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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】栽培システム
(51)【国際特許分類】
   A01G 31/04 20060101AFI20221206BHJP
   A01G 7/00 20060101ALI20221206BHJP
   A01G 9/00 20180101ALI20221206BHJP
   A01G 9/02 20180101ALI20221206BHJP
   A01G 31/00 20180101ALI20221206BHJP
   A01G 31/06 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
A01G31/04 A
A01G7/00 603
A01G9/00 C
A01G9/02 B
A01G31/00 601C
A01G31/06
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022131199
(22)【出願日】2022-08-19
【審査請求日】2022-08-19
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520206265
【氏名又は名称】株式会社コードリック
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100211122
【弁理士】
【氏名又は名称】白石 卓也
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(72)【発明者】
【氏名】松下 重宏
【審査官】坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】特許第5229502(JP,B2)
【文献】特許第6484718(JP,B2)
【文献】米国特許出願公開第2017/0142912(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 31/00 - 31/06
A01G 7/00
A01G 9/00 - 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
設置面に沿って一方向に延びるガイドと、
前記ガイド上で、前記一方向に沿って移動可能に設けられた複数の棚と、を備え、
複数の前記棚のそれぞれは、上下方向に間隔をあけて複数段に配置され、作物を支持可能な中空状のトレーと、
前記トレーの内部に養液を噴射するノズルと、
前記トレーに支持された前記作物に光を照射する光源と、を備える
ことを特徴とする栽培システム。
【請求項2】
前記ガイドと平行に配置されたレールと、
前記レールに沿って移動可能に設けられ、前記トレーに支持された前記作物を撮影可能な撮影装置と、
前記撮影装置の動作を制御する撮影制御部と、を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の栽培システム。
【請求項3】
複数の棚のそれぞれは、前記撮影装置によって認識可能なマーカーを備え、
前記撮影制御部は、前記撮影装置を前記レールに沿って移動させ、複数の前記棚のそれぞれの前記マーカーを認識した場合に、前記撮影装置で前記棚の前記トレーに支持された前記作物を撮影させる
ことを特徴とする請求項2に記載の栽培システム。
【請求項4】
前記撮影装置で撮影された前記作物の生育状況に基づき、前記作物の生育条件を制御する生育条件制御部をさらに備える
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の栽培システム。
【請求項5】
前記ガイド、及び複数の前記棚を収容する箱状のコンテナをさらに備える
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の栽培システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、栽培システムに関する。
【背景技術】
【0002】
野菜、植物等の作物の根に、肥料を含んだ養液(いわゆる液肥)を噴霧することで、作物を栽培する、空中栽培(Aeroponics)、霧栽培(Fogponics)等と称される手法がある。例えば、特許文献1には、作物を保持した中空状のトレー(鉢)の内部で、作物の根に養液を噴霧する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2022-529556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、作物の栽培を限られたスペースで効率良く行うため、上記特許文献1に開示されたようなトレーを、上下方向に複数段を有した棚に配置することは一般的に行われる。
複数の作物を収容したトレーを棚に配置した場合、棚が重くなる。このため、このような棚は固定的に設置することが多い。
このような棚を複数設置する場合、作物の生育状況の確認、収穫等の作業を行うため、棚同士の間に人が立ち入ることができる隙間をあける必要がある。このため、複数の棚を設置する空間は、棚同士の隙間を含め、広く確保する必要がある。一方で、作物の生育状況の確認、収穫等の作業を行うとき以外は、棚同士の隙間に人が立ち入ることはなく、限られたスペースを、さらに有効利用することが望まれる。
【0005】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、限られたスペースを有効利用し、作物の栽培を良好に行うことのできる栽培システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題の解決手段として、本発明の第一の態様は、設置面に沿って一方向に延びるガイドと、前記ガイド上で、前記一方向に沿って移動可能に設けられた複数の棚と、を備え、複数の前記棚のそれぞれは、上下方向に間隔をあけて複数段に配置され、作物を支持可能な中空状のトレーと、前記トレーの内部に養液を噴射するノズルと、前記トレーに支持された前記作物に光を照射する光源と、を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明の第二の態様は、上記第一の態様において、前記ガイドと平行に配置されたレールと、前記レールに沿って移動可能に設けられ、前記トレーに支持された前記作物を撮影可能な撮影装置と、前記撮影装置の動作を制御する撮影制御部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明の第三の態様は、上記第二の態様において、複数の棚のそれぞれは、前記撮影装置によって認識可能なマーカーを備え、前記撮影制御部は、前記撮影装置を前記レールに沿って移動させ、複数の前記棚のそれぞれの前記マーカーを認識した場合に、前記撮影装置で前記棚の前記トレーに支持された前記作物を撮影させることを特徴とする。
【0009】
本発明の第四の態様は、上記第二又は第三の態様において、前記撮影装置で撮影された前記作物の生育状況に基づき、前記作物の生育条件を制御する生育条件制御部をさらに備えることを特徴とする。
【0010】
本発明の第五の態様は、上記第一から第四の態様の何れか一つにおいて、前記ガイド、及び複数の前記棚を収容する箱状のコンテナをさらに備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
上記第一の態様によれば、複数の棚が、設置面に沿って設けられたガイドに沿って移動可能に設けられることにより、例えば、複数の棚同士の間に人が立ち入る場合に、棚を移動させて棚同士の隙間を広げることができる。また、不必要時には、棚同士の隙間を狭めることができる。これにより、限られたスペースを有効利用し、作物の栽培を良好に行うことができる。
【0012】
上記第二の態様によれば、撮影制御部によって動作が制御される撮影装置を備えることで、複数の棚のトレーに支持された作物の生育状況を、自動的に撮影することができる。撮影装置は、レールに沿って移動可能であるため、棚をガイドに沿って移動させた場合であっても、棚の位置に応じて撮影装置を移動させ、作物の生育状況の撮影を行うことができる。さらに、複数の棚にそれぞれ撮影装置を備える必要が無く、撮影装置の台数を削減できるため、コスト低減を図ることができる。
【0013】
上記第三の態様によれば、撮影制御部の制御によって撮影装置をレールに沿って移動させ、複数の棚がそれぞれ備えたマーカーを撮影装置が認識することにより、レールに沿って任意の位置に移動させた棚のトレーに支持された作物を、自動的に撮影することができる。
【0014】
上記第四の態様によれば、生育条件制御部により、撮影装置で撮影された作物の生育状況に基づき、作物の生育条件を制御することにより、作物を効率良く生育することができる。
【0015】
上記第五の態様によれば、ガイド、及び複数の棚がコンテナに収容されることで、コンテナごと所望の場所に設置すれば、上記したような栽培システムを容易に設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係る栽培システムの構成を示す平断面図である。
図2】上記栽培システムの棚を、ガイドの延伸方向から見た正面図である。
図3】上記棚を、ガイドの延伸方向に直交する方向から見た側面図である。
図4】上記栽培システムの機能構成を示すブロック図である。
図5】上記栽培システムの撮影制御部における撮影装置の制御方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明の実施形態に係る栽培システムの平断面図を示している。
この図1に示すように、栽培システム1は、コンテナ2と、ガイド3と、複数の棚4と、撮影部8と、制御装置9と、を主に備えている。
【0018】
コンテナ2は、ガイド3、複数の棚4、撮影部8、及び制御装置9を収容している。コンテナ2は、中空箱状で、上方から見て長方形状の床21と、床21の四方の各辺から上方に立ち上がる壁22と、四方の壁22に囲まれた室内空間Sを上方から塞ぐ天井(図示せず)と、を備えている。
なお、以下の説明において、上方から見て長方形状の床21の長辺21aに沿う方向を第一方向D1、上方から見て床21の短辺21bに沿う方向を第二方向D2、第一方向D1及び第二方向D2に直交する方向を上下方向Dv、と称する。
【0019】
コンテナ2としては、例えば、貨物用のコンテナを用いることができる。コンテナ2は既定サイズであり、例えば、いわゆる20フィートコンテナを用いた場合、コンテナ2の内寸は、床21の長辺21aの長さL1が5.8m程度、床21の短辺21bの長さL2が2.3m程度、床21から天井までの上下方向Dvの高さが2.3m程度とされる。
【0020】
四方の壁22のうち、上方から見て床21の短辺21bに沿う一つの壁22A(図中右側の壁22A)は、開閉可能な一対の扉25を備えている。コンテナ2は、扉25を開閉することにより、コンテナ2内の室内空間Sへの人の出入りが可能とされている。
【0021】
ガイド3は、床21上に敷設されている。ガイド3は、床21上の設置面21sに沿って、一方向に延びている。本実施形態において、ガイド3は、第一方向D1に沿うように延びている。本実施形態において、ガイド3として、設置面21s上で第一方向D1に直交する第二方向D2に所定の間隔をあけて、一対のガイド3A、3Bが設けられている。
【0022】
本実施形態において、一対のガイド3A、3Bは、床21上の設置面21sにおける第二方向D2の中央部に対し、第二方向D2の一方側の壁22B(図中上側の壁22B)に偏って配置されている。これにより、設置面21s上の室内空間Sには、床21上の設置面21sにおける第二方向D2の中央部に対し、第二方向D2の他方側の壁22C側に、第一方向D1に延びる動線空間Sdが形成されている。
【0023】
複数の棚4は、一対のガイド3A、3B上で、第一方向D1に沿って移動可能に設けられている。本実施形態において、複数の棚4は、例えば5つ設けられている。栽培システム1に備える複数の棚4の数は、5つに限らず、適宜変更可能である。
【0024】
各棚4は、上方からみて長方形状をなしている。各棚4は、その長辺方向を第二方向D2に沿わせて配置されている。各棚4は、その短辺方向を第一方向D1に沿わせて配置されている。
【0025】
図2は、上記栽培システムの棚を、ガイドの延伸方向から見た正面図である。図3は、上記棚を、ガイドの延伸方向に直交する方向から見た側面図である。
図2図3に示すように、各棚4は、支柱41と、棚材42と、ローラ43と、を備えている。支柱41,及び棚材42は、所要の強度を有しつつ、棚4の軽量化が図れるよう、例えばアルミ合金製とすることが好ましい。
【0026】
支柱41は、上方から見て棚4の四隅にそれぞれ設けられている。各支柱41は、上下方向Dvに延びている。棚材42は、上下方向Dvに間隔をあけて複数段に配置されている。棚材42は、水平面に沿って配置された板状であってもよいし、後述するトレー5の外周部を支持可能な枠状であってもよい。各棚材42は、その四隅を支柱41に支持されている。本実施形態において、棚材42は、上下方向Dvに間隔をあけて、例えば3段備えられている。また、複数段の棚材42の上方には、天板44が設けられている。天板44は、四隅の支柱41の上端部に支持されている。
【0027】
ローラ43は、各支柱41の下端部に設けられている。各棚4の長辺方向両側のローラ43は、一対のガイド3A、3B上に配置されている。各ローラ43は、各ガイド3上で、回転自在に設けられている。これにより、各棚4は、一対のガイド3A、3Bに沿って案内されることで、コンテナ2内において、第一方向D1に移動自在に設けられている。
【0028】
各棚4は、トレー5と、給液部6と、光源7と、を備えている。
トレー5は、各段の棚材42により下方から支持されている。トレー5は、各段の棚材42に支持されることで、上下方向Dvに間隔をあけて複数段に配置されている。各トレー5は、中空状で、底板51と、側板52と、上板53と、を有している。底板51は、上方から見て長方形状をなしている。側板52は、底板51の四方の各辺から上方に立ち上がっている。上板53は、底板51に対して上方に間隔をあけて配置されている。上板53は、底板51の上方において四方の側板52によって囲まれるトレー内部空間Tを、上方から覆っている。
【0029】
上板53には、複数の孔53hが形成されている。各孔53hは、上板53を上下方向Dvに貫通している。各孔53hには、作物100が植えられたポット105を支持可能とされている。ポット105は、上下方向Dvに延びる筒状で、下方から上方に向かってその外径が漸次増大するテーパ状(円錐台形状、又は角錐台形状)に形成されている。ポット105の下端の外径は、孔53hの内径よりも小さく、ポット105の上端の外径は、孔53hの内径よりも大きく設定されている。これにより、ポット105は、各孔53hに上方から挿入することで、その中間部が孔53hの内周面に接触した状態で支持される。
【0030】
作物100は、ポット105の内側に植えられる。作物100は、例えば、苗の状態でポット105の内側に植えられる。作物100は、例えば、野菜、果物、花等の植物である。作物100が生育すると、作物100の茎、葉100a等はポット105から上方に向かって成長する。作物100の根100bは、ポット105から下方に向かって成長する。作物100の根100bは、トレー5のトレー内部空間T内の養液を吸収する。
【0031】
給液部6は、トレー5の内部に、水(養液)を供給する。給液部6は、トレー5の内部に、養液を噴射する。給液部6は、トレー5の内部に配置されたノズル61を備えている。図3に示すように、ノズル61には、エアホース62の一端と、養液ホース63の一端とが接続されている。
【0032】
エアホース62の他端は、エアコンプレッサ、エアボンベ等の圧縮空気供給源67(図1参照)に接続されている。エアホース62は、圧縮空気供給源67から供給される圧縮空気をノズル61に供給する。養液ホース63の他端は、養液タンク68(図1参照)に接続されている。養液タンク68には、水と肥料(液肥)等が所定の配合で混合された養液が貯留されている。養液ホース63は、養液タンク68からポンプ(図示無し)によって吸い出された養液をノズル61に供給する。なお、圧縮空気供給源67、養液タンク68は、コンテナ2内に配置してもよいし、コンテナ2外に配置してもよい。
【0033】
ノズル61は、エアホース62から供給される圧縮空気と、養液ホース63から供給される養液とを混合し、トレー内部空間Tに噴射する。なお、ノズル61から噴射する養液の粒径については、何ら限定するものではなく、いわゆる液滴状であってもよいし、ミスト状であってもよい。
【0034】
ここで、給液部6は、各トレー5内の湿度が、予め設定した所定の湿度(例えば100%)となるように、後述の生育条件制御部93によって、ノズル61からの養液の噴射量、噴射継続時間、噴射タイミング等を制御することが好ましい。
【0035】
図2図3に示すように、光源7は、トレー5に支持されるポット105内の作物100に対し、光Bを照射する。光源7としては、例えば、LED光源を用いることができる。光源7で照射する光Bの波長は、作物100に応じて適宜設定すればよい。光源7は、例えば、各段の棚材42に支持されたトレー5に対し、上方に配置されている。光源7は、例えば、トレー5に対し、上方に位置する他の棚材42又は天板44の下面に配置されている。光源7による光Bの照射は、後述する生育条件制御部93によって制御される。
【0036】
各段のトレー5に配置されたノズル61に接続されるエアホース62、及び養液ホース63と、光源7に接続された電源線72とは、棚4の上部から上方に向かって延び、コンテナ2の天井(図示無し)に沿って配索されている。エアホース62、養液ホース63、電源線72は、天井に支持された支持部材(図示無し)によって支持されている。エアホース62、養液ホース63、電源線72は、後述するように、各棚4をガイド3に沿って移動させる際に、棚4の移動を阻害しないよう、所定の余長を有している。
【0037】
図1に示すように、上記したような複数の棚4は、それぞれ、ガイド3に沿って第一方向D1に移動可能とされている。
例えば、各棚4の作物100の収穫、観察、手入れ、棚4の点検、メンテナンス等の作業を行う場合、複数の棚4をガイド3に沿って第一方向D1に移動させ、隣り合う棚4同士の間隔を広げることができる(図1における二点鎖線の状態)。これにより、隣り合う棚4同士の隙間Skに、人が立ち入って作業を行うスペースを確保できる。
【0038】
また、隣り合う棚4同士の間に、人が立ち入らない場合、複数の棚4をガイド3に沿って第一方向D1に移動させ、隣り合う棚4同士の間隔を狭めることができる(図1における実線の状態)。これにより、複数の棚4が集合している部分以外のスペースを、各種作業等のために有効利用できる。
図3に示すように、隣り合う棚4同士の間隔を狭めた状態では、一の棚4の光源7から照射した光Bが拡散することによって、他の棚4のトレー5に保持された作物100に対しても、光Bを照射することができる。これにより、光源7からの光Bを効率良く作物100に照射させることができる。
【0039】
図1図2に示すように、撮影部8は、各棚4の作物100を撮影する。撮影部8は、レール81と、撮影装置82と、を備えている。
レール81は、ガイド3と平行に配置されている。本実施形態において、レール81は、例えば、コンテナ2において、床21の長辺21aに沿って延びる壁22Bに、適宜の支持ブラケットを介して固定されている。レール81は、撮影装置82により、棚4の特定の段のトレー5に支持された作物100が撮影可能となるような高さに配置されている。本実施形態では、例えば、レール81は、棚4の最上段のトレー5に支持された作物100が撮影可能となるような高さに配置されている。
【0040】
撮影装置82は、レール81に沿って第一方向D1に移動可能に設けられている。撮影装置82は、移動機構85(図4参照)を備えている。撮影装置82は、移動機構85により、レール81に沿った任意の位置に移動可能とされている。
【0041】
図4は、上記栽培システムの機能構成を示すブロック図である。
撮影装置82は、カメラ83と、分光フィルタ84と、移動機構85と、を備えている。
カメラ83は、作物100を撮影する。カメラ83は、撮影した画像のデータを、無線LAN(Local Area Network)、ブルートゥース(Bluetooth、登録商標)等の通信手段により制御装置9に送信する。
【0042】
分光フィルタ84は、複数種のフィルタ(図示無し)を備えている。各フィルタは、定められた波長域の光を透過する。複数種のフィルタは、透過する光の波長域が互いに異なる。分光フィルタ84は、複数種のフィルタのなかから適宜の波長域のフィルタを選択して用いられる。カメラ83により、分光フィルタ84を通した像を撮影することで、撮影された画像に基づいて、光の蛍光強度を観察することができる。これにより、カメラ83で撮影された画像(映像を含む)に基づき、作物の枯れの検知、クロロフィル蛍光と呼ばれる光合成の速度を測定できる物質の観測が行える。
【0043】
移動機構85は、レール81に噛み合うガイドローラ(図示無し)と、ガイドローラを回転駆動するモータ(図示無し)と、を備えている。移動機構85は、モータを動作させることでガイドローラを回転させ、撮影装置82を、レール81に沿って移動させる。モータの動作は、後述する撮影制御部92によって制御される。
【0044】
撮影部8は、第一方向D1に適宜移動される棚4に対し、後に詳述するように、棚4の位置を自動的に検出し、棚4のトレー5に支持された作物100の撮影を自動的に行う。このため、図1図3に示すように、各棚4は、撮影装置82により認識(検出)可能なマーカー48を備えている。図2図3に示すように、マーカー48は、例えば、各棚4において、撮影部8のレール81に対向する支柱41に備えられている。
【0045】
マーカー48は、例えば、アルコマーカーである。マーカー48としては、アルコマーカーに限らず、撮影装置82によって認識可能であれば、一次元のバーコードや二次元コード、その他の各種マークを用いることができる。
【0046】
制御装置9は、栽培システム1全体の動作を制御する。制御装置9は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ、メモリ、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等のストレージ等を備えたコンピュータ装置である。制御装置9は、予め設定されたプログラムに基づいた処理を実行することで、栽培システム1の各部を制御する。
【0047】
図4に示すように、制御装置9は、入出力部91と、撮影制御部92と、生育条件制御部93と、を機能的に備えている。
入出力部91は、コンテナ2内に配置された温度センサ、湿度センサ(図示無し)等で検出される検出データ、カメラ83で撮影された画像データ等の外部からの入力を受け付ける。また、入出力部91は、撮影制御部92から出力される撮影装置82に対する指令信号、生育条件制御部93から出力される給液部6、光源7に対する指令信号等を外部に出力する。
【0048】
撮影制御部92は、撮影装置82の動作を制御する。
撮影制御部92は、カメラ83、及び分光フィルタ84を制御し、カメラ83により、トレー5に保持された作物100の撮影を行わせる。
【0049】
撮影制御部92は、移動機構85を制御し、撮影装置82をレール81に沿って移動させる。撮影制御部92は、撮影装置82をレール81に沿って移動させる場合、後に詳述するように、撮影装置82により、各棚4に設けられたマーカー48を探索させる。撮影制御部92は、マーカー48が発見された場合、そのマーカー48が設けられた棚4に対して撮影装置82を位置決めさせる。
【0050】
生育条件制御部93は、撮影装置82のカメラ83で撮影された画像に基づき、各棚4における作物100の生育条件を制御する。例えば、カメラ83で撮影された画像に基づき、各トレー5における光合成の速度、作物100の茎や葉の大きさや高さ、色等を計測し、作物100の成長度合いを定量的に評価する。
【0051】
生育条件制御部93は、作物100の成長度合いの評価結果に基づき、予め設定されたプログラムに基づいて、作物100の生育条件を制御する。生育条件制御部93で制御する作物100の生育条件としては、例えば、給液部6における、各棚4のトレー5に対する養液の給水量(噴霧量)、給水継続時間、給水時間間隔等がある。また、生育条件制御部93では、作物100の成長度合いの評価結果に基づき、養液の濃度、pH等を調整するようにしてもよい。
さらに、生育条件制御部93では、作物100の成長度合いの評価結果に基づき、光源7による光の照射量、光の波長等を制御するようにしてもよい。
【0052】
また、生育条件制御部93では、作物100の成長度合いの評価結果に基づき、コンテナ2内の温度、湿度等を調整するようにしてもよい。
さらに、生育条件制御部93では、作物100の成長度合いの評価結果を、逐次機械学習の入力データとして記憶し、生育条件を順次改良するようにしてもよい。
【0053】
図5は、撮影制御部における撮影装置の制御方法の流れを示すフローチャートである。
制御装置9の撮影制御部92では、各棚4における作物100の生育状況の撮影を行うため、予め設定された時間間隔毎に、以下に示すような処理を自動的に実行する。
図5に示すように、撮影制御部92では、まず、全ての棚4の撮影が済んでいるか否かを確認する(ステップS11)。
【0054】
その結果、全ての棚4の撮影が済んでいなければ(ステップS11でNo)、棚4に設けられたマーカー48を探索するために、以下のステップS12を行う。すなわち、撮影制御部92は、撮影装置82を、レール81に沿って、予め設定された撮影装置82の初期位置から離れる方向に、所定寸法(例えば30cm)だけ前進(移動)させる(ステップS12)。続いて、撮影制御部92は、移動後の位置で、カメラ83による撮影を行わせる(ステップS12)。カメラ83は、撮影した画像を、撮影制御部92に送信する。
【0055】
撮影制御部92は、カメラ83により撮影された画像を受信すると、画像処理により、カメラ83で撮影される画像中にマーカー48が認識されるか否かを確認する(ステップS13)。
【0056】
撮影制御部92は、画像中にマーカー48が認識されていない場合(ステップS13でNo)、ステップS12に戻り、撮影装置82を、レール81に沿って、初期位置から離れる方向に更に移動させる。撮影制御部92は、カメラ83により撮影される画像中にマーカー48が認識されるまで、ステップS12、S13を繰り返す。
【0057】
ステップS13において、カメラ83により撮影される画像中にマーカー48が認識された場合(ステップS13でYes)、撮影制御部92は、認識されたマーカー48が、画像中の中央(第一方向D1における中央)に位置しているか否かを確認する(ステップS14)。
【0058】
撮影制御部92は、マーカー48が画像の中央に位置していない場合(ステップS14でNo)、画像中におけるマーカー48の位置に応じて、撮影装置82をレール81に沿って移動させ、撮影装置82の位置を調整する(ステップS15)。
具体的には、マーカー48が、画像の中心に対して、第一方向D1において初期位置から離れる方向にずれている場合、撮影装置82を、レール81に沿って初期位置から離れる方向に更に移動させる。この場合の撮影装置82の第一方向D1における移動量は、ステップS12における撮影装置82の移動量よりも小さくすることが好ましい(例えば5cm)。
また、マーカー48が画像の中心に対して、第一方向D1において初期位置に近づく方向にずれている場合、撮影装置82を、レール81に沿って初期位置から近づく方向に移動させる。この場合の撮影装置82の第一方向D1における移動量も、ステップS12における撮影装置82の移動量よりも小さくすることが好ましい(例えば5cm)。
【0059】
ステップS15では、撮影制御部92は、このような撮影装置82の位置調整後、続けてカメラ83による撮影を行わせる。
撮影制御部92は、撮影された画像中におけるマーカー48が、画像の第一方向D1における中央となるまで、ステップS14、S15を繰り返す。なお、マーカー48は、画像の第一方向D1における完全な中央位置に限らず、画像の第一方向D1における中央に対し、定められた範囲内となるように、撮影装置82の位置調整を行えばよい。
【0060】
ステップS14において、マーカー48が画像の中央に位置していた場合(ステップS14でYes)、撮影装置82のカメラ83は、マーカー48が設けられた支柱41に対して正対している(図3において、二点鎖線で示す位置P1)。
そこで、撮影制御部92は、各棚4の第一方向D1における中央部に対応する位置(図3において、二点鎖線で示す位置P1)まで、撮影装置82をレール81に沿って移動させる(ステップS16)。このときの、マーカー48が設けられた支柱41に正対する位置から、各棚4の第一方向D1における中央部に対応する位置までの撮影装置82の移動量は、各棚4の第一方向D1における幅寸法(既知)に基づいて設定できる。
【0061】
次いで、撮影制御部92は、各棚4の第一方向D1における中央部に対応する位置P2の撮影装置82のカメラ83により、棚4のトレー5の作物100を撮影する(ステップS17)。
作物100の撮影後は、ステップS11に戻り、全ての棚4の撮影が済むまで、上記のステップS11~S17を繰り返す。
【0062】
そして、全ての棚4の撮影が済んだ場合(ステップS11でYes)、撮影装置82を、レール81に沿って初期位置に近づく方向に移動させて、初期位置に戻し(ステップS18)、一連の処理を終了させる。
【0063】
上述した実施形態の栽培システム1では、複数の棚4が、設置面21sに沿って設けられたガイド3に沿って移動可能に設けられる。これにより、例えば、複数の棚4同士の間に人が立ち入る場合には、棚4を移動させて棚4同士の隙間を広げることができる。また、不必要時には、棚4同士の隙間を狭めることができる。これにより、限られたスペースを有効利用し、作物100の栽培を良好に行うことができる。
【0064】
また、撮影制御部92によって動作が制御される撮影装置82を備えることで、複数の棚4のトレー5に支持された作物100の生育状況を、自動的に撮影することができる。撮影装置82は、レール81に沿って移動可能であるため、棚4をガイド3に沿って移動させた場合であっても、棚4の位置に応じて撮影装置82を移動させ、作物100の生育状況の撮影を行うことができる。さらに、複数の棚4にそれぞれ撮影装置82を備える必要が無く、撮影装置82の台数を削減できるため、コスト低減を図ることができる。
【0065】
また、撮影制御部92の制御によって撮影装置82をレール81に沿って移動させ、複数の棚4がそれぞれ備えたマーカー48を撮影装置82が認識する。これにより、レール81に沿って任意の位置に移動させた棚4のトレー5に支持された作物100を、自動的に撮影することができる。
【0066】
さらに、生育条件制御部93により、撮影装置82で撮影された作物100の生育状況に基づき、作物100の生育条件を制御する。これにより、作物100を効率良く生育することができる。
【0067】
加えて、ガイド3、及び複数の棚4がコンテナ2に収容されている。これにより、コンテナ2ごと所望の場所に設置すれば、上記したような栽培システム1を容易に設置することができる。また、コンテナ2内に、作物100を生育する棚4が収容されることで、異常気象による作物へのダメージ、虫害等を抑えることができる。さらに、コンテナ2内に収容する制御装置9等の機器類の劣化を抑えることも可能である。
【0068】
なお、本発明は、図面を参照して説明した上述の実施形態に限定されるものではなく、その技術的範囲において様々な変形例が考えられる。
例えば、上記実施形態では、複数の棚4のそれぞれに備えたマーカー48を撮影装置82が認識することで、レール81に沿って移動する撮影装置82によって、各棚4の作物100の撮影を行うようにした。その際の制御装置9による処理の手順、処理の内容等は適宜変更可能である。
【0069】
また、上記実施形態では、複数の棚4が、ガイド3上で第一方向D1の任意の位置に移動可能である構成としたが、例えば、複数の棚4同士の間に隙間をあける場合、ガイド3上で、予め設定された規定の位置に各棚4を配置するようにしてもよい。この場合、撮影装置82は、複数の棚4のそれぞれに備えたマーカー48を認識するのではなく、レール81に沿って、各棚4の規定の位置に合わせて設定された位置で、作物100の撮影を行うようにしてもよい。
【0070】
また、上記実施形態では、コンテナ2として、例えば貨物用のコンテナを例示したが、コンテナ2は、例えば、プレハブ構造、木造等によって形成してもよい。また、コンテナ2に代えて、ビニールハウス等を用いてもよい。複数の棚4をビニールハウス等の内部に配置する場合、ガイド3の設置面は、地面であってもよい。
【0071】
また、栽培システム1は、コンテナ2を備えず、ガイド3、複数の棚4、トレー5、給液部6、撮影部8、及び制御装置9を、建物の室内に収容するようにしてもよい。
そして、上記実施形態における構成は本発明の一例であり、当該発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0072】
1 栽培システム
2 コンテナ
3、3A、3B ガイド
4 棚
5 トレー
7 光源
21s 設置面
48 マーカー
61 ノズル
81 レール
82 撮影装置
92 撮影制御部
93 生育条件制御部
100 作物
B 光
D1 第一方向(一方向)
Dv 上下方向
【要約】
【課題】限られたスペースを有効利用し、作物の栽培を良好に行うことのできる栽培システムを提供する。
【解決手段】設置面21sに沿って一方向に延びるガイド3と、ガイド3上で、一方向に沿って移動可能に設けられた複数の棚4と、を備え、複数の棚4のそれぞれは、上下方向に間隔をあけて複数段に配置され、作物を支持可能な中空状のトレーと、トレーの内部に液肥を混ぜた水を噴射するノズルと、トレーに支持された作物に光を照射する光源と、を備える栽培システム1が構成されている。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5