(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】検査器具
(51)【国際特許分類】
A61B 10/00 20060101AFI20221206BHJP
A61B 10/02 20060101ALI20221206BHJP
A61B 5/00 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
A61B10/00 500
A61B10/02 150
A61B10/02 300D
A61B5/00 N
(21)【出願番号】P 2018180199
(22)【出願日】2018-09-26
【審査請求日】2021-06-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【氏名又は名称】増田 達哉
(72)【発明者】
【氏名】梅垣 彦希
【審査官】▲高▼原 悠佑
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-195436(JP,A)
【文献】特開2009-125130(JP,A)
【文献】特開2009-136485(JP,A)
【文献】特開2009-115609(JP,A)
【文献】国際公開第2018/029492(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 10/00
A61B 5/00
A61B 5/06-5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
胃の内容物と反応する成分が担持された担持体と、
前記担持体を収納するケーシングとを備え、
前記ケーシングは、該ケーシング内に前記内容物が流入する流入口を有する第1部材と、
前記流入口から流入して、前記成分と反応した前記内容物が前記ケーシング内から流出する流出口を有し、前記第1部材と組み立てられる第2部材とを備え、
前記第1部材および前記第2部材のうちの少なくとも一方の部材
には、溝が構成され、
前記溝が、前記内容物が前記流入口から前記流出口に到る間に前記担持体に接しつつ迂回する迂回路を
構成することを特徴とする検査器具。
【請求項2】
当該検査器具は、偏平形状をなし、
前記迂回路は、当該検査器具の平面視で、渦巻き状をなす請求項1に記載の検査器具。
【請求項3】
当該検査器具は、偏平形状をなし、
前記迂回路は、当該検査器具の平面視で、蛇行した形状をなす請求項1に記載の検査器具。
【請求項4】
前記流入口は、管状に突出形成され、
前記流出口は、管状に突出形成され、前記流入口の中心軸とズレて配置されている請求項1ないし3のいずれか1項に記載の検査器具。
【請求項5】
前記担持体は、貫通して形成され、前記迂回路と連通する貫通孔を有する請求項1ないし4のいずれか1項に記載の検査器具。
【請求項6】
前記迂回路は、前記第2部材に形成され、前記貫通孔を介して前記流入口と連通する請求項5に記載の検査器具。
【請求項7】
前記第1部材および前記第2部材のうちの少なくとも一方の部材は、前記貫通孔に係合し、前記ケーシング内での前記担持体の位置を規制する位置決め部を有する請求項5または6に記載の検査器具。
【請求項8】
前記第1部材および前記第2部材のうち、少なくとも前記迂回路を有する方の部材は、内部の視認性を有する請求項1ないし7のいずれか1項に記載の検査器具。
【請求項9】
前記流入口には、可撓性を有するチューブを接続し、前記流出口には、吸引器を接続して用いられる請求項1ないし8のいずれか1項に記載の検査器具。
【請求項10】
前記成分は、前記内容物として、栄養剤に含まれる糖分と反応するものを含んでいる請求項1ないし9のいずれか1項に記載の検査器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査器具に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、胃酸(胃液)を比較的多く含む胃の内容物が食道内に逆流して起こる病態、すなわち、胃食道逆流症(Gastro Esophageal Reflux Disease:GERD)が知られている。また、この胃食道逆流症に伴う合併症として、逆流性肺炎がある。「逆流性肺炎」とは、例えば夜間睡眠中に、胃食道逆流により胃の内容物を誤嚥して、気管内で細菌が増殖し、肺炎が生じる病態を言う。そこで、胃食道逆流を早期に発見することが望まれる。
【0003】
胃食道逆流を判定する方法としては、例えば、以下の方法が一般的に行なわれている。
・自覚症状を問診する方法(非特許文献1参照)
・内視鏡を用いた方法(非特許文献1参照)
・食道内pHモニタリングによる方法(非特許文献1参照)
・尿糖試験紙を用いた方法(非特許文献2参照)
【0004】
しかしながら、これらの方法は、いずれも、例えば、判定結果を得るのに時間がかかったり、判定に用いる装置が大掛かりで操作が煩雑となったりするという問題があった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】日本消化器病学会編、「胃食道逆流症(GERD)診療ガイドライン2015」、改訂第2版、南江堂、2015年10月20日、p.32-33
【文献】清水淳子、坪田経子、泉俊昌著、「胃食道逆流判定を用いたstep-up方式による半固形化栄養剤の選択の試み」、新田塚医療福祉センター雑誌、vol.7 No.1、2010年3月31日、p.35-39
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、簡単な構成で操作性に優れ、例えば胃食道逆流の検査を正確かつ迅速に行うことができる検査器具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的は、下記(1)~(10)の本発明により達成される。
(1) 胃の内容物と反応する成分が担持された担持体と、
前記担持体を収納するケーシングとを備え、
前記ケーシングは、該ケーシング内に前記内容物が流入する流入口を有する第1部材と、
前記流入口から流入して、前記成分と反応した前記内容物が前記ケーシング内から流出する流出口を有し、前記第1部材と組み立てられる第2部材とを備え、
前記第1部材および前記第2部材のうちの少なくとも一方の部材には、溝が構成され、
前記溝が、前記内容物が前記流入口から前記流出口に到る間に前記担持体に接しつつ迂回する迂回路を構成することを特徴とする検査器具。
【0008】
(2) 当該検査器具は、偏平形状をなし、
前記迂回路は、当該検査器具の平面視で、渦巻き状をなす上記(1)に記載の検査器具。
【0009】
(3) 当該検査器具は、偏平形状をなし、
前記迂回路は、当該検査器具の平面視で、蛇行した形状をなす上記(1)に記載の検査器具。
【0010】
(4) 前記流入口は、管状に突出形成され、
前記流出口は、管状に突出形成され、前記流入口の中心軸とズレて配置されている上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の検査器具。
【0011】
(5) 前記担持体は、貫通して形成され、前記迂回路と連通する貫通孔を有する上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の検査器具。
【0012】
(6) 前記迂回路は、前記第2部材に形成され、前記貫通孔を介して前記流入口と連通する上記(5)に記載の検査器具。
【0013】
(7) 前記第1部材および前記第2部材のうちの少なくとも一方の部材は、前記貫通孔に係合し、前記ケーシング内での前記担持体の位置を規制する位置決め部を有する上記(5)または(6)に記載の検査器具。
【0014】
(8) 前記第1部材および前記第2部材のうち、少なくとも前記迂回路を有する方の部材は、内部の視認性を有する上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の検査器具。
【0015】
(9) 前記流入口には、可撓性を有するチューブを接続し、前記流出口には、吸引器を接続して用いられる上記(1)ないし(8)のいずれかに記載の検査器具。
【0016】
(10) 前記成分は、前記内容物として、栄養剤に含まれる糖分と反応するものを含んでいる上記(1)ないし(9)のいずれかに記載の検査器具。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、検査器具は、一例として、検査器具の流入口にカテーテル(チューブ)を接続して、流出口に吸引器を接続して用いることができる。このように、検査器具は、従来からある他の医療器具を接続して用いるという簡単な構成のものとなっている。この場合の検査器具は、例えば、痰吸引を兼ねて、逆流性肺炎の検査を正確かつ迅速に行なうことができる。そして、この検査結果は、胃食道逆流の早期発見につながる。
【0018】
特に、検査器具では、迂回路により、患者の胃からの内容物と担持体との接触面積および接触時間を十分に確保することができる。これにより、担持体が内容物に十分に反応して、その反応状態を前記検査結果として正確に確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、本発明の検査器具(第1実施形態)の使用状態を示す図である。
【
図4】
図4は、
図1に示す検査器具が備える第2部材を内側から見た概略平面図である。
【
図5】
図5は、本発明の検査器具(第2実施形態)が備える第2部材を内側から見た概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の検査器具を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
<第1実施形態>
図1は、本発明の検査器具(第1実施形態)の使用状態を示す図である。
図2は、
図1に示す検査器具の縦断面図である。
図3は、
図1に示す検査器具の分解斜視図である。
図4は、
図1に示す検査器具が備える第2部材を内側から見た概略平面図である。なお、以下では、説明の都合上、
図1中の右側を「基端」、左側を「先端」と言い、
図2および
図3中の上側を「基端」または「上」、下側を「先端」または「下」と言う。
【0021】
図1に示すように、検査器具1は、胃の内容物Q1およびその由来物Q2のうちの少なくとも一方と反応する成分が担持された担持体2と、担持体2を収納するケーシング3とを備え、全体としての形状が偏平形状をなす。なお、本明細書での「平面視」とは、偏平形状をなす検査器具1の平面視でのことを言う。
【0022】
ところで、患者Pは、本実施形態では、一例として、胃瘻により栄養剤が投与された患者となっている。この患者Pが、胃酸(胃液)を比較的多く含む胃の内容物Q1が食道内に逆流して起こる病態、すなわち、胃食道逆流症(Gastro Esophageal Reflux Disease:GERD)を発症している場合、胃食道逆流症に伴う合併症として、逆流性肺炎のおそれがある。「逆流性肺炎」とは、胃食道逆流により胃の内容物Q1を誤嚥して、口腔内等の細菌が気道に多数混入、増殖し、その結果、肺炎が生じる病態のことである。また、気道に異物が混入すると痰が発生するため、患者Pに対しては、痰を定期的に除去するのが好ましい。そこで、患者Pに対して痰吸引を行なう際に、検査器具1をカテーテル8と吸引器9の間に接続することにより、通常の痰吸引時と同内容の操作を行うことで、胃食道逆流の検査を行うことができる。
【0023】
まず、カテーテル8について説明する。
図1に示すように、カテーテル8は、カテーテル本体であるカテーテルチューブ81と、ハブ82とを有している。
【0024】
カテーテルチューブ81は、可撓性を有する長尺なチューブである。このカテーテルチューブ81は、患者Pの鼻腔に挿入される。
【0025】
ハブ82は、カテーテルチューブ81の基端部に設けられている。ハブ82は、検査器具1のケーシング3に接続される。これにより、ハブ82を介してカテーテルチューブ81とケーシング3とが連通する。また、ハブ82は、
図1に示す構成では分岐部821が突出して形成されたものとなっているが、これに限定されず、分岐部821が省略されたものであってもよい。
【0026】
また、吸引器9としては、特に限定されず、例えば、壁掛式吸引器(例えば新鋭工業社製「WS-1400」や「V-1500」)等を用いることができる。吸引器9は、チューブ91を介して、ケーシング3に接続される。
【0027】
次に、検査器具1について説明する。前述したように、検査器具1は、担持体2と、担持体2を収納するケーシング3とを備えている。
【0028】
担持体2は、胃の内容物Q1およびその由来物Q2と反応する成分が担持されたものである。本実施形態では、担持体2は、患者Pの胃から食道を通って逆流してきた内容物Q1と反応する第1成分と、内容物Q1の一部が分解された由来物Q2と反応する第2成分とを担持したものである。
【0029】
前述したように、患者Pは、胃瘻により栄養剤が投与されている。そのため、内容物Q1には、栄養剤が含まれている場合が多くある。栄養剤は、糖分を含んでおり、第1成分は、この糖分(ブドウ糖)に反応する、すなわち、糖分を分解する酵素である。この酵素としては、特に限定されず、例えば、グルコースオキシターゼ、ペルオキシターゼ等が挙げられ、これらのうちの少なくとも1つが担持体2に担持されている。
【0030】
また、第2成分は、第1成分によって分解された糖分、すなわち、由来物Q2に反応して呈色する色素である。この色素としては、オルトトリジン等が挙げられる。そして、この呈色反応を視認できた場合には、患者Pに栄養剤の胃食道逆流が発生していることを把握することができる。
【0031】
図3に示すように、担持体2は、円形のシートで構成されている。この担持体2の直径は、特に限定されないが、例えば、5mm以上50mm以下であるのが好ましく、10mm以上30mm以下であるのがより好ましい。また、この担持体2の厚さは、特に限定されないが、例えば、0.2mm以上2mm以下であるのが好ましく、0.3mm以上1mm以下であるのがより好ましい。
【0032】
図3に示すように、担持体2は、その中心から偏心した位置に、厚さ方向に貫通して形成された貫通孔21を有している。流入口42からの内容物Q1は、貫通孔21を通過して、担持体2の上面側に供給される。
【0033】
また、担持体2自体は、例えば、紙材、または、織布や不織布等のような布材で構成されているのが好ましい。これにより、第1成分や第2成分を吸収して、確実に担持することができる。
【0034】
図2、
図3に示すように、ケーシング3は、下側に位置する第1部材4と、上側に位置する第2部材5とを備えている。
【0035】
第1部材4は、円盤状をなす円盤状部41と、円盤状部41の下面412に突出形成され、ケーシング3内に内容物Q1が流入する流入口42とを有している。
【0036】
円盤状部41の上面411には、リブ43が突出形成されている。リブ43は、第1部材4が第2部材5と超音波溶着される際の溶着しろとして用いられる。また、リブ43は、円盤状部41と同心円状に形成されている。リブ43の内側の直径は、担持体2の直径よりも大きい。
【0037】
また、リブ43の横断面形状は、山状をなしており、溶着される前の高さとしては、特に限定されず、例えば、0.3mm以上2mm以下であるのが好ましく、0.5mm以上1mm以下であるのがより好ましい。
【0038】
円盤状部41の下面412には、流入口42が下方に向かって管状に突出形成されている。この流入口42は、円盤状部41の中心から偏心した位置に配置されている。また、流入口42は、円盤状部41の上面411に開口している。
【0039】
図1に示すように、流入口42には、カテーテル8、すなわち、ハブ82を介してカテーテルチューブ81を接続することができる。これにより、流入口42に、患者Pからの内容物Q1等を含む被吸引物が流入することができる。
【0040】
また、流入口42の外周部は、外径が下方に向かって漸減したテーパ状をなすのが好ましい。これにより、流入口42とハブ82との接続操作を容易に行うことができる。
【0041】
図2、
図3に示すように、第2部材5は、第1部材4と組み立てられてケーシング3となる部材である。第2部材5は、円盤状をなす円盤状部51と、円盤状部51の上面511に突出形成され、流入口42から流入してきた内容物Q1等が流出する流出口52を有している。
【0042】
円盤状部51は、後述する溝で構成された迂回路56等を形成する分、第1部材4の円盤状部41よりも厚い。
【0043】
図4に示すように、円盤状部51の下面512には、円盤状部51と同心円状をなす溶着用溝53が形成されている。
図2に示すように、溶着用溝53は、第1部材4と第2部材5とが超音波溶着される際に、第1部材4のリブ43が入り込んで溶着される部分である。
【0044】
溶着用溝53の深さは、第1部材4と第2部材5とが溶着される前のリブ43の高さよりも小さい。例えば、溶着用溝53の深さは、リブ43の前記高さよりも0.1mm以上1mm以下程度小さいのが好ましく、0.2mm以上0.5mm以下程度小さいのがより好ましい。これにより、超音波溶着時にリブ43の頂部が優先的に溶融して潰れて、第1部材4と第2部材5とが確実に組み立てられる。また、この組立状態の第1部材4と第2部材5とが分解するのが防止される。
【0045】
なお、円盤状部41および円盤状部51の直径は、特に限定されないが、それぞれ、5mm以上50mm以下であるのが好ましく、10mm以上30mm以下であるのがより好ましい。
【0046】
円盤状部51の上面511には、流出口52が上方に向かって管状に突出形成されている。この流出口52は、円盤状部51の下面512に開口している。
【0047】
図2に示すように、流出口52は、流入口42の配置とは異なり、円盤状部51の中心に位置に配置されている。すなわち、流出口52は、その中心軸O
52が流入口42の中心軸O
42とズレて配置されている。これにより、流入口42から流出口52までの迂回路56を設計する際、迂回路56の長さを十分確保することができ、また、平面視での迂回路56の形状、すなわち、形成ルート(経路)の自由度も高まる。
【0048】
図1に示すように、流出口52には、チューブ91を介して、吸引器9を接続することができる。これにより、流出口52からは、担持体2中の成分と反応した内容物Q1等を含む被吸引物が流出することができる。
【0049】
また、流出口52の外周部は、外径が上方に向かって漸減したテーパ状をなすのが好ましい。これにより、流出口52とチューブ91との接続操作を容易に行うことができる。
【0050】
また、流入口42および流出口52の内径は、特に限定されないが、それぞれ、1mm以上5mm以下であるのが好ましく、2mm以上3.5mm以下であるのがより好ましい。
【0051】
図2、
図4に示すように、円盤状部51の下面512には、溶着用溝53よりも内側に、凹部で構成され、担持体2が設置される担持体設置部54が形成されている。担持体設置部54の平面視の形状は、担持体2の直径よりも大きい円形をなす。
【0052】
また、担持体設置部54の深さは、担持体2の厚さよりも大きいのが好ましい。これにより、担持体2と第1部材4との間に間隙11が形成される。間隙11の大きさとしては、特に限定されず、例えば、0.1mm以上2mm以下であるのが好ましく、0.2mm以上0.8mm以下であるのがより好ましい。
【0053】
担持体設置部54内には、内容物Q1等が流入口42から流出口52に到る間に担持体2に接しつつ迂回する迂回路56と、ケーシング3内での担持体2の位置を規制する位置決め部55とが設けられている。ここで、「迂回」とは、内容物Q1等が流入口42から流出口52に最短で到達しないことを言う。
【0054】
図4に示すように、迂回路56は、内容物Q1等が流出口52に向かって通過する溝で構成された流路であり、内容物Q1等の通過が開始される始点561と、内容物Q1等の通過が終了する終点562とを有している。始点561は、貫通孔21を介して、流入口42に臨んで連通している。一方、終点562は、流出口52に直接的に臨んで連通している。これにより、平面視での始点561と終点562との位置関係は、始点561が外側、終点562が内側となる。このような位置関係により、迂回路56は、検査器具1の平面視で、外側から内側に向かった渦巻き状をなす。特に、本実施形態では、迂回路56は、流出口52を中心とする円弧状に湾曲した湾曲部563と、湾曲部563に連通し、外側から内側に向かった直線状をなす直線部564とを有する形状となる。湾曲部563は、始点561を含んでおり、直線部564は、終点562を含んでいる。なお、湾曲部563は、
図4に示す構成では流出口52回りにほぼ7/8周分だけ形成されているが、その形成長さは、特に限定されず、流出口52回りに少なくとも1/8周あればよい。
【0055】
そして、吸引器9により吸引作業を行った際には、その吸引力が患者Pにまで作用して、痰等を含む被吸引物が流入口42から入り、流出口52から出ていく。また、この過程の途中では、迂回路56により、当該被吸引物と担持体2との接触面積および接触時間を十分に確保することができる。これにより、
図3に示すように、当該被吸引物に内容物Q1が含まれている場合、内容物Q1中の糖分の一部または全部は、第1成分に接して分解され、由来物Q2となる。また、由来物Q2の一部または全部は、第2成分に接する。これにより、当該被吸引物が迂回路56を通過した軌跡に沿って、第2成分に呈色反応が十分に生じて、この呈色反応を観察することができ、よって、胃食道逆流が発生していることを発見することができる。
【0056】
以上のように、検査器具1を用いることにより、通常の痰吸引操作を兼ねて、胃食道逆流の検査を正確かつ迅速に行なうことができる。また、この検査は、カテーテル8に検査器具1を配置したのみの簡単な構成となっているため、安価なものとなっている。
【0057】
前述したように、迂回路56は、溝で構成されている。この場合、迂回路56の幅は、本実施形態では迂回路56の形成方向に沿って一定となっているが、これに限定されず、迂回路56の形成方向の途中が変化していてもよい。なお、迂回路56の幅は、特に限定されないが、例えば、1mm以上5mm以下であるのが好ましく、2mm以上3.5mm以下であるのがより好ましい。
【0058】
また、迂回路56の深さは、本実施形態では迂回路56の形成方向に沿って一定となっているが、これに限定されず、迂回路56の形成方向の途中が変化していてもよい。なお、迂回路56の深さは、特に限定されないが、例えば、1mm以上5mm以下であるのが好ましく、1.5mm以上3mm以下であるのがより好ましい。
【0059】
図2、
図3に示すように、位置決め部55は、担持体2の貫通孔21に上側から挿入され、貫通孔21に係合する突出部で構成されている。この係合により、ケーシング3内での担持体2の位置が規制され、よって、迂回路56を通過する内容物Q1等が担持体2と確実に接触することができる。
【0060】
また、位置決め部55は、第1部材4の上面411に開口している流入口42と同心的に形成されたリング状の凹部44に嵌まり込むことができる。これにより、第1部材4と第2部材5との位置関係も規制することができ、よって、始点561が流入口42に確実に臨んだ状態となる。これにより、内容物Q1等が流入口42から迂回路56に向かって円滑に流下することができる。
【0061】
なお、位置決め部55と凹部44とは、できる限り接触しない方が好ましい。これにより、第1部材4と第2部材5とを超音波溶着する際、その振動が抑制されるのが防止され、よって、これら部材同士の溶着を十分に行うことができる。
【0062】
図4に示すように、位置決め部55は、平面視で円弧状をなし、その開口方向が迂回路56の始点561側に向かっている。これにより、流入口42からの内容物Q1等を迂回路56に向かわせることができる。
【0063】
なお、第1部材4および第2部材5の構成材料としては、特に限定されず、例えば、担持体2の変色(呈色反応)をより確実に視認することができるという点で、PS、PC、ABS等の非晶性樹脂を用いるのが好ましい。
【0064】
また、第1部材4および第2部材5のうち、少なくとも迂回路56を有する方の部材、すなわち、第2部材5は、内部の視認性を有する程度に透明であるのが好ましい。担持体2では、迂回路56側の方が、内容物Q1等と接触する分、迂回路56と反対側よりも呈色反応が顕著に現れる傾向にある。そのため、迂回路56を有する第2部材5が透明であることにより、担持体2における呈色反応を容易に視認することができる。これにより、胃食道逆流の迅速な検査が可能となる。
【0065】
また、第1部材4の色は、呈色反応後の担持体2の色と同系色であるのが好ましい。これにより、胃食道逆流の検査結果を判断する際、その判断の補助となり得る。
【0066】
<第2実施形態>
図5は、本発明の検査器具(第2実施形態)が備える第2部材を内側から見た概略平面図である。
【0067】
以下、この図を参照して本発明の検査器具の第2実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
本実施形態は、迂回路の形状が異なること以外は前記第1実施形態と同様である。
【0068】
図5に示すように、本実施形態では、迂回路56は、平面視で、蛇行した形状をなし、本実施形態では、サインカーブに近似した形状をなす。このような形状の迂回路56によっても、患者Pからの被吸引物と担持体2との接触面積および接触時間を十分に確保することができ、よって、胃食道逆流の早期発見に寄与する。
【0069】
以上、本発明の検査器具を図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、検査器具を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
【0070】
また、本発明の検査器具は、前記各実施形態のうちの、任意の2以上の構成(特徴)を組み合わせたものであってもよい。
【0071】
なお、本発明の検査器具は、胃の内容物に含まれる胃酸の量、すなわち、pH値に基づいて、胃食道逆流の程度を把握するよう構成されていてもよい。
【0072】
また、担持体は、胃の内容物と反応する第1成分と、内容物の由来物と反応する第2成分とを担持しものとなっているが、これに限定されない。例えば、担持体は、第2成分が省略されたものであってもよいし、内容物および由来物の双方と反応する成分が担持されたものであってもよい。
【0073】
また、担持体は、呈色反応によって、例えば、文字、記号、図柄等が浮かび上がるよう構成されていてもよい。
【0074】
また、検査器具では、第1部材および第2部材のうち、前記各実施形態では第2部材に迂回路が形成されているが、これに限定されず、第1部材に迂回路が形成されていてもよいし、第1部材および第2部材の双方に迂回路が形成されていてもよい。
【0075】
また、検査器具では、第1部材および第2部材のうち、前記各実施形態では第2部材に位置決め部が形成されているが、これに限定されず、第1部材に位置決め部が形成されていてもよいし、第1部材および第2部材の双方に位置決め部が形成されていてもよい。
【0076】
また、検査器具は、経鼻吸引を行なうよう構成されたものとなっているが、これに限定されず、例えば、経口吸引を行なうよう構成されたものであってもよい。
【符号の説明】
【0077】
1 検査器具
2 担持体
21 貫通孔
3 ケーシング
4 第1部材
41 円盤状部
411 上面
412 下面
42 流入口
43 リブ
44 凹部
5 第2部材
51 円盤状部
511 上面
512 下面
52 流出口
53 溶着用溝
54 担持体設置部
55 位置決め部
56 迂回路
561 始点
562 終点
563 湾曲部
564 直線部
8 カテーテル
81 カテーテルチューブ
82 ハブ
821 分岐部
9 吸引器
91 チューブ
11 間隙
O42、O52 中心軸
P 患者
Q1 内容物
Q2 由来物