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特許7188883樹脂組成物、プリプレグ、レジンシート、積層板、及びプリント配線板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】樹脂組成物、プリプレグ、レジンシート、積層板、及びプリント配線板
(51)【国際特許分類】
   C08L 39/04 20060101AFI20221206BHJP
   C08F 212/32 20060101ALI20221206BHJP
   C08F 212/34 20060101ALI20221206BHJP
   C08F 222/40 20060101ALI20221206BHJP
   C08F 226/06 20060101ALI20221206BHJP
   C08J 5/24 20060101ALI20221206BHJP
   C08K 3/00 20180101ALI20221206BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20221206BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20221206BHJP
   C08K 3/38 20060101ALI20221206BHJP
   C08L 25/18 20060101ALI20221206BHJP
   C08L 35/00 20060101ALI20221206BHJP
   C08L 61/14 20060101ALI20221206BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
C08L39/04
C08F212/32
C08F212/34
C08F222/40
C08F226/06
C08J5/24 CER
C08K3/00
C08K3/22
C08K3/36
C08K3/38
C08L25/18
C08L35/00
C08L61/14
H05K1/03 610H
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2017527442
(86)(22)【出願日】2016-07-04
(86)【国際出願番号】 JP2016069748
(87)【国際公開番号】W WO2017006894
(87)【国際公開日】2017-01-12
【審査請求日】2019-05-28
【審判番号】
【審判請求日】2021-05-14
(31)【優先権主張番号】P 2015135200
(32)【優先日】2015-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】高野 与一
(72)【発明者】
【氏名】富澤 克哉
(72)【発明者】
【氏名】久保 孝史
(72)【発明者】
【氏名】千葉 友
(72)【発明者】
【氏名】志賀 英祐
【合議体】
【審判長】近野 光知
【審判官】小出 直也
【審判官】井上 政志
(56)【参考文献】
【文献】特開平7-165825(JP,A)
【文献】特開2009-191218(JP,A)
【文献】特開2012-197336(JP,A)
【文献】特開2013-127022(JP,A)
【文献】特開平6-100633(JP,A)
【文献】国際公開第2014/061812(WO,A1)
【文献】特開2011-88981(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14, C08K 3/00-13/08, C08F 2/00-246/00, C08G 2/00-83/00, C08J 5/00-5/24, B32B 5/00-27/42
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(a)又は下記一般式(b)で表される化合物と、
アルケニル置換ナジイミド化合物と、
マレイミド化合物と、を含む硬化性樹脂組成物であって
前記一般式(a)又は前記一般式(b)で表される化合物として、1-プロペニルベンゼン、1-メトキシ-4-(1-プロペニル)ベンゼン、1,2-ジフェニルエテン、4-プロペニル-フェノール、及び下記式(b1)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含み、
前記アルケニル置換ナジイミド化合物として、下記一般式(1)で表される化合物を含
前記一般式(a)又は下記一般式(b)で表される化合物の含有量が、前記硬化性樹脂組成物中の樹脂を構成する成分の合計100質量部に対して5~30質量部であり、
前記アルケニル置換ナジイミド化合物の含有量が、前記硬化性樹脂組成物中の樹脂を構成する成分の合計100質量部に対して10~60質量部であり、
マレイミド化合物の含有量が、前記硬化性樹脂組成物中の樹脂を構成する成分の合計100質量部に対して10~70質量部である、硬化性樹脂組成物。
【化1】
(一般式(a)中、Rは、炭素数1~6のアルキル基、アルコキシ基、フェノキシ基、ヒドロキシル基、又はアミノ基を1個以上有していてもよい、フェニル基、ナフチル基、又はビフェニル基を表し、R’は、メチル基、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、又はベンジル基であり、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、及びベンジル基は、炭素数1~6のアルキル基を1個以上有していてもよい。)
【化2】
(一般式(b)中、Raは、下記一般式(c)で表される基であり、複数あるRbは、各々独立にメチル基、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、又はベンジル基であり、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、及びベンジル基は、炭素数1~6のアルキル基を1個以上有していてもよい。)
【化3】
(一般式(c)中、Rcは、各々独立にメチレン基、イソプロピリデン基、-CO-、-O-、-S-、又は>SO2で表される置換基を表し、nは0~5の整数を表す。)
【化4】
【化5】
(一般式(1)中、R1は、それぞれ独立して、水素原子、又は炭素数1~6のアルキル基を表し、R2は、炭素数1~6のアルキレン基、フェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基、又は下記一般式(2)若しくは(3)で表される基を表す。)
【化6】
(一般式(2)中、R3は、メチレン基、イソプロピリデン基、-CO-、-O-、-S-、又は>SO2で表される置換基を表す。)
【化7】
(一般式(3)中、R4は、それぞれ独立して、炭素数1~4のアルキレン基、又は>SO2で表される基を表す。)
【請求項2】
前記アルケニル置換ナジイミド化合物として、下記式(4)及び/又は式(5)で表される化合物を含む、請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【化8】
【化9】
【請求項3】
前記マレイミド化合物として、ビス(4-マレイミドフェニル)メタン、2,2-ビス{4-(4-マレイミドフェノキシ)-フェニル}プロパン、ビス(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン、ポリテトラメチレンオキシド-ビス(4-マレイミドベンゾエート)、及び下記一般式(6)で表されるマレイミド化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1又は2に記載の硬化性樹脂組成物。
【化10】
(一般式(6)中、R5は、各々独立して、水素原子又はメチル基を表し、n1は1以上の整数を表す。)
【請求項4】
シアン酸エステル化合物を更に含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
前記シアン酸エステル化合物として、下記一般式(7)及び/又は一般式(8)で表される化合物を含む、請求項4に記載の硬化性樹脂組成物。
【化11】
(一般式(7)中、R6は、各々独立して、水素原子又はメチル基を表し、n2は1以上の整数を表す。)
【化12】
(一般式(8)中、R7は、各々独立して、水素原子又はメチル基を表し、n3は1以上の整数を表す。)
【請求項6】
無機充填材を更に含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
前記無機充填材として、シリカ、アルミナ、窒化アルミニウム、及び窒化ホウ素からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、請求項6に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
基材と、当該基材に含浸又は塗布された請求項1~7のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物と、を備える、プリプレグ。
【請求項9】
前記基材が、Eガラスクロス、Tガラスクロス、Sガラスクロス、Qガラスクロス、及び有機繊維からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項8に記載のプリプレグ。
【請求項10】
支持体と、当該支持体に塗布された請求項1~7のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物と、を備える、レジンシート。
【請求項11】
請求項8及び9に記載のプリプレグ、並びに請求項10に記載のレジンシートからなる群より選ばれる少なくとも1種を1枚以上重ねてなる積層板であって、前記プリプレグ及び前記レジンシートからなる群より選ばれる少なくとも1種に含まれる硬化性樹脂組成物の硬化物を含む、積層板。
【請求項12】
請求項8及び9に記載のプリプレグ、並びに請求項10に記載のレジンシートからなる群より選ばれる少なくとも1種と、前記プリプレグ及び前記レジンシートからなる群より選ばれる少なくとも1種の片面又は両面に配された金属箔と、を有する金属箔張積層板であって、前記プリプレグ及び前記レジンシートからなる群より選ばれる少なくとも1種に含まれる硬化性樹脂組成物の硬化物を含む、金属箔張積層板。
【請求項13】
絶縁層と、前記絶縁層の表面に形成された導体層と、を含むプリント配線板であって、前記絶縁層が、請求項1~7のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物を含む、プリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、それを用いたプリプレグ、レジンシート、積層板、及びプリント配線板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピュータ等の電子機器や通信機等に広く用いられている半導体パッケージの高機能化や小型化が進んでいる。それに伴い、半導体パッケージ用の各部品の高集積化や高密度実装化も益々加速している。高集積化や高密度実装化において、半導体素子と半導体プラスチックパッケージ用プリント配線板との熱膨張率の差によって生じる半導体プラスチックパッケージの反りが問題となっており、様々な対策が講じられてきている。
【0003】
その対策の一つとして、プリント配線板に用いられる絶縁層の低熱膨張化が挙げられる。これは、プリント配線板の熱膨張率を半導体素子の熱膨張率に近づけることで反りを抑制する手法である(例えば、特許文献1、2参照)。
【0004】
半導体プラスチックパッケージの反りを抑制する手法としては、プリント配線板の低熱膨張化以外にも、積層板の剛性を高くすること(高剛性化)や積層板のガラス転移温度を高くすること(高Tg化)が検討されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-216884号公報
【文献】特開2009-035728号公報
【文献】特開2013-001807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、電子材料用途等の樹脂組成物としては、上記した低熱膨脹化や高Tg化等だけでは満足できるものではなく、更なる改善の余地がある。例えば、プリント配線板として、熱硬化性樹脂組成物の半硬化状態(Bステージ)であるプリプレグを銅箔等の金属箔と積層し、これを加熱、加圧して得られる金属箔張積層板等が汎用されている。この加熱や加圧を行う際にはプリプレグに適度な流動性があることが望まれるが、加熱溶融時の粘度(溶融粘度)が高いと、積層板作製時の流れ特性(樹脂フロー性)が悪くなってしまうという問題がある。
【0007】
さらに、プリプレグを銅箔等の金属箔と積層させる際には、エッチング工程、デスミア工程、メッキ工程等において積層板が薬液に曝されるので、積層板の耐薬品性が低いと製品の品質や生産性が悪くなるという問題がある。特にデスミア工程では、メカニカルドリル加工やレーザードリル加工で生じるスミアを除去する目的で強アルカリ性の洗浄液が用いられる。そのため、耐薬品性が不十分であると、スミア以外のスルーホール内壁やその他の樹脂層の表面も溶出してしまい、積層体が汚染されてしまうという問題が顕著になる(耐デスミア性)。
【0008】
このように、プリント配線板の作製においては、低溶融粘度であり、高い樹脂フロー性を有することによる優れた成形性、及び、優れた耐デスミア性が要求される。しかしながら、これらを高いレベルで両立させることは困難であり、未だ改善の余地がある。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、低溶融粘度であり、高い樹脂フロー性を有することによる優れた成形性、及び優れた耐デスミア性を有する樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、鋭意検討した結果、特定の構造を有する化合物と、アルケニル置換ナジイミドと、マレイミド化合物とを含む樹脂組成物を用いることで上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
<1>
下記一般式(a)又は下記一般式(b)で表される化合物と、
アルケニル置換ナジイミド化合物と、
マレイミド化合物と、を含む樹脂組成物。
【化1】
(一般式(a)中、Rは、炭素数1~6のアルキル基、アルコキシ基、フェノキシ基、ヒドロキシル基、又はアミノ基を1個以上有していてもよい、フェニル基、ナフチル基、又はビフェニル基を表し、R'は、メチル基、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、又はベンジル基であり、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、及びベンジル基は、炭素数1~6のアルキル基を1個以上有していてもよい。)
【化2】
(一般式(b)中、Rは、下記一般式(c)で表される基であり、複数あるRは、各々独立にメチル基、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、又はベンジル基であり、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、及びベンジル基は、炭素数1~6のアルキル基を1個以上有していてもよい。)
【化3】
(一般式(c)中、Rは、各々独立にメチレン基、イソプロピリデン基、-CO-、-O-、-S-、又は>SOで表される置換基を表し、nは0~5の整数を表す。)
<2>
前記一般式(a)又は前記一般式(b)で表される化合物として、1-プロペニルベンゼン、1-メトキシ-4-(1-プロペニル)ベンゼン、1,2-ジフェニルエテン、4-プロペニル-フェノール、及び下記式(b1)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含む、<1>に記載の樹脂組成物。
【化4】
<3>
前記アルケニル置換ナジイミド化合物として、下記一般式(1)で表される化合物を含む、<1>又は<2>に記載の樹脂組成物。
【化5】
(一般式(1)中、Rは、それぞれ独立して、水素原子、又は炭素数1~6のアルキル基を表し、Rは、炭素数1~6のアルキレン基、フェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基、又は下記一般式(2)若しくは(3)で表される基を表す。)
【化6】
(一般式(2)中、Rは、メチレン基、イソプロピリデン基、-CO-、-O-、-S-、又は>SOで表される置換基を表す。)
【化7】
(一般式(3)中、Rは、それぞれ独立して、炭素数1~4のアルキレン基、又は>SOで表される基を表す。)
<4>
前記アルケニル置換ナジイミド化合物として、下記式(4)及び/又は式(5)で表される化合物を含む、<1>~<3>のいずれかに記載の樹脂組成物。
【化8】
【化9】
<5>
前記マレイミド化合物として、ビス(4-マレイミドフェニル)メタン、2,2-ビス{4-(4-マレイミドフェノキシ)-フェニル}プロパン、ビス(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン、ポリテトラメチレンオキシド-ビス(4-マレイミドベンゾエート)、及び下記一般式(6)で表されるマレイミド化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、<1>~<4>のいずれかに記載の樹脂組成物。
【化10】
(一般式(6)中、Rは、各々独立して、水素原子又はメチル基を表し、nは1以上の整数を表す。)
<6>
シアン酸エステル化合物を更に含む、<1>~<5>のいずれかに記載の樹脂組成物。
<7>
前記シアン酸エステル化合物として、下記一般式(7)及び/又は一般式(8)で表される化合物を含む、<6>に記載の樹脂組成物。
【化11】
(一般式(7)中、Rは、各々独立して、水素原子又はメチル基を表し、nは1以上の整数を表す。)
【化12】
(一般式(8)中、Rは、各々独立して、水素原子又はメチル基を表し、nは1以上の整数を表す。)
<8>
無機充填材を更に含む、<1>~<7>のいずれかに記載の樹脂組成物。
<9>
前記無機充填材として、シリカ、アルミナ、窒化アルミニウム、及び窒化ホウ素からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、<8>に記載の樹脂組成物。
<10>
基材と、当該基材に含浸又は塗布された<1>~<9>のいずれかに記載の樹脂組成物と、を備える、プリプレグ。
<11>
前記基材が、Eガラスクロス、Tガラスクロス、Sガラスクロス、Qガラスクロス、及び有機繊維からなる群より選ばれる少なくとも1種である、<10>に記載のプリプレグ。
<12>
支持体と、当該支持体に塗布された<1>~<9>のいずれかに記載の樹脂組成物と、を備える、レジンシート。
<13>
<10>及び<11>に記載のプリプレグ、並びに<12>に記載のレジンシートからなる群より選ばれる少なくとも1種を1枚以上重ねてなる積層板であって、前記プリプレグ及び前記レジンシートからなる群より選ばれる少なくとも1種に含まれる樹脂組成物の硬化物を含む、積層板。
<14>
<10>及び<11>に記載のプリプレグ、並びに<12>に記載のレジンシートからなる群より選ばれる少なくとも1種と、前記プリプレグ及び前記レジンシートからなる群より選ばれる少なくとも1種の片面又は両面に配された金属箔と、を有する金属箔張積層板であって、前記プリプレグ及び前記レジンシートからなる群より選ばれる少なくとも1種に含まれる樹脂組成物の硬化物を含む、金属箔張積層板。
<15>
絶縁層と、前記絶縁層の表面に形成された導体層と、を含むプリント配線板であって、前記絶縁層が、<1>~<9>のいずれかに記載の樹脂組成物を含む、プリント配線板。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、低溶融粘度であり、高い樹脂フロー性を有することによる優れた成形性、及び、優れた耐デスミア性を有する樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
【0014】
本実施形態の樹脂組成物は、下記一般式(a)又は下記一般式(b)で表される化合物(以下、「化合物A」という場合がある。)と、アルケニル置換ナジイミド化合物と、マレイミド化合物と、を含む樹脂組成物である。
【化13】
(一般式(a)中、Rは、炭素数1~6のアルキル基、アルコキシ基、フェノキシ基、ヒドロキシル基、又はアミノ基を1個以上有していてもよい、フェニル基、ナフチル基、又はビフェニル基を表し、R'は、メチル基、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、又はベンジル基であり、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、及びベンジル基は、炭素数1~6のアルキル基を1個以上有していてもよい。)
【化14】
(一般式(b)中、Rは、下記一般式(c)で表される基であり、複数あるRは、各々独立にメチル基、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、又はベンジル基であり、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、及びベンジル基は、炭素数1~6のアルキル基を1個以上有していてもよい。)
【化15】
(一般式(c)中、Rは、各々独立にメチレン基、イソプロピリデン基、-CO-、-O-、-S-、又は>SOで表される置換基を表し、nは0~5の整数を表す。)
【0015】
本発明者らは、アルケニル置換ナジイミド化合物とマレイミド化合物を含む樹脂組成物において、高粘度化して樹脂フロー性が低下する理由を検討したところ、アルケニル置換ナジイミド化合物とマレイミド化合物とは、エン反応(例えば、下記式(i))やDiels-Alder反応(例えば、下記式(ii))等の反応を起こすが、これらの反応が速やかに進み過ぎるためと考えた。なお、下記式(i)及び式(ii)は、一例として示したものであり、本実施形態の作用効果はこれらに基づき限定解釈されるものではない。かかる考えに基づき、α-アルケニルフェニル化合物である化合物Aを併用したところ、意外にも高粘度化を抑制でき、高い樹脂フロー性が発現されることを見出した。その理由は定かではないが、次のように推測される。化合物Aはマレイミド化合物と反応する際にエン反応が進行せず、かつ、Diels-Alder反応が進行する際にフェニル部が芳香性を失うこと等から、反応の進行が遅い。その結果、化合物Aを併用した樹脂組成物の反応温度は高くなり、樹脂組成物の溶融粘度を低減でき、高い樹脂フロー性が発現される。これにより、樹脂組成物は優れた成形性を発揮できると推測される。さらに、上記したDiels-Alder反応等によって6員環構造のような安定な構造を形成しやすいことから、本実施形態の樹脂組成物は、優れた耐デスミア性も発揮できると推測される。但し、本実施形態の作用効果はこれらに限定されない。
【0016】
【化16】
【0017】
一般式(a)中、Rは、炭素数1~6のアルキル基、アルコキシ基、フェノキシ基、ヒドロキシル基、又はアミノ基を1個以上有してもよい、フェニル基、ナフチル基、又はビフェニル基であり、成形性、耐デスミア性の観点から、フェニル基が好ましい。R'は、メチル基、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、又はベンジル基であり、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、及びベンジル基は、炭素数1~6のアルキル基を1個以上有していてもよい。R'としては、成形性の観点から、メチル基、フェニル基が好ましい。
【0018】
一般式(b)中、Rは、一般式(c)で表される基であり、複数あるRは、各々独立にメチル基、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、又はベンジル基であり、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、及びベンジル基は、炭素数1~6のアルキル基を1個以上有していてもよい。また、一般式(c)中、Rは、各々独立にメチレン基、イソプロピリデン基、-CO-、-O-、-S-、又は>SOで表される置換基を表し、nは0~5の整数を表す。nは、0~3の整数であることが好ましい。
【0019】
化合物Aは、一般式(a)又は一般式(b)で表される構造を有するものであればよく、特に限定されないが、具体例としては、1-プロペニルベンゼン、1-メトキシ-4-(1-プロペニル)ベンゼン、1,2-ジフェニルエテン(スチルベン)、4-プロペニル-フェノール、下記式(b1)で表される化合物等が挙げられる。これらの中でも、成形性、耐デスミア性の観点から、1,2-ジフェニルエテン、下記式(b1)で表される化合物が好ましく、下記式(b1)で表される化合物がより好ましい。化合物Aについては、上記したもの1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【化17】
【0020】
本実施形態の樹脂組成物において、化合物Aの含有量は、適宜好適な割合とすることができるが、樹脂組成物中の樹脂を構成する成分の合計100質量部に対して5~30質量部であることが好ましく、10~20質量部であることがより好ましいい。化合物Aの含有量を上記範囲とすることで、樹脂フロー性、耐デスミア性等を一層向上させることができる。
【0021】
アルケニル置換ナジイミド化合物は、分子中に2個以上のナジイミド基を有するアリル化合物であればよく、特に限定されるものではないが、熱時弾性率(例えば、半田リフロー時の温度における曲げ弾性率)を高くできる観点から、下記一般式(1)で表される化合物であることが好ましい。
【化18】
(一般式(1)中、Rは、それぞれ独立して、水素原子、又は炭素数1~6のアルキル基を表し、Rは、炭素数1~6のアルキレン基、フェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基、又は下記一般式(2)若しくは(3)で表される基を表す。)
【化19】
(一般式(2)中、Rは、メチレン基、イソプロピリデン基、-CO-、-O-、-S-、又は>SOで表される置換基を表す。)
【化20】
(一般式(3)中、Rは、それぞれ独立して、炭素数1~4のアルキレン基、又は>SOで表される基を表す。)
【0022】
上記の中でも、アルケニル置換ナジイミド化合物としては、下記式(4)で表される化合物、下記式(5)で表される化合物がより好ましい。これらは市販品を用いることもでき、例えば、式(4)で表される化合物としては、丸善石油化学社製の「BANI-M」等が挙げられる。式(5)で表される化合物としては、丸善石油化学社製の「BANI-X」等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0023】
【化21】
【0024】
【化22】
【0025】
本実施形態の樹脂組成物において、アルケニル置換ナジイミド化合物の含有量は、その官能基の一つであるアルケニル基と、マレイミド化合物のマレイミド基との官能基数の比を考慮して、適宜好適な割合とすることができるが、樹脂組成物中の樹脂を構成する成分の合計100質量部に対して10~60質量部であることが好ましく、15~50質量部であることがより好ましく、20~40質量部であることが更に好ましい。アルケニル置換ナジイミド化合物の含有量を上記範囲とすることで、無機充填材の充填時においても優れた成形性を維持できるとともに、硬化性、熱時弾性率、耐デスミア性等を一層向上させることができる。
【0026】
マレイミド化合物は、分子中に1個以上のマレイミド基を有する化合物であれば、特に限定されるものではない。その好適例としては、N-フェニルマレイミド、N-ヒドロキシフェニルマレイミド、ビス(4-マレイミドフェニル)メタン、2,2-ビス{4-(4-マレイミドフェノキシ)-フェニル}プロパン、ビス(3,5-ジメチル-4-マレイミドフェニル)メタン、ビス(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン、ビス(3,5-ジエチル-4-マレイミドフェニル)メタン、ポリテトラメチレンオキシド-ビス(4-マレイミドベンゾエート)、下記式(6)で表されるマレイミド化合物、これらマレイミド化合物のプレポリマー、若しくはマレイミド化合物とアミン化合物のプレポリマー等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0027】
【化23】
(一般式(6)中、Rは、各々独立して、水素原子又はメチル基を表し、nは1以上の整数を表す。)
【0028】
上記の式(6)中、Rは、水素原子であることが好ましい。nは、10以下であることが好ましく、7以下であることがより好ましい。また、式(6)で表されるマレイミド化合物は、1種を単独で用いることも、2種以上を組み合わせて用いてもできる。本実施形態においては、2種以上を組み合わせて用いることが好ましく、より良好な弾性率損失率を与える観点から、そのようなマレイミド化合物の混合物中に、nが2以上であるマレイミド化合物が含まれることがより好ましく、nが3以上であるマレイミド化合物が含まれることがさらに好ましい。
【0029】
上記の中でも、マレイミド化合物としては、熱時弾性率を高くできる観点から、ビス(4-マレイミドフェニル)メタン、2,2-ビス{4-(4-マレイミドフェノキシ)-フェニル}プロパン、ビス(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン、ポリテトラメチレンオキシド-ビス(4-マレイミドベンゾエート)、及び上記式(6)で表されるマレイミド化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。
【0030】
本実施形態の樹脂組成物において、マレイミド化合物の含有量は、アルケニル置換ナジイミド化合物の官能基の一つであるアルケニル基数(α)とマレイミド化合物のマレイミド基数(β)との官能基数の比(〔β/α〕)を考慮して適宜好適な割合とすることができるが、樹脂組成物中の樹脂を構成する成分の合計100質量部に対して10~70質量部であることが好ましく、15~60質量部であることがより好ましく、20~50質量部であることが更に好ましい。マレイミド化合物の含有量を上記範囲とすることで、無機充填材の充填時においても優れた成形性を維持できるとともに、硬化性、熱時弾性率、耐デスミア性等を一層向上させることができる。
【0031】
本実施形態の樹脂組成物においては、アルケニル置換ナジイミド化合物のアルケニル基数(α)とマレイミド化合物のマレイミド基数(β)の比(〔β/α〕)が、0.9~4.3であることが好ましく、1.5~4.0であることがより好ましい。この官能基の比(〔β/α〕)を上記範囲とすることで、低熱膨張、熱時弾性率、耐熱性、吸湿耐熱性、耐デスミア性、易硬化性等を一層向上させることができる。
【0032】
本実施形態の樹脂組成物は、耐デスミア性及び高熱時弾性率の観点から、シアン酸エステル化合物を更に含むことが好ましい。シアン酸エステル化合物の種類としては、特に限定されないが、例えば、下記一般式(7)で表されるナフトールアラルキル型シアン酸エステル、下記一般式(8)で表されるノボラック型シアン酸エステル、ビフェニルアラルキル型シアン酸エステル、ビス(3,3-ジメチル-4-シアナトフェニル)メタン、ビス(4-シアナトフェニル)メタン、1,3-ジシアナトベンゼン、1,4-ジシアナトベンゼン、1,3,5-トリシアナトベンゼン、1,3-ジシアナトナフタレン、1,4-ジシアナトナフタレン、1,6-ジシアナトナフタレン、1,8-ジシアナトナフタレン、2,6-ジシアナトナフタレン、2、7-ジシアナトナフタレン、1,3,6-トリシアナトナフタレン、4、4'-ジシアナトビフェニル、ビス(4-シアナトフェニル)エーテル、ビス(4-シアナトフェニル)チオエーテル、ビス(4-シアナトフェニル)スルホン、2、2-ビス(4-シアナトフェニル)プロパン等が挙げられる。
【0033】
【化24】
(一般式(7)中、Rは、各々独立して、水素原子又はメチル基を表し、nは1以上の整数を表す。)
【0034】
上記式中、Rは水素原子であることが好ましい。nの上限値は、好ましくは10以下であり、より好ましくは6以下である。
【化25】
(一般式(8)中、Rは、各々独立して、水素原子又はメチル基を表し、nは1以上の整数を表す。)
【0035】
上記式(8)中、Rは、水素原子であることが好ましい。nの上限値は、10以下であることが好ましく、7以下であることがより好ましい。
【0036】
上記の中でも、一般式(7)で表されるナフトールアラルキル型シアン酸エステル、一般式(8)で表されるノボラック型シアン酸エステル、ビフェニルアラルキル型シアン酸エステルが難燃性に優れ、硬化性が高く、かつ硬化物の熱膨張係数が低いことから、より好ましく、一般式(7)で表されるナフトールアラルキル型シアン酸エステル、一般式(8)で表されるノボラック型シアン酸エステルが更に好ましい。
【0037】
本実施形態の樹脂組成物において、シアン酸エステル化合物の含有量は、樹脂組成物中の樹脂を構成する成分の合計100質量部に対して、0.1~20質量部とすることが好ましく、1~10質量部とすることがより好ましく、1~5質量部とすることが更に好ましい。シアン酸エステル化合物の含有量を上記範囲とすることで、無機充填材の充填時においても優れた成形性を維持できるとともに、硬化性、熱時弾性率、耐デスミア性等を一層向上させることができる。
【0038】
これらのシアン酸エステル化合物の製法は、特に限定されず、シアン酸エステル合成法として現存するいかなる方法で製造してもよい。具体的に例示すると、下記一般式(9)で表されるナフトールアラルキル型フェノール樹脂とハロゲン化シアンとを不活性有機溶媒中で、塩基性化合物存在下反応させることにより得ることができる。また、同様なナフトールアラルキル型フェノール樹脂と塩基性化合物による塩とを、水を含有する溶液中にて形成させ、その後、ハロゲン化シアンと2相系界面反応を行い、合成する方法を採ることもできる。
【0039】
【化26】
【0040】
一般式(9)中、Rは各々独立に水素原子又はメチル基を表し、中でも水素原子が好ましい。
【0041】
上記式(9)中、nは1以上の整数を表す。nの上限値は、好ましくは10、より好ましくは6である。
【0042】
また、ナフトールアラルキル型シアン酸エステル化合物は、α-ナフトールあるいはβ-ナフトール等のナフトール類とp-キシリレングリコール、α,α'-ジメトキシ-p-キシレン、1,4-ジ(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ベンゼン等との反応により得られるナフトールアラルキル樹脂とシアン酸とを縮合させて得られるものから選択することができる。
【0043】
本実施形態の樹脂組成物は、無機充填材を更に含むことが好ましい。無機充填材としては、絶縁性を有するものであれば特に限定されないが、例えば、天然シリカ、溶融シリカ、アモルファスシリカ、中空シリカ等のシリカ類、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、ベーマイト、酸化モリブデン、酸化チタン、シリコーンゴム、シリコーン複合パウダー、ホウ酸亜鉛、錫酸亜鉛、クレー、カオリン、タルク、焼成クレー、焼成カオリン、焼成タルク、マイカ、ガラス短繊維(EガラスやDガラス等のガラス微粉末類)、中空ガラス、球状ガラス等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0044】
上記の中でも、シリカ、アルミナ、窒化アルミニウム、及び窒化ホウ素からなる群より選ばれる、少なくとも1種を含むことが好ましい。とりわけ、低熱膨張の観点からシリカが好ましく、高熱伝導性の観点からアルミナや窒化アルミニウム、窒化ホウ素が好ましい。
【0045】
本実施形態の樹脂組成物において、無機充填材の含有量は特に限定されないが、樹脂組成物中の樹脂を構成する成分の合計100質量部に対して、50~500質量部であることが、低熱膨張や、高熱伝導といった特性の観点から好ましく、その中でも、100~300質量部であることがより好ましく、100~250質量部であることが更に好ましい。
【0046】
本実施形態の樹脂組成物には、微粒子の分散性、樹脂と微粒子やガラスクロスの接着強度を向上させるために、無機充填材以外の成分として、シランカップリング剤や湿潤分散剤等を併用することも可能である。
【0047】
シランカップリング剤としては、一般に無機物の表面処理に使用されているシランカップリング剤であれば、特に限定されるものではない。具体例としては、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン系シランカップリング剤;γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のエポキシシラン系シランカップリング剤;γ-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のアクリルシラン系シランカップリング剤;N-β-(N-ビニルベンジルアミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩等のカチオニックシラン系シランカップリング剤;フェニルシラン系シランカップリング剤;p-スチリルトリメトキシシラン、p-スチリルトリエトキシシラン、p-スチリルメチルジメトキシシラン、p-スチリルメチルジエトキシシラン、N-(ビニルベンジル)-2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩等のスチリルシラン系カップリング剤等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0048】
湿潤分散剤としては、塗料用に使用されている分散安定剤であれば、特に限定されるものではない。例えばビッグケミー・ジャパン社製の「DISPERBYK-110」、「DISPERBYK-111」、「DISPERBYK-118」、「DISPERBYK-180」、「DISPERBYK-161」、「BYK-W996」、「BYK-W9010」、「BYK-W903」等の湿潤分散剤が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0049】
本実施形態の樹脂組成物は、本実施形態の所期の特性が損なわない範囲において、上記した成分に加え、他の樹脂を添加することも可能である。他の樹脂の種類は、絶縁性を損なわないものであれば特に限定されないが、例えば、エポキシ樹脂、ベンゾオキサジン化合物、フェノール樹脂、熱可塑性樹脂等が挙げられる。これらを適宜併用することで、金属密着性や応力緩和性等を一層向上させることができる。
【0050】
例えば、エポキシ樹脂を併用する場合、エポキシ樹脂としては、1分子中に2つ以上のエポキシ基を有する化合物であれば特に限定されないが、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジヒドロアントラセン型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、3官能フェノール型エポキシ樹脂、4官能フェノール型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、アラルキルノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ポリオール型エポキシ樹脂、イソシアヌレート環含有エポキシ樹脂、或いはこれらのハロゲン化物が挙げられる。なかでも、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂が、耐熱性、低熱膨張性の点からより好ましい。エポキシ樹脂は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0051】
エポキシ樹脂の含有量は、特に限定されないが、樹脂組成物中の樹脂を構成する成分の合計100質量部に対して、好ましくは5~50質量%であり、より好ましくは7~35質量%である。エポキシ樹脂の含有量が上記範囲内であることにより、耐熱性、硬化性がより向上する傾向にある。
【0052】
本実施形態の樹脂組成物においては、所期の特性が損なわれない範囲において、硬化促進剤を併用することも可能である。硬化促進剤の具体例としては、以下に限定されないが、イミダゾール化合物;過酸化ベンゾイル、ラウロイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、パラクロロベンゾイルパーオキサイド、ジ-tert-ブチル-ジ-パーフタレート等の有機過酸化物;アゾビスニトリル等のアゾ化合物;N,N-ジメチルベンジルアミン、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジメチルトルイジン、2-N-エチルアニリノエタノール、トリ-n-ブチルアミン、ピリジン、キノリン、N-メチルモルホリン、トリエタノールアミン、トリエチレンジアミン、テトラメチルブタンジアミン、N-メチルピペリジン等の第3級アミン類;フェノール、キシレノール、クレゾール、レゾルシン、カテコール等のフェノール類;ナフテン酸鉛、ステアリン酸鉛、ナフテン酸亜鉛、オクチル酸亜鉛、オレイン酸錫、ジブチル錫マレート、ナフテン酸マンガン、ナフテン酸コバルト、アセチルアセトン鉄等の有機金属塩;これら有機金属塩をフェノール、ビスフェノール等の水酸基含有化合物に溶解してなるもの;塩化錫、塩化亜鉛、塩化アルミニウム等の無機金属塩;ジオクチル錫オキサイド、その他のアルキル錫、アルキル錫オキサイド等の有機錫化合物等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0053】
本実施形態の樹脂組成物は、硬化促進剤としてイミダゾール化合物を含むことが好ましい。イミダゾール化合物としては、特に限定されないが、本実施形態の作用効果をより有効かつ確実に奏する観点から、下記一般式(10)で表されるイミダゾール化合物が好ましい。
【0054】
【化27】
【0055】
ここで、一般式(10)中、Arはフェニル基、ナフタレン基、ビフェニル基若しくはアントラセン基又はそれらを水酸基で変性した1価の基を示すが、その中でもフェニル基が好適である。Rは水素原子又はアルキル基若しくはそれを水酸基で変性した1価の基、あるいはアリール基を示し、上記アリール基としては、以下に限定されないが、例えば、置換若しくは無置換の、フェニル基、ナフタレン基、ビフェニル基又はアントラセン基が挙げられ、フェニル基が好ましく、Ar基及びR基の両方がフェニル基であるとより好ましい。
【0056】
イミダゾール化合物としては、以下に限定されないが、例えば、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2,4,5-トリフェニルイミダゾール、及び2-フェニル-4-メチルイミダゾールが挙げられる。これらの中でも、2,4,5-トリフェニルイミダゾール、及び2-フェニル-4-メチルイミダゾールがより好ましく、2,4,5-トリフェニルイミダゾールが特に好ましい。
【0057】
本実施形態の樹脂組成物において、イミダゾール化合物の含有量は、特に限定されないが、樹脂組成物中の樹脂を構成する成分の合計100質量部に対して、0.01~10質量部であることが好ましく、0.1~5質量部であることがより好ましい。イミダゾール化合物の含有量をこのような範囲内とすることで、硬化性と成形性に優れる樹脂組成物、プリプレグ及びレジンシート、並びにそれらを原材料とする金属箔張積層板及びプリント配線板を得ることができる。
【0058】
本実施形態の樹脂組成物は、必要に応じて溶剤を含有していてもよい。例えば、有機溶剤を用いると、樹脂組成物の調製時における粘度が下がり、ハンドリング性を向上されるとともにガラスクロスへの含浸性が高められる。溶剤の種類は、樹脂組成物中の樹脂の一部又は全部を溶解可能なものであれば、特に限定されない。その具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルセルソルブ等のケトン類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジメチルホルムアミド等のアミド類;プロピレングリコールモノメチルエーテル及びそのアセテート等が挙げられるが、これらに限定されない。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0059】
本実施形態の樹脂組成物は、常法に従って調製することができる。例えば、一般式(a)又は一般式(b)で表される化合物A、アルケニル置換ナジイミド化合物、マレイミド化合物、及び上記したその他の任意成分を均一に含有する樹脂組成物が得られる方法が好ましい。具体的には、例えば、各成分を順次溶剤に配合し、十分に攪拌することで本実施形態の樹脂組成物を容易に調製することができる。
【0060】
本実施形態の樹脂組成物の調製時において、必要に応じて有機溶剤を使用することができる。有機溶剤の種類は、樹脂組成物中の樹脂を溶解可能なものであれば、特に限定されない。その具体例は、上記したとおりである。
【0061】
なお、樹脂組成物の調製時に、各成分を均一に溶解或いは分散させるための公知の処理(攪拌、混合、混練処理等)を行うことができる。例えば、無機充填材の均一分散にあたり、適切な攪拌能力を有する攪拌機を付設した攪拌槽を用いて攪拌分散処理を行うことで、樹脂組成物に対する分散性が高められる。上記の攪拌、混合、混練処理は、例えば、ボールミル、ビーズミル等の混合を目的とした装置、又は、公転又は自転型の混合装置等の公知の装置を用いて適宜行うことができる。
【0062】
本実施形態のプリプレグは、基材と、当該基材に含浸又は塗布された本実施形態の樹脂組成物と、を備えるプリプレグである。本実施形態のプリプレグは、例えば、上記の樹脂組成物を基材と組み合わせる、具体的には、上記の樹脂組成物を基材に含浸又は塗布させることにより、得ることができる。本実施形態のプリプレグの製造方法は、常法にしたがって行うことができ、特に限定されない。例えば、上記の樹脂組成物を基材に含浸又は塗布させた後、100~200℃の乾燥機中で1~30分加熱するなどして半硬化(Bステ-ジ化)させることで、プリプレグを得る方法が挙げられる。なお、本実施形態において、プリプレグの総量に対する上記の樹脂組成物(無機充填材を含む。)の量は、特に限定されないが、30~90質量%の範囲であることが好ましい。
【0063】
本実施形態のプリプレグで使用される基材としては、特に限定されるものではなく、各種プリント配線板材料に用いられている公知のものを、目的とする用途や性能により適宜選択して使用することができる。その具体例としては、例えば、Eガラス、Dガラス、Sガラス、Qガラス、球状ガラス、NEガラス、Tガラス等のガラス繊維、クォーツ等のガラス以外の無機繊維、ポリパラフェニレンテレフタラミド(ケブラー(登録商標)、デュポン株式会社製)、コポリパラフェニレン・3,4'オキシジフェニレン・テレフタラミド(テクノーラ(登録商標)、帝人テクノプロダクツ株式会社製)等の全芳香族ポリアミド、2,6-ヒドロキシナフトエ酸・パラヒドロキシ安息香酸(ベクトラン(登録商標)、株式会社クラレ製)等のポリエステル、ポリパラフェニレンベンズオキサゾール(ザイロン(登録商標)、東洋紡績株式会社製)、ポリイミドなどの有機繊維が挙げられるが、これらに限定されない。
【0064】
これらの中でも低熱膨張性の観点から、Eガラスクロス、Tガラスクロス、Sガラスクロス、Qガラスクロス、及び有機繊維が好ましい。
【0065】
これら基材は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0066】
基材の形状としては、特に限定されないが、例えば、織布、不織布、ロービング、チョップドストランドマット、サーフェシングマットなどが挙げられる。織布の織り方としては、特に限定されないが、例えば、平織り、ななこ織り、綾織り等が知られており、これら公知のものから目的とする用途や性能により適宜選択して使用することができる。また、これらを開繊処理したものやシランカップリング剤などで表面処理したガラス織布が好適に使用される。基材の厚さや質量は、特に限定されないが、通常は0.01~0.3mm程度のものが好適に用いられる。とりわけ、強度と吸水性との観点から、基材は、厚み200μm以下、質量250g/m以下のガラス織布が好ましく、Eガラス、Sガラス、及びTガラス等のガラス繊維からなるガラス織布がより好ましい。
【0067】
本実施形態の積層板は、上述のプリプレグ及び後述するレジンシートからなる群より選ばれる少なくとも1種を1枚以上重ねてなるものであって、上述のプリプレグ及びレジンシートからなる群より選ばれる少なくとも1種に含まれる樹脂組成物の硬化物を含む。この積層板は、例えば、上記のプリプレグを1枚以上重ねて硬化して得ることができる。また、本実施形態の金属箔張積層板は、上述のプリプレグ及びレジンシートからなる群より選ばれる少なくとも1種と、上述のプリプレグ及びレジンシートからなる群より選ばれる少なくとも1種の片面又は両面に配された金属箔とを有する金属箔張積層板であって、上記プリプレグ及びレジンシートからなる群より選ばれる少なくとも1種に含まれる樹脂組成物の硬化物を含むものである。この金属箔張積層板は、例えば、上記のプリプレグと、金属箔とを積層して硬化して得ることができる。本実施形態の金属箔張積層板は、具体的には、例えば、上記のプリプレグを少なくとも1枚以上重ね、その片面若しくは両面に金属箔を配して積層成形することにより、得ることができる。より具体的には、前述のプリプレグを1枚あるいは複数枚以上を重ね、所望によりその片面若しくは両面に銅やアルミニウムなどの金属箔を配置した構成とし、これを必要に応じて積層成形することにより、金属箔張積層板を製造することができる。ここで使用する金属箔は、プリント配線板材料に用いられるものであれば、特に限定されないが、圧延銅箔や電解銅箔などの公知の銅箔が好ましい。また、金属箔の厚みは、特に限定されないが、1~70μmが好ましく、より好ましくは1.5~35μmである。金属箔張積層板の成形方法及びその成形条件についても、特に限定されず、一般的なプリント配線板用積層板及び多層板の手法及び条件を適用することができる。例えば、金属箔張積層板の成形時には多段プレス機、多段真空プレス機、連続成形機、オートクレーブ成形機などを用いることができる。また、金属箔張積層板の成形において、温度は100~300℃、圧力は面圧2~100kgf/cm、加熱時間は0.05~5時間の範囲が一般的である。さらに、必要に応じて、150~300℃の温度で後硬化を行うこともできる。また、上記のプリプレグと、別途作成した内層用の配線板とを組み合わせて積層成形することにより、多層板とすることも可能である。
【0068】
本実施形態の金属箔張積層板は、所定の配線パターンを形成することにより、プリント配線板として好適に用いることができる。また、本実施形態の金属箔張積層板は、低い熱膨張率、良好な成形性、金属箔ピール強度及び耐薬品性(特に耐デスミア性)を有し、そのような性能が要求される半導体パッケージ用プリント配線板として、殊に有効に用いることができる。
【0069】
本実施形態のレジンシートは、支持体と、当該支持体に塗布された上記樹脂組成物と、を備える。すなわち、上記の樹脂組成物は当該支持体の片面又は両面に積層されたものである。ここで、レジンシートとは、薄葉化の1つの手段として用いられるもので、例えば、金属箔やフィルムなどの支持体に、直接、プリプレグ等に用いられる熱硬化性樹脂(無機充填材を含む)を塗布及び乾燥して製造することができる。
【0070】
本実施形態のレジンシートを製造する際において使用される支持体は、特に限定されないが、各種プリント配線板材料に用いられている公知のものを使用することができる。例えばポリイミドフィルム、ポリアミドフィルム、ポリエステルフィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリブチレンテレフタレート(PBT)フィルム、ポリプロピレン(PP)フィルム、ポリエチレン(PE)フィルム、アルミ箔、銅箔、金箔など挙げられる。その中でも電解銅箔、PETフィルムが好ましい。
【0071】
本実施形態のレジンシートは、特に、上記した樹脂組成物を支持体に塗布後、半硬化(Bステージ化)させたものであることが好ましい。本実施形態のレジンシートの製造方法は一般にBステージ樹脂及び支持体の複合体を製造する方法が好ましい。具体的には、例えば、上記樹脂組成物を銅箔などの支持体に塗布した後、100~200℃の乾燥機中で、1~60分加熱させる方法などにより半硬化させ、レジンシートを製造する方法などが挙げられる。支持体に対する樹脂組成物の付着量は、レジンシートの樹脂厚で1~300μmの範囲が好ましい。
【0072】
本実施形態のレジンシートは、プリント配線板のビルドアップ材料として使用可能である。
【0073】
本実施形態の積層板は、例えば、上記のレジンシートを1枚以上重ねて硬化して得ることができる。また、本実施形態の金属箔張積層板は、例えば、上記のレジンシートと、金属箔とを積層して硬化して得ることができる。本実施形態の金属箔張積層板は、具体的には、例えば、上記のレジンシートを用いて、その片面もしくは両面に金属箔を配置して積層形成することにより、得ることができる。より具体的には、例えば、前述のレジンシートを1枚あるいは所望によりその支持体を剥離したものを複数枚重ね、その片面もしくは両面に銅やアルミニウムなどの金属箔を配置した構成とし、これを必要に応じて積層成形することにより、金属箔張積層板を製造することができる。ここで使用する金属箔は、プリント配線板材料に用いられるものであれば、特に限定されないが、圧延銅箔や電解銅箔などの公知の銅箔が好ましい。金属箔張積層板の成形方法及びその成形条件についても、特に限定されず、一般的なプリント配線板用積層板及び多層板の手法及び条件を適用することができる。例えば、金属箔張積層板の成形時には多段プレス機、多段真空プレス機、連続成形機、オートクレーブ成形機などを用いることができる。また、金属箔張積層板の成形時において、温度は100~300℃、圧力は面圧2~100kgf/cm、加熱時間は0.05~5時間の範囲が一般的である。さらに、必要に応じて、150~300℃の温度で後硬化を行うこともできる。
【0074】
本実施形態の積層板は、レジンシートとプリプレグとを各々1枚以上重ねて硬化して得られる積層板であってもよく、レジンシートとプリプレグと金属箔とを積層して硬化して得られる金属箔張積層板であってもよい。
【0075】
本実施形態において、回路となる導体層を形成しプリント配線板を作製する際、金属箔張積層板の形態をとらない場合、無電解めっきの手法を用いることもできる。
【0076】
本実施形態のプリント配線板は、絶縁層と、この絶縁層の表面に形成された導体層とを含むプリント配線板であって、この絶縁層が、上記の樹脂組成物を含む。
【0077】
本実施形態のプリント配線板は、例えば、絶縁層に金属箔や無電解めっきによって回路となる導体層が形成されて作成される。導体層は一般的に銅やアルミニウムから構成される。導体層が形成されたプリント配線板用絶縁層は、所定の配線パターンを形成することにより、プリント配線板に好適に用いることができる。また、本実施形態のプリント配線板は、絶縁層が上記の樹脂組成物を含むことにより半導体実装時のリフロー温度下においても優れた弾性率を維持することで、半導体プラスチックパッケージの反りを効果的に抑制し、金属箔ピール強度及び耐デスミア性に優れることから、半導体パッケージ用プリント配線板として、殊に有効に用いることができる。
【0078】
本実施形態のプリント配線板は、具体的には、例えば、以下の方法により製造することができる。まず、上記の金属箔張積層板(銅張積層板等)を用意する。金属箔張積層板の表面にエッチング処理を施して内層回路の形成を行い、内層基板を作成する。この内層基板の内層回路表面に、必要に応じて接着強度を高めるための表面処理を行い、次いでその内層回路表面に上記のプリプレグを所要枚数重ね、更にその外側に外層回路用の金属箔を積層し、加熱加圧して一体成形する。このようにして、内層回路と外層回路用の金属箔との間に、基材及び熱硬化性樹脂組成物の硬化物からなる絶縁層が形成された多層の積層板が製造される。次いで、この多層の積層板にスルーホールやバイアホール用の穴あけ加工を施した後、硬化物層に含まれている樹脂成分に由来する樹脂の残渣であるスミアを除去するためデスミア処理が行われる。その後この穴の壁面に内層回路と外層回路用の金属箔とを導通させるめっき金属皮膜を形成し、更に外層回路用の金属箔にエッチング処理を施して外層回路を形成し、プリント配線板が製造される。
【0079】
本実施形態のプリント配線板において、例えば、上記のプリプレグ(基材及びこれに添着された上記の樹脂組成物)、上記のレジンシート、金属箔張積層板の樹脂組成物層(上記の樹脂組成物からなる層)が、上記の樹脂組成物を含む絶縁層を構成することになる。
【0080】
本実施形態のプリント配線板において、絶縁層は、25℃における曲げ弾性率と250℃における熱時曲げ弾性率との差が20%以下であることが好ましく、0~20%であることがより好ましく、0~15%であることがさらに好ましい。絶縁層は、25℃における曲げ弾性率と250℃における熱時曲げ弾性率との差が上記した範囲内であると、弾性率維持率が良好となる。ここで、弾性率維持率とは、25℃における曲げ弾性率に対する250℃における曲げ弾性率の割合をいう。
【0081】
本実施形態において、絶縁層の25℃の曲げ弾性率と250℃の熱時曲げ弾性率との差を20%以内とするための手法は、特に限定されないが、例えば、絶縁層に用いられる樹脂組成物の各成分の種類及び含有量を上記した範囲に適宜調整する手法が挙げられる。
【実施例
【0082】
以下の実施例及び比較例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。
【0083】
(合成例1)
温度計、攪拌器、滴下漏斗及び還流冷却器を取りつけた反応器を予めブラインにより0~5℃に冷却しておき、そこへ塩化シアン7.47g(0.122mol)、35%塩酸9.75g(0.0935mol)、水76mL、及び塩化メチレン44mLを仕込んだ。
【0084】
この反応器内の温度を-5~+5℃、pHを1以下に保ちながら、撹拌下、上記した式(9)におけるRがすべて水素原子であるα-ナフトールアラルキル型フェノール樹脂(SN485、OH基当量:214g/eq.軟化点:86℃、新日鐵化学社製)20g(0.0935mol)、及びトリエチルアミン14.16g(0.14mol)を塩化メチレン92mLに溶解した溶液を滴下漏斗により1時間かけて滴下し、滴下終了後、更にトリエチルアミン4.72g(0.047mol)を15分間かけて滴下した。
【0085】
滴下終了後、同温度で15分間撹拌後、反応液を分液し、有機層を分取した。得られた有機層を水100mLで2回洗浄した後、エバポレータにより減圧下で塩化メチレンを留去し、最終的に80℃で1時間濃縮乾固させて、α-ナフトールアラルキル型フェノール樹脂のシアン酸エステル化物(上記した一般式(7)におけるRがすべて水素原子である、α-ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂)23.5gを得た。
【0086】
(実施例1)
合成例1で得られたα-ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂)5質量部、ノボラック型マレイミド化合物(大和化成工業社製、「BMI-2300」、マレイミド官能当量186g/eq.)45.5質量部、ビスアリルナジイミド(丸善石油化学社製、「BANI-M」、アルケニル官能基当量286g/eq.)24.5質量部、4,4-ビス(オルソ‐プロペニルフェノキシ)ベンゾフェノン(エボニック社製、「Compimide TM-123」)15質量部、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(日本化薬社製、「NC-3000H」)10質量部、シリカ1(電気化学工業社製、「FB-3SDC」)80質量部、シリカ2(アドマテックス社製、「SC-5500SQ」、120質量部、エポキシシラン系シランカップリング剤(信越化学工業株式会社製、「KBM-403」2.5質量部、スチリルシラン系シランカップリング剤(信越化学工業社製、「KBM-1403」)2.5質量部湿潤分散剤1(ビックケミー・ジャパン社製、「DISPERBYK-111」)0.5質量部、湿潤分散剤2(ビックケミー・ジャパン社製、「DISPERBYK-161」)1質量部、湿潤分散剤3(ビックケミー・ジャパン社製、「DISPERBYK-2009」)0.3質量部、表面調整剤(ビックケミー・ジャパン社製、「BYK-310」)0.05質量部、トリフェニルイミダゾール(東京化成工業社製、硬化促進剤)0.5質量部、を混合し、メチルエチルケトンで希釈することでワニスを得た。このワニスを厚さ0.1mmのSガラス織布に含浸塗工し、160℃で3分間加熱乾燥して、樹脂組成物含有量44.5質量%のプリプレグを得た。この時アルケニル置換ナジイミド(α)のアルケニル基数とマレイミド化合物(β)のマレイミド基数の比で表される〔β/α〕は、2.1となった。また、〔β/α〕は、下記計算式で表される。
〔β/α〕=((β)の質量部数/(β)の官能基当量)/((α)の質量部数/(α)の官能基当量)
【0087】
(実施例2)
合成例1で得られたα-ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂5質量部、ノボラック型マレイミド化合物(大和化成工業社製、「BMI-2300」)43.2質量部、ビスアリルナジイミド(丸善石油化学社製、「BANI-M」)31.8質量部、4,4-ビス(オルソ‐プロペニルフェノキシ)ベンゾフェノン(エボニック社製、「Compimide TM-123」)10質量部、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(日本化薬社製、「NC-3000H」)10質量部、シリカ1(電気化学工業社製、「FB-3SDC」)80質量部、シリカ2(アドマテックス社製、「SC-5500SQ」)120質量部、エポキシシラン系シランカップリング剤(信越化学工業社製、「KBM-403」2.5質量部、スチリルシラン系シランカップリング剤(信越化学工業社製、「KBM-1403」)2.5質量部、湿潤分散剤1(ビックケミー・ジャパン社製、「DISPERBYK-111」)0.5質量部、湿潤分散剤2(ビックケミー・ジャパン社製、「DISPERBYK-161」)1質量部、湿潤分散剤3(ビックケミー・ジャパン社製、「DISPERBYK-2009」)0.3質量部、表面調整剤(ビックケミー・ジャパン社製、「BYK-310」)0.05質量部、トリフェニルイミダゾール(東京化成工業社製、硬化促進剤)0.5質量部を混合し、メチルエチルケトンで希釈することで、ワニスを得た。このワニスを厚さ0.1mmのSガラス織布に含浸塗工し、160℃で3分間加熱乾燥して、樹脂組成物含有量44.5質量%のプリプレグを得た(β/α=2.1)。
【0088】
(実施例3)
合成例1で得られたα-ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂5質量部、ノボラック型マレイミド化合物(大和化成工業社製、「BMI-2300」)43.2質量部、ビスアリルナジイミド(丸善石油化学社製、「BANI-M」)31.8質量部、スチルベン(東京化成工業社製)10質量部、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(日本化薬社製、「NC-3000H」)10質量部、シリカ1(電気化学工業社製、「FB-3SDC」)80質量部、シリカ2(アドマテックス社製、「SC-5500SQ」)120質量部、エポキシシラン系シランカップリング剤(信越化学工業社製、「KBM-403」2.5質量部、スチリルシラン系シランカップリング剤(信越化学工業社製、「KBM-1403」)2.5質量部、湿潤分散剤1(ビックケミー・ジャパン社製、「DISPERBYK-111」)0.5質量部、湿潤分散剤2(ビックケミー・ジャパン社製、「DISPERBYK-161」)1質量部、湿潤分散剤3(ビックケミー・ジャパン社製、「DISPERBYK-2009」)0.3質量部、表面調整剤(ビックケミー・ジャパン社製、「BYK-310」)0.05質量部、トリフェニルイミダゾール(東京化成工業社製、硬化促進剤)0.5質量部を混合し、メチルエチルケトンで希釈することで、ワニスを得た。このワニスを厚さ0.1mmのSガラス織布に含浸塗工し、160℃で3分間加熱乾燥して、樹脂組成物含有量44.5質量%のプリプレグを得た(β/α=2.1)。
【0089】
(実施例4)
合成例1で得られたα-ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂5質量部、ビスマレイミド化合物(大和化成工業社製、「BMI-70」)46質量部、ビスアリルナジイミド(丸善石油化学社製、「BANI-M」)29質量部、4,4-ビス(オルソ‐プロペニルフェノキシ)ベンゾフェノン(エボニック社製、「Compimide TM-123」)10質量部、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(日本化薬社製、「NC-3000H」)10質量部、シリカ1(電気化学工業社製、「FB-3SDC」)80質量部、シリカ2(アドマテックス社製、「SC-5500SQ」)120質量部、エポキシシラン系シランカップリング剤(信越化学工業社製、「KBM-403」2.5質量部、スチリルシラン系シランカップリング剤(信越化学工業社製、「KBM-1403」)2.5質量部、湿潤分散剤1(ビックケミー・ジャパン社製、「DISPERBYK-111」)0.5質量部、湿潤分散剤2(ビックケミー・ジャパン社製、「DISPERBYK-161」)1質量部、湿潤分散剤3(ビックケミー・ジャパン社製、「DISPERBYK-2009」)0.3質量部、表面調整剤(ビックケミー・ジャパン社製、「BYK-310」)0.05質量部、トリフェニルイミダゾール(東京化成工業社製、硬化促進剤)0.5質量部を混合し、メチルエチルケトンで希釈することで、ワニスを得た。このワニスを厚さ0.1mmのSガラス織布に含浸塗工し、160℃で3分間加熱乾燥して、樹脂組成物含有量44.5質量%のプリプレグを得た(β/α=2.1)。
【0090】
(比較例1)
合成例1で得られたα-ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂5質量部、ノボラック型マレイミド化合物(大和化成工業社製、「BMI-2300」)49質量部、ビスアリルナジイミド(丸善石油化学社製、「BANI-M」)36質量部、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(日本化薬社製、「NC-3000H」)10質量部、シリカ1(電気化学工業社製、「FB-3SDC」)80質量部、シリカ2(アドマテックス社製、「SC-5500SQ」)120質量部、エポキシシラン系シランカップリング剤(信越化学工業社製、「KBM-403」2.5質量部、スチリルシラン系シランカップリング剤(信越化学工業社製、「KBM-1403」)2.5質量部、湿潤分散剤1(ビックケミー・ジャパン社製、「DISPERBYK-111」)0.5質量部、湿潤分散剤2(ビックケミー・ジャパン社製、「DISPERBYK-161」)1質量部、湿潤分散剤3(ビックケミー・ジャパン社製、「DISPERBYK-2009」)0.3質量部、表面調整剤(ビックケミー・ジャパン社製、「BYK-310」)0.05質量部、トリフェニルイミダゾール(東京化成工業社製、硬化促進剤)0.5質量部を混合し、メチルエチルケトンで希釈することで、ワニスを得た。このワニスを厚さ0.1mmのSガラス織布に含浸塗工し、160℃で3分間加熱乾燥して、樹脂組成物含有量44.5質量%のプリプレグを得た(β/α=2.1)。
【0091】
(プリプレグ最低溶融粘度の測定)
各実施例及び比較例で得られたプリプレグから樹脂粉1gをサンプルとして採取し、レオメータ(TAインスツルメンツ社製、「ARES-G2」)により、最低溶融粘度を測定した。ここで、プレート径25mmのディスポーサブルプレートを使用し、昇温速度2℃/分で40℃から210℃まで昇温させ、周波数10.0rad/秒、歪0.1%の条件下で、最低溶融粘度を測定した。
【0092】
(金属箔積層板の作製)
各実施例及び比較例で得られたプリプレグを、それぞれ1枚又は4枚重ねて、12μm厚の電解銅箔(三井金属鉱業社製、「3EC-III」)を上下に配置し、圧力30kgf/cm、温度220℃で120分間の積層成形を行い、絶縁層厚さ0.1mm又は0.4mmの銅張積層板をそれぞれ得た。得られた銅張積層板を用いて、耐デスミア性の評価を行った。
【0093】
(耐デスミア性の評価)
デスミア工程での耐薬品性を評価するため、銅張積層板の銅箔をエッチングにより除去したのちに、膨潤液(アトテックジャパン社製、「スウェリングディップセキュリガントP」)に80℃で10分間浸漬し、次に粗化液(アトテックジャパン社製、「コンセントレートコンパクトCP」)に80℃で5分間浸漬、最後に中和液(アトテックジャパン社製、「リダクションコンディショナーセキュリガントP500」)に45℃で10分間浸漬し、処理の前後の質量減少量(質量%)を求めた。この実験を3回行い、3回の質量減少率の算術平均を評価値とした。
【0094】
(弾性率損失率の評価)
銅張積層板の銅箔をエッチングにより除去したのち、50mm×25mm×8mmの大きさにカットし、JIS規格C6481に準じて、オートグラフ((株)島津製作所製AG-Xplus)にて、それぞれ25℃、250℃で測定を実施し、曲げ弾性率を測定した。
上記手法によって測定された25℃の曲げ弾性率の値(a)と250℃の弾性率の弾性率の値(b)から、下記式によって弾性率損失率を算出した。
弾性率損失率=[{(a)-(b)}/(a)]×100
弾性率損失率の値が小さいほど良好であるものとして評価した。
【0095】
各実施例及び比較例の評価結果を、表1に示す。
【0096】
【表1】
【0097】
以上より、各実施例は、溶融粘度が低く、樹脂フロー性に優れているため成形性に優れていること、及び、耐デスミア性に優れていることが少なくとも確認された。さらに、ノボラック型マレイミド(ポリマレイミド)に該当するBMI-2300を用いた実施例1~3は、ビスマレイミドに該当するBMI-70を用いた実施例4に比べ、特に良好な弾性率損失率を示した。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明に係る樹脂組成物、プリプレグ、レジンシート、積層板、金属箔張積層板、プリント配線板用絶縁層、及びプリント配線板は、パーソナルコンピュータをはじめとする種々の電子機器や通信機の部材として好適に用いることができる。