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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】ネットスポンジ
(51)【国際特許分類】
   A47L 17/08 20060101AFI20221206BHJP
   A47L 13/16 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
A47L17/08
A47L13/16 B
A47L13/16 C
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018124362
(22)【出願日】2018-06-29
(65)【公開番号】P2020000622
(43)【公開日】2020-01-09
【審査請求日】2021-06-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000000077
【氏名又は名称】アキレス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】今野 浩行
【審査官】新井 浩士
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-285316(JP,A)
【文献】特開平11-061618(JP,A)
【文献】特開2002-161466(JP,A)
【文献】特表2001-519189(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47L 13/16,13/17,17/08
A47K 7/02
B65D 30/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットと、前記ネットに封入されるスポンジからなるネットスポンジであり、前記ネットのスポンジ挿入部であるネット端部の一部にネット接着部を設けられており、前記ネット接着部の目付けが1~13mg/mmあり、前記ネット接着部の面積が、ネットスポンジの前記ネット端部の面積を100%とした際の、5~50%の面積を占めており、ネット本体の糸部材は、50~450デニールの糸で、前記ネット端部の糸部材は、50~450デニールの糸とポリウレタン系弾性糸の混合糸であって、前記ネット端部とは、ネットスポンジにおけるスポンジとネットの非接触部であるネットのみにより構成される部分であることを特徴とするネットスポンジ。
【請求項2】
前記ネット本体の糸部材は100デニールのポリエチレンフィラメント糸であり、前記ネット端部の糸部材は、100デニールのポリエチレンフィラメント糸とポリウレタン弾性糸の混合糸であることを特徴とする請求項1に記載のネットスポンジ。
【請求項3】
前記ネット接着部の形状が、破線状、ドット状、多角形状であることを特徴とする請求項 1~2に記載のネットスポンジ。









【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に台所での食器の洗浄や、風呂場等の清掃に用いられるネットスポンジに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食器等の洗浄用具や清掃用具としては、プラスチックフィルムからなる平糸、紡績糸等を編成したネットや、前記ネットを袋状に形成してスポンジを封入したネットスポンジが広く知られている。これらのような洗浄具は、表面に糸の角部や網目を多数有していて、これらが清掃の対象物に接触した状態で擦りつけられることで、汚れをすくい取ったり、掻き取ったりすることで、高い清掃能力を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-305129号公報
【文献】登録実用新案第3111960号公報
【発明の概要】
【0004】
一般に、前記ネットにスポンジを封入するためには、前記ネットを筒状に連続して編み、所定の長さで切り分け、一方の開口部を縫着により閉じて袋状にし、他方の開口部よりスポンジを挿入した後、スポンジ挿入部を縫着により閉じるという方法によって製造される。スポンジ挿入部を縫製した場合、製造時には縫製端部の糸を切断する必要があり、手間がかかっていた。また、袋状となったネットの少なくとも表裏面の重なる部分を縫製するため、縫製に使用する糸がネットを構成する糸と同じであると、縫製中に糸が切断されてしまう可能性がある。また、縫製に使用する糸がネットを構成する糸よりも切断しにくい硬い糸を使用すると、縫製部分が周囲のネット部分と比べて硬くなってしまい、感触が悪くなってしまう。
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記問題点を解決し、スポンジ挿入部の縫製端部の糸を切断する必要のないネットスポンジとし、ネットスポンジのスポンジ挿入部の感触が良く、使用時に剥がれにくいネットスポンジを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、
(1)ネットと、前記ネットに封入されるスポンジからなるネットスポンジであり、
前記ネットのスポンジ挿入部の少なくとも一部にネット接着部を設けられており、
前記ネット接着部の目付けが1~13mg/mmであることを特徴とするネットスポンジである。
また、
(2)前記ネット接着部の面積が、ネットスポンジのネット端部の面積を100%とした際の、5~50%の面積を占めることを特徴とすることが好ましい。
さらに、
(3)前記ネット接着部の形状が、破線状、ドット状、多角形状であることが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明におけるネットスポンジのネットは、スポンジ挿入部の少なくとも一部にネット接着部を設けるため、従来のスポンジ挿入部を縫製するように、糸を使う必要がないことから、縫製後の糸の切断が必要なく、また、前記ネット接着部の目付けが1~13mg/mmであるため、十分な接着強度を持ち、さらに、洗浄用具として使用する際に手に持った感触が、好適であることを特徴とする。
【0008】
本発明におけるネットスポンジの前記ネット接着部は、ネットスポンジのネット端部の面積を100%とした際の5~50%の面積を占めることで、接着強度と身体接触時の感触がさらに良好となり、特に、接着端部からのはがれを抑制できる。
【0009】
本発明におけるネットスポンジは、前記ネット接着部が一定間隔をあけた破線状、ドット状、多角形状であれば、使用時に身体が接着部に触れることが少なくなり、また、一定間隔をあけて接着することで、部分的な引張り強度が安定し、圧縮しやすくなり、身体接着部の感触は、非溶着部と同様に良好となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】ネットスポンジの外観図である
図2】ネットスポンジ端部の図である
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面に基づいて本発明を詳しく説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されない。
【0012】
図1は、本発明のネットスポンジ1の外観図である。図2は、ネットスポンジ端部の図である。
【0013】
本発明のネットスポンジ1は、図1の外観図に示すように、ネット10と、ネット内部に挿入されるスポンジ11とからなり、スポンジ挿入部のネットが接着されていることを特徴とする。
【0014】
本発明のネットスポンジ1のスポンジ11は、多孔性の軟質ポリウレタンフォームであることが好ましい。軟質ポリウレタンフォームの物性としては、密度30~100kg/mm、40%圧縮硬さは20~100Nである。また、軟質ポリウレタンフォームは、無膜処理されていてもよい。無膜処理されたポリウレタンフォームであれば、通気、通水性がよく、使用後の乾燥が容易に行われ、カビ等が発生し難い。
【0015】
本発明のネットスポンジ1のネット10は、一種又は複数種の糸を使用し、タテ又はヨコ方向にループを繰返し平面状に編まれた布であり、編物の構造はループの集合で構成されている。
【0016】
前記ネット10に用いることのできる糸部材としては、ナイロン、ポリエステル、アクリル、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン等からなる柔軟性を有している繊維や、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン等のプラスチックフィルムからなる平糸、その他金属蒸着させたもの等、従来からネットスポンジに使用されているものを用いることができる。
【0017】
前記糸部材のサイズは特に限定されないが、50~450デニールであることが好ましい。50デニール未満の場合は糸が細くなり、使用時にホツレが発生しやすくなる。さらに、接着部の接着強度が低く、繰り返しの使用により剥がれてしまう可能性がある。また、糸部材のサイズが450デニールを超える場合は、糸が太くなり生産時に糸が目詰まりして生産性が悪化する可能性がある。なお、糸部材は、1本のみで使用してもよく、同種類の糸部材または、異種類の糸部材を2本以上として重ねて使用してもよい。
【0018】
本発明におけるネットスポンジ1のネット10の編み方は、開口部を1部(辺)のみの袋状に一体的に編み上げられるものであれば特に限定されないが、横編み機を用いることが好ましい。前記ネットを袋状に一体的に編み上げると、ネットの裁断箇所がなく、端部のほつれの発生を防ぐことができる。また、前記裁断箇所がないため、ネットを構成している糸部材の端材等の発生がなく、端材の製品への混入を防ぐことができる。
【0019】
前記ネットスポンジのスポンジ挿入部の接着方法としては、接着剤によるもの、超音波溶着、熱溶着、高周波溶着等が挙げられる。特に限定されないが、接着強度、風合い、仕上がりの美観の点から超音波溶着であることが特に好ましい。
【0020】
前記スポンジ挿入部を溶着する場合は、糸部材として、融点が80~300℃の合成繊維を用いることが好ましい。糸部材の融点が80℃未満の場合は使用時や洗浄時に溶融してしまう可能性がある。また、300℃以上の場合は、使用の際に特に影響はないが、生産時の溶着の際に出力を高くする必要がある。融点が200℃を超える繊維として、ポリエステル、ナイロン、アクリル等が挙げられる。
【0021】
糸部材として、融点が80~200℃以下の低融点繊維であることが接着性の点から特に好ましい。融点が80~200℃の合成繊維の例としては、ポリエチレン、ビニリデン、ポリプロピレン、低融点ポリエステル等が挙げられる。
【0022】
さらに前記スポンジ挿入部を溶着する際の糸部材として、糸部材の少なくとも一部を融点が80~140℃である熱溶融糸を用いることがさらに好ましい。融点が140℃以下の熱溶融糸であれば、溶着において十分な接着強度を得ることができる。融点が140℃以下の繊維の例として、低融点ナイロン等が挙げられる。
【0023】
前記ネットスポンジのネット接着部4の目付けは、1~13mg/mmであることが好ましい。ネット接着部の目付けが1mg/mm未満では、接着はするが、清掃や洗浄において圧縮、屈曲があると剥離してしまう可能性がある。一方、接着部の目付けが13mg/mmを超えると、接着部の目付けが非接着部の目付けより大きくなりすぎてしまい、身体接触時の触感が悪くなる。より好ましくは、接着部の目付けは3~9mg/mmである。3mg/mm以上であれば、清掃や清掃において繰り返し圧縮や屈曲でも剥離せず使用することができる。また、9mg/mm以下であれば、身体接触時の触感と接着強度を維持できる。
【0024】
前記ネットスポンジのネット接着部4の目付けを調整する方法としては、接着部を構成する糸部材を複数本使用したり、糸のサイズの大きいものを使用したり、ネットの折り返しまたは、伸縮性を有する糸部材を含ませてカールさせることで調整してもよい。
【0025】
伸縮性を有する糸部材を含ませて糸部材の量を調整する方法としてはスポンジ挿入部において、スポンジ挿入部端部から5~25mmの範囲において、伸縮性を有する糸部材を含ませて一緒に編み込むことが好ましい。
通常、スポンジ挿入部を接着する際には、図2(a)のようにスポンジ挿入部の開口端部5を内側矢印方向に手作業で折り込んで接着するが、前記範囲において伸縮性の糸部材を含ませて編むと、前記範囲が縮み易くなり、図2(b)のようにスポンジ挿入部の開口端部5が自動的に内側へと折り込まれ易くなる。このため、接着部分のネット端部の目付けが増えるため、スポンジ挿入部の接着強度が高くなり、使用時のスポンジ挿入部のはがれを抑制できる。
【0026】
前記伸縮性の糸部材は、常温で50%以上の伸度を持つ弾性糸が好ましい。常温における伸度が50%未満の場合、スポンジ挿入部端部の内側への自動的な折り込み性が十分に生じず、接着した際に十分な接着強度が得られなくなる。
【0027】
前記ネットスポンジのネット接着部4の面積は、ネットスポンジのネット端部3の面積を100%とした際の、5~50%の面積を占めることを特徴とすることが好ましい。
ネットスポンジ端部の面積とは、図1に示すように、ネットスポンジ中のネット端部3のようにネットのみにより構成されるスポンジとネットの非接触部分の面積である。
ネットスポンジのネット端部3の面積を100%とした際に、ネット接着部4が5%未満の場合は、ネット表裏面の接着力が弱いため、使用時に剥がれる恐れがある。ネット接着部4が50%を超えると、接着力はあるが、接着面積が大きくなるため、手で触ったときに接着部分に触れ、感触が悪くなる。さらに、接着部の面積割合が大きくなると、接着端部にかかる負荷が大きくなり、使用時に剥がれやすくなる。ネットスポンジのネット接着部4の面積としてネット端部3の面積を100%としたさいに10~30%であることが、さらに好ましい。この範囲であれば、ネットスポンジの接着部分が手に触れることがほとんどなく、さらに十分な接着強度が得られるため、好ましい。
【0028】
前記ネットスポンジのネット接着部4の形状は、幅方向に全面接着する平板状、一定間隔で接着する破線状、ドット状、多角形状などに設定することができるが特に限定されない。身体接触時の触感としては、ネット接着部4に身体が触れることがないことが好ましく、一定間隔で接着する破線状、ドット状、多角形状であることがより好ましい。さらに、前記ネット接着部4の破線、ドット、多角形状の接着部の形成方法としては、特に限定されないが、超音波融着機の2対のホーン形状を凹凸とし凸部分同士を接触させる方法は接着強度が安定するため、より好ましい。
【0029】
次に実施例を用いて本発明を更に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例
【0030】
(使用した糸)
ネット本体の糸部材:100デニールのポリエチレンのフィラメント糸(融点250℃)
ネット端部の糸部材:100デニールのポリエチレンフィラメント糸(融点250℃)と
ポリウレタン系弾性糸(伸度250%、融点200℃)の混合糸
【0031】
<実施例1>
横編み機を用い、ポリエチレンの糸部材を用いてネットを縫製し、開口端部から5mmの範囲において弾性糸を併用して、ネット端部の目付けが1.0mg/mm2となるように度目を調整し、ネット端部の面積が幅方向80mm、長さ方向10mmとなるように、1つのスポンジ挿入部を有する袋状のネットを一体的に作製した。次に、前記袋状のネットにスポンジを挿入し、その後、超音波溶着機で凹凸形状のホーンを用いて、ホーンの凸部分同士を接触させることで、スポンジ挿入部であるネットスポンジのネット端部を幅方向に2mm間隔でネット接着部(2mm×2mm)を作製した。このときの、ネット接着部の面積はネット端部の面積の15%であった。















【0032】
<実施例2~10>
ネット端部の目付け(mg/mm)、ネット端部におけるネット接着部の面積(%)を表1に示すように設定したこと以外は実施例1と同様にネットスポンジを作製した。
【0033】
<比較例1>
ネット端部の目付けを0.5mg/mm、ネット端部におけるネット接着部の面積を15%とした以外は、実施例1と同様にネットスポンジを作製した。
【0034】
<比較例2>
ネット端部の目付けを15mg/mm、ネット端部におけるネット接着部の面積を15%とした以外は、実施例1と同様にネットスポンジを作製した。
【0035】
<比較例3>
ネット端部を100デニールのポリエチレンのフィラメント糸で縫製し、ネットスポンジを作製した。
【0036】
前記実施例及び比較例に関し、以下の評価を行い、結果を表1にまとめた。
【0037】
<端部処理>
作製したネットスポンジの端部を目視で確認した。溶着した実施例1~10は端部処理の必要はなかった。縫製した比較例2は糸でスポンジ挿入部を縫製しているため、端部処理が必要であった。
【0038】
<接着強度>
実施例、比較例で作製したサンプルから、幅30mm長さ50mmで長さ方向の中心部に溶着部または、接着部のある試験片を作製し、試験片の両端をはさみ、速度200mm/minの一定速度で引張るときに破断した強度を測定し、接着強度とし、以下の基準で評価した。
◎:80N/3cm以上
○:50~79N/3cm
△:10~49N/3cm
×:10N/3cm未満
【0039】
<風合い評価>
溶着部、または縫製部の風合いの官能評価を以下の基準で評価した。
○:ネット本体部と同程度の柔らかい触感であった。
△:ネット本体部よりやや硬いが、縫製品より柔らかい触感であった。
×:縫製した糸が引っかかり、触感が悪かった。
【0040】
<端部の剥がれ>
各サンプルを10個ずつ作製し、それぞれのネット端部に圧縮と、開放を200回繰り返し施した後のネット端部の剥がれを確認した。
○:剥がれ無
△:剥がれ有(2~3個)
×:剥がれ有(4~10個)
【0041】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明のネットスポンジは、ネット端部が接着されているため、十分な端部強度を保ちながら、縫製後の端部の糸処理が必要なく、ネットスポンジ端部の感触に優れる。本発明のネットスポンジは、例えば台所や、風呂場のクリーナーや、身体洗浄用のタワシ等に好適に用いることができる。

【符号の説明】
【0043】
1:ネットスポンジ
10: ネット
11:スポンジ
2:スポンジ+ネット部
3:ネット端部
4:ネット接着部
5:開口端部
図1
図2