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特許7188903バレルめっき用導電体およびバレルめっき方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】バレルめっき用導電体およびバレルめっき方法
(51)【国際特許分類】
   C25D 17/16 20060101AFI20221206BHJP
【FI】
C25D17/16 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018071122
(22)【出願日】2018-04-02
(65)【公開番号】P2019183186
(43)【公開日】2019-10-24
【審査請求日】2021-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000002037
【氏名又は名称】新電元工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137523
【弁理士】
【氏名又は名称】出口 智也
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100120385
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 健之
(72)【発明者】
【氏名】菊地 二哉
【審査官】▲辻▼ 弘輔
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-222595(JP,A)
【文献】特開2000-260611(JP,A)
【文献】特開2000-260612(JP,A)
【文献】特開平08-186012(JP,A)
【文献】特開昭58-224198(JP,A)
【文献】特開昭63-176493(JP,A)
【文献】米国特許第04196058(US,A)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0121512(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 17/00-21/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子チップを内部に封止する封止樹脂と、前記電子チップと電気的に接続されて一端が前記封止樹脂の外部に配置される二つの外装端子とを備える電子部品をバレル内に入れ、当該バレルをめっき液中に浸漬させた状態で回転させることにより、前記電子部品の前記二つの外装端子にめっき膜を形成するバレルめっき法において、前記バレル内に前記電子部品とともに入れられる導電性を有するバレルめっき用導電体であって、
前記電子部品の前記二つの外装端子に架設可能な長さで直線状に延在する胴部と、
前記胴部の延在方向の一端に設けられ、前記胴部の外周面に対して前記延在方向に交差する方向に突出した凸部であり、前記胴部が前記二つの外装端子に架設された状態で前記電子部品に係止される係止部と、を備えるバレルめっき用導電体。
【請求項2】
前記胴部は、前記延在方向に延びる円柱形状であり、
前記係止部は、前記胴部と同心且つ前記胴部よりも直径が大きい円柱形状である請求項1に記載のバレルめっき用導電体。
【請求項3】
前記胴部は、前記延在方向に延びる多角柱形状であり、
前記係止部は、前記延在方向に垂直な断面において前記胴部よりも断面積が大きい多角柱形状である請求項1に記載のバレルめっき用導電体。
【請求項4】
前記胴部の前記延在方向の他端に設けられ、前記胴部の外周面に対して前記延在方向に交差する方向に突出した第2の凸部であり、前記胴部が前記二つの外装端子に架設された状態で前記電子部品に係止される第2の係止部を備える請求項1~3のいずれかに記載のバレルめっき用導電体。
【請求項5】
電子チップを内部に封止する封止樹脂と、前記電子チップと電気的に接続されて一端が前記封止樹脂の外部に配置される二つの外装端子とを備える電子部品において、前記二つの外装端子にめっき膜を形成するバレルめっき方法であって、
前記電子部品の前記二つの外装端子に架設可能な長さで直線状に延在する胴部と、前記胴部の延在方向の一端に設けられ、前記胴部の外周面に対して前記延在方向に交差する方向に突出した凸部であり、前記胴部が前記二つの外装端子に架設された状態で前記電子部品に係止される係止部とを備え、導電性を有するバレルめっき用導電体を、前記電子部品とともにバレル内に入れる工程と、
前記バレルをめっき液中に浸漬する工程と、
前記バレルを回転させて前記バレルめっき用導電体と前記電子部品とを撹拌し、前記撹拌の際に前記電子部品に前記バレルめっき用導電体の前記係止部を引っ掛けることで前記電子部品の二つの外装端子に前記バレルめっき用導電体の前記胴部を架設させる工程と、を備えるバレルめっき方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バレルめっき用導電体およびバレルめっき方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ダイオード等の個片化した電子部品の外装端子(例えば、アノード端子およびカソード端子)へのめっきには、大量の電子部品をまとめて処理できるといった利点により、バレルめっきが採用されていた。
【0003】
バレルめっきにおいては、電子部品が投入されたバレルを溶液に浸漬させた状態で、バレルを回転させて電子部品を撹拌する。電子部品を撹拌しながら、バレルの外部に配置されたアノード電極(すなわち、めっき材)とバレルの内部に配置されたカソード電極との間に電源の電圧を印加する。これにより、アノード電極から電離しためっき材の金属イオンが、バレルに設けられた無数の小孔を通ってバレルの内部に浸透し、電子部品の外装端子に移動することで、電子部品の外装端子へのめっきが行われる。
【0004】
また、従来から、電子部品の外装端子へのバレルめっきにおいては、電子部品のみでは外装端子に十分な電流を流すことができないため、バレルの内部に導電性を有する導電性メディア(導電体)を投入し、電子部品とともにめっきを行っていた。
【0005】
導電性メディアとして、従来は、微小な鉄球が用いられていた。このような導電性メディアは、電子部品の外装端子に接触して、外装端子に電源から電流を流し易くすることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平5‐222592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来は、電子部品の特性上、複数の外装端子のいずれかにめっき膜が析出する機会が多く、他の外装端子にめっき膜が析出する機会が少ないことがあった。例えば、ダイオードにおいては、ダイオードの特性上、アノード端子にめっき膜が析出する機会が多く、カソード端子にめっき膜が析出する機会が少なかった。
【0008】
そして、複数の外装端子間でめっき膜が析出する機会が異なることで、めっき厚が不均一になってしまい、外装端子へのめっきの均一性を向上させることが困難であるといった問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、外装端子へのめっきの均一性を向上させることができるバレルめっき用導電体およびバレルめっき方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様に係るバレルめっき用導電体は、
電子部品に設けられた第1の外装端子および第2の外装端子にバレルめっき法によってめっき膜を形成するために用いるバレルめっき用導電体であって、
導電性を有し、前記第1および第2の外装端子の双方に接触可能な長さで直線状に延在する胴部と、
導電性を有し、前記胴部の延在方向の一端に設けられ、前記胴部の外周面に対して前記延在方向に交差する方向に突出した凸部と、を備える。
【0011】
前記バレルめっき用導電体において、
前記凸部は、前記胴部の外周面に対して前記延在方向に交差する全方向に突出していてもよい。
【0012】
前記バレルめっき用導電体において、
前記凸部は、前記胴部の外周面に対して前記全方向に同一の突出量で突出していてもよい。
【0013】
前記バレルめっき用導電体において、
前記胴部は、前記延在方向に垂直な断面において円形状を有し、
前記凸部は、前記延在方向に垂直な断面において前記胴部と同心且つ前記胴部よりも直径が大きい円形状を有してもよい。
【0014】
前記バレルめっき用導電体において、
前記胴部の前記延在方向の他端に設けられ、前記胴部の外周面に対して前記延在方向に交差する方向に突出した導電性の第2の凸部を更に備えてもよい。
【0015】
前記バレルめっき用導電体において、
前記胴部は、前記延在方向に垂直な断面において多角形状を有してもよい。
【0016】
前記バレルめっき用導電体において、
前記凸部は、前記延在方向に垂直な断面において多角形状を有してもよい。
【0017】
本発明の一態様に係るバレルめっき方法は、
電子部品に設けられた第1の外装端子および第2の外装端子にバレルめっき法によってめっき膜を形成するバレルめっき方法であって、
導電性を有し、前記第1および第2の外装端子の双方に接触可能な長さで直線状に延在する胴部と、導電性を有し、前記胴部の延在方向の一端に設けられ、前記胴部の外周面に対して前記延在方向に交差する方向に突出した凸部と、を備えるバレルめっき用導電体を、前記電子部品とともにバレルの内部に投入する工程と、
前記バレルをめっき液中に浸漬する工程と、
前記バレルを回転させて前記バレルめっき用導電体と前記電子部品とを撹拌し、前記撹拌の際に前記凸部に前記電子部品を引っ掛けることで前記第1および第2の外装端子を前記胴部に同時に接触させる工程と、を備えることを特徴とするバレルめっき方法。
【0018】
前記バレルめっき方法において、
前記第1の外装端子は、ダイオードのアノード端子であり、前記第2の外装端子は、前記ダイオードのカソード端子であってもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明の一態様に係るバレルめっき用導電体は、電子部品に設けられた第1の外装端子および第2の外装端子にバレルめっき法によってめっき膜を形成するために用いるバレルめっき用導電体であって、導電性を有し、第1および第2の外装端子の双方に接触可能な長さで直線状に延在する胴部と、導電性を有し、胴部の延在方向の一端に設けられ、胴部の外周面に対して延在方向に交差する方向に突出した凸部と、を備える。
本発明のバレルめっき用導電体は、第1の外装端子と第2の外装端子との双方に接触可能な長さの直線状の胴部と、胴部の一端に設けられた凸部とを有することで、バレルの内部において電子部品とともに撹拌される際に、凸部に電子部品が引っ掛かることで、第1の外装端子と第2の外装端子とが同時に胴部に接触する状態を形成し易い。
これにより、胴部を通じて第1の外装端子と第2の外装端子とをショートさせて同電位にすることができる。
第1の外装端子と第2の外装端子とが同電位になることで、両端子に流れる電流量を均一化することができるので、一方の端子が他方の端子よりもめっき厚が厚くなることを抑制することができる。
したがって、本発明によれば、外装端子へのめっきの均一性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】第1の実施形態に係るバレルめっき用導電体を示す側面図である。
図2】第1の実施形態に係るバレルめっき用導電体を示す正面図である。
図3】第1の実施形態に係るバレルめっき方法を示す断面図である。
図4】第1の実施形態に係るバレルめっき方法を示す拡大図である。
図5】比較例に係るバレルめっき方法を示す模式図である。
図6】第1の実施形態に係るバレルめっき方法を示す模式図である。
図7】第2の実施形態に係るバレルめっき用導電体を示す正面図である。
図8】第3の実施形態に係るバレルめっき用導電体を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明に係る実施形態を説明する。実施形態は、本発明を限定するものではない。
【0022】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係るバレルめっき用導電体1を示す側面図である。図2は、第1の実施形態に係るバレルめっき用導電体1を示す正面図である。
【0023】
第1の実施形態に係るバレルめっき用導電体1は、ダイオード製品等の電子部品に設けられたアノード端子等の第1の外装端子およびカソード端子等の第2の外装端子に、バレルめっき法によってめっき膜を形成するために用いられる導電体である。バレルめっき用導電体1は、例えば、鉄等の金属で構成することができる。
【0024】
図1に示すように、バレルめっき用導電体1は、胴部11と、凸部12とを備える。
【0025】
胴部11は、導電性を有し、電子部品の第1および第2の外装端子の双方に接触可能な長さで直線状に延在する。図1の符号D1は、胴部11の延在方向を示している。
【0026】
凸部12は、導電性を有し、胴部11の延在方向D1の一端に設けられている。
【0027】
凸部12は、胴部11の外周面11aに対して延在方向D1に直交(すなわち、交差)する方向D2に突出している。
【0028】
図2に示すように、凸部12は、胴部11の外周面11aに対して延在方向D1に交差する全方向D2に突出している。
【0029】
具体的には、図2に示すように、凸部12は、胴部11の外周面11aに対して全方向に同一の突出量で突出している。
【0030】
より具体的には、図2に示すように、胴部11は、延在方向D1に垂直な断面において円形状を有し、凸部12は、延在方向D1に垂直な断面において胴部11と同心かつ胴部11よりも直径が大きい円形状を有する。なお、図2は、胴部11および凸部12の正面図であるが、延在方向D1に垂直な胴部11、凸部12の断面形状は、胴部11、凸部12の正面形状と同一である。
【0031】
以下、図1のバレルめっき用導電体1を用いた第1の実施形態に係るバレルめっき方法について説明する。
【0032】
図3は、第1の実施形態に係るバレルめっき方法を示す断面図である。図4は、第1の実施形態に係るバレルめっき方法を示す拡大図である。
【0033】
第1の実施形態に係るバレルめっき方法においては、先ず、バレル5内に、電子部品の一例である複数のダイオード6とともに、複数のバレルめっき用導電体1を投入する。
【0034】
バレル5内にダイオード6およびバレルめっき用導電体1を投入した後、図3に示すように、浴槽4に貯留されためっき液3中にバレル5を浸漬させる。めっき液3としては、例えば、Snめっき用のカルボン酸系Sn浴や、Niめっき用のワット浴を用いることができる。
【0035】
めっき液3中にバレル5を浸漬させたとき、バレル5の内部には、バレル5に設けられた多数の小孔51を通してめっき液3が浸透する。
【0036】
めっき液3中にバレル5を浸漬させた後、図示しない回転装置によって、図3に示されるバレル5の軸回り方向Rにバレル5を回転させる。
【0037】
バレル5を回転させることで、バレル5内においてダイオード6およびバレルめっき用導電体1が撹拌される。
【0038】
ダイオード6およびバレルめっき用導電体1を撹拌しながら、バレル5の外部に配置された後述するアノード電極(すなわち、めっき材)と、バレル5の内部に配置された後述するカソード電極との間に電源の電圧を印加する。
【0039】
これにより、アノード電極から電離しためっき材の金属イオンが、バレル5に設けられた小孔51を通ってバレル5の内部に浸透する。そして、バレル5の内部に浸透した金属イオンが、ダイオード6のアノード端子またはカソード端子に移動してめっき膜として析出することで、アノード端子およびカソード端子へのめっきが行われる。
【0040】
このとき、バレル5内にダイオード6とともにバレルめっき用導電体1が投入されていることで、図4に示すように、ダイオード6のアノード端子Aおよびカソード端子Kにバレルめっき用導電体1を接触させることができる。
【0041】
アノード端子Aおよびカソード端子Kにバレルめっき用導電体1が接触することで、アノード端子Aおよびカソード端子Kに電源から電流を流し易くすることができる。これにより、アノード端子Aおよびカソード端子Kへのめっき膜の析出を促進することができる。
【0042】
より詳しくは、バレルめっき用導電体1は、アノード端子Aとカソード端子Kとの双方に接触可能な長さの直線状の胴部11と、胴部11の一端に設けられた凸部12とを有することで、バレル5の内部においてダイオード6ととともに撹拌される際に、凸部12にダイオード6を引っ掛けることができる。
【0043】
凸部12にダイオード6を引っ掛けることで、図4に示すように、アノード端子Aとカソード端子Kとを同時に胴部11に接触させることができる。
【0044】
アノード端子Aとカソード端子Kとを同時に胴部11に接触させることで、胴部11を通じてアノード端子Aとカソード端子Kとをショートさせて同電位にすることができる。
【0045】
アノード端子Aとカソード端子Kとが同電位になることで、両端子A、Kに流れる電流量を均一化することができるので、一方の端子が他方の端子よりもめっき厚が厚くなることを抑制することができる。
【0046】
このようにして、第1の実施形態に係るバレルめっき方法によれば、アノード端子Aおよびカソード端子Kへのめっきの均一性を向上させることができる。
【0047】
以下、第1の実施形態に係るバレルめっき方法による作用を、比較例と比較しながら更に詳しく説明する。図5は比較例に係るバレルめっき方法を示す模式図である。図6は、第1の実施形態に係るバレルめっき方法を示す模式図である。
【0048】
図5に示すように、もし、第1の実施形態に係るバレルめっき用導電体1の代わりに、微小な鉄球(Fe)10を用いてバレルめっきを行う場合、ダイオード6の特性上、アノード端子Aおよびカソード端子Kのうちのカソード端子Kにめっき膜が析出する機会が少なくなる。
【0049】
具体的には、図5に示すように、鉄球10を介してアノード端子とカソード電極とがショートした場合、アノード電極からアノード端子Aへのめっき材の金属イオン(Sn)の移動と、鉄球10による短絡とによって、アノード電極とカソード電極との間にアノード端子Aを経由して電源から電流が流れる。これにより、アノード端子Aにめっきが析出する。
【0050】
このとき、カソード端子Kについては、ダイオード6のK-A間の逆方向特性によってダイオード6に電流が流れないため、アノード電極とカソード電極との間にカソード端子Kを経由した電流は流れない。これにより、カソード端子Kには、めっき膜が析出しない。
【0051】
一方、図5に示すように、鉄球10を介してカソード端子Kとカソード電極とがショートした場合、アノード電極からカソード端子Kへの金属イオン(Sn)の移動と、鉄球10による短絡とによって、アノード電極とカソード電極との間にカソード端子Kを経由して電流が流れる。これにより、カソード端子Kにめっき膜が析出する。
【0052】
このとき、アノード端子Aについては、ダイオード6のA-K間の順方向特性により、アノード端子Aとカソード電極とがオープンであっても、アノード端子Aとカソード端子Kとの間に電流が流れることで、アノード電極とカソード電極との間にアノード端子Aおよびカソード端子Kを経由して電流が流れる。このような現象は、順方向電圧が低いショットキーダイオードではより顕著になる。これにより、アノード端子Aにもめっき膜が析出する。
【0053】
このように、鉄球10を用いたバレルめっき方法においては、鉄球10を介してアノード端子Aとカソード電極とが短絡した場合にカソード端子Kにめっき膜が析出しないため、カソード端子Kにめっき膜が析出する機会が少なくなる。
【0054】
これに対して、第1の実施形態に係るバレルめっき用導電体1を用いてバレルめっきを行う場合、ダイオード6の特性にかかわらず、アノード端子Aおよびカソード端子Kにめっき膜が析出する機会を均等にすることができる。
【0055】
具体的には、図6に示すように、バレルめっき用導電体1を介してアノード端子Aとカソード電極とがショートした場合、アノード電極からアノード端子Aへのめっき材の金属イオン(Sn)の移動と、バレルめっき用導電体1による短絡とによって、アノード電極とカソード電極との間にアノード端子Aを経由して電流が流れる。これにより、アノード端子Aにめっき膜が析出する。
【0056】
このとき、カソード端子Kについては、ダイオード6のK-A間の逆方向特性によってカソード端子Kからアノード端子Aに向かってダイオード6には電流が流れない。
【0057】
しかしながら、図6に示すように、アノード端子Aとカソード端子Kとの双方にバレルめっき用導電体1が接触することで、バレルめっき用導電体1を介してアノード端子Aとカソード端子Kとがショートする(すなわち、同電位になる)。なお、図6においては、ダイオード6に接触しているバレルめっき用導電体1を、アノード端子Aとカソード電極とをショートするバレルめっき用導電体1よりも誇張して大きく図示している。
【0058】
このように、バレルめっき用導電体1を介してアノード端子Aとカソード端子Kとがショートすることで、アノード電極とカソード電極との間に、カソード端子およびアノード端子を経由した電流を流すことができる。これにより、カソード端子Kにもめっき膜を析出させることができる。
【0059】
一方、図6に示すように、バレルめっき用導電体1を介してカソード端子Kとカソード電極とがショートした場合、アノード電極からカソード端子Kへの金属イオン(Sn)の移動と、バレルめっき用導電体1による短絡とによって、アノード電極とカソード電極との間にカソード端子Kを経由して電流が流れる。これにより、カソード端子Kにめっき膜が析出する。
【0060】
このとき、アノード端子Aについては、ダイオード6のA-K間の順方向特性により、アノード端子Aとカソード電極とがオープンであっても、アノード端子Aとカソード端子Kとの間に電流が流れることで、アノード電極とカソード電極との間にアノード端子Aおよびカソード端子Kを経由して電流が流れる。これにより、アノード端子Aにもめっき膜が析出する。
【0061】
このとき、図6に示すように、アノード端子Aとカソード端子Kとの双方にバレルめっき用導電体1が接触することで、バレルめっき用導電体1を介してアノード端子Aとカソード端子Kとがショートする。
【0062】
このように、バレルめっき用導電体1を介してアノード端子Aとカソード端子Kとがショートすることで、アノード電極とカソード電極との間に、アノード端子およびカソード端子を経由した電流を流すことができる。これにより、アノード端子Aにより効率的にめっき膜を析出させることができる。
【0063】
このように、バレルめっき用導電体1を用いたバレルめっき方法においては、バレルめっき用導電体1を介してアノード端子Aとカソード端子Kとをショートさせることができるので、ダイオード6の特性にかかわらず、アノード端子Aおよびカソード端子Kにめっき膜が析出する機会を均等にすることができる。
【0064】
以上説明したように、第1の実施形態のバレルめっき用導電体1は、電子部品に設けられた第1の外装端子および第2の外装端子にバレルめっき法によってめっき膜を形成するために用いるバレルめっき用導電体であって、導電性を有し、第1および第2の外装端子の双方に接触可能な長さで直線状に延在する胴部11と、導電性を有し、胴部11の延在方向の一端に設けられ、胴部11の外周面11aに対して延在方向に交差する方向に突出した凸部12と、を備える。
【0065】
このように、第1の実施形態に係るバレルめっき用導電体1は、第1の外装端子(アノード端子A)と第2の外装端子(カソード端子K)との双方に接触可能な長さの直線状の胴部11と、胴部11の一端に設けられた凸部12とを有することで、バレル5の内部において電子部品(ダイオード6)とともに撹拌される際に、凸部12に電子部品が引っ掛かることで、第1の外装端子と第2の外装端子とが同時に胴部11に接触する状態を形成し易い。これにより、胴部11を通じて第1の外装端子と第2の外装端子とをショートさせて同電位にすることができる。第1の外装端子と第2の外装端子とが同電位になることで、両端子に流れる電流量を均一化することができるので、一方の端子が他方の端子よりもめっき厚が厚くなることを抑制することができる。
【0066】
したがって、第1の実施形態によれば、外装端子へのめっきの均一性を向上させることができる。
【0067】
また、既述したように、第1の実施形態において、凸部12は、胴部11の外周面11aに対して延在方向D1に直交する全方向に突出している。
【0068】
このような構成によれば、バレル5の内部において電子部品とともに撹拌される際に、凸部12に電子部品を更に引っ掛け易くすることができる。これにより、第1の外装端子と第2の外装端子とが同時に胴部11に接触する状態を更に形成し易くなるので、胴部11を通じて第1の外装端子と第2の外装端子とをショートさせ易くなる。したがって、外装端子へのめっきの均一性を更に向上させることができる。
【0069】
また、既述したように、第1の実施形態において、凸部12は、胴部11の外周面11aに対して全方向に同一の突出量で突出している。
【0070】
このような構成によれば、バレルめっき用導電体1に対する電子部品の相対位置にかかわらず凸部12に電子部品を引っ掛け易くすることができるので、外装端子へのめっきの均一性を更に向上させることができる。
【0071】
また、既述したように、第1の実施形態において、胴部11は、延在方向D1に垂直な断面において円形状を有し、凸部12は、延在方向D1に垂直な断面において胴部11と同心且つ胴部11よりも直径が大きい円形状を有する。
【0072】
このような構成によれば、バレルめっき用導電体1に対する電子部品の相対位置にかかわらず凸部12に電子部品を更に引っ掛け易くすることができるので、外装端子へのめっきの均一性を更に向上させることができる。
【0073】
(第2の実施形態)
次に、多角形状の胴部を備えたバレルめっき用導電体の第2の実施形態について説明する。図7は、第2の実施形態に係るバレルめっき用導電体1を示す正面図である。
【0074】
図1では、断面が円形状の胴部11および凸部12を備えるバレルめっき用導電体1の実施形態について説明した。
【0075】
これに対して、第2の実施形態に係るバレルめっき用導電体1は、図7に示すように、胴部11が、延在方向に垂直な断面において多角形状を有する。より詳しくは、図7の例において、胴部11は、延在方向に垂直な断面において長方形状を有する。言い換えれば、胴部11は、平板状である。
【0076】
また、図7に示すように、凸部12は、延在方向に垂直な断面において多角形状を有する。より詳しくは、図7の例において、凸部12は、延在方向に垂直な断面において長方形状を有する。
【0077】
胴部11および凸部12の断面形状は、正方形状、五角形状、六角形状、八角形状等の長方形状以外の多角形状であってもよい。
【0078】
第2の実施形態によれば、電子部品の外装端子と胴部11との接触面積を増やして胴部11の電気抵抗を減らすことができるので、バレルめっき用導電体1を介して外装端子間により効率的に電流を流すことができる。
【0079】
したがって、第2の実施形態によれば、外装端子へのめっきの均一性を更に向上させることができる。
(第3の実施形態)
次に、第2の凸部を備えたバレルめっき用導電体1の第3の実施形態について説明する。図8は、第3の実施形態に係るバレルめっき用導電体1を示す側面図である。
【0080】
図1では、胴部11の一端に凸部12を備えたバレルめっき用導電体1の実施形態について説明した。
【0081】
これに対して、第3の実施形態に係るバレルめっき用導電体1は、図8に示すように、凸部12に加えて、更に、第2の凸部13を備える。
【0082】
図8に示すように、第2の凸部13は、胴部11の延在方向D1の他端に設けられている。
【0083】
第2の凸部13は、胴部11の外周面11aに対して延在方向D1に直交する方向D2に突出し、導電性を有する。第2の凸部13のより具体的な形状は、凸部12と同様であってもよい。
【0084】
第3の実施形態によれば、凸部12に加えて第2の凸部13を備えることで、凸部12、13に電子部品を更に引っ掛け易くすることができる。これにより、第1の外装端子と第2の外装端子とが同時に胴部11に接触する状態を更に形成し易くなるので、胴部11を通じて第1の外装端子と第2の外装端子とをショートさせ易くなる。したがって、外装端子へのめっきの均一性を更に向上させることができる。
【0085】
なお、ダイオード6以外の電子部品の外装端子にバレルめっきを行うためにバレルめっき用導電体1を適用することもできる。
【0086】
上述した実施形態は、あくまで一例であって、発明の範囲を限定するものではない。発明の要旨を逸脱しない限度において、上述した実施形態に対して種々の変更を行うことができる。変更された実施形態は、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0087】
1 バレルめっき用導電体
11 胴部
12 凸部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8