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特許7188775シングル・チップ二軸磁気抵抗角度センサ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】シングル・チップ二軸磁気抵抗角度センサ
(51)【国際特許分類】
   G01R 33/02 20060101AFI20221206BHJP
   G01R 33/09 20060101ALI20221206BHJP
   H01L 43/08 20060101ALI20221206BHJP
   H01L 43/10 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
G01R33/02 L
G01R33/09
H01L43/08 Z
H01L43/10
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019546016
(86)(22)【出願日】2018-02-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-04-09
(86)【国際出願番号】 CN2018076783
(87)【国際公開番号】W WO2018153335
(87)【国際公開日】2018-08-30
【審査請求日】2020-11-16
(31)【優先権主張番号】201710099463.1
(32)【優先日】2017-02-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】514116947
【氏名又は名称】江▲蘇▼多▲維▼科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】MULTIDIMENSION TECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Building D & E, No.2 Guangdong Road,Zhangjiagang Free Trade Zone,Zhangjiagang,Jiangsu,215634 China
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ディーク、ジェイムズ ゲーザ
(72)【発明者】
【氏名】チョウ、チーミン
【審査官】島田 保
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第106324534(CN,A)
【文献】特開2009-085953(JP,A)
【文献】特開2006-073087(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104776794(CN,A)
【文献】特表2003-526083(JP,A)
【文献】特開2011-027495(JP,A)
【文献】特開2012-137312(JP,A)
【文献】特開2013-202646(JP,A)
【文献】特開平11-312737(JP,A)
【文献】特開2015-111093(JP,A)
【文献】特表2005-534199(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 33/00-33/26
H01L 43/08
H01L 43/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シングル・チップ二軸磁気抵抗角度センサであって、
X-Y平面内の基板と、プッシュ・プルX軸に沿って位置合わせされた磁気抵抗角度センサと、プッシュ・プルY軸に沿って位置合わせされた磁気抵抗角度センサとを備え、両方は該基板上に位置し、
プッシュ・プルX軸における該磁気抵抗角度センサは、Xプッシュ・アームおよびXプル・アームを備え、
プッシュ・プルY軸における該磁気抵抗角度センサは、Yプッシュ・アームおよびYプル・アームを備え、
該Xプッシュ・アーム、該Xプル・アーム、該Yプッシュ・アーム、および該Yプル・アームの各々は、少なくとも1つの磁気抵抗角度感知ユニット・アレイを備え、該Xプッシュ・アーム、該Xプル・アーム、該Yプッシュ・アーム、および該Yプル・アームの該磁気抵抗角度感知ユニット・アレイの磁場感受方向は、それぞれ+X、-X、+Y、および-Y方向に沿っており、
該X軸磁気抵抗角度センサおよび該Y軸磁気抵抗角度センサは、共通の幾何学的中心を有し、
前記磁気抵抗角度感知ユニット・アレイは、相互接続電線によって接続され、該相互接続電線は、直線区間と曲がりくねった区間とをそれぞれ備え、該直線区間の一端は、前記磁気抵抗感知ユニットに接続され、該直線区間の他端は、該曲がりくねった区間に接続され、
各該磁気抵抗角度感知ユニット・アレイは、複数の磁気抵抗角度感知ユニットを備え、該磁気抵抗角度感知ユニットは、TMRまたはGMRスピン・バルブ・ユニットであり、全ての該磁気抵抗角度感知ユニットは、同じ磁性多層膜構造を有し、該磁性多層膜構造は、下から上へシード層、反強磁性層、ピンニング層、Ru層、参照層、非磁性中間層、自由層、および不活性化層を備え、または下から上へシード層、反強磁性層、参照層、非磁性中間層、自由層、および不活性化層を備え、
該磁気抵抗角度感知ユニットがTMRであるとき、該非磁性中間層はAlまたはMgOであり、該磁気抵抗角度感知ユニットがGMRスピン・バルブであるとき、該非磁性中間層はAuまたはCuであり、
該反強磁性層の磁化方向は、レーザ・プログラム制御加熱磁気アニーリングによって得られ、同じ該磁化方向を有する磁気抵抗ブリッジ・アームは、互いに隣接して位置し、断熱ギャップは、異なる磁場感受方向を有する隣接した磁気抵抗角度感知ユニット・アレイ間で与えられ
磁場減衰層は、高磁場角度センサを形成するように前記磁気抵抗角度感知ユニットの表面上に電気メッキをされ、該磁場減衰層の材料は、Fe元素、Co元素,およびNi元素のうちの1つまたは複数を含む高透磁率軟磁性合金であり、絶縁材料層は、前記磁気抵抗角度感知ユニットと該磁場減衰層との間に設けられ、該磁場減衰層は、円形構造であり、前記磁気抵抗角度感知ユニットは、楕円形構造または円形構造である、シングル・チップ二軸磁気抵抗角度センサ。
【請求項2】
プッシュ・プルX軸における前記磁気抵抗角度センサおよびプッシュ・プルY軸における前記磁気抵抗角度センサは、半ブリッジ、フル・ブリッジ、または準ブリッジ構造である、請求項1記載のシングル・チップ二軸磁気抵抗角度センサ。
【請求項3】
前記磁気抵抗角度感知ユニット・アレイは、
+X、-Y、+Y、-X、
または+X、+Y、-Y、-X、
または-X、-Y、+Y、+X、
または+X、-Y、+Y、-X、として配列される、請求項1記載のシングル・チップ二軸磁気抵抗角度センサ。
【請求項4】
記磁気抵抗角度感知ユニットは、楕円形構造である場合、該磁場減衰層の直径は、前記磁気抵抗角度感知ユニットの主軸距離よりも大きい、請求項1記載のシングル・チップ二軸磁気抵抗角度センサ。
【請求項5】
記磁場減衰層は、円形構造である場合、前記磁気抵抗角度感知ユニットは、円形構造であり、前記磁気抵抗角度感知ユニットの直径は、10マイクロメートルよりも大きく、前記磁場減衰層の直径は、前記磁気抵抗角度感知ユニットの直径よりも大きい、請求項1記載のシングル・チップ二軸磁気抵抗角度センサ。
【請求項6】
前記Xプッシュ・アーム、前記Xプル・アーム、前記Yプッシュ・アーム、および前記Yプル・アームは、同じ抵抗を有する同じ個数の磁気抵抗角度感知ユニットを備え、前記磁気抵抗角度感知ユニットは、直列接続、並列接続、または直接並列ハイブリッド接続によって2ポート構造を形成する、請求項1記載のシングル・チップ二軸磁気抵抗角度センサ。
【請求項7】
該曲がりくねった区間から前記磁気抵抗角度感知ユニット・アレイまでの距離は、15マイクロメートルよりも大きい、請求項1記載のシングル・チップ二軸磁気抵抗角度センサ。
【請求項8】
共通電源端子に接続する相互接続電線は、共通接地端子に接続する相互接続電線と同じ相互接続抵抗を有し、前記共通電源端子に接続する前記相互接続電線は、共通信号出力端子に接続する相互接続電線と同じ相互接続抵抗を有し、前記相互接続電線は、前記直線区間および前記曲がりくねった区間を通じて同じ相互接続抵抗を得る、請求項7記載のシングル・チップ二軸磁気抵抗角度センサ。
【請求項9】
前記磁気抵抗角度感知ユニットの前記磁場感受方向と前記ピンニング層の磁化方向との間の挟角は、85°から95°の範囲である、請求項1記載のシングル・チップ二軸磁気抵抗角度センサ。
【請求項10】
前記不活性化層は、BCB、Si、Al、HfO、AlF、GdF、LaF、MgF、Sc、HfO、またはSiOである紫外線レーザ透過材料である、請求項1記載のシングル・チップ二軸磁気抵抗角度センサ。
【請求項11】
前記不活性化層は、ダイヤモンドライク・カーボン膜、MgO、SiN、SiC、AlF、MgF、SiO、Al、ThF、ZnS、ZnSe、ZrO、HfO、TiO、Ta、Si、またはGeである赤外線レーザ透過材料である、請求項1記載のシングル・チップ二軸磁気抵抗角度センサ。
【請求項12】
前記磁性多層膜構造は、前記不活性化層の表面を覆う反射防止コーティングをさらに備える、請求項1記載のシングル・チップ二軸磁気抵抗角度センサ。
【請求項13】
前記X軸磁気抵抗角度センサおよび前記Y軸磁気抵抗角度センサの電源ピン、接地ピン、および出力ピンは、センサ・チップの縁部に沿って配列される、請求項1記載のシングル・チップ二軸磁気抵抗角度センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気センサの分野に関し、詳細には、シングル・チップ二軸磁気抵抗角度センサに関する。
【背景技術】
【0002】
X方向およびY方向などの2つの直交方向における外部磁場角度情報を測定するための二軸角度センサは、磁気ホイール速度測定またはエンコーダ角度測定に使用することができ、様々な用途によく使用される。
【0003】
二軸磁気抵抗角度センサは、2つの単軸磁気抵抗角度センサ、すなわち、X軸磁気抵抗角度センサおよびY軸磁気抵抗角度センサで構成される。各単軸XまたはY磁気抵抗角度センサは、一般に、磁気抵抗角度センサの信号出力を強化するためにプッシュ・プル・ブリッジ構造を採用する。プッシュ・プル・ブリッジは、プッシュ磁気抵抗角度感知ユニットと、プル磁気抵抗角度感知ユニットとからなり、これらは反対の磁場感受方向を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
TMRまたはGMR型二軸磁気抵抗角度センサについては、X軸などの単一の磁場感受方向を有する磁気抵抗感知ユニット・チップは、通常、それぞれ90度、180度、および270度で対称配置され(flipped)、このようにしてY軸プッシュ磁気抵抗感知ユニット・チップ、およびY軸プル磁気抵抗感知ユニット・チップ、ならびにX軸プッシュ磁気抵抗センサ・ユニット・チップ、およびX軸プル磁気抵抗感知ユニット・チップを得る。したがって、チップ対称配置法(flipped chip method)が二軸磁気抵抗センサに採用されるとき、少なくとも4つのチップが必要とされる。利点は、プレパレーション法(preparation method)は単純であり、たった1つのチップが必要とされ、強磁性参照層構造に対応することである。欠点は、ポジショニングのために4つのチップが同じ平面内で動作させられる必要があることであり、このため、操作誤差によって引き起こされるセンサ測定精度の損失の可能性を増大させる。
【0005】
反対の強磁性参照層を有するプッシュ磁気抵抗感知ユニットおよびプル磁気抵抗感知ユニットは、反強磁性層および金属スペーサ層と相互結合された強磁性層で構成された多層膜構造を有する強磁性参照層を利用することによって製造することができる。直交する強磁性参照層の向きは、2回の磁場熱アニーリングの後に2つの異なる反強磁性層AF1およびAF2を用いて制御することができ、これの欠点は、多層膜を堆積させるために少なくとも4つの多層膜構造と2回の磁場アニーリングが必要とされるので、微細加工プロセスの複雑さが増すことである。
【0006】
中国特許出願CN201610821610.7は、磁気抵抗感知ユニットのレーザ・プログラム磁場アニーリングを走査する方法を開示しており、これは、ブロッキング温度を上回るまで反強磁性層を急速に加熱し、一方、冷却プロセス中に磁場は任意の所望の方向に印加され、これによってシングル・チップにおける磁気抵抗感知ユニットの磁場感知方向の確立(development)を可能にする。この方法の場合、シングル・チップ上の二軸磁気抵抗感知ユニットのための4つの直交するように向けられた磁気抵抗感知ユニットおよびそのアレイが製造でき、それによって対称配置されたチップの正確なポジショニングの問題、および様々な磁性多層膜構造を堆積させるための微細加工プロセスの複雑さを克服し、シングル・チップ二軸磁気抵抗角度センサは、大量生産することができる。一方、中国特許公開CN104776794Aは、シングル・パッケージ高強度磁場磁気抵抗角度センサを開示しており、これは、磁気抵抗角度感知ユニットの表面上に磁場減衰層を追加することによって磁気抵抗角度感知ユニットの磁場測定範囲を増大させる。磁気抵抗角度センサは、チップ対称配置法をさらに(still)使用して磁気抵抗感知ユニットの磁場感受方向を変える。したがって、レーザ支援加熱磁場アニーリング法が、磁気抵抗感知ユニットの磁場感受方向の書き込み動作を実現するために使用される場合、シングル・チップ二軸高磁場強度磁気抵抗角度センサを得ることができる。
【0007】
さらに、実際のレーザ加熱磁気アニーリング・プロセスでは、加工中に、磁気抵抗角度感知ユニットの円形形状からの可能性ある逸脱、異方性分散、応力、および他の要因によって、ピンニング層の実際の磁化方向が設定の+X、-X、+Y、および-Y方向から逸脱させられる可能性がある。したがって、磁気抵抗角度感知ユニットの効率的な動作を確実にするために、+X、-X軸の各磁気抵抗角度感知ユニットおよび+Y、-Y軸の各磁気抵抗角度感知ユニットのピンニング層の磁化方向間の挟角の範囲を設定することも必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の問題を解決するために、本発明に提案されるシングル・チップ磁気抵抗角度センサは、X-Y平面内の基板と、共に基板上に設置されたプッシュ・プルX軸における磁気抵抗角度センサおよびプッシュ・プルY軸における磁気抵抗角度センサとを備える。プッシュ・プルX軸における磁気抵抗角度センサは、Xプッシュ・アームおよびXプル・アームを備え、プッシュ・プルY軸における磁気抵抗角度センサは、Yプッシュ・アームおよびYプル・アームを備え、Xプッシュ・アーム、Xプル・アーム、Yプッシュ・アーム、およびYプル・アームの各々は、少なくとも1つの磁気抵抗角度感知ユニット・アレイを備える。Xプッシュ・アーム、Xプル・アーム、Yプッシュ・アーム、およびYプル・アームの磁気抵抗角度感知ユニット・アレイの磁場感受方向は、それぞれ+X、-X、+Y、および-Y方向に沿っている。X軸磁気抵抗角度センサおよびY軸磁気抵抗角度センサは、共通の幾何学的中心を有し、各磁気抵抗角度感知ユニット・アレイは、複数の磁気抵抗角度感知ユニットを備える。磁気抵抗角度感知ユニットは、TMRまたはGMRスピン・バルブ・ユニットであり、全ての磁気抵抗角度感知ユニットは、同じ磁性多層膜構造を有する。磁性多層膜構造は、上から下へシード層、反強磁性層、ピンニング層、Ru層、参照層、非磁性中間層、自由層、および不活性化層を備え、または上から下へシード層、反強磁性層、参照層、非磁性中間層、自由層、および不活性化層を備える。磁気抵抗角度感知ユニットがTMRであるとき、非磁性中間層は、AlまたはMgOであり、磁気抵抗角度感知ユニットがGMRスピン・バルブであるとき、非磁性中間層は、AuまたはCuである。
【0009】
反強磁性層の磁化方向は、レーザ加熱磁気アニーリングによって得られる。同じ磁化方向を有する磁気抵抗ブリッジ・アームは、互いに隣接して位置し、断熱ギャップは、異なる磁場感受方向を有する隣接した磁気抵抗角度感知ユニット・アレイ間で与えられる。
【0010】
さらに、プッシュ・プルX軸における磁気抵抗角度センサおよびプッシュ・プルY軸における磁気抵抗角度センサは、半ブリッジ、フル・ブリッジ、または準ブリッジ構造である。
【0011】
さらに、磁気抵抗角度感知ユニット・アレイは、
+X、-Y、+Y、-X、
または、+X、+Y、-Y、-X、
または-X、-Y、+Y、+X、
または+X、-Y、+Y、-X、
として配列される。
【0012】
さらに、磁場減衰層は、高磁場角度センサを形成するように磁気抵抗角度感知ユニットの表面上に電気メッキをされる。磁場減衰層の材料は、Fe元素、Co元素,およびNi元素のうちの1つまたは複数を含む高透磁率軟磁性合金である。絶縁材料層は、磁気抵抗角度感知ユニットと磁場減衰層との間に設けられ、磁場減衰層は、円形構造であり、磁気抵抗角度感知ユニットは、楕円形構造であり、磁場減衰層の直径は、磁気抵抗角度感知ユニットの主軸距離よりも大きい。
【0013】
さらに、高磁場角度センサは、磁気抵抗角度感知ユニットの表面上に形成され、磁場減衰層は、円形構造であり、磁気抵抗角度感知ユニットは、円形構造であり、磁気抵抗角度感知ユニットの直径は、10ミクロンよりも大きく、磁場減衰層の直径は、磁気抵抗角度感知ユニットの直径よりも大きい。
【0014】
さらに、Xプッシュ・アーム、Xプル・アーム、Yプッシュ・アーム、およびYプル・アームは、同じ抵抗を有する同じ個数の磁気抵抗角度感知ユニットを備え、磁気抵抗角度感知ユニットは、直列接続、並列接続、または直接並列ハイブリッド接続によって2ポート構造を形成する。
【0015】
さらに、磁気抵抗角度感知ユニット・アレイは、相互接続電線によって接続され、相互接続電線は、直線区間と曲がりくねった区間とを備える。直線区間の一端は、磁気抵抗感知ユニットに接続され、直線区間の他端は、曲がりくねった区間に接続され、曲がりくねった区間から磁気抵抗角度感知ユニット・アレイまでの距離は、15ミクロンよりも大きい。
【0016】
さらに、共通電源端子に接続する相互接続電線は、共通接地端子に接続する相互接続電線と同じ相互接続抵抗を有し、共通電源端子に接続する相互接続電線は、共通信号出力端子に接続する相互接続電線と同じ相互接続抵抗を有し、相互接続電線は、直線区間および曲がりくねった区間を通じて同じ相互接続抵抗を得る。
【0017】
さらに、磁気抵抗角度感知ユニットの磁場感受方向とピンニング層の磁化方向との間の挟角は、85°から95°の範囲である。
【0018】
さらに、不活性化層は、BCB、Si、Al、HfO、AlF、GdF、LaF、MgF、Sc、HfO、またはSiOである紫外線レーザ透過材料である。
【0019】
さらに、不活性化層は、ダイヤモンドライク・カーボン膜、MgO、SiN、SiC、AlF、MgF、SiO、Al、ThF、ZnS、ZnSe、ZrO、HfO、TiO、Ta、Si、またはGeである赤外線レーザ透過材料である。
【0020】
さらに、磁性多層膜構造は、不活性化層の表面を覆う反射防止コーティングをさらに備える。
【0021】
さらに、X軸磁気抵抗角度センサおよびY軸磁気抵抗角度センサの電源ピン、接地ピン、および出力ピンは、センサ・チップの縁部に沿って配列される。
【0022】
先行技術と比較して、本発明は、以下の技術的効果を有する。本発明は、シングル・チップ構造を採用し、同一のチップ上に2つの角度センサを集積しており、これらの2つの角度センサの磁気抵抗角度感知ユニットは、同じ磁性多層膜構造を有する。本発明は、コンパクトな構造、高精度、小型サイズ、および大きい磁場動作範囲を実現する能力という利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明によるシングル・チップ二軸磁気抵抗角度センサの概略図である。
図2(a)】磁気抵抗角度感知ユニットの磁性多層膜構造である。
図2(b)】図2(a)の100の拡大構造図である。
図2(c)】磁気抵抗角度感知ユニットの別の磁性多層膜構造である。
図2(d)】図2(c)の200の拡大構造図である。
図3(a)】本発明による反強磁性層の磁化方向がX方向にある磁気抵抗角度感知ユニットの平面図である。
図3(b)】本発明による反強磁性層の磁化方向がY方向にある磁気抵抗角度感知ユニットの平面図である。
図4(a)】本発明によるピンニング層の磁化方向がX方向にある高磁界強度磁気抵抗角度感知ユニットの平面図である。
図4(b)】本発明によるピンニング層の磁化方向がY方向にある高磁界強度磁気抵抗角度感知ユニットの平面図である。
図5(a)】本発明によるピンニング層の磁化方向がX方向にある高磁界強度磁気抵抗角度感知ユニットの側面図である。
図5(b)】本発明によるピンニング層の磁化方向がY方向にある高磁界強度磁気抵抗角度感知ユニットの側面図である。
図6(a)】本発明によるプッシュ・プルX軸における磁気抵抗角度センサの構造図である。
図6(b)】本発明によるプッシュ・プルY軸における磁気抵抗角度センサの構造図である。
図7】本発明によるプッシュ・プル磁気抵抗角度センサ相互接続抵抗の配電図である。
図8(a)】本発明による磁気抵抗角度感知ユニット・アレイの分布構造図である。
図8(b)】本発明による磁気抵抗角度感知ユニット・アレイの別の分布構造図である。
図8(c)】本発明による磁気抵抗角度感知ユニット・アレイの別の分布構造図である。
図8(d)】本発明による磁気抵抗角度感知ユニット・アレイの別の分布構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施形態の目的、技術的課題、および利点をよりずっと明確にさせるために、本発明の実施形態における技術的解決策は、以下、本発明の実施形態における添付図面を参照して明確かつ完全に説明される。説明される実施形態は、本発明の全ての実施形態とはいくらか異なることが明らかである。
【0025】
以下、添付図面を参照して、実施形態を組わせて本発明を詳細に説明する。
【実施例1】
【0026】
図1は、シングル・チップ二軸磁気抵抗角度センサの概略図であり、このシングル・チップ二軸磁気抵抗角度センサは、X-Y平面上の基板1と、プッシュ・プルX軸における磁気抵抗角度センサ2と、プッシュ・プルY軸における磁気抵抗角度センサ3とを備え、両方は基板1上に位置する。X軸磁気抵抗角度センサ2およびY軸磁気抵抗角度センサ3は、共通の幾何学的中心を有し、基板1上で測定されるX軸磁気抵抗センサの磁場領域とY軸磁気抵抗センサの磁場領域とが、同じ平均値を有するようになっている。プッシュ・プルX軸における磁気抵抗角度センサは、Xプッシュ・アームおよびXプル・アームを備え、プッシュ・プルY軸における磁気抵抗角度センサは、Yプッシュ・アームおよびYプル・アームを備える。Xプッシュ・アームは、磁場感受方向が+X方向にある少なくとも1つの磁気抵抗角度感知ユニット・アレイ4および5を備え、Xプル・アームは、磁場感受方向が-X方向にある少なくとも1つの磁気抵抗角度感知ユニット・アレイ6および7を備える。Yプッシュ・アームは、磁場感受方向が+Y方向にある少なくとも1つの磁気抵抗角度感知ユニット・アレイ8および9を備え、Yプッシュ・アームは、磁場感受方向が-Y方向にある少なくとも1つの磁気抵抗角度感知ユニット・アレイ10および11を備える。
【0027】
図1に見られるように、異なる磁場感受方向を有する2つの隣接した磁気抵抗感知ユニット・アレイ、例えば、4、5および8、9;8、9 および10、11;10、11および6、7は、それぞれ断熱ギャップ12-1、12-2、12-3によって分離されている。具体的には、断熱ギャップ12-1は、+X方向における磁気抵抗角度感知ユニット・アレイと+Y方向における磁気抵抗角度感知ユニット・アレイとの間に設けられ、すなわち、断熱ギャップ12-1は、磁気抵抗角度感知ユニット・アレイ4と磁気抵抗角度感知ユニット・アレイ8の間、かつ磁気抵抗角度感知ユニット・アレイ5と磁気抵抗角度感知ユニット・アレイ8の間に設けられる。これに応じて、断熱ギャップ12-2は、+Y方向における磁気抵抗角度感知ユニット・アレイと-Y方向における磁気抵抗角度感知ユニット・アレイの間に設けられ、すなわち、断熱ギャップ12-2は、磁気抵抗角度感知ユニット・アレイ8と磁気抵抗角度感知ユニット・アレイ10の間、かつ磁気抵抗角度感知ユニット・アレイ9と磁気抵抗角度感知ユニット・アレイ11の間に設けられる。また、断熱ギャップ12-3は、-Y方向における磁気抵抗角度感知ユニット・アレイと-X方向における磁気抵抗角度感知ユニット・アレイとの間に設けられ、すなわち、断熱ギャップ12-3は、磁気抵抗角度感知ユニット・アレイ10と磁気抵抗角度感知ユニット・アレイ6の間、かつ磁気抵抗角度感知ユニット・アレイ11と磁気抵抗角度感知ユニット・アレイ7の間に設けられる。断熱ギャップ12は、異なる磁場感受方向を有する隣接した磁気抵抗感知ユニット・アレイに対してのレーザ加熱による影響を隔絶することを目指している。
【0028】
さらに、+X、-X、+Y、および-Yの磁場の向きにおける磁気抵抗角度感知ユニット・アレイは、同じ磁気抵抗角度感知ユニット15で全て構成される。Xプッシュ・アーム、Xプル・アーム、Yプッシュ・アーム、およびYプル・アームは、+X、-X、+Y、および-Yの磁場感知方向に同じ個数の磁気抵抗角度感知ユニットをそれぞれ含み、それらは、直列接続、並列接続、または直接並列ハイブリッド接続によって2ポート構造の中に接続され、同じ抵抗を有する。
【0029】
磁気抵抗角度感知ユニット・アレイは、相互接続電線13によって接続されている。磁気抵抗角度感知ユニット・アレイ内で磁気抵抗角度感知ユニットに接続されていない相互接続電線13は、磁気抵抗感知ユニット・アレイまでの距離14が15μmよりも大きい範囲内に位置する。特に、相互接続電線は、直線区間と曲がりくねった区間とを備え、直線区間の一端は、磁気抵抗感知ユニットに接続され、直線区間の他端は、曲がりくねった区間に接続されている。曲がりくねった区間から磁気抵抗角度感知ユニット・アレイまでの距離は、15ミクロンよりも大きい。さらに、相互接続電線の曲がりくねった区間16は、相互接続電線の全長を増加させることによって相互接続電線抵抗を増大させることを目指している。
【0030】
図2は、磁気抵抗角度感知ユニットの磁性多層膜構造の図である。磁気抵抗角度感知ユニット20は、磁気トンネル接合MTJまたはGMRスピン・バルブであり、2つの角度センサの磁気抵抗角度感知ユニットは、同じ磁性多層膜構造を有する。図2(a)は、磁気抵抗角度感知ユニットの磁性多層膜構造を示し、図2(b)は、図2(a)の100の拡大構造図である。磁性多層膜構造は、上から下へシード層23と、反強磁性層24と、ピンニング層25と、Ru26と、参照層27と、非磁性中間層28と、自由層29と、不活性化層30とを備える。あるいは、図2(c)は、磁気抵抗角度感知ユニットの別の磁性多層膜構造を示し、図2(d)は、図2(c)の200の拡大構造図である。磁性多層膜構造は、上から下へシード層23と、反強磁性層24と、参照層27と、非磁性中間層28と、自由層29と、不活性化層30とを備える。MTJの場合、非磁性中間層は、AlまたはMgO膜であり、GMRスピン・バルブの場合、非磁性中間層は、CuおよびAu膜などの金属伝導層である。いずれの場合も、反強磁性層24の磁化方向は、+Xおよび-X方向31にあり、または+Yおよび;-Y方向32にある。
【0031】
図3は、磁気抵抗角度感知ユニット20の形状図である。図3(a)は、反強磁性層の磁化方向がX方向にある磁気抵抗角度感知ユニットの平面図であり、図3(b)は、反強磁性層の磁化方向がY方向にある磁気抵抗角度感知ユニットの平面図である。図3(a)および図3(b)に見られるように、両方は、円形構造であり、反強磁性層の磁化方向は、それぞれ+X、-X方向および+Y、-Y方向に沿っている。二軸磁気抵抗角度センサの正常な動作を確実にするために、磁気抵抗角度感知ユニットの円形形状からの可能性ある逸脱、熱応力、および異方性の分散が+X、-X、+Y、および-Y方向からのピンニング層の実際の磁化方向の逸脱を引き起こし得ることを検討し、X軸およびY軸感知方向を有する磁気抵抗感知ユニットの磁場感受方向とピンニング層の磁化方向との角度範囲が85°と95°の間にあることがさらに必要とされる。
【0032】
図4は、高磁界強度磁気抵抗角度感知ユニットの平面図である。具体的には、図4(a)は、ピンニング層の磁化方向がX方向にある高磁界強度磁気抵抗角度感知ユニットの平面図である。図4(b)は、ピンニング層の磁化方向がY方向にある高磁界強度磁気抵抗角度感知ユニットの平面図である。図4に対応して、図5は、高磁界強度磁気抵抗角度感知ユニットの側面図である。具体的には、図5(a)は、ピンニング層の磁化方向がX方向にある高磁界強度磁気抵抗角度感知ユニットの側面図である。図5(b)は、ピンニング層の磁化方向がY方向にある高磁界強度磁気抵抗角度感知ユニットの側面図である。図4および図5に見られるように、高磁界強度磁気抵抗角度感知ユニットは、磁気抵抗角度感知ユニット20と、磁気抵抗角度感知ユニットの上面または下面に位置する磁気減衰層33とを備え、絶縁層34が、磁気減衰層33と磁気抵抗角度感知ユニット20との間に位置する。磁気減衰層33は、Fe元素、Co元素,およびNi元素のうちの1つまたは複数を含む高透磁率軟磁性合金材料で作製される。全ての磁気抵抗角度感知ユニット20のレーザ・プログラム制御加熱磁気アニーリングが完了した後にのみ、高磁界強度磁気抵抗角度センサを得るために、磁気減衰材料層33は、磁気抵抗角度感知ユニットの表面上に電気メッキをされ得る。
【0033】
具体的には、磁場減衰層33は、高磁場角度センサを形成するように磁気抵抗角度感知ユニット20の表面上に電気メッキをされる。磁場減衰層33は、円形構造であり、磁気抵抗角度感知ユニット20は、楕円構造または円形構造である。磁気抵抗角度感知ユニット20が楕円である場合、磁場減衰層33の直径は、磁気抵抗角度感知ユニット20の主軸距離よりも大きい。磁気抵抗角度感知ユニット20が円形構造である場合、磁場減衰層33の直径は、磁気抵抗角度感知ユニット20の直径よりも大きく、この時、磁気抵抗角度感知ユニット20は、10ミクロンよりも大きい直径を有する。
【0034】
不活性化層は、BCB、Si、Al、HfO、AlF、GdF、LaF、MgF、Sc、HfO、またはSiOを含む紫外線レーザ透過材料で作製される。
【0035】
不活性化層は、ダイヤモンドライク・カーボン膜、MgO、SiN、SiC、AlF、MgF、SiO、Al、ThF、ZnS、ZnSe、ZrO、HfO、TiO、Ta、Si、またはGeを含む赤外線レーザ透過材料で作製される。
【0036】
反射防止コーティングは、不活性化層の表面に加えられる。
【0037】
X軸磁気抵抗角度センサおよびY軸磁気抵抗角度センサの電源ピン、接地ピン、および出力ピンは、長方形チップの一辺に沿って配列される。
【0038】
図6は、半ブリッジ、フル・ブリッジ、または準ブリッジ構造であり得るプッシュ・プル二軸磁気抵抗角度センサの構造図である。図6(a)は、プッシュ・プルX軸における磁気抵抗角度センサのフル・ブリッジ構造図であり、図6(b)は、プッシュ・プルY軸における磁気抵抗角度センサのフル・ブリッジ構造図である。
【0039】
図7は、プッシュ・プル磁気抵抗角度センサの相互接続抵抗の配電図である。プッシュ・プルX軸における磁気抵抗角度センサまたはプッシュ・プルY軸における磁気抵抗角度センサについては、プッシュ・プル フル・ブリッジ回路または半ブリッジ回路に関わらず、共通電源端子Vsならびにプッシュ・アームおよびプル・アームに接続する相互接続電線と、共通接地端子GNDならびにプッシュ・アームおよびプル・アームに接続する相互接続電線とは、同じ相互接続抵抗Rc1を有する。共通信号出力端子V+、V-ならびにプッシュ・アームおよびプル・アームに接続する相互接続電線同士は、同じ相互接続抵抗Rc2を有する。全てのプッシュ・アームおよび プル・アームは、同じ抵抗を有する。したがって、プッシュ・プルX軸における磁気抵抗角度センサまたはプッシュ・プルY軸における磁気抵抗角度センサは、磁場がゼロであるときにゼロ・ボルト信号を出力することが保証され得る。この目的を実現するために、相互接続電線は、直線区間または曲がりくねった区間によって実現される。図1に示されるように、曲がりくねった区間16は、同じ相互接続抵抗を得るように抵抗を増加させる。
【0040】
図8は、図1に示された二軸磁気抵抗角度センサの+X、-X、+Y、-Y磁気抵抗角度感知ユニット・アレイの配電図である。Xプッシュ・プル磁気抵抗角度センサおよびYプッシュ・プル磁気抵抗角度センサの+X、-X、+Y、-Y磁気抵抗角度感知ユニット・アレイの分散が共通の幾何学的中心を有することを確実にするために、図8(a)は、+Y、+X、-X、-Y分散構造を有する磁気抵抗角度感知ユニット・アレイの分布構造図であり、図8(b)は、-Y、+X、-X、+Y分散構造を有する磁気抵抗角度感知ユニット・アレイの分布構造図であり、図8(c)は、+Y、-X、+X、-Y構造を有する磁気抵抗角度感知ユニット・アレイの分布構造図であり、図8(d)は、-Y、-X、+X、+Y構造を有する磁気抵抗角度感知ユニット・アレイの分布構造図である。レーザ・プログラム制御動作を容易にするために、同じ磁化方向を有する磁気抵抗ブリッジ・アームは、互いに隣接して配列される。
【0041】
要するに、本発明の磁気抵抗角度センサは、プッシュ・プルX軸における磁気抵抗角度センサと、プッシュ・プルY軸における磁気抵抗角度センサとを備え、この2つの角度センサは、小さい全体寸法およびコンパクトな構造を実現するために同じチップ上に集積される。X軸磁気抵抗角度センサおよびY軸磁気抵抗角度センサは、共通の幾何学的中心を有し、2つの角度センサの磁気抵抗角度感知ユニットは、同じ磁性多層膜構造を有する。したがって、基板上で測定される2つの角度センサの磁場領域は、同じ平均値を有する。したがって、センサは、全体として低消費電力を有する。磁場減衰層は、動作磁場範囲を増加させるために磁気抵抗角度感知ユニットの表面上に堆積されることもできる。さらに、断熱ギャップは、異なる磁場感受方向を有する2つの隣接した磁気抵抗感知ユニット・アレイ間に設けられ、断熱ギャップは、異なる磁場感受方向を有する隣接した磁気抵抗感知ユニット・アレイが互いに影響を受けることを隔絶することができる。要するに、本発明は、コンパクトな構造、高精度、小型サイズ、および大きい磁場動作範囲を実現する能力において有利である。
【0042】
上記説明は、本発明の好ましい実施形態にすぎず、本発明を限定することを意図しておらず、当業者によって本発明の様々な修正および変更がなされてもよい。本発明の要旨および原理の範囲内で任意の修正、均等な置換、改良などが、本発明の保護範囲内に含まれるものとする。
図1
図2(a)】
図2(b)】
図2(c)】
図2(d)】
図3(a)】
図3(b)】
図4(a)】
図4(b)】
図5(a)】
図5(b)】
図6(a)】
図6(b)】
図7
図8(a)】
図8(b)】
図8(c)】
図8(d)】