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7188909ブレード用弾性体、およびこの弾性体を用いたクリーニングブレード
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  • -ブレード用弾性体、およびこの弾性体を用いたクリーニングブレード 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】ブレード用弾性体、およびこの弾性体を用いたクリーニングブレード
(51)【国際特許分類】
   G03G 21/00 20060101AFI20221206BHJP
   C08G 18/32 20060101ALI20221206BHJP
   C08G 18/34 20060101ALI20221206BHJP
   C08G 18/65 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
G03G21/00 318
C08G18/32 037
C08G18/34
C08G18/65
C08G18/32 003
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018091827
(22)【出願日】2018-05-11
(65)【公開番号】P2019197175
(43)【公開日】2019-11-14
【審査請求日】2021-03-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000005061
【氏名又は名称】バンドー化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100122954
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷部 善太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100194803
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 理弘
(72)【発明者】
【氏名】廣富 賢
【審査官】飯野 修司
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-025191(JP,A)
【文献】特開2001-183952(JP,A)
【文献】特開2008-133343(JP,A)
【文献】特開2007-163676(JP,A)
【文献】特開2018-022074(JP,A)
【文献】特開2009-031773(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0153987(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 21/00
C08G 18/32
C08G 18/34
C08G 18/65
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
当接部が、少なくともポリオール、ポリイソシアネート、下記一般式(1)で表されるジアミノ安息香酸エステルを含む硬化剤の反応物である熱硬化性ポリウレタンウレアからなり、
前記ポリオールが、ポリエステルポリオーであることを特徴とするブレード用弾性体(ただし、前記ポリイソシアネートとして、95質量%以上の2,4-ジフェニルメタンジイソシアネート異性体を含むジフェニルメタンジイソシアネートを用いたものを除く)。
【化1】
(式中、Rは、ハロゲン原子で置換されてもよい炭素数1~12の直鎖又は分岐アルキル基、ハロゲン原子で置換されてもよい炭素数3~10の直鎖又は分岐不飽和炭化水素基、炭素数1~4の直鎖又は分岐アルキル基またはハロゲン原子で置換されてもよいフェニル基を示し、
は、水素原子、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されてもよい炭素数1~4の直鎖又は分岐アルキル基を示す。)
【請求項2】
が、塩素原子、またはメチル基であることを特徴とする請求項1に記載のブレード用弾性体。
【請求項3】
前記ジアミノ安息香酸エステルが、下記一般式(2)で表される4-クロロ-3,5-ジアミノ安息香酸イソブチルであることを特徴とする請求項1または2に記載のブレード用弾性体。
【化2】
【請求項4】
前記硬化剤として、多価アルコールを含むことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のブレード用弾性体。
【請求項5】
前記多価アルコールとして、トリメチロールプロパンを含むことを特徴とする請求項4に記載のブレード用弾性体。
【請求項6】
前記ジアミノ安息香酸エステルと前記多価アルコールにおける活性水素基のモル比(-NH:-OH)が、95~5:5~95の範囲内であることを特徴とする請求項4または5に記載のブレード用弾性体。
【請求項7】
背面部が、前記当接部とは異なる組成の熱硬化性ポリウレタンウレア、熱硬化性ポリウレタン、熱硬化性ポリウレアのいずれかからなることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載のブレード用弾性体。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載のブレード用弾性体が、支持部材に取り付けられていることを特徴とする電子写真装置用クリーニングブレード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真装置のブレードに用いる当接部が熱硬化性ポリウレタンウレアからなるブレード用弾性体に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンタ、ファクシミリ、複合機等の電子写真装置では、クリーニングブレード、現像ブレード、導電ブレード、研磨ブレード、塗布ブレード等のブレードが用いられている。ブレードは、弾性体と支持部材とからなり、通常、弾性体は、適度な硬度、弾性を有する熱硬化性ポリウレタンが用いられる。
【0003】
近年、電子写真装置において感光体ユニットの交換頻度を減らすために、ブレード等の各部材の長寿命化が求められている。また、ブレード用弾性体には、感光体ドラムへのトナー・外添剤などのフィルミング(固着)防止、感光体ドラムの摩耗低減等、システム全体の長寿命化に寄与することも求められている。
【0004】
ブレードの長寿命化のために、感光体等に当接する当接部を高硬度化する方法が提案されており、例えば、特許文献1には、エッジ層(当接部)とベース層(背面部)とを、材質が異なるポリウレタンから形成し、エッジ層のみを高硬度とした弾性体が提案されている。また、特許文献2には、単一なポリウレタンからなる弾性体の像担持体当接部のみにイソシアネート化合物を含浸させ、像担持体と当接部のみを高硬度化した弾性体が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第4818945号公報
【文献】特開2005-156696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、耐久性に優れたクリーニングブレードを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の課題を解決するための手段は、以下のとおりである。
1.当接部が、少なくともポリオール、ポリイソシアネート、下記一般式(1)で表されるジアミノ安息香酸エステルを含む硬化剤の反応物である熱硬化性ポリウレタンウレアからなることを特徴とするブレード用弾性体。
【化1】
(式中、Rは、ハロゲン原子で置換されてもよい炭素数1~12の直鎖又は分岐アルキル基、ハロゲン原子で置換されてもよい炭素数3~10の直鎖又は分岐不飽和炭化水素基、炭素数1~4の直鎖又は分岐アルキル基またはハロゲン原子で置換されてもよいフェニル基を示し、
は、水素原子、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されてもよい炭素数1~4の直鎖又は分岐アルキル基を示す。)
2.Rが、塩素原子、またはメチル基であることを特徴とする1.に記載のブレード用弾性体。
3.前記ジアミノ安息香酸エステルが、下記一般式(2)で表される4-クロロ-3,5-ジアミノ安息香酸イソブチルであることを特徴とする1.または2.に記載のブレード用弾性体。
【化2】
4.前記硬化剤として、多価アルコールを含むことを特徴とする1.~3.のいずれかに記載のブレード用弾性体。
5.前記多価アルコールとして、トリメチロールプロパンを含むことを特徴とする4.に記載のブレード用弾性体。
6.前記ジアミノ安息香酸エステルと前記多価アルコールにおける活性水素基のモル比(-NH:-OH)が、95~5:5~95の範囲内であることを特徴とする1.~5.のいずれかに記載のブレード用弾性体。
7.背面部が、前記当接部とは異なる組成の熱硬化性ポリウレタンウレア、熱硬化性ポリウレタン、熱硬化性ポリウレアのいずれかからなることを特徴とする1.~6.のいずれかに記載のブレード用弾性体。
8.1.~7.のいずれかに記載のブレード用弾性体が、支持部材に取り付けられていることを特徴とする電子写真装置用クリーニングブレード。
【発明の効果】
【0008】
本発明のブレード用弾性体は、当接部が、硬化剤として特定のジアミノ安息香酸エステルを使用した熱硬化性ポリウレタンウレアからなり、耐久性に優れている。ポリウレタンウレアは、硬化剤としてアミノ系化合物を使用しており、通常、反応が早くて取扱性に劣る。本発明で使用する熱硬化性ポリウレタンウレアは、特定のジアミノ安息香酸エステルを用いることで、反応の進行が遅く、取扱性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】当接部と背面部とが異なる組成であるブレード用弾性体の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
・ブレード用弾性体
本発明のブレード用弾性体(以下、単に「弾性体」ともいう)は、当接部が、硬化剤としてジアミノ安息香酸エステルを含む特定の熱硬化性ポリウレタンウレアからなることを特徴とする。
ブレード用弾性体は、幅が5mm以上20mm以下、厚さが1mm以上3mm以下程度である。また、弾性体の長さは、接触する感光体ドラムの幅、すなわち、印刷する用紙の幅に応じて適宜選択されるが、A4サイズの紙を使用する場合、220mm程度である。
【0011】
本発明の弾性体は、当接部が特定の熱硬化性ポリウレタンウレアから構成されていればよく、全体をこの特定の熱硬化性ポリウレタンウレアから構成してもよく、背面部を、当接部を構成する熱硬化性ポリウレタンウレアとは異なる組成の熱硬化性ポリウレタンウレア、熱硬化性ポリウレタン、熱硬化性ポリウレア等から構成してもよい。当接部11と背面部12とが異なる組成である弾性体としては、当接部11を弾性体1の一方の面全体に設けた構造(例えば、図1A)、当接部11を弾性体1の一つの長辺のみに沿って設けた構造(例えば、図1B)が挙げられる。当接部と背面部とを異なる組成とする場合は、当接部と背面部とが、異なる色を有することが、弾性体と支持部材とを接合する際の作業性の向上と作業ミスの低減のために好ましい。
【0012】
・ポリオール
本発明で使用するポリオールは特に制限されず、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール等を用いることができる。また、これらを2種以上組み合わせて用いることもできる。
【0013】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。
【0014】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、ジカルボン酸とグリコールとを常法に従って反応させることにより得ることができるものを挙げることができる。
ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸、オキシ安息香酸等のオキシカルボン酸、それらのエステル形成性誘導体等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
グリコールとしては、例えば、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,9-ノナンジオール、トリエチレングリコール等の脂肪族グリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等の脂環族グリコール、p-キシレンジオール等の芳香族ジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリオキシアルキレングリコール等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0015】
その他のポリエステルポリオールとしては、例えば、ジオールを開始剤として、ラクトンを開環重合して得ることができるものを挙げることができる。
ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、4-オキサ-2,6-ヘプタンジオール、4-オキサヘプタン-1,7-ジオール、1,10-デカンジオール等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
ラクトンとしては、例えば、β-プロピオラクトン、γ-ブチロラクトン、δ-バレロラクトン、ε-カプロラクトン、β-メチル-δ-バレロラクトン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0016】
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、ジアルキルカーボネートとジオール
との反応物が挙げられる。
ジアルキルカーボネートとしては、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカー
ボネート等のジアルキルカーボネート、ジフェニルカーボネート等のジアリールカーボネ
ート、エチレンカーボネート等のアルキレンカーボネート等が挙げられる。これらは単
独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0017】
ジオールとしては、例えば、1,4-ブタンジオール、ジエチレングリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-ドデカンジオール、2-エチル-1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,4-ジメチル-1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,3-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、2,2’-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)-プロパン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0018】
・ポリイソシアネート
本発明で使用するポリイソシアネートは、従来からポリウレタンの合成に使用されているものを特に制限することなく使用することができ、例えば、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,5-ナフタレンジイソシアネート(NDI)、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水添MDI)、カルボジイミド変性MDI、2,4-トリレンジイソシアネート(2,4-TDI)、2,6-トリレンジイソシアネート(2,6-TDI)、3,3’-ビトリレン-4,4’-ジイソシアネート、3,3’-ジメチルジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネートウレチジンジオン(2,4-TDIの二量体)、メタフェニレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、オルトトリジンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、パラフェニレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等のジイソシアネート、トリフェニルメタン-4,4’,4”-トリイソシアネート等のトリイソシアネート、ポリメリックMDI等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0019】
・硬化剤
本発明のブレード用弾性体は、下記一般式(1)で表されるジアミノ安息香酸エステルを含む硬化剤を用いることを特徴とする。硬化剤としてこのジアミノ安息香酸エステルを用いた熱硬化性ポリウレタンウレアは、アルコール系硬化剤を用いた熱硬化性ポリウレタンと比較して、硬度が高く、耐久性に優れている。
【0020】
【化3】
【0021】
式中、Rは、ハロゲン原子で置換されてもよい炭素数1~12の直鎖又は分岐アルキル基、ハロゲン原子で置換されてもよい炭素数3~10の直鎖又は分岐不飽和炭化水素基、炭素数1~4の直鎖又は分岐アルキル基またはハロゲン原子で置換されてもよいフェニル基を示す。
は、水素原子、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されてもよい炭素数1~4の直鎖又は分岐アルキル基を示す。
【0022】
上記一般式(1)において、Rは、塩素原子、またはメチル基であることが好ましい。Rが、塩素原子またはメチル基であるジアミノ安息香酸エステルは、塩素原子またはメチル基の電子供与性及びアミンとの立体障害のバランスによるものと推測されるが、ポリウレタンウレアの硬化反応の進行速度が適度であり、取扱性に優れている。
【0023】
本発明の硬化剤として、さらに多価アルコールを使用することができる。
多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール(2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール)、2-イソプロピル-1,4-ブタンジオール、3-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,4-ジメチル-1,5-ペンタンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、1,5-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2-エチル-1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、3,5-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール等の脂肪族2価アルコール;シクロヘキサンジメタノール(例えば1,4-シクロヘキサンジメタノール)、シクロヘキサンジオール(例えば1,3-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール)、2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)-プロパン等の脂環式2価アルコール;トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ヘキシトール類、ペンチトール類、グリセリン、ポリグリセリン、1,2,6-ヘキサントリオール、1,2,4-ブタントリオール、ソルビトール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールテトラメチロールプロパン等の3価以上の多価アルコール等が挙げられる。これらの中で、2価アルコールとしては1,4-ブタンジオール、3価アルコールとしてはトリメチロールプロパンが好ましい。
【0024】
硬化剤において、ジアミノ安息香酸エステルと多価アルコールとの配合比は特に制限されないが、それぞれの活性水素基のモル比(-NH:-OH)が、95~5:5~95の範囲内となるように配合することが好ましく、80~10:20~90の範囲内であることがより好ましい。硬化剤のジアミノ安息香酸エステルと多価アルコールとを、このモル比で配合することにより、従来の製造工程をほとんど変化させることなく、得られる熱硬化性ポリウレタンウレアの耐久性を高めることができる。
【0025】
・触媒
さらに、硬化反応を促進するために触媒を用いることができる。触媒としては水酸基とイソシアネート基とのウレタン化、アミノ基とイソシアネート基とのウレア化を促進するものであれば特に限定されず、トリエチルアミン等のトリアルキルアミン;N,N,N’,N’-テトラメチル-1,3-ブタンジアミン等のテトラアルキルジアミン;ジメチルエタノールアミン等のアミノアルコール;エトキシル化アミン;エトキシル化ジアミン;ビス(ジエチルエタノールアミン)アジペート等のエステルアミン;トリエチレンジアミン;N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン等のシクロヘキシルアミン誘導体;N-メチルモルホリン、N-(2-ヒドロキシプロピル)-ジメチルモルホリン等のモルホリン誘導体;N,N’-ジエチル-2-メチルピペラジン、N,N’-ビス-(2-ヒドロキシプロピル)-2-メチルピペラジン等のピペラジン誘導体等のアミン系化合物;ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジ(2-エチルヘキソエート)等のジアルキル錫化合物;2-エチルカプロン酸第1錫、オレイン酸第1錫等の有機スズ化合物;2-エチルヘキサン酸ビスマス、ネオデカン酸ビスマス等の有機ビスマス化合物;ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸等の飽和脂肪酸と、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウムのアルカリ金属との塩である飽和脂肪酸アルカリ金属塩;ジアザビシクロノネン(DBN)、ジアザビシクロウンデセン(DBU)、及びこれらのフェノール樹脂塩、オクチル酸塩、ステアリン酸塩、オレイン酸塩、ギ酸塩、p-トルエンスルホン酸塩等の感温性触媒等を使用することができる。
【0026】
・その他成分
熱硬化性ポリウレタンウレアを形成するウレタン樹脂組成物には、必要に応じて、充填剤、安定剤、反応性促進触媒、軟化剤、加工助剤、離型剤、消泡剤、難燃剤等の添加剤を配合することができる。
【0027】
本発明の当接部を構成する熱硬化性ポリウレタンウレアにおいて、ポリイソシアネートまたはプレポリマーのイソシアネート基に対する、ポリオール及び硬化剤の有する活性水素基のモル比は、0.8以上1.0以下であることが好ましく、0.85以上0.98以下であることがより好ましく、0.90以上0.95以下であることがさらに好ましい。
【0028】
本発明のブレード用弾性体の製造方法は特に制限されず、遠心成形法、本出願人による特許第4018033号公報、特許第4820161号公報、特許第4974490号公報に開示した方法等により、製造することができる。
また、その成形方法は、ワンショット法、プレポリマー法、擬プレポリマー法のいずれでもよい。
【0029】
ワンショット法では、ポリオール、ポリイソシアネート、硬化剤、触媒等を一括して投入し、硬化させることにより熱硬化性ポリウレタンウレアの成形体を作製する。
プレポリマー法では、ポリオールと化学量論的に過剰量のポリイソシアネートとを反応させて末端にイソシアネート基を有するプレポリマーを予め調製しておき、ここに所定量の硬化剤および触媒等を混合して、プレポリマーを硬化させることにより熱硬化性ポリウレタンウレアの成形体を作製する。
擬プレポリマー法では、ポリオールの一部を予め硬化剤に混合しておき、残りのポリオールとポリイソシアネートによりプレポリマーの調製を行い、ここに予め混合しておいたポリオールと硬化剤および触媒等との混合物を混合して硬化させることにより熱硬化性ポリウレタンウレアの成形体を作製する。
【0030】
本発明のブレード用弾性体は、当接部の国際ゴム硬さが、75以上100以下であることが好ましい。
【0031】
本発明のブレード用弾性体を、金属等からなる支持部材に接合することにより、ブレードを製造することができる。本発明のブレードの用途は特に制限されず、クリーニングブレード、現像ブレード、導電ブレード、研磨ブレード、塗布ブレード等として用いることができる。これらの中で、本発明のブレード用弾性体は、耐久性に優れているため、クリーニングブレードとして好適に使用することができる。
【実施例
【0032】
「プレポリマー製造例1」
ポリオールとしてポリカプロラクトン((株)ダイセル製、プラクセル220、分子量2000)を用いた。これを110℃で2時間減圧脱水した。このポリオール100重量部に対し、ポリイソシアネートとして4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)(東ソー(株)製、ミリオネートMT)を103.2重量部加え、80℃で3時間、窒素雰囲気下で反応させ、NCO%=15.0のプレポリマー1を得た。
【0033】
「実施例1」
注型機のプレポリマー用タンクにプレポリマー1を、活性水素含有物質用タンクにポリオールとしてプラクセル220、硬化剤として4-クロロ-3,5-ジアミノ安息香酸イソブチル及び1,1,1-トリメチロールプロパン、触媒として2-エチルヘキサン酸ビスマスを所定量仕込み(液温70℃)、プレポリマー:ポリオール=100重量部:71.43重量部、4-クロロ-3,5-ジアミノ安息香酸イソブチルのアミノ基数:1,1,1-トリメチロールプロパンの水酸基数=95:5、プレポリマーのイソシアネート基数に対するアミノ基と水酸基の合計数の比が0.95、触媒量がウレタンウレア全体に対して500ppmとなるように混合攪拌し、特許第4974490号公報に記載の連続成形用金型に注入した。注入量は金型キャビティーを丁度満たす量とした。金型キャビティー断面寸法は幅25mm、深さ2mm、金型温度は140℃、架橋時間は45秒とした。
得られた連続した帯状のシートを長さ方向に342mmにカットし、次いで幅方向の中心でカットし、幅12.5mmの短冊を得た。
【0034】
「実施例2」
4-クロロ-3,5-ジアミノ安息香酸イソブチルのアミノ基数:1,1,1-トリメチロールプロパンの水酸基数の比を80:20とした以外は実施例1と同様に実施した。
「実施例3」
4-クロロ-3,5-ジアミノ安息香酸イソブチルのアミノ基数:1,1,1-トリメチロールプロパンの水酸基数の比を50:50とした以外は実施例1と同様に実施した。
「実施例4」
4-クロロ-3,5-ジアミノ安息香酸イソブチルのアミノ基数:1,1,1-トリメチロールプロパンの水酸基数の比を10:90とした以外は実施例1と同様に実施した。
【0035】
「実施例5」
4-クロロ-3,5-ジアミノ安息香酸イソブチルのアミノ基数:1,1,1-トリメチロールプロパンの水酸基数の比を5:95とした以外は実施例1と同様に実施した。
【0036】
「実施例6」
4-クロロ-3,5-ジアミノ安息香酸イソブチルを4-クロロ-3,5-ジアミノ安息香酸メチルとした以外は実施例3と同様に実施した。
「実施例7」
4-クロロ-3,5-ジアミノ安息香酸イソブチルを4-クロロ-3,5-ジアミノ安息香酸ドデシルとした以外は実施例3と同様に実施した。
【0037】
「実施例8」
4-クロロ-3,5-ジアミノ安息香酸イソブチルを4-クロロ-3,5-ジアミノ安息香酸2,2,2-トリフルオロエチルとした以外は実施例3と同様に実施した。
「実施例9」
4-クロロ-3,5-ジアミノ安息香酸イソブチルを4-クロロ-3,5-ジアミノ安息香酸1-プロペニルとした以外は実施例3と同様に実施した。
「実施例10」
4-クロロ-3,5-ジアミノ安息香酸イソブチルを4-クロロ-3,5-ジアミノ安息香酸リナリルとした以外は実施例3と同様に実施した。
【0038】
「実施例11」
4-クロロ-3,5-ジアミノ安息香酸イソブチルを4-クロロ-3,5-ジアミノ安息香酸フェニルとした以外は実施例3と同様に実施した。
「実施例12」
4-クロロ-3,5-ジアミノ安息香酸イソブチルを4-クロロ-3,5-ジアミノ安息香酸p-ペンチルフェニルとした以外は実施例3と同様に実施した。
「実施例13」
4-クロロ-3,5-ジアミノ安息香酸イソブチルを4-クロロ-3,5-ジアミノ安息香酸2’,4’-ジクロロフェニルとした以外は実施例3と同様に実施した。
【0039】
「実施例14」
4-クロロ-3,5-ジアミノ安息香酸イソブチルを3,5-ジアミノ安息香酸イソブチルとした以外は実施例3と同様に実施した。
「実施例15」
4-クロロ-3,5-ジアミノ安息香酸イソブチルを4-メチル-3,5-ジアミノ安息香酸イソブチルとした以外は実施例3と同様に実施した。
「実施例16」
4-クロロ-3,5-ジアミノ安息香酸イソブチルを4-クロロメチル-3,5-ジアミノ安息香酸イソブチルとした以外は実施例3と同様に実施した。
「実施例17」
4-クロロ-3,5-ジアミノ安息香酸イソブチルを4-イソブチル-3,5-ジアミノ安息香酸イソブチルとした以外は実施例3と同様に実施した。
【0040】
「実施例18」
1,1,1-トリメチロールプロパンを1,1,1-トリメチロールエタンとした以外は実施例3と同様に実施した。
「実施例19」
1,1,1-トリメチロールプロパンをペンタエリスリトールとした以外は実施例3と同様に実施した。
「実施例20」
1,1,1-トリメチロールプロパンをジペンタエリスリトールとした以外は実施例3と同様に実施した。
【0041】
「比較例1」
4-クロロ-3,5-ジアミノ安息香酸イソブチルを1,4-ブタンジオールとした以外は実施例3と同様に実施した。
「比較例2」
4-クロロ-3,5-ジアミノ安息香酸イソブチルを3,5-ジメチルチオ-2,4-トルエンジアミンとした以外は実施例3と同様に実施した。
「比較例3」
4-クロロ-3,5-ジアミノ安息香酸イソブチルを2,2’-3,3’-テトラクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタンとした以外は実施例3と同様に実施した。
【0042】
「プレポリマー製造例2」
ポリオールとしてポリテトラメチレングリコール(保土ヶ谷化学工業(株)製、PTG2000SN、分子量2000)を用いた。これを80℃で2時間減圧脱水した。このポリオール100重量部に対し、ポリイソシアネートとして4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)(東ソー(株)製、ミリオネートMT)を103.2重量部加え、80℃で3時間、窒素雰囲気下で反応させ、NCO%=15.0のプレポリマー2を得た。
【0043】
「実施例21~40」
当接部用注型機を用いて、実施例1~20と同じ処方で連続成形用金型中央に注入した。注入量は、幅方向10mm、厚み方向0.3mmの概円弧状に設定した。
背面部用注型機のプレポリマー用タンクにプレポリマー2、ポリオール用タンクにPTG2000SN、硬化剤として1,4-ブタンジオール及び1,1,1-トリメチロールプロパン、触媒として1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセン-7を所定量仕込み(液温60℃)、プレポリマー:ポリオール=100重量部:80重量部、1,4-ブタンジオールの水酸基数:1,1,1-トリメチロールプロパンの水酸基数=50:50、プレポリマーのイソシアネート基数に対する水酸基の合計数の比が0.95、触媒量がウレタンウレア全体に対して1000ppmとなるように混合攪拌し、連続成形用金型に注入した。注入量は金型キャビティーを丁度満たす量とした。以下実施例1の記載同様に短冊を得た。なお、本実施例21~40で得られたブレード用弾性体は、図1Bに示す当接部を弾性体の一つの角部分のみに備える構造である。
【0044】
「比較例4~6」
当接部の処方として比較例1~3と同じ処方を用いた以外は実施例21~40と同様に実施した。
【0045】
<国際ゴム硬さ(IRHD)>
実施例1~20、比較例1~3で製造したブレード用弾性体について、JIS K6253-2に準じて、当接部近傍の国際ゴム硬さをIRHDゴム硬度計(ヒルデブランド社製)を用いて測定した。
実施例21~40、比較例4~6で製造したブレード用弾性体について、同様にして背面部の国際ゴム硬さを測定した。結果を表1、2に示す。なお、実施例21~40、比較例4~6で製造したブレード用弾性体における当接部の国際ゴム硬さとして、それぞれの当接部と同一の熱硬化性ポリウレタンウレア、または熱硬化性ポリウレタンを使用している実施例1~20、比較例1~3の当接部の国際ゴム硬さの値を示す。
【0046】
<クリーニンブレードの作製>
厚さ2.0mmの鋼板の金属製支持体にダイマー酸ベースのホットメルト接着剤を使用して、実施例及び比較例のポリウレタン製ゴム弾性部材を接合してクリーニングブレードを作製した。
【0047】
<耐久評価>
このクリーニングブレードをRICOH MP C2503機に装着し、下記方法により耐久評価を行った。
28℃×85%RHで通紙試験をして、ブレードエッジの欠損、へたりに起因するトナーのすり抜け画像不具合発生までの通紙枚数で耐久性を評価した。通紙枚数は1000枚を単位1Kとした。結果を表1、2に示す。
【0048】
【表1】
【0049】
【表2】
【0050】
従来の熱硬化性ポリウレタンである比較例1~3と比較して、本発明のジアミノ安息香酸エステルを使用した熱硬化性ポリウレタンウレアは、耐久性に優れていた。特に、4-クロロ-3,5-ジアミノ安息香酸イソブチルは、ジアミノ安息香酸エステルの中で最も耐久性に優れていた。また、アルコール系硬化剤を併用する場合、1,1,1-トリメチロールプロパンが、最も耐久性に優れていた。
当接部と背面部とを異なる組成の樹脂で構成することにより、さらに耐久性を高めることができた。
図1