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特許7188837TROP-2を標的化するトポイソメラーゼ-I阻害抗体-薬物コンジュゲート(ADC)による小細胞肺癌(SCLC)の療法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】TROP-2を標的化するトポイソメラーゼ-I阻害抗体-薬物コンジュゲート(ADC)による小細胞肺癌(SCLC)の療法
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20221206BHJP
   A61K 31/4745 20060101ALI20221206BHJP
   A61K 31/282 20060101ALI20221206BHJP
   A61K 33/24 20190101ALI20221206BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20221206BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20221206BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20221206BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20221206BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
A61K39/395 L ZNA
A61K31/4745
A61K31/282
A61K33/24
A61K39/395 T
A61K45/00
A61K47/68
A61P35/00
A61P35/04
A61P43/00 121
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2019542544
(86)(22)【出願日】2018-02-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-03-19
(86)【国際出願番号】 US2018019025
(87)【国際公開番号】W WO2018156634
(87)【国際公開日】2018-08-30
【審査請求日】2020-09-04
(31)【優先権主張番号】62/463,316
(32)【優先日】2017-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】15/820,708
(32)【優先日】2017-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504149971
【氏名又は名称】イミューノメディクス、インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】IMMUNOMEDICS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ゴールデンバーグ, デイヴィッド エム.
(72)【発明者】
【氏名】ゴーヴィンダン, セレングラム ブイ.
【審査官】深草 亜子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0193357(US,A1)
【文献】国際公開第2016/172427(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/210108(WO,A1)
【文献】The New England Journal of Medicine,2002年,Vol.346,pp.85-91
【文献】Journal of Clinical Oncology,2016年,Vol.34, No.15 suppl.,Abs8559
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/395-39/44
A61K 47/68
A61K 31/00-33/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗Trop-2抗体-薬物コンジュゲート(ADC)と、
シスプラチナム又はカルボプラチンとを含む、小細胞肺がん(SCLC)の治療用キットであって、
前記抗Trop-2抗体-ADCがサシツズマブゴビテカンであり、
前記抗Trop-2抗体-ADC、及びシスプラチナム又はカルボプラチン、第2選択以降の療法として、SCLCについて以前チェックポイント阻害剤(CPI)治療を受けたことがあるヒト患者に投与るためのものであ
前記CPIが抗PD-1抗体又は抗PD-L1抗体である、キット。
【請求項2】
前記がんが転移性(mSCLC)である、請求項1に記載のキット。
【請求項3】
前記ヒト患者が以前、標準的な抗がん剤による治療から再発したか、この治療に抵抗性であった者である、請求項1又は2に記載のキット。
【請求項4】
前記ヒト患者が以前、トポテカン又はイリノテカンによる治療から再発したか、これらの治療に抵抗性であった者である、請求項1又は2に記載のキット。
【請求項5】
前記SCLCが白金含有薬剤による化学療法に感受性である、請求項1~4のいずれか一項に記載のキット。
【請求項6】
前記SCLCが白金含有薬剤による化学療法に抵抗性である、請求項1~4のいずれか一項に記載のキット。
【請求項7】
前記SCLCの治療が、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも30%又は少なくとも40%の腫瘍サイズの低減をもたらす、請求項1~6のいずれか一項に記載のキット。
【請求項8】
前記SCLCの治療が、サイズの低減又は転移の排除をさらに含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のキット。
【請求項9】
前記がんが他の療法に不応性であるが、前記抗Trop-2抗体-ADCに応答するものである、請求項1~8のいずれか一項に記載のキット。
【請求項10】
前記抗Trop-2抗体-ADC、(i)毎週、(ii)隔週、(iii)1週の療法、それに続く、2、3又は4週の休止、(iv)2週の療法、それに続く、1、2、3又は4週の休止、(v)3週の療法、それに続く、1、2、3、4又は5週の休止、(vi)4週の療法、それに続く、1、2、3、4又は5週の休止、(vii)5週の療法、それに続く、1、2、3、4又は5週の休止、及び(viii)月1回からなる群から選択されるサイクルを有するスケジュールで週1回又は2回前記ヒト患者に投与るためのものである、請求項1~9のいずれか一項に記載のキット。
【請求項11】
前記サイクルが4、6、8、10、12、16又は20回反復される、請求項10に記載のキット。
【請求項12】
前記抗Trop-2抗体-ADC、非コンジュゲート化抗体、免疫複合体、遺伝子療法、化学療法、治療的ペプチド、サイトカイン療法、局所放射線療法、手術、干渉RNA療法、薬物、毒素及びサイトカインからなる群から選択される1種又は複数の治療様式と組み合わせて投与るためのものである、請求項1~11のいずれか一項に記載のキット。
【請求項13】
前記薬物、毒素又は化学療法剤が、5-フルオロウラシル、アファチニブ、アプリジン、アザリビン、アナストロゾール、アントラサイクリン、アキシチニブ、AVL-101、AVL-291、ベンダムスチン、ブレオマイシン、ボルテゾミブ、ボスチニブ、ブリオスタチン-1、ブスルファン、カリケアマイシン、カンプトテシン、カルボプラチン、10-ヒドロキシカンプトテシン、カルムスチン、セレブレックス、クロラムブシル、シスプラチナム(CDDP)、Cox-2阻害剤、イリノテカン(CPT-11)、SN-38、カルボプラチン、クラドリビン、カンプトテカン、シクロホスファミド、クリゾチニブ、シタラビン、ダカルバジン、ダサチニブ、ジナシクリブ、ドセタキセル、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、2-ピロリノドキソルビシン(2P-DOX)、シアノ-モルホリノドキソルビシン、ドキソルビシングルクロニド、エピルビシングルクロニド、エルロチニブ、エストラムスチン、エピドフィロトキシン、エルロチニブ、エンチノスタット、エストロゲン受容体結合剤、エトポシド(VP16)、エトポシドグルクロニド、リン酸エトポシド、エキセメスタン、フィンゴリモド、フラボピリドール、フロクスウリジン(FUdR)、3’,5’-O-ジオレオイル-FudR(FUdR-dO)、フルダラビン、フルタミド、ファルネシル-タンパク質トランスフェラーゼ阻害剤、ホスタマチニブ、ガネテスピブ、GDC-0834、GS-1101、ゲフィチニブ、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、イブルチニブ、イダルビシン、イデラリシブ、イホスファミド、イマチニブ、L-アスパラギナーゼ、ラパチニブ、レノリダミド、ロイコボリン、LFM-A13、ロムスチン、メクロレタミン、メルファラン、メルカプトプリン、6-メルカプトプリン、メトトレキサート、ミトキサントロン、ミトラマイシン、マイトマイシン、ミトタン、ナベルビン、ネラチニブ、ニロチニブ、ニトロソ尿素、オラパリブ、プリコマイシン、プロカルバジン、パクリタキセル、PCI-32765、ペントスタチン、PSI-341、ラロキシフェン、セムスチン、ソラフェニブ、ストレプトゾシン、SU11248、スニチニブ、タモキシフェン、テマゾロミド(DTICの水性形態)、トランス白金、サリドマイド、チオグアニン、チオテパ、テニポシド、トポテカン、ウラシルマスタード、バタラニブ、ビノレルビン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンカアルカロイド及びZD1839からなる群から選択される、請求項12に記載のキット。
【請求項14】
小細胞肺がん(SCLC)の治療のための医薬組成物の製造における抗Trop-2抗体-薬物コンジュゲート(ADC)の使用であって、
前記抗Trop-2抗体-ADCがサシツズマブゴビテカンであり、
前記抗Trop-2抗体-ADC、シスプラチナム又はカルボプラチンと組み合わせて、第2選択以降の療法として、SCLCについて以前チェックポイント阻害剤(CPI)治療を受けたことがあるヒト患者に投与するための医薬組成物であることを特徴とするものであり、
前記CPIが抗PD-1抗体又は抗PD-L1抗体である、使用。
【請求項15】
前記CPIが、ニボルマブ又はアテゾリズマブである、請求項1~13のいずれか一項に記載のキット。
【請求項16】
前記CPIが、ニボルマブ又はアテゾリズマブである、請求項1に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、/2017/11/22に出願された米国特許出願第15/820,708号の一部継続であり、これは、2016/3/14に出願された米国特許出願第15/069,208号の一部継続であり、これは、2015/3/25に出願された米国特許出願第14/667,982号(現在は、登録米国特許第9,493,573号)の一部継続であり、これは、2013/07/23に出願された米国出願第13/948,732号(現在は、米国特許第9,028,833号)の分割であり、これは、35U.S.C.119(e)の下で、2012/12/13に出願された米国特許仮出願第61/736,684号及び2013/1/7に出願された第61/749,548号の利益を主張した。出願第15/069,208号は、35U.S.C.119(e)の下で2015/3/16に出願された米国特許仮出願第62/133,654号、2015/3/16に出願された第62/133,729号、2015/3/25に出願された第62/138,092号、2015/5/4に出願された第62/156,608号、及び2015/10/15に出願された第62/241,881号の利益を主張した。出願第15/069,208号は、35U.S.C.119(e)の下で、2016/12/1に出願された米国特許仮出願第62/428,655号の利益を主張した。本出願は、35U.S.C.119(e)の下で、2017/2/24に出願された米国特許仮出願第62/463,316号の利益を主張する。各優先権出願の文書は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表
本出願は、EFS-Webを介してASCIIフォーマットで提出された配列表を含み、その内容全体は参照により本明細書に組み込まれる。2018年2月14日に作成された該ASCIIコピーはIMM370WO1_SL.txtという名前であり、7,887バイトのサイズである。
【0003】
本発明は、小細胞肺癌(SCLC)を治療するための、抗Trop-2抗体-薬物コンジュゲート(ADC)の組成物及び使用方法に関する。好ましくは、ADCは、サシツズマブゴビテカンなどの抗Trop-2-SN-38コンジュゲートである。より好ましくは、薬物を抗体または抗体断片に結合させるために、CL2Aなどのリンカーを使用することができる。しかし、他のリンカー、他の既知の細胞毒性薬物及び薬物を抗体にコンジュゲートする他の既知の方法を利用することができる。最も好ましくは、抗体またはその抗原結合性断片は、ヒト化RS7抗体である。抗体または断片を、抗体または断片あたり1~12、1~6、1~5、6~8または7~8コピーの薬物部分または薬物-リンカー部分に結合させることができる。ADCは、第1選択白金含有化学療法に対して化学感受性または化学抵抗性のいずれかであるSCLC患者の療法に有用である。ある特定の実施形態では、ADCは、SCLCの第1選択療法に有用であり得る。驚いたことに、ADCは、同様にトポイソメラーゼIの阻害剤であるにもかかわらず、トポテカン療法から再発したかこの療法に応答しないかのいずれかのSCLC患者において有用である。ADCは、転移性SCLC(mSCLC)の第2選択とそれ以降のステージで同様に活性である。ADCは、単独で、または手術、放射線療法、化学療法、免疫調節剤、サイトカイン、化学療法剤、アポトーシス促進剤、抗血管新生剤、細胞毒性剤、薬物、毒素、放射性核種、RNAi、siRNA、第2の抗体もしくは抗体断片及び免疫複合体からなる群から選択される1つもしくは複数の治療様式とともに、併用療法として、使用することができる。好ましい実施形態では、ADCと他の治療様式との組み合わせは、相乗効果を示し、ADCもしくは他の治療様式のいずれかの単独よりも、または個々に施されるADCと他の治療様式の効果の総和よりも、がん細胞死を誘導するのに有効である。驚いたことに、抗Trop-2ADCの皮下投与は、投与部位において許容できない局所毒性をもたらさず、代替の実施形態では、ADCを静脈内または皮下に投与することができる。
【背景技術】
【0004】
神経内分泌前駆細胞由来の小細胞肺癌(SCLC)は全肺癌のおよそ15%を構成し、依然として、6%で、最も低い5年生存率のうちの1つである(Alvarado-Luna et al.,2016,Transl Lung Cancer Res 5:26-38、Siegel et al.,2017,CA Cancer J Clin 67:7-30)。これは、小細胞肺癌が非常に侵襲性であり、患者の約3分の2が診断時に転移性疾患を有するであるからである(Fruh et al.,2013,Ann Oncol 24(6):vi99-105)。ステージIVのSCLCの第1選択療法は対症的であり、さらに、60~75%の高い初期応答率を有するが、転帰は通常悪く、白金ベースの化学療法(Fruh et al.,2013,Ann Oncol 24(6):vi99-105)を用いて、わずか5.5か月の無増悪生存期間(PFS)中央値及び<10か月の全生存期間(OS)中央値を有する(Foster et al.,2011,Cancer 117:1262-71、Wolfson et al.,2011,Int J Radiat Oncol Biol Phys 81:77-84)。
【0005】
特に、第1選択治療に抵抗性がある(すなわち、応答持続期間<3か月)場合、第2選択療法に対する応答はより悪く、例えば、<10%であり、第2または第3選択の化学療法の後にわずか4または5か月の生存期間中央値を有する(Hurwitz et al.,2009,Oncologist 14:986-94、Schneider,2008,J Natl Compr Canc Netw 6:323-31)。1998年以来、この状況において承認された唯一の薬物は、白金ベースの療法に感受性(3か月を超える応答持続期間)であった再発性患者に必要とされるトポテカンである(O’Brien et al.,2006,J Clin Oncol 24:5441-7、Perez-Soler et al.,1996,J Clin Oncol 14:2785-90)。しかし、イリノテカン、タキサン、ビノレルビン及びゲムシタビンも化学感受性の再発性疾患を有する患者に頻繁に与えられる(Furuse et al.,1996,Oncology 53:169-72、Smit et al.,1998,Br J Cancer 77:347-51、Sandler,2001,Oncology(Williston Park)15:11-2、van der Lee et al.,2001,Ann Oncol 12:557-61)。
【0006】
対照群にトポテカンを含む最近の無作為化第II及びIII相臨床試験の総説は、第2選択において13~17%の応答を示したが(Inoue et al.,2008,J Clin Oncol 26:5401-6、Jotte et al.,2011,J Clin Oncol 29:287-93、Horita et al.,2015,Sci Rep 5:15437)、化学感受性疾患を有する患者の間で20%程度、化学抵抗性である患者についてはわずか4%の応答率を有していた(von Pawel,2003,Lung Cancer 41(Suppl 4):S3-8)。しかし、第2選択におけるこれらの応答及び/または疾患の安定化は、生存の向上につながらない。例えば、Hagmannら(Hagmann et al.,2015,J Cancer 6:1148-5418)は、トポテカンについて22.5%の応答、ならびに2.4か月のPFS中央値及び5か月のOS中央値を報告した。第3選択の状況では、客観的応答は達成されず、さらに、1.3か月のPFS中央値及び2.5か月のOS中央値が報告された(Hagmann et al.,2015,J Cancer 6:1148-5418)。他の確立された単剤化学療法または白金とエトポシドの組み合わせによる再治療も期待外れであり、トポテカン単独と類似した生存転帰をもたらした(Hagmann et al.,2015,J Cancer 6:1148-5418)。イリノテカンは、非常に低い応答を示したか、応答を示さず、1.7か月の無増悪期間(TTP)中央値を示し、さらに、4.6か月のOS中央値も報告された(Pallis et al.,2009,Lung Cancer 65:187-91)。ゲムシタビンはいかなる客観的応答も与えず、6週のTTP中央値及び6.4か月のOS中央値をもたらし、さらに、ペメトレキセドは43患者の中で2応答を達成した(ORR、4%)(Jalal et al.,2009,J Thorac Oncol 4:93-6)。したがって、SCLCを有する患者、特に、広範な疾患を有する患者の管理の進展は、過去20年間にわたって期待外れであった。ほぼすべての患者は、初期に再発し、1年以内に亡くなる。
【0007】
第1選択またはそれ以降のステージのSCLCを有する患者のためのより効果的な治療が必要とされている。標準的な化学療法、例えば、白金含有化学療法、トポテカンまたはイリノテカンに抵抗性である患者のためのより優れた療法が特に必要とされている。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、第1選択そうでなければ第2選択以降のいずれかのSCLCを治療するための向上した方法及び組成物に関する。方法及び組成物は、例えば、白金ベースの、またはイリノテカン及びトポテカンのようなカンプトテシン化合物を用いる標準的な化学療法に抵抗性であるSCLC患者を治療することに特に有用である。本方法は、抗Trop-2ADCによる、好ましくは抗Trop-2-SN-38ADCによる治療を含む。より好ましい実施形態では、抗体部分を薬物部分に結合させるために、CL2Aリンカーなどのリンカーが使用される。最も好ましくは、抗Trop-2はヒト化RS7(hRS7)抗体または抗原結合抗体断片である。本方法及び組成物は、以下に詳細に記載される好ましい投薬量で使用される場合に、より大きな効力を有し、管理可能な毒性のみを有する、SCLCの標準的ケアよりも実質的に向上した治療を提供する。
【0009】
様々な実施形態では、ADCは、単独で、あるいは1つまたは複数の他の治療様式、例えば、手術、放射線療法、化学療法、免疫調節剤、サイトカイン、化学療法剤、アポトーシス促進剤、抗血管新生剤、細胞毒性剤、薬物、毒素、放射性核種、RNAi、siRNA、第2の抗体もしくは抗体断片または免疫複合体とともに、併用療法として、使用することができる。好ましくは、ADCと他の治療様式との組み合わせは、単独または個々の治療の効果の総和よりも効果的である。
【0010】
特定の実施形態では、抗Trop-2抗体は、軽鎖CDR配列CDR1(KASQDVSIAVA、配列番号1)、CDR2(SASYRYT、配列番号2)及びCDR3(QQHYITPLT、配列番号3)、ならびに重鎖CDR配列CDR1(NYGMN、配列番号4)、CDR2(WINTYTGEPTYTDDFKG、配列番号5)及びCDR3(GGFGSSYWYFDV、配列番号6)を含む、ヒト化RS7抗体でもよい(例えば、その図及び実施例セクションが参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,238,785号を参照されたい)。しかし、以下に述べるように、他の抗Trop-2抗体が知られており、主題のADCで使用することができる。がん治療に有用ないくつかの細胞毒性薬物が当技術分野で周知であり、任意のそのような既知の薬物を目的の抗体にコンジュゲートすることができる。より好ましい実施形態では、抗体にコンジュゲートされる薬物はカンプトテシン、最も好ましくはSN-38である(例えば、図及び実施例セクションが参照により本明細書に組み込まれる米国特許第9,028,833号を参照されたい)。
【0011】
抗体部分は、モノクローナル抗体、抗原結合抗体断片、二重特異性もしくは他の多価抗体または抗体ベースの他の分子でもよい。抗体は、様々なアイソタイプのもの、好ましくは、ヒトIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4、より好ましくは、ヒトIgG1のヒンジ及び定常領域配列を含むものでもよい。抗体またはその断片は、キメラ抗体、ヒト化抗体またはヒト抗体、ならびにそれらの変形形態、例えば、van der Neut Kolfschoten et al.(Science 2007;317:1554-1557)によって記載されているような半IgG4抗体(「ユニボディ」と称される)でもよい。より好ましくは、抗体またはその断片は、特定のアロタイプに属するヒト定常領域配列を含むように設計または選択することができ、これは、ADCがヒト対象に投与される場合に免疫原性の低減をもたらすことができる。投与のための好ましいアロタイプとしては、非G1m1アロタイプ(nG1m1)、例えば、G1m3、G1m3,1、G1m3,2またはG1m3,1,2が挙げられる。より好ましくは、アロタイプは、nG1m1、G1m3、nG1m1,2及びKm3アロタイプ(Jefferies and Lefranc,2009,mAbs 1(4):1-7)からなる群から選択される。
【0012】
抗体または抗体断片にコンジュゲートされる薬物は、アントラサイクリン、カンプトテシン、チューブリン阻害剤、マイタンシノイド、カリケアマイシン、オーリスタチン、ナイトロジェンマスタード、エチレンイミン誘導体、スルホン酸アルキル、ニトロソ尿素、トリアゼン、葉酸類似体、タキサン、COX-2阻害剤、ピリミジン類似体、プリン類似体、抗生物質、酵素阻害剤、エピポドフィロトキシン、白金配位化合物、ビンカアルカロイド、置換尿素、メチルヒドラジン誘導体、副腎皮質抑制剤、ホルモンアンタゴニスト、代謝拮抗剤、アルキル化剤、有糸分裂阻害薬、抗血管新生剤、チロシンキナーゼ阻害剤、mTOR阻害剤、熱ショックタンパク質(HSP90)阻害剤、プロテオソーム阻害剤、HDAC阻害剤、アポトーシス促進剤及びこれらの組み合わせからなる群から選択することができる。
【0013】
有用な特定の薬物は、5-フルオロウラシル、アファチニブ、アプリジン、アザリビン、アナストロゾール、アントラサイクリン、アキシチニブ、AVL-101、AVL-291、ベンダムスチン、ブレオマイシン、ボルテゾミブ、ボスチニブ、ブリオスタチン-1、ブスルファン、カリケアマイシン、カンプトテシン、カルボプラチン、10-ヒドロキシカンプトテシン、カルムスチン、セレコキシブ、クロラムブシル、シスプラチナム、COX-2阻害剤、イリノテカン(CPT-11)、SN-38、カルボプラチン、クラドリビン、カンプトテカン、クリゾチニブ、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン、ダサチニブ、ジナシクリブ、ドセタキセル、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、DM1、DM3、DM4、ドキソルビシン、2-ピロリノドキソルビシン(2-PDox)、2-PDoxのプロドラッグ形態(プロ-2-PDox)、シアノ-モルホリノドキソルビシン、ドキソルビシングルクロニド、エンドスタチン、エピルビシングルクロニド、エルロチニブ、エストラムスチン、エピドフィロトキシン、エルロチニブ、エンチノスタット、エストロゲン受容体結合剤、エトポシド(VP16)、エトポシドグルクロニド、リン酸エトポシド、エキセメスタン、フィンゴリモド、フロクスウリジン(FUdR)、3’,5’-O-ジオレオイル-FudR(FUdR-dO)、フルダラビン、フルタミド、ファルネシル-タンパク質トランスフェラーゼ阻害剤、フラボピリドール、ホスタマチニブ、ガネテスピブ、GDC-0834、GS-1101、ゲフィチニブ、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、イブルチニブ、イダルビシン、イデラリシブ、イホスファミド、イマチニブ、ラパチニブ、レノリダミド、ロイコボリン、LFM-A13、ロムスチン、メクロレタミン、メルファラン、メルカプトプリン、6-メルカプトプリン、メトトレキサート、ミトキサントロン、ミトラマイシン、マイトマイシン、ミトタン、モノメチルオーリスタチンF(MMAF)、モノメチルオーリスタチンD(MMAD)、モノメチルオーリスタチンE(MMAE)、ナベルビン、ネラチニブ、ニロチニブ、ニトロソ尿素、オラパリブ、プリコマイシン、プロカルバジン、パクリタキセル、PCI-32765、ペントスタチン、PSI-341、ラロキシフェン、セムスチン、SN-38、ソラフェニブ、ストレプトゾシン、SU11248、スニチニブ、タモキシフェン、テマゾロミド、トランス白金、サリドマイド、チオグアニン、チオテパ、テニポシド、トポテカン、ウラシルマスタード、バタラニブ、ビノレルビン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンカアルカロイド及びZD1839からなる群から選択することができる。好ましくは、薬物はSN-38である。
【0014】
主題のADCの好ましい最適な投薬は、好ましくは、毎週、週2回または隔週のいずれかで与えられる、4mg/kg~18mg/kgの間の投薬量を含むことができる。最適な投薬スケジュールは、連続した2週の療法、それに続く、1週、2週、3週もしくは4週の休止、または1週おきの療法と休止、または1週の療法、それに続く、2週、3週もしくは4週の休止、または3週の療法、それに続く、1週、2週、3週もしくは4週の休止、または4週の療法、それに続く、1週、2週、3週もしくは4週の休止、または5週の療法、それに続く、1週、2週、3週、4週もしくは5週の休止、または2週に1回、3週に1回もしくは月1回の投与の治療サイクルを含むことができる。治療を任意のサイクル数、好ましくは少なくとも2、少なくとも4、少なくとも6、少なくとも8、少なくとも10、少なくとも12、少なくとも14または少なくとも16サイクルにわたって延ばすことができる。使用される例示的投薬量としては、1mg/kg、2mg/kg、3mg/kg、4mg/kg、5mg/kg、6mg/kg、7mg/kg、8mg/kg、9mg/kg、10mg/kg、11mg/kg、12mg/kg、13mg/kg、14mg/kg、15mg/kg、16mg/kg、17mg/kg、18mg/kg、19mg/kg、20mg/kg、22mg/kg及び24mg/kgを挙げることができる。好ましい投薬量は、4、6、8、9、10、12、14、16または18mg/kgである。より好ましい投薬量は、6~12、6~8、7~8、8~10、10~12または8~12mg/kgである。ADCの最適な投薬量の選択において、様々な因子、例えば、年齢、全体的な健康状態、特定の器官の機能または重量、及び特定の器官系(例えば、骨髄)に対する以前の療法の効果が考慮され得ること、ならびに療法の過程で投薬量及び/または投与頻度を増大または低下させることができることを当業者は理解するであろう。わずか4~8用量の後に腫瘍縮小のエビデンスが観察されるという状況で、必要に応じて、投薬量を反復することができる。本明細書に開示される投与の最適化された投薬量及びスケジュールは、動物モデル研究から予測することができなかったであろう予期しない優れた効力及び毒性の低減をヒト対象において示す。驚いたことに、優れた効力は、1つまたは複数の標準的抗がん療法に対して抵抗性であることが以前に分かった腫瘍の治療を可能にする。さらに驚いたことに、治療は、カンプトテシン、例えば、SN-38の親化合物であるイリノテカンに以前に抵抗性であった腫瘍で有効であることが分かった。
【0015】
ADCはSCLC及びmSCLCなどのがんの療法に有用である。そのような使用は、がんの進行の第1選択、第2選択またはそれ以降のステージでもよい。組成物及び使用方法は、カンプトテシン抵抗性及びカンプトテシン感受性のがんで効果的である。一般に、抗Trop-2ADCは、Trop-2抗原を発現する任意のがんを治療するのに有用である。しかし、好ましい特定の実施形態では、がんはSCLCまたはmSCLCである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】hRS7(抗Trop-2)、hPAM4(抗MUC5ac)、hMN-14(抗CEACAM5)または非特異的対照hA20(抗CD20)のSN-38コンジュゲートを用いた、Capan1ヒト膵臓癌を有する胸腺欠損ヌードマウスの前臨床インビボ療法を示す図である。
図2】対照と比較した、抗TROP2-CL2A-SN-38コンジュゲートを用いたBxPC3ヒト膵臓癌を有する胸腺欠損ヌードマウスの前臨床インビボ療法を示す図である。
図3A図3AはCL2-SN-38及びCL2A-SN-38の構造を示す図である。図3BはCOLO205結腸腺癌を使用した、hA20ADC及び生理食塩水対照に対するCL2連結化抗Trop-2ADC対CL2Aリンカー連結化抗Trop-2ADCの比較効力を示す図である。矢印で示すように、4週にわたって週2回動物を治療した。0.4mg/kg ADCでCOLO205マウス(N=6)を治療し、腫瘍を週2回測定した。図3CはCapan1膵臓腺癌を使用した、hA20ADC及び生理食塩水対照に対するCL2連結化抗Trop-2ADC対CL2Aリンカー連結化抗Trop-2ADCの比較効力を示す図である。矢印で示すように、4週にわたって週2回動物を治療した。0.2mg/kg ADCでCapan1マウス(N=10)を治療し、腫瘍を毎週測定した。
図3B図3AはCL2-SN-38及びCL2A-SN-38の構造を示す図である。図3BはCOLO205結腸腺癌を使用した、hA20ADC及び生理食塩水対照に対するCL2連結化抗Trop-2ADC対CL2Aリンカー連結化抗Trop-2ADCの比較効力を示す図である。矢印で示すように、4週にわたって週2回動物を治療した。0.4mg/kg ADCでCOLO205マウス(N=6)を治療し、腫瘍を週2回測定した。図3CはCapan1膵臓腺癌を使用した、hA20ADC及び生理食塩水対照に対するCL2連結化抗Trop-2ADC対CL2Aリンカー連結化抗Trop-2ADCの比較効力を示す図である。矢印で示すように、4週にわたって週2回動物を治療した。0.2mg/kg ADCでCapan1マウス(N=10)を治療し、腫瘍を毎週測定した。
図3C図3AはCL2-SN-38及びCL2A-SN-38の構造を示す図である。図3BはCOLO205結腸腺癌を使用した、hA20ADC及び生理食塩水対照に対するCL2連結化抗Trop-2ADC対CL2Aリンカー連結化抗Trop-2ADCの比較効力を示す図である。矢印で示すように、4週にわたって週2回動物を治療した。0.4mg/kg ADCでCOLO205マウス(N=6)を治療し、腫瘍を週2回測定した。図3CはCapan1膵臓腺癌を使用した、hA20ADC及び生理食塩水対照に対するCL2連結化抗Trop-2ADC対CL2Aリンカー連結化抗Trop-2ADCの比較効力を示す図である。矢印で示すように、4週にわたって週2回動物を治療した。0.2mg/kg ADCでCapan1マウス(N=10)を治療し、腫瘍を毎週測定した。
図4A図4Aはいくつかの固形腫瘍異種移植片疾患モデルにおけるhRS7-SN-38ADCの治療効力を示す図である。ヒト非小細胞肺、結腸直腸、膵臓、または扁平上皮細胞肺の腫瘍異種移植片を有するマウスで、hRS7-CL2-SN-38及びhRS7-CL2A-SN-38ADC治療の有効性を研究した。すべてのADC及び対照に、示される量を投与した(用量あたりのSN-38の量として表される;長い矢印=コンジュゲートの注射、短い矢印=イリノテカンの注射)。Calu-3腫瘍を有するマウス(N=5~7)に、hRS7-CL2-SN-38を合計で4回の注射について4日毎(q4d×4)注射した。図4Bはいくつかの固形腫瘍異種移植片疾患モデルにおけるhRS7-SN-38ADCの治療効力を示す図である。ヒト非小細胞肺、結腸直腸、膵臓、または扁平上皮細胞肺の腫瘍異種移植片を有するマウスで、hRS7-CL2-SN-38及びhRS7-CL2A-SN-38ADC治療の有効性を研究した。すべてのADC及び対照に、示される量で投与した(用量あたりのSN-38の量として表される。長い矢印=コンジュゲートの注射、短い矢印=イリノテカンの注射)。COLO205腫瘍を有するマウス(N=5)に、ADCを8回(q4d×8)、またはイリノテカンのMTDを合計で5回の注射について2日毎(q2d×5)注射した。図4Cはいくつかの固形腫瘍異種移植片疾患モデルにおけるhRS7-SN-38ADCの治療効力を示す図である。ヒト非小細胞肺、結腸直腸、膵臓、または扁平上皮細胞肺の腫瘍異種移植片を有するマウスで、hRS7-CL2-SN-38及びhRS7-CL2A-SN-38ADC治療の有効性を研究した。すべてのADC及び対照に、示される量で投与した(用量あたりのSN-38の量として表される。長い矢印=コンジュゲートの注射、短い矢印=イリノテカンの注射)。Capan1(N=10)を示される薬剤で4週にわたって週2回治療した。図4Dはいくつかの固形腫瘍異種移植片疾患モデルにおけるhRS7-SN-38ADCの治療効力を示す図である。ヒト非小細胞肺、結腸直腸、膵臓、または扁平上皮細胞肺の腫瘍異種移植片を有するマウスで、hRS7-CL2-SN-38及びhRS7-CL2A-SN-38ADC治療の有効性を研究した。すべてのADC及び対照に、示される量で投与した(用量あたりのSN-38の量として表される。長い矢印=コンジュゲートの注射、短い矢印=イリノテカンの注射)。BxPC-3腫瘍を有するマウス(N=10)を示される薬剤で4週にわたって週2回治療した。図4Eはいくつかの固形腫瘍異種移植片疾患モデルにおけるhRS7-SN-38ADCの治療効力を示す図である。ヒト非小細胞肺、結腸直腸、膵臓、または扁平上皮細胞肺の腫瘍異種移植片を有するマウスで、hRS7-CL2-SN-38及びhRS7-CL2A-SN-38ADC治療の有効性を研究した。すべてのADC及び対照に、示される量で投与した(用量あたりのSN-38の量として表される。長い矢印=コンジュゲートの注射、短い矢印=イリノテカンの注射)。4週にわたって週2回与えたADCに加えて、SK-MES-1腫瘍を有するマウス(N=8)にCPT-11のMTDを与えた(q2d×5)。
図4B図4Aはいくつかの固形腫瘍異種移植片疾患モデルにおけるhRS7-SN-38ADCの治療効力を示す図である。ヒト非小細胞肺、結腸直腸、膵臓、または扁平上皮細胞肺の腫瘍異種移植片を有するマウスで、hRS7-CL2-SN-38及びhRS7-CL2A-SN-38ADC治療の有効性を研究した。すべてのADC及び対照に、示される量を投与した(用量あたりのSN-38の量として表される;長い矢印=コンジュゲートの注射、短い矢印=イリノテカンの注射)。Calu-3腫瘍を有するマウス(N=5~7)に、hRS7-CL2-SN-38を合計で4回の注射について4日毎(q4d×4)注射した。図4Bはいくつかの固形腫瘍異種移植片疾患モデルにおけるhRS7-SN-38ADCの治療効力を示す図である。ヒト非小細胞肺、結腸直腸、膵臓、または扁平上皮細胞肺の腫瘍異種移植片を有するマウスで、hRS7-CL2-SN-38及びhRS7-CL2A-SN-38ADC治療の有効性を研究した。すべてのADC及び対照に、示される量で投与した(用量あたりのSN-38の量として表される。長い矢印=コンジュゲートの注射、短い矢印=イリノテカンの注射)。COLO205腫瘍を有するマウス(N=5)に、ADCを8回(q4d×8)、またはイリノテカンのMTDを合計で5回の注射について2日毎(q2d×5)注射した。図4Cはいくつかの固形腫瘍異種移植片疾患モデルにおけるhRS7-SN-38ADCの治療効力を示す図である。ヒト非小細胞肺、結腸直腸、膵臓、または扁平上皮細胞肺の腫瘍異種移植片を有するマウスで、hRS7-CL2-SN-38及びhRS7-CL2A-SN-38ADC治療の有効性を研究した。すべてのADC及び対照に、示される量で投与した(用量あたりのSN-38の量として表される。長い矢印=コンジュゲートの注射、短い矢印=イリノテカンの注射)。Capan1(N=10)を示される薬剤で4週にわたって週2回治療した。図4Dはいくつかの固形腫瘍異種移植片疾患モデルにおけるhRS7-SN-38ADCの治療効力を示す図である。ヒト非小細胞肺、結腸直腸、膵臓、または扁平上皮細胞肺の腫瘍異種移植片を有するマウスで、hRS7-CL2-SN-38及びhRS7-CL2A-SN-38ADC治療の有効性を研究した。すべてのADC及び対照に、示される量で投与した(用量あたりのSN-38の量として表される。長い矢印=コンジュゲートの注射、短い矢印=イリノテカンの注射)。BxPC-3腫瘍を有するマウス(N=10)を示される薬剤で4週にわたって週2回治療した。図4Eはいくつかの固形腫瘍異種移植片疾患モデルにおけるhRS7-SN-38ADCの治療効力を示す図である。ヒト非小細胞肺、結腸直腸、膵臓、または扁平上皮細胞肺の腫瘍異種移植片を有するマウスで、hRS7-CL2-SN-38及びhRS7-CL2A-SN-38ADC治療の有効性を研究した。すべてのADC及び対照に、示される量で投与した(用量あたりのSN-38の量として表される。長い矢印=コンジュゲートの注射、短い矢印=イリノテカンの注射)。4週にわたって週2回与えたADCに加えて、SK-MES-1腫瘍を有するマウス(N=8)にCPT-11のMTDを与えた(q2d×5)。
図4C図4Aはいくつかの固形腫瘍異種移植片疾患モデルにおけるhRS7-SN-38ADCの治療効力を示す図である。ヒト非小細胞肺、結腸直腸、膵臓、または扁平上皮細胞肺の腫瘍異種移植片を有するマウスで、hRS7-CL2-SN-38及びhRS7-CL2A-SN-38ADC治療の有効性を研究した。すべてのADC及び対照に、示される量を投与した(用量あたりのSN-38の量として表される;長い矢印=コンジュゲートの注射、短い矢印=イリノテカンの注射)。Calu-3腫瘍を有するマウス(N=5~7)に、hRS7-CL2-SN-38を合計で4回の注射について4日毎(q4d×4)注射した。図4Bはいくつかの固形腫瘍異種移植片疾患モデルにおけるhRS7-SN-38ADCの治療効力を示す図である。ヒト非小細胞肺、結腸直腸、膵臓、または扁平上皮細胞肺の腫瘍異種移植片を有するマウスで、hRS7-CL2-SN-38及びhRS7-CL2A-SN-38ADC治療の有効性を研究した。すべてのADC及び対照に、示される量で投与した(用量あたりのSN-38の量として表される。長い矢印=コンジュゲートの注射、短い矢印=イリノテカンの注射)。COLO205腫瘍を有するマウス(N=5)に、ADCを8回(q4d×8)、またはイリノテカンのMTDを合計で5回の注射について2日毎(q2d×5)注射した。図4Cはいくつかの固形腫瘍異種移植片疾患モデルにおけるhRS7-SN-38ADCの治療効力を示す図である。ヒト非小細胞肺、結腸直腸、膵臓、または扁平上皮細胞肺の腫瘍異種移植片を有するマウスで、hRS7-CL2-SN-38及びhRS7-CL2A-SN-38ADC治療の有効性を研究した。すべてのADC及び対照に、示される量で投与した(用量あたりのSN-38の量として表される。長い矢印=コンジュゲートの注射、短い矢印=イリノテカンの注射)。Capan1(N=10)を示される薬剤で4週にわたって週2回治療した。図4Dはいくつかの固形腫瘍異種移植片疾患モデルにおけるhRS7-SN-38ADCの治療効力を示す図である。ヒト非小細胞肺、結腸直腸、膵臓、または扁平上皮細胞肺の腫瘍異種移植片を有するマウスで、hRS7-CL2-SN-38及びhRS7-CL2A-SN-38ADC治療の有効性を研究した。すべてのADC及び対照に、示される量で投与した(用量あたりのSN-38の量として表される。長い矢印=コンジュゲートの注射、短い矢印=イリノテカンの注射)。BxPC-3腫瘍を有するマウス(N=10)を示される薬剤で4週にわたって週2回治療した。図4Eはいくつかの固形腫瘍異種移植片疾患モデルにおけるhRS7-SN-38ADCの治療効力を示す図である。ヒト非小細胞肺、結腸直腸、膵臓、または扁平上皮細胞肺の腫瘍異種移植片を有するマウスで、hRS7-CL2-SN-38及びhRS7-CL2A-SN-38ADC治療の有効性を研究した。すべてのADC及び対照に、示される量で投与した(用量あたりのSN-38の量として表される。長い矢印=コンジュゲートの注射、短い矢印=イリノテカンの注射)。4週にわたって週2回与えたADCに加えて、SK-MES-1腫瘍を有するマウス(N=8)にCPT-11のMTDを与えた(q2d×5)。
図4D図4Aはいくつかの固形腫瘍異種移植片疾患モデルにおけるhRS7-SN-38ADCの治療効力を示す図である。ヒト非小細胞肺、結腸直腸、膵臓、または扁平上皮細胞肺の腫瘍異種移植片を有するマウスで、hRS7-CL2-SN-38及びhRS7-CL2A-SN-38ADC治療の有効性を研究した。すべてのADC及び対照に、示される量を投与した(用量あたりのSN-38の量として表される;長い矢印=コンジュゲートの注射、短い矢印=イリノテカンの注射)。Calu-3腫瘍を有するマウス(N=5~7)に、hRS7-CL2-SN-38を合計で4回の注射について4日毎(q4d×4)注射した。図4Bはいくつかの固形腫瘍異種移植片疾患モデルにおけるhRS7-SN-38ADCの治療効力を示す図である。ヒト非小細胞肺、結腸直腸、膵臓、または扁平上皮細胞肺の腫瘍異種移植片を有するマウスで、hRS7-CL2-SN-38及びhRS7-CL2A-SN-38ADC治療の有効性を研究した。すべてのADC及び対照に、示される量で投与した(用量あたりのSN-38の量として表される。長い矢印=コンジュゲートの注射、短い矢印=イリノテカンの注射)。COLO205腫瘍を有するマウス(N=5)に、ADCを8回(q4d×8)、またはイリノテカンのMTDを合計で5回の注射について2日毎(q2d×5)注射した。図4Cはいくつかの固形腫瘍異種移植片疾患モデルにおけるhRS7-SN-38ADCの治療効力を示す図である。ヒト非小細胞肺、結腸直腸、膵臓、または扁平上皮細胞肺の腫瘍異種移植片を有するマウスで、hRS7-CL2-SN-38及びhRS7-CL2A-SN-38ADC治療の有効性を研究した。すべてのADC及び対照に、示される量で投与した(用量あたりのSN-38の量として表される。長い矢印=コンジュゲートの注射、短い矢印=イリノテカンの注射)。Capan1(N=10)を示される薬剤で4週にわたって週2回治療した。図4Dはいくつかの固形腫瘍異種移植片疾患モデルにおけるhRS7-SN-38ADCの治療効力を示す図である。ヒト非小細胞肺、結腸直腸、膵臓、または扁平上皮細胞肺の腫瘍異種移植片を有するマウスで、hRS7-CL2-SN-38及びhRS7-CL2A-SN-38ADC治療の有効性を研究した。すべてのADC及び対照に、示される量で投与した(用量あたりのSN-38の量として表される。長い矢印=コンジュゲートの注射、短い矢印=イリノテカンの注射)。BxPC-3腫瘍を有するマウス(N=10)を示される薬剤で4週にわたって週2回治療した。図4Eはいくつかの固形腫瘍異種移植片疾患モデルにおけるhRS7-SN-38ADCの治療効力を示す図である。ヒト非小細胞肺、結腸直腸、膵臓、または扁平上皮細胞肺の腫瘍異種移植片を有するマウスで、hRS7-CL2-SN-38及びhRS7-CL2A-SN-38ADC治療の有効性を研究した。すべてのADC及び対照に、示される量で投与した(用量あたりのSN-38の量として表される。長い矢印=コンジュゲートの注射、短い矢印=イリノテカンの注射)。4週にわたって週2回与えたADCに加えて、SK-MES-1腫瘍を有するマウス(N=8)にCPT-11のMTDを与えた(q2d×5)。
図4E図4Aはいくつかの固形腫瘍異種移植片疾患モデルにおけるhRS7-SN-38ADCの治療効力を示す図である。ヒト非小細胞肺、結腸直腸、膵臓、または扁平上皮細胞肺の腫瘍異種移植片を有するマウスで、hRS7-CL2-SN-38及びhRS7-CL2A-SN-38ADC治療の有効性を研究した。すべてのADC及び対照に、示される量を投与した(用量あたりのSN-38の量として表される;長い矢印=コンジュゲートの注射、短い矢印=イリノテカンの注射)。Calu-3腫瘍を有するマウス(N=5~7)に、hRS7-CL2-SN-38を合計で4回の注射について4日毎(q4d×4)注射した。図4Bはいくつかの固形腫瘍異種移植片疾患モデルにおけるhRS7-SN-38ADCの治療効力を示す図である。ヒト非小細胞肺、結腸直腸、膵臓、または扁平上皮細胞肺の腫瘍異種移植片を有するマウスで、hRS7-CL2-SN-38及びhRS7-CL2A-SN-38ADC治療の有効性を研究した。すべてのADC及び対照に、示される量で投与した(用量あたりのSN-38の量として表される。長い矢印=コンジュゲートの注射、短い矢印=イリノテカンの注射)。COLO205腫瘍を有するマウス(N=5)に、ADCを8回(q4d×8)、またはイリノテカンのMTDを合計で5回の注射について2日毎(q2d×5)注射した。図4Cはいくつかの固形腫瘍異種移植片疾患モデルにおけるhRS7-SN-38ADCの治療効力を示す図である。ヒト非小細胞肺、結腸直腸、膵臓、または扁平上皮細胞肺の腫瘍異種移植片を有するマウスで、hRS7-CL2-SN-38及びhRS7-CL2A-SN-38ADC治療の有効性を研究した。すべてのADC及び対照に、示される量で投与した(用量あたりのSN-38の量として表される。長い矢印=コンジュゲートの注射、短い矢印=イリノテカンの注射)。Capan1(N=10)を示される薬剤で4週にわたって週2回治療した。図4Dはいくつかの固形腫瘍異種移植片疾患モデルにおけるhRS7-SN-38ADCの治療効力を示す図である。ヒト非小細胞肺、結腸直腸、膵臓、または扁平上皮細胞肺の腫瘍異種移植片を有するマウスで、hRS7-CL2-SN-38及びhRS7-CL2A-SN-38ADC治療の有効性を研究した。すべてのADC及び対照に、示される量で投与した(用量あたりのSN-38の量として表される。長い矢印=コンジュゲートの注射、短い矢印=イリノテカンの注射)。BxPC-3腫瘍を有するマウス(N=10)を示される薬剤で4週にわたって週2回治療した。図4Eはいくつかの固形腫瘍異種移植片疾患モデルにおけるhRS7-SN-38ADCの治療効力を示す図である。ヒト非小細胞肺、結腸直腸、膵臓、または扁平上皮細胞肺の腫瘍異種移植片を有するマウスで、hRS7-CL2-SN-38及びhRS7-CL2A-SN-38ADC治療の有効性を研究した。すべてのADC及び対照に、示される量で投与した(用量あたりのSN-38の量として表される。長い矢印=コンジュゲートの注射、短い矢印=イリノテカンの注射)。4週にわたって週2回与えたADCに加えて、SK-MES-1腫瘍を有するマウス(N=8)にCPT-11のMTDを与えた(q2d×5)。
図5A図5AはSwiss-WebsterマウスにおけるhRS7-CL2A-SN-38の忍容性を示す図である。56匹のSwiss-Websterマウスに2腹腔内用量のバッファーまたはhRS7-CL2A-SN-38を3日間隔で投与した(用量あたり4、8または12mg/kgのSN-38;用量あたり250、500または750mgのコンジュゲートタンパク質/kg)。最後の注射から7及び15日後に、各群の7のマウスを安楽死させ、血球計数及び血清化学検査を行った。グラフは、各群におけるASTレベルが上昇した動物のパーセントを示す。図5BはSwiss-WebsterマウスにおけるhRS7-CL2A-SN-38の忍容性を示す図である。56匹のSwiss-Websterマウスに2腹腔内用量のバッファーまたはhRS7-CL2A-SN-38を3日間隔で投与した(用量あたり4、8または12mg/kgのSN-38;用量あたり250、500または750mgのコンジュゲートタンパク質/kg)。最後の注射から7及び15日後に、各群の7のマウスを安楽死させ、血球計数及び血清化学検査を行った。グラフは、各群におけるALTレベルが上昇した動物のパーセントを示す。図5CはカニクイザルにおけるhRS7-CL2A-SN-38の忍容性を示す図である。バッファー(対照)または用量あたり0.96mg/kgまたは1.92mg/kgのSN-38当量(60及び120mg/kgのコンジュゲートタンパク質)のhRS7-CL2A-SN-38を群あたり6匹のサルに3日間隔で2回注射した。1、3及び6日目にすべての動物から採血した。11日目に、0.96mg/kg群において4匹のサルを採血し、1.92mg/kg群において3匹を採血した。カニクイザルにおける好中球数の変化。図5DはカニクイザルにおけるhRS7-CL2A-SN-38の忍容性を示す図である。バッファー(対照)または用量あたり0.96mg/kgまたは1.92mg/kgのSN-38当量(60及び120mg/kgのコンジュゲートタンパク質)のhRS7-CL2A-SN-38を群あたり6匹のサルに3日間隔で2回注射した。1、3及び6日目にすべての動物から採血した。11日目に、0.96mg/kg群において4匹のサルを採血し、1.92mg/kg群において3匹を採血した。カニクイザルにおける血小板数の変化。
図5B図5AはSwiss-WebsterマウスにおけるhRS7-CL2A-SN-38の忍容性を示す図である。56匹のSwiss-Websterマウスに2腹腔内用量のバッファーまたはhRS7-CL2A-SN-38を3日間隔で投与した(用量あたり4、8または12mg/kgのSN-38;用量あたり250、500または750mgのコンジュゲートタンパク質/kg)。最後の注射から7及び15日後に、各群の7のマウスを安楽死させ、血球計数及び血清化学検査を行った。グラフは、各群におけるASTレベルが上昇した動物のパーセントを示す。図5BはSwiss-WebsterマウスにおけるhRS7-CL2A-SN-38の忍容性を示す図である。56匹のSwiss-Websterマウスに2腹腔内用量のバッファーまたはhRS7-CL2A-SN-38を3日間隔で投与した(用量あたり4、8または12mg/kgのSN-38;用量あたり250、500または750mgのコンジュゲートタンパク質/kg)。最後の注射から7及び15日後に、各群の7のマウスを安楽死させ、血球計数及び血清化学検査を行った。グラフは、各群におけるALTレベルが上昇した動物のパーセントを示す。図5CはカニクイザルにおけるhRS7-CL2A-SN-38の忍容性を示す図である。バッファー(対照)または用量あたり0.96mg/kgまたは1.92mg/kgのSN-38当量(60及び120mg/kgのコンジュゲートタンパク質)のhRS7-CL2A-SN-38を群あたり6匹のサルに3日間隔で2回注射した。1、3及び6日目にすべての動物から採血した。11日目に、0.96mg/kg群において4匹のサルを採血し、1.92mg/kg群において3匹を採血した。カニクイザルにおける好中球数の変化。図5DはカニクイザルにおけるhRS7-CL2A-SN-38の忍容性を示す図である。バッファー(対照)または用量あたり0.96mg/kgまたは1.92mg/kgのSN-38当量(60及び120mg/kgのコンジュゲートタンパク質)のhRS7-CL2A-SN-38を群あたり6匹のサルに3日間隔で2回注射した。1、3及び6日目にすべての動物から採血した。11日目に、0.96mg/kg群において4匹のサルを採血し、1.92mg/kg群において3匹を採血した。カニクイザルにおける血小板数の変化。
図5C図5AはSwiss-WebsterマウスにおけるhRS7-CL2A-SN-38の忍容性を示す図である。56匹のSwiss-Websterマウスに2腹腔内用量のバッファーまたはhRS7-CL2A-SN-38を3日間隔で投与した(用量あたり4、8または12mg/kgのSN-38;用量あたり250、500または750mgのコンジュゲートタンパク質/kg)。最後の注射から7及び15日後に、各群の7のマウスを安楽死させ、血球計数及び血清化学検査を行った。グラフは、各群におけるASTレベルが上昇した動物のパーセントを示す。図5BはSwiss-WebsterマウスにおけるhRS7-CL2A-SN-38の忍容性を示す図である。56匹のSwiss-Websterマウスに2腹腔内用量のバッファーまたはhRS7-CL2A-SN-38を3日間隔で投与した(用量あたり4、8または12mg/kgのSN-38;用量あたり250、500または750mgのコンジュゲートタンパク質/kg)。最後の注射から7及び15日後に、各群の7のマウスを安楽死させ、血球計数及び血清化学検査を行った。グラフは、各群におけるALTレベルが上昇した動物のパーセントを示す。図5CはカニクイザルにおけるhRS7-CL2A-SN-38の忍容性を示す図である。バッファー(対照)または用量あたり0.96mg/kgまたは1.92mg/kgのSN-38当量(60及び120mg/kgのコンジュゲートタンパク質)のhRS7-CL2A-SN-38を群あたり6匹のサルに3日間隔で2回注射した。1、3及び6日目にすべての動物から採血した。11日目に、0.96mg/kg群において4匹のサルを採血し、1.92mg/kg群において3匹を採血した。カニクイザルにおける好中球数の変化。図5DはカニクイザルにおけるhRS7-CL2A-SN-38の忍容性を示す図である。バッファー(対照)または用量あたり0.96mg/kgまたは1.92mg/kgのSN-38当量(60及び120mg/kgのコンジュゲートタンパク質)のhRS7-CL2A-SN-38を群あたり6匹のサルに3日間隔で2回注射した。1、3及び6日目にすべての動物から採血した。11日目に、0.96mg/kg群において4匹のサルを採血し、1.92mg/kg群において3匹を採血した。カニクイザルにおける血小板数の変化。
図5D図5AはSwiss-WebsterマウスにおけるhRS7-CL2A-SN-38の忍容性を示す図である。56匹のSwiss-Websterマウスに2腹腔内用量のバッファーまたはhRS7-CL2A-SN-38を3日間隔で投与した(用量あたり4、8または12mg/kgのSN-38;用量あたり250、500または750mgのコンジュゲートタンパク質/kg)。最後の注射から7及び15日後に、各群の7のマウスを安楽死させ、血球計数及び血清化学検査を行った。グラフは、各群におけるASTレベルが上昇した動物のパーセントを示す。図5BはSwiss-WebsterマウスにおけるhRS7-CL2A-SN-38の忍容性を示す図である。56匹のSwiss-Websterマウスに2腹腔内用量のバッファーまたはhRS7-CL2A-SN-38を3日間隔で投与した(用量あたり4、8または12mg/kgのSN-38;用量あたり250、500または750mgのコンジュゲートタンパク質/kg)。最後の注射から7及び15日後に、各群の7のマウスを安楽死させ、血球計数及び血清化学検査を行った。グラフは、各群におけるALTレベルが上昇した動物のパーセントを示す。図5CはカニクイザルにおけるhRS7-CL2A-SN-38の忍容性を示す図である。バッファー(対照)または用量あたり0.96mg/kgまたは1.92mg/kgのSN-38当量(60及び120mg/kgのコンジュゲートタンパク質)のhRS7-CL2A-SN-38を群あたり6匹のサルに3日間隔で2回注射した。1、3及び6日目にすべての動物から採血した。11日目に、0.96mg/kg群において4匹のサルを採血し、1.92mg/kg群において3匹を採血した。カニクイザルにおける好中球数の変化。図5DはカニクイザルにおけるhRS7-CL2A-SN-38の忍容性を示す図である。バッファー(対照)または用量あたり0.96mg/kgまたは1.92mg/kgのSN-38当量(60及び120mg/kgのコンジュゲートタンパク質)のhRS7-CL2A-SN-38を群あたり6匹のサルに3日間隔で2回注射した。1、3及び6日目にすべての動物から採血した。11日目に、0.96mg/kg群において4匹のサルを採血し、1.92mg/kg群において3匹を採血した。カニクイザルにおける血小板数の変化。
図6】MDA-MB-468ヒト乳腺癌に対する抗Trop-2-パクリタキセルADCのインビトロ有効性を示す図である。
図7】BxPC-3ヒト膵臓腺癌に対する抗Trop-2-パクリタキセルADCのインビトロ効力を示す図である。
図8A図8AはCapan1ヒト膵臓腺癌における抗Trop-2ADCのインビトロ効力の比較(hRS7-SN-38対MAB650-SN-38)を示す図である。図8BはBxPC-3ヒト膵臓腺癌における抗Trop-2ADCのインビトロ効力の比較(hRS7-SN-38対MAB650-SN-38)を示す図である。図8CはNCI-N87ヒト胃腺癌における抗Trop-2ADCのインビトロ効力の比較(hRS7-SN-38対MAB650-SN-38)を示す図である。
図8B図8AはCapan1ヒト膵臓腺癌における抗Trop-2ADCのインビトロ効力の比較(hRS7-SN-38対MAB650-SN-38)を示す図である。図8BはBxPC-3ヒト膵臓腺癌における抗Trop-2ADCのインビトロ効力の比較(hRS7-SN-38対MAB650-SN-38)を示す図である。図8CはNCI-N87ヒト胃腺癌における抗Trop-2ADCのインビトロ効力の比較(hRS7-SN-38対MAB650-SN-38)を示す図である。
図8C図8AはCapan1ヒト膵臓腺癌における抗Trop-2ADCのインビトロ効力の比較(hRS7-SN-38対MAB650-SN-38)を示す図である。図8BはBxPC-3ヒト膵臓腺癌における抗Trop-2ADCのインビトロ効力の比較(hRS7-SN-38対MAB650-SN-38)を示す図である。図8CはNCI-N87ヒト胃腺癌における抗Trop-2ADCのインビトロ効力の比較(hRS7-SN-38対MAB650-SN-38)を示す図である。
図9A図9AはBxPC-3ヒト膵臓腺癌におけるネイキッドまたはSN-38コンジュゲート化のhRS7抗体対162-46.2抗体の細胞毒性の比較を示す図である。図9BはMDA-MB-468ヒト乳腺癌におけるネイキッドまたはSN-38コンジュゲート化のhRS7抗体対162-46.2抗体の細胞毒性の比較を示す図である。
図9B図9AはBxPC-3ヒト膵臓腺癌におけるネイキッドまたはSN-38コンジュゲート化のhRS7抗体対162-46.2抗体の細胞毒性の比較を示す図である。図9BはMDA-MB-468ヒト乳腺癌におけるネイキッドまたはSN-38コンジュゲート化のhRS7抗体対162-46.2抗体の細胞毒性の比較を示す図である。
図10】RECISTの判断基準による最良応答に関するIMMU-132第I/II相データを示す図である。
図11】無増悪期間及び最良応答(RECIST)に関するIMMU-132第I/II相データを示す図である。
図12】IMMU-132、カルボプラチンもしくはシスプラチン単独、非標的化ADCまたは生理食塩水対照と比較した、IMMU-132とカルボプラチンまたはシスプラチンを用いる併用療法を示す図である。
図13】IMMU-132もしくはカルボプラチン単独または生理食塩水対照と比較した、IMMU-132+カルボプラチンを用いる併用療法を示す図である。
図14】IMMU-132もしくはシスプラチナム単独または生理食塩水対照と比較した、IMMU-132+シスプラチナムを用いる併用療法を示す図である。
図15】IMMU-132、カルボプラチンもしくはシスプラチン単独または生理食塩水対照と比較した、IMMU-132とカルボプラチンまたはシスプラチンを用いる併用療法で治療したマウスにおける悪液質を示す図である。
図16】応答評価可能な患者における抗腫瘍応答及び持続期間のグラフ表示である。(A)選択された標的病変についての直径の合計の最高パーセンテージ変化及びRECIST1.1の判断基準による最高の全体的応答記述子。サシツズマブゴビテカンの開始用量、及び以前の第1選択療法に感受性であったか、抵抗性であったかに関して患者を識別した。非確証部分応答を有する患者は、最初に観察された客観的応答から4~6週後の次のCT評価で≧30%を維持することができなかった。RECIST1.0によるこれらの患者の最高の全体的応答は安定疾患であった。(B)安定疾患以上を達成した患者についての治療開始からの応答持続期間。腫瘍縮小が≧30%を達成したタイミングを、サシツズマブゴビテカンの開始用量及び第1選択療法への感受性とともに示す。(C)安定疾患以上を達成した患者についての応答の動態。治療を続けている、確証部分応答を有する2人の患者を破線で示す。
図17】サシツズマブゴビテカン試験に登録されたすべての53人のSCLC患者に対する(A)カプラン・マイヤー由来の無増悪生存曲線及び(B)全生存曲線。
図18】進行性SCLCと診断された64歳の男性を示す図である。この男性は、2013年7月~2013年11月まで第1選択療法としてカルボプラチンを受け、2013年11月及び12月にエトポシドが加えられた。疾患は2014年5月に再発した。サシツズマブゴビテカン開始より前に、ベースライン(2014年5月)時の腫瘍病変は、気管分岐部のリンパ節(20mm)及び右副腎腫瘍(A)(43×34mmの直径の副腎腫瘤)、ならびに肝臓の右葉及び左葉の複数の測定不可能な病変、右門の肥厚、左上葉肺結節ならびに食道肥厚を含んでいた。療法の2か月後の応答評価は、RECIST1.1によると50%の低減を示した(B)(副腎腫瘤は14mmに縮小し、気管分岐部のリンパ節は17mmに縮小する)。第2の応答評価で、副腎腫瘤はもはや目に見えなくなり、一方で、気管分岐部の節は治療開始から約11か月で(11mmへの)その最大縮小を経験し、82%の最大縮小をもたらした。患者は、21か月の応答持続期間(2014年7月~2016年3月)を経験した。(C)Trop-2について染色され、2+としてスコア化されたが、腫瘍細胞間のまばらな分布をともなう、副腎腫瘤由来の生検の免疫組織像。
図19】57歳の男性におけるIMMU-132療法の効果を示す図である。この男性は、13歳以来、1箱/日の喫煙者であり、2012年に転移性小細胞神経内分泌癌と診断され、2012年10月~2013年1月まで第1選択療法としてカルボプラチン及びエトポシドを受け、再発の際に、2013年9月~2013年11月までトポテカンを受け、応答がなかった。進行中の疾患のため、この患者を、2013年11月~2014年4月までカルボプラチンとエトポシドの組み合わせに移行させ、さらに、2014年5月~2014年6月までパクリタキセルに移行させた。2014年9月に、患者はサシツズマブゴビテカンを開始し、持続的反応を達成した。ベースライン及び合計が230mmから138mmに低減(40%縮小)した治療の2か月後からの5つの標的病変のうちの4つのCT画像を示す。(A)ベースライン時で79×65mmという測定値である右副腎腫瘤の軸方向切片、(B)最初の評価で48×26mmへの低減を示す。(C)ベースライン時で52×38mmという測定値である左副腎腫瘤、(D)最初の評価で36×17mm。(E)冠状面に示されるベースライン時の左腋窩腫瘤(60×55mm)及び治療の2か月後(F)(これは30×24mmに縮小した)。(G)冠状面に示される右上葉肺腫瘤(21×12mm)。16×12mmに縮小した(H)。(I)陰性~3+の腫瘍細胞の範囲染色を有するが、全体として2+とスコア化された、Trop-2について染色された肺生検の免疫組織像。
【発明を実施するための形態】
【0017】
定義
別段の指定がない限り、「a」または「an」は1つまたは複数を意味する。
【0018】
本明細書で使用する場合、「約」は、プラスまたはマイナス10%を意味する。例えば、「約100」は90~110の間の任意の数を含むであろう。
【0019】
本明細書に記載の抗体は、完全長(すなわち、天然に存在するか、通常の免疫グロブリン遺伝子断片組換え方法によって形成される)免疫グロブリン分子(例えば、IgG抗体)、または免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な(すなわち、特異的に結合する)部分、例えば抗体断片を指す。
【0020】
抗体断片は、抗体の一部であり、例えば、F(ab’)、Fab’、Fab、Fv、sFvなどである。抗体断片は、以下に述べるように、単一ドメイン抗体及びIgG4半分子を含むこともできる。構造にかかわらず、抗体断片は、完全長抗体によって認識されるのと同じ抗原と結合する。用語「抗体断片」は、抗体の可変領域からなる単離断片、例えば、重鎖及び軽鎖の可変領域からなる「Fv」断片ならびにペプチドリンカーによって軽可変領域及び重可変領域が結合している組換え単鎖ポリペプチド分子(「scFvタンパク質」)も含む。
【0021】
キメラ抗体は、1つの種に由来する抗体、好ましくは、げっ歯類抗体の相補性決定領域(CDR)を含む可変ドメインを含むが、抗体分子の定常ドメインはヒト抗体のものに由来する、組換えタンパク質である。獣医学の用途については、キメラ抗体の定常ドメインは、他の種、例えば、ネコまたはイヌに由来してもよい。
【0022】
ヒト化抗体は、1つの種に由来する抗体、例えば、げっ歯類抗体からのCDRが、げっ歯類抗体の重可変鎖及び軽可変鎖からヒトの重可変ドメイン及び軽可変ドメイン(例えば、フレームワーク領域配列)に移されている組換えタンパク質である。抗体分子の定常ドメインはヒト抗体のものに由来する。ある特定の実施形態では、親(げっ歯類)抗体由来の限られた数のフレームワーク領域アミノ酸残基を、ヒト抗体フレームワーク領域配列中に置換することができる。
【0023】
ヒト抗体は、例えば、抗原負荷に応じて特定のヒト抗体を産生するように「操作されている」トランスジェニックマウスから得られる抗体である。この技法では、ヒト重鎖及び軽鎖座位の要素が、内在性のマウス重鎖及び軽鎖座位の標的破壊を含む胚性幹細胞株に由来するマウス系統に導入される。トランスジェニックマウスは、特定の抗原に対して特異的なヒト抗体を合成することができ、このマウスを使用して、ヒト抗体分泌ハイブリドーマを生成することができる。トランスジェニックマウスからヒト抗体を得る方法は、Green et al.,Nature Genet.7:13(1994),Lonberg et al.,Nature 368:856(1994)、及びTaylor et al.,Int.Immun.6:579(1994)によって記載されている。遺伝子または染色体のトランスフェクション方法、及びファージディスプレイ技術によっても、完全ヒト抗体を構築することができ、それらすべては当技術分野で既知である。免疫化されたドナー由来の免疫グロブリン可変ドメイン遺伝子レパートリーからのヒト抗体及びその断片のインビトロ生成について、例えば、McCafferty et al.,Nature 348:552-553(1990)を参照されたい。この技法では、抗体可変ドメイン遺伝子が線維状バクテリオファージのメジャーまたはマイナーコートタンパク質遺伝子のいずれかにインフレームでクローニングされ、ファージ粒子の表面上に機能的な抗体断片として提示される。糸状粒子がファージゲノムの一本鎖DNAコピーを含むので、抗体の機能的特性に基づく選抜もそうした特性を示す抗体をコードする遺伝子の選抜をもたらす。このようにして、ファージはB細胞の特性のいくつかを模倣する。ファージディスプレイは様々な型式で行うことができ、総説として、例えば、Johnson and Chiswell,Current Opinion in Structural Biology 3:5564-571(1993)を参照されたい。ヒト抗体は、インビトロ活性化B細胞によって生成することもできる。その実施例セクションが参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,567,610号及び第5,229,275号を参照されたい。
【0024】
治療剤は、抗体部分と別々に、同時にもしくは連続して投与される、または抗体部分、すなわち、抗体もしくは抗体断片または細断片にコンジュゲートされている、化合物、分子または原子であり、疾患の治療に有用である。治療剤の例としては、抗体、抗体断片、薬物、毒素、ヌクレアーゼ、ホルモン、免疫調節剤、アポトーシス促進剤、抗血管新生剤、ホウ素化合物、光活性薬剤または色素及び放射性同位体が挙げられる。有用な治療剤は、以下により詳細に記載されている。
【0025】
免疫複合体は、少なくとも1つの治療剤及び/または診断剤にコンジュゲートした、抗体、抗体断片または融合タンパク質である。
【0026】
多重特異性抗体は、構造が異なる少なくとも2つの標的、例えば、2つの異なる抗原、同じ抗原上の2つの異なるエピトープ、あるいはハプテン及び/または抗原もしくはエピトープに同時に結合することができる抗体である。多特異性多価抗体は、1つより多い結合部位を有するコンストラクトであり、結合部位は特異性が異なる。
【0027】
二重特異性抗体は、2つの異なる標的に同時に結合することができる抗体である。二重特異性抗体(bsAb)及び二重特異性抗体断片(bsFab)は、例えば腫瘍関連抗原に特異的に結合する少なくとも1つのアーム及び治療剤または診断剤を有する標的化可能なコンジュゲートに特異的に結合する少なくとももう1つのアームを有することができる。分子工学を使用して、様々な二重特異性融合タンパク質を生成することができる。
【0028】
抗Trop-2抗体
主題のADCは、Trop-2に結合する抗体またはその断片を含むことができる。特定の好ましい実施形態では、抗Trop-2抗体は、軽鎖CDR配列CDR1(KASQDVSIAVA、配列番号1)、CDR2(SASYRYT、配列番号2)及びCDR3(QQHYITPLT、配列番号3)、ならびに重鎖CDR配列CDR1(NYGMN、配列番号4)、CDR2(WINTYTGEPTYTDDFKG、配列番号5)及びCDR3(GGFGSSYWYFDV、配列番号6)を含む、ヒト化RS7抗体(例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第7,238,785号を参照されたい)でもよい。
【0029】
RS7抗体は、ヒト原発性扁平上皮細胞肺癌の粗製の膜調製物に対して産生させたマウスIgGであった(Stein et al.,Cancer Res.50:1330,1990)。RS7抗体は、クラスター13として特徴づけられる46~48kDaの糖タンパク質を認識する(Stein et al.,Int.J.Cancer Supp.8:98-102,1994)。抗原は、EGP-1(上皮糖タンパク質-1)と呼ばれたが、Trop-2とも称される。
【0030】
Trop-2はI型膜貫通タンパク質であり、ヒト(Fornaro et al.,Int J Cancer 1995;62:610-8)及びマウス細胞(Sewedy et al.,Int J Cancer 1998;75:324-30)の両方からクローニングされた。腫瘍関連カルシウムシグナルトランスデューサーとしてのその役割(Ripani et al.,Int J Cancer 1998;76:671-6)に加えて、ヒトTrop-2の発現が、結腸癌細胞の腫瘍発生及び侵襲性に必要であることが示され、これは、Trop-2の細胞外ドメインに対するポリクローナル抗体で効果的に低減させることができた(Wang et al.,Mol Cancer Ther 2008;7:280-5)。
【0031】
固形がんに対する治療標的としてのTrop-2への興味の高まり(Cubas et al.,Biochim Biophys Acta 2009;1796:309-14)は、乳房(Huang et al., Clin Cancer Res 2005;11:4357-64)、結腸直腸(Ohmachi et al., Clin Cancer Res 2006;12:3057-63、Fang et al., Int J Colorectal Dis 2009;24:875-84)及び口腔扁平上皮細胞(Fong et al.,Modern Pathol 2008;21:186-91)の癌腫において過剰発現しているTrop-2の臨床的意義を実証づけたさらなる報告によって証明される。高レベルのTrop-2を発現する前立腺基底細胞がインビトロ及びインビボでの幹様活性について強化されているという最新の証拠は、特に注目すべきである(Goldstein et al.,Proc Natl Acad Sci USA 2008;105:20882-7)。
【0032】
フローサイトメトリー及び免疫組織化学染色研究によって、RS7 MAbが様々な腫瘍タイプに関する抗原を検出し、正常ヒト組織への結合は制限されていることが示された(Stein et al.,1990)。Trop-2は、肺、胃、膀胱、乳房、卵巣、子宮及び前立腺の癌腫などの癌腫が主に発現している。動物モデルにおいて放射標識されたマウスRS7 MAbを使用する局在及び療法の研究によって、腫瘍標的化及び治療効力が示された(Stein et al.,1990、Stein et al.,1991)。
【0033】
肺、乳房、膀胱、卵巣、子宮、胃及び前立腺由来の腫瘍において、強いRS7染色が示された(Stein et al.,Int.J.Cancer 55:938,1993)。肺癌の場合は、扁平上皮癌及び腺癌の両方を含んでいた(Stein et al.,Int.J.Cancer 55:938,1993)。両方の細胞型は強く染色され、これは、RS7抗体が肺の非小細胞癌の組織学的クラスを区別しないことを示す。
【0034】
RS7 MAbは、標的細胞中に迅速に内部移行される(Stein et al.,1993)。RS7 MAbの内部移行速度定数は、2つの他の迅速に内部移行するMAbの内部移行速度定数の中間であり、これは、免疫毒素生成に有用であることが示された(同上)。免疫毒素コンジュゲートの内部移行が抗腫瘍活性のための必要条件であることが十分に実証づけされている(Pastan et al.,Cell 47:641,1986)。薬物免疫複合体の内部移行は、抗腫瘍効力の主要因子として説明された(Yang et al.,Proc.Nat’l Acad. Sci.USA 85:1189,1988)。したがって、RS7抗体は治療適用のためのいくつかの重要な特性を示す。
【0035】
hRS7抗体が好ましいが、他の抗Trop-2抗体が知られており、及び/または公的に入手可能であり、代替の実施形態では、主題のADCにおいて利用することができる。ヒト化抗体またはヒト抗体が免疫原性の低減に好ましいが、代替の実施形態では、キメラ抗体も有用であり得る。以下に述べるように、抗体のヒト化方法は当技術分野で周知であり、入手可能なマウス抗体またはキメラ抗体をヒト化形態に変換するのに利用することができる。
【0036】
抗Trop-2抗体はいくつかの供給源から市販されており、これには、LS-C126418、LS-C178765、LS-C126416、LS-C126417(LifeSpan BioSciences,Inc.,Seattle,WA);10428-MM01、10428-MM02、10428-R001、10428-R030(Sino Biological Inc.,Beijing,China);MR54(eBioscience,San Diego,CA);sc-376181、sc-376746、Santa Cruz Biotechnology(Santa Cruz,CA);MM0588-49D6、(Novus Biologicals,Littleton,CO);ab79976及びab89928(ABCAM(登録商標)、Cambridge,MA)が含まれる。
【0037】
他の抗Trop-2抗体が特許文献に開示されている。例えば、米国公開第2013/0089872号は、抗Trop-2抗体K5-70(受託番号FERM BP-11251)、K5-107(受託番号FERM BP-11252)、K5-116-2-1(受託番号FERM BP-11253)、T6-16(受託番号FERM BP-11346)及びT5-86(受託番号FERM BP-11254)を開示し、これらは、特許生物寄託センター、筑波、日本に寄託された。米国特許第5,840,854号は、抗Trop-2モノクローナル抗体BR110(ATCC番号HB11698)を開示した。米国特許第7,420,040号はハイブリドーマ細胞株AR47A6.4.2によって産生された抗Trop-2抗体を開示しており、これは、受託番号141205-05としてIDAC(カナダ国際寄託機関(International Depository Authority of Canada)、Winnipeg,Canada)に寄託された。米国特許第7,420,041号はハイブリドーマ細胞株AR52A301.5によって産生された抗Trop-2抗体を開示し、これは、受託番号141205-03としてIDACに寄託された。米国公開第2013/0122020号は、抗Trop-2抗体3E9、6G11、7E6、15E2、18B1を開示した。代表的な抗体をコードするハイブリドーマは、アメリカ培養細胞系統保存機関(ATCC)に受託番号PTA-12871及びPTA-12872で寄託された。米国特許第8,715,662号は、寄託番号PD08019、PD08020及びPD08021でAID-ICLC(Genoa,Italy)に寄託されたハイブリドーマによって産生される抗Trop-2抗体を開示している。米国特許出願公開第20120237518号は、抗Trop-2抗体77220、KM4097及びKM4590を開示している。米国特許第8,309,094号(Wyeth)は、配列表で特定される抗体A1及びA3を開示している。本段落の上記で引用した各特許または特許出願の実施例セクションは、参照によって本明細書に組み込まれる。非特許文献Lipinski et al.(1981,Proc Natl.Acad Sci USA,78:5147-50)は、抗Trop-2抗体162-25.3及び162-46.2を開示した。
【0038】
多数の抗Trop-2抗体が当技術分野で既知であり、及び/または公的に入手可能である。以下に述べるように、既知の抗原に対する抗体の調製方法は、当技術分野で慣例的であった。ヒトTrop-2タンパク質の配列も当技術分野で既知であった(例えば、GenBank受託番号CAA54801.1を参照されたい)。ヒト化抗体、ヒト抗体またはキメラ抗体を生成する方法も既知であった。当業者は、当技術分野で一般的知識に照らして本開示を読めば、主題のADCにおいて抗Trop-2抗体の部類を作製及び使用することができたであろう。
【0039】
抗Trop-2抗体の使用がADC以外の免疫治療剤ために開示された。マウスIgG2a抗体エドレコロマブ(パノレックス(登録商標))が結腸直腸癌の治療に使用されたが、このマウス抗体は、ヒトの臨床的使用にあまり適していない(Baeuerle & Gires,2007,Br.J Cancer 96:417-423)。エドレコロマブの低用量は、皮下投与はワクチン抗原に対して液性免疫応答を誘導することが報告された(Baeuerle & Gires,2007)。完全ヒト抗Trop-2抗体であるアデカツムマブ(MT201)は転移性乳癌及び初期の前立腺癌で使用されており、ADCC及びCDC活性を介して作用すると報告されている(Baeuerle & Gires,2007)。単鎖の抗Trop-2/抗CD3二重特異性抗体コンストラクトであるMT110は、卵巣癌に対する効力が報告された(Baeuerle & Gires,2007)。Trop-2、CD3及びFc受容体に対して結合親和性を有するハイブリッドマウス/ラット抗体であるカツマキソマブは、卵巣癌に対して活性であることが報告された(Baeuerle & Gires,2007)。Pseudomonas外毒素に融合した抗Trop-2単鎖抗体を含む免疫毒素であるプロキシニウム(Proxinium)は、頭頸部癌及び膀胱癌で試験された(Baeuerle & Gires,2007)。これらの研究のどれも、抗Trop-2抗体-薬物コンジュゲートの使用のいかなる開示も含んでいなかった。
【0040】
カンプトテシンコンジュゲート
抗体または抗原結合抗体断片に結合したカンプトテシン治療剤を含む免疫複合体を調製するための非限定な方法及び組成物は、以下に記載される。好ましい実施形態では、定められたポリエチレングリコール(PEG)部分(すなわち、定められた数の単量体単位を含むPEG)を薬物と抗体の間に配置することによって薬物の溶解度が高められ、ここで、定められたPEGは好ましくは1~30単量体単位を含む、より好ましくは1~12単量体単位を含む、最も好ましくは6~8単量体単位を含む、低分子量PEGである。
【0041】
好ましくは、第1のリンカーは一端で薬物を結合し、もう一端でアセチレンまたはアジド基で終結し得る。この第1のリンカーは、一端にアジドまたはアセチレン基を、もう一端に異なる反応基、例えばカルボン酸またはヒドロキシル基を有する定められたPEG部分を含むことができる。上記二官能性の定められたPEGをアミノアルコールのアミン基に結合させることができ、後者のヒドロキシル基をカルボネートの形態の薬物のヒドロキシル基に結合させることができる。あるいは、上記で定められた二官能性PEGの非アジド(またはアセチレン)部分を、場合により、L-アミノ酸またはポリペプチドのN末端に結合させ、C末端をアミノアルコールのアミノ基に結合させ、後者のヒドロキシ基をそれぞれカルボネートまたはカルバメートの形態の薬物のヒドロキシル基に結合させる。
【0042】
抗体カップリング基及び第1のリンカーのアジド(またはアセチレン)基に相補的な反応基、すなわちアセチレン(またはアジド)を含む第2のリンカーは、アセチレン-アジド環化付加反応を介して薬物-(第1のリンカー)コンジュゲートと反応して、疾患標的化抗体にコンジュゲートするのに有用な最終的な二官能性薬物生成物を提供することができる。抗体カップリング基は、好ましくは、チオールまたはチオール反応基のいずれかである。
【0043】
SN-38などのCPT類似体を含む薬物-リンカー前駆体の調製における、C-20カルボネートの存在下での10-ヒドロキシル基の選択的再生方法を以下に提供する。薬物中の反応性ヒドロキシル基、例えばSN-38中のフェノール性ヒドロキシルのための他の保護基、例えばt-ブチルジメチルシリルまたはt-ブチルジフェニルシリルを使用することもでき、これらは、抗体カップリング部分に誘導体化薬物を連結するより前に、テトラブチルアンモニウムフルオリドによって脱保護される。CPT類似体の10-ヒドロキシル基は、代わりに、「BOC」以外のエステルまたはカルボネートとして保護され、その結果、この保護基を先に脱保護することなく二官能性CPTが抗体にコンジュゲートされる。保護基は、バイオコンジュゲートが投与された後に、生理的pH条件下で容易に脱保護される。
【0044】
「クリックケミストリー」と称されるアセチレン-アジドカップリングでは、アジド部がL2にあり、アセチレン部がL3にあってもよい。あるいは、L2がアセチレンを含み、L3がアジドを含んでもよい。「クリックケミストリー」は、アセチレン部分とアジド部分の間の銅(+1)触媒化環化付加反応を指す(Kolb HC and Sharpless KB,Drug Discov Today 2003;8:1128-37)が、クリックケミストリーの別の形態が知られており、これを使用してもよい。クリックケミストリーはほぼ中性のpH条件の水溶液中で生じるので、薬物コンジュゲーションに適用できる。クリックケミストリーの利点は、これが化学選択的であり、チオール-マレイミド反応などの他の周知のコンジュゲーション化学反応を補完することである。
【0045】
例示的な好ましい実施形態は、以下に示す一般式(1)の薬物誘導体と抗体のコンジュゲートを対象とする。
MAb-[L2]-[L1]-[AA]-[A’]-薬物(1)
式中、MAbは疾患標的化抗体であり、L2は、抗体カップリング部分とアセチレン(またはアジド)基の1つまたは複数とを含むクロスリンカーの成分であり、L1は、一端にL2のアセチレン(またはアジド)部分に相補的なアジド(またはアセチレン)を、もう一端にカルボン酸またはヒドロキシル基などの反応基を有する定められたPEGを含み、AAはL-アミノ酸であり、mは0、1、2、3または4の値の整数であり、A’は、エタノールアミン、4-ヒドロキシベンジルアルコール、4-アミノベンジルアルコールまたは置換もしくは無置換のエチレンジアミンの群から選択される付加的なスペーサーである。「AA」のLアミノ酸は、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン及びバリンから選択される。A’基がヒドロキシルを含む場合、これは、それぞれカルボネートまたはカルバメートの形態の薬物のヒドロキシル基またはアミノ基に連結している。
【0046】
式1の好ましい実施形態では、A’はL-アミノ酸に由来する置換エタノールアミンであり、ここで、アミノ酸のカルボン酸基は、ヒドロキシメチル部分に置き換えられている。A’は、以下のL-アミノ酸のうちのいずれか1つに由来してもよい:アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン及びバリン。
【0047】
式1の好ましい実施形態のコンジュゲートの例では、mは0であり、A’はL-バリノールであり、薬物はSN-38で例示される。式1の別の例では、mは1であり、誘導体化L-リジンによって代表され、A’はL-バリノールであり、薬物はSN-38で例示される。本実施形態では、アミド結合は、リジンアミノ基のためのオルソゴナル保護基を使用して、リジンなどのアミノ酸のカルボン酸とバリノールのアミノ基の間で最初に形成される。リジンのN末端の保護基は除去され、リジンの側鎖の保護基はインタクトな状態に保たれ、N末端は、もう一端にアジド(またはアセチレン)を有する定められたPEGのカルボキシル基に結合される。次いで、バリノールのヒドロキシル基が10-ヒドロキシ保護化SN-38の20-クロロホルメート誘導体に結合され、この中間体は、抗体結合部分とクリック環化付加化学反応に関与する相補的なアセチレン(またはアジド)基とを保有するL2成分に結合される。最後に、リジン側鎖とSN-38の両方における保護基の除去によって、本実施例の生成物が得られる。
【0048】
理論に拘束されることを望むものではないが、細胞内のタンパク質分解の後に生成される低分子量SN-38生成物、すなわち、バリノール-SN-38カルボネートは、バリノールのアミノ基及びカルボネートのカルボニルを含む分子内環化を介する、インタクトなSN-38のさらなる遊離経路を有する。
【0049】
別の好ましい実施形態では、一般式1のA’はA-OHであり、A-OHは、4-アミノベンジルアルコールまたはベンジル位においてC-C10アルキル基で置換されている置換4-アミノベンジルアルコールなどの折り畳み可能な部分であり、後者は、そのアミノ基を介して、L-アミノ酸または4つまでのL-アミノ酸部分を含むポリペプチドに結合しており、ここで、N末端は抗体結合基で終結するクロスリンカーに結合している。
【0050】
好ましい実施形態の別の例では、一般式1のA’のA-OHは置換4-アミノベンジルアルコールに由来し、「AA」は、一般式1においてm=1である単一L-アミノ酸から構成され、薬物はSN-38で例示される。AAの単一アミノ酸は、以下のL-アミノ酸のうちのいずれか1つから選択され得る:アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン及びバリン。4-アミノベンジルアルコール部分の置換基R(A’のA-OH実施形態)は、水素またはC1-C10アルキル基から選択されるアルキル基である。単一アミノ酸AAがL-リジンであり、R=Hであり、薬物がSN-38で例示されるこの式の例は、MAb-CL2A-SN-38(以下に示す)と称される。構造は、CL2リンカーで見られるPhe-Lysジペプチドに対する単一リジン残基の置換という点で、リンカーMAb-CL2-SN-38と異なる。Phe-Lysジペプチドは、リソソーム酵素のカテプシンB切断部位として設計され、これは、結合薬物の細胞内放出に重要であると考えられた。驚いたことに、カテプシン切断部位の排除にもかかわらず、CL2Aリンカーを含む免疫複合体は、CL2リンカーを含むものよりも、インビボで明らかに効果的である。
【0051】
【化1】
【0052】
好ましい実施形態では、AAは、細胞内ペプチダーゼによって切断可能なポリペプチド部分、好ましくは、ジ、トリまたはテトラペプチドを含む。例は、Ala-Leu、Leu-Ala-Leu及びAla-Leu-Ala-Leu(配列番号9)(Trouet et al.,1982)である。
【0053】
別の好ましい実施形態では、コンジュゲートのL1成分は、1~30の反復単量体単位を有する定められたポリエチレングリコール(PEG)スペーサーを含む。さらに好ましい実施形態では、PEGは、1~12の反復単量体単位を有する定められたPEGである。PEGの導入は、市販されているヘテロ二官能化PEG誘導体を使用することを含み得る。ヘテロ二官能性PEGは、アジドまたはアセチレン基を含み得る。
【0054】
好ましい実施形態では、L2は、2~40個、好ましくは2~20個、より好ましくは2~5の範囲の複数のアセチレン(またはアジド)基及び単一抗体結合部分を有する。代表例では、「L2」成分が2つのアセチレン基に付加されており、2つのアジド付加SN-38分子の結合がもたらされる。MAbへの結合はスクシンイミドをともない得る。
【0055】
好ましい実施形態では、二官能性薬物が抗体結合基としてチオール反応性部分を含む場合、抗体のチオールは、チオール化試薬を使用して抗体のリジン基に生成される。MAbのリジン基の修飾によって抗体にチオール基を導入するための方法は、当技術分野で周知である(Wong in Chemistry of protein conjugation and cross-linking,CRC Press,Inc.,Boca Raton,FL(1991),pp20-22)。あるいは、ジチオスレイトール(DTT)などの還元剤を使用する、抗体の鎖間ジスルフィド結合の穏やかな還元(Willner et al.,Bioconjugate Chem.4:521-527(1993))によって、抗体に7~10個のチオールを生成することができ、これは、抗原結合領域から離れたMAbの鎖間領域に複数の薬物部分を組み入れるという利点がある。より好ましい実施形態では、還元されたジスルフィドスルフヒドリル基へのSN-38の結合は、抗体分子あたり共有結合した6~8個のSN-38部分を有する抗体-SN-38免疫複合体の形成をもたらす。システイン操作されている抗体の使用など、薬物または他の治療剤の結合のためのシステイン残基を提供する他の方法が既知である(その実施例セクションが参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第7,521,541号を参照されたい)。
【0056】
代替の好ましい実施形態では、化学療法剤部分は、ドキソルビシン(DOX)、エピルビシン、モルホリノドキソルビシン(モルホリノ-DOX)、シアノモルホリノ-ドキソルビシン(シアノモルホリノ-DOX)、2-ピロリノド-ドキソルビシン(2-PDOX)、Pro-2PDOX、CPT、10-ヒドロキシカンプトテシン、SN-38、トポテカン、ラルトテカン、9-アミノカンプトテシン、9-ニトロカンプトテシン、タキサン、ゲルダナマイシン、アンサマイシン及びエポチロンからなる群から選択される。より好ましい実施形態では、化学療法剤部分はSN-38である。好ましくは、好ましい実施形態のコンジュゲートでは、抗体は、少なくとも1つの化学療法剤部分、好ましくは1個~約12個の化学療法剤部分、最も好ましくは約6個~約8個の化学療法剤部分に連結する。
【0057】
さらに、好ましい実施形態では、リンカー成分「L2」は、上記抗体の1つまたは複数のリジン側鎖アミノ基に導入されたチオール反応性残基と反応するチオール基を含む。そのような場合では、抗体は、当技術分野で十分に説明されている手順によって、マレイミド、ビニルスルホン、ブロモアセトアミドまたはヨードアセトアミドなどのチオール反応基で事前に誘導体化される。
【0058】
本発明において、CPTが10-ヒドロキシル基をさらに有するCPT薬物-リンカーを調製することができる方法が驚いたことに発見された。この方法は、限定されないが、t-ブチルオキシカルボニル(BOC)誘導体としての10-ヒドロキシル基の保護、それに続く、薬物-リンカーコンジュゲートの最後から2番目の中間体の調製を含む。通常、BOC基の除去はトリフルオロ酢酸(TFA)などの強酸による処理を必要とする。こうした条件下で、除去される保護基を含むCPT20-O-リンカーカルボネートも切断を受けやすく、それによって、未修飾のCPTを生じさせる。実際に、リンカー分子のリジン側鎖のために穏やかに除去可能なメトキシトリチル(MMT)保護基を使用することについての理論的根拠は、当技術分野で明確に述べられているように、まさにこの可能性を回避することであった(Walker et al.,2002)。フェノール系BOC保護基の選択的除去は、短期間、最適には3~5分間反応を行うことによって可能であることが発見された。こうした条件下で、主な生成物は、10-ヒドロキシル位の「BOC」が除去されているが、「20」位のカルボネートはインタクトであるものであった。
【0059】
代替のアプローチは、最終生成物が、10-OH保護基を脱保護する必要なしに抗体へのコンジュゲーションの準備ができているように、「BOC」以外の基でCPT類似体の10-ヒドロキシ位を保護することを含む。10-OHをフェノール系カルボネートまたはフェノール系エステルに変換する10-ヒドロキシ保護基は、コンジュゲートのインビボ投与後に、生理的pH条件によって、またはエステラーゼによって、容易に脱保護される。生理的条件下における10-ヒドロキシカンプトテシンの20位の三級カルボネートと比べて10位のフェノール系カルボネートの急速な除去が、He et al.(He et al.,Bioorganic & Medicinal Chemistry 12:4003-4008(2004))によって、記載されている。SN-38の10-ヒドロキシ保護基は「COR」でもよく、式中、Rは置換アルキル、例えば「N(CH-(CH-」(式中、nは1~10であり、末端アミノ基は、場合により、水溶解度を高めるために四級塩の形態である)でもよく、または単純アルキル残基、例えば「CH-(CH-」(式中、nは0~10である)の形態であり、またはこれは、アルコキシ部分、例えば、「CH-(CH)n-O-」(式中、nは0~10)もしくは「N(CH-(CH-O-」(式中nは2~10)もしくは「RO-(CH-CH-O)-CH-CH-O-」(式中、Rはエチルまたはメチルであり、nは0~10の値の整数である)でもよい。これらの10-ヒドロキシ誘導体は、最終誘導体がカルボネートになる場合、選択される試薬のクロロホルメートによる処理によって容易に調製される。典型的には、SN-38などの10-ヒドロキシ含有カンプトテシンは、塩基としてトリエチルアミンを使用して、モル当量のクロロホルメートのジメチルホルムアミド溶液で処理される。これらの条件下で、20-OH位は影響を受けない。10-O-エステルを形成するために、選択される試薬の酸塩化物が使用される。
【0060】
一般式1の薬物誘導体と抗体のコンジュゲートの調製の好ましい方法(記述子L2、L1、AA及びA~Xは以前のセクションに記載されている通りである)では、二官能性薬物部分、[L2]-[L1]-[AA]-[A-X]-薬物が最初に調製され、続いて、抗体(本明細書で「MAb」と示す)への二官能性薬物部分のコンジュゲーションが起こる。
【0061】
一般式1の薬物誘導体と抗体のコンジュゲートの調製の好ましい方法(記述子L2、L1、AA及びA-OHは以前のセクションに記載されている通りである)では、最初にアミド結合を介してAAのC末端にA-OHを連結し、続いて、L1のカルボン酸基にAAのアミン末端をカップリングさせることによって、二官能性薬物部分が調製される。AAが存在しない(すなわちm=0の)場合、A-OHは、アミド結合を介してL1に直接的に結合される。クロスリンカー、[L1]-[AA]-[A-OH]が薬物のヒドロキシルまたはアミノ基に結合され、これに続いて、クリックケミストリーを介してL1及びL2におけるアジド(またはアセチレン)とアセチレン(またはアジド)基の反応を利用して、L1部分への結合が起こる。
【0062】
一実施形態では、抗体はモノクローナル抗体(MAb)である。他の実施形態では、抗体は多価及び/または多特異性MAbでもよい。抗体は、マウス抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体またはヒトモノクローナル抗体でもよく、該抗体は、インタクト、断片(Fab、Fab’、F(ab)、F(ab’))もしくはサブ断片(単鎖コンストラクト)の形態でもよく、またはIgG1、IgG2a、IgG3、IgG4、IgAアイソタイプもしくはそれら由来のサブ分子のものでもよい。
【0063】
抗体調製
Trop-2などの事実上すべての標的抗原に対するモノクローナル抗体を調製するための技法は当技術分野で周知である。例えば、Kohler and Milstein,Nature 256:495(1975)、及びColigan et al.(eds.),CURRENT PROTOCOLS IN IMMUNOLOGY,VOL.1,pages 2.5.1-2.6.7(John Wiley & Sons 1991)を参照されたい。手短に言えば、モノクローナル抗体は、抗原を含む組成物をマウスに注射すること、脾臓を取り出してBリンパ球を得、Bリンパ球を骨髄腫細胞と融合してハイブリドーマを生成し、ハイブリドーマをクローン化し、抗原に対して抗体を産生する陽性クローンを選抜し、抗原に対して抗体を産生するクローンを培養し、ハイブリドーマ培養から抗体を単離することによって、得ることができる。
【0064】
様々な確立された技法によって、MAbをハイブリドーマ培養から単離及び精製することができる。そのような単離技法としては、プロテイン-Aまたはプロテイン-Gセファロースを用いるアフィニティークロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー及びイオン交換クロマトグラフィーが挙げられる。例えば、Coligan at pages 2.7.1-2.7.12 and pages 2.9.1-2.9.3を参照されたい。Baines et al.,“Purification of Immunoglobulin G(IgG),”in METHODS IN MOLECULAR BIOLOGY,VOL.10,pages 79-104(The Humana Press,Inc.1992)も参照されたい。
【0065】
キメラ抗体またはヒト化抗体の生成などの様々な技法は、抗体のクローニング及び構築の手順を含み得る。目的の抗体に対する抗原結合Vκ(可変軽鎖)及びV(可変重鎖)配列は、様々な分子クローニング手順、例えば、RT-PCR、5’-RACE及びcDNAライブラリースクリーニングによって得ることができる。マウスMAbを発現する細胞由来のMAbのV遺伝子は、PCR増幅によってクローニングし、シークエンスすることができる。それらの確実性を確証するために、Orlandi et al.,(Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,86:3833(1989))によって記載されているように、クローニングしたV及びV遺伝子をキメラAbとして細胞培養中で発現させることができる。次いで、Leung et al.(Mol.Immunol.,32:1413(1995))によって記載されているように、V遺伝子配列に基づいて、ヒト化MAbを設計及び構成することができる。
【0066】
一般的な分子クローニング技法(Sambrook et al.,Molecular Cloning,A laboratory manual,2nd Ed(1989))によって、マウスMAbを産生する任意の既知のハイブリドーマ株またはトランスフェクトされた細胞株からcDNAを調製することができる。MAbのVκ配列は、プライマーのVK1BACK及びVK1FOR(Orlandi et al.,1989)またはLeung et al.(BioTechniques,15:286(1993))によって記載された伸長プライマーセットを使用して増幅することができる。V配列は、プライマー対のVH1BACK/VH1FOR(Orlandi et al.,1989)またはLeung et al.(Hybridoma,13:469(1994))によって記載されたマウスIgGの定常領域にアニーリングするプライマーを使用して、増幅することができる。ヒト化V遺伝子は、Leung et al.(Mol.Immunol.,32:1413(1995))によって記載されているように、長いオリゴヌクレオチド鋳型の合成及びPCR増幅の組み合わせによって構築することができる。
【0067】
VκについてのPCR産物は、ステージングベクター、例えば、Igプロモーター、シグナルペプチド配列及び簡便な制限部位を含む、pBR327系ステージングベクター、VKpBRにサブクローニングすることができる。VについてのPCR産物は、同様のステージングベクター、例えば、pBluescript系VHpBSにサブクローニングすることができる。プロモーター及びシグナルペプチド配列とともにVκ及びV配列を含む発現カセットをVKpBR及びVHpBSから及び切除し、適切な発現ベクター、例えば、それぞれpKh及びpG1gにライゲーションすることができる(Leung et al.,Hybridoma,13:469(1994))。発現ベクターを適切な細胞にコトランスフェクトすることができ、キメラMAb、ヒト化MAbまたはヒトMAbの産生について上清液をモニターすることができる。あるいは、Gillies et al.(J.Immunol.Methods 125:191(1989)によって記載されているように、さらに、Losman et al.,Cancer,80:2660(1997)でも示される))で示されるように、Vκ及びVの発現カセットを切除し、単一発現ベクター、例えばpdHL2にサブクローニングすることができる。
【0068】
代替の実施形態では、血清フリー培地におけるトランスフェクション、増殖及び発現に事前に適合されている宿主細胞に発現ベクターをトランスフェクトすることができる。使用することができる例示的細胞株としては、Sp/EEE、Sp/ESF及びSp/ESF-X細胞株が挙げられる(例えば、米国特許第7,531,327号、第7,537,930号及び第7,608,425号を参照されたい。これらの実施例セクションは参照によって本明細書に組み込まれる)。これらの例示的細胞株はSp2/0骨髄腫細胞株に基づいており、突然変異Bcl-EEE遺伝子でトランスフェクトされており、トランスフェクト遺伝子配列を増幅するためにメトトレキサートに曝露されており、タンパク質発現のための血清フリー細胞株に事前に適合させられている。
【0069】
キメラ抗体
キメラ抗体は、ヒト抗体の可変領域が、例えば、マウス抗体の相補性決定領域(CDR)を含む、マウス抗体の可変領域に置き換えられている、組換えタンパク質である。キメラ抗体は、対象に投与された場合に、免疫原性の低下及び安定性の増大を示す。マウス免疫グロブリン可変ドメインをクローニングするための一般的な技法は、例えば、Orlandi et al.,Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 6:3833(1989)に開示されている。キメラ抗体を構築するための技法は当業者に既知である。一例を挙げると、Leung et al.,Hybridoma 13:469(1994)は、抗CD22モノクローナル抗体であるマウスLL2のVκ及びVドメインをコードするDNA配列をそれぞれのヒトκ及びIgG定常領域ドメインと組み合わせることによって、LL2キメラを生成した。
【0070】
ヒト化抗体
主題のADCは、Trop-2に結合する抗体またはその断片を含むことができる。特定の好ましい実施形態では、抗Trop-2抗体は軽鎖CDR配列CDR1(KASQDVSIAVA、配列番号1)、CDR2(SASYRYT、配列番号2)及びCDR3(QQHYITPLT、配列番号3)、ならびに重鎖CDR配列CDR1(NYGMN、配列番号4)、CDR2(WINTYTGEPTYTDDFKG、配列番号5)及びCDR3(GGFGSSYWYFDV、配列番号6)を含む、ヒト化RS7抗体(例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第7,238,785号を参照されたい)でもよい。
【0071】
ヒト化MAbを生成するための技法は当技術分野で周知である(例えば、Jones et al.,Nature 321:522(1986)、Riechmann et al.,Nature 332:323(1988)、Verhoeyen et al.,Science 239:1534(1988)、Carter et al.,Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 89:4285(1992)、Sandhu,Crit.Rev.Biotech.12:437(1992)、及びSinger et al.,J.Immun.150:2844(1993)を参照されたい)。マウス免疫グロブリンの重可変鎖及び軽可変鎖からヒト抗体の対応する可変ドメインにマウスCDRを移すことによって、キメラまたはマウスのモノクローナル抗体をヒト化することができる。キメラモノクローナル抗体中のマウスフレームワーク領域(FR)もヒトFR配列で置き換えられる。マウスCDRをヒトFRに単純に移すことは、抗体親和性の低減または喪失さえもたらすことが多いので、マウス抗体の本来の親和性を回復するために、さらなる改変が必要とされる可能性がある。これは、そのエピトープに対して良好な結合親和性を有する抗体を得るために、FR領域中の1つまたは複数のヒト残基をそれらのマウスの対応物で置き換えることによって達成することができる。例えば、Tempest et al.,Biotechnology 9:266(1991) and Verhoeyen et al.,Science 239:1534(1988)を参照されたい。置換のための好ましい残基としては、CDR残基側鎖の1、2または3オングストローム以内に位置する、CDR配列に隣接して位置する、またはCDR残基と相互作用することが予想される、FR残基が挙げられる。
【0072】
ヒト抗体
コンビナトリアルアプローチまたはヒト免疫グロブリン座位で形質転換されたトランスジェニック動物のいずれかを使用して完全ヒト抗体を生成するための方法が、当技術分野で既知である(例えば、Mancini et al.,2004,New Microbiol.27:315-28、Conrad and Scheller,2005,Comb.Chem.High Throughput Screen.8:117-26、Brekke and Loset,2003,Curr.Opin.Pharmacol.3:544-50)。完全ヒト抗体は、遺伝子または染色体のトランスフェクション方法、及びファージディスプレイ技術によって構築することもでき、これらすべては当技術分野で既知である。例えば、McCafferty et al.,Nature 348:552-553(1990)を参照されたい。そのような完全ヒト抗体は、キメラ抗体またはヒト化抗体よりもさらに少ない副作用しか示さないこと、及び実質的に内在性のヒト抗体としてインビボで機能することが期待される。
【0073】
一代替法では、ヒト抗体を生成するためにファージディスプレイ技法を使用することができる(例えば、Dantas-Barbosa et al.,2005,Genet.Mol.Res.4:126-40)。ヒト抗体は、正常なヒトから、または特定の病態、例えばがんを示すヒトから生成することができる(Dantas-Barbosa et al.,2005)。病的な個体からヒト抗体を構築することの利点は、循環抗体レパートリーが疾患関連抗原に対する抗体に偏る可能性があるということである。
【0074】
この方法体系の1つの非限定例では、Dantas-Barbosa et al.(2005)が骨肉腫患者由来のヒトFab抗体断片のファージディスプレイライブラリーを構築した。一般に、全RNAは循環血リンパ球から得られた(同上)。組換えFabがμ、γ及びκ鎖抗体レパートリーからクローニングされ、ファージディスプレイライブラリーに挿入された(同上)。RNAがcDNAに変換され、重鎖及び軽鎖免疫グロブリン配列に対して特異的プライマー(Marks et al.,1991,J.Mol.Biol.222:581-97)を使用してFab cDNAライブラリーを作製するのに使用された。ライブラリー構築は、Andris-Widhopf et al.(2000,In:Phage Display Laboratory Manual,Barbas et al.(eds),1st edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY pp.9.1 to 9.22)に従って行われた。最終的なFab断片が制限エンドヌクレアーゼで消化され、バクテリオファージゲノムに挿入されて、ファージディスプレイライブラリーが作製された。そのようなライブラリーは、当技術分野で既知の標準的なファージディスプレイ方法によってスクリーニングすることができる。ファージディスプレイは様々な型式で行うことができ、それらの総説について、例えば、Johnson and Chiswell,Current Opinion in Structural Biology 3:5564-571(1993)を参照されたい。
【0075】
ヒト抗体は、インビトロ活性化B細胞によって生成することもできる。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第5,567,610号及び第5,229,275号を参照されたい。これらの技法は例示的であり、ヒト抗体または抗体断片を作製及びスクリーニングための任意の既知の方法を利用することができることを当業者は理解するであろう。
【0076】
別の代替法では、ヒト抗体を産生するように遺伝子操作されているトランスジェニック動物を使用して、標準的な免疫化プロトコールを使用して、実質的にすべての免疫原性標的に対する抗体を生成することができる。トランスジェニックマウスからヒト抗体を得るための方法は、Green et al.,Nature Genet.7:13(1994)、Lonberg et al.,Nature 368:856(1994)、及びTaylor et al.,Int.Immun.6:579(1994)によって開示されている。そのようなシステムの非限定例は、Abgenix(Fremont,CA)のXENOMOUSE(登録商標)(例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Green et al.,1999,J.Immunol.Methods 231:11-23)である。XENOMOUSE(登録商標)及び同様の動物では、マウス抗体遺伝子が失活させられ、機能的ヒト抗体遺伝子に置き換えられているが、マウス免疫系の残部はインタクトなままである。
【0077】
XENOMOUSE(登録商標)は、アクセサリー遺伝子及び調節配列とともに可変領域配列の大部分を含むヒトIgH及びIgkappa座位の一部を含む生殖系列配置YAC(酵母人工染色体)で形質転換された。ヒト可変領域レパートリーを使用して、抗体産生B細胞を生成することができ、これは、既知の技法によってハイブリドーマに加工することができる。標的抗原で免疫化されたXENOMOUSE(登録商標)は、通常の免疫応答によってヒト抗体を産生し、これは、上述した標準的な技法によって収集する及び/または産生させることができる。XENOMOUSE(登録商標)の様々な系統が利用可能であり、それらのそれぞれは、異なるクラスの抗体を産生することができる。トランスジェニックにより生成されたヒト抗体は、治療的可能性を有し、同時に通常のヒト抗体の薬物動態特性を保持することが示された(Green et al.,1999)。請求される組成物及び方法はXENOMOUSE(登録商標)システムの使用に限定されるのではなくて、ヒト抗体を産生するように遺伝子操作されている任意のトランスジェニック動物を利用することができることを当業者は理解するであろう。
【0078】
既知の抗体及び標的抗原
上述したように、好ましい実施形態では、ADCはがんの治療に有用である。ある特定の実施形態では、標的のがんは1種または複数の腫瘍関連抗原(TAA)を発現し得る。がんの療法に有用であり得る特定の抗体としては、限定されないが、LL1(抗CD74)、LL2またはRFB4(抗CD22)、ベルツズマブ(hA20、抗CD20)、リツキシマブ(抗CD20)、オビヌツズマブ(GA101、抗CD20)、ランブロリズマブ(抗PD-1受容体)、ニボルマブ(抗PD-1受容体)、イピリムマブ(抗CTLA-4)、RS7(抗上皮糖タンパク質-1(EGP-1、Trop-2としても知られる))、PAM4またはKC4(両方とも抗ムチン)、MN-14(抗癌胎児抗原(CEA、CD66eまたはCEACAM5としても知られる)、MN-15またはMN-3(抗CEACAM6)、Mu-9(抗結腸特異的抗原-p)、Immu31(抗アルファ-フェトプロテイン)、R1(抗IGF-1R)、A19(抗CD19)、TAG-72(例えば、CC49)、Tn、J591またはHuJ591(抗PSMA(前立腺特異的膜抗原))、AB-PG1-XG1-026(抗PSMA二量体)、D2/B(抗PSMA)、G250(抗炭酸脱水酵素IX MAb)、L243(抗HLA-DR)、アレムツズマブ(抗CD52)、ベバシズマブ(抗VEGF)、セツキシマブ(抗EGFR)、ゲムツズマブ(抗CD33)、イブリツモマブチウキセタン(抗CD20);パニツムマブ(抗EGFR);トシツモマブ(抗CD20);PAM4(別名クリバツズマブ、抗ムチン)及びトラスツズマブ(抗ErbB2)が挙げられる。好ましくは、抗体はhRS7抗体である。
【0079】
そのような抗TAA抗体は当技術分野で既知である(例えば、米国特許第5,686,072号、第5,874,540号、第6,107,090号、第6,183,744号、第6,306,393号、第6,653,104号、第6,730,300号、第6,899,864号、第6,926,893号、第6,962,702号、第7,074,403号、第7,230,084号、第7,238,785号、第7,238,786号、第7,256,004号、第7,282,567号、第7,300,655号、第7,312,318号、第7,585,491号、第7,612,180号、第7,642,239、及び米国特許出願公開第20050271671号、第20060193865号、第20060210475号、第20070087001。それぞれの実施例セクションは参照により本明細書に組み込まれる)。有用な特定の既知の抗体としては、hPAM4(米国特許第7,282,567号)、hA20(米国特許第7,151,164号)、hA19(米国特許第7,109,304号)、hIMMU-31(米国特許第7,300,655号)、hLL1(米国特許第7,312,318号)、hLL2(米国特許第5,789,554号)、hMu-9(米国特許第7,387,772号)、hL243(米国特許第7,612,180号)、hMN-14(米国特許第6,676,924号)、hMN-15(米国特許第8,287,865号)、hR1(米国特許第9,441,043号)、hRS7(米国特許第7,238,785号)、hMN-3(米国特許第7,541,440号)、AB-PG1-XG1-026(米国特許出願第11/983,372号、ATCC PTA-4405及びPTA-4406として寄託された)及びD2/B(WO2009/130575)が挙げられ、各列挙した特許または出願の文書は、図及び実施例セクションに関して参照によって本明細書に組み込まれる。
【0080】
標的にされ得る他の有用な腫瘍関連抗原としては、炭酸脱水酵素IX、B7、CCL19、CCL21、CSAp、HER-2/neu、BrE3、CD1、CD1a、CD2、CD3、CD4、CD5、CD8、CD11A、CD14、CD15、CD16、CD18、CD19、CD20(例えば、C2B8、hA20、1F5 MAb)、CD21、CD22、CD23、CD25、CD29、CD30、CD32b、CD33、CD37、CD38、CD40、CD40L、CD44、CD45、CD46、CD47、CD52、CD54、CD55、CD59、CD64、CD67、CD70、CD74、CD79a、CD80、CD83、CD95、CD126、CD133、CD138、CD147、CD154、CEACAM5、CEACAM6、CTLA-4、アルファ-フェトプロテイン(AFP)、VEGF(例えば、アバスチン(登録商標)、フィブロネクチンスプライス変異型)、ED-Bフィブロネクチン(例えば、L19)、EGP-1(Trop-2)、EGP-2(例えば、17-1A)、EGF受容体(ErbB1)(例えば、アービタックス(登録商標))、ErbB2、ErbB3、H因子、FHL-1、Flt-3、葉酸受容体、Ga733、GRO-β、HMGB-1、低酸素誘導因(HIF)、HM1.24、HER-2/neu、ヒストンH2B、ヒストンH3、ヒストンH4、インスリン様増殖因子(ILGF)、IFN-γ、IFN-α、IFN-β、IFN-λ、IL-2R、IL-4R、IL-6R、IL-13R、IL-15R、IL-17R、IL-18R、IL-2、IL-6、IL-8、IL-12、IL-15、IL-17、IL-18、IL-25、IP-10、IgF-1R、Ia、HM1.24、ガングリオシド、HCG、L243が結合するHLA-DR抗原、CD66抗原類、すなわちCD66a-dまたはこれらの組み合わせ、MAGE、mCRP、MCP-1、MIP-1A、MIP-1B、マクロファージ遊走阻止因子(MIF)、MUC1、MUC2、MUC3、MUC4、MUC5ac、胎盤増殖因子(PlGF)、PSA(前立腺特異的抗原)、PSMA、PAM4抗原、PD-1受容体、PD-L1、NCA-95、NCA-90、A3、A33、Ep-CAM、KS-1、Le(y)、メソテリン、S100、テネイシン、TAC、Tn抗原、トーマス-フリーデンライヒ抗原、腫瘍壊死抗原、腫瘍血管新生抗原、TNF-α、TRAIL受容体(R1及びR2)、Trop-2、VEGFR、RANTES、T101、ならびにがん幹細胞抗原、補体因子C3、C3a、C3b、C5a、C5及びがん遺伝子産物が挙げられる。
【0081】
より療法抵抗性の前駆体悪性細胞集団であるとみなされるがん幹細胞(Hill and Perris,J.Natl.Cancer Inst.2007;99:1435-40)は、ある特定のがんタイプにおいて標的にされ得る抗原、例えば、前立腺癌(Maitland et al.,Ernst Schering Found.Sympos.Proc.2006;5:155-79)、非小細胞肺癌(Donnenberg et al.,J.Control Release 2007;122(3):385-91)及び膠芽腫(Beier et al.,Cancer Res.2007;67(9):4010-5)におけるCD133、ならびに結腸直腸癌(Dalerba er al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 2007;104(24)10158-63)、膵臓癌(Li et al.,Cancer Res.2007;67(3):1030-7)及び頭頸部扁平上皮癌(Prince et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 2007;104(3)973-8)におけるCD44を有する。乳癌療法のための別の有用な標的は、Taylor et al.(Biochem.J.2003;375:51-9)によって記載されたLIV-1抗原である。
【0082】
チェックポイント阻害剤抗体が、がん療法で使用されてきた。免疫チェックポイントは、自己免疫寛容を維持すること及び末梢組織損傷を最小限にするために免疫系応答度を調節することに関与する、免疫系における阻害性経路を指す。しかし、腫瘍細胞は、免疫系チェックポイントを活性化させて、腫瘍組織に対する免疫応答の有効性を低下させることもできる。細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CTLA4、CD152としても知られる)、プログラム細胞死タンパク質1(PD1、CD279としても知られる)及びプログラム細胞死1リガンド1(PD-L1、CD274としても知られる)に対する例示的チェックポイント阻害剤抗体は、疾患細胞、組織または病原体に対する免疫応答の有効性を高めるために、1種または複数の他の薬剤と組み合わせて使用することができる。例示的抗PD1抗体としては、ランブロリズマブ(MK-3475、MERCK)、ニボルマブ(BMS-936558、BRISTOL-MYERS SQUIBB)、AMP-224(MERCK)及びピディリズマブ(CT-011、CURETECH LTD.)が挙げられる。抗PD1抗体は、例えば、ABCAM(登録商標)(AB137132)、BIOLEGEND(登録商標)(EH12.2H7、RMP1-14)及びAFFYMETRIX EBIOSCIENCE(J105、J116、MIH4)から市販されている。例示的抗PD-L1抗体としては、MDX-1105(MEDAREX)、MEDI4736(MEDIMMUNE)、MPDL3280A(GENENTECH)及びBMS-936559(BRISTOL-MYERS SQUIBB)が挙げられる。抗PD-L1抗体も、例えば、AFFYMETRIX EBIOSCIENCE(MIH1)から市販されている。例示的抗CTLA4抗体としては、イピリムマブ(Bristol-Myers Squibb)及びトレメリムマブ(PFIZER)挙げられる。抗PD1抗体は、例えば、ABCAM(登録商標)(AB134090)、SINO BIOLOGICAL INC.(11159-H03H、11159-H08H)及びTHERMO SCIENTIFIC PIERCE(PA5-29572、PA5-23967、PA5-26465、MA1-12205、MA1-35914)から市販されている。イピリムマブは、最近、転移性黒色腫の治療についてFDAの承認を受けた(Wada et al.,2013,J Transl Med 11:89)。
【0083】
マクロファージ遊走阻止因子(MIF)は先天免疫及び適応免疫ならびにアポトーシスの重要な制御因子である。CD74がMIFに対する内在性受容体であることが報告されている(Leng et al.,2003,J Exp Med 197:1467-76)。MIF媒介性細胞内経路に対するアンタゴニストの抗CD74抗体の治療効力は、幅広い病態、例えば、膀胱、前立腺、乳房、肺及び結腸のがんの治療に有用であり得る(例えば、Meyer-Siegler et al.,2004,BMC Cancer 12:34、Shachar & Haran,2011,Leuk Lymphoma 52:1446-54)。ミラツズマブ(hLL1)は、MIF媒介性疾患の治療のための治療的使用の例示的抗CD74抗体である。
【0084】
様々な他の有用な抗体が当技術分野で既知である(例えば、米国特許第5,686,072号、第5,874,540号、第6,107,090号、第6,183,744号、第6,306,393号、第6,653,104号、第6,730.300号、第6,899,864号、第6,926,893号、第6,962,702号、第7,074,403号、第7,230,084号、第7,238,785号、第7,238,786号、第7,256,004号、第7,282,567号、第7,300,655号、第7,312,318号、第7,585,491号、第7,612,180号、第7,642,239及び米国特許出願公開第20060193865号。それぞれ参照により本明細書に組み込まれる)。
【0085】
使用される抗体は、多種多様な既知の供給源から商業的に入手することができる。例えば、様々な抗体分泌ハイブリドーマ株がアメリカ培養細胞系統保存機関(ATCC,Manassas,VA)から入手可能である。腫瘍関連抗原を含めた様々な疾患標的に対する多数の抗体がATCCに寄託されており、及び/または可変領域配列を公表されており、請求される方法及び組成物で使用するために利用可能である。例えば、米国特許第7,312,318号、第7,282,567号、第7,151,164号、第7,074,403号、第7,060,802号、第7,056,509号、第7,049,060号、第7,045,132号、第7,041,803号、第7,041,802号、第7,041,293号、第7,038,018号、第7,037,498号、第7,012,133号、第7,001,598号、第6,998,468号、第6,994,976号、第6,994,852号、第6,989,241号、第6,974,863号、第6,965,018号、第6,964,854号、第6,962,981号、第6,962,813号、第6,956,107号、第6,951,924号、第6,949,244号、第6,946,129号、第6,943,020号、第6,939,547号、第6,921,645号、第6,921,645号、第6,921,533号、第6,919,433号、第6,919,078号、第6,916,475号、第6,905,681号、第6,899,879号、第6,893,625号、第6,887,468号、第6,887,466号、第6,884,594号、第6,881,405号、第6,878,812号、第6,875,580号、第6,872,568号、第6,867,006号、第6,864,062号、第6,861,511号、第6,861,227号、第6,861,226号、第6,838,282号、第6,835,549号、第6,835,370号、第6,824,780号、第6,824,778号、第6,812,206号、第6,793,924号、第6,783,758号、第6,770,450号、第6,767,711号、第6,764,688号、第6,764,681号、第6,764,679号、第6,743,898号、第6,733,981号、第6,730,307号、第6,720,155号、第6,716,966号、第6,709,653号、第6,693,176号、第6,692,908号、第6,689,607号、第6,689,362号、第6,689,355号、第6,682,737号、第6,682,736号、第6,682,734号、第6,673,344号、第6,653,104号、第6,652,852号、第6,635,482号、第6,630,144号、第6,610,833号、第6,610,294号、第6,605,441号、第6,605,279号、第6,596,852号、第6,592,868号、第6,576,745号、第6,572;856号、第6,566,076号、第6,562,618号、第6,545,130号、第6,544,749号、第6,534,058号、第6,528,625号、第6,528,269号、第6,521,227号、第6,518,404号、第6,511,665号、第6,491,915号、第6,488,930号、第6,482,598号、第6,482,408号、第6,479,247号、第6,468,531号、第6,468,529号、第6,465,173号、第6,461,823号、第6,458,356号、第6,455,044号、第6,455,040号、6,451,310号、第6,444,206号、6,441,143号、第6,432,404号、第6,432,402号、第6,419,928号、第6,413,726号、第6,406,694号、第6,403,770号、第6,403,091号、第6,395,276号、第6,395,274号、第6,387,350号、第6,383,759号、第6,383,484号、第6,376,654号、第6,372,215号、第6,359,126号、第6,355,481号、第6,355,444号、第6,355,245号、第6,355,244号、第6,346,246号、第6,344,198号、第6,340,571号、第6,340,459号、第6,331,175号、第6,306,393号、第6,254,868号、第6,187,287号、第6,183,744号、第6,129,914号、第6,120,767号、第6,096,289号、第6,077,499号、第5,922,302号、第5,874,540号、第5,814,440号、第5,798,229号、第5,789,554号、第5,776,456号、第5,736,119号、第5,716,595号、第5,677,136号、第5,587,459号、第5,443,953号、第5,525,338号を参照されたい。これらは例示的なものに過ぎず、多種多様の他の抗体及びそれらのハイブリドーマが当技術分野で既知である。選択された目的の疾患関連標的に対する抗体についてATCC、NCBI及び/またはUSPTOデータベースを簡単に検索することによって、実質的にすべての疾患関連抗原に対する抗体配列または抗体分泌ハイブリドーマを得ることができることを当業者は理解するであろう。当技術分野で周知である標準的な技法を使用して、クローニングした抗体の抗原結合ドメインを増幅すること、切除すること、発現ベクターにライゲーションすること、適合した宿主細胞にトランスフェクトすること、及びタンパク質産生に使用することができる。
【0086】
抗体のアロタイプ
治療的抗体の免疫原性は、輸注反応の危険性の増大及び治療応答の持続期間の減少と関係がある(Baert et al.,2003,N Engl J Med 348:602-08)。治療的抗体が受容者の免疫応答を誘導する程度は、抗体のアロタイプによってある程度決定され得る(Stickler et al.,2011,Genes and Immunity 12:213-21)。抗体のアロタイプは、抗体の定常領域配列中の特定の位置におけるアミノ酸配列変動に関連している。重鎖γ型定常領域を含むIgG抗体のアロタイプは、Gmアロタイプと呼ばれている(1976,J Immunol 117:1056-59)。
【0087】
一般的なIgG1ヒト抗体については、最も広く認められるアロタイプはG1m1である(Stickler et al.,2011,Genes and Immunity 12:213-21)。しかし、G1m3アロタイプもコーカサス人に頻繁に生じる(Stickler et al.,2011)。G1m1抗体は、G1m3患者などの非G1m1(nG1m1)レシピエントに投与された場合に免疫応答を誘導する傾向があるアロタイプ配列を含むことが報告されている(Stickler et al.,2011)。非G1m1アロタイプ抗体は、G1m1患者に投与された場合にそれほど免疫原性ではない(Stickler et al.,2011)。
【0088】
ヒトG1m1アロタイプは、重鎖IgG1のCH3配列中に、アミノ酸のアスパラギン酸をKabatの位置356に、及びロイシンをKabatの位置358に含む。nG1m1アロタイプは、アミノ酸のグルタミン酸をKabatの位置356に、及びメチオニンをKabatの位置358に含む。G1mlアロタイプとnG1mlアロタイプの両方ともグルタミン酸残基をKabatの位置357に含み、これらのアロタイプはDELアロタイプ及びEEMアロタイプと称されることもある。G1m1アロタイプ抗体及びnG1m1アロタイプ抗体についての重鎖定常領域配列の非限定例を、例示的抗体のリツキシマブ(配列番号7)及びベルツズマブ(配列番号8)について以下に示す。
【0089】
リツキシマブ重鎖可変領域配列(配列番号7)
【化2】
【0090】
ベルツズマブ重鎖可変領域(配列番号8)
【化3】
【0091】
Jefferis及びLefranc(2009,mAbs 1:1-7)は、IgGアロタイプに特徴的である配列変動及び免疫原性に対するそれらの影響を概説した。彼らは、G1m3アロタイプは、G1m17アロタイプのKabatの214のリジン残基と比較して、Kabatの位置214のアルギニン残基を特徴とすることを報告した。nG1m1,2アロタイプはKabatの位置356のグルタミン酸、Kabatの位置358のメチオニン、及びKabatの位置431のアラニンを特徴とした。G1m1,2アロタイプはKabatの位置356のアスパラギン酸、Kabatの位置358のロイシン、及びKabatの位置431のグリシンを特徴とした。重鎖定常領域配列の変異型に加えて、Jefferis及びLefranc(2009)は、Km1アロタイプはKabatの位置153のバリン及びKabatの位置191のロイシンを特徴とし、Km1,2アロタイプはKabatの位置153のアラニン及びKabatの位置191のロイシンを特徴とし、Km3アロタイプはKabatの位置153のアラニン及びKabatの位置191のバリンを特徴とする、カッパ軽鎖定常領域中のアロタイプ変異型を報告した。
【0092】
治療的抗体に関して、ベルツズマブ及びリツキシマブは、それぞれ、CD20に対するヒト化及びキメラのIgG1抗体であり、多種多様の血液悪性腫瘍及び/または自己免疫疾患の療法に有用である。表1は、リツキシマブ対ベルツズマブのアロタイプ配列を比較する。表1に示すように、リツキシマブ(G1m17,1)はDELアロタイプのIgG1であり、ベルツズマブにおけるアルギニンに対してリツキシマブにおけるリジンであるKabatの位置214(重鎖CH1)に付加的な配列変動を有する。ベルツズマブはリツキシマブよりも対象において免疫原性が低いことが報告されており(例えば、Morchhauser et al.,2009,J Clin Oncol 27:3346-53、Goldenberg et al.,2009,Blood 113:1062-70、Robak & Robak,2011,BioDrugs 25:13-25を参照されたい)、これは、ヒト化抗体とキメラ抗体の間の違いに起因する効果であった。しかし、EEMとDELアロタイプの間のアロタイプの違いは、ベルツズマブのより低い免疫原性も説明すると思われる。
【0093】
【表1】
【0094】
nG1m1遺伝子型の個体において治療的抗体の免疫原性を低減するために、Kabatの214のアルギニンを特徴とするG1m3アロタイプならびにKabatの位置356のグルタミン酸、Kabatの位置358のメチオニン及びKabatの位置431のアラニンを特徴とするnG1m1,2ヌル-アロタイプに対応する抗体のアロタイプを選択することが望ましい。驚いたことに、長期間にわたるG1m3抗体の反復皮下投与が有意な免疫応答を引き起こさなかったことが分かった。代替の実施形態では、G1m3アロタイプと共通のヒトIgG4重鎖は、Kabatの214にアルギニンを、Kabatの356にグルタミン酸を、Kabatの359にメチオニンを、Kabatの431にアラニンを有する。免疫原性は少なくとも部分的にそれらの位置の残基に関係するように思われるので、治療的抗体のためのヒトIgG重鎖定常領域配列の使用も好ましい実施形態である。G1m3 IgG1抗体とIgG4抗体の組み合わせも治療的投与に有用であり得る。
【0095】
ナノボディ
ナノボディは、約12~15kDaのサイズ(約110アミノ酸の長さ)のシングルドメイン抗体である。ナノボディは、フルサイズの抗体のように、標的抗原に選択的に結合することができ、抗原に対して同様の親和性を有する。しかし、そのサイズがはるかに小さいので、これは、固形腫瘍中により良好に侵入することができる。より小さなサイズは、ナノボディの安定性にも寄与し、これは、pH及び温度の極端な状態に対してフルサイズ抗体よりも抵抗性である(Van Der Linden et al.,1999,Biochim Biophys Act 1431:37-46)。シングルドメイン抗体は、最初は、ラクダ科動物(ラクダ、アルパカ、ラマ)が軽鎖なしの完全に機能的な抗体を有するという発見に続いて開発された(例えば、Hamsen et al.,2007,Appl Microbiol Biotechnol 77:13-22)。重鎖抗体は、単一の可変ドメイン(VHH)ならびに2つの定常ドメイン(C2及びC3)からなる。抗体のように、多価及び/または二重特異性コンストラクトとしてナノボディを開発及び使用することができる。がん及び他の障害において臨床的使用の可能性がある様々な標的抗原、例えば、IL-6R、vWF、TNF、RSV、RANKL、IL-17A & F及びIgE(例えば、ABLYNX(登録商標)、Ghent,Belgium)を標的にするナノボディのヒト化形態は、商業的に開発中である(例えばSaerens et al.,2008,Curr Opin Pharmacol 8:600-8、Muyldermans,2013,Ann Rev Biochem 82:775-97、Ibanez et al.,2011,J Infect Dis 203:1063-72)。
【0096】
ナノボディの血漿半減期はフルサイズ抗体のものよりも短く、腎臓の経路によって主に排除される。ナノボディはFc領域を欠くので、これは補体依存性細胞毒性を示さない。
【0097】
ナノボディは、標的抗原によるラクダ、ラマ、アルパカまたはサメの免疫化、それに続く、mRNAの単離、ライブラリーへのクローニング及び抗原結合についてのスクリーニングによって、生成することができる。標準的な技法(例えば、Jones et al.,1986,Nature 321:522、Riechmann et al.,1988,Nature 332:323、Verhoeyen et al.,1988,Science 239:1534、Carter et al.,1992,Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 89:4285,Sandhu,1992,Crit.Rev.Biotech.12:437,Singer et al.,1993,J.Immun.150:2844)によって、ナノボディ配列をヒト化することができる。ヒト化は、ラクダ科動物とヒトのFR配列の間の相同性が高いので、比較的簡単である。
【0098】
様々な実施形態では、主題のADCは、標的がん細胞へのコンジュゲート化薬物の標的送達のために、ナノボディを含むことができる。有用なナノボディは、例えば、それぞれの実施例セクションが参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第7,807,162号、7,939,277号、第8,188,223号、第8,217,140号、第8,372,398号、第8,557,965号、第8,623,361号及び第8,629,244号に開示されている。
【0099】
抗体断片
抗体断片は抗体の抗原結合部分、例えば、F(ab’)、Fab’、F(ab)、Fab、Fv、sFv、scFvなどである。特定のエピトープを認識する抗体断片を既知の技法によって生成することができる。F(ab’)断片は、例えば、抗体分子のペプシン消化によって生成することができる。これら及び他の方法は、例えば、Goldenberg、米国特許第4,036,945号及び第4,331,647号ならびにその中に含まれる参考文献によって記載されている。さらに、Nisonoff et al.,Arch Biochem.Biophys.89:230(1960)、Porter,Biochem.J.73:119(1959),Edelman et al.,in METHODS IN ENZYMOLOGY VOL.1,page 422(Academic Press 1967)、ならびにColigan at pages 2.8.1-2.8.10及び2.10.-2.10.4を参照されたい。あるいは、所望の特異性を有するモノクローナルFab’断片の迅速且つ容易な同定を可能にするために、Fab’発現ライブラリーを構築することができる(Huse et al.,1989,Science,246:1274-1281)。
【0100】
単鎖Fv分子(scFv)は、VLドメイン及びVHドメインを含む。VL及びVHドメインは、結合して標的結合部位を形成する。これら2つのドメインは、ペプチドリンカー(L)によってさらに共有結合している。scFv分子は、VLドメインがScFv分子のN末端部分である場合VL-L-VHとして、またはVHドメインがScFv分子のN末端部分である場合VH-L-VLとして、示される。scFv分子を作製するための方法及び適切なペプチドリンカーを設計ための方法は、米国特許第4,704,692号、米国特許第4,946,778号、R.Raag and M. Whitlow,“Single Chain Fvs.” FASEB Vol 9:73-80 (1995)及びR.E.Bird and B.W.Walker,Single Chain Antibody Variable Regions,TIBTECH,Vol 9:132-137(1991)に記載されている。
【0101】
他の抗体断片、例えば単一ドメイン抗体断片が当技術分野で既知であり、請求されるコンストラクトで使用することができる。単一ドメイン抗体(VHH)は、例えばラクダ、アルパカまたはラマから標準的な免疫化技法によって得ることができる(例えば、Muyldermans et al.,TIBS 26:230-235,2001、Yau et al.,J Immunol Methods 281:161-75,2003、Maass et al.,J Immunol Methods 324:13-25,2007を参照されたい)。VHHは強力な抗原結合能を有し得、従来のVH-VL対に接近し難い新規なエピトープと相互作用することができる(Muyldermans et al.,2001)。アルパカの血清IgGは、約50%のラクダ科動物重鎖のみのIgG抗体(HCAb)を含む(Maass et al.,2007)。既知の抗原、例えばTNF-αでアルパカを免疫化することができ、標的抗原に結合し、これを中和するVHHを単離することができる(Maass et al.,2007)。実質的にすべてのアルパカVHHのコード配列を増幅するPCRプライマーが特定されており、これを使用してアルパカVHHファージディスプレイライブラリーを構築することができ、このライブラリーは、当技術分野で周知である標準的なバイオパニング技法による抗体断片の単離に使用することができる(Maass et al.,2007)。
【0102】
抗体断片は、完全長抗体のタンパク分解性加水分解またはE.coliもしくは別の宿主における断片をコードするDNAの発現によって、調製することもできる。抗体断片は、従来の方法による完全長抗体のペプシンまたはパパイン消化によって得ることができる。例えば、抗体断片は、ペプシンによって抗体を酵素切断して、F(ab’)で示されるおおよそ100kDの断片をもたらすことによって、生成することができる。チオール還元剤、及び場合により、ジスルフィド結合の切断によって生じるスルフヒドリル基のためのブロッキング基を使用してこの断片をさらに切断して、おおよそ50KdのFab’一価断片を生成することができる。あるいは、パパインを使用する酵素切断は、2つの一価Fab断片及び1つのFc断片を直接的に生成する。
【0103】
断片がインタクトな抗体によって認識される抗原に結合する限り、一価の軽-重鎖断片を形成するための重鎖の分離、断片のさらなる切断、または他の酵素的、化学的もしくは遺伝子的技法などの抗体を切断する他の方法を使用することもできる。
【0104】
二重特異性及び多重特異性抗体
二重特異性抗体は、いくつかの生物医学的用途に有用である。例えば、腫瘍細胞表面抗原及びT細胞表面レセプターに対する結合部位を有する二重特異性抗体は、T細胞による特定の腫瘍細胞の溶解を導くことができる。神経膠腫とT細胞上のCD3エピトープとを認識する二重特異性抗体が、ヒト患者における脳腫瘍の治療で首尾よく使用されている(Nitta,et al.Lancet.1990;355:368-371)。好ましい二重特異性抗体は、抗CD3X抗Trop-2抗体である。代替の実施形態では、抗CD3抗体またはその断片を、B細胞関連抗原に対する抗体または断片、例えば、抗CD3X抗CD19、抗CD3X抗CD20、抗CD3X抗CD22、抗CD3X抗HLA-DRまたは抗CD3X抗CD74に結合させることができる。ある特定の実施形態では、本明細書に開示される治療剤コンジュゲーションに関する技法及び組成物を標的化部分としての二重特異性または多重特異性抗体とともに使用することができる。
【0105】
例えば、その実施例セクションが参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第7,405,320号で開示されるように、二重特異性または多重特異性抗体を生成するための多数の方法が既知である。二重特異性抗体は、クアドローマ方法によって生成することができ、これは、それぞれが異なる抗原部位を認識するモノクローナル抗体を産生する、2つの異なるハイブリドーマの融合を含む(Milstein and Cuello,Nature,1983;305:537-540)。
【0106】
二重特異性抗体を生成するための別の方法は、ヘテロ二官能性クロスリンカーを使用して、2つの異なるモノクローナル抗体を化学的につなぐ(Staerz, et al.Nature,1985;314:628-631、Perez,et al.Nature,1985;316:354-356)。二重特異性抗体は、2つの親モノクローナル抗体のそれぞれを還元して、それぞれの半分子にして、次いで、これらを混合して、再び酸化させてハイブリッド構造体を得ることによって、生成することもできる(Staerz and Bevan.Proc Natl Acad Sci USA.1986;83:1453-1457)。別の代替法は、2つまたは3つの別々に精製されたFab’断片を適切なリンカーを使用して化学的に架橋結合することを含む(例えば、欧州特許出願第0453082号を参照されたい)。
【0107】
他の方法は、レトロウイルス由来シャトルベクターを介して別々の選択マーカーをそれぞれの親のハイブリドーマに遺伝子導入し、続いて、これらを融合すること(DeMonte,et al.Proc Natl Acad Sci USA.1990,87:2941-2945)、または異なる抗体の重鎖及び軽鎖遺伝子を含む発現プラスミドをハイブリドーマ細胞株にトランスフェクションすることによって、ハイブリッドハイブリドーマ生成の効率を改善することを含む。
【0108】
適切な組成及び長さ(通常、12アミノ酸残基より多くからなる)のペプチドリンカーを用いて同種のV及びVドメインを結合させて、結合活性を有する単鎖Fv(scFv)を形成することができる。scFvを製造する方法は、米国特許第4,946,778号及び米国特許第5,132,405号に開示されており、これらのそれぞれの実施例セクションは参照によって本明細書に組み込まれる。12アミノ酸残基未満にペプチドリンカー長さを短くすることは、同じ鎖上のVドメインとVドメインの対形成を防ぎ、Vドメイン及びVドメインを他の鎖にある相補的ドメインと対形成させ、機能的多量体の形成をもたらす。3~12アミノ酸残基のリンカーで結合しているVドメイン及びVドメインのポリペプチド鎖は、主として二量体(ダイアボディと呼ばれる)を形成する。0~2アミノ酸残基のリンカーを用いると、三量体(トリアボディと呼ばれる)及び四量体(テトラボディと呼ばれる)が支持されるが、オリゴマー化の正確なパターンは、リンカーの長さに加えて、Vドメインの組成及び配向(V-リンカー-VまたはV-リンカー-V)に依存するように思われる。
【0109】
多特異性または二重特異性抗体を生成するためのこれらの技法は、低収量、精製の必要性、低い安定性または技法の労働集約性の点から様々な困難を示す。ごく最近、「ドックアンドロック」(DNL)として知られる技法が利用されて、実質的にすべての所望の抗体、抗体断片及び他のエフェクター分子の組み合わせが生成された(例えば、米国特許第7,521,056号、第7,527,787号、第7,534,866号、第7,550,143号、第7,666,400号、第7,858,070号、第7,871,622号、第7,906,121号、第7,906,118号、第8,163,291号、第7,901,680号、第7,981,398号、第8,003,111及び第8,034,352号を参照されたい。これらのそれぞれの実施例セクションは、参照により本明細書に組み込まれる)。この技法は、アンカリングドメイン(AD)ならびに二量体化及びドッキングドメイン(DDD)と称される相補的タンパク質結合ドメインを利用し、これらは互いに結合し、二量体、三量体、四量体、五量体及び六量体の範囲の複合体構造の構築を可能にする。これらは、大規模な精製の必要なしに高収量で安定な複合体を形成する。DNL技法は、単一特異性、二重特異性または多重特異性抗体の組立を可能にする。二重特異性または多重特異性抗体を作製するための当技術分野で既知の技法のうちのいずれかを本出願で請求される方法の実施で利用することができる。
【0110】
コンジュゲーションプロトコール
抗体またはその断片を1種または複数の治療剤または診断剤にコンジュゲートすることができる。治療剤は同じである必要があるのではなくて、例えば薬物及び放射性同位体のように、異なっていてもよい。例えば、131Iを抗体または融合タンパク質のチロシンに組み込むことができ、薬物をリジン残基のイプシロンアミノ基に結合させることができる。治療剤及び診断剤は、例えば還元されたSH基及び/または炭化水素側鎖に結合させることもできる。抗体または融合タンパク質との治療剤または診断剤の共有結合性または非共有結合性コンジュゲートを作製するための多くの方法が当技術分野で既知であり、任意のそのような既知の方法を利用することができる。
【0111】
ジスルフィド結合形成を介して、還元された抗体成分のヒンジ領域に治療剤または診断剤を結合させることができる。あるいは、ヘテロ二官能性クロスリンカー、例えば、N-スクシニル3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)を使用して、そのような薬剤を結合させることができる。Yu et al.,Int.J.Cancer 56:244(1994)。そのようなコンジュゲーションのための一般的な技法は当技術分野で周知である。例えば、Wong,CHEMISTRY OF PROTEIN CONJUGATION AND CROSS-LINKING(CRC Press 1991)、Upeslacis et al.,“Modification of Antibodies by Chemical Methods,”in MONOCLONAL ANTIBODIES:PRINCIPLES AND APPLICATIONS,Birch et al.(eds.),pages 187‐230(Wiley-Liss,Inc.1995)、Price,“Production and Characterization of Synthetic Peptide-Derived Antibodies,”in MONOCLONAL ANTIBODIES:PRODUCTION,ENGINEERING AND CLINICAL APPLICATION,Ritter et al.(eds.),pages 60‐84(Cambridge University Press 1995)を参照されたい。あるいは、抗体のFc領域中の炭水化物部分を介して、治療剤または診断剤をコンジュゲートすることができる。炭水化物基は、チオール基に結合している同じ薬剤の装薬を増加させるのに使用することができ、または炭水化物部分は、異なる治療剤または診断剤を結合させるのに使用することができる。
【0112】
抗体の炭水化物部分を介してペプチドを抗体成分にコンジュゲートするための方法は、当業者に周知である。例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Shih et al.,Int.J.Cancer 41:832(1988)、Shih et al.,Int.J.Cancer 46:1101(1990)、及びShih et al.、米国特許第5,057,313号を参照されたい。一般的な方法は、酸化された炭水化物部分を有する抗体成分を少なくとも1つの遊離アミン官能基を有する担体ポリマーと反応させることを含む。この反応は、最初のシッフ塩基(イミン)結合をもたらし、これを2級アミンへの還元によって安定化させて、最終的なコンジュゲートを形成することができる。
【0113】
免疫複合体の抗体成分として使用される抗体が抗体断片である場合、Fc領域は存在しなくてもよい。しかし、完全長抗体または抗体断片の軽鎖可変領域に炭水化物部分を導入することが可能である。例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Leung et al.,J.Immunol.154:5919(1995)、Hansen et al.,米国特許第5,443,953号(1995)、Leung et al.,米国特許第6,254,868号を参照されたい。操作された炭水化物部分は、治療剤または診断剤に結合させるために使用される。
【0114】
標的化分子に担体部分を結合させるための代替方法は、クリックケミストリー反応の使用を含む。クリックケミストリーアプローチは、小さなサブユニットをモジュール方式で一緒に結合することによって複雑な物質を迅速に生成する方法として、元々考案された(例えば、Kolb et al.,2004,Angew Chem Int Ed 40:3004-31、Evans,2007,Aust J Chem 60:384-95を参照されたい)。「クリック反応」と称されることが多いヒュスゲン1,3-双極子環化付加銅触媒反応(Tornoe et al.,2002,J Organic Chem 67:3057-64など、クリックケミストリー反応の様々な形態が当技術分野で既知である。他の代替法は、ディールス・アルダーなどの環化付加反応、求核置換反応(特に、エポキシ及びアジリジン化合物のような小さなひずみのある環に対するもの)、尿素化合物のカルボニル化学形成及ならびにチオール-イン反応におけるアルキンなどの炭素-炭素二重結合を含む反応を含む。
【0115】
アジドアルキンヒュスゲン環化付加反応は、第1の分子に結合している末端アルキン基の反応を触媒するために、還元剤の存在下で銅触媒を使用する。アジド部分を含む第2の分子の存在下で、アジドは活性化アルキンと反応して、1,4-二置換1,2,3-トリアゾールを形成する。銅触媒反応は室温で生じ、十分に特異的であり、反応生成物の精製が必要とされないことが多い(Rostovstev et al.,2002,Angew Chem Int Ed 41:2596、Tornoe et al.,2002,J Org Chem 67:3057)。アジド及びアルキン官能基は、水性媒体中の生体分子に対して大部分は不活性であり、複雑な溶液中で反応が生じるのを可能にする。形成されたトリアゾールは化学的に安定であり、酵素的開裂を受けにくく、それによって、クリックケミストリー生成物が生物システムにおいて非常に安定になる。銅触媒は生細胞に対して毒性を持つが、銅ベースのクリックケミストリー反応は、免疫複合体形成のためにインビトロで使用することができる。
【0116】
生体分子の共有結合的修飾のために、銅を含まないクリック反応が提唱された(例えば、Agard et al.,2004,J Am Chem Soc 126:15046-47を参照されたい)。銅を含まない反応は、銅触媒の代わりに環ひずみを使用して、[3+2]アジド-アルキン環化付加反応を促進する(同上)。例えば、シクロオクチンは、内部アルキン結合を含む8炭素環構造である。閉環構造は、アセチレンの実質的な結合角変形を誘導し、これによって、アジド基と非常に反応して、トリアゾールが形成される。したがって、シクロオクチン誘導体は、銅を含まないクリック反応に使用することができる(同上)。
【0117】
Ning et al.(2010,Angew Chem Int Ed 49:3065-68)によって別のタイプの銅を含まないクリック反応が報告され、これは、ゆがみ促進性アルキン-ニトロン環化付加を含む。元のシクロオクチン反応の遅い速度に対処するために、三重結合に隣接して電子求引基が結合している(同上)。そのような置換シクロオクチンの例としては、二フッ素化シクロオクチン、4-ジベンゾシクロオクチノール及びアザシクロオクチンが挙げられる(同上)。別の銅を含まない反応は、N-アルキル化イソオキサゾリンを得るために、ゆがみ促進性アルキン-ニトロン環化付加を含む(同上)。この反応は、並外れて速い反応キネティクスを有することが報告され、ペプチド及びタンパク質の部位特異的修飾のためのワンポット3ステッププロトコールで使用された(同上)。ニトロンはN-メチルヒドロキシルアミンとの適切なアルデヒドの縮合によって調製され、環化付加反応はアセトニトリルと水の混合物中で生じた(同上)。これら及び他の既知のクリックケミストリー反応は、インビトロで担体部分を抗体に結合させるのに使用することができる。
【0118】
Agard et al.(2004,J Am Chem Soc 126:15046-47)は、過アセチル化N-アジドアセチルマンノサミンの存在下でCHO細胞において発現させた組換え糖タンパク質によって、対応するN-アジドアセチルシアル酸が糖タンパク質中の炭水化物中へ生物学的に組み込みこまれることを示した。アジド誘導体化糖タンパク質は、ビオチン化シクロオクチンと特異的に反応して、ビオチン化糖タンパク質を形成したが、アジド部分を有さない対照の糖タンパク質は非標識のままであった(同上)。Laughlin et al.(2008,Science 320:664-667)は、同様の技法を使用して、過アセチル化N-アジドアセチルガラクトサミンとともにインキュベートしたゼブラフィッシュの胚において、細胞表面グリカンを代謝的に標識した。アジド誘導体化グリカンは、二フッ素化シクロオクチン(DIFO)試薬と反応して、インビボでグリカンの可視化を可能にした。
【0119】
ディールス・アルダー反応も分子のインビボ標識に使用された。Rossin et al.(2010,Angew Chem Int Ed 49:3375-78)は、トランス-シクロオクテン(TCO)反応性部分を保有する腫瘍局在性抗TAG72(CC49)抗体と111In標識されたテトラジンDOTA誘導体の間で、インビボで52%の収率を報告した。TCO標識されたCC49抗体が結腸癌異種移植片を有するマウスに投与され、1日後に111In-標識されたテトラジンプローブが注射された(同上)。放射標識されたプローブと腫瘍局在性抗体の反応は、放射標識されたプローブの注射から3時間後の生存マウスのSPECTイメージングにより示されるように、腫瘍中に明白な放射能局在をもたらし、腫瘍対筋肉比は13:1であった(同上)。この結果により、TCOとテトラジン標識分子のインビボ化学反応が確証された。
【0120】
生体分子へのそのような部分の化学的コンジュゲーションの代替方法は当技術分野で周知であり、任意のそのような既知の方法を利用することができる。免疫複合体形成の一般的な方法は、例えば、米国特許第4,699,784号、第4,824,659号、第5,525,338号、第5,677,427号、第5,697,902号、第5,716,595号、第6,071,490号、第6,187,284号、第6,306,393号、第6,548,275号、第6,653,104号、第6,962,702号、第7,033,572号、第7,147,856号及び第7,259,240号に開示されており、それぞれの実施例セクションは参照により本明細書に組み込まれる。
【0121】
好ましいコンジュゲーションプロトコールは、中性または酸性pHで容易な、チオール-マレイミド、チオール-ビニルスルホン、チオール-ブロモアセトアミドまたはチオール-ヨードアセトアミド反応に基づく。これにより、例えば、活性エステルを使用する際に必要とされると思われるような、コンジュゲーションのためのより高いpH条件の必要性が取り除かれる。例示的コンジュゲーションプロトコールのさらなる詳細は、実施例セクションにおいて以下に記載される。
【0122】
治療的治療
別の態様では、本発明は、本明細書に記載の治療有効量の抗体-薬物コンジュゲート(ADC)を対象に投与することを含む、対象を治療する方法に関する。本明細書に記載のADCで治療することができる疾患としては、限定されないが、例えば、別のCD22エピトープ(hRFB4)に対する抗CD22抗体、例えば、hLL2 MAb(エプラツズマブ。米国特許第6,183,744号を参照されたい)、または他のB細胞抗原、例えば、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD37、CD40、CD40L、CD52、CD74、CD80またはHLA-DRに対する抗体を使用する、B細胞悪性腫瘍(例えば、非ホジキンリンパ腫、マントル細胞リンパ腫、多発性骨髄腫、ホジキンリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、濾胞性リンパ腫、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、ヘアリーセル白血病)が挙げられる。他の疾患としては、限定されないが、内胚葉由来消化器系上皮の腺癌、乳癌及び非小細胞肺癌などのがん、及び他の癌腫、肉腫、グリア系腫瘍、骨髄性白血病などが挙げられる。特に、悪性の固形腫瘍または造血器新生物、例えば、胃腸、胃、結腸、食道、肝臓、肺、乳房、膵臓、肝臓、前立腺、卵巣、精巣、脳、骨、尿路上皮またはリンパ系の腫瘍、肉腫または黒色腫によって生成される、またはこれらと関係がある抗原、例えば、がん胎児性抗原に対する抗体が、好都合に使用される。そのような治療剤は、病態及びコンジュゲートの忍容性に応じて1回または反復して与えることができ、場合により、他の治療様式、例えば、手術、外部放射線、放射免疫療法、免疫療法、化学療法、アンチセン療法、干渉RNA療法、遺伝子療法などと組み合わせて使用することもできる。各組み合わせは、腫瘍タイプ、ステージ、患者の状態及び以前の療法ならびに管理医師によって考慮される他の因子に適合される。
【0123】
本明細書で使用する場合、用語「対象」は、任意の動物(すなわち、脊椎動物及び無脊椎動物)、例えば、限定されないが哺乳動物、例えば、ヒトを指す。本用語が特定の年齢または性別に限定されることは意図されない。したがって、雄または雌を問わず、成体及び新生対象ならびに胎児が本用語に包含される。本明細書で与えられる用量はヒトに対するものであるが、体重または平方メートルサイズに従って、他の哺乳動物及び小児のサイズに調整することができる。
【0124】
好ましい実施形態では、hRS7 MAbなどの抗Trop-2抗体を含む治療的コンジュゲートは、その実施例セクションが参照によって本明細書に組み込まれる、米国特許第7,238,785号、第7,517,964号及び第8,084,583号に開示されているように、癌腫、例えば、食道、膵臓、肺、胃、結腸及び直腸、膀胱、乳房、卵巣、子宮、腎臓及び前立腺の癌腫を治療するのに使用することができる。HRS7抗体は、軽鎖相補性決定領域(CDR)配列CDR1(KASQDVSIAVA、配列番号1)、CDR2(SASYRYT、配列番号2)及びCDR3(QQHYITPLT、配列番号3)、ならびに重鎖CDR配列CDR1(NYGMN、配列番号4)、CDR2(WINTYTGEPTYTDDFKG、配列番号5)及びCDR3(GGFGSSYWYFDV、配列番号6)を含むヒト化抗体である。
【0125】
好ましい実施形態では、ヒト疾患の治療で使用される抗体はヒトまたはヒト化(CDR移植)バージョンの抗体であるが、マウス及びキメラバージョンの抗体を使用することができる。免疫応答を最小限にするために、送達薬剤と同じ種のIgG分子がたいていは好ましい。反復治療を考慮する場合、これは特に重要である。ヒトについては、ヒトまたはヒト化IgG抗体は、患者から抗IgG免疫応答を発生させる可能性が低い。hLL1及びhLL2などの抗体は、標的細胞上の内部移行抗原に結合した後、迅速に内部移行し、これは、運ばれている化学療法薬も同様に細胞中に迅速に内部移行することを意味する。しかし、内部移行速度が遅い抗体も選択的療法を行うために使用することができる。
【0126】
別の好ましい実施形態では、本発明のカンプトテシンコンジュゲートと組み合わせて使用される治療剤は、1種または複数の同位体を含むことができる。疾患組織を治療するのに有用な放射性同位体としては、限定されないが、111In、177Lu、212Bi、213Bi、211At、62Cu、67Cu、90Y、125I、131I、32P、33P、47Sc、111Ag、67Ga、142Pr、153Sm、161Tb、166Dy、166Ho、186Re、188Re、189Re、212Pb、223Ra、225Ac、59Fe、75Se、77As、89Sr、99Mo、105Rh、109Pd、143Pr、149Pm、169Er、194Ir、198Au、199Au、227Th及び211Pbが挙げられる。治療的放射性核種は、好ましくは、オージェ放射体について20~6,000keVの範囲の、好ましくは60~200keVの範囲の、ベータ放射体にについて100~2,500keVの、及びアルファ放射体について4,000~6,000keVの崩壊エネルギーを有する。有用なベータ粒子放射核種の最大崩壊エネルギーは、好ましくは20~5,000keV、より好ましくは100~4,000keV、最も好ましくは500~2,500keVである。オージェ放射粒子をともなって実質的に崩壊する放射性核種も好ましい。例えば、Co-58、Ga-67、Br-80m、Tc-99m、Rh-103m、Pt-109、In-111、Sb-119、I-125、Ho-161、Os-189m及びIr-192である。有用なベータ粒子放射核種の崩壊エネルギーは、好ましくは<1,000keV、より好ましくは<100keV、最も好ましくは<70keVである。アルファ粒子の生成をともなって実質的に崩壊する放射性核種も好ましい。そのような放射性核種としては、限定されないが、Dy-152、At-211、Bi-212、Ra-223、Rn-219、Po-215、Bi-211、Ac-225、Fr-221、At-217、Bi-213、Th-227及びFm-255が挙げられる。有用なアルファ粒子放射性核種の崩壊エネルギーは、好ましくは2,000~10,000keV、より好ましくは3,000~8,000keV、最も好ましくは4,000~7,000keVである。有用なさらなる潜在的な放射性同位体としては、11C、13N、15O、75Br、198Au、224Ac、126I、133I、77Br、113mIn、95Ru、97Ru、103Ru、105Ru、107Hg、203Hg、121mTe、122mTe、125mTe、165Tm、167Tm、168Tm、197Pt、109Pd、105Rh、142Pr、143Pr、161Tb、166Ho、199Au、57Co、58Co、51Cr、59Fe、75Se、201Tl、225Ac、76Br、169Ybなどである。
【0127】
放射性核種及び他の金属は、例えば、抗体またはコンジュゲートに結合したキレート基を使用して送達することができる。NOTA、DOTA及びTETAなどの大環状キレートは、様々な金属及び放射性金属とともに、最も詳細には、それぞれガリウム、イットリウム及び銅の放射性核種とともに使用される。環のサイズを目的の金属に合わせることにより、そのような金属キレート錯体を非常に安定化させることができる。223Raを錯体化するための大環状ポリエーテルのような他の環型のキレートを使用することができる。
【0128】
本明細書に記載のカンプトテシンコンジュゲートと組み合わせて使用される治療剤としては、例えば、化学療法薬、例えば、ビンカアルカロイド、アントラサイクリン、エピドフィロトキシン、タキサン、代謝拮抗剤、チロシンキナーゼ阻害剤、アルキル化剤、抗生物質、Cox-2阻害剤、有糸分裂阻害薬、血管新生阻害剤及びアポトーシス促進剤、特に、ドキソルビシン、メトトレキサート、タキソール、他のカンプトテシン、ならびにこれら及び他のクラスの抗がん剤由来の他のものなども挙げられる。他のがん化学療法薬としては、ナイトロジェンマスタード、スルホン酸アルキル、ニトロソ尿素、トリアゼン、葉酸類似体、ピリミジン類似体、プリン類似体、白金配位化合物、ホルモンなどが挙げられる。適切な化学療法剤は、REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES,19th Ed.(Mack Publishing Co.1995)及びGOODMAN AND GILMAN’S THE PHARMACOLOGICAL BASIS OF THERAPEUTICS,7th Ed.(MacMillan Publishing Co.1985)ならびにこれらの刊行物の改訂版に記載されている。実験薬などの他の適切な化学療法剤は当業者に既知である。
【0129】
有用な例示的薬物としては、限定されないが、5-フルオロウラシル、アファチニブ、アプリジン、アザリビン、アナストロゾール、アントラサイクリン、アキシチニブ、AVL-101、AVL-291、ベンダムスチン、ブレオマイシン、ボルテゾミブ、ボスチニブ、ブリオスタチン-1、ブスルファン、カリケアマイシン、カンプトテシン、カルボプラチン、10-ヒドロキシカンプトテシン、カルムスチン、セレコキシブ、クロラムブシル、シスプラチン(CDDP)、Cox-2阻害剤、イリノテカン(CPT-11)、SN-38、カルボプラチン、クラドリビン、カンプトテカン、クリゾチニブ、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン、ダサチニブ、ジナシクリブ、ドセタキセル、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、2-ピロリノドキソルビシン(2P-DOX)、シアノ-モルホリノドキソルビシン、ドキソルビシングルクロニド、エピルビシングルクロニド、エルロチニブ、エストラムスチン、エピドフィロトキシン、エルロチニブ、エンチノスタット、エストロゲン受容体結合剤、エトポシド(VP16)、エトポシドグルクロニド、リン酸エトポシド、エキセメスタン、フィンゴリモド、フロクスウリジン(FUdR)、3’,5’-O-ジオレオイル-FudR(FUdR-dO)、フルダラビン、フルタミド、ファルネシル-タンパク質トランスフェラーゼ阻害剤、フラボピリドール、ホスタマチニブ、ガネテスピブ、GDC-0834、GS-1101、ゲフィチニブ、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、イブルチニブ、イダルビシン、イデラリシブ、イホスファミド、イマチニブ、L-アスパラギナーゼ、ラパチニブ、レノリダミド、ロイコボリン、LFM-A13、ロムスチン、メクロレタミン、メルファラン、メルカプトプリン、6-メルカプトプリン、メトトレキサート、ミトキサントロン、ミトラマイシン、マイトマイシン、ミトタン、ナベルビン、ネラチニブ、ニロチニブ、ニトロソ尿素、オラパリブ、プリコマイシン、プロカルバジン、パクリタキセル、PCI-32765、ペントスタチン、PSI-341、ラロキシフェン、セムスチン、ソラフェニブ、ストレプトゾシン、SU11248、スニチニブ、タモキシフェン、テマゾロミド(DTICの水性形態)、トランス白金、サリドマイド、チオグアニン、チオテパ、テニポシド、トポテカン、ウラシルマスタード、バタラニブ、ビノレルビン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンカアルカロイド及びZD1839が挙げられる。そのような薬剤は、本明細書に記載のコンジュゲートの一部でもよく、または代わりに、コンジュゲートより前、コンジュゲートと同時、またはコンジュゲーの後のいずれかで、記載されるコンジュゲートと組み合わせて投与されてもよい。あるいは、当技術分野で既知である1種または複数の治療的ネイキッド抗体を記載されるコンジュゲートと組み合わせて使用することができる。例示的治療的ネイキッド抗体は、上に記載される。
【0130】
好ましい実施形態では、DNA切断抗体コンジュゲート(例えば、SN-38-ADC)と組み合わせて使用される治療剤は、微小管阻害剤、例えば、ビンカアルカロイド、タキサン、マイタンシノイドまたはオーリスタチンである。例示的な既知の微小管阻害剤としては、パクリタキセル、ビンクリスチン、ビンブラスチン、メルタンシン、エポチロン、ドセタキセル、ディスコデルモリド、コンブレスタチン、ポドフィロトキシン、CI-980、フェニルアヒスチン、ステガナシン、クラシン、2-メトキシエストラジオール、E7010、メトキシベンゼンスルホンアミド、ビノレルビン、ビンフルニン、ビンデシン、ドラスタチン、スポンギスタチン、リゾキシン、タシドチン、ハリコンドリン、ヘミアステリン、クリプトフィシン52、MMAE及びエリブリンメシレートが挙げられる。
【0131】
代替の好ましい実施形態では、DNA切断ADC、例えば、SN-38-抗体コンジュゲートと組み合わせて使用される治療剤は、PARP阻害剤、例えば、オラパリブ、タラゾパリブ(BMN-673)、ルカパリブ、ベリパリブ、CEP9722、MK4827、BGB-290、ABT-888、AG014699、BSI-201、CEP-8983または3-アミノベンズアミドである。
【0132】
別の代替法では、抗体または免疫複合体と組み合わせて使用される治療剤は、チロシンキナーゼ阻害剤、例えば、イブルチニブ(PCI-32765)、PCI-45292、CC-292(AVL-292)、ONO-4059、GDC-0834、LFM-A13またはRN486である。
【0133】
さらに別の代替法では、抗体または免疫複合体と組み合わせて使用される治療剤は、PI3K阻害剤、例えば、イデラリシブ、ウォルトマニン、デメトキシビリジン、ペリホシン、PX-866、IPI-145(デュベリシブ)、BAY80-6946、BEZ235、RP6530、TGR1202、SF1126、INK1117、GDC-0941、BKM120、XL147、XL765、パロミド529、GSK1059615、ZSTK474、PWT33597、IC87114、TG100-115、CAL263、PI-103、GNE477、CUDC-907、AEZS-136またはLY294002である。
【0134】
カンプトテシンコンジュゲートと一緒に使用することができる治療剤は、標的化部分にコンジュゲートした毒素を含むこともできる。この関連で使用することができる毒素とてしては、リシン、アブリン、RNA分解酵素(RNase)、DNase I、ランピルナーゼ、Staphylococcalのエンテロトキシン-A、ヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質、ゲロニン、ジフテリア毒素、Pseudomonas外毒素及びPseudomonas内毒素が挙げられる(例えば、Pastan.et al.,Cell(1986),47:641、及びSharkey and Goldenberg,CA Cancer J Clin.2006 Jul-Aug;56(4):226-43を参照されたい)。本明細書における使用に適したさらなる毒素は当業者に既知であり、U.S.6,077,499に開示されている。
【0135】
さらに別のクラスの治療剤は、1種または複数の免疫調節剤を含むことができる。有用な免疫調節剤は、サイトカイン、幹細胞増殖因子、リンホトキシン、造血因子、コロニー刺激因子(CSF)、インターフェロン(IFN)、エリスロポエチン、トロンボポエチン及びこれらの組み合わせから選択することができる。特に有用なものは、リンホトキシ、例えば腫瘍壊死因子(TNF)、造血因子、例えばインターロイキン(IL)、コロニー刺激因子、例えば、顆粒球-コロニー刺激因子(G-CSF)または顆粒球マクロファージ-コロニー刺激因子(GM-CSF)、インターフェロン、例えば、インターフェロン-α、-β、-γまたは-λ、及び例えば、「S1因子」と呼ばれる幹細胞増殖因子である。サイトカインの中に含まれるものは、成長ホルモン、例えば、ヒト成長ホルモン、N-メチオニルヒト成長ホルモン及びウシ成長ホルモン;副甲状腺ホルモン;チロキシン;インスリン;プロインスリン;リラキシン;プロリラキシン;糖タンパク質ホルモン、例えば、卵胞刺激ホルモン(FSH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)及び黄体形成ホルモン(LH);肝臓増殖因子;プロスタグランジン、線維芽細胞増殖因子;プロラクチン;胎盤性ラクトゲン、OBタンパク質;腫瘍壊死因子-α及び-β;ミュラー管阻害物質;マウスゴナドトロピン関連ペプチド;インヒビン;アクチビン;血管内皮増殖因子;インテグリン;トロンボポエチン(TPO);神経成長因子、例えば、NGF-β;血小板増殖因子;トランスフォーミング増殖因子(TGF)、例えば、TGF-α及びTGF-β;インスリン様増殖因子-I及び-II;エリスロポエチン(EPO);骨誘導因子;インターフェロン、例えば、インターフェロン-α、-β、-γ及び-λ;コロニー刺激因子(CSF)、例えば、マクロファージ-CSF(M-CSF);インターロイキン(IL)、例えば、IL-1、IL-1α、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12;IL-13、IL-14、IL-15、IL-16、IL-17、IL-18、IL-21、IL-25、LIF、KitリガンドまたはFLT-3、アンギオスタチン、トロンボスポンジン、エンドスタチン、腫瘍壊死因子ならびにリンホトキシン(LT)である。本明細書で使用する場合、用語サイトカインは、天然源由来または組換え細胞培養由来のタンパク質、及び天然配列サイトカインの生物学的に活性な均等物を含む。
【0136】
有用なケモカインとしては、RANTES、MCAF、MIP1-アルファ、MIP1-β及びIP-10が挙げられる。
【0137】
抗体または抗体断片にコンジュゲートしたカンプトテシンを含む主題の免疫複合体は、単独で、または1種もしくは複数の他の治療剤、例えば、第2の抗体、第2の抗体断片、第2の免疫複合体、放射性核種、毒素、薬物、化学療法剤、放射線療法、ケモカイン、サイトカイン、免疫調節剤、酵素、ホルモン、オリゴヌクレオチド、RNAiもしくはsiRNAと組み合わせて使用することができることを、当業者は理解するであろう。そのようなさらな治療剤は、主題の抗体-薬物免疫複合体と別々に、この複合体と組み合わせて、またはこの複合体に結合させて、投与することができる。
【0138】
製剤及び投与
コンジュゲートの適切な投与経路としては、限定はされないが、経口、非経口、皮下、直腸、経粘膜、腸の投与、筋肉内、髄内、髄腔内、直接脳室内、静脈内、硝子体内、腹腔内、鼻腔内または眼内の注射が挙げられる。好ましい投与経路は非経口である。あるいは、全身的な様式よりもむしろ局部的に、例えば、固形腫瘍中へ化合物を直接注射することによって、化合物を投与することができる。
【0139】
既知の方法に従って免疫複合体を製剤化して、医薬的に有用な組成物に調製することができ、これによって、免疫複合体は、医薬的に適切な賦形剤と混合物中で組み合わされる。無菌リン酸緩衝食塩水は医薬的に適切な賦形剤の一例である。他の適切な賦形剤は当業者に周知である。例えば、Ansel et al.,PHARMACEUTICAL DOSAGE FORMS AND DRUG DELIVERY SYSTEMS,5th Edition(Lea & Febiger 1990)及びGennaro(ed.),REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES,18th Edition(Mack Publishing Company 1990)ならびにこれらの改訂版を参照されたい。
【0140】
好ましい実施形態では、免疫複合体は、N-(2-アセトアミド)-2-アミノエタンスルホン酸(ACES)、N-(2-アセトアミド)イミノ二酢酸(ADA)、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-2-アミノエタンスルホン酸(BES)、4-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-1-エタンスルホン酸(HEPES)、2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)、3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)、3-(N-モルホリニル)-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸(MOPSO)、及びピペラジン-N,N’-ビス(2-エタンスルホン酸)[Pipes]からなる群から選択されるバッファーを使用して、グッドの生物学的バッファー(pH6~7)中で製剤化される。より好ましいバッファーは、好ましくは20~100mMの濃度範囲の、より好ましくは約25mMのMESまたはMOPSである。最も好ましいのは25mM MES、pH6.5である。製剤は、25mMトレハロース及び0.01%v/vポリソルベート80を賦形剤としてさらに含むことができ、賦形剤の添加の結果として最終的なバッファー濃度は22.25mMに変えられる。好ましい保存方法は、コンジュゲートの凍結乾燥製剤としてであり、-20℃~2℃の温度範囲で保存され、最も好ましい保存は2℃~8℃である。
【0141】
免疫複合体は、例えば、ボーラス注射、緩徐注入または持続注入による静脈内投与用に製剤化することができる。好ましくは、本発明の抗体は、約4時間未満の期間にわたって、より好ましくは約3時間未満の期間にわたって注入される。例えば、最初の25~50mgを30分以内、好ましくは、さらには15分以内に注入することができ、残りを次の2~3時間にわたって注入することができる。注射用の製剤は、単位剤形で、例えばアンプル中に、または多回用量容器中に、添加された防腐剤とともに提供することができる。組成物は、油性または水性ビヒクル中の懸濁液、溶液または乳濁液のような形態をとることができ、懸濁化剤、安定化剤及び/または分散剤などの調合剤を含むことができる。あるいは、活性成分は、使用前に適切なビヒクル、例えば発熱物質を含有しない無菌水で構成するための粉末形態でもよい。
【0142】
治療的コンジュゲートの作用持続期間を制御するために、さらなる医薬的方法を用いることができる。制御放出調製物は、免疫複合体を複合体化または吸着するためのポリマーを使用して調製することができる。例えば、生体適合性ポリマーは、ポリ(エチレン-co-酢酸ビニル)のマトリックス及びステアリン酸二量体とセバシン酸のポリ酸無水物コポリマーのマトリックスを含む。Sherwood et al.,Bio/Technology 10:1446(1992)。そのようなマトリックスからの免疫複合体の放出速度は、免疫複合体の分子量、マトリックス内の免疫複合体の量及び分散される粒子のサイズに依存する。Saltzman et al.,Biophys.J.55:163(1989)、Sherwood et al.,上記。他の固形剤形は、Ansel et al.,PHARMACEUTICAL DOSAGE FORMS AND DRUG DELIVERY SYSTEMS,5th Edition(Lea & Febiger 1990)及びGennaro(ed.),REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES,18th Edition(Mack Publishing Company 1990)ならびにこれらの改訂版に記載されている。
【0143】
一般に、ヒトに投与される免疫複合体の投薬量は、患者の年齢、体重、身長、性別、一般的な医学的状態及び以前の病歴などの因子によって変動する。状況に応じて、より低いまたはより高い投薬量を投与することもができるが、単回静脈内注入として約1mg/kg~24mg/kgの範囲の免疫複合体の投薬量をレシピエントに提供することが望ましい場合がある。例えば、70kgの患者に対する1~20mg/kgの投薬量は70~1,400mgであり、または1.7m患者の患者に対して41~824mg/mである。必要に応じて、投薬量は反復することができ、例えば、4~10週にわたって週1回、8週にわたって週1回、または4週にわたって週1回である。これは、維持療法において、必要に応じて、数か月にわたって隔週、または何か月にもわたって月1回もしくは3カ月に1回のように、より低頻度に与えることもできる。好ましい投薬量としては、限定されないが、1mg/kg、2mg/kg、3mg/kg、4mg/kg、5mg/kg、6mg/kg、7mg/kg、8mg/kg、9mg/kg、10mg/kg、11mg/kg、12mg/kg、13mg/kg、14mg/kg、15mg/kg、16mg/kg、17mg/kg、18mg/kg、19mg/kg、20mg/kg、22mg/kg及び24mg/kgを挙げることができる。1~24mg/kgの範囲の任意の量を使用することができる。しかし、好ましい実施形態では、投薬量範囲は、4~16mg/kg、6~12mg/kgまたは8~10mg/kgであり得る。
【0144】
投薬量は、好ましくは、週に1回または2回、複数回投与される。4週、より好ましくは、8週、より好ましくは、16週またはそれ以上の最小投薬スケジュールを使用することができる。投与スケジュールは、(i)毎週、(ii)隔週、(iii)1週の療法、それに続く、2、3または4週の休止、(iv)2週の療法、それに続く、1、2、3または4週の休止、(v)3週の療法、それに続く、1、2、3、4または5週の休止、(vi)4週の療法、それに続く、1、2、3、4または5週の休止、(vii)5週の療法、それに続く、1、2、3、4または5週の休止、及び(viii)月1回からなる群から選択されるサイクルで、週1回または2回の投与を含むことができる。サイクルは、4、6、8、10、12、16または20回またはそれ以上反復することができる。
【0145】
あるいは、免疫複合体は2または3週毎に1投薬量として投与することができ、合計で少なくとも3投薬量について反復することができる。または、4~6週にわたって週2回である。投薬量が200~300mg/m(1.7mの患者に対して投薬あたり340mg、または70kgの患者に対して4.9mg/kg)まで下げられる場合、これは、4~10週にわたって1回またはさらには週2回投与することができる。あるいは、投与スケジュールを減らすこと(すなわち、2~3か月にわたって2または3週毎)ができる。しかし、週1回または2~3週毎に1回の12mg/kgなどのより高い用量でさえ、反復投薬サイクルの間、緩徐静脈注入により投与することができることが決定されている。投薬スケジュールは、場合により、他の間隔で反復することができ、投薬量は、用量及びスケジュールを適切に調整して、様々な非経口経路を通して与えることができる。
【0146】
好ましい実施形態では、免疫複合体は、がんの療法に有用である。がんの例としては、限定されないが、癌腫、リンパ腫、膠芽腫、黒色腫、肉腫及び白血病、骨髄腫またはリンパ系腫瘍が挙げられる。そのようながんのより具体的な例を以下に記載し、それらとしては、以下が挙げられる:扁平上皮癌(例えば、上皮扁平上皮癌)、ユーイング肉腫、ウィルムス腫瘍、星状細胞腫、肺癌、例えば、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺の腺癌及び肺の扁平上皮癌、腹膜癌、胃部または胃の癌(gastric or stomach cancer)、例えば、胃腸癌、膵臓癌、多形神経膠芽腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、ヘパトーム、肝細胞癌、神経内分泌腫瘍、甲状腺髄様癌、分化甲状腺癌、乳癌、卵巣癌、結腸癌、直腸癌、子宮内膜癌または子宮癌、唾液腺癌、腎臓癌(kidney or renal cancer)、前立腺癌、外陰癌、肛門癌、陰茎癌、ならびに頭頸部癌。用語「がん」は、原発性の悪性細胞または腫瘍(例えば、細胞が元の悪性腫瘍または腫瘍の部位以外の対象の体内の部位に遊走していないもの)及び二次悪性細胞または腫瘍(例えば、最初の腫瘍部位と異なる二次部位への悪性細胞または腫瘍細胞の転移、遊走から生じるもの)を含む。
【0147】
他のがんまたは悪性腫瘍の例としては、限定されないが、以下が挙げられる:急性小児リンパ芽球性白血病、急性リンパ性白血病、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、副腎皮質癌腫、成人(原発性)肝細胞癌、成人(原発性)肝臓癌、成人急性リンパ性白血病、成人急性骨髄性白血病、成人ホジキンリンパ腫、成人リンパ球性白血病、成人非ホジキンリンパ腫、成人原発性肝臓癌、成人軟部組織肉腫、エイズ関連リンパ腫、エイズ関連悪性腫瘍、肛門癌、星状細胞腫、胆管癌、膀胱癌、骨癌、脳幹神経膠腫、脳腫瘍、乳癌、腎盂及び尿管の癌、中枢神経系(原発性)リンパ腫、中枢神経系リンパ腫、小脳星状細胞腫、大脳星状細胞腫、子宮頸癌、小児(原発性)肝細胞癌、小児(原発性)肝臓癌、小児急性リンパ性白血病、小児急性骨髄性白血病、小児脳幹神経膠腫、小児小脳星状細胞腫、小児大脳星状細胞腫、小児頭蓋外胚細胞腫瘍、小児ホジキン病、小児ホジキンリンパ腫、小児視床下部及び視経路グリオーマ、小児リンパ芽球性白血病、小児髄芽腫、小児非ホジキンリンパ腫、小児松果体及びテント上原始神経外胚葉性腫瘍、小児原発性肝臓癌、小児横紋筋肉腫、小児軟部組織肉腫、小児視覚路及び視床下部神経膠腫、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、結腸癌、皮膚T細胞リンパ腫、膵臓内分泌部島細胞癌、子宮内膜癌、上衣腫、上皮癌、食道癌、ユーイング肉腫及び関連腫瘍、膵外分泌癌、頭蓋外胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞腫瘍、肝外胆管癌、眼癌、女性乳癌、ゴーシェ病、胆嚢癌、胃癌、消化管カルチノイド腫瘍、胃腸腫瘍、胚細胞腫瘍、妊娠性絨毛腫瘍、ヘアリーセル白血病、頭頸部癌、肝細胞癌、ホジキンリンパ腫、高ガンマグロブリン血症、下咽頭癌、腸癌、眼内黒色腫、島細胞癌、島細胞膵臓癌、カポジ肉腫、腎臓癌、喉頭癌、唇及び口腔の癌、肝臓癌、肺癌、リンパ増殖性障害、マクログロブリン血症、男性乳癌、悪性中皮腫、悪性胸腺腫、髄芽腫、黒色腫、中皮腫、転移性潜在性原発性扁平上皮頸部癌、転移性原発性扁平上皮頸部癌、転移性扁平上皮頸部癌、多発性骨髄腫、多発性骨髄腫/形質細胞新生物、骨髄異形成症候群、骨髄性白血病(Myelogenous Leukemia)、骨髄白血病(Myeloid Leukemia)、骨髄増殖性疾患、鼻腔及び副鼻腔癌、鼻咽頭癌、神経芽腫、非ホジキンリンパ腫、非黒色腫皮膚癌、非小細胞肺癌、潜在性原発性転移性扁平上皮頸部癌、中咽頭癌、骨/悪性線維性肉腫、骨肉腫/悪性線維性組織球腫、骨肉腫/骨の悪性線維性組織球腫、卵巣上皮癌、卵巣胚細胞腫瘍、卵巣低悪性潜在腫瘍、膵臓癌、パラプロテイン血症、真性多血症、副甲状腺癌、陰茎癌、褐色細胞腫、下垂体腫瘍、原発性中枢神経系リンパ腫、原発性肝臓癌、前立腺癌、直腸癌、腎細胞癌、腎盂及び尿管癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺癌、サルコイドーシス肉腫、セザリー症候群、皮膚癌、小細胞肺癌、小腸癌、軟部組織肉腫、扁平上皮頸部癌、胃癌、テント上原始神経外胚葉性及び松果体腫瘍、T細胞リンパ腫、精巣癌、胸腺腫、甲状腺癌、腎盂及び尿管の移行上皮癌、移行性腎盂及び尿管癌、絨毛性腫瘍、尿管及び腎盂細胞癌、尿道癌、子宮癌、子宮肉腫、腟癌、視覚路及び視床下部神経膠腫、外陰癌、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、ウィルムス腫瘍、ならびに新生物の他に、上に列挙した器官系に位置する任意の他の過剰増殖性疾患。
【0148】
本明細書で記載及び主張する方法及び組成物は、悪性または前がん性状態を治療するのに、及び限定されないが、上記の障害を含めた新生物または悪性状態への進行を予防するのに使用することができる。そのような使用は、新生物またはがんへの前述の進行が既知であるか、その疑いがある状態において、特に、過形成、化生、または最も詳細には異形成からなる非新生物の細胞増殖が生じている場合に、指示される(そのような異常な増殖状態の総説について、Robbins and Angell, Basic Pathology,2d Ed.,W.B.Saunders Co.,Philadelphia,pp.68-79(1976)を参照されたい)。
【0149】
異形成はがんの前兆であることが多く、上皮に主に見出される。これは、非新生物性細胞増殖の最も無秩序な形態であり、個々の細胞均一性及び細胞の構築的配向の喪失をともなう。異形成は、慢性の刺激または炎症が存在する場合に特徴的に生じる。治療することができる異形成障害としては、限定されないが、以下が挙げられる。無汗性外胚葉異形成、前後異形成、窒息性胸郭異形成、心房指異形成(atriodigital dysplasia)、気管支肺異形成症、大脳異形成、子宮頸部異形成、軟骨外胚葉異形成、鎖骨頭蓋異形成、先天性外胚葉異形成、頭蓋骨幹異形成、頭蓋手根足根骨異形成、頭蓋骨幹端異形成、象牙質異形成症、骨幹異形成、外胚葉異形成、エナメル質異形成、脳眼異形成、片肢性骨端骨異形成(dysplasia epiphysialis hemimelia)、多発性骨端異形成、点状骨端異形成、上皮異形成、顔面指趾生殖器異形成、家族性線維性顎異形成、家族性白色襞性異形成、線維筋性異形成、線維性骨異形成、開花性骨異形成、遺伝性腎‐網膜異形成、発汗性外胚葉形成異形成、無汗性外胚葉異形成、リンパ性減少性胸腺異形成、乳房異形成、下顎顔面異形成、骨幹端異形成、モンディーニ異形成、単骨性線維性骨異形成、粘膜上皮異形成、多発性骨端異形成、眼耳脊椎異形成、眼歯指異形成、眼脊椎異形成、歯原性異形成、眼下顎異形成(opthalmomandibulomelic dysplasia)、根尖性セメント質異形成、多骨性線維性骨異形成、偽軟骨発育不全脊椎骨端異形成、網膜異形成、中隔視神経異形成、脊椎骨端異形成及び心室橈骨異形成。
【0150】
治療することができるさらなる新生物発生前の障害としては、限定されないが、良性異常増殖性(dysproliferative)障害(例えば、良性腫瘍、線維嚢胞性状態、組織肥大、腸のポリープまたは腺腫及び食道異形成)、白斑症、角化症、ボーエン病、農夫皮膚、日光口唇炎及び日光角化症が挙げられる。好ましい実施形態では、本発明の方法は、癌、特に上に列挙したものの増殖、進行及び/または転移を阻害するのに使用される。
【0151】
さらなる過剰増殖性疾患、障害及び/または状態としては、限定されないが、以下が挙げられる。悪性腫瘍及び関連障害、例えば、白血病(急性白血病、例えば、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病[骨髄芽球性、前骨髄性、骨髄単球性、単球性及び赤血白血病を含める]を含める)ならびに慢性白血病(例えば、慢性骨髄性[顆粒球性]白血病及び慢性リンパ性白血病)、真性多血症、リンパ腫(例えば、ホジキン病及びノナ-ホジキン病)、多発性骨髄腫、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、重鎖病、ならびに固形腫瘍、例えば、限定されないが、肉腫及び癌腫、例えば、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌腫、脂腺癌、乳頭癌、乳頭腺癌腫、嚢胞腺癌腫、髄様癌、気管支原性癌、腎細胞癌、ヘパトーム、胆管癌、絨毛上皮腫、セミノーマ、胎生期癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌、精巣腫瘍、肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌腫、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽腫(emangioblastoma)、聴神経腫瘍、乏突起神経膠腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽腫及び網膜芽細胞腫の進行及び/または転移。
【0152】
免疫複合体で治療することができる自己免疫疾患としては、以下を挙げることができる。急性及び慢性の免疫性血小板減少、皮膚筋炎、シデナム舞踏病、重症筋無力症、全身性エリテマトーデス、ループス腎炎、リウマチ熱、多腺性症候群、水疱性類天疱瘡、糖尿病、ヘノッホ-シェーンライン紫斑病、連鎖球菌感染後の腎炎、結節性紅斑、高安動脈炎、ANCA関連脈管炎、アジソン病、関節リウマチ、多発性硬化症、サルコイドーシス、潰瘍性大腸炎、多形性紅斑、IgA腎症、結節性多発動脈炎、強直性脊椎炎、グッドパスチャー症候群、閉塞性血栓血管炎、シェーグレン症候群、原発性胆汁性肝硬変、橋本甲状腺炎、甲状腺中毒症、強皮症、慢性活動性肝炎、多発性筋炎/皮膚筋炎、多発性軟骨炎、水疱性類天疱瘡、尋常性天疱瘡、ウェゲナー肉芽腫症、膜性腎症、筋萎縮性側索硬化症、脊髄癆、巨細胞性動脈炎/多発性筋痛、悪性貧血、急速進行性糸球体腎炎、乾癬または線維化性肺胞隔炎。
【0153】
キット
様々な実施形態が、患者のがんを治療するのに適した成分を含むキットに関係する。例示的キットは、本明細書に記載の少なくとも1つの薬物コンジュゲート化抗体を含むことができる。投与のための成分を含む組成物が、経口送達によるなどの消化管を介する送達用に製剤化されない場合、ある他の経路を通してキット成分を送達することができる装置を含むことができる。非経口送達などの用途のための装置の1つのタイプは、対象の体内に組成物を注射するのに使用されるシリンジである。吸入装置を使用することもできる。
【0154】
キット成分は一緒に包装されてもよく、または2つ以上の容器に分離されていてもよい。いくつかの実施形態では、容器は、再構成に適した組成物の無菌凍結乾燥製剤を含むバイアルでもよい。キットは、再構成及び/または他の試薬の希釈に適した1種または複数のバッファーも含むことができる。使用することができる他の容器としては、限定されないが、パウチ、トレイ、箱、チューブなどが挙げられる。キット成分を容器内で無菌的に包装及び維持することができる。含めることができる別の成分は、その使用のためにキットを使用する人に対する指示書である。
【実施例
【0155】
以下の実施例は本発明の実施形態の例示であり、特許請求の範囲を制限するものではない。
【0156】
実施例1.IMMU-132(サシツズマブゴビテカン)、抗Trop-2-SN-38抗体薬物コンジュゲート(ADC)によるGI癌の標的療法
Trop-2は、多くの上皮癌で非常に広く認められる腫瘍関連糖タンパク質である。その発現上昇は、より侵襲性の疾患及び予後不良と関連づけられた。Trop-2の細胞外ドメインに結合するヒト化MAbをCPT-11の活性成分であるSN-38にコンジュゲートした(IMMU-132;平均薬物:mAb比=7.6)。ヒト腫瘍異種移植片における強力な活性の後に、GI癌を含めた種々の固形腫瘍を有する複数の患者(pts)において第I/II相試験を開始した。
【0157】
方法:標準療法に失敗した後に、転移性がんを有する患者を登録し、3週サイクルの1日目及び8日目に与える8.0mg/kgの用量で開始した。MTDを12mg/kgであると決定し、8及び10mg/kgの用量レベルを第II相試験のために選択した。
【0158】
結果:進行GI癌を有する60人の患者を第I/II相試験に登録した。29人のCRC患者(9人は10mg/kgで治療し、20人は8mg/kgで治療した)において、1人はPR(部分応答)を有し、14人はRECISTによる最良応答としてSD(安定疾患)を有しており、PRについて50+週の無増悪期間(TTP)(-65%)及びSD患者について21+週の中央値(5人継続)を有していた。13人のCRC患者はKRAS突然変異を有しており、7人は19.1+週のTTP中央値を有するSDを示した(範囲、12.0~34.0;3人継続)。治療した15人の膵臓癌患者(8mg/kgで5人、10mg/kgで7人、及び12mg/kgで3人)のうち、7人は15.0週のTTP中央値に対する最良応答としてSDを有していた。食道癌を有する11人の患者(9人は8mg/kgで、1人は10mg/kgで、及び1人は18mg/kgで開始した)の中で、8人がCT評価を受け、これは、30+週のTTPを有する1人のPR、ならびに17.4+、21.9、26.3及び29.9週のSDを有する4人を示した。5人の胃癌患者(8mg/kgで2人及び10mg/kgで3人)のうち、3人のみがCT評価を受け、すべてSDを示した(1人が19%の標的病変低減及び29+週の進行中のTTPを有していた)。
【0159】
好中球減少が主な用量制限毒性であり、他の一般に報告されている毒性として疲労、下痢、悪心及び嘔吐をともなった。しかし、全試験における75人の患者からの毒性プロファイルは、それぞれわずか17.3%及び2.7%のグレード3及びグレード4の好中球減少、及びほんの6.7%のグレード3の下痢を示した。
【0160】
結論:IMMU-132は、種々の再発転移性GI癌の患者において高い治療指数を示した。これは、内部移行するがん選択的mAbにコンジュゲートした中程度に毒性の薬物を有し、これは、21日サイクルで週1回×2で、何か月にもわたって反復して与えることができる。
【0161】
実施例2.抗Trop-2-SN-38抗体-薬物コンジュゲートの生成及び使用
ヒト化RS7(hRS7)抗Trop-2抗体を、その図及び実施例セクションは参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,238,785号に記載されているように生成した。CL2Aリンカーに結合したSN-38を生成し、米国特許第7,999,083号(その実施例10及び12が参照により本明細書に組み込まれる)に従って、hRS7(抗Trop-2)、hPAM4(抗MUC5ac)、hA20(抗CD20)またはhMN-14(抗CEACAM5)抗体にコンジュゲートした。このコンジュゲーションプロトコールは、抗体分子あたり約6個の結合SN-38分子の比をもたらした。
【0162】
皮下のヒト膵臓または結腸腫瘍異種移植片を有する免疫無防備状態の胸腺欠損ヌードマウス(雌)を特定のCL2A-SN-38コンジュゲートまたは対照コンジュゲートのいずれかで治療したか、また未治療のままにした。特定のコンジュゲートの治療効力が観察された。図1はCapan1膵臓腫瘍モデルを示し、hRS7(抗Trop-2)、hPAM4(抗MUC-5ac)及びhMN-14(抗CEACAM5)抗体の特定のCL2A-SN-38コンジュゲートが、対照hA20-CL2A-SN-38コンジュゲート(抗CD20)及び未治療対照よりも良好な有効性を示した。ヒト膵臓癌のBXPC3モデルにおいて同様に、特異的hRS7-CL2A-SN-38は、対照治療よりも優れた治療効力を示した(図2)。
【0163】
実施例3.インビボにおける種々の上皮癌に対する抗Trop-2-SN-38ADCの有効性
要約
本研究の目的は、いくつかのヒト固形腫瘍タイプに対するSN-38-抗Trop-2(hRS7)ADCの効力を評価すること、ならびにマウス及びサル(後者は、ヒトと同様にhRS7への組織交差反応性を有する)においてその忍容性を評価することであった。2つのSN-38誘導体、CL2-SN-38及びCL2A-SN-38を抗Trop-2-ヒト化抗体、hRS7にコンジュゲートした。この免疫複合体を、安定性、結合及び細胞毒性についてインビトロで特徴づけた。効力は、Trop-2抗原を発現する5つの異なるヒト固形腫瘍-異種移植モデルで試験した。毒性は、マウス及びカニクイザルで評価した。
【0164】
2つのSN-38誘導体のhRS7コンジュゲートは、薬物置換(約6)、細胞結合(K約1.2nmol/L)、細胞毒性(IC50約2.2nmol/L)及びインビトロ血清安定性(t/1/2約20時間)が同等であった。ADCへの細胞の曝露は、PARP切断につながるシグナリング経路を示したが、p53及びp21のアップレギュレーションにおける遊離SN-38との違いが認められた。非標的化対照ADCと比較して、Calu-3(P≦0.05)、Capan-1(P<0.018)、BxPC-3(P<0.005)及びCOLO205腫瘍(P<0.033)を有するマウスにおいて、無毒用量のhRS7-SN-38によって有意な抗腫瘍効果がもたらされた。マウスは2×12mg/kg(SN-38当量)の用量に忍容性を示し、ALT及びAST肝臓酵素レベルが一時的にだけ上昇した。2×0.96mg/kgで注入されたカニクイザルは、血球数の一過的な減少のみを示したが、重要なことに、その値は正常範囲を下回らなかった。
【0165】
要約すると、抗Trop-2hRS7-CL2A-SN-38ADCは、様々なヒト固形腫瘍タイプに対して有意且つ特異的な抗腫瘍効果をもたらした。これは、サルにおいて十分な忍容性が示され、Trop-2の組織発現は臨床的に適切な用量でヒトと同様であった。
【0166】
序論
主に、活性SN-38代謝物へのCPT-11プロドラッグの低い変換率により、固形腫瘍を有する患者の好結果のイリノテカン治療は限られている。他のものたちは、この変換の必要性を回避するための、及びSN-38を受動的に腫瘍に送達するための手段として、非標的化形態のSN-38を検討した。本発明者らは、ヒト化抗Trop-2抗体、hRS7にSN-38を共有結合的にコンジュゲートした。この抗体-薬物コンジュゲートは、すべて無毒用量(例えば、≦3.2mg/kgの累積SN-38当量の用量)で、非小細胞肺癌、膵臓癌、結腸直腸癌及び扁平上皮細胞肺癌を含めた様々な皮下ヒトがん異種移植モデルにおいて特異的な抗腫瘍効果を有する。Trop-2は多くの上皮癌だけでなく、いくつかの正常組織でも広く発現しているので、カニクイザルにおいて用量漸増研究を行って、このコンジュゲートの臨床的安全性を評価した。サルは、24mg SN-38当量/kgに忍容性を示し、軽微な可逆的毒性のみを有していた。その腫瘍標的化及び安全性プロファイルを考えれば、hRS7-SN-38は、イリノテカンへ応答性の固形腫瘍の管理において有意な改善をもたらす。
【0167】
材料及び方法
細胞株、抗体、及び化学療法剤-本研究で使用するすべてのヒトがん細胞株は、アメリカ培養細胞系統保存機関から購入した。これらには、Calu-3(非小細胞肺癌)、SK-MES-1(扁平上皮細胞肺癌)、COLO205(結腸腺癌)、Capan-1及びBxPC-3(膵臓腺癌)ならびにPC-3(前立腺腺癌)が含まれる。ヒト化RS7 IgG及び対照ヒト化抗CD20(hA20 IgG、ベルツズマブ)及び抗CD22(hLL2 IgG、エプラツズマブ)抗体は、Immunomedics,Inc.によって調製された。イリノテカン(20mg/mL)は、Hospira,Inc.から得た。
【0168】
SN-38免疫複合体及びインビトロ態様-CL2-SN-38の合成は以前に記載されている(Moon et al.,2008,J Med Chem 51:6916-26)。hRS7 IgGへのそのコンジュゲーション及び血清安定性は、記載(Moon et al.,2008,J Med Chem 51:6916-26、Govindan et al.,2009,Clin Chem Res 15:6052-61)のように行った。CL2A-SN-38(分子量1480)及びそのhRS7コンジュゲートの調製、ならびに安定性、結合及び細胞毒性研究は、上記の実施例に記載されているように行った。
【0169】
インビボにおける治療的研究-すべての動物研究について、SN-38免疫複合体及びイリノテカンの用量は、SN-38当量で示す。6の平均SN-38/IgG置換比に基づくと、20gのマウスに対する500μg ADCの用量(25mg/kg)は、0.4mg/kgのSN-38を含む。イリノテカンの用量は、同様にSN-38当量として示す(すなわち、40mgイリノテカン/kgは、24mg/kgのSN-38に相当する)。
【0170】
4~8週齢のNCr雌胸腺欠損ヌード(nu/nu)マウス、及び10週齢の雄Swiss-Websterマウスは、Taconic Farmsから購入した。忍容性研究は、SNBL USA,Ltdによって、カニクイザル(Macaca fascicularis;2.5~4kgの雄及び雌)において行われた。
【0171】
異なるヒトがん細胞株を動物に皮下移植した。腫瘍体積(TV)は、キャリパーを使用して2寸法で測定することによって決定し、体積はL×w/2と定義し、式中、Lは腫瘍の最も長い寸法であり、wは最も短い寸法である。療法開始時に、腫瘍は0.10~0.47cmのサイズの範囲であった。各実験の治療レジメン、投薬量及び動物数は結果に記載する。凍結乾燥したhRS7-CL2A-SN-38及び対照ADCを再構成し、必要に応じて、無菌生理食塩水中に希釈した。静脈内投与したイリノテカンを除いて、すべての試薬は腹腔内投与した(0.1mL)。投薬レジメンは、本発明者らの以前の調査の影響を受け、この場合、様々な期間にわたって4日毎または週2回ADCを与えた(Moon et al.,2008,J Med Chem 51:6916-26、Govindan et al.,2009,Clin Chem Res 15:6052-61)。この投薬頻度は、ADCへのより持続的な暴露を可能にするために、コンジュゲートのインビトロ血清半減期の考慮を反映した。
【0172】
統計-増殖曲線は、経時的な、最初のTVの変化パーセントとして示す。腫瘍増殖の統計解析は曲線下面積(AUC)に基づいた。個々の腫瘍増殖のプロファイルは、線形-曲線モデリングを介して得た。増殖曲線の統計解析の前にf検定を用いて群間の等分散性を決定した。片側t検定を使用した生理食塩水対照P≦0.05の有意性)を除いて、両側t検定を使用して、様々な治療群と対照の間の統計的有意性を評価した(P≦0.05の有意性)。AUCの統計学的比較は、進行が原因で群内の最初の動物を安楽死させるときまでしか行わなかった。
【0173】
薬物動態及び生体内分布-111Inで放射標識したhRS7-CL2A-SN-38及びhRS7 IgGを皮下SK-MES-1腫瘍(約0.3cm)を有するヌードマウスに注射した。1つの群に20μCi(250μgタンパク質)の111In-hRS7-CL2A-SN-38を静脈内注射し、一方、別の群に20μCi(250μgタンパク質)の111In-hRS7 IgGを与えた。様々な時点で、マウス(時点あたり5匹)に麻酔をかけ、これらから心臓内穿刺を介して採血し、次いで安楽死させた。腫瘍及び様々な組織を取り出し、γシンチレーションによってカウントして、グラム組織あたりの注射された用量のパーセンテージ(%ID/g)を決定した。第3の群は、250μgの非標識hRS7-CL2A-SN-38を注射し、その3日後に111In-hRS7-CL2A-SN-38を投与し、同様に剖検した。f検定を使用して等分散性を決定した後、両側t検定を使用して、hRS7-CL2A-SN-38及びhRS7 IgGの取り込みを比較した。WinNonLinソフトウェア(Parsight Corp.)を使用して、血液クリアランスに対する薬物動態解析を行った。
【0174】
Swiss-Websterマウス及びカニクイザルにおける忍容性-手短に言えば、マウスを4群に選別し、それぞれ、結果に記載されているように、0日目及び3日目に、ナトリウム酢酸バッファー対照または3つの異なる用量のhRS7-CL2A-SN-38(4、8もしくは12mg/kgのSN-38)のいずれかの2mLの腹腔内注射を与え、続いて、血液及び血清を採取した。カニクイザル(3匹の雄及び3匹の雌;2.5~4.0kg)に2つの異なる用量のhRS7-CL2A-SN-38を投与した。投薬量、時間及び考えられる血液毒性及び血清化学の評価のために採血したサルの数を結果に記載する。
【0175】
結果
hRS7-CL2A-SN-38の安定性及び効力-2つの異なる結合を使用して、hRS7 IgGにSN-38をコンジュゲートした(図3A)。最初のものはCL2-SN-38と呼ばれ、以前に記載されている(Moon et al.,2008,J Med Chem 51:6916-26、Govindan et al.,2009,Clin Chem Res 15:6052-61)。CL2Aリンカーを生成するために、リンカー内のフェニルアラニン部分を除去するためのCL2の合成の変更を用いた。この変更によって合成が簡単になったが、コンジュゲーションの結果は影響を受けなかった(例えば、CL2-SN-38とCL2A-SN-38の両方ともIgG分子あたり約6個のSN-38が組み込まれた)。サイド・バイ・サイド比較により、血清安定性、抗原結合またはインビトロ細胞毒性に有意差は見られなかった。CL2中のフェニルアラニン残基は、リソソームのプロテアーゼであるカテプシンBに対して設計された切断部位の一部であるので、この結果は驚くべきことであった。
【0176】
CL2からCL2AへのSN-38リンカーの変化がインビボ効力に影響しなかったことを確証するために、COLO205(図3B)またはCapan-1腫瘍(図3C)を有するマウスにおいてhRS7-CL2A及びhRS7-CL2-SN-38を比較し、それぞれ、週2回×4週の0.4mgまたは0.2mg/kgのSN-38を使用し、両方の研究で0.25cmサイズの出発腫瘍を用いた。hRS7-CL2AとCL2-SN-38の両方のコンジュゲートが、未治療(COLO205モデルにおいてAUC14日P<0.002対生理食塩水;Capan-1モデルにおいてAUC21日P<0.001対生理食塩水)、及び非標的化抗CD20対照ADC、hA20-CL2A-SN-38(COLO-205モデルにおいてAUC14日P<0.003;Capan-1モデルおいてAUC35日:P<0.002)と比較して、腫瘍増殖を有意に阻害した。Capan-1モデルの研究の終わり(140日目)で、hRS7-CL2A-SN-38で治療したマウスの50%及びhRS7-CL2-SN-38マウスの40%は腫瘍がなく、一方で、hA20-ADC治療動物の20%のみが目に見える疾患徴候を有していなかった。図3に示すように、CL2AリンカーはCL2と比較していくらか高い効力をもたらした。
【0177】
作用機構-インビトロ細胞毒性研究によって、hRS7-CL2A-SN-38がいくつかの異なる固形腫瘍株に対してnmol/L範囲のIC50値を有することが示された(表2)。すべての細胞株において、遊離SN-38についてのIC50はコンジュゲートより低かった。Trop-2の発現とhRS7-CL2A-SN-38への感受性の間に明らかな相関はなかったが、ADC対遊離SN-38のIC50比は、Trop-2-発現がより高い細胞において、より低く、これは、より多くの抗原が存在する場合に薬物を内部移行させる能力が増強されることを反映する可能性が最も高い。
【0178】
SN-38は、細胞中のいくつかのシグナリング経路を活性化し、アポトーシスを導くことが知られている(例えば、Cusack et al.,2001,Cancer Res 61:3535-40、Liu et al.2009,Cancer Lett 274:47-53、Lagadec et al.,2008,Br J Cancer 98:335-44)。本発明者らの最初の研究は、初期シグナリングイベントに関与する2つのタンパク質の発現(p21Waf1/Cip1及びp53)ならびにインビトロでの1つの後期アポトーシスイベント[ポリ-ADP-リボースポリメラーゼ(PARP)の切断]を検討した(非表示)。BxPC-3では、SN-38はp21Waf1/Cip1発現の20倍の増大を引き起こし(非表示)、一方で、hRS7-CL2A-SN-38は10倍の増大しかもたらさなかった(非表示)。この知見は、この細胞株における、遊離SN-38についてのより高い活性と矛盾がない(表2)。しかし、hRS7-CL2A-SN-38は、Calu-3において、p21Waf1/Cip1の発現を遊離SN-38よりも2倍より多く増大させた(非表示)。
【0179】
p53発現において、hRS7-CL2A-SN-38媒介性シグナリングイベントと遊離SN-38媒介性シグナリングイベントの間でより大きな相違が観察された(非表示)。BxPC-3とCalu-3の両方において、遊離SN-38によるp53のアップレギュレーションは48時間まで明らかでなかったが、hRS7-CL2A-SN-38は24時間以内にp53をアップレギュレートした(非表示)。さらに、ADCに曝露された細胞におけるp53の発現は、SN-38と比較して、両方の細胞株においてより高かった(非表示)。興味深いことに、hRS7 IgGはp21Waf1/Cip1の発現に対して認識できるほどの効果はなかったけれども、これは、BxPC-3とCalu-3の両方においてp53のアップレギュレーションを確かに誘導し、しかしこれは48時間曝露後のみであった(非表示)。後期のアポトーシスイベントに関しては、SN-38またはコンジュゲートのいずれかとともにインキュベートした場合に、PARPの切断は両方の細胞株で明らかであった(非表示)。切断されたPARPの存在は、BxPC-3において24時間でより高く(非表示)、これは、p21の高発現及びそのより低いIC50と相関する。遊離SN-38による、ADCより高い程度の切断は、細胞毒性の知見と矛盾がない。
【0180】
hRS7-SN-38の有効性-Trop-2はいくつかのヒト癌腫で広く発現しているので、いくつかの異なるヒトがんモデルで研究を行い、これは、hRS7-CL2-SN-38結合を使用して開始したが、後に、CL2A-結合を有するコンジュゲートを使用した。hRS7-CL2-SN-38の0.04mgのSN-38/kgを4日毎×4で与えたCalu-3を有するヌードマウスは、同等量の非標的化hLL2-CL2-SN-38を投与した動物と比較して、応答が有意に向上した(それぞれ、TV=0.14±0.22cm対0.80±0.91cm;AUC42日P<0.026;図4A)。0.4mg/kg SN-38まで用量を増大させた場合に、用量応答が観察された(図4A)。このより高い用量レベルで、特異的hRS7コンジュゲートを与えたすべてのマウスは28日以内に「治癒し」、147日目の研究の終わりまで腫瘍がないままであったが、不適切なADCで治療した動物において、腫瘍が再増殖した(特定対不適切AUC98日:P=0.05)。hRS7 IgGとSN-38の混合物を受けたマウスでは、腫瘍は、56日目までに>4.5倍進行した(TV=1.10±0.88cm;AUC56日P<0.006対hRS7-CL2-SN-38)(図4A)。
【0181】
有効性はまた、ヒト結腸(COLO205)及び膵臓(Capan-1)腫瘍異種移植片でも検討した。COLO205腫瘍を有する動物(図4B http://clincancerres.aacrjournals.org/content/17/10/3157.long-F3)では、hRS7-CL2-SN-38(0.4mg/kg、q4dx8)は、over the 28日間の治療期間にわたって腫瘍増殖を防止し、対照の抗CD20 ADC(hA20-CL2-SN-38)またはhRS7 IgGと比較して、有意に小さな腫瘍を有していた(それぞれ、TV=0.16±0.09cm、1.19±0.59cm及び1.77±0.93cm;AUC28日P<0.016)。
【0182】
【表2】
【0183】
ヒト血清よりもマウス血清がイリノテカンをSN-38により効率的に変換することができる(Morton et al.,2000,Cancer Res 60:4206-10)ので、イリノテカンのMTD(24mg SN-38/kg、q2d×5)は、COLO205細胞において、hRS7-CL2-SN-38と同じくらい有効であったが、イリノテカン中のSN-38用量(累積で2,400μg)はコンジュゲート(合計で64μg)よりも37.5倍大きかった。
【0184】
Capan-1を有する動物(図4C)は、hRS7-CL2-SN-38コンジュゲートと同等のSN-38用量で与えた場合、イリノテカン単独に対して有意な応答を示さなかった(例えば、35日目で、平均腫瘍サイズは、0.4mg/kg SN-38を与えたイリノテカン治療動物における1.78±0.62cmに対して、0.4mg SN-38/kg hRS7-SN-38を与えた動物で0.04±0.05cmであった;AUC35日目P<0.001;図4C)。イリノテカン用量を4mg/kg SN-38まで10倍に増大させた場合、応答は向上したが、依然として、0.4mg/kg SN-38用量レベルのコンジュゲートほど有意ではなかった(TV=0.17±0.18cm対1.69±0.47cm、AUC49日P<0.001)(図4C)。等用量の非標的化hA20-CL2-SN-38もイリノテカン治療動物と比べて有意な抗腫瘍効果があったが、特異的hRS7コンジュゲートは不適切なADCよりも有意に優れていた(TV=0.17±0.18cm対0.80±0.68cm、AUC49日<0.018)(図4C)。
【0185】
次いで、hRS7-CL2A-SN-38ADCを用いる研究をヒト上皮癌の2つの他のモデルに広げた。BxPC-3ヒト膵臓腫瘍を有するマウス(図4D)では、生理食塩水または同等量の非標的化hA20-CL2A-SN-38(それぞれ、TV=0.24±0.11cm対1.17±0.45cm及び1.05±0.73cm;AUC21日P<0.001)または10倍高いSN-38当量の用量で与えたイリノテカン(それぞれ、TV=0.27±0.18cm対0.90±0.62cm;AUCday25P<0.004)で治療した対照マウスと比べると、hRS7-CL2A-SN-38は再び腫瘍増殖を有意に阻害した(図4D)。興味深いことに、0.4mg/kgのADCで治療した、SK-MES-1ヒト扁平上皮細胞肺腫瘍を有するマウス(図4E)では、腫瘍増殖阻害は、生理食塩水または非コンジュゲート化hRS7 IgGより優れていた(それぞれ、TV=0.36±0.25cm対1.02±0.70cm及び1.30±1.08cm;AUC28日、P<0.043)が、非標的化hA20-CL2A-SN-38またはイリノテカンのMTDは特異的hRS7-SN-38コンジュゲートと同じ抗腫瘍効果をもたらした(図5E)。
【0186】
すべてのマウス研究において、hRS7-SN-38ADCは体重減少に関して十分な忍容性を示した(非表示)。
【0187】
hRS7-CL2A-SN-38の生体内分布-SK-MES-1ヒト扁平上皮細胞肺癌異種移植片を有するマウス(非表示)において、それぞれの111In-標識された基質を使用して、hRS7-CL2A-SN-38または非コンジュゲート化hRS7 IgGの生体内分布を比較した。薬物動態解析を行って、非コンジュゲート化hRS7と比較して、hRS7-CL2A-SN-38のクリアランスを決定した(非表示)。ADCは、同等量の非コンジュゲート化hRS7よりも速く排除され、ADCは約40%短い半減期及び平均滞留時間を示した。それにもかかわらず、これは、腫瘍取り込みに対して最小限の影響しか与えなかった(非表示)。24時間及び48時間の時点で有意差はあったが、72時間(ピーク取り込み)まで、腫瘍中の両方の薬剤の量は同様であった。正常組織の中で、肝臓及び脾臓の違いが最も著しかった(非表示)。注射後24時間で、肝臓中にhRS7 IgGよりも>2倍多いhRS7-CL2A-SN-38が存在した(非表示)。逆に、脾臓では、ピーク取り込み時(48時間時点)に、hRS7-CL2A-SN-38よりも3倍多い親hRS7 IgGが存在した(非表示)。残りの組織の取り込み及びクリアランスは、一般に、血中濃度の違いを反映した(非表示)。
【0188】
療法のために週2回の投与を与えたので、111In-標識抗体の注射の3日前に0.2mg/kg(250μgタンパク質)のhRS7 ADCの前投与を最初に受けた動物群の腫瘍取り込みを検討した。前投与されたマウスの111In-hRS7-CL2A-SN-38の腫瘍取り込みは、前投与を与えなかった動物と比べると、すべての時点で実質的に低減した(例えば、72時間で、前投与を受けなかった動物の25.4%±8.1%ID/gに対して、前投与の腫瘍取り込みは12.5%±3.8%ID/gであった;P=0.0123;非表示http://clincancerres.aacrjournals.org/content/17/10/3157.long-F4)。前投薬は、血液クリアランスまたは組織取り込みに対して認識できるほどの影響を与えなかった(非表示)。これらの研究は、いくつかの腫瘍モデルにおいて、特異的抗体の腫瘍癒着を前投与(複数可)によって低減させることができることを示唆し、これは、なぜADC用量の増加とともに治療応答の特異性が低下され得るか、及びなぜさらなる用量漸増が示されないかを説明すると思われる。
【0189】
Swiss-Websterマウス及びカニクイザルにおけるhRS7-CL2A-SN-38の忍容性。Swiss-Websterマウスは、それぞれ4、8及び12mg SN-38/kgのhRS7-CL2A-SN-38の3日間にわたる2回投与に忍容性を示し、最小限の一過的な体重減少があった。造血毒性は生じず、血清化学によって、アスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST、図5A)及びアラニントランスアミナーゼ(ALT、図5B)の上昇が明らかなっただけであった。治療してから7日後に、ASTは3治療群すべてで正常レベルを超えて上昇し(>298U/L)(図5A)、最大割合のマウスは2×8mg/kg群内であった。しかし、治療後15日までに、ほとんど動物は正常範囲内に入った。ALTレベルも、治療の7日以内に正常範囲を超え(>77U/L)(図5B)、15日目までに正常化のエビデンスがあった。これらすべてのマウスの肝臓は、組織損傷の組織学的エビデンスを示さなかった(非表示)。腎機能に関して、治療群においてグルコース及び塩化物のレベルのみがいくらか上昇した。2×8mg/kgでは、7匹のマウスのうち5匹でグルコースレベルがわずかに上昇し(273~320mg/dLの範囲、正常の上限263mg/dL)、これは、注射後15日までに正常に戻った。同様に、塩化物レベルはわずかに上昇し、2つの最高投薬量群(2×8mg/kg群において57%及び2×12mg/kg群において100%のマウス)において116~127mmol/Lの範囲(正常範囲の上限115mmol/L)であり、注射後15日過ぎまで上昇したままであった。これは、ほとんどの塩化物が消化管による吸収を介して得られるので、胃腸毒性も示し得るが、しかし、終了時に、検討したいかなる器官系においても組織損傷の組織学的エビデンスはなかった(非表示)。
【0190】
マウスはhRS7が認識するTrop-2を発現しないので、臨床的使用のためのhRS7コンジュゲートの可能性を決定するために、より適切なモデルが必要とされた。免疫組織学的研究によって、ヒト及びカニクイザルの両方の複数の組織における結合が明らかになった(乳房、眼、消化管、腎臓、肺、卵巣、卵管、膵臓、副甲状腺、前立腺、唾液腺、皮膚、胸腺、甲状腺、扁桃腺、扁桃、尿管、膀胱及び子宮;非表示)。この交差反応性に基づいて、忍容性研究をサルで行った。
【0191】
2×0.96mg SN-38/kgのhRS7-CL2A-SN-38を受けた群は、注入後及び研究の終了まで有意な臨床事象がなかった。体重減少は7.3%を超えず、15日目までに順化体重に戻った。一過的な減少が血球数データの多くで認められた(好中球及び血小板のデータを図5C及び図5Dに示す)が、値は正常範囲を下回らなかった。血清化学において異常な値は見られなかった。11日目(最後の注射から8日後)に剖検した動物の組織病理検査は、造血器官(胸腺、下顎リンパ節及び腸間膜リンパ節、脾臓ならびに骨髄)、胃腸器官(胃、十二指腸、空腸、回腸、盲腸、結腸及び直腸)、雌の生殖器(卵巣、子宮及び膣)において、ならびに注射部位で微視的な変化を示した。これらの変化は、最小から中程度の範囲であり、すべての組織で回復期間の終わり(32日目)に完全に回復した(この後の時点で完全な回復に向かっている傾向があった胸腺及び消化管を除く)。
【0192】
2×1.92mg SN-38/kg用量レベルのコンジュゲートでは、胃腸合併症及び骨髄抑制に起因する1匹の死亡があり、この群内の他の動物は、類似しているが、2×0.96mg/kg群よりも重度の有害事象を示した(非表示)。これらのデータは、用量制限毒性はイリノテカンのものと同一、すなわち、腸毒性及び血液学毒性であったことを示す。したがって、hRS7-CL2A-SN-38に対するMTDは2×0.96~1.92mg SN-38/kgの間にあり、これは、2×0.3~0.6mg/kg SN-38のヒト同等用量に相当する。
【0193】
考察
Trop-2は、肺、乳房、結腸直腸、膵臓、前立腺及び卵巣癌を含めた多くの上皮腫瘍で発現しているタンパク質であり、これによって、Trop-2は、細胞毒性剤を送達するための潜在的に重要な標的になる(Ohmachi et al.,2006,Clin Cancer Res 12:3057-63、Fong et al.,2008,Br J Cancer 99:1290-95、Cubas et al.,2009,Biochim Biophys Acta 1796:309-14)。RS7抗体は、Trop-2に結合すると内部移行し(Shih et al.,1995,Cancer Res 55:5857s-63s)、これによって、細胞毒の直接的細胞内送達が可能になる。
【0194】
SN-38は、いくつかの細胞株においてナノモル範囲のIC50値を有する、強力なトポイソメラーゼ-I阻害剤である。これは、結腸直腸癌の治療に使用され、肺、乳房及び脳の腫瘍においても活性を有するプロドラッグ、すなわちイリノテカンの活性型である。本発明者らは、ADCの形態で直接的に標的化されるSN-38は、活性SN-38へのCPT-11の低く且つ及び患者によって変わりやすい生物変換を克服することによって、CPT-11よりも有意に向上した治療剤になるであろうと推論した(Mathijssen et al.,2001,Clin Cancer Res 7:2182-94)。
【0195】
元のCL2誘導体に挿入されたPhe-Lysペプチドは、カテプシンBを介して起こり得る切断を可能にした。合成プロセスを単純化するために、CL2Aにおいて、フェニルアラニンを除き、それにより、カテプシンB切断部位を除去した。興味深いことに、この生成物は、CL2を用いて得られた幅広いプロファイルと比較して、より良好に規定されたクロマトグラフィープロファイルを有していたが(非表示)、さらに重要なことに、この変更は、サイド・バイ・サイド試験において、コンジュゲートの結合、安定性または効力に影響を与えなかった。これらのデータは、CL2中のSN-38が、主として、カテプシンB切断部位ではなく、SN-38のラクトン環に結合しているpH感受性ベンジルカルボネートにおける切断によって、コンジュゲートから放出されたことを示唆する。
【0196】
様々な固形腫瘍細胞株に対するhRS7 ADCのインビトロ細胞毒性は、一貫して、nmol/L範囲のIC50値を有していた。しかし、遊離SN-38に曝露された細胞は、ADCと比較して低いIC50値を示した。遊離SN-38とコンジュゲート化SN-38の間のこの相違は、ENZ-2208(Sapra et al.,2008,Clin Cancer Res 14:1888-96、Zhao et al.,2008,Bioconjug Chem 19:849-59)及びNK012(Koizumi et al.,2006,Cancer Res 66:10048-56)についても報告された。ENZ-2208は、分枝PEGを利用してPEGあたり約3.5個~4個のSN-38分子を連結し、一方で、NK012は重量基準で20%のSN-38を含むミセルナノ粒子である。本発明者らのADCを用いると、この相違(すなわち、遊離SN-38対コンジュゲート化SN-38の効力の比)は、腫瘍細胞中でTrop-2発現レベルが増大するにつれて低下し、これは、薬物の標的送達にとっての利点を示唆する。インビトロ血清安定性に関して、hRS7-SN-38のCL2形態とCL2A-SN-38形態の両方が、約20時間というt/1/2をもたらし、これは、ENZ-2208について報告された12.3分という短いt/1/2(Zhao et al.,2008,Bioconjug Chem 19:849-59)と対照的であるが、24時間後の、生理的条件下におけるNK012からのSN-38の57%の放出(Koizumi et al.,2006,Cancer Res 66:10048-56)と類似している。
【0197】
hRS7-SN-38(CL2-SN-38またはCL2A-SN-38のいずれか)による腫瘍を有するマウスの治療は、5つの異なる腫瘍モデルにおいて腫瘍増殖を有意に阻害した。これらのうちの4つで、腫瘍退縮が観察され、Calu-3の場合には、最高用量のhRS7-SN-38を受けたすべてのマウスは、研究の終わりに腫瘍がなかった。ヒトの場合と異なり、マウスにおいて、イリノテカンは血漿エステラーゼによってSN-38に非常に効率的に変換され、50%を越える変換率を有し、ヒトにおけるよりも、マウスにおいてより高い効力をもたらす(Morton et al.,2000,Cancer Res 60:4206-10、Furman et al.,1999,J Clin Oncol 17:1815-24)。10倍高いまたは同等のSN-38レベルでイリノテカンが投与された場合、hRS7-SN-38は腫瘍増殖の制御において有意に良好であった。イリノテカンを24mg/kg q2d×5(37.5倍多いSN-38)というそのMTDで投与した場合のみ、hRS7-SN-38の有効性と等しかった。患者において、本発明者らは、イリノテカンの生物変換はかなり低いと思われるので、この利点がさらにいっそうhRS7-CL2A-SN-38に有利であると予測するであろう。
【0198】
本発明者らは、いくつかの抗原発現細胞株、例えばSK-MES-1において、抗原結合ADCを使用して、非結合性の不適切なコンジュゲートよりも良好な治療応答を保証しないことも示した。これは、異常なまたは予期しない発見ではない。実際、上述した非結合性SN-38コンジュゲートは、イリノテカンと比較して治療活性を高めるので、不適切なIgG-SN-38コンジュゲートは、いくらかの活性を有すると期待される。これは、腫瘍が、正常組織よりも良好に巨大分子の通過を可能にする、未成熟の漏れやすい血管を有するという事実と関連している(Jain,1994,Sci Am 271:58-61)。本発明者らのコンジュゲートを用いると、リソソームのレベル(例えば、37℃でpH5.3;データ非表示)を模倣するレベルにpHが下げられる場合、約13時間以内にSN-38の50%が放出されるが、血清の中性pHでは、放出率はほぼ2倍低減する。不適切なコンジュゲートが酸性の腫瘍微小環境に入る場合、いくらかのSN-38を局部的に放出することが予想される。腫瘍の生理機能及び薬物への先天的な感受性などの他の因子もこの「ベースライン」活性の規定において役割を果たす。しかし、より長い滞留時間を有する特定のコンジュゲートは、特異的抗体を捕獲するための十分な抗原が存在する限り、このベースライン応答を超える増強された効力を有するはずである。SK-MES-1モデルにおける生体内分布研究も、連続的な投薬の結果として腫瘍抗原が飽和する場合、特定のコンジュゲートの腫瘍取り込みが低減し、これによって、不適切なコンジュゲートで見られたものと類似した治療結果がもたらされることを示した。
【0199】
本発明者らのADCと他のSN-38送達薬剤の発表された報告を直接的に比較すること困難であるが、いくつか一般的な観察を行うことができる。本発明者らの療法研究では、最も高い個々の用量は0.4mg/kgのSN-38であった。Calu-3モデルでは、1.6mg/kg SN-38または20gのマウスにおいて32μg SN-38の全累積用量について、4回の注射のみが与えられた。ENZ-2208を用いる複数の研究が、10mg/kg×5というそのMTDを使用して行われ(Sapra et al.,2008,Clin Cancer Res 14:1888-96、Pastorini et al.,2010,Clin Cancer Res 16:4809-21)、NK012を用いる前臨床研究は、30mg/kg×3というそのMTDを含んでいた(Koizumi et al.,2006,Cancer Res 66:10048-56)。したがって、それぞれ、ENZ-2208及びNK012において報告された用量よりも30倍及び55倍少ないSN-38当量のhRS7-SN-38を用いて、有意な抗腫瘍効果が得られた。10倍少ないhRS7 ADC(0.04mg/kg)を用いてさえ、有意な抗腫瘍効果が観察されたが、ENZ-2208のより低い用量は提示されておらず、NK012の用量が7.5mg/kgに4倍下げられた場合、効力は失われた(Koizumi et al.,2006,Cancer Res 66:10048-56)。正常なマウスは、24mg/kg SN-38(1,500mg/kgのコンジュゲート)の1週間にわたる累積用量で急性毒性を示さず、これは、MTDがより高かったことを示す。したがって、腫瘍を有する動物は、7.5~15倍低い量のSN-38当量で効果的に治療された。
【0200】
生体内分布の研究によって、hRS7-CL2A-SN-38は、親hRS7 IgGと類似した腫瘍取り込みを有するが、2倍高い肝臓取り込みをともなって、かなり急速に排除されることが明らかになり、これは、SN-38の疎水性による可能性がある。ADCが肝臓を介して排除されるので、肝臓毒性及び胃腸毒性が用量制限であることが予想された。マウスは肝臓のトランスアミナーゼの増加のエビデンスを有していたが、胃腸毒性はいくらよく見ても穏やであり、一過的な体重減少のみがあり、組織病理学検査の際に認められた異常はなかった。興味深いことに、血液毒性は認められなかった。しかし、サルは、イリノテカンについて予想されたものと同一の毒性プロファイルを示し、胃腸毒性及び血液毒性は用量制限であった。
【0201】
hRS7によって認識されるTrop-2はマウスで発現していないので、Trop-2のヒトと類似した組織発現を有するサルで毒性研究を行うことは重要であった。サルは穏やかな且つ可逆的な毒性を有する0.96mg/kg/用量(約12mg/m)に忍容性を示し、これは、約0.3mg/kg/用量(約11mg/m)のヒト用量に外挿する。NK012の第I相臨床試験では、固形腫瘍を有する患者は、用量制限毒性としてグレード4の好中球減少をともなって、3週毎の28mg/mのSN-38に忍容性を示した(DLT;Hamaguchi et al.,2010,Clin Cancer Res 16:5058-66)。同様に、ENZ-2208を用いる第I相臨床試験によって、用量制限的発熱性好中球減少が明らかにされ、3週毎の10mg/m、または患者がG-CSFを投与された場合は16mg/mの投与が推奨された(Kurzrock et al.,AACR-NCI-EORTC International Conference on Molecular Targets and Cancer Therapeutics;2009 Nov 15-19;Boston,MA;Poster No C216、Patnaik et al.,AACR-NCI-EORTC International Conference on Molecular Targets and Cancer Therapeutics;2009 Nov 15-19;Boston,MA;Poster No C221)。サルが22mg/mという累積ヒト同等用量に忍容性を示したので、hRS7がいくつかの正常組織に結合するとしても、hRS7 ADCの単一治療に対するMTDは、他の非標的化SN-38薬剤のものと類似している得るように思われる。実際に、毒性プロファイルがイリノテカンのものと類似していたので、抗Trop-2抗体の特異性は、DLTの規定において役割を果たすようには思われなかった。さらに重要なことに、ほんの0.03mg SN-38当量/kg/用量のヒト同等用量で応答したマウスと同様に、抗腫瘍活性がヒトにおいて達成され得るならば、有意な抗腫瘍応答が臨床的に実現され得る。
【0202】
結論として、サルにおける毒性学研究は、マウスにおけるインビボのヒトがん異種移植モデルと組み合わせて、Trop-2を標的化するこのADCが、異なる上皮起源のいくつかの腫瘍において有効な治療であることを示した。
【0203】
実施例4.hRS7及びパクリタキセルを含む抗Trop-2ADC
パクリタキセル(タキソール(登録商標))をhRS7抗ヒトTrop-2抗体とコンジュゲートすることによって、新しい抗体-薬物コンジュゲート(ADC)を作製した(hRS7-パクリタキセル)。最終生成物は、2.2の平均薬物対抗体置換比を有していた。標的として2つの異なるTrop-2-陽性細胞株、すなわち、BxPC-3(ヒト膵臓腺癌)及びMDA-MB-468(ヒトトリプルネガティブ乳癌)を使用して、このADCをインビトロで試験した。ADCを添加する1日前に、細胞を組織培養から収集し、ウェルあたり2000細胞で96ウェルプレートにプレーティングした。翌日、遊離パクリタキセル(6.1×10-11~4×10-6M)または薬物当量のhRS7-パクリタキセルに細胞を曝露した。比較のために、hRS7-SN-38及び遊離SN-38も3.84×10-12~2.5×10-7Mの範囲で試験した。プレートを37℃で96時間インキュベートした。このインキュベーション期間の後に、MTS基質をすべてのプレートに加え、発色について、未処理の対照ウェルがおよそ1.0のOD492nmの読み取り値を有するまで、30分間隔で読み取った。Microsoft Excel及びPrismソフトウェア(IC50値をもたらすS字状用量反応曲線を作成するための非線形回帰)を使用して、未処理細胞に対する増殖のパーセントとして増殖阻害を測定した。
【0204】
hRS7-パクリタキセルADCは、MDA-MB-468乳房細胞株において細胞毒性活性を示し(図6)、hRS7-SN-38よりもおよそ4.5倍高いIC50値を有していた。遊離パクリタキセルは、遊離SN-38よりもはるかに強力であった(図6)。遊離SN-38に対するIC50は1.54×10-9Mであったが、遊離パクリタキセルに対するIC50は6.1×10-11M未満であった。BxPC-3膵細胞株について同様の結果が得られ(図7)、hRS7-パクリタキセルADCは、hRS7-SN-38ADCよりもおよそ2.8倍高いIC50値を有していた。これらの結果は、hRS7-SN-38ADCと類似したナノモル範囲のIC50値をともなって、抗Trop-2コンジュゲート化パクリタキセルのインビトロでの効力を示す。
【0205】
実施例5.抗Trop-2抗体の細胞結合アッセイ
ヒトTrop-2に対する2つの異なるマウスモノクローナル抗体をADCコンジュゲーションのために得た。第1の162-46.2は、ローラボトル中で増殖したハイブリドーマ(ATCC、HB-187)から精製した。第2の抗体、MAB650は、R&D Systems(Minneapolis,MN)から購入した。結合の比較のために、Trop-2陽性ヒト胃癌、NCI-N87を標的として使用した。結合アッセイの前日に、細胞(1.5×10/ウェル)を96ウェルプレートにプレーティングした。翌朝、162-46.2、MAB650及びマウスRS7(0.03~66nM)を用いて、用量/応答曲線を作成した。これらの一次抗体を細胞とともに4℃で1.5時間インキュベートした。ウェルを洗浄し、すべてのウェルに抗マウス-HRP二次抗体を4℃で1時間加えた。ウェルを再び洗浄し、続いて、発光基質を加えた。Envisionプレートリーダーを使用してプレートを読み取り、値は相対発光単位として報告する。
【0206】
3つの抗体すべてが、RS7について0.57nM、162-46.2について0.52nM及びMAB650について0.49nMという類似したK値を有していた。しかし、RS7に対する162-46.2とMAB650の最大結合(Bmax)を比較すると、これらは、それぞれ25%及び50%低減し(BMaxは、RS7について11,250、162-46.2について8,471及びMAB650について6,018)、これは、RS7と比べて異なる結合特性を示す。
【0207】
実施例6.抗Trop-2ADC(MAB650-SN-38)の細胞毒性
SN-38及びMAB650を用いて新規な抗Trop-2ADCを作製し、これは、6.89の平均薬物対抗体置換比をもたらした。細胞毒性アッセイを行って、標的として2つの異なるヒト膵臓腺癌細胞株(BxPC-3及びCapan-1)ならびにヒトトリプルネガティブ乳癌細胞株(MDA-MB-468)を使用して、MAB650-SN-38ADCとhRS7-SN-38ADCを比較した。
【0208】
ADCを添加する1日前に、細胞を組織培養から収集し、96ウェルプレートにプレーティングした。翌日、3.84×10-12~2.5×10-7Mの薬物範囲で、hRS7-SN-38、MAB650-SN-38及び遊離SN-38に細胞を曝露した。非コンジュゲート化MAB650をMAB650-SN-38と同じタンパク質当量の用量で対照として使用した。プレートを37℃で96時間インキュベートした。このインキュベーション期間の後に、MTS基質をすべてのプレートに加え、発色について、未処理細胞についておよそ1.0のOD492nmに達するまで30分間隔で読み取った。Microsoft Excel及びPrismソフトウェア(IC50値をもたらすS字状用量反応曲線を作成するための非線形回帰)を使用して、未処理細胞に対する増殖のパーセントとして増殖阻害を測定した。
【0209】
図8に示すように、hRS7-SN-38及びMAB650-SN-38は、これらの細胞株において、SN-38-ADCに典型的な低nM範囲のIC50値をともなって、同様の増殖阻害効果を有していた。ヒトCapan-1膵臓腺癌細胞株(図8A)では、MAB650-SN-38ADCについての4.1nM及び遊離SN-38についての1.0nMと比較して、hRS7-SN-38ADCは3.5nMのIC50を示した。ヒトBxPC-3膵臓腺癌細胞株(図8B)では、MAB650-SN-38ADCについての3.0nM及び遊離SN-38についての1.0nMと比較して、hRS7-SN-38ADCは2.6nMのIC50を示した。ヒトNCI-N87胃腺癌細胞株(図8C)では、MAB650-SN-38ADCについての4.1nM及び遊離SN-38についての4.3nMと比較して、hRS7-SN-38ADCは3.6nMのIC50を示した。
【0210】
要約すると、これらのインビトロアッセイでは、2つの抗Trop-2抗体、hRS7及びMAB650のSN-38コンジュゲートは、いくつかの腫瘍細胞株に対して等しい効力を示し、これは、遊離SN-38のものと類似していた。抗Trop-2抗体の標的化機能は、インビトロよりもインビボではるかに有意な因子であると思われるので、このデータは、hRS7-SN-38について上記の実施例で示したように、1つのクラスとしての抗Trop-2-SN-38ADCがインビボで非常に効果的であろうということを支持する。
【0211】
実施例7.抗Trop-2ADC(162-46.2-SN-38)の細胞毒性
SN-38及び162-46.2を用いて新規な抗Trop-2ADCを作製し、これは、6.14の薬物対抗体置換比をもたらす。細胞毒性アッセイを行って、標的として2つの異なるTrop-2-陽性細胞株、BxPC-3ヒト膵臓腺癌及びMDA-MB-468ヒトトリプルネガティブ乳癌を使用して、162-46.2-SN-38ADC及びhRS7-SN-38ADCを比較した。
【0212】
ADCを添加する1日前に、細胞を組織培養から収集し、ウェルあたり2000細胞で96ウェルプレートにプレーティングした。翌日、3.84×10-12~2.5×10-7Mの薬物範囲で、hRS7-SN-38、162-46.2-SN-38または遊離SN-38に細胞を曝露した。非コンジュゲート化162-46.2及びhRS7をそれぞれ162-46.2-SN-38及びhRS7-SN-38と同じタンパク質当量の用量でコントロールとして使用した。プレートを37℃で96時間インキュベートした。このインキュベーション期間の後に、MTS基質をすべてのプレートに加え、発色について、未処理の対照ウェルがおよそ1.0のOD492nmの読み取りを有するまで30分間隔で読み取った。Microsoft Excel及びPrismソフトウェア(IC50値をもたらすS字状用量反応曲線を作成するための非線形回帰)を使用して、未処理細胞に対する増殖のパーセントとして増殖阻害を測定した。
【0213】
図9A及び図9Bに示すように、162-46.2-SN-38ADCは、hRS7-SN-38と比較して、類似したIC50値を有していた。BxPC-3ヒト膵臓腺癌細胞株に対して試験した場合(図9A)、hRS7-SN-38は、162-46.2-SN-38についての10.6nM及び遊離SN-38についての1.6nMと比較して、5.8nMのIC50を有していた。MDA-MB-468ヒト乳腺癌細胞株に対して試験した場合(図9B)、hRS7-SN-38は、162-46.2-SN-38についての6.1nM及び遊離SN-38についての0.8nMと比較して、3.9nMのIC50を有していた。遊離抗体単独は、いずれのTrop-2陽性がん細胞株にも細胞毒性をほとんど示さなかった。
【0214】
要約すると、同じ細胞毒性薬物にコンジュゲートした3つの異なる抗Trop-2抗体のインビトロでの効力を比較した場合、3つのADCすべては、様々なTrop-2陽性がん細胞株に対して同等の細胞毒性作用を示した。これらのデータは、薬物-コンジュゲート化ADCに組み込まれた抗Trop-2抗体のクラスが、Trop-2発現固形腫瘍に対する有効な抗がん治療剤であることを支持する。
【0215】
実施例8.SN-38にコンジュゲートしたhRS7抗体を含むIMMU-132抗Trop-2ADCを用いた臨床試験
概要
本実施例は、IMMU-132、すなわち、pH感受性リンカーによってSN-38にコンジュゲートした内部移行ヒト化hRS7抗Trop-2抗体のADC(平均薬物-抗体比=7.6)を用いた第I相臨床試験及び進行中の第II相延長の結果を報告する。Trop-2は、高い密度(約1×10)、頻度及び特異性で多くのヒト癌腫が発現しており、正常組織の発現が限られている、I型膜貫通カルシウム伝達タンパク質である。Capan-1ヒト膵臓腫瘍異種移植片を有するヌードマウスにおける前臨床研究によって、IMMU-132が、最大に忍容性を示したイリノテカン療法に由来するものよりも120倍多くのSN-38を腫瘍に送達することができることが明らかにされた。
【0216】
本実施例は、複数の以前の療法(一部はトポイソメラーゼ-I/II阻害薬を含む)に失敗した25人の患者の初期第I相試験、ならびに結腸直腸癌(CRC)、小細胞及び非小細胞肺癌(それぞれ、SCLC、NSCLC)、トリプルネガティブ乳癌(TNBC)、膵臓癌(PDC)、食道癌及び他の癌を含む69人の患者を報告する現在進行中の第II相延長を報告する。
【0217】
以下に詳細に述べるように、Trop-2は血清で検出されなかったが、ほとんどの保存された(archived)腫瘍で強く発現していた(≧2)。3+3試験設計において、IMMU-132は、8mg/kg/用量で開始し、次いで、用量制限好中球減少の前に12及び18mg/kgで、21日反復サイクルの1日目及び8日目に与えた。最小限の遅延で累積治療を最適化するために、第II相は、8及び10mg/kg(それぞれ、n=30及び14)に焦点を合わせる。この時点で関連するAEを報告する49人の患者において、好中球減少≧G3が28%(4%G4)で生じた。これらの患者において初期の最も一般的な非血液毒性は、疲労(55%;≧G3=9%)、悪心(53%;≧G3=0%)、下痢(47%;≧G3=9%)、脱毛症(40%)及び嘔吐(32%;≧G3=2%)であった。ホモ接合性UGT1A128/28が6人の患者で見つかり、そのうちの2人はより重度の血液毒性及びGI毒性を有していた。第I相及び拡大相において、RECIST/CTによって最良応答について評価可能な48人の患者(PDCを除く)が現時点で存在する。CRC(N=1)、TNBC(N=2)、SCLC(N=2)、NSCLC(N=1)及び食道癌(N=1)の患者を含む7人(15%)の患者は部分応答(PR)を有しており、別の27人の患者(56%)は、安定疾患(SD)有しており、合計で38人の患者(79%)が疾患応答を有していた。13人のCT評価可能なPDC患者のうちの8人(62%)はSDを有しており、患者の最後の以前の療法における8.0週と比較して、12.7週の無増悪期間(TTP)中央値を有していた。残りの48人の患者のTTPは12.6+週(範囲6.0~51.4週)である。
【0218】
血漿CEA及びCA19-9は応答と相関した。数か月にもわたる投薬にもかかわらず、抗hRS7または抗SN-38抗体は検出されなかった。コンジュゲートは3日以内に血清から排除され、これは、SN-38の50%が毎日放出され、血清中のSN-38の>95%が非グルクロン酸抱合形態でIgGに結合しており、イリノテカンが与えられた患者で報告されたSN-38よりも100倍も高い濃度であるインビボ動物研究と矛盾がない。これらの結果は、hRS7-SN-38含有ADCが、管理可能な下痢及び好中球減少をともなって、転移性固形がんで治療的に活性であることを示す。
【0219】
薬物動態
2つのELISA方法を使用して、IgGのクリアランス(抗hRS7イディオタイプ抗体による捕獲)及びインタクトなコンジュゲート(抗SN-38IgG/抗hRS7イディオタイプ抗体を有するプローブによる捕獲)を測定した。SN-38はHPLCによって測定した。全IMMU-132画分(インタクトなコンジュゲート)は、IgGよりも急速に排除され(非表示)、これは、コンジュゲートからのSN-38の既知の段階的放出を反映する。SN-38(未結合及び全体)のHPLC測定によって、血清中の>95%のSN-38がIgGに結合していることが示された。低濃度のSN-38Gは、IgGに結合したSN-38がグルクロン酸抱合から保護されていることを示唆する。コンジュゲートに対するELISAとSN-38のHPLCの比較によって、両方の重複が明らかになり、これは、ELISAがSN-38のクリアランスのモニタリングの代用物であることを示唆する。
【0220】
投薬レジメン及び患者調査の概要を表3に示す。
【0221】
【表3】
【0222】
臨床試験ステータス
3つの以前の療法という中央値を有する種々の転移性がんを有する合計で69人の患者(第I相の25人の患者を含む)を報告した。8人の患者は臨床的進行を有し、CT評価の前に離脱した。13人のCT評価可能な膵臓癌患者は別々に報告した。PDC患者におけるTTP中央値(無増悪期間)は、先の最後の療法に対する中央値8週のTTPと比較して11.9週(範囲2~21.4週)であった。
【0223】
種々の癌を有する合計で48人の患者は、少なくとも1回のCT評価を受け、これから、最良応答(図10)及び無増悪期間(TTP;図11)を決定した。最良応答データを要約すると、TNBC(トリプルネガティブ乳癌)を有する8人の評価可能な患者のうち、6/8(75%)の全応答[PR+SD]に関して、2人のPR(部分応答)、4人のSD(安定疾患)及び2人のPD(進行性疾患)があった。SCLC(小細胞肺癌)については、4人の評価可能な患者のうち、2/4(50%)の全応答に関して、2人のPR、0人のSD及び2人のPDがあった。CRC(結腸直腸癌)については、18人の評価可能な患者のうち、12/18(67%)の全応答に関して、1人のPR、11人のSD及び6人のPDがあった。食道癌につついては、4人の評価可能な患者のうち、3/4(75%)の全応答に関して、1人のPR、2人のSD及び1人のPDがあった。NSCLC(非小細胞肺癌)については、5人の評価可能な患者のうち、4/5(80%)の全応答に関して、1人のPR、3人のSD及び1人のPDがあった。治療したすべての患者にわたって、34/48(71%)の全応答に関して、48人の評価可能な患者のうち、7人のPR、27人のSD及び14人のPDがあった。これらの結果は、抗Trop-2ADC(hRS7-SN-38)が、ヒト患者において、幅広い固形腫瘍に対して有意な臨床的効力を示したことを示す。
【0224】
療法の報告された副作用(有害事象)を表4に概説する。表4のデータから明らかなように、hRS7-SN-38の治療効力は、許容可能に低レベルの有害な副作用を示すADCの投薬量で達成された。
【0225】
【表4】
【0226】
抗Trop-2ADCに対する例示的部分応答がCTデータによって確証された(非表示)。CRCにおける例示的PRとして、CRCと最初に診断された62歳の女性は原発性半結腸切除術を受けた。4か月後、彼女は肝転移が原因で肝切除術を受け、FOLFOXで7か月及び5FUで1か月の治療を受けた。彼女は、主として肝臓に複数の病変を呈し(免疫組織像により3+Trop-2)、最初の診断から約1年後に8mg/kgの開始用量でhRS7-SN-38試験に入った。彼女の最初のCT評価では、PRが達成され、標的病変が37%低減した(非表示)。この患者は治療を続け、治療の10か月後に65%の減少という最大低減を達成し(非表示)、CEAは781ng/mLから26.5ng/mLへ減少した後、3か月後に進行した。
【0227】
NSCLCにおける例示的PRとして、65歳の男性はステージIIIBのNSCLC(扁平細胞(sq.cell))と診断された。7000cGyのXRTを一緒に用いたカルボプラチン/エトポシド(3か月)の初期治療は、10か月続く応答をもたらした。次いで、彼はタルセバ維持療法を開始し、腰の椎弓切除術を受けることに加えて、これをIMMU-132試験が考慮されるまで続けた。彼は、タルセバの5か月後にIMMU-132の最初の投与を受け、その時は、大量の胸水とともに右肺に5.6cmの病変を呈した。彼は、2か月後に6回目の投与をちょうど終了し、この時に、最初のCTによって、原発性標的病変が3.2cmに低減したことが示された(非表示)。
【0228】
SCLCにおける例示的PRとして、65歳の女性は低分化SCLCと診断された。無応答で2か月後に終了したカルボプラチン/エトポシド(Topo-II阻害剤)、続いて、同じく無応答で2か月後に終了したトポテカン(Topo-I阻害剤)を受けた後、彼女は、局部XRT(3000cGy)を受け、これは1か月後に終了した。しかし、翌月まで進行が続いた。この患者は、翌月にIMMU-132を開始した(12mg/kg;6.8mg/kgまで低減;Trop-2発現3+)、IMMU-132の2か月後に、主な肺病変の実質的な低減を含めて、標的病変の38%の低減が生じた(非表示)。この患者は、12回の投与を受けた後、3か月後に進行した。
【0229】
これらの結果は、複数の以前の療法の後に失敗したまたは進行した患者においてでさえ、抗Trop-2ADCが効果的であったことを示すという点において重要である。
【0230】
結論として、使用された投薬量で、主な毒性は管理可能な好中球減少であり、グレード3の毒性はほとんどなかった。IMMU-132は、トポイソメラーゼ-I阻害剤療法の際に再発の前歴を有する患者を含めて、トリプルネガティブ乳癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、結腸直腸癌及び食道癌を有する再発性/不応性患者において、活性(PR及び持続的SD)のエビデンスを示した。これらの結果は、現行の療法に抵抗性である幅広いがんにおける抗Trop-2ADCの効力を示す。
【0231】
実施例9.穏やかなに還元された抗体への二官能性SN-38生成物のコンジュゲーション
抗CEACAM5ヒト化MAb、hMN-14(ラベツズマブとしても知られる)、抗CD22ヒト化MAb、hLL2(エプラツズマブとしても知られる)、抗CD20ヒト化MAb、hA20(ベルツズマブとしても知られる)、抗EGP-1ヒト化MAb、hRS7、及び抗ムチンヒト化MAb、hPAM4(クリバツズマブとしても知られる)を、CL2Aリンカーを使用してSN-38にコンジュゲートした。各抗体を、5.4mM EDTAを含む40mM PBS、pH7.4中で37℃(バス)で45分間、50~70倍モル過剰で使用するジチオスレイトール(DTT)で還元した。還元生成物をサイズ排除クロマトグラフィー及び/または透析濾過によって精製し、pH6.5の適切なバッファーにバッファー交換した。エルマンアッセイによってチオール含量を決定し、これは6.5~8.5SH/IgGの範囲であった。あるいは、抗体は、5~7の範囲のpHのリン酸バッファー中のトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)で還元し、続いてインサイチュコンジュゲーションを行った。還元MAbを、共溶媒として7~15%v/vのDMSOを使用して、約10~15倍モル過剰のCL2A-SN-38と反応させ、周囲温度で20分間インキュベートした。遠心分離SEC、疎水性カラムの通過、最後に限外濾過-透析濾過によって、コンジュゲートを精製した。366nmの吸光度及び標準値と相関させることによって、SN-38について生成物をアッセイし、一方で、タンパク質濃度を280nmの吸光度から推定し、この波長でのSN-38の吸光度のスピルオーバーについ補正した。このように、SN-38/MAb置換比を決定した。精製したコンジュゲートは、ガラスバイアル中に凍結乾燥製剤として保存し、真空下で蓋をし、-20℃の冷凍庫で保存した。これらのコンジュゲートについて得られたSN-38モル置換比(MSR)は、典型的には5~7の範囲であった。
【0232】
実施例10.SCLCにおける抗Trop-2ADCとの併用療法
シスプラチナムは進行性小細胞肺癌(SCLC)においてイリノテカンと組み合わせて使用される主な化学療法剤のうちの1つであるので、ヒトSCLC腫瘍(DMS53)を有するマウスにおいて、シスプラチナムとIMMU-132の組み合わせを試験する実験を行った。さらに、カルボプラチンもSCLCで臨床的に使用されているので、この腫瘍モデルでカルボプラチンを試験した。
【0233】
マトリゲルと1:1で混合された、DMS53ストック腫瘍(20%w/v)+組織培養から収集した細胞(マウスあたり5x10細胞)でできている腫瘍懸濁液を、雌のC.B.-17SCIDマウスに皮下注射した。腫瘍が一旦0.270±0.048cmの平均腫瘍体積に達したら、それぞれ9匹のマウスの9つの異なる治療群に動物を分けた。3つのマウス群にIMMU-132(500、250または100μg、腹腔内)を与えたが、対照群に、h679、ヒト化抗ヒスタミン-スクシニル-グリシンIgGで作られた非腫瘍標的化抗体-薬物コンジュゲート(h679-SN-38;500μg腹腔内)を与えた。すべて、4週にわたって週2回投与した。2つの群に、シスプラチナム(5mg/kg腹腔内)またはカルボプラチン(50mg/kg、腹腔内)のいずれかの化学療法のみを4週にわたって週1回与えた。2つの群に、IMMU-132(250μg静脈内、週1回×4週)+シスプラチナムまたはカルボプラチンのいずれかの組み合わせを与えた。最後の未治療マウス対照群に、生理食塩水(100μL腹腔内、週2回×4週)を与えた。週2回腫瘍を測定し、マウスを秤量した。
【0234】
結果
様々な群の平均腫瘍体積を図12に示す。IMMU-132の3用量すべてが、生理食塩水対照動物と比較して有意な抗腫瘍効果を与えた(P<0.0161;AUC片側t検定)。最高用量のIMMU-132(500μg)を用いる療法は、対照のh679-SN-38を含めたすべての単独療法群と比較して、腫瘍を有するマウスにおいて有意に大きな腫瘍退縮をもたらした(P<0.0032;AUC両側t検定)。
【0235】
併用群については、対照のカルボプラチン単独療法群の最初のマウスが41日目(療法14日目)に腫瘍体積>1.0cmのそのエンドポイントに達した時点で、IMMU-132(250μg)+カルボプラチン(図13)が有意性(P=0.0983;AUC両側t検定)近づいていた。しかし、絶対平均腫瘍体積に関して、この日に、IMMU-132(250μg)+カルボプラチンの組み合わせは、カルボプラチン単独療法と比較すると、有意に小さな腫瘍を有していた(それぞれ、0.166±0.019cm対0.602±0.224cm;P=0.0004、両側t検定)。IMMU-132(250μg、週2回)のみで治療したマウスと比較すると、IMMU-132(週1回)+カルボプラチンで治療した動物は、73日目時点で有意に小さな腫瘍を有していた(いくつかのマウスがエンドポイントに達したため、比較の最終日;それぞれ、0.745±0.162cm対0.282±0.153cm;P=0.0003、AUC両側t検定)。
【0236】
IMMU-132(250μg)+シスプラチナムの組み合わせで治療したマウス(図14)は、シスプラチナム単独療法と比較すると、有意な腫瘍増殖阻害を示した(P=0.0002、AUC両側t検定。73日目(シスプラチナム単独療法群のいくつかのマウスがエンドポイントに達したため、比較の最終日)に腫瘍体積を比較した場合、併用群は、シスプラチナム単独療法群のものよりも約6.2倍小さい腫瘍を有していた(それぞれ、0.123±0.040cm対0.758±0.240cm;P<0.0001、両側t検定)。同様に、単独療法群において、IMMU-132は週2回投与されたにもかかわらず、シスプラチナムと組み合わせたIMMU-132(250μg)の週1回スケジュールで治療したマウスは、IMMU-132(250μg)のみで治療した動物よりも有意に小さな腫瘍を有していた(P<0.0001、AUC両側t検定)。最後に、IMMU-132+シスプラチナムの組み合わせは、IMMU-132+カルボプラチンの組み合わせ及び高用量のIMMU-132(500μg)の単独療法治療群を含めたすべての他の群より優れていることが分かった(P<0.0066、AUC両側t検定)。
【0237】
IMMU-132+カルボプラチン治療とIMMU-132+シスプラチナム治療の両方とも、マウスによって十分な忍容性が示された。この腫瘍モデルの異常な態様は、DMS53腫瘍を有するマウスが悪液質を示し(図15)、開始から平均して15%を越える体重が下がったという観察であった。例えば、生理食塩水対照マウスでは、腫瘍量が27日目の0.270±0.053cmから41日目の0.683±0.185cmに増えたので、動物の体重は16.9%±3.4%下がった。しかし、IMMU-132(500μg)単独療法またはIMMU-132+カルボプラチンもしくはシスプラチナムの組み合わせの抗腫瘍効果が明らかになったように、マウスは体重が再び増加し始めた。例えば、IMMU-132+カルボプラチン群では、マウスは38日目までにその最大体重を減らしたが(15.3%±5.6%)、その後、腫瘍が退行するにつれて、マウスはこの減らした体重を取り戻し始め、マウスは58日目までに出発体重の100%に戻った。その間に、腫瘍は、27日目の0.270±0.050cmの出発サイズから0.128±0.0.018cmに退行した。しかし、動物は、療法開始時よりも大きなサイズに腫瘍が再増殖したので、体重を再び下げ始めた(73日目で0.282±0.153cm)。手短に言えば、これらの療法により腫瘍量が減少するにつれて、悪液質の衰弱化効果がこれらのマウスで逆転されており、これは、このヒトSCLC疾患モデルにおけるこれらの組み合わせの利益をさらに示す。
【0238】
実施例11.抗Trop-2-SN-38ADCによるヒトmSCLC患者の療法
概要
トポイソメラーゼI阻害剤であるトポテカンは、第1選択の白金含有レジメンに感受性の患者において第2選択療法として承認されているが、転移性小細胞肺癌(mSCLC)の治療について新しい治療剤はここ20年許可されていない。本実施例では、TROP-2を標的化する抗体から構成され、イリノテカンの活性代謝物、SN-38(トポイソメラーゼI阻害剤でもある)を含む、新規な抗体-薬物コンジュゲート(ADC)、サシツズマブゴビテカンを研究した。2つの以前の療法(範囲1~7)の中央値を有する患者に21日サイクルの1日目及び8日目にADCを与え、中央値で10投与(範囲、1~63)を与えた。主なグレード≧3毒性は管理可能な好中球減少、疲労及び下痢であった。最大63反復投与にもかかわらず、ADCは免疫原性でなかった。
【0239】
43人の評価可能な患者の49パーセントは、ベースラインからの腫瘍サイズの低減があり、客観的応答率(部分応答)は16%であり、安定疾患は患者の49%で達成された。無増悪生存期間の中央値及び全生存期間の中央値は、治療企図(N=53)解析に基づくと、それぞれ3.6か月及び7.0か月であった。このADCは、第1選択の化学療法に化学感受性または化学抵抗性であった患者において、及び第2選択のトポテカン療法を失敗した患者においても活性であった。これらのデータは、進行性mSCLCに対する新しい治療剤としてのサシツズマブゴビテカンの使用を支持する。
【0240】
方法
ステージIVの転移性疾患のための少なくとも1つの以前の標準療法選択に対して再発性であった、または不応性であったmSCLCを有する、及びCTによって測定可能な腫瘍を有する、≧18歳の患者を登録した。患者らは、0または1の米国東海岸癌臨床試験グループ(ECOG)パフォーマンスステータス、十分な骨髄、肝臓及び腎臓の機能、ならびに第I相試験に記載されているような他の適格性を有することが必要とされた(Starodub et al.,2015,Clin Cancer Res 21:3870-8)。以前の療法は、少なくとも登録の4週前に終了していなければならなかった。
【0241】
種々のがんに対して行われるバスケット試験(ClinicalTrials.gov、NCT01631552)のこの部分の全体的目的は、mSCLCを有する患者においてサシツズマブゴビテカンの安全性及び抗腫瘍活性を評価することである。サシツズマブゴビテカンは、50mg/時間の初期注入速度で静脈内投与し、これは、3時間以内に終了した(その後の注入は60~90分以内に終了した)。輸注反応の危険性を低減するために、場合により、前投薬(例えば、ジフェンヒドラミン、アセトアミノフェン及びデキサメタゾン)を処方した。21日サイクルの1日目及び8日目に8または10mg/kgの用量を与え、偶発的に遅延があった(最大2週)。毒性は、血液細胞低減、投与の遅延及び/またはプロトコールに指定されるような修正(例えば、前用量の25%)のための支持的造血増殖因子療法によって、または標準的医療行為によって、管理した。治療は、疾患の進行、代替抗がん療法の開始、許容できない毒性または同意の撤回まで続けた。
【0242】
mSCLCを有する53人の患者を登録した(30人の女性、23人の男性、年齢の中央値63歳(範囲、44~82)。最初の診断からサシツズマブゴビテカンによる治療までの時間の中央値は9.5か月であった(範囲、3~53)。ほとんどの患者は重度に前治療されており、2つの以前の療法選択という中央値を有していた(範囲、1~7)。すべての人にシスプラチナムまたはカルボプラチン+エトポシドを与えた。22人(41%)の患者は1つの以前の療法選択を有しており、一方で、14人(26%)及び17人(32%)は、それぞれ、2及び≧3つの以前の化学療法レジメンが与えられていた。さらに、18人(33%)はトポテカン及び/またはイリノテカンを受けており、9人(16%)がタキサンを受けており、5人(9%)が、ニボルマブ(N=4)またはアテゾリズマブ(N=1)を含む免疫チェックポイント阻害剤療法を受けていた。
【0243】
3か月より長いか短い、白金含有フロントライン療法に対する応答持続期間に基づくと、27人(51%)及び26人(49%)の化学感受性及び化学抵抗性患者がそれぞれいた。ほとんどの患者は、肺(66%)、肝臓(59%)、リンパ節(76%)、胸部(34%)、副腎(25%)、骨(23%)及び胸膜(6%)を含めた複数の器官への転移をともなう広範な疾患を有していた。他の疾患部位には、膵臓(N=4)、脳(N=2)、皮膚(N=2)及び食道壁、卵巣及び洞(各1)が含まれていた。
【0244】
主要エンドポイントは客観的応答が確証された患者の割合であり、これは、各施設の放射線グループまたは契約した地域の放射線サービスによって、疾患の進行までおよそ8週毎に評価された。客観的応答は、Response Evaluation Criteria in Solid Tumors、バージョン1.1(RECIST 1.1)(Eisenhauer et al.,2009,Eur J Cancer 45:228-47)によって評価した。部分応答(PR)または完全応答(CR)は、初期応答から4~6週以内の確証を必要とした。臨床的有用性率(CBR)は、客観的応答+安定疾患(SD)≧4か月を有する患者と定義される。生存は、死亡または同意の撤回まで3か月毎にモニターした。
【0245】
安全性評価は、予定された来院の間に行い、または是認されればそれ以上の頻度で行った。血球数及び血清化学は、サシツズマブゴビテカンの投与の前、及び臨床的に必要な場合に、慣例的に確認した。
【0246】
統計解析-解析に含まれるデータは、2013年11月~2016年6月まで登録され、2017年1月31まで経過観察した患者に由来した。有害事象(AE)の頻度及び重症度は、MedDRA優先用語及び器官別大分類(MedDRA Preferred Term and System Organ Class)(SOC)バージョン10によって定義し、重症度はNCI-CTCAE v4.03によって評価した。サシツズマブゴビテカンを与えたすべての患者は毒性について評価した。
【0247】
プロトコールは、≧2回の投与(1サイクル)を受け、最初の8週間のCT評価を受けた患者について客観的応答率(ORR)を決定することを備えていた。応答持続期間はRECIST1.1の判断基準に従って定め、客観的応答を有するものは応答の最初のエビデンス時から進行まで記録し、一方で、安定疾患の持続期間は治療開始から進行まで記録した。PFS及びOSは、治療開始から進行の客観的評価が決定されるまで(PFS)または死亡まで(OS)定めた。応答持続期間、PFS及びOSは、MedCalc統計ソフトウェア、バージョン16.4.3(Ostend,Belgium)を使用して、95%信頼区間(CI)のカプラン・マイヤー方法によって推定した。
【0248】
腫瘍のTrop-2免疫組織化学ならびにサシツズマブゴビテカン及び成分の免疫原性-Trop-2についての保存(Archival)腫瘍検体をIHCによって染色し、以前に報告されたように(Starodub et al.,2015,Clin Cancer Res 21:3870-8)解明した。陽性は少なくとも10%の腫瘍細胞が染色されることを必要とし、強度は、1+(弱)、2+(中)及び3+(強)としてスコア化した。サシツズマブゴビテカン、IgG抗体及びSN-38への抗体応答を、スポンサーによって行われる酵素結合免疫吸着測定法によって、ベースラインで、次いで、各偶数のサイクルの前に得た血清試料中でモニターした(Starodub et al.,2015,Clin Cancer Res 21:3870-8)。アッセイの感受性は、ADC及びIgGについて50ng/mLであり、抗SN-38抗体について170ng/mLである。
【0249】
【表5】
【0250】
結果
患者-2013年11月~2016年6月まで、mSCLCを有する53人の患者を登録した(30人の男性、23人の女性、年齢の中央値63歳(範囲、44~82)(表5)。最初の診断からサシツズマブゴビテカンによる治療までの時間の中央値は9.5か月(範囲、3~53)であった。ほとんどの患者は重度に前治療されており、2つの以前の療法選択という中央値(範囲、1~7)を有していた。すべての人にシスプラチンまたはカルボプラチン+エトポシドを与えた。22人(41%)の患者は1つの以前の療法選択を有しており、一方で、14人(26%)及び17人(32%)それぞれ、2及び≧3つの以前の化学療法レジメンが与えられていた。さらに、18人(33%)はトポテカン及び/またはイリノテカンを受けており、9人(16%)がタキサンを受けており、5人(9%)が、ニボルマブ(N=4)またはアテゾリズマブ(N=1)を含む、免疫チェックポイント阻害剤療法を受けていた。3か月より長いか短い、白金含有フロントライン療法に対する応答持続期間に基づくと、27人(51%)及び26人(49%)の化学感受性及び化学抵抗性患者がそれぞれいた。ほとんどの患者は、肺(66%)、肝臓(59%)、リンパ節(76%)、胸部(34%)、副腎(25%)、骨(23%)及び胸膜(6%)を含めた複数の器官への転移をともなう広範な疾患を有していた(表5)。他の疾患部位には、膵臓(N=4)、脳(N=2)、皮膚(N=2)及び食道壁、卵巣及び洞(各1)が含まれていた。
【0251】
治療曝露、安全性及び忍容性-登録した53人の患者のうち、2016年5月に最初に治療した2人は、2017年1月31日の締切り日時点でサシツズマブゴビテカン療法を続けていた。すべての他の患者は治療を中止し、そうでなければ、生存をモニターした。590用量より多く(295サイクルを超える)を投与し、患者あたり10用量(範囲、1~63)の中央値であった。注入関連反応は報告されなかった。
【0252】
15人の患者の初期用量は8mg/kgの開始用量で与え、10mg/kgは次の38人の患者の開始用量であった。2つの用量群の間で、25人の患者は≧10用量(≧5サイクル)を受け、2人は62及び63用量(>30サイクル)を受けた。治療期間の中央値は2.5か月(範囲、1~23)であった。好中球減少(グレード≧2)は用量低減に対する唯一の指標であり、2.5用量の中央値(範囲、1~9)の後、10mg/kg用量レベルで、29%(11/38)の患者において記録された。8mg/kgで治療した15人の患者のうちの2人(13%)は低減があり、1人は2用量後であり、もう一人は41用量(20サイクル)後であった。一旦低減されると、さらなる低減はまれであった。治療関連死は観察されなかった。
【0253】
本試験では、10人の患者は最初の応答評価の前に脱落し、4人は1用量を受け、5人は2用量を受け、もう1人は4用量後であった。3人は、1または2回用量を受けた後、応答評価に不適格であり、これは、1人はSCLCとNSCLCの混合組織像を有しており、他の2人は、サシツズマブゴビテカンの第1用量を受けた後に試験前の脳及び/または脊髄転移と診断されたからである。第2用量に間に合うよう回復しなかった、1用量後にCTCAEグレード3有害事象(好中球減少及び疲労)を報告した2人の患者は、プロトコール指針に準拠して中止された。4人の患者は2用量後に研究から離脱し、2人は同意を撤回し、2人はグレード2の疲労が原因で離脱した。さらなる患者は、同時多発性合併性のために4回の治療後に研究を離れ、最初の応答評価の前に突然死亡した。
【0254】
少なくとも1用量のサシツズマブゴビテカンを受けた53人の患者において最も頻繁に報告されたAEは、悪心、下痢、疲労、脱毛症、好中球減少、嘔吐及び貧血であった(表6)。グレード3または4の好中球減少は34%(18/53)の患者で生じ、1人の患者のみが発熱性好中球減少を有していた。他のグレード3または4の有害事象は少なく、これには、疲労(13%)、下痢(9%)、貧血(8%)、アルカリホスファターゼの増大(8%)及び低ナトリウム血(8%)が含まれていた。8mg/kg用量群において用量低減を必要とする患者はより少なかったが(13%対10mg/kgの28%)、10mg/kg用量レベルは同様に十分な忍容性を示し、少数の患者で用量変更及び/または増殖因子の支持があった。
【0255】
【表6】
【0256】
有効性-記載のように、登録した53人のmNSCLC患者のうち、10人は最初のCT応答評価より前に中止になり、サシツズマブゴビテカンの少なくとも2用量及び少なくとも1回の経過観察スキャンを受けた後に、プロトコール要求の応答の客観的評価により43人の患者を残した。図16は、43人の患者についての標的病変の直径の合計の最高パーセンテージ変化のウォーターフォールプロット(図16A)、PRまたはSDステータスの達成者についての応答の持続期間を示すグラフ(図16B)、ならびにPR及びSDを有する患者の経時的応答変化を追跡するプロット(図16C)を含む、応答の一連のグラフ表示を提供する。
【0257】
43人のCT評価可能な患者のうちの21人(49%)は、ベースラインからの腫瘍サイズの低減を経験した(図16A)。確証部分応答(≧30%低減)は7人の患者で生じ、16%のORRをもたらした(表7)。これらの患者における応答に対する時間の中央値は2.0か月(範囲、1.8~3.6か月)であり、5.7か月(95%CI:3.6、19.9)というカプラン・マイヤーによって推定された応答持続期間の中央値を有していた。7人の応答者のうちの2人は、最後の経過観察時に進行中の応答を有しており(すなわち、患者は生きており、疾患の進行がなく代替抗がん治療を開始していなかった)、治療開始から1人は7.2+月であり、もう一人は8.7+月であった(図1B図1C)。
【0258】
【表7】

【0259】
安定疾患(SD)は21人の患者(49%)で決定され、その後の確証的なCTで維持されなかった(非確証PRまたはPRu)>30%の腫瘍低減を初期に有していた6人(14%)及び≧20%の腫瘍低減を有していた3人の患者を含んでいた。10人の患者が≧4か月(カプラン・マイヤー由来中央値=5.6か月、95%CI:5.2、9.7)にわたるSDを有していたことに注目することは重要であり、これは、確証PR群についてのPFS中央値(7.9か月、95%CI:7.6、21.9;P=0.1620)及び40%(17/43)の臨床的有用性率(CBR:PR+SD≧4か月)と有意差がなかった。実際に、これらの10人のSD患者についてのOSでさえ、7人の確証PR患者と有意差がなかった(それぞれ、8.3か月、95%CI 7.5、22.4か月対9.2か月、95%CI:6.2、20.9;P=0.5599)。これは、適切な持続期間(≧4か月)にわたってSDを維持することは、目的のエンドポイントであるはずであることを示唆する。治療企図(ITT)基準(N=53)で、PFS中央値は3.6か月(95%CI:2.0、4.3)であり(図17(A))、一方で、OS中央値は7.0か月(95%CI:5.5、8.3)であり、17人の患者は生きており、5人は経過観察から消えた(1人は1.8か月後、1人は5か月後、3人は11.4~12.8か月後)(図17(B))。
【0260】
客観的応答評価を有する43人の患者のうちの13人は8mg/kgで治療し、1人は確証され(8%)、1人は非確証PRであり、3人はSDであった。10mg/kg群(N=30)では、6人の患者は確証PRを有し(20%)、12人はSDを有しており、これには、>30%(PRu)の低減を示す1回のCTをともなう5人が含まれる。CBRは47%(14/30)であり、これは、10mg/kgの開始用量がより良好な全体的応答をもたらしたことを示唆する。
【0261】
応答評価を有する24人の患者は、第1選択の白金ベースの化学療法に感受性であると分類された(表7)。4人(17%)は確証PRを達成し、9人はSDを有しており、これには、>30%の腫瘍低減(PRu)を示す単一スキャンをともなう4人が含まれる。19人の患者は抵抗性であり、3人(16%)は確証PRを有しており、6人はSDを有しており、これには、PRuを有する2人が含まれる。化学感受性群及び化学抵抗性群に対するPFS中央値は、それぞれ3.8か月(95%CI:2.8、6.0)及び3.6か月(95%CI:1.8、3.8)であり、一方で、OS中央値は、それぞれ8.3か月(95%CI:7.0、13.2)及び6.2か月(95%CI:4.0、10.5)であった(表7)。化学感受性群と化学抵抗性群の間で、PFSまたはOSにおける有意差は見られなかった(それぞれ、P=0.3981及びP=0.3100)。
【0262】
第2選択の設定で、43人の患者のうちの19人がサシツズマブゴビテカンを受け、3/19(16%)がPRを有しており、7人が最良応答としてSDを有していた(後者のうちの2人は、>30%の腫瘍縮小のSDを有していた)。これらの患者で見られた応答は、第3選択以上の療法としてサシツズマブゴビテカンが与えられた患者(N=24)について見られたものと同じであり、4人は確証PR(16%)であり、8人はSDであり、これには、1回のCTにおいて>30%の腫瘍縮小を有する4人のSD患者が含まれる。PFSまたはOSの持続期間における有意差は見られなかった(それぞれ、P=0.9538及びP=0.6853)。応答解析を表7に概説する。
【0263】
免疫チェックポイント阻害剤(CPI)による以前の治療を受けた5人の患者の中で、1人は非確証PRを経験し(最初の評価で54%縮小し、さらなる治療または評価なしで同意を撤回した)、2人はSDを達成し(1人は8.7か月続く17%の腫瘍縮小を有ており、もう一人は3.7か月にわたって腫瘍サイズに変化がなかった)、1人は進行中の疾患を有しており、一方で、5番目の患者はサシツズマブゴビテカンの1サイクル後に同意を撤回した。CPI治療患者のすべては、CPIへの応答に失敗したか、サシツズマブゴビテカンを受ける前に進行したかのいずれかであり、これは、患者が、CPI治療を受けた後にIMMU-132に応答性であり得ることを示唆する。
【0264】
第3選択以降の療法としてサシツズマブゴビテカンを受けた24人の患者のうち、15人はトポテカン及び/またはイリノテカンを以前に受けていたが、9人はこれらの薬剤をかつて受けたことがなかった。これら2つの群の客観的応答は類似しており、PFSにおいて有意差がなかった(3.8対3.7か月;P=0.7341)。しかし、以前のトポテカン療法を受けた、サシツズマブゴビテカンで治療された者は、受けなかった者よりも有意に長いOSを有していた(8.8か月、95%CI:6.2、20.9対5.5か月、95%CI:3.2、8.3;P=0.0357)。この群のより長いOSは、白金感受性の患者におけるトポテカンの既知の活性を反映する可能性があり、したがって、より良好な長期の転帰を有し得る。
【0265】
第1選択のカルボプラチン+エトポシド療法に対して再発した後サシツズマブゴビテカンが与えられた患者を図18に示す。かなりの腫瘍低減を有する別の例を図19に示す。
【0266】
腫瘍検体の免疫組織化学的(IHC)染色-保存腫瘍検体を29人の患者から得たが、4個は検査に不適切であり、25個の評価可能な腫瘍を残し、そのうちの92%は陽性であり、2個(8%)が強い(3+)染色を有し、13個(52%)が中程度(2+)の染色を有していた。これらの患者のうちの23人は客観的応答評価を有していた。この群には確証PRを有する5人及び非確証PRを有する2人がいた。5人は2+染色を有していたが、他の2人は1+であり(非表示)、これは、高い発現程ほどより良好な応答を提供することを示唆する。しかし、IHCスコアに対するPFS値及びOS値の評価は、明らかな傾向を示さず(非表示)、0と1+の組み合わせのIHCスコアを有する患者(N=10)と2+と3+の組み合わせのIHCスコアを有する患者(N=13)についてのPFS及びOSに関するカプラン・マイヤー推定値は、IHCスコアに基づくと、有意差を示さなかった(PFS、P=0.2661;OS、P=0.7186)(非表示)。
【0267】
ADC、SN-38またはhRS7抗体の免疫原性-最高で22か月もの間治療を継続した患者において、サシツズマブゴビテカン、該抗体、またはSN-38に対する中和抗体は検出されなかった。
【0268】
考察
フロントライン化学療法に対するSCLCの再発は、2つのカテゴリー、すなわち、最初の白金ベースの療法の3か月以内に生じる抵抗性の再発、及び治療してから少なくとも3か月に生じる感受性の再発に分けられ続けている(O’Brien et al.,2006,J Clin Oncol 24:5441-7、Perez-Soler et al.,1996,J Clin Oncol 14:2785-90)。再発性SCLCの最良の管理に関して、依然としていくらかのあいまい性があるが、本明細書において研究されるADCで使用されているSN-38と類似しているトポイソメラーゼ-I阻害剤であるトポテカンは、多数の試験によって支持されるように、化学感受性再発に対して承認された唯一の製品である(O’Brien et al.,2006,J Clin Oncol 24:5441-7、Horita et al.,2015,Sci Rep 5:15437)。しかし、トポテカンが化学抵抗性フロントライン患者において5%の、及び化学感受性患者において17%の客観的応答率を有していた、14の論文で報告された1000人を超える患者のメタ解析(Horita et al.,2015,Sci Rep 5:15437)において示されるように、トポテカンの効力及び有害事象は以前の研究でかなり異なっていた。患者の69%、1%及び24%において、それぞれ、グレード≧3の好中球減少、血小板減少及び貧血があり、患者のおよそ2%がこの化学療法で亡くなった(Horita et al.,2015,Sci Rep 5:15437)。したがって、トポテカンは、白金ベースの化学療法に感受性を示した後に再発した患者におけるこの第2選択の設定において、いくらかの有望さを示すが、考慮すべき血液毒性がある。しかし、この結論でさえ、Lara et al.(2015,J Thorac Oncol 10:110-5)によって最近問題にされ、彼らは、白金感受性は、現在承認されている適応症であるトポテカンによる治療後のPFS及びOSの改善と強く関係しないことを主張した。
【0269】
2つ(範囲、1~7)の中央値の以前の療法の後の伸展性進行疾患の患者(ステージIV)においてサシツズマブゴビテカンを用いた本明細書に報告される結果が有望であることは本設定内である。49パーセントの患者が、RECIST1.1によると、ベースラインからの腫瘍測定値の低減を示し、16%のORR及び5.7か月の応答持続期間の中央値(95%CI:3.6、19.9)を有していた。安定疾患は35%の患者で見られ、これらのSD患者の14%は最良応答として>30%の腫瘍縮小を有していたが、第2のスキャンで維持されていなかった。≧4か月での臨床的有用性率は40%であった。PFS及びOSの中央値はそれぞれ3.6及び7.0か月であった。SDを有する10人の患者に対するOS中央値は8.3か月(95%CI:7.5、22.4)であり、これは、PRを有する患者に対する9.2か月というOS中央値(95%CI:6.2、20.9)と統計的に異ならない(P=0.5599)ことは興味深い。開始用量として10mg/kgを受けた群(N=30)では、6人(20%)で確証された客観的応答があり、さらなる5人患者は≧30%の腫瘍低減(PRu)を示す単回のCTを有していた。さらに、10mg/kg用量でのこの群の臨床的有用性率は47%であった。これは、10mg/kgという好ましい用量を支持する。腫瘍のTrop-2の免疫組織化学染色に基づく、必要とされる患者の選抜がないことも注目すべきであり、より強い染色がより良い応答に相関するという示唆があったが、IHCスコアに関して、PFSまたはOSにおいて有意差は見られなかった。
【0270】
述べたように、PFS及びOSは、SD>4か月またはPRを有する患者間で実質的に異ならなかった。非確証PR(すなわち、1回のCTに関して>30%の腫瘍低減)またはSDを有する患者は、一般に、ほとんどのORR評価において考慮されない。しかし、本明細書の結果は、確証PRまたは4か月より長く続くSDを有する患者間で応答持続期間の違いがないことを示す(図16B)。実際に、PRまたはSDについての個々の患者応答の動的追跡(特に、SDが、PRを確証させるものと同様の時間枠である≧4か月続く場合)は、数か月にわたってベースライン腫瘍サイズより下のままでいることによって、両方の群に対して臨床的有用性を示唆する(図16C)。確証PRを有する患者のPFSについて、≧4か月続くSDを有する患者群より長いという傾向(P=0.1620)があったが、これら2群に対するOSは有意差がなかった(P=0.5599)。したがって、この初期解析の患者数は比較的少ないが、データは、免疫チェックポイント阻害剤を受けている患者の経過観察と類似した適切な持続期間が達成される場合、臨床活性の重要な指標として、疾患の安定化をより考慮すべきであることを示唆する。
【0271】
以前の化学感受性(N=24)または化学抵抗性(N=19)に基づく患者の評価は、サシツズマブゴビテカン治療と応答の違いがないことを示す(表7)。PFS及びOSの結果は、化学抵抗性群について、それぞれ3.6か月及び6.2か月であるPFS及びOSと比較して、第1選択において化学感受性であった患者について、3.8か月及び8.3か月であった。統計的差異がない故に、患者が第1選択の化学療法に化学感受性または化学抵抗性であることに関係なく、第2選択以降の選択療法においてサシツズマブゴビテカンを患者に投与することができるように思われる。これはトポテカンと異なり、トポテカンは第1選択のシスプラチン及びエトポシド化学療法に≧3か月の応答を示したSCLC患者においてのみ指示される((O’Brien et al.,2006,J Clin Oncol 24:5441-7、Perez-Soler et al.,1996,J Clin Oncol 14:2785-90)。Perez-Solar et al. (1996, J Clin Oncol 14:2785-90)によって研究された28人の患者のうち、11%はPRを有しており、生存期間中央値は5か月であり、1年生存は3.5%であった。
【0272】
トポテカン及びSN-38の両方は、DNA複合体を安定化させ、一本鎖DNA切断の蓄積を引き起こすことによって、DNAが合成される場合にスーパーコイル状DNAヘリックスを緩めることに関与するDNAトポイソメラーゼI酵素の阻害剤であるが(Takimoto & Arbuck,1966,Camptothecins.In:Chabner & Long(Eds.).Cancer Chemotherapy and Biotherapy.Second ed.Philadelphia:Lippincott-Raven;p.463-84)、サシツズマブゴビテカンは、トポテカン療法後に再発した患者において活性を示した。したがって、トポテカン抵抗性または再発は、サシツズマブゴビテカンの投与について禁忌ではない可能性があり、シスプラチン及びエトポシドに化学抵抗性であった患者において同様の活性であったので、化学感受性ステータスにかかわらず、転移性SCLCの患者において、第2選択治療剤として特に価値があり得る。
【0273】
第2選択の設定におけるトポテカンの承認以来20年で、第2選択以降の療法における転移性SCLC療法のための新しい薬剤は認可されていない。しかし、T細胞チェックポイント受容体プログラム細胞死タンパク質(PD-1)及び細胞毒性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4)の阻害剤がごく最近進展している(Antonia et al.,2016,Lancet Oncol 17:883-95)。これらの著者は、再発性SCLCの患者において、CTLA-4抗体イピリムマブをともなって、またはともなわずに、ニボルマブの第I~II相試験を行った。ニボルマブ単独は、10%の応答率を達成し、一方で、併用は19~23%の応答率及び32%の疾患制御率を有していた(Antonia et al.,2016,Lancet Oncol 17:883-95)。しかし、SCLCにおける、化学療法をともなう、またはともなわない最近のイピリムマブの研究は、これらの結果を確証することができなかった(Reck et al.,2016,J Clin Oncol 34:3740-48)。本発明者らは免疫チェックポイント阻害剤を用いる療法に失敗した患者においてサシツズマブゴビテカンが活性を有し得ることを観察したので、特に、他のがんタイプを有する患者において免疫チェックポイント阻害剤を用いる療法の後にそのような応答を示すエビデンスが理由で、これをさらに研究している(Bardia et al.,2017,J Clin Oncol 35:2141-48、Faltas et al.,2016,Clin Genitourin Cancer 14:e75-9、Heist et al.,2017,J Clin Oncol 35:2790-97、Tagawa et al.,2017,J Clin Oncol 35:abstract 327)。
【0274】
免疫療法の最近の進展及びSCLCの新規な他の標的の同定(Rudin et al.,2017,Lancet Oncol 18:42-51)にもかかわらず、SCLCは、特に第1選択療法に化学抵抗性である集団において、依然として致命的な疾患である。進行性、再発性、ステージIVのSCLCを有する重度に前治療された患者におけるサシツズマブゴビテカンの現在の結果は、このADCが、トポテカンの前または後の両方で、化学感受性SCLC患者及び化学抵抗性SCLC患者の両方の療法において有用であることを示唆する。
【0275】
様々な修正及び変形を本発明の生成物、組成物、方法及びプロセスに対して変更を行うことができることは、当業者に明白である。したがって、添付の特許請求の範囲及びその均等物の範囲内に入ることを条件として、本発明がそのような修正及び変形を包含することが意図される。
図1
図2
図3A
図3B
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図6
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【配列表】
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