(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】車両管理システムおよび車両管理方法
(51)【国際特許分類】
G08G 1/123 20060101AFI20221206BHJP
G06Q 50/30 20120101ALI20221206BHJP
【FI】
G08G1/123 A
G06Q50/30
(21)【出願番号】P 2018124210
(22)【出願日】2018-06-29
【審査請求日】2021-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】弁理士法人とこしえ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】下平 誠司
【審査官】上野 博史
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-168193(JP,A)
【文献】特開2017-174203(JP,A)
【文献】特開2017-033480(JP,A)
【文献】特開2006-338245(JP,A)
【文献】特開2000-030195(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
G01C 21/00-21/36
23/00-25/00
G06Q 10/00-10/10
30/00-30/08
50/00-50/20
50/26-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コントローラを用いて、複数のユーザに共用される複数の車両を管理する車両管理システムであって、
所定のエリア内での前記ユーザによる前記車両の利用履歴と前記エリア内への配車台数の実績を記憶するデータベースを備え、
前記利用履歴は、所定の目的地に到着するまでの前記車両の所要時間に対する前記ユーザの満足度を含み、
前記コントローラは、
前記エリアの交通情報を取得し、
前記交通情報に基づいて、前記エリア内の道路の混雑度を推定し、
前記混雑度が所定の基準値よりも大きい場合、前記エリア内の前記車両の台数を増加させ、
前記利用履歴及び前記配車台数の実績に基づいて、所定値以上の満足度が得られた前記所要時間のうち、最長の前記所要時間を満足度限界時間として算出し、
前記満足度限界時間に対応する前記車両の走行速度を、満足度限界速度として算出し、
前記車両が前記満足度限界速度で走行したと仮定した場合、前記最長の所要時間以内の時間で前記目的地に到着できる位置に前記車両を配置させる車両管理システム。
【請求項2】
請求項
1記載の車両管理システムであって、
前記データベースは、前記エリア内での前記ユーザによる前記車両以外の他の移動手段の利用履歴を記憶し、
前記他の移動手段の利用履歴は、所定の目的地に到着するまでの前記他の移動手段の所要時間に対する前記ユーザの満足度を含み、
前記コントローラは、
前記他の移動手段の利用履歴に基づいて、所定値以上の満足度が得られた前記所要時間のうち、最長の前記所要時間を、満足度限界時間として算出し、
前記満足度限界時間に基づいて、前記満足度限界速度を算出する車両管理システム。
【請求項3】
請求項
1又は2記載の車両管理システムであって、
前記データベースは、前記エリアの天気情報、前記車両が利用された時間帯に関する時間帯情報を記憶し、
前記コントローラは、少なくとも前記天気情報及び前記時間帯情報のうち何れか一つに基づいて、前記満足度限界時間を変更する車両管理システム。
【請求項4】
請求項
1~3の何れか一項に記載の車両管理システムであって、
前記コントローラは、
前記エリア内の災害に関する情報、前記エリア内に存在する交通機関の運行状況に関する情報を含む突発事象情報を取得し、
前記突発事象情報に基づいて、前記エリア内に突発的な事象が発生しているか否かを判定し、
前記突発的な事象が発生していると判定した場合、前記エリア内の前記車両の平均速度が前記満足度限界速度よりも遅い場合であっても、前記車両の台数を増加させる車両管理システム。
【請求項5】
請求項
1~4の何れか一項に記載の車両管理システムであって、
前記コントローラは、
前記エリアでの前記車両の需要度を推定し、
前記需要度が所定の基準よりも高い場合、前記混雑度が所定の基準値よりも小さい場合であっても、前記車両の台数を増加させる車両管理システム。
【請求項6】
ユーザから受け付けた利用要求に基づいて、前記ユーザに配車され
、複数のユーザに共用される複数の車両を、コントローラが管理する車両管理方法であって、
前記コントローラは、
所定のエリア
内での前記ユーザによる前記車両の利用履歴と前記エリア内への配車台数の実績を記憶するデータベースから交通情報を取得し、
前記利用履歴は、所定の目的地に到着するまでの前記車両の所要時間に対する前記ユーザの満足度を含み、
前記コントローラは、
前記交通情報に基づいて、前記エリア内の道路の混雑度を推定し、
前記混雑度が所定の基準値よりも大きい場合、前記エリア内の前記車両の台数を増加させ、
前記利用履歴及び前記配車台数の実績に基づいて、所定値以上の満足度が得られた前記所要時間のうち、最長の前記所要時間を満足度限界時間として算出し、
前記満足度限界時間に対応する前記車両の走行速度を、満足度限界速度として算出し、
前記車両が前記満足度限界速度で走行したと仮定した場合、前記最長の所要時間以内の時間で前記目的地に到着できる位置に前記車両を配置させる車両管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のユーザに利用される車両を管理する車両管理システム及び車両管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
不特定多数の利用者が所持する携帯型端末から基地局に通知される情報を収集し、携帯型端末が分布する情報を取得し、車載装置から要求があったっとき、その車載装置の現在位置を含む所定範囲内における携帯型端末の分布情報を、その車載装置に表示する配車システムが知られている(特許文献1)。この配車システムでは、携帯型端末の分布個数が多い建物等に乗客輸送車両の配車の決定をする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術では、例えば、交通渋滞が発生して道路が混雑した場合であっても、エリア内の車両の台数を増やすことができず、配車要求がある前の段階で、車両の位置からユーザにより指定された利用開始地点までの平均距離を縮めることができない。その結果、利用開始地点への到着が遅れてしまい、ユーザに不満を与え、配車サービスの利用機会を減少させる、という問題がある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、道路の混雑度が大きい場合であっても、ユーザの不満を抑制し、配車サービスの利用機会の増加を図ることが可能な車両管理システム及び車両管理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、所定のエリアの交通情報を取得し、交通情報に基づいて、エリア内の道路の混雑度を推定し、混雑度が所定の基準値よりも大きい場合、エリア内の車両の台数を増加させることで、上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、道路の混雑度が所定の基準値よりも大きい場合に、車両の位置から利用開始地点までの平均距離及び利用終了地点までの平均距離を縮めることができるため、利用開始地点への到着の遅れを抑制することができる。その結果、ユーザに不満を与えることを抑制し、配車サービスの利用機会の増大を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る車両管理システムの構成図である。
【
図2】
図2は、混雑度増加エリア判定機能による判定結果の一例である。
【
図3】
図3は、車両位置から各目的地までの距離と、各目的地までの所要時間との関係を説明するための図である。
【
図4】
図4は、道路の混雑度が増加した場合の所要時間を説明するための図である。
【
図5】
図5は、満足度限界速度の一例を説明するための図である。
【
図6】
図6は、満足度限界速度の他の例を説明するための図である。
【
図7】
図7は、本実施形態に係る車両管理システムの制御手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0010】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態に係る車両管理システムについて説明する。本実施形態では、車両管理システムと車両管理方法を、配車システムに適用した場合を例にして説明する。本実施形態における車両管理とは、エリアごとに車両を配置することを含む。
【0011】
図1は、車両管理システム1を示す構成図である。
図1に示すように、本実施形態の車両管理システム1は、車両管理装置100と、複数のユーザに利用される複数の車両V1~Vn(以下、車両Vと総称することもある)がそれぞれ備える車載装置200V1~200Vn(以下、車載装置200Vと総称することもある)と、複数のユーザがそれぞれ所持するユーザ端末装置300A~300Z(以下、ユーザ端末装置300と総称することもある)と、を有する。本実施形態の車両管理システム1を構成する、車載装置200V1~200Vn、ユーザ端末装置300A~300Zの台数は限定されない。
【0012】
車両管理装置100、車載装置200V1~200Vn、及びユーザ端末装置300A~300Zは、それぞれ通信装置(30、220、320)を備え、インターネット400などの電気通信回線網を介して相互に情報の授受が可能である。通信経路は有線であっても無線であってもよい。各装置間で行われる通信で利用する通信規格には、4G/LTE、Wifi等が挙げられる。
【0013】
本実施形態のユーザ端末装置300は、本発明の本実施形態に係るユーザ端末装置300Aに適用されるプログラムが格納されたROM(Read Only Memory)と、このROMに格納されたプログラムを実行することで、各機能を実行させる動作回路としてのCPU(Central Processing Unit)と、アクセス可能な記憶装置として機能するRAM(Random Access Memory)と、を備えるコンピュータである。本実施形態のユーザ端末装置300は、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、又はPDA(Personal Digital Assistant)その他の可搬型の端末装置であってもよい。
【0014】
本実施形態のユーザ端末装置300は、各ユーザによる車両Vの利用を求める利用要求を受け付ける入力装置310と、車両管理装置100などの外部装置と通信を行う通信装置320と、各ユーザに情報を通知するための表示装置330と、ユーザによる車両Vnの利用の制御処理を実行するコントローラ340とを備える。
【0015】
ユーザ端末装置300の入力装置310としては、例えば、ユーザの手操作による入力が可能なディスプレイ画面上に配置されるタッチパネル又はジョイスティックや、ユーザの音声による入力が可能なマイクなどの装置を用いることができる。
【0016】
表示装置330は、車両管理装置100から受信した情報を、ユーザに通知する。表示装置330としては、ディスプレイなどが挙げられ、タッチパネル・ディスプレイを用いる場合には、入力装置310と兼用することができる。表示装置330は、例えば、車両Vの走行経路の情報などを車両管理装置100から受信して、ユーザに通知する。
【0017】
コントローラ340は、ユーザ端末装置300に備えられた図示しないGPS(Global Positioning System)受信機などの位置取得装置を用いて、ユーザ端末装置300を操作するユーザの現在位置の情報を取得する。現在位置の情報としては、例えば、緯度及び経度の情報が挙げられる。コントローラ340は、取得した現在位置の情報を、通信装置320を介して、車両管理装置100に送信する。
【0018】
また、コントローラ340は、各ユーザによる車両Vの利用を求める利用要求などの入力情報を受け付け、通信装置320を介して、車両管理装置100に送信する。
【0019】
上述した利用要求には、ユーザのID情報、ユーザが指定する車両Vの利用開始地点の情報及び車両Vの利用終了地点の情報などが含まれる。車両Vの利用開始地点とは、ユーザが車両Vの乗車を希望する位置(乗車希望位置)である。車両Vの利用終了地点とは、ユーザが車両Vの降車を希望する位置(降車希望位置)である。また、ユーザのID情報には、予め登録されたユーザの性別及び年齢が含まれる。
【0020】
本実施形態の車両Vとしては、電動モータを駆動源として備える電気自動車、内燃機関を駆動源として備えるエンジン自動車、電動モータ及び内燃機関の両方を駆動源として備えるハイブリッド自動車を例示できる。なお、電動モータを駆動源とする電気自動車やハイブリッド自動車には、二次電池を電動モータの電源とするタイプや燃料電池を電動モータの電源とするタイプのものも含まれる。
【0021】
また、車両Vは、運転者の運転により走行する車両であってもよいし、運転者が乗車した状態で、車載装置200Vが実行する自動的な運転により走行する車両であってもよい。さらに、車両Vは、搭乗者がいない状態で、車載装置200Vが実行する自動的な運転により走行する車両であってもよい。自動的に運転する技術には、本願出願時に知られた技術が適宜用いることができる。なお、自動的に運転する技術には、少なくとも、他車両、対象物との干渉を避ける機能、運転者等から操作介入があった場合、自動的な運転の制御を停止する機能、交通法規を順守した運転を行う機能が含まれる。
【0022】
本実施形態の車載装置200Vは、各車両Vの現在位置を検出するGPS受信機210と、車両管理装置100などの外部装置と通信を行う通信装置220と、ユーザによる車両Vの利用の制御処理を実行するコントローラ230とを備える。
【0023】
コントローラ230は、車載装置200Vに備えられた各装置から車両Vの情報を取得し、通信装置220を介して取得した車両Vの情報を車両管理装置100に送信する。車両Vの情報には、GPS受信機210により取得された現在位置の情報、車速センサ(不図示)により検出された車両Vの車速の情報が含まれる。また、車両Vの情報には、車両Vの利用状況の情報が含まれる。車両Vの利用状況としては、ユーザを送迎中の状況、他のユーザが相乗り可能な状況などが例示できる。なお、車両Vの情報には、上述した情報に限られず、例えば、車両Vの電力残容量や故障情報などが含まれていてもよい。
【0024】
本実施形態の車両管理装置100は、コントローラ10と、データベース20と、通信装置30とを備える。
【0025】
通信装置30は、車載装置200V及びユーザ端末装置300とそれぞれ相互に通信可能な装置である。通信装置30は、車載装置200Vから受信した情報を、コントローラ10に出力するとともに、コントローラ10から入力される情報を、車載装置200V及びユーザ端末装置300に送信する。各情報については後述する。
【0026】
また、通信装置30は、道路交通情報通信システムVICS(登録商標)(Vehicle Information and Communication System)、天気予報などの天気に関する情報を提供するサーバ、地図情報又は道路情報を提供するサーバと通信する。通信装置30は、VICSや各種情報を提供するサーバから受信した情報を、データベース20に出力する。通信装置30により受信された情報としては、渋滞情報、交通障害情報、交通規制情報、工事情報、天気情報、地図情報、道路情報が挙げられる。また、通信装置30は、ユーザ端末装置300から送信された情報のうち、車両Vの利用要求、及び車両Vの利用履歴に関する情報を、データベース20に出力する。さらに、通信装置30は、車載装置200Vから送信された情報を、データベース20に出力する。
【0027】
データベース20は、車両情報21と、利用履歴情報22と、利用エリア情報23と、環境情報24と、地図情報25とを記憶する。また図示していないが、データベース20は、後述するコントローラ10が実行する処理のために、ユーザ端末装置300から送信される利用要求を記憶している。
【0028】
車両情報21は、車両Vから所定期間ごとに逐次的に送信される情報であって、車両Vに関する情報である。車両情報21には、各車両Vの現在位置の情報、各車両Vの車速の情報、各車両Vの現在の利用状況などが含まれる。車両情報21は、通信装置30が車両Vから受信するたびに更新される。本実施形態では、エリアごとに車両Vが配置されているため、車両情報21は、エリアごとの車両Vに関する情報で構成されている。
【0029】
利用履歴情報22は、過去にユーザが車両Vを利用した際の記録の情報である。利用履歴情報22には、ユーザの属性(性別及び年齢)、ユーザが指定した利用開始地点及び利用終了地点、車両Vの現在位置から利用開始地点までの走行距離及び所要時間、利用開始地点から利用終了地点までの走行距離及び所要時間が含まれる。また、利用履歴情報22には、利用開始地点までの所要時間に対するユーザの満足度と、利用終了地点までの所要時間に対するユーザの満足度が含まれる。
【0030】
満足度とは、ユーザが所要時間に対してどの程度満足したかを数値化したものである。例えば、車両Vを利用した後、ユーザに対してアンケートを実施することで、車両管理装置100は、所要時間に対する満足度を取得することができる。アンケートは、少なくとも2種類の満足度を回答させる構成となっている。一方の満足度は、利用要求を行ってから、利用開始地点で乗車するまでのユーザの待ち時間、すなわち、車両Vが配車指示を受け付けた位置から利用開始地点に到着するまでに要した時間に対しての満足度である。他方の満足度は、利用開始地点から利用終了地点までのユーザの乗車時間、すなわち、車両Vが利用開始地点から利用終了地点に到着するまでに要した時間に対しての満足度である。なお、満足度は、数値に限られず、予め定められたカテゴリで表記されてもよい。
【0031】
利用エリア情報23は、過去に車両Vが走行したエリアの情報である。利用エリア情報23には、利用開始地点が属するエリアと、利用終了地点が属するエリアが含まれている。また、車両Vが複数のエリアを横断した場合、利用履歴情報22には、横断したエリアの情報も含まれる。
【0032】
環境情報24は、通信装置30により受信された、エリアごとの渋滞情報及び天気情報である。環境情報24としては、各道路における時間帯毎の渋滞情報、各道路における時間帯ごとの事故発生情報、その他交通インフラに関する情報、エリアで発生した災害に関する情報などが例示できる。交通インフラに関する情報としては、例えば、車両V以外の他の移動手段の運行状況(例えば、鉄道各線の運行情報、バスの運行情報等)が挙げられる。環境情報24は、通信装置30がこれらの情報を受信するたびに更新される。車両V以外の他の移動手段としては、鉄道やバスなどの公共交通機関、タクシーが例示できる。
【0033】
地図情報25は、コントローラ10が車両Vの走行経路を算出するための地図情報及び道路情報である。地図情報及び道路情報は、リンクとノードの組み合わせにより表現される情報である。地図情報25は、通信装置30がこれらの情報を受信するたびに更新される。
【0034】
ここで、本実施形態における配車システムの概要について説明する。本実施形態では、車両管理装置100は、ユーザから、ユーザ端末装置300を介して、一の車両Vに対しての利用要求を、逐次的に取得する。利用要求には、ユーザにより指定された利用開始地点及び利用終了地点の情報と、利用開始地点までの配車要求が含まれる。例えば、ユーザは、ユーザ端末装置300の入力装置310に、車両Vの乗車位置として利用開始地点を入力し、また車両Vの降車位置として利用終了地点を入力する。ユーザ端末装置300は、通信装置320を介して、入力された情報を、車両管理装置100へ送信する。ユーザ端末装置300から車両管理装置100へ送信される情報には、ユーザの利用要求だけでなく、予めユーザにより登録されたユーザのID情報、ユーザの現在位置の情報が含まれる。
【0035】
また、車両管理装置100は、ユーザの利用要求に基づいて、エリアごとに配置された複数の車両Vのうちユーザが利用する車両を選定する。本実施形態では、配車サービスが実施される地域は、複数のエリアに区分けされており、各エリアには、予め定められた台数の車両Vが配置されている。エリアごとに配置される車両Vの台数は、例えば、ユーザによる車両Vの利用実績により決定される。
【0036】
車両管理装置100は、複数の車両Vのうち、最短時間で利用開始地点に到着することが可能な車両Vを選定する。車両の選定方法は、上記の選定方法に限られず、例えば、最短時間で利用終了地点に到着することが可能な車両Vを選定してもよい。車両の選定方法には、本願出願時に知られた技術が適宜用いることができる。
【0037】
また、車両管理装置100は、ユーザが利用する車両に搭載された車載装置200Vに対して、配車指示を送信する。配車指示には、利用開始地点への移動指示、利用開始地点から利用終了地点までの走行指示が含まれる。車両Vが運転者による運転で走行する車両の場合、車両Vの運転者は配車指示を確認し、利用開始地点への移動を開始する。また、搭乗者がなく自動的な運転による車両Vの場合、車両のコントローラ340には、利用開始地点及び利用終了地点の情報が入力される。そして、利用車両は利用開始地点への走行を開始する。
【0038】
以上が本実施形態に係る配車サービスの概要である。続いて、車両管理装置100が備えるコントローラ10について説明する。
【0039】
コントローラ10は、車両管理システム1のサーバとして機能し、配車システムを管理運営するための制御処理を実行する。コントローラ10は、配車システムを管理運営する処理を実行するためのプログラムが格納されたROM(Read Only Memory)12と、このROM12に格納されたプログラムを実行することで、車両管理装置100として機能する動作回路としてのCPU(Central Processing Unit)11と、アクセス可能な記憶装置として機能するRAM(Random Access Memory)13とを備える。
【0040】
コントローラ10は、混雑度推定機能と、混雑度増加エリア判定機能と、需要増加エリア判定機能と、満足度限界時間算出機能と、満足度限界速度算出機能と、平均速度判定機能と、突発事象検出機能と、車両台数変更機能とを実現する。コントローラ10は、上記機能を実現するためのソフトウェアと、上述したハードウェアの協働により各機能を実現するコンピュータである。以下において、コントローラ10が実現する各機能についてそれぞれ説明する。
【0041】
まず、混雑度推定機能について説明する。コントローラ10は、混雑度推定機能により、エリアごとに、道路の混雑度を推定する。道路の混雑度とは、道路の込み具合を示す数値である。本実施形態では、コントローラ10は、エリアの交通情報に基づいて、エリア内の道路の混雑度を推定する。交通情報には、少なくとも、エリア内の車両Vの平均速度、エリア内の道路の渋滞情報が含まれる。
【0042】
道路の混雑度の推定方法について説明する。コントローラ10は、エリア内の車両Vの平均速度に基づいて、道路の混雑度を推定する。例えば、コントローラ10は、車両Vの平均速度と混雑度が対応付けられたマップであって、エリアごとに予め設定されたマップを用いて、道路の混雑度を推定する。コントローラ10は、所定期間ごとに車両Vから逐次的に送信される車両Vの位置情報を一時的にRAM等の記憶装置に蓄積させる。次に、コントローラ10は、所定期間が経過する前後で車両Vが移動した距離を所定期間で除算することで、エリア内の車両Vの平均速度を算出する。コントローラ10は、予め設定されたマップを参照し、算出した車両Vの平均速度に対応する道路の混雑度を算出する。なお、エリア内の車両Vの平均速度は、一台の車両Vのデータを用いることに限られず、エリア内に複数の車両Vが配置されている場合、複数の車両Vのデータを用いてもよい。例えば、複数の車両Vそれぞれについて平均速度を算出した後、複数の平均速度の平均値を算出して、当該平均値をエリア内の車両Vの平均速度としてもよい。また、エリア内の車両Vのうち平均速度の算出の対象となる車両は、他のユーザにより利用され、エリア内を走行している車両とする。
【0043】
なお、道路の混雑度を推定する方法は、車両Vの平均速度に基づく方法に限られず、車両Vの平均速度の代わりに、道路の渋滞情報を用いてもよい。例えば、コントローラ10は、渋滞区間の長さと混雑度が対応付けられたマップであって、エリアごとに予め設定されたマップを用いて、道路の混雑度を推定する。コントローラ10は、所定期間ごとにエリアごとに渋滞情報を取得し、予め設定されたマップを参照し、取得した渋滞情報に含まれる渋滞区間の長さに対応する道路の混雑度を算出してもよい。
【0044】
次に、混雑度増加エリア判定機能について説明する。コントローラ10は、混雑度増加エリア判定機能により、これから道路の混雑度が増加する可能性のあるエリア(以降、混雑度増加エリアともいう)又は既に道路の混雑度が増加したエリアの有無を判定する。例えば、コントローラ10は、所定期間ごとに、混雑度推定機能により推定された各エリアの混雑度を、一時的にRAM等の記憶装置に蓄積させる。そして、コントローラ10は、エリアごとに、所定期間が経過する前後での混雑度の変化量を算出し、変化量が所定の基準を超えたエリアがある場合、該当するエリアを混雑度増加エリアとして判定する。
【0045】
また、混雑度増加エリアの有無を判定する方法は、上記判定方法に限られず、混雑度の大きさから、混雑度増加エリアの有無を判定してもよい。例えば、コントローラ10は、混雑度の大きさが所定の基準よりも大きいエリアがある場合、該当するエリアを混雑度増加エリアとして判定してもよい。この場合、混雑度増加エリアとして判定されたエリアでは、道路が既に混雑していることになる。なお、混雑度増加エリアの判定に用いられる所定の基準は、特に限定されるものではなく、実験的に求められたものである。
【0046】
図2は、混雑度増加エリア判定機能による判定結果の一例である。
図2は、車両管理システム1による配車サービスを実施することが可能な地域を示している。説明の便宜上、この地域は、A1~A3、B1~B3、C1~C3の9つのエリアに区分されている。
図2の例では、コントローラ10は、所定の期間ごとに、9つのエリアについて混雑度を推定し、各エリアの混雑度の大きさが所定の基準よりも大きいか否かを判定する。そして、コントローラ10は、混雑度の大きさが所定の基準よりも大きいエリア(
図2の例では、エリアA2)がある場合、このエリアを混雑度増加エリアとして判定する。
図2の例では、コントローラ10により混雑度増加エリアとして判定されたエリアは、斜線で示されている。
【0047】
次に、需要増加エリア判定機能について説明する。コントローラ10は、需要増加エリア判定機能により、これから車両Vの利用が増加する可能性のあるエリア(以降、需要増加エリアともいう)の有無を判定する。コントローラ10は、エリアごとに、車両Vの需要度を推定し、車両Vの需要度に応じて需要増加エリアの有無を判定する。例えば、コントローラ10は、通信装置30を介して、各エリアで開催が予定されているイベントの情報を取得する。そして、コントローラ10は、イベントの開催場所、イベントの出演者、イベント主催会社等の情報に基づいて、イベント開催の時間帯における車両Vの需要度を推定する。例えば、コントローラ10は、イベントの開催場所が特定の施設であり、この施設の収容人数が所定の基準を超えている場合、車両Vの需要度として比較的高い値を推定する。
【0048】
また、コントローラ10は、データベース20に格納された環境情報24に基づいて、エリアごとの車両Vの需要度を推定してもよい。例えば、コントローラ10は、データベース20から、エリアごとの鉄道各線の運行状況を取得する。仮に、運行を見合わせている鉄道がある場合、コントローラ10は、この鉄道が通過するエリアでは、車両Vの需要度として比較的高い値を推定する。なお、需要度の推定方法は、上記方法に限られない。
【0049】
そして、コントローラ10は、所定期間ごとに、各エリアの需要度を一時的にRAM等の記憶装置に蓄積させる。コントローラ10は、エリアごとに、所定期間が経過する前後での需要度の変化量を算出し、変化量が所定の基準を超えたエリアがある場合、該当するエリアを需要増加エリアとして判定する。なお、需要増加エリアの判定に用いられる所定の基準は、特に限定されるものではなく、実験的に求められたものである。
【0050】
次に、満足度限界時間算出機能について説明する。コントローラ10は、満足度限界時間算出機能により、所定値以上の満足度が得られたユーザの待ち時間のうち、最長の待ち時間と、所定値以上の満足度が得られたユーザの乗車時間のうち、最長の乗車時間とを、それぞれ満足度限界時間として算出する。ユーザの待ち時間とは、利用要求を行った時点から車両Vが利用開始地点に到着するまでの時間である。また、ユーザの乗車時間とは、車両Vが利用開始地点から出発した時点から利用終了地点に到着するまでの時間である。
【0051】
コントローラ10は、利用履歴情報22に含まれるユーザの満足度に基づいて、満足度限界時間を算出する。利用履歴情報22に含まれるユーザの満足度には、利用要求を行ってから利用開始地点で乗車するまでのユーザの待ち時間に対するユーザの満足度と、利用開始地点から利用終了地点までのユーザの乗車時間に対するユーザの満足度とが含まれる。
【0052】
例えば、コントローラ10は、利用履歴情報22について、利用開始地点までの車両Vの走行距離ごとに分けて、走行距離に関する複数のグループを作成する。次に、コントローラ10は、グループごとに、利用開始地点でのユーザの待ち時間とこの待ち時間に対する満足度の散布図(例えば、X軸が待ち時間、Y軸が満足度のXY図)を作成し、待ち時間と満足度との関係性を把握する。そして、コントローラ10は、グループごとに、所定の基準値以上の満足度が得られた待ち時間のうち最長の待ち時間を、満足度限界時間として算出する。
【0053】
また、コントローラ10は、利用開始地点から利用終了地点までのユーザの乗車時間に対する待ち時間についても、同様の処理を実行する。コントローラ10は、利用開始地点から利用終了地点までの車両Vの走行距離ごとに分けて、走行距離に関する複数のグループを作成する。次に、コントローラ10は、グループごとに、ユーザの乗車時間とこの乗車時間に対する満足度の散布図(例えば、X軸が乗車時間、Y軸が満足度のXY図)を作成し、乗車時間と満足度との関係性を把握する。そして、コントローラ10は、グループごとに、所定の基準値以上の満足度が得られた乗車時間のうち最長の乗車時間を、満足度限界時間として算出する。
【0054】
なお、上記の所定の基準値は、グループごとに定められ、また走行距離に応じて異なる値である。また、利用開始地点での待ち時間から満足度限界時間を算出する場合と、利用開始地点から利用終了地点までの乗車時間から満足度限界時間を算出する場合とでは、異なる基準値を用いてもよい。
【0055】
次に、満足度限界速度算出機能について説明する。コントローラ10は、満足度限界速度算出機能により、満足度限界時間に対応するエリア内の車両Vの平均速度として、満足度限界速度を算出する。
【0056】
満足度限界速度の算出方法の一例について説明する。コントローラ10は、エリア内の車両Vの台数を最大にした場合における車両の位置から利用開始地点までの平均距離を算出し、算出した平均距離を満足度限界時間で除算してエリア内の車両Vの平均速度を算出する。エリア内の車両Vの最大の台数とは、ユーザの満足度が所定値以上得られた配車実績に基づいて予め定められた台数である。配車実績には、配車先のエリアの情報、配車した車両Vの台数が含まれ、配車実績は、エリアごとに区分けされて、データベース20に格納されている。
【0057】
また、コントローラ10は、エリア内の車両Vの台数を最大にした場合における利用開始地点から利用終了地点までの平均距離を算出し、算出した平均距離を満足度限界時間で除算してエリア内の車両Vの平均速度を算出する。これにより、平均距離を満足度限界時間で走行するための、2種類の車両Vの平均速度が算出される。そして、コントローラ10は、算出した2つの平均速度のうち速い方を、満足度限界速度とする。
【0058】
次に、
図3~
図6を用いて、具体的に、満足度限界速度について説明する。
図3は、車両位置から各目的地までの距離と、それぞれの距離までの所要時間との関係を説明するための図である。縦軸は距離を示し、横軸は所要時間を示す。また、縦軸において、原点(0)はユーザにより指定された利用終了地点を示し、黒丸は配車指示を受ける前の車両Vの位置(以降、車両位置とも称す)を示す。車両位置と利用開始地点の間にはユーザにより指定された利用終了地点がある。横軸において、所要時間T
1は、車両Vが車両位置から利用開始地点まで走行するのに要した時間を示し、所要時間T
2は、車両Vが車両位置から利用終了地点まで走行するのに要した時間を示す。なお、
図3では、後述する
図4との比較のために、エリア内の車両Vの平均速度を通常速度として示す。通常速度は、車両位置から利用開始地点までの距離を所要時間T
1で除算することで、あるいは車両位置から利用終了地点までの距離を所要時間T
2で除算することで算出される。
図3では、利用開始地点までの車両Vの平均速度と、利用開始地点から利用終了地点までの車両Vの平均速度は同じものとする。
【0059】
図4は、道路の混雑度が増加した場合の所要時間を説明するための図である。道路の混雑度が増加すると、車両Vの走行速度が低下し、単位時間当たりの車両Vの走行時間である車両Vの平均速度も低下する。
図4では、車両Vの平均速度が
図3に示す通常速度よりも低下したため、車両位置から利用開始地点までの所要時間は、所要時間T
1から所要時間T
3(>所要時間T
1)まで遅延している。また、車両位置から利用終了地点までの所要時間も、所要時間T
2から所要時間T
4(>所要時間T
2)まで遅延している。
【0060】
図5は、満足度限界速度の一例を説明するための図である。
図5において、限界待ち時間ΔT
1は、車両Vに乗車するまでのユーザの待ち時間のうち、ある程度の満足が得られる待ち時間であって最長の待ち時間を示す。限界乗車時間ΔT
2は、車両Vのユーザの乗車時間のうち、ある程度の満足が得られる乗車時間であって最長の乗車時間を示す。
図5の例では、限界乗車時間ΔT
2の方が限界待ち時間ΔT
1よりも長いものとする。また、
図5において、車両位置から利用開始地点までの平均距離は、エリア内の車両Vの台数を最大にした場合における平均距離を示す。
【0061】
図5の例では、コントローラ10は、車両位置から利用開始地点までの平均距離を、限界待ち時間ΔT
1で除算することで、限界速度V
1を算出する。限界速度V
1は、車両位置から利用開始地点までの車両Vの平均速度である。また、コントローラ10は、利用開始地点から利用終了地点までの平均距離を、限界乗車時間ΔT
2で除算することで、限界速度V
2を算出する。限界速度V
2は、利用開始地点から利用終了地点までの車両Vの平均速度である。
【0062】
コントローラ10は、限界速度V
1と限界速度V
2を比較し、速い方の限界速度を満足度限界速度V
mとする。
図5の例では、限界速度V
1の方が限界速度V
2よりも速く、満足度限界速度V
mは限界速度V
1になる。
【0063】
図6は、満足度限界速度の他の例を説明するための図である。
図6は、限界待ち時間ΔT
1と限界乗車時間ΔT
2の時間の大小関係が異なる点以外は、
図5と同様のため、
図5において説明した内容を適宜援用する。
図6の例では、限界待ち時間ΔT
1の方が限界乗車時間ΔT
2よりも長いものとする。
【0064】
図6の例の場合、限界待ち時間ΔT
1の方が限界乗車時間ΔT
2よりも長いため、限界速度V
2の方が限界速度V
1よりも速く、満足度限界速度V
mは限界速度V
2になる。
【0065】
次に、平均速度判定機能について説明する。コントローラ10は、平均速度判定機能により、エリア内の車両Vの平均速度が満足度限界速度Vmよりも速いか否かを判定する。コントローラ10は、エリア内の車両Vの平均速度を算出し、算出した平均速度と満足度限界速度Vmを比較する。コントローラ10は、車両Vの平均速度が満足度限界速度Vmよりも速い場合、エリア内の車両Vの台数を増やすことで、ユーザにより指定された利用開始地点と車両Vの位置との間の平均距離を短くできると判断する。
【0066】
図5の例の場合、コントローラ10は、車両Vの平均速度が限界速度V
1(満足度限界速度V
m)よりも速い場合、エリア内の車両Vの台数を増やすことで、車両位置から利用開始地点までの平均距離を短くできると判断する。また、
図6の例の場合、コントローラ10は、車両Vの平均速度が限界速度V
2(満足度限界速度V
m)よりも速い場合、エリア内の車両Vの台数を増やすことで、車両位置から利用開始地点までの平均距離を短くできると判断する。
【0067】
一方、コントローラ10は、車両Vの平均速度が満足度限界速度Vmよりも遅い場合、エリア内の車両Vの台数を増やし、ユーザにより指定された利用開始地点と車両Vの位置との間の平均距離を短くしても、利用開始地点への遅れを抑制することは難しいと判断する。
【0068】
次に、突発事象検出機能について説明する。コントローラ10は、突発事象検出機能により、混雑度増加エリア内で発生した突発的な事象を検出する。突発的な事象としては、例えば、エリア内で発生した災害、鉄道やバスなどの公共交通機関における事故などが挙げられる。コントローラ10は、エリア内の災害に関する情報、エリア内に存在する交通機関の運行状況に関する情報を取得する。具体的には、コントローラ10は、環境情報24から、混雑度増加エリア内での突発的な事象の発生の有無、発生事象の内容などを抽出することで、混雑度増加エリアにおいて突発的な事象が発生しているか否かを判定する。なお、コントローラ10が取得する情報は、災害に関する情報、交通機関の運行状況に関する情報に限られず、その他の情報が含まれていてもよい。
【0069】
次に、車両台数変更機能について説明する。コントローラ10は、車両台数変更機能により、混雑度増加エリア内の車両Vの台数を増加させる。車両Vの移動元は特に限定されない。例えば、コントローラ10は、混雑度増加エリアの周辺エリアを移動対象エリアとして設定する。そして、コントローラ10は、当該移動対象エリアに配置されている車両Vに搭載された車載装置200Vに対して、移動指示を送信する。移動指示には、混雑度エリアへ移動への移動指示が含まれる。
【0070】
また、コントローラ10は、混雑度増加エリア内において、車両Vが満足度限界速度で走行したと仮定した場合に、満足度限界時間以内で利用開始地点又は利用終了地点に到着できる位置に車両Vを配置させる。また、コントローラ10は、エリア内での車両の分布が均一になるように、混雑度増加エリア内に車両Vを配置させる。例えば、コントローラ10は、エリア内での各車両Vの配置地点を設定する。そして、コントローラ10は、エリア内に当初から配置されていた車両Vに対しては、移動先の配置地点の情報を移動指示とともに送信する。また、コントローラ10は、混雑度増大エリア以外のエリアから入ってくる車両Vに対しては、配置地点の情報を移動指示とともに送信する。
【0071】
続いて、本実施形態の車両管理システムの制御手順を示すフローチャートである
図7に基づいて、本実施形態の車両管理システムの制御処理について説明する。制御処理は、所定の周期毎に繰り返し実行される。
図7は、本実施形態に係る車両管理システムの制御手順を示すフローチャートである。
【0072】
ステップS101では、コントローラ10は、エリア内の交通情報を取得する。交通情報には、少なくとも、エリア内に配置された車両Vの平均速度と、エリア内の道路の渋滞情報が含まれる。コントローラ10は、配車サービスが実施されている地域が複数のエリアで区分されている場合、エリアごとに交通情報を取得する。
【0073】
ステップS102では、コントローラ10は、エリアごとに、道路の混雑度を推定する。道路の混雑度の推定方法としては、例えば、車両Vの平均速度と混雑度が対応付けられたマップ、渋滞区間の長さと混雑度が対応付けられたマップ等を用いたマップ処理が挙げられる。
【0074】
ステップS103では、コントローラ10は、混雑度増加エリアの有無を判定する。コントローラ10は、ステップS102にて推定した各エリアの混雑度が所定の基準値よりも大きいか否かを判定することで、混雑度増加エリアの有無を判定する。混雑度増加エリアがあると判定した場合、ステップS104へ進み、混雑度増加エリアがないと判定した場合、ステップS110へ進む。
【0075】
ステップS104では、コントローラ10は、満足度限界速度を算出する。このステップでは、まず、コントローラ10は、満足度限界時間を算出する。例えば、コントローラ10は、利用履歴情報22に含まれるユーザの満足度に基づいて、満足度限界時間を算出する。コントローラ10は、2種類の満足度限界時間を算出する。コントローラ10は、ある程度の満足感が得られるユーザの待ち時間のうち最長の待ち時間と、ある程度の満足感が得られるユーザの乗車時間のうち最長の乗車時間とを、それぞれ満足度限界時間として算出する。満足感に関する基準は、特に限定されず、実験的に求められたものである。
【0076】
次に、コントローラ10は、満足度限界時間に対応する車両Vの平均速度として、満足度限界速度を算出する。コントローラ10は、エリア内の車両Vの台数を最大にした場合における車両の位置から利用開始地点までの平均距離を算出する。また、コントローラ10は、エリア内の車両Vの台数を最大にした場合における利用開始地点から利用終了地点までの平均距離を算出する。コントローラ10は、それぞれの平均距離を、対応する満足度限界時間で除算することで、2種類の限界速度を算出する。コントローラ10は、2種類の限界速度を比較し、速い方の限界速度を満足度限界速度とする。
【0077】
図5、
図6の例の場合、限界待ち時間ΔT
1と限界乗車時間ΔT
2は、コントローラ10により算出された満足度限界時間である。また、
図5、
図6において、車両位置から利用開始地点までの距離及び利用開始地点から利用終了地点までの距離は、コントローラ10により算出された平均距離である。また、
図5、
図6において、限界速度V
1及び限界速度V
2は、コントローラ10により算出された2種類の限界速度である。
図5の例の場合、満足度限界速度V
mは限界速度V
1に該当し、
図6の例の場合、満足度限界速度V
mは限界速度V
2に該当する。
【0078】
ステップS105では、コントローラ10は、混雑度増加エリア内の車両Vの平均速度を算出する。例えば、コントローラ10は、所定期間ごとに車両Vから逐次的に送信される車両Vの位置情報を一時的にRAM等の記憶装置に蓄積させる。次に、コントローラ10は、所定期間が経過する前後で車両Vが移動した距離を所定期間で除算することで、エリア内の車両Vの平均速度を算出する。
【0079】
ステップS106では、コントローラ10は、ステップS105にて算出した車両Vの平均速度とステップS104にて算出した満足度限界速度とを比較する。車両Vの平均速度が満足度限界速度以上の場合、ステップS107へ進み、車両Vの平均速度が満足度限界速度よりも遅い場合、ステップS108へ進む。
【0080】
ステップS107では、コントローラ10は、エリア内の車両Vの台数を増加させる。例えば、コントローラ10は、ステップS103にて判定された混雑度増加エリアの周辺に配置された車両Vを混雑度増加エリアへ移動させることで、混雑度増加エリアの車両Vの台数を増加させる。ステップS107での処理が終了すると、車両管理システムの制御は終了する。
【0081】
ステップS106において、車両Vの平均速度が満足度限界速度よりも遅い場合、ステップS108へ進む。ステップS108では、コントローラ10は、混雑度増加エリア内で発生した突発事象を検出する。例えば、コントローラ10は、環境情報24から、混雑度増加エリア内での渋滞情報、事故発生情報、又は公共交通機関における事故情報等の有無を検出する。
【0082】
ステップS109では、コントローラ10は、ステップS108にて検出した結果から、混雑度増加エリア内で突発事象が発生しているか否かを判定する。突発事象が発生しているか否かの判定基準は、特に限定されない。例えば、エリア内にて災害が発生している場合や、公共交通機関で鉄道各線が運行を中止している場合には、コントローラ10は、突発事象が発生していると判定する。突発事象が発生していると判定した場合には、ステップS107へ進み、突発事象が発生していないと判定した場合には、車両管理システムの制御を終了する。
【0083】
ステップS103において、混雑度増加エリアがないと判定した場合、ステップS110へ進む。ステップS110では、コントローラ10は、エリアごとに、車両Vの需要度を推定する。例えば、コントローラ10は、各エリアで開催予定のイベントの情報を取得する。そして、コントローラ10は、イベントの規模の情報に基づいて、イベント開催予定のエリアの車両Vの需要度を推定する。
【0084】
ステップS111では、コントローラ10は、ステップS110にて推定した需要度に基づいて、需要度が所定の基準より高いエリアがあるか否かを判定する。需要度が基準よりも高いエリアがあると判定した場合、ステップS107に進み、需要度が基準よりも高いエリアはないと判定した場合、車両管理システムの制御は終了する。
【0085】
以上のように、本実施形態に係る車両管理システム1は、コントローラ10を用いて、複数のユーザに共用される複数の車両Vを管理する。コントローラ10は、エリアの交通情報を取得し、取得した交通情報に基づいて、エリア内の道路の混雑度を推定し、混雑度が所定の基準値よりも大きい混雑度増加エリアがある場合、混雑度増加エリア内の車両Vの台数を増加させる。これにより、車両Vの台数を増加させる前と比べて、車両位置から利用開始地点及び利用終了地点までの平均距離を縮めることができるため、利用開始地点又は利用終了地点への到着の遅れを抑制することができる。その結果、ユーザに不満を与えることを抑制し、配車サービスの利用機会の増大を図ることができる。
【0086】
また、本実施形態では、コントローラ10は、混雑度増加エリア内での車両Vの分布が均一となるように、エリア内に車両Vを配置する。これにより、ユーザがエリア内のどの地点に、利用開始地点及び利用終了地点を指定した場合であっても、車両位置から利用開始地点及び利用終了地点までの距離を縮めることができる。
【0087】
さらに、本実施形態では、車両管理システム1は、混雑度増加エリア内でのユーザによる車両Vの利用履歴情報22と当該エリア内への配車台数の実績を記憶するデータベース20を備えている。車両Vの利用履歴情報22には、ユーザにより指定された利用開始地点及び利用終了地点に到着するまでの車両Vの所要時間に対する満足度が含まれている。コントローラ10は、利用履歴情報22及び配車台数の実績に基づいて、所定値以上の満足度が得られた所要時間のうち、最長の所要時間を満足度限界時間として算出し、満足度限界時間に対応する満足度限界速度を算出する。そして、コントローラ10は、車両Vが満足度限界速度で走行したと仮定した場合、満足度限界時間以内で利用開始地点又は利用終了地点に到着できる位置に車両Vを配置させる。これにより、エリア内の車両Vの平均速度が低下した場合であっても、ユーザに不満を与えない範囲内の所要時間で利用開始地点及び利用終了地点に到着することができる。
【0088】
加えて、本実施形態では、コントローラ10は、混雑度増加エリアの災害に関する情報、交通機関の運行状況に関する情報を取得し、取得した情報に基づいて、混雑度増加エリア内に突発的な事象が発生しているか否かを判定する。そして、コントローラ10は、混雑度増加エリア内に突発的な事象が発生していると判定した場合、混雑度増加エリアの車両Vの平均速度が満足度限界速度よりも遅い場合であっても、混雑度増加エリア内の車両Vの台数を増加させる。これにより、突発的な事象が発生しているため移動が困難な状況においても、ユーザが車両Vを利用する機会を増やすことができる。
【0089】
また、本実施形態では、コントローラ10は、エリア内での車両Vの需要度を推定し、需要度が所定の基準よりも高い場合、エリア内の道路の混雑度が所定の基準値よりも小さい場合であっても、当該エリア内の車両Vの台数を増加させる。これにより、車両Vを必要とするエリアにおいて、車両Vの台数が不足することを抑制するとともに、車両位置から利用開始地点及び利用終了地点までの平均距離を縮めることができるため、利用開始地点又は利用終了地点への到着の遅れを抑制することができる。
【0090】
なお、以上に説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0091】
例えば、上述した実施形態において、コントローラ10は、算出した満足度限界時間に対して、エリア内の天気及び車両Vの利用要求を行った時間帯のうち何れか一つに基づいて変更してもよい。例えば、コントローラ10は、エリア内の天気が雨の場合又は降雨予報がある場合、満足度限界時間を縮める。また、例えば、コントローラ10は、車両Vの利用要求を行った時間帯が正午前後の時間帯の場合、満足度限界時間を縮める。これにより、雨天やランチタイムの時間帯のように、ユーザが利用開始地点で車両Vを待つ時間を短くしたいと考えるような状況に対応して、満足度限界時間を変更することができる。その結果、車両位置から利用開始地点及び利用終了地点までの平均距離を環境に応じて適切に縮めることができるため、環境が変化した場合であっても、配車サービスの品質の均一性を確保することができる。
【0092】
また、例えば、上述した実施形態では、車両Vを利用したユーザの満足度に基づいて、満足度限界時間を算出する構成を例に挙げて説明したが、満足度限界時間の算出方法はこの構成に限られない。また、上述した実施形態では、エリア内の車両Vの台数を最大にした場合における車両の位置から利用開始地点までの平均距離を算出し、平均距離を満足度限界時間で除算することで満足度限界速度を算出する構成を例に挙げて説明したが、満足度限界速度の算出方法はこの構成に限られない。例えば、車両V以外の他の移動手段の利用履歴を用いて、満足度限界時間及び満足度限界速度を算出してもよい。
【0093】
例えば、データベース20には、ユーザが他の移動手段を利用した際の利用履歴として、所定の目的地(利用開始地点又は利用終了地点に相当)に到着するまでの他の移動手段の所要時間に対するユーザの満足度が記憶されていたとする。この場合、コントローラ10は、他の移動手段の利用履歴に基づいて、所定値以上の満足度が得られた所要時間のうち最長の所要時間を、満足度限界時間として算出する。そして、コントローラ10は、算出した満足度限界時間に基づいて、満足度限界速度を算出する。これにより、例えば、車両Vの利用要求が少ないエリアのため、利用履歴の件数が少ない場合であっても、エリア内の道路の混雑度が所定の基準値よりも大きくなった場合にエリア内の車両Vの台数を適切に増やすことができる。
【0094】
また、満足度限界時間及び満足度限界速度の算出に用いられる利用履歴は、特定のユーザが車両Vを利用した際の利用履歴に限られず、複数のユーザによる複数の利用履歴であってもよい。例えば、ユーザの属性が同一又は類似の複数のユーザを抽出し、抽出された複数のユーザによる複数の利用履歴に基づいて、満足度限界時間及び満足度限界速度を算出してもよい。ユーザの属性としては、例えば、年齢、性別、運転技量、国籍、車両Vの同乗者の構成などが挙げられる。
【0095】
また、例えば、本明細書では、本発明に係る車両管理システムを、車両管理システム1を例に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。また、本明細書では、本発明に係るコントローラを、コントローラ10を例に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。また、本明細書では、本発明に係るデータベースを、データベース20を例に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。また、本明細書では、本発明に係る車両を、車両Vを例に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。また、本明細書では、本発明に係る突発事象情報を、環境情報24を例に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0096】
1…車両管理システム
100…車両管理装置
10…コントローラ
20…データベース
30…通信装置
V1~Vn…車両
200V1~200Vn…車載装置
300A~300Z…ユーザ端末装置