IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ミヤナガの特許一覧

<>
  • 特許-拡径孔部削成装置 図1
  • 特許-拡径孔部削成装置 図2
  • 特許-拡径孔部削成装置 図3
  • 特許-拡径孔部削成装置 図4
  • 特許-拡径孔部削成装置 図5
  • 特許-拡径孔部削成装置 図6
  • 特許-拡径孔部削成装置 図7
  • 特許-拡径孔部削成装置 図8
  • 特許-拡径孔部削成装置 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】拡径孔部削成装置
(51)【国際特許分類】
   B28D 1/14 20060101AFI20221206BHJP
   E21B 10/32 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
B28D1/14
E21B10/32
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018216578
(22)【出願日】2018-11-19
(65)【公開番号】P2020082418
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-08-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000137845
【氏名又は名称】株式会社ミヤナガ
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮永 昌明
【審査官】豊島 唯
(56)【参考文献】
【文献】特許第2598515(JP,B2)
【文献】特開2012-071505(JP,A)
【文献】国際公開第2015/025492(WO,A1)
【文献】特開昭62-249714(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28D 1/14
E21B 10/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被削成物に形成されている孔に拡径孔部を削成する拡径孔部削成装置であって、
軸部と、前記軸部側と反対側に設けられた先端面、及び、前記軸部側から前記先端面側に向かって前記軸部の中心軸から離れる方向に傾斜する傾斜面が設けられたガイド体とを有するボウジョーと、
先端に刃部が設けられ、且つ、前記傾斜面に沿ってスライド可能な切削部を有するカッターブレードと、を備え、
前記ボウジョーは、吸引口が前記先端面に開口する流通路を含む吸引通路をさらに有し、
前記ガイド体は、
前記中心軸を挟んで設けられる一対の前記傾斜面と、
一対の前記傾斜面の間の外周面と前記先端面とに開口している凹部と、を有し、
前記吸引通路は、前記流通路から分岐し、且つ、前記凹部と連通する第1分岐路を含んでいる、拡径孔部削成装置。
【請求項2】
被削成物に形成されている孔に拡径孔部を削成する拡径孔部削成装置であって、
軸部と、前記軸部側と反対側に設けられた先端面、及び、前記軸部側から前記先端面側に向かって前記軸部の中心軸から離れる方向に傾斜する傾斜面が設けられたガイド体とを有するボウジョーと、
先端に刃部が設けられ、且つ、前記傾斜面に沿ってスライド可能な切削部を有するカッターブレードと、を備え、
前記ボウジョーは、吸引口が前記先端面に開口する流通路を含む吸引通路をさらに有し、
前記ガイド体は、
前記中心軸を挟んで設けられる一対の前記傾斜面と、
一対の前記傾斜面の間の外周面と前記先端面とに開口している凹部と、を有し、
前記ガイド体は、前記先端面に設けられた前記凹部の開口と前記吸引口とに接続されている第1溝部を有している、拡径孔部削成装置。
【請求項3】
前記ガイド体は、前記傾斜面に開口し、且つ、前記先端面におい前記吸引口に接続されている第2溝部を有している、請求項1又は2に記載の拡径孔部削成装置。
【請求項4】
被削成物に形成されている孔に拡径孔部を削成する拡径孔部削成装置であって、
軸部と、前記軸部側と反対側に設けられた先端面、及び、前記軸部側から前記先端面側に向かって前記軸部の中心軸から離れる方向に傾斜する傾斜面が設けられたガイド体とを有するボウジョーと、
先端に刃部が設けられ、且つ、前記傾斜面に沿ってスライド可能な切削部を有するカッターブレードと、を備え、
前記ボウジョーは、吸引口が前記先端面に開口する流通路を含む吸引通路をさらに有し、
前記ガイド体は、前記傾斜面に開口し、且つ、前記先端面におい前記吸引口に接続されている第2溝部を有している、拡径孔部削成装置。
【請求項5】
前記ガイド体は、
前記中心軸を挟んで設けられる一対の前記傾斜面と、
一対の前記傾斜面の間の外周面と前記先端面とに開口している凹部と、を有している、請求項に記載の拡径孔部削成装置。
【請求項6】
前記吸引通路は、前記流通路から分岐し、且つ、前記傾斜面に開口する第2分岐路を含んでいる、請求項1~のいずれか一項に記載の拡径孔部削成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、拡径孔部削成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の拡径孔部削成装置として、特許文献1のアンカーボルト植設用孔の拡径孔部削成装置が知られている。この拡径孔部削成装置では、孔壁に拡径孔部を削成する際、孔壁切削刃がガイド溝を移動する。この移動が進むにつれて孔壁切削刃がガイドヘッド外方へ突出し、拡径孔部を削成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実登2564100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記拡径孔部削成装置では、孔壁切削刃の削成中に粉塵が発生する。この粉塵は、作業環境を悪化させるほか、部品の間に入ると、拡径孔部削成装置の動きが悪くなったり、部品が摩耗したりし、拡径孔部削成装置の性能が低下するおそれがある。
【0005】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、例えば、粉塵の発散防止対策及び粉塵への暴露低減対策等として、粉塵を効率的に除去することができる拡径孔部削成装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様に係る拡径孔部削成装置は、被削成物に形成されている孔に拡径孔部を削成する拡径孔部削成装置であって、軸部と、前記軸部側と反対側に設けられた先端面、及び、前記軸部側から前記先端面側に向かって前記軸部の中心軸から離れる方向に傾斜する傾斜面が設けられたガイド体とを有するボウジョーと、先端に刃部が設けられ、且つ、前記傾斜面に沿ってスライド可能な切削部を有するカッターブレードと、を備え、前記ボウジョーは、吸引口が前記先端面に開口する流通路を含む吸引通路をさらに有している。
【0007】
この構成によれば、拡径孔部の削成中には、先端面が孔の奥側に挿入されるため、削成により発生する粉塵を先端面の吸引口から効率的に吸引し、孔から除去することができる。
【0008】
拡径孔部削成装置では、前記ガイド体は、前記中心軸を挟んで設けられる一対の前記傾斜面と、一対の前記傾斜面の間の外周面と前記先端面とに開口している凹部と、を有していてもよい。
【0009】
この構成によれば、粉塵は外周面の開口から凹部に入るため、拡径孔部削成装置の部品間に嵌り、作動性能を悪化させたり、部品が摩耗したりすることを防止することができる。また、凹部に入った粉塵は、凹部により先端面の開口に誘導されて、先端面の吸引口から吸引されるため、粉塵を効率的に吸引し除去することができる。
【0010】
拡径孔部削成装置では、前記吸引通路は、前記流通路から分岐し、且つ、前記凹部と連通する第1分岐路を含んでいてもよい。
【0011】
この構成によれば、凹部に入った粉塵を第1分岐路の吸引口から吸引し、効率的に除去することができる。
【0012】
拡径孔部削成装置では、前記ガイド体は、前記先端面に設けられた前記凹部の開口と前記吸引口とに接続されている第1溝部を有していてもよい。
【0013】
この構成によれば、凹部に入った粉塵は、先端面における凹部の開口から吸引口に第1溝部によりに誘導されて、吸引口から吸引されるため、粉塵を効率的に吸引し除去することができる。
【0014】
拡径孔部削成装置では、前記吸引通路は、前記流通路から分岐し、且つ、前記傾斜面に開口する第2分岐路を含んでいてもよい。
【0015】
この構成によれば、傾斜面上の粉塵を第2分岐路の吸引口から吸引し、効率的に除去することができる。
【0016】
拡径孔部削成装置では、前記傾斜面に開口し、且つ、前記先端面におい前記吸引口に接続されている第2溝部を有していてもよい。
【0017】
この構成によれば、傾斜面上の粉塵を、第2溝部により吸引口へ誘導することにより、粉塵を効率的に吸引し除去することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、以上に説明した構成を有し、粉塵を効率的に除去することができる拡径孔部削成装置を提供することができるという効果を奏する。
【0019】
本発明の上記目的、他の目的、特徴、及び利点は、添付図面参照の下、以下の好適な実施態様の詳細な説明から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1(a)は、本発明の実施形態に係る拡径孔部削成装置を凹部側から視た図である。図1(b)は、図1(a)の拡径孔部削成装置の一部を示す部分断面図である。
図2図2(a)は、図1(a)の拡径孔部削成装置を傾斜面側から視た図である。図2(b)は、図2(a)の拡径孔部削成装置の一部を示す部分断面図である。
図3図3(a)は、シャンクを側方から視た図である。図3(b)は、シャンクの断面図である。
図4図4(a)は、カッターブレードを側方から視た図である。図4(b)は、カッターブレードの切削部を先端側から視た図である。
図5図5(a)は、ボウジョーを凹部側から視た図である。図5(b)は、図5(a)のボウジョーを傾斜面側から視た図である。図5(c)は、図5(a)のボウジョーを先端側から視た図である。
図6図6(a)は、軸方向に直交する方向に切断したストッパースリーブの断面図である。図6(b)は、ピンの断面図である。
図7図7(a)は、本発明の実施形態の変形例1に係る拡径孔部削成装置のボウジョーを凹部側から視た図である。図7(b)は、図7(a)のボウジョーを傾斜面側から視た図である。図7(c)は、図7(a)のボウジョーを先端側から視た図である。
図8図8(a)は、本発明の実施形態の変形例2に係る拡径孔部削成装置のボウジョーを凹部側から視た図である。図8(b)は、図8(a)のボウジョーを傾斜面側から視た図である。図8(c)は、図8(a)のボウジョーを先端側から視た図である。
図9図9(a)は、本発明の実施形態の変形例3に係る拡径孔部削成装置のボウジョーを凹部側から視た図である。図9(b)は、図9(a)のボウジョーを傾斜面側から視た図である。図9(c)は、図9(a)のボウジョーを先端側から視た図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(実施の形態)
<拡径孔部削成装置の構成>
本発明の実施の形態に係る拡径孔部削成装置10は、図1(a)~図2(b)に示すように、被削成物に既に設けられている孔(既成孔)に拡径孔部を形成するための削成装置である。
【0022】
拡径孔部削成装置10は、シャンク20、カッターブレード30及びボウジョー40を備えている。カッターブレード30はシャンク20に連結されており、ボウジョー40はシャンク20及びカッターブレード30の各内部に設けられた孔に挿入されている。また、シャンク20及びボウジョー40らはストッパースリーブ50により固定されており、シャンク20には吸引アダプター60が取り付けられている。
【0023】
なお、拡径孔部削成装置10の中心軸Gは、シャンク20、カッターブレード30及びボウジョー40のそれぞれの中心軸でもあり、これらが回転するときの中心となる回転軸線に等しい。また、シャンク20よりもカッターブレード30側を先端側と称し、その反対側を基端側と称する。但し、拡径孔部削成装置10の配置は、これに限定されない。
【0024】
<各部の構成>
図3(a)及び図3(b)に示すように、シャンク20は、装着部21及び外装部22を有している。装着部21は、角柱及び円柱等の形状であって、外装部22よりも基端側に設けられ、外装部22と同軸で外装部22と一体的に形成されている。
【0025】
外装部22は、円柱形状であって、第1挿通孔23、連通孔24及び長孔25を有している。第1挿通孔23は、円柱形であって、外装部22の内部において軸方向に延び、外装部22の先端側に開口し、基端側で閉じている。
【0026】
連通孔24は、例えば、軸方向に直交する方向において第1挿通孔23から一方側に外装部22を貫通し、長孔25よりも先端側に設けられている。長孔25は、例えば、軸方向に直交する方向において第1挿通孔23から両側に外装部22を貫通し、軸方向に長く延びている。
【0027】
また、外装部22の外周面に第1円筒溝26が設けられている。第1円筒溝26は、Oリング70(図1(a))が装着される溝であって、軸方向において、連通孔24と長孔25との間に配置されている。第1円筒溝26は、外装部22の中心軸を中心に環状に延び、外装部22の外周面から窪み、外装部22の外周面に開口している。
【0028】
さらに、外装部22の先端には係止部が設けられている。係止部は、例えば、一対の切欠き部27により構成されており、一対の切欠き部27は、軸方向に直交する方向において互いの間に第1挿通孔23を挟むように配置されている。切欠き部27は、外装部22の先端から基端側に窪んでいる。
【0029】
図4(a)及び図4(b)に示すように、カッターブレード30は、連結部31及び一対の切削部32を有している。なお、カッターブレード30は1つ又は3つ以上の切削部32を有していてもよい。
【0030】
連結部31は、円筒形状であって、内部に軸方向に貫通する第2挿通孔33を有し、基端に被係止部が設けられている。被係止部は、例えば、一対の突起34により構成され、突起34は連結部31の基端から突出している。
【0031】
一対の切削部32は、連結部31の軸を互いの間に挟むように平行に配置されており、内面が互いに対向するように配置されている。切削部32は、板形状であって、連結部31の先端から軸方向に突出している。
【0032】
また、切削部32は、連結部31の軸を中心とした周方向に湾曲し、内面は曲面により形成されている。切削部32は、内面に対して直交する方向に可撓性を有しており、一対の切削部32は互いの間隔を変更可能に撓むことができる。
【0033】
切削部32の先端に刃部35が設けられている。刃部35は、チップ状であって、周方向において切削部32の中央に配置されている。刃部35は、切削部32の内面と反対側の外面、及び、先端の縁面のそれぞれから突出している。
【0034】
図5(a)~図5(c)に示すように、ボウジョー40は、軸部41及びガイド体42を有し、内部に吸引通路80が設けられている。軸部41は円柱形の棒状体であって、ガイド体42は略円柱形状である。軸部41は、ガイド体42よりも基端側に配置され、ガイド体42と同軸で一体的に形成されている。
【0035】
軸部41は、第1外周面及び第1ピン孔43を有している。第1外周面は、軸部41の先端と基端との間において中心軸を取り囲んでいる。第1ピン孔43は、吸引通路80よりも基端側に配置されており、軸方向に直交する方向において軸部41を貫通している。
【0036】
ガイド体42は、その基端が軸部41に接続されており、その先端に先端面44を有している。また、ガイド体42は、先端と基端との間において中心軸を取り囲む第2外周面を有し、第2外周面には一対の傾斜面45及び一対の凹部46が設けられている。
【0037】
なお、一対の傾斜面45がボウジョー40に設けられているが、1つ又は3つ以上の傾斜面45がボウジョー40に設けられていてもよい。この場合、傾斜面45の数と等しい数の切削部32がカッターブレード30に設けられる。また、一対の凹部46がボウジョー40に設けられているが、1つ又は3つ以上の凹部46がボウジョー40に設けられていてもよい。
【0038】
傾斜面45は、カッターブレード30の切削部32がスライドする面であって、例えば、平面で形成されている。図4(b)に示すように、切削部32が傾斜面45に対向する位置では、切削部32の内面は傾斜面45から突出するように湾曲している。このため、傾斜面45と切削部32との間に間隙部48が形成される。
【0039】
傾斜面45は、図5(a)~図5(c)に示すように、軸方向に直交する方向において一対の突状部47の間に配置され、軸方向に延びている。一対の突状部47は、傾斜面45から突出し、傾斜面45に沿って軸方向に延びている。
【0040】
傾斜面45は、軸部41側から先端面44側に向かって軸部41の中心軸から離れる方向に傾斜している。この傾斜面45によって、ガイド体42は基端側から先端側に向かうに伴い拡径している。また、一対の傾斜面45は軸を互いの間に挟むように配置されており、一対の傾斜面45の間隔は、基端側から先端側に向かうに伴い広くなっている。
【0041】
凹部46は、周方向において一対の傾斜面45の間に配置され、ガイド体42の第2外周面及び先端面44のそれぞれに開口している。このため、凹部46は、軸方向に直交する方向において第2外周面の第1開口46aから窪み、軸方向において先端面44の第2開口46bから窪んでいる。一対の凹部46は、軸を互いの間に挟むように配置されており、一対の凹部46の間に吸引通路80が配置されている。
【0042】
吸引通路80は、流通路81、一対の第1分岐路82、及び、一対の第2分岐路83を有している。なお、吸引通路80は、1本の第1分岐路82を有していてもよく、1本の第2分岐路83を有していてもよい。また、吸引通路80は、傾斜面45及び凹部46の数に応じて、3本以上の第1分岐路82を有していてもよく、3本以上の第2分岐路83を有していてもよい。
【0043】
例えば、流通路81から第1分岐路82及び第2分岐路83に分岐している。このため、吸引通路80の吸引口は、流通路81の第1吸引口81a、第1分岐路82の第2吸引口82a、第2分岐路83の第3吸引口83aを有している。
【0044】
例えば、流通路81、第1分岐路82及び第2分岐路83の直径はそれぞれ同じである。吸引通路80の排出口84の面積は、第1吸引口81aの面積、第2吸引口82aの面積及び第2吸引口82aの面積を総計した総和面積以上に設定されている。
【0045】
流通路81は、軸方向において第1吸引口81aからガイド体42を貫通して軸部41に延びており、ガイド体42及び軸部41と同軸に設けられている。流通路81の第1吸引口81aは、ガイド体42の先端面44の中央に開口している。流通路81の排出口84は、軸部41の第1外周面に開口しており、径方向よりも軸方向に長く延びている。
【0046】
第1分岐路82は、流通路81とガイド体42の凹部46とを連通している。例えば、第1分岐路82は、流通路81から分岐し、軸方向に交差(例えば、直交)する方向に延びて、凹部46の底に開口している。この第1分岐路82の第2吸引口82aは、例えば、軸方向において凹部46の中心よりも先端側に配置されている。
【0047】
一対の第1分岐路82は、流通路81を介して互いに接続されて、一直線に延びるように配列されている。この場合、一対の凹部46の間を直線上に穿孔することにより、一対の第1分岐路82を同時に形成することができ、一対の第1分岐路82を製造し易い。
【0048】
第2分岐路83は、切削部32が傾斜面45に対向する位置においてこれらの間の間隙部48(図4(b))と、流通路81とを連通している。例えば、第2分岐路83は、流通路81から分岐し、軸方向に交差(例えば、直交)する方向に延びて、傾斜面45に開口している。
【0049】
一対の第2分岐路83は、流通路81を介して互いに接続されて、一直線に延びるように配列されている。この場合、一対の傾斜面45の間を直線上に穿孔することにより、一対の第2分岐路83を同時に形成することができ、一対の第2分岐路83を製造し易い。
【0050】
また、第1分岐路82及び第2分岐路83は、軸方向において同じ位置に設けられている。このため、これらは、互いに交差(例えば、直交)するように配置されている。なお、軸方向において、第1分岐路82と第2分岐路83とがずれて配置されていてもよく、一対の第1分岐路82どうし、及び、一対の第2分岐路83どうしがそれぞれずれて配置されていてもよい。
【0051】
先端面44は、軸方向に直交する方向に拡がり、その中央部分が突出している。この中央部分は平面であり、先端面44は中央部分から外周縁に進むに伴い基端側に向かうように傾斜している。
【0052】
先端面44には、流通路81の第1吸引口81a、一対の凹部46の第2開口46b、一対の第1溝部90及び一対の第2溝部91が設けられている。なお、先端面44には、1本の第1溝部90が設けられていてもよい。また、先端面44には、一本の第2溝部91が設けられていてもよい。
【0053】
第1吸引口81aは、先端面44の中心に配置されており、一対の第2開口46bは、互いの間に第1吸引口81aを挟むように配置されている。このため、第1吸引口81a及び一対の第2開口46bは、先端面44において直線上に並んで設けられている。
【0054】
第1溝部90は、先端面44から窪み、軸方向と直交する方向に延びて、凹部46の第2開口46bと第1吸引口81aとに接続されている。一対の第1溝部90は、一端が互いに接続されており、他端が一対の第2開口46bとそれぞれ接続されており、一直線になるように配置されている。
【0055】
第2溝部91は、先端面44から窪み、第1吸引口81aに接続されるように、第1溝部90に交差(例えば、直交)するように延びている。例えば、第2溝部91は、第1吸引口81aから傾斜面45へ延び、傾斜面45に溝開口91aとして開口している。
【0056】
先端面44からの第2溝部91の深さは、切削部32が傾斜面45上を最も先端側へスライドした際において、切削部32よりも先端側に第2溝部91の底が位置するように設定される。このため、切削部32が傾斜面45上をスライドしても、切削部32は第2溝部91よりも基端側に位置するため、第2溝部91の溝開口91aは切削部32により塞がれない。
【0057】
また、切削部32がスライドして傾斜面45に対向すると、これらの間に形成された間隙部48が第2溝部91の溝開口91aの近傍に配置される。
【0058】
図1(a)、図2(a)及び図6(a)に示すように、ストッパースリーブ50は、円筒形状であって、取付孔51、第2ピン孔52及び第1固定孔53を有している。取付孔51は、ストッパースリーブ50の軸方向にストッパースリーブ50を貫通している。取付孔51にシャンク20が挿入可能なように、取付孔51の直径はシャンク20の外径よりも大きく設定されている。
【0059】
第2ピン孔52は、ピン71が挿入される孔であって、取付孔51から、軸方向に直交する方向に延び、ストッパースリーブ50を貫通している。第1固定孔53は、ピン71をストッパースリーブ50に固定するためのビスが挿入される孔であって、軸方向に直交する方向に延びており、第2ピン孔52に交差(例えば、直交)している。
【0060】
図1(a)及び図2(a)に示すように、吸引アダプター60は、環状部61及びパイプ部62を有している。環状部61は、円筒形状であって、段付き孔63及び第2円筒溝64を有している。段付き孔63は、環状部61をその軸方向に貫通しており、径が大きな大径部65を有している。大径部65の直径はシャンク20の外径よりも大きく、大径部65以外の段付き孔63の直径はシャンク20の外径とほぼ等しい。
【0061】
第2円筒溝64は、Oリング70が装着される溝であって、環状部61の内面に開口しており、大径部65よりも基端側に配置されている。パイプ部62は、環状部61の段付き孔63に連通するように、環状部61に結合されている。
【0062】
<拡径孔部削成装置の組み立て>
図1(a)及び図2(a)に示すように、カッターブレード30の突起34をシャンク20の切欠き部27に嵌める。これにより、突起34が切欠き部27に係止されて、カッターブレード30の基端とシャンク20先端とが接続される。このカッターブレード30とシャンク20とは同軸に配置され、カッターブレード30の第2挿通孔33とシャンク20の第1挿通孔23とが連通する。
【0063】
続いて、第1挿通孔23にスプリング73を挿入してから、ボウジョー40の軸部41を第1挿通孔23及び第2挿通孔33に挿入する。これにより、スプリング73は、軸部41の基端と第1挿通孔23の基端との間に配置される。
【0064】
続いて、ストッパースリーブ50の取付孔51にシャンク20を挿入する。ここで、軸方向に直交する方向において、ストッパースリーブ50の第2ピン孔52と、シャンク20の長孔25と、ボウジョー40の第1ピン孔43とが重なるように、ストッパースリーブ50、シャンク20及びボウジョー40を配置する。
【0065】
そして、第2ピン孔52、長孔25及び第1ピン孔43にピン71を挿入する。それから、ビスをピン71の第2固定孔72、及び、ストッパースリーブ50の第1固定孔53に挿入して螺合する。これにより、ピン71がストッパースリーブ50に固定される。
【0066】
このピン71は、軸方向において、第1ピン孔43及び第2ピン孔52とほぼ同じ寸法であるのに対し、長孔25はピン71、第1ピン孔43及び第2ピン孔52よりも長い。このため、ピン71は、第1ピン孔43及び第2ピン孔52に固定されるのに対し、長孔25に対して軸方向に移動可能である。
【0067】
よって、シャンク20及びカッターブレード30と、ボウジョー40とは、軸方向において相対的に移動し、拡径孔部削成装置10が伸縮することができる。この拡径孔部削成装置10が縮み、ボウジョー40に対してカッターブレード30が先端側に移動するほど、スプリング73はカッターブレード30を基端側に付勢する。
【0068】
また、吸引アダプター60の段付き孔63にシャンク20を挿入して、吸引アダプター60をシャンク20に取り付ける。これにより、環状部61の内面とシャンク20の外面とが対向し、これらの間に大径部65によって連絡路66が形成される。連絡路66は、シャンク20の周囲を取り囲むように環状に形成される。
【0069】
この際、段付き孔63の大径部65、シャンク20の連通孔24、及び、吸引通路80の排出口84が、軸方向に直交する方向に重なるように配置する。これにより、吸引通路80は、連通孔24を介して環状の連絡路66に連通する。また、第1円筒溝26及び第2円筒溝64に嵌められたOリング70は、吸引アダプター60に対してシャンク20が回転可能にシャンク20の抜け止めを行う。
【0070】
<拡径孔部削成装置の動作>
拡径孔部削成装置10は、被削成物の既成孔に拡径孔部を形成する。この既成孔は、コンクリート壁等の被削成物にドリル等の穿孔機によって形成され、例えば、有底の円柱状の孔である。
【0071】
シャンク20の装着部21に、回転電動機等を接続して作動させる。これにより、シャンク20、及び、これに結合されたカッターブレード30及びボウジョー40が回転する。また、吸引アダプター60のパイプ部62に吸引機を接続して作動させる。この際、シャンク20と吸引アダプター60との間は固定されていないため、シャンク20が回転するのに対し吸引アダプター60は回転しない。
【0072】
また、拡径孔部削成装置10を既成孔に挿入する。この際、カッターブレード30は、スプリング73によりボウジョー40の基端側に付勢されているため、カッターブレード30の切削部32はボウジョー40の傾斜面45の基端側に位置している。これにより、一対の切削部32の間隔は、既成孔の開口径よりも小さく、カッターブレード30及びボウジョー40を既成孔に挿入することができる。
【0073】
そして、ボウジョー40に対してカッターブレード30を先端側に押し込んでいく。これにより、カッターブレード30の切削部32がボウジョー40の傾斜面45上を先端側に移動する。なお、この際、切削部32は、一対の突状部47の間をこれらに沿ってスライドし、一対の突状部47によって軸方向に案内される。
【0074】
そして、切削部32は傾斜面45に沿って撓み、一対の切削部32の間隔は拡がっていく。また、これと共に、切削部32が回転することにより、切削部32の刃部35が既成孔の内面に当たり切削し、既成孔に拡径孔部が形成される。この際、被削性物の切削により粉塵が発生する。
【0075】
粉塵は、回転方向において刃部35と隣接する凹部46に入り、凹部46に開口する第2吸引口82aから第1分岐路82に吸引される。また、凹部46において第2吸引口82aから吸引されなかった粉塵は、凹部46内を自重により下降して第2開口46bに至り、第2開口46bに繋がる第1溝部90を通って第1吸引口81aに導かれ、第1吸引口81aから流通路81に吸引される。
【0076】
また、粉塵は、刃部35から下降したり、切削部32と傾斜面45との間の間隙部48に入ったりする。これらの粉塵は、下降して、刃部35及び間隙部48よりも下方にある第3吸引口83aから第2分岐路83に吸引される。また、第3吸引口83aから吸引されなかった粉塵は、傾斜面45に沿って下降して溝開口91aに至り、溝開口91aから第2溝部91を通って第1吸引口81aに導かれ、第1吸引口81aから流通路81に吸引される。
【0077】
このように、ガイド体42において第1吸引口81aよりも刃部35側に第2吸引口82a及び第3吸引口83aが配置されることにより、刃部35の切削で発生した粉塵をより速やかに吸引することができる。また、第1吸引口81aは、第2吸引口82a及び第3吸引口83aよりも下方に配置されることにより、第2吸引口82a及び第3吸引口83aにより吸引されずに下降した粉塵を吸引することができる。さらに、第1溝部90は凹部46の粉塵を第1吸引口81aに誘導し、第2溝部91は傾斜面45及び間隙部48の粉塵を第1吸引口81aに誘導することにより、粉塵をより効率的に吸引することができる。
【0078】
このように、各吸引口から吸引された粉塵は、吸引通路80を通り、その排出口84から連通孔24及び連絡路66と通り、パイプ部62から吸引機に集められる。
【0079】
このため、削成作業中に発生する粉塵を、複数に吸引口から吸引すると共に、凹部46及び各溝部により誘導して第1吸引口81aから吸い取っている。このため、粉塵が拡径孔部削成装置10の部材間に嵌り、回転が停止するロックを低減でき、削成作業をスムーズに行うことができる。
【0080】
しかも、ロックを解除する機構を拡径孔部削成装置10を設ける必要がなく、拡径孔部削成装置10の簡素化及びコスト低減化を図ることができる。また、削成作業中に外部に飛散する粉塵を軽減できるので、作業者が粉塵に暴露されることを低減し、作業環境を改善することができる。
【0081】
さらに、第1吸引口81aは、既成孔の底に対向するため、底に落ちた粉塵を吸引することができる。よって、削成終了時には既成孔及び拡径孔部の中に残る粉塵が少なく、この清掃を簡単にあるいは省略することができる。
【0082】
そして、既成孔に拡径孔部が形成されることにより、例えば、ボルト孔が被削成物に形成される。このボルト孔にアンカーボルトを挿入し、その頭部を拡大することにより、拡大した頭部が拡径孔部に係止され、アンカーボルトは抜け強度が増大する。
【0083】
<変形例1>
変形例1に係る拡径孔部削成装置10のボウジョー140では、図7(a)~図7(c)に示すように、ガイド体42は第2溝部91を有していなくてもよい。これ以外の構成は、図1(a)の拡径孔部削成装置10の構成と同様である。このため、ガイド体42は凹部46及び第1溝部90を有し、吸引通路80は流通路81、第1分岐路82及び第2分岐路83を有していることにより、拡径孔部削成装置10は、粉塵を効率的に除去することができる。
【0084】
なお、変形例1に係る拡径孔部削成装置10において、吸引通路80は第1分岐路82及び第2分岐路83の少なくともいずれか一方を有していなくてもよい。この場合であっても、流通路81により粉塵を効率的に除去することができる。
【0085】
<変形例2>
変形例2に係る拡径孔部削成装置10のボウジョー240では、図8(a)~図8(c)に示すように、ガイド体42は第1溝部90及び第2溝部91を有していなくてもよい。これ以外の構成は、図1(a)の拡径孔部削成装置10の構成と同様である。このため、ガイド体42は凹部46を有し、吸引通路80は流通路81、第1分岐路82及び第2分岐路83を有していることにより、拡径孔部削成装置10は、粉塵を効率的に除去することができる。
【0086】
<変形例3>
変形例3に係る拡径孔部削成装置10のボウジョー340では、図9(a)~図9(c)に示すように、ガイド体42は第1溝部90及び第2溝部91を有さず、吸引通路80は第2分岐路83を有していなくてもよい。これ以外の構成は、図1(a)の拡径孔部削成装置10の構成と同様である。このため、ガイド体42は凹部46を有し、吸引通路80は流通路81及び第1分岐路82を有していることにより、拡径孔部削成装置10は、粉塵を効率的に除去することができる。
【0087】
なお、変形例3に係る拡径孔部削成装置10において、吸引通路80は第1分岐路82を有さず、第2分岐路83を有していてもよい。または、変形例3に係る拡径孔部削成装置10において、吸引通路80は第1分岐路82及び第2分岐路83を有していなくてもよい。これらの場合であっても、流通路81により粉塵を効率的に除去することができる。
【0088】
<その他の変形例>
その他の変形例に係る拡径孔部削成装置10のボウジョー140では、ガイド体42は第1溝部90を有さずに第2溝部91を有していてもよい。この場合、吸引通路80は第1分岐路82及び第2分岐路83を有していてもよいし、第1分岐路82及び第2分岐路83の少なくともいずれか一方を有していなくてもよい。この場合であっても、流通路81により粉塵を効率的に除去することができる。
【0089】
さらに別の他の変形例に係る拡径孔部削成装置10のボウジョー140では、ガイド体42は第1溝部90及び第2溝部91を有し、吸引通路80は第1分岐路82及び第2分岐路83の少なくともいずれかを有していなくてもよい。この場合であっても、流通路81により粉塵を効率的に除去することができる。
【0090】
上記全ての拡径孔部削成装置10において、ガイド体42は凹部46を有していなくてもよい。この場合であっても、流通路81により粉塵を効率的に除去することができる。
【0091】
上記全ての拡径孔部削成装置10において、先端面44と第1溝部90との間の角部、及び、先端面44と第2溝部91との間の角部が面取りされていてもよい。
【0092】
上記全ての拡径孔部削成装置10において、流通路81、第1分岐路82及び第2分岐路83の各径、及び、第1溝部90及び第2溝部91の各断面積を調整することにより、第1吸引口81a、第2吸引口82a及び第3吸引口83aからの吸引力の割合を制御することができる。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明の拡径孔部削成装置は、粉塵を効率的に除去することができる拡径孔部削成装置等として有用である。
【符号の説明】
【0094】
10 :拡径孔部削成装置
30 :カッターブレード
32 :切削部
35 :刃部
40 :ボウジョー
41 :軸部
42 :ガイド体
44 :先端面
45 :傾斜面
46 :凹部
80 :吸引通路
81 :流通路
81a :第1吸引口(吸引口)
82 :第1分岐路
83 :第2分岐路
90 :第1溝部
91 :第2溝部
140 :ボウジョー
240 :ボウジョー
340 :ボウジョー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9