(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】検査システム
(51)【国際特許分類】
G01N 21/88 20060101AFI20221206BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20221206BHJP
【FI】
G01N21/88 Z
G06T7/00 610Z
G06T7/00 350C
(21)【出願番号】P 2021205439
(22)【出願日】2021-12-17
【審査請求日】2022-01-07
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】507050724
【氏名又は名称】バイスリープロジェクツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117341
【氏名又は名称】山崎 拓哉
(74)【代理人】
【識別番号】100148840
【氏名又は名称】松本 健志
(74)【代理人】
【識別番号】100191673
【氏名又は名称】渡邉 久典
(72)【発明者】
【氏名】菅野 直
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 淳
(72)【発明者】
【氏名】阿部 陽介
(72)【発明者】
【氏名】加藤 大介
(72)【発明者】
【氏名】須田 龍星
【審査官】平田 佳規
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-082333(JP,A)
【文献】国際公開第2012/169423(WO,A1)
【文献】特開2010-016019(JP,A)
【文献】特開2004-191070(JP,A)
【文献】国際公開第2013/168500(WO,A1)
【文献】特開2021-167812(JP,A)
【文献】特開2001-099632(JP,A)
【文献】国際公開第2020/090505(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/049098(WO,A1)
【文献】特開2006-292412(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84 - 21/958
G01B 11/00 - 11/30
G03B 15/00
G06N 20/00 - 20/20
G06T 1/00 - 1/40
G06T 3/00 - 3/60
G06T 5/00 - 5/50
G06T 7/00 - 7/90
G06T 9/00 - 9/40
H04N 5/222- 5/257
H04N 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象表面の欠陥を検出するための検査システムであって、
前記検査システムは、処理装置と、表示装置と、投影装置と、撮影装置とを備えており、
前記投影装置は、面状の投影画像を前記対象表面に投影可能であり、
前記投影画像は、1以上の明部と、前記明部よりも低い輝度を有する1以上の暗部とを含んでおり、
前記撮影装置は、前記対象表面に投影された前記投影画像を撮影可能に配置されており、
前記処理装置は、装置本体を備えており、
前記装置本体は、前記撮影装置と通信可能であり、
前記撮影装置は、前記対象表面に対して相対的に移動しつつ、前記投影画像を含む撮影画像を撮影し、
前記投影装置は、前記撮影装置が前記撮影画像を撮影する間に、前記対象表面に対して相対的に移動しており、
前記装置本体は、前記撮影装置から前記撮影画像を受信
し、
前記装置本体は、受信した前記撮影画像に対して検査処理を行って欠陥を検出し、
前記検査処理は、ニューラルネットワークを用いた欠陥検出処理を含んでおり、
前記欠陥検出処理は、エンコード処理と、後処理と、欠陥特定処理とを含んでおり、
前記エンコード処理は、前記撮影画像を2回以上に亘って畳み込んで解像度を低下させつつ特徴を抽出して第1出力層を生成し、
前記後処理は、前記第1出力層の低解像度を維持しつつ、前記エンコード処理の途中で得た中間層を重ね合わせて第2出力層を生成し、
前記欠陥特定処理は、前記第2出力層に基づいて前記欠陥の領域が特定された出力画像であって前記撮影画像よりも低解像後の出力画像を作成し、
前記装置本体は、前記検査処理によって、受信した前記撮影画像の解像度を2回以上に亘って次第に低下させつつ前記欠陥を検出し、
前記表示装置は、
前記出力画像を前記撮影画像に重ね合わせた画像を表示することで前記装置本体が検出した前記欠陥を前記撮影画像に重ね合わせて表示し、
前記表示装置に表示された前記欠陥に対応する領域の解像度は、前記撮影画像の解像度よりも低下している
検査システム。
【請求項2】
請求項
1記載の検査システムであって、
前記撮影装置は、移動しないように固定されており、
前記撮影装置が前記投影画像を撮影する際、前記対象表面は、前記撮影装置に対して相対的に移動している
検査システム。
【請求項3】
請求項
1記載の検査システムであって、
前記検査システムは、支持装置を備えており、
前記支持装置は、被固定部と、支持部とを有しており、
前記被固定部は、移動しないように固定されており、
前記支持部は、前記被固定部に対して相対的に移動可能であり、
前記撮影装置は、前記支持部に支持されており、これにより、前記対象表面に沿って移動可能である
検査システム。
【請求項4】
請求項
3記載の検査システムであって、
前記検査システムは、光学ヘッドを備えており、
前記光学ヘッドは、前記投影装置と、前記撮影装置と、被支持部とを備えており、
前記投影装置及び前記撮影装置は、互いに固定されており、
前記被支持部は、前記支持部に支持されており、これにより、前記光学ヘッドは、前記撮影装置と前記対象表面との間の距離を前記撮影装置が前記投影画像を撮影可能な範囲に維持しつつ、前記対象表面に沿って移動可能であり、
前記投影装置及び前記撮影装置の夫々は、前記被支持部に直接的又は間接的に固定されており、
前記投影装置は、投影方向に沿って前記投影画像を投影し、
前記撮影装置は、光軸に沿って前記投影画像を撮影し、
前記撮影装置が前記投影画像を撮影するとき、前記投影装置の前記投影方向及び前記撮影装置の前記光軸は、前記投影画像の中間部に位置する中間点における法線を挟んで所定角度で交差するように配置される
検査システム。
【請求項5】
請求項
3又は請求項
4記載の検査システムであって、
前記支持装置は、ロボットアームである
検査システム。
【請求項6】
請求項
3から請求項
5までのいずれかに記載の検査システムであって、
前記撮影装置が前記投影画像を撮影する際、前記対象表面は、前記支持装置の前記被固定部に対して相対的に移動している
検査システム。
【請求項7】
請求項
6記載の検査システムであって、
前記撮影装置は、所定の移動経路に沿って移動し、
前記移動経路は、前記対象表面の移動方向と斜交する方向に沿った経路を含んでいる
検査システム。
【請求項8】
請求項
7記載の検査システムであって、
前記撮影装置の前記移動経路は、前記撮影装置が初期位置から移動開始して前記初期位置に戻る8の字状の経路を含んでいる
検査システム。
【請求項9】
請求項1から請求項
8までのいずれかに記載の検査システムであって、
前記投影装置は、主部と、カバーとを備えており、
前記主部は、前記投影画像の前記明部に夫々対応する1以上の発光部を備えており、
前記発光部の夫々は、発光面を有しており、前記発光面から投影光を放ち、
前記カバーは、前記発光部に夫々対応する1以上の透過部と、1以上の遮蔽部とを有しており、
前記カバーは、前記主部に取り付けられており、
前記透過部は、前記投影光を透過させ、前記遮蔽部は、前記投影光を遮蔽する
検査システム。
【請求項10】
請求項1から請求項
8までのいずれかに記載の検査システムであって、
前記投影装置は、主部と、カバーとを備えており、
前記主部は、発光面を有しており、前記発光面全体から投影光を放ち、
前記カバーは、1以上の透過部と、1以上の遮蔽部とを有しており、
前記カバーは、前記主部に取り付けられており、
前記透過部は、前記投影光を透過させ、前記遮蔽部は、前記投影光を遮蔽する
検査システム。
【請求項11】
請求項
9又は請求項
10記載の検査システムであって、
前記カバーの前記透過部及び前記遮蔽部の夫々は、前記カバーの辺と斜交する斜交方向に沿って延びており、
前記カバーの前記透過部及び前記遮蔽部は、前記斜交方向と直交する配置方向において互いに交互に配置されている
検査システム。
【請求項12】
請求項
9又は請求項
10記載の検査システムであって、
前記カバーは、前記透過部及び前記遮蔽部に加えて周辺透過部を有しており、
前記周辺透過部は、全ての前記透過部及び前記遮蔽部を囲んでおり、
前記透過部及び前記遮蔽部の夫々は、前記カバーの辺と斜交する斜交方向に沿って前記周辺透過部の間を延びており、
前記カバーの前記透過部及び前記遮蔽部は、前記斜交方向と直交する配置方向において互いに交互に配置されている
検査システム。
【請求項13】
請求項
11又は請求項
12記載の検査システムであって、
前記カバーは、前記透過部を1つのみ有しており、且つ、前記遮蔽部を2つのみ有している
検査システム。
【請求項14】
コンピュータを、請求項1から請求項
13までのいずれかに記載の検査システムにおける装置本体として機能させるためのプログラム。
【請求項15】
請求項
14のプログラムのファイルを記憶した記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物の表面に形成された傷や凹み等の欠陥を検出するための検査システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、このタイプの検査システムとして使用可能な検査装置が開示されている。
【0003】
特許文献1には、車等の対象物の表面検査を行う表面検査装置が開示されている。表面検査装置は、撮影ユニットと、ロボットアームとを備えている。撮影ユニットは、照明装置と、ラインセンサカメラ(撮影装置)とを備えている。撮影ユニットは、ロボットアームに支持されており、予め設定された経路に沿って移動する。撮影ユニットが移動する途中で、照明装置によって照明された所定領域が撮影される。表面検査装置は、所定領域の撮影画像に基づいて、表面欠陥を検出する。特許文献1によれば、ロボットアームの走査時間を短縮するために、撮影ユニットの移動中に所定領域を撮影する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の検査装置は、傷や異物等の比較的大きな欠陥を検出するのに適していると考えられる。一方、対象物の表面(対象表面)の欠陥には、ブツ、ハジキ、ヘコミ等と呼ばれる微細な欠陥が含まれている。特許文献1の検査装置は、このような微細な欠陥を検出するのに適していない。また、特許文献1の検査装置を移動しないように固定する一方で対象表面を移動させた場合、対象表面の移動方向における振動を完全には防止できない。よって、このような場合、ラインセンサカメラは、対象表面を連続的に撮影できない。即ち、特許文献1の発明によれば、対象表面を移動しないように固定する必要がある。
【0006】
そこで、本発明は、対象表面が移動している場合であっても、対象表面の微細な欠陥を検出可能な新たな検査システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、第1の検査システムとして、
対象表面の欠陥を検出するための検査システムであって、
前記検査システムは、処理装置と、表示装置と、投影装置と、撮影装置とを備えており、
前記投影装置は、面状の投影画像を前記対象表面に投影可能であり、
前記投影画像は、1以上の明部と、前記明部よりも低い輝度を有する1以上の暗部とを含んでおり、
前記撮影装置は、前記対象表面に投影された前記投影画像を撮影可能に配置されており、
前記処理装置は、装置本体を備えており、
前記装置本体は、前記撮影装置と通信可能であり、
前記撮影装置は、前記対象表面に対して相対的に移動しつつ、前記投影画像を含む撮影画像を撮影し、
前記投影装置は、前記撮影装置が前記撮影画像を撮影する間に、前記対象表面に対して相対的に移動しており、
前記装置本体は、前記撮影装置から前記撮影画像を受信し、受信した前記撮影画像の解像度を低下させつつ前記欠陥を検出し、
前記表示装置は、前記装置本体が検出した前記欠陥を表示する
検査システムを提供する。
【0008】
また、本発明は、第2の検査システムとして、第1の検査システムであって、
前記装置本体は、受信した前記撮影画像に対して検査処理を行って欠陥を検出し、
前記検査処理は、ニューラルネットワークを用いた欠陥検出処理を含んでおり、
前記欠陥検出処理は、エンコード処理と、後処理と、欠陥特定処理とを含んでおり、
前記エンコード処理は、前記撮影画像を畳み込んで解像度を低下させつつ特徴を抽出して第1出力層を生成し、
前記後処理は、前記第1出力層の低解像度を維持しつつ、前記エンコード処理の途中で得た中間層を重ね合わせて第2出力層を生成し、
前記欠陥特定処理は、前記第2出力層に基づいて前記欠陥の領域を特定する
検査システムを提供する。
【0009】
また、本発明は、第3の検査システムとして、第1又は第2の検査システムであって、
前記撮影装置は、移動しないように固定されており、
前記撮影装置が前記投影画像を撮影する際、前記対象表面は、前記撮影装置に対して相対的に移動している
検査システムを提供する。
【0010】
また、本発明は、第4の検査システムとして、第1又は第2の検査システムであって、
前記検査システムは、支持装置を備えており、
前記支持装置は、被固定部と、支持部とを有しており、
前記被固定部は、移動しないように固定されており、
前記支持部は、前記被固定部に対して相対的に移動可能であり、
前記撮影装置は、前記支持部に支持されており、これにより、前記対象表面に沿って移動可能である
検査システムを提供する。
【0011】
また、本発明は、第5の検査システムとして、第4の検査システムであって、
前記検査システムは、光学ヘッドを備えており、
前記光学ヘッドは、前記投影装置と、前記撮影装置と、被支持部とを備えており、
前記投影装置及び前記撮影装置は、互いに固定されており、
前記被支持部は、前記支持部に支持されており、これにより、前記光学ヘッドは、前記撮影装置と前記対象表面との間の距離を前記撮影装置が前記投影画像を撮影可能な範囲に維持しつつ、前記対象表面に沿って移動可能であり、
前記投影装置及び前記撮影装置の夫々は、前記被支持部に直接的又は間接的に固定されており、
前記投影装置は、投影方向に沿って前記投影画像を投影し、
前記撮影装置は、光軸に沿って前記投影画像を撮影し、
前記撮影装置が前記投影画像を撮影するとき、前記投影装置の前記投影方向及び前記撮影装置の前記光軸は、前記投影画像の中間部に位置する中間点における法線を挟んで所定角度で交差するように配置される
検査システムを提供する。
【0012】
また、本発明は、第6の検査システムとして、第4又は第5の検査システムであって、
前記支持装置は、ロボットアームである
検査システムを提供する。
【0013】
また、本発明は、第7の検査システムとして、第4から第8までのいずれかの検査システムであって、
前記撮影装置が前記投影画像を撮影する際、前記対象表面は、前記支持装置の前記被固定部に対して相対的に移動している
検査システムを提供する。
【0014】
また、本発明は、第8の検査システムとして、第7の検査システムであって、
前記撮影装置は、所定の移動経路に沿って移動し、
前記移動経路は、前記対象表面の移動方向と斜交する方向に沿った経路を含んでいる
検査システムを提供する。
【0015】
また、本発明は、第9の検査システムとして、第8の検査システムであって、
前記撮影装置の前記移動経路は、前記撮影装置が初期位置から移動開始して前記初期位置に戻る8の字状の経路を含んでいる
検査システムを提供する。
【0016】
また、本発明は、第10の検査システムとして、第1から第9までのいずれかの検査システムであって、
前記投影装置は、主部と、カバーとを備えており、
前記主部は、前記投影画像の前記明部に夫々対応する1以上の発光部を備えており、
前記発光部の夫々は、発光面を有しており、前記発光面から投影光を放ち、
前記カバーは、前記発光部に夫々対応する1以上の透過部と、1以上の遮蔽部とを有しており、
前記カバーは、前記主部に取り付けられており、
前記透過部は、前記投影光を透過させ、前記遮蔽部は、前記投影光を遮蔽する
検査システムを提供する。
【0017】
また、本発明は、第11の検査システムとして、第1から第9までのいずれかの検査システムであって、
前記投影装置は、主部と、カバーとを備えており、
前記主部は、発光面を有しており、前記発光面全体から投影光を放ち、
前記カバーは、1以上の透過部と、1以上の遮蔽部とを有しており、
前記カバーは、前記主部に取り付けられており、
前記透過部は、前記投影光を透過させ、前記遮蔽部は、前記投影光を遮蔽する
検査システムを提供する。
【0018】
また、本発明は、第12の検査システムとして、第10又は第11の検査システムであって、
前記カバーの前記透過部及び前記遮蔽部の夫々は、前記カバーの辺と斜交する斜交方向に沿って延びており、
前記カバーの前記透過部及び前記遮蔽部は、前記斜交方向と直交する配置方向において互いに交互に配置されている
検査システムを提供する。
【0019】
また、本発明は、第13の検査システムとして、第10又は第11の検査システムであって、
前記カバーは、前記透過部及び前記遮蔽部に加えて周辺透過部を有しており、
前記周辺透過部は、全ての前記透過部及び前記遮蔽部を囲んでおり、
前記透過部及び前記遮蔽部の夫々は、前記カバーの辺と斜交する斜交方向に沿って前記周辺透過部の間を延びており、
前記カバーの前記透過部及び前記遮蔽部は、前記斜交方向と直交する配置方向において互いに交互に配置されている
検査システムを提供する。
【0020】
また、本発明は、第14の検査システムとして、第12又は第13の検査システムであって、
前記カバーは、前記透過部を1つのみ有しており、且つ、前記遮蔽部を2つのみ有している
検査システム。
【0021】
また、本発明は、第1のプログラムとして、
コンピュータを、第1から第14までのいずれかの検査システムにおける装置本体として機能させるためのプログラムを提供する。
【0022】
また、本発明は、第1の記憶媒体として、
第1のプログラムのファイルを記憶した記憶媒体を提供する。
【発明の効果】
【0023】
本発明の撮影装置は、面状の投影画像を撮影する。従って、対象表面が移動方向に振動したとしても、対象表面全体を撮影できる。
【0024】
一般的に、対象表面の微細な欠陥は、遮光性の欠陥と、散乱性の欠陥と、屈折性の欠陥とを含んでいる。遮光性の欠陥は、光を遮り暗く見える。散乱性の欠陥は、周囲からの光を散乱させ自ら発光しているように見える。屈折性の欠陥は、周囲から光を屈折させ反射像を湾曲させる。一方、本発明の投影画像は、明部と暗部とを含んでいる。投影装置を対象表面に対して相対的に移動させると、明部と暗部とは、対象表面に対して相対的に移動する。この相対的な移動の際に、投影画像を2回以上撮影することで、対象表面の微細な欠陥を正確に検出できる。
【0025】
対象表面の微細な欠陥を撮影するためには、高解像度の撮影画像が必要である。一方、高解像度の撮影画像をそのまま使用して欠陥を検出する場合、欠陥検出のための処理時間が撮影のインターバルよりも長くなるおそれがある。一方、本発明の装置本体は、撮影画像の解像度を低下させつつ欠陥を検出するため、処理時間を低減できる。
【0026】
以上に説明したように、本発明によれば、対象表面が移動している場合であっても、対象表面の微細な欠陥を検出可能な新たな検査システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の実施の形態による検査システムを模式的に示す図である。
【
図2】
図1の検査システムを示すブロック構成図である。
【
図3】
図1の検査システムの光学ヘッドを示す側面図である。支持装置の輪郭の一部を破線で描画している。
【
図4】
図3の光学ヘッドの投影装置を示す平面図である。
【
図5】
図4の投影装置の主部を模式的に示す平面図である。
【
図6】
図1の光学ヘッドの対象表面に対する移動経路を示す図である。光学ヘッド、支持部及び支持台の輪郭を破線で描画している。
【
図7】
図4の投影装置の主部の変形例を模式的に示す平面図である。
【
図8】
図1の検査システムによる検査手順を示すフローチャートである。
【
図9】
図8の検査手順における検査処理を示すフローチャートである。
【
図10】
図9の検査処理によって作成した表示画像の例を示す図である。
【
図11】
図9の検査処理の欠陥検出処理を示す図である。
【
図12】
図1の検査システムの第1変形例を模式的に示す図である。
【
図14】
図4の投影装置のカバーの変形例を示す図である。
【
図17】
図12の検査システムの光学ヘッドの対象表面に対する移動経路の例を示す図である。
【
図19】立体的な対象表面に対する光学ヘッドの移動経路の例を示す図である。
【
図20】
図12の検査システムに対して移動する対象表面を示す図である。ロボットアームの輪郭の一部を破線で描画している。
【
図21】
図20の対象表面を検査する際の光学ヘッドの移動経路の例を示す図である。
【
図22】
図20の検査システムのタイミングチャートを示す図である。
【
図23】
図12の検査システムの光学ヘッドを3つ備えた検査システムを模式的に示す図である。
【
図24】
図1の検査システムの第2変形例を模式的に示す図である。
【
図25】
図1の検査システムの第3変形例を模式的に示す図である。
【
図26】
図1の検査システムの第4変形例を模式的に示す図である。検査台の内部に設けられた投影装置及び撮影装置の位置を破線で描画している。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1を
図6と併せて参照すると、本発明の実施の形態による検査システム10は、対象物80の対象表面82の欠陥84を検出するための検査システムである。検査システム10は、対象表面82に投影画像50Pを投影し、対象表面82に投影された投影画像50Pを撮影する。詳しくは、検査システム10は、対象表面82のうち投影画像50Pが投影された領域を、投影画像50Pとともに撮影画像60Pとして撮影する。検査システム10は、撮影した撮影画像60Pに基づいて、対象表面82に形成された傷や凹み等の欠陥84を検出する。
【0029】
本実施の形態の検査システム10及び対象物80は、工場の検査場等の検査空間90に置かれて使用される。検査空間90には、床や天井等の設置面92が設けられている。設置面92は、検査空間90に対して移動しない不動面である。検査システム10及び対象物80の夫々は、設置面92上に直接的に、又は、机や台等の部材を介して設置面92上に間接的に置かれている。
【0030】
本実施の形態の対象物80は、検査システム10の前後方向における前方に位置している。本実施の形態の前後方向は、X方向である。前方は、+X方向であり、後方は、-X方向である。但し、本実施の形態における方向は、図面上の位置を説明するための相対的な位置を示すためのものであり、地面に対する部材や部位の位置を特定するものではない。
【0031】
対象表面82は、投影された投影画像50Pを正反射できる高い光反射率を有していることが好ましい。より具体的には、対象表面82は、光沢や艶がある滑らかな面であることが好ましい。好ましい対象表面82は、例えば、鏡面や、物品の塗装された表面や、物品のメッキされた表面や、ガラスの表面や、フィルムの面である。但し、本発明は、これに限られず、対象表面82の光沢や艶や滑らかさは、欠陥84の検出にあたって要求される検出精度に応じていればよい。
【0032】
対象物80の素材、サイズ及び形状は、特に限定されない。例えば、対象物80は、不透明な物品であってもよいし、物品内部が透けて見える透明ガラスであってもよい。対象物80は、車のボディのような比較的大きな物品であってもよいし、車のドアミラーカバーのような比較的小さな物品であってもよい。対象物80が大きい場合、複数の検査システム10を設けて対象物80の複数の対象表面82を夫々検査してもよい。
【0033】
図1及び
図2を参照すると、本実施の形態の検査システム10は、処理装置20と、投影制御装置30と、光学ヘッド40とを備えている。光学ヘッド40は、投影装置50と、撮影装置60とを備えている。即ち、検査システム10は、投影装置50と、撮影装置60とを備えている。本実施の形態の投影装置50及び撮影装置60の夫々は、光学ヘッド40の一部である。但し、本発明は、これに限られない。例えば、撮影装置60が光学ヘッド40の一部である一方、投影装置50は、光学ヘッド40とは別の装置であってもよい。上述した装置は、通信ケーブル等の有線通信手段によって互いに通信可能に接続されている。但し、本発明は、これに限られない。例えば、上述した装置は、無線通信手段によって互いに通信可能に接続されていてもよい。
【0034】
投影装置50は、投影画像50P(
図6参照)を投影するための電子機器である。撮影装置60は、投影された投影画像50Pを撮影するための電子機器である。投影制御装置30は、投影装置50に電力を供給する照明電源である。本実施の形態の処理装置20は、通信ケーブルを介して撮影装置60を直接的に制御する一方、通信ケーブル及び投影制御装置30を介して投影装置50を間接的に制御する。但し、本発明は、これに限られない。例えば、処理装置20は、投影装置50を直接的に制御してもよい。この場合、検査システム10は、処理装置20及び光学ヘッド40のみを備えていればよい。一方、検査システム10は、上述の装置に加えて、更に別の装置を備えていてもよい。
【0035】
以下、本実施の形態の投影装置50について説明する。
【0036】
図3を参照すると、本実施の形態の投影装置50は、面照明であり、2次元に広がった面状の投影画像50P(
図6参照)を投影する。投影装置50は、主部51と、カバー56とを備えている。カバー56は、主部51に取り付けられている。本実施の形態の主部51及びカバー56の夫々は、X方向と直交する所定平面(YZ平面)において矩形形状を有している。但し、本発明は、これに限られず、投影装置50が必要な投影画像50Pを投影できる限り、主部51及びカバー56の夫々の形状は、特に限定されない。
【0037】
図5を参照すると、本実施の形態の主部51は、多数の発光素子522と、半透明な拡散板53とを備えている。本実施の形態の発光素子522の夫々は、LED(light emitting diode)である。発光素子522の夫々は、供給された電力の大きさに応じた強さの光を発光する。発光素子522は、YZ平面において主部51全体に亘って密に配置されている。拡散板53は、発光素子522の前方に位置しており、発光素子522が発光した光を拡散させる。本実施の形態の発光素子522は、白色光を発光する。但し、本発明は、これに限られない。例えば、発光素子522は、様々な色の光を発光可能であってもよい。また、発光素子522は、LEDに限定されない。
【0038】
図3を
図5と併せて参照すると、本実施の形態の主部51は、発光面54を有している。本実施の形態の発光面54は、拡散板53の前面である。拡散板53によって拡散された光は、発光面54において均一な投影光54Lになる。投影光54Lは、発光面54から前方に向かって放射される。即ち、本実施の形態の主部51は、発光面54全体から投影光54Lを放つ。換言すれば、本実施の形態によれば、主部51全体が、投影光54Lを放つ発光部52として機能する。
【0039】
図4を
図3と併せて参照すると、本実施の形態のカバー56は、主部51の発光面54に取り付けられており、発光面54全体を覆っている。カバー56は、1以上の透過部57と、1以上の遮蔽部58とを有している。透過部57の夫々は、投影光54Lを前方に透過させ、遮蔽部58は、投影光54Lを遮蔽する。カバー56は、遮蔽部58によって投影光54Lを部分的に遮蔽して投影画像50Pを作成する。
【0040】
図6を
図4と併せて参照すると、投影画像50Pは、投影装置50から対象表面82に投影される。即ち、投影装置50は、面状の投影画像50Pを対象表面82に投影可能である。投影画像50Pは、透過部57に夫々対応する1以上の明部52Pと、遮蔽部58に夫々対応する1以上の暗部54Pとを含んでいる。明部52Pの夫々は、対応する透過部57を透過した投影光54L(
図3参照)によって作成される。暗部54Pの夫々は、投影光54Lが殆ど投射されない部位である。従って、暗部54Pの輝度は、明部52Pの輝度よりも低い。
【0041】
図4を参照すると、本実施の形態のカバー56は、複数の透過部57と、複数の遮蔽部58とを有している。透過部57及び遮蔽部58は、X方向と直交する横方向において交互に配置されている。本実施の形態の横方向は、Y方向である。透過部57及び遮蔽部58の夫々は、Y方向におけるサイズを一定に保ちつつ、X方向及びY方向の双方と直交する縦方向に沿って直線状に延びている。本実施の形態の縦方向は、Z方向である。全ての透過部57は、Y方向において同じサイズを有している。全ての遮蔽部58は、Y方向において同じサイズを有している。また、透過部57のY方向におけるサイズは、遮蔽部58のY方向におけるサイズと同じである。
【0042】
本実施の形態のカバー56は、上述の構造を有している。但し、本発明は、これに限られない。例えば、透過部57及び遮蔽部58の配置は、後述するように、様々に変形可能である。本実施の形態及び後述する変形例において、透過部57の数は1であってもよく、遮蔽部58の数は1であってもよい。透過部57のY方向におけるサイズは、遮蔽部58のY方向におけるサイズと異なっていてもよい。
【0043】
図6を
図4と併せて参照すると、本実施の形態の透過部57は透明であり、本実施の形態の遮蔽部58は黒色である。従って、明部52Pは、白色であり、暗部54Pは、黒色に近いグレーである。但し、明部52Pの輝度が暗部54Pの輝度よりも高い限り、明部52P及び暗部54Pの色や輝度は、特に限定されない。例えば、明部52Pの色は、明るいピンクであってもよく、暗部54Pの色は、暗い赤であってもよい。また、このような面状の投影画像50Pを投影できる限り、投影装置50の構造は、本実施の形態に限定されず、様々に変形可能である。
【0044】
例えば、
図7を
図4及び
図5と併せて参照すると、変形例による投影装置50Xは、主部51と異なる主部51Xと、投影装置50と同じカバー56とを備えている。
図7を
図6と併せて参照すると、主部51Xは、投影画像50Pの明部52Pに夫々対応する1以上の発光部52Xを備えている。発光部52Xの夫々は、主部51Xの一部であり、密に配置された多数の発光素子522と、拡散板53の一部とを備えている。一方、主部51Xのうち発光部52X以外の部位には、発光素子522が設けられていない。
図7を
図3と併せて参照すると、このように形成された発光部52Xの夫々は、拡散板53の前面の一部である発光面54を有している。発光部52Xの夫々は、発光面54から投影光54Lを放つ。
【0045】
図4を
図7と併せて参照すると、変形例による投影装置50Xのカバー56は、本実施の形態と同様の構造を有している。より具体的には、カバー56は、発光部52Xに夫々対応する1以上の透過部57と、1以上の遮蔽部58とを有している。カバー56は、主部51Xに取り付けられている。
図4を
図3と併せて参照すると、透過部57は、投影光54Lを透過させ、遮蔽部58は、投影光54Lを遮蔽する。
図6を
図4と併せて参照すると、本変形例によっても、遮蔽部58を有するカバー56を設けることで、明瞭な明部52P及び暗部54Pを有する投影画像50Pを対象表面82に投影できる。
【0046】
図7を
図6と併せて参照すると、本変形例による投影装置50Xは、本実施の形態と同様な投影画像50Pを対象表面82に投影できる。例えば、主部51Xの発光部52Xは、細長い照明装置であるバー照明を必要な数だけ使用して形成できる。本変形例によれば、投影装置50Xの発光素子522の数を減らして製造コストを低減できる。加えて、発光素子522を発光させる際の電力を削減できる。
図5を
図4と併せて参照すると、本実施の形態の投影装置50は、更に変形可能である。例えば、投影装置50は、カバー56の透過部57に対応する発光素子522のみが発光するように制御してもよい。
【0047】
以下、本実施の形態の撮影装置60(
図3参照)について説明する。
【0048】
図3を
図6と併せて参照すると、本実施の形態の撮影装置60は、CCD(charge-coupled device)カメラであり、レンズ(図示せず)と、2次元に配列された多数の受光素子(図示せず)とを備えている。撮影装置60が撮影する撮影画像60Pは、2次元に配列された多数の画素(ピクセル)からなる面状のデジタル画像である。換言すれば、撮影装置60は、エリアカメラである。撮影装置60が2次元に広がった面状の撮影画像60Pを撮影できる限り、撮影装置60の構造は、特に限定されない。
【0049】
本実施の形態による撮影画像60Pの画素は、0(黒色)から255(白色)までのグレースケール値を採る。換言すれば、撮影装置60は、256階調のグレースケール画像を撮影する。但し、本発明は、これに限られず、撮影装置60は、フルカラーの撮影画像60Pを撮影してもよい。但し、検査システム10は、後述するように、撮影画像60Pの輝度を参照して欠陥84を検出する。従って、短時間で欠陥84を検出するという観点から、輝度を容易に参照可能なグレースケール画像が好ましい。
【0050】
以下、本実施の形態の光学ヘッド40について説明する。
【0051】
図1を参照すると、本実施の形態の光学ヘッド40は、光学ヘッド40と別体の支持装置72に固定されている。支持装置72は、レール等の支持台78に支持されており、Y方向にのみ移動可能である。即ち、本実施の形態の光学ヘッド40は、Y方向にのみ移動可能である。但し、本発明は、これに限られない。例えば、支持装置72は、後述するように、光学ヘッド40の3次元移動を許容するロボットアームであってもよい。
【0052】
図3を参照すると、本実施の形態の光学ヘッド40は、投影装置50及び撮影装置60に加えて、基部材42と、被支持部44と、支柱46とを備えている。本実施の形態の基部材42は、曲げを有する1枚の金属板である。基部材42は、剛性を有しており撓み難い。投影装置50及び撮影装置60は、基部材42に固定されている。被支持部44は、基部材42の後面の一部である。支柱46は、円柱形上の部材である。支柱46は、被支持部44に固定されており、被支持部44から後方に延びている。支柱46の後端は、支持装置72の支持部76に固定されている。
【0053】
上述のように支柱46を設けることで、投影装置50及び撮影装置60が固定された基部材42を支持装置72から遠ざけ、これにより、投影装置50及び撮影装置60が支持装置72に突き当たることを防止できる。特に、支持装置72がロボットアームである場合、支柱46は、ロボットアームの動きを制限することなく、基部材42に固定された投影装置50及び撮影装置60の損傷を防止する。但し、本発明は、これに限られない。例えば、被支持部44は、支柱46を介さずに支持部76に直接的に固定してもよい。即ち、支柱46は、必要に応じて設ければよい。
【0054】
基部材42に固定された投影装置50は、投影方向に沿って投影画像50Pを投影する。図示した投影装置50は、投影画像50Pを前方の対象表面82にX方向に沿って投影する。撮影装置60は、対象表面82に投影された投影画像50Pを、レンズの光軸62に沿って撮影する。投影装置50及び撮影装置60は、以下に説明するように、対象表面82に投影された投影画像50Pを撮影装置60が明瞭に撮影できるような撮影条件を満たすように配置されている。
【0055】
撮影条件の1つとして、投影装置50及び撮影装置60は、投影画像50Pの中間部に位置する中間点86に対して所定の姿勢を取るように配置されている。より具体的には、撮影装置60が投影画像50Pを撮影するとき、投影装置50の投影方向及び撮影装置60の光軸62は、中間点86における法線88を挟んで所定角度で交差するように配置される。本実施の形態の所定角度は40度である。詳しくは、投影装置50の投影方向と法線88との交差角度θは20度であり、光軸62と法線88との交差角度θは20度である。但し、撮影装置60が投影画像50Pを撮影できる限り、交差角度θは、特に限定されない。即ち、撮影装置60は、対象表面82に投影された投影画像50Pを撮影可能に配置されていればよい。
【0056】
撮影条件の他の1つとして、投影装置50の前面は、撮影装置60のレンズに比べて、中間点86の近くに位置するように配置されている。この配置によれば、レンズに入射される投影画像50Pの反射像を大きくでき、これにより1回の撮影範囲を広くできる。図示した中間点86と投影装置50の前面との間の距離DLは30cmである。図示した中間点86と撮影装置60のレンズとの間の距離DCは36cmである。この距離設定により、例えば150×200mmの範囲を撮影できる。但し、距離DL及び距離DCは、必要な撮影範囲に合わせて適切に設定すればよい。例えば、距離DL>距離DCであってもよい。即ち、投影装置50の前面は、撮影装置60のレンズに比べて、中間点86から同じ距離以上だけ離れていてもよい。
【0057】
前述したように、本実施の形態の投影装置50及び撮影装置60は、基部材42に対して移動しないように固定されている。従って、光学ヘッド40が移動しても、投影装置50の基部材42に対する相対的な投影方向は変わらず、撮影装置60のレンズの光軸62の基部材42に対する相対的な向きは変わらない。加えて、本実施の形態によれば、撮影装置60のレンズの焦点距離も一定に維持される。即ち、本実施の形態の光学ヘッド40には、振動の影響を受けやすい可動部が設けられていない。従って、光学ヘッド40が移動に伴って振動したとしても、上述した撮影条件は殆ど影響を受けない。但し、本発明は、これに限られない。例えば、レンズの焦点距離は、処理装置20(
図1参照)の制御によって、光学ヘッド40の移動中に調整可能であってもよい。
【0058】
後述するように、本実施の形態によれば、撮影画像60Pが多少ピンボケしていても欠陥84(
図6参照)を検出できる。より具体的には、撮影装置60のレンズの被写界深度は、所定距離±4cm程度であり、ある程度の誤差が許容される。従って、光学ヘッド40の移動に伴って、中間点86とレンズとの間の距離DCが多少変わったとしても、撮影装置60は、欠陥84を検出可能な撮影画像60Pを撮影できる。
【0059】
本実施の形態の投影装置50及び撮影装置60の夫々は、単一の基部材42に直接的に固定されている。換言すれば、投影装置50及び撮影装置60の夫々は、基部材42の被支持部44に直接的に固定されている。但し、本発明は、これに限られず、投影装置50及び撮影装置60の夫々は、被支持部44に直接的又は間接的に固定されていればよい。例えば、投影装置50は、被支持部44に直接的に固定されていてもよく、撮影装置60は、投影装置50に固定されていてもよい。即ち、投影装置50及び撮影装置60は、互いに固定されていればよい。
【0060】
以下、本実施の形態の処理装置20(
図1参照)について説明する。
【0061】
図1及び
図2を参照すると、本実施の形態の処理装置20は、汎用的なPC(Personal Computer)であり、装置本体22と、記憶装置24と、入力装置26と、表示装置28とを備えている。即ち、検査システム10は、装置本体22と、記憶装置24と、入力装置26と、表示装置28とを備えている。本実施の形態の記憶装置24、入力装置26及び表示装置28の夫々は、1つの処理装置20の一部であるか、又は、共通の装置本体22に通信可能に接続されている。但し、本発明は、これに限られない。例えば、表示装置28は、処理装置20とは別の監視装置(図示せず)にのみ通信可能に接続されていてもよい。この場合、監視装置は、有線通信手段や無線通信手段によって、装置本体22と通信可能に接続されていてもよい。また、表示装置28を含む監視装置は、装置本体22とは別の場所に配置されていてもよい。
【0062】
装置本体22は、PCの本体であり、CPU(Central Processing Unit:図示せず)及び主記憶装置(図示せず)を備えている。記憶装置24は、例えば磁気ディスク装置であり、プログラムの実行形式ファイルを含む様々なファイル(図示せず)を記憶できる。記憶装置24は、装置本体22からの指示に従ってファイルの取得、記憶等を行う。装置本体22のCPUは、記憶装置24に記憶された実行形式ファイルを取得して主記憶装置にローディングし、実行形式ファイル内の命令語を実行することで様々な機能を実現する。入力装置26は、例えばキーボードやマウスであり、キーボードから入力された文字やマウスによって指示された位置や範囲を装置本体22に送信する。表示装置28は、例えば液晶ディスプレイであり、装置本体22から送信された文字や画像等を表示する。
【0063】
本実施の形態の装置本体22は、投影装置50を制御するドライバである投影制御プログラム201、撮影装置60を制御するドライバである撮影制御プログラム202、及び、検査処理プログラム203を備えている。装置本体22は、投影制御プログラム201、撮影制御プログラム202及び検査処理プログラム203の夫々を実行可能である。
【0064】
例えば、装置本体22は、入力装置26から入力された指示に応じて、検査処理プログラム203を主記憶装置(図示せず)にローディングして、CPU(図示せず)によって検査処理を実行する。即ち、検査システム10は、コンピュータを、検査システム10における装置本体22として機能させるためのプログラム(検査処理プログラム203)を備えている。これらのプログラムは、例えば、プログラムのファイルを記憶したCD-ROM(compact disk read only memory)等の記憶媒体から、記憶装置24にインストールされている。
【0065】
上述したように、これらのプログラムを実際に実行するのは、装置本体22のCPU(図示せず)である。但し、以下の説明においては、これらのプログラムが実行の主体であるように記載する場合や、これらのプログラムのCPUによる処理(例えば、検査処理プログラム203のCPUによる検査処理)が実行の主体であるように記載する場合がある。
【0066】
装置本体22は、投影装置50及び撮影装置60の夫々と通信可能に接続されている。詳しくは、装置本体22は、投影制御装置30を介して投影装置50とケーブル接続されているとともに、撮影装置60と直接的にケーブル接続されている。但し、本発明は、これに限られない。例えば、投影制御装置30は、装置本体22に組み込まれた制御ボードであってもよい。この場合、装置本体22は、投影装置50及び撮影装置60の夫々と直接的にケーブル接続されていてもよく、無線接続されていてもよい。
【0067】
以下、本実施の形態の対象表面82(
図6参照)の撮影方法について説明する。本実施の形態の投影装置50及び撮影装置60は、光学ヘッド40として一体に纏められており、光学ヘッド40の移動に伴って移動する。また、後述する検査システム10の第1変形例の投影装置50及び撮影装置60も、光学ヘッド40として一体に纏められており、光学ヘッド40の移動に伴って移動する。従って、本実施の形態の説明及び検査システム10の第1変形例の説明において、「光学ヘッド40の移動」、「投影装置50の移動」及び「撮影装置60の移動」についての記載は、互いに読み替えることができる。
【0068】
図1及び
図6を参照すると、光学ヘッド40の撮影装置60は、対象表面82に対して相対的に移動しつつ、投影画像50Pを含む撮影画像60Pを撮影する。撮影装置60は、複数の撮影点484において撮影画像60Pを撮影することで、対象表面82全体を撮影する。装置本体22の検査処理は、撮影画像60Pの夫々から欠陥84を検出することで、対象表面82全体を検査する。
【0069】
本実施の形態の撮影装置60は、設置面92に対して移動しないように固定された対象物80に対して、移動経路48に沿ってY方向に一定速度で移動しながら、対象表面82に投影された投影画像50Pを撮影する。撮影装置60は、撮影点484において停止することなく撮影画像60Pを撮影する。
【0070】
本実施の形態によれば、光学ヘッド40の一定速度の移動を維持したまま無停止で撮影することで、対象表面82全体を撮影するために必要な時間を低減できる。即ち、光学ヘッド40が撮影点484において停止する場合に比べて、対象表面82全体を短時間で検査できる。但し、本発明は、本実施の形態に限られない。例えば、撮影装置60が対象表面82に投影された投影画像50Pを撮影する際、対象表面82は、光学ヘッド40に対して相対的に移動していてもよい。より具体的には、光学ヘッド40は、設置面92に対して移動しないように固定されていてもよい。一方、対象物80は、設置面92に対して一定速度で移動していてもよい。また、対象表面82と光学ヘッド40との間の相対的な移動速度は、一定でなくてもよい。
【0071】
本実施の形態によれば、光学ヘッド40が設置面92に対して移動しないように固定されている場合、投影装置50及び撮影装置60の夫々は、設置面92に対して移動しないように固定されている。但し、本発明は、これに限られない。例えば、前述したように撮影装置60が光学ヘッド40の一部である一方で投影装置50が光学ヘッド40とは別の装置である場合、撮影装置60が設置面92に対して移動しないように固定されており、且つ、投影装置50が設置面92に対して移動可能に支持されていてもよい。
【0072】
図6に示した対象物80は、凹凸の殆どない対象表面82を有している。また、
図6に示した対象表面82のZ方向におけるサイズは、撮影画像60PのZ方向におけるサイズよりも小さい。従って、光学ヘッド40を真っ直ぐY方向に沿って移動させながら対象表面82を撮影することで、対象表面82全体を撮影できる。但し、本発明は、これに限られない。例えば、対象表面82には凹凸が形成されていてもよい。また、対象表面82のZ方向におけるサイズは、撮影画像60PのZ方向におけるサイズよりも大きくてもよい。この場合、例えば、光学ヘッド40のZ方向における位置を変えて、光学ヘッド40のY方向に沿った移動を2回以上行うことで、対象表面82全体を撮影できる。
【0073】
図6に示した撮影画像60Pの領域は、投影画像50Pの領域と完全に一致しており、対象表面82を検査するための撮影回数を低減するという観点から最も好ましい。しかしながら、撮影装置60を全ての撮影点484においてこのように配置することは、現実には不可能である。現実には、撮影画像60Pの領域が投影画像50Pの領域に完全に含まれていることが好ましい。換言すれば、撮影画像60Pの全てのピクセルに投影画像50Pが写っていることが好ましい。但し、本発明は、これに限られず、撮影画像60Pの領域が投影画像50Pの領域と部分的に重なっていればよい。
【0074】
以下、本実施の形態の対象表面82の検査手順について説明する。
【0075】
図6及び
図8を参照すると、まず、光学ヘッド40及び対象物80を、対象表面82の検査開始位置を撮影可能に配置する(
図8のS810)。
図6に示した対象表面82の検査開始位置は、対象表面82のY方向における左端部である。
【0076】
図2を参照すると、光学ヘッド40を上述のように配置したとき、装置本体22は、投影制御プログラム201によって投影制御装置30の投影設定を行う(
図2の「1-1」)。例えば、装置本体22は、投影装置50が投影画像50Pを投影する際の発光時間及び明るさを設定する。また、装置本体22は、撮影制御プログラム202によって撮影装置60の撮影設定を行う(
図2の「1-2」)。例えば、装置本体22は、撮影装置60が撮影する際の明るさ、露光時間及び撮影周期(フレームレート)を設定する。本実施の形態のフレームレートは、例えば40枚/秒である。
【0077】
図6及び
図8を参照すると、次に、光学ヘッド40及び対象表面82の少なくとも一方の移動を開始する(
図8のS820)。本実施の形態によれば、光学ヘッド40を、
図6に示した対象表面82のY方向における左端部(検査開始位置)を撮影可能な位置から右端部(検査終了位置)を撮影可能な位置まで移動させる。
図2を参照すると、光学ヘッド40が移動開始したとき、装置本体22は、撮影制御プログラム202によって撮影装置60に撮影開始を指示する(
図2の「2」)。
【0078】
図6及び
図8を参照すると、次に、撮影装置60は、設定された撮影周期に従って、設定された明るさ及び露光時間で撮影画像60Pを撮影する(
図8のS830)。
【0079】
詳しくは、
図2及び
図6を参照すると、撮影装置60は、撮影周期に基づく一定の時間間隔で、投影制御装置30に投影を指示する(
図2の「3-1」)。投影指示された投影制御装置30は、設定された発光時間の間だけ、設定された明るさに応じた電力を投影装置50に供給する(
図2の「3-2」)。投影装置50は、供給された電力で発光素子522(
図5参照)を発光させる。この結果、対象表面82に投影画像50Pが投影される(
図2の「3-3」)。撮影装置60は、投影画像50Pの投影タイミングに合わせて撮影画像60Pを撮影する(
図2の「3-4」)。撮影装置60は、撮影した撮影画像60Pを、装置本体22に送信する(
図2の「3-5」)。
【0080】
本実施の形態の撮影装置60は、移動中に無停止で撮影する。本実施の形態の露光時間は、例えば100μ秒と短く設定されており、これにより、ピンボケし難い撮影画像60Pを移動中に撮影できる。一方、短い露光時間で十分な明るさを得るためには、明るい照明が必要である。このため、本実施の形態の投影装置50は、撮影を行うときのみ、供給された大きな電力によって強い明るさの投影画像50Pを投影する。即ち、本実施の形態の撮影装置60は、停止することなく、移動中にストロボ撮影を行う。但し、本発明は、これに限られない。例えば、投影装置50は、投影画像50Pを常に投影していてもよい。この場合、投影装置50は、撮影を行うときの投影画像50Pを、撮影を行っていないときの投影画像50Pに比べて明るくしてもよい。
【0081】
図2及び
図8を参照すると、次に、装置本体22は、装置本体22による検査処理を行う(
図8のS840)。
図2及び
図9を参照すると、検査処理において、装置本体22は、撮影装置60から撮影画像60Pを受信する(
図9のS910)。次に、装置本体22は、後述する欠陥検出処理204(
図11参照)を行い、受信した撮影画像60Pの解像度を低下させつつ欠陥84(
図6参照)を検出する(
図9のS920)。次に、装置本体22は、検出した欠陥84を撮影画像60Pに重ね合わせて表示画像219(
図10参照)を作成する(
図9のS930)。次に、装置本体22は、表示画像219を表示装置28に表示する(
図9のS940)。即ち、表示装置28は、装置本体22が検出した欠陥84を表示する。
【0082】
図2及び
図8を参照すると、次に、装置本体22は、対象表面82の検査終了位置を撮影済みであるか否かを判定する(
図8のS850)。
図6に示した検査終了位置は、対象表面82のY方向における右端部である。対象表面82の検査終了位置を撮影済みである場合(
図8のS850のYESの場合)、検査が終了する。一方、対象表面82の検査終了位置を撮影済みでない場合(
図8のS850のNOの場合)、再び撮影が行われる。
【0083】
図2を
図6と併せて参照すると、例えば、光学ヘッド40に赤外線センサ等のセンサ(図示せず)を設けてもよい。センサは、対象表面82が前方に位置しているか否かを検出して、検出結果を装置本体22に通知してもよい。この場合、装置本体22は、対象表面82が前方に位置していることを初めて通知されたときに、撮影装置60が検査開始位置を撮影可能に配置されていると判断し、投影設定(
図2の「1-1」)及び撮影設定(
図2の「1-2」)を行うとともに、撮影装置60に撮影開始を指示する(
図2の「2」)。また、装置本体22は、対象表面82が前方に位置していないことを通知されたときに、対象表面82の検査終了位置を撮影済みであると判断し、撮影装置60に撮影終了を指示する(
図2の「4」)。撮影装置60は、撮影終了が指示されると、撮影を終了する。
【0084】
図2及び
図6を参照しつつ以上の説明を纏めると、対象表面82を移動させる場合、対象表面82の移動方向における振動を完全には防止できない。よって、このような場合、特許文献1のようなラインセンサカメラは、対象表面82を連続的に撮影できない。一方、本実施の形態の撮影装置60は、面状の投影画像50Pを撮影する。従って、撮影装置60を固定して対象表面82を移動方向(
図6において+Y方向)に移動させつつ撮影するような場合、対象表面82が移動方向に振動したとしても、対象表面82全体を撮影できる。
【0085】
対象表面82の欠陥84には、ブツ、ハジキ、ヘコミ等と呼ばれる微細な欠陥84が含まれている。微細な欠陥84の直径は、例えば0.1mmである。これらの微細な欠陥84は、遮光性の欠陥84と、散乱性の欠陥84と、屈折性の欠陥84とに分類できる。遮光性の欠陥84は、光を遮り暗く見える。散乱性の欠陥84は、周囲からの光を散乱させ自ら発光しているように見える。屈折性の欠陥84は、周囲から光を屈折させ反射像を湾曲させる。微細な欠陥84に光を当てるだけでラインセンサカメラによって検出するのは極めて難しい。
【0086】
一方、本実施の形態の投影画像50Pは、明部52Pと暗部54Pとを含んでいる。また、投影装置50は、撮影装置60が撮影画像60Pを撮影する間に、対象表面82に対して相対的に移動している。従って、対象表面82における投影画像50Pの相対的な位置は、撮影装置60が撮影画像60Pを撮影する度に異なっている。即ち、投影装置50を対象表面82に対して相対的に移動させると、明部52Pと暗部54Pとは、対象表面82に対して相対的に移動する。撮影装置60の撮影周期を投影装置50の対象表面82に対する相対的な移動速度に応じた十分に短い時間間隔に設定することで、対象表面82の全ての部位に対して(即ち、全ての欠陥84に対して)、明部52Pが投影されたときの撮影画像60Pと、暗部54Pが投影されたときの撮影画像60Pとの両方を撮影可能である。
【0087】
遮光性の欠陥84は、明部52Pによって検出できる。散乱性の欠陥84は、暗部54Pによって検出できる。屈折性の欠陥84は、明部52Pと暗部54Pが湾曲して撮影されることで検出できる。即ち、本実施の形態によれば、光学ヘッド40の相対的な移動の際に、明部52Pと暗部54Pとを含む投影画像50Pを2回以上撮影することで、対象表面82の微細な欠陥84を正確に検出できる。
【0088】
以上の説明から理解されるように、光学ヘッド40の対象表面82に対する相対的な移動に伴って、対象表面82の全ての部位に対して明部52P及び暗部54Pの夫々を1回以上投影できる限り、投影装置50の透過部57及び透過部57の配置は、特に限定されない。但し、微細な欠陥84を正確に検出するという観点から、透過部57及び透過部57は、本実施の形態のようなスリットパターンであることが好ましい。
【0089】
対象表面82の微細な欠陥84を撮影するためには、高解像度の撮影画像60Pが必要である。本実施の形態の撮影画像60Pのピクセルサイズは、2048×1500ピクセルである。この大きなピクセルサイズにより、150×200mmの範囲を100μm/ピクセルの分解能で撮影できる。一般的に、ブツやヘコミ等の微小な欠陥84が不良として認識できる最小の直径は、0.3~0.5mmである。本実施の形態によれば、一般的に認識可能な微小な欠陥84を十分に検出可能な分解能が得られる。
【0090】
但し、高解像度の撮影画像60Pをそのまま使用して欠陥84を検出する場合、欠陥検出のための処理時間が撮影のインターバル(撮影周期)よりも長くなるおそれがある。一方、本実施の形態の装置本体22は、撮影画像60Pの解像度を低下させつつ欠陥84を検出する。より具体的には、装置本体22は、撮影画像60Pの解像度を低下させて出力画像218(
図10参照)を作成する過程において欠陥84を検出する。この処理方法によって処理時間を低減できる。
【0091】
以上に説明したように、本実施の形態によれば、対象表面82が移動している場合であっても、対象表面82の微細な欠陥84を検出可能な新たな検査システム10を提供できる。
【0092】
本実施の形態によれば、撮影装置60による撮影と装置本体22による検査処理とは、互いに並列に実行される。撮影画像60Pは、装置本体22の主記憶装置(図示せず)のバッファ領域にキューイングされる。装置本体22の検査処理は、バッファから撮影画像60Pを順次取り出して処理する。この処理方法によれば、検査処理の処理時間が多少長くても、バッファのサイズを十分に大きくすることで、欠陥84を見かけ上リアルタイムで表示装置28に表示できる。
【0093】
本実施の形態によれば、欠陥84を含む表示画像219(
図10参照)は、装置本体22が設けられた処理装置20の表示装置28に表示される。但し、本発明は、これに限られない。例えば、表示画像219は、装置本体22とは別の場所に配置された監視装置(図示せず)の表示装置28に送信されて表示されてもよい。
【0094】
以上に説明したように、本実施の形態の装置本体22は、受信した撮影画像60Pに対して検査処理プログラム203による検査処理を行って欠陥84を検出する。
図11を参照すると、本実施の形態の検査処理は、ニューラルネットワークを用いた欠陥検出処理204を含んでいる。換言すれば、検査処理プログラム203は、検査処理の一部として欠陥検出処理204を使用する。以下、本実施の形態の欠陥検出処理204について説明する。
【0095】
本実施の形態の欠陥検出処理204は、エンコード処理206と、後処理207と、欠陥特定処理208とを含んでいる。エンコード処理206は、セマンティックセグメンテーション用の一般的なモデルであるU-Netのエンコード処理と同様な処理である。一方、欠陥検出処理204は、U-Netのデコード処理に代えて、後処理207及び欠陥特定処理208を含んでいる。
【0096】
本実施の形態の撮影画像60Pは、1チャネルのグレースケール画像からなる。エンコード処理206は、この撮影画像60Pを入力画像210として処理する。より具体的には、エンコード処理206は、入力画像210に対して3×3カーネルを使用して2回の畳み込みを行い、入力画像210の解像度を維持したまま16チャネルの中間層212(convolution層)を作成する。次に、エンコード処理206は、16チャネルの中間層212に対して2×2カーネルを使用して、チャネル数を維持したまま1024×750ピクセルのmax pooling層を作成する。上述したconvolution層の活性化関数は、ReLU層(ランプ関数)である。また、convolution層とReLU層(図示せず)との間には、batch normalization層(図示せず)を追加している。
【0097】
エンコード処理206は、同様の処理を合計3回行う。この結果、撮影画像60Pのピクセルサイズ(即ち、解像度)が次第に低下する一方、特徴を抽出したチャネル数は、次第に増加する。エンコード処理206の結果、2048×1500ピクセル且つ16チャネルの中間層212(第1中間層212)と、1024×750ピクセル且つ32チャネルの中間層212(第2中間層212)と、512×375ピクセル且つ64チャネルの中間層212(第3中間層212)と、256×187ピクセル且つ64チャネルの第1出力層214とが得られる。
【0098】
後処理207は、エンコード処理206の第1出力層214を入力層として使用する。後処理207は、第1出力層214に対して3×3カーネルを使用して2回の畳み込みを行い、第1出力層214の解像度を維持したまま128チャネルの中間層215(convolution層)を作成する。上述したconvolution層の活性化関数は、ReLU層である。また、convolution層とReLU層(図示せず)との間には、batch normalization層(図示せず)を追加している。
【0099】
次に、後処理207は、128チャネルの中間層215に対して3×3カーネルを使用して逆畳み込みを行い、解像度を維持したまま64チャネルのtransposed convolution層を作成する。次に、後処理207は、第3中間層212をtransposed convolution層にcopy&cropする。詳しくは、後処理207は、第3中間層212に対して2×2カーネルを使用して、チャネル数を維持したまま256×187ピクセルのmax pooling層を作成し、transposed convolution層に重ね合わせる。上述したtransposed convolution層の活性化関数は、ReLU層である。また、transposed convolution層とReLU層(図示せず)との間には、batch normalization層(図示せず)を追加している。
【0100】
後処理207は、同様の処理を合計3回行う。この結果、第1出力層214のピクセルサイズ(即ち、解像度)が維持される一方、特徴を抽出したチャネル数は、次第に収束する。後処理207の結果、256×187ピクセル且つ16×2チャネルの第2出力層216が得られる。
【0101】
欠陥特定処理208は、後処理207の第2出力層216を入力層として使用する。欠陥特定処理208は、第2出力層216に対して3×3カーネルを使用して2回の畳み込みを行い、第2出力層216の解像度を維持したまま16チャネルのconvolution層を作成する。次に、欠陥特定処理208は、16チャネルのconvolution層に対して1×1カーネルを使用して畳み込みを行い、ピクセルサイズを維持したまま2チャネルの出力画像218を作成する。上述したconvolution層の活性化関数は、ReLU層である。また、convolution層とReLU層(図示せず)との間には、batch normalization層(図示せず)を追加している。
【0102】
本実施の形態の出力画像218の2チャネルのうちの一つは、ブツやヘコミ等の微小な欠陥84(
図6参照)を検出するためのチャネルである。本実施の形態の出力画像218の2チャネルのうちの他の一つは、線キズのような細長い欠陥84を検出するためのチャネルである。但し、本発明は、これに限られず、出力画像218は、2チャネルのうちの一つのみを有していてもよい。
【0103】
本実施の形態の欠陥検出処理204は、教師データを使用した機械学習を行なった後の学習済みモデルである。教師データは、例えば、実際の欠陥84(
図10参照)を撮影した画像(元画像)と、開発者が元画像から作成した正解画像とを含んでいる。元画像は、例えば、
図10に示す入力画像210である。正解画像は、例えば、
図10に示す出力画像218である。本実施の形態によれば、欠陥検出処理204の機械学習を、3000セット程度の元画像及び結果画像を使用して800回程度行うことで、カーネルの重みやバイアス等のパラメータを最適化でき、90%以上の欠陥検出精度を有する学習済み欠陥検出処理204が得られる。
【0104】
図6を参照すると、撮影装置60と対象表面82は、検査を行なっている間、互いに相対的に移動している。従って、対象表面82の同じ部位を1回しか撮影できない。加えて、撮影画像60P上の欠陥84は、明瞭な境界のない領域であることが多い。このような場合、AI(artificial intelligence)を使用することで、高い欠陥検出精度を有する欠陥検出処理204(
図11参照)を比較的容易に開発できる。また、検査システム10を実際の検査空間90で使用する際に、欠陥検出精度を更に向上できる。更に、撮影画像60Pが多少ピンボケしても、欠陥84を検出できる。但し、本発明は、これに限られない。例えば、欠陥検出処理204の機械学習によって得られた最適化されたパラメータに基づいて、欠陥検出処理204と同様な処理を行う学習しないプログラムを作成してもよい。即ち、欠陥検出処理204は、AIでなくてもよい。
【0105】
図11を参照すると、本実施の形態の欠陥検出処理204は、U-Netのエンコード処理と類似したエンコード処理206を有している。但し、本発明は、これに限られない。欠陥検出処理204としてAIを使用する場合であっても、欠陥検出処理204は、他のセマンティックセグメンテーションモデルと同様なエンコード処理206を有していてもよい。例えば、欠陥検出処理204は、SegNetやDeeplabV3+のエンコード処理と類似したエンコード処理206を有していてもよい。
【0106】
上述したように、本実施の形態の後処理207は、U-Netのデコード処理と同様に、エンコード処理206の途中で得た中間層212をcopy&cropして第2出力層216を生成する。U-Netのcopy&cropは、解像度を高めるためのデコード処理において、解像度の低下によって失われた境界情報を補うために行われる。一方、本実施の形態の後処理207は、解像度を高めず、後処理207のcopy&cropによっては、境界情報を補うことができない。本実施の形態のcopy&cropによれば、機械学習の際に、ニューラルネットワークの後ろの層から前の層に向かう抜け道を作成することで、前の層に大きな誤差を伝搬でき、これにより、学習能力の低下を防止できる。また、後処理207の形式的な構造をU-Netのデコード処理の形式的な構造と類似させることで、U-Netと比較した解析能力の低下を防止できる。
【0107】
一般的なセグメンテーションモデルにおける対象画像のサイズは、高々256×256ピクセル程度である。本実施の形態における入力画像210のピクセルサイズは、2048×1500ピクセルであり極めて大きい。一方、本実施の形態のエンコード処理206は、撮影画像60Pを畳み込んで解像度を低下させつつ特徴を抽出して第1出力層214を生成する。後処理207は、第1出力層214の低解像度を維持しつつ、チャネル数を収束させた第2出力層216を生成する。即ち、本実施の形態によれば、入力画像210のピクセルサイズを低下させつつ特徴を抽出し、特徴を抽出した層のピクセルサイズを小さく維持しつつ特徴を絞り込むことで、入力画像210のピクセルサイズが大きいことによる処理能力の低下を防止できる。
【0108】
本実施の形態において検出すべき欠陥84の種類は、高々2種類程度である。このため、中間層212等のconvolution層における欠陥84を検出するために必要なチャネル数は、一般的なセグメンテーションに比べて少ない。本実施の形態によれば、convolution層のチャネル数を、U-Netに比べて1/13程度に減らすことができ、ピクセルサイズの増加に伴う処理能力の低下を防止できる。また、本実施の形態によれば、2枚以上の画像の相違点を抽出するといった処理を行うことなく、1枚の入力画像210から欠陥84を検出できる。この結果、欠陥84をリアルタイムで表示できる。
【0109】
試みに2048×1500ピクセルの入力画像210からU-Netを使用して欠陥84を検出しようとすると、380m秒程度の時間を要する。この時間は、本実施の形態の撮影周期(25m秒)に比べて極めて大きく、本実施の形態の欠陥検出処理204として使用できない。一方、本実施の形態の欠陥検出処理204を使用すると、30m秒程度で欠陥84を検出できる。本実施の形態によれば、リアルタイムの検査が可能になる。
【0110】
図11を
図10と併せて参照すると、本実施の形態の欠陥特定処理208は、第2出力層216に基づいて撮影画像60P中の欠陥84の領域を特定する。より具体的には、欠陥特定処理208は、第2出力層216に基づいて出力画像218を作成する。出力画像218には、欠陥84に対応する領域が特定されている。検査処理プログラム203は、出力画像218を撮影画像60Pに重ね合わせて表示画像219を作成する。表示画像219は、グレースケールの画像であってもよいし、グレースケールの画像を変換したカラー画像であってもよい。
【0111】
撮影画像60Pの解像度の低下に伴って、欠陥84に対応する領域の解像度も低下する。より具体的には、入力画像210における100μm/ピクセルの分解能は、出力画像218において、800μm/ピクセルにまで低下する。しかしながら、検査員が対象表面82の欠陥84の位置を特定するためには、この程度の分解能で十分である。また、解像度が低下する結果、出力画像218及び表示画像219において、欠陥84に対応する領域のサイズが、実際の欠陥84のサイズよりも少し大きくなる場合がある。この場合、高い欠陥検出精度を維持しつつ、欠陥84を、より見易く表示できる。
【0112】
以上に説明した検査処理は、様々に変形可能である。例えば、欠陥検出処理204の層の構造、各層のピクセルサイズ及びチャネル数は、本実施の形態に限定されず、検出しようとする欠陥84に合わせて適切に設定すればよい。また、検査処理は、表示画像219に表示した欠陥84の領域の対象表面82全体に対する位置を、表示装置28に表示してもよい。
【0113】
図1を参照すると、本実施の形態の検査システム10は、既に説明した様々な変形例に加えて、更に様々に変形可能である。
【0114】
図12を
図1と比較すると、検査システム10の第1変形例による検査システム10Aは、検査システム10と同じ処理装置20、投影制御装置30及び光学ヘッド40に加えて、支持装置制御装置70Aと、支持装置72Aとを備えている。本変形例の支持装置72Aは、ロボットアームであり、光学ヘッド40を移動可能に支持している。支持装置制御装置70Aは、ロボットアームのコントローラである。支持装置制御装置70Aには、光学ヘッド40の移動経路48(
図17から
図19まで参照)がティーチングによって予め設定されている。支持装置制御装置70Aは、光学ヘッド40が移動経路48に沿って移動するように支持装置72Aを制御する。
【0115】
本変形例の支持装置72Aは、6軸ロボットアームである。但し、本発明は、これに限られない。支持装置72Aは、光学ヘッド40を必要な移動経路48(
図17から
図19まで参照)に沿って移動させることができる限り、どのようなロボットアームであってもよいし、ロボットアームでなくてもよい。支持装置制御装置70Aは、必要に応じて設ければよい。
【0116】
図12を参照すると、支持装置72Aは、被固定部74Aと、支持部76Aとを有している。本変形例の被固定部74Aは、設置面92に置かれた台の上に固定されている。即ち、被固定部74Aは、設置面92に対して移動しないように固定されている。支持部76Aは、被固定部74Aに対して相対的に移動可能である。
図3を参照すると、光学ヘッド40の被支持部44は、支柱46を介して支持部76Aの一端に固定されている。即ち、光学ヘッド40の撮影装置60は、支持部76Aに支持されており、これにより、対象表面82に沿って移動可能である。詳しくは、被支持部44は、支持部76Aに支持されており、これにより、光学ヘッド40は、撮影装置60と対象表面82との間の距離DCを撮影装置60が投影画像50Pを撮影可能な範囲に維持しつつ、対象表面82に沿って移動可能である。
【0117】
より具体的には、本変形例の光学ヘッド40は、X方向、Y方向及びZ方向の3方向の夫々に沿って移動可能であり、3方向のうちの2方向以上を合成した方向に沿って移動可能である。加えて、光学ヘッド40は、3方向の夫々と並行に延びる軸を中心として回転可能である。上述のように、本変形例の光学ヘッド40は、様々に移動できる。但し、本発明は、これに限られず、光学ヘッド40は、対象表面82全体を撮影するために必要な方向に移動及び回転できればよい。
【0118】
図17を参照すると、本変形例の光学ヘッド40は、Y方向及びZ方向の夫々に沿って移動する場合がある。このような場合、対象表面82に投影される明部52P及び暗部54Pの夫々は、Y方向及びZ方向の夫々に対して斜交していることが好ましい。換言すれば、明部52P及び暗部54Pの夫々は、光学ヘッド40の移動方向に対して斜めに延びていることが好ましい。
【0119】
図14を
図17と併せて参照すると、光学ヘッド40の第1変形例によるカバー56Fは、斜めに延びる明部52P及び暗部54Pを投影可能に形成されている。より具体的には、カバー56Fの透過部57及び遮蔽部58の夫々は、カバー56Fの辺562と斜交する斜交方向に沿って延びている。カバー56Fの透過部57及び遮蔽部58は、斜交方向と直交する配置方向において互いに交互に配置されている。第1変形例の斜交方向は、辺562に対して20~70度の範囲又は-20~-70度の範囲で斜交していること好ましく、±45度程度斜交していることが更に好ましい。
【0120】
第1変形例の辺562は、矩形の四辺のうちの1つである。透過部57及び遮蔽部58の夫々は、カバー56F全体に亘って延びている。透過部57及び遮蔽部58の配置方向におけるサイズ(幅)は、互いに同じである。但し、本発明は、これに限られない。例えば、辺562は、多角形の辺のうちの1つであってもよい。透過部57及び遮蔽部58の夫々の端部は、カバー56Fの辺から離れていてもよい。カバー56Fの辺から離れた端部は、丸みを帯びた形状を有していてもよいし、多角形形状を有していてもよい。透過部57及び遮蔽部58の夫々の幅は、必要に応じて変形可能である。
【0121】
図15を
図17と併せて参照すると、光学ヘッド40の第2変形例によるカバー56Sは、上述の第1変形例によるカバー56F(
図14参照)の更なる変形例である。カバー56Sは、カバー56Fと同様な透過部57及び遮蔽部58に加えて周辺透過部59を有している。周辺透過部59は、YZ平面において、カバー56Sの四辺に沿って延びており、全ての透過部57及び遮蔽部58を囲んでいる。透過部57及び遮蔽部58の夫々は、カバー56Sの辺562と斜交する斜交方向に沿って周辺透過部59の間を延びている。カバー56Sの透過部57及び遮蔽部58は、斜交方向と直交する配置方向において互いに交互に配置されている。第2変形例の斜交方向は、辺562に対して20~70度の範囲又は-20~-70度の範囲で斜交していること好ましく、±45度程度斜交していることが更に好ましい。
【0122】
撮影装置60によって対象表面82を撮影すると、通常の場合、投影画像50Pが投影されていない周辺領域も撮影画像60Pに撮影される。欠陥検出処理204(
図11参照)は、撮影画像60Pの周辺領域に、実際には存在していない欠陥84を検出するおそれがある。第2変形例のカバー56Sによれば、欠陥検出処理204の出力画像218(
図11参照)を周辺透過部59によってマスクすることで、誤検出した欠陥84を取り除くことができ、これにより、欠陥検出処理204の欠陥検出精度を向上できる。
【0123】
図16を
図17と併せて参照すると、光学ヘッド40の第3変形例によるカバー56Tは、上述の第1変形例によるカバー56F(
図14参照)の更なる変形例である。カバー56Tは、透過部57を1つのみ有しており、且つ、遮蔽部58を2つのみ有している。透過部57及び遮蔽部58の夫々は、カバー56Tの辺562と斜交する斜交方向に沿って延びている。カバー56Tの透過部57及び遮蔽部58は、斜交方向と直交する配置方向において互いに交互に配置されている。第3変形例の斜交方向は、辺562に対して45度程度又は-45度程度斜交していることが好ましい。第3変形例のカバー56Tによれば、明部52Pと暗部54Pとの間のコントラストがより高くなり、欠陥84を検出し易くなる。
【0124】
第3変形例のカバー56Tは、更に変形可能である。例えば、透過部57及び遮蔽部58の夫々は、辺562と並行に延びていてもよく、辺562と直交していてもよい。カバー56Tは、周辺透過部59(
図15参照)を有していてもよい。
【0125】
第3変形例のカバー56Tの透過部57のサイズは小さい。
図16を
図5と併せて参照すると、発光素子522の殆どがカバー56Tの遮蔽部58に覆われている。
図16を
図7と併せて参照すると、第3変形例のカバー56Tを設ける場合、主部51のうち透過部57に対応する部位にのみ発光素子522を設けてもよい。より具体的には、透過部57に対応する1本のバー照明を主部51に設けてもよい。主部51をこのように形成することで、発光素子522の数を大幅に減らして製造コストを低減できる。加えて、発光素子522を発光させる際の電力を大幅に削減できる。
【0126】
図12及び
図17から
図19までを参照すると、検査システム10Aは、設置面92に対して移動しないように固定された対象表面82を、検査システム10(
図1参照)と同様な手順で検査できる。詳しくは、
図13を
図2と比較すると、検査システム10Aによる検査手順は、支持装置制御装置70Aの制御が加わっていることを除き、検査システム10による検査手順と同様である。以下、検査システム10による検査手順と異なる部分のみを説明する。
【0127】
図13及び
図17から
図19までを参照すると、装置本体22は、撮影装置60に撮影開始を指示する(
図13の「2-2」)前に、支持装置制御装置70Aに、支持装置72Aの移動開始を指示する(
図13の「2-1」)。移動開始を指示された支持装置72Aは、設定された移動経路48に沿って、移動経路48の初期位置488から終了位置489まで光学ヘッド40を移動させる。撮影開始を指示された撮影装置60は、設定された撮影周期に従って撮影し続ける。
【0128】
装置本体22は、光学ヘッド40が移動経路48の終了位置489に到達したとき、支持装置制御装置70Aに、支持装置72Aの移動終了を指示する(
図13の「4-1」)。この結果、光学ヘッド40の移動が終了する。次に、装置本体22は、撮影装置60に撮影終了を指示する(
図13の「4-2」)。この結果、撮影装置60による撮影が終了する。
【0129】
図17を参照すると、光学ヘッド40の撮影装置60は、図示した移動経路48に沿って移動してもよい。撮影装置60は、停止点482の夫々において一時的に停止しつつ、撮影点484の夫々において撮影画像60Pを撮影する。
図17の移動経路48は、ティーチングによる設定が容易である。但し、
図17の移動経路48によれば、停止点482前後で光学ヘッド40の速度が低下する。加えて、光学ヘッド40は、停止点482の夫々において減速に起因して振動するため、振動が収まるまでの待ち時間が必要になる。即ち、停止点482の夫々においてタイムロスが生じる。
【0130】
図18を参照すると、光学ヘッド40(
図12参照)の撮影装置60は、図示した移動経路48に沿って移動してもよい。撮影装置60は、移動経路48の初期位置488から終了位置489まで1回も停止することなく、撮影点484の夫々において撮影画像60Pを無停止で撮影する。
図18の移動経路48は、ティーチングによる設定が難しい。但し、
図18の移動経路48によれば、光学ヘッド40の停止に伴うタイムロスをなくすことができ、これにより、検査全体の時間を短縮できる。
図18を
図17と比較すると、検査全体の時間を短縮するという観点から、停止点482が増えるほど
図18の移動経路48が好ましい。
【0131】
図19を参照すると、対象表面82は、立体的な形状を有していてもよい。この場合、光学ヘッド40は、図示した移動経路48に沿って移動してもよく、撮影装置60は、移動経路48の初期位置488から終了位置489まで1回も停止することなく、撮影画像60Pを無停止で撮影してもよい。
【0132】
図20を参照すると、対象表面82は、X方向における凹凸が形成された複雑な形状を有していてもよく、YZ平面において光学ヘッド40の移動可能範囲よりも大きなサイズを有していてもよい。この場合、対象物80は、設置面92に対して移動していてもよい。例えば、図示した対象物80は、支持部77Aに固定されている。支持部77Aは、レール等の支持台78Aに支持されており、Y方向にのみ移動可能である。支持部77Aは、検査の間、-Y方向に沿って、振動等の影響を除いて一定速度VCで移動し続ける。即ち、撮影装置60が投影画像50P(
図17参照)を撮影する際、対象表面82は、支持装置72Aの被固定部74Aに対して相対的に移動している。
【0133】
図21を
図20と併せて参照すると、本変形例の光学ヘッド40は、
図21に示した移動経路48に沿って移動する。前述したように、本変形例の投影装置50及び撮影装置60は、光学ヘッド40として一体に纏められている。従って、
図21に示した移動経路48は、投影装置50及び撮影装置60の夫々の移動経路48でもある。換言すれば、投影装置50及び撮影装置60の夫々は、
図21に示した移動経路48に沿って移動する。
【0134】
本変形例の支持装置72Aは、対象表面82が一定速度VCで移動し続ける間、光学ヘッド40を8の字状に移動させる。即ち、本変形例の撮影装置60の移動経路48は、撮影装置60が初期位置488から移動開始して初期位置488に戻る8の字状の経路を含んでいる。詳しくは、光学ヘッド40は、8の字の中心に位置する通過点486を、-Y成分が一定速度VCと一致するような速度、又は、振動等の影響を加味して-Y成分が一定速度VCよりも多少大きくなるような速度で直線的に等速運動する。光学ヘッド40は、8の字の四隅に位置する4つの通過点486を、移動速度を維持しつつ曲線的に等速運動する。この8の字移動により、撮影装置60による無停止撮影が可能になる。
【0135】
図21を
図18と併せて参照すると、光学ヘッド40の8の字移動による移動経路48を対象表面82にマッピングすると、
図18と同様な移動経路48になる。
図18及び
図21から理解されるように、本変形例の8の字移動を繰り返し行うことで、移動し続ける対象表面82全体を、無停止で撮影できる。但し、本発明は、これに限られない。例えば、光学ヘッド40は、対象表面82の移動方向と斜交する方向に沿って移動した後に、一時的に停止し、その後、反対方向に移動してもよい。この場合、光学ヘッド40の往復移動による移動経路48を対象表面82にマッピングすると、
図17と同様な移動経路48になる。以上の説明から理解されるように、撮影装置60の移動経路48は、対象表面82の移動方向と斜交する方向に沿った経路を含んでいればよい。更に、光学ヘッド40は、適切な速度による上下移動を繰り返してもよい。
【0136】
図22を
図12と併せて参照すると、本変形例の光学ヘッド40は、対象表面82を検出可能なセンサ(図示せず)を備えていてもよい。センサは、装置本体22と通信可能に接続すればよい。以下に説明するように、このようなセンサを備えることで、欠陥84の対象表面82におけるYZ平面上の位置を容易に算出できる。
【0137】
図22を
図13と併せて参照すると、センサ(図示せず)は、対象表面82が撮影可能な範囲にあるか否かを検知し続ける。装置本体22は、投影設定(
図13の「1-1」)及び撮影設定(
図13の「1-2」)を行った後、一定周期でセンサの検知結果を取得する。装置本体22は、対象表面82が撮影可能な範囲に移動したことを検知すると、支持装置72Aに移動開始を指示する(
図13の「2-1」)。装置本体22は、その後、撮影装置60に撮影開始を指示する(
図13の「2-2」)。装置本体22は、対象表面82が撮影可能な範囲外に移動したことを検知すると、支持装置72Aに移動終了を指示する(
図13の「4-1」)。装置本体22は、その後、撮影装置60に撮影終了を指示する(
図13の「4-2」)。
【0138】
撮影装置60は、撮影画像60P(
図17参照)を装置本体22に送信する際(
図13の「3-5」)、撮影開始が指示されてから撮影するまでの経過時間TSを合わせて送信する。装置本体22は、検査によって欠陥84を検出すると、欠陥84を検出した撮影画像60Pの経過時間TSに基づいて、欠陥84の対象表面82におけるYZ平面上の位置を算出する。
【0139】
詳しくは、装置本体22は、支持装置72Aが移動開始してから撮影装置60が撮影開始するまでの時間(移動時間補正値T2)を経過時間TSに加えることで、欠陥84を検出した撮影画像60PのYZ平面上の位置(8の字経路における位置)を算出する。また、装置本体22は、対象表面82を検知した時間から撮影装置60が撮影開始するまでの時間(搬送時間補正値T1)を経過時間TSに加えることで、欠陥84を検出した撮影画像60Pの対象表面82に対するY方向における相対的な位置を算出する。以上の算出結果により、欠陥84の対象表面82におけるYZ平面上の位置を算出できる。
【0140】
本変形例の装置本体22は、欠陥84の対象表面82におけるYZ平面上の位置を上述のように算出する。
図10を参照すると、算出した位置は、表示画像219とともに表示装置28に表示してもよい。但し、本発明は、これに限られない。例えば、欠陥84の対象表面82におけるYZ平面上の位置を算出する方法は、特に限定されない。
【0141】
図23を参照すると、車のボディのような対象表面82を検査する場合、検査システム10Aは、3つの光学ヘッド40を備えていてもよい。光学ヘッド40のうちの2つは、床である設置面92上に配置してもよい。光学ヘッド40のうちの他の1つは、天井である設置面92上に配置してもよい。
【0142】
本発明は、既に説明した実施の形態や変形例に限られず、更に様々に適用可能である。例えば、
図12を参照すると、支持装置72Aは、装置本体22と独立したコントラーラを使用して直接的に制御してもよい。また、光学ヘッド40を携帯可能な程度に小型化及び軽量化してもよい。携帯可能な光学ヘッド40は、支持装置72Aによって支持するのでなく、検査員が携帯して検査を行ってもよい。
【0143】
更に、投影装置50及び撮影装置60の2つの装置を纏めた光学ヘッド40のような装置は、必ずしも必要ではない。例えば、投影装置50は、撮影装置60を支持する支持装置72Aとは別のロボットアームによって支持されていてもよい。即ち、投影装置50及び撮影装置60は、互いに独立に移動可能であってもよい。この例に限定されず、投影装置50及び撮影装置60の配置は、様々に変形可能である。以下、検査システム10の3つの変形例(検査システム10の第2~第4変形例)について説明する。検査システム10の第2~第4変形例の夫々には、投影装置50及び撮影装置60を纏めた光学ヘッド40のような装置が設けられていない。
【0144】
図24を
図20と比較すると、検査システム10(
図1参照)の第2変形例による検査システム10Bは、検査システム10Aの光学ヘッド40を備えていない。より具体的には、検査システム10Bは、光学ヘッド40に代えて、複数の投影装置50と、1つの撮影装置60とを備えている。投影装置50の夫々は、検査空間90の壁面に固定されている。一方、撮影装置60は、検査システム10Aと同じ支持装置72Aによって移動可能に支持されている。上述の相違点を除き、検査システム10Bは、以下に説明するように、検査システム10Aと同様に構成されており、検査システム10Aと同様に機能する。
【0145】
図24を
図12及び
図17と併せて参照すると、検査システム10Bは、対象表面82の欠陥84を検出するための検査システムである。検査システム10Bは、投影装置50及び撮影装置60に加えて、処理装置20と、処理装置20に組み込まれた表示装置28と、支持装置72Aとを備えている。投影装置50の夫々は、面状の投影画像50Pを対象表面82に投影可能である。投影画像50Pの夫々は、1以上の明部52Pと、明部52Pよりも低い輝度を有する1以上の暗部54Pとを含んでいる。撮影装置60は、対象表面82に投影された投影画像50Pを撮影可能に配置されている。処理装置20は、装置本体22を備えている。装置本体22は、撮影装置60と通信可能である。
【0146】
図24を
図12と併せて参照すると、本変形例の支持装置72Aは、検査システム10Aの支持装置72Aと同様なロボットアームであり、被固定部74Aと、支持部76Aとを有している。被固定部74Aは、移動しないように固定されている。支持部76Aは、被固定部74Aに対して相対的に移動可能である。撮影装置60は、支持部76Aに支持されており、これにより、対象表面82に沿って移動可能である。
【0147】
図24を
図17と併せて参照すると、撮影装置60が投影画像50Pを撮影する際、対象表面82は、支持装置72Aの被固定部74Aに対して相対的に移動している。より具体的には、本変形例の対象物80は、検査システム10Aの対象物80と同様に、支持台78Aによって移動可能に支持された支持部77Aに固定されている。支持部77Aは、検査の間、-Y方向に沿って、一定速度VCで移動し続ける。即ち、対象表面82は、支持装置72Aの被固定部74Aに対して相対的に移動している。
【0148】
上述した対象表面82の移動に加えて、撮影装置60は、検査の間、設置面92に対して相対的に移動している。例えば、撮影装置60は、所定の移動経路48(
図21参照)に沿って移動する。撮影装置60の移動経路48は、撮影装置60が初期位置488から移動開始して初期位置488に戻る8の字状の経路を含んでいる。即ち、移動経路48は、対象表面82の移動方向と斜交する方向に沿った経路を含んでいる。
【0149】
撮影装置60は、対象表面82に対して相対的に移動しつつ、投影画像50Pを含む撮影画像60Pを撮影する。対象表面82は、撮影装置60が撮影画像60Pを撮影する間に、壁に固定された投影装置50に対して相対的に移動している。換言すれば、投影装置50は、撮影装置60が撮影画像60Pを撮影する間に、対象表面82に対して相対的に移動している。
【0150】
図24を
図13と併せて参照すると、装置本体22は、撮影装置60から撮影画像60Pを受信し、受信した撮影画像60Pの解像度を低下させつつ欠陥84(
図17参照)を検出する。表示装置28は、装置本体22が検出した欠陥84を表示する。以上の説明から理解されるように、本変形例によっても、対象表面82が移動している場合であっても、対象表面82の微細な欠陥84を検出可能な新たな検査システム10Bを提供できる。
【0151】
図24を参照すると、本変形例の撮影装置60は、支持装置72Aに直接的に固定され支持されている。また、本変形例によれば、4つの投影装置50が、壁面に固定されている。但し、本発明は、これに限られない。例えば、撮影装置60は、光学ヘッド40(
図3参照)に類似した装置を介して支持装置72Aに間接的に固定され支持されていてもよい。支持装置72Aは、ロボットアームに限定されない。例えば、支持装置72Aは、Y方向にのみ移動可能な支持部76(
図1参照)であってもよい。一方、撮影装置60は、設置面92に対して移動しないように固定されていてもよい。また、投影装置50の数や配置は、特に限定されない。例えば、1つの大型の投影装置50が、壁面に固定されていてもよい。更に、壁面全体が投影装置50として機能してもよい。
【0152】
図25を
図23と比較すると、検査システム10(
図1参照)の第3変形例による検査システム10Cは、光学ヘッド40に代えて、投影装置50として機能する壁面と、3つの撮影装置60とを備えている。壁面には、蛍光灯やバー照明等のスリットパターン照明が設けられており、XZ平面において対象物80全体を囲んでいる。壁面に設けられたスリットパターン照明は、投影装置50の発光部として機能する。撮影装置60の夫々は、検査システム10Aと同じ支持装置72Aによって移動可能に支持されている。上述の相違点を除き、検査システム10Cは、
図23に示した検査システム10Aと同様に構成されており、検査システム10Aと同様に機能する。
【0153】
図25を参照すると、本変形例の壁面(投影装置50)は、車のボディ全体に投影画像50P(
図17参照)を投影できる程度の大きなサイズを有している。但し、本発明は、これに限られない。例えば、壁面は、車のドアミラーカバー全体に投影画像50Pを投影できる程度の小さなサイズを有していてもよい。支持装置72Aは、ロボットアームに限定されない。例えば、支持装置72Aは、Y方向にのみ移動可能な支持台78(
図1参照)であってもよい、更に、撮影装置60は、設置面92に対して移動しないように固定されていてもよい。
【0154】
図26を
図19と併せて参照すると、検査システム10(
図1参照)の第4変形例による検査システム10Dは、光学ヘッド40に代えて、検査台72Dを備えている。検査台72Dは、検査空間90の設置面92に固定されており、トンネル状の孔が形成された部位(以下、「検査部」という。)と、コンベアとを備えている。コンベアは、検査部の内部を、+Y方向に沿って一定速度VCで移動し続ける。検査部の内部の壁面には、投影装置50と、撮影装置60とが設けられている。検査システム10Cは、上述の相違点を除き、検査システム10と同様に構成されており、検査システム10と同様に機能する。
【0155】
小型の対象物80は、検査台72Dのコンベアの一端に乗せられ、コンベアとともに検査部の内部を通過してコンベアの他端まで移動する。対象物80が検査部の内部を通過する際、投影装置50は、対象表面82に投影画像50Pを投影し、撮影装置60は、投影画像50Pを含む撮影画像60Pを撮影する。
【0156】
検査システム10Dの投影装置50及び撮影装置60の夫々は、設置面92に対して移動しないように固定されている。一方、撮影装置60が投影画像50Pを撮影する際、対象表面82は、投影装置50及び撮影装置60の夫々に対して相対的に移動している。換言すれば、撮影装置60は、対象表面82に対して相対的に移動しつつ、投影画像50Pを含む撮影画像60Pを撮影する。また、投影装置50は、撮影装置60が撮影画像60Pを撮影する間に、対象表面82に対して相対的に移動している。本変形例によっても、対象表面82が移動している場合であっても、対象表面82の微細な欠陥84を検出可能な新たな検査システム10Dを提供できる。
【0157】
上述した第2~第4変形例は、既に説明した実施形態及び第1変形例と様々に組み合わせ可能であり、且つ、既に説明した実施形態及び第1変形例と同様に様々に変形可能である。
【符号の説明】
【0158】
10,10A,10B,10C,10D 検査システム
20 処理装置
201 投影制御プログラム
202 撮影制御プログラム
203 検査処理プログラム
204 欠陥検出処理
206 エンコード処理
207 後処理
208 欠陥特定処理
210 入力画像
212 中間層
214 第1出力層
215 中間層
216 第2出力層
218 出力画像
219 表示画像
22 装置本体
24 記憶装置
26 入力装置
28 表示装置
30 投影制御装置
40 光学ヘッド
42 基部材
44 被支持部
46 支柱
48 移動経路
482 停止点
484 撮影点
486 通過点
488 初期位置
489 終了位置
50,50C,50X 投影装置
51,51X 主部
52,52X 発光部
522 発光素子
53 拡散板
54 発光面
54L 投影光
56,56F,56S,56T カバー
562 辺
57 透過部
58 遮蔽部
59 周辺透過部
50P 投影画像
52P 明部
54P 暗部
60 撮影装置
62 光軸
60P 撮影画像
70A 支持装置制御装置
72,72A 支持装置
72D 検査台
74A 被固定部
76,76A,77A 支持部
78,78A 支持台
80 対象物
82 対象表面
84 欠陥
86 中間点
88 法線
90 検査空間
92 設置面
【要約】
【課題】対象表面が移動している場合であっても、対象表面の微細な欠陥を検出可能な新たな検査システムを提供すること。
【解決手段】検査システム10は、処理装置20と、表示装置28と、投影装置50と、対象表面に対して相対的に移動可能な撮影装置60とを備えている。処理装置20は、装置本体22を備えている。撮影装置60は、撮影装置60の対象表面に対する相対的な移動の途中で、撮影画像を2回以上撮影する。投影装置50は、撮影装置60が撮影画像を撮影する間に、対象表面に対して相対的に移動している。装置本体22は、撮影画像の夫々を受信し、受信した撮影画像の解像度を低下させつつ欠陥を検出する。表示装置28は、装置本体22が検出した欠陥を表示する。
【選択図】
図1