(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】光波長変換部材及び光波長変換装置
(51)【国際特許分類】
G02B 5/20 20060101AFI20221206BHJP
C09K 11/08 20060101ALI20221206BHJP
C09K 11/80 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
G02B5/20
C09K11/08 G
C09K11/80
(21)【出願番号】P 2018047695
(22)【出願日】2018-03-15
【審査請求日】2021-02-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】志村 祐紀
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼久 翔平
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 経之
(72)【発明者】
【氏名】勝 祐介
(72)【発明者】
【氏名】光岡 健
【審査官】横川 美穂
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-227481(JP,A)
【文献】特開2016-138034(JP,A)
【文献】特表2008-533270(JP,A)
【文献】特開2012-062459(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0153825(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/20
C09K 11/08
C09K 11/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射した光の波長を変換する光波長変換部材であって、
化学式(Al,Ga)
2O
3で表される第1結晶粒子と、化学式(Y
1-xLu
x)
3(Al,Ga)
5O
12:Ce(0<x<1)で表される第2結晶粒子とを主成分とする多結晶体で構成され、
前記第2結晶粒子のAlの原子数に対するGaの原子数の比は、前記第1結晶粒子のAlの原子数に対するGaの原子数の比よりも高
く、
前記第1結晶粒子のAlの原子数に対するGaの原子数の比は、0.02以上0.25以下であり、
前記第2結晶粒子のAlの原子数に対するGaの原子数の比は、0.04以上0.5以下である、光波長変換部材。
【請求項2】
前記多結晶体は、前記第2結晶粒子を3体積%以上70体積%以下含み、
前記第2結晶粒子の(Y
1-xLu
x)の原子数に対するCeの原子数の比は、0超0.03以下である、請求項
1に記載の光波長変換部材。
【請求項3】
請求項1
又は請求項2に記載の光波長変換部材を備える、光波長変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光波長変換部材及び光波長変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘッドランプ、各種照明機器、レーザープロジェクター等では、発光ダイオード(LED、Light Emitting Diode)や、半導体レーザー(LD、Laser Diode)等の青色光を光波長変換部材である蛍光体によって波長変換することにより、各機器に適した色の光を得ている。特にプロジェクター等の光学機器においては、3原色(つまりRGB)のうち、緑色光を効率よく得るために、緑色蛍光体を用いることが有効である。
【0003】
一方、蛍光体としては、樹脂系やガラス系などが知られているが、レーザーを用いた光源の高出力化に対応するため、耐久性に優れたセラミックス蛍光体が光波長変換装置に使用されつつある。
【0004】
緑色に対応したセラミックス蛍光体として、Lu3Al5O12:Ce(すなわちLuAG:Ce)に代表されるガーネット構造(A3B5O12)の成分にCeが賦活された緑色蛍光体が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記公報に開示される技術では、Al2O3にLuAG:Ceを複合化し、これらの相を適切な体積割合とすることで、セラミックス蛍光体の発光強度や寿命等の特性を向上させている。
【0007】
しかし、LuAG:Ce蛍光体の発光波長域(いわゆるスペクトル)は、緑色から黄色の広範囲にわたるため、所定の色の光を効率よく取り出すには、発光波長域の調整が必要となる。上記公報では、Ce濃度を変化させることで発光ピーク波長を変化させているが、Ce濃度を変化させると発光スペクトルの概形が変化してしまうため、効率よく緑色を取り出すことができない。また、Ce濃度を増加させると、濃度消光が生じることで蛍光特性が悪化する。
【0008】
また、Al2O3相はLuAG:Ce相との屈折率差が大きいため、光の散乱が大きくなる。そのため、上記公報のセラミックス蛍光体では、光を効率よく取り出すことができない。
【0009】
本開示の一局面は、所定の色の光を効率よく取り出すことができる光波長変換部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の一態様は、入射した光の波長を変換する光波長変換部材である。光波長変換部材は、化学式(Al,Ga)2O3で表される第1結晶粒子と、化学式(Y1-xLux)3(Al,Ga)5O12:Ce(0≦x≦1)で表される第2結晶粒子とを主成分とする多結晶体で構成される。第2結晶粒子のAlの原子数に対するGaの原子数の比は、第1結晶粒子のAlの原子数に対するGaの原子数の比よりも高い。
【0011】
このような構成によれば、第2結晶粒子のY量及びGaの添加量を調整することで、緑色光を効率よく取り出すのに適した発光スペクトルを得ることができる。さらに、第1結晶粒子にGaが添加されることで、第2結晶粒子との屈折率差が小さくなる。その結果、所定の色の光を効率よく取り出すことができる。
【0012】
また、第2結晶粒子のAlの原子数に対するGaの原子数の比が第1結晶粒子のAlの原子数に対するGaの原子数の比よりも高いことで、第1結晶粒子と第2結晶粒子との屈折率差が適度に小さくなり、適度な光散乱と良好な光の取り出し効率とが実現される。さらに、熱伝導性に優れる第1結晶粒子によって放熱性が向上するので、光源の高出力化に対応することができる。
【0013】
本開示の一態様では、第1結晶粒子のAlの原子数に対するGaの原子数の比は、0超0.25以下であってもよい。第2結晶粒子のAlの原子数に対するGaの原子数の比は、0超0.5以下であってもよい。このような構成によれば、蛍光強度を維持しつつ、光の取り出し効率を高めることができる。
【0014】
本開示の一態様では、多結晶体は、第2結晶粒子を3体積%以上70体積%以下含んでもよい。第2結晶粒子の(Y1-xLux)の原子数に対するCeの原子数の比は、0超0.03以下であってもよい。このような構成によれば、蛍光強度を維持しつつ、光波長変換部材の放熱性を高めることができる。
【0015】
本開示の別の態様は、当該光波長変換部材を備える光波長変換装置である。
このような構成によれば、所定の色の光を効率よく取り出せる光波長変換装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施形態の光波長変換装置の模式的な断面図である。
【
図2】実施形態の光波長変換装置を備えた光複合装置の模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本開示が適用された実施形態について、図面を用いて説明する。
[1.第1実施形態]
[1-1.構成]
図1に示す光波長変換装置10は、光波長変換部材1と、反射膜2と、反射防止膜3と、中間膜4と、放熱部材5と、接合部6とを備える。光波長変換装置10は、例えば、ヘッドランプ、照明、プロジェクター等の各種光学機器に使用される。
【0018】
<光波長変換部材>
光波長変換部材1は、入射した光の波長を変換する部材である。光波長変換部材1は、セラミックス焼結体である。
【0019】
具体的には、光波長変換部材1は、化学式(1)(Al,Ga)2O3で表される第1結晶粒子と、化学式(2)(Y1-xLux)3(Al,Ga)5O12:Ce(0≦x≦1)で表される第2結晶粒子とを主成分とする多結晶体で構成される。
【0020】
第1結晶粒子は、透光性を有する透光相を構成し、第2結晶粒子は、蛍光性を有する蛍光相を構成している。ここで、「主成分」とは、80体積%以上、好ましくは90体積%以上含まれる成分を意味する。つまり、上記多結晶体は、第1結晶粒子及び第2結晶粒子を合計で80体積%以上、好ましくは90体積%以上含んでいる。上記多結晶体を構成する結晶粒子の粒界には、不可避不純物が含まれていてもよい。
【0021】
ここで、化学式(2)の「(Y1-xLux)3(Al,Ga)5O12:Ce」とは、(Y1-xLux)3(Al,Ga)5O12中にCeが固溶し、(Y1-xLux)の一部がCeに置換された結晶を示す。第2結晶粒子は、ガーネット構造の一種である。第2結晶粒子は、Ceの固溶により、蛍光特性を示す。
【0022】
なお、化学式(2)におけるxが0の場合、つまり第2結晶粒子にLuが含まれない場合は、発光スペクトルの黄色成分が多くなるため、所定の色として緑色を効率よく取り出す場合には、第2結晶粒子にLuが含まれていた方が好ましい。そのため、xを0より大きくする(つまり0<x≦1とする)ことにより、効率よく緑色光を取り出すことができる。
【0023】
第1結晶粒子にGaが添加されることで、屈折率が小さくなり、効率よく光を取り出すことができる。
【0024】
一方、第2結晶粒子において、Yの量と共にGaの添加量が調整されることで、蛍光相の発光スペクトルを、緑色光を効率よく得るのに適した発光スペクトルに変化させることができる。
【0025】
第1結晶粒子のAlの原子数に対するGaの原子数の比(以下、「第1原子数比」ともいう。)としては、0超0.25以下が好ましく、0超0.1以下がより好ましい。第1原子数比が大きすぎると、光の直線透過性が高くなり、光の取り出し効率が低下するおそれがある。
【0026】
第2結晶粒子のAlの原子数に対するGaの原子数の比(以下、「第2原子数比」ともいう。)としては、0超0.5以下が好ましく、0超0.2以下がより好ましい。第2原子数比が大きすぎると、高出力領域において蛍光体が高温となり、蛍光体が発する光の強度(すなわち、発光強度又は蛍光強度)等の蛍光機能が低下する温度消光が発生するおそれがある。
【0027】
また、第2原子数比は、第1原子数比よりも高い。第2原子数比が第1原子数比よりも高いことで、透光相と蛍光相との間における屈折率の差を適度に小さくできるため、適度に光を散乱させつつ、光の取り出し効率を高めることができる。逆に、第2原子数比が第1原子数比よりも低いと、光の直線透過率が高くなり、光の取り出し効率が低下する。
【0028】
上記多結晶体は、第2結晶粒子を3体積%以上70体積%以下含むとよい。つまり、第2結晶粒子の含有率としては、第1結晶粒子と、第2結晶粒子と、上記多結晶体に含まれる第1結晶粒子及び第2結晶粒子以外の成分との合計体積に対し、3体積%以上70体積%以下が好ましい。
【0029】
第2結晶粒子の含有率が小さすぎると、蛍光相の割合が低下するため、蛍光強度が不十分となるおそれがある。逆に、第2結晶粒子の含有率が大きすぎると、上記多結晶体の熱伝導率が低下して放熱性が低下するため、温度消光が発生し、蛍光強度が低下するおそれがある。
【0030】
第2結晶粒子の(Y1-xLux)の原子数に対するCeの原子数の比(以下、「第3原子数比」ともいう。)としては、0超0.03以下が好ましい。第3原子数比が大きすぎると、濃度消光が発生し、蛍光強度が低下するおそれがある。なお、Ceが含まれない第2結晶粒子は発光せず、蛍光相として機能しない。
【0031】
上記多結晶体は板状に構成されている。上記多結晶体の平均厚み(つまり、光波長変換部材1の入射面から出射面までの平均距離)は、特に限定されないが、例えば100μm以上500μm以下とすることができる。
【0032】
(反射膜)
反射膜2は、光波長変換部材1の下面(つまり、放熱部材5側の表面)に配置されている。
【0033】
反射膜2は、光波長変換部材1内部で発生する光を反射することで、この光を光波長変換部材1の外部に効率よく放射させる。これにより、光波長変換部材1の発光強度が向上する。
【0034】
反射膜2の材質としては、例えば、金属アルミニウム、銀などの金属に加え、酸化ニオブ、酸化チタン、酸化ランタン、酸化タンタル、酸化イットリウム、酸化ガドリニウム、酸化タングステン、酸化ハフニウム、酸化アルミニウム、窒化ケイ素等が採用できる。
【0035】
反射膜2の平均厚みは、特に限定されないが、例えば0.1μm以上2μm以下とすることができる。
また、反射膜2は、単層構造であってもよいし、多層構造であってもよい。
【0036】
(反射防止膜)
反射防止膜3は、光波長変換部材1の上面(つまり、放熱部材5とは反対側の表面)に配置されている。
【0037】
反射防止膜3は、光波長変換部材1での光の反射を抑制するための反射防止コーティング(ARコーティング)である。反射防止膜3により、光波長変換部材1に光を効率よく吸収させることができる。また、光波長変換部材1の内部で発生する光を効率よく外部に取り出すことができる。その結果、光波長変換部材1の発光強度が向上する。
【0038】
反射防止膜3の材質としては、例えば、酸化ニオブ、酸化チタン、酸化タンタル、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、フッ化マグネシウム等が採用できる。
【0039】
反射防止膜3の平均厚みは、特に限定されないが、例えば0.01μm以上1μm以下とすることができる。
また、反射防止膜3は、単層構造であってもよいし、多層構造であってもよい。
【0040】
(中間膜)
中間膜4は、反射膜2の下面(つまり、光波長変換部材1側とは反対側の表面)に配置されている。中間膜4は、反射膜2と後述する接合部6との間に配置されている。
【0041】
中間膜4は、金属膜と酸化物膜とを有する。金属膜の材質としては、例えば、金、銀、ニッケル等が採用できる。酸化物膜の材質としては、例えば、酸化アルミニウム、酸化チタン等が採用できる。
【0042】
中間膜4は、金属膜としてのニッケル膜と酸化物膜としての酸化アルミニウム膜とを有することが好ましい。
中間膜4の平均厚みは、特に限定されないが、例えば0.01μm以上1μm以下とすることができる。
【0043】
<放熱部材>
放熱部材5は、光波長変換部材1よりも放熱性に優れた部材である。放熱部材5は、接合部6を介して光波長変換部材1等に取り付けられている。
【0044】
放熱部材5により、光波長変換部材1においてレーザー光の照射によって生じた熱の外部への排熱が促進される。これにより、高出力域での光波長変換部材1の蛍光機能が維持される。
【0045】
放熱部材5の材質としては、銅、アルミニウム、窒化アルミニウム等が採用できる。これらの中でも銅が好ましい。なお、放熱部材5は、金属で構成された本体部と、本体部の表面に形成された酸化被膜とを有していてもよい。この酸化被膜により、接合部6との接合強度が高められる。
【0046】
放熱部材5は、例えば板状に構成される。また、放熱部材5は、板状部と、板状部から突出する少なくとも1つの放熱フィンとを有していてもよい。放熱部材5の板状部の平均厚みは、特に限定されないが、例えば0.1mm以上5mm以下とすることができる。
【0047】
放熱フィンと板状部との接合方法としては、摩擦撹拌接合(FSW)を用いるとよい。FSWは、被接合材を一体化させる接合法であり、接合界面での熱抵抗の上昇を抑えられる。そのため、放熱効果の低減が抑制できる。
【0048】
<接合部>
接合部6は、光波長変換部材1と放熱部材5とを接合している。接合部6は、光波長変換部材1の中間膜4の下面と、放熱部材5の上面(つまり、光波長変換部材1側の表面)との間に配置され、これら2つの面を接合している。
【0049】
接合部6の材質は、特に限定されないが、例えば、はんだや、金、銀、銅、又はこれらの金属の組み合わせ等とすることができる。
接合部6のうち、光波長変換部材1と放熱部材5との間に配置された接合領域の平均厚みは、特に限定されないが、例えば1μm以上とすることができる。
【0050】
<光複合装置>
図2に示す光複合装置20は、光波長変換装置10と、光波長変換装置10が収容されたパッケージ7とを備える。
【0051】
パッケージ7は、箱状の容器、又は板状の基板である。パッケージ7は、例えば、アルミナ等のセラミックスを80質量%以上含んでいる。パッケージ7には、LED、LD等の発光素子を搭載する発光素子搭載領域が設けられていてもよい。
【0052】
[1-2.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1a)第2結晶粒子のY量及びGaの添加量を調整することで、緑色光を効率よく取り出すのに適した発光スペクトルを得ることができる。さらに、第1結晶粒子にGaが添加されることで、第2結晶粒子との屈折率差が小さくなる。その結果、所定の色の光を効率よく取り出すことができる。
【0053】
(1b)第2結晶粒子のAlの原子数に対するGaの原子数の比が第1結晶粒子のAlの原子数に対するGaの原子数の比よりも高いことで、第1結晶粒子と第2結晶粒子との屈折率差が適度に小さくなり、適度な光散乱と良好な光の取り出し効率とが実現される。さらに、熱伝導性に優れる第1結晶粒子によって放熱性が向上するので、光源の高出力化に対応することができる。
【0054】
[2.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0055】
(2a)上記実施形態の光波長変換装置10は、必ずしも反射膜2、反射防止膜3及び中間膜4を備えなくてもよい。
また、光波長変換装置10は、光波長変換部材1、反射膜2、反射防止膜3、及び中間膜4以外の膜又は層を有してもよい。例えば、光波長変換装置10は、中間膜4と接合部6との間に配置される補助接合層を有してもよい。この補助接合層は、中間膜4と接合部6との接合強度を向上させる目的で設けられ、例えば金属で形成される。
【0056】
(2b)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【0057】
[3.実施例]
以下に、本開示の効果を確認するために行った試験の内容とその評価とについて説明する。
【0058】
<実施例1>
(多結晶体の作製)
表1に示すNo.1~8の組成の多結晶体が得られるように、Al2O3(平均粒径0.2μm)、Y2O3(平均粒径1.2μm)、Lu2O3(平均粒径4.1μm)、Ga2O3(平均粒径0.9μm)、及びCeO2(平均粒径1.5μm)の粒子を、(Y1-xLux)3(Al,Ga)5O12:Ce量が焼結体全体の30体積%になるように秤量した。
【0059】
秤量した粒子をエタノールと共にボールミル中に投入し、16時間粉砕混合を行った。得られたスラリーを噴霧乾燥器(つまりスプレードライ)にかけ、造粒粉を作製した。得られた粉末をプレス成形し、大気雰囲気中、1600℃で10時間保持して焼成した。得られた多結晶体はいずれも相対密度が99%以上で十分に緻密化されていた。なお、No.8は比較例である。
【0060】
(結晶粒子内のAl及びGaの濃度測定)
得られた多結晶体を鏡面研磨加工し、1350℃でサーマルエッチングした。その後、多結晶体をSEM-EDS(走査型電子顕微鏡-エネルギー分散型X線分光法)によって観察し、5000倍の視野で各多結晶体に対し5点ずつEDSによる点分析をした。この点分析の平均値から、各結晶粒子内のAl及びGaの濃度を算出した。各試料における結果を表1に示す。
【0061】
(色ムラ)
照度計による色度バラツキの測定によって、多結晶体の色ムラを評価した。具体的には、13mm角の平均厚み0.2mmに多結晶体を加工し、465nm波長を有するレーザー光(つまり青色LD光)を、レンズで0.5mm幅まで集光して照射した。そして、照射面の反対側の面から透過してくる光の色度を色彩照度計によって測定した。この測定では、多結晶体の中央領域において、9mm角の部分に3mm間隔でレーザー光を照射し、X方向の色度のバラツキを評価した。各試料における結果を表1に示す。
【0062】
(スペクトルの積分強度)
上記色ムラの評価において、色彩照度計により測定された発光スペクトルにおいて、スペクトル中の最も強度が高い波長を「発光ピーク波長」とし、発光スペクトルのシフトを評価した。また、緑色の波長領域である500~560nm間でのスペクトルの積分強度値を計算し、緑色光として取り出される光量を評価した。なお、スペクトルの積分強度は、上述の方法で測定したLuAG:Ceの単体結晶におけるスペクトルの積分強度を100とする相対値で評価した。各試料における結果を表1に示す。
【0063】
なお、色ムラは、0.005以下が良好と判断でき、スペクトルの積分強度は95以上が良好と判断できる。表1では、色ムラ及びスペクトルの積分強度の双方が良好のものをA、色ムラ及びスペクトルの積分強度のどちらか一方が良好のものをB、色ムラ及びスペクトルの積分強度の双方ともに良好でないものをCとしている。
【0064】
<実施例2>
表1に示すNo.9~15の組成の多結晶体が得られるように、実施例1と同様の手順で多結晶体を作製した。具体的には、第2結晶粒子のxの値及び含有量、並びに第3原子数比を固定し、表1に示す第1原子数比及び第2原子数比となるように、Gaの添加量を変えて調製した。各多結晶体における色ムラ及びスペクトルの積分強度の測定結果を表1に示す。
【0065】
<実施例3>
表1に示すNo.16~25の組成の多結晶体が得られるように、実施例1と同様の手順で多結晶体を作製した。具体的には、第2結晶粒子のxの値、第1原子数比、第2原子数比、及び第3原子数比を固定し、表1に示す第2結晶粒子の含有量となるように調製した。各多結晶体における色ムラ及びスペクトルの積分強度の測定結果を表1に示す。
【0066】
<実施例4>
表1に示すNo.26~32の組成の多結晶体が得られるように、実施例1と同様の手順で多結晶体を作製した。具体的には、第2結晶粒子のxの値及び含有量、並びに第1原子数比及び第2原子数比を固定し、表1に示す第3原子数比となるように調製した。各多結晶体における色ムラ及びスペクトルの積分強度の測定結果を表1に示す。なお、No.26は比較例である。
【0067】
【0068】
<考察>
(実施例1)
表1に示すように、第1原子数比よりも第2原子数比が高いNo.1~7では、色ムラ及びスペクトルの積分強度の双方が良好である。また、第2結晶粒子のxの値が0であるNo.1に比べて、0<x≦1であるNo.2~7は、緑色波長のスペクトルの積分強度がより優れている。
【0069】
これに対し、第1原子数比よりも第2原子数比が低いNo.8では、色ムラ及びスペクトルの積分強度の双方ともに不十分であった。No.8では、特に色ムラの悪化が目立った。
【0070】
(実施例2)
第1原子数比が0.25以下かつ第2原子数比が0.5以下のNo.9~14は、第1原子数比が0.25超かつ第2原子数比が0.5超のNo.15よりも色ムラ及びスペクトルの積分強度に優れる。
【0071】
(実施例3)
第2結晶粒子の含有量が3体積%以上70体積%以下のNo.17~24は、蛍光相が十分含まれるため、第2結晶粒子の含有量が3体積%未満のNo.16よりも色ムラ及びスペクトルの積分強度に優れる。また、No.17~24は、透光相も十分含まれるため、第2結晶粒子の含有量が70体積%超のNo.25よりもスペクトルの積分強度に優れる。
【0072】
(実施例4)
第3原子数比が0.03以下のNo.27~31は、濃度消光が抑制されるので、第3原子数比が0.03超のNo.32よりもスペクトルの積分強度に優れる。なお、No.26は、第2結晶粒子がCeを含有しないため、発光が生じない。
【符号の説明】
【0073】
1…光波長変換部材、2…反射膜、3…反射防止膜、4…中間膜、5…放熱部材、
6…接合部、7…パッケージ、10…光波長変換装置、20…光複合装置。