(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】粒子ビームを生成するための粒子源及び粒子光学装置
(51)【国際特許分類】
H01J 37/147 20060101AFI20221206BHJP
H01J 37/09 20060101ALI20221206BHJP
H01L 21/027 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
H01J37/147 B
H01J37/147 D
H01J37/09 A
H01L21/30 541B
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018092098
(22)【出願日】2018-05-11
【審査請求日】2021-03-24
(31)【優先権主張番号】10 2017 208 005.1
(32)【優先日】2017-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】512158505
【氏名又は名称】カール ツァイス マイクロスコーピー ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Carl Zeiss Microscopy GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100147692
【氏名又は名称】下地 健一
(72)【発明者】
【氏名】フォルカー ドレクセル
(72)【発明者】
【氏名】ベルンド ハフナー
【審査官】中尾 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開昭54-069075(JP,A)
【文献】特開昭58-003228(JP,A)
【文献】特開平11-186150(JP,A)
【文献】特開2004-047766(JP,A)
【文献】特開2009-289748(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0168606(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/147
H01J 37/09
H01L 21/027
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子ビーム(51)を生成するための粒子源と、前記粒子源によって生成される前記粒子ビームを物体上
の焦点に集束させるように構成される粒子光学レンズとを含む粒子光学装置において、前記粒子源は、
コントローラ(11a)と、
粒子エミッタ(17a)と、
第一のプレート(31)と、
第一の偏向器(53)と、
第二のプレート(43)と
を含み、
前記粒子エミッタ(17a)は、荷電粒子の発散ビームを生成するように構成され、
前記粒子エミッタ(17a)、前記第一のプレート(31)、前記第一の偏向器(53)、及び前記第二のプレート(43)は、前記電荷粒子のビーム経路に沿ってこの順序で配置され、
前記第一のプレート(31)は、前記発散ビーム(29)のビーム経路内に配置される少なくとも1つの第一の絞り(33)及び少なくとも1つの第二の絞り(37)であって、それを通じて前記発散ビーム(29)の荷電粒子が前記第一のプレート(31)を通過できる、少なくとも1つの第一の絞り(33)及び少なくとも1つの第二の絞り(37)を有し、前記少なくとも1つの第一の絞り(33)は、第一の断面積を有し、及び前記少なくとも1つの第二の絞り(37)は、前記第一の断面積より大きい第二の断面積を有し、前記少なくとも1つの第一の絞り及び前記少なくとも1つの第二の絞りを通過する前記発散ビームの前記粒子は、前記第一のプレートの下流で第一及び第二のビーム(39、41)を形成し、
前記第二のプレート(43)は、第三の絞り(45)であって、それを通じて前記第一及び前記第二のビーム(39、41)が前記第二のプレートを通過できる、第三の絞り(45)を有し、
前記第一の偏向器(53)は、前記第一のビーム(39)及び前記第二のビーム(41)を偏向させるように構成され、
前記コントローラ(11a)は、第一の動作モードにおいて、前記第一の偏向器(53)を、前記第一のビームの粒子が前記第二のプレート(43)の前記第三の絞り(45)を通過し、且つ前記粒子源(3a)によって生成される前記粒子ビーム(51)を形成し、その一方で、前記第二のビーム(41)の粒子が前記第二のプレート(43)を通過しないように設定し、且つ第二の動作モードにおいて、前記第一の偏向器(53)を、前記第二のビーム(41)の粒子が前記第二のプレート(43)の前記第三の絞り(45)を通過し、且つ前記粒子源(3a)によって生成される前記粒子ビーム(51)を形成し、その一方で、前記第一のビーム(39)の前記粒子が前記第二のプレート(43)を通過しないように設定するように構成される、粒子光学装置。
【請求項2】
前記第一の偏向器(53)は、前記第一のビーム(39)と前記第二のビーム(41)とをまとめて第一の偏向角度(α)にわたり偏向させるために電気及び/又は磁気双極子場を提供する、請求項1に記載の粒子光学装置。
【請求項3】
前記ビーム経路に沿って前記第一の偏向器の下流に配置され、且つ前記第一及び前記第二の粒子ビーム(39、41)の前記粒子を調節可能な第二の偏向角度(β)だけ偏向させるように構成される第二の偏向器(57)をさらに含む、請求項2に記載の粒子光学装置。
【請求項4】
前記コントローラ(11a)は、前記第二の偏向器の前記第二の偏向角度(β)を、前記第一の動作モードにおいて、前記生成された粒子ビーム(51)が所定の方向(35)に向けられるように設定するように構成され、且つ前記第二の偏向器(57)の前記第二の偏向角度(β)を、前記第二の動作モードにおいて、前記生成された粒子ビーム(51)が同じ前記所定の方向(35)に向けられるように設定するように構成される、請求項3に記載の粒子光学装置。
【請求項5】
前記コントローラは、前記第一及び前記第二の偏向角度(α、β)を、前記第一の動作モードの前記第二の偏向角度と前記第二の動作モードの前記第二の偏向角度との差が、前記第一の動作モードの前記第一の偏向角度と前記第二の動作モードの前記第一の偏向角度との差と等しくなるように設定するように構成される、請求項3又は4に記載の粒子光学装置。
【請求項6】
前記第一の偏向器(53d、27d)は、前記第一のビーム(39)と前記第二のビーム(41)とをまとめて集束するために集束レンズ電場及び/又は磁場を提供する、請求項1~5の何れか一項に記載の粒子光学装置。
【請求項7】
前記第二の偏向器(57)の主平面(59)は、前記ビーム経路の方向に見たときに、前記粒子エミッタ(17a)に面する前記第二のプレート(43)の表面から5mm未満の距離に配置される、請求項1~6の何れか一項に記載の粒子光学装置。
【請求項8】
前記ビーム経路内の前記第一のプレート(31)の下流に配置される、主平面(71)を有する粒子光学レンズ(27a)をさらに含む、請求項1~7の何れか一項に記載の粒子光学装置。
【請求項9】
前記粒子光学レンズ(27)の前記主平面(71)は、前記ビーム経路内の前記第二のプレート(43)の下流に配置される、請求項8に記載の粒子光学装置。
【請求項10】
前記粒子光学レンズ(27b)の前記主平面(71b)は、前記ビーム経路内の前記第一のプレート(31b)と前記第二のプレート(43b)との間に配置される、請求項8に記載の粒子光学装置。
【請求項11】
第三のプレート(47)をさらに含み、前記第三のプレート(47)は、前記ビーム経路内の前記第二のプレート(43)の下流に且つ前記粒子光学レンズ(27a)の前記主平面(71)の下流に配置され、及び第四の絞り(49)であって、それを通じて前記生成された粒子ビーム(51)の粒子が前記第三のプレートを通過できる、第四の絞り(49)を有する、請求項1~10の何れか一項に記載の粒子光学装置。
【請求項12】
前記粒子光学レンズ(27a)の屈折力は、前記コントローラ(11a)によって調節可能であり、前記コントローラ(11a)は、前記粒子光学レンズ(27)の前記屈折力を、前記生成された粒子ビーム(51)が、前記ビーム経路の前記方向に見たときに、前記粒子エミッタに面する前記第三のプレートの表面から5mm未満の距離を有する位置にビーム焦点を有するように設定するようにさらに構成される、請求項11に記載の粒子光学装置。
【請求項13】
前記第二のプレート(43)の前記第三の絞り(45)の断面積は、前記第一のプレート(31)の前記第一の絞り(33)の前記断面積より大きい、請求項1~12の何れか一項に記載の粒子光学装置。
【請求項14】
前記第一の動作モードにおいて、前記第一のビーム(39)のすべての粒子が前記第二のプレート(43)の前記第三の絞り(45)を通過するように構成される、請求項1~13の何れか一項に記載の粒子光学装置。
【請求項15】
前記第二の動作モードにおいて、前記第二のビーム(41)の前記粒子の一部が前記第二のプレート(43)に入射し、且つ前記第二のプレート(43)の前記第三の絞り(45)を通過しないように構成される、請求項1~14の何れか一項に記載の粒子光学装置。
【請求項16】
粒子ビームの粒子を調節可能な偏向角度だけ偏向させるように構成され、且つ前記ビーム経路に沿って見たときに前記粒子エミッタと前記第一のプレートとの間に配置される偏向器を有さない、請求項1~15の何れか一項に記載の粒子光学装置。
【請求項17】
粒子ビームを集束させる磁場を提供する粒子光学レンズを有さず、前記レンズの前記主平面は、前記ビーム経路に沿って見たときに前記粒子エミッタと前記第一のプレートとの間に配置される、請求項1~16の何れか一項に記載の粒子光学装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子ビームを生成するための粒子源及び粒子光学装置に関する。特に、本発明は、例えば電子顕微鏡、イオン顕微鏡、又はリソグラフィ装置等の粒子光学装置の動作のために荷電粒子のビームを生成するための粒子源に関する。本発明は、かかる粒子源を含む粒子光学装置にさらに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、電子ビームを生成する粒子源は走査型電子顕微鏡で使用され、前記電子ビームは検査対象の物体の表面に集束され、焦点の位置、すなわち電子が物体上に入射する位置は、電子ビームを偏向させることによって物体の表面全体にわたり段階的に走査される。焦点が各位置にとどまる時間は、物体への電子の入射によりトリガされる所望の数のイベントを検出するのに十分な長さである。例えば、イベントは、二次電子、X線放射、又は物体への電子の入射によりトリガされる他の種類のイベントであり得る。物体の様々な位置に割り当てられる検出イベントは、物体の電子顕微鏡画像を表す。所望のコントラストで画像を記録できるようにするために、十分な数のイベントを検出する必要があり、その目的のために物体上の各位置に最小の数の電子が入射しなければならない。この最小の数は、物体の特性、検出されるイベントの種類、検出器及び他の構成要素のノイズ、並びに他の要素に依存する。
【0003】
従って、電子顕微鏡画像を取得する際のスループットを増大させることにおいて、物体に向けられる粒子ビームができるだけ高いビーム電流を有することが望ましい。しかしながら、ある走査型電子顕微鏡内のビーム電流を増大させると、ビーム内の荷電粒子が相互に作用し合うため、その走査型電子顕微鏡によって物体の表面で生成可能なビーム焦点の直径が大きくなる。走査型電子顕微鏡の解像度は、ビーム焦点の直径により制約される。その結果、解像度を高めることにおいて、他方ではビーム電流を減少させることが望ましい。
【0004】
その結果、ある走査型電子顕微鏡の場合、スループットを高めると解像度が落ちる可能性があり、又は解像度を上げるとスループットが下がる可能性がある。
【0005】
典型的な走査型電子顕微鏡において、ビーム電流の最大の大きさは、ビームを画定する陽極板の絞りの断面積の大きさによって決まる。絞りの断面積を大きくすると、可能な最大限のビーム電流が増大する。従って、典型的な走査型電子顕微鏡の場合、大きさの異なる絞りを有する陽極板が取得可能であり、陽極板を交換することによって最大ビーム電流を変化させることができる。しかしながら、走査型電子顕微鏡の動作中に真空下に配置される陽極板を交換することは、多くの時間を要する複雑な工程である。従って、研究室では、同じ設計でさえあり得る2台の走査型電子顕微鏡が多くの場合に使用され、前記走査型電子顕微鏡は、生成されるビーム電流の点で異なり、それにより、高ビーム電流において高スループットで、及び低ビーム電流において高解像度で交互に試料を検査することができる。2種類のビーム電流で検査を実行できるようにするためにのみ2台の走査型電子顕微鏡を調達することが不満足とみなされることは明白である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、可能な最大のビーム電流を比較的簡単な方法で変化させやすくする粒子ビーム系及び粒子源を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある実施形態によれば、粒子ビームを生成するための粒子源は、コントローラと、粒子エミッタと、少なくとも2つの絞りを有する第一のプレートと、第一の偏向器と、1つの絞りを有する第二のプレートとを含む。粒子エミッタは、荷電粒子の発散ビームを生成するように構成される。荷電粒子は、例えば電子又はイオンとすることができる。粒子エミッタによって生成される荷電粒子の発散ビームは、第一のプレート及び第一のプレートの少なくとも2つの絞りに入射する。少なくとも2つの絞りは、その断面積の点で異なる。第一のプレートの少なくとも2つの絞りのうちの第一の絞りは、第一のプレートの少なくとも2つの絞りのうちの第二の絞りより小さい断面積を有する。絞りは円形であってもよいが、これは必須ではない。例えば、絞りの1つ又は複数は、円形リングの一部に対応する形状を有していてもよい。かかる複数の絞りは、合同で円形リングの断面積に近似する断面積を提供できる。第二の絞りの断面積は、第一の絞りの断面積の例えば1.2倍を超えて大きい、1.5倍を超えと大きい、2倍を超えて大きい、5倍を超えて大きい、10倍を超えて大きいことができる。発散ビームの粒子は、第一のプレートの絞りを通じて第一のプレートを通過できる。絞りは相互から離して配置され、それによって相互から分離された複数の粒子ビームが粒子のビーム経路内の第一のプレートの下流で形成され、各絞りの断面積はまた、この絞りによって形成される粒子ビームの断面も決定する。第一のプレートに入射する発散ビームの粒子の密度が絞りの領域内で実質的に一定であると仮定すると、例えば、断面積が2倍異なる2つの絞りによって形成されるビームのビーム電流も同様に2倍の量だけ異なる。
【0008】
第一のプレートの絞りによって形成される粒子ビームは、第二のプレートに入射する。絞りであって、それを通じて粒子が第二のプレートを通過できる、絞りが第二のプレートに提供される。第一の偏向器は、ビーム経路内の第一のプレートと第二のプレートとの間に配置される。第一の偏向器は、粒子を偏向させる場を提供する。例えば、この場は電気又は磁気双極子場とすることができる。この偏向場は、ビームの方向に延長された範囲にわたり、偏向器を通過する粒子ビームの粒子に作用する。偏向場の範囲は、偏向器の構成上の境界条件、例えば磁気双極子場の生成に必要なコイルの配置によって決まる。ビームの方向に見たときに、偏向場はある位置において最大値を有し、この位置は偏向器の主平面として定義できる。その結果、第一の偏向器の主平面は、第一のプレートと第二のプレートとの間に配置される。
【0009】
第一の偏向器は、偏向器を通過する粒子ビームの粒子を偏向させる。コントローラは、例えば、偏向磁場を生成するために偏向器のコイルに供給される電流を設定することにより、この偏向の程度を設定するように構成される。
【0010】
コントローラは、第一及び第二の動作モードを有する。第一の動作モードでは、コントローラは、第一のビームの粒子が第二のプレートの絞りを通過し、及び第二のビームの粒子が第二のプレートに入射し、それを通過しないように偏向を設定する。第二のプレートの絞りの断面積の大きさ及び位置に応じて、第一の動作モードにおいて、第一のビームの粒子の全部又はこれらの粒子の一部が第二のプレートを通過し、且つ粒子源によって生成される粒子ビームを形成する。
【0011】
第二の動作モードでは、コントローラは、第二のビームの粒子が第二のプレートの絞りを通過し、及び第一のビームの粒子が第二のプレートに入射し、それを通過しないように偏向を設定する。その結果、第二の動作モードにおいて、第二のビームの粒子の一部又はすべての粒子が第二のプレートの絞りを通過し、且つ粒子源によって生成される粒子ビームを形成する。第一及び第二のビームはそのビーム電流の点で異なるため、粒子源は、その結果、第一の動作モードでは第一のビーム電流の粒子ビーム、第二の動作モードでは第一のビーム電流より大きい第二のビーム電流の粒子ビームを生成する。第一の動作モードと第二の動作モードとの切換えは、第一の偏向器によって生成される第一の偏向角度を変えることによって行われる。その結果、この粒子源を使用する粒子光学装置において、ビーム電流は、純粋にコントローラを利用して動作モードを切り換えることによって変化させることができ、陽極板を交換する必要がない。
【0012】
例示的実施形態によれば、第一の偏向器は、第一のビームと第二のビームとをまとめて第一の偏向角度(α)にわたり偏向させるために電気及び/又は磁気双極子場を提供する。
【0013】
例示的実施形態によれば、粒子源は、ビーム経路内の第一の偏向器の下流に配置され、且つ第一及び第二のビームの粒子を調節可能な第二の偏向角度だけ偏向させるように構成される第二の偏向器を含む。再び、第二の偏向器は、第二の偏向器の主平面がビーム経路内の第一の偏向器の主平面の下流に配置されるという意味で、第二の偏向器の下流に配置される。本明細書の例示的実施形態によれば、コントローラは、さらに、第二の偏向器の第二の偏向角度を、第一の動作モードにおいて、生成された粒子ビームが所定の方向に向けられるように設定するように構成され、且つ第二の偏向器の第二の偏向角度を、第二の動作モードにおいて、生成された粒子ビームが同じ所定の方向に向けられるように設定するように構成される。例示的実施形態によれば、コントローラは、第一及び第二の偏向角度を、第一の動作モードの第二の偏向角度と第二の動作モードの第二の偏向角度との差が、第一の動作モードの第一の偏向角度と第二の動作モードの第一の偏向角度との差と等しくなるように設定するようにさらに構成される。
【0014】
例示的実施形態によれば、第一の偏向器は、第一のビームと第二のビームとをまとめて集束するために集束レンズ電場及び/又は磁場を提供する。
【0015】
例示的実施形態によれば、第二の偏向器は、ビーム経路の方向に見たときに、第二のプレートから短い距離の位置に配置される。例えば、第二の偏向器の主平面と、粒子エミッタに面する第二のプレートの表面との間の距離は5mm未満である。ここで、ビーム経路の方向に見たときに、第二の偏向器の主平面は、粒子エミッタに面する第二のプレートの表面の上流又は下流に置くことができる。
【0016】
例示的実施形態によれば、粒子源は、ビーム経路内の第一のプレートの下流に配置される、主平面を有する粒子光学レンズをさらに含む。例えば、粒子光学レンズは、磁場によって生成でき、磁場自体は電流がその中を流れる1つ又は複数のコイルによって生成される。コイルの配置は、ビーム経路に沿って生成される集束磁場のプロファイルを決定する。粒子光学レンズの主平面は、光学系のレンズに関する従来の定義に従って決定できる。粒子光学レンズの主平面は、ビーム経路内の第一のプレートの下流に置かれ、それは、特に第一のプレートと第二のプレートとの間に又はビーム経路内の第二のプレートの下流に置くことができる。
【0017】
例示的実施形態によれば、粒子源は、第三のプレートをさらに含み、第三のプレートは、ビーム経路内の第二のプレートの下流に且つ粒子光学レンズの主平面の下流に配置され、及び第四の絞りであって、それを通じて生成された粒子ビームの粒子が第三のプレートを通過する、第四の絞りを有する。第三のプレートはまた、その直径の点で異なる複数の第四の絞りを有することもできる。ビームは、複数の第四の絞りのうちの1つへと交互に向けることにより、ビーム経路内の第三のプレートの下流で直径の異なるビームを生成できる。このために、第三のプレートは、例えばアクチュエータによって粒子源の残りの構成要素に関して移動させることができ、又はビームは、それが複数の第四の絞りのうちの選択された1つに入射するように偏向器により偏向させることができる。
【0018】
コントローラは、粒子光学レンズの屈折力を、生成された粒子ビームが、ビーム経路の方向に見たときに、粒子エミッタに面する第三のプレートの表面から5mm未満の距離を有する位置にビーム焦点を有するように設定するようにさらに構成できる。ここで、ビーム焦点は、ビーム経路内の第三のプレートの上流又は下流に置くことができる。
【0019】
粒子源が粒子光学系内で使用される場合、第三のプレートの少なくとも1つの絞りをその系の絞り面として使用できる。さらに、粒子光学レンズは、粒子源が粒子光学系中で使用される場合、コンデンサレンズとして使用できる。
【0020】
例示的実施形態によれば、第二のプレートの第三の絞りの断面積は、第一のプレートの第一の絞りの断面積より大きい。ここで、第一の動作モードにおいて、第一の発散ビームのすべての粒子が第二のプレートの絞りを通過することが可能である。
【0021】
例示的実施形態によれば、粒子源は、第二の動作モードにおいて、第二の発散ビームのすべての粒子が第二のプレートの第三の絞りを通過するように構成される。
【0022】
例示的実施形態によれば、粒子源は、ビーム経路に沿って、その主平面が粒子エミッタと第一のプレートとの間に配置される偏向器を有さない。同様に、例示的実施形態によれば、粒子源は、粒子ビームを集束させる磁場を提供する粒子光学レンズであって、その主平面がビーム経路に沿って見たときに粒子エミッタと第一のプレートとの間に配置される、粒子光学レンズを有さない。
【0023】
本発明の実施形態は、上で説明した実施形態の1つによる粒子源と、粒子源によって生成された粒子ビームを物体上に集束させるように構成された粒子光学レンズとを含む粒子光学装置をさらに提供する。例えば、粒子光学装置は、電子顕微鏡、イオン顕微鏡、物体を、例えばイオンビームエッチングで改変させるためのイオンビーム装置、電子又はイオンで動作するリソグラフィ装置、又は他とすることができる。
【0024】
以下に、図面に基づいて本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図2】第一の動作モードにおける
図1の粒子ビーム系で使用可能な粒子源を示す。
【
図3】第二の動作モードにおける
図2の粒子源を示す。
【
図4】
図2及び3の粒子源で使用可能である、絞りを有するプレートを示す。
【
図5】第一の動作モードにおける
図1の粒子ビーム系で使用可能な粒子源を示す。
【
図6】第二の動作モードにおける
図5の粒子源を示す。
【
図7】
図2及び3及び5及び6の粒子源で使用可能である、絞りを有するプレートを示す。
【
図8】粒子源で使用可能である、絞りを有する別のプレートを示す。
【
図9】
図8に示される絞りを使用できる粒子源を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、ある例示的実施形態による粒子ビーム系を示す。粒子ビーム系1は、粒子ビーム5を生成する粒子源3を含む。粒子源3から発せられる粒子ビーム5は、試料ステージ8上に配置され、例えば物体7へと向けることができる。物体7に入射する粒子ビーム5の粒子は、検出器9により検出されるイベントをトリガし、前記検出器は、検出されたイベントに応じて検出信号をコントローラ11に出力する。粒子ビーム5は、対物レンズ13によって物体7の表面上に集束させることができる。偏向器15は、コントローラ11によって制御ライン60を介して制御され、偏向器15を通過する粒子ビーム5を調節可能な偏向角度にわたって偏向させ、それによって粒子ビーム5は、物体7の表面上の観察野内の何れの位置にも向けることができる。特に、コントローラは、その結果、物体7の表面全体を粒子ビーム5で走査し、検出信号を保存することができ、これらの信号は物体7の表面上の、粒子ビーム5が現在向けられている位置に割り振られる。これらの保存された信号は、物体7の表面の走査部分の電子顕微鏡画像を表す。コントローラ11は、粒子ビーム系1の各種の構成要素の電位を制御する。以下において、様々な電位を説明するためのアース電位は、通常の基準電位であり、試料ステージ8は、コントローラ11によってライン62又は他の何れかの電気接続を介して基準電位に保持されることを前提とする。
【0027】
粒子源3は粒子エミッタ17を含み、これは、例えば、電界型熱電子放出により電子を生成するショットキー電子源として具現化できる。粒子エミッタ17は、コントローラ11により制御ライン63を介して制御され、ある電位に保たれ、これは、例えば-0.02kV~-30kVとすることができる。粒子源3はサプレッサ電極19をさらに含み、これはコントローラ11によって制御ライン64を介してある電位に保たれ、これは、例えば粒子エミッタ17の電位で+300Vとすることができる。粒子源3は、粒子エミッタ17から荷電粒子を引き出すために引出電極21をさらに含み、前記荷電粒子は粒子ビーム5を形成する。引出電極21は、コントローラ11によって制御ライン65を介してある電位に保たれ、これは、例えば、粒子エミッタ17の電位より2~4kV高くすることができる。粒子源3は陽極23をさらに含み、これは絞り25を有し、コントローラ11によって制御ライン66を介してある電位に保たれ、これは、例えば+8kVとすることができる。粒子エミッタ17と陽極23との間の電位差は、陽極23の絞り25を通過するビーム5の粒子の運動エネルギーを決定する。陽極23にビーム管75を隣接させることができ、これは、試料ステージまで延び、ビーム5のためのフィールドフリーのドリフトパスを形成する。
【0028】
コンデンサレンズ27は、粒子ビーム5をコリメートするためにビーム経路内の陽極23の下流に配置される。
【0029】
図1の粒子ビーム系で使用可能な粒子源のある実施形態の詳細を
図2~3に基づいて以下に説明する。
図2は、粒子源3aのビーム経路及び構成要素の概略図を示す。粒子源3aは、コントローラ11a及び粒子エミッタ17aを含む。粒子エミッタ17aはコントローラ11aによって動作され、すなわち、コントローラ11aは、例えば粒子エミッタ17aに電流を供給することによってこれを加熱し、また適当な電位、例えば高電圧電位を粒子エミッタ17aに供給する。粒子エミッタ17aから粒子を引き出すために、粒子源3aはサプレッサ及び引出電極を有することができるが、これらは
図2に示されていない。粒子エミッタ17aから引き出される粒子は、荷電粒子の発散ビーム29を形成する。粒子エミッタ17a及び電極、例えば引出及びサプレッサ電極等を適切に設計して、それに適切な電位を付与することにより、発散粒子ビーム29を点状の仮想源28から発せられているように見せることができる。
【0030】
発散ビーム29は第一のプレート31に入射し、これは
図2において断面で示され、
図4において平面図で示される。プレート31は、第一の中央絞り33を有し、その中心は粒子源3aの光軸35上に配置される。さらに、第一のプレート31は第二の絞り37を有し、その中心は光軸35から距離rに配置される。
【0031】
発散ビーム29の粒子の一部は、第一のプレート31の粒子エミッタ17aに面する表面に入射し、一部は絞り33及び37を通じて第一のプレート31を通過する。発散ビーム29のうち、絞り33及び37を通る粒子は、ビーム経路内の第一のプレートの下流でそれぞれ第一のビーム39と第二のビーム41とを形成する。第一のプレート31の第一の絞り33を通る粒子からなるビーム39は、第二の絞り37を通る粒子から形成されるビーム41より小さいビーム断面を有し、これは、絞り33及び37の断面積も異なるからである。例えば、第二の絞り37の断面積は、第一の絞り33の断面積より5倍大きいと仮定される。絞り33及び37を通る粒子の束がこれらの絞りの断面積に比例すると仮定すると、ビーム41のビーム電流はビーム39のビーム電流より5倍大きい。
【0032】
第二のプレート43はビーム経路内の第一のプレート31の下流に配置され、前記第二のプレートは、その中心が光軸35上に配置される絞り45を有する。絞り45の断面積は絞り33の断面積より実質的に大きく、従ってビーム39のすべての粒子が絞り45を通過する。
【0033】
プレート31に入射するビーム29は発散するため、絞り33によって形成されるビーム39も発散する。これらのビームをコリメートするために、粒子光学レンズ27aがコンデンサレンズとして提供される。
図2に基づいて説明する設定において、粒子光学レンズ27aは、ビーム39がレンズ27aを通過した後に実質的に平行にコリメートされ、前記ビームが、その中心が同じく粒子源3aの光軸35上にある絞り49を有する第三のプレート47によって形成される絞りを通過するように励起される。さらに、レンズ27の励起は、第三のプレート47の平面内のビーム39の断面が絞り49の断面積よりわずかに大きく、それによってビーム39のすべての粒子が絞り49を通るとはかぎらないように設定され、絞り49の断面積は、第三のプレート47を通過する粒子ビーム51の断面を画定し、前記粒子ビームは、粒子源3aにより出力される粒子ビームである。
【0034】
その結果、
図2に基づいて説明する粒子源3aは、ビーム41と比較してより小さいビーム電流を有するビーム39から粒子ビーム51を生成する。ビーム41はプレート43の表面に入射し、その絞り45を通過しない。粒子源によって生成される粒子ビーム51がより低いビーム電流のビーム39によって形成される、
図2に示される粒子源3aの動作モードは、粒子源3aの第一の動作モードである。以下に、粒子源3aの第二の動作モードを
図3に基づいて説明する。
【0035】
粒子源3aは第一の偏向器53を含み、その主平面55はビーム経路内の第一のプレート31と第二のプレート43との間に配置される。ビーム39及び41は、第一の動作モードにおいて、偏向されずに偏向器53を通過する(
図2参照)が、第二の動作モードにおいて、偏向器53がコントローラ11aにより制御ライン67を介して、それが毎回偏向角度αだけビーム39及び41を偏向させるように励起される。このために、偏向器53は、それが磁気双極子場、電気双極子場、又は磁気双極子場と電気双極子場との組合せを、ビーム39及び41が通過する空間領域に提供するように構成される。提供される双極子場の強度は、コントローラ11aによって制御され、2つのビーム39及び41が偏向器53を通過する際に受ける偏向角度αを決定する。偏向角度αの絶対値及び光軸35の周囲での円周方向におけるその向きは、ビーム39が第二のプレート43の表面に入射し、その絞り45を通過せず、ビーム41の粒子のすべて又は少なくとも大部分がプレート43の絞り45を通過するように選択される。
【0036】
粒子源3aは、コントローラ11aによって制御ライン68を介して制御される第二の偏向器57をさらに含み、前記第二の偏向器の主平面59は、ビーム方向において偏向器53の主平面55から離して配置される。第二の偏向器57も同様に磁気及び/又は電気双極子場を提供し、コントローラ11aにより、それがビーム41を第二の偏向角度βにわたり偏向させるように励起され、第二の偏向角度βは、ビーム41が第二の偏向器57により偏向された後、第一の動作モードでのビーム51と同じ方向に、すなわち
図2及び3に基づいて説明する例では光軸35に沿って向けられるような寸法とされる。他の方向も可能である。
【0037】
第二の動作モードにおいて、レンズ27aは、コントローラ11aによって第一の動作モードの場合より強力に励起され、それによってビーム39と比較してより大きいビーム断面を有するビーム41の大部分は、第二のプレート43をその絞り45を通じて通過した後に第三のプレート47の絞り49を通過できる。ここでも、レンズ27aの励起は、ビーム41の粒子の一部が第三のプレート47の絞り49を通過しないように設定され、そのため、この絞り49の断面積が、第二の動作モードで粒子源3aによって生成される粒子ビーム51の断面を画定する。
【0038】
図2及び3に基づいて説明した実施形態において、第二の偏向器57の主平面59は、第二のプレート43の平面と一致する。しかしながら、これは必須ではない。第二の偏向器57の主平面59は、ビーム経路内の第二のプレート43の上流又は下流に配置できる。
【0039】
粒子源3aは、主平面63を有する第三の偏向器61をさらに含み、前記第三の偏向器はコントローラ11aによって制御ライン69を介して制御され、主平面73を有する第四の偏向器65をさらに含み、前記第四の偏向器はコントローラ11aによって制御ライン70を介して制御される。それぞれ第三及び第四の偏向器61、65の主平面63及び73は、ビーム経路に沿って相互から離して配置される。偏向器61及び65は、それぞれ磁気及び/又は電気双極子場を提供することができ、コントローラ11aによって制御され、それを通るビームの粒子を、粒子源3aによって生成された粒子ビーム51が正確に光軸35の方向に延び、また中心が正確にその上に置かれるように偏向させるために使用できる。
【0040】
図2及び3に基づいて説明した例において、それぞれ第三及び第四の偏向器61、65の主平面63及び73は、ビーム経路内で第三のプレート47の上流に配置される。他の配置も可能である。主平面63及び73は何れもビーム経路内のプレート47の下流に配置でき、プレート47はまた、ビーム経路内の2つの主平面63及び73間に配置できる。
【0041】
レンズ27の主平面71は、
図2及び3に基づいて説明した例では、ビーム経路内の第二のプレート43の下流に配置される。必ずしもそうでなくてもよく、これについては、
図5及び6に基づいて説明する実施形態において後述する。
図5及び6に示される粒子源3bは、
図2~4に基づいて説明した粒子源と非常に類似した構造を有する。従って、粒子源3bは粒子エミッタ17bを含み、これは発散ビーム27bを発し、それが、粒子源3bの光軸35b上に中心が配置される小さい絞り33bを有する第一のプレート31bに入射する。さらに、第一のプレート31bは第二の絞り37bを含み、その中心は光軸35bから離して配置される。ビーム経路内の第一のプレート31bの下流において、絞り33b及び37bを通過する発散ビーム27bの粒子は、ビーム39b及び41bを生成する。
【0042】
図5に示される第一の動作モードにおいて、ビーム39bは第二のプレート43bの絞り45bを通過し、第一の動作モードで粒子源3bによって生成される粒子ビーム51bを形成する。
【0043】
ビーム39bをコリメートするための粒子光学レンズ27bの主平面71bは、第一のプレート31bと第二のプレート43bとの間にある。
【0044】
図6に示される第二の動作モードにおいて、磁気及び/又は電気双極子場を提供でき、その主平面55bが第一のプレート31bと第二のプレート43bとの間に配置されるビーム偏向器53bは、第一のビーム39bの粒子が角度αにわたって偏向され、それによってこれらが第二のプレート43bの表面に入射し、その絞り45bを通過しないように励起される。同時に、第二のビーム41bの粒子も同様にこの角度にわたり偏向され、それによってこれらは第二のプレート43bの絞り45bを通過し、その後、粒子源3bによって生成される粒子ビーム51bを提供する。粒子源3bは第二の偏向器57bをさらに含み、これは磁気及び/又は電気双極子場を提供でき、その主平面59bは、第一のビーム経路内の第一の偏向器53bの主平面55bの下流に配置される。第二の偏向器57bは、コントローラ11bにより、第二のビーム41bの粒子角度βにわたり偏向されるように励起され、角度βは、第二のビーム41bが第二の偏向器57bによる偏向後に光軸35bと平行に延びるような寸法とされる。
図5及び6の図において、第二の偏向器57bの主平面59bは、第二のプレート43bのわずかに下流に配置される。しかしながら、主平面59bがプレート43bと一致すること、又は主平面59bがビーム経路内のプレート43bの上流に配置されることも可能である。
【0045】
図6に示される第二の動作モードにおいて、粒子源3bによって生成される粒子ビーム51bは、ビーム41bのうち、絞り45bを通過する部分により提供される。十分に大きい絞り45bの場合、ビーム41bの実質的な部分が絞り45bを通り、そのため、第二の動作モードで生成される粒子ビーム51bは、第一の動作モードで生成され、ビーム39bにより提供される粒子ビーム51bより実質的に高いビーム電流を有する。
【0046】
さらに、粒子源3bは第三の偏向器61b及び第四の偏向器65bを含むことができ、その各々は、磁気及び/又は電気双極子場を提供することにより、例えば生成された粒子ビーム51bの中心を正確に光軸35b上に置くことができる。
【0047】
上で説明した実施形態において、2つのビーム39及び41が
図4に示される第一のプレート31によって生成される。ここで、より小さい絞り33は粒子源の光軸に関して中央に置かれ、その一方で、より大きい絞り37はこの光軸から離して配置される。これには次のような利点があり得る。すなわち、第一の動作モードで粒子源によって生成される小さいビーム電流が高解像度を実現するために使用される場合、小さい絞り33を中央に配置することは、生成される粒子ビームを形成する粒子が常に光軸付近に延び、その結果、特に色収差がわずかな程度のみ生成されるために有益である。より大きい絞り37を通過するビーム41については、より大きい粒子の偏向が光軸から離れても発生するため、比較的大きく色収差が生じる。しかしながら、このビームは、できるだけ高い解像度を得るためには使用されない。
【0048】
図7は、
図4に示されるプレート31の変形形態を示す。
図7に示される第一のプレート31cも同様に、小さい絞り33cと、絞り33cと比較してより大きい絞り37cを有する。絞り33c及び37cの何れも光軸35cから距離rに配置される。第一のプレート31cは、上で説明した粒子源のすべての実施形態で使用できる。
【0049】
図4に示されるプレート31を使用する場合、ビーム39は、第一の動作モードでは第一の偏向器53及び第二の偏向器57により偏向されないが、
図7に示される第一のプレート31cを使用する場合、ビーム39及び41の両方の偏向が何れの動作モードでも必要であり、それにより、第一の動作モードでは、ビーム39が第二のプレート43の絞り45を通過し、第二の動作モードでは、絞り37cを通過するビームが第二のプレート43の絞り45を通過する。
【0050】
上で説明した例示的実施形態において、粒子エミッタによって生成される荷電粒子の発散ビームは、断面積の点で異なる少なくとも2つの絞りを有する第一のプレートに入射する。その結果、ビーム経路内の第一のプレートの下流で異なる断面を有する少なくとも2つのビームが形成される。ビーム経路内の第一のプレートの下流に配置される偏向器は、コントローラにより、第一の動作モードでは、第一のビーム断面を有する粒子ビームがビーム経路内の偏向器の下流に配置された第二のプレートの絞りを通過し、又は第二の動作モードでは、第二の断面のビームが第二のプレートの絞りを通過するように交互に作動される。上で説明した実施形態において、この偏向器は調節可能な磁気及び/又は電気双極子場を提供する。しかしながら、必ずしもそうでなくてもよい。他の実施形態によれば、この偏向器は、双極子場の対称性と異なる対称性を有する磁気又は電気偏向場を提供する。
図8及び9に基づいて後述する例示的実施形態において、このビーム偏向器は、偏向場が軸対称の集束レンズ磁場及び/又は電場であるような構成を有する。
【0051】
図8及び9に基づいて説明する実施形態が上述の実施形態とさらに異なる点は、粒子エミッタによって生成される発散ビームが入射する第一のプレートが、その断面積の点で異なる1つの第一の絞り及び1つの第二の絞りだけでなく、複数の第一及び/又は第二の絞りを有することである。
【0052】
図8は、
図9に概略的に示される粒子源3dの第一のプレート31d上の、
図4及び7に対応する平面図を示す。第一のプレート31dは、中央に配置された小さい断面積の第一の絞り33dを有し、第一の絞り33dと比較して各々が大きい断面積を有する4つの第二の絞り37dを有する。4つの第二の絞り37dは、それぞれ円形リングの一部に対応する設計をさらに有し、これらは、円形リングの4つの部分が合同で、円形リングのそれと近似する断面積を提供するように配置される。
【0053】
粒子源3dは、第一のプレート31dに入射する発散ビームを発する粒子エミッタ17dを含む。プレート31dの絞り33d及び37dを通過する発散粒子ビームの粒子は、ビーム経路内の第一のプレート31dの下流で発散粒子ビーム39d及び41dを生成する。粒子ビーム39dの断面は、プレート31dの絞り33dの断面積により画定され、第一のプレート31dの4つの第二の絞り37dは4つの粒子ビーム41dを生成し、これらは合同で円形リングの断面に近似するビーム断面を有する。
【0054】
粒子源3dはコンデンサレンズ27dをさらに有し、これはコントローラ11dによって制御されて、後に説明するように粒子源3dを第一の動作モードから第二の動作モードに切り換え、従って、コンデンサレンズ27dは同様に偏向器53dの機能を有して、粒子源3dを第一の動作モードから第二の動作モードに切り換える。
【0055】
コンデンサレンズ27d又は偏向器53dは、主軸35dに関して対称である集束レンズ電場及び/又は磁場を提供できる。
【0056】
第一の動作モードにおいて、コンデンサレンズ27d又は偏向器53dは、コントローラ11dによって弱く励起され、それによってビーム41dは比較的弱く偏向され、
図9の実線41d’で示されるように、第二のプレート43dに入射し、第二のプレート43dの絞り45dを通過しない。しかしながら、コンデンサレンズ27d又は偏向器53dのこのような弱い励起中、粒子ビーム39dは十分にコリメートされ、それによって粒子ビーム39dの粒子の実質的な部分が第二のプレート43dの絞り45dを通過する。ビーム39dのこれらの粒子は、第一の動作モードで粒子源3dから出て、小さいビーム電流を提供するビーム51dを形成する。
【0057】
第二の動作モードにおいて、コンデンサレンズ27d又は偏向器53dは、コントローラ11dによってより強力に励起され、従って、ビーム41dは非常に強力に偏向されるため、これらは、
図9において破線41d’’で示されるように、第二のプレート43dの付近に集束され、ほとんどの部分が第二のプレート43dの絞り45dを通過する。従って、絞り45dを通過するビーム41d’’の粒子は、第二の動作モードで粒子源3dから出て、大きいビーム電流の粒子ビーム51d’を形成する。
【0058】
粒子源3dは、主平面82を有する第一の偏向器81をさらに含むことができ、これは、第一のプレート31dと、コンデンサレンズ27d又は偏向器53dの主平面71dとの間に配置される。さらに、第二の偏向器83を提供でき、その主平面84は、第一の偏向器81の主平面82と、コンデンサレンズ27d又は偏向器53dの主平面71dとの間に配置される。2つの偏向器81及び83は、それぞれ双極子場を提供でき、コントローラ11dによって動作され、ビーム39d及びビーム41dを、これらがコンデンサレンズ27d又は偏向器53dの主平面71dを通過するように整列され、それにより、これらは主軸35dに関して対称に整列され、それに関してコンデンサレンズ27d又は偏向器53dにより提供される集束レンズの場も対称となる。
【0059】
粒子源3dは、コントローラ11dにより制御される、主平面63dを有する第三の偏向器61dと、コントローラ11dにより制御される、主平面73dを有する第四の偏向器65dとをさらに含むことができ、前記偏向器は、それぞれ磁気及び/又は電気双極子場を提供し、それを通過するビームの粒子を、粒子源3dによって生成される粒子ビーム51dが正確に軸35dの方向に延び、また正確にその上に中心が置かれるように偏向させるために使用できる。
【符号の説明】
【0060】
1 粒子ビーム系
3 粒子源
5 粒子ビーム
7 物体
8 試料ステージ
9 検出器
11 コントローラ
13 対物レンズ
15 偏向器
17 粒子エミッタ
19 サプレッサ電極
21 引出電極
23 陽極
25 絞り
27 粒子光学レンズ
28 仮想源
29 発散ビーム
31 第一のプレート
33 第一の絞り
35 光軸
37 第二の絞り
39 第一のビーム
41 第二のビーム
43 第二のプレート
45 第三の絞り
47 第三のプレート
49 絞り
51 粒子ビーム
53 第一の偏向器
55 主平面
57 第二の偏向器
59 主平面
60 制御ライン
61 第三の偏向器
62 ライン
63 主平面
64 制御ライン
65 第四の偏向器
66 制御ライン
67 制御ライン
68 制御ライン
69 制御ライン
70 制御ライン
71 主平面
73 主平面
75 ビーム管
81 第一の偏向器
82 主平面
83 第二の偏向器
84 主平面
α 第一の偏向角度
β 第二の偏向角度