(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
H05K 13/04 20060101AFI20221206BHJP
H02K 41/03 20060101ALN20221206BHJP
【FI】
H05K13/04 B
H02K41/03 A
(21)【出願番号】P 2018144866
(22)【出願日】2018-08-01
【審査請求日】2021-05-07
(73)【特許権者】
【識別番号】390029805
【氏名又は名称】THK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113608
【氏名又は名称】平川 明
(74)【代理人】
【識別番号】100123098
【氏名又は名称】今堀 克彦
(74)【代理人】
【識別番号】100131532
【氏名又は名称】坂井 浩一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100176201
【氏名又は名称】小久保 篤史
(72)【発明者】
【氏名】福島 克也
(72)【発明者】
【氏名】石井 正志
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】林 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 明
(72)【発明者】
【氏名】大賀 和人
(72)【発明者】
【氏名】和久田 翔悟
(72)【発明者】
【氏名】原 聡史
(72)【発明者】
【氏名】水野 智史
(72)【発明者】
【氏名】永井 知
【審査官】福島 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-088024(JP,A)
【文献】特開2009-016512(JP,A)
【文献】国際公開第2010/036204(WO,A1)
【文献】特開昭61-121891(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/00-13/08
B25J 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともその先端部側に、その内部が中空となることで形成される中空部を有するシャフトが、その先端部が突出した状態でハウジング内に収容されており、該シャフトの先端部に負圧を発生させることで該先端部にワークを吸い付けて該ワークをピックアップするアクチュエータであって、
前記シャフトをその軸方向に移動させる直動モータと、
前記シャフトの前記中空部と連通しており、該中空部から空気を吸引するときに空気の通路となる空気通路と、
前記空気通路に設けられ、該空気通路を介して前記シャフトの前記中空部から空気を吸引する吸引弁と、
前記空気通路に設けられ、前記シャフトの先端部にワークが吸い付いたことを検知するための吸着検知センサと、を備え、
前記ハウジング内において、前記空気通路
、前記吸引弁、および前記吸着検知センサが、前記シャフトを挟んで前記直動モータとは反対側の位置に配置されているアクチュエータ。
【請求項2】
前記直動モータは、前記ハウジングに固定された固定子と、前記シャフトが支持されており、且つ、該固定子に対して前記シャフトの軸方向に相対的に移動する可動子と、を有しており、
前記ハウジング内において、前記固定子および前記可動子が、前記シャフトを挟んで前記空気通路とは反対側の位置に配置されている請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項3】
前記吸着検知センサが、前記空気通路内の空気を検出する圧力センサ、および/または、前記空気通路内の空気の流量を検出する流量センサである請求項1または2に記載のアクチュエータ。
【請求項4】
前記ハウジング内に設けられて、前記シャフトをその軸回りに回転させる回転モータと、
前記ハウジング内に設けられ、冷却用空気が流通する冷却パイプと、をさらに備え、
前記回転モータは、前記直動モータの前記可動子に連結されており、且つ、その出力軸に前記シャフトの基端部が接続されており、
前記冷却パイプは、前記ハウジング内において、前記直動モータの前記固定子の内部を貫通するように延びており、且つ、その開口端が前記回転モータに向くように形成されている請求項2に記載のアクチュエータ。
【請求項5】
前記ハウジングにおける、前記直動モータ、前記シャフト、および前記空気通路が並ぶ方向の中央に、前記シャフトが配置されている請求項1から4の何れか一項に記載のアクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピックアンドプレイスを行うアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シャフトによってワークをピックアップするとともに、ピックアップしたワークを所定の位置に該シャフトによってプレイスする、といった一連の動作(ピックアンドプレイス)を行うアクチュエータが知られている(例えば、特許文献1参照)。このようなピックアンドプレイスを行うアクチュエータにおいては、中空のシャフトの先端部をワークに押し付けた状態で該シャフトの内部を負圧にすることで、該シャフトの先端部にワークを吸い付けて、ワークをピックアップする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、ピックアンドプレイスを行うアクチュエータにおいては、シャフトの先端部に該ワークを吸い付けるために、該先端部に負圧を発生させる必要がある。そこで、従来では、シャフトに空気管を接続し、該空気管を介して該シャフトの内部から空気を吸引することで、該シャフトの先端部に負圧を発生させる構成が採用されている。このような構成の場合、一般的に、空気管はアクチュエータの外部に存在する。また、空気管を介してシャフトの内部から空気を吸引するための吸引弁や、該シャフトの先端部にワークが吸い付いたことを検知するための吸着検知センサもアクチュエータの外部に設けられる。
【0005】
ここで、アクチュエータによってピックアンドプレイスを適切に実行するためには、ワークのピックアップの際に、シャフトの先端部に該ワークを確実に吸い付けるとともに、該シャフトの先端部への該ワークの吸着を検知する必要がある。しかしながら、上記のような構成では、シャフトの先端部から吸引弁までの空気経路(シャフトおよび空気管を含む空気の経路)の容積が大きくなると、吸引弁を開弁することで空気の吸引を開始してから、シャフトの先端部に負圧が発生し該先端部にワークが吸い付くまでの期間(以下、「吸着期間」と称する。)が長くなってしまう。また、シャフトの先端部から吸着検知センサまでの空気経路の容積が大きくなると、該先端部に実際にワークが吸着してから、該吸着検知センサによって該ワークの吸着が検知されるまでの期間(以下、「検知期間」と称する。)が長くなってしまう。このように、吸着期間や検知期間が長くなると、アクチュエータによるピックアンドプレイスのタクトタイムが長くなってしまう虞がある。
【0006】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであって、アクチュエータによるピックアンドプレイスのタクトタイムを短縮することが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るアクチュエータは、
少なくともその先端部側に、その内部が中空となることで形成される中空部を有するシャフトが、その先端部が突出した状態でハウジング内に収容されており、該シャフトの先端部に負圧を発生させることで該先端部にワークを吸い付けて該ワークをピックアップするアクチュエータであって、
前記シャフトをその軸方向に移動させる直動モータと、
前記シャフトの前記中空部と連通しており、該中空部から空気を吸引するときに空気の通路となる空気通路と、
前記空気通路に設けられ、該空気通路を介して前記シャフトの前記中空部から空気を吸引する吸引弁と、
前記空気通路に設けられ、前記シャフトの先端部にワークが吸い付いたことを検知するための吸着検知センサと、を備え、
前記ハウジング内において、前記空気通路が、前記シャフトを挟んで前記直動モータとは反対側の位置に配置されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、アクチュエータによるピックアンドプレイスのタクトタイムを短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係るアクチュエータの外観図である。
【
図2】実施形態に係るアクチュエータの内部構造を示した概略構成図である。
【
図3】実施形態に係るシャフトハウジングとシャフトの先端部との概略構成を示した断面図である。
【
図4】実施形態に係るアクチュエータを複数積層した状態を示す第1の図である。
【
図5】実施形態に係るアクチュエータを複数積層した状態を示す第2の図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係るアクチュエータにおいては、シャフトが、その先端部が突出した状態でハウジング内に収容されている。また、シャフトの少なくとも先端部側には、その内部が中空となることで中空部が形成されている。そのため、シャフトの中空部から空気が吸引されると、該シャフトの先端部に負圧が発生する。
【0011】
また、ハウジング内には、直動モータ、空気通路、吸引弁、および吸着検知センサが設けられている。直動モータは、シャフトによってワークをピックアップまたはプレイスする際に、該シャフトを軸方向に移動させるモータである。空気通路は、シャフトの中空部に連通しており、該中空部から空気を吸引するときに空気の通路となる。つまり、アクチュエータにおいては、ワークをピックアップする際に、空気通路を介して、シャフトの中空部から空気を吸引する。
【0012】
また、吸引弁および吸着検知センサは、ハウジング内の空気通路に設けられている。つまり、本発明においては、吸引弁および吸着検知センサがアクチュエータと一体化されている。そして、吸引弁が開弁されることで、空気通路を介してシャフトの中空部から空気を吸引することができる。また、吸着検知センサは、空気通路における空気の圧力または流量の変化を検知することで、シャフトの先端部にワークが吸い付いたことを検知することができる。
【0013】
ここで、アクチュエータのハウジング内において、シャフトを移動させるための直動モータは、該シャフトの近傍に配置されることになる。そのため、ハウジング内において、仮に、空気通路を、シャフトに対して直動モータと同方向の位置に配置した場合、該シャフトから、直動モータを超えた位置まで空気通路を引き延ばした上で、該空気通路に吸引弁および吸着検知センサを設ける必要がある。つまり、シャフトと、吸引弁および吸着検知センサとの間に、直動モータが位置するような配置となる。
【0014】
これに対し、本発明においては、ハウジング内において、空気通路が、シャフトを挟ん
で直動モータとは反対側の位置に配置されている。これによれば、上記のように、シャフトから、直動モータを超えた位置まで空気通路を引き延ばすことが不要となる。つまり、シャフトと、吸引弁および吸着検知センサとの間に、直動モータが位置するような配置とした場合に比べて、該シャフトと、該吸引弁および該吸着検知センサとの間の距離を近付けることができる。そのため、シャフトの先端部から吸引弁までの空気経路、および、シャフトの先端部から吸着検知センサまでの空気経路を可及的に短くすることができる。
【0015】
したがって、本発明によれば、アクチュエータと吸引弁および吸着検知センサとを一体化した上で、シャフトの先端部から吸引弁までの空気経路、および、シャフトの先端部から吸着検知センサまでの空気経路の容積を可及的に小さくすることができる。これによって、ピックアンドプレイスを行う際の吸着期間および検知期間を短縮することができる。その結果、ピックアンドプレイスのタクトタイムを短縮することが可能となる。
【0016】
さらに、複数のアクチュエータを積層した状態で設置する場合がある。このような場合において、本発明に係る構成によれば、隣り合うアクチュエータ同士において、それぞれのシャフトを中心として、それぞれの直動モータの位置が互い違いとなるように、複数のアクチュエータを積層することが可能となる。複数のアクチュエータをこのように積層することで、積層された状態の複数のアクチュエータにおいてそれぞれの直動モータの位置が重なり合ってしまう場合に比べて、各アクチュエータの直動モータから発せられる熱が分散され易くなる。そのため、複数のアクチュエータを積層した状態で設置する場合において、直動モータから発せられる熱による各アクチュエータへの影響を小さくすることができる。
【0017】
以下、本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。本実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置等は、特に記載がない限りは発明の技術的範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0018】
<実施形態>
図1は、本実施形態に係るアクチュエータ1の外観図である。アクチュエータ1は外形が略直方体のハウジング2を有しており、ハウジング2には、蓋200が取り付けられている。
図2は、本実施形態に係るアクチュエータ1の内部構造を示した概略構成図である。ハウジング2の内部に、シャフト10の一部を収容している。このシャフト10の先端部10A側は、中空となるよう形成されている。シャフト10及びハウジング2の材料には、例えば金属(例えばアルミニウム)を用いることができるが、樹脂等を用いることもできる。なお、以下の説明においては、XYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各部材の位置について説明する。ハウジング2の最も大きな面の長辺方向であってシャフト10の中心軸100の方向をZ軸方向とし、ハウジング2の最も大きな面の短辺方向をX軸方向とし、ハウジング2の最も大きな面と直交する方向をY軸方向とする。Z軸方向は鉛直方向でもある。なお、以下では、
図2におけるZ軸方向の上側をアクチュエータ1の上側とし、
図2におけるZ軸方向の下側をアクチュエータ1の下側とする。また、
図2におけるX軸方向の右側をアクチュエータ1の右側とし、
図2におけるX軸方向の左側をアクチュエータ1の左側とする。また、
図2におけるY軸方向の手前側をアクチュエータ1の手前側とし、
図2におけるY軸方向の奥側をアクチュエータ1の奥側とする。ハウジング2は、Z軸方向の寸法がX軸方向の寸法よりも長く、X軸方向の寸法がY軸方向の寸法よりも長い。ハウジング2は、Y軸方向と直交する一つの面(
図2における手前側の面)に相当する箇所が開口しており、この開口を蓋200によって閉塞している。蓋200は、例えばネジによってハウジング2に固定される。
【0019】
ハウジング2内には、シャフト10をその中心軸100回りに回転させる回転モータ20と、シャフト10をその中心軸100に沿った方向(すなわち、Z軸方向)にハウジン
グ2に対して相対的に直動させる直動モータ30と、エア制御機構60とが収容されている。また、ハウジング2のZ軸方向の下端面202には、シャフト10が挿通されたシャフトハウジング50が取り付けられている。ハウジング2には、下端面202からハウジング2の内部に向かって凹むように凹部202Bが形成されており、この凹部202Bにシャフトハウジング50の一部が挿入される。この凹部202BのZ軸方向の上端部には、Z軸方向に貫通孔2Aが形成されており、この貫通孔2A及びシャフトハウジング50をシャフト10が挿通される。シャフト10のZ軸方向の下側の先端部10Aは、シャフトハウジング50から外部へ突出している。シャフト10は、ハウジング2のX軸方向の中心且つY軸方向の中心に設けられている。つまり、ハウジング2における、X軸方向の中心およびY軸方向の中心を通ってZ軸方向に延びる中心軸と、シャフト10の中心軸100とが重なるように、シャフト10が設けられている。シャフト10は、直動モータ30によってZ軸方向に直動すると共に、回転モータ20によって中心軸100の回りを回転する。
【0020】
シャフト10の先端部10Aと逆側の端部(Z軸方向の上側の端部)である基端部10B側は、ハウジング2内に収容されており、回転モータ20の出力軸21に接続されている。この回転モータ20は、シャフト10を回転可能に支持している。回転モータ20の出力軸21の中心軸は、シャフト10の中心軸100と一致する。回転モータ20は、出力軸21の他に、固定子22と、固定子22の内部で回転する回転子23と、出力軸21の回転角度を検出するロータリエンコーダ24とを有する。回転子23が固定子22に対して回転することにより、出力軸21及びシャフト10も固定子22に対して連動して回転する。
【0021】
直動モータ30は、ハウジング2に固定された固定子31、固定子31に対して相対的にZ軸方向に移動する可動子32を有する。直動モータ30は、例えばリニアモータである。固定子31には複数のコイル31Aが設けられ、可動子32には複数の永久磁石32Aが設けられている。コイル31Aは、Z軸方向に所定ピッチで配置され、且つ、U,V,W相の3つのコイル31Aを一組として複数設けられている。本実施形態では、これらU,V,W相のコイル31Aに三相電機子電流を流すことによって直動的に移動する移動磁界を発生させ、固定子31に対して可動子32を直動的に移動させる。直動モータ30には固定子31に対する可動子32の相対位置を検出するリニアエンコーダ38が設けられている。なお、上記構成に代えて、固定子31に永久磁石を設け、可動子32に複数のコイルを設けることもできる。
【0022】
直動モータ30の可動子32と回転モータ20の固定子22とは、直動テーブル33を介して連結されている。直動テーブル33は、直動モータ30の可動子32の移動に伴って移動可能である。直動テーブル33の移動は、直動案内装置34によってZ軸方向に案内されている。直動案内装置34は、ハウジング2に固定されたレール34Aと、レール34Aに組み付けられたスライダブロック34Bとを有する。レール34Aは、Z軸方向に延びており、スライダブロック34Bは、レール34Aに沿ってZ軸方向に移動可能に構成されている。
【0023】
直動テーブル33は、スライダブロック34Bに固定されており、スライダブロック34Bと共にZ軸方向に移動可能である。直動テーブル33は、直動モータ30の可動子32と2つの連結アーム35を介して連結されている。2つの連結アーム35は、可動子32のZ軸方向の両端部と、直動テーブル33のZ軸方向の両端部とを連結している。また、直動テーブル33は、両端部よりも中央側において、2つの連結アーム36を介して回転モータ20の固定子22と連結されている。なお、Z軸方向上側の連結アーム36を第一アーム36Aといい、Z軸方向下側の連結アーム36を第二アーム36Bという。また、第一アーム36Aと第二アーム36Bとを区別しない場合には、単に連結アーム36と
いう。直動テーブル33と回転モータ20の固定子22とが、該連結アーム36を介して回転モータ20の固定子22と連結されているために、直動テーブル33の移動に伴って回転モータ20の固定子22も移動する。また、連結アーム36は、断面が四角である。各連結アーム36におけるZ軸方向の上側を向く面には、ひずみゲージ37が固定されている。なお、第一アーム36Aに固定されるひずみゲージ37を第一ひずみゲージ37Aといい、第二アーム36Bに固定されるひずみゲージ37を第二ひずみゲージ37Bという。第一ひずみゲージ37Aと第二ひずみゲージ37Bとを区別しない場合には、単にひずみゲージ37という。なお、本実施形態の2つのひずみゲージ37は、連結アーム36のZ軸方向の上側を向く面に夫々設けられているが、これに代えて、連結アーム36のZ軸方向の下側を向く面に夫々設けられていてもよい。
【0024】
エア制御機構60は、シャフト10の先端部10Aに正圧や負圧を発生させるための機構である。すなわち、エア制御機構60は、ワークWのピックアップ時において、シャフト10内の空気を吸引することで、該シャフト10の先端部10Aに負圧を発生させる。これによってワークWがシャフト10の先端部10Aに吸い付けられる。また、シャフト10内に空気を送り込むことで、該シャフト10の先端部10Aに正圧を発生させる。これによりシャフト10の先端部10AからワークWを容易に脱離させる。
【0025】
また、シャフト10は、ハウジング2におけるX軸方向の中央に配置されている。そして、エア制御機構60は、ハウジング2内において、シャフト10を挟んで直動モータ30とは反対側の位置に配置されている。つまり、
図2において、シャフト10を挟んで、向かって左側に直動モータ30の固定子31および可動子32が配置されており、向かって右側にエア制御機構60が配置されている。そして、ハウジング2において、直動モータ30、シャフト10、およびエア制御機構60が並ぶ方向の中央に、シャフト10が配置されている。
【0026】
エア制御機構60は、正圧の空気が流通する正圧通路61A(一点鎖線参照。)と、負圧の空気が流通する負圧通路61B(二点鎖線参照。)と、正圧の空気及び負圧の空気で共用される共用通路61C(破線参照。)とを有する。正圧通路61Aの一端は、ハウジング2のZ軸方向の上端面201に設けられた正圧用コネクタ62Aに接続され、正圧通路61Aの他端は正圧用の電磁弁(以下、正圧電磁弁63Aという。)に接続されている。正圧電磁弁63Aは、後述するコントローラ7によって開閉される。なお、正圧通路61Aの一端側の部分はチューブ610によって構成され、他端側の部分はブロック600に開けられた穴により構成されている。正圧用コネクタ62Aは、ハウジング2のZ軸方向の上端面201を貫通しており、正圧用コネクタ62Aにはエアを吐出するポンプ等に繋がるチューブが外部から接続される。
【0027】
負圧通路61Bの一端は、ハウジング2のZ軸方向の上端面201に設けられた負圧用コネクタ62Bに接続され、負圧通路61Bの他端は負圧用の電磁弁(以下、負圧電磁弁63Bという。)に接続されている。負圧電磁弁63Bは、後述するコントローラ7によって開閉される。なお、負圧通路61Bの一端側の部分はチューブ620によって構成され、他端側の部分はブロック600に開けられた穴により構成されている。負圧用コネクタ62Bは、ハウジング2のZ軸方向の上端面201を貫通しており、負圧用コネクタ62Bにはエアを吸引するポンプ等に繋がるチューブが外部から接続される。
【0028】
共用通路61Cはブロック600に開けられた穴により構成されている。共用通路61Cの一端は、2つに分岐して正圧電磁弁63A及び負圧電磁弁63Bに接続されており、共用通路61Cの他端は、ハウジング2に形成されている貫通孔であるエア流通路202Aに接続されている。エア流通路202Aは、シャフトハウジング50に通じている。負圧電磁弁63Bを開き且つ正圧電磁弁63Aを閉じることにより、負圧通路61Bと共用
通路61Cとが連通されるため、共用通路61C内に負圧が発生する。そうすると、エア流通路202Aを介してシャフトハウジング50内から空気が吸引される。一方、正圧電磁弁63Aを開き且つ負圧電磁弁63Bを閉じることにより、正圧通路61Aと共用通路61Cとが連通されるため、共用通路61C内に正圧が発生する。そうすると、エア流通路202Aを介してシャフトハウジング50内に空気が供給される。共用通路61Cには、共用通路61C内の空気の圧力を検出する圧力センサ64及び共用通路61C内の空気の流量を検出する流量センサ65が設けられている。
【0029】
なお、
図2に示したアクチュエータ1では、正圧通路61A及び負圧通路61Bの一部がチューブで構成され、他部がブロック600に開けられた穴により構成されているが、これに限らず、全ての通路をチューブで構成することもできるし、全ての通路をブロック600に開けられた穴により構成することもできる。共用通路61Cについても同様で、全てチューブで構成することもできるし、チューブを併用して構成することもできる。なお、チューブ610及びチューブ620の材料は、樹脂等の柔軟性を有する材料であってもよく、金属等の柔軟性を有さない材料であってもよい。また、正圧通路61Aを用いてシャフトハウジング50に正圧を供給する代わりに、大気圧を供給してもよい。
【0030】
また、ハウジング2のZ軸方向の上端面201には、回転モータ20を冷却するための空気の入口となるコネクタ(以下、入口コネクタ91Aという。)およびハウジング2からの空気の出口となるコネクタ(以下、出口コネクタ91Bという。)が設けられている。入口コネクタ91A及び出口コネクタ91Bは、夫々空気が流通可能なようにハウジング2の上端面201を貫通している。入口コネクタ91Aにはエアを吐出するポンプ等に繋がるチューブがハウジング2の外部から接続され、出口コネクタ91Bにはハウジング2から流出するエアを排出するチューブがハウジング2の外部から接続される。ハウジング2の内部には、回転モータ20を冷却するための空気が流通する金属製のパイプ(以下、冷却パイプ92という。)が設けられており、この冷却パイプ92の一端は、入口コネクタ91Aに接続されている。冷却パイプ92は、入口コネクタ91AからZ軸方向にハウジング2の下端面202付近まで延び、該下端面202付近において湾曲して他端側が回転モータ20に向くように形成されている。このように、Z軸方向の下側からハウジング2内に空気を供給することにより、効率的な冷却が可能となる。また、冷却パイプ92の開口端(他端)が回転モータ20に向いていることで、該冷却パイプ92から吐出される空気によって該回転モータ20を効率的に冷却することができる。また、冷却パイプ92は、直動モータ30のコイル31Aから熱を奪うように、該固定子31の内部を貫通している。固定子31に設けられているコイル31Aからより多くの熱を奪うように、冷却パイプ92の周りにコイル31Aが配置されている。つまり、冷却パイプ92を流通する空気と直動モータ30の固定子31との間で熱交換が行われることになる。そのため、直動モータ30の冷却も効率的に行うことが可能となる。
【0031】
ハウジング2のZ軸方向の上端面201には、電力を供給する電線や信号線を含んだコネクタ41が接続されている。また、ハウジング2には、コントローラ7が設けられている。コネクタ41からハウジング2内に引き込まれる電線や信号線は、コントローラ7に接続されている。コントローラ7には、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、EPROM(Erasable Programmable ROM)が備わり、これらはバスにより相互に接続される。EPROMには、各種プログラム、各種テーブル等が格納される。EPROMに格納されたプログラムをCPUがRAMの作業領域にロードして実行し、このプログラムの実行を通じて、回転モータ20、直動モータ30、正圧電磁弁63A、負圧電磁弁63B等が制御される。これにより、所定の目的に合致した機能をCPUが実現する。また、圧力センサ64、流量センサ65、ひずみゲージ37、ロータリエンコーダ24、リニアエンコーダ38の出力信号がコントローラ7に入力される。
【0032】
図3は、シャフトハウジング50とシャフト10の先端部10Aとの概略構成を示した断面図である。シャフトハウジング50は、ハウジング本体51と、2つのリング52と、フィルタ53と、フィルタ止め54とを有する。ハウジング本体51には、シャフト10が挿通される貫通孔51Aが形成されている。貫通孔51Aは、Z軸方向にハウジング本体51を貫通しており、該貫通孔51AのZ軸方向の上端は、ハウジング2に形成された貫通孔2Aに通じている。貫通孔51Aの直径はシャフト10の外径よりも大きい。そのため、貫通孔51Aの内面とシャフト10の外面とには隙間が設けられている。貫通孔51Aの両端部には、孔の直径が拡大された拡径部51Bが設けられている。2つの拡径部51Bには、夫々リング52が嵌め込まれている。リング52は筒状に形成されており、リング52の内径はシャフト10の外径よりも若干大きい。そのため、リング52の内面とシャフト10の外面との間にも隙間が形成される。したがって、シャフト10がリング52の内部をZ軸方向に移動可能であり、且つ、シャフト10がリング52の内部を中心軸100回りに回転可能である。ただし、拡径部51Bを除く貫通孔51Aの内面とシャフト10の外面との間に形成される隙間よりも、リング52の内面とシャフト10の外面との間に形成される隙間の方が小さい。なお、Z軸方向上側のリング52を第一リング52Aといい、Z軸方向下側のリング52を第二リング52Bとする。第一リング52Aと第二リング52Bとを区別しない場合には、単にリング52という。リング52の材料には、例えば金属または樹脂を用いることができる。
【0033】
ハウジング本体51のZ軸方向の中央部には、X軸方向の左右両方向に張り出した張出部511が形成されている。張出部511には、ハウジング2の下端面202と平行な面であって、シャフトハウジング50をハウジング2の下端面202へ取り付けるときに、該下端面202と接する面である取付面511Aが形成されている。取付面511Aは、中心軸100と直交する面である。また、ハウジング2にシャフトハウジング50を取り付けたときに、シャフトハウジング50の一部であって取付面511AよりもZ軸方向の上側の部分512は、ハウジング2に形成された凹部202Bに嵌るように形成されている。
【0034】
上記のとおり、貫通孔51Aの内面とシャフト10の外面とには隙間が設けられている。その結果、ハウジング本体51の内部には、貫通孔51Aの内面と、シャフト10の外面と、第一リング52Aの下端面と、第二リング52Bの上端面とによって囲まれた空間である内部空間500が形成されている。また、シャフトハウジング50には、ハウジング2の下端面202に形成されるエア流通路202Aの開口部と、内部空間500とを連通して空気の通路となる制御通路501が形成されている。制御通路501は、X軸方向に延びる第一通路501A、Z軸方向に延びる第二通路501B、第一通路501A及び第二通路501Bが接続される空間であってフィルタ53が配置される空間であるフィルタ部501Cを有する。第一通路501Aの一端は内部空間500に接続され、他端はフィルタ部501Cに接続されている。第二通路501Bの一端は、取付面511Aに開口しており、エア流通路202Aの開口部に接続されるように位置が合わされている。
【0035】
また、第二通路501Bの他端はフィルタ部501Cに接続される。フィルタ部501Cには、円筒状に形成されたフィルタ53が設けられている。フィルタ部501Cは、第一通路501Aと中心軸が一致するようにX軸方向に延びた円柱形状の空間となるように形成されている。フィルタ部501Cの内径とフィルタ53の外径とは略等しい。フィルタ53は、X軸方向にフィルタ部501Cへ挿入される。フィルタ部501Cにフィルタ53が挿入された後に、フィルタ止め54によってフィルタ53の挿入口となったフィルタ部501Cの端部が閉塞される。第二通路501Bの他端は、フィルタ53の外周面側からフィルタ部501Cに接続されている。また、第一通路501Aの他端はフィルタ53の中心側と通じている。そのため、第一通路501Aと第二通路501Bとの間を流通
する空気は、フィルタ53を通過する。したがって、例えば、先端部10Aに負圧を発生させたときに、内部空間500に空気と一緒に異物を吸い込んだとしても、この異物はフィルタ53によって捕集される。第二通路501Bの一端には、シール剤を保持するように溝501Dが形成されている。
【0036】
張出部511のX軸方向の両端部付近には、該シャフトハウジング50をハウジング2にボルトを用いて固定するときに、該ボルトを挿通させるボルト孔51Gが2つ形成されている。ボルト孔51Gは、Z軸方向に張出部511を貫通して取付面511Aに開口している。
【0037】
シャフト10の先端部10A側には、シャフト10が中空となるように中空部11が形成されている。中空部11の一端は、先端部10Aで開口している。また、中空部11の他端には、内部空間500と中空部11とをX軸方向に連通する連通孔12が形成されている。直動モータ30によってシャフト10がZ軸方向に移動したときのストロークの全範囲において、内部空間500と中空部11とが連通するように連通孔12が形成されている。したがって、シャフト10の先端部10Aと、エア制御機構60とは、中空部11、連通孔12、内部空間500、制御通路501、エア流通路202Aを介して連通している。なお、連通孔12は、X軸方向に加えてY軸方向にも形成されていてもよい。
【0038】
このような構成によれば、直動モータ30を駆動してシャフト10をZ軸方向に移動させたときに、シャフト10がZ軸方向のどの位置にあっても、連通孔12は常に内部空間500と中空部11とを連通する。また、回転モータ20を駆動してシャフト10を中心軸100回りに回転させたときに、シャフト10の回転角度が中心軸100回りのどの角度であっても、連通孔12は常に内部空間500と中空部11とを連通する。したがって、シャフト10がどのような状態であっても、中空部11と内部空間500との連通状態が維持されるため、中空部11は常にエア制御機構60に通じていることになる。そのため、シャフト10の位置にかかわらず、エア制御機構60において正圧電磁弁63Aを閉じ、負圧電磁弁63Bを開くと、エア流通路202A、制御通路501、内部空間500、および連通孔12を介して、中空部11内の空気が吸引されることになる。その結果、中空部11に負圧を発生させることができる。すなわち、シャフト10の先端部10Aに負圧を発生させることができるので、シャフト10の先端部10AにワークWを吸い付けることができる。なお、上述したように、リング52の内面とシャフト10の外面との間にも隙間が形成されている。しかしながら、この隙間は、内部空間500を形成する隙間(すなわち、貫通孔51Aの内面とシャフト10の外面との間に形成される隙間)よりも小さい。そのため、エア制御機構60において正圧電磁弁63Aを閉じ、負圧電磁弁63Bを開くことで、内部空間500内から空気が吸引されても、リング52の内面とシャフト10の外面との間の隙間を流通する空気の流量を抑制することができる。これにより、ワークWをピックアップできるような負圧をシャフト10の先端部10Aに発生させることができる。一方、シャフト10の位置にかかわらず、エア制御機構60において正圧電磁弁63Aを開き、負圧電磁弁63Bを閉じると、中空部11に正圧を発生させることができる。すなわち、シャフト10の先端部10Aに正圧を発生させることができるので、シャフト10の先端部10AからワークWを速やかに脱離させることができる。
【0039】
(ピックアンドプレイス動作)
アクチュエータ1を用いたワークWのピックアンドプレイスについて説明する。ピックアンドプレイスは、コントローラ7が所定のプログラムを実行することにより行われる。ワークWのピックアップ時において、シャフト10がワークWに接触するまでは、正圧電磁弁63A及び負圧電磁弁63Bは共に閉じた状態とする。この場合、シャフト10の先端部10Aの圧力は大気圧となる。そして、直動モータ30によりシャフト10をZ軸方向下側に移動させる。シャフト10がワークWに接触すると、直動モータ30を停止させ
る。直動モータ30を停止後に負圧電磁弁63Bを開くことにより、シャフト10の先端部10Aに負圧を発生させ、ワークWをシャフト10の先端部10Aに吸い付ける。
【0040】
ここで、ワークWがシャフト10の先端部10Aに吸い付くと、共用通路61C内の空気の圧力および流量が変化する。そのため、圧力センサ64および/または流量センサ65によって、ワークWがシャフト10の先端部10Aに吸い付いたことを検知することができる。そして、圧力センサ64および/または流量センサ65によって、ワークWがシャフト10の先端部10Aに吸い付いたことが検知された後、直動モータ30によりシャフト10をZ軸方向上側に移動させる。このときに、必要に応じて、回転モータ20によりシャフト10を回転させる。このようにして、ワークWをピックアップすることができる。なお、回転モータ20によるシャフト10の回転は、ワークWのピックアップの完了後(すなわち、直動モータ30によるシャフト10をZ軸方向上側への移動完了後)に実行してもよい。
【0041】
次に、ワークWのプレイス時には、ワークWが先端部10Aに吸い付いている状態のシャフト10を直動モータ30によりZ軸方向の下側に移動させる。ワークWが接地すると、直動モータ30を停止させることで、シャフト10の移動を停止させる。さらに、負圧電磁弁63Bを閉じ且つ正圧電磁弁63Aを開くことにより、シャフト10の先端部10Aに正圧を発生させる。その後、直動モータ30によりシャフト10をZ軸方向の上側に移動させることにより、シャフト10の先端部10AがワークWから離れる。
【0042】
ここで、ワークWのピックアップ時において、シャフト10の先端部10AがワークWに接触したことをひずみゲージ37を用いて検出する。以下では、この方法について説明する。なお、ワークWのプレイス時においてワークWが接地したことも同様にして検出することができる。シャフト10の先端部10AがワークWに接触して先端部10AがワークWを押すと、シャフト10とワークWとの間に荷重が発生する。すなわち、シャフト10がワークWに力を加えたときの反作用によって、シャフト10がワークWから力を受ける。このシャフト10がワークWから受ける力は、連結アーム36に対してひずみを発生させる方向に作用する。すなわち、このときに連結アーム36にひずみが生じる。このひずみは、ひずみゲージ37によって検出される。そして、ひずみゲージ37が検出するひずみは、シャフト10がワークWから受ける力と相関関係にある。このため、ひずみゲージ37の検出値に基づいて、ワークWからシャフト10が受ける力、すなわち、シャフト10とワークWとの間に発生した荷重を検出することができる。ひずみゲージの検出値と荷重との関係は予め実験またはシミュレーション等により求めることができる。
【0043】
このように、ひずみゲージ37の検出値に基づいてシャフト10とワークWとの間に発生した荷重を検出することができるため、例えば、荷重が発生した時点でシャフト10の先端部10AがワークWに接触したと判断してもよいし、誤差等の影響を考慮して、検出された荷重が所定荷重以上の場合に、シャフト10の先端部10AがワークWに接触したと判断してもよい。なお、所定荷重は、シャフト10がワークWに接触したと判定される閾値である。また、所定荷重をワークWの破損を抑制しつつワークWをより確実にピックアップすることが可能な荷重として設定してもよい。また、所定荷重は、ワークWの種類に応じて変更することもできる。
【0044】
なお、本実施形態においては、負圧通路61B、共用通路61C、およびエア流通路202Aを含んで、本発明に係る「空気通路」が形成される。また、本実施形態においては、負圧電磁弁63Bが、本発明に係る「吸引弁」に相当する。また、本実施形態においては、圧力センサ64および流量センサ65が、本発明に係る「吸着検知センサ」に相当する。なお、圧力センサ64および流量センサ65のいずれによっても、ワークWがシャフト10の先端部10Aに吸い付いたことを検知することができる。そのため、必ずしも、
圧力センサ64および流量センサ65の両方を設ける必要はなく、何れか一方のみが設けられた構成を採用することもできる。
【0045】
(本実施形態に係る構成の効果)
ここで、以下においては、シャフト10の先端部10Aから負圧電磁弁63Bまでの空気経路(シャフト10の中空部11および連通孔12、シャフトハウジング50の内部空間500および制御通路501、エア流通路202A、共用通路61Cを含む)を「第1空気経路」と称する。また、シャフト10の先端部10Aから圧力センサ64までの空気経路を「第2空気経路」と称する。また、シャフト10の先端部10Aから流量センサ65までの空気経路を「第3空気経路」と称する。
【0046】
上記のとおり、本実施形態においては、アクチュエータ1のハウジング2の内部にエア制御機構60が設けられている。つまり、負圧電磁弁63B、圧力センサ64、および流量センサ65がアクチュエータ1と一体化されている。そのため、従来のように、シャフト10の内部から空気を吸引するための空気管がアクチュエータ1の外部に存在するとともに、負圧電磁弁63B、圧力センサ64、および流量センサ65を該空気管に設けた場合に比べて、第1空気経路、第2空気経路、および、第3空気経路が短くなる。
【0047】
さらに、アクチュエータ1のハウジング2内において、シャフト10を挟んで直動モータ30とは反対側の位置にエア制御機構60が配置されている。つまり、ハウジング2内において、シャフト10を挟んで直動モータ30とは反対側の位置に、負圧通路61B、共用通路61C、およびエア流通路202Aが配置されている。ここで、仮に、アクチュエータ1のハウジング2内において、シャフト10に対して直動モータ30と同方向の位置(すなわち、
図2において、シャフト10に対して、向かって左側の位置)にエア制御機構60を配置しようとした場合、ハウジング2の直動モータ30側の大きさを拡大すると共に、
図2におけるX軸方向において、シャフトハウジング50から、直動モータ30を超えた位置までエア流通路202Aまたは共用通路61Cを引き延ばす必要がある。そして、その上で、シャフト10と、負圧電磁弁63B、圧力センサ64、および流量センサ65との間に、直動モータ30が位置するような配置で、該負圧電磁弁63B、該圧力センサ64、および該流量センサ65を設ける必要がある。この場合、シャフト10と、負圧電磁弁63B、圧力センサ64、および流量センサ65との間の距離が離れることで、第1空気経路、第2空気経路、および、第3空気経路が長くなってしまうことになる。
【0048】
これに対し、本実施形態に係る構成によれば、ハウジング2内において、シャフト10を挟んで直動モータ30とは反対側の位置に、負圧通路61B、共用通路61C、およびエア流通路202Aが配置されていることで、シャフトハウジング50から、直動モータ30を超えた位置までエア流通路202Aまたは共用通路61Cを引き延ばすことが不要となる。つまり、シャフト10と、負圧電磁弁63B、圧力センサ64、および流量センサ65との間に、直動モータ30が位置するような配置とした場合に比べて、該シャフト10と、負圧電磁弁63B、圧力センサ64、および流量センサ65との間の距離を近付けることができる。そのため、第1空気経路、第2空気経路、および、第3空気経路を可及的に短くすることができる。
【0049】
したがって、本実施形態に係る構成によれば、負圧電磁弁63B、圧力センサ64、および流量センサ65をアクチュエータ1と一体化した上で、第1空気経路、第2空気経路、および、第3空気経路の容積を可及的に小さくすることができる。そして、第1空気経路の容積が小さくなると吸着期間が短くなる。また、第2空気経路の容積が小さくなると、圧力センサ64による検知期間が短くなる。また、第3空気経路の容積が小さくなると、流量センサ65による検知期間が短くなる。そのため、本実施形態に係る構成によれば、アクチュエータ1によってピックアンドプレイスを行う際の吸着期間および検知期間を
短縮することができる。その結果、ピックアンドプレイスのタクトタイムを短縮することが可能となる。
【0050】
(その他の効果)
また、本実施形態に係るアクチュエータ1を複数積層した状態で設置する場合がある。
図4は、4つのアクチュエータ1a、1b、1c、1dをY軸方向に積層した状態を示す図である。ここで、上記のように、アクチュエータ1では、シャフト10が、ハウジング2におけるX軸方向の中央に配置されている。そのため、
図4に示すように本実施形態に係るアクチュエータ1をY軸方向に複数積層した状態で設置する場合、隣り合うアクチュエータ1の表裏が互い違いとなるように設置することができる。つまり、隣り合うアクチュエータ1の表裏が互い違いとなるように複数のアクチュエータ1を積層しても、各アクチュエータ1におけるX軸方向におけるシャフト10の位置は、ハウジング2の中央であって、同一の位置となる。
【0051】
図5は、
図4において隣り合って設置されている二つのアクチュエータ1a、1bの表裏を互い違いにして積層させたときの、該二つのアクチュエータ1a、1bにおける直動モータ30a、30bの相対位置を示す図である。
図5に示すように、二つのアクチュエータ1a、1bの表裏を互い違いにして積層させた場合であっても、それぞれのシャフト10a、10bおよび回転モータ20a、20bのX軸方向における位置は重なり合っている。そして、このように二つのアクチュエータ1a、1bの表裏を互い違いにして積層させた場合、それぞれのシャフト10a、10bを中心として、それぞれの直動モータ30a、30bのY軸方向の位置が互い違いとなる。つまり、アクチュエータ1aでは、
図5において、シャフト10aに対して、向かって左側に直動モータ30aが位置するのに対し、アクチュエータ1bでは、
図5において、シャフト10bに対して、向かって右側に直動モータ30aが位置することになる。
【0052】
ここで、アクチュエータ1では、ピックアンドプレイスが繰り返し行われることで、直動モータ30から熱が発せられる。このとき、
図5に示すように、複数のアクチュエータ1を、それぞれの直動モータ30の位置が互い違いとなるように積層することで、積層された状態の複数のアクチュエータにおいて直動モータの位置が重なり合ってしまう場合に比べて、各アクチュエータ1の直動モータ30から発せられる熱が分散され易くなる。そのため、複数のアクチュエータ1を積層した状態で設置する場合において、直動モータ30から発せられる熱による各アクチュエータ1への影響を小さくすることができる。
【0053】
また、アクチュエータにおける直動モータがリニアモータである場合、積層された状態の複数のアクチュエータにおいて直動モータの位置が重なり合ってしまうと、隣り合う二つのアクチュエータにおいて、一方の直動モータから発生する磁界が他方の直動モータの挙動に対して影響を与えてしまう虞がある。これに対し、
図5に示すように、複数のアクチュエータ1を、それぞれの直動モータ30の位置が互い違いとなるように積層することで、隣り合う二つのアクチュエータ1における直動モータ30同士の距離を長くすることができる。そのため、隣り合う二つのアクチュエータ1において、一方の直動モータ30から発生する磁界が他方の直動モータ30の挙動に対して影響を与えることを抑制することができる。
【符号の説明】
【0054】
1・・・アクチュエータ、2・・・ハウジング、10・・・シャフト、10A・・・先端部、11・・・中空部、20・・・回転モータ、22・・・固定子、23・・・回転子、30・・・直動モータ、31・・・固定子、32・・・可動子、36・・・連結アーム、37・・・ひずみゲージ、50・・・シャフトハウジング、60・・・エア制御機構、500・・・内部空間、501・・・制御通路