(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】制御装置、積込機械、および制御方法
(51)【国際特許分類】
E02F 9/26 20060101AFI20221206BHJP
E02F 3/43 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
E02F9/26 B
E02F3/43 B
(21)【出願番号】P 2018163416
(22)【出願日】2018-08-31
【審査請求日】2021-07-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大井 健
(72)【発明者】
【氏名】畠 一尋
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/115809(WO,A1)
【文献】特開2000-136549(JP,A)
【文献】特開2016-089389(JP,A)
【文献】特開2017-227014(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0225923(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/26
E02F 3/43
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
旋回中心回りに旋回可能な旋回体と、前記旋回体に設けられた作業機と、前記旋回体の姿勢を計測する姿勢計測装置と、
検出範囲に前記作業機が含まれないように前記旋回体に設けられ、検出範囲における前記旋回体の周囲のうち少なくとも一部の深度を検出する深度検出装置とを備える積込機械を制御する制御装置であって、
前記姿勢計測装置が計測した姿勢を示す姿勢情報を取得する姿勢情報取得部と、
前記深度検出装置が検出した深度を示す深度情報を取得する検出情報取得部と、
前記旋回体が旋回を停止しているときに取得された前記姿勢情報および前記深度情報に基づいて、旋回制御における目標方位を決定する目標方位決定部と、
前記目標方位に基づいて旋回操作信号を出力する出力部と
を備える制御装置。
【請求項2】
前記旋回体が旋回していないときに取得された前記姿勢情報および前記深度情報に基づいて、前記旋回体の周囲のうち少なくとも一部の三次元位置を示す三次元マップを生成するマップ生成部を備え、
前記目標方位決定部は、前記三次元マップに基づいて前記目標方位を決定する
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記作業機は、前記旋回体の前部に設けられ、
前記深度検出装置は、前記旋回体の側部に設けられる
請求項1または請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記目標方位決定部は、前記作業機による積込動作時に取得された前記姿勢情報および前記深度情報に基づいて、前記作業機による掘削対象が存在する方位を目標方位に決定する
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項5】
前記目標方位決定部は、前記作業機による掘削動作時に取得された前記姿勢情報および前記深度情報に基づいて、積込対象が存在する方位を目標方位に決定する
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項6】
旋回中心回りに旋回可能な旋回体と、
前記旋回体に設けられた作業機と、
前記旋回体の姿勢を計測する姿勢計測装置と、
検出範囲に前記作業機が含まれないように前記旋回体に設けられ、検出範囲における前記旋回体の周囲のうち少なくとも一部の深度を検出する深度検出装置と、
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の制御装置と
を備える積込機械。
【請求項7】
旋回中心回りに旋回可能な旋回体と、前記旋回体に設けられた作業機と、前記旋回体の姿勢を計測する姿勢計測装置と、
検出範囲に前記作業機が含まれないように前記旋回体に設けられ、検出範囲における前記旋回体の周囲の深度を検出する深度検出装置とを備える積込機械の制御方法であって、
前記姿勢計測装置が計測した姿勢を示す姿勢情報を取得するステップと、
前記深度検出装置が検出した深度を示す深度情報を取得するステップと、
前記旋回体が旋回していないときに取得された前記姿勢情報および前記深度情報に基づいて、旋回制御における目標方位を決定するステップと、
前記目標方位に基づいて旋回操作信号を出力するステップと
を備える制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置、積込機械、および制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、積込機械に設けられた環境の深度を計測するセンサを用いた積込機械の自律制御システムが開示されている。特許文献1に開示された技術によれば、旋回体の旋回中に、旋回体の左側に設けられたセンサが移動経路上の領域を走査することで、障害物を検出する。また特許文献1に開示された技術によれば、旋回体の旋回中に、旋回体の右側に設けられたセンサが掘削面の領域を走査することで、掘削面の地形を特定し、次の掘削部分を計画するためのデータを生成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、センサによって計測された深度データを用いて地形を特定するためには、積込機械の位置情報および旋回角度などの計測データを用いて、データを変換する必要がある。しかしながら、旋回体の旋回中は、計測データを得るための計測装置の位置および方位が変化するため、計測データに含まれる誤差が大きく、地形を精度よく検出することができない可能性がある。地形を精度よく検出することができない場合、旋回制御における目標方位を精度よく決定することができない。
本発明の目的は、旋回制御における目標方位を精度よく決定することができる制御装置、積込機械、および制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、制御装置は、旋回中心回りに旋回可能な旋回体と、前記旋回体に設けられた作業機と、前記旋回体の姿勢を計測する姿勢計測装置と、検出範囲に前記作業機が含まれないように前記旋回体に設けられ、検出範囲における前記旋回体の周囲のうち少なくとも一部の深度を検出する深度検出装置とを備える積込機械を制御する制御装置であって、前記姿勢計測装置が計測した姿勢を示す姿勢情報を取得する姿勢情報取得部と、前記深度検出装置が検出した深度を示す深度情報を取得する検出情報取得部と、前記旋回体が旋回を停止しているときに取得された前記姿勢情報および前記深度情報に基づいて、旋回制御における目標方位を決定する目標方位決定部と、前記目標方位に基づいて旋回操作信号を出力する出力部とを備える。
【発明の効果】
【0006】
上記態様によれば、制御装置は、旋回制御における目標方位を精度よく決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1の実施形態に係る積込機械の構成を示す概略図である。
【
図2】第1の実施形態に係る作業機械における深度検出装置の設置位置を示す上面図である。
【
図3】第1の実施形態に係る制御装置の構成を示す概略ブロック図である。
【
図4】第1の実施形態に係る自動掘削積込制御における排土前のバケットの経路の例を示す図である。
【
図5】第1の実施形態に係る自動掘削積込制御における排土後のバケットの経路の例を示す図である。
【
図6】第1の実施形態に係る自動掘削積込制御を示すフローチャートである。
【
図7】第1の実施形態に係る自動掘削積込制御を示すフローチャートである。
【
図8】第1の実施形態に係る自動掘削積込制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら実施形態について詳しく説明する。
〈第1の実施形態〉
《積込機械の構成》
図1は、第1の実施形態に係る積込機械の構成を示す概略図である。
積込機械100は、土砂を運搬車両などの積込点へ積込を行う作業機械である。第1の実施形態に係る積込機械100は、油圧ショベルである。なお、他の実施形態に係る積込機械100は、油圧ショベル以外の積込機械であってもよい。また
図1に示す積込機械100はバックホウショベルであるが、フェイスショベルやロープショベルであってもよい。
積込機械100は、走行体110と、走行体110に支持される旋回体120と、油圧により作動し旋回体120に支持される作業機130とを備える。旋回体120は、旋回中心回りに旋回自在に支持される。
【0009】
作業機130は、ブーム131と、アーム132と、バケット133と、ブームシリンダ134と、アームシリンダ135と、バケットシリンダ136と、ブームストロークセンサ137と、アームストロークセンサ138と、バケットストロークセンサ139とを備える。
【0010】
ブーム131の基端部は、旋回体120にピンを介して取り付けられる。
アーム132は、ブーム131とバケット133とを連結する。アーム132の基端部は、ブーム131の先端部にピンを介して取り付けられる。
バケット133は、土砂などを掘削するための刃と掘削した土砂を搬送するための容器とを備える。バケット133の基端部は、アーム132の先端部にピンを介して取り付けられる。
【0011】
ブームシリンダ134は、ブーム131を作動させるための油圧シリンダである。ブームシリンダ134の基端部は、旋回体120に取り付けられる。ブームシリンダ134の先端部は、ブーム131に取り付けられる。
アームシリンダ135は、アーム132を駆動するための油圧シリンダである。アームシリンダ135の基端部は、ブーム131に取り付けられる。アームシリンダ135の先端部は、アーム132に取り付けられる。
バケットシリンダ136は、バケット133を駆動するための油圧シリンダである。バケットシリンダ136の基端部は、アーム132に取り付けられる。バケットシリンダ136の先端部は、バケット133を回動させるリンク機構に取り付けられる。
【0012】
ブームストロークセンサ137は、ブームシリンダ134のストローク量を計測する。ブームシリンダ134のストローク量は、旋回体120に対するブーム131の傾斜角に換算可能である。以下、旋回体120に対する傾斜角を、絶対角度ともいう。つまり、ブームシリンダ134のストローク量は、ブーム131の絶対角度に換算可能である。
アームストロークセンサ138は、アームシリンダ135のストローク量を計測する。アームシリンダ135のストローク量は、ブーム131に対するアーム132の傾斜角に換算可能である。以下、ブーム131に対するアーム132の傾斜角を、アーム132の相対角度ともいう。
バケットストロークセンサ139は、バケットシリンダ136のストローク量を計測する。バケットシリンダ136のストローク量は、アーム132に対するバケット133の傾斜角に換算可能である。以下、アーム132に対するバケット133の傾斜角をバケット133の相対角度ともいう。
なお、他の実施形態に係る積込機械100は、ブームストロークセンサ137、アームストロークセンサ138、およびバケットストロークセンサ139に代えて、地平面に対する傾斜角または旋回体120に対する傾斜角を検出する角度センサを備えてもよい。
【0013】
旋回体120には、運転室121が設けられる。運転室121の内部には、オペレータが着座するための運転席122、積込機械100を操作するための操作装置123が設けられる。操作装置123は、オペレータの操作に応じて、ブーム131の上げ操作信号および下げ操作信号、アーム132の押し操作信号および引き操作信号、バケット133のダンプ操作信号および掘削操作信号、旋回体120の左右への旋回操作信号を生成し、制御装置128に出力する。また操作装置123は、オペレータの操作に応じて作業機130に自動掘削積込制御を開始させるための掘削積込指示信号を生成し、制御装置128に出力する。自動掘削積込制御とは、旋回体120を旋回させてバケット133に収容された土砂を積込対象200(例えば、運搬車両やホッパ)へ積み込み、旋回体120を旋回させて掘削点へ作業機130を移動させ、掘削点の土砂を掘削する一連の動作を自動的に実行する制御である。
操作装置123は、例えばレバー、スイッチおよびペダルにより構成される。掘削積込指示信号は自動制御用のスイッチの操作により生成される。例えば、スイッチがONになったときに、掘削積込指示信号が出力される。操作装置123は、運転席122の近傍に配置される。操作装置123は、オペレータが運転席122に座ったときにオペレータの操作可能な範囲内に位置する。
なお、第1の実施形態に係る積込機械100は、運転席122に着座するオペレータの操作に従って動作するが、他の実施形態においてはこれに限られない。例えば、他の実施形態に係る積込機械100は、積込機械100の外部で操作するオペレータの遠隔操作によって操作信号や掘削積込指示信号が送信され動作するものであってもよい。
【0014】
積込機械100は、検出方向に存在する対象物の3次元位置を検出するための深度検出装置124、位置方位演算器125、傾斜計測器126、油圧装置127、制御装置128を備える。
【0015】
図2は、第1の実施形態に係る作業機械における深度検出装置の設置位置を示す上面図である。
深度検出装置124は、検出範囲Rにおける深度を検出する。深度検出装置124は、旋回体120の両側面に設けられ、旋回体120の幅方向に伸びる軸を中心とする検出範囲Rにおいて掘削対象を含む周囲のうち少なくとも一部の物体の深度を検出する。深度とは、深度検出装置124から対象までの距離である。これにより、積込機械100が作業機130によって土砂を掘削しているときに、深度検出装置124は、積込機械100の側方に位置する積込対象200の深度を検出することができる。また、積込機械100が旋回動作により旋回体120の向く方位を変えて、土砂を積込対象200に積み込んでいるときに、深度検出装置124は、掘削対象の深度を検出することができる。つまり、掘削積込作業において積込機械100が旋回動作することにより、深度検出装置124の向きが変化するため、深度検出装置124は、積込機械100の周囲を広範囲にわたって検出することができる。
図2に示すように、深度検出装置124は、その検出範囲Rに作業機130が干渉しない位置に設けられる。深度検出装置124の例としては、例えば、LiDAR装置、レーダ装置、ステレオカメラなどが挙げられる。なお、深度検出装置124は、旋回体120の高い位置に設けられることが好ましい。また深度検出装置124の検出範囲Rの中心軸は、水平方向より下方に傾いていることが好ましい。
【0016】
位置方位演算器125は、旋回体120の位置および旋回体120が向く方位を演算する。位置方位演算器125は、GNSSを構成する人工衛星から測位信号を受信する2つの受信器を備える。2つの受信器は、それぞれ旋回体120の異なる位置に設置される。位置方位演算器125は、受信器が受信した測位信号に基づいて、現場座標系における旋回体120の代表点(ショベル座標系の原点)の位置を検出する。
位置方位演算器125は、2つの受信器が受信した各測位信号を用いて、一方の受信器の設置位置に対する他方の受信器の設置位置の関係として、旋回体120の向く方位を演算する。旋回体120が向く方位とは、旋回体120の正面方向であって、作業機130のブーム131からバケット133へ伸びる直線の延在方向の水平成分に等しい。旋回体120の方位は、姿勢情報の一例である。位置方位演算器125は、姿勢計測装置の一例である。
【0017】
傾斜計測器126は、旋回体120の加速度および角速度を計測し、計測結果に基づいて旋回体120の姿勢(例えば、ロール角およびピッチ角)を検出する。傾斜計測器126は、例えば旋回体120の下面に設置される。傾斜計測器126は、例えば、慣性計測装置(IMU:Inertial Measurement Unit)を用いることができる。傾斜計測器126は、姿勢計測装置の一例である。
【0018】
油圧装置127は、作動油タンク、油圧ポンプ、および流量制御弁を備える。油圧ポンプは、図示しないエンジンの動力で駆動し、流量制御弁を介して走行体110を走行させる図示しない走行油圧モータ、旋回体120を旋回させる図示しない旋回油圧モータ、ブームシリンダ134、アームシリンダ135、およびバケットシリンダ136に作動油を供給する。流量制御弁はロッド状のスプールを有し、スプールの位置によって走行油圧モータ、旋回油圧モータ、ブームシリンダ134、アームシリンダ135、およびバケットシリンダ136に供給する作動油の流量を調整する。スプールは、制御装置128から受信する制御指令に基づいて駆動される。つまり、走行油圧モータ、旋回油圧モータ、ブームシリンダ134、アームシリンダ135、およびバケットシリンダ136に供給される作動油の量は、制御装置128によって制御される。上記のとおり、走行油圧モータ、旋回油圧モータ、ブームシリンダ134、アームシリンダ135、およびバケットシリンダ136は共通の油圧装置127から供給される作動油によって駆動する。なお、走行油圧モータまたは旋回油圧モータが斜板式可変容量モータである場合、制御装置128は斜板の傾転角により回転速度を調整してもよい。
【0019】
制御装置128は、操作装置123から操作信号を受信する。制御装置128は、受信した操作信号に基づいて、作業機130、旋回体120、または走行体110を駆動させる。
【0020】
《制御装置の構成》
図3は、第1の実施形態に係る制御装置の構成を示す概略ブロック図である。
制御装置128は、プロセッサ1100、メインメモリ1200、ストレージ1300、インタフェース1400を備えるコンピュータである。ストレージ1300は、プログラムを記憶する。プロセッサ1100は、プログラムをストレージ1300から読み出してメインメモリ1200に展開し、プログラムに従った処理を実行する。
【0021】
ストレージ1300の例としては、HDD、SSD、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM等が挙げられる。ストレージ1300は、制御装置128の共通通信線に直接接続された内部メディアであってもよいし、インタフェース1400を介して制御装置128に接続される外部メディアであってもよい。ストレージ1300は、一時的でない有形の記憶媒体である。
【0022】
プロセッサ1100は、プログラムの実行により、車両情報取得部1101、検出情報取得部1102、操作信号入力部1103、バケット位置特定部1104、マップ生成部1105、積込対象特定部1106、積込位置特定部1107、回避位置特定部1108、掘削対象特定部1109、掘削位置特定部1110、移動処理部1111、操作信号出力部1112を備える。
【0023】
車両情報取得部1101は、例えば旋回体120の旋回速度、位置および方位、ブーム131、アーム132およびバケット133の傾斜角、ならびに旋回体120の姿勢を取得する。以下、車両情報取得部1101が取得する積込機械100に係る情報を車両情報とよぶ。車両情報取得部は、姿勢情報取得部の一例である。
【0024】
検出情報取得部1102は、深度検出装置124から深度情報を取得する。深度情報は、検出範囲R内の複数の点の三次元位置を示す。深度情報の例としては、深度を表す複数の画素からなる深度画像や、直交座標系(x,y,z)で表現される複数の点からなる点群データが挙げられる。
【0025】
操作信号入力部1103は、操作装置123から操作信号の入力を受け付ける。操作信号にはブーム131の上げ操作信号および下げ操作信号、アーム132の押し操作信号および引き操作信号、バケット133のダンプ操作信号および掘削操作信号、旋回体120の旋回操作信号、走行体110の走行操作信号、ならびに積込機械100の掘削積込指示信号が含まれる。
【0026】
図4は、第1の実施形態に係る自動掘削積込制御における排土前のバケットの経路の例を示す図である。
バケット位置特定部1104は、車両情報取得部1101が取得した車両情報に基づいて、ショベル座標系におけるアーム132の先端部の位置Pおよびアーム132の先端からバケット133の最下通過点までの高さHbを特定する。バケット133の最下通過点とは、バケット133のダンプ操作の間に刃先と地表面との距離が最も短くなるときに刃先が位置する点をいう。すなわち、アーム132の先端からバケット133の最下通過点までの高さHbは、バケット133の基端部のピンから刃先までの長さと一致する。
また、バケット位置特定部1104は、掘削積込指示信号の入力を受け付けたときのアーム132の先端部の位置Pを掘削完了位置P10として特定する。バケット133の基端部はアーム132の先端部に接続されているため、アーム132の先端部の位置Pは、バケット133の基端部の位置に等しい。
【0027】
具体的には、バケット位置特定部1104は、以下の手順でアーム132の先端部の位置Pを特定する。バケット位置特定部1104は、ブームシリンダ134のストローク量から求められるブーム131の絶対角度と既知のブーム131の長さ(基端部のピンから先端部のピンまでの距離)とに基づいて、ブーム131の先端部の位置を求める。バケット位置特定部1104は、ブーム131の絶対角度と、アームシリンダ135のストローク量から求められるアーム132の相対角度とに基づいて、アーム132の絶対角度を求める。バケット位置特定部1104は、ブーム131の先端部の位置と、アーム132の絶対角度と、既知のアーム132の長さ(基端部のピンから先端部のピンまでの距離)とに基づいて、アーム132の先端部の位置Pを求める。
【0028】
マップ生成部1105は、旋回体120の非旋回時に車両情報取得部1101が取得した旋回体120の位置、方位、および姿勢と、検出情報取得部1102が取得した深度情報とに基づいて、現場座標系によって積込機械100の周囲のうち少なくとも一部の形状を表す三次元マップを生成する。非旋回時とは、具体的には、積込機械100が掘削動作をしている時や、排土動作をしている時であり、完全に旋回速度が0になっている状態でなくてもよく、わずかに旋回方向に動いていてもよい。なお、他の実施形態においては、マップ生成部1105は、旋回体120を基準としたショベル座標系に係る三次元マップを生成してもよい。
積込対象特定部1106は、マップ生成部1105が生成した三次元マップに基づいて、積込対象200の位置および形状、ならびに積込点P21の位置を特定する。積込点P21は、例えばダンプトラックのベッセル上の点である。例えば、積込対象特定部1106は、三次元マップが示す三次元形状と積込対象200の既知の形状とをマッチングすることで、積込対象200の位置および形状、ならびに積込点P21を特定する。
【0029】
積込位置特定部1107は、操作信号入力部1103に掘削積込指示信号が入力された場合に、積込対象特定部1106が特定した積込点P21に基づいて、積込位置P13を特定する。具体的には、積込位置特定部1107は、以下のように積込位置P13を特定する。
積込位置特定部1107は、特定した積込点P21を、積込位置P13の平面位置として特定する。つまり、アーム132の先端が積込位置P13に位置するとき、アーム132の先端は積込点P21の上方に位置することとなる。積込点P21の例としては、積込対象200がダンプトラックの場合におけるベッセルの中心点、および積込対象200がホッパの場合における開口の中心点が挙げられる。積込位置特定部1107は、積込対象200の高さHtに、バケット位置特定部1104が特定したアーム132の先端からバケット133最下通過点までの高さHbと、バケット133の制御余裕分の高さとを加算することで、積込位置P13の高さを特定する。なお、他の実施形態においては、積込位置特定部1107は、制御余裕分の高さを加算せずに積込位置P13を特定してもよい。すなわち、積込位置特定部1107は、高さHtに高さHbを加算することで、積込位置P13の高さを特定してもよい。なお、第1の実施形態に係る高さHtは、地面からベッセルの上面までの高さである。
つまり、積込位置特定部1107は、積込位置P13を特定することで、旋回制御における旋回体120の目標方位を決定する。積込位置特定部1107は、目標方位決定部の一例である。
【0030】
回避位置特定部1108は、積込位置特定部1107が特定した積込位置P13と、車両情報取得部1101が取得した積込機械100の位置と、積込対象特定部1106が特定した積込対象200の位置および形状に基づいて、作業機130と積込対象200とが上方からの平面視において干渉しない点である干渉回避位置P12を特定する。干渉回避位置P12は、積込位置P13と同じ高さを有し、かつ旋回体120の旋回中心からの距離が、当該旋回中心から積込位置P13までの距離と等しく、かつ下方に積込対象200が存在しない位置である。回避位置特定部1108は、例えば、旋回体120の旋回中心を中心とし、当該旋回中心と積込位置P13との距離を半径とする円を特定し、当該円上の位置のうち、バケット133の外形が上方からの平面視で積込対象200と干渉せず、かつ積込位置P13に最も近い位置を、干渉回避位置P12と特定する。回避位置特定部1108は、積込対象200の位置および形状、ならびにバケット133の既知の形状に基づいて、積込対象200とバケット133とが干渉するか否かを判定することができる。ここで、「同じ高さ」、「距離が等しい」とは、必ずしも高さまたは距離が完全に一致するものに限られず、多少の誤差やマージンが許容されるものとする。
【0031】
掘削対象特定部1109は、マップ生成部1105が生成した三次元マップに基づいて、掘削対象の掘削点P22の位置を特定する。掘削点P22は、例えばバケット133の刃先をその点からアーム132およびバケット133を掘削方向へ移動させることで、バケット133の最大容量に相当する量の土砂を掘削できる点である。例えば、掘削対象特定部1109は、三次元マップが示す三次元形状から掘削対象の土砂の分布を特定し、当該分布に基づいて掘削点P22を特定する。
図5は、第1の実施形態に係る自動掘削積込制御における排土後のバケットの経路の例を示す図である。
【0032】
掘削位置特定部1110は、掘削対象特定部1109が特定した掘削点P22から、バケット133の基端部から刃先までの距離だけ離れた点を、掘削位置P19として特定する。つまり、バケット133は、ダンプ方向に刃先を向けた所定の掘削姿勢をとっている場合において、バケット133の刃先が掘削点P22に位置するとき、アーム132の先端は掘削位置P19に位置することとなる。
つまり、掘削位置特定部1110は、掘削位置P19を特定することで、旋回制御における旋回体120の目標方位を決定する。掘削位置特定部1110は、目標方位決定部の一例である。
【0033】
移動処理部1111は、操作信号入力部1103が掘削積込指示信号の入力を受け付けた場合に、積込位置特定部1107が特定した積込位置P13、回避位置特定部1108が特定した干渉回避位置P12に基づいて、バケット133を積込位置P13まで移動させるための回動操作信号を生成する。すなわち、移動処理部1111は、掘削完了位置P10から、旋回開始位置P11および干渉回避位置P12を経由して、積込位置P13に到達するように、回動操作信号を生成する。また、移動処理部1111は、ブーム131およびアーム132が駆動してもバケット133の対地角度が変化しないように、バケット133の回動操作信号を生成する。
移動処理部1111は、バケット133が積込位置P13に到達すると、バケット133をダンプ方向へ回転させるためのダンプ操作信号を生成する。移動処理部1111は、掘削位置特定部1110が特定した掘削位置P19、回避位置特定部1108が特定した干渉回避位置P12に基づいて、バケット133を掘削位置P19まで移動させるための回動操作信号を生成する。すなわち、移動処理部1111は、積込位置P13から、干渉回避位置P12および旋回終了位置P18を経由して、掘削位置P19に到達するように、回動操作信号を生成する。移動処理部1111はバケットが掘削姿勢となるように、バケットの回動操作信号を生成する。移動処理部1111が生成する操作信号は、最大の操作量で操作装置123のレバーまたはペダルを操作したときに操作信号入力部1103に入力される操作信号に係る駆動量での駆動を指示する信号である。駆動量は、例えば作動油の油量またはスプールの開度である。
なお、積込機械100が遠隔操作によって駆動する場合、移動処理部1111が生成する操作信号は、最大の操作量に係る駆動量より大きい駆動量での駆動を指示する信号であってよい。これは、有人運転に係る積込機械100は、オペレータの乗り心地のために操作装置123の最大操作量が制限されるところ、遠隔操作に係る積込機械100は、オペレータの乗り心地による制限がないためである。
【0034】
操作信号出力部1112は、操作信号入力部1103に入力された操作信号、または移動処理部1111が生成した操作信号を出力する。具体的には、操作信号出力部1112は、自動掘削積込制御中である場合に、移動処理部1111が生成した自動制御に係る操作信号を出力し、自動掘削積込制御中でない場合に、操作信号入力部1103に入力されたオペレータの手動操作に係る操作信号を出力する。
【0035】
《自動掘削積込制御》
積込機械100のオペレータは、積込機械100と積込対象200とが積込処理可能な位置関係にあると判断すると、操作装置123の自動制御用のスイッチをONにする。これにより、操作装置123は、掘削積込指示信号を生成し出力する。
【0036】
図6-
図8は、第1の実施形態に係る自動掘削積込制御を示すフローチャートである。制御装置128は、オペレータから掘削積込指示信号の入力を受け付けると、
図6-
図8に示す自動掘削積込制御を実行する。なお、自動掘削積込制御の開始時には、バケット133の刃先は掘削点に位置し、積込対象200は旋回体120の側方に位置する。
【0037】
車両情報取得部1101は、旋回体120の位置および方位、ブーム131、アーム132およびバケット133の傾斜角、ならびに旋回体120の姿勢を取得する(ステップS1)。車両情報取得部1101は、取得した旋回体120の位置および方位に基づいて、旋回体120の旋回中心の位置を特定する(ステップS2)。
【0038】
検出情報取得部1102は、深度検出装置124から、積込機械100の周囲の深度を示す深度情報を取得する(ステップS3)。深度検出装置124は旋回体120の側面に設けられ、積込対象200は旋回体120の側方に位置するため、深度検出装置124の検出範囲Rには、積込対象200が含まれる。マップ生成部1105は、車両情報取得部1101が取得した旋回体120の位置、方位、および姿勢と、検出情報取得部1102が取得した深度情報とに基づいて、現場座標系によって積込機械100の周囲のうち少なくとも一部の形状を表す三次元マップを生成する(ステップS4)。積込対象特定部1106は、生成したマップ情報に基づいて、積込対象200の位置および形状、ならびに積込点P21を特定する(ステップS5)。
【0039】
バケット位置特定部1104は、車両情報取得部1101が取得した車両情報に基づいて、掘削積込指示信号の入力時のアーム132の先端部の位置P、およびアーム132の先端からバケット133の最下通過点までの高さHbを特定する(ステップS6)。バケット位置特定部1104は、当該位置Pを掘削完了位置P10と特定する。
【0040】
積込位置特定部1107は、積込対象特定部1106が特定した積込点P21の位置に基づいて、積込位置P13の平面位置を特定する(ステップS7)。このとき、積込位置特定部1107は、積込対象200の高さHtに、ステップS5で特定したアーム132の先端部からバケット133の最下通過点までの高さHbと、バケット133の制御余裕分の高さとを加算することで、積込位置P13の高さを特定する(ステップS8)。
【0041】
回避位置特定部1108は、旋回体120の旋回中心から積込位置までの平面距離を特定する(ステップS9)。回避位置特定部1108は、旋回中心から特定した平面距離だけ離れた位置であって、バケット133の外形が平面視で積込対象200と干渉せず、かつ積込位置P13から最も近い位置を、干渉回避位置P12として特定する(ステップS10)。
なお、ステップS1からステップS9までの間、旋回体120は旋回していない。
【0042】
移動処理部1111は、アーム132の先端部の位置Pが積込位置P13に至ったか否かを判定する(ステップS11)。アーム132の先端部の位置Pが積込位置P13に至っていない場合(ステップS11:NO)、移動処理部1111は、アーム132の先端部の位置Pが干渉回避位置P12の近傍にあるか否かを判定する(ステップS12)。例えば、移動処理部1111は、アーム132の先端の高さと干渉回避位置P12の高さとの差が所定の閾値未満であり、または旋回体120の旋回中心からアーム132の先端までの平面距離と旋回中心から干渉回避位置P12までの平面距離との差が所定の閾値未満であるか否かを判定する(ステップS12)。アーム132の先端部の位置Pが干渉回避位置P12の近傍にない場合(ステップS12:NO)、移動処理部1111は、ブーム131およびアーム132を干渉回避位置P12の高さまで上昇させる操作信号を生成する(ステップS13)。このとき、移動処理部1111は、ブーム131およびアーム132の位置および速度に基づいて、操作信号を生成する。
【0043】
また移動処理部1111は、生成したブーム131およびアーム132の操作信号に基づいてブーム131およびアーム132の角速度の和を算出し、当該角速度の和と同じ速度でバケット133を回動させる操作信号を生成する(ステップS14)。これにより、移動処理部1111は、バケット133の対地角を保持する操作信号を生成することができる。なお、他の実施形態においては、移動処理部1111は、ブームストロークセンサ137、アームストロークセンサ138およびバケットストロークセンサ139の検出値より算出されるバケット133の対地角度が、自動制御開始時の対地角度と等しくなるようにバケット133を回動させる操作信号を生成してもよい。
【0044】
アーム132の先端部の位置Pが干渉回避位置P12の近傍にある場合(ステップS12:YES)、移動処理部1111は、ブーム131、アーム132およびバケット133の操作信号を生成しない。つまり、アーム132の先端部の位置Pが干渉回避位置P12の近傍にある場合、移動処理部1111は、作業機130を積込点へ移動させるための作業機130の操作信号の出力を禁止する。
【0045】
移動処理部1111は、車両情報取得部1101が取得した車両情報に基づいて、旋回体120の旋回速度が所定速度未満であるか否かを判定する(ステップS15)。すなわち、移動処理部1111は、旋回体120が旋回中であるか否かを判定する。
旋回体120の旋回速度が所定速度未満である場合(ステップS15:YES)、移動処理部1111は、バケット133の高さが掘削完了位置P10の高さから干渉回避位置P12の高さに至るまでの時間である上昇時間を特定する(ステップS16)。移動処理部1111は、バケット133の上昇時間に基づいて、現在時刻から旋回操作信号を出力した場合に、アーム132の先端が干渉回避位置P12または干渉回避位置P12より高い点を通過することになるか否かを判定する(ステップS17)。現在時刻から旋回操作信号を出力した場合に、アーム132の先端が干渉回避位置P12または干渉回避位置P12より高い点を通過することになる場合(ステップS17:YES)、移動処理部1111は、旋回操作信号を生成する(ステップS18)。
【0046】
現在時刻から旋回操作信号を出力した場合に、アーム132の先端が干渉回避位置P12より低い点を通過することになる場合(ステップS17:NO)、移動処理部1111は、旋回操作信号を生成しない。つまり、アーム132の先端が干渉回避位置P12より低い点を通過することになる場合、移動処理部1111は、旋回操作信号の出力を禁止する。
【0047】
旋回体120の旋回速度が所定速度以上である場合(ステップS15:NO)、移動処理部1111は、現在時刻から旋回操作信号の出力を停止した場合に、アーム132の先端が積込位置P13に到達するか否かを判定する(ステップS19)。なお、旋回体120は、旋回操作信号の出力の停止後、減速しながらも慣性により旋回し続け、その後停止する。現在時刻から旋回操作信号の出力を停止した場合に、アーム132の先端が積込位置P13に到達する場合(ステップS19:YES)、移動処理部1111は、旋回操作信号を生成しない。つまり、現在時刻から旋回操作信号の出力を停止した場合に、アーム132の先端が積込位置P13に到達する場合、移動処理部1111は、旋回操作信号の出力を禁止する。これにより、旋回体120は減速を始める。
他方、現在時刻から旋回操作信号の出力を停止した場合に、アーム132の先端が積込位置P13より手前で停止することになる場合(ステップS19:NO)、移動処理部1111は、旋回操作信号を生成する(ステップS20)。
【0048】
ステップS11からステップS20の処理でブーム131、アーム132およびバケット133の回動操作信号、並びに旋回体120の旋回操作信号の少なくともいずれか1つを生成すると、操作信号出力部1112は、生成した操作信号を油圧装置127に出力する(ステップS21)。
【0049】
そして、車両情報取得部1101は、車両情報を取得する(ステップS22)。これにより、車両情報取得部1101は、出力した操作信号によって作動した後の車両情報を取得することができる。制御装置128は、処理をステップS11に戻し、操作信号の生成を繰り返し実行する。
【0050】
他方、ステップS11にて、アーム132の先端部の位置Pが積込位置P13に至った場合(ステップS11:YES)、移動処理部1111は、ダンプ操作信号を生成し、操作信号出力部1112は、ダンプ操作信号を油圧装置127に出力する(ステップS23)。これにより、バケット133に収容された土砂は、積込対象200に積み込まれる。なお、アーム132の先端部の位置Pが積込位置P13に至ったとき、旋回体120の旋回は停止している。また、バケット133は、ダンプ方向に回動することで、所定の掘削姿勢をとる。
【0051】
車両情報取得部1101は、旋回体120の位置および方位、ブーム131、アーム132およびバケット133の傾斜角、ならびに旋回体120の姿勢を取得する(ステップS24)。検出情報取得部1102は、深度検出装置124から、積込機械100の周囲のうち少なくとも一部の深度を示す深度情報を取得する(ステップS25)。深度検出装置124は旋回体120の側面に設けられ、掘削対象は旋回体120の側方に位置するため、深度検出装置124の検出範囲Rには、掘削対象が含まれる。マップ生成部1105は、車両情報取得部1101が取得した旋回体120の位置、方位、および姿勢と、検出情報取得部1102が取得した深度情報とに基づいて、現場座標系によって積込機械100の周囲のうち少なくとも一部の形状を表す三次元マップを生成する(ステップS26)。掘削対象特定部1109は、生成した三次元マップに基づいて掘削点P22を特定する(ステップS25)。掘削位置特定部1110は、掘削対象特定部1109が特定した掘削点P22の位置に基づいて、掘削位置P19を特定する(ステップS28)。
【0052】
移動処理部1111は、アーム132の先端部の位置Pが掘削位置P19に至ったか否かを判定する(ステップS29)。アーム132の先端部の位置Pが掘削位置P19に至っていない場合(ステップS29:NO)、移動処理部1111は、アーム132の先端部の位置Pが干渉回避位置P12を通過したか否かを判定する(ステップS30)。アーム132の先端部の位置Pが干渉回避位置P12を通過していない場合(ステップS30:NO)、移動処理部1111は、ブーム131、アーム132およびバケット133の操作信号を生成しない。つまり、アーム132の先端部の位置Pが干渉回避位置P12を通過していない場合、移動処理部1111は、作業機130を掘削点へ移動させるための作業機130の操作信号の出力を禁止する。
【0053】
他方、アーム132の先端部の位置Pが干渉回避位置P12を通過した場合(ステップS30:YES)、移動処理部1111は、アーム132の先端部の位置Pを降下させるためのブーム131およびアーム132の操作信号を生成する(ステップS31)。
【0054】
次に、移動処理部1111は、現在時刻から旋回操作信号の出力を停止した場合に、アーム132の先端の平面位置が掘削位置P19に到達するか否かを判定する(ステップS32)。現在時刻から旋回操作信号の出力を停止した場合に、アーム132の先端の平面位置が掘削位置P19に到達しない場合(ステップS32:NO)、移動処理部1111は、旋回操作信号を生成する(ステップS33)。
【0055】
他方、現在時刻から旋回操作信号の出力を停止した場合に、アーム132の先端の平面位置が掘削位置P19に到達する場合(ステップS32:YES)、移動処理部1111は、旋回操作信号を生成しない。つまり、現在時刻から旋回操作信号の出力を停止した場合に、アーム132の先端の平面位置が掘削位置P19に到達する場合、移動処理部1111は、旋回操作信号の出力を禁止する。これにより、旋回体120は減速を始める。
【0056】
ステップS30からステップS33の処理でブーム131およびアーム132の操作信号、並びに旋回体120の旋回操作信号の少なくともいずれか1つを生成すると、操作信号出力部1112は、生成した操作信号を油圧装置127に出力する(ステップS34)。
【0057】
そして、車両情報取得部1101は、車両情報を取得する(ステップS35)。これにより、車両情報取得部1101は、出力した操作信号によって作動した後の車両情報を取得することができる。制御装置128は、処理をステップS29に戻し、操作信号の生成を繰り返し実行する。
【0058】
他方、ステップS29にて、アーム132の先端部の位置Pが掘削位置P19に至った場合(ステップS29:YES)、移動処理部1111は、掘削操作信号を生成し、操作信号出力部1112は、掘削操作信号を油圧装置127に出力する(ステップS36)。これにより、バケット133の刃先は掘削完了位置P10に移動し、バケット133には土砂が収容される。そして、制御装置128は、自動掘削積込制御を終了する。または制御装置128は、処理をステップS11に戻し、積込対象200の積載量が最大積載量を超えない範囲で、自動積込と自動掘削を繰り返し実行する。
【0059】
上述の自動掘削積込制御により、積込機械100は、バケット133がすくった土砂を積込対象200に積込み、さらに次の土砂をすくうことができる。オペレータは、掘削積込指示信号の入力による自動掘削積込制御を、積込対象200の積載量が最大積載量を超えない程度に繰り返し実行する。
【0060】
《作用・効果》
このように、第1の実施形態に係る積込機械100の制御装置128は、旋回体120が旋回していないときに取得された姿勢情報および深度情報に基づいて、目標方位を決定する。旋回体120が旋回していないときに姿勢情報および深度情報を取得することで、当該深度情報を取得したときの姿勢情報の誤差を小さく抑えることができる。したがって、第1の実施形態に係る制御装置128は、旋回制御における目標方位を精度よく決定することができる。第1の実施形態に係る目標方位は、積荷旋回における目標方位である積込位置P13を向く方位、および空荷旋回における目標方位である掘削位置P19を向く方位である。なお、他の実施形態に係る制御装置128は、積荷旋回における目標方位または空荷旋回における目標方位のいずれか一方を決定するものであってもよい。この場合、旋回体120の両側部のうち一方のみに深度検出装置124が設けられていてよい。
【0061】
また、第1の実施形態に係る作業機130は、旋回体120の前部に設けられ、深度検出装置124は、旋回体120の側部に設けられる。これにより、作業機130が積込対象200への積込作業を行っているときに、深度検出装置124は掘削対象の深度を計測することができる。またこれにより、作業機130が掘削対象の掘削作業を行っているときに、深度検出装置124は積込対象200の深度を計測することができる。また、第1の実施形態に係る深度検出装置124は、検出範囲Rに作業機130が含まれないように設置される。これにより、制御装置128は深度情報から作業機130が含まれる範囲を除外する処理を行うことなく、積込点P21および掘削点P22を特定することができる。
【0062】
以上、図面を参照して一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、様々な設計変更等をすることが可能である。
例えば、第1の実施形態に係る制御装置128は、積込点P21および掘削点P22を、深度情報を用いて特定するが、これに限られない。他の実施形態に係る制御装置128は、積込点P21または掘削点P22の一方のみを、深度情報を用いて特定してもよい。つまり、第1の実施形態に係る制御装置128は、自動掘削積込制御を行うが、これに限られない。他の実施形態に係る制御装置128は自動積込制御を行い、掘削作業がオペレータの手動操作によって行われてもよい。また他の実施形態に係る制御装置128は自動掘削制御を行い、積込作業がオペレータの手動操作によって行われてもよい。
また、第1の実施形態に係る制御装置128は、掘削点P22を特定して、掘削点P22への旋回操作のあとに掘削操作を実行するが、これに限らず、掘削点P22への旋回操作までを実行して、自動掘削積込制御を終了してもよい。
【0063】
また第1の実施形態に係る制御装置128は、掘削操作後かつ積荷旋回前に取得した姿勢情報および深度情報を用いて積込点P21を特定するが、これに限られない。例えば、他の実施形態に係る制御装置128は、空荷旋回後かつ掘削操作前に取得した姿勢情報および深度情報、または掘削操作中に取得した姿勢情報および深度情報を用いて積込点P21を特定してもよい。いずれの場合も、姿勢情報および深度情報は旋回体120が旋回していないか、旋回したとしてもわずかに旋回しているときに取得されたものである。
【0064】
また第1の実施形態に係る制御装置128は、ダンプ操作後かつ空荷旋回前に取得した姿勢情報および深度情報を用いて掘削点P22を特定するが、これに限られない。例えば、他の実施形態に係る制御装置128は、積荷旋回後かつダンプ操作前または積荷旋回後かつダンプ操作中に取得した姿勢情報および深度情報を用いて掘削点P22を特定してもよい。いずれの場合も、姿勢情報および深度情報は旋回体120が旋回していないか、旋回したとしてもわずかに旋回しているときに取得されたものである。
【0065】
また第1の実施形態に係る深度検出装置124の検出範囲Rは、旋回体120の幅方向に伸びる軸を中心とするが、これに限られない。例えば、深度検出装置124は、旋回体120の前方向と検出範囲Rの中心軸とがなす角が、掘削積込サイクルにおける平均旋回角または目標旋回角と略一致するように設けられてもよい。
【0066】
また、第1の実施形態に係る積込機械100はバケット133を備えるが、これに限られない。例えば、他の実施形態に係る積込機械100は、バックオールとクラムシェルとを開閉可能に備えるクラムバケットを備えるものであってもよい。
【0067】
また、第1の実施形態に係る積込機械100は、オペレータが搭乗して操作する有人運転車両であるが、これに限られない。例えば、他の実施形態に係る積込機械100は、遠隔の事務所にいるオペレータがモニタの画面を見ながら操作する遠隔操作装置から、通信により取得する操作信号によって作動する遠隔運転車両であってもよい。この場合、制御装置128の一部の機能が遠隔操作装置に設けられてもよい。
【符号の説明】
【0068】
100…積込機械 110…走行体 120…旋回体 121…運転室 122…運転席 123…操作装置 124…深度検出装置 125…位置方位演算器 126…傾斜計測器 127…油圧装置 128…制御装置 130…作業機 131…ブーム 132…アーム 133…バケット 134…ブームシリンダ 135…アームシリンダ 136…バケットシリンダ 137…ブームストロークセンサ 138…アームストロークセンサ 139…バケットストロークセンサ 1100…プロセッサ 1200…メインメモリ 1300…ストレージ 1400…インタフェース 1101…車両情報取得部 1102…検出情報取得部 1103…操作信号入力部 1104…バケット位置特定部 1105…マップ生成部 1106…積込対象特定部 1107…積込位置特定部 1108…回避位置特定部 1109…掘削対象特定部 1110…掘削位置特定部 1111…移動処理部 1112…操作信号出力部 200…積込対象 P10…掘削完了位置 P11…旋回開始位置 P12…干渉回避位置 P13…積込位置 P18…旋回終了位置 P19…掘削位置 P21…積込点 P22…掘削点