特許 7188762 ロールスクリーン装置

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】特許公報(B2)

(11)【特許番号】

(24)【登録日】2022-12-05

(45)【発行日】2022-12-13

(54)【発明の名称】ロールスクリーン装置

(51)【国際特許分類】

   E06B 9/42 20060101AFI20221206BHJP

   E06B 9/54 20060101ALI20221206BHJP

   E06B 9/58 20060101ALI20221206BHJP

【ＦＩ】

E06B9/42 Z

E06B9/54

E06B9/58 A

【請求項の数】 1

(21)【出願番号】P 2019138261

(22)【出願日】2019-07-26

(65)【公開番号】P2021021242

(43)【公開日】2021-02-18

【審査請求日】2022-01-21

(73)【特許権者】

【識別番号】390020101

【氏名又は名称】セイキ住工株式会社

(74)【代理人】

【識別番号】100119404

【弁理士】

【氏名又は名称】林 直生樹

(74)【代理人】

【識別番号】100072453

【氏名又は名称】林 宏

(74)【代理人】

【識別番号】100177769

【弁理士】

【氏名又は名称】石川 徹

(72)【発明者】

【氏名】守谷 将人

(72)【発明者】

【氏名】堀内 太一朗

【審査官】家田 政明

(56)【参考文献】

【文献】特開２０１８－１０５０６８（ＪＰ，Ａ）

【文献】実開平８－１６５４（ＪＰ，Ｕ）

【文献】特開平５－２７２２８２（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２００１－１４０５５９（ＪＰ，Ａ）

【文献】特公昭４７－３６６６２（ＪＰ，Ｂ１）

(58)【調査した分野】(Int.Cl.，ＤＢ名)

Ｅ０６Ｂ ９／００－９／９２

(57)【特許請求の範囲】

【請求項1】

巻取りボックス内に支持されてスクリーンの巻取り方向に回転付勢された巻取軸に、該巻取り方向の両側端に沿ってファスナー状の抜け止め片を取り付けたスクリーンを、その一端から巻取ると共に、該スクリーンの他端にスライドバーを固定し、
上記抜け止め片は、上記スクリーンの側端に一側辺を固定する帯状部片の他側辺に沿って、多数の務歯を列設した務歯列を付設することにより構成し、
該務歯列を有する抜け止め片自体は、そのスライドバー側の先端が、上記巻取りボックスのスクリーン導出口に接続したところの、上記スクリーンの側端をガイドする一対の対向するスクリーン枠内のガイドレールの係合溝に対して摺動自在に挿入できる長さを有するものとしたロールスクリーン装置において、
上記スクリーンの両側端に固定する上記抜け止め片の務歯列は、多数の務歯の相互の噛合い部が、可撓樹脂の線状材によりコイル状をなして列設された務歯列として形成されると共に、その務歯列が中央部に長手方向の芯孔を有するものとして形成され、
該務歯列の芯孔に、前記ガイドレールの係合溝に対する抜け止め片の挿通に有効な直線性を付与するための補強芯線を挿入固定している、
ことを特徴とするロールスクリーン装置。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、ロールスクリーン装置に関するものであり、更に詳しくは、巻取軸にスプリングの付勢力によって巻き取られるスクリーンの左右側端を、スクリーン枠に抜け止め状態で安定的にガイドさせるための、改良されたガイド構造を備えたロールスクリーン装置に関するものである。

【背景技術】

【0002】

ロールスクリーン装置において、スクリーンの巻取り方向に回転付勢された巻取軸に、その巻取り方向の両側端に沿ってファスナー状の抜け止め片を取り付けたスクリーンをその一端から巻取ると共に、該スクリーンの他端にスライドバーを固定し、上記抜け止め片は、上記スクリーンの側端に一側辺を固定する帯状部片の他側辺に沿って多数の務歯（ガイドレールの係合溝に係合する係合子）を列設した務歯列を付設することにより構成し、該務歯列を上記スクリーンの側端をガイドするスクリーン枠内に設けたガイドレールの係合溝に摺動自在に係合させるようにしたものは、従来から知られている。

【0003】

また、特許文献１においては、上述した周知のロールスクリーン装置の問題点を解決した下記の改良発明が開示されているが、本発明は、その改良発明に更なる改善を加えたものであり、そのため、まず上記特許文献１に開示の発明の概要について説明する。
該特許文献１に開示のロールスクリーン装置においては、巻取軸に内蔵したスプリングにより、該巻取軸に一端を取り付けたスクリーン及びその巻取り方向の両側端に沿って取り付けたファスナー状の抜け止め片に対し、スクリーンの巻取り方向に常に引張力が作用する。そのため、先端がスライドバーに取り付けられたスクリーンは、その引張力により全体的にある程度伸長するが、該スクリーンの側端に取り付けている抜け止め片は、スクリーンに比して引張力に対する強度が大きいため、該抜け止め片の一部がその伸長の差や経年劣化等に起因して変形することになる。

【0004】

そして、該抜け止め片は、スクリーンの側端に帯状部片を介して取り付けられる務歯列を備え、それをガイドレールの係合溝に摺動自在に係合させているため、該務歯列が、上記スプリングの引張力だけでなく、ガイドレールの係合溝との摩擦による摺動抵抗をも受けることになり、そのため、特にスライドバーの両端部近辺におけるスクリーンへの抜け止め片の取付け部においては、該抜け止め片の変形が帯状部片に蓄積され、該帯状部片に取り付けられている務歯列が巻取軸側に強く引き寄せられるばかりでなく、それに伴って務歯列の先端がスクリーン側にも引き寄せられることになる。

【0005】

そのため、上記巻取軸に全て巻き取られたときのスクリーンにおけるスライドバーの両端部に位置する抜け止め片の務歯列は、本来、その先端部が巻取りボックスのスクリーン導出口に接続しているスクリーン枠内のガイドレールの係合溝に係合されているべきところ、上述したようにその先端が巻取軸側に引き寄せられて、スライドバーによるスクリーンの展張開始時に、ガイドレールの係合溝に対する係合が不確実になり、更に、該務歯列の先端がスクリーン側にも引き寄せられることからも、上記務歯列の先端部がガイドレールの係合溝に安定的に挿通される可能性が低下し、また、務歯列自体は外力により比較的変形し易いものであるため、ガイドレールの係合溝の挿入口付近への衝突等により変形が更に拡大することもあって、務歯列の先端部がガイドレールの係合溝から外れ、安定的なスクリーンの展張が困難になる。

【0006】

上記特許文献１に開示の発明では、上述した既知のロールスクリーン装置における問題点を解決するため、スクリーンの巻取り方向の両側端に取り付けている抜け止め片が変形するのを抑制する補強を行っているが、同特許文献１に開示されているように、スクリーンにおけるスライドバーの取付端側において、上記抜け止め片における帯状部片への務歯列の取付部に沿って、該帯状部片を表裏外面側から挟むように補強部片を取り付けているので、スライドバーの操作が乱雑に行われた場合には、該補強部片が他物との接触等で務歯列の補強機能を失う可能性が高く、その損傷が小さな部品の損傷であっても、ロールスクリーン装置の使用を不能にするだけでなく、当該部分の補修をも簡単に行うことができない、という問題が生じることになる。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0007】

【文献】特開２０１８－１１１９２４号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0008】

本発明の技術的課題は、上述したロールスクリーン装置における、スクリーンの巻取り方向の両側端に取り付けている抜け止め片の変形を抑制するための補強を、より簡易に行えるようにすると同時に、スライドバーの操作が乱雑に行われることがあったとしても、補強部片が他物と接触するような可能性もなく、該抜け止め片における務歯列を、ガイドレールの係合溝に安定的に挿通しておくことを可能にした構成を提供することにある。

【課題を解決するための手段】

【0009】

上記課題を解決するため、本発明によれば、巻取りボックス内に支持されてスクリーンの巻取り方向に回転付勢された巻取軸に、該巻取り方向の両側端に沿ってファスナー状の抜け止め片を取り付けたスクリーンを、その一端から巻取ると共に、該スクリーンの他端にスライドバーを固定し、上記抜け止め片は、上記スクリーンの側端に一側辺を固定する帯状部片の他側辺に沿って、多数の務歯を列設した務歯列を付設することにより構成し、該務歯列を有する抜け止め片自体は、そのスライドバー側の先端が、上記巻取りボックスのスクリーン導出口に接続したところの、上記スクリーンの側端をガイドする一対の対向するスクリーン枠内のガイドレールの係合溝に対して摺動自在に挿入できる長さを有するものとしたロールスクリーン装置において、上記スクリーンの両側端に固定する上記抜け止め片の務歯列は、多数の務歯の相互の噛合い部が、可撓樹脂の線状材によりコイル状をなして列設された務歯列として形成されると共に、その務歯列が中央部に長手方向の芯孔を有するものとして形成され、該務歯列の芯孔に、前記ガイドレールの係合溝に対する抜け止め片の挿通に有効な直線性を付与するための補強芯線を挿入固定していることを特徴とするロールスクリーン装置が提供される。

【発明の効果】

【0010】

上述した本発明のロールスクリーン装置によれば、スクリーンの巻取り方向の両側端に取り付けている抜け止め片の変形を抑制するための補強を、より簡易に行えると同時に、スライドバーの操作が乱雑に行われることがあったとしても、補強部片が他物と接触するような可能性もなく、該抜け止め片における務歯列を、ガイドレールの係合溝に安定的に挿通しておくことができる。

【図面の簡単な説明】

【0011】

【図1】本発明に係るロールスクリーン装置の実施例における要部の縦断正面図である。

【図2】上記実施例におけるロールスクリーン装置の全体的構成を示す水平断面図である。

【図3】上記実施例における抜け止め片の務歯列の芯孔に対して補強芯線を挿入する前段階の状態を示す部分縦断側面図である。

【図4】上記実施例における抜け止め片の務歯列をガイドレールの係合溝に係合させた状態を、該ガイドレールの長手方向に直交する断面によって示す断面図である。

【図5】上記実施例の抜け止め片を、その長手方向の端面側から見た拡大端面図である。

【図6】上記実施例における補強芯線が未挿入である抜け止め片の一部拡大正面図である。

【発明を実施するための形態】

【0012】

図１及び図２は、本発明に係るロールスクリーン装置の実施例における基本的な構成を示し、この基本的構成自体は、本発明の特徴とするところを明確に示すものではなく、特許文献１においても開示されている既知の構成を主体とするものではあるが、図３～図６を参照して後述するところに本発明の特徴的な構成があり、その構成によって図１及び図２の基本的構成を備えるロールスクリーン装置が安定的に操作可能になることから、ここでは先ず上記基本的構成の概要について予め説明する。

【0013】

上記図１及び図２に示すロールスクリーン装置は、スクリーンを張設するスクリーン枠の一方の側枠を構成するための巻取りボックス１０を備えている。該巻取りボックスは、その内部に、スクリーン１３を巻き取る巻取軸１１が、回転の軸線を鉛直方向に向けて回転可能に支持され、それに内蔵しているスプリング１２の付勢力によりスクリーン１３の巻取り方向に回転付勢され、巻取軸１１の周面に巻き取るスクリーン１３の一端を該巻取軸に固定すると共に、該スクリーンの他端にそれを展張操作するためのスライドバー１７を固定している。

【0014】

また、上記スクリーン枠は、上記巻取りボックス１０に対向する受け枠１４と、該巻取りボックス１０及び受け枠１４の上下端を相互に連結する上下一対の横枠１５ａ，１５ｂとを備え、上記スライドバー１７の上下端をそれらに沿って摺動するようにガイドさせている。更に、上記スクリーン１３は、巻取軸１１による巻取り方向の両側端に沿ってファスナー状の抜け止め片１８を取り付け、それを上記一対の横枠１５ａ，１５ｂ内に設けたガイドレール１６によりガイドさせている（図１及び図４参照）。

【0015】

上記構成を備えたロールスクリーン装置は、そのスライドバー１７を上下横枠１５ａ，１５ｂに沿って左右に移動操作することにより、巻取軸１１に巻かれたスクリーン１３をスクリーン枠に張設し、或いは、巻取軸１１に巻き取って巻取りボックス１０に収納することが可能なものである。

【0016】

なお、上記図１及び図２においては、巻取りボックス１０内に支持されて回転の軸線が鉛直配置の巻取軸１１に横引きのスクリーン１３を巻き取るロールスクリーン装置を示しているが、それらは、スクリーン枠の上部に回転の軸線を水平配置として設置した巻取軸１１に、縦引きのスクリーン１３を巻き取るロールスクリーン装置として構成することもできる。また、それらの図中において、符号２４は、スライドバー１７に設けたスクリーン端の連結具、符号２５は、該連結具２４によって取り付けるスクリーン１３の端部に設けた抜け止め片を示している。

【0017】

次に、図１～図６を参照して、上記スクリーン１３の巻取軸１１による巻取り方向の両側端に沿って取り付けているファスナー状の抜け止め片１８について、更に具体的に説明する。
上記抜け止め片１８は、図１に示すように、スクリーン１３の側端に一側辺を固定する帯状部片１９の他側辺に沿って、多数の務歯２１を列設してなる務歯列２０を付設することにより構成したものである。そして、該抜け止め片１８を取り付けたスクリーン１３の両側端をスクリーン枠の上下横枠１５ａ，１５ｂに抜け止め状態で安定的にガイドさせるため、該抜け止め片１８における務歯列２０を、該横枠１５ａ，１５ｂ内に設けたガイドレール１６の係合溝１６ａに対して、次のようにして摺動自在に係合させている。

【0018】

即ち、上述したガイドレール１６によるスクリーン１３の両側端のガイドのため、上記スクリーン枠の上下横枠１５ａ，１５ｂ内のガイドレール１６は、巻取りボックス１０内の巻取軸からのスクリーン１３の繰り出しが行われる際には、その導出端における抜け止め片１８を上下横枠１５ａ，１５ｂ内のガイドレール１６の係合溝１６ａに挿通させる必要がある。そのため、上記スクリーン枠の横枠１５ａ，１５ｂは、内部に収容したガイドレール１６と共に、上記巻取りボックス１０のスクリーン導出口１０ａに接続するようにして、該巻取りボックス１０に連結しておく必要がある。

【0019】

また、スクリーン１３における上記スライドバー１７への取付端側の務歯列２０は、上記巻取軸１１への全スクリーンの巻取り状態において、その務歯列２０の先端部が上記スクリーン枠の上下横枠１５ａ，１５ｂ内のガイドレール１６の係合溝１６ａから離脱しているようでは、巻取軸１１に巻き取られているスクリーンの展張開始時に、務歯列２０の先端部がガイドレール１６の係合溝１６ａに安定的に挿通される可能性が低下するので、巻取軸１１への全スクリーンの巻取り状態において、務歯列２０の先端が上記スクリーン枠内のガイドレール１６の係合溝１６ａに確実に挿入される長さを有するものとすることが必要である。

【0020】

そこで、この実施例における上記抜け止め片１８としては、図１に示しているように、上記スクリーン１３のスライドバー１７への取付端側における務歯列２０に延長部１８ａを連設し、巻取軸１１への全スクリーンの巻取り状態において、その延長部１８ａの先端が上記スクリーン枠内のガイドレール１６の係合溝１６ａに安定的に挿入される長さを有するものとしている。

【0021】

しかしながら、上記務歯列２０に該延長部１８ａを連接したとしても、特許文献１の問題点として前述したように、スライドバー１７の操作が乱雑に行われた場合には、務歯列２０の延長部１８ａがスクリーン１３に作用する巻取軸内のスプリング１２の引張力やガイドレール１６の係合溝１６ａとの摩擦による摺動抵抗の影響、或いは他物との接触等で変形し、確実にガイドレール１６の係合溝１６ａに挿入されるとは限らず、そのため、本発明においては、該巻取軸１１に巻き取られていない範囲の上記延長部１８ａ側の務歯列２０について、上記係合溝１６ａへの挿通を安定化するための直線性を付与する補強を、以下に述べるような確実で安定的な手段によって行えるようにしている。

【0022】

即ち、上記務歯列２０の延長部１８ａに、変形や移動を抑制する補強を行う場合に、該務歯列２０の延長部１８ａ自体をその外側に配設した補強部片によって補強するのは、該延長部１８ａが非常に狭い空間に存在することをも考慮すると、例えばスライドバー１７の操作が乱雑に行われた場合等において、該補強部片が他物との接触で務歯列２０の補強機能を失う可能性が高く、不適切と考えられる。

【0023】

そこで、本発明者らは、上記ガイドレール１６の係合溝１６ａに係合させる抜け止め片１８として用いるところの、各種被服等において常用されている樹脂ファスナーの務歯列に着目し、該務歯列に直線性を付与する適切な補強について再考した結果、上記樹脂ファスナーにおいては、図５及び図６に示すように、相互の噛合い部である務歯２１が、可撓樹脂の線状材によりコイル状をなして列設された務歯列２０として形成され、それを、図５に示すように、抜け止め片１８の帯状部片１９に対して縫着線２０ａに沿って固定する際に、該務歯列２０の中央部に、該務歯列の長手方向に沿って補強用の線条の挿通に適した細孔が形成されているものが存在し、該務歯列２０の長手方向に沿う細孔が、金属又は合成樹脂製等の比較的硬質の棒状部材からなる補強芯線２３を挿通する芯孔２２として有効であることを見出し、また該芯孔２２がそれに挿通した補強芯線２３の容易な固定に有効であるだけでなく、該補強芯線が他物と接触しない務歯列２０の中に挿通されるため、それが補強機能を失う可能性が殆どあり得ないことを確かめることができた。

【0024】

以上に詳述した本発明のロールスクリーン装置によれば、既知のロールスクリーン装置と同様に、スクリーン１３の巻取り方向の両側端に取り付けている抜け止め片１８が変形するのを抑制するための補強を行うが、その補強を抜け止め片１８の芯孔２２に対する補強芯線２３の挿入により簡易に行えると同時に、スライドバー１７の操作が乱雑に行われることがあったとしても、補強部片が他物と接触するような可能性もなく、該抜け止め片１８における務歯列２０を、ガイドレール１６の係合溝１６ａに安定的に挿通しておくことが可能になり、長期に亘るスクリーン１３の円滑な展張操作を確保することができる。

【符号の説明】

【0025】

１０ 巻取りボックス
１０ａ スクリーン導出口
１１ 巻取軸
１２ スプリング
１３ スクリーン
１６ ガイドレール
１６ａ 係合溝
１７ スライドバー
１８ 抜け止め片
１８ａ 延長部
１９ 帯状部片
２０ 務歯列
２１ 務歯
２２ 芯孔
２３ 補強芯線

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】