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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】空調ダクト用空気清浄機
(51)【国際特許分類】
   F24F 13/02 20060101AFI20221206BHJP
   A61L 9/00 20060101ALI20221206BHJP
   A61L 9/20 20060101ALI20221206BHJP
   F24F 3/16 20210101ALI20221206BHJP
   F24F 8/167 20210101ALI20221206BHJP
   F24F 8/22 20210101ALI20221206BHJP
   F24F 13/28 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
F24F13/02 Z
A61L9/00 C
A61L9/20
F24F3/16
F24F8/167
F24F8/22
F24F13/28
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020174344
(22)【出願日】2020-10-16
(65)【公開番号】P2022065707
(43)【公開日】2022-04-28
【審査請求日】2021-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000226242
【氏名又は名称】日機装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591209280
【氏名又は名称】株式会社フジコー
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】弁理士法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河内 雅之
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼▲巣▼ 圭介
(72)【発明者】
【氏名】中摩 貴浩
【審査官】▲高▼藤 啓
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-077997(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0109869(US,A1)
【文献】特開2019-017855(JP,A)
【文献】特開2010-025467(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103736375(CN,A)
【文献】特開2019-173991(JP,A)
【文献】特開2003-093486(JP,A)
【文献】国際公開第2017/099231(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 3/16
F24F 3/16-3/167
F24F 7/003
F24F 8/167
F24F 8/22
F24F 13/02
F24F 13/28
A61L 9/00
A61L 9/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調ダクトに取付けられる空調ダクト用空気清浄機であって、
光触媒を担持させた光触媒フィルタと、
前記光触媒を活性化させる紫外光を前記光触媒フィルタに照射する触媒活性用光源と、
前記触媒活性用光源と別個に設けられ、前記光触媒フィルタに前記触媒活性用光源よりも短い波長の紫外光を照射する不活化用光源と、を備え、
前記光触媒フィルタが、前記空調ダクトの延伸方向に対して平行または傾斜して設けられており、
前記光触媒フィルタと前記空調ダクトの内面との間に、前記光触媒フィルタを通過せずに空気を通過させるバイパス流路を有し、
前記触媒活性用光源と前記不活化用光源の両方が、前記光触媒フィルタと対向するように設けられており、前記光触媒フィルタは、前記触媒活性用光源から照射された紫外光で前記光触媒を活性化することによる脱臭と、細菌及びウィルスを捕集し、捕集した細菌及びウィルスを前記不活化用光源から照射された紫外光により不活化させる役割と、を兼ねており、
前記不活化用光源は、前記触媒活性用光源よりも前記光触媒フィルタに近づけて配置されている、
空調ダクト用空気清浄機。
【請求項2】
前記空調ダクトの延伸方向に対して平行に設けられた複数の前記光触媒フィルタを有し、前記複数の光触媒フィルタが、前記空調ダクトの延伸方向に対して垂直方向に並ぶように配置されている、
請求項に記載の空調ダクト用空気清浄機。
【請求項3】
前記光触媒フィルタよりも上流側の前記空調ダクトに設けられ、前記空調ダクト内に乱流を発生させる乱流発生部をさらに備える、
請求項1または2に記載の空調ダクト用空気清浄機。
【請求項4】
前記空調ダクト内の空気の流れにより発電する風力発電機をさらに備え、
前記風力発電機で発電した電力により、前記触媒活性用光源及び前記不活化用光源を駆動するように構成されている、
請求項1乃至の何れか1項に記載の空調ダクト用空気清浄機。
【請求項5】
前記光触媒フィルタに供給される空気の状態を検出するセンサと、
前記センサで検出した空気の状態に応じて、前記触媒活性用光源及び前記不活化用光源の少なくとも一方の駆動制御を行う光源駆動制御部と、をさらに備えた、
請求項1乃至の何れか1項に記載の空調ダクト用空気清浄機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調ダクト用空気清浄機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の空調ダクト用空気清浄機として特許文献1が知られている。特許文献1では、光触媒フィルタを用い、光触媒フィルタに紫外光を照射することで、光触媒フィルタに捕集された汚染物質を分解し、無害化や脱臭等を行う空調ダクト用空気清浄機が記載されている。また、特許文献1では、光触媒フィルタをダクトの延伸方向(ダクト内で空気が流れる方向)に対して傾斜して多段に配置することにより、浄化効率を高める点が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-130042号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の従来の空調ダクト用空気清浄機では、空調ダクトを通る空気の全量が光触媒フィルタを通るため、空気抵抗が大きくなってしまい、空調ダクト用空気清浄機を取付けることによる圧力損失が大きくなってしまうという課題がある。
【0005】
そこで、本発明は、空調ダクトに取付けた際の圧力損失を抑制可能な空調ダクト用空気清浄機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決することを目的として、空調ダクトに取付けられる空調ダクト用空気清浄機であって、光触媒を担持させた光触媒フィルタと、前記光触媒を活性化させる紫外光を前記光触媒フィルタに照射する触媒活性用光源と、前記触媒活性用光源と別個に設けられ、前記光触媒フィルタに前記触媒活性用光源よりも短い波長の紫外光を照射する不活化用光源と、を備え、前記光触媒フィルタが、前記空調ダクトの延伸方向に対して平行または傾斜して設けられており、前記光触媒フィルタと前記空調ダクトの内面との間に、前記光触媒フィルタを通過せずに空気を通過させるバイパス流路を有し、前記触媒活性用光源と前記不活化用光源の両方が、前記光触媒フィルタと対向するように設けられており、前記光触媒フィルタは、前記触媒活性用光源から照射された紫外光で前記光触媒を活性化することによる脱臭と、細菌及びウィルスを捕集し、捕集した細菌及びウィルスを前記不活化用光源から照射された紫外光により不活化させる役割と、を兼ねており、前記不活化用光源は、前記触媒活性用光源よりも前記光触媒フィルタに近づけて配置されている、空調ダクト用空気清浄機を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、空調ダクトに取付けた際の圧力損失を抑制可能な空調ダクト用空気清浄機を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】(a)は、本発明の一実施の形態に係る空調ダクト用空気清浄機の模式図であり、(b)は空気清浄化部の分解斜視図である。
図2】(a),(b)は、空気清浄化ユニットの斜視図である。
図3図2(b)においてフィルタユニットを取り外した際の斜視図である。
図4】電源コードの接続を説明する図である。
図5】空気清浄化部の模式図である。
図6】(a)~(c)は、乱流発生部の一態様を説明する図である。
図7】(a),(b)は、乱流発生部の一態様を説明する図である。
図8】本発明の一変形例に係る空調ダクト用空気清浄機の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[実施の形態]
以下、本発明の実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0010】
(空調ダクト用空気清浄機1の全体構成)
図1(a)は、本実施の形態に係る空調ダクト用空気清浄機1の模式図である。
【0011】
図1(a)に示すように、空調ダクト用空気清浄機1は、空調ダクト2に取付けられ、空調ダクト2を流れる空気を清浄化するものである。空調ダクト2は、建物に備えられる空調システムを構成する部材であり、空調ダクト2には、空調ダクト2に導入した空気を冷却、暖房、加湿、あるいは除湿して排出する図示しない空調機が取付けられている。空調ダクト用空気清浄機1を適用する空調システムは、例えば、戸建て住宅、マンション、あるいは商業設備向けの集中空調管理システム等である。また、航空機用の空調システム等にも空調ダクト用空気清浄機1を適用することができる。
【0012】
空調ダクト用空気清浄機1は、空気清浄化部3と、空気清浄化部3の上流側(空調ダクト2内の空気の流れ(図示白抜き矢印)における上流側)に設けられる乱流発生部4と、を備えている。以下、各部の詳細について説明する。
【0013】
(空気清浄化部3)
図1(b)は空気清浄化部3の分解斜視図であり、図2(a),(b)は、空気清浄化ユニット32の斜視図である。図3は、図2(b)においてフィルタユニットを取り外した際の斜視図である。空気清浄化部3は、空調ダクト2を流通する空気に対して、脱臭、及び細菌やウィルスの分解及び不活化を行うものである。
【0014】
図1(b)、図2(a),(b)、及び図3に示すように、空気清浄化部3は、空調ダクト2に形成された貫通孔2aの周縁を覆うように空調ダクト2に取付けられる枠状のフレーム部31と、フレーム部31に嵌装される空気清浄化ユニット32と、を備えている。
【0015】
フレーム部31には、空気清浄化ユニット32を挿入するための矩形状の挿入孔311が形成されている。この挿入孔311に空気清浄化ユニット32を挿入した状態でボルト固定することで、空気清浄化ユニット32が空調ダクト2に着脱可能に固定される。なお、空気清浄化ユニット32の具体的な固定方法はこれに限定されず、例えば、フレーム部31を省略し、空気清浄化ユニット32を直接空調ダクト2に固定するよう構成してもよい。またボルト固定以外の方法で空気清浄化ユニット32を取り付けてもよい。
【0016】
空気清浄化ユニット32は、光触媒を担持させた光触媒フィルタカセット33と、光触媒フィルタカセット33に紫外光を照射し光触媒を活性化させる触媒活性用光源34と、光触媒フィルタカセット33に触媒活性用光源34よりも短い波長の紫外光を照射し、細菌及びウィルスを不活化させるための不活化用光源35と、を備えている。
【0017】
また、空気清浄化ユニット32は、フレーム部31の挿入孔311を塞ぐように設けられる矩形の板状の外板321と、外板321の内面(空調ダクト2内に臨む面)から空調ダクト2内へと突出するように設けられ、光触媒フィルタカセット33を着脱自在に支持するフィルタ用ガイドレール322と、外板321の内面から空調ダクト2内へと突出するように設けられ、触媒活性用光源34又は不活化用光源35が設けられる光源支持用リブ323と、を備えている。
【0018】
光触媒フィルタカセット33は、紫外線の照射により光触媒機能を発揮する光触媒が担持されたフィルタである。本実施の形態では、ステンレスやアルミニウム等の無機材料からなるフィルタ基体の表面に、アパタイトや酸化チタン等を含有する光触媒が担持された構造の光触媒フィルタ332を用いた。フィルタ基体は、例えば、ステンレスやアルミニウム等からなる繊維状体を用いて構成された不織布、あるいは、ステンレスやアルミニウム等からなるエキスパンドメタルまたはパンチングメタルにより構成されるとよい。ステンレスやアルミニウム等の無機材料からなるフィルタ基体を用いることで、フィルタ基体の劣化を抑制し、メンテナンスの削減、交換頻度の削減が可能になる。光触媒の担持方法は、フィルタ基材表面への塗工による方法や、繊維状体基材を用いた場合には繊維状体内へ粒子状の光触媒を担持させる方法などがある。フィルタ基材表面へ担持させる方法は、触媒活性用光源34の発する紫外線を受けやすい点で好ましい。一方、繊維状体、メッシュやパンチングメタルを基材として担持させる方法では、空調ダクト2内を流れる空気との接触面積が大きくなるため、光触媒との接触時間を稼ぐことができる点で好ましい。
本実施の形態では、光触媒フィルタ332を枠体331により保持することで、光触媒フィルタカセット33を構成している。なお、ここでは、2つの光触媒フィルタカセット33を用いているが、使用する光触媒フィルタカセット33の数はこれに限定されず、1つでもよいし、3つ以上であってもよい。
【0019】
光触媒フィルタカセット33は、一対のフィルタ用ガイドレール322により着脱自在に支持されている。一対のフィルタ用ガイドレール322は、外板321の内面を正面から見てそれぞれ略コの字状に形成されており、その開放部を対向させてそれぞれ配置されている。本実施の形態では、2つの光触媒フィルタカセット33を有しているため、2つの光触媒フィルタカセット33に対応して、2対のフィルタ用ガイドレール322が設けられている。フィルタ用ガイドレール322の先端側(突出端側)から基端側(外板321側)へとフィルタ用ガイドレール322に沿って光触媒フィルタカセット33をスライドさせ挿入することで、光触媒フィルタカセット33が外板321へと装着される。光触媒フィルタカセット33の枠体331には、そのスライド方向と垂直方向(光触媒フィルタカセット33表面の法線方向に対して垂直な方向)に突出する係止片333が一体に設けられており、この係止片333をフィルタ用ガイドレール322に形成された係止孔322aに係止させることで、光触媒フィルタカセット33が所定の位置に係止され固定される。
【0020】
上述のように、触媒活性用光源34は、光触媒フィルタカセット33に紫外光を照射して光触媒を活性化させるためのものであり、不活化用光源35は、細菌やウィルスを不活化させるためのものである。触媒活性用光源34と不活化用光源35とを共通化せずに別個に構成することで、光触媒を活性化することによる脱臭等の効果と、細菌やウィルスを不活化させる効果の両方を、十分に得ることが可能になる。特に、空調ダクト2では、通常の室内用空気清浄機等と比較して処理する空気量が多くなるため、脱臭や細菌等の不活化の効果を十分に得るという観点から、触媒活性用光源34と不活化用光源35とを別個に構成することが望ましいといえる。
【0021】
本実施の形態では、触媒活性用光源34及び不活化用光源35は、複数の発光ダイオード34a,35bから構成されている。触媒活性用光源34及び不活化用光源35を発光ダイオード34a,35aにより構成することで、例えば紫外線ランプを用いた場合と比較して触媒活性用光源34及び不活化用光源35のサイズを小さくできるため、触媒活性用光源34及び不活化用光源35による空調ダクト2内の空気抵抗の増加を抑制することができ、小さい空調ダクト2にも適用可能となる。また、触媒活性用光源34及び不活化用光源35を発光ダイオード34a,35aにより構成することで、例えば紫外線ランプを用いた場合と比較して消費電力を抑えることができる。さらに、発光ダイオード34a,35aは例えば5年以上の発光ダイオード交換を必要としないため、年1回程度の交換が必須となる紫外線ランプと比較して、交換の手間やランニングコストを低減し、メンテナンス性も向上できる。特に、本実施の形態のように触媒活性用光源34と不活化用光源35とを別個に構成する場合、触媒活性用光源34及び不活化用光源35を発光ダイオード34a,35aで構成することによる効果は非常に大きい。
【0022】
触媒活性用光源34を構成する発光ダイオード34aとしては、波長360nm以上380nm以下の紫外光を発する発光ダイオードを用いるとよい。本実施の形態では、波長365nmの紫外光を発する発光ダイオード34aを触媒活性用光源34として用いた。
【0023】
不活化用光源35を構成する発光ダイオード35aとしては、触媒活性用光源を構成する発光ダイオード34aよりも短い波長の紫外光を照射するものを用いる。より具体的には、不活化用光源35を構成する発光ダイオード35aとしては、波長250nm以上280nm以下の深紫外光を発する発光ダイオードを用いるとよい。本実施の形態では、波長280nmの深紫外光を発する発光ダイオード35aを不活化用光源35として用いた。
【0024】
図3に示されるように、触媒活性用光源34及び不活化用光源35を構成する発光ダイオード34a,35aは、それぞれ光源支持用リブ323に一列に並んで取付けられ、全体としてアレイ状となるように構成されている。本実施の形態では、光触媒フィルタカセット33のそれぞれに対して、フィルタ用ガイドレール322の対向方向(図示上下方向)に離間して3つ(2つの光触媒フィルタカセット33に対して合計6つ)の光源支持用リブ323を設けている。そして、中央の光源支持用リブ323に不活化用光源35を構成する発光ダイオード35aを一列に並べて設け、両端の光源支持用リブ323それぞれに触媒活性用光源34を構成する発光ダイオード34aを一列に並べて設けた。また、不活化用光源35を、触媒活性用光源34よりも光触媒フィルタカセット33に近づけて配置した。これにより、比較的サイズの大きい光触媒フィルタ332に対しても、触媒活性用光源34からの紫外光を光触媒フィルタ332全体に照射して光触媒の活性効果を十分に得ることができ、かつ、不活化用光源35による細菌やウィルスの不活性効果も十分に得ることが可能になる。
【0025】
本実施の形態では、光触媒フィルタカセット33の対向方向における内側(空調ダクト2内の中央側)から外側(空調ダクト2の内壁側)に向けて紫外光を照射するように触媒活性用光源34及び不活化用光源35を設けている。これにより、触媒活性用光源34及び不活化用光源35用の配線を中央部に集中させて、配線レイアウトを簡略化できる。ただし、これに限らず、光触媒フィルタカセット33の対向方向における外側から内側に向けて紫外光を照射するように触媒活性用光源34及び不活化用光源35を設けてもよい。この場合、空調ダクト2の内壁に紫外光が照射されにくくなるので、空調ダクト2の劣化を抑制することが可能になる。
【0026】
外板321の表面(空調ダクト2外に露出する面)には、空気清浄化ユニット32を空調ダクト2に着脱する際に作業者が把持するハンドル321aが設けられている。また、外板321の表面には、電源供給装置(アダプタ)5から延びる電源コード51の端部にもうけられた電源プラグ52が差し込まれる電源ジャック321bが設けられている。電源ジャック321bの近傍には、電源供給の有無、あるいは、触媒活性用光源34及び不活化用光源35の駆動の有無を発光により通知するための通知用発光ダイオード321cが設けられている。
【0027】
図4に示すように、電源プラグ52の近傍の電源コード51が、フレーム部31に設けられたインシュロック等のコード用固定部材312によって固定されている。このように構成することで、電源プラグ52を電源ジャック321bから離脱させないと、空気清浄化ユニット32を空調ダクト2から取り外せないようになっている。これにより、作業者の感電事故等を未然に防ぐことが可能になる。
【0028】
また、外板321の背面には、電源ジャック321bと電気的に接続された電源回路36が設けられている(図3参照)。電源回路36は、電源供給装置5から電源ジャック321bを介して供給された電力により、触媒活性用光源34及び不活化用光源35を駆動する駆動回路や、通知用発光ダイオード321cの発光制御を行う回路等が搭載されている。駆動回路は、触媒活性用光源34及び不活化用光源35を、所定の時間間隔で点灯と消灯を繰り返すように構成されていてもよい。これにより、消費電力をより低減することが可能になり、触媒活性用光源34及び不活化用光源35の発熱量を抑制して空調ダクト2内の空気の昇温を抑制することも可能になる。
【0029】
また、図示していないが、光触媒フィルタカセット33に供給される空気の状態を検出するセンサを設けてもよい。センサは、光触媒フィルタカセット33よりも上流側の空調ダクト2内に設けられることが望ましく、例えば電源回路36と一体に設けることができる(その場合、電源回路36が光触媒フィルタカセット33よりも上流側となるように空気清浄化ユニット32を設ける必要がある)。センサとしては、温度センサ、湿度センサ、臭いセンサ、埃センサのいずれか、あるいは1つ以上を組み合わせて用いることができる。また、現在は実用化されていないが、将来的には、センサとして、ウィルスや細菌を検出可能なセンサ(バイオセンサ等)を用いることもできる。例えば、センサにより検出した空気の状態は、外板321に設けたディスプレイ等の表示器に表示されてもよいし、無線により管理装置等にデータとして送信されるよう構成してもよい。
【0030】
さらに、空気の状態を検出するセンサを備える場合、そのセンサで検出した空気の状態に応じて、触媒活性用光源34及び不活化用光源35の少なくとも一方の駆動制御を行う光源駆動制御部を電源回路36にさらに備えてもよい。光源駆動制御部は、例えば、臭いセンサの出力が所定の上限閾値以上であるときに触媒活性用光源34を駆動し、所定の下限閾値未満であるときに触媒活性用光源34の駆動を停止するように構成することができる。光源駆動制御部を有することで、触媒活性用光源34や不活化用光源35の駆動時間を短くして、消費電力の低減、及び発熱量の低減が可能になり、さらに、両光源34,35の駆動時間が短くなることにより寿命の向上も図れる。
【0031】
(光触媒フィルタカセット33の配置)
図5に示すように、本実施の形態に係る空調ダクト用空気清浄機1では、光触媒フィルタカセット33が、空調ダクト2の延伸方向(すなわち空調ダクト2内で空気が流れる方向)に対して平行または傾斜して設けられており、かつ、光触媒フィルタカセット33と空調ダクト2の内面との間に、光触媒フィルタカセット33を通過せずに空気を通過させるバイパス流路37を有している。
【0032】
光触媒フィルタカセット33を空調ダクト2の延伸方向に対して平行または傾斜して設け、かつ光触媒フィルタカセット33と空調ダクト2間にバイパス流路37を有することで、空気清浄化ユニット32を空調ダクト2に取付けた際の圧力損失の上昇を抑制することができる。本実施の形態に係る空調ダクト用空気清浄機1は、空気の脱臭や細菌・ウィルスの不活化を目的としているため、空調ダクト2を流れる空気の全量が光触媒フィルタ332を通過する必要がない。例えば、光触媒反応は、光触媒フィルタ332に接している表面にて発生するOHラジカルが作用するため、光触媒フィルタ332を通らずに、光触媒フィルタ332の表面をなぞるように空気が流れても、OHラジカル反応による酸化分解による脱臭等は可能である。また、光触媒フィルタカセット33を空調ダクト2の延伸方向に対して平行または傾斜して設けることで、光触媒フィルタカセット33を空調ダクト2の延伸方向に沿って長く設けることが可能になり、光触媒フィルタ332の面積を大きくすることができる。例えば、意図した脱臭効果、あるいは細菌等の不活化の効果が得られない場合、光触媒フィルタ332の長さ(面積)を適宜大きくすることで、対応が可能になる。
【0033】
さらに、空調ダクト2を流れる空気は、きれいな層流となっていることは殆ど無く、多くの場合は乱流となっている。そのため、光触媒フィルタカセット33を空調ダクト2の延伸方向に対して平行または傾斜して設けていても、光触媒フィルタカセット33にて細菌やウィルスを捕集することが可能である。ただし、乱流の度合いが小さい空調ダクト2においては、光触媒フィルタ332による捕集効率が低下してしまうおそれもあるため、本実施の形態では、光触媒フィルタカセット33よりも上流側の空調ダクト2に乱流発生部4を設けている。乱流発生部4にて意図的に乱流を発生させることで、圧力損失を抑制しつつも光触媒フィルタ332の捕集効率を向上させることが可能になる。なお、空調ダクト2を流れる空気が、乱流発生部4を設けずとも乱流となっている場合には、乱流発生部4は省略可能である。乱流発生部4の詳細については後述する。
【0034】
空調ダクト2での圧力損失をより抑制するために、本実施の形態では、光触媒フィルタカセット33を、空調ダクト2の延伸方向に対して平行に設けている。光触媒フィルタカセット33は、空調ダクト2の延伸方向に対して厳密に平行に設けられていなくともよいが、空調ダクト2での圧力損失をより抑制するという観点から、空調ダクト2の延伸方向に対する光触媒フィルタカセット33の角度は、プラスマイナス45°の範囲内(-45°以上45°以下)であることが望ましく、より望ましくは、プラスマイナス30°の範囲内(-30°以上30°以下)であるとよい。
【0035】
バイパス流路37は、空気清浄化ユニット32を空調ダクト2に取付けた際の圧力損失の上昇を抑制することができる程度に設計されることが望ましい。空調ダクト2の延伸方向に垂直な断面に投影される光触媒フィルタカセット33の影と、空調ダクト2の内壁との間に形成されるバイパス流路37の面積が、空調ダクト2の断面積の15%以上が望ましく、より望ましくは25%以上である。上限は、光触媒フィルタカセット33の設置位置により規制されるが、概ね60%以下が望ましい。
【0036】
さらに、本実施の形態では、脱臭や細菌等の不活化の効果をより高めるために、複数の光触媒フィルタカセット33を、空調ダクト2の延伸方向に対して垂直方向に並ぶように配置している。ここでは、2つの光触媒フィルタカセット33を用いた場合を示しているが、空調ダクト2のサイズが大きい場合には、3つ以上の光触媒フィルタカセット33を配置するようにしてもよい。また、空調ダクト2のサイズが小さい場合には、1つの光触媒フィルタカセット33のみを用いるよう構成してもよい。なお、光触媒フィルタカセット33の数を増やしすぎると圧力損失の増大につながるため、圧力損失の観点から問題がない程度の数とすることが望ましい。
【0037】
(乱流発生部4)
乱流発生部4は、光触媒フィルタカセット33よりも上流側の空調ダクト2に設けられており、空調ダクト2内に乱流を発生させることで、光触媒フィルタ332における捕集効率を向上させ、脱臭や細菌・ウィルスの不活化の効果を向上させる役割を果たす。
【0038】
乱流発生部4の具体的な構造は特に限定するものではないが、例えば図6(a)に示すように、空調ダクト2内に空気の流れを邪魔するバッフル板21を設けたり、スタティックミキサーを設置したりすることにより、乱流を発生させてもよい。図6(a)の例では、水平方向に延伸する空調ダクト2において鉛直方向上方から下方に突出するようにバッフル板21を設けている。バッフル板21の近傍では、空気の流れの向きが急激に変化するため、空気に含まれている塵や埃等の微粒子が分離されやすくなる。そこで、図6(a)の例では、バッフル板21の下方に、空気中に含まれる塵や埃等の微粒子を回収するための回収部22を設けている。このように、乱流発生部4は、空気中に含まれる塵や埃等の微粒子を除去可能に構成されていることがより望ましい。これにより、光触媒フィルタ332の目詰まりを抑制し、光触媒フィルタ332の交換までの期間を長くしてメンテナンス性を高めることができる。
【0039】
また、図6(b)に示すように、空調ダクト2内にルーバー(羽板)23を設けることで、乱流を発生させてもよい。この場合、鉛直方向下方に向かって空気を排出するようにルーバー23を構成し、ルーバー23の出口近傍の鉛直方向下方に回収部22を設けることで、空気中に含まれる塵や埃等の微粒子を回収可能である。
【0040】
さらに、図6(c)に示すようなサイクロン式集塵機と呼ばれる乱流発生部4を空調ダクト2に設けてもよい。この場合、空調ダクト2は、鉛直方向下方に向かって内径が徐々に小さくなるチャンバ24を有し、上流側の空調ダクト2からチャンバ24内に導入された空気を螺旋状の経路で下方に誘導し、チャンバ24の下部で反転上昇させることで、チャンバ24の上部に設けられたチャンバ出口24aから下流側の空調ダクト2に渦流を排出する構成とすることができる。チャンバ24の下部には、塵や埃等の微粒子を回収する回収部22が設けられる。乱流発生部4では、乱流発生部4を設けることによる圧力損失をできるだけ小さくすることが求められるが、乱流発生部4を図6(c)に示すようなサイクロン式集塵機で構成することで、圧力損失を非常に小さく維持し、かつ、塵や埃等の微粒子を効率よく回収することが可能である。
【0041】
なお、例えば空調ダクト2内に塵や埃等を回収するフィルタが予め設けられている場合には、回収部22は省略可能である。この場合、例えば、図7(a)に示すように、空調ダクト2の対向する内壁から内方に突出するように複数のバッフル板21を設けるように乱流発生部4を構成とすることもできるし、図7(b)に示すように、空調ダクト2の中央部にバッフル板21を設けて、バッフル板21を周り込む空気の流れをつくることで、乱流を発生させるように乱流発生部4を構成とすることもできる。このように、乱流発生部4の具体的な構造については、適用する空調ダクト2に応じて適宜選択可能である。
【0042】
(変形例)
本実施の形態では、電源供給装置5により電源供給がなされる場合について説明したが、これに限らず、空調ダクト2内の空気の流量が安定しており、かつ流量が比較的多い場合には、図8に示すように、空調ダクト2内の空気の流れにより発電する風力発電機6をさらに備え、その風力発電機6で発電した電力により、触媒活性用光源34及び不活化用光源35を駆動するように構成することもできる。この場合、図8の例のように、風力発電機6を光触媒フィルタカセット33よりも上流側に設けることで、風力発電機6に乱流発生部4としての役割を兼ねさせることも可能である。風力発電機6を備えることにより、電源工事が難しい箇所への設置も可能となる。なお、空気清浄化ユニット32への電源供給はこれに限らず、例えばバッテリを搭載して充電式とするなど、空調ダクト2内に設置される発電機やバッテリ等から直接電源供給を受ける構成とすることもできる。
【0043】
また、本実施の形態では説明を省略したが、空気清浄化部3が、HEPAフィルタ(High Efficiency Particulate Air Filter)等の集塵フィルタを別途備えていてもよい。ただし、集塵フィルタを設けることは圧力損失の増加の原因となるので、圧力損失を低減するという観点からは、物理フィルタを省略することがより望ましいといえる。
【0044】
さらに、本実施の形態では、既存の空調ダクト2への取付けを想定しており、空調ダクト2内の空気の流れを生じさせるファンについては、予め設置されたものを使用することを想定しているが、空調ダクト用空気清浄機1にファンを備えていてもよい。空調ダクト用空気清浄機1がファンを備えることで、空気清浄化部3や乱流発生部4で発生した圧力損失を補うように空気の流れを生じさせることが可能になり、空調ダクト用空気清浄機1を設けることによる既存の空調システムへの影響をより低減することが可能になる。
【0045】
(実施の形態の作用及び効果)
以上説明したように、本実施の形態に係る空調ダクト用空気清浄機1では、光触媒を担持させた光触媒フィルタ332と、光触媒フィルタ332に紫外光を照射し光触媒を活性化させる触媒活性用光源34と、光触媒フィルタ332に触媒活性用光源34よりも短い波長の紫外光を照射し、細菌及びウィルスを不活化させるための不活化用光源35と、を備え、光触媒フィルタ332が、空調ダクト2の延伸方向に対して平行または傾斜して設けられており、光触媒フィルタ332と空調ダクト2の内面との間に、光触媒フィルタ332を通過せずに空気を通過させるバイパス流路37を有している。
【0046】
このように構成することで、脱臭や細菌・ウィルスの不活化の効果を十分に得つつも、空調ダクト用空気清浄機1を空調ダクト2に取付けた際の圧力損失を抑制することが可能になる。その結果、空調ダクト用空気清浄機1を取付けた際の既存の空調システムへの影響を低減することが可能となり、様々なタイプの空調システムに適用可能な汎用性の高い空調ダクト用空気清浄機1を実現できる。
【0047】
(実施の形態のまとめ)
次に、以上説明した実施の形態から把握される技術思想について、実施の形態における符号等を援用して記載する。ただし、以下の記載における各符号等は、特許請求の範囲における構成要素を実施の形態に具体的に示した部材等に限定するものではない。
【0048】
[1]空調ダクト(2)に取付けられる空調ダクト用空気清浄機(1)であって、光触媒を担持させた光触媒フィルタ(332)と、前記光触媒を活性化させる紫外光を前記光触媒フィルタ(332)に照射する触媒活性用光源(34)と、前記光触媒フィルタ(332)に前記触媒活性用光源(34)よりも短い波長の紫外光を照射する不活化用光源(35)と、を備え、前記光触媒フィルタ(332)が、前記空調ダクト(2)の延伸方向に対して平行または傾斜して設けられており、前記光触媒フィルタ(332)と前記空調ダクト(2)の内面との間に、前記光触媒フィルタ(332)を通過せずに空気を通過させるバイパス流路(37)を有する、空調ダクト用空気清浄機(1)。
【0049】
[2]前記光触媒フィルタ(332)は、前記空調ダクト(2)の延伸方向に対して平行に設けられている、[1]に記載の空調ダクト用空気清浄機(1)。
【0050】
[3]前記空調ダクト(2)の延伸方向に対して平行に設けられた複数の前記光触媒フィルタ(332)を有し、前記複数の光触媒フィルタ(33)が、前記空調ダクト(2)の延伸方向に対して垂直方向に並ぶように配置されている、[2]に記載の空調ダクト用空気清浄機(1)。
【0051】
[4]前記光触媒フィルタ(332)よりも上流側の前記空調ダクト(2)に設けられ、前記空調ダクト(2)内に乱流を発生させる乱流発生部(4)をさらに備える、[1]乃至[3]の何れか1項に記載の空調ダクト用空気清浄機(1)。
【0052】
[5]前記空調ダクト(2)内の空気の流れにより発電する風力発電機(6)をさらに備え、前記風力発電機(6)で発電した電力により、前記触媒活性用光源(34)及び前記不活化用光源(35)を駆動するように構成されている、[1]乃至[4]の何れか1項に記載の空調ダクト用空気清浄機(1)。
【0053】
[6]前記光触媒フィルタ(332)に供給される空気の状態を検出するセンサと、前記センサで検出した空気の状態に応じて、前記前記触媒活性用光源(34)及び前記不活化用光源(34)の少なくとも一方の駆動制御を行う光源駆動制御部と、をさらに備えた、[1]乃至[5]の何れか1項に記載の空調ダクト用空気清浄機(1)。
【0054】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。また、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0055】
1…空調ダクト用空気清浄機
2…空調ダクト
3…空気清浄化部
32…空気清浄化ユニット
33…光触媒フィルタカセット
332…光触媒フィルタ
34…触媒活性用光源
34a…発光ダイオード
35…不活化用光源
35a…発光ダイオード
37…バイパス流路
4…乱流発生部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8