(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】ワンウェイクラッチおよびワンウェイクラッチ付き回転ダンパ装置
(51)【国際特許分類】
F16D 41/02 20060101AFI20221206BHJP
F16F 9/12 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
F16D41/02 Z
F16F9/12
(21)【出願番号】P 2018129868
(22)【出願日】2018-07-09
【審査請求日】2021-06-28
(73)【特許権者】
【識別番号】592264101
【氏名又は名称】下西技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002217
【氏名又は名称】弁理士法人矢野内外国特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 禎治
【審査官】日下部 由泰
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第2905294(US,A)
【文献】特開平7-180761(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 41/00-47/06
F16F 9/00- 9/58
F16H 51/00-55/30
F16H 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸心を中心として回転可能な回転軸と、
前記回転軸に前記軸心方向と直交する径方向へスライド可能に支持されるとともに、前記軸心を中心として前記回転軸と一体的に回転可能であり、スライド方向の両端部に径方向外側へ突出する爪部を有するスライド部材と、
前記回転軸に前記軸心を中心として相対的に回転可能に支持され前記スライド部材を収容する円筒状部材と、前記円筒状部材の外周面から径方向外側に突出する複数の外歯と、前記円筒状部材の内周面から径方向内側に突出する複数の内歯とを有するギア部材と、
を備え、
前記回転軸の外周面、および前記ギア部材における前記円筒状部材の内周面の一方に溝部が形成され、
前記回転軸の外周面、および前記ギア部材における前記円筒状部材の内周面の他方に前記溝部と嵌合可能な突起部が形成され、
前記回転軸は、前記回転軸に形成された前記溝部または前記突起部から前記軸心方向へ離れた位置において、前記円筒状部材の内周面に嵌合する嵌合部を有し、
前記溝部と前記突起部とが嵌合するとともに、前記嵌合部が前記円筒状部材の内周面に嵌合することにより、前記ギア部材が前記回転軸に支持され、
前記溝部又は前記突起部と前記嵌合部とは、前記軸心方向において前記スライド部材を挟むように配置され、
一方の前記爪部の先端と他方の前記爪部の先端との間の寸法が、前記複数の内歯の先端を通り前記軸心を中心とする円の径よりも大きく形成され、
前記爪部は、前記ギア部材が前記回転軸に対して一側へ回転することにより前記内歯に当接する退避面と、前記ギア部材が前記回転軸に対して他側へ回転することにより前記内歯に当接する係合面とを有し、
前記ギア部材が一側へ回転する際に前記内歯と前記退避面とが当接すると、前記スライド部材がスライド方向にスライドして前記爪部が前記内歯から退避して前記ギア部材が前記回転軸とは独立して回転し、前記ギア部材が他側へ回転する際に前記内歯と前記係合面とが当接すると、前記内歯と前記係合面とが係合して前記ギア部材と前記回転軸とが一体的に回転する、
ことを特徴とするワンウェイクラッチ。
【請求項2】
前記回転軸は、径方向に貫通し、前記スライド部材がスライド可能に挿通される挿通孔を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載のワンウェイクラッチ。
【請求項3】
前記回転軸は、前記回転軸の先端部から前記軸心方向に沿って形成されるスリットにより周方向に分割された複数の軸片部を有し、
前記溝部は、前記軸片部の外周面に形成されている、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のワンウェイクラッチ。
【請求項4】
前記退避面は、径方向外側へいくに従って前記ギア部材の一側への回転方向における下流側に傾斜する傾斜面に形成され、
前記係合面は、前記ギア部材の他側への回転方向と直交する面、または径方向外側へいくに従って前記ギア部材の他側への回転方向における上流側に傾斜する傾斜面に形成される、
ことを特徴とする請求項1~請求項3の何れか一項に記載のワンウェイクラッチ。
【請求項5】
前記内歯は、前記ギア部材が前記回転軸に対して一側へ回転することにより前記爪部と当接する第1面と、前記ギア部材が前記回転軸に対して他側へ回転することにより前記爪部と当接する第2面とを有し、
前記第1面は、径方向外側へいくに従って前記ギア部材の一側への回転方向における下流側に傾斜する傾斜面に形成され、
前記第2面は、径方向外側へいくに従って前記ギア部材の他側への回転方向における上流側に傾斜する傾斜面に形成される、
ことを特徴とする請求項1~請求項4の何れか一項に記載のワンウェイクラッチ。
【請求項6】
請求項1~請求項5の何れか一項に記載された前記ワンウェイクラッチと、
前記ワンウェイクラッチの前記回転軸が挿入されるハウジングと、
前記ハウジング内に収容され、前記軸心を中心として前記回転軸と一体的に回転可能なロータ翼と、
前記ハウジング内に封入され前記ロータ翼に回転抵抗を付与する粘性流体と、
を備える、
ことを特徴とするワンウェイクラッチ付き回転ダンパ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワンウェイクラッチおよびワンウェイクラッチ付き回転ダンパ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば扉等の開閉部に設けられ、開方向又は閉方向の一方に付勢された扉等をゆっくりと動作させて衝撃を緩和するために用いられる回転ダンパが知られている。このような回転ダンパにおいては、一方向の回転のみに対して減衰力を発生させるために、駆動力が入力される歯車を有したワンウェイクラッチと組み合わせてワンウェイクラッチ付き回転ダンパ装置が構成されることがある。
【0003】
例えば、特許文献1に記載されるワンウェイクラッチ付き回転ダンパ装置1は、回転ダンパ2のロータ軸29に結合され、ロータ軸29と一体となって回転するインナ部材35と、インナ部材35を相対回転可能に収容し、外周面に外歯車64が形成されるアウタ部材36と、インナ部材35とアウタ部材36との間に介装された一対の遊星ギヤ37とを有するワンウェイクラッチ3が、回転ダンパ2と組み合わされている。
【0004】
このワンウェイクラッチ3においては、遊星ギヤは37アウタ部材36の内周面に形成される内歯車63と噛み合うとともに、インナ部材35に形成される凹部47に収容されている。インナ部材35の凹部47は、遊星ギヤ37よりもインナ部材35の回転方向一側に配置され、インナ部材35の径方向外側へ延出する第1壁45と、遊星ギヤ37よりもインナ部材35の回転方向他側に配置され、インナ部材35の径方向外側への延出長さが第1壁45の半分程度であり延出した端部に角部を有した第2壁46とを備えている。
【0005】
そして、アウタ部材36がインナ部材35に対して一側(正方向)に回転する際には、アウタ部材36の内歯車63によって回転させられる遊星ギヤ37が第1壁45に当接し、第1壁45上を摺接しつつ空転する。この場合、第1壁45は遊星ギヤ37の歯先が当接する位置よりも径方向外側に延出しているため、遊星ギヤ37は第1壁45の外側端部と噛み合うことがなく、第1壁45上を空転する。これにより、アウタ部材36が回転してもインナ部材35は回転しない。
【0006】
一方、アウタ部材36がインナ部材35に対して他側(負方向)に回転する際には、アウタ部材36の内歯車63によって回転させられる遊星ギヤ37が第2壁46側へ移動して第2壁46の角部と噛み合い、回転不能となる。これにより、インナ部材35が遊星ギヤ37を介してアウタ部材36に係合し、アウタ部材36と一体に回転する。
【0007】
このように構成されるワンウェイクラッチ3においては、インナ部材35の支持軸42がアウタ部材36の貫通孔66に摺接しつつ挿通されるとともに、インナ部材35の突条52がアウタ部材36の環状溝65に嵌合することで、アウタ部材36がインナ部材35に対して周方向へ相対的に回転可能に支持されている。つまり、アウタ部材36はインナ部材35を介してロータ軸29に支持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前述のように、ワンウェイクラッチ3においては、アウタ部材36はインナ部材35を介してロータ軸29に支持されているため、アウタ部材36のロータ軸29に対する支持構造が複雑となっていた。
また、アウタ部材36のロータ軸29に対する支持構造を簡単にするために、アウタ部材36をロータ軸29により直接支持しようとした場合、アウタ部材36はロータ軸29に嵌合させた貫通孔66の部分のみでロータ軸29に支持されることとなる。これにより、アウタ部材36のロータ軸29の軸心に対する振れが大きくなって、ワンウェイクラッチ3の円滑な動作が妨げられるおそれがある。
【0010】
そこで、本発明においては、ワンウェイクラッチの歯車を簡単な構造で軸により支持しつつ、歯車の軸心に対する振れを抑制することができる、ワンウェイクラッチおよびワンウェイクラッチ付き回転ダンパ装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するワンウェイクラッチおよびワンウェイクラッチ付き回転ダンパ装置は、以下の特徴を有する。
即ち、ワンウェイクラッチ付き回転ダンパ装置が備えるワンウェイクラッチは、軸心を中心として回転可能な回転軸と、前記回転軸に前記軸心方向と直交する径方向へスライド可能に支持されるとともに、前記軸心を中心として前記回転軸と一体的に回転可能であり、スライド方向の両端部に径方向外側へ突出する爪部を有するスライド部材と、前記回転軸に前記軸心を中心として相対的に回転可能に支持され前記スライド部材を収容する円筒状部材と、前記円筒状部材の外周面から径方向外側に突出する複数の外歯と、前記円筒状部材の内周面から径方向内側に突出する複数の内歯とを有するギア部材と、を備え、前記回転軸の外周面、および前記ギア部材における前記円筒状部材の内周面の一方に溝部が形成され、前記回転軸の外周面、および前記ギア部材における前記円筒状部材の内周面の他方に前記溝部と嵌合可能な突起部が形成され、前記回転軸は、前記回転軸に形成された前記溝部または前記突起部から前記軸心方向へ離れた位置において、前記円筒状部材の内周面に嵌合する嵌合部を有し、前記溝部と前記突起部とが嵌合するとともに、前記嵌合部が前記円筒状部材の内周面に嵌合することにより、前記ギア部材が前記回転軸に支持され、前記溝部又は前記突起部と前記嵌合部とは、前記軸心方向において前記スライド部材を挟むように配置され、一方の前記爪部の先端と他方の前記爪部の先端との間の寸法が、前記複数の内歯の先端を通り前記軸心を中心とする円の径よりも大きく形成され、前記爪部は、前記ギア部材が前記回転軸に対して一側へ回転することにより前記内歯に当接する退避面と、前記ギア部材が前記回転軸に対して他側へ回転することにより前記内歯に当接する係合面とを有し、前記ギア部材が一側へ回転する際に前記内歯と前記退避面とが当接すると、前記スライド部材がスライド方向にスライドして前記爪部が前記内歯から退避して前記ギア部材が前記回転軸とは独立して回転し、前記ギア部材が他側へ回転する際に前記内歯と前記係合面とが当接すると、前記内歯と前記係合面とが係合して前記ギア部材と前記回転軸とが一体的に回転する。
これにより、ギア部材を簡単な構造で回転軸により支持しつつ、回転軸の軸心に対するギア部材の振れを抑制することができる。
【0012】
また、前記回転軸は、径方向に貫通し、前記スライド部材がスライド可能に挿通される挿通孔を有する。
これにより、簡単な構成でスライド部材を支持することが可能となる。
【0013】
また、前記回転軸は、前記回転軸の先端部から前記軸心方向に沿って形成されるスリットにより周方向に分割された複数の軸片部を有し、前記溝部は、前記軸片部の外周面に形成されている。
これにより、ギア部材の突起部を回転軸の溝部に嵌合させる際に軸片部が撓むこととなり、嵌合作業を容易にすることが可能となる。
【0014】
また、前記退避面は、径方向外側へいくに従って前記ギア部材の一側への回転方向における下流側に傾斜する傾斜面に形成され、前記係合面は、前記ギア部材の他側への回転方向と直交する面、または径方向外側へいくに従って前記ギア部材の他側への回転方向における上流側に傾斜する傾斜面に形成される。
これにより、ギア部材の一側への回転に伴って、爪部が内歯から円滑に退避することが可能となる。また、ギア部材が回転軸に対して他側へ回転した際に、内歯と爪部との係合状態を保持し易くなる。
【0015】
また、前記内歯は、前記ギア部材が前記回転軸に対して一側へ回転することにより前記爪部と当接する第1面と、前記ギア部材が前記回転軸に対して他側へ回転することにより前記爪部と当接する第2面とを有し、前記第1面は、径方向外側へいくに従って前記ギア部材の一側への回転方向における下流側に傾斜する傾斜面に形成され、前記第2面は、径方向外側へいくに従って前記ギア部材の他側への回転方向における上流側に傾斜する傾斜面に形成される。
これにより、ギア部材が一側へ回転する際に、爪部の内歯からの退避をさらに円滑にすることが可能となる。また、ギア部材が回転軸に対して他側へ回転した際に、内歯と爪部とが確実に係合可能となる。
【0016】
また、ワンウェイクラッチ付き回転ダンパ装置は、請求項1~請求項6の何れか一項に記載された前記ワンウェイクラッチと、前記ワンウェイクラッチの前記回転軸が挿入されるハウジングと、前記ハウジング内に収容され、前記軸心を中心として前記回転軸と一体的に回転可能なロータ翼と、前記ハウジング内に封入され前記ロータ翼に回転抵抗を付与する粘性流体と、を備える。
これにより、ギア部材の外歯の数を少なく構成することができる。従って、回転軸に回転力を伝達するギアを外歯に噛合させた際に、回転軸の回転数を高めてワンウェイクラッチ付き回転ダンパ装置において発生する回転軸に対する回転抵抗を大きくすることができ、ワンウェイクラッチに接続されたワンウェイクラッチ付き回転ダンパ装置の使い勝手を向上させることが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ギア部材を簡単な構造で回転軸により支持しつつ、回転軸の軸心に対するギア部材の振れを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】ワンウェイクラッチ付き回転ダンパ装置を示す斜視図である。
【
図2】ワンウェイクラッチ付き回転ダンパ装置を示す平面図である。
【
図3】ワンウェイクラッチ付き回転ダンパ装置を示す分解斜視図である。
【
図4】ワンウェイクラッチ付き回転ダンパ装置を示す側面断面図である。
【
図5】(a)はロータ軸を示す側面断面図であり、(b)はロータ軸を示す正面図である。
【
図6】底面側から見たギア部材を示す斜視図である。
【
図7】ギア部材がロータ軸に対して一側へ回転する場合におけるワンウェイクラッチの動作を示す図であり、(a)は一方の爪部が円Cよりも径方向外側に位置し、一方の爪部に内歯が当接した状態を示す図、(b)は一方の爪部が内歯に押圧されて径方向内側へ退避した状態を示す図である。
【
図8】ギア部材がロータ軸に対して一側へ回転する場合におけるワンウェイクラッチの動作を示す図であり、円Cよりも径方向外側に位置する他方の爪部が内歯に当接した状態を示す図である。
【
図9】ギア部材がロータ軸に対して他側へ回転する場合におけるワンウェイクラッチの動作を示す図であり、(a)は一方の爪部が円Cよりも径方向外側に位置した状態を示す図であり、(b)は一方の爪部に内歯が係合した状態を示す図である。
【
図10】ギア部材がロータ軸に対して他側へ回転する場合におけるワンウェイクラッチの動作を示す図であり、一方の爪部と内歯が係合した後にロータ軸とギア部材とが一体的に回転する状態を示す図である。
【
図11】スライド部材の第2実施形態を示す斜視図である。
【
図12】第2実施形態に係るスライド部材を備えたワンウェイクラッチを示す底面断面図である。
【
図13】スライド部材の第3実施形態を示す斜視図である。
【
図14】第3実施形態に係るスライド部材を備えたワンウェイクラッチを示す底面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明を実施するための形態を、添付の図面を用いて説明する。
【0020】
[ワンウェイクラッチ付き回転ダンパ装置]
図1~
図4に示すワンウェイクラッチ付き回転ダンパ装置1(以降、単に「回転ダンパ装置1」という)は、本発明に係るワンウェイクラッチ付き回転ダンパ装置の一実施形態である。
回転ダンパ装置1は、例えば小型プリンタ等のOA機器の本体に回動可能に連結される開閉扉の開閉部に設けられ、開閉扉が開方向または閉方向の一方に回動する際に減衰力を発生するように用いられる。回転ダンパ装置1は、これに限らず、第1部材に回動可能に連結される第2部材の回動部に設けることができる。
【0021】
回転ダンパ装置1は、ハウジング10と、ロータ翼25と、ロータ軸20と、スライド部材30と、ギア部材50と、粘性流体60とを備えている。
回転ダンパ装置1においては、ロータ軸20と、スライド部材30と、ギア部材50とでワンウェイクラッチ2が構成されている。つまり、回転ダンパ装置1は、ロータ軸20に回転抵抗を付与する回転ダンパにワンウェイクラッチ2を接続することにより構成されている。ロータ軸20は、軸心を中心として回転可能な回転軸の一例である。
【0022】
ハウジング10は、ハウジング本体10Aと蓋体10Bとを有している。
ハウジング本体10Aは有底の円筒形状に形成されており、底面11を有している。底面11の中心部には、軸心P方向に沿ってハウジング本体10A内に突出する円柱状の支持軸12が形成されている。ハウジング本体10Aの軸心P方向における底面11側とは反対側の端部には、開口部13が形成されている。
蓋体10Bはハウジング本体10Aの開口部13を閉塞している。蓋体10Bの中心部には、軸心P方向に貫通する円形状の貫通孔14が形成されている。
【0023】
ロータ翼25は略円板状に形成されており、ハウジング本体10A内に軸心Pを中心として回転可能に収容されている。ロータ翼25の中心部における底面11と対向する側の面には軸受孔23が形成されている。軸受孔23はハウジング本体10Aの支持軸12に対して嵌合可能に構成されている。軸受孔23が支持軸12に回転可能に嵌合することで、ロータ20がハウジング10に回転可能に支持される。
【0024】
ロータ軸20は、ロータ翼25の中心部から軸心P方向の一側に向けて延出し、軸心Pを中心として回転可能に構成されている。ロータ軸20は、ロータ翼25と一体的に回転可能に構成されている。ロータ軸20は、ハウジング10の内部から蓋体10Bの貫通孔14を通じて、ハウジング10の外部に延出している。
【0025】
ロータ軸20は、ハウジング10内に挿入されている部分と、ハウジング10の外部に突出している部分とを有している。ロータ軸20におけるハウジング10の外部に突出している部分は延出軸21である。延出軸21は、外周面が二面取りされた略円柱形状に形成されており、一対の面取り部211を有している。一対の面取り部211は平面状に形成されており、互いに平行に配置されている。
【0026】
図3~
図5に示すように、延出軸21には、延出軸21を径方向に貫通する挿通孔212が形成されている。挿通孔212は、一対の面取り部211と面取り部211との間を連通する方向に形成されている。
【0027】
延出軸21は、延出軸21の先端部(軸心P方向におけるハウジング10側とは反対側の端部)から軸心P方向におけるハウジング10側へ向かって形成されるスリット213により周方向に分割された複数の軸片部21Aを有している。つまり、延出軸21の先端部は、スリット213によって複数の軸片部21Aに分割されている。
【0028】
本実施形態においては、スリット213は径方向において挿通孔212の形成方向と平行に延出しており、延出軸21の先端部を2つの軸片部21Aに分割している。但し、延出軸21の先端部は、3以上の軸片部21Aに分割することも可能である。
【0029】
延出軸21における軸片部21Aの外周面には、径方向内側へ向かって凹陥する溝部214が形成されている。溝部214は、周方向に沿って延出している。本実施形態においては、溝部214は、軸片部21Aの周方向における全域にわたって形成されている。
【0030】
ロータ軸20における延出軸21のハウジング10側の端部には、嵌合部22が形成されている。嵌合部22は延出軸21よりも大径に形成されている。嵌合部22は、ハウジング10の外部に露出している。
【0031】
粘性流体60は、ハウジング10内に封入されている。粘性流体60は、ハウジング本体10A内に収容され軸心Pを中心として回転するロータ翼25、およびロータ翼25と一体的に回転するロータ軸20に回転抵抗を付与する。
粘性流体60は、例えばシリコーンオイル等の粘性を有した流体にて構成されている。ロータ翼25に付与する回転抵抗の大きさは、粘性流体60の粘度やロータ翼25の形状を適宜変更することで、調整することが可能である。
ロータ軸20と蓋体10Bとの間には、O-リングなどのシール部材15が介装されており、ロータ軸20と蓋体10Bとの間から粘性流体60が漏出することを防いでいる。
【0032】
図1~
図4、
図6に示すように、ギア部材50は、軸心Pを中心として一側および一側とは反対側の他側へ回転可能に構成されており、ギア本体51と、外歯ギア52と、内歯53とを有している。
ギア本体51は、ロータ軸20に軸心Pを中心として相対的に回転可能に支持される円筒状部材により形成されている。外歯ギア52は、ギア本体51の外周面から径方向外側に突出し、周方向に沿って配置される複数の外歯52aを有している。内歯53は、ギア本体51の内周面から径方向内側に突出しており、周方向に沿って複数設けられている。
【0033】
ギア本体51は、内歯53が形成され、スライド部材30を収容する収容部51aと、収容部51aよりも小径に形成されロータ軸20に支持される支持部51bとを有している。収容部51aは、軸心P方向において支持部51bよりもハウジング10側に配置されている。ギア本体51の支持部51bの内径と、延出軸21の外径とは略同じ寸法に形成されており、支持部51bに延出軸21を挿入可能となっている。
【0034】
支持部51bの内周面には、径方向内側に向かって突出する突起部55が形成されている。突起部55は、周方向に沿って延出している。本実施形態においては、突起部55は、支持部51bの内周面における周方向の全域にわたって形成されている。
突起部55はロータ軸20の溝部214と嵌合可能に構成されており、支持部51bに延出軸21を挿入して突起部55と溝部214とを嵌合させることによって、ギア部材50がロータ軸20に支持される。
【0035】
本実施形態においては、ロータ軸20に溝部214を形成するとともに、ギア本体51の支持部51bに突起部55を形成しているが、ロータ軸20に径方向外側に向かって突出する突起部を形成するとともに、ギア本体51の支持部51bに径方向外側へ向かって凹陥する溝部を形成して、突起部と溝部とを嵌合させることにより、ギア部材50をロータ軸20に支持させることもできる。
【0036】
ギア本体51における収容部51aの内径と、ロータ軸20の嵌合部22の外径とは略同じ寸法に形成されており、収容部51aのハウジング10側端部と、ロータ軸20の嵌合部22とは嵌合可能に構成されている。収容部51aのハウジング10側端部は、ロータ軸20の嵌合部22が嵌合される、被嵌合部511として構成されている。
ワンウェイクラッチ2では、ギア部材50の支持部51bにおける突起部55とロータ軸20の溝部214とが嵌合した状態において、ギア部材50の収容部51aにおけるハウジング10側端部とロータ軸20の嵌合部22とが嵌合している。
【0037】
このように、ロータ軸20は、溝部214および突起部55から軸心P方向のハウジング10側へ離れた位置において、収容部51aの被嵌合部511に嵌合する嵌合部22を有している。そして、溝部214と嵌合する突起部55が形成された部分に加えて、嵌合部22と嵌合する被嵌合部511が構成される部分においても、ギア部材50がロータ軸20に支持されている。
【0038】
つまり、ギア部材50は、軸心P方向において互いに離れた突起部55の部分および被嵌合部511の部分といった複数の部分でロータ軸20に支持されている。
これにより、ギア部材50を簡単な構造でロータ軸20により支持しつつ、ロータ軸20に支持されたギア部材50の軸心Pに対する振れを抑制することが可能となっている。
【0039】
内歯53は、ギア部材50の一側への回転方向における下流側に配置される第1面53aと、ギア部材50の一側への回転方向において第1面53aよりも上流側に配置される第2面53bとを有している。第1面53aは、径方向外側へいくに従ってギア部材50の一側への回転方向における下流側に傾斜する傾斜面に形成されている。第2面53bは、径方向外側へいくに従ってギア部材50の他側への回転方向における上流側に傾斜する傾斜面に形成されている。
【0040】
内歯53は、ギア部材50の周方向に沿って等間隔で配置されている。内歯53は、各内歯53の先端(第1面53aと第2面53bとの境界部)を通る円Cの中心が軸心Pとなるように形成されている(
図6参照)。
【0041】
図3、
図4に示すように、スライド部材30は、棒状部材にて形成されており、延出軸21の挿通孔212に軸心P方向と直交する径方向へスライド可能に挿通されている。スライド部材30は、挿通孔212に挿通されることにより、ロータ軸20に支持されており、軸心Pを中心としてロータ軸20と一体的に回転可能に構成されている。スライド部材30は、スライド方向に沿って延出する一対の側面30aを有している。
スライド部材30は、スライド方向の両端部に径方向外側へ突出する爪部31を有している。
【0042】
図7(a)に示すように、爪部31は、ギア部材50の一側への回転方向における上流側に配置される退避面31aと、ギア部材50の一側への回転方向において退避面31aよりも下流側に配置される係合面31bとを有している。退避面31aは、径方向外側へいくに従ってギア部材50の一側への回転方向における下流側に傾斜する傾斜面に形成されている。係合面31bは、径方向外側へいくに従ってギア部材50の他側への回転方向における上流側に傾斜する傾斜面に形成されている。
爪部31は、スライド部材30のスライド方向と直交し、かつ側面30aと直交する方向において、側面30aよりも係合面31b側へ突出している。つまり、爪部31は、側面30aよりもギア部材50の一側への回転方向における下流側へ突出している。
【0043】
図7(a)に示すように、スライド部材30における一方の爪部31の先端と他方の爪部31の先端との間の寸法Lは、円Cの径Rよりも大きく形成されている。従って、スライド部材30のロータ軸20に対するスライド位置にかかわらず、少なくとも何れか一方の爪部31が円Cよりも径方向外側に位置することとなる。
【0044】
爪部31の退避面31aは、ギア部材50がロータ軸20に対して一側へ回転することによりギア部材50の内歯53に当接し、爪部31の係合面31bは、ギア部材50がロータ軸20に対して他側へ回転することによりギア部材50の内歯53に当接する。
また、ギア部材50における内歯53の第1面53aは、ギア部材50がロータ軸20に対して一側へ回転することによりスライド部材30の爪部31と当接し、ギア部材50がロータ軸20に対して他側へ回転することによりスライド部材30の爪部31と当接する。
【0045】
[ワンウェイクラッチ付き回転ダンパ装置におけるワンウェイクラッチの動作]
このように構成される回転ダンパ装置1におけるワンウェイクラッチ2は、次のように動作する。
なお、以下のワンウェイクラッチ2の動作についての説明においては、スライド部材30の両端部に形成される爪部31のうち、一方の爪部31を爪部311と表し、他方の爪部31を爪部312と表す。また、ギア部材50の各内歯53を、ギア部材50を
図7(a)に示す状態から一側へ回転させた際に爪部31と当接する順に内歯531、内歯532、内歯533、内歯534、と適宜表す。
【0046】
まず、ギア部材50がロータ軸20に対して一側へ回転する場合のワンウェイクラッチ2の動作について説明する。
図7(a)には、爪部311が円Cよりも径方向外側に位置しており、爪部312は円Cから径方向外側にはみ出していない状態を示している。
図7(a)に示す状態では、内歯531は爪部311よりもギア部材50の一側への回転方向の上流側に位置している。
【0047】
この状態においてギア部材50がロータ軸20に対して一側へ回転すると、ギア部材50の内歯531が爪部311に当接する。内歯531が爪部311に当接した後にギア部材50が一側へ回転すると、爪部311が内歯531に押圧されて、爪部311が内歯531から径方向内側へ退避し、スライド部材30が爪部312側へスライドする。
【0048】
この場合、内歯531の第1面531aが爪部311の退避面311aに当接するが、退避面311aは、径方向外側へいくに従ってギア部材50の一側への回転方向における下流側に傾斜する傾斜面に形成されているため、ギア部材50の一側への回転に伴って、爪部311が内歯531から円滑に退避することが可能となっている。
また、内歯531の第1面531aは、径方向外側へいくに従ってギア部材50の一側への回転方向における下流側に傾斜する傾斜面に形成されているため、ギア部材50が一側へ回転する際に、爪部311の内歯531からの退避をさらに円滑にすることが可能となっている。
【0049】
図7(b)に示すように、スライド部材30は、爪部311が一側へ回転するギア部材50の内歯531によって押圧されることにより、爪部311が円Cから外側にはみ出していない状態となるまで爪部312側へスライドする。
爪部311が円Cから外側にはみ出していない状態となるまでスライド部材30がスライドした後は、内歯531は爪部311と噛み合うことなく、爪部311よりもギア部材50の一側への回転方向の下流側に移動する。
スライド部材30が、爪部311が円Cから外側にはみ出していない状態となるスライド位置にあるときには、爪部312が円Cから外側にはみ出した状態となっている。
【0050】
図8に示すように、ギア部材50がさらに一側へ回転すると、ギア部材50の内歯532が爪部311とは反対側に位置する爪部312に当接する。内歯532が爪部312に当接した後にギア部材50が一側へ回転すると、爪部312が内歯532に押圧されて、爪部312が内歯532から径方向内側へ退避し、スライド部材30が爪部311側へスライドする。
スライド部材30は、爪部312が円Cから外側にはみ出していない状態となるまでスライドし、その後内歯532は爪部312と噛み合うことなく、爪部312よりもギア部材50の一側への回転方向の下流側に移動する。
【0051】
その後、ギア部材50がさらに一側へ回転すると、ギア部材50の内歯533が爪部311に当接し、スライド部材30が、爪部311が円Cから外側にはみ出していない状態となるまで爪部312側へスライドする。ギア部材50がさらに一側へ回転すると、ギア部材50の内歯534が爪部312に当接し、スライド部材30が、爪部312が円Cから外側にはみ出していない状態となるまで爪部311側へスライドする。
【0052】
このように、ギア部材50が一側へ回転した場合は、ギア部材50の内歯53がスライド部材30の爪部311および爪部312に交互に当接し、内歯53が爪部311、312に当接した際に、爪部311、312が内歯53から退避してスライド部材30がスライド方向における爪部312側および爪部3111側へ交互にスライドするように構成している。これにより、ギア部材50の内歯53がスライド部材30の爪部311、312に係合することがなく、ギア部材50がロータ軸20とは独立して回転することとなる。
そして、ギア部材50がロータ軸20とは独立して回転し、ロータ軸62は回転しないため、ギア部材50は回転抵抗が付与されることなく回転する。
【0053】
次に、ギア部材50がロータ軸20に対して他側へ回転する場合のワンウェイクラッチ2の動作について説明する。
図9(a)には、爪部311が円Cよりも径方向外側に位置しており、爪部312は円Cから径方向外側にはみ出していない状態を示している。
図9(a)に示す状態では、内歯531は爪部311よりもギア部材50の他側への回転方向の上流側に位置している。
【0054】
この状態からギア部材50がロータ軸20に対して他側へ回転すると、
図9(b)に示すように、ギア部材50の内歯531が爪部311に当接して、内歯531と爪部311とが係合する。
図10に示すように、内歯531と爪部311とが係合した後にギア部材50が他側へ回転すると、スライド部材30はスライド方向にスライドすることなく、内歯531と爪部311との係合状態が維持され、ロータ軸20がギア部材50と一体的に回転する。ロータ軸20がギア部材50と一体的に回転すると、ロータ軸62が回転した際にロータ軸62に付与される粘性流体60による回転抵抗がギア部材50にも伝達される。
【0055】
この場合、内歯531の第2面531bが爪部311の係合面311bに当接するが、係合面311bは、径方向外側へいくに従ってギア部材50の他側への回転方向における上流側に傾斜する傾斜面に形成されているため、ギア部材50がロータ軸20に対して他側へ回転した際に、内歯531と爪部311との係合状態を保持し易くなっている。
さらに、内歯531の第2面531bは、径方向外側へいくに従ってギア部材50の他側への回転方向における上流側に傾斜する傾斜面に形成されているため、ギア部材50がロータ軸20に対して他側へ回転した際に、内歯531と爪部311とが確実に係合可能となっている。
【0056】
また、回転ダンパ装置1のワンウェイクラッチにおいては、スライド部材30における爪部311の先端と爪部312の先端との間の寸法Lが、円Cの径Rよりも大きく形成されており、少なくとも何れか一方の爪部311、312が円Cよりも外側に位置しているため、ギア部材50がロータ軸20に対して他側へ回転した場合に、スライド部材30のスライド位置にかかわらず、爪部311の係合面311bまたは爪部312の係合面312bと、内歯53の第2面53bとが確実に係合して、ギア部材50とロータ軸20とが一体的に回転することが可能になっている。
【0057】
また、ワンウェイクラッチ2においては、ロータ軸20にスライド可能に設けられるスライド部材30の爪部31により、ギア部材50とロータ軸20とが係合する状態と、ギア部材50とロータ軸20とが係合しない状態とを切り替えるように構成されているので、例えばワンウェイクラッチを複数の遊星ギアがアウタ部材の内部に収容される構成とした場合に比べて、ワンウェイクラッチを小型化することが可能となっている。
【0058】
このように、ワンウェイクラッチ2を小型化した場合、ギア部材50の外歯ギア52における外歯52aの数を少なく構成することができる。従って、ロータ軸20に回転力を伝達するギアを外歯ギア52に噛合させた際に、ロータ軸20の回転数を高めて回転ダンパ装置1において発生するロータ軸20に対する回転抵抗を大きくすることができ、ワンウェイクラッチ2に接続された回転ダンパ装置1の使い勝手を向上させることが可能となる。
【0059】
また、ワンウェイクラッチ2においては、ギア部材50およびスライド部材30をロータ軸20により支持しているため、ギア部材50およびスライド部材30を支持するための別部材が必要でなく、ワンウェイクラッチ2を構成する部品点数を削減することが可能となっている。
特に、ギア部材50は、ロータ軸20の溝部214とギア部材50の突起部55とを嵌合させるとともに、ロータ軸20の嵌合部22とギア部材50の被嵌合部511とを嵌合させることによってロータ軸20に支持されているため、ギア部材50を支持するために別部材を要することがなく、部品点数を削減することができる。また、ギア部材50をロータ軸20の軸心P方向に離れた複数個所にて支持することで、ギア部材50をロータ軸20によって簡単な構造で支持しながら、ロータ軸20に支持されたギア部材50の振れを抑制することが可能である。
これは、ロータ軸20に突起部を形成するとともに、ギア部材50に前記突起部と嵌合する溝部を形成した場合も同様である。
【0060】
また、ロータ軸20はスリット213によって複数の軸片部21Aに分割されており、溝部214は軸片部21Aの外周面に形成されているため、ギア部材50の突起部55をロータ軸20の溝部214に嵌合させる際にロータ軸20の軸片部21Aが撓むこととなり、嵌合作業を容易にすることが可能となっている。
【0061】
さらに、スライド部材30は、ロータ軸20の挿通孔212に挿通することによりロータ軸20にスライド可能に支持されるものであるため、簡単な構成でスライド部材30を支持することが可能となっている。
【0062】
[スライド部材の第2実施形態]
スライド部材30は、スライド部材30のスライド方向と直交し、かつ側面30aと直交する方向において、爪部31が側面30aよりも係合面31b側へ突出するように構成されているが、スライド部材は、爪部がスライド部材の側面から突出しないように構成することもできる。
【0063】
例えば、
図11、
図12に示すスライド部材130は、延出軸21の挿通孔212に軸心P方向と直交する径方向へスライド可能に挿通されている。スライド部材130は、挿通孔212に挿通されることにより、ロータ軸20に支持されており、軸心Pを中心としてロータ軸20と一体的に回転可能に構成されている。スライド部材130は、スライド方向に沿って延出する一対の側面130aを有している。
スライド部材130は、スライド方向の両端部に径方向外側へ突出する爪部131を有している。
【0064】
爪部131は、ギア部材50の一側への回転方向における上流側に配置される退避面131aと、ギア部材50の一側への回転方向において退避面131aよりも下流側に配置される係合面131bとを有している。退避面131aは、径方向外側へいくに従ってギア部材50の一側への回転方向における下流側に傾斜する傾斜面に形成されている。係合面131bは、径方向外側へいくに従ってギア部材50の他側への回転方向における上流側に傾斜する傾斜面に形成されている。
【0065】
爪部131は、スライド部材130のスライド方向と直交し、かつ側面130aと直交する方向において、一対の側面130aの範囲内に収まっており、側面130aから係合面131b側および退避面131a側へは突出していない。
このように、スライド部材130においては、爪部131が一対の側面130aの範囲内に収まっているため、スライド部材130を延出軸21の挿通孔212に挿入する際に、爪部131が挿通孔212と干渉することがなく、スライド部材130の挿通孔212への挿入作業を容易にすることが可能となっている。
【0066】
[スライド部材の第3実施形態]
スライド部材30は、
図13、
図14に示すように、略円柱形状のスライド部材230に構成することもできる。この場合、スライド部材230が挿通される延出軸21の挿通孔212は、スライド部材230の形状に合わせた円筒形状に形成することができる。
【0067】
スライド部材230の両端部は、ギア部材50の一側への回転方向における上流側に配置される退避面231aと、ギア部材50の一側への回転方向において退避面231aよりも下流側に配置される係合面231bとを有する爪部231として構成されている。退避面231aは、径方向外側へいくに従ってギア部材50の一側への回転方向における下流側に傾斜する傾斜面に形成されている。係合面231bは、ギア部材50の他側への回転方向と直交する面に形成されている。
退避面231aは、ギア部材50がロータ軸20に対して一側へ回転する際に、ギア部材50における内歯53の第1面53aに当接し、係合面231bは、ギア部材50がロータ軸20に対して他側へ回転する際に、ギア部材50における内歯53の第2面53bに当接する。
【0068】
このように、退避面231aを、径方向外側へいくに従ってギア部材50の一側への回転方向における下流側に傾斜する傾斜面に形成することで、ギア部材50が一側へ回転する際に、スライド部材230両端の爪部231が同時にギア部材50の内歯53と干渉することが抑制され、爪部231の退避面231aが内歯53から円滑に退避することが可能となる。
また、係合面231bを、ギア部材50の他側への回転方向と直交する面に形成することで、ギア部材50が他側へ回転した際に、内歯13と係合面231bとの係合状態を保持し易くなる。
【0069】
また、延出軸21および/またはスライド部材230は、挿通孔212に挿通されたスライド部材230が円柱形状の軸心を中心として回転することを抑制可能に構成することが好ましい。このように構成することで、スライド部材230の退避面231aと、ギア部材50における内歯53の第1面53aとの当接を確保することが可能となる。
【符号の説明】
【0070】
1 ワンウェイクラッチ付き回転ダンパ装置
2 ワンウェイクラッチ
10 ハウジング
10A ハウジング本体
20 ロータ軸
21 延出軸
21A 軸片部
22 嵌合部
25 ロータ翼
30、130、230 スライド部材
30a 側面
31、131、231 爪部
31a、131a、231a 退避面
31b、131b、231b 係合面
50 ギア部材
51 ギア本体
52 外歯ギア
52a 外歯
53 内歯
53a 第1面
53b 第2面
55 突起部
60 粘性流体
211 面取り部
212 挿通孔
213 スリット
214 溝部
511 被嵌合部
C (各内歯の先端を通る)円
L (一方の爪部の先端と他方の爪部の先端との間の)寸法
P 軸心
R (円の)径