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特許7188706ポリアミドコポリマー、調製プロセス、及びそれらから製造される成形部品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】ポリアミドコポリマー、調製プロセス、及びそれらから製造される成形部品
(51)【国際特許分類】
   C08G 69/26 20060101AFI20221206BHJP
   C08L 77/06 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
C08G69/26
C08L77/06
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020515968
(86)(22)【出願日】2018-10-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-01-07
(86)【国際出願番号】 EP2018078618
(87)【国際公開番号】W WO2019077067
(87)【国際公開日】2019-04-25
【審査請求日】2021-05-06
(31)【優先権主張番号】17197524.6
(32)【優先日】2017-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503220392
【氏名又は名称】ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ.
【氏名又は名称原語表記】DSM IP ASSETS B.V.
【住所又は居所原語表記】Het Overloon 1, NL-6411 TE Heerlen,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】ジャンセン, ピム ジェラルド アントン
【審査官】宮内 弘剛
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-505387(JP,A)
【文献】特表2003-528165(JP,A)
【文献】特開2010-077420(JP,A)
【文献】国際公開第2010/001846(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G
C08L
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド形成性モノマーに由来する繰り返し単位からなるポリアミドコポリマーであって、前記ポリアミド形成性モノマーが、
- 55~90モル%の1,6-ヘキサンジアミン(HMDAと称する)及び10~45モル%の、1,2-エチレンジアミン、1,3-トリメチレンジアミン、1,4-テトラメチレンジアミン及び1,5-ペンタメチレンジアミン、又はそれらの組み合わせ(共にC2~C5ジアミンと称する)のうちのいずれか1種であって、前記モル%が、HMDAとC2~C5ジアミンを合わせたモル量に対してであるHMDA及びC2~C5ジアミンと、
- 50~85モル%のテレフタル酸(TPAと称する)及び15~50モル%のイソフタル酸(IPAと称する)であって、前記モル%が、TPAとIPAを合わせたモル量に対してであるTPA及びIPAと、
- 0~10モル%の他のポリアミド形成性モノマーであって、前記モル%が、ポリアミド形成性モノマーの総モル量に対してであるモノマーと
からなるポリアミドコポリマー。
【請求項2】
前記ポリアミドコポリマーが、
- 275~335℃の範囲の融解温度(Tm);及び/又は
- 30~90J/gの範囲の融解エンタルピー(ΔHm);及び/又は
- 110~160℃の範囲のガラス転移温度(Tg)
を有する半結晶性ポリマーであって、
前記融解温度及び前記融解エンタルピーが、ISO-11357-1/3,2011に従ってDSC法により測定され、及び前記ガラス転移温度が、ISO-11357-1/2,2011に従って前記示差走査熱量測定(DSC)法により全て20℃/分の加熱及び冷却速度で測定される請求項1に記載のポリアミドコポリマー。
【請求項3】
前記ポリアミド形成性モノマーが、ポリアミド形成性モノマーの総モル量に対して、0~5モル%の他のポリアミド形成性モノマーを含む請求項1又は2に記載のポリアミドコポリマー。
【請求項4】
前記ポリアミド形成性モノマーが、HMDAとC2~C5ジアミンを合わせたモル量に対して、65~85モル%の1,6-ヘキサンジアミン(HMDA)及び15~35モル%の、1,2-エチレンジアミン、1,3-トリメチレンジアミン、1,4-テトラメチレンジアミン及び1,5-ペンタメチレンジアミン、又はそれらの組み合わせ(C2~C5ジアミン)のうちのいずれか1種を含む請求項1~3のいずれか1項に記載のポリアミドコポリマー。
【請求項5】
前記ポリアミド形成性モノマーが、TPAとIPAを合わせたモル量に対して、60~80モル%のテレフタル酸(TPA)及び20~40モル%のイソフタル酸(IPA)を含む請求項1~4のいずれか1項に記載のポリアミドコポリマー。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載のポリアミドコポリマーを調製する方法であって、溶融混合及びアミド交換ステップ又は溶融重合ステップを備える方法。
【請求項7】
(i)85~100モル%のテレフタル酸(TPAと称される)及び0~15モル%のイソフタル酸(IPAと称される)に由来する繰り返し単位を含む半結晶性半芳香族ポリアミド(A)を提供するステップであって、前記モル%が、TPAとIPAを合わせたモル量に対してであるステップ;
(ii)0~50モル%のテレフタル酸(TPAと称される)及び50~100モル%のイソフタル酸(IPAと称される)に由来する繰り返し単位を含む非晶半芳香族ポリアミド(B)を提供するステップであって、前記モル%が、TPAとIPAを合わせたモル量に対してであるステップ;
(iii)(A)と(B)を溶融混合して、(A)の前記融解温度(Tm)を超える温度(Tmelt)で、(A)と(B)を反応させて前記ポリアミドコポリマーを形成する程度に十分に長い時間、(A)及び(B)を溶融状態で保持するステップ
を備える請求項6に記載の方法。
【請求項8】
(A)と(B)が、90:10~15:85の範囲内の重量比で混合される請求項7に記載の方法。
【請求項9】
(A)と(B)が、85:15~25:75の範囲内の重量比で混合される請求項7に記載の方法。
【請求項10】
(A)と(B)が、80:20~40:60の範囲内の重量比で混合される請求項7に記載の方法。
【請求項11】
成形部品を製造する方法であって、請求項1~5のいずれか1項に記載のポリアミドコポリマー又は請求項1~5のいずれか1項に記載のポリアミドコポリマーを含むポリマー組成物の射出成形又は押出成形を備える方法。
【請求項12】
前記成形部品が、押出成形により製造される請求項11に記載の方法。
【請求項13】
成形部品であって、請求項1~5のいずれか1項に記載のポリアミドコポリマー又は請求項1~5のいずれか1項に記載のポリアミドコポリマーを含むポリマー組成物を含む成形部品。
【請求項14】
前記成形部品が、押出成形により生産される押出成形部品である請求項13に記載の成形部品。
【請求項15】
前記押出成形部品が、テープ、管、又は押出形材である請求項14に記載の成形部品。
【請求項16】
前記押出成形部品が、管である請求項14に記載の成形部品。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、ポリアミドコポリマー、より詳細には半結晶性半芳香族ポリアミドに関する。本発明は、さらに、そのコポリマーを調製するためのプロセス、そのコポリマーからの成形部品を製造するためのプロセス、及びそのコポリマーを含む成形部品に関する。本発明は、詳細には押出成形部品に関する。
【0002】
半結晶性半芳香族ポリアミド、特にPPAとして公知のテレフタル酸をベースとするこれらのポリアミドは、高性能の熱可塑性ポリマーに属する。PPAの重要な特性は、高湿又は乾燥のいずれにしても、高温の自動車用流体及び熱風に曝されるような、高温で攻撃的な条件下に曝される間の強度及び靭性の保持の観点からの高温性能だけでなく、高温での耐薬品性及び機械物性である。PPAは、ガラス転移温度(Tg)により特徴付けられる非晶ドメイン、及び融解温度(Tm)により特徴付けられる結晶ドメインを有する熱可塑性ポリマーである。半結晶性熱可塑性ポリマーでもある脂肪族ポリアミドと比較すると、PPAのTm及びTgは、比較的に高い。PPAの成分の化学的性質並びにPPAの比較的に高いTg及びTmは、PPAの高温での耐薬品性及び機械物性の観点から、より良好な性能に関して説明できる。脂肪族ポリアミドと比較してPPAの不利な点は、通常、融解温度を超えて高温で加工を行うので、最後の部分においてだけでなく、全般において加工がより困難であることである。PPAの融解温度を良好な加工が可能となる程度に十分に低く保持する手段は、一般的に高温での耐薬品性及び/又は機械物性の低下を伴う。通常、そのような手段は、調製のために異なるモノマーの組み合わせを用いることからなり、得られるそれらのPPAは、ポリアミドコポリマーとして典型的である。
【0003】
本発明の目的は、良好な耐薬品性及び良好な加工性能、特に押出において良好である加工性能を有しながら、高温での機械物性において改善されたバランスを有する半結晶性半芳香族ポリアミドコポリマーを提供することである。
【0004】
この目的は、
- 55~90モル%の1,6-ヘキサンジアミン(HMDAと称する)、及び10~45モル%の、1,2-エチレンジアミン、1,3-トリメチレンジアミン、1,4-テトラメチレンジアミン及び1,5-ペンタメチレンジアミン、又はそれらの組み合わせ(C2~C5ジアミンと称する)うちのいずれか1種であって、そのモル%が、HMDAとC2~C5ジアミンを合わせたモル量に対してであるHMDA及びC2~C5ジアミン;
- 50~85モル%のテレフタル酸(TPAと称する)及び15~50モル%のイソフタル酸(IPAと称する)であって、そのモル%が、TPAとIPAを合わせたモル量に対してであるTPA及びIPA;
- 0~10モル%の他のポリアミド形成性モノマーであって、前記モル%が、ポリアミド形成性モノマーの総モル量に対してであるモノマー
からなるポリアミド形成性モノマーに由来する繰り返し単位からなる本発明によるポリアミドコポリマーで達成されている。
【0005】
このポリアミドコポリマーは、ジアミン及びジカルボン酸をベースとするポリアミド形成性モノマーに由来する半結晶性半芳香族ポリアミドコポリマー、又はジアミン、ジカルボン酸及び他のモノマーをベースとするポリアミド形成性モノマーに由来する半結晶性半芳香族ポリアミドコポリマーである。
【0006】
ポリアミドコポリマーに関して、本明細書においては、少なくともジアミン及び二酸モノマーに由来する繰り返し単位を含むポリアミドと理解され、ジアミン及び二酸モノマーは、複数種のジアミン若しくは複数種のジカルボン酸、又は複数種のジアミン若しくは複数種のジカルボン酸の両方を含む。ポリアミドコポリマーも又、コポリイミドと呼ばれる。
【0007】
多数のモノマーの組み合わせが使用されるとしても、融点及び結晶化度が低くなり、本発明によるポリアミドコポリマーは、驚くほど良好な特性を有する。上述のように前記モルパーセントでジアミン及びジカルボン酸をベースとするコポリアミドの効果は、コポリアミドが、加工条件を変え、及び低い押出温度を適用して、より安定した押出プロセスを考慮に入れながら、高い延性、環境応力亀裂に対する非常に良好な抵抗、良好な高温機械物性を有するだけでなく、非常に良好な引張り特性、例えば、高い引張り強さ及び高い破断点伸びも有することである。
【0008】
本発明によるポリアミドコポリマーは、好適にも、以下の熱的特性
- 275~335℃の範囲の融解温度(Tm);及び/又は
- 30~90J/gの範囲の融解エンタルピー(ΔHm);及び/又は
- 110~160℃の範囲のガラス転移温度(Tg)
のうち1つ又は複数を有する。
【0009】
本明細書においては、融解温度は、20℃/分の加熱及び冷却速度で、N雰囲気下、ISO-11357-1/3,2011に従ってDSC法により、予め乾燥したサンプルで測定される。本明細書においては、Tmは、第二加熱サイクルでの最大融解ピークのピーク値から算出されている。
【0010】
本明細書においては、ガラス転移温度(Tg)は、20℃/分の加熱及び冷却速度で、N2雰囲気下、ISO-11357-1/2,2011に従って示差走査熱量測定(DSC)法により、予め乾燥したサンプルで測定される。本明細書においては、Tgは、第二加熱サイクルにおける元の熱曲線の変曲点と対応する元の熱曲線の第一誘導体(温度に関して)のピークでの値から算出されている。
【0011】
本明細書においては、融解エンタルピー(ΔHm)は、20℃/分の加熱及び冷却速度で、N雰囲気下、ISO-11357-1/3,2011に従ってDSC法により、予め乾燥したサンプルで測定される。本明細書においては、ΔHmは、第二加熱サイクルにおける融解ピークの下で表面から算出される。
【0012】
半芳香族ポリアミドに関しては、本明細書においては、芳香族モノマー(つまり、芳香族基又は主鎖を含むモノマー)及び脂肪族モノマー(つまり、脂肪族主鎖を含むモノマー)に由来する繰り返し単位を含むポリアミドと理解される。本明細書においては、芳香族主鎖を含むモノマーは、例えば、芳香族ジカルボン酸、若しくは芳香族ジアミン、若しくはアリールアルキルジアミン、又はそれらのいずれかの組み合わせであってよい。
【0013】
本発明によるポリアミドコポリマーは、ジアミン類1,6-ヘキサンジアミン並びに1,2-エチレンジアミン、1,3-トリメチレンジアミン、1,4-テトラメチレンジアミン及び1,5-ペンタメチレンジアミンのうち1種又は複数種、並びにジカルボン酸、テレフタル酸及びイソフタル酸に主に由来する繰り返し単位を含む。
【0014】
ポリアミドコポリマーは、他のモノマー、つまり1,2-エチレンジアミン、1,3-トリメチレンジアミン、1,4-テトラメチレンジアミン、1,5-ペンタメチレンジアミン、1,6-ヘキサンジアミン、テレフタル酸及びイソフタル酸以外のポリアミド形成性モノマーに由来する繰り返し単位を少量含んでもよい。
【0015】
しかしながら、他のポリアミド形成性モノマーに由来する繰り返し単位の量は、制約されることとなる。他のモノマーは、存在するとしても、ポリアミド形成性モノマーの総モル量に対して0~10モル%、好ましくは0~5モル%そして更により好ましくは0~2.5モル%の範囲で存在する。
【0016】
このように、ポリアミド形成性モノマーは、前記ジアミン、1,2-エチレンジアミン、1,3-トリメチレンジアミン、1,4-テトラメチレンジアミン、1,5-ペンタメチレンジアミン、1,6-ヘキサンジアミン以外の1種、又は複数種のジアミンを含んでよい。さらに、ポリアミド形成性モノマーは、ジアミン及びジカルボン酸以外の1種、又は複数種のモノマーも含んでもよい。
【0017】
上述に従い、ポリアミドコポリマーは、他のジカルボン酸、例えば、4,4’-ビフェニルジカルボン酸又はナフタレンジカルボン酸、又はそれらの混合物に由来する繰り返し単位を含んでもよい。
【0018】
ポリアミドコポリマーは又、或いは代替的に、他のジアミン、例えば、炭素数7の鎖状脂肪族ジアミン、[例えば1,7-ヘプタメチレンジアミン、1,8-オクタメチレンジアミン、1,9-ノナンジアミン、1,10-デカンジアミン、1,11-ウンデカン-ジアミン、1,12-ドデカンジアミン及び1,18-オクタデカンジアミン]、分岐の脂肪族ジアミン[例えば2-メチルペンタメチレンジアミン、2,2,4-トリメチル-ヘキサメチレンジアミン、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、及び2-メチル-1,8-オクタンジアミン]、並びに脂環式ジアミン[例えば1,4-ジアミノシクロヘキサン、4,4’-メチレン-ビス(シクロヘキシルアミン)(PAC)、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノシクロヘキシル-メタン(MAC);3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ジアミノシクロヘキシルメタン;2,2’,3,3’-テトラメチル-4,4’-ジアミノシクロヘキシルメタン;ノルボルナンジアミン;及びイソホロンジアミン(IPD)]に由来する繰り返し単位を含んでよい。
【0019】
ポリアミドコポリマーは又、ジカルボン酸及びジアミン以外のモノマーに由来する繰り返し単位を含んでもよい。一般的には、そのような他のモノマーは、少なくとも1つのアミン官能基及び/又はカルボン酸官能基を伴う。例としては、一官能性カルボン酸、三官能性カルボン酸、一官能性及び三官能性アミン、環状ラクタム及びα,ω-アミノ酸、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0020】
ポリアミド形成性モノマーが、HMDA、C2~C5ジアミン、TPA及びIPA以外のモノマーを1種又は複数種含む場合においては、そのような他のモノマーは、少なくとも50モル%、好ましくは75~100モル%の鎖状脂肪族C7~C18ジアミンを含むのが好ましい。CXジアミンに関しては、本明細書においては、炭素数X(ここでXは整数)のジアミンと理解される。例えば、Xが12である場合、そのジアミンは、1,12-ドデカンジアミンである。
【0021】
好ましい一実施形態においては、ポリアミド形成性モノマーは、1,6-ヘキサンジアミン(HMDA)を65~85モル%、及び1,2-エチレンジアミン、1,3-トリメチレンジアミン、1,4-テトラメチレンジアミン及び1,5-ペンタメチレンジアミン、又はそれらの組み合わせ(C2~C5ジアミン)のうちのいずれか1種を15~35モル%含む。より好ましくは、これらのジアミンは、1,4-テトラメチレンジアミン及び1,5-ペンタメチレンジアミン、又はそれらの組み合わせのうちの1種を10~45モル%含む。本明細書においては、モル%は、HMDAとC2~C5ジアミンを合わせたモル量に対してである。
【0022】
別の好ましい実施形態においては、ポリアミド形成性モノマーは、60~80モル%のテレフタル酸(TPA)及び20~40モル%のイソフタル酸(IPA)を含む。本明細書においては、モル%は、TPAとIPAを合わせたモル量に対してである。
【0023】
本発明による半結晶性半芳香族ポリアミドコポリマーは、好適にも少なくとも70、好ましくは少なくとも80及びより好ましくは少なくとも90の粘度数(VN)を有する。VNは、本明細書においては、ISO307、第4版に従った方法により、25℃、ポリマー濃度0.005g/mlで、96%硫酸中で測定される。より高いVNの利点は、コポリマー及びそれらから作られる製品が、より良好な機械物性と、環境応力要因に対する更により良好な耐性を有することである。粘度数は、200又は更にそれ以上であることがあるが、好ましくは多くとも160、より好ましくは100~150の範囲である。この範囲において、コポリマーは、高温特性と加工性の最適の組み合わせを有する。
【0024】
本発明によるポリアミドコポリマーは、熱可塑性の半結晶性半芳香族ポリアミドを調製するのに好適である任意のプロセスにより、調製できる。ポリアミドコポリマーは、溶融プロセスにより、又は第一ステップにおいて出発モノマー若しくはそれらの塩からの溶融重合によりポリアミドオリゴマーを調製し、固相後縮合においてポリアミドオリゴマーをさらに重合してポリアミドコポリマーを生成するステップが続く複合プロセスにより、調製されるのが好適である。
【0025】
別の好ましいプロセスにおいては、ポリアミドコポリマーは、
(i)85~100モル%のテレフタル酸(TPAと称される)及び0~15モル%のイソフタル酸(IPAと称される)に由来する繰り返し単位を含む半結晶性半芳香族ポリアミド(A)を提供するステップであって、モル%が、TPAとIPAを合わせたモル量に対してであるステップ;
(ii)0~50モル%のテレフタル酸(TPAと称する)及び50~100モル%のイソフタル酸(IPAと称する)に由来する繰り返し単位を含む非晶半芳香族ポリアミド(B)を提供するステップであって、モル%が、TPA及びIPAを合わせたモルに対してであるステップ;並びに
(iii)(A)と(B)を溶融混合して、(A)の融解温度(Tm)を超える温度(Tmelt)で、(A)と(B)を反応させてポリアミドコポリマーを形成する程度に十分に長い時間、(A)及び(B)を溶融状態で保持するステップ
を備えるプロセスのステップにより調製される。
【0026】
本明細書においては、(A)は、半結晶性半芳香族ポリアミドを調製するのに好適な任意のプロセスにより、生成できる。(A)は、(A)の融解温度よりも低い重合温度を適用する直接の固相重合により、調製されるのが好ましい。(B)は、例えば、(B)のガラス転移温度を超える重合温度を適用する溶融重合により、生成できる。コポリマーは、コポリマーの融解温度(Tm)を超える溶融温度(Tmelt)を適用して、(A)と(B)の溶融混合及びアミド交換により、調製できる。このプロセスの利点は、コポリマーが他の溶融プロセスと比べて、コポリマーの溶融温度を超える温度に相対的に非常に短い時間曝されるような手法で生成されること、及びコポリマーが非常に効率的な手法で生成されることである。そのようなアミド交換プロセスから得られるコポリマーの生成は、生成物において測定した融解温度の低下から容易に推定できる。
【0027】
本明細書においては、(A)及び(B)は、広範囲にわたる様々な比率で混合できるが、但し、モノマー繰り返し単位の組み合わせは、本発明のポリアミドコポリマーに対して定められた範囲内にそれらのモル量が含まれることを条件とする。(A)と(B)が、90:10~15:85、好ましくは85:15~25:75、より好ましくは80:20~40:60の範囲内の重量比で混合されるのが好適である。
【0028】
好適な非晶半芳香族ポリアミド(B)は、1,6-ヘキサンジアミン(HMDA)及びイソフタル酸(IPA)に由来する繰り返し単位を適切に豊富に含む。同様に、半結晶性半芳香族ポリアミド(A)は、C2~C5ジアミンとテレフタル酸(TPA)の両方に由来する繰り返し単位を豊富に含む。
【0029】
前記プロセスの好ましい一実施形態においては、半結晶性半芳香族ポリアミド(A)は、主にジアミン及びジカルボン酸を含むポリアミド形成性モノマーに主に由来する繰り返し単位からなり、
- ジアミンは、1,6-ヘキサンジアミン(HMDA)を40~80モル%と、1,2-エチレンジアミン、1,3-トリメチレンジアミン、1,4-テトラメチレンジアミン及び1,5-ペンタメチレンジアミン、又はそれらの組み合わせ(C2~C5ジアミン)のうちのいずれか1種を60~20モル%含み、そのモル%は、HMDAとC2~C5ジアミンを合わせたモル量に対してである;並びに
- ジカルボン酸は、90~100モル%のテレフタル酸及び10~0モル%のイソフタル酸を含み、そのモル%は、TPAとIPAを合わせたモル量に対してである;
- ポリアミド形成性モノマーは、1,2-エチレンジアミン、1,3-トリメチレンジアミン、1,4-テトラメチレンジアミン、1,5-ペンタメチレンジアミン1,6-ヘキサンジアミン、テレフタル酸及びイソフタル酸以外のモノマーを、ポリアミド形成性モノマーの総モル量に対して0~10モル%含む。
【0030】
前記プロセスの別の好ましい実施形態においては、非晶半芳香族ポリアミド(B)は、主にジアミン及びジカルボン酸を含むポリアミド形成性モノマーに由来する繰り返し単位からなり、
- ジアミンは、70~100モル%の1,6-ヘキサンジアミン及び30~0モル%の他のジアミンからなり、そのモル%は、ジアミンの総モル量に対してであり;並びに
- ジカルボン酸は、20~45モル%のテレフタル酸及び55~80モル%のイソフタル酸を含み、ジカルボン酸のモルパーセント(モル%)は、ジカルボン酸の総モル量に対してであり;
- 並びにポリアミド形成性モノマーは、ジアミン、テレフタル酸及びイソフタル酸以外のモノマーを、ポリアミド形成性モノマーの総モル量に対して、0~5モル%含む。
【0031】
さらに好ましい一実施形態においては、上の2つの好ましい実施形態が、組み合わせられる。
【0032】
本発明によるコポリマーは、それ自体で又は組み合わせの一部としてのどちらかで、成形品を製造するための様々な成形プロセスにおいて、使用できる。コポリマーは、例えば、押出成形によって生産される押出成形部品だけでなく、射出成形により生産される射出成形品にも使用できる。押出成形部品が、テープ、管、又は押出形材であるのが好適であり、好ましくは管である。
【0033】
本発明は又、それらから製造される成形部品だけでなく、半結晶性半芳香族ポリアミドコポリマー及び少なくとも1種の他の成分を含むポリマー組成物に関する。成形部品は、例えば、押出成形部品だけでなく射出成形品であってもよい。
【0034】
本発明は、以下の実施例及び比較例でさらに例証される。
【0035】
[出発材料]
sc-PPA-1 PA 6T/4T半結晶性半芳香族(60モル%6T/40モル%4T)、100のVN、Tg 150℃及びTm 337℃、ex DSM
sc-PPA-2 PA 6T/4T半結晶性半芳香族(60モル%6T/40モル%4T)、80のVN、Tg 151℃及びTm 338℃、ex DSM
sc-PPA-3 PA 6T/4T/66(比率50/34/16モル%)の、325℃の融解温度、VN80ml/g、ex DSMを有する半結晶性半芳香族コポリマー
am-PPA PA 6I/6T非晶半芳香族コポリアミド50モル%の1,6-ヘキサンジアミン、35モル%のイソフタル酸及び15モル%のテレフタル酸)、Tg 127℃、ex DSM。
【0036】
[実施例1及び2(CE-1及び2)並びに比較例A及びB(CE-A及びCE-C)用のポリマーの調製]
350rpmで作動し及び360℃の壁面設定温度を用いるBerstorff ZE25/48UTX(共回転二軸押出機)上で、ポリマーsc-PPA-1、sc-PPA-2及びam-PPAを所望の比率で溶融混合することにより、ポリアミドを調製した。全てのポリマー材料を押出機の供給口に供給した。使用した設定は、ダイヘッドを出る溶融物の温度、およそ370~380℃をもたらした。溶融ポリマーの押出機での平均滞留時間は、約120秒であった。
【0037】
[試験方法]
[粘度数(VN)]
ISO307、第4版に従った方法により、25℃、ポリマー濃度0.005g/mlで、96%硫酸中でVNを測定した。
【0038】
[ISO-11357-1/3,(2011)に従うDSCによる融解温度の測定]
20℃/分の加熱及び冷却速度を用いて、N2雰囲気下、Mettler Toledo Star System(DSC)で、融解温度(Tm)の測定を実施した。測定には、約5mgの予め乾燥した粉末状のポリマーのサンプルを用いた。高真空で、つまり50mbar未満及び105℃で、16時間、予めの乾燥を行った。加熱速度20℃/分でサンプルを0℃から360℃まで加熱し、直ちに冷却速度20℃/分で0℃まで冷却し、続いて20℃/分で360℃まで再加熱した。融解温度Tmに関して、第二加熱サイクルにおける融解ピークのピーク値を求めた。融解エンタルピーΔHmに関して、第二加熱サイクルにおける融解ピークの融解エンタルピーを求めた。
【0039】
[DSC(ISO-11357-2(2013)に従って)によるガラス転移温度]
20℃/分の加熱及び冷却速度を用いて、N2雰囲気下、Tmに関して上述した方法と同じ方法でMettler Toledo Star System(DSC)で、ガラス転移温度(Tg)の測定を行った。本明細書においては、第二加熱サイクルに対する元の熱曲線の変曲点と対応する元の熱曲線の第一誘導体(時間に関して)のピークでの温度として、Tgを求めた。
【0040】
[機械物性]
ISO527-1/2:2012に従った引張試験において、延伸速度50mm/分、温度23℃で、機械物性(引張モジュラス[MPa]、引張り強さ[MPa]、破断点伸び[%])を測定した。試験に関して、527-タイプ-1Aに適合する試験棒を使用し、Tm+15℃バレル及びノズル設定温度並びに工具温度120℃で、成形した。
【0041】
【表1】
【0042】
本発明による実施例のコポリマーは、比較例の機械物性よりもかなり良好な機械物性(引張り強さ及び破断点伸び)を示す。
【0043】
[押出]
標準加工条件を適用する溶融押出機において、実施例及び比較例のコポリマーを溶融押出して内径約4mm及び外径約5mmを有する管にした。実施例I及びIIのコポリマーは、より安定した加工挙動を示し、その結果として、比較例A~Eのコポリマーの品質よりも良好な品質の管をもたらした。