(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】直流電流遮断装置
(51)【国際特許分類】
H01H 33/59 20060101AFI20221206BHJP
H01H 9/54 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
H01H33/59 D
H01H33/59 C
H01H9/54 A
(21)【出願番号】P 2020000421
(22)【出願日】2020-01-06
【審査請求日】2022-03-07
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成27年度~平成29年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 次世代洋上直流送電システム開発事業 システム開発/要素技術開発委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】児山 裕史
(72)【発明者】
【氏名】石黒 崇裕
【審査官】内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/230224(WO,A1)
【文献】特開2002-110006(JP,A)
【文献】特開2006-230068(JP,A)
【文献】特開平11-089120(JP,A)
【文献】特開2012-130094(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 9/54 - 9/56
H01H 33/28 - 33/59
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流系統を構成する直流送電線路を電気的に遮断する、又は導通させる主回路と、
コンデンサを有する転流回路と、
電源装置によって供給される電力を前記コンデンサに供給する第1電力供給部と、前記電源装置によって供給される電力を前記コンデンサに供給する第2電力供給部と、前記第1電力供給部と前記転流回路との接続状態を切り替える第1開閉器と、前記第2電力供給部と前記転流回路との接続状態を切り替える第2開閉手段とを有し、前記コンデンサを充電する充電回路とを備え、
前記第1電力供給部は、前記第2電力供給部に比して大きい電力を出力する、
直流電流遮断装置。
【請求項2】
前記第1電力供給部は、前記第2電力供給部に比して絶縁耐圧が低く、且つ前記第2電力供給部に比して大きい電力を出力し、
前記第2電力供給部は、前記第1電力供給部に比して絶縁耐圧が高く、且つ前記第1電力供給部に比して小さい電力を出力する、
請求項1に記載の直流電流遮断装置。
【請求項3】
前記第1開閉器と前記第2開閉手段のそれぞれの開閉状態を制御する制御部を更に備え、
前記制御部は、
前記主回路が前記直流送電線路を通電させていない場合に、少なくとも前記第1開閉器を閉状態にして前記第1電力供給部が出力する電力によって前記コンデンサを充電し、
前記主回路が前記直流送電線路を通電させている場合に、前記第1開閉器を開状態にし、且つ前記第2開閉手段を閉状態にして前記第2電力供給部が出力する電力によって前記コンデンサを充電する、
請求項1又は2に記載の直流電流遮断装置。
【請求項4】
前記第1電力供給部、及び前記第2電力供給部のそれぞれは、変圧器を備え、
前記第1電力供給部が備える第1変圧器は、前記第2電力供給部が備える第2変圧器に比して耐圧が低く、前記第2電力供給部に比して大きい電力を出力する、
請求項1から3のうちいずれか一項に記載の直流電流遮断装置。
【請求項5】
前記第2電力供給部は、前記電源装置によって供給される電力を用いて光を射出する発光ユニットと、前記発光ユニットに第1端が接続された光伝送路と、前記光伝送路の第2端に接続され、前記発光ユニットによって射出され前記光伝送路によって伝送された光を用いて電力を出力する受光ユニットと、前記受光ユニットから出力された電力を前記コンデンサを充電可能な電力に変換する変換部とを備える、
請求項1から4のうちいずれか一項に記載の直流電流遮断装置。
【請求項6】
前記第2電力供給部は、前記電源装置によって供給される電力によって磁界を発生させる送電コイルと、前記送電コイルが発生させた磁界によって電力を発生させる受電コイルと、前記受電コイルから出力された電力を前記コンデンサを充電可能な電力に変換する変換部とを備える、
請求項1から5のうちいずれか一項に記載の直流電流遮断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、直流電流遮断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複数の直流送電線路で構成された直流系統による電力の送電が行われている。直流系統においては事故が発生した場合、特定の送電線路のみを遮断し、残りの送電線路によって電力の送電を継続する場合がある。これについて、機械式接点と半導体遮断器の双方を備え、直流送電線路に流れる電流を遮断する直流電流遮断装置に関する技術が知られている。
【0003】
ところで、直流電流遮断装置は、機械式接点と、半導体遮断器との他、転流回路を備える場合がある。この直流電流遮断装置は、機械式接点に流れる電流を、転流回路を動作させることによって半導体遮断器に転流させ、半導体遮断器がターンオフすることによって、特定の送電線路を遮断する。機械式接点に流れる電流を半導体遮断器に転流させる際に、転流回路は、機械式接点の電極間のアークを消弧するように電流を流すように動作する。これによって、機械式接点は、電気的にも機械的にも開状態に制御され、機械式接点に流れる電流を半導体遮断器に転流させることができる。したがって、直流電流遮断装置が特定の送電線路を遮断するためには、少なくとも初期状態の遮断動作時において、転流回路が備えるコンデンサが充電されていることが求められる。
【0004】
しかしながら、直流電流遮断装置は非常に電圧の高い直流系統に設置されるため、コンデンサを充電するための外部電源は、直流系統電圧相当の耐圧を持つ絶縁トランスが必要になる。耐圧が非常に高いと、絶縁トランスも大型化する場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、転流回路が備えるコンデンサを簡便に充電することができる直流電流遮断装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の直流電流遮断装置は、主回路と、転流回路と、充電回路を持つ。主回路は、直流系統を構成する直流送電線路を電気的に遮断する、又は導通させる。転流回路は、コンデンサを有する。充電回路は、第1電力供給部と、第2電力供給部と、第1開閉器と、第2開閉手段とを持つ。第1電力供給部は、電源装置によって供給される電力を前記コンデンサに供給する。第2電力供給部は、前記電源装置によって供給される電力を前記コンデンサに供給する。第1開閉器は、前記第1電力供給部と前記転流回路との接続状態を切り替える。第2開閉手段は、前記第2電力供給部と前記転流回路との接続状態を切り替える。充電回路は、前記コンデンサを充電する。前記第1電力供給部は、前記第2電力供給部に比して大きい電力を出力する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1の実施形態の直流電流遮断装置1の構成の一例を示す図である。
【
図2】第1の実施形態に係る充電回路80の初期状態の一例を示す図である。
【
図3】第1の実施形態に係る充電回路80の通常導通状態の一例を示す図である。
【
図4】コンデンサCの充電に係る直流電流遮断装置1の処理の一例を示すフローチャートである。
【
図5】変形例の第2変圧器84の構成の一例を示す図である。
【
図6】第2の実施形態の充電回路80-1の構成の一例を示す図である。
【
図7】第3の実施形態の充電回路80-2の構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態の直流電流遮断装置を、図面を参照して説明する。
【0010】
(第1の実施形態)
[構成]
図1は、第1の実施形態の直流電流遮断装置1の構成の一例を示す図である。直流電流遮断装置1は、直流系統を構成する直流送電線路のうち、第1直流送電線路LN1と、第2直流送電線路LN2とを電気的に導通(通電)させ、または遮断する装置である。以降の説明において、第1直流送電線路LN1における直流電圧を第1電圧VDC1と記載し、第2直流送電線路LN2における直流電圧を第2電圧VDC2と記載する。第1電圧VDC1や第2電圧VDC2は、例えば、数十~数百[kV]程度の電圧である。例えば、第1直流送電線路LN1側には、送電設備が存在し、第2直流送電線路LN2側には、需要家が存在する。この場合、通常、第1電圧VDC1が第2電圧VDC2よりも大きい電圧となる。したがって、通常であれば第1直流送電線路LN1から第2直流送電線路LN2の方向に直流系統電流が流れる。
【0011】
図1に示される通り、直流電流遮断装置1は、例えば、断路器10と、機械式遮断器20と、転流回路30と、半導体遮断器40と、アレスタ50と、ダイオード60と、リアクトル70と、充電回路80と、制御部100とを備える。断路器10は、第1端子10aと、第2端子10bとを備える。機械式遮断器20は、第1端子20aと、第2端子20bとを備える。転流回路30は、第1端子30aと、第2端子30bとを備える。直流電流遮断装置1のうち、機械式遮断器20と、転流回路30と、半導体遮断器40と、アレスタ50と、ダイオード60とによって構成される回路は、「主回路」の一例である。
【0012】
断路器10の第1端子10aは、第1直流送電線路LN1に接続される。図示するリアクトルL1は、第1直流送電線路LN1が有するインダクタンス成分を仮想的に示すものである。断路器10の第2端子10bと、機械式遮断器20の第1端子20aと、転流回路30の第1端子30aとは、互いに接続されている。
【0013】
なお、直流電流遮断装置1(断路器10)は、補助断路器MSを介して第1直流送電線路LN1に接続されてもよい。以下、断路器10が補助断路器MSを介して第1直流送電線路LN1に接続される場合について説明する。補助断路器MSは、第1端子MSaと、第2端子MSbとを備える。第1端子MSaは、第1直流送電線路LN1に接続され、第2端子MSbと、第1端子10aとは、互いに接続される。
【0014】
機械式遮断器20の第2端子20bは、第2直流送電線路LN2に接続される。また、第2端子20bと、第2端子30bとの間には、リアクトル70が接続される。
【0015】
半導体遮断器40は、例えば、互いに直列に接続された複数(図では4つ)のスイッチング部を備える。スイッチング部は、それぞれ、互いに並列に接続されたスイッチング素子とダイオードとを備える。具体的には、ダイオードのカソードと、スイッチング素子のコレクタとが互いに接続され、ダイオードのアノードと、スイッチング素子のエミッタとが接続されている。スイッチング素子は、例えば、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(以下、IGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor)等の半導体スイッチング素子である。ただし、スイッチング素子は、IGBTに限定されない。スイッチング素子は、自己消弧を実現可能なスイッチング素子であれば、いかなる素子でもよい。以降の説明では、スイッチング素子がIGBTである場合について説明する。また、以降の説明において、スイッチング部のスイッチング素子のエミッタを、「スイッチング部のエミッタ」とも記載し、スイッチング部のスイッチング素子のコレクタを、「スイッチング部のコレクタ」とも記載する。
【0016】
半導体遮断器40において、スイッチング部のエミッタと、当該スイッチング部に隣り合うスイッチング部のコレクタとが接続されている。半導体遮断器40は、第1端子40aと、第2端子40bとを備える。第1端子40aには、半導体遮断器40が備える複数のスイッチング部のうち、端部のスイッチング部のコレクタと、当該コレクタに並列に接続されるダイオードのカソードとが接続される。第2端子40bには、半導体遮断器40が備える複数のスイッチング部のうち、他の端部のスイッチング部のエミッタと、当該エミッタに並列に接続されるダイオードのアノードとが接続される。
【0017】
半導体遮断器40の第1端子40aと、第2端子MSbと、第1端子10aとは、互いに接続される。これにより、半導体遮断器40は、補助断路器MSを介して第1直流送電線路LN1に接続される。また、半導体遮断器40の第2端子40bは、ダイオード60のアノードに接続されている。ダイオード60のカソードと、第2端子30bと、リアクトル70の一端とが互いに接続されている。以降の説明において、半導体遮断器40が備えるスイッチング素子がオン状態であることを、「半導体遮断器40が閉状態」であるとも記載し、半導体遮断器40が備えるスイッチング素子がオフ状態であることを、「半導体遮断器40が開状態」であるとも記載する。
【0018】
アレスタ50は、第1直流送電線路LN1(この一例では、補助断路器MS)と、ダイオード60との間に、半導体遮断器40と互いに並列に接続されている。アレスタ50は、半導体遮断器40が開状態に制御されることにより発生するサージ電圧を吸収する。アレスタ50は、「避雷器」の一例である。
【0019】
上述した接続関係により、ダイオード60は、第1直流送電線路LN1から第2直流送電線路LN2の方向に流れる電流を許容し、第2直流送電線路LN2の方向から第1直流送電線路LN1の方向に流れる電流を阻止する。
【0020】
転流回路30は、例えば、複数のダイオード(図示するダイオード310a,310b)と、複数のスイッチング部(スイッチング部320a,320b)と、コンデンサCと、サイリスタ35とを備える。スイッチング部320a,320bとのそれぞれは、スイッチング素子と、ダイオードとを備える。スイッチング部320a,320bが備えるスイッチング素子と、ダイオードとは、互いに並列に接続されている。具体的には、ダイオードのカソードと、スイッチング素子のコレクタとが接続され、ダイオードのアノードと、スイッチング素子のエミッタとが接続されている。
【0021】
コンデンサCは、正極と負極を有する。以下、コンデンサCの正極と負極との間に生じる電圧を「コンデンサ電圧」とも記載し、転流回路30のうちコンデンサCの正極と同電位の回路を「転流回路30の正極」とも記載し、転流回路30のうちコンデンサCの負極端子と同電位の回路を「転流回路30の負極」とも記載する。ダイオード310aとスイッチング部320aとは、記載の順序によって、転流回路30の正極と負極の間に直列に接続され、スイッチング部320bとダイオード310bとは、記載の順序によって、転流回路30の正極と負極の間に直列に接続される。ダイオード310aのアノードと、スイッチング部320aのコレクタとが互いに接続されている。スイッチング部320bのエミッタと、ダイオード310aのカソードとが互いに接続されている。ダイオード310aのカソードと、スイッチング部320bのコレクタと、コンデンサCの正極とが互いに接続されている。スイッチング部320aのエミッタと、ダイオード310bのアノードと、コンデンサCの負極とが互いに接続されている。
【0022】
ダイオード310aのアノードと、スイッチング部320aのコレクタとの接続点には、転流回路30の第1端子30aが設けられる。スイッチング部320bのエミッタと、ダイオード310bのカソードとの接続点には、転流回路30の第2端子30bが設けられる。サイリスタ35のアノードと、転流回路30の第1端子30aとは、互いに接続され、サイリスタ35のカソードと、転流回路30の第2端子30bとは、互いに接続される。
【0023】
上述した接続関係により、サイリスタ35は、オフの状態において、第1直流送電線路LN1から第2直流送電線路LN2方向に流れる電流、および第2直流送電線路LN2から第1直流送電線路LN1の方向に流れる電流の双方を遮断する。また、サイリスタ35は、オンの状態において、第1直流送電線路LN1から第2直流送電線路LN2の方向に流れる電流を許容し(つまり、第1直流送電線路LN1から第2直流送電線路LN2の方向に電気的に導通させ)、第2直流送電線路LN2から第1直流送電線路LN1の方向に流れる電流を阻止する。
【0024】
なお、転流回路30は、ダイオード310a,310bに代えて、スイッチング部320c,320dを備えるフルブリッジ回路であってもよい。
【0025】
充電回路80は、電源装置81と、第1変圧器82と、第1開閉器83と、第2変圧器84と、第2開閉器85と、整流器86とを備える。充電回路80は、第1端子80aと、第2端子80bとを備える。第1端子80aは、転流回路30のコンデンサCの正極に接続される。第2端子80bは、転流回路30のコンデンサCの負極に接続される。第1開閉器83は、第1端子83aと、第2端子83bとを備える。第2開閉器85は、第1端子85aと、第2端子85bとを備える。第2開閉器85は、「第2開閉手段」の一例である。
【0026】
電源装置81と、第1変圧器82の一次側と、第2変圧器84の一次側とは、互いに接続される。第1変圧器82の二次側と、第1開閉器83の第1端子83aとが、互いに接続される。第2変圧器84の二次側と、第2開閉器85の第1端子85aとが、互いに接続される。第2端子83bと、整流器86とが接続される。第2端子85bと、整流器86とが接続される。
【0027】
電源装置81は、例えば、商用電力が供給される。電源装置81は、商用電力を第1変圧器82と第1開閉器83とに供給する。なお、電源装置81に供給される電力は、商用電力に限られず、送電電力や、配電電力、蓄電電力であってもよい。また、充電回路80が電源装置81を備える場合について説明したが、これに限られない。充電回路80は、電源装置81から電力の供給を受けることが可能であれば電源装置81を備えていなくてもよい。
【0028】
第1変圧器82と、第2変圧器84とのそれぞれは、電源装置81から供給される電力の電圧を、コンデンサCを充電可能な電圧に変換する。ここで、第1変圧器82は、第2変圧器84よりも絶縁耐圧が低く、且つ第2変圧器84よりも出力電力が大きい変換器である。換言すると、第2変圧器84は、第1変圧器82よりも絶縁耐圧が高く、且つ第1変圧器82よりも出力電力が小さい変換器である。コンデンサCの充電が可能な電圧とは、例えば、整流した際にコンデンサCの定格電圧よりも高い電圧である。第1の実施形態において、第1変圧器82は、「第1電力供給部」の一例であり、第2変圧器84は、「第2電力供給部」の一例である。第1変圧器82は、例えば、耐圧の低い絶縁トランスによって実現され、第2変圧器84は、例えば、耐圧の高い絶縁トランスによって実現される。
【0029】
第1開閉器83は、制御部100によって開閉状態が制御され、閉状態において、第1変圧器82とコンデンサCとを整流器86を介して接続し、開状態において、第1変圧器82とコンデンサCとを遮断する。第2変圧器84は、制御部100によって開閉状態が制御され、閉状態において、第2変圧器84とコンデンサCとを整流器86を介して接続し、開状態において、第2変圧器84とコンデンサCとを遮断する。第1開閉器83や第2変圧器84は、断路器や機械式遮断機等の機械式接点によって実現される。
【0030】
整流器86は、第1変圧器82によって変換された電力と、第2変圧器84によって変換された電力とを整流する。なお、第1変圧器82、及び第2変圧器84によって変換された電力が直流である場合には、充電回路80は、整流器86を備えていなくてもよい。
【0031】
制御部100は、補助断路器MS、断路器10、機械式遮断器20、半導体遮断器40、第1開閉器83、及び第2開閉器85の開閉制御、サイリスタ35のオンとオフの切り替え制御、並びに転流回路30の動作の制御(つまり、スイッチング部320a,320bの開閉制御)等を行う。
【0032】
直流電流遮断装置1によって第1直流送電線路LN1と、第2直流送電線路LN2とが電気的に導通されている状態(以下、通常導通状態)において、各部は以下のような状態となっている。
・補助断路器MS:閉状態
・断路器10:閉状態
・機械式遮断器20:閉状態
・半導体遮断器40:開状態
・サイリスタ35:オフの状態
・転流回路30:オフの状態
・転流回路30が備えるコンデンサC:充電された状態
・第1開閉器83:開状態
・第2開閉器85:閉状態
【0033】
これにより、通常導通状態において直流系統電流は、第1直流送電線路LN1から、補助断路器MS、断路器10、及び機械式遮断器20を経由する経路rt1を介して第2直流送電線路LN2まで流れる。
【0034】
直流電流遮断装置1によって第1直流送電線路LN1と、第2直流送電線路LN2とを電気的に遮断させる場合、制御部100は、制御システム(不図示)から遮断指示信号を受信する。制御システムは、例えば、各電力系統間の電力の供給(融通)を制御するシステムであり、直流系統に異常等が生じた場合、対象の直流電流遮断装置1(制御部100)に遮断指示信号を送信する。遮断指示信号は、例えば、第1直流送電線路LN1と、第2直流送電線路LN2とを電気的に遮断させることを指示する信号である。直流系統の異常とは、例えば、直流送電線路に生じる地絡や短絡等の事故によって生じる異常である。制御部100は、制御システムから遮断指示信号を受信した場合、断路器10と、機械式遮断器20とを開状態に制御し、転流回路30(スイッチング部320a,320b)をオンの状態に制御する。
【0035】
上述した制御部100の制御によって、直流電流遮断装置1の断路器10と、機械式遮断器20とは、機械的に開状態に制御されるが、接点を単に切り離しても接点間にアークが生じるため、電気的に遮断することができない。この状態で、制御部100が転流回路30を動作させることにより、転流回路30が備えるスイッチング部320a,320bは、オンの状態に制御される。すると、転流回路30は、コンデンサCに蓄電される電荷を放電し、コンデンサCの正極からスイッチング部320b、リアクトル70、機械式遮断器20、およびスイッチング部320aを介してコンデンサCの負極までの経路rt2を電流が還流する回路を形成する。この回路が形成されるのは、リアクトル70に対して上述した向きによってダイオード60が接続されていることにより、第2直流送電線路LN2の方向から第1直流送電線路LN1の方向に流れる電流が阻止されるためである。この回路を還流する電流は、機械式遮断器20において第1直流送電線路LN1から第2直流送電線路LN2の方向に流れる電流と逆方向の電流であるため、機械式遮断器20に生じたアークを打ち消すように作用する。この結果、機械式遮断器20に流れる電流がゼロになり、機械式遮断器20が電気的な遮断状態となる。
【0036】
その後、制御部100は、半導体遮断器40を閉状態に制御する。これにより、直流系統電流は、第1直流送電線路LN1から補助断路器MS、断路器10、転流回路30、及びリアクトル70を介して第2直流送電線路LN2まで流れる経路から、第1直流送電線路LN1から半導体遮断器40、ダイオード60、及びリアクトル70を介して第2直流送電線路LN2まで流れる経路rt3に転流する。そして、制御部100は、半導体遮断器40を開状態に制御する。半導体遮断器40が開状態に制御されることに伴って発生するサージ電圧は、アレスタ50によって吸収される。これにより、直流電流遮断装置1は、第1直流送電線路LN1と、第2直流送電線路LN2とを電気的に遮断することができる。
【0037】
このように、直流電流遮断装置1が第1直流送電線路LN1と第2直流送電線路LN2とを電気的に遮断するには、転流回路30が動作して経路rt2に電流を還流させることが求められる。
【0038】
転流回路30が電流を還流させるには、充電回路80は、初期状態において、コンデンサCを所定の充電容量まで充電することが求められる。所定の充電容量とは、例えば、コンデンサ電圧が所定の電圧となるまでに必要な電力量であって、転流回路30の動作時に、機械式遮断器20を電気的に開状態に制御可能なだけ、経路rt2に電流を還流させるのに必要な電力量である。所定の電圧とは、例えば、ある時間内に機械式遮断器20を電気的に開状態に制御可能なコンデンサCの電圧である。初期状態とは、例えば、直流電流遮断装置1が設置された時や、直流電流遮断装置1の運用開始時のタイミングや、これまでに直流電流遮断装置1が遮断動作を行っていない状態や、直流電流遮断装置1が遮断動作を行った後にコンデンサCの充電が行われていない状態等であって、直流電流遮断装置1が第1直流送電線路LN1と第2直流送電線路LN2とを電気的に遮断している状態である。
【0039】
また、転流回路30が電流を還流させるには、充電回路80は、通常導通状態において、コンデンサCが初期状態以降に自然放電した分だけ逐次充電し、所定の充電容量を保つことが求められる。通常導通状態とは、例えば、直流電流遮断装置1によって第1直流送電線路LN1と、第2直流送電線路LN2とが電気的に導通されている状態である。
【0040】
以下、初期状態のコンデンサCが充電される場合の直流電流遮断装置1の状態について説明し、次に、通常導通状態のコンデンサCが充電される場合の直流電流遮断装置1の状態について説明する。
【0041】
[初期状態のコンデンサCの充電]
制御部100は、初期状態において、直流電流遮断装置1が第1直流送電線路LN1と第2直流送電線路LN2とが電気的に非導通になるように、直流電流遮断装置1の各部を以下のような状態に制御する。
・補助断路器MS:開状態
・断路器10:開状態
・機械式遮断器20:開状態
・半導体遮断器40:開状態
・サイリスタ35:オフの状態
・転流回路30:オフの状態
・転流回路30が備えるコンデンサC:充電されていない状態
【0042】
そして、制御部100は、初期状態のコンデンサCを充電するに際して、充電回路80の各部を、以下のような状態に制御する。
・第1開閉器83:閉状態→開状態
・第2開閉器85:開状態→閉状態
【0043】
図2は、第1の実施形態に係る充電回路80の初期状態の一例を示す図である。
図2の状態において、第1開閉器83が閉状態に制御され、第2開閉器85が開状態に制御されることに伴い、第1端子80aと第2端子80bとの間には、第1変圧器82によって変換された電圧が整流器86を通じて生じる。これにより、コンデンサCは、第1変圧器82によって変換された電力によって充電される。
【0044】
なお、初期状態では、少なくとも第1開閉器83が閉状態に制御されていれば、第2開閉器85が閉状態に制御されていてもよい。
【0045】
次に、制御部100は、初期状態においてコンデンサCが所定の充電容量まで充電された場合、第1開閉器83を開状態に制御し、第2開閉器85を閉状態に制御する。
【0046】
[通常導通状態のコンデンサCの充電]
制御部100は、通常導通状態において、直流電流遮断装置1が第1直流送電線路LN1と第2直流送電線路LN2とを電気的に導通させるように、直流電流遮断装置1の各部を以下のような状態に制御する。
・補助断路器MS:閉状態
・断路器10:閉状態
・機械式遮断器20:閉状態
・半導体遮断器40:開状態
・サイリスタ35:オフの状態
・転流回路30:オフの状態
・転流回路30が備えるコンデンサC:充電され、自然放電している状態
【0047】
そして、制御部100は、通常導通状態のコンデンサCを充電するに際して、充電回路80の各部を、以下のような状態に制御する。
・第1開閉器83:開状態
・第2開閉器85:閉状態
【0048】
図3は、第1の実施形態に係る充電回路80の通常導通状態の一例を示す図である。
図3の状態において、第1開閉器83が開状態に制御され、第2開閉器85が閉状態に制御されることに伴い、第1端子80aと第2端子80bとの間には、第2変圧器84によって変換された電圧が整流器86を通じて生じる。これにより、コンデンサCは、第2変圧器84によって変換された電力によって充電される。
【0049】
[動作フロー]
図4は、コンデンサCの充電に係る直流電流遮断装置1の処理の一例を示すフローチャートである。まず、制御部100は、直流電流遮断装置1の状態が初期状態であるか否かを判定する(ステップS100)。制御部100は、直流電流遮断装置1の状態が初期状態であると判定した場合、第1開閉器83を閉状態に制御し、第2開閉器85を開状態に制御する(ステップS102)。これにより、コンデンサCは、第1変圧器82が出力する電力によって充電される。制御部100は、直流電流遮断装置1の状態が初期状態ではないと判定した場合、直流電流遮断装置1が通常導通状態であるものとみなし、第1開閉器83を開状態に制御し、第2開閉器85を閉状態に制御する(ステップS104)。これにより、コンデンサCは、第2変圧器84が供給する電力によって充電される。
【0050】
制御部100は、初期状態のコンデンサCが第1変圧器82が出力する電力によって所定の充電容量まで充電されたか否かを判定する(ステップS106)。制御部100は、初期状態のコンデンサCが所定の充電容量まで充電されるまでの間、待機する。制御部100は、初期状態のコンデンサCが所定の充電容量まで充電されたと判定した場合、第1開閉器83を開状態に制御し、第2開閉器85を閉状態に制御する(ステップS108)。これにより、直流電流遮断装置1は、所定の充電容量までコンデンサCが充電された状態で、絶縁耐圧の低い第1変圧器82を切り離しつつ、自装置の状態を通常導通状態とすることができる。
【0051】
[第1の実施形態のまとめ]
以上説明したように、本実施形態の直流電流遮断装置1は、機械式接点(この一例では、断路器10、及び機械式遮断器20)と、転流回路30と、充電回路80を持つ。断路器10、及び機械式遮断器20は、直流系統を構成する直流送電線路(この一例では、第1直流送電線路LN1と第2直流送電線路LN2との接続点)に設けられる。転流回路30は、コンデンサCを有する。充電回路80は、第1電力供給部(この一例では、第1変圧器82)と、第2電力供給部(この一例では、第2変圧器84)と、第1開閉器83と、第2開閉器85とを持つ。第1変圧器82は、電源装置81によって供給される電力をコンデンサCに供給する。第2変圧器84は、電源装置81によって供給される電力をコンデンサCに供給する。第1開閉器83は、第1変圧器82と転流回路30との接続状態を切り替える。第2開閉器85は、第2変圧器84と転流回路30との接続状態を切り替える。充電回路は、コンデンサCを充電する。第1変圧器82は、第2変圧器84に比して大きい電力を出力する。
【0052】
ここで、初期状態ではコンデンサCが充電されていない状態であるため、コンデンサCに充電することが求められる充電容量は、通常導通状態に比して大きくなる。上述したように、第1変圧器82は、第2変圧器84に比して出力電力が大きい。本実施形態の直流電流遮断装置1は、初期状態において、第1変圧器82と第2変圧器84とのうち、第1変圧器82によってコンデンサCを充電することにより、第2変圧器84によってコンデンサCを充電する場合に比して、短時間でコンデンサCの充電を完了することができる。
【0053】
また、通常導通状態では、コンデンサCが初期状態において充電された後、自然放電している状態であるため、コンデンサCに充電することが求められる電力容量は、初期状態に比して小さくなる。また、通常導通状態では直流送電線路LNに直流系統電圧が印加されるため、充電回路80の内部回路は、高耐圧であることが求められる。本実施形態の直流電流遮断装置1は、通常導通状態において、第1変圧器82と第2変圧器84とのうち、高耐圧な第2変圧器84によってコンデンサCを充電することにより、充電回路80が絶縁破壊することなく、自然放電した充電容量を充電することができる。
【0054】
(変形例)
以下、図面を参照して第1の実施形態に係る変形例について説明する。第1の実施形態では、第2電力供給部が一つの第2変圧器84によって実現される場合について説明した。変形例では、第2電力供給部が複数の変換器によって実現される場合について説明する。なお、上述した実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0055】
図5は、変形例の第2変圧器84の構成の一例を示す図である。変形例の第2変圧器84は、電源装置81と第2開閉器85との間に、直列に接続した複数の絶縁トランスTRによって実現される。この一例では、第2変圧器84が、絶縁トランスTR-1、絶縁トランスTR-2、…、絶縁トランスTR-n(nは自然数)によって実現される。
【0056】
[変形例のまとめ]
以上説明したように、変形例の直流電流遮断装置1が備える第2変圧器84は、電源装置81と第2開閉器85との間に、直列に接続した複数の絶縁トランスTRによって実現される。これにより、変形例の直流電流遮断装置1によれば、複数の絶縁耐圧の低い絶縁トランスTRを用いて、絶縁耐圧の高い第2変圧器84を実現することができる。
【0057】
(第2の実施形態)
以下、図面を参照して第2の実施形態について説明する。第1の実施形態では、第2電力供給部が第2変圧器84によって実現される場合について説明した。第2の実施形態では、第2電力供給部が光伝送路を用いた構成によって実現される場合について説明する。なお、上述した実施形態、及び変形例と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0058】
図6は、第2の実施形態の充電回路80-1の構成の一例を示す図である。第2の実施形態の充電回路80-1は、電源装置81と、第1変圧器82と、第1開閉器83と、第2開閉器85と、整流器86と、第2電力供給部87とを備える。第2電力供給部87は、例えば、レーザドライバLDと、発光素子LEと、光伝送路FBと、受光素子REと、第1変換部CV1とを備える。レーザドライバLDと、電源装置81とは、互いに接続される。レーザドライバLDと、発光素子LEとは、互いに接続される。発光素子LEと、受光素子REとは、光伝送路FBによって互いに接続される。具体的には、光伝送路FBの第一端には、発光素子LEが接続され、光伝送路FBの第2端には、受光素子REが接続される。受光素子REと、第1変換部CV1とは、互いに接続される。第1変換部CV1と第1端子85aとは、互いに接続される。本実施形態の電源装置81には、例えば、商用電力が供給され、電源装置81は、商用電力をレーザドライバLDによって用いられる電力に変換する。
【0059】
レーザドライバLDは、電源装置81から供給された電力によって動作し、発光素子LEに射出させる光の強度や、ON/OFFを制御する。発光素子LEは、レーザドライバLDの制御に基づいて、光伝送路FBによって接続される受光素子REに対して光を射出する。レーザドライバLDと発光素子LEとは、「発光ユニット」の一例である。また、以降の説明では、発光素子LEが射出する光の強度が一定である場合について説明する。
【0060】
受光素子REは、発光素子LEによって射出される光を受光する。受光素子REは、受光した光の強度に応じた電力を出力する。受光素子REは、例えば、フォトダイオードによって実現される。受光素子REが供給する電力において、例えば、電圧と電流は光の強度と出力負荷に応じて変化する。ここで、受光素子REが供給する電力の大きさは、発光素子LEが射出した光と変換効率に応じた電力を最大値とする電力であり、例えば、コンデンサCを充電可能な電力である。
【0061】
なお、受光素子REは、受光した光の波長に応じた電力を出力する構成であってもよい。受光素子REは、「受光ユニット」の一例である。
【0062】
第1変換部CV1は、受光素子REによって出力される電力の電圧を、所定の電圧に変換(例えば、昇圧、又は降圧)する。上述したように、所定の電圧とは、例えば、コンデンサCの充電電圧である。
【0063】
なお、制御部100が、初期状態であるか、又は通常導通状態であるかに応じて、直流電流遮断装置1の状態を制御する処理については、上述した実施形態と同様であるため、説明を省略する。また、本実施形態において、直流電流遮断装置1は、第2開閉器85を備えていなくてもよい。この場合、制御部100は、初期状態である場合に、レーザドライバLDの動作を停止させ、通常導通状態である場合に、レーザドライバLDを動作させる処理を行う。また、直流電流遮断装置1が第2開閉器85を備えていない場合、第2電力供給部87は、レーザドライバLDの動作、又は停止が切り替わることに伴い、「第2開閉手段」としての役割も兼ねる。
【0064】
[第2の実施形態のまとめ]
以上説明したように、第2の実施形態の直流電流遮断装置1が備える第2電力供給部87は、レーザドライバLDと、発光素子LEと、受光素子REと、第1変換部CV1とを持つ。レーザドライバLDは、電源装置81によって供給された電力を用いて発光素子LEに光を射出させる。光伝送路FBは、第1端が発光素子LEに接続され、第2端が受光素子REに接続される。受光素子REは、発光素子LEによって射出され、光伝送路FBによって伝送された光を用いて電力を出力する。第1変換部CV1は、受光素子REから出力された電力をコンデンサCを充電可能な電力に変換する。これにより、第2の実施形態の直流電流遮断装置1は、通常導通状態において十分な絶縁耐圧を確保しつつ、コンデンサCを充電することができる。
【0065】
(第3の実施形態)
以下、図面を参照して第3の実施形態にについて説明する。第1の実施形態では、第2電力供給部が第2変圧器84によって実現される場合について説明した。第3の実施形態では、第2電力供給部が無接点充電方式を用いた構成によって実現される場合について説明する。なお、上述した実施形態、及び変形例と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0066】
図7は、第3の実施形態の充電回路80-2の構成の一例を示す図である。第2の実施形態の充電回路80-2は、電源装置81と、第1変圧器82と、第1開閉器83と、第2開閉器85と、整流器86と、第2電力供給部88とを備える。第2電力供給部88は、例えば、送電回路LC1と、受電回路LC2と、第2変換部CV2とを備える。電源装置81と、送電回路LC1とは、互いに接続される。受電回路LC2と、第2変換部CV2とは、互いに接続される。第2変換部CV2と、第1端子85aとは、互いに接続される。本実施形態の電源装置81には、例えば、商用電力が供給され、電源装置81は、商用電力を送電回路LC1によって用いられる電力に変換する。
【0067】
送電回路LC1は、例えば、コンデンサと、コイルとが互いに並列に接続された励磁回路により実現され、電源装置81から供給された電力によってコイルに磁界を生じさせる。送電回路LC1は、「送電コイル」の一例である。
【0068】
受電回路LC2は、例えば、コンデンサと、コイルとが互いに並列に接続された励磁回路により実現される。受電回路LC2は、送電回路LC1が生じさせた磁界によって、受電回路LC2が備えるコイルに電磁誘導が生じるため、電磁誘導による誘導起電力を生じさせる。受電回路LC2は、「受電コイル」の一例である。
【0069】
第2変換部CV2は、受電回路LC2によって出力される誘導起電力の電圧を、所定の電圧に変換(例えば、昇圧、又は降圧)する。上述したように、所定の電圧とは、例えば、コンデンサCの充電電圧である。
【0070】
なお、制御部100が、初期状態であるか、又は通常導通状態であるかに応じて、直流電流遮断装置1の状態を制御する処理については、上述した実施形態と同様であるため、説明を省略する。また、本実施形態において、直流電流遮断装置1は、第2開閉器85を備えていなくてもよい。この場合、制御部100は、初期状態である場合に、送電回路LC1の動作を停止させ、通常導通状態である場合に、送電回路LC1を動作させる処理を行う。また、直流電流遮断装置1が第2開閉器85を備えていない場合、第2電力供給部88は、送電回路LC1の動作、又は停止が切り替わることに伴い、「第2開閉手段」としての役割も兼ねる。
【0071】
[第3の実施形態のまとめ]
以上説明したように、第3の実施形態の直流電流遮断装置1が備える第2電力供給部88は、送電コイル(この一例では、送電回路LC1)と、受電コイル(この一例では、受電回路LC2)と、第2変換部CV2とを持つ。送電回路LC1は、電源装置81によって供給される電力によって磁界を発生させる。受電回路LC2は、送電回路LC1が発生させた磁界によって電力(誘導起電力)を発生させる。第2変換部CV2は、受電回路LC2から出力された電力をコンデンサCを充電可能な電力に変換する。これにより、第3の実施形態の直流電流遮断装置1は、通常導通状態において十分な絶縁耐圧を確保しつつ、コンデンサCを充電することができる。
【0072】
[第1開閉器83と第2開閉器85との他の例]
なお、上述では、第1電力供給部と整流器86との間には一つの第1開閉器83が設けられ、第2電力供給部と整流器86との間には一つの第2開閉器85が設けられる場合について説明したが、これに限られない。第1電力供給部と整流器86との間、第2電力供給部と整流器86との間のそれぞれには、複数の開閉器が直列に設けられてもよい。これにより、直流電流遮断装置1は、第1開閉器83や第2開閉器85の絶縁耐圧を高めることができる。
【0073】
[複数の転流回路30を備える場合]
また、上述では、直流電流遮断装置1が一つの転流回路30を備える場合について説明したが、これに限られない。直流電流遮断装置1は、複数の転流回路30を備えていてもよい。この場合、直流電流遮断装置1は、転流回路30-1、転流回路30-2、…、転流回路30-m(mは自然数)を備え、転流回路30-1、転流回路30-2、…、転流回路30-mは、互いに直列に接続される。以下、転流回路30-1、転流回路30-2、…、転流回路30-mを互いに区別しない場合には、単に転流回路30と記載する。隣り合う転流回路30は、第2端子30bと、第1端子30aとが互いに接続される。複数の転流回路30のうち、端部の転流回路30の第1端子30aと、第2端子10bと、第1端子20aとは、互いに接続される。また、複数の転流回路30のうち、他の端部の転流回路30の第2端子30bと、ダイオード60のカソードと、リアクトル70の一端とは、互いに接続される。この場合、複数の転流回路30のコンデンサCの正極のそれぞれに第1端子80aが接続され、コンデンサCの負極のそれぞれに第2端子80bが接続される。
【0074】
ここで、機械式遮断器20を電気的に開状態にする際に転流回路30が動作して経路rt2に電流を還流させるためには、多数のコンデンサCを用いて高いコンデンサ電圧を得ることが求められる場合がある。複数の転流回路30を備える直流電流遮断装置1によれば、コンデンサCを直列に接続することにより、複数のコンデンサCの電圧の和によって、高いコンデンサ電圧を実現することができる。
【0075】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0076】
1…直流電流遮断装置、10…断路器、20…機械式遮断器、30、30-1、30-2、30-m…転流回路、35…サイリスタ、40…半導体遮断器、50…アレスタ、60…ダイオード、70…リアクトル、80、80-1、80-2…充電回路、81…電源装置、82…第1変圧器、83…第1開閉器、84…第2変圧器、85…第2開閉器、310a、310b…ダイオード、320a、320b、320c、320d…スイッチング部、C…コンデンサ、CV1…第1変換部、CV2…第2変換部、86…整流器、87、88…第2電力供給部、100…制御部、FB…光伝送路、L1…リアクトル、LC1…送電回路、LC2…受電回路、LD…レーザドライバ、LE…発光素子、LN1…第1直流送電線路、LN2…第2直流送電線路、MS…補助断路器、RE…受光素子、TR、TR-1、TR-2、TR-n…絶縁トランス