(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】振動アクチュエータ、及びこれを備える携帯型電子機器
(51)【国際特許分類】
H02K 33/16 20060101AFI20221206BHJP
B06B 1/04 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
H02K33/16 A
B06B1/04 S
(21)【出願番号】P 2018160807
(22)【出願日】2018-08-29
【審査請求日】2021-08-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 勇樹
(72)【発明者】
【氏名】関口 力
(72)【発明者】
【氏名】大塚 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】石谷 智也
(72)【発明者】
【氏名】坂口 和隆
(72)【発明者】
【氏名】稲本 繁典
【審査官】島倉 理
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-194499(JP,A)
【文献】特開平08-051753(JP,A)
【文献】特開2002-176758(JP,A)
【文献】特開2018-118233(JP,A)
【文献】特開2010-11604(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 33/16
B06B 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルとマグネットとの協働により可動体を固定体に対して振動させる振動アクチュエータであって、
前記コイル及び前記コイルが巻回されるコアを有する前記固定体と、
軸部と、
前記マグネットを有し、前記軸部を介して前記固定体に可動自在に支持される前記可動体と、
を備え、
前記コアは、前記軸部の軸方向に沿って配置され、前記コイルへの通電により励磁されるコア側磁極を有し、
前記マグネットは、隙間を空けて前記コア側磁極に対向するように配置されたマグネット側磁極を有し、
前記可動体を前記固定体に対して、軸方向に往復直線移動自在及び軸回りに往復回転移動自在に弾性支持するばね部を有
し、
前記可動体は、
前記軸部を挟み且つ前記軸方向に延在する両側部を有し前記両側部に夫々前記マグネット側磁極が設けられる胴部と、
前記胴部において前記軸方向で離間する両端部で、夫々両側方に張り出すように設けられた一対の張出部とを備え、
前記両側部及び前記一対の張出部はウェイト部であり、夫々の回転方向の厚みが、前記軸部が挿通される部位よりも薄くなるように構成される、
振動アクチュエータ。
【請求項2】
前記ばね部は、前記コア側磁極と前記マグネット側磁極との間で発生する磁気吸引力による磁気ばねと、前記可動体と前記固定体との間で、前記可動体を軸方向に付勢するように配置される金属ばねとを有する、
請求項1記載の振動アクチュエータ。
【請求項3】
前記金属ばねは、前記固定体と前記可動体との間で前記軸部に外挿され、前記コイルへの通電による前記可動体の軸方向への移動に伴い、コイルの巻回方向にトルクを発生する円筒コイルばねである、
請求項2記載の振動アクチュエータ。
【請求項4】
前記円筒コイルばねは、前記固定体及び前記可動体の双方に接続する両端部のうちの少なくとも一方の端部が接続する前記固定体及び前記可動体の一方に接合固定されている、
請求項3記載の振動アクチュエータ。
【請求項5】
前記円筒コイルばねは、前記固定体及び前記可動体に接続する両端部の少なくとも一方に前記固定体及び前記可動体の一方に面接触する平面部を有する、
請求項3または4に記載の振動アクチュエータ。
【請求項6】
前記マグネット側磁極は、回転方向に部分的に突出して配置され、通電される前記コイルにより励磁される前記コア側磁極と協働して、回転方向にトルクを発生させる、
請求項1から5のいずれか一項に記載の振動アクチュエータ。
【請求項7】
前記コイルは、前記可動体を前記往復直線移動させる共振周波数と、前記可動体を前記往復回転移動させる共振周波数を略同一とした単一周波数の駆動信号により、駆動される、
請求項1から
6のいずれか一項に記載の振動アクチュエータ。
【請求項8】
前記コイルは、前記可動体を前記往復直線移動させる駆動周波数と直線方向とは異なる前記可動体を前記往復回転移動させる駆動周波数を重畳して入力される駆動信号により、駆動される、
請求項1から
6のいずれか一項に記載の振動アクチュエータ。
【請求項9】
前記可動体は高比重金属材を含む、
請求項1から
8のいずれか一項に記載の振動アクチュエータ。
【請求項10】
請求項1から
9のいずれか一項に記載の振動アクチュエータを実装した、
携帯型電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動アクチュエータ、及びこれを備える携帯型電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯電話等の携帯情報端末の着信等を利用者に報知するための振動発生源として、或いは、タッチパネルの操作感触やゲーム機のコントローラ等の遊戯装置の臨場感を指や手足等に伝達する振動発生源として、振動アクチュエータが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に示す振動アクチュエータは、支軸された可動部をシャフトにより摺動自在に支持した平板形状に形成されている。なお、この振動アクチュエータは、平板状にすることで小型化が図られている。
【0004】
特許文献2に示す振動アクチュエータは、筐体及びコイルを備えた固定子と、筐体内に配置されたマグネットおよび錘部を有する可動子と、を有し、コイルとマグネットの協働により、シャフトに対して摺動自在な可動子が固定子に対して振動方向にリニアに振動する。コイルは、マグネットを含む可動部の外側に巻かれている。
【0005】
また、特許文献3は、対向配置された扁平コイルと、扁平コイル上に配置される扁平マグネットとを有するVCM(Voice Coil Motor)原理のアクチュエータである。
【0006】
これらどの振動アクチュエータにおいても可動子は、矩形板状の筐体内に横方向に向けて配置されたシャフトに摺動自在に設けられ、且つ、ばねにより横方向に振動可能に弾性支持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2015-095943号公報
【文献】特開2015-112013号公報
【文献】特許第4875133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、振動アクチュエータを、携帯端末やウェアラブル端末等の携帯型電子機器に適用して、装着したユーザに着信を振動で付与する着信通知機能デバイス等として搭載する場合、ユーザに十分な体感を付与する振動をばらつきなく提供することが求められる。
【0009】
特許文献1~3の振動アクチュエータはいずれも一軸方向に往復駆動することで、振動を付与している。よって、振動アクチュエータを搭載した携帯端末を衣服のポケット等に収容してユーザの体表面近傍に配置させても、その振動方向と体表面との配置状態によっては、振動アクチュエータは、ユーザに十分な体感を付与することができない。したがって、単に衣服のポケットに収容して体表面に近接配置した状態であれば、ユーザに十分な体感を付与できる構成であることが望まれている。
【0010】
ユーザに十分な体感を付与できる構成としては、可動体が摺動する軸部を体表面に対して垂直に配置して、可動体の移動を体表面に直接的に付与する構成が、一例として考えられる。
【0011】
しかしながら、この構成では、可動体の可動領域を確保するため、筐体の厚みを厚くする必要が生じ、そのため、搭載されるスマートフォン等の携帯型電子機器自体も厚くなる。
【0012】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、小型化を図りつつ、好適に十分に振動を付与できる振動アクチュエータ及び携帯型電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の振動アクチュエータの一つの態様は、
コイルとマグネットとの協働により可動体を固定体に対して振動させる振動アクチュエータであって、
前記コイル及び前記コイルが巻回されるコアを有する前記固定体と、
軸部と、
前記マグネットを有し、前記軸部を介して前記固定体に可動自在に支持される前記可動体と、
を備え、
前記コアは、前記軸部の軸方向に沿って配置され、前記コイルへの通電により励磁されるコア側磁極を有し、
前記マグネットは、隙間を空けて前記コア側磁極に対向するように配置されたマグネット側磁極を有し、
前記可動体を前記固定体に対して、軸方向に往復直線移動自在及び軸回りに往復回転移動自在に弾性支持するばね部を有し、
前記可動体は、
前記軸部を挟み且つ前記軸方向に延在する両側部を有し前記両側部に夫々前記マグネット側磁極が設けられる胴部と、
前記胴部において前記軸方向で離間する両端部で、夫々両側方に張り出すように設けられた一対の張出部とを備え、
前記両側部及び前記一対の張出部はウェイト部であり、夫々の回転方向の厚みが、前記軸部が挿通される部位よりも薄くなるように構成される。
【0014】
本発明の携帯型電子機器は、上記構成の振動アクチュエータを実装した構成を採る。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、小型化を図りつつ、好適に十分に振動を付与できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に係る実施の形態1の振動アクチュエータの外観斜視図
【
図2】本発明に係る実施の形態1の振動アクチュエータの内部構成を示す斜視図
【
図3】同振動アクチュエータの内部構成を示す平面図
【
図6】金属ばねにより発生する回転方向トルクの説明に供する図
【
図7】同振動アクチュエータの金属ばねの変形例を示す斜視図
【
図9】直線方向トルクを発生させる磁気回路構成を模式的に示す平面図
【
図10】
図10A~Cは、回転方向トルクを発生させる磁気回路構成を模式的に示す側面図
【
図11】回転方向トルクと直線方向トルクとを発生させる共振周波数を示す図
【
図12】回転方向トルクと直線方向トルクとを発生させる共振周波数を示す図
【
図13】本発明に係る実施の形態2の振動アクチュエータの外観斜視図
【
図14】本発明に係る実施の形態2の振動アクチュエータの内部構成を示す斜視図
【
図15】同振動アクチュエータの内部構成を示す平面図
【
図17】直線方向トルクを発生させる磁気回路構成を模式的に示す平面図
【
図18】振動アクチュエータの磁気回路構成を示す
図15のB―B線断面図
【
図21】
図20に示す可動体のマグネットとコアとの位置関係の説明に供する図
【
図22】振動アクチュエータの実装形態の一例を示す図
【
図23】振動アクチュエータの実装形態の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0018】
(実施の形態1)
図1は、本発明に係る実施の形態1の振動アクチュエータの外観斜視図であり、
図2は、本発明に係る実施の形態1の振動アクチュエータの内部構成を示す斜視図であり、
図3は、同振動アクチュエータの内部構成を示す平面図であり、
図4は、同振動アクチュエータの分解斜視図である。
【0019】
なお、
図1~
図4に加えて、
図5~
図19では、各実施の形態の振動アクチュエータを説明する場合、振動アクチュエータにおける可動体の軸部に沿った直線往復移動方向を、便宜上、Y方向(振動アクチュエータの左右方向)で示す。このY方向は横方向に相当する。また、可動体の軸部を中心とした回転往復移動方向を、便宜上、Z方向(振動アクチュエータ10の厚み方向)で示し、これらY方向及びZ方向と直交するX方向を前後方向として説明する。
【0020】
<振動アクチュエータ10の全体構成>
図1に示す振動アクチュエータ10は、高さ(Z方向であり、厚みに相当する)が縦(X方向であり、前後方向)及び横(Y方向であり左右方向)よりも短い平板形状をなしている。
【0021】
本実施の形態の振動アクチュエータ10は、
図1~
図3に示すように、固定体20と、軸部80と、軸部80を介して固定体20に対して可動自在に支持される可動体30と、可動体30を固定体20に対して、軸方向に往復直線移動自在及び軸回りに往復回転移動自在に弾性支持するばね部と、を有する。
【0022】
可動体30は、マグネット60(61、62)を有し、このマグネット60と、固定体20に設けられ、コア50(51、52)に巻回されたコイル部70(71、72)との協働により軸部80の軸方向に沿って直線往復移動するとともに軸部80の軸周りに回転往復移動する。
【0023】
本実施の形態の振動アクチュエータ10には、可動体30において軸方向に沿う両側部に、軸部80の軸を挟むようにマグネット61、62がそれぞれ設けられ、それぞれのマグネット61、62とエアギャップを介して対向する位置に、コイル部71、72のコイルが巻回された凸部(磁極部)を有するコア51、52が設けられている。
【0024】
マグネット61、62と、コイル部71、72が巻回されたコア51、52とは、互いの磁極(マグネット61、62の磁極(マグネット側磁極)611、621及びコア51、52の磁極(以下、「コア側磁極」という)511、521)を対向して配置されている。
【0025】
具体的には、マグネット61、62の磁極611、621は軸部80の軸に直交する方向で互いに外方(前後方向であり、X方向において背反する方向)に向けて配置され、これらに対向してコア51、52の磁極511、521が配置される。マグネット61、62と、コイル部71、72が巻回されたコア51、52により磁力発生部を構成する。磁力発生部は、軸部80の両側(X方向、前後方向)でそれぞれ、磁気吸引力による磁気ばねとして機能する。磁気吸引力は、軸部80を中心に前後方向で対称に発生する。コイル部71、72への非通電時において、可動体30が両側方で発生する磁気吸引力により両側方に向かって吸引されることで相殺されて釣り合い、可動体30は、その回転が抑制され、基準位置となる水平な状態となる位置で保持される。
【0026】
また、本実施の形態では、磁気ばねに加えて、可動体30は、金属ばね40を介して、軸部80の軸方向に移動した際の復帰自在に弾性支持する金属ばね40を有する。
この磁気ばねと金属ばね40とがばね部として機能し、可動体30は、軸回りへの回転及び軸方向に沿う移動を抑制した状態で、且つ、軸回り及び軸方向に往復移動自在に弾性支持される。
【0027】
振動アクチュエータ10を具体的に説明する。
【0028】
本実施の形態の振動アクチュエータ10は、軸部80を固定体20に固定し、軸部80が挿入される軸受け82a、82bを可動体30に備える。
【0029】
<振動アクチュエータ10の固定体20>
固定体20は、ベース21と、カバー22と、ばねホルダ23a、23bと、コイル部71、72と、コイル部71、72が巻回されたコア51、52と、電源供給部25と、を有する。
【0030】
ベース21は、矩形板状の底面部を構成し、軸部80とコア51、52とが固定される。ベース21は、矩形箱状のカバー22とともに筐体を構成し、筐体内に可動体30が配置される。筐体は、中空の電子シールドとして機能する。
【0031】
ベース21では、本実施の形態では、四辺のうち横方向(Y方向)で離間する辺部からそれぞれ軸固定壁212、214が立設され、これら軸固定壁212、214間に軸部80が架設される。また、ベース21では、四辺のうち前後方向(X方向)で離間する辺部からそれぞれコア固定壁216、218が立設され、コア固定壁216、218のそれぞれに沿ってコア51、52が固定される。
【0032】
軸部80は、ベース21の横方向に沿って、且つ、ベース21の前後方向の中心に配置され、軸固定壁212、214に支持されている。
軸部80は、軸受け82a、82bを介して可動体30を挿通して配置される。
軸部80の両端部には、ばねホルダ23a、23bを介して金属ばね40が、可動体30を軸方向で挟持した状態で、軸固定壁212、214に固定されている。
なお、軸部80は、ばねホルダ23a、23bの固定穴に圧入或いは、挿入後接着等で固定することで軸固定壁212、214に固定されてもよい。なお、軸受け82a、82bは、軸部80が摺動自在に挿通されるものであるが、銅系、鉄系、或いは、鉄-銅系の含油軸受けであってもよく、磁性体であってもよい。
【0033】
コア51、52は、それぞれ本実施の形態では磁性体であり、軸部80の軸を挟むように対向して配置され、軸部80を中心に対称な同形状に形成される。
コア51、52は、本実施の形態では、先端面がコア側磁極511、521となる複数の凸部を有する。本実施の形態ではコア51、52の凸部には、それぞれ外周にコイル部71、72の各コイルがボビン部29を介して巻回されている。コア51、52は、具体的には、それぞれ矩形の金属板を直方形状となるように積層し、直方体の長手方向に沿う一辺を長手方向で3分割するようにスリットを形成して、一面側に凸部が並び配置される平面視E字状に形成されている。
尚、コア51、52は、前期コア側磁極511、521となる複数の凸部をボビン部29に各々独立した複数のブロック部品を配置して形成しても良い。
【0034】
コア側磁極511、521は、それぞれ横方向に並べて配置されている。コア側磁極511、521は、互いに対向する位置に配置され、軸部80、ベース21のコア固定部21、218と平行であり、且つ、マグネット61、62の磁極611、621と互いに平行に配置されていることが好ましい。なお、コア51、52は、電磁ステンレス、焼結材、MIM(メタルインジェクションモールド)材、積層鋼板、電気亜鉛メッキ鋼板(SECC)等により構成されてもよい。
【0035】
コア51、52を巻回するコイル部71、72は、例えば、銅線等により構成される。コイル部71、72に電流が通じることで励磁されると、コア51、52では、それぞれの中央の凸部と、中央の凸部を挟む両側の凸部とは、逆の極性で励磁される。
【0036】
コア51、52同士では、互いに対向する凸部同士のコア側磁極511、521は、それぞれ異なる極性となるように励磁されることが好ましい。例えば、コア51の中央の凸部のコア側磁極511がN極であれば、この中央の凸部の両側の凸部のコア側磁極511がS極となり、且つ、コア52の中央の凸部のコア側磁極521がS極、この中央部の凸部を挟む凸部の磁極がN極となるようにコイル部71,72は巻回される。
【0037】
コア51、52のそれぞれの対向する側とは逆側の面には、ステフィナー27a、27bが配置され、コイル部71、72が巻回されたコア51、52は補強されている。
【0038】
コイル部71は、一本のコイル線により、コア51を巻回する3つのコイルを構成し、コイル部72は、一本のコイル線により、コア52を巻回する3つのコイルを構成することにより、振動アクチュエータ10における磁気回路構成が効率よく機能するものとしている。具体的には、コア51,52において、中央の凸部と、中央の凸部の両側の凸部とは、コイル線の巻回方向を異なる方向としている。なお、コイル71、72の各コイルは、それぞれ異なるコイル線により巻回して、それぞれの中央の凸部と、中央の凸部を挟む両側の凸部とは、逆の極性で励磁されるようにしてもよい。
【0039】
コイル部71、72は、それぞれ電源供給部25に接続されている。コイル部71、72は、電源供給部25から給電されることで凸部をそれぞれ励磁し、コア51、52において、中央の凸部と、中央の凸部を挟む中央の凸部の両側の凸部を励磁し、異なる磁極となるように励磁する。
【0040】
電源供給部25は、コイル部71、72に電力供給する基板であり、外部電源に接続される基板、例えば、フレキシブル回路基板(FPC:Flexible printed circuits)等で構成される。電源供給部25は、ベース21上に配置されている。
【0041】
<可動体30>
可動体30は、
図1~
図3に示すように、固定体20の筐体内で、コア51、52との間で、且つ、金属ばね40に軸方向で挟まれた状態で、軸部80の延在方向と軸部80の軸回り方向とに可動自在に配置されている。
【0042】
可動体30は、本実施の形態では、マグネット61、62と、マグネット61、62が取り付けられるウェイト部32と、ウェイト部32に取り付けられて、軸部80が挿通される軸受け82a、82bと、を有する。
【0043】
ウェイト部32には、長手方向である横方向で離間する両端部の中央部に軸受け82a,82bがそれぞれ取り付けられ、コア51、52と対向する両側面にそれぞれマグネット61、62が取り付けられている。
【0044】
ウェイト部32は、可動体30自体の質量を大きくして振動を増大させる。ウェイト部32は、例えば、SECC等の鉄、鉄を主成分とする合金、青銅、銅など比重が5以上である金属材料や、焼結材、MIM(メタルインジェクションモールド)材を採用することが好ましい。
【0045】
ウェイト部32は、例えば、タングステン或いはタングステン合金などの高比重金属材料(好ましくは比重10以上、より好ましくは比重11以上)が好適である。本実施の形態では、ウェイト部32は、主にタングステンにより構成されている。例えば、比重の目安として、SECC:7.8、Nd焼結マグネット:7.4~7.6、銅:8.9、タングステン:16~19である。
【0046】
ウェイト部32は、軸部80を挟み、且つ、軸部80の軸方向に延在する両側部は、回転方向(Z方向)の厚みが、軸部80が挿通される部位(例えば胴部322)よりも薄くなるように構成されている。ウェイト部32の両側部とは、軸部80からX方向である前後方向に最も遠い部分である。この薄い部分によって、可動体30は、軸部80周りに回転しても、ベース21とカバー22の天面とに衝突することなく、可動体30へのベース21とカバー22との干渉を回避している。
【0047】
具体的には、ウェイト部32は、前後方向の中央部に軸部80が挿通される挿通孔3221を有する胴部322と、胴部322の軸方向で離間する両端部に設けられる張出部324、324とを有する。
【0048】
胴部322は、軸方向に延在する長尺の部材であり、挿通孔3221が形成された筒状部322aと、筒状部322aの外周面において前後方向にそれぞれ突出する突条部322bとを有する。
【0049】
突条部322bは、筒状部322aの延在方向に沿って軸方向に延在して形成されている。突条部322bのZ方向の厚みは、胴部322のZ方向の長さよりも短く、突条部322bにおいて前後方向に突出する位置に位置する先端面には、マグネット61、62が着磁方向を前後方向に向けて取り付けられている。
【0050】
突条部322bは、マグネット61、62と、張出部324の張出部分3244とともに可動体30の両側部を構成する。
【0051】
張出部324は、胴部322の突条部322bよりも前後方向(筒状部322aの両側方であり、X方向)に張り出すように設けられている。
【0052】
張出部324は、筐体内の矩形状の領域において、互いに対向するコア51、52とマグネット61、62との磁気回路部を、軸方向外側で挟む位置に配置されている。すなわち、振動アクチュエータ10は、ベース21にカバー22を被せて形成される筐体内において、隙間を極力低減してコンパクト化が図られた構成となっている。
【0053】
図5は可動体10の右側面図である。
張出部324は、本実施の形態では、可動体30のウェイトとしての機能とともに金属ばね40に接続される機能を有する。
張出部324は、ウェイト部32が軸部80周りに回動する際に、X軸方向で最も振幅の大きい部位である張出部分3244を有する。
【0054】
図3~
図5に示すように、張出部324の張出部分3244は、胴部322の端面に固定される張出本体部3241から、軸部80と直交するX方向に突出して設けられている。
【0055】
張出本体部3241は、胴部322及びマグネット61、62と軸方向で重なる位置に配置され、中央部に胴部322の挿通孔3221に連続する開口部3241aが形成されている。
【0056】
張出本体部3241には、開口部3241aを挟むように張出部分3244が別部品の接合、或いは一体部品の延出にて形成される。張出本体部3241は、両側の張出部分3244ととともに軸方向外方に窪む凹状の受け部3242を形成する。この受け部3242は内部で金属ばね40の一端側を受けて金属ばね40と接続している。
【0057】
張出部分3244の軸方向外方には、可動体30が軸方向に移動する際、軸固定壁212、214との直接の衝突を回避する緩衝材36が設けられている。なお、緩衝材36は、例えば、エラストマー、ゴム、樹脂、又は多孔質弾性体(例えば、スポンジ)などの軟質材料により形成される。
張出部分3244は、Z方向で離間するベース21及びカバー22の天面のそれぞれに対向し、且つ、前後方向に張り出した先端部側の部位に、逃げ部3246を有する。
【0058】
逃げ部3246は、張出部分3244の軸部80側の基端側の面よりも長さT1分、非通電状態である常態時に対向するベース21及びカバー22の天面から離れるように設けられている。
【0059】
これにより、可動体30が軸部80を中心に往復回転移動する場合、張出部分3244が大振幅時であっても、筐体(具体的には、ベース21と、カバー22の天面)に接触することがなく、筐体の干渉が回避される。よって、可動体30の往復回転移動の際に、可動体30が筐体と干渉することで音を発生することが無い。
【0060】
また、可動体30のウェイト部32の胴部322では、筒状部322aから前後方向に突出する突条部322bが、上下方向の厚みを筒状部322aよりも薄い。
突条部322bの先端部には、マグネット61、62が固定され、突条部322bは、マグネット61、62と、張出部324の張出部分3244とともに可動体30の両側部を構成する。
【0061】
このようにウェイト部32は、軸部80をX方向で挟み、且つ、軸部80の軸方向(例えばY方向)に延在する両側部は、回転方向(Z方向)の厚みが、軸部80が挿通される部位(例えば胴部322)よりも薄く(
図5に示す長さT2分薄く)なるように構成されている。
よって、可動体30が軸部80を中心に軸回りに回転移動する場合、ウェイト部32の両側部は、筐体に接触することなく、大振幅で回転往復移動できる。
【0062】
軸受け82a、82bは、軸部80が挿通されるものであり、例えば、焼結スリーブベアリングにより形成される。軸受け82a、82bは、ウェイト部32の中心軸上に、軸部80が位置するように、ウェイト部32に設けられる。本実施の形態では、張出部324の開口部3241aに形成された彫り部内に、ウェイト部32の中心軸上で貫通する貫通孔32aの両端部に、同一軸心でそれぞれ固定された状態となっている。
【0063】
金属ばね40は、ウェイト部32を軸方向で弾性支持するように配置される。すなわち、金属ばね40は、軸部80上に配置される可動体30を、軸受け82a、82bを介して、長手方向の中央部分に位置するように付勢する。
これにより可動体30は、コイル部71、72に給電されていない場合の磁気ばねの機能に加えて、金属ばね40の機能により、横方向である長手方向の中心に位置するように付勢される。
【0064】
金属ばね40は、円筒状の圧縮コイルばね(「以下、「円筒コイルばね」という)であり、材料がらせん状に成形されているため、圧縮時には回転しようとする力が働き、金属ばね40において螺旋方向へのトルク、つまり、回転方向のトルク(「回転方向トルク」)を発生する。なお、金属ばね40は、可動体30において軸部80の延在方向の両側のそれぞれに、同じ巻線方向で配置されることが有効となる。
【0065】
図6は、金属ばね40により発生する回転方向トルクの説明に供する図である。
金属ばね40は、可動体30が駆動する際に、可動体30側から荷重がかかり、
図6に示すように、軸周りの回転方向トルクを発生する。これにより、可動体30は軸回りに回転移動可能である。本実施の形態では、金属ばね40の両端部が、軸固定壁212、214或いはばねホルダ23a、23b及びウェイト部32に固定され、発生する回転方向トルクが可動体30に伝達されるように構成される。
【0066】
金属ばね40は、両端部のうち少なくとも一方の端部を、接続対象に接合固定する。例えば、金属ばね40の両端部を接着或いは溶接等により固定する。これにより、金属ばね40は設置個所で軸回りに滑ることがなく、発生する回転方向トルクを安定して可動体30に伝達できる。尚、金属ばね40の両端部を接着或いは溶接等により固定しなくても、軸固定壁212及びウェイト部32と金属ばね40との摩擦により固定できれば、発生する回転トルクを安定させることが可能であり、問題なく可動部30に伝達できる。
【0067】
なお、金属ばね40は、
図7に示すように、その両端部に、軸固定壁212、214或いはばねホルダ23a、23bとウェイト部32とに対する接触面積が大きくなるように、軸方向と直交する面状の平面部412が設けられてもよい。金属ばね40の両端部は、固定体20の軸固定壁212、214或いはばねホルダ23a、23bと、可動体30のウェイト部32と、に当接する部位である。平面部412は、金属ばね40において金属ばね40の軸方向と直交する平面或いはほぼ平面に形成される。
【0068】
この構成により、軸固定壁212、214或いはばねホルダ23a、23bと、ウェイト部32との間に金属ばね40が配置されると、両端部の平面部412で軸固定壁212、214或いはばねホルダ23a、23bと、ウェイト部32とに面接触して押圧する。これにより金属ばね40は、固定体20と可動体30とに接続された状態となる。よって、金属ばね40の両端部が軸固定壁212、214或いはばねホルダ23a、23bとウェイト部32とに固定されなくても、金属ばね40は双方に接続した状態となり、回転方向トルクを発生して、可動体30に伝達し、可動体30を回転方向に駆動させることができる。
【0069】
ここで、金属ばねとしての円筒コイルばねの端部がらせん状の巻ばね形状であることから端部形状は斜めであり、回転駆動時に、取付箇所に斜めに組み付くこととなって、組付けのばらつきの原因となる恐れがある。また、回転駆動時に、ばね内径部分が軸部80に接触する場合も生じる。
これに対し、本実施の形態では、金属ばね40の一例の円筒コイルばねの端部に平面部412を設けているので、円筒コイルばねの巻中心軸と、軸部80の軸とを一致させることができ、ばらつきを抑え、金属ばね40が軸部80に接触しない組み立てが可能となる。
【0070】
本実施の形態では、金属ばね40を円筒コイルばねとし、可動体30の直線方向への移動に伴い円筒コイルばねを直線方向に動かした際に回転する力を用いて、同時に可動体30を回転方向に駆動している。この構成により、可動体30を回転駆動させるための部品を別途追加する必要が無く、低コストで所望の可動体30の駆動が可能となっている。
【0071】
図8は、
図3のA―A線端面図である。
図8では、コイル部71、72における3つのコイルのうち中央のコイル71b、72bと、これに対向するマグネット61、62の磁極とを一例として示している。
図3、
図4及び
図8に示すように、マグネット61、62は、複数の磁極として磁極611、621を有し、互いの磁極611、621が軸部80を挟み反対向きにして配置される。
【0072】
本実施の形態では、軸部80が挿通されたウェイト部32において長手方向に沿う両側面に、且つ、軸部80と平行に磁極611、621を前後に向けて固定されている。本実施の形態では、磁極611、621には、
図3、
図4及び
図9に示すように、複数の異なる磁極が軸方向に交互に配置されている。本実施の形態では、マグネット61、62のそれぞれの磁極611、621において、4つの異なる極性が軸部80と平行に交互に配置されている。マグネット61、62の各磁極は、軸部80を挟み逆向き、つまりX方向では、異なる極性となるように配置されている(
図9参照)。なお、マグネット61、62のそれぞれの複数の磁極は、複数の磁極の異なるマグネット(マグネット片)を交互に並べて構成してもよいし、交互に異なる磁性を持つように着磁されたものでもよい。後述する各実施の形態のマグネットも同様である。なお、マグネット61、62は、例えば、Nd焼結マグネット等により構成されてもよい。
【0073】
マグネット61、62の磁極611、621は、コア51、52のコア側磁極511、521に対して所定間隔(エアギャップ)Gを空けて、対向して且つ平行に配置されている(
図8参照)。
【0074】
磁極611、621は、本実施の形態では、対向するコア側磁極511、521の高さ(Z方向の長さ)よりも高くなるように構成され、非駆動時において、それぞれの高さ方向の中心の位置が略同じ高さ位置(高さ方向基準位置)となるように配置される。磁極611、621及びコア側磁極511、521の互いに対向する面積が極力大きくなるように構成されており、磁気回路を駆動させた際に、効率良く磁束が集中し、高出力化が図られる。
【0075】
また磁極611、621の横方向(軸方向であり、Y方向)の極性の切り替わる位置、つまり、磁極611の磁極の境界は、非駆動時において及びコア側磁極511、521の横方向(軸方向であり、Y方向)の中心と対向する位置に配置する。
【0076】
このように、本実施の形態では、軸部80を挟み配置されるマグネット61、62のそれぞれに、磁性体であるコア51、52が対向して配置されているので、コア51、52とマグネット61、62間にそれぞれ磁気吸引力が発生する。発生した磁気吸引力は軸部80の両側で、且つ、軸部80を挟み前後方向、つまりX方向でそれぞれ逆向きに発生するので、互いに相殺され、軸部80を中心に回動する可動体30の傾きが無くなり、可動体30は、軸部80周りの回転が規制され(所謂回転止め)、高さ方向基準位置に位置される。また、本実施の形態では、可動体30は、金属ばね40により弾性支持されている。これにより、可動体30は、コア51、52とマグネット61、62と間の磁気吸引力、所謂、磁気ばねと、可動体30を軸方向で挟み込む金属ばね40(機械ばね)とによって軸方向及び軸回りに可動自在に弾性支持される。なお、可動体30は、磁気ばねにより軸方向及び軸回りに移動自在に弾性支持された構成としてもよい。
【0077】
そして、コア51、52は、コイル部71、72に電源供給部25から電源が供給されて励磁されることにより凸部の先端面が磁化され、コア側磁極511、521となり、対向配置されたマグネット61、62の磁極611、621と協働して、推力が発生する。コイル部71、72へ供給する電流の向きを変えることで、逆方向に推力が発生する。
【0078】
本実施の形態では、マグネット61、62を備える可動体30は、軸方向である長手方向、つまり、振動方向に往復移動(直線往復振動)する。また、マグネット61、62を備える可動体30は、軸部80の軸回りに回転方向に往復移動する。
【0079】
振動アクチュエータ10は、可動体30を軸部80の軸方向に直線往復移動させると同時に軸部80の軸回りに回転往復移動させることができる。また、振動アクチュエータ10は、直線往復移動と回転往復移動とを個々にさせることができる。本実施の形態では、振動アクチュエータ10は可動体30に直線往復移動及び回転往復移動を同時に行わせる。
【0080】
図9は、直線の方向トルクを発生させる磁気回路構成を模式的に示す平面図である。
本実施の形態では、例えば、上述したように、
図9に示すように、コア51に対向するマグネット61の磁極611の極性を右側から左側に向かってS極、N極、S極、N極の順に配置する。また、コア52に対向するマグネット62の磁極621の極性を、マグネット61の極性の軸方向の並びとは異なる極性で、右側から左側に向かってN極、S極、N極、N極、Sの順に配置する。
このようにマグネット61、62同士は、軸部80を挟み互いに異なる極性で、それぞれ軸方向と直交する方向で、対応するコア51、52のコア側磁極511、521と対向するように配置される。本実施の形態では、マグネット61、62とコア51、52の対向する極性の数を、マグネット4:コア3としている。
【0081】
また、各マグネット61、62における磁極611、621の磁極切り替わり位置は、常態時において、コア51、52のコア側磁極511、521の軸方向の中心と対向する位置(直線方向基準位置)に位置する。
【0082】
図10A~Cは、回転方向トルクを発生させる磁気回路構成を模式的に示す側面図である。なお、
図10A~
図10Cは、便宜上、
図9に示すマグネット61、62の複数の磁極611、621及びコア51、52の複数のコア側磁極511、521のうちのコア側磁極511a、521a、611b、621bを示す。また、各図の矢印AFは回転方向基準位置に戻ろうとする磁気吸引力の方向、大きさを模式的に示す。
コア51、52の各コア側磁極511、521とこれに対向するマグネット61、62の各磁極611、621とを含む磁気回路では、マグネット61、62の極性が異なるだけで何れの磁極どうしの間でも同様の推力を発生させる。以下では、コア側磁極511a、521a、611b、621bを用いて磁気回路による動作を説明する。
【0083】
図10Aに示すように、可動体30の非駆動時、つまり、コイル部71、72への非通電時においては、可動体30のマグネット61,62は、コア51、52との間で発生する磁気吸引力(矢印AF)により、それぞれ回転方向基準位置に位置する。具体的には、マグネット61、62の磁極611、621と、コア51、52のコア側磁極511、521の双方のZ方向(厚み方向であり、回転方向に相当)の中心位置同士が軸方向と直交す方向(X方向)で対向する位置に位置する。
【0084】
このように非駆動時では、可動体30は、金属ばね40による付勢力と磁気ばねによる吸引力(付勢力に相当)が付与される。これにより可動体30は、軸部80に沿う左右方向(Y方向)と、軸部80周りの正逆回転する方向(Z方向)という双方向のそれぞれにおいて、最大振幅で移動可能な位置に位置する。すなわち、可動体30は、非駆動時では、
図10の矢印AFで示すように、正逆方向に往復移動する際の正逆双方への移動範囲が同じとなるセンター位置としての回転方向基準位置であって、非駆動時の基準となる非駆動基準位置に戻ろうとする。なお、
図10B及び
図10Cは、正逆方向に移動した際の通電方向切り換え時における、回転方向基準位置に戻ろうとする力の大きさを矢印AFで示している。
【0085】
そして、コイル部71、72に通電する。ここでは、コイル部71、72のそれぞれに
図9に示すように電流を供給してコア51、52を励磁し、マグネット61に対向するコア51の中央の凸部(以下、便宜上、「中央凸部」)のコア側磁極511aをN極に励磁し、マグネット62に対向するコア52の中央凸部のコア側磁極521aをS極に励磁する。また、この通電により、各コア51、52の中央凸部を挟む中央凸部の両側の凸部(側凸部)のコア側磁極511b、511c、521b、521cの極性は、それぞれの中央凸部の極性とは異なる極性となる。例えば、
図9では、側凸部のコア側磁極511b、511cはS極であり、側凸部のコア側磁極521b、521cは、N極である。
【0086】
すると、マグネット61の磁極611b、621bは、コア51、52の中央凸部のコア側磁極511a、521aと反発し、側凸部のコア側磁極511b、521bに吸引されてF方向の推力を得てF方向に移動する。
【0087】
このように、コイル部71、72への通電により発生する、各マグネット61、62の磁極611、621とコア51、52のコア側磁極511、521との間に発生する磁気吸引力及び反発力により、金属ばね40の付勢力に抗して、軸方向に沿う一方に推力(例えばF方向の推力)が発生する。これにより、マグネット61、62は、軸方向に沿うにF方向に駆動する。
【0088】
また、マグネット61、62の磁極611b、621bが、コア51、52側のコア側磁極511a、521aに反発して回転方向基準位置から推力F方向に移動しようとしたときに、推力F方向、つまり軸方向への荷重がかかる金属ばね40に軸回りの回転方向トルク(例えば、
図6参照)が発生する。
【0089】
更に、金属ばね40の付勢力に加え、各マグネット61、62の磁極611、621とコア51、52のコア側磁極511、521との間に発生する磁気吸引力による回転方向トルク成分が加わる。
【0090】
これにより、互いに引き合うコア側磁極511b、521bはF方向に移動しつつ、回転し、つまり、F方向に沿って捻れるように回転駆動する。
【0091】
また、コイル部71、72への通電方向を逆にしてコイル部71、72に給電する。このように給電が切り替わる際には、マグネット61、62の磁極611、621とコア51、52側のコア側磁極511、521と間の磁気吸引力および金属ばね40の付勢力と、コア51、52側のコア側磁極511、521の極性が変わることにより、可動体30は、推力-F方向に移動しつつ、F方向への移動とは異なる方向に回転する。つまり、推力F方向へ移動のときとは逆方向で捻れるように可動体30は移動する。
【0092】
すなわち、振動アクチュエータ10では、電源供給部25からコイル部71、72へ入力される交流波によりコア51、52のコア側磁極511、521(詳細には凸部の先端面の磁極)が励磁され、可動体30側のマグネット61、62に対して、効果的に磁気吸引力及び反発力を発生する。これにより、可動体30のマグネット61、62は、駆動基準位置となる位置(ここでは平面視してマグネット61、62の長手方向(軸方向)の中心と、対向するコア51、52側のコア側磁極511、521の中心とが重なり、且つ、マグネット61、62の高さ方向の中心と、コア51、52側のコア側磁極511、521の高さ方向の中心とが重なる位置)を基準にして、長手方向に沿って往復移動する。つまり、可動体30は、固定体20に対して、マグネット61、62とコア51、52との互いの磁極611、621、511、521に沿う方向と、軸回りの回転方向とに往復振動する(
図9及び
図10参照)。
【0093】
この駆動原理を以下に示す。なお、本実施の形態の振動アクチュエータ10の駆動原理は、以下の各実施の形態の振動アクチュエータ10,10A全てで実現される。
【0094】
本実施の形態の振動アクチュエータ10における軸部80方向に沿う振動では、可動体30の質量m[kg]、ねじり方向のばね定数Kspとした場合、可動体30は、固定体20に対して、下記式(1)によって算出される共振周波数fr[Hz]で振動する。
【0095】
【0096】
本実施の形態の振動アクチュエータ10は、電源供給部25からコイル部71、72に可動体30の共振周波数frと略等しい周波数の交流を供給してコイル部71、72を介して各コア51、52(詳細にはコア側磁極511、521)を励磁する。これにより、可動体30を効率良く駆動させることができる。
【0097】
本振動アクチュエータ10における可動体30は、コイル部71、72が巻回されたコア51、52及びマグネット61、62による磁気ばねと、金属ばね40とを介して固定体20により支持されるばねマス系構造で支持された状態となっている。よって、コイル部71、72に可動体30の共振周波数frに等しい周波数の交流が供給されると、可動体30は共振状態で駆動される。
【0098】
振動アクチュエータ10の軸方向に沿う駆動原理を示す運動方程式及び回路方程式を以下に示す。振動アクチュエータ10は、下記式(2)で示す運動方程式及び下記式(3)で示す回路方程式に基づいて駆動する。
【0099】
【0100】
【0101】
すなわち、振動アクチュエータ10における質量m[Kg]、変位x(t)[m]、推力定数Kf[N/A]、電流i(t)[A]、ばね定数Ksp[N/m]、減衰係数D[N/(m/s)]等は、式(2)を満たす範囲内で適宜変更できる。また、電圧e(t)[V]、抵抗R[Ω]、インダクタンスL[H]、逆起電力定数Ke[V/(m/s)]は、式(3)を満たす範囲内で適宜変更できる。
【0102】
このように、振動アクチュエータ10、可動体30の質量mと、金属ばね(弾性体、本実施の形態ではコイルばね)40と磁気ばねとを重畳したばね定数Kspにより決まる共振周波数frにおいて駆動した場合、軸部80に沿う振動に関して効果的に大きな出力を得ることができる。
【0103】
また、振動アクチュエータ10の回転方向への駆動原理について簡単に説明する。本実施の形態の振動アクチュエータ10では、可動体30の慣性モーメントをJ[kg・m2]、金属ばね40及び磁気ばねのねじり方向のばね定数をKsp_rotとした場合、可動体30は、固定体20に対して、下式(4)によって算出される共振周波数fr_rot[Hz]で振動する。
【0104】
【0105】
可動体30は、ばねマス系の振動モデルにおけるマス部を構成するので、コイル11に可動体30の共振周波数fr_rotに等しい周波数の交流波が入力されると、可動体30は共振状態となる。すなわち、電源供給部(例えば電源供給部25、25A)からコイル部71、72に対して、可動体30の共振周波数fr_rotと略等しい周波数の交流波を入力することにより、可動体30を効率良く振動させることができる。
【0106】
振動アクチュエータ10の回転方向における駆動原理を示す運動方程式は、下記式(5)であり、振動アクチュエータ10における可動体30の回転方向への移動は、下記式(5)と上記式(3)の回路方程式とに基づいて駆動する。
【0107】
【0108】
すなわち、振動アクチュエータ10における可動体30の慣性モーメントJ[kg・m2]、回転角度θ(t)[rad]、トルク定数Kt[N・m/A]、電流i(t)[A]、ばね定数Ksp_rot[N・m/rad]、減衰係数Drot[N・m/(rad/s)]等は、式(5)を満たす範囲内で適宜変更できる。また、電圧e(t)[V]、抵抗R[Ω]、インダクタンスL[H]、逆起電力定数Ke[V/(m/s)]は、式(3)を満たす範囲内で適宜変更できる。
【0109】
このように、振動アクチュエータ10では、可動体30の慣性モーメントJとばね部33のばね定数Ksp_rotにより決まる共振周波数fr_rotに対応する交流波によりコイル部71、72への通電を行った場合に、効率的に大きな振動出力を得ることができる。
【0110】
図11は、軸方向に沿う振動と、軸回りの振動と同時に行うために、軸方向に沿う振動、つまり、直線方向の振動を発生させる共振周波数Lと、軸回りの振動、つまり、回転方向の共振周波数を略同一とした際の共振周波数Rを示す。
図11に示す直線方向の共振周波数Lと回転方向の共振周波数Rを略同一とした単一の周波数を基本成分とした駆動信号でコイル部71、72を駆動する。
つまり、軸方向に沿う振動と軸回りの振動の双方の成分を含む共振周波数でコイル部71、72を通電する。
【0111】
これにより、上述したように、可動体30を、軸部80の軸方向への往復移動と、軸回りの往復移動とを同時に行わせることできる駆動回路を容易に構成でき、この駆動回路により、容易に軸部80の軸方向への往復移動と、軸回りの往復移動とを同時に行うことができる。これにより、直線方向と回転方向の2方向の振動が可能となり、ユーザの振動フィーリングを改善できる。
【0112】
図12は、軸方向に沿う振動と、軸回りの振動のそれぞれの共振周波数が異なる周波数とした駆動信号を示す図である。
【0113】
すなわち、
図12では、直線方向の駆動周波数Lと直線方向とは異なる回転方向の駆動周波数Rを示す。
【0114】
これら、直線方向の駆動周波数と直線方向とは異なる回転方向の駆動周波数を駆動信号として重畳してコイル部71、72に入力することによって、信号を重畳して入れることで、周波数の異なる2方向の振動を同じタイミングで発生させることができる。これにより、広い周波数で可動体30を駆動させることができ、振動表現を増やすことができる。
【0115】
振動アクチュエータ10によれば、コイル部71、72と、マグネット61、62との協働により可動体30を軸方向に振動する振動アクチュエータ10である。
【0116】
振動アクチュエータ10は、コイル部71、72を有する固定体20と、固定体20に対して軸部80を介して軸方向に可動自在に支持され、マグネット61、62を有する可動体30とを有する。マグネット61、62は、可動体30に、軸部80を挟み互いに異なる方向に磁極を有して設けられ、コイル部71、72は、固定体20に、可動体30に設けられるマグネット61、62に対向して所定間隔Gを空けてそれぞれ配置される。
【0117】
この構成によれば、軸部80を挟みそれぞれのコイル部71、72が巻回されるコア51、52及びマグネット61、62間で発生する磁気吸引力は、可動体30に対して軸部80を挟み互いに逆方向に発生する。これにより、磁気吸引力による可動体30の回転方向へ移動を規制して、可動体30を往復回転移動する際の中立位置で保持して、回転往復動させる際の最大振幅を確保できる。また、軸方向にも往復振動可能であり、薄型化が可能であり、直線と回転の2方向の振動を行うことでより体感性の高い振動フィーリングを付与できる。よって、小型化を図りつつ、好適に十分に振動を付与できる。
【0118】
従来、共振現象を利用した振動アクチュエータでは、ばね定数が線形(一定値)の場合、周波数に対する特性は、共振点付近で急峻な特性となるため、従来の振動アクチュエータを、周波数固定で駆動した場合、共振のずれにより振動特性のばらつきが大きくなることが知られている。これに対し、本実施の形態の振動アクチュエータ10は、マグネット61、62とコイル部71、72とによる磁気ばねを用いているので、周波数特性が線形の場合の特性に比べ平坦になる駆動周波数にでき、振動出力をばらつきにくくすることができ、所望の振動出力を得ることが出来る。
【0119】
金属ばね40に加えて、磁性体であるコア51、52とマグネット61、62とを有する磁気ばねを有するので、コア51、52を基準位置で弾性支持する金属ばね40のばね定数を下げることが可能となる。これにより、金属ばね40の寿命が向上し振動アクチュエータ10としての信頼性の向上を図ることができる。
【0120】
ところで、従来の平面形状や円筒形状のアクチュエータを携帯電話、スマートフォン、ウェアラブル端末、或いは、リング型形状デバイス(ex.Φ15~25mm)等の携帯型電子機器に取り付けようとした場合、装着したユーザに十分な体感を付与する振動を発生させるためには、大きな振動デバイスが求められる。また、ばらつきの無い、安定した振動出力である振動特性が要求される。
【0121】
これに対して本実施の形態の振動アクチュエータ10では、可動体30が軸部80に沿って往復直線移動し、同時に、軸部80周りに回転往復運動するように2軸で往復移動することにより振動を発生させることができ、十分な振動体感を付与できる。これにより、振動アクチュエータ10をリング型形状デバイスに搭載すれば、小型化された振動アクチュエータ10であっても、ユーザに、十分な振動をばらつくことなく効率良く付与できる。
【0122】
可動体30のウェイト部32は、高比重のタングステンを用いて形成しているため、可動体自体の質量を増加させて、振動出力を増加することができる。
【0123】
また、振動アクチュエータ10によれば、筐体内で、可動体30とのクリアランスを狭くしても干渉することなく組立が可能となる。また、可動体30の軌跡が安定するため、設計が容易となり、且つ、可動体30の安定した駆動が可能となる。また金属ばね40にコイルばねを用いる場合、コイルばねの中央に軸部80を通す構成となるので、組立性の向上及び安定したばね保持が可能となる。
【0124】
実施の形態1、2では、対向する互いの極性の数を、マグネット4:コア3となるようにしている。なお、互いの極数の比は、マグネット:コア=2:3、3:2でもよい。
【0125】
(実施の形態2)
図13は、本発明に係る実施の形態2の振動アクチュエータの構成を示す外観図であり、
図14は、同振動アクチュエータの内部構成を示す斜視図である。
図15は、同振動アクチュエータの内部構成を示す平面図であり、
図16は、同振動アクチュエータの分解斜視図であり、
図17は、直線方向トルクを発生させる磁気回路構成を模式的に示す側面図であり、
図18は、
図15のB―B線断面図である。
図18は、コイル部71A、72Aのそれぞれにおける複数のコイルのうちの一つのコイル73、74と、これに対向するマグネットの磁極とを一例として示している。また、
図19A及び
図19Bは、回転方向トルクを発生させる磁気回路構成を模式的に示す側面図である。また、
図19の矢印AFは回転方向基準位置に戻ろうとする磁気吸引力の方向、大きさを模式的に示す。
【0126】
なお、実施の形態2の振動アクチュエータ10Aは、
図1~
図10で説明した実施の形態1に対応する振動アクチュエータ10と同様の基本的構成を有しているが、マグネット61A、62Aの磁極数とコア51A、52Aの磁極数の数が異なる。本実施の形態の振動アクチュエータ10Aは、マグネットとコアの磁極の極数を、3:2としたものであり、その他の構成は、振動アクチュエータ10と同様の構成である。よって、振動アクチュエータ10における構成要素と同様の機能を有する構成要素には、同名称と同符号に「A」を付して示し、詳細な説明は省略する。
【0127】
振動アクチュエータ10Aでは、可動体30Aの両側に設けられるマグネット61A、62Aの磁極数を3つずつにし、これに対向する固定体20A側のコア51A、52Aの磁極を2つずつにした構成である。
【0128】
図13に示す振動アクチュエータ10Aは、高さ(Z方向であり、厚みに相当する)が縦(X方向であり、前後方向)及び横(Y方向であり左右方向)よりも短い平板形状をなしている。
【0129】
本実施の形態の振動アクチュエータ10Aは、
図13~
図15に示すように、固定体20と、軸部80Aと、固定体20Aの軸固定壁212A、214A間に架設された軸部80Aを介して固定体20Aに対して可動自在に支持される可動体30Aと、を有する。なお、軸固定壁212A、214Aは、固定体20の軸固定壁212、214と同様に、ベース21Aの四辺のうち横方向(Y方向)で離間する辺部から立設され、四辺のうち前後方向(X方向)で離間する辺部からそれぞれコア固定壁216A、218Aが立設されている。コア固定壁216A、218Aのそれぞれに沿ってコア51A、52Aが固定される。
【0130】
可動体30Aは、マグネット60A(61A、62A)を有し、このマグネット60Aと、固定体20Aに設けられ、コア50A(51A、52A)に巻回されたコイル部70A(71A、72A)との協働により軸部80Aの軸方向に沿って直線往復移動するとともに軸部80Aの軸周りに回転往復移動する。
【0131】
本実施の形態の振動アクチュエータ10Aには、可動体30Aにおいて軸方向に沿う可動体本体として機能するウェイト部32Aの両側部に、軸部80Aの軸を挟むようにマグネット61A、62Aがそれぞれ設けられている。それぞれのマグネット61A、62Aと対向する位置に、コイル部71A、72A(
図15ではコイル部73、74で示す)が巻回されたコア51A、52Aが設けられている。
【0132】
マグネット61A、62Aとコア51A、52Aは、互いの磁極(マグネット61A、62Aの磁極611A、621A及びコア51A、52Aのコア側磁極511A、521A)が、エアギャップGを介して対向するように配置されている。
【0133】
具体的には、マグネット61A、62Aの磁極611A、621Aは、軸部80Aの延在方向と直交する方向で互いに外方(前後方向であり、X方向において背反する方向)に向けて配置されている。
【0134】
コア51A、52Aは、コイル部71A、72Aが巻回された複数の凸部を有し、コイル部71A、72A(
図15ではコイル部73、74)が通電されることで、凸部の先端面がコア側磁極511A、521Aとして励磁される。
【0135】
コア側磁極511A、521Aは、マグネット61A、62Aの磁極611A、621Aに対向して配置されている。コイル部71A、72A、コア51A、52Aとマグネット61A、62Aは、磁力発生部を構成する。磁力発生部は、軸部80の両側(X方向、前後方向)でそれぞれ、磁気吸引力による磁気ばねとして機能する。磁気吸引力は、軸部80Aを挟んで軸部80を中心に対称に発生する。
【0136】
可動体30Aが両側方で発生する磁気吸引力により両側方に向かって吸引されることで相殺されて釣り合い、可動体30Aは、その回転が抑制され、基準位置となる水平な状態となる位置で保持される。
【0137】
振動アクチュエータ10Aでは、振動アクチュエータ10と同様に、磁気ばねに加えて、可動体30Aを、軸部80の軸方向に移動した際に基準位置に復帰自在に弾性支持する金属ばね40を有する。この磁気ばねと金属ばね40とにより、可動体30は、軸回りへの回転及び軸方向に沿う移動を抑制した状態で、且つ、軸回り及び軸方向に往復移動自在に弾性支持される。
【0138】
尚、振動アクチュエータ10Aにおける磁気回路による可動体30Aの可動は、振動アクチュエータ10と同様である。
【0139】
コイル部71A、72Aを通電すると、コア51A、52Aのコア側磁極511A、521Aは励磁される。これにより
図17に示すように、対向するマグネット61A、62Aの磁極611A、621Aにおいて軸方向で並ぶ異なる極性との間で発生する磁気吸引力及び磁気反発力により推力F1が発生し、可動体30Aは、軸部80に沿う推力F1方向に移動する。この軸部80Aに沿う直線移動と同時に、
図18に示すように動作基準位置に位置する可動体30Aは、金属ばね40により発生する回転方向トルクによって、
図19Aに示すように、回転方向トルクの発生方向に移動する。
【0140】
また、コイル部71A、72Aへの通電方向を変える、つまり、電流の供給方向を逆方向にすることにより、コア51A、52Aにおけるコア側磁極511A、521Aの極性を先の極性とは異なる極性にして、可動体30Aの移動方向を-F1方向に変更する。可動体30Aは、-F1方向に移動すると同時に、軸部80A周りを先の回転方向とは逆の方向で回転する。これを繰り返すことにより、可動体30Aのマグネット60Aは、駆動基準位置となる位置を基準にして、Y方向(F1方向と-F1方向)に往復振動するとともに軸部80周りに回転往復移動する。なお、この駆動原理は、上記式(1)~(5)によって実現される実施の形態1の振動アクチュエータ10の同様の動作原理である。
可動体30Aは、軸部80に沿って左右に捻れるように可動し、軸部の延在方向と、軸部80周り方向との2方向に往復移動して振動する。
【0141】
振動アクチュエータ10Aによれば、上述した振動アクチュエータ10の効果1と同様の効果を奏することができる。加えて、本実施の形態2では、コイル部71A、72Aのそれぞれが巻回するコア51A、52Aでは、コイル部71A、72Aの通電により励磁されるコア側磁極511A、521Aは、それぞれ2極ずつであり、これに対向してマグネット61A、62Aはそれぞれ3つの磁極611A、621Aを有している。これにより振動アクチュエータ10Aは、振動アクチュエータ10と比較して、外形の小さい振動アクチュエータを実現できる。
【0142】
また、本実施の形態では、回転方向トルクの発生源としての金属ばね40を円筒コイルばねとしたが、より一層、回転方向トルクを強力に発生させるために、各実施の形態における可動体30、30Aを、
図20及び
図21に示す可動体30Bとしてもよい。
【0143】
図20は、可動体の変形例を示す斜視図であり、
図21は、
図20に示す可動体のマグネットとコアとの位置関係の説明に供する図である。
【0144】
図20に示す可動体30Bは、可動体30の構成において、マグネット61、62をマグネット61B、62Bに変更している。なお、その他の構成は、可動体30と同様であり同様の作用効果を有するので、同一の構成要素には同符号同名称を付して説明は省略する。
【0145】
可動体30Bでは、マグネット(マグネット61B、62B)に回転方向(ここではZ方向)に部分的に突出する凸部を設け、コイル部71、72を通電により励磁したコア51,52の磁極(
図10参照)との協働により、回転方向トルクを磁気的に発生させる構造としている。
【0146】
すなわち、可動体30Bにおいて、軸部が挿通される貫通孔32aをX方向で挟むように配置されるマグネット61Bでは、貫通孔32aの延在方向に沿って配置される複数の磁極61Bのうち、軸方向での中心から左右に並ぶ磁極6161~6164、6261~6264がそれぞれ段階的にZ方向に突出した形状を有している。具体的には、磁極6161~6164が一方向に向かって段階的に下り階段状に配置され、磁極6261~6264が、磁極6161~6164の階段形状が下る方向である一方向に向かって、上り階段形状となっている。
【0147】
図21に示すように、磁極6161~6164は、軸方向に略直線状に並ぶコア51の複数のコア側磁極511に対して、
図21の図面上において中央部分を中心に右側の磁極6162、6161が順に上方に突出して配置されている。また
図21の図面上において中央部分を中心に左側の磁極6163、6164が順に下方に突出して配置されている。貫通孔32aを挟みマグネット61Bと反対側に配置されるマグネット62Bの磁極6261~6264は、磁極6161~6164とは逆に、一方向に向かって段階的に上り階段状に配置されている。
【0148】
これにより、可動体30Bのマグネット61B、62Bは、コア51、52(
図3参照)が通電されると、コア51、52のコア側磁極511、521(
図3参照)との間で、回転方向トルクを発生し、可動体30Bは軸部を中心にねじり方向に往復回転振動を行う。
【0149】
このように本実施の形態の変形例では、可動体30Bのマグネット61B、62Bのレイアウトにおいて、回転方向(ここでは上下方向であるZ方向)に凸部あるいは凸状の磁極6161~6164、6261~6264を設けている。
これにより、振動アクチュエータ10において、変形例の可動体30Bを可動体30と換えた構成によれば、更に、磁気的にトルクを発生させて、回転方向の駆動源として可動体30Bを回転方向に大きく動かすことができ、トルク発生源として円筒コイルばね40(
図3参照)の力だけでは振幅が限定される場合でも、ユーザに振動フィーリングを明確に付与できる。
【0150】
(実施の形態3)
図22は、本発明に係る実施の形態4のウェアラブル端末500の要部構成を模式的に示す図である。ウェアラブル端末500は、ユーザが身につけて使用するものである。ここでは、ウェアラブル端末500は、接続された通信端末の着信の通知を装着したユーザに振動により通知する所謂ウェアラブルインプットデバイスとして機能する。
【0151】
図22に示すウェアラブル端末500は、通信装置510と、処理装置520と、駆動装置としての振動アクチュエータ530と、筐体540と、有する。振動アクチュエータ530は、各実施の形態1~3に示す振動アクチュエータ10、10Aのいずれかを適用している。振動アクチュエータ530の底面は、筐体540の内周面542に近接して配置される。ウェアラブル端末500は、各実施の形態1、2に示す振動アクチュエータ10、10Aを実装している。
【0152】
筐体540は、リング状に形成され、ここでは、ユーザの指に装着する。このとき、振動アクチュエータ530の底面を、装着部位である指に重なるように位置させる。これにより、指に密着するように振動アクチュエータ530が装着される。通信装置510は、図示しない携帯電話、スマートフォン、携帯型遊技機等の無線通信端末と、無線通信により接続され、例えば、無線通信端末からの信号を受信して、処理装置520に出力する。
【0153】
通信装置510は、例えば、無線通信端末からの信号は、例えば、Bluetooth(登録商標)等の通信方式で受信する無線通信端末の着信信号等である。処理装置520では、入力された信号を、振動アクチュエータ530の駆動信号に変換して、駆動回路部525を介して振動アクチュエータ530(10、10A)の電源供給部(振動アクチュエータ10、10Aの電源供給部25、25A)に供給して振動アクチュエータ530を駆動する。
【0154】
これにより、可動体(30、30A、30B)が振動してウェアラブル端末500は振動する。ウェアラブル端末500の筐体540は、リング形状をなしており、可動体(30、30A、30B)は、振動アクチュエータ530の底面(ベース21の底面に相当)に沿って往復振動するとともに、底面と交差する方向に往復振動し、ダイレクトに指に伝達される。これにより、振動アクチュエータが指の背上に配置されたり、指腹部分から離れた位置、例えば、浮いた位置に振動アクチュエータが配置された構成と比較して、外形形状を変更することなく、所定の大きさで、ユーザの体感振動を一層大きくできる。
【0155】
また、ウェアラブル端末500の形状を小型化でき、使用時に違和感が無く使用感の向上を図ることができる。なお、ウェアラブル端末500を、通信装置510と、処理装置520と、駆動装置としての振動アクチュエータ530と、を有する着信通知機能デバイスとしてもよい。これにより、着信機能デバイスは、携帯電話、スマートフォン、携帯型遊技機等の無線通信端末で取得した外部からの着信を、振動アクチュエータを駆動させてユーザに報知する構成としても良い。また、振動アクチュエータ530の振動を着信信号の他に、メール等の外部装置から情報通信端末への信号入力に対応する振動、ゲームの操作に応じた振動を体感振動として増加させてユーザに付与できる。なお、このウェアラブル端末500に、空中で文字を描くように動かすだけで、無線で接続される装置に、文字や数字を入力したり、接続されたディスプレイ等の表示器に表示された情報を選択したりすることができる機能を設けても良い。
【0156】
また、
図23に示すように、各実施の形態1、2に示す振動アクチュエータ10、10Aのいずれかを適用したアクチュエータ530を、携帯端末600に実装しても同様の効果を奏することができる。携帯端末600は、筐体640内に、ウェアラブル端末500と同様に、通信装置510と、処理装置520と、駆動回路部525と、駆動装置としての振動アクチュエータ530と有する。携帯端末600では、振動アクチュエータ530を振動させることにより、携帯電話、スマートフォン、携帯型ゲーム端末機等の無線通信端末で取得した外部からの着信に加えて、携帯端末600の各機能の信号を処理装置520で処理し、駆動回路部525を介して振動アクチュエータ530を振動してユーザに報知できる。
【0157】
なお、実施の形態2の振動アクチュエータ10Aにおいて、可動体30Aに換えて可動体30Bを設けた構成としてもよい。また、コイルにより励磁される磁極の数、マグネットの磁極の数は、上記実施の形態に限定されず、コア側の磁極とマグネット側の磁極との比は、コア側の磁極:コア側の磁極+1であってもよいし、コア側の磁極:コア側の磁極-1であってもよく、コア側の磁極とマグネット側の磁極の一方の数が2以上であることが好ましい。
【0158】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。以上、本発明の実施の形態について説明した。なお、以上の説明は本発明の好適な実施の形態の例証であり、本発明の範囲はこれに限定されない。つまり、上記装置の構成や各部分の形状についての説明は一例であり、本発明の範囲においてこれらの例に対する様々な変更や追加が可能であることは明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0159】
本発明に係る振動アクチュエータは、小型化可能であり好適に効率良く振動する効果を有し、情報通信端末と通信可能なウェアラブル端末及び、携帯電話等の情報通信端末の着信通知をユーザに体感させることで報知する着信通知機能デバイスとして有用である。
【符号の説明】
【0160】
10、10A、530 振動アクチュエータ
20、20A 固定体
21、21A ベース
22、22A カバー
23a、23b ばねホルダ
25、25A 電源供給部
27a、27b ステフィナー
29 ボビン部
30、30A、30B 可動体
32、32A ウェイト部
32a 貫通孔
36 緩衝材
40 金属ばね
50、50A、51、51A、52、52A コア
60、60A、61、61A、61B、62、62A、62B マグネット
70、70A、71、71b、71A、72、72b、72A、73、74 コイル部
80、80A 軸部
82a、82b 軸受け
212、214、212A、214A 軸固定壁
216、218、216A、218A コア固定壁
322 胴部
322a 筒状部
322b 突条部
324 張出部
510 通信装置
511、511A、511a、511b、511c、521、521A、521a、521b コア側磁極
520 処理装置
525 駆動回路部
530 アクチュエータ
540、640 筐体
542 内周面
600 携帯端末
611、611A、611b、621、621A、621b、6161、6162、6163、6164、6261、6262、6263、6264 磁極(マグネット側磁極)
3221 挿通孔
3241 張出本体部
3242 受け部
3244 張出部分
3246 逃げ部
3241a 開口部