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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 77/20 20060101AFI20221206BHJP
   B65D 81/34 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
B65D77/20 G
B65D81/34 U
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2017210707
(22)【出願日】2017-10-31
(65)【公開番号】P2019081583
(43)【公開日】2019-05-30
【審査請求日】2020-07-02
(73)【特許権者】
【識別番号】500163366
【氏名又は名称】出光ユニテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 季和
【審査官】植前 津子
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-096367(JP,A)
【文献】特開2009-102081(JP,A)
【文献】実開昭52-091301(JP,U)
【文献】特開2016-196329(JP,A)
【文献】国際公開第2008/056690(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 77/20
B65D 81/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹部および前記凹部の周縁に沿って形成され前記周縁から外方に延出するフランジ部を含む容器本体と、
前記フランジ部に形成される接合領域で前記容器本体に接合されることによって前記凹部との間に内部空間を形成する蓋体と
を備える容器であって、
前記容器本体は、第1層と、前記第1層に接合され前記接合領域に面する第2層とを少なくとも含む積層体からなり、
前記蓋体は、前記接合領域に面する第3層と、前記第3層に接合される第4層とを少なくとも含む積層体からなり、
前記第2層または前記第3層のいずれかが凝集破壊層であり、前記凝集破壊層の凝集強度は前記蓋体と前記容器本体との間の接合強度、前記第1層から前記第4層までのうち前記凝集破壊層以外の各層の凝集強度、ならびに前記第1層と前記第2層との間および前記第3層と前記第4層との間の層間接合強度よりも弱く、
前記接合領域の前記凹部側の端縁部に、前記第1層および前記第2層を形成する樹脂からなり前記凹部側に傾いた瘤状断面の第1樹脂溜まり部と、前記第3層の樹脂からなり前記第1樹脂溜まり部よりも前記凹部側に位置する瘤状断面の第2樹脂溜まり部とが形成され、
前記接合領域には前記内部空間の内圧が上昇したときに前記内部空間を外部空間に連通させることが可能な通蒸部が形成され、
前記通蒸部は、前記蓋体と前記容器本体とが接合されない未接合領域、または前記蓋体と前記容器本体とが相対的に弱い単位面積あたりの接合強度で接合される弱接合領域であり、
前記第2樹脂溜まり部は前記通蒸部にも形成される容器。
【請求項2】
前記未接合領域または前記弱接合領域は、前記接合領域を幅方向に横断する、請求項1に記載の容器。
【請求項3】
前記未接合領域または前記弱接合領域は、1または複数のスリット状の領域である、請求項2に記載の容器。
【請求項4】
前記未接合領域または前記弱接合領域は、前記接合領域が幅方向に突出した部分の先端を含む領域、または前記接合領域が幅方向に膨出した部分の頂部を含む領域に形成される、請求項1に記載の容器。
【請求項5】
前記通蒸部は、前記接合領域の幅方向に互いに並列して配置される前記未接合領域および前記弱接合領域を含み、
前記未接合領域は、前記弱接合領域よりも小さい連通経路を形成する、請求項1に記載の容器。
【請求項6】
前記弱接合領域は、前記フランジ部の全周に形成される、請求項5に記載の容器。
【請求項7】
前記未接合領域と前記弱接合領域とは、前記接合領域の幅方向について密接または離隔している、請求項5または請求項6に記載の容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器に関する。
【背景技術】
【0002】
容器本体および蓋体からなる食品などの容器において、容器の密封性と、開封性、すなわち開封時に蓋体を容器本体から容易に剥離できるようにすることとを両立することは容易ではない。容器本体と蓋体との間の接合強度を強くすれば密封性は向上するが開封性は低下し、逆に接合強度を弱くすれば開封性が向上する代わりに密封性が低下するためである。このような課題を解決するための技術は、これまでに種々提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、容器本体と容器本体のフランジ部に接合される蓋体とからなる容器において、容器本体および蓋体を形成する積層体のいずれかの層の凝集強度を容器本体と蓋体との間の接合強度よりも小さくなるように構成するとともに、容器本体と蓋体との間の接合部の内周縁部近傍に樹脂溜まり部を形成する技術が提案されている。容器本体と蓋体との接合領域では容器本体および蓋体を形成する積層体のいずれかの層を凝集破壊させることで、容器本体と蓋体との間の接合強度を弱めることなく開封性を高めることが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5001962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
その一方で、開封することなく電子レンジに入れて食品などの内容物を加熱することが可能な容器も知られている。このような容器では、加熱された内容物から発生した水蒸気によって内圧が上昇したときに容器が破裂しないように、蓋体に蒸気抜きのための開孔を設けることが一般的である。開孔を設けることによって容器の密封性は失われるため、このような容器において上記の特許文献1のような技術は採用されない。
【0006】
本来、上記のような容器では、開孔の大きさおよび数を必要最小限とし、水蒸気を容器内に充満させることで、加熱効率を向上させることができる。しかしながら、電子レンジでの加熱は、機種や個体によるばらつきが大きく、加熱時に発生する内圧を正確に予測することは難しい。それゆえ、実際には、容器の破裂を確実に防止するために、大きめの、または多めの開孔が設けられ、加熱効率が低いままであることが多かった。
【0007】
そこで、本発明は、開封することなく内容物を加熱することが可能な容器において、容器の破裂を防止するとともに加熱効率を向上させることを可能にする、新規かつ改良された容器を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のある観点によれば、凹部および凹部の周縁に沿って形成され周縁から外方に延出するフランジ部を含む容器本体と、フランジ部に形成される接合領域で容器本体に接合されることによって凹部との間に内部空間を形成する蓋体とを備える容器であって、容器本体は、第1層と、第1層に接合され接合領域に面する第2層とを少なくとも含む積層体からなり、蓋体は、接合領域に面する第3層と、第3層に接合される第4層とを少なくとも含む積層体からなり、第2層または第3層のいずれかが凝集破壊層であり、凝集破壊層の凝集強度は蓋体と容器本体との間の接合強度、第1層から第4層までのうち凝集破壊層以外の各層の凝集強度、ならびに第1層と第2層との間および第3層と第4層との間の層間接合強度よりも弱く、接合領域の凹部側の端縁部に、第1層および第2層を形成する樹脂からなり凹部側に傾いた瘤状断面の第1樹脂溜まり部と、第3層の樹脂からなり第1樹脂溜まり部よりも凹部側に位置する瘤状断面の第2樹脂溜まり部とが形成され、接合領域には内部空間の内圧が上昇したときに内部空間を外部空間に連通させることが可能な通蒸部が形成される容器が提供される。
上記の構成によれば、容器本体または蓋体のいずれかを構成する積層体の層を凝集破壊させることによって容器が開封されるため、開封性を損なうことなく容器本体と蓋体との間の接合強度を強くすることができる。このような容器に通蒸部を形成することによって、内容物の加熱時には水蒸気を外部に排出して容器の破裂を防止しつつ、通蒸部から放出される水蒸気の量を制限することで内部空間に水蒸気を充満させるとともに内圧をある程度まで上昇させ、内容物の加熱効率を向上させることができる。
【0009】
上記の容器において、通蒸部は、蓋体と容器本体とが接合されない未接合領域、または蓋体と容器本体とが相対的に弱い単位面積あたりの接合強度で接合される弱接合領域を含んでもよい。
【0010】
上記の容器において、未接合領域または弱接合領域は、接合領域を幅方向に横断してもよい。
【0011】
上記の容器において、未接合領域または弱接合領域は、1または複数のスリット状の領域であってもよい。
【0012】
上記の容器において、未接合領域または弱接合領域は、接合領域が幅方向に突出した部分の先端を含む領域、または接合領域が幅方向に膨出した部分の頂部を含む領域に形成されてもよい。
【0013】
上記の容器において、通蒸部は、接合領域の幅方向に互いに並列して配置される未接合領域および弱接合領域を含み、未接合領域は、弱接合領域よりも小さい連通経路を形成してもよい。この場合において、弱接合領域は、フランジ部の全周に形成されてもよい。また、未接合領域と弱接合領域とは、接合領域の幅方向について密接していてもよいし、離隔していてもよい。
【0014】
上記の容器において、通蒸部は、第1樹脂溜まり部および第2樹脂溜まり部が部分的に形成されない部分を含んでもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、開封することなく内容物を加熱することが可能な容器において、容器の破裂を防止するとともに加熱効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1の実施形態に係る容器の斜視図である。
図2図1に示す容器の開封動作を示す部分断面図である。
図3図1に示す容器に形成される通蒸部の例を示す図である。
図4図1に示す容器に形成される通蒸部の例を示す図である。
図5図1に示す容器に形成される通蒸部の例を示す図である。
図6図1に示す容器に形成される通蒸部の例を示す図である。
図7図1に示す容器に形成される通蒸部の例を示す図である。
図8図1に示す容器に形成される弱接合領域の他の例を示す図である。
図9】本発明の第1の実施形態に係る容器の製造方法について説明するための図である。
図10】本発明の第2の実施形態に係る容器の斜視図である。
図11図10に示す容器の開封動作を示す部分断面図である。
図12】本発明の第3の実施形態に係る容器の斜視図である。
図13】本発明の第4の実施形態に係る容器の平面図である。
図14図13に示す容器の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省略する。
【0018】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る容器の斜視図である。図2は、図1に示す容器の開封動作を示す部分断面図である。
【0019】
本実施形態に係る容器100は、容器本体110と、蓋体130とを含む。容器本体110は、略矩形の平面形状を有し、凹部111と、凹部111の周縁に沿って形成されるフランジ部112とを含む。フランジ部112は、凹部111の周縁から外方に延出する。蓋体130は、凹部111の開口を覆うフィルム状の部材であり、フランジ部112に形成される接合領域140でヒートシールまたは超音波シールなどを用いて容器本体110に接合されることによって凹部111との間に内部空間SPを形成する。
【0020】
容器本体110は、図2に示されるように、基材層114A、表面下層114Bおよび表面層114Cを含む積層体114を、真空成形または圧空成形などによって凹部111およびフランジ部112を含む形状に成形したものである。基材層114Aは、容器本体110の外側に位置し、容器本体110の形状の保持に必要とされる剛性を発揮する。表面下層114Bは、基材層114Aと表面層114Cとの間にあり、それぞれの層に接合されている。表面層114Cは、容器本体110の内側、すなわち内部空間SPに面する側に位置し、フランジ部112に形成される接合領域140に面する。
【0021】
ここで、積層体114の基材層114Aおよび表面下層114Bは、例えばオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、およびポリエステル系樹脂からなる群の少なくともいずれかを含む樹脂で形成される。オレフィン系樹脂としては、ポリプロピレン、およびポリエチレンが例示される。ポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)が例示される。基材層114Aおよび表面下層114Bとの間では、例えば剛性が異なる。基材層114Aには、剛性を向上させるためにタルクなどの無機フィラーが添加されてもよい。
【0022】
一方、積層体114の表面層114Cは、例えばエチレン-アクリル酸エステル-無水マレイン酸共重合体またはスチレングラフトプロピレン樹脂の少なくともいずれかを、ポリプロピレン系樹脂にブレンドして得られた樹脂組成物で形成される。この場合、エチレン-アクリル酸エステル-無水マレイン酸共重合体またはスチレングラフトプロピレン樹脂は、ポリプロピレン系樹脂100質量部に対して、好ましくは10質量部から50質量部、特に好ましくは15質量部から40質量部程度、添加すればよい。
【0023】
なお、図示された例において積層体114は基材層114A、表面下層114Bおよび表面層114Cの3つの層を含むが、他の例において積層体114は追加の層を含んでもよい。例えば、積層体114は、高い剛性が必要とされる場合に、複数の基材層と、基材層同士を接着する接着層とを含んでもよい。接着層は、例えばウレタン系エラストマー、スチレン系エラストマー、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、またはエチレン酢酸ビニル(EVA)などで形成される。また、積層体114は、酸素などを遮断するガスバリア層を含んでもよい。ガスバリア層は、例えばエチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物(EVOH)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、またはポリアクリロニトリル(PAN)などで形成される。
【0024】
蓋体130は、外層131Aおよびシール層131Bを含むフィルム状の積層体131からなる。外層131Aは、蓋体130の表側、すなわち容器本体110に面しない側に位置し、蓋体130に必要とされる柔軟性や引張強度を発揮する。外層131Aは、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、または二軸延伸ナイロンフィルム(O-Ny)などで形成される。一方、シール層131Bは、蓋体130の裏側、すなわち容器本体110に向けられる側に位置し、フランジ部112に形成される接合領域140に面する。シール層131Bは、例えばランダムポリプロピレン(RPP)、ブロックポリプロピレン(BPP)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、またはポリエチレンなどの樹脂組成物で形成される。本実施形態において、外層131Aとシール層131Bとは互いに接合されている。なお、他の実施形態では、積層体131にも追加の層が含まれてもよい。
【0025】
ここで、本実施形態において、積層体114の表面層114Cの凝集強度は、接合領域140における蓋体130と容器本体110との間の接合強度よりも弱く、積層体114および積層体131を構成する表面層114C以外の各層の凝集強度よりも弱く、また積層体114および積層体131の各層の間の層間接合強度よりも弱い。つまり、表面下層114Bを第1層、表面層114Cを第2層、シール層131Bを第3層、外層131Aを第4層とした場合に、第2層の凝集強度は、蓋体130と容器本体110との間の接合強度、第1層、第3層および第4層の凝集強度、ならびに第1層と第2層との間および第3層と第4層との間の層間接合強度よりも弱い。これによって、後述するように、本実施形態では表面層114Cを凝集破壊層とすることによって容器100を容易に開封することができる。なお、本明細書において、凝集強度は、積層体の各層を構成する樹脂を結合させている分子間力(凝集力)によって発揮される強度を意味する。
【0026】
さらに、本実施形態では、図2に示されるように、接合領域140の凹部111側の端縁部に、第1樹脂溜まり部121および第2樹脂溜まり部122が形成される。第1樹脂溜まり部121は、積層体114の表面下層114Bおよび表面層114Cを形成する樹脂からなり、凹部111側に傾いた瘤状断面を有する。第2樹脂溜まり部122は、蓋体130のシール層131Bを形成する樹脂からなり、第1樹脂溜まり部121よりも凹部111側に位置する瘤状断面を有する。図示されているように、表面層114Cは、第1樹脂溜まり部121の表面に沿って、かつ第1樹脂溜まり部121と第2樹脂溜まり部122との隙間を通るように形成される。以下の本実施形態の説明では、第1樹脂溜まり部121および第2樹脂溜まり部122を総称して樹脂溜まり部120ともいう。
【0027】
(容器の開封動作)
次に、容器100の開封動作について説明する。容器100では、例えば略矩形の平面形状の角部において、蓋体130がフランジ部112の周縁から大きく延出している。ユーザは延出した蓋体130の端部を容易に摘持し、ここから図2(A)に示すように蓋体130を引き剥がすことによって容器100の開封を開始することができる。
【0028】
ここで、上述のように、表面層114Cの凝集強度は、接合領域140における蓋体130と表面層114Cとの間の接合強度、積層体114および積層体131の表面層114C以外の各層の凝集強度、ならびに積層体114および積層体131の各層の間の層間接合強度よりも弱い。従って、ユーザが蓋体130を引き剥がすと、接合領域140に対応する位置で蓋体130に引っ張られた表面層114Cが凝集破壊される。これによって、表面層114Cの一部が蓋体130とともに引き剥がされ、表面層114Cの残りの部分は表面下層114B側に残る。
【0029】
さらにユーザが蓋体130を引き剥がすと、図2(B)に示すように、樹脂溜まり部120で表面層114Cの凝集破壊が途切れ、そこから先は蓋体130だけが引き剥がされる。これは、樹脂溜まり部120において、表面層114Cの凝集破壊が、第1樹脂溜まり部121の形状に沿って進行するためである。第1樹脂溜まり部121の表面と第2樹脂溜まり部122の表面とが互いに離反する接合領域140の端縁140E付近で表面層114Cは両側から引っ張られて破断し、蓋体130側から離れる。
【0030】
本実施形態に係る容器100は、上記のような手順によって開封される。積層体114の表面層114Cの凝集強度を弱めれば、開封時にユーザが蓋体130を引き剥がす力が小さくて済み、開封が容易になる。その一方で、開封前、容器本体110と蓋体130とが互いに接合された状態では、内部空間SPの内圧は接合領域140に作用する。接合領域140における蓋体130と容器本体110との間の接合強度は、表面層114Cの凝集強度よりも強くすることが可能であるため、上記のように表面層114Cの凝集強度を弱めることによって開封を容易にした場合であっても、蓋体130と容器本体110との間の接合強度は強いままにして高い内圧に対抗することができる。加えて、接合領域140では第1樹脂溜まり部121の凹部111側の根元付近に応力が集中するため、接合領域140はより樹脂溜まり部が形成されない場合よりも高い内圧に対抗することが可能である。このようにして、本実施形態に係る容器100では、開封性と耐内圧性とを両立させることができる。
【0031】
(通蒸部の構成)
本実施形態では、図1に示されるように、容器100の接合領域140に通蒸部141が形成される。ここで、通蒸部141は、容器100の内部空間SPの内圧が上昇したときに、内部空間SPを外部空間に連通させることが可能な部分である。より具体的には、通蒸部141は、蓋体130と容器本体110とが接合されない未接合領域、または蓋体130と容器本体110とが相対的に弱い単位面積あたりの接合強度で接合される弱接合領域を含む。具体的には、後述するように、弱接合領域は、領域内の接合面積は他の領域と同じで接合強度が他の領域よりも弱い領域であってもよい。また、弱接合領域は、接合強度は他の領域と同じで領域内の接合面積が他の領域よりも小さい領域であってもよい。あるいは、弱接合領域は、領域内の接合面積が他の領域よりも小さく、かつ接合強度が他の領域よりも弱い領域であってもよい。図示された例では、略矩形状の接合領域140の両方の長辺のそれぞれの中央付近に通蒸部141が形成される。なお、通蒸部141における未接合領域または弱接合領域の配置の具体的な例については後述する。
【0032】
上記のような通蒸部141が形成されることによって、容器100を開封することなく電子レンジに入れて食品などの内容物を加熱したときに、加熱された内容物から発生した水蒸気の一部が通蒸部141を介して放出される。例えば、通蒸部141では、接合領域140を幅方向に横断する未接合領域が形成されており、内部空間SPが外部空間に連通している。また、例えば、通蒸部141では、接合領域140を幅方向に横断する弱接合領域が形成されるか、未接合領域または弱接合領域が内圧の集中部分を形成するように配置されており、水蒸気の発生によって上昇した内部空間SPの内圧によって蓋体130と容器本体110との間の接合が破壊されることによって内部空間SPが外部空間に連通する。
【0033】
ここで、蒸気抜きの機能そのものに関していえば、通蒸部141は従来の容器に設けられる蒸気抜きのための開孔と同様の機能を有するといえる。しかしながら、本実施形態に係る容器100では、上述したような構成によって、開封性を損なうことなく、容器本体110と蓋体130との間の接合強度を強くし、高い内圧に対抗することができる。従って、本実施形態では、通蒸部141に配置される未接合領域または弱接合領域の大きさおよび数を、例えば従来の容器で同様の蒸気抜きをする場合に比べて、より小さく、またはより少なくすることができる。
【0034】
既に述べたように、電子レンジでの加熱は、機種や個体によるばらつきが大きいが、上記のように容器100は高い耐内圧性を有するために、通蒸部141に配置される未接合領域または弱接合領域を必要以上に大きく、または多くしなくても、容器100の破裂を確実に防止することができる。このように通蒸部141の大きさおよび数を必要最小限にできることによって、加熱時には容器内により多くの水蒸気を充満させ、加熱効率を向上させることができる。また、容器100の内圧を高くできることによって、圧力鍋と同様に内容物の加圧調理を行うこともできる。
【0035】
図3から図7は、図1に示す容器に形成される通蒸部の例を示す図である。図3(A)および(B)には、通蒸部141が、接合領域140を幅方向に横断する3箇所のスリット状の未接合領域141Aまたは弱接合領域141Bを含む例が示されている。一方、図4(A)および図4(B)には、通蒸部141が、接合領域140を斜めに横断する2箇所のスリット状の未接合領域141Aまたは弱接合領域141Bを含む例が示されている。これらの例に示されるように、通蒸部141には、接合領域140を幅方向に(斜めでもよい)横断する1または複数のスリット状の未接合領域141Aおよび弱接合領域141Bを配置することができる。
【0036】
図5(A)および図5(B)には、通蒸部141において、弱接合領域141Bが、接合領域140が幅方向に突出した部分の先端を含む領域に形成される例が示されている。より具体的には、図5(A)に示された例では、通蒸部141に形成される弱接合領域141Bが、内部空間SPの側から外部空間に向けて接合領域140がV字形に突出した部分の先端を含む領域に形成される。一方、図5(B)に示された例では、弱接合領域141Bが、外部空間から内部空間SPの側に向けて接合領域140がV字形に突出した部分の先端を含む領域に形成される。図5(A)または図5(B)のようなV字形とすることにより、接合が破壊されるのに必要な内圧耐性を制御することが可能である。これにより、弱接合領域141Bにおける蓋体130と容器本体110との間の接合の破壊、およびその後の通蒸部141を介した外部空間への水蒸気の放出が安定的に発生する。なお、上記の例において弱接合領域141Bに代えて未接合領域141Aを形成した場合も、同様の原理によって通蒸部141を介した外部空間への水蒸気の放出が安定的に発生する。また、図示された例では接合領域140が突出した部分の先端付近のみに弱接合領域141Bが形成されているが、弱接合領域141Bは接合領域140が突出した部分の全体に形成されてもよい。未接合領域141Aが形成される場合も同様である。
【0037】
図6(A)および図6(B)には、通蒸部141において、弱接合領域141Bが、接合領域140が幅方向に膨出した部分の頂部を含む領域に形成される例が示されている。より具体的には、図6(A)に示された例では、通蒸部141に形成される弱接合領域141Bが、内部空間SPの側から外部空間に向けて接合領域140が円弧形に膨出した部分の頂部を含む領域に形成される。一方、図6(B)に示された例では、弱接合領域141Bが、外部空間から内部空間SPの側に向けて接合領域140が円弧形に膨出した部分の頂部を含む領域に形成される。図6(A)または図6(B)のような円弧形とすることにより、接合が破壊されるのに必要な内圧耐性を制御することが可能である。これにより、弱接合領域141Bにおける蓋体130と容器本体110との間の接合の破壊、およびその後の通蒸部141を介した外部空間への水蒸気の放出が安定的に発生する。なお、上記の例において弱接合領域141Bに代えて未接合領域141Aを形成した場合も、同様の原理によって通蒸部141を介した外部空間への水蒸気の放出が安定的に発生する。また、図示された例では接合領域140が膨出した部分の頂部付近のみに弱接合領域141Bが形成されているが、弱接合領域141Bは接合領域140が膨出した部分の全体に形成されてもよい。未接合領域141Aが形成される場合も同様である。
【0038】
このように、本実施形態では、通蒸部141において接合領域140が幅方向に突出または膨出した部分の先端または頂部を含む領域に弱接合領域141Bまたは未接合領域141Aを形成することによって内圧の集中部分が形成し、内部空間SPの内圧が上昇したときに蓋体130と容器本体110との間の接合の破壊と通蒸部141を介した水蒸気の放出とを安定的に発生させることができる。なお、このときに発生する蓋体130と容器本体110との間の接合の破壊は、容器本体110の表面層114Cと蓋体130のシール層131Bとの間の界面剥離、または表面層114Cとシール層131Bとの間に形成される接合層における凝集剥離によって生じる。つまり、上記の例の弱接合領域141Bにおける接合の破壊は、容器本体110の表面層114Cと基材層114Aとの間の層間剥離とは異なる。
【0039】
図7(A)および図7(B)には、通蒸部141が、接合領域140の幅方向に互いに並列して配置される未接合領域141Aおよび弱接合領域141Bを含む例が示されている。これらの例では、内容物の加熱時に上昇した内部空間SPの内圧によって弱接合領域141Bにおける蓋体130と容器本体110との間の接合が破壊された後に、未接合領域141Aを経由して水蒸気が放出される。図7(A)に示された例では、内部空間SP側に弱接合領域141Bが配置され、外部空間側に未接合領域141Aが配置される。未接合領域141Aはスリット状であり、弱接合領域141Bよりも小さい連通経路を形成している。図7(A)の例では、弱接合領域141Bが内部空間SPに広く面することによって内圧の上昇時に弱接合領域141Bの接合が破壊されやすい一方で、スリット状の未接合領域141Aが放出される水蒸気の流量を制限することによって内容物の加熱効率が向上する。なお、弱接合領域141Bは、通蒸部141のみに形成されてもよいし、通蒸部141以外を含むフランジ部112の全周で接合領域140の内部空間SP側に形成されてもよい。また、図示された例では接合領域140と弱接合領域141Bとが接合領域140の幅方向について離隔しているが、接合領域140と弱接合領域141Bとは接合領域140の幅方向について密接していてもよい。
【0040】
一方、図7(B)に示された例では、内部空間SP側に未接合領域141Aが配置され、外部空間側に弱接合領域141Bが配置される。この例でも未接合領域141Aはスリット状であり、弱接合領域141Bよりも小さい連通経路を形成している。図7(B)の例では、スリット状の未接合領域141Aがオリフィスとして機能することによって弱接合領域141Bにかかる内圧が減圧されるため、弱接合領域141Bの接合が破壊されるまでの間に内部空間SPの内圧をより高くすることができる。このような通蒸部141の配置が、容器100の耐内圧性能と適切に組み合わせられれば、内容物の加熱効率をさらに向上させることができる。この場合も、弱接合領域141Bは、通蒸部141のみに形成されてもよいし、通蒸部141以外を含むフランジ部112の全周で接合領域140の外部空間側に形成されてもよい。また、図示された例では接合領域140と弱接合領域141Bとが接合領域140の幅方向について離隔しているが、接合領域140と弱接合領域141Bとは接合領域140の幅方向について密接していてもよい。
【0041】
図8は、図1に示す容器に形成される弱接合領域の他の例を示す図である。上記の例における弱接合領域141Bは、領域内の接合面積は他の領域と同じで接合強度が他の領域よりも弱い領域であるが、図8(A)から図8(C)に示すように、領域内の接合面積が他の接合領域140よりも小さい領域が弱接合領域141Bとして機能してもよい。図8(A)には、弱接合領域141Bにおいて、接合領域140が網目状に形成される例が示されている。この場合、網目の間の部分では蓋体130と容器本体110との間が接合されないため、接合面積は他の部分と比較して相対的に小さくなる。図8(B)には、弱接合領域141Bにおいて、接合領域140が狭幅に形成される例が示されている。この場合も、狭幅の部分における接合面積が他の部分と比較して相対的に小さくなる。図8(C)には、弱接合領域141Bにおいて、接合領域140がドット状に形成される例が示されている。ドットは、互いに重なり合い、全体として内部空間SPと外部空間との間を遮断している。この場合も、ドットの間の部分では蓋体130と容器本体110との間が接合されないため、接合面積は他の部分と比較して相対的に小さくなる。
【0042】
なお、上記で説明した例において、未接合領域141Aおよび弱接合領域141Bとは基本的に互換的なものとして説明されたが、個別の利点も存在する。例えば、未接合領域141Aの場合、通蒸部141において容器本体110と蓋体130との間が開放される部分の大きさが確定されているため、複数の容器100の間で、通蒸部141から放出可能な水蒸気の流量の変動が小さい。この点について、弱接合領域141Bでは、容器本体110と蓋体130との間の接合の破壊が弱接合領域141Bと接合領域140の他の部分との境界を越えて広がったり、逆に境界に達しなかったりする可能性があるため、複数の容器100の間で、通蒸部141から放出可能な水蒸気の流量の変動が大きい。
【0043】
一方、弱接合領域141Bの場合、内部空間SPの内圧が上昇するまで容器本体110と蓋体130との間は密封されているため、加熱前の段階では容器100を通蒸部141が形成されない密封容器と同様に扱うことができる。この点について、未接合領域141Aでは、容器100が製造された段階で容器本体110と蓋体130との間が接合されていないため、通蒸部141が形成されない密封容器とは異なる扱いが必要になる場合がある。ただし、例えば容器100が外装フィルムによって包装されていたり、内容物が固形物のみであったりするような場合には、未接合領域141Aが形成された容器100を密封容器と同様に扱うことも可能である。
【0044】
(容器の製造方法)
図9は、本発明の第1の実施形態に係る容器の製造方法について説明するための図である。図9に示されるように、本実施形態に係る容器100の製造工程は、環状シール盤601を用いてヒートシールで蓋体130と容器本体110との間を接合する工程を含む。ここで、環状シール盤601は、容器本体110のフランジ部112に形成される接合領域140の内周側、すなわち凹部111側の端縁部に面する膨出部602と、膨出部602から外側に向かって広がる傾斜面603とを含む。なお、膨出部602および傾斜面603を含む環状シール盤601とは別に、接合領域140の外周側を接合するために、フランジ部112に対してほぼ平行な平坦面604を含む追加の環状シール盤605が配置されてもよい。
【0045】
上記の製造工程では、図中の上側から環状シール盤601が下降してきたときに、膨出部602が他の部分よりも先に蓋体130に当接される。その後、傾斜面603が順次、蓋体130に当接される。膨出部602および傾斜面603が当接された部分では蓋体130および容器本体110を形成する樹脂に環状シール盤601から熱が加えられ、ヒートシールによって蓋体130と容器本体110との間が接合される。このとき、接合領域140の内周側の端縁部では、加えられた熱によって溶融した容器本体110の表面下層114Bおよび表面層114C、ならびに蓋体130のシール層131Bを形成する樹脂が、膨出部602によって凹部111側に押し出されて第1樹脂溜まり部121および第2樹脂溜まり部122を形成する。
【0046】
ここで、環状シール盤601の膨出部602の大きさを調節することによって、形成される第1樹脂溜まり部121および第2樹脂溜まり部122の大きさを変化させることができる。例えば、接合領域140の一部分で環状シール盤601の膨出部602を他の部分よりも小さくすれば、その部分では第1樹脂溜まり部121および第2樹脂溜まり部122が他の部分よりも小さくなる。なお、接合領域140の一部分で環状シール盤601に膨出部602を形成せず、接合領域140の内周側から外周側までの全体を平坦面にすれば、その部分では第1樹脂溜まり部121および第2樹脂溜まり部122が形成されない。
【0047】
なお、接合領域140の一部分に形成される第1樹脂溜まり部121および第2樹脂溜まり部122が他の部分よりも小さければ、当該部分において容器本体110と蓋体130との間の接合が耐えることができる内圧の大きさが他の部分よりも小さくなる。従って、上記のような環状シール盤601の膨出部602の大きさを調節して第1樹脂溜まり部121および第2樹脂溜まり部122の大きさを変化させることによって、通蒸部141として機能する弱接合領域を形成することも可能である。
【0048】
上記のような容器100の製造工程において、通蒸部141に含まれる未接合領域141Aは、例えば環状シール盤601,605の膨出部602、傾斜面603および平坦面604を部分的に切り欠くことによって形成される。あるいは、未接合領域141Aは、膨出部602、傾斜面603および平坦面604から蓋体130に加えられる熱を断熱材などで部分的に遮断することによって形成されてもよい。一方、通蒸部141に含まれる弱接合領域141Bは、例えば膨出部602、傾斜面603および平坦面604に部分的な凹凸を設けることによって形成される。あるいは、弱接合領域141Bは、膨出部602、傾斜面603および平坦面604から蓋体130に加えられる熱を断熱材などで部分的に弱めることによって形成されてもよい。別の手法として、弱接合領域141Bは、蓋体130の外層131Aとシール層131Bとの間の層間接合の強度を弱める、または部分的に外層131Aとシール層131Bとの間を層間接合しないことによって形成されてもよい。
【0049】
(第1の実施形態まとめ)
上記で説明したような本発明の第1の実施形態に係る容器100では、容器本体110を構成する積層体114の表面層114Cの凝集強度を、蓋体130と容器本体110との間の接合強度、積層体114および積層体131の表面層114C以外の各層の凝集強度、ならびに積層体114および積層体131の各層の間の層間接合強度よりも弱くすることによって、開封性を損なうことなく容器本体110と蓋体130との間の接合強度を強くし、従来の容器よりも高い内圧に対抗することができる。また、接合領域140の凹部111側の端縁部に第1樹脂溜まり部121および第2樹脂溜まり部122を形成することで、容器100の開封動作を安定させ、また耐内圧性を向上させることができる。このような容器100に通蒸部141を形成することによって、内容物の加熱時には水蒸気を外部に排出して容器100の破裂を防止しつつ、通蒸部141から放出される水蒸気の量を制限することで内部空間SPに水蒸気を充満させるとともに内圧をある程度まで上昇させ、内容物の加熱効率を向上させることができる。
【0050】
本実施形態のように、内容物の加熱時に内部空間SPで発生する水蒸気を外部に排出する手段として未接合領域141Aまたは弱接合領域141Bを含む通蒸部141を設けることは、以下に述べるように容器100の変形防止のために有効である。水蒸気の発生によって内部空間SPの内圧が上昇すると、蓋体130の盛り上がりや、容器本体110と蓋体130との間の接合領域140の内周縁に応力がかかることによるフランジ部112の持ち上がりが発生する。本実施形態の通蒸部141は、容器本体110と蓋体130との間に形成されるため、この通蒸部141を通過する水蒸気が受ける抵抗力の反力は、上記のような蓋体130の持ち上がりやフランジ部112の持ち上がりを発生させる応力とは異なる方向、具体的には水平方向(容器100が水平に保持されている場合)にかかる。従って、本実施形態において通蒸部141を設けた容器100では、内圧の上昇時における変形を効果的に抑制することができる。
【0051】
(第2の実施形態)
図10は、本発明の第2の実施形態に係る容器の斜視図である。図11は、図10に示す容器の開封動作を示す部分断面図である。
【0052】
本実施形態に係る容器200は、第1の実施形態に係る容器100と同様の形状の容器本体210と、蓋体230とを含む。具体的には、容器本体210は、凹部111と、凹部111の周縁に沿って形成されるフランジ部112とを含む。フランジ部112は、凹部111の周縁から外方に延出する。蓋体230は、フランジ部112に形成される接合領域140で容器本体210に接合されることによって凹部111との間に内部空間SPを形成する。容器200でも、接合領域140に通蒸部141が形成される。なお、通蒸部141の構成については、上記の第1の実施形態と同様であるため重複した説明は省略する。
【0053】
容器本体210は、図11に示すように、基材層114A、表面下層114Bおよび表面層214Cを含む積層体214からなる。第1の実施形態の積層体114との相違として、表面層214Cは、基材層114Aおよび表面下層114Bと同様に、例えばオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、およびポリエステル系樹脂からなる群の少なくともいずれかを含む樹脂で形成される。一方、蓋体230は、外層131Aおよびシール層231Bを積層体231からなる。第1の実施形態の積層体131との相違として、シール層231Bは、例えばスチレングラフトプロピレン樹脂、または接着性ポリオレフィン樹脂などで形成される。
【0054】
このような積層体214および積層体231の構成によって、本実施形態では、シール層231Bの凝集強度が、接合領域140における蓋体230と容器本体210との間の接合強度よりも弱く、積層体214および積層体231のシール層231B以外の各層の凝集強度よりも弱く、また積層体214および積層体231の各層の間の層間接合強度よりも弱くなる。つまり、表面下層114Bを第1層、表面層214Cを第2層、シール層231Bを第3層、外層131Aを第4層とした場合に、第3層の凝集強度は、蓋体230と容器本体210との間の接合強度、第1層、第2層および第4層の凝集強度、ならびに第1層と第2層との間および第3層と第4層との間の層間接合強度よりも弱い。
【0055】
さらに、本実施形態でも、図11に示されるように、接合領域140の凹部111側の端縁部に、第1樹脂溜まり部221および第2樹脂溜まり部222が形成される。第1樹脂溜まり部221は、容器本体210の表面下層114Bおよび表面層214Cを形成する樹脂からなり、凹部111側に傾いた瘤状断面を有する。第2樹脂溜まり部222は、蓋体230のシール層231Bを形成する樹脂からなり、第1樹脂溜まり部221よりも凹部111側に位置する瘤状断面を有する。以下の本実施形態の説明では、第1樹脂溜まり部221および第2樹脂溜まり部222を総称して樹脂溜まり部220ともいう。
【0056】
(容器の開封動作)
次に、上記のような容器200の開封動作について説明する。容器200でも、フランジ部112の周縁から大きく延出した蓋体230の端部をユーザが摘持し、ここから図11(A)に示すように蓋体230を引き剥がすことによって容器200の開封が開始される点は第1の実施形態と同様である。ただし、本実施形態では、上述のように、シール層231Bの凝集強度が、蓋体230と容器本体210との間の接合強度、シール層231B以外の各層の凝集強度、ならびに積層体214および積層体231の各層の間の層間接合強度よりも弱くなっている。従って、ユーザが蓋体230を引き剥がすと、接合領域140に対応する位置で容器本体210に接合されたシール層231Bが凝集破壊される。これによって、蓋体230はシール層231Bの一部を容器本体110の表面層214C側に残したまま引き剥がされる。
【0057】
さらにユーザが蓋体230を引き剥がすと、図11(B)に示すように、樹脂溜まり部220でシール層231Bの凝集破壊が途切れ、そこから先はシール層231Bの全体が蓋体230とともに引き剥がされる。これは、樹脂溜まり部220において、シール層231Bの凝集破壊が進行する向きと交差するように第2樹脂溜まり部222が形成されているためである。第1樹脂溜まり部221の表面と第2樹脂溜まり部222の表面とが互いに離反する接合領域140の端縁140E付近でシール層231Bは両側から引っ張られて破断し、容器本体210側から離れる。
【0058】
本実施形態に係る容器100は、上記のような手順によって開封される。積層体231のシール層231Bの凝集強度を弱めれば、開封時にユーザが蓋体230を引き剥がす力が小さくて済み、開封が容易になる。その一方で、開封前、容器本体210と蓋体230とが互いに接合された状態では、内部空間SPの内圧は接合領域140に作用する。接合領域140における蓋体230と容器本体210との間の接合強度は、シール層231Bの凝集強度よりも強くすることが可能であるため、上記のようにシール層231Bの凝集強度を弱めることによって開封を容易にした場合であっても、蓋体230と容器本体210との間の接合強度は強いままにして高い内圧に対抗することができる。加えて、接合領域140では第1樹脂溜まり部121の凹部111側の根元付近に応力が集中するため、接合領域140はより樹脂溜まり部が形成されない場合よりも高い内圧に対抗することが可能である。このようにして、本実施形態に係る容器200では、開封性と耐内圧性とを両立させることができる。
【0059】
(第2の実施形態まとめ)
上記で説明したような本発明の第2の実施形態に係る容器200では、蓋体230を構成する積層体231のシール層231Bの凝集強度を、蓋体230と容器本体210との間の接合強度、積層体214および積層体231のシール層231B以外の各層の凝集強度、ならびに積層体114および積層体231の各層の間の層間接合強度よりも弱くすることによって、開封性を損なうことなく容器本体210と蓋体230との間の接合強度を強くし、従来の容器よりも高い内圧に対抗することができる。また、第1の実施形態と同様に第1樹脂溜まり部121および第2樹脂溜まり部222を形成することで、容器200の開封動作を安定させ、また耐内圧性を向上させることができる。このような容器200に通蒸部141を形成することによって、内容物の加熱時には水蒸気を外部に排出して容器200の破裂を防止しつつ、通蒸部141から放出される水蒸気の量を制限することで内部空間SPに水蒸気を充満させるとともに内圧をある程度まで上昇させ、内容物の加熱効率を向上させることができる。
【0060】
(第3の実施形態)
図12は本発明の第3の実施形態に係る容器の斜視図である。上記の第1および第2の実施形態において容器本体110,210が略矩形の平面形状を有していたのに対して、本実施形態に係る容器300の容器本体310は略円形の平面形状を有する。容器本体310は、凹部311と、凹部311の周縁に沿って形成され、凹部311の周縁から外方に延出するフランジ部312とを含む。蓋体330は、凹部311の開口を覆うフィルム状の部材であり、フランジ部312に形成される接合領域340で容器本体310に接合されることによって凹部311との間に内部空間SPを形成する。
【0061】
図示していないが、容器本体310と蓋体330とは、第1の実施形態と同様の積層体114および積層体131の組み合わせ、または第2の実施形態と同様の積層体214および積層体231の組み合わせによって形成される。これによって、本実施形態でも、第1および第2の実施形態と同様に、開封性を損なうことなく容器本体310と蓋体330との間の接合強度を強くし、従来の容器よりも高い内圧に対抗することができる。樹脂溜まり部を形成することによって容器300の開封動作を安定させ、また耐内圧性を向上させることができる点も第1および第2の実施形態と同様である。また、本実施形態でも、容器300の接合領域340には第1および第2の実施形態と同様の通蒸部341が形成されるが、容器300の耐内圧性が高いために通蒸部341から放出される水蒸気の量を制限し、内部空間SPに水蒸気を充満させるとともに内圧をある程度まで上昇させることができる。従って、本実施形態でも、容器の破裂を防止しつつ、加熱された内容物から発生する水蒸気を利用して加熱効率を向上させることができる。
【0062】
(第4の実施形態)
図13は、本発明の第4の実施形態に係る容器の平面図である。図14は、図13に示す容器の部分断面図であり、図14(A)は図13に示すA-A線に沿った断面図であり、図14(B)は図13に示すB-B線に沿った断面図である。
【0063】
本実施形態に係る容器400は、以下で説明する部分を除いて、上記の第3の実施形態に係る容器300と同様の構成を有する。容器400では、第1から第3の実施形態に示されたような通蒸部に代えて、樹脂溜まり部を形成しないことによる弱接合領域441Bが形成され、この弱接合領域441Bが通蒸部441として機能する。図14(A)に示されるように、通蒸部441以外では、接合領域340の凹部311側の端縁部に樹脂溜まり部120が形成され、これによって容器本体310と蓋体330との間の接合が高い内圧に対抗することができる。これに対して、図14(B)に示されるように、弱接合領域441Bでは、接合領域340の凹部311側の端縁部に樹脂溜まり部120が形成されていない。従って、弱接合領域441Bでは、容器本体310と蓋体330との間の接合は、樹脂溜まり部120が形成された部分よりも低い内圧で破壊される。具体的には、容器本体310の表面層114Cと蓋体330のシール層131Bとの間の界面剥離、または表面層114Cと蓋体330のシール層131Bとの間に形成される接合層の凝集剥離が発生する。
【0064】
このような本発明の第4の実施形態でも、通蒸部441が形成されることによって、上記の第1および第2の実施形態と同様の効果が得られる。また、上記の第1および第2の実施形態における通蒸部141に、本実施形態のような樹脂溜まり部を形成しないことによる弱接合領域を採用することも可能である。
【0065】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はこれらの例に限定されない。本発明の属する技術の分野の当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0066】
100…容器、110…容器本体、111…凹部、112…フランジ部、114…積層体、114A…基材層、114B…表面下層、114C…表面層、120…樹脂溜まり部、121…第1樹脂溜まり部、122…第2樹脂溜まり部、130…蓋体、131…積層体、131A…外層、131B…シール層、140…接合領域、141…通蒸部、141A…未接合領域、141B…弱接合領域、200…容器、210…容器本体、214…積層体、214C…表面層、220…樹脂溜まり部、221…第1樹脂溜まり部、222…第2樹脂溜まり部、230…蓋体、231…積層体、231B…シール層、300…容器、310…容器本体、311…凹部、312…フランジ部、330…蓋体、340…接合領域、341…通蒸部、601…環状シール盤、602…膨出部、603…傾斜面、604…平坦面、605…環状シール盤、SP…内部空間。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14