(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】雨水排水装置
(51)【国際特許分類】
E04D 13/068 20060101AFI20221206BHJP
E03F 5/10 20060101ALI20221206BHJP
E04D 13/08 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
E04D13/068 501Z
E03F5/10 A
E04D13/08 E
(21)【出願番号】P 2018145113
(22)【出願日】2018-08-01
【審査請求日】2021-05-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】寺地 信治
(72)【発明者】
【氏名】元 隆明
(72)【発明者】
【氏名】田中 将成
【審査官】山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-308399(JP,A)
【文献】実開平02-112787(JP,U)
【文献】特開昭63-243591(JP,A)
【文献】特開2003-119859(JP,A)
【文献】特開平07-003870(JP,A)
【文献】特開2004-244873(JP,A)
【文献】特開2000-027280(JP,A)
【文献】特開2019-120068(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 13/068
E03F 5/10
E04D 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
雨水が流入する流入口と、
前記流入口に配置され、サイフォン現象を誘発するサイフォン誘発部と、
前記流入口に流入した雨水が流れ込む排水マスと、
前記排水マスに接続され、前記排水マスに雨水を導く入口配管部と、
前記排水マスに接続され、前記排水マスから雨水が排出される出口配管部と、を備え、
前記入口配管部の前記排水マスの外側における管軸は、前記出口配管部の管軸よりも上側に配置されており、
前記入口配管部は、前記排水マスの内側に配置され、下方に向かって曲げられた構成を有し、
前記入口配管部は、
拡径部と、
前記拡径部の上流側に接続された第1配管と、
前記拡径部の下流側に接続され、前記第1配管よりも断面積が大きく、前記排水マスの側面を貫通している第2配管
と、
前記排水マスの内側において前記第2配管の先端に配置されたエルボ配管と、有し、
下方への曲げ角度は、前記入口配管部の前記管軸に対して垂直な側面視において、前記入口配管部の前記エルボ配管の上端の延長線が、前記出口配管部の前記排水マスへの開口の上端以下になるように形成されている、
雨水排水装置。
【請求項2】
雨水が流入する流入口と、
前記流入口に配置され、サイフォン現象を誘発するサイフォン誘発部と、
前記流入口に流入した雨水が流れ込む排水マスと、
前記排水マスに接続され、前記排水マスに雨水を導く入口配管部と、
前記排水マスに接続され、前記排水マスから雨水が排出される出口配管部と、を備え、
前記入口配管部の前記排水マスの外側における管軸は、前記出口配管部の管軸よりも上側に配置されており、
前記入口配管部は、前記排水マスの内側に配置され、下方に向かって曲げられた構成を有し、
前記入口配管部は、
拡径部と、
前記拡径部の上流側に接続された第1配管と、
前記拡径部の下流側に接続され、前記第1配管よりも断面積が大きく、前記排水マスの側面を貫通している第2配管と、
前記排水マスの内側において前記第2配管の先端に配置されたエルボ配管と
、を有し、
下方への曲げ角度は、前記入口配管部の前記管軸に対して垂直な側面視において、前記入口配管部の前記エルボ配管の上端の延長線が、前記出口配管部の前記排水マスへの開口の下端以下になるように形成されている、
雨水排水装置。
【請求項3】
雨水が流入する流入口と、
前記流入口に配置され、サイフォン現象を誘発するサイフォン誘発部と、
前記流入口に流入した雨水が流れ込む排水マスと、
前記排水マスに接続され、前記排水マスに雨水を導く入口配管部と、
前記排水マスに接続され、前記排水マスから雨水が排出される出口配管部と、を備え、
前記入口配管部の前記排水マスの外側における管軸は、前記出口配管部の管軸よりも上側に配置されており、
前記入口配管部は、前記排水マスの内側に配置され、下方に向かって曲げられた構成を有し、
前記入口配管部は、
拡径部と、
前記拡径部の上流側に接続された第1配管と、
前記拡径部の下流側に接続され、前記第1配管よりも断面積が大きく、前記排水マスの側面を貫通している第2配管と、
前記排水マスの内側において前記第2配管の先端に配置されたエルボ配管と
、を有し、
前記排水マスは、前記出口配管部の前記排水マスへの開口よりも下側の部分に水溜め部を有し、
下方への曲げ角度は、前記入口配管部の前記管軸に対して垂直な側面視において、前記入口配管部の前記エルボ配管の上端の延長線が、前記水溜め部と交わるように形成されている、
雨水排水装置。
【請求項4】
15L/s以上の設計流量であって、立て方向に沿って配置された立て管部を備え、
前記入口配管部は、前記立て管部の下流側に配置されている、
請求項1~
3のいずれか1項に記載の雨水排水装置。
【請求項5】
前記排水マスを含む複数のマスが、前記立て管部の下流側に設けられている場合、前記複数のマスのうち前記排水マスが、第1番目に前記立て管部に接続されている、
請求項
4に記載の雨水排水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雨水を排水するための雨水排水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、サイフォン現象を誘発させることによって雨水の排水効率を向上させる構成が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
例えば、特許文献1に示す構成では、家屋の軒樋の下側に配置されたエルボ継手や配管などによって構成されるサイフォン管によってサイフォン現象が誘発されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようにサイフォン現象を利用することにより排水される雨水の量が多くなるが、排水マスへの雨水の排出について何ら考慮されていなかった。すなわち、雨水の排水量が多くなり、排水マスからの水の跳ね出しが発生する場合があった。
【0006】
本発明は、排水マスからの水の跳ね出しを低減することが可能な雨水排水装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、第1の発明にかかる雨水排水装置は、流入口と、サイフォン誘発部と、排水マスと、入口配管部と、出口配管部と、を備える。流入口は、雨水が流入する。サイフォン誘発部は、流入口に配置され、サイフォン現象を誘発する。排水マスは、流入口に流入した雨水が流れ込む。入口配管部は、排水マスに接続され、排水マスに雨水を導く。出口配管部は、排水マスに接続され、排水マスから雨水が排出される。入口配管部の排水マスの外側における管軸は、出口配管部の管軸よりも上側に配置されている。入口配管部は、排水マスの内側に配置され、下方に向かって曲げられた構成を有する。
【0008】
これにより、サイフォン誘発部によってサイフォン現象が発生し多量の雨水が排水マスに流れ込む場合であっても、入口配管部から排水マスに排出される雨水が少なくとも斜め下方に向かって排出されるため、上方に向かって跳ねる量が減少する。このため、排水マスからの水の跳ね出しを低減することができる。
【0009】
第2の発明にかかる雨水排水装置は、第1の発明にかかる雨水排水装置であって、下方への曲げ角度は、側面視において、入口配管部の上端の延長線が、出口配管部の排水マスへの開口の上端以下になるように形成されている。
【0010】
これにより、入口配管部から排出される雨水が出口配管部以下の高さに排出されるため、上方への雨水の跳ね出しを低減することができる。
【0011】
第3の発明にかかる雨水排水装置は、第1の発明にかかる雨水排水装置であって、下方への曲げ角度は、側面視において、入口配管部の上端の延長線が、出口配管部の排水マスへの開口の下端以下になるように形成されている。
【0012】
排水マスの出口配管部の下端以下には水が溜まっているため、入口配管部から排水マスに排出される雨水は、排水マスの底面または側面を含む内壁に直接当たらず、溜まっている水によって勢いが緩和される。このため、排水マスからの水の跳ね出しを低減することができる。
【0013】
第4の発明にかかる雨水排水装置は、第1の発明にかかる雨水排水装置であって、排水マスは、水溜め部を有する。水溜め部は、出口配管部の排水マスへの開口よりも下側の部分に設けられている。下方への曲げ角度は、入口配管部の端部の上端の延長線が、水溜め部と交わるように形成されている。
【0014】
これにより、入口配管部から排水マスに排出される雨水は、排水マスの底面または側面を含む内壁に直接当たらず、水溜め部の水にあたるため勢いが緩和される。このため、排水マスからの水の跳ね出しを低減することができる。
【0015】
第5の発明にかかる雨水排水装置は、第1~4のいずれかの発明にかかる雨水排水装置であって、入口配管部は、拡径部と、第1配管と、第2配管とを有する。第1配管は、拡径部の上流側に接続されている。第2配管は、拡径部の下流側に接続され、第1配管よりも断面積が大きい。
【0016】
このように排水マスの上流側に拡径部を設けることにより、雨水が減速されるため、排水マスからの雨水の跳ね出しを低減することができる。
【0017】
この時の拡径部は、同芯インクリーザや偏芯インクリーザ(上端を合わせて配置)が主に用いられるが、偏芯インクリーザが、減速効果が高く好ましく用いられる。
【0018】
第6の発明にかかる雨水排水装置は、第1~第5のいずれかの発明にかかる雨水排水装置であって、立て管部を更に備える。立て管部は、15L/s以上の設計流量であって、立て方向に沿って配置されている。入口配管部は、立て管部の下流側に配置されている。
【0019】
このように、15L/s以上の設計流量の立て管部に多量の雨水が流れた場合であっても、排水マスからの水の跳ね出しを低減することができる。
【0020】
第7の発明にかかる雨水排水装置は、第6の発明にかかる雨水排水装置であって、排水マスを含む複数のマスが、立て管部の下流側に設けられている場合、複数のマスのうち排水マスが、第1番目に立て管部に接続されている。
【0021】
このように、立て管部の下流側に複数のマスが設けられた構成において、立て管部の下流側において一番目に設置されるマスに本発明の排水マスを用いることによって、排水マスからの水の跳ね出しを低減することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、排水マスからの水の跳ね出しを低減することが可能な雨水排水装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明にかかる実施の形態における雨水排水システムの構成を示す概略図。
【
図3】
図1の雨水排水システムにおける流入口近傍の断面図。
【
図4】(a)
図2の排水装置におけるサイフォン誘発部の構成を示す正面図、(b)
図3(a)のサイフォン誘発部の平面図。
【
図7A】
図1の雨水排水装置の排水部の側面模式図。
【
図7B】
図1の雨水排水装置の排水部の平面模式図。
【
図8A】
図1の雨水排水装置の排水部の側面模式図。
【
図8B】
図1の雨水排水装置の排水部の平面模式図。
【
図9】実施例1~5および比較例1~3の結果の表を示す図。
【
図10】実施例3の排水部の構成を示す側面模式図。
【
図11】実施例4の排水部の構成を示す側面模式図。
【
図12】実施例5の排水部の構成を示す側面模式図。
【
図13】比較例1の排水部の構成を示す側面模式図。
【
図14】比較例3の排水部の構成を示す側面模式図。
【
図15】本発明にかかる実施の形態の変形例の排水部の構成を示す側面模式図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明に係る実施の形態における雨水排水装置10、10´について図面を参照しながら説明する。
【0025】
<1.構成>
図1は、本実施の形態における雨水排水装置10、10´の構成を示す図である。
図2は、本実施の形態における雨水排水装置10、10´の平面図である。
【0026】
本実施の形態の雨水排水装置10、10´は、
図1に示すように、建造物100に設置された雨水排水システム1の一部を構成する。
【0027】
建造物100は、例えば3階建てのビルであって、1階と2階との間、2階と3階との間に、それぞれスラブ101が設けられている。
【0028】
(雨水排水システム1)
雨水排水システム1は、建造物100の屋上105に降った雨水を地面近傍に移動させて下水管に排水する。雨水排水システム1は、
図1に示すように、3つの雨水排水装置10と3つの雨水排水装置10´と、を備えている。3つの雨水排水装置10は、建造物100の側面103の近傍に、側面103に沿って並んで配置されている。3つの雨水排水装置10´は、建造物100の側面103に対向する側面104の近傍に、側面104に沿って並んで配置されている。
【0029】
なお、詳しくは後述するが、雨水排水装置10は、雨水排水装置10´は、排水部の構成が異なっている。
【0030】
(雨水排水装置10、10´)
各々の雨水排水装置10は、流入口11と、サイフォン誘発部12(
図3参照)と、立て配管部13と、横引き配管部14と、立て配管部15と、排水部16と、を有する。また、各々の雨水排水装置10´は、流入口11と、サイフォン誘発部12(
図3参照)と、立て配管部13と、横引き配管部14と、立て配管部15と、排水部16´と、を有する。
【0031】
(流入口11)
流入口11は、屋上105に形成された開口であり、屋上105に落下した雨水が流入する。
【0032】
図3は、雨水排水装置10、10´の流入口11および後述するサイフォン誘発部12を示す側断面図である。
【0033】
図3に示すように、流入口11は、屋上105に形成された凹部102の底面102aに形成されている。
【0034】
本実施の形態では、3つの雨水排水装置10の3つの流入口11は、
図1および
図2に示すように、屋上105の端105aに沿って並んで配置されている。また、3つの雨水排水装置10´の3つの流入口11は、屋上105の端105aに対向する端105bに沿って並んで配置されている。すなわち、屋上105には、6つの流入口11が設けられている。
【0035】
なお、屋上105の端105a、105bは、端に沿った方向のいずれか一方に向かって傾斜していてもよい。また、屋上105は、端105a、105bに向かって中央から傾斜していてもよい。
【0036】
(サイフォン誘発部12)
サイフォン誘発部12は、
図3に示すように、流入口11を塞ぐように配置されている。
【0037】
サイフォン誘発部12の材質としては、例えば、PE(ポリエチレン)やPP(ポリプロピレン)などのオレフィン系樹脂、塩ビ樹脂、あるいは、アルミニウム、アルミ合金、ステンレス等の金属等を用いることができる。
【0038】
樹脂やアルミニウム、アルミニウム合金を用いることにより、軽量かつ低コストで、所望の形状を備えたサイフォン誘発部12を得ることができる。
【0039】
図4(a)は、サイフォン誘発部12の平面構成図であり、
図4(b)は、
図4(a)のAA´間の矢示断面図である。
【0040】
サイフォン誘発部12は、ベース部41と、蓋部42と、整流フィン43と、を有する。
【0041】
ベース部41は、
図4(a)および
図4(b)に示すように、円環状の底面41aと、底面41aの略中心に形成された雨水を落下させる落とし口41bと、筒状部41cとを有している。そして、落とし口41bは筒状部41cの上端に形成されている。筒状部41cは、立て配管部13に配置される。
【0042】
底面41aは、
図4(a)および
図4(b)に示すように、略中央部分に落とし口41bが形成された円環状の部材である。そして、円環状の底面41aには、落とし口41bを中心に、複数の整流フィン43が等角度間隔で配置されている。
【0043】
落とし口41bは、
図4(a)に示すように、ベース部41の中心部に形成された貫通穴であって、筒状部41cの内部に形成されている。そして、落とし口41bは、立て配管部13の上端部に連通しており、サイフォン誘発部12に対して360度方向から流入してきた雨水を、立て配管部13内へと落下させる。
【0044】
筒状部41cは、
図4(a)および
図4(b)に示すように、円筒状の部材であって、その上端部において底面41aと連結され、底面41aから下向きに突出するように形成されている。そして、筒状部41cは、内部に落とし口41bが形成される。
【0045】
蓋部42は、
図4(a)および
図4(b)に示すように、ベース部41の上方に、ベース部41の中心に形成された落とし口41bと同心円状に配置された円形の板状部材であって、ベース部41の底面41a上に立設された複数の整流フィン43によって支持されている。また、蓋部42は、
図4(b)に示すように、ベース部41(落とし口41b)の上方に、底面41aから所定の隙間Gの大きさ(高さ)をあけて配置されている。
【0046】
複数の整流フィン43は、
図4(a)および
図4(b)に示すように、落とし口41bに流入する雨水の流れを整えるために、ベース部41の底面41a上に設けられている。より具体的には、複数の整流フィン43は、
図4(a)に示すように、略鉛直方向に沿って配置された板状の部材であって、底面41a上に、落とし口41bを中心とする円の円周上に、等角度間隔で8つ設けられている。
【0047】
また、8つの整流フィン43は、それぞれ円環状の底面41aにおいて、径方向に沿って配置されている。
【0048】
これにより、
図4(a)に示すように、ベース部41の底面41aと蓋部42との間の隙間Gに流入してきた雨水が渦状に浸入してきた場合(図中一点鎖線参照)でも、整流フィン43によって雨水を整流し、落とし口41bの中心に向かって雨水を誘導することができる。
【0049】
このため、立て配管部13内に雨水が渦状に流入して、その中心部に空気柱が形成されることを防止することができる。
【0050】
この結果、整流フィン43によって、落とし口41bへ流入していく雨水の中心に空気柱が形成されることを防止することで、立て配管部13内において生じるサイフォン現象の発生の阻害要因を効果的に排除することができる。
【0051】
(立て配管部13)
図5は、雨水排水装置10の模式構成図である。
図6は、雨水排水装置10´の模式構成図である。
【0052】
図5および
図6に示すように、雨水排水装置10、10´における立て配管部13は、流入口11から下方に向かって配置されている。立て配管部13は、
図2に示すように、配管21を有している。配管21は、PE(ポリエチレン)製の管状部材であって、
図3に示すように、略鉛直方向(上下方向ともいえる)に沿って配置されている。
【0053】
配管21の上端(立て配管部13の上端13aともいえる)は、
図3に示すように、流入口11の縁に下方から接続されており、流入口11に繋がっている。配管21の下端(立て配管部13の下端ともいえる)は、横引き配管部14に繋がっている。
【0054】
配管21には、例えば、呼び径が50A、75A、100A、125A,150A、200A等の配管が用いられる。内径は、配管の種類ごとに各呼び径において決められている。配管の材料は、本実施の形態では、例えばポリエチレンが用いられているが、これに限られるものではなく、ポリプロピレンなどの他のオレフィンが用いられてもよく、さらに、ポリ塩化ビニルなどが用いられてもよい。
【0055】
なお、本実施の形態では、立て配管部13は、一本の配管21を有しているが、複数の配管21とそれらの間を繋ぐ継手を有していてもよい。
【0056】
(横引き配管部14)
横引き配管部14は、横方向に沿って配置されており、一端が、立て配管部13の下端に繋がっている。横引き配管部14の他端には、後述する立て配管部15が接続されている。また、図では示していないが、横引き配管部14は、立て配管部15側の端が、反対側の端よりも低くなるように若干傾斜して配置されており、立て配管部13から流れ込む雨水を立て配管部15に向かって移動させる。
【0057】
横引き配管部14は、
図5および
図6に示すように、横方向に沿って順に配置された、エルボ継手31と、配管32と、エルボ継手33と、を有する。
【0058】
エルボ継手31は、立て配管部13の下端(配管21の下端ともいえる)に接続されている。配管32の一端は、立て配管部13の下端(配管21の下端ともいえる)にエルボ継手31によって接続されている。配管32の他端は、エルボ継手33に接続されており、エルボ継手33は、立て配管部15の上端に接続されている。
【0059】
なお、配管32には、例えば、呼び径が50A、75A、100A、125A,150A、200A等の配管が用いられる。内径は、配管の種類ごとに各呼び径において決められている。配管の材料は、本実施の形態では、例えばポリエチレンが用いられているが、これに限られるものではなく、ポリプロピレンなどの他のオレフィンが用いられてもよく、さらに、ポリ塩化ビニルなどが用いられてもよい。
【0060】
本実施の形態の雨水排水装置10、10´に用いる配管(配管21、32、61、81等)にオレフィン系の配管を用いた場合には、エルボ継手31、エルボ継手33および後述するエルボ継手62には、例えばオレフィン製のEF(Electric fusion)継手を用いたほうが好ましい。これらの継手には、電熱線が埋め込まれており、通電することにより、継手内面と配管外面の樹脂を加熱溶融して融着することによって、継手と配管が接合される。なお、本実施の形態の雨水排水装置10、10´に用いる配管にオレフィン系以外の例えばポリ塩化ビニル製の配管を用いた場合には、エルボ継手31、エルボ継手33および後述するエルボ継手62として、ポリ塩化ビニル製のものを用いることができる。
【0061】
(立て配管部15)
立て配管部15は、縦方向に沿って配置されており、
図5及び
図6に示すように、その上端が横引き配管部14に接続されている。立て配管部15はスラブ101を貫通して配置されている。立て配管部15は、15L/s以上の設計流量となるように構成されている。
【0062】
立て配管部15は、
図5および
図6に示すように、配管61と、エルボ継手62と、を有する。配管61の上端は、エルボ継手33に接続されている。配管61の下端は、エルボ継手62に接続されている。
【0063】
配管61は、例えば、呼び径が50A、75A、100A、125A,150A、200A等の配管が用いられる。
【0064】
エルボ継手62は、配管61の下端に接続されており、横引きされている配管81(後述する)と接続されている。
【0065】
(排水部16)
図7Aは、
図5の排水部16近傍を示す側面構成図である。
図7Bは、
図5の排水部16近傍を示す平面構成図である。
【0066】
雨水排水装置10の排水部16は、横方向に沿って配置され、立て配管部15のエルボ継手62に接続されており、雨水を建造物100の外側に排出する。排水部16は、入口配管部71と、排水マス72と、出口配管部73と、を有する。
【0067】
入口配管部71は、横方向に沿って配置された配管81と、エルボ配管82と、を有する。配管81の一端は、エルボ継手62に接続されている。エルボ配管82は、配管81の他端に取り付けられている。エルボ配管82は、下方に向かうように約90度曲げられた配管であり、配管81の排水マス72への開口82aが、排水マス72の底面72aに対向するように配置されている。側面視において、エルボ配管82の上端82c(外周側の端ともいえる)の延長線Lが、後述する水溜め部72sに交わるように、エルボ配管82は下方に向かって曲げられている。また、エルボ配管82の下端82b(内周側の端ともいえる)の延長線Mも水溜め部72sと交わっている。ここで、エルボ配管82の上端82cと下端82bは、配管81側では上端82cの方が下端82bよりも高く配置されているものの、開口82aにおいて、高さが同等になるが、本明細書では、上端と下端と呼ぶものとする。
【0068】
なお、図では示していないが、入口配管部71は、排水マス72側の端が、反対側の端よりも低くなるように若干傾斜して配置されており、雨水を排水マス72に向かって移動させる。
【0069】
排水マス72は、配管の詰まりを防止するために設けられている。本実施の形態における排水マス72は、略直方体形状であり、入口配管部71が接続されている側面72bと、出口配管部73が接続されている側面72cと、を有している。側面72bは、側面72cに対向して配置されている。また、側面72bと側面72cは、互いの主面が平行になるように配置されている。
【0070】
配管81は、排水マス72の側面72bを貫通しており、エルボ配管82は、排水マス72の内側に配置されている。
【0071】
出口配管部73は、排水マス72から排水された雨水を下水管へと流す。出口配管部73は、配管83を有している。配管83は、横方向に沿って配置されている。なお、図では示していないが、出口配管部73は、排水マス72側の端が、反対側の端よりも高くなるように若干傾斜して配置されており、雨水を排水マス72から下水管(図示せず)に向かって移動させる。配管83は、側面72bを貫通して、排水マス72に接続されている。
【0072】
すなわち、入口配管部71、排水マス72および出口配管部73は横方向に沿って並んで配置されている。入口配管部71の排水マス72の外側における管軸Bは、出口配管部73の管軸Cよりも上側になるように排水部16は、構成されている。また、平面視において、
図7Bに示すように、管軸Bは、管軸Cと一致するように排水部16は構成されている。
【0073】
また、出口配管部73の配管83の排水マス72側の開口83aの下端83bから下側の排水マス72の部分は水が溜まる水溜め部72sとして機能し、ゴミや泥等が溜まる。
【0074】
これにより、配管81を通ってエルボ配管82から排出された雨水は、水溜め部72sに向かって排出されるため、排水マス72の底面72a、側面72b、72c、72d、72e等に直接あたらないため、排水マス72からの雨水の飛び跳ねを低減することができる。側面72dと側面72dは、対向する側面であり、側面72bと側面72cの間に設けられている。
【0075】
なお、配管81、エルボ配管82および配管83には、例えば、呼び径が50A、75A、100A、125A,150A、200A等の配管が用いられる。内径は、配管の種類ごとに各呼び径において決められている。配管の材料は、本実施の形態では、例えばポリエチレンが用いられているが、これに限られるものではなく、ポリプロピレンなどの他のオレフィンが用いられてもよく、さらに、ポリ塩化ビニルなどが用いられてもよい。
【0076】
また、本実施の形態の排水部16では、入口配管部71は、一本の配管81を有しているが、複数の配管81とそれらの間を繋ぐ継手を有していてもよい。また、本実施の形態の排水部16では、出口配管部73は、一本の配管83を有しているが、複数の配管81とそれらの間を繋ぐ継手を有していてもよい。
【0077】
(排水部16´)
図8Aは、
図6の排水部16´近傍を示す側面構成図である。
図8Bは、
図6の排水部16近傍を示す平面構成図である。
【0078】
雨水排水装置10´の排水部16´は、立て配管部15のエルボ継手62に接続されており、雨水を建造物100の外側に排出する。排水部16´は、入口配管部71と、排水マス72と、出口配管部73´と、を有する。
【0079】
入口配管部71と排水マス72の構成は、排水部16と同様のため説明を省略する。
排水部16´の出口配管部73´は、配管83を有する。ここで、排水マス72の側面72bと側面72cの間の互いに対向する側面を72d、72eとすると、配管83は、側面72dに接続されている。
【0080】
また、入口配管部71の管軸Bは、出口配管部73´の管軸Dよりも上側になるように排水部16が構成されている。
【0081】
また、
図8Bに示すように、配管83の他端は、隣の雨水排水装置10´の排水マス72の側面72eに接続されている。このように、雨水排水装置10´では、3つの排水マス72から排出される雨水は1つに集められて、図示しない下水管に繋がっている配管83(
図8Bにおいて配管83fと示す)から下水管へと排出される。一方、雨水排水装置10では、各々の配管83が下水管に繋がっており、排水マス72から排出される雨水が下水管に排出される。
【0082】
このような排水部16´においても、排水部16と同様に、配管81を通ってエルボ配管82から排出された雨水は、水溜め部72sに向かって排出されるため、排水マス72の底面72a、側面72b、72c等に直接当たらず、排水マス72からの雨水の飛び跳ねを低減することができる。
【0083】
なお、本実施の形態の排水部16´では、出口配管部73´は、一本の配管83を有しているが、複数の配管83とそれらの間を繋ぐ継手を有していてもよい。また、本実施の形態の排水部16´では、入口配管部71は、一本の配管81を有しているが、複数の配管81とそれらの間を繋ぐ継手を有していてもよい。
【0084】
<2.作用>
雨水排水装置10、10´では、建造物100の屋上105に降った雨水が凹部102へ流れ込み、流入口11に配置されたサイフォン誘発部12を通って配管21に流れ込む。ここで、サイフォン現象が発生するため、立て配管部13が満管となり、大量の雨水を排水することができる。
【0085】
複数の流入口11から流れ込んだ雨水は、立て配管部13を落下すると、横引き配管部14に流れ込み、立て配管部15に流れ込む。
【0086】
雨水排水装置10では、立て配管部15を落下した雨水は、入口配管部71を通って、建造物100の外側へと導かれ、各々の排水マス72から出口配管部73を通って下水管へと排出される。
【0087】
雨水排水装置10´では、立て配管部15を落下した雨水は、入口配管部71を通って、建造物100の外側へと導かれ、各々の排水マス72を通って1つの出口配管部73に集められ、下水管へと排水される。
【0088】
<3.実施例>
次に、実施例を用いて、本発明の雨水排水装置10、10´について更に詳しく説明する。
【0089】
以下の実施例および比較例では、排水部16におけるエルボ配管82の曲がりの有無、曲がりの角度の違い、および入口配管部71における拡径部の有無、拡径サイズの違い、による排水マス72からの雨水の跳ね出し、溢れの評価を行った。排水マス72からの跳ね出し、溢れがない場合を問題なし(〇)とし、少し跳ね出しおよび溢れがある場合を許容範囲(△)とし、跳ね出しおよび溢れがある場合を問題あり(×)とした。
【0090】
図9は、実施例1~5および比較例1~3の評価結果の表を示す図である。
(実施例1)
実施例1では、上述した実施の形態の構成の雨水排水装置10を用いた。雨水排水装置10における立て配管部13の長さL1(
図5参照)を0.6mとし、横引き配管部14の長さL2を1.5mとし、立て配管部15の長さL3を21mとし、入口配管部71の立て配管部15から排水マス72までの長さL4を5mとした。また、配管21、32、61、81の呼び径は75Aであり、配管83の呼び径は150Aとした。
【0091】
このような構成の雨水排水装置において、流量20L/sで水を流入口11から流したところ、排水マス72から少し跳ね出しおよび溢れがあったが、許容範囲(△)であった。
【0092】
(実施例2)
実施例2では、実施例1の雨水排水装置10と比較して、排水部の配管が途中で拡径された点が異なる雨水排水装置を用いた。
【0093】
実施例2では、上述した雨水排水装置10において、立て配管部13の長さを0.6mとし、横引き配管部14の長さを1.5mとし、立て配管部15の長さを21mとし、入口配管部71の立て配管部15から排水マス72までの長さを5mとした。また、本実施例2では、排水部16の代わりに排水部116が設けられており、排水部116は、排水部16と異なり、途中で拡径されている入口配管部171を有している。
図10は、排水部116の構成を示す図である。入口配管部171は、エルボ継手62側から横方向に沿って順に配置された、配管92と、インクリーザ93(拡径部の一例)と、配管94と、エルボ配管82と、を有する。配管92の一端は、エルボ継手62に接続されている。配管92の他端は、インクリーザ93に接続されている。インクリーザ93は、継手であり、径が異なる配管を繋ぐ。配管94の一端は、インクリーザ93に接続されており、他端は、エルボ配管82に接続されている。配管94は、配管92よりも径が大きい。
【0094】
ここで、配管21、32、61、92の呼び径を75Aとし、配管94の呼び径を125Aとし、配管83の呼び径を150Aとした。
【0095】
このような構成の雨水排水装置において、流量20L/sで水を流入口11から流したところ、排水マス72からの跳ね出しがなく、溢れもなく問題なし(〇)であった。
【0096】
(実施例3)
実施例3では、配管94の径を150Aとした以外は、実施例2と同様の構成の雨水排水装置10を用いた。このような構成の雨水排水装置に対して、流量30L/sで水を流入口11から流した。その結果、排水マス72からの跳ね出しがなく、溢れもなく問題なし(〇)であった。
【0097】
(実施例4)
実施例4では、実施例1の雨水排水装置10と比較して、エルボ配管82の曲げ角度を変化させた点が異なる雨水排水装置を用いた。
【0098】
図11は、本実施例4におけるエルボ配管282が用いられた排水部216の構成を示す図である。
図11に示す排水部216は、入口配管部271と、排水マス72と、出口配管部73と、を有している。入口配管部271は、配管81と、エルボ配管282と、を有する。エルボ配管282は、エルボ配管82と曲がり角度が異なっている。本実施例4では、
図11に示すように、エルボ配管282の曲がり角度は、側面視において、エルボ配管282の上端282c(外周側の端ともいえる)の延長線Lが、出口配管部73の配管83の開口83aの上端83cに一致している。
【0099】
このような構成の雨水排水装置において、流量20L/sで水を流入口11から流したところ、排水マス72から少し跳ね出しおよび溢れがあったが、許容範囲(△)であった。
【0100】
なお、本実施例4では、入口配管部271から、少なくとも出口配管部73の配管83の開口83aの上端83c以下の高さに向かって雨水が排出されるため、跳ね出しおよび溢れを低減することができる。すなわち、エルボ配管282の下方への曲げ角度は、側面視において、入口配管部271のエルボ配管282の上端282cの延長線Lが、出口配管部73の配管83の上端83c以下になるように形成されていれば、跳ね出しおよび溢れを低減できることがわかる。
【0101】
(実施例5)
実施例5では、実施例1の雨水排水装置10と比較して、エルボ配管82の曲げ角度を変化させた点が異なる雨水排水装置を用いた。
【0102】
図12、本実施例5おけるエルボ配管382が用いられた排水部316の構成を示す図である。
図12に示す排水部316は、入口配管部371と、排水マス72と、出口配管部73と、を有している。入口配管部371は、配管81と、エルボ配管382と、を有する。エルボ配管382は、エルボ配管82と曲がり角度が異なっている。本実施例5では、
図12に示すように、エルボ配管382の曲がり角度は、側面視において、エルボ配管382の上端382c(外周側の端ともいえる)の延長線Lが、出口配管部73の配管83の下端83bに一致している。
【0103】
このような構成の雨水排水装置において、流量20L/sで水を流入口11から流したところ、排水マス72から少し跳ね出しおよび溢れがあったが、許容範囲(△)であった。
【0104】
なお、本実施例5では、入口配管部371から、水溜め部72sに向かって雨水が排出されるため、排出された雨水が排水マス72の内壁に直接当たらず、跳ね出しおよび溢れを低減することができる。すなわち、エルボ配管382の下方への曲げ角度は、側面視において、入口配管部371のエルボ配管382の上端382cの延長線L2が、出口配管部73の配管83の下端83b以下になるように形成されていれば、跳ね出しおよび溢れを低減できることがわかる。
【0105】
(比較例1)
比較例1では、
図13に示すように、実施例1と比較して、排水部16の代わりに、エルボ配管82が設けられていない入口配管部1071を有する排水部1016を備えた雨水排水装置を用いた。
【0106】
このような構成の雨水排水装置において、流量20L/sで水を流入口11から流したところ、排水マス72から跳ね出しおよび溢れが有り、問題があった(×)。
【0107】
(比較例2)
比較例2では、比較例1の構成の雨水排水装置において、流量30L/sで水を流入口11から流した。その結果、排水マス72から跳ね出しおよび溢れが有り、問題があった(×)。
【0108】
(比較例3)
比較例3では、
図14に示すように、実施例2と比較して、排水部116の代わりに、エルボ配管82が設けられていない入口配管部1171を有する排水部1116を備えた雨水排水装置を用いた。
【0109】
このような構成の雨水排水装置において、流量20L/sで水を流入口11から流したところ、排水マス72から跳ね出しおよび溢れが有り、問題があった(×)。
【0110】
<4.特徴等>
(1)
本実施の形態の雨水排水装置10、10´は、流入口11と、サイフォン誘発部12と、排水マス72と、入口配管部71、171、271、371と、出口配管部73、73´と、を備える。流入口11は、雨水が流入する。サイフォン誘発部は、流入口に配置され、サイフォン現象を誘発する。排水マス72は、流入口11に流入した雨水が流れ込む。入口配管部71、171、271、371は、排水マス72に接続され、排水マス72に雨水を導く。出口配管部73、73´は、排水マス72に接続され、排水マス72から雨水が排出される。入口配管部71、171、271、371の排水マス72の外側における管軸Bは、出口配管部73、73´の管軸C、Dよりも上側に配置されている。入口配管部71、171、271、371は、排水マス72の内側に配置され、下方に向かって曲げられたエルボ配管82、282、382(端部の一例)を有する。
【0111】
これにより、サイフォン誘発部12によってサイフォン現象が発生し多量の雨水が排水マス72に流れ込む場合であっても、入口配管部71、171、271、371から排水マス72に排出される雨水が少なくとも斜め下方に向かって排出されるため、上方に向かって跳ねる量が減少する。このため、排水マス72からの水の跳ね出しを低減することができる。
【0112】
(2)
本実施の形態の雨水排水装置10では、エルボ配管82、282、382(端部の一例)の下方への曲げ角度は、側面視において、入口配管部71、171、271、371のエルボ配管282の上端282cの延長線Lが、出口配管部73の排水マス72への開口83aの上端83c以下になるように形成されている。
【0113】
これにより、入口配管部271から排出される雨水が出口配管部73以下の高さに排出されるため、上方への雨水の跳ね出しを低減することができる。
【0114】
(3)
本実施の形態の雨水排水装置10では、エルボ配管82、382(端部の一例)の下方への曲げ角度は、側面視において、入口配管部71、171、371のエルボ配管82、382(端部の一例)の上端82c、382cの延長線Lが、出口配管部73の排水マス72への開口83aの下端83b以下になるように形成されている。
【0115】
排水マス72の出口配管部73の下83b端以下には水が溜まっているため、入口配管部71、171、371から排水マス72に排出される雨水は、排水マス72の底面72aまたは側面72b、72c、72d、72eを含む内壁に直接当たらず、溜まっている水によって勢いが緩和される。このため、排水マス72からの水の跳ね出しを低減することができる。
【0116】
(4)
本実施の形態の雨水排水装置10、10´では、排水マス72は、水溜め部72sを有する。水溜め部72sは、出口配管部73の排水マス72への開口83aよりも下側の部分に設けられている。エルボ配管82、282、382(端部の一例)の下方への曲げ角度は、入口配管部71、171、272、372のエルボ配管82、282、382の上端82c、282c、382cの延長線Lが、水溜め部72sと交わるように形成されている。
【0117】
これにより、入口配管部71、171、271、371から排水マス72に排出される雨水は、排水マス72の底面72aまたは側面72b、72c、72d、72eを含む内壁に直接当たらず、水溜め部72sの水にあたるため勢いが緩和される。このため、排水マス72からの水の跳ね出しを低減することができる。
【0118】
(5)
本実施の形態の雨水排水装置10では、入口配管部171は、インクリーザ93(拡径部の一例)と、配管92(第1配管の一例)と、配管94(第2配管の一例)とを有する。配管92は、インクリーザ93の上流側に接続されている。配管94は、インクリーザ93の下流側に接続され、配管92よりも断面積が大きい。
【0119】
このように排水マス72の上流側に拡径部を設けることにより、雨水が減速されるため、排水マス72からの雨水の跳ね出しを低減することができる。
【0120】
(6)
本実施の形態の雨水排水装置10は、立て配管部15を更に備える。立て配管部15は、15L/s以上の設計流量であって、立て方向に沿って配置されている。入口配管部71、171、272、372は、立て配管部15の下流側に配置されている。
【0121】
このように、15L/s以上の設計流量の立て配管部15に多量の雨水が流れた場合であっても、排水マスからの水の跳ね出しを低減することができる。
【0122】
(7)
本実施の形態の雨水排水装置10では、排水マス72を含む複数のマスが、立て配管部15の下流側に設けられている場合、複数のマスのうち排水マス72が、第1番目に立て管部に接続されている。
【0123】
立て配管部15の下流側に複数のマスが設けられた場合、立て配管部15の下流側において一番目に設置されるマスに最も勢いよく雨水が排出される。このため、一番目のマスに、本実施の形態の排水マス72を用いることによって、排水マス72からの水の跳ね出しを低減することができる。
【0124】
また、本明細書における「縦方向」とは、厳密な意味でなく、社会通念上縦方向と認識可能な範囲であればよく、傾斜があってもよい。「横方向」とは、厳密な意味でなく、社会通念上横方向と認識可能な範囲であればよく、傾斜があってもよい。
【0125】
<5.他の実施形態>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0126】
(A)
上記実施の形態の雨水排水装置10´では、エルボ配管82の開口82aは、排水マス72の底面72aに対向するように設けられているが、
図15に示すように、傾斜したエルボ配管482が用いられていてもよい。
図15に示す排水部416´では、エルボ配管482の上端482c(外周側の端ともいえる)の延長線Lは、側面72cにおける水溜め部72sの上端と交わっている。これにより、エルボ配管482から排出された雨水が排水マス72の底面42aおよび側面42b、42c、42d、42eに直接当たらないため、排水マスからの水の飛び跳ねを抑制することができる。
【0127】
なお、エルボ配管82の曲がり角度は、
図15に示す角度に限られるものではなく、延長線Lが水溜め部72sと交わっておりさえすればよい。
【0128】
また、エルボ配管482の下端482b(内周側の端ともいえる)の延長線Mも水溜め部72sと交わっているほうが好ましい。
【0129】
(B)
上記実施の形態および実施例の雨水排水装置10、10´では、入口配管部71、171、271、371は、エルボ配管82、282、382によって下方に曲げられているが、別部材としてのエルボ配管を用いなくても良く、要するに、入口配管部71、171、271、371は、排水マス72の内側において下方に向かって曲げられた構成を有していればよい。
【0130】
(C)
上記実施の形態および実施例の雨水排水装置10、10´では、横引き配管部14、14´に用いられている配管の全部に、オレフィン製であり、外径と肉厚の比であるSDR値が17以上23以下の配管34を用いられているが、全部ではなく、一部に用いられていてもよい。
【0131】
(D)
上記実施の形態の雨水排水装置10、10´では、排水マス72は直方体形状であったが、これに限られるものではなく、例えば、円柱形状等であってもよい。
【0132】
(E)
上記実施の形態の雨水排水装置10´では、出口配管部73´が、隣の雨水排水装置10´の排水マス72に接続されているが、接続されていなくてもよい。
【0133】
(F)
上記実施の形態の雨水排水システム1では、側面103側に3つの雨水排水装置10が配置されており、側面104側に3つの雨水排水装置10´が配置されているが、これに限られるものではなく、例えば、側面103側に雨水排水装置10と雨水排水装置10´が混合して配置されていてもよい。
【0134】
(G)
上記実施の形態では、1つの雨水排水装置10には、流入口11とサイフォン誘発部12と立て配管部13の組が1組設けられているが、複数組設けられていてもよい。この場合、複数組の立て配管部13の下端が横引き配管部14に接続されており、複数の流入口11からの雨水が流れ込む。
【0135】
(H)
上記実施の形態では、雨水排水装置10、10´は、対向する2つの側面103、104にのみ設けられているが、4つの側面全ての近傍に設けられていてもよい。
【0136】
(I)
上記実施の形態の雨水排水装置10では、流路方向に垂直な断面(流路断面)が円形状の配管を用いているが、円形状に限らなくても良く、楕円形状や四角形状等であってもよい。
【0137】
(J)
上記実施の形態の雨水排水装置10、10´では、立て配管部15における配管の内径は同一であるが、立て配管部15の途中に縮径部が設けられており、立て配管部15の途中で配管の断面積が小さくなってもよい。これによって、雨水の勢いを低減することができ、立て配管部15の下端や、排水マス72における水の衝突音を低減することができる。
【0138】
(K)
上記実施の形態では、雨水排水装置10は、建造物100の屋内に配置されているが、これに限られるものではなく、屋外に配置されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0139】
本発明の雨水排水装置によれば、排水マスからの水の跳ね出しを低減することが可能な効果を有し、各種排水装置等として利用可能である。
【符号の説明】
【0140】
10 :雨水排水装置
11 :流入口
12 :サイフォン誘発部
71 :入口配管部
72 :排水マス
73 :出口配管部
82 :エルボ配管