,ガス発生機室35内に前述したガス発生機20を収容することができるように構成されている。
【0048】
この圧縮機室34内には,更に,合計3つの室を備えており,
図1に示すように圧縮機室34を左右に分割し,そのうちの一方(
図1中紙面右側)の下段に圧縮機本体11,モータ12,及びレシーバタンク13を収容する機関室341が形成されている(
図1及び
図6参照)。
【0049】
また,前述した機関室341の上部には,
図1及び
図7に示すように,前述の機関室341と連通すると共にボンネット32の側壁32dに設けた排風口36(
図2参照)を介して機外と連通する排風室342が形成されており,この排風室342内に圧縮機10に設けたオイルクーラ14bやアフタクーラ15等の熱交換器を配置する。
【0050】
更に,
図1に示したように左右に分割された圧縮機室34の他方(
図1中紙面左側)には,側壁32bと機関室341との間にドライヤ室344が形成されており,このドライヤ室344内にアフタクーラ15を通過した後の圧縮空気をさらに冷却して,圧縮空気中の水分を除去し,水分が除去された圧縮空気を加熱乾燥させ,除湿するドライヤ16を収容する。
【0051】
前述の機関室341の上側,従って排風室342との境界付近には,機関室341側から排風室342側に向かう冷却風の流れを生じさせる冷却ファン17が設けられている。
【0052】
圧縮機10として油冷式スクリュ圧縮機を採用した本実施形態では,圧縮機10の給油流路14に設けたオイルクーラ14bとアフタクーラ15を排風室342内に収容し,冷却ファン17によって発生した冷却風をオイルクーラ14bとアフタクーラに当てることで,潤滑油や圧縮空気を冷却することができるように構成している。
【0053】
防音箱30内の空間を前述したガス発生機室35と圧縮機室34に区画する前述の仕切壁33のうち,前述の機関室341を画成する部分には,
図1,
図3及び
図6に示すように,ガス発生機室35と機関室341を連通する連通口33aが形成されている。
【0054】
また,ガス発生機室35を画成するボンネット32のいずれかの壁面には,ガス発生機室35と機外とを連通する導風口37が形成されている。
【0055】
この導風口37は,仕切壁33に形成した前述の連通口33aから遠い位置に形成することが好ましく,図示の例では,連通口33aを側壁32c寄りの位置に設ける一方,導風口37を側壁32cと対向する側壁32bの下方に形成している(
図6参照)。
【0056】
そして,導風口37の形成位置と,連通口33aの形成位置との間には,
図6に示すように,ガス発生機20に設けた吸着塔T1,T2やバッファタンク23等の圧力容器が配置されるように各部の配置が設計されている。
【0057】
なお,圧縮機室34に設けたドライヤ室344は,ガス発生機室35と連通しておらず,また,機関室341は,ドライヤ室344と連通していない。
【0058】
更に,機関室341の形成位置におけるボンネット32の側壁32c,32dには開口が設けられておらず,従って,機関室341は前述した連通口33aを介してガス発生機室35と連通すると共に,排風室342と連通している以外,他の室及び外部空間とは直接連通していない。
【0059】
なお,機関室341内に収容された圧縮機本体11は,機関室341内の空気を吸入して圧縮するように構成することもできるが,本実施形態では圧縮機本体の吸気口11aに連通する吸気流路18に設けたエアフィルタ19(
図1参照)に一端を連通し,他端を機外に向けて開口するダクト40を設け(
図1及び
図7参照),このダクト40を介して機外の空気を圧縮機本体11に導入することができるように構成している。
【0060】
このように構成することで,放気音を低減するためにガス発生機20の放気口21a(
図1参照)をガス発生機室35内に配置した場合であっても,製品ガスの製造効率の低下を防止することができる。
【0061】
すなわち,ガス発生機20の放気口21aより放気される排出ガスは,原料である圧縮空気から製品ガスである酸素を回収した後の残りのガスであることから,この排出ガス中には,製品ガスの原料である酸素が殆ど含まれていない。
【0062】
そのため,圧縮機本体11が空気と共に放気口21aより放気された排出ガスを吸入すると,生成された圧縮空気中の酸素濃度が低くなり,このような圧縮空気を原料とする場合,製造できる製品ガス(酸素ガス)の量が減少するため製造効率が低下する。
【0063】
これに対し,前述したようにダクト40を設けて圧縮機本体11の吸気口11aに対して外気を直接導入することができるように構成することで,製品ガスを分離した後の排出ガスの放気をガス発生機室35内で行う場合であっても,圧縮機本体11に吸入される空気に排出ガスが混入することを防止することができる。
【0064】
なお,このダクト40の他端は,排風口36の形成位置から十分に離れた位置に設け,ダクト40を介して排風口36を介して排出された冷却風を吸入しないようにする。
【0065】
本実施形態では,前述したダクト40は,その一端を機関室341内で吸気流路18に設けたエアフィルタ19に連通すると共に,ドライヤ室344を貫通して,ボンネット32の側壁32bに設けた第2導風口42(
図2参照)と連通する吸気ボックス41(
図7参照)内で開口させている。なお,
図1では,前記ダクト40が前記排風室342を通過するように図示されているが,この構造に代えて,前記ダクト40をドライヤ室344から機関室341へ直接貫通するように構成して,ダクト40内を通過する空気が排風室342の熱で暖められないようにしてもよい。
【0066】
図示の実施形態では,前述の第2導風口42は,その一部がドライヤ室344内で吸気ボックス41と対峙しており,第2導風口42を介して取り入れられた外気の一部は,この吸気ボックス41を介して圧縮機本体11の吸気口11aに導入される一方,第2導風口42を介して導入されたその他の外気は,ドライヤ室344内に収容されたドライヤ16の凝縮器を冷却した後,ボンネット32の側壁32dに設けた第2排風口43を介して機外に排出できるように構成されている。
【0067】
なお,
図8に示すようにドライヤ室344の上部にドライヤ16を配置し,このドライヤ16の下方に,ドライヤ16で除去した水分に含まれる油分を分離除去するドレン処理装置25を収納してもよい。
【0068】
〔作用等〕
以上のように構成された本発明のガス発生装置1において,冷却ファン17が回転すると,この冷却ファン17の回転により機関室341内の空気が排風室342及び排風口36を介して機外に放出される。
【0069】
このようにして空気が排出されることにより機関室341内が負圧になると,機関室341内には,仕切壁33に形成した連通口33aを介してガス発生機室35内の空気が導入される。
【0070】
その結果,ガス発生機室35内も負圧となり,ガス発生機室35と連通する導風口37を介して外気が冷却風として導入される。
【0071】
機関室341は,ガス発生機室35及び排風室342を除き,他の室及び機外とは直接連通していないことから,前述した冷却ファン17の回転による機関室341に対する冷却風の導入は,導風口37,ガス発生機室35,及び連通口33aを唯一の導入流路として行われ,また,機関室341内を冷却した冷却風の排出は,排風室342及び排風口36を唯一の排出流路として行われる。
【0072】
このように,機関室341は,ガス発生機室35や排風室342を介して機外と連通するものの,直接,機外と連通していないことから,本発明のガス発生装置1では,ガス発生機20と共に圧縮機10を搭載した構成でありながら,機関室341内で圧縮機本体11やモータ12が駆動する際に生じた騒音が機外に漏出し難いものとなっている。
【0073】
特に,導風口37と連通口33aとの間に,吸着塔T1,T2やバッファタンク23等の圧力容器を配置することで,また,排風室342内にオイルクーラ14b等の熱交換器を配置することで,機関室341内で発生した騒音は,導風口37や排風口36に至るまでに吸着塔T1,T2やバッファタンク23,オイルクーラ14bの放熱フィン等と衝突することで更に減衰されてより一層,機外に騒音を漏出させ難い構造とすることができる。
【0074】
なお,ガス発生機20より排出ガスを放出する際には,消音器を介して放気したとしても耳障りな放気音が発生するためこれが騒音となる。
【0075】
そのため,騒音の低減という要望に対応するためには,放気口21aをガス発生機室35内に設けて機外に音漏れが生じ難くすることが好ましい。
【0076】
一方,ガス発生機20で圧縮空気から製品ガス(本実施形態では酸素ガス)を分離した後の,残りのガスである排出ガスは,製品ガスの成分(酸素)を殆ど含まないため,排出ガスが混入した空気を圧縮機本体11が吸入して生成された圧縮空気をガス発生機20に導入すると,製造できる製品ガス(酸素ガス)の量が減少して生産性が低下する。
【0077】
従って,ガス発生機室35内に排出ガスの放気口21aを設ける構成を採用する場合,圧縮機本体11に対し排出ガスが吸入されないように構成する必要がある。
【0078】
本発明のガス発生装置1では,前述したようにダクト40を設けて圧縮機本体11の吸気口11aに機外の空気を直接導入できるようにしたことで,製品ガスの製造効率を低下させることなく,ガス発生機20で生じた放気音についても低減させることができた。
【0079】
しかも,ガス発生機20の排出ガスは,放気された際に膨張することで温度が低下することから,これを機関室341に導入して圧縮機本体11やモータ等の駆動源12の冷却に使用することで,圧縮機10の冷却を効率的に行うことができた。
【符号の説明】
【0080】
1 ガス発生装置
10 圧縮機(油冷式スクリュ圧縮機)
11 圧縮機本体
11a 吸気口(圧縮機本体の)
12 駆動源(モータ)
13 レシーバタンク
13a オイルセパレータ
14 給油流路
14a オイルフィルタ
14b オイルクーラ
15 アフタクーラ
16 ドライヤ
17 冷却ファン
18 吸気流路
19 エアフィルタ
20 ガス発生機(酸素PSA)
21 ガス発生機本体
21a 放気口(排出ガスの)
22 活性炭塔
23 バッファタンク
24 製品ガス取出口
25 ドレン処理装置
30 防音箱
31 フレーム
32 ボンネット
32a~32d 側壁(ボンネットの)
32e 天板(ボンネットの)
33 仕切壁
33a 連通口
34 圧縮機室
341 機関室
342 排風室
344 ドライヤ室
35 ガス発生機室
36 排風口
37 導風口
40 ダクト
41 吸気ボックス
42 第2導風口
43 第2排風口
T1,T2 吸着塔
SV1~SV8 電磁弁