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特許7188696超音波液位測定装置並びに超音波センサの設置位置算出方法
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  • 特許-超音波液位測定装置並びに超音波センサの設置位置算出方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】超音波液位測定装置並びに超音波センサの設置位置算出方法
(51)【国際特許分類】
   G01F 23/2962 20220101AFI20221206BHJP
【FI】
G01F23/2962
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018238908
(22)【出願日】2018-12-20
(65)【公開番号】P2020101418
(43)【公開日】2020-07-02
【審査請求日】2021-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000180368
【氏名又は名称】四国電力株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000144991
【氏名又は名称】株式会社四国総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100144509
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 洋三
(74)【代理人】
【識別番号】100134979
【弁理士】
【氏名又は名称】中井 博
(72)【発明者】
【氏名】岡部 克也
【審査官】森 雅之
(56)【参考文献】
【文献】実開昭58-56930(JP,U)
【文献】特許第6129480(JP,B2)
【文献】特許第6765811(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F23
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部が略半球状のタンク内に貯留された液体の液位を超音波センサから照射される超音波を用いて測定する超音波液位測定装置であって、
上記超音波センサを、所定のクサビ角をもつ樹脂製の冶具を介して上記タンクの底部傾斜部に設置し、該超音波センサから照射され上記タンク底部の鋼板を透過して液体内に入射した後、液面での反射により反転してタンク底部側に伝搬する超音波の該液体内での経路が鉛直方向となるように構成する一方、
上記超音波センサの上記タンク底部傾斜部への設置位置が、以下の式1~式5によって規定される外面傾斜角(θ)に対応する位置であって、該外面傾斜角(θ)はタンク内面の傾斜角(θ1)と水中屈折角(θ)とタンク内面側の鋼中屈折角(θ)とタンク外面側の鋼中屈折角(θ)と樹脂製の冶具のクサビ角(θ)のうちの何れか一つを決めることで自動的に決定されることを特徴とする超音波液位測定装置。
ここで、
式1・・・タンク内面の傾斜角(θ1)=水中屈折角(θ
式2・・・タンク内面の傾斜角(θ1)-タンク外面の傾斜角(θ
=タンク内面側の鋼中屈折角(θ)-タンク外面側の鋼中屈折角(θ)=δ
式3・・・sinδ=sinθ〔(R/R)cosθ-√(1-(R/R・sinθ
式4・・・cosθ/ca= sinθ/ct
式5・・・sinθ/cw= sinθ3/ct
Riはタンク底部内面の曲率半径
Roはタンク底部外面の曲率半径
θは樹脂製の冶具のクサビ角で、超音波のタンク底部への入射角に対応し
cwは水中の縦波音速
caは樹脂中の縦波音速
ctは鋼中の横波音速
である。
【請求項2】
請求項1において、
上記外面傾斜角(θ)を、上記水中屈折角(θ)が17°~24°の範囲となり、又は上記タンク外面側の鋼中屈折角(θ)が40°~60°の範囲となるように、設定したことを特徴とする超音波液位測定装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
上記超音波センサは、横波斜角の超音波センサであることを特徴とする超音波液位測定装置。
【請求項4】
底部が略半球状のタンク内に貯留された液体の液位を該タンクの底部傾斜部に設置した超音波センサから照射される超音波を用いて測定するに際し、上記超音波センサの上記タンクの底部傾斜部への設置位置を算出する超音波センサの設置位置算出方法であって、
以下の式1~式5に基づいて算出される外面傾斜角(θ)であって、タンク内面の傾斜角(θ1)と水中屈折角(θ)とタンク内面側の鋼中屈折角(θ)とタンク外面側の鋼中屈折角(θ)と上記樹脂製の冶具のクサビ角(θ)のうちの何れか一つを決めることで自動的に決定される外面傾斜角(θ)に対応する位置を、上記超音波センサの上記タンクの底部傾斜部への設置位置として算出することを特徴とする超音波センサの設置位置算出方法。
ここで、
式1・・・タンク内面の傾斜角(θ1)=水中屈折角(θ
式2・・・タンク内面の傾斜角(θ1)-タンク外面の傾斜角(θ
=タンク内面側の鋼中屈折角(θ)-タンク外面側の鋼中屈折角(θ)=δ
式3・・・sinδ=sinθ〔(R/R)cosθ-√(1-(R/R・sinθ
式4・・・cosθ/ca= sinθ/ct
式5・・・sinθ/cw= sinθ3/ct
Riはタンク底部内面の曲率半径
Roはタンク底部外面の曲率半径
θは樹脂製の冶具のクサビ角で、超音波のタンク底部への入射角に対応し
cwは水中の縦波音速
caは樹脂中の縦波音速
ctは鋼中の横波音速
である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、液体が貯留される縦長のタンク内の液位を、超音波を利用して測定する
超音波液位測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
超音波を用いた液位測定装置としては、例えば、特許文献1~2に示されるものが知られている。
【0003】
特許文献1に示される液位測定装置は、略水平に配置された配管内の液位を、超音波センサを用いて測定するものであって、該配管の最下点の外面に鉛直上方に向けて超音波センサを設置し、該超音波センサから発信された超音波が液中を伝搬し、液面において反射した反射波が再び上記超音波センサに受信されるまでの間の超音波伝搬時間と超音波の音速に基づいてその時点の液位を測定するものである。
【0004】
この液位測定装置は、超音波センサから発信された超音波が液面に垂直に入射してここで反射し、その反射波が往路と同じ経路で上記超音波センサに受信されることを必須要件として成立するものであり、そのため、上記超音波センサを配管の最下点の外面、即ち、その位置における傾斜角が0°となる位置(液面と平行となる位置)に、鉛直上方に向けて設置したものである。
【0005】
因みに、例えば、上記超音波センサの設置位置が上記配管の最下点位置から周方向にずれると、超音波センサから発信された超音波の経路が鉛直方向からずれて液面での垂直反射ができず、超音波経路が鉛直方向である場合よりも超音波伝搬時間が長くなり、精度の良い液位測定が不可能となる。
【0006】
特許文献2に示される液位測定装置は、超音波センサを配管の底部に設置して該配管内の液位を測定するに際して、該超音波センサを配管の最下点位置に設置することを目的とし(換言すれば、液中における超音波経路を鉛直方向とすることを目的として)、超音波センサ(超音波探触子)と重力センサを一体化し、超音波センサの軸が鉛直方向に向いたとき、上記重力センサが最大の信号を出力するように構成し、該超音波センサを配管の外面に沿わせて移動させ、重力センサの出力が最大となった時点における超音波センサの位置を、配管の最下点位置とし、ここに超音波センサを設置するものである。
【0007】
このように、超音波を用いた液位測定装置においては、液中における超音波経路を鉛直方向に設定して超音波伝搬時間を最小化することで液位測定の精度を確保するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2013-213717号公報
【文献】特開2017-120187号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、液位測定の必要性は、液体が流通する配管ばかりではなく、液体が貯留される縦向き配置の縦長タンクにおいても同様である。したがって、この縦長タンクの内部に貯留された液体の液位を測定する手段として、配管の場合と同様に、超音波を用いて測定することも可能である。
【0010】
しかしながら、この縦長タンクにおいては、配管とは異なる構造上の理由から、上記各特許文献において示された手法をそのまま適用できない事情がある。即ち、配管内の液位測定においては、超音波センサを配管の最下部に設置し、液内における超音波経路が鉛直方向となるようにしていたが、縦長タンクにおいては、通常その最下部、即ち、半球状の形体をもつタンク底部の中心位置には、液体の出口管が接続されているため、このタンク底部の中心位置に超音波センサを鉛直上方に向けて設置することは構造上不可能である。
【0011】
このような事情から、縦長タンクの底部中心部を外れた位置に超音波センサを設置した場合においても該タンク内の液位を正確に測定できる液位測定技術の開発が要請されるところである。
【0012】
そこで本願発明は、縦長タンクの底部傾斜部に超音波センサを設置して該タンク内の液位を正確に計測し得るようにした超音波液位測定装置を提供するとともに、超音波センサのタンク底部傾斜部への設置位置算出方法を提案することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願発明ではかかる課題を解決するための具体的手段として次のような構成を採用している。
【0014】
本願の第1の発明では、底部が略半球状のタンク内に貯留された液体の液位を超音波センサから照射される超音波を用いて測定する超音波液位測定装置であって、
上記超音波センサを、所定のクサビ角をもつ樹脂製の冶具を介して上記タンクの底部傾斜部に設置し、該超音波センサから照射され上記タンク底部の鋼板を透過して液体内に入射した後、液面での反射により反転してタンク底部側に伝搬する超音波の該液体内での経路が鉛直方向となるように構成する一方、
上記超音波センサの上記タンク底部傾斜部への設置位置が、以下の式1~式5によって規定される外面傾斜角(θ)に対応する位置であって、該外面傾斜角(θ)はタンク内面の傾斜角(θ)と水中屈折角(θ)とタンク内面側の鋼中屈折角(θ)とタンク外面側の鋼中屈折角(θ)と樹脂製の冶具のクサビ角(θ)のうちの何れか一つを決めることで自動的に決定されることを特徴としている。
【0015】
ここで、
式1・・・タンク内面の傾斜角(θ)=水中屈折角(θ
式2・・・タンク内面の傾斜角(θ)-タンク外面の傾斜角(θ
=タンク内面側の鋼中屈折角(θ)-タンク外面側の鋼中屈折角(θ)=δ
式3・・・sinδ=sinθ〔(R/R)cosθ-√(1-(R/R・sinθ
式4・・・cosθ/ca= sinθ/ct
式5・・・sinθ/cw= sinθ3/ct
Riはタンク底部内面の曲率半径
Roはタンク底部外面の曲率半径
θは樹脂製の冶具のクサビ角で、超音波のタンク底部への入射角に対応し
cwは水中の縦波音速
caは樹脂中の縦波音速
ctは鋼中の横波音速
である。
【0016】
本願の第2の発明では、上記第1の発明に係る超音波液位測定装置において、上記外面傾斜角(θ)を、上記水中屈折角(θ)が17°~24°の範囲となり、又は上記タンク外面側の鋼中屈折角(θ)が40°~60°の範囲となるように、設定したことを特徴としている。
【0017】
本願の第3の発明では、上記第1又は第2の発明に係る超音波液位測定装置において、上記超音波センサは、横波斜角の超音波センサであることを特徴としている。
【0018】
本願の第4の発明では、底部が略半球状のタンク内に貯留された液体の液位を該タンクの底部傾斜部に設置した超音波センサから照射される超音波を用いて測定するに際し、上記超音波センサの上記タンクの底部傾斜部への設置位置を算出する超音波センサの設置位置算出方法であって、
以下の式1~式5に基づいて算出される外面傾斜角(θ)であって、タンク内面の傾斜角(θ)と水中屈折角(θ)とタンク内面側の鋼中屈折角(θ)とタンク外面側の鋼中屈折角(θ)と上記樹脂製の冶具のクサビ角(θ)のうちの何れか一つを決めることで自動的に決定される外面傾斜角(θ)に対応する位置を、上記超音波センサの上記タンクの底部傾斜部への設置位置として算出することを特徴としている。
【0019】
ここで、
式1・・・タンク内面の傾斜角(θ)=水中屈折角(θ
式2・・・タンク内面の傾斜角(θ)-タンク外面の傾斜角(θ
=タンク内面側の鋼中屈折角(θ)-タンク外面側の鋼中屈折角(θ)=δ
式3・・・sinδ=sinθ〔(R/R)cosθ-√(1-(R/R・sinθ
式4・・・cosθ/ca= sinθ/ct
式5・・・sinθ/cw= sinθ3/ct
Riはタンク底部内面の曲率半径
Roはタンク底部外面の曲率半径
θは樹脂製の冶具のクサビ角で、超音波のタンク底部への入射角に対応し
cwは水中の縦波音速
caは樹脂中の縦波音速
ctは鋼中の横波音速
である。
【発明の効果】
【0020】
(a)本願の第1の発明
本願の第1の発明に係る超音波液位測定装置によれば、上記超音波センサを、所定のクサビ角をもつ樹脂製の冶具を介して上記タンクの底部傾斜部に設置し、該超音波センサから発信され上記タンク底部の鋼板を透過して液体内を伝搬し、さらに液面での反射により反転してタンク底部側に伝搬する超音波の該液体内での経路が鉛直方向となるように構成しているので、上記タンクの底部中心に出口管等の機材が設置されていても、これに影響を受けることなく該出口管等から外れた傾斜部に超音波センサを設置して該タンク内の液位を正確に測定することができ、超音波センサの設置位置の自由度の高い波液位測定装置を提供することができる。
【0021】
また、上記超音波センサがタンク底部の傾斜部に設置されることで、鋼板内に入射された後、該鋼板内で多重反射する超音波は、該鋼板の内面と外面において反射する度に該鋼板の傾斜に沿って次第に上記超音波センサから離れていくことから、この多重反射波が受信波形としては現れず、例えば、タンク底部中心位置に鉛直上方に向けて超音波センサを設置した場合とか、配管の最下部位置に鉛直上方に向けて超音波センサを設置した場合のように鋼板内の同じ位置で超音波が多重反射してこの多重反射波が受信波形として現れるものに比して、超音波信号の検出精度が向上し、より高精度の超音波液位測定装置を提供することができる。
【0022】
さらに、上記超音波センサの上記タンク底部傾斜部への設置位置を、以下の式1~式5によって規定される外面傾斜角(θ)に対応する位置としたもので、該外面傾斜角(θ)はタンク内面の傾斜角(θ)と水中屈折角(θ)とタンク内面側の鋼中屈折角(θ)とタンク外面側の鋼中屈折角(θ)と樹脂製冶具のクサビ角(θ)のうちの何れか一つを決めることで自動的に決定されるようにしているので、これら各角度パラメータのうちの何れか一つを決定し、それに基づいて上記超音波センサの上記タンク底部傾斜部への設置位置決めることで、それに連係して自動的に「タンク内面の傾斜角(θ)=水中屈折角(θ)」の条件、即ち、タンク内の液体中における超音波経路が鉛直方向とされる条件も満たされ、その結果、液位測定の正確さが担保された超音波液位測定装置を提供することができる。
【0023】
)本願の第2の発明
本願の第2の発明は、上記第1の発明に係る超音波液位測定装置において、上記外面傾斜角(θ)を、上記水中屈折角(θ)が17°~24°の範囲となり、又は横波の鋼中屈折角(θ)が40°~60°の範囲となるように、設定しているが、この水中屈折角(θ)が17°~24°の範囲、及び横波の鋼中屈折角(θ)が40°~60°の範囲は、高いエネルギー透過率が得られる範囲、即ち、超音波の伝達効率が高い範囲であることから、超音波信号の検出効率が高く(検出感度が高く)、より高精度の液位測定が担保される。
【0024】
)本願の第3の発明
本願の第3の発明に係る超音波液位測定装置では、上記超音波センサを、横波斜角の超音波センサで構成しているので、タンク底部の鋼板内におけるエネルギー透過率が高く、より高精度の液位測定が担保される。
【0025】
)本願の第4の発明
本願の第4の発明では、底部が略半球状のタンク内に貯留された液体の液位を該タンクの底部傾斜部に設置した超音波センサから照射される超音波を用いて測定するに際し、上記超音波センサの上記タンクの底部傾斜部への設置位置を算出する超音波センサの設置位置算出方法であって、以下の式1~式5に基づいて算出される外面傾斜角(θ)であって、タンク内面の傾斜角(θ)と水中屈折角(θ)とタンク内面側の鋼中屈折角(θ)とタンク外面側の鋼中屈折角(θ)と上記樹脂製の冶具のクサビ角(θ)のうちの何れか一つを決めることで自動的に決定される外面傾斜角(θ)に対応する位置を、上記超音波センサの上記タンクの底部傾斜部への設置位置として算出するようにしているので、タンク内の液体中における超音波経路が鉛直方向となる条件を満たすような超音波センサの設置位置が演算にて正確に求められるため、該超音波センサを用いた液位測定の正確さが担保される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本願発明の実施形態に係る液位測定装置を液体容器に設置した状態を示す断面図である。
図2図1のA部の拡大図である。
図3】超音波伝達効率を示す「水中屈折角-エネルギー透過率」線図である。
図4】本願発明の実施形態に係る液位測定装置における超音波波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1には、頂部1a及び底部1bが共に半球状形体とされるとともに、該底部1bの中心位置(最下端位置)には出口管2が設けられた縦長のタンク1が示されている。このタンク1の上記底部1bの中心位置から径方向外方に延出する傾斜部には、上記出口管2を避けるようにして、本願発明の実施形態に係る超音波液位測定装置10の主要構成部材である超音波センサ11が設置されている。なお、上記液位測定装置10は、上記超音波センサ11の他に、演算装置12と音速データ13と出力部14を備えて構成される。
【0028】
上記超音波センサ11は、超音波の発信と反射波の受信を行うものであって、該超音波センサ11からの超音波の発信から該超音波センサ11における反射波の受信までの時間、即ち、超音波伝搬時間が時間情報として上記演算装置12に入力され、該演算装置12では、この時間情報と音速データ13から入力される超音波の音速情報に基づいて液位を算出し、これを出力部14から出力する。
【0029】
このように上記超音波センサ11は液位算出の基本情報である超音波伝搬時間を取得するものであることから、正確な液位測定を担保するためには、上述のように上記超音波センサ11が底部中心(即ち、傾斜角0の位置)ではなくその周囲の傾斜部に設置されていたとしても、該超音波センサ11から発信された超音波が液面において垂直反射して同じ経路で該超音波センサ11側に受信されること、即ち、液体中における超音波経路が鉛直方向となるように設定されていることが必須となる。
【0030】
本願発明は、液中における超音波経路が鉛直方向となるように上記超音波センサ11のタンク底部1bへの設置位置が設定されていることを特徴とするものであって、この超音波センサ11のタンク底部1bへの設置位置は、以下に示すように演算にて正確に設定される。以下、この超音波センサ11の設置位置の設定手法を、図2を参照して説明する。
【0031】
図2は、上記超音波センサ11の上記タンク1の底部傾斜部への設置状態を拡大図示したものである。上記超音波センサ11は、これを横波斜角超音波センサとして利用する(即ち、超音波が底部1bの鋼板31中を横波モードで伝搬されるようにする)とともに上記底部1bへの入射角を調整する理由から、クサビ状の樹脂製冶具4を介して、上記傾斜部の外面に設置される。なお、上記冶具4の素材樹脂としては、例えば、アクリルとかポリスチレン等が適用できる。
【0032】
そして、この超音波センサ11から発信された超音波は、上記冶具4を縦波モードで伝搬した後、該冶具4から鋼板31への入射時に横波にモード変換され、該鋼板31内を横波モードで伝搬し、さらに鋼板31から液中への入射時に縦波にモード変換され、液中を縦波モードで伝搬する。また、超音波は、冶具4から鋼板31への入射時、該鋼板31から液体への入射時にそれぞれ屈折する。
【0033】
図2に示した超音波の伝搬経路における各角度パラメータは、以下のとおりである。
「θ」・・タンク内面の傾斜角
「θ」・・水中屈折角
「θ」・・タンク内面側の鋼中屈折角
「θ」・・タンク外面側の鋼中屈折角
「θ」・・タンク外面の傾斜角
「θ」・・冶具のクサビ角
【0034】
そして、これら各角度パラメータは、以下の関係により相互に結ばれている。
タンク内面の傾斜角(θ)=水中屈折角(θ )・・・(式1)
タンク内面の傾斜角(θ)-タンク外面の傾斜角(θ
=タンク内面側の鋼中屈折角(θ)-タンク外面側の鋼中屈折角(θ)=δ・・・(式2)
sinδ=sinθ〔(R/R)cosθ-√(1-(R/R・sinθ)・・・(式3)
cosθ/ca= sinθ/ct・・・(式4)
sinθ/cw= sinθ3/ct・・・(式5)
また、(θ)は上記冶具4のクサビ角、(Ri)はタンク底部内面の曲率半径、(Ro)はタンク底部外面の曲率半径である。
なお、上記(式3)は、鋼板31の厚さd(=R- R)が曲率半径(R)と比較して小さい場合(d≪R)には、次の近似式が使える。
δ=(d/R)tanθ[rad]・・・(式3´)
【0035】
なお、上記(式1)~(式3)は、超音波経路とタンク1との幾何学的関係に基づくものであり、(式4)及び(式5)は、スネルの法則に由来するものである。そして、これら各角度パラメータは、これらの何れか一つが決まれば他のパラメータは自動的に決定される関係にある。また、上記(式1)は、液中の超音波経路が鉛直方向となるための要件であり、また、(式2)におけるタンク外面の傾斜角(θ)は、タンク底部1bにおける上記超音波センサ11の設置位置(超音波センサ11から鋼板31への超音波の入射位置)を示すものである。
【0036】
ここで、上記(式1)~(式5)に基づいて、上記超音波センサ11の設置位置を決定する手法を幾つか説明する。
【0037】
A:第1の手法 上記各角度パラメータのうち、上記冶具4のクサビ角「θ」をある角度(例えば、45°)に特定して行う手法
この場合は、上記(式1)~(式5)において、上記クサビ角「θ」を既知として、タンク外面の傾斜角(θ)に対応する位置を求め、ここを上記超音波センサ11の設置位置とする。この位置に上記超音波センサ11を設置することで、タンク1の液内の超音波経路が常に鉛直方向となり、上記超音波センサ11から超音波が発信された時点から、液面において垂直反射して上記超音波センサ11に受信されるまでの時間(超音波伝搬時間)が常に正確に測定される。
【0038】
そして、上記演算装置12では、この正確な超音波伝搬時間(T)を用いて、以下の(式6)によって液位(H)が算出される(図1参照)。
(液位)H = cw{(T/2)-(L1/c1)-(L0/ca)}・・・(式6)
ここで、上記(式6)の(L1)は上記冶具4の寸法から決まる定数であり、(L1)はタンク底部1bの幾何学的形状や鋼中屈折角(θ)入力依存し、以下の(式7)で与えられる。
=√{R +R (2cosθ-1)-2Rcosθ√(R -R sinθ)}・・・(式7)
なお、上記(式7)は、鋼板31の厚さd(=R-R)が曲率半径(R)と比較して小さい場合(d≪R)には、次の近似式が使える。
=d/cosθ{1+(dtan 2θ/2R)}・・・(式7´)
【0039】
なお、ここで測定可能な液位は、図1に示すように満液位から上記超音波センサ11の設置位置の高さまでの範囲であって、該超音波センサ11の設置位置の高さより低い全ブロー液位は測定できないが、この全ブロー液位と上記超音波センサ11の設置位置との高さの差は極めて小さいため、超音波センサ11の設置位置を全ブロー液位として
取り扱っても実際的には問題とならない。
【0040】
B:第2の手法 上記超音波センサ11の設置位置、即ち、上記タンク外面の傾
斜角(θ 5 )を特定して行う手法
【0041】
この場合は、上記(式1)~(式5)において、上記傾斜角(θ)を既知として、上記冶具4のクサビ角(θ)を求め、このクサビ角(θ)をもつ冶具4を用いて上記超音波センサ11を上記タンク外面の傾斜角(θ)に対応する位置に設置する。この位置に上記超音波センサ11を設置することで、タンク1の液内の超音波経路が常に鉛直方向となり、超音波伝搬時間が常に正確に測定される。そして、この正確な超音波伝搬時間(T)を用いて、上記(式6)によって液位(H)が算出される。
【0042】
C:第3の手法 超音波信号の検出感度が高く、より高精度の液位測定を実現するための手法
上記鋼中屈折角(θ)には、超音波伝達効率の観点から利用できる範囲に制限がある。即ち、図3には、超音波が鋼板31から液体を透過し、液面で反射して、再び鋼板31まで戻ってくるまでの超音波の伝達効率を示している。ここで、横軸は水中屈折角(θ)、縦軸はエネルギー透過率であって、このエネルギー透過率が100%に近いほど、エネルギー損失が少なく、超音波の伝達効率が高いことを意味する。
【0043】
また、図3において、破線は鋼板31内を超音波が縦波モードで伝搬する場合のエネルギー透過率を水中屈折角に対応して示したものである。また、実線は、鋼板31内を超音波が横波モ-ドで伝搬する場合のエネルギー透過率を水中屈折角に対応して示したものである。各線上における数字は、鋼中屈折角を示している。
【0044】
この図3の各線図からは、超音波伝達効率が高い範囲を選択すれば、横波モードでの
鋼中屈折角(θ)が40°~60°の範囲、又は水中屈折角(θ)が17°~24°の範囲が適切であるといえる。
【0045】
したがって、上記超音波センサ11の設置に際しては、該超音波センサ11の設置位置となる上記外面傾斜角(θ)を、上記水中屈折角(θ)が17°~24°の範囲となるように、又は横波モードの鋼中屈折角(θ)が40°~60°の範囲となるように、設定すれば良いことになる。
【0046】
なお、この場合、上記外面傾斜角(θ)と、上記水中屈折角(θ)又は鋼中屈折角
(θ)は1対1で対応することから、例えば、上記外面傾斜角(θ)を上記水中屈折角(θ)で規定する場合には、該水中屈折角(θ)の数値に応じて上記外面傾斜角(θ)の数値が変わり、また上記外面傾斜角(θ)を鋼中屈折角(θ)で規定する場合には該鋼中屈折角(θ)の数値に応じて上記外面傾斜角(θ)の数値が変わる。また、このように上記水中屈折角(θ)又は水中屈折角(θ)が変わる場合には、上記冶具4のクサビ角(θ)も変わるため、採用する上記水中屈折角(θ)又は水中屈折角(θ)に応じたクサビ角(θ)をもつ冶具4を用意することが必要となる。
【0047】
「本願発明に特有の作用効果」
(1)本願発明に係る超音波液位測定装置においては、上述のようにして上記超音波センサ11を適正位置に設置することで常にタンク1内の液中における超音波経路が鉛直方向となるようにしていることから、上記タンク1の底部中心に出口管2等の機材が設置されていても、これに影響を受けることなく該出口管2等から外れた傾斜部に超音波センサを設置して該タンク内の液位を正確に測定することができ、設置位置についての自由度の高い超音波液位測定装置を提供することができる。
【0048】
(2)本願発明に係る超音波液位測定装置においては、上記超音波センサ11がタンク1の底部の傾斜部に設置されることで、鋼板31内に入射された後、該鋼板31内で多重反射する超音波は、図2に破線で示すように、該鋼板31の内面と外面において反射する度に該鋼板31の傾斜に沿って次第に上記超音波センサ11から離れていくことから、この多重反射波が受信波形としては現れない。したがって、例えば、タンク底部中心位置に鉛直上方に向けて超音波センサを設置した場合とか、配管の最下部位置に鉛直上方に向けて超音波センサを設置した場合のように鋼板31内の同じ位置で多重反射してこの多重反射波が受信波形として現れるものに比して、超音波信号の検出精度が向上し、より高精度の超音波液位測定装置を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本願発明に係る超音波液位測定装置は、タンクを備える各種産業分野において、該タンク内の液位測定手段として広く利用できるものである。
【符号の説明】
【0050】
1 ・・タンク
2 ・・出口管
3 ・・管壁
4 ・・冶具
10 ・・液位測定装置
11 ・・超音波センサ
31 ・・鋼板
図1
図2
図3
図4