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特許7188932光ファイバテープ心線、光ファイバケーブル、および光ファイバテープ心線の融着接続方法
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  • 特許-光ファイバテープ心線、光ファイバケーブル、および光ファイバテープ心線の融着接続方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】光ファイバテープ心線、光ファイバケーブル、および光ファイバテープ心線の融着接続方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/44 20060101AFI20221206BHJP
   G02B 6/255 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
G02B6/44 371
G02B6/255
G02B6/44 366
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018147592
(22)【出願日】2018-08-06
(65)【公開番号】P2020024257
(43)【公開日】2020-02-13
【審査請求日】2021-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(74)【代理人】
【識別番号】100160093
【弁理士】
【氏名又は名称】小室 敏雄
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 大典
(72)【発明者】
【氏名】富川 浩二
(72)【発明者】
【氏名】大里 健
【審査官】山本 元彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-221320(JP,A)
【文献】特開平02-047606(JP,A)
【文献】特開2011-169940(JP,A)
【文献】特開2012-208223(JP,A)
【文献】特開2005-234361(JP,A)
【文献】米国特許第06628866(US,B1)
【文献】特開2011-232373(JP,A)
【文献】特開2008-181848(JP,A)
【文献】実開昭53-055530(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも3本の光ファイバ素線および前記光ファイバ素線を一括して直接被覆する被覆部をそれぞれ有する第1のユニットおよび第2のユニットと、
前記第1のユニットと前記第2のユニットとを連結する複数の連結部と、を備え、
前記光ファイバ素線が延びる方向を長手方向とし、前記第1のユニットと前記第2のユニットとが前記連結部を挟んで向かい合う方向を連結方向とし、前記長手方向および前記連結方向の双方に直交する方向を直交方向とするとき、
複数の前記連結部は、前記長手方向において間欠的に配置され、
前記第1のユニットに含まれる光ファイバ素線のうちの少なくとも2本は、前記直交方向で互いにずれた位置に配置され
前記第1のユニットおよび前記第2のユニットは、前記長手方向に直交する横断面視において略多角形状に形成され、
前記複数の連結部は、前記第1のユニットおよび前記第2のユニットにおける角部同士を連結している、光ファイバテープ心線。
【請求項2】
少なくとも3本の光ファイバ素線および前記光ファイバ素線を被覆する被覆部をそれぞれ有する第1のユニットおよび第2のユニットと、
前記第1のユニットと前記第2のユニットとを連結する複数の連結部と、を備え、
前記光ファイバ素線が延びる方向を長手方向とし、前記第1のユニットと前記第2のユニットとが前記連結部を挟んで向かい合う方向を連結方向とし、前記長手方向および前記連結方向の双方に直交する方向を直交方向とするとき、
複数の前記連結部は、前記長手方向において間欠的に配置され、
前記第1のユニットに含まれる光ファイバ素線のうちの少なくとも2本は、前記直交方向で互いにずれた位置に配置され、
前記第1のユニットの前記被覆部のうち、前記第1のユニットの外周に位置する部分には、第1外側被覆部と第2外側被覆部とが形成され、
前記第2外側被覆部の光ファイバ素線に対する密着力は、前記第1外側被覆部の光ファイバ素線に対する密着力よりも小さい、光ファイバテープ心線。
【請求項3】
前記直交方向から見たときに、前記第1のユニットに含まれる光ファイバ素線のうちの少なくとも2本が重なる、請求項1または2に記載の光ファイバテープ心線。
【請求項4】
前記第1のユニットに含まれる光ファイバ素線のうち少なくとも2本は、前記連結方向で互いにずれた位置に配置されている、請求項1から3のいずれか1項に記載の光ファイバテープ心線。
【請求項5】
前記第1のユニットに含まれる3本の光ファイバ素線は、互いに接している、請求項1から4のいずれか1項に記載の光ファイバテープ心線。
【請求項6】
前記第2のユニットの前記被覆部のうち、前記第2のユニットの外周に位置する部分には、第1外側被覆部と第2外側被覆部とが形成され、
前記第1のユニットの第2外側被覆部および前記第2のユニットの第2外側被覆部を除去し、前記第1のユニットおよび前記第2のユニットを平面状に展開したとき、前記連結部は、前記第1のユニットにおける前記光ファイバ素線の列の端部と、前記第2のユニットにおける前記光ファイバ素線の列の端部とを連結する、請求項2に記載の光ファイバテープ心線。
【請求項7】
前記第1のユニットの前記被覆部には、前記第1のユニットの内側に向けて窪み、かつ前記長手方向に延びる凹部が形成されている、請求項1からのいずれか1項に記載の光ファイバテープ心線。
【請求項8】
前記第1のユニットの前記被覆部のうち、前記第1のユニットの外周に位置する部分には、第1外側被覆部と第2外側被覆部とが形成され、
前記第1外側被覆部と前記第2外側被覆部とで色が異なっている、請求項1からのいずれか1項に記載の光ファイバテープ心線。
【請求項9】
光ファイバテープ心線と、
前記光ファイバテープ心線を覆うシースと、を備える、光ファイバケーブルであって、
前記光ファイバテープ心線は、
少なくとも3本の光ファイバ素線および前記光ファイバ素線を被覆する被覆部をそれぞれ有する第1のユニットおよび第2のユニットと、
前記第1のユニットと前記第2のユニットとを連結する複数の連結部と、を有し、
前記光ファイバ素線が延びる方向を長手方向とし、前記第1のユニットと前記第2のユニットとが前記連結部を挟んで向かい合う方向を連結方向とし、前記長手方向および前記連結方向の双方に直交する方向を直交方向とするとき、
複数の前記連結部は、前記長手方向において間欠的に配置され、
前記第1のユニットに含まれる光ファイバ素線のうちの少なくとも2本は、前記直交方向で互いにずれた位置に配置され
前記第1のユニットおよび前記第2のユニットは、前記長手方向に直交する横断面視において略多角形状に形成され、
前記複数の連結部は、前記第1のユニットおよび前記第2のユニットにおける角部同士を連結している、光ファイバケーブル。
【請求項10】
3本以上の光ファイバ素線および前記光ファイバ素線を一括被覆する被覆部を有する複数のユニットと、前記ユニット同士を連結する複数の連結部と、を備える光ファイバテープ心線を、接続対象に融着接続する、光ファイバテープ心線の融着接続方法であって、
前記ユニットの被覆部の一部を除去する除去工程と、
単一の前記ユニットに含まれる光ファイバ素線同士を相対的に回動させ、複数の光ファイバ素線を一直線状に並べる並列工程と、
一直線状に並べられた前記複数の光ファイバ素線を、前記接続対象に融着接続する接続工程と、を有する、
光ファイバテープ心線の融着接続方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバテープ心線、光ファイバケーブル、および光ファイバテープ心線の融着接続方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、下記特許文献1に示されるような光ファイバテープ心線が知られている。この光ファイバテープ心線は、複数の光ファイバ素線を一括被覆する被覆部に間欠的にスリットを設けている。
このような光ファイバテープ心線は、シース内に収容されて、光ファイバケーブルとして用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-163045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年では、光ファイバケーブルの外径を大きくせずにより多くの光ファイバ素線を収容するために、光ファイバ素線の外径をより小さくすることが求められている。例えば、従来は外径が250μmの光ファイバ素線が広く用いられていた。しかしながら近年では、例えば光ファイバ裸線の外径を80μm程度とし、着色層などのコート層の外径を170μm程度とすることが求められている。
ここで、外径の小さい光ファイバ素線によって光ファイバテープ心線を構成すると、光ファイバテープ心線の剛性が小さいために、ケーブル内で光ファイバテープ心線が過度に曲がってしまうという課題がある。光ファイバテープ心線が過度に曲がると、マクロベンド損失が大きくなってしまう。
【0005】
本発明はこのような事情を考慮してなされ、剛性を高めた光ファイバテープ心線を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様に係る光ファイバテープ心線は、少なくとも3本の光ファイバ素線および前記光ファイバ素線を被覆する被覆部をそれぞれ有する第1のユニットおよび第2のユニットと、前記第1のユニットと前記第2のユニットとを連結する複数の連結部と、を備え、前記光ファイバ素線が延びる方向を長手方向とし、前記第1のユニットと前記第2のユニットとが前記連結部を挟んで向かい合う方向を連結方向とし、前記長手方向および前記連結方向の双方に直交する方向を直交方向とするとき、複数の前記連結部は、前記長手方向において間欠的に配置され、前記第1のユニットに含まれる光ファイバ素線のうちの少なくとも2本は、前記直交方向で互いにずれた位置に配置されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明の上記態様によれば、剛性を高めた光ファイバテープ心線を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係る光ファイバテープ心線の横断面の形状を示した斜視図。
図2図1の光ファイバテープ心線を備えた光ファイバケーブルの横断面図である。
図3図1の第1のユニットを展開する様子を示した図である。
図4図1の光ファイバテープ心線を展開した様子を示した図である。
図5】(a)~(d)は、本実施形態の光ファイバテープ心線の変形例を示した図である。
図6】(a)~(c)は、本実施形態の光ファイバテープ心線の他の変形例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本実施形態の光ファイバテープ心線について図面に基づいて説明する。
図1に示すように、光ファイバテープ心線20は、第1のユニット1Aと、第2のユニット1Bと、第3のユニット1Cと、第4のユニット1Dと、複数の連結部2と、を備えている。複数の連結部2により、ユニット1A~1D同士が連結されている。ユニット1A~1Dはそれぞれ、3本の光ファイバ素線3A~3Cを有している。
【0010】
(方向定義)
本実施形態ではXYZ直交座標系を設定して各構成の位置関係を説明する。X軸に沿う方向は、光ファイバ素線3A~3Cが延びる方向(以下、長手方向Xという)である。Y軸に沿う方向は、第1のユニット1Aと第2のユニット1Bとが、連結部2を挟んで向かい合う方向(以下、連結方向Yという)である。Z軸に沿う方向は、長手方向Xおよび連結方向Yの双方に直交する方向(以下、直交方向Zという)である。
長手方向Xに直交する断面を、横断面という。図1は、光ファイバテープ心線20の横断面の形状を示した斜視図である。
【0011】
(光ファイバケーブル)
光ファイバテープ心線20は、例えば図2に示すような光ファイバケーブル50内に収容して用いられる。なお、図2では光ファイバテープ心線20の形状を簡略化して表示している。
【0012】
光ファイバケーブル50は、コア52と、コア52を覆うシース54と、を備えている。コア52は、複数の光ファイバテープ心線20と、複数の光ファイバテープ心線20を覆う押さえ巻き53(ラッピングチューブ)と、を備えている。
各光ファイバテープ心線20は、結束材51により束ねられた状態で、押さえ巻き54の内側に収容されている。なお、図2では2つの光ファイバテープ心線20に1つの結束材51が巻き付けられているが、1つまたは3つ以上の光ファイバテープ心線20に結束材51を巻き付けてもよい。また、結束材51は無くてもよい。複数の光ファイバテープ心線20は、SZ状または螺旋状などの態様で撚り合わされた状態で、シース54内に収容されている。
【0013】
結束材51は、SZ状、螺旋状などの態様で光ファイバテープ心線20に巻き付けられている。結束材51に着色することで、光ファイバテープ心線20同士の識別性を向上させてもよい。結束材51しては、例えばポリエチレンテレフタラート(PET)等の高融点材料およびポリプレピレン(PP)等の低融点材料からなる繊維を複数本組み合わせたものを用いることができる。なお、結束材51の構成や材質は上記に限定されず、適宜変更可能である。
【0014】
シース54の内部には、一対の抗張力体56および一対の引き裂き紐57が埋設されている。一対の引き裂き紐57は、シース54内の内周面に近接する位置に埋設されている。シース54の外周面のうち、一対の引き裂き紐57が配置された位置の外側にはそれぞれ、マーカ突起58が突設されている。マーカ突起58は、引き裂き紐57に沿って形成されており、引き裂き紐57の埋設位置を案内している。
【0015】
なお、光ファイバケーブル50は、押さえ巻き54、抗張力体56、引き裂き紐57、およびマーカ突起58を備えていなくてもよい。
【0016】
(光ファイバテープ心線)
図1に示すように、光ファイバテープ心線20におけるユニット1A~1Dはそれぞれ、3本の光ファイバ素線3A~3Cと、これらの光ファイバ素線3A~3Cを被覆する被覆部10と、を有している。光ファイバ素線3A~3Cはそれぞれ、光ファイバ裸線Bと、光ファイバ裸線Bを覆うコート層Cと、を有している。コート層Cは、1層であってもよいし、2層以上で構成されていてもよい。つまり、光ファイバ素線3A~3Cは、プライマリ層のみを有していてもよいし、セカンダリ層や着色層などを有していてもよい。なお、コート層Cが1層(プライマリ層)のみである場合、被覆部10の外側被覆部11、12(後述)のヤング率を、一般的なセカンダリ層のヤング率(700~1400MPa)と同程度としてもよい。
【0017】
なお、光ファイバテープ心線20が備えるユニット1A~1Dの数は、2つ以上であれば適宜変更してもよい。つまり、光ファイバテープ心線20は少なくとも第1のユニット1Aと第2のユニット1Bとを備えている。各ユニット1A~1Dが有する光ファイバ素線3A~3Cの数は、3本以上であれば適宜変更してもよい。つまり、各ユニット1A~1Dは、少なくとも3本の光ファイバ素線3A~3Cを有する。
【0018】
第1のユニット1Aと第2のユニット1Bとを連結する連結部2は、長手方向Xに間隔を空けて複数設けられている。つまり、ユニット1A、1Bは、間欠的に固定されている。第2のユニット1Bと第3のユニット1C、および第3のユニット1Cと第4のユニット1Dについても同様に、複数の連結部2によって間欠的に固定されている。
ユニット1A、1Bを互いに連結する連結部2と、ユニット1B、1Cを互いに連結する連結部2とは、長手方向Xにずれた位置に配置されている。このように、光ファイバテープ心線20が有する複数の連結部2は、千鳥状に配置されている。なお、連結部2の配置は適宜変更してもよい。また、連結部2によるユニット1A~1Dの連結強度も適宜調整可能である。
【0019】
横断面視において、各ユニット1A~1Dは、略多角形状(本実施形態では略三角形状)に形成されている。連結部2は、連結方向Yで隣り合うユニット1A~1Dの角同士を連結するように配置されている。
【0020】
横断面視において、各ユニット1A~1Dに含まれる3本の光ファイバ素線3A~3Cは、三角形状に配置されている。より詳しくは、光ファイバ素線3A、3Bは連結方向Yに並べて配置されている。光ファイバ素線3Cは2つの光ファイバ素線3A、3Bに対して直交方向Zでずれた位置に配置されている。連結方向Yにおいて、光ファイバ素線3Cの中心軸は、光ファイバ素線3A、3Bの各中心軸の間に位置している。
【0021】
また、光ファイバ素線3Aは光ファイバ素線3B,3Cの双方に接しており、光ファイバ素線3Bは光ファイバ素線3A、3Cの双方に接している。つまり、1つのユニットにおける光ファイバ素線3A~3C同士は、互いに接している。このように、光ファイバ素線3A~3Cは最密充填様に配置されている。
【0022】
上記構成により、1つのユニットに含まれる光ファイバ素線3A~3Cのうち少なくとも2本は、直交方向Zで互いにずれた位置に配置される。例えば、図1に示す第1のユニット1Aにおいて、光ファイバ素線3Cは、光ファイバ素線3Aに対して直交方向Zでずれた位置に配置される。このため、第1のユニット1Aの直交方向Zにおける曲げに対する剛性が高められている。
【0023】
また、1つのユニットに含まれる光ファイバ素線3A~3Cのうち少なくとも2本は、連結方向Yで互いにずれた位置に配置される。例えば第1のユニット1Aにおいて、光ファイバ素線3Bは、光ファイバ素線3Aに対して連結方向Yでずれた位置に配置される。このため、第1のユニット1Aの連結方向Yにおける曲げに対する剛性が高められている。
【0024】
本実施形態では、被覆部10が光ファイバ素線3A~3Cを一括被覆している。各ユニット1A~1Dが有する被覆部10はそれぞれ、外周に位置する外側被覆部11、12と、内部に位置する内側被覆部13とを有している。第1外側被覆部11と第2外側被覆部12とでは、光ファイバ素線3A~3Cに対する密着力が異なっている。第2外側被覆部12の光ファイバ素線に対する密着力(以下、密着力F12という)は、第1外側被覆部11の光ファイバ素線に対する密着力(以下、密着力F11という)よりも小さい。つまり、F12<F11となっている。
このため、外側被覆部11、12を光ファイバ素線3A~3Cから剥離させようとすると、第2外側被覆部12が優先的に光ファイバ素線3A~3Cから剥離する。
【0025】
なお、本実施形態では、光ファイバ素線3A~3Cにより囲まれた部分に内側被覆部13が形成されている。ただし、内側被覆部13を形成せず、光ファイバ素線3A~3Cに囲まれた部分を空隙としてもよい。
内側被覆部13を形成する場合には、内側被覆部13と光ファイバ素線3A~3Cとの密着力(以下、密着力F13という)を、密着力F11よりも小さくすることが好ましい。つまり、F13<F11とするとよい。また、密着力F13を、密着力F12と同等とすることが好ましい。つまり、F12≒F13<F11とするとよい。また、内側被覆部13を第2外側被覆部12と同じ材質とすることで、F12≒F13としてもよい。
【0026】
密着力F11~F13は、当該部分を形成する材質の違いによって変化する。また、例えば紫外線硬化型樹脂によって被覆部10を形成した場合には、部分的に硬化度を異ならせることで、当該部分の密着力を増減させることができる。したがって、F11~F13は材質や硬化度などによって適宜設定することができる。
【0027】
例えば、被覆部10が紫外線硬化型樹脂である場合には、第2外側被覆部12となる部分への紫外線照射量(強度×時間)を、第1外側被覆部11となる部分への紫外線照射量より小さくしてもよい。この場合、紫外線照射量が小さい部分では硬化度が小さくなるため、光ファイバ素線への密着力が低下する。つまり、紫外線照射量の差によって、第1外側被覆部11と第2外側被覆部12とで密着力の差をつけることができる。
また、例えば第2外側被覆部12の光ファイバ素線3A~3Cに対する接触面積を小さくして、F11とF12とで差をつけてもよい。具体的には、第2外側被覆部12を長手方向Xに沿って間欠的に形成し、第1外側被覆部11を長手方向Xに沿って連続して形成してもよい。あるいは、第2外側被覆部12に、複数の貫通孔、ミシン目、スリットなどを形成してもよい。
【0028】
第1外側被覆部11には、各ユニット1A~1Dの内側に向けて窪み、かつ長手方向Zに延びる凹部14(溝部)が形成されている。凹部14は、各ユニット1A~1Dに2つずつ形成されている。例えば第1のユニット1Aについては、外側被覆部11のうち、光ファイバ素線3A、3Cの間を覆う部分と、光ファイバ素線3B、3Cの間を覆う部分と、の2か所に凹部14が設けられている。本実施形態では第2外側被覆部12には凹部が形成されていないが、必要に応じて、第2外側被覆部12に凹部14を形成してもよい。
【0029】
以上説明したように、本実施形態の光ファイバテープ心線20は、第1のユニット1A、第2のユニット1B、およびユニット1A、1B同士を間欠的に連結する複数の連結部2を備えている。ユニット1A、1Bはそれぞれ、少なくとも3本の光ファイバ素線3A~3Cと、光ファイバ素線3A~3Cを一括被覆する被覆部10とを有している。そして、第1のユニット1Aに含まれる光ファイバ素線3A~3Cのうち少なくとも2本は、直交方向Zで互いにずれた位置に配置されている。また、直交方向Zから見たときに、第1のユニット1Aに含まれる光ファイバ素線3A~3Cのうちの少なくとも2本が重なっている。
【0030】
この構成により、第1のユニット1Aの直交方向Zにおける剛性が高められており、第1のユニット1Aに含まれる光ファイバ素線3A~3Cが過度に曲がることが抑えられる。したがって、光ファイバ素線3A~3Cのマクロベンド損失が大きくなることを抑制できる。他のユニット1B~1Dも同様の構成となっているため、同様の作用効果が得られる。
【0031】
さらに、ユニット1A~1Dは連結部2によって間欠的に連結されている。したがって、光ファイバケーブル50内に収容したときに、連結部2を中心としてユニット1A~1Dが相対的に動きやすくなっている。つまり、ユニット1A~1Dの剛性が高められる一方で、光ファイバテープ心線20の全体としての可撓性は確保されている。したがって、複数の光ファイバテープ心線20を撚り合わせて光ファイバケーブル50内に収容しやすく、撚り戻りが生じにくくなっている。
【0032】
また、第1のユニット1Aに含まれる光ファイバ素線3A~3Cのうち少なくとも2本は、連結方向Yで互いにずれた位置に配置されている。また、連結方向Yから見たときに、第1のユニット1Aに含まれる光ファイバ素線3A~3Cにうち少なくとも2本が重なっている。このため、第1のユニット1Aの連結方向Yにおける剛性が高められており、光ファイバ素線3A~3Cが過度に曲がることがより確実に抑えられる。他のユニット1B~1Dも同様の構成となっているため、同様の作用効果が得られる。
【0033】
また、第1のユニット1Aに含まれる3本の光ファイバ素線3A~3Cが、互いに接しており、最密充填様に配置されている。このため、第1のユニット1Aの断面積が小さくなり、光ファイバ素線をより高密度に光ファイバケーブル50内に充填することができる。
【0034】
また、ユニット1A~1Dは横断面視において略多角形状(略三角形状)に形成されており、連結部2は、各ユニット1A~1Dの角部同士を連結している。このため、連結部2を中心として各ユニット1A~1Dが動きやすくなっており、光ファイバテープ心線20の全体としての可撓性が高められている。
なお、第1外側被覆部11と第2外側被覆部12とで、色が異なっていてもよい。この場合、外側被覆部11、12の色の組み合わせによって、各ユニット1A~1D間の識別をすることができる。
【0035】
(融着接続方法)
次に、本実施形態の光ファイバテープ心線20の融着接続方法について説明する。接続対象は、本実施形態の光ファイバテープ心線20と同様のテープ心線であってもよいし、他の形態のテープ心線であってもよい。あるいは、一括被覆されていない(単体の)光ファイバ心線または光ファイバ素線を複数並べたものを接続対象としてもよい。
【0036】
光ファイバテープ心線を接続対象に接続する場合には、一般的に、複数の光ファイバ素線を一列に並べた状態として、融着接続器で一括接続する。そこで、本実施形態の光ファイバテープ心線20を以下の手順により一直線状に展開することで、汎用の融着接続器を使用して接続作業を行うことができる。
【0037】
まず、図3(a)、(b)に示すように、第1のユニット1Aの第2外側被覆部12を除去する(除去工程)。このとき、F12<F11となっていることで、第1外側被覆部11を残したまま容易に第2外側被覆部12を除去することができる。
また、内側被覆部13が形成されている場合には、この内側被覆部13を除去する。このとき、F13<F11となっていることで、第1外側被覆部11を残したまま容易に内側被覆部13を除去することができる。なお、内側被覆部13を除去する際に、凹部14が閉じるように第1外側被覆部11を変形させてもよい。これにより、光ファイバ素線3A、3Bの間が広がり、その隙間から内側被覆部13を取り出すことができる。
【0038】
次に、図3(c)に示すように、光ファイバ素線3Cを中心として光ファイバ素線3A、3Bを回動させる。これにより、3本の光ファイバ素線3A~3Cを一直線状に並べる。このとき、第1外側被覆部11が残された状態となるが、凹部14が形成されていることで、第1外側被覆部11が変形しやすくなっている。したがって、光ファイバ素線3A~3Cを一直線状にする作業が容易となっている。
【0039】
上記した作業を、他のユニット1B~1Dについても行うことで、図4に示すように、光ファイバテープ心線20に含まれている光ファイバ素線を一直線状に並べる(並列工程)。このとき、連結部2によってユニット1A~1Dが連結された状態であってもよい。あるいは、連結部2を破断してもよい。
そして、融着接続器などを用いて、一直線状に並べられた光ファイバ素線を接続対象に融着接続させる(接続工程)。
以上の工程により、本実施形態の光ファイバテープ心線20を、接続対象に対して融着接続することができる。
【0040】
以上説明したように、本実施形態の光ファイバテープ心線の融着接続方法は、ユニット1A~1Dの被覆部10の一部(第2外側被覆部)を除去する除去工程と、光ファイバ素線同士を相対的に回動させて一直線状に並べる並列工程と、一直線状に並べられた光ファイバ素線を接続対象に融着接続する接続工程と、を有している。これにより、汎用の融着接続器を用いて、光ファイバテープ心線20を一括融着接続することができる。
【0041】
また、第2外側被覆部12の光ファイバ素線に対する密着力F12は、第1外側被覆部11の光ファイバ素線に対する密着力F11よりも小さい。これにより、除去工程を容易に行うことが可能となっている。
【0042】
また、被覆部10には、ユニット1A~1Dの内側に向けて窪み、かつ長手方向Xに延びる凹部14が形成されている。これにより、並列工程を容易に行うことが可能となっている。
【0043】
また、図4に示すように、第2外側被覆部12および連結部2は、第2外側被覆部12が除去されたときに、連結部2によって各ユニット1A~1Dが連結されたまま、ユニット1A~1Dに含まれるすべての光ファイバ素線が一直線状に展開可能な位置に配置されている。つまり、ユニット1A~1Dを平面状に展開したとき、連結部2は、各ユニット1A~1Dにおける光ファイバ素線3A~3Dの列の端部同士を連結する。これにより、連結部2によって各ユニットが連結されたまま光ファイバ素線を一直線状に並べることが可能となっており、並列工程をより容易に行うことができる。
【実施例
【0044】
以下、具体的な実施例を用いて、上記実施形態を説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されない。
表1に、実施例、比較例1、および比較例2の各数値を記載する。
【0045】
【表1】
【0046】
(実施例)
本実施例では、図1に示すような光ファイバテープ心線20を用意した。1つの光ファイバテープ心線20が有するユニットの数は4つとし、各ユニットに3本の光ファイバ素線を含ませた。つまり、本実施例の光ファイバテープ心線20は、合計で12本の光ファイバ素線を有している。また、各ユニットの断面形状は略三角形である。光ファイバ素線として、光ファイバ裸線Bに、プライマリ層、セカンダリ層、および着色層が形成された光ファイバ素線を用いた。つまり、コート層Cは3層構造となっている。光ファイバ裸線Bの外径を80μmとし、セカンダリ層の外径を160μmとし、着色層の外径(素線径、コート層Cの外径)を170μmとした。光ファイバテープ心線20の連結方向Yにおける幅(テープ幅)は1.25mmとなり、直交方向Zにおける厚み(テープ厚)は0.33mmとなった。
【0047】
この光ファイバテープ心線20を12個、結束材51(図2参照)で束ねたものを、1つの束とした。この束を12個用意し、SZ撚りさせた状態でシース54内に収容し、光ファイバケーブル50を作成した。つまり、本実施例の光ファイバケーブル50は、合計で12×12×12=1728本の光ファイバ素線を有している。この光ファイバケーブル50の外径(ケーブル外径)は18.2mmとなり、実装密度は21.8本/mm2となった。なお、実装密度とは、光ファイバケーブル50が有する光ファイバ素線の数(本実施例では1728本)を、シース54の内側の断面積で割った値である。
【0048】
(比較例1)
比較例1として、従来から用いられている光ファイバテープ心線を用意した。比較例1の光ファイバテープ心線は、12本のファイバ素線を一直線状に並べて配置し、間欠的に連結部で固定している。比較例1の光ファイバ素線の外径は250μmである。その他の条件は実施例と同様とした。比較例1の光ファイバテープ心線のテープ幅は3.12mmとなり、テープ厚は0.27mmとなった。
【0049】
この光ファイバテープ心線を用いて、1728本の光ファイバ素線を有する光ファイバケーブルを作成した。ケーブルを作成した際の条件(結束材の種類、シースの厚みなど)は実施例と同様である。
比較例1の光ファイバケーブルの外径は22.0mmとなり、実装密度は10.3本/mm2となった。
【0050】
実施例と比較例1との対比から明らかなように、本実施例の光ファイバテープ心線20を用いることで、従来の光ファイバテープ心線と比較して、実装密度を約2倍とすることができた。
【0051】
(低温ロス試験)
次に、実施例および比較例2の光ファイバケーブルについて、低温環境下での伝送損失の増大を確認した結果を説明する。ここでは、IEC60794-1-22, Method F1の規格に従い、常温環境での伝送損失の値に対する、低温環境での伝送損失の増加分を測定した。表1の「低温ロス試験結果」には、伝送損失の測定結果を示している。より詳しくは、測定波長1.55μmにおける伝送損失の増加分の最大値が、0.15dB/km以下の場合に結果が良好(OK)とし、0.15dB/kmを超えたときに結果が不良(NG)とした。
【0052】
(比較例2)
比較例2として、従来から用いられている光ファイバテープ心線を用意した。比較例2の光ファイバテープ心線は、12本のファイバ素線を一直線状に並べて配置し、間欠的に連結部で固定している。比較例1の光ファイバ素線の外径は170μmである。その他の条件は実施例と同様とした。比較例2の光ファイバテープ心線のテープ幅は2.18mmとなり、テープ厚は0.17mmとなった。
【0053】
この光ファイバテープ心線を用いて、1728本の光ファイバ素線を有する光ファイバケーブルを作成した。ケーブルを作成した際の条件(結束材の種類、シースの厚みなど)は実施例と同様である。
【0054】
表1に示すように、実施例の光ファイバケーブルでは、低温ロス試験結果が良好であり、比較例2の光ファイバケーブルでは、低温ロス試験結果が不良であった。この結果について考察する。
低温環境下では、シースが熱収縮するため、シースの内部に収容されている光ファイバ素線が圧縮させられる。このとき、光ファイバ素線が過度に曲げられてしまい、局所的に伝送損失が増大する場合がある。この現象をマクロベンド損失という。
【0055】
マクロベンド損失の大きさは、光ファイバテープ心線の剛性によって左右されると考えられる。つまり、光ファイバテープ心線の剛性が小さいと、シースにより圧縮された光ファイバテープ心線が過度に曲げられてしまい、マクロベンド損失が増大する。一方、光ファイバテープ心線の剛性が大きければ、シースによる圧縮に抗して光ファイバテープ心線の変形が抑えられる。したがって、マクロベンド損失の増大を抑えることができる。
【0056】
実施例の光ファイバテープ心線20は、図1に示すように、各ユニットに含まれる光ファイバ素線同士が、直交方向Zおよび連結方向Yでずれた位置に配置された状態で、被覆部10によって一括被覆されている。したがって、ユニット自体の剛性が高められている。
一方、比較例2の光ファイバテープ心線は、光ファイバ素線同士が直交方向Zでずれた位置に配置されていない。したがって、直交方向Zにおける曲げに対する剛性が、実施例の光ファイバテープ心線20よりも小さい。この結果、マクロベンド損失によって伝送損失が増大し、低温ロス試験結果が不良となったと考えられる。
【0057】
以上のことから、本実施例の光ファイバテープ心線20によれば、光ファイバケーブル50の実装密度を高めつつ、ユニット1A~1Dの剛性を高めることでマクロベンド損失の増大を抑制することが可能である。
【0058】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施の形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0059】
(変形例)
例えば、図5(a)~(d)に示すように、ユニット1A~1Dの形状または連結部2の位置を適宜変更してもよい。
図5(a)の例では、第2外側被覆部12を除去して各光ファイバ素線を回動させることで、連結部2によってユニット1A~1D同士が連結されたまま、破線Lに沿って光ファイバ素線を一直線状に展開可能となっている。
【0060】
また、図5(b)~(d)のような形態であっても、例えば融着接続の際に連結部2を破断させることなどにより、接続対象に対して一括融着接続することができる。
図5(b)、(d)の例では、連結部2によって連結される部分に第2外側被覆部12が配置されている。このため、例えば隣り合うユニット1A~1D同士を連結方向Yで離間させるように引っ張ることで、連結部2を破断させつつ、連結部2とともに第2外側被覆部12を除去することができる。したがって、1つのユニットを展開する際の作業効率が向上する。
【0061】
図5(c)の例では、長手方向Xから見ると、一部の凹部14と連結部2とが同じ位置にあるが、凹部14と連結部2とで長手方向Xの位置を異ならせることで、このような配置とすることも可能である。この場合、凹部14は長手方向Xに間欠的に複数形成されていてもよい。
【0062】
(他の変形例)
また、図6(a)~(c)に示すように、ユニット1A~1Dに含まれる光ファイバ素線の数を変更してもよい。
図6(a)、(b)の例では、各第2外側被覆部12を除去し、各凹部14が閉じるように各光ファイバ素線を回動させることで、一直線状に光ファイバ素線を並べることができる。このとき、破線Lに沿って光ファイバテープ心線が展開される。
図6(c)の例では、第3のユニット1Cが、第2のユニット1Bに対して、ユニット1A、1Bにとっての直交方向Zで連結されている。図6(c)の例でも、破線Lに沿って一直線状に光ファイバテープ心線を展開することができる。
【0063】
また、被覆部10は光ファイバ素線3A~3Cを一括被覆しておらず、被覆部10から光ファイバ素線3A~3Cの一部が露出していてもよい。また、被覆部10が光ファイバ素線3A~3Cを間欠的に固定していてもよい。つまり、被覆部10は光ファイバ素線3A~3Cの少なくとも一部を被覆していればよい。
【0064】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した実施形態や変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0065】
1A…第1のユニット 1B…第2のユニット 2…連結部 3A~3C…光ファイバ素線 10…被覆部 11…第1外側被覆部 12…第2外側被覆部 14…凹部 20…光ファイバテープ心線 50…光ファイバケーブル 54…シース X…長手方向 Y…連結方向 Z…直交方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6