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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】ソフトカプセル及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/48 20060101AFI20221206BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20221206BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20221206BHJP
   A61K 35/60 20060101ALI20221206BHJP
   A61P 3/02 20060101ALI20221206BHJP
   A23L 5/00 20160101ALI20221206BHJP
   A23L 33/115 20160101ALN20221206BHJP
【FI】
A61K9/48
A61K47/42
A61K47/22
A61K35/60
A61P3/02
A23L5/00 C
A23L33/115
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022122877
(22)【出願日】2022-08-01
【審査請求日】2022-08-01
(31)【優先権主張番号】P 2022035982
(32)【優先日】2022-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】317012042
【氏名又は名称】株式会社SBS
(74)【代理人】
【識別番号】100195327
【弁理士】
【氏名又は名称】森 博
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 智成
(72)【発明者】
【氏名】久我 康太
(72)【発明者】
【氏名】野村 知史
【審査官】石井 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-099482(JP,A)
【文献】特開2021-159083(JP,A)
【文献】特開平07-227227(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
A61K 35/00-35/768
A23L 5/00- 5/49
A23L 33/00-33/29
A61P 1/00-43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゼラチンを主成分とし、カテキン類及びテアフラビン類を含有するカプセル皮膜と、
前記カプセル皮膜に充填された臭気成分を含有するカプセル内容物と、
を有し、
前記カテキン類が緑茶由来カテキンであり、前記テアフラビン類が紅茶由来テアフラビンであり、
前記カプセル内容物が、魚油を含む内容物であることを特徴とするソフトカプセル。
【請求項2】
前記カプセル内容物が、さらに乳化剤を含む請求項に記載のソフトカプセル。
【請求項3】
ゼラチンと、カテキン類及びテアフラビン類と、を混合してカプセル皮膜を得る工程と、
前記カプセル皮膜に臭気成分を含有するカプセル内容物を充填する工程と、を含み、
前記カテキン類が緑茶由来カテキンであり、前記テアフラビン類が紅茶由来テアフラビンであり、
前記カプセル内容物が、魚油を含む内容物であることを特徴とするソフトカプセルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、臭気成分を含有する内容物に由来する臭気を改善するソフトカプセルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の健康志向の高まりもあり、健康上有用な成分を手軽に摂取するために、サプリメント等が望まれている。一般に広く普及しているサプリメントの形態として、ソフトカプセルがある。
【0003】
ソフトカプセルは、内容成分の安定性、内容成分量の均一性、更には内容成分の味および臭いの面で優れていることが知られている(例えば、特許文献1)。しかしながら、その内容物が強い臭気を有する場合には、ソフトカプセルの皮膜を通して臭い成分がソフトカプセル外に放散するためソフトカプセルが摂取しにくくなるという問題があった。
【0004】
一方、魚油は、健康効果が高い成分が多く含まれることが知られており、このような健康効果を有する魚油を日常的に摂取することへのニーズが存在している。しかしながら、魚油には、特有の臭気が発生するという問題があるため、魚油等の特有の臭気を低減する方法として、例えば、クリルオイルに臭気緩和物質として茶カテキン等を添加すること(特許文献2)、魚油などの天然油に酸化防止剤としてカテキン等を混合すること(特許文献3)等がすでに報告されている。
【0005】
また、ゼラチンをカプセル皮膜の主成分とするソフトカプセルは、カプセル皮膜のゼラチンと充填する内容物との反応により、カプセル皮膜の硬化が経時的に進むことが知られている。さらに、カプセル内容物にカテキンなどのポリフェノール類が含有されている場合には、カプセル皮膜の硬化が進み、崩壊性が低下するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2002-291419号公報
【文献】特開2021-159083号公報
【文献】特開平7-227227号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2及び3には、魚油にカテキン類を添加することによって魚油特有の臭気を低減する方法が開示されているが、カプセル内容物に魚油とカテキン類を含有させることは、カテキン類の作用によりカプセル皮膜の硬化が起こるという問題があることから、カプセル内容物として魚油の臭気を抑制するためにカテキン類を含有させることはソフトカプセルの形状を維持する点で課題があった。
【0008】
かかる状況下、本発明の目的は、魚油等の臭気成分を含有する内容物に由来する臭気を抑制したソフトカプセル及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、ソフトカプセルの内容物ではなく、カプセル皮膜にカテキン類及びテアフラビン類を含有させることによって、意外にも、カプセル皮膜が硬化することなく、ソフトカプセルとしての強度を維持でき、かつ、臭気成分を含有するカプセル内容物に由来する臭気が抑制することを見出した。さらに、ソフトカプセルがカテキン類及びテアフラビン類を含有するカプセル皮膜を有することによって、ソフトカプセルの経口摂取後に発生する戻り臭を抑制することができることを見出し、本発明に至った。
【0010】
すなわち、本発明は、以下の発明に係るものである。
<1> ゼラチンを主成分とし、カテキン類及びテアフラビン類を含有するカプセル皮膜と、前記カプセル皮膜に充填された臭気成分を含有するカプセル内容物と、を有するソフトカプセル。
<2> 前記カテキン類が緑茶由来カテキンであり、前記テアフラビン類が紅茶由来テアフラビンである<1>に記載のソフトカプセル。
<3> 前記カプセル内容物が、臭気成分として動物性油脂及び/又は植物性油脂を含含む<1>または<2>に記載のソフトカプセル。
<4> 前記カプセル内容物が、魚油を含む<1>から<3>のいずれかに記載のソフトカプセル。
<5> 前記内容物が、さらに乳化剤を含む<1>から<4>のいずれかに記載のソフトカプセル。
<6> ゼラチンと、カテキン類及びテアフラビン類を混合してカプセル皮膜を得る工程と、
前記カプセル皮膜に臭気成分を含有するカプセル内容物を充填する工程と、を含むソフトカプセルの製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、魚油等の臭気成分を含有する内容物に由来する臭気が抑制されたソフトカプセルが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明のソフトカプセルの概略断面図である。
図2】実施例1,2及び比較例のソフトカプセルの外観写真である。
図3】評価試験2のアンケートまとめである。
図4】評価試験3のアンケートまとめである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について例示物等を示して詳細に説明するが、本発明は以下の例示物等に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施できる。なお、本明細書において、「~」とはその前後の数値又は物理量を含む表現として用いるものとする。また、本明細書において、「A及び/又はB」という表現には、「Aのみ」、「Bのみ」、「A及びBの双方」が含まれる。
【0014】
<1.ソフトカプセル>
本発明は、ゼラチンを主成分とし、カテキン類及びテアフラビン類を含有するカプセル皮膜と、前記カプセル皮膜に充填された臭気成分を含有するカプセル内容物と、を有するソフトカプセル(以下、「本発明のソフトカプセル」と記載する場合がある。)に関する。
【0015】
本発明のソフトカプセルは、カプセル皮膜にカテキン類及びテアフラビン類の両方を含有することに特徴がある。
カプセル皮膜にカテキン類及びテアフラビン類の両方を含有させることによって、カプセル皮膜を通して放散されるカプセル内容物由来の臭気を抑制することができる。
【0016】
さらに、本発明のソフトカプセルは、経口摂取した後に発生する戻り臭の抑制に対しても特徴的な効果を有する。本明細書において、「戻り臭」とは、経口摂取後に胃内から口腔内に戻ってくる人に不快感を与える臭気を意味する。
【0017】
本発明のソフトカプセルが、戻り臭を抑制できる詳細は完全に明らかではないが、本発明のソフトカプセルを経口摂取すると、まず、カプセル皮膜が胃で分解され、カプセル内容物に含まれる臭気成分とカプセル皮膜に含まれるカテキン類及びテアフラビン類が共に溶け出す。その後、胃の中で溶け出した臭気成分は、カテキン類及びテアフラビン類と結合すると推測される。その結果として、胃の中で溶け出した臭気成分が口腔内へ戻ってこないという利点がある。
【0018】
また、後述する実施例に示す通り、本発明のソフトカプセルは、特に、臭気成分が魚油の場合には、カプセル内容物由来の臭気の抑制及び経口摂取後に発生する戻り臭の抑制に対して優れた効果を発揮する。
【0019】
また、前述した通り、通常、カプセル内容物にカテキンを含有させると、カプセル皮膜のゼラチンと充填する内容物との反応により、カプセル皮膜が経時的に硬化するという問題が起こる。しかしながら、本発明のようにカプセル皮膜にカテキン類のみではなく、カテキン類とテアフラビン類共存させると、カプセル皮膜が硬化しにくくなり、ソフトカプセルとしての強度を維持することができる。
【0020】
以下、本発明のソフトカプセルの各構成要素を詳細に説明する。
【0021】
<1-1.カプセル皮膜>
本発明のソフトカプセルにおけるカプセル皮膜(以下、「本発明のカプセル皮膜」又は単に「カプセル皮膜」と称す場合がある。)は、ゼラチンを主成分とし、カテキン類及びテアフラビン類を含有する。
【0022】
(ゼラチン)
本発明のソフトカプセルにおけるカプセル皮膜の原料となるゼラチンは、動物の皮膚や骨などの主成分であるコラーゲンを原料としたものであり、一般的にカプセル皮膜の製造に使用されているゼラチンを使用することができる。
また、本発明におけるゼラチンの原料は、本発明の効果を損なわなければ、化学処理(酸処理やアルカリ処理等)、酵素処理等で処理してもよい。
【0023】
カプセル皮膜において、ゼラチンを主成分としている。ここで、「主成分」とは、カプセル皮膜のうち50重量%以上がゼラチンであることを意味するものとする。
カプセル皮膜において、ゼラチンの含有量が少なすぎると、カプセル皮膜の強度やカプセル皮膜の均一性が維持できなくなる可能性がある。カプセル皮膜におけるゼラチンの割合は、例えば、カプセル皮膜全体を100重量%としたときに、50重量%以上、70重量%以上、90重量%以上が挙げられる。
【0024】
カプセル皮膜は、ゼラチンのみを使用して製造してもよいが、通常、可塑剤としてグリセリン等が配合されている。
【0025】
(カテキン類)
カプセル皮膜に含有させるカテキン類は、茶の苦み成分としても知られているポリフェノールの1種である。本発明におけるカテキン類には、カテキン、ガロカテキン、カテキンガレート、ガロカテキンガレート、エピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート、エピガロカテキンガレートより選択された1種以上が含まれる。
【0026】
本発明において、カテキン類は、化学的に合成したカテキン類を使用してもよいが、緑茶由来カテキンを使用することが好ましい。また、緑茶由来カテキンを使用することによって内容物の臭気を抑制するのみならず、緑茶葉由来の香りを付与することができる。
なお、「緑茶葉」とは茶樹(学名:Cameria sinensis)より摘採した未発酵の茶葉を意味し、緑茶であれば特に品種は問わない。
【0027】
本発明で使用される緑茶由来カテキンは、緑茶葉から分離精製した精製物でもよいが、緑茶葉から抽出した抽出物、緑茶葉の粉砕物又は細切物等の加工物としてカプセル皮膜に含有されていてもよい。また、緑茶由来カテキンの精製物や加工物は、公知の方法に従って製造してもよく、得られた精製物はそのまま利用してもよいが、常法に従って希釈、濃縮、乾燥、精製等の処理を施してもよい。また、市販のものを使用してもよい。好適な市販品の一例として、メディエンス株式会社、商品名「緑茶ポリフェノールEGCG50」を挙げることができる。
【0028】
(テアフラビン類)
カプセル皮膜に含有させるテアフラビン類は、茶葉の発酵工程等によって、茶葉に含まれるカテキン類が酸化されることにより生成する成分であり、ポリフェノールの1種である。本発明におけるテアフラビン類は、テアフラビン(TF1)、テアフラビン-3-ガレート(TF2A)、テアフラビン-3’-ガレート(TF2B)、テアフラビン-3,3’-ジガレート(TF3)より選択された1種以上が含まれる。
【0029】
本発明において、テアフラビン類は、化学的に合成したテアフラビン類を使用してもよいが、紅茶由来テアフラビンを使用することが好ましい。また、紅茶由来テアフラビンを使用することによって内容物の臭気を抑制するのみならず、紅茶葉由来の香りを付与することができる。
なお、「紅茶葉」とは茶樹(学名:Cameria sinensis)より摘採した茶葉を発酵させたものを意味し、紅茶であれば特に品種は問わない。
【0030】
本発明で使用される紅茶由来テアフラビンは、紅茶葉から分離精製した精製物でもよいが、紅茶葉から抽出した抽出物、紅茶葉の粉砕物又は細切物等の加工物としてカプセル皮膜に含有されていてもよい。また、紅茶由来テアフラビンの精製物や加工物は、公知の方法に従って製造してもよく、得られた精製物はそのまま利用してもよいが、常法に従って希釈、濃縮、乾燥、精製等の処理を施してもよい。また、市販のものを使用してもよい。好適な市販品の一例として、焼津水産化学工業株式会社、商品名「テアフラビンTF25」を挙げることができる。
【0031】
(配合割合)
カプセル皮膜におけるカテキン類及びテアフラビン類の含有量は、本発明の効果を奏す範囲で、カテキン類及びテアフラビン類の種類や形態(精製物、加工物)カプセル皮膜の強度や皮膜の均一性を損なわない範囲適宜調整することができる。
【0032】
緑茶由来カテキン及び紅茶由来テアフラビンの合計量は、カプセル皮膜全体を100重量%としたときに、緑茶由来カテキン及び紅茶由来テアフラビン(精製物換算)は、0.01~2.0重量%、好ましくは0.1~1.0重量%が挙げられる。この場合、緑茶由来カテキンと紅茶由来テアフラビンとの配合割合(重量比)は、例えば、1:0.01~1:100とすることができる。
緑茶由来カテキン及び紅茶由来テアフラビンの含有量が少なすぎると、内容物由来の臭気の抑制効果が不十分になる場合があり、多すぎるとカプセル皮膜が硬化してソフトカプセル崩壊遅延等の問題が生じる場合がある。
【0033】
(任意の成分)
カプセル皮膜には、必要に応じて、水、エタノール、任意の添加物成分を含有してもよい。任意の添加物成分としては、安全に経口摂取できるものであれば、特に制限されないが、例えば、可塑剤、着色料、乳化剤、pH調整剤、緩衝剤、酸化防止剤、防腐剤、酸味料、苦味料、香料、増粘剤、キレート剤等が挙げられる。これらの添加物成分は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、これらの添加物成分の含有量は、本発明の効果を損なわない範囲であれば、特に制限されず、使用する添加物成分の種類等に応じて適宜設定される。
【0034】
例えば、カプセル皮膜には、可塑剤が含まれていてもよい。例えば、グリセリン、スクロース、ソルビトール、プロピレングリコール、エチルセルロース等が挙げられる。これらの可塑剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0035】
カプセル皮膜における可塑剤の含有量については、本発明の効果を損なわない範囲であれば、特に制限されないが、例えば、カプセル皮膜に対し、1~35重量%が挙げられる。
【0036】
また、カプセル皮膜は、所望の色にするために、必要に応じて、着色料を含んでもよい。
【0037】
<1-2.カプセル内容物>
本発明のソフトカプセルに充填される内容物(以下、「本発明のカプセル内容物」又は単に「内容物」と称す場合がある。)は臭気成分を含有する。
臭気成分は、その特有の臭いにより、日常的に摂取する際の妨げとなる。なお、本発明における「臭気」とは、人が臭いを嗅いだ時や口に入れた時に感じる不快な臭いを意味する。
【0038】
カプセル内容物に含有する臭気成分は、カプセル皮膜に充填可能なカプセル内容物を形成できる限り公知の処理を施してもよい。
また、カプセル内容物の形態は、カプセル皮膜に充填できればよく、例えば、液体状、固形状、半固形状(ゲル状、クリーム状、ペースト状、ゾル状)等が挙げられる。
【0039】
臭気成分は、可食性であり、上述したカプセル皮膜に充填できるものであればよく、例えば、動物性油脂、植物性油脂、ビタミン類(水溶性ビタミン、脂溶性ビタミン)、コラーゲン、プラセンタ等が挙げられる。これらの成分は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0040】
臭気成分の好適な対象は、動物性油脂や植物性油脂である。動物性油脂としては、例えば、魚油、ハープシールオイル、クリルオイル等が挙げられ、植物性油脂としては、例えば、亜麻仁油、えごま油、大豆油等が挙げられる。これらの油脂は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0041】
臭気成分の中でもさらに好適な対象は魚油である。本発明のソフトカプセルはカプセル皮膜に含有されるカテキン類及びテアフラビン類により、魚油由来の臭気を抑制することができる。
【0042】
特に、魚油は、DHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)を豊富に含む油脂であり、食品素材等に利用され、健康増進のために広く摂取されている。しかしながら、魚油は、酸化しやすく、その酸化に伴って不快臭が発生するため、そのままでは摂取しにくいという問題がある。
【0043】
本発明のソフトカプセルは、そのままでは摂取しにくい魚油を、カテキン類及びテアフラビン類を含有させたカプセル皮膜に充填させることにより、カプセル内容物(魚油)に由来する臭気を抑制することができるのみならず、経口摂取後に発生する戻り臭を抑制することができる。
【0044】
本発明のソフトカプセルの好適な態様の一つは、ゼラチンを主成分とし、カテキン類及びテアフラビン類を含有するカプセル皮膜と、カプセル皮膜に充填された魚油を含有するカプセル内容物とを有するものである。後述する実施例で示す通り、本発明のソフトカプセルは、特に、魚油のみを含有させたカプセル内容物由来の臭気の抑制及び経口摂取後に発生する戻り臭の抑制効果において優れる。
【0045】
また、本発明のソフトカプセルは、カプセル皮膜に魚油のような粘度の低い内容物を充填したとしても、ソフトカプセルの形状を維持し、カプセル皮膜から内容物が漏出するのを防ぐことができるという利点がある。
【0046】
なお、本発明における「魚油」とは、魚から得られる油であり、魚の全身、すなわち身部、頭部、皮部、内臓部、卵等から採取することができる。また、魚油の原料となる魚類は、特に制限はなく、例えば、マグロ、イワシ、ニシン、サンマ、サバ、カツオ、イカ、タラ等が挙げられる。魚油の原料となる魚類は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0047】
カプセル内容物の好適な例として、マグロの頭部から採取された魚油(マグロ魚油)を含む内容物が挙げられる。
【0048】
カプセル内容物における臭気成分の割合は任意であるが、例えば、カプセル内容物全体を100重量%としたときに、70重量%以上、95重量%以上(100重量%も含む)が挙げられる。
【0049】
カプセル内容物には、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、他の任意の栄養成分や薬理成分を含有していてもよい。このような栄養成分や薬理成分としては、安全に経口摂取できるものであれば特に制限されないが、例えば、増粘剤、pH調整剤、緩衝剤、酸化防止剤、防腐剤、乳化剤、糖類、乳原料、呈味剤、着色料、香料、キレート剤、甘味料、塩類、ビタミン類、ミネラル類、その他の食品成分、水等を含有してもよい。
【0050】
これらの成分は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、これらの成分の含有量については、本発明の効果を損なわない範囲であれば、特に制限されず、使用する成分の種類等に応じて適宜設定される。
【0051】
カプセル内容物は、乳化剤が含まれていることが好ましい。乳化剤の好適な例としてはレシチンが挙げられる。レシチンには、大豆レシチンや卵黄レシチン等があるが、大豆レシチンが好適である。
【0052】
カプセル内容物において乳化剤の含有量は、内容物の分散・安定性の観点から、内容物全体を100重量%としたときに、例えば、0.1~20重量%である。
【0053】
カプセル内容物は、含有する任意の成分として、内容物の粘度調整や分散・安定性を向上させるために増粘剤が含まれていてもよい。例えば、ミツロウ、寒天、ゼラチン、キサンタンガム、グァーガム、カラギナン、ペクチン等が挙げられる。これらの増粘剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0054】
カプセル内容物において、増粘剤の含有量については、本発明の効果を損なわない範囲であれば、特に制限されない。増粘剤の含有量は、内容物全体を100重量%としたときに、例えば、0.1~20重量%である。
【0055】
<ソフトカプセルの形状、大きさ>
本発明におけるソフトカプセルの形状、大きさは、特に制限されない。形状としては、ラウンド型(球型)、オーバル型(フットボール型)、オブロング型(長楕円型)等が挙げられる。ソフトカプセルの大きさは、目的に応じて適宜選定することができる。
【0056】
図1は本発明の実施形態のソフトカプセルの一例の概略断面図である。実施形態のソフトカプセルの大きさは任意であるが、例えば、カプセル皮膜の厚さは、0.2~0.8mmであり、長径aは、10mm~20mm、短径bは、5mm~10mmである。
【0057】
カプセル内容物の充填量は、ソフトカプセルの形状及び大きさに応じて適宜設定される。
【0058】
<2.ソフトカプセルの製造方法>
本発明のソフトカプセルは、ゼラチンと、カテキン類及びテアフラビン類とを混合してカプセル皮膜を得る工程と、得られたカプセル皮膜に臭気成分を含有する内容物を充填する工程によって製造することができる。
なお、本発明のソフトカプセルの製造方法において、カプセル皮膜、内容物及びこれらを構成要素は、<1.ソフトカプセル>で上述した通りであるため、説明を省略する。
【0059】
カプセル内容物のカプセル皮膜内への充填は、公知のソフトカプセルの製造方法に従って行うことができる。例えばカプセル皮膜の原料を混合して製造したカプセル皮膜を薄膜状(厚さは0.2~0.5mm)に加工し、これを所望の形態にした後に、カプセル内容物を充填する方法が挙げられる。また、本発明のソフトカプセルは、必要に応じて、所定の水分含有率となるまでソフトカプセルを乾燥させたり、ソフトカプセルの表面を被覆剤でコーティングしてもよい。
【実施例
【0060】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0061】
<ソフトカプセルの製造>
(実施例1)
ソフトカプセルは以下の工程で製造した。
<カプセル皮膜の製造:工程(1)>
ゼラチン(ルスロジャパン株式会社製、ROUSSELOT 200 PS 8)100重量部当たり、グリセリン41重量部、緑茶由来カテキン(メディエンス株式会社製、緑茶ポリフェノールEGCG50)0.5重量部及び紅茶由来テアフラビン(焼津水産化学工業株式会社製、テアフラビンTF25)0.5重量部を均一になるまで混合して、カプセル皮膜用組成物を得た。
なお、緑茶由来カテキンには、精製物換算でカテキンを75重量%含有し、紅茶由来テアフラビンには、精製物換算でテアフラビンを25重量%含有している。得られた組成物を流延し薄膜状(厚さは0.2~0.5mm)のカプセル皮膜を得た。
【0062】
<カプセル内容物の製造:工程(2)>
カプセル内容物には、臭気成分として、魚油(株式会社Tuna Advanced Functional Food製)を使用した。
【0063】
<ソフトカプセルの成形:工程(3)>
ソフトカプセルの製造方法は、一般的な製造方法による。すなわち、工程(1)で得られた薄膜状のカプセル皮膜に、工程(2)で得られたカプセル内容物を1粒当たりのカプセル内容物の重量が300mgとなるようにソフトカプセル充填機を用いて充填した。
カプセル皮膜の内部にカプセル内容物を充填し、ソフトカプセル(未乾燥)を得た。その後、得られたソフトカプセル(未乾燥)を、タンブラー乾燥機で所定の水分含有率となるように乾燥させて実施例1のソフトカプセルを得た。図2に得られた実施例1のソフトカプセルを示す。
【0064】
(実施例2)
実施例1の工程(2)を以下に変更した以外は実施例1の製造方法と同様の方法で実施例2のソフトカプセルを得た。図2に得られた実施例2のソフトカプセルを示す。
工程(2)において、カプセル内容物には、臭気成分として魚油、乳化剤として大豆レシチン、水として水道水、増粘剤としてミツロウを含有させた。
魚油100重量部当たり、大豆レシチン(株式会社J-オイルミルズ製)3.5重量部、水1.0重量部を均一になるまで混合し、乳化物を得た。その後、得られた乳化物に溶融したミツロウ(日本ワックス株式会社製、ミツロウFPT)3.5重量部を添加し所望の粘度になるまで混合した。
【0065】
(比較例)
実施例1の工程(1)において、緑茶由来カテキン及び紅茶由来テアフラビンを含有させなかった以外は実施例1の製造方法と同様の方法で、比較例のソフトカプセルを得た。図2に得られた比較例のソフトカプセルを示す。
【0066】
上記の製造方法で得られた実施例1,2及び比較例のソフトカプセルの1粒当たりのカプセル皮膜の重量は、いずれも150mgであった。ソフトカプセル1粒当たりの全体重量は、450mgであった。図2に示す実施例1,2及び比較例のソフトカプセルの大きさは、いずれも、長径aは12.7mm、短径bは7.8mmであった。
【0067】
<評価試験1(臭気測定試験)>
上記の製造方法で得られた実施例1及び比較例のソフトカプセルを蓋のできる透明容器に100粒入れ、容器内の臭気を臭気測定機器(コニカミノルタ株式会社製、Kunkun body)を用いて測定した。測定結果を表1に示す。
また、参考例として、ソフトカプセル化していない魚油そのものの臭気も測定した。魚油は、蓋のできる透明容器に100mL充填し、容器内の臭気を臭気測定機器(コニカミノルタ株式会社製、Kunkun body)測定した。なお、参考例で用いた魚油は実施例1と同様のものを使用した。
臭気測定機器の測定結果は1~100段階の測定スコアで数値化され、臭気測定機器で得られた測定スコアが高いほど、臭気が強いことを示す。
【0068】
【表1】
【0069】
表1に示すように、実施例1のソフトカプセルと、比較例のソフトカプセルは、参考例(魚油)よりも、臭気の測定スコアが低い数値を示した。
【0070】
また、実施例1のソフトカプセルと、比較例のソフトカプセルを対比すると、カプセル内容物(魚油)由来の臭気の測定スコアが、実施例1の方がはるかに低くなっていることが分かる。すなわち、比較例(緑茶由来カテキン及び紅茶由来テアフラビン含有なしカプセル皮膜)では、魚油の臭気がカプセル皮膜を通してソフトカプセル外に放散しているのに対して、実施例1(緑茶由来カテキン及び紅茶由来テアフラビン含有カプセル皮膜)は、魚油の臭気がカプセル皮膜を通してソフトカプセル外に放散するのを防いでいると認められる。
【0071】
<評価試験2(戻り臭の評価試験)>
パネラー(20代~50代の男女10名)は、上記の方法で製造された実施例1及び比較例のソフトカプセルを6粒摂取し、2時間後の戻り臭を評価した。なお、ソフトカプセルの摂取のタイミングは、空腹時もしくは食間とし、食事由来の臭いの影響を考慮した。
【0072】
パネラーは、ソフトカプセルを摂取して2時間後の戻り臭を以下の評価基準の通り、評価した。評価点(平均点)が2.0点以上を合格点とした。また、表2の元になった評価試験のアンケートまとめを図3に示す。
【0073】
(評価基準)
3点:戻り臭を感じない。
2点:戻り臭を微かに感じるが、気にならない程度である。
1点:戻り臭を感じるが、少し気になる程度である。
0点:戻り臭を強く感じる。
【0074】
表2にパネラーの平均点を示した評価結果を示す。
【0075】
【表2】
【0076】
緑茶由来カテキン及び紅茶由来テアフラビンを含有させていないカプセル皮膜に魚油を充填した比較例のソフトカプセルを摂取したところ、魚油由来の戻り臭を感じるパネラーが多く、比較例のソフトカプセルは、摂取後に戻り臭を感じることが確認された。しかしながら、緑茶由来カテキン及び紅茶由来テアフラビンを含有させたカプセル皮膜に魚油を充填した実施例1のソフトカプセルを摂取しても、多くのパネラーが魚油由来の戻り臭が気にならず、実施例1のソフトカプセルは、摂取後に戻り臭を感じにくいことが確認された。
【0077】
<評価試験3(ソフトカプセルの臭気試験)>
パネラー(20代~50代の男女7名)は、上記の方法で製造された実施例2及び比較例のソフトカプセル自体の臭いを嗅いで、ソフトカプセルの臭気を以下の評価基準の通り、評価した。評価点(平均点)が1.5点以上を合格点とした。また、表3の元になった評価試験のアンケートまとめを図4に示す。
【0078】
(評価基準)
2点:内容物の臭気をほぼ感じない。
1点:内容物の臭気を少し感じる。
0点:内容物の臭気を感じる。
【0079】
表3にパネラーの平均点を示した評価結果を示す。
【0080】
【表3】
【0081】
緑茶由来カテキン及び紅茶由来テアフラビンを含有させていないカプセル皮膜に内容物を充填した比較例1のソフトカプセルの臭いを嗅いだところ、内容物の臭気を感じた。しかしながら、緑茶由来カテキン及び紅茶由来テアフラビンを含有させたカプセル皮膜に内容物を充填した実施例1のソフトカプセルの臭いを嗅いでも、内容物の臭いをほぼ感じなかった。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明によれば、カプセル内容物に由来する臭気が抑制されたソフトカプセルが提供され、当該ソフトカプセルは、サプリメントや機能性食品として好適に使用することができる。また、ヒト以外の動物に対して適用することもできるため、ペットフード等の動物用のサプリメントや機能性食品などにも好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0083】
1 ソフトカプセル
10 カプセル皮膜
11 カプセル内容物
a 長径
b 短径
【要約】
【課題】魚油等の臭気成分を含有する内容物に由来する臭気が抑制されたソフトカプセルを提供する。
【解決手段】ゼラチンを主成分とし、カテキン類及びテアフラビン類を含有するカプセル皮膜と、前記カプセル皮膜に充填された臭気成分を含有するカプセル内容物と、を有するソフトカプセル。カプセル皮膜にカテキン類及びテアフラビン類の両方を含有させることによって、カプセル内容物に由来する臭気を抑制することができる。また、カテキン類及びテアフラビン類の両方を含有するカプセル皮膜を有するソフトカプセルは、ソフトカプセル摂取後に発生する臭気成分由来の戻り臭も抑制することができる。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4