(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】カバー部材付きスパウト
(51)【国際特許分類】
B65D 41/32 20060101AFI20221206BHJP
B65D 33/38 20060101ALI20221206BHJP
B65D 75/58 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
B65D41/32
B65D33/38
B65D75/58
(21)【出願番号】P 2018183157
(22)【出願日】2018-09-28
【審査請求日】2021-08-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000228442
【氏名又は名称】日本クロージャー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000419
【氏名又は名称】弁理士法人太田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大森 慎二
(72)【発明者】
【氏名】杉山 尚
(72)【発明者】
【氏名】島田 知
【審査官】宮崎 基樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-052537(JP,A)
【文献】国際公開第2004/000676(WO,A1)
【文献】特開2007-039043(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0024814(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 35/44-35/54
B65D 39/00-55/16
B65D 33/38
B65D 75/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒部と、前記筒部の基端側に設けられて容器本体と融着される溶着部と、を備えるスパウトと、前記筒部の外周面を覆うカバー部材とからなるカバー部材付きスパウトであって、
前記筒部の内周面には弱化部を介して折り取り可能な閉塞体が一体形成され、
前記閉塞体は、
前記弱化部と外縁で接続されると共に一部が収容溝部として切り欠かれた裾柱部を備えた底面部と、前記裾柱部から軸方向の上方に延在する嵌合用円柱部と、
前記嵌合用円柱部と共に前記裾柱部から前記軸方向の上方に沿って延在して前記嵌合用円柱部の外周面から径方向に突出する一対の係合リブとを備え、
前記カバー部材の内側には、前記閉塞体を挟むように前記軸方向の下方に延出する折り取り用プラグが形成され、
前記折り取り用プラグは、前記嵌合用円柱部と嵌合可能な被嵌合窪部と、前記係合リブと係合可能な当接面とを有する一対の弧状部と、を備えており、
前記カバー部材を開封方向にねじると、前記当接面と前記一対の係合リブとが係合することで構成される第1ねじり機構が第1の折り取り力を作用させ、
前記閉塞体及び前記折り取り用プラグは、前記第1ねじり機構よりも前記軸方向の下方で且つ前記弱化部よりも前記軸方向の上方に第2の折り取り力を作用させる第2ねじり機構を有
し、
前記第2ねじり機構は、
前記弧状部の下端から前記軸方向の下方に突出する突起部と、
前記閉塞体の下部に位置する一対の裾柱部の側面同士が対向することで形成され、前記突起部を収容可能な前記収容溝部と、を含んでなる、
ことを特徴とするカバー部材付きスパウト。
【請求項2】
前記第2ねじり機構においては、前記軸方向と直交する周方向に関して前記第1ねじり機構とは異なる位置で、前記折り取り用プラグが前記閉塞体に対して当接する請求項
1に記載のカバー部材付きスパウト。
【請求項3】
前記裾柱部と前記突起部とが対向する互いの側面は、前記係合リブと前記弧状部とが対向する互いの側面に対して、直行する方向または斜めに交差する方向に延在する請求項
1又は2に記載のカバー部材付きスパウト。
【請求項4】
前記嵌合用円柱部には、折り取り後に前記閉塞体を前記カバー部材の内側に留置するための径方向外方に突出する第1アンダーカット部が形成されると共に、
前記被嵌合窪部には、前記カバー部材が前記筒部に装着されるときに前記第1アンダーカット部を乗り越え可能な、径方向内方に突出する第2アンダーカット部が形成されている請求項1~
3のいずれか一項に記載のカバー部材付きスパウト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチックフィルムやアルミ箔などから形成された袋状容器や紙製容器に溶着されて内容物の注出路として機能するスパウトと、該スパウトに装着されるカバー部材と、を備えたカバー部材付きスパウトに関する。
【背景技術】
【0002】
容器に保存された内容物を注出する注出ポートとして用いられるスパウトは、例えば特許文献1に例示されるとおり、全体として両端開口の筒状形状を有するものであり、円筒状本体と、該円筒状本体の下部に一体に連なった容器接合用筒とから形成されており、円筒状本体と容器接合用筒の内部空間は、容器内容液を注ぎ出す際の貫通路となっている。この容器接合用筒には容器(パウチ)の開口部がヒートシールによって接合固定され、円筒状本体にはキャップが被せられて着脱自在に装着されて上記した注出ポートとして使用される。
【0003】
このように注出ポートとして機能するスパウトは、容器に保存された種々の液体材料の注出に寄与している。ここで、何らかの原因によって口から栄養を摂取することが困難になった場合、いわゆる経腸栄養による摂取が行われている。より具体的な経腸栄養の態様として、患者に投与される栄養剤を含む内容物を予めパウチに充填した吊り下げ式のRTH(Ready To Hang)製剤が広く用いられている。
【0004】
このようなRTH製剤では、内容物を注出するためのスパウトがパウチに溶着されていることが多い。そして患者へ内容物を投与する際には、投与する直前にスパウトの先端を開封し、この開封されたスパウトに対して、その一端が患者の体内に挿入されるカテーテルの他端側に接続されたコネクタを接続することで、患者に対して栄養剤を含む内容物を投与することが行われている。
また、従来、このようなRTH製剤の用途においては、例えば特許文献2に例示されるとおり、パウチに溶着されるスパウトにオスコネクタ部を形成し、カテーテルに取り付けられるコネクタにメスコネクタ部を形成するのが、一般的であった。
【0005】
一方で、近年においては、経腸栄養以外の分野で使用されるコネクタとの誤接続による医療事故を防止するために、経腸栄養系の医療機器に関する国際規格ISO80369-3としてコネクタを国際標準化することが検討されている。
【0006】
このISO80369-3に対応するコネクタとして特許文献3では、その
図14に示されるオス部材との好適な接続を担保するため、中空円筒形状を有するメス部材と、このメス部材の基端に設けられてメス部材の内径より小さな内径を有する径小部と、環状の薄肉部を介してこの径小部に接続されてこの径小部を封止する封止体とを備えるメスコネクタが示されている。そして特許文献3によれば、メスコネクタの薄肉部を破断して封止部を取り除くことで開口状態となり、このメス部材にオス部材が挿入されて上記径小部はオス部材と連通されるように構成されることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2010-269836号公報
【文献】特開2013-60213号公報
【文献】特開2018-52537号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したとおりISO80369-3に準拠してRTH製剤を構成する場合、たしかに特許文献3によれば、流路を封止する封止体を取り除くことにより開口されてメス部材の内周面に液状物が付着しにくいメスコネクタ(注出ポート)がある程度は実現できる。
しかしながら特許文献3に示されるメスコネクタ(注出ポート)では、破断力を発生する部位を薄肉部14から離れた位置に置いて当該薄肉部14を破断させる構成であるため、薄肉部14に至るまで破断力が効率的に伝わらず封止体30自体が途中でねじれてしまい、その結果として薄肉部14が完全に破断しないという開封性の課題は否めない。
【0009】
また、特許文献3では、封止体30の側方周囲に破断力を発揮させる突起と溝を配置する構造を採用しているが、かような構造ではキャップとメスコネクタとの位置関係に自由度はなく、例えば製造時にキャップをメスコネクタに装着し難いという課題も存在する。換言すれば、特許文献3に開示されたメスコネクタでは、製造時の組み立て容易性まで配慮した構造とは必ずしもなっていないと言える。
【0010】
従って、本発明の目的の1つは、上述した課題を鑑みて、容器に保存された内容物の衛生状態を維持しつつ上述した開封性と組み立て容易性とを両立させた構造の注出ポートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明の一形態におけるカバー部材付きスパウトは、(1)筒部と、前記筒部の基端側に設けられて容器本体と融着される溶着部と、を備えるスパウトと、前記筒部の外周面を覆うカバー部材とからなるカバー部材付きスパウトであって、前記筒部の内周面には弱化部を介して折り取り可能な閉塞体が一体形成され、前記閉塞体は、前記弱化部と外縁で接続されると共に一部が収容溝部として切り欠かれた裾柱部を備えた底面部と、前記裾柱部から軸方向の上方に延在する嵌合用円柱部と、前記嵌合用円柱部と共に前記裾柱部から前記軸方向の上方に沿って延在して前記嵌合用円柱部の外周面から径方向に突出する一対の係合リブとを備え、前記カバー部材の内側には、前記閉塞体を挟むように前記軸方向の下方に延出する折り取り用プラグが形成され、前記折り取り用プラグは、前記嵌合用円柱部と嵌合可能な被嵌合窪部と、前記係合リブと係合可能な当接面とを有する一対の弧状部と、を備えており、前記カバー部材を開封方向にねじると、前記当接面と前記一対の係合リブとが係合することで構成される第1ねじり機構が第1の折り取り力を作用させ、前記閉塞体及び前記折り取り用プラグは、前記第1ねじり機構よりも前記軸方向の下方で且つ前記弱化部よりも前記軸方向の上方に第2の折り取り力を作用させる第2ねじり機構を有し、前記第2ねじり機構は、前記弧状部の下端から前記軸方向の下方に突出する突起部と、前記閉塞体の下部に位置する一対の裾柱部の側面同士が対向することで形成され、前記突起部を収容可能な前記収容溝部と、を含んでなる、ことを特徴とする。
【0013】
また、上記(1)に記載のカバー部材付きスパウトにおいては、(2)前記第2ねじり機構においては、前記軸方向と直交する周方向に関して前記第1ねじり機構とは異なる位置で、前記折り取り用プラグが前記閉塞体に対して当接することが好ましい。
【0015】
また、上記(1)又は(2)に記載のカバー部材付きスパウトにおいては、(3)前記裾柱部と前記突起部とが対向する互いの側面は、前記係合リブと前記弧状部とが対向する互いの側面に対して、直行する方向または斜めに交差する方向に延在することが好ましい。
【0016】
また、上記(1)~(3)のいずれかに記載のカバー部材付きスパウトにおいて、(4)前記嵌合用円柱部には、折り取り後に前記閉塞体を前記カバー部材の内側に留置するための径方向外方に突出する第1アンダーカット部が形成されると共に、前記被嵌合窪部には、前記カバー部材が前記筒部に装着されるときに前記第1アンダーカット部を乗り越え可能な、径方向内方に突出する第2アンダーカット部が形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、内容物の衛生状態を維持しつつ開封性と組み立て容易性とを両立させたカバー部材付きスパウトを実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第1実施形態におけるカバー部材付きスパウト100の外観およびYZ平面で切断した断面をそれぞれ示す斜視図である。
【
図2】カバー部材付きスパウト100のうちスパウト30の外観およびYZ平面で切断した断面をそれぞれ示す斜視図である。
【
図3】カバー部材付きスパウト100のうちカバー部材40の外観およびYZ平面で切断した断面をそれぞれ示す斜視図である。
【
図4】スパウト100をYZ平面で切った断面図であって筒部10の内側における構造を説明するための模式図である。
【
図5】(a)は
図4におけるA-A断面を示し、第1実施形態における第1ねじり機構FTMの構造を説明する模式図であり、(b)は
図4におけるB-B断面を示し、第1実施形態における第2ねじり機構STMの構造を説明する模式図である。
【
図6】第1実施形態における折り取り前後のカバー部材40の状態遷移を説明する模式図である。
【
図7】第1実施形態における折り取り前後のスパウト30の状態遷移を説明する模式図である。
【
図8】折り取り後のスパウト30がチューブTと接続された状態を断面で示す模式図である。
【
図9】第2実施形態におけるカバー部材付きスパウト200をYZ平面で切った断面を示す模式図である。
【
図10】(a)は
図9におけるA-A断面を示し、第2実施形態における第1ねじり機構FTMの構造を説明する模式図であり、(b)は
図9におけるB-B断面を示し、第2実施形態における第2ねじり機構STMの構造を説明する模式図である。
【
図11】
図9におけるα部を拡大した状態を示す模式図である。
【
図12】第3実施形態におけるカバー部材付きスパウト300を、
図5に対応してXY平面で切った断面をそれぞれ示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を好適に実施するための実施形態について説明する。なお、以下の各図を用いた説明においてX、Y及びZ方向を適宜設定したが、これらは説明の便宜上の定義付けであって本発明を何ら過度に限定するものではない。
【0020】
[第1実施形態]
<カバー部材付きスパウト100>
図1は、第1実施形態におけるカバー部材付きスパウト100の外観およびYZ平面で切断した断面をそれぞれ示す斜視図である。
【0021】
本実施形態におけるカバー部材付きスパウト100は、後述する筒部10と、この筒部10の基端側10aに設けられて不図示の容器本体と融着される溶着部20と、を備えるスパウト30と、この筒部10の外周面10bを覆うカバー部材40とから構成されてなる。また同図から明らかなとおり、本実施形態のスパウト30は、基端側10aがその間に介在するように筒部10と溶着部20とが形成されている。
【0022】
カバー部材付きスパウト100の材質は、特に制限はなく公知の種々の材料を適用できる。特に射出成形によってカバー部材付きスパウト100を成形可能な樹脂材料で構成されていることが好ましい。このとき、カバー部材付きスパウト100を構成するスパウト30とカバー部材40とはそれぞれ射出成形されるが、かような樹脂材料としては例えばポリプロピレン樹脂あるいはポリエチレン樹脂が好適である。
【0023】
基端側10aは、Y方向に長辺が延在する楕円板がZ方向に所定の間隙を置いて2枚重なるように配置された構造となっている。そして基端側10aを構成する2枚の楕円板のうち上側楕円板の中央に筒部10が立設するように設けられ、下側楕円板の底面(上側楕円板とは反対側の面)に溶着部20が設けられる。なお基端側10aの構造は上記の例に限られず、例えば特許文献3のごとく楕円板(仕切板に相当)が1枚の構成となっていてもよい。
また、以下で詳述する構成以外については、公知のスパウト構造を種々参考にすることができる。
【0024】
図2および3も適宜参照しつつ、カバー部材付きスパウト100を構成するスパウト30とカバー部材40の詳細な構成について説明する。
図2(a)にも示すとおり、本実施形態における筒部10は、閉塞体11を含んで構成されている。より具体的には
図1(b)および
図2(b)にも示すとおり、筒部10および溶着部20の内周面にはZ方向に沿って貫通する流路FPが形成されている。また、筒部10の上端部には螺状突起17が形成されており、後述する被係合部材であるチューブTの雌ネジTsと螺合可能なように構成されている。
【0025】
筒部10の流路FPを構成する内周面10cの一部には、弱化部WPを介して折り取り可能な閉塞体11が一体形成されている。なお本実施形態では、内周面10cの上方の一部に、他の部位よりも内径が小さい環状の径小部10dが形成されており、この径小部10dの内周側先端から上方に延びる弱化部WPを介して閉塞体11が一体形成されている。また本実施形態では、閉塞体11は、その上端(+Z方向における端面)が、筒部10の上端とほぼ同じ高さとなるように形成されている。
【0026】
閉塞体11は、
図2~5によって理解されるとおり、軸方向(Z方向)の上方に向けて延在する嵌合用円柱部12と、この嵌合用円柱部12の外周面から径方向に突出する一対の係合リブ13(係合リブ13pと係合リブ13qを含む)とを備えている。また、
図2から明らかなとおり、閉塞体11は略円板状の底面部19を含んで構成され、この底面部19の底面外縁で弱化部WPを介して筒部10の内周面10cの径小部10dに接続されている。
【0027】
弱化部WPは、周方向に沿って厚みが薄くなった薄肉部として機能しており、相対的に機械的強度を低下させた部位にすることで後述する閉塞体11の折り取り時に破断可能なように構成されている。従って、弱化部WPの非破断時(未開封時)には、この閉塞体11および弱化部WPを介して容器の内部を密閉することが可能となっており、これにより内容物を適切に保存することが可能となっている。
【0028】
このうち本実施形態の一対の係合リブ13p、qは、
図5(a)に示すとおり、嵌合用円柱部12を基準にそれぞれ±Y方向に延びるように嵌合用円柱部12の外周面から径方向に突出する。換言すれば、一対の係合リブ13p、qは、Y方向に沿って並ぶように嵌合用円柱部12の外周面から径方向に突出している。
なお本実施形態の嵌合用円柱部12は、底面部19を基点としてZ方向上側に延びる円柱状の部材である。
【0029】
そして
図2及び5から理解できるとおり、嵌合用円柱部12のうち上端部(+Z方向の端部付近)は徐々に縮径された形状となっており、頂端ではほぼ係合リブ13と同様の外形となっている。また、嵌合用円柱部12の頂点(+Z方向の端部)と係合リブ13の頂点(+Z方向の端部)とは、ほぼZ方向における高さ(底面部19からの高さ)が等しくなっている。しかしながら本発明はこの形態に限られず、嵌合用円柱部12の頂点と係合リブ13の頂点とが互いに異なる高さを有して構成されていてもよい。
【0030】
また本実施形態では、
図5(a)に示すとおり、それぞれの係合リブ13p、qが径方向に突出する突出量は、後述する弧状部43の外径よりも小さくなるように設定されている。しかしながら本発明は上記構成に限定されず、係合リブ13は、例えば弧状部43の外径とほぼ同じ長さとなるように嵌合用円柱部12の外周面から径方向に突出するようにしてもよい。
【0031】
また、一対の係合リブ13p、qの幅(
図5(a)におけるX方向の幅)は、嵌合用円柱部12の直径(X方向において最も大きい幅、
図5(a)におけるx2に相当)よりも小さくなるように設定されている。しかしながら本発明は上記構成に限定されず、係合リブ13の幅は、例えば上記した嵌合用円柱部12の直径とほぼ同じとなるように設定されていてもよい。
【0032】
また、
図2から理解されるとおり、一対の係合リブ13p、qは、嵌合用円柱部12と共に閉塞体11の底面部19から軸方向(Z方向)の上方に沿って延在することが好ましい。これにより、後述する第1の折り取り力f1および第2の折り取り力f2が作用するときに、弱化部WPへこれらの力が効率的に伝達されることが可能となっている。
【0033】
溶着部20は、基端側10aの下側に配置される略菱形の平面視形状を有する略四角柱体である。この溶着部20の形状については特に制限はなく、例えば特許文献3を始めとした公知の溶着部の形状を採用してもよい。すなわち、容器製造時には、不図示の樹脂製や紙製シートを2枚用いてこの溶着部20を挟んだ上で、これら2枚のシートの外周端縁をヒートシール法など公知の手法によって溶着する。
【0034】
かような容器は、例えば上述した患者へ経腸栄養を行う際に用いられるRTH製剤としての用途が特に好ましいが、特にその用途に制限はなく医療分野はもとより飲料分野や食品分野など広範に適用が可能である。すなわち、容器に充填される内容物としては、医薬品や飲料水のほか、ゼリー状の液体も好適に用いることができる。
【0035】
カバー部材40は、
図3~5から理解されるとおり、一対の折り取り用プラグ41を含んで構成されている。より詳細には、
図3(b)に示すとおり、カバー部材40の内周面40bには、上記した閉塞体11を挟むように軸方向(Z方向)の下方に延出する折り取り用プラグ41が形成されている。
【0036】
なお、カバー部材40の外周面40aには、一対の摘み部46が±Y方向に延びるように形成されている。また、摘み部46はY方向に延びるように一対だけ設けられているが、この例に限られず、±Y方向および±X方向にそれぞれ延びるように外周面40aから4つの摘み部46が形成されていてもよい。
【0037】
折り取り用プラグ41は、
図5にも示すとおり、上記した嵌合用円柱部12と嵌合可能な被嵌合窪部42と、上記した係合リブ13と係合可能な当接面43aとを有する一対の弧状部43p、qと、この弧状部43上に形成される突起部44と、を含んで構成されている。
図3及び4から理解されるとおり、折り取り用プラグ41は、カバー部材40の頂部40cの内側からZ方向下方に向けて垂下するように設けられている。
【0038】
折り取り用プラグ41は、カバー部材40がスパウト30に装着された状態において、後述する折り取り用プラグ41の突起部44が閉塞体11に設けられた収容溝部15aに収容可能な程度のZ方向高さを有して構成されている。
なお
図4から明らかなとおり、折り取り用プラグ41の外周面と筒部10の内周面10cとの間には、閉塞体11が離脱した後でリシールができないように所定の間隙が形成されている。
【0039】
また
図4(
図1では簡略化のため不図示)に示すとおり、筒部10の外周面10bとカバー部材40の内周面40bとの間には、カバー部材40の装着後におけるガタつきを抑制するガタつき抑制リブ18が設けられている。本実施形態では、筒部10の外周面10bにガタつき抑制リブ18を形成したが、この形態に限られずカバー部材40の内周面40bにガタつき抑制リブ18を形成するようにしてもよい。
【0040】
図5に示すように、本実施形態では、折り取り用プラグ41の高さ方向に沿って上記した嵌合用円柱部12を挟むように一対の被嵌合窪部42が対向して配置されている。そして一対の被嵌合窪部42によって嵌合用円柱部12が挟まれるように嵌合されるため、対向する一対の被嵌合窪部42間の距離(
図5(a)におけるX方向の距離x1)は、嵌合用円柱部12の直径(
図5(a)におけるX方向の距離x2)よりも小さくなるように設定されている。
【0041】
このように本実施形態では、嵌合用円柱部12と被嵌合窪部42とは嵌合可能となっており、カバー部材40がスパウト30に装着された際(以下、かような状態を「カバー装着時」とも称する)に嵌合されることで互いに密着される。そして本実施形態では、嵌合用円柱部12と被嵌合窪部42とは、Z方向に沿って折り取り用プラグ41の下端から上端まで嵌合可能とされている。これにより、閉塞体11がカバー部材40に対して比較的強固に密着される形となり、閉塞体11の折り取り後で当該閉塞体11が筒部10内に残留せずにカバー部材40と共に離脱することが可能となっている。
【0042】
一対の弧状部43p、qは、
図5に示すとおり、それぞれ左半円状および右半円状となるよう原点を中心に弧状となった部材である。それぞれの弧状部43における内側面の側(原点側の側面)には上記した被嵌合窪部42が形成されている。
一対の突起部44p、qは、一対の弧状部43p、qの下端面(
図4では折り取り用プラグ41の下端部)のうち中央部分からそれぞれ下方に突出するように設けられている(
図5(a)および(b)を参照)。この突起部44のZ方向における突起量は、収容溝部15a内に収まる範囲内において特に制限はないが、収容溝部15aの深さ(Z方向における大きさ)よりも若干小さい程度が望ましい。なお図示からも分かるとおり、一対の突起部44p、qの内面は、被嵌合窪部42の内面に沿って形成されているため、嵌合用円柱部12の下端部を挟むように密着している。
【0043】
また、本実施形態の一対の裾柱部14p、qは、閉塞体11における底面部19に相当する。そして裾柱部14としての底面部19の一部が切り欠かれることで収容溝部15aが形成されている。なお、
図5(b)に示すとおり、本実施形態の収容溝部15aは底面部19に2つ形成され、これにより一対の収容溝部15aを構成している。図示されるとおり、一対の収容溝部15aは嵌合用円柱部12を挟んでX方向に並ぶように対向配置されているが、これら収容溝部15aは必ずしも正対する必要はない。
【0044】
同様に
図5(a)及び(b)から明らかなとおり、弧状部43p、qの当接面43aと一対の係合リブ13p、qの側面とは、カバー装着時にほぼ隙間が形成されずに密接するように構成されている。また、裾柱部14pの側面14a及び裾柱部14qの側面14bと、それぞれ対向する突起部44の側面44a、44bとは、カバー装着時に若干の間隙を有して対向するように配置されている。
【0045】
しかしながら本発明はこの例に限定されない。すなわち、後述する第1の折り取り力f1や第2の折り取り力f2が適切に作用する限りにおいて、例えばカバー装着時に弧状部43p、qの当接面43aと一対の係合リブ13p、qの側面とが所定の間隙を有していてもよいし、裾柱部14p、qの側面14aと突起部44の側面とが密接するように構成されていてもよい。
【0046】
また本実施形態では、
図5(b)において、一対の突起部44の外幅w2(±X方向における端部間の長さ)は、裾柱部14の外形w1よりも大きくなるように設定されている。しかしながら本発明はこの例に限定されず、w2=w1であってもよいし、w2<w1となるように構成されていてもよい。いずれにしても本実施形態ではリシールを抑制するなどの観点から、上記したw2またはw1が筒部10の内周面10cの内径よりも小さければよい。
また本実施形態では、第1ねじり機構FTMにおいて一対の係合リブ13が並ぶ方向(Y方向)と、第2ねじり機構STMにおいて一対の突起部44が並ぶ方向(X方向)は、互いに直交する(十字状である)ことが望ましい。
【0047】
<第1ねじり機構FTM>
次に
図4及び5を参照して、本実施形態における第1ねじり機構FTMについて詳述する。第1ねじり機構FTMは、閉塞体11における一対の係合リブ13p、qと、折り取り用プラグ41における一対の弧状部43p、qとで構成されている。
すなわち、
図4におけるA-A断面で示す箇所が本実施形態の第1ねじり機構FTMに相当し、その詳細な構造は
図5(a)で示されている。
【0048】
同図に示されるとおり、本実施形態では、閉塞体11における上端から底面部19付近までの高さ方向(Z方向)における主要部位において第1ねじり機構FTMが設けられている。一方で、後述するとおり、高さ方向(Z方向)に関して弱化部WPと第1ねじり機構FTMの間に第2ねじり機構STMが配置される。換言すれば、第1ねじり機構FTMのZ方向長さは、第2ねじり機構STMのZ方向長さよりも大きくなるよう設定されている。
【0049】
これにより弱化部WPから相対的に離間している第1ねじり機構FTMからも弱化部WPへ適切な折り取り力を作用させることが可能となっている。
すなわちカバー部材40を開封方向(Z軸周り、θz方向とも称する)にねじると、弧状部43p、qの当接面43aと一対の係合リブ13p、qとが係合することで第1の折り取り力f1(
図5中の点線矢印を参照)を作用させることが可能となる。
【0050】
<第2ねじり機構STM>
次に
図4及び5を参照して、本実施形態における第2ねじり機構STMについて詳述する。第2ねじり機構FTMは、閉塞体11における下側(Z方向の下方)に設けられた裾柱部14p、qと、折り取り用プラグ41の頂面(Z方向の下端)に設けられた一対の突起部44p、qとを含んで構成されている。
【0051】
すなわち、
図4におけるB-B断面で示す箇所が本実施形態の第2ねじり機構STMに相当し、その詳細な構造は
図5(b)で示されている。
本実施形態においては、閉塞体11及び折り取り用プラグ41は、上述した第1ねじり機構FTMよりも軸方向(Z方向)の下方で且つ弱化部WPよりも軸方向の上方に第2の折り取り力f2を作用させる第2ねじり機構を有するように構成されている。
【0052】
より具体的には、
図5(b)に示すとおり、第2ねじり機構STMは、一対の突起部44p、qと、収容溝部15aと、を含んで構成されている。
この突起部44は、弧状部43の下端(Z方向の下方端)から上記した軸方向の下方に突出するように設けられている。また、収容溝部15aは、閉塞体11の下部に位置する一対の裾柱部14p、qの側面14a、14b同士が対向することで形成されるとともに、上記した突起部44を収容してこの突起部44の側面44a、44bが折り取り時にそれぞれ当接可能なように形成されている。
【0053】
また、
図5(a)及び(b)を比較参照することで理解されるとおり、前記した軸方向と直交する周方向(θz方向)に関して、第1ねじり機構FTMと第2ねじり機構STMは、互いに異なる位置で折り取り用プラグ41が閉塞体11に対して当接するように構成されている。すなわち、
図5(a)においては、一対の係合リブ13p、qの側面と当接面43aとが、Y方向に並ぶようにX軸を挟んで配置されている。
【0054】
一方で
図5(b)においては、突起部44の側面44a、44bと裾柱部14の側面14a、14bとが、X方向に並ぶようにY軸を挟んで配置されている。換言すれば、一対の係合リブ13p、qがXY平面において並ぶ方向(
図5(a)におけるY方向)と、一対の突起部44p、qがXY平面において並ぶ方向(
図5(b)におけるX方向)は、互いに直交していると言える。
これにより、後述のとおり折り取り時に摘み部46を摘まんでカバー部材40を時計回り及び反時計回りのいずれの方向で捩じったとしても、第1ねじり機構FTMと第2ねじり機構STMが軸周りにおいて互いに異なる位置で作用することとなる。
【0055】
このように本実施形態では、弱化部WPを介して閉塞体11を折り取る際に、Z方向における異なる複数の位置で折り取り力が作用する。そしてかような作用効果を得るため、具体的に本実施形態においては、裾柱部14と突起部44とが対向する互いの側面は、係合リブ13と弧状部43とが対向する互いの側面に対して、直行する方向または斜めに交差する方向に延在するように構成されている。
なお本実施形態ではZ方向において異なる2箇所で折り取り力が作用する例を示したが、この例に限定されず3箇所以上の位置で折り取り力を作用させてもよい。このうち少なくとも1箇所は弱化部WPの近傍の位置/近接した位置に配置されることが望ましい。
さらに本実施形態では、
図4及び5から容易に理解されるとおり、弱化部WPに対して近接した位置で上記した折り取り力がそれぞれ作用することになる。
【0056】
ここで、容器の内容物を利用する際には、まずカバー部材40の摘み部46を摘まんで開封方向(θz方向)に回転させる。上述のとおり、この開封方向は、時計回りでもよいし、反時計回りであってもよい。
すると
図6及び
図7に示されるとおり、カバー部材40による回転によって折り取り時に作用する力が効率的に弱化部WPに伝達されることになり、閉塞体11が破断部WP´を境界にして筒部10から離脱可能となる。これにより、本実施形態においては、閉塞体11が意図せず捩れてしまうことなどが防止され、折り取り時に弱化部WPが破断不能となってしまうことを回避することができる。
【0057】
すなわち
図6に示すとおり、折り取り前のカバー部材40の内部には閉塞体11は筒部10内で弱化部WPを介して接続されていたが、折り取り後の折り取り前のカバー部材40の内部には破断部WP´を有する閉塞体11が残留することになる。
一方で
図7に示すとおり、折り取り前のスパウト30における筒部10の内部には閉塞体11が弱化部WPを介して接続されていたが、折り取り後でカバー部材40を離脱させた後は破断部WP´だけが残留して閉塞体11は除去され開孔が形成された状態となる。
【0058】
これにより、容器内に貯蔵された内容物は流路FPを介して筒部10の先端から注出することが可能となる。
すなわち
図8に示すとおり、例えば容器をRTH製剤として利用する場合には、ISO80369-3に準拠した患者側のチューブTが筒部10の先端に係合される。このとき筒部10の上端部には螺状突起17が形成されており、当該螺状突起17がチューブTの雌ネジTsと螺合される。
【0059】
これにより、チューブTのオスコネクタ部Taと筒部10上端側の内周面とが密着し、スパウト30の流路FPとチューブTの流路Tfとが連通して容器内の内容物を漏れなく患者側へ注出することが可能となっている。
なお本実施形態では、
図8に示すように、チューブTのオスコネクタ部Taの下端よりも下方側に径小部10dが形成されているため、弱化部WPの破断後に筒部10の内周面側に残存する破断部WP´の残存部(バリ)が、オスコネクタ部Taと接触するおそれがなく、オスコネクタ部Taの挿入を阻害することを回避できる。これにより、筒部10上端側の内周面10cとオスコネクタ部Taの外周面とを良好に密着させることができ、更なるシール性の向上を図ることができる。
以上説明した本実施形態のカバー部材付きスパウト100によれば、容器に保存された内容物の衛生状態を維持しつつ、第1ねじり機構FTM及び第2ねじり機構STMを用いた最適な開封性と、閉塞体11及び折り取りプラグ41用を用いた組み立ての容易性とを高い次元で両立させることが可能となっている。
【0060】
[第2実施形態]
<カバー部材付きスパウト200>
図9は、第2実施形態におけるカバー部材付きスパウト200をYZ平面で切った断面を示す模式図である。なお、本実施形態では、上記した第1実施形態と機能が同じ構成要素には同じ番号を付して適宜その説明は省略する。
【0061】
本実施形態のカバー部材付きスパウト200は、
図10に詳細な構造を示すとおり、上記したカバー部材付きスパウト100に比して、第1ねじり機構FTMは同様であるが第2ねじり機構STMの構造が主として異なっている。
すなわち、
図10(b)に示すとおり、第2ねじり機構STMを構成する一対の裾柱部14p、qのうち紙面上側(+Y方向)に位置する裾柱部14pは、嵌合用円柱部12から径方向外側に向かうにつれて拡大する扇形状となるように両側の側面14aがX軸およびY軸と交差する方向に延在するように配置されている。また同図から明らかなとおり、裾柱部14pは、両側の側面14aの端部から弧状となるように外側側面を有して構成されている。
一方で上記した裾柱部14pの両側における側面14aとそれぞれ対向するように、突起部44pの側面44aと突起部44qの側面44aは、それぞれX軸およびY軸と交差する方向に上記した側面14aと平行して延在するように各々配置されている。
【0062】
同様に、一対の裾柱部14p、qのうち紙面下側(-Y方向)に位置する裾柱部14qについても、-Y方向に向かうにつれて拡大する扇形状となるように両側の側面14bがX軸およびY軸と交差する方向に延在するように配置されている。
一方で突起部44pの側面44bと突起部44qの側面44bは、それぞれX軸およびY軸と交差する方向に裾柱部14qの側面14bと平行して延在するように各々配置されている。
さらに同図から明らかなとおり、突起部44pは、側面44aと側面44bの端部同士が接続されるように弧状の側面を有して構成されている(突起部44qも同様)。
【0063】
本実施形態においても、周方向(θz方向)に関して、第1ねじり機構FTMと第2ねじり機構STMは、時計回りおよび反時計回りのいずれで開封するとしても、互いに異なる位置で作用して折り取り用プラグ41が閉塞体11に対して当接するように構成されている。
このように本実施形態では、嵌合用円柱部12を中心としてX字状となるように、裾柱部14p及び14qの両側における側面14a及び14bと、突起部44p及び44qの側面44a及び44bとが、それぞれ対向して配置されるように構成されている。
【0064】
図10(b)に示すように、紙面右側に位置する収容溝部15bは、この紙面下側に位置する裾柱部14qの側面14bと、紙面上側に位置する裾柱部14pの側面14aとが対向することで形成されている。そしてこの収容溝部15b内に、当該収容溝部15bの形状に合わせた突起部44が配置されることになる。
なお、同図において紙面左側に位置する収容溝部15bの形態については、上記と同様であるのでその説明は省略する。
以上の構成により、一対の収容溝部15b(突起部44についても同様)は、係合リブ13に対して対称となるように配置される。
【0065】
なお
図10及び
図11から明らかなとおり、本実施形態における突起部44の下端面44cと収容溝部15bの下端面15b
1との間にはクリアランスCが設けられている。かようなクリアランスCは、カバー部材40をスパウト30に装着する際あるいはカバー部材付きスパウト200が落下して衝撃を受けた際などに、弱化部WPに意図しない余計な力がカバー部材40から伝達されないようにするために設けられる。
また、
図11に示すとおり、折り取り時における裾柱部の側面14と突起部の側面44とが当接する面の軸方向長さL
4は、本実施形態では嵌合用円柱部12の長さL
3(底面部19の上面から嵌合用円柱部12の上端までの長さ)の30%~35%程度となっている。しかしながら本発明はこの態様に限られず、L
4がL
3の10~50%程度の範囲内で設定されていてもよい。
【0066】
次に
図11を用いて、本実施形態における閉塞体11と折り取り用プラグ41との嵌合関係について説明する。なお
図11は、
図9における破線で囲んだα部を拡大した図となっている。
すなわち同図に示すとおり、本実施形態のカバー部材付きスパウト200は、閉塞体11に形成された第1アンダーカット部12aと、この第1アンダーカット部12aに対応するように折り取り用プラグ41に形成された第2アンダーカット部42aを有することが主とした特徴となっている。
【0067】
第1アンダーカット部12aは、
図11から理解されるとおり、折り取り後に閉塞体11を円筒状カバー部材40の内側に留置するために、例えば嵌合用円柱部12において径方向外方に突出するように形成されている。なお第1アンダーカット部12aの設置高さについては、後述する第2アンダーカット部42aが乗り越え可能であれば特に制限はないが、カバー装着時に嵌合用円柱部12が被嵌合窪部42と対向する位置であることが必要である。
【0068】
一方で第2アンダーカット部42aは、同図から理解されるとおり、カバー部材40が筒部10に装着されるときに第1アンダーカット部12aを乗り越え可能なように、例えば被嵌合窪部42において径方向内方に突出するように形成されている。
したがってカバー部材40が筒部10に装着された後は、これら第1アンダーカット部12aと第2アンダーカット部42aが干渉することで被嵌合窪部42内に閉塞体11が残留しやすくなる。これにより、上記のとおり開封時に弱化部WPが破断した後は、より効果的にカバー部材40とともに閉塞体11が筒部10から離脱することが可能となる。
【0069】
以上説明した第2実施形態のカバー部材付きスパウト200においても、上記第1実施形態と同様に、容器に保存された内容物の衛生状態を維持しつつ最適な開封性と組み立ての容易性とを高い次元で両立させることが可能となっている。さらに本実施形態では、第1アンダーカット部12aと第2アンダーカット部42aが協働することで、開封後で閉塞体11をカバー部材40内に留まりやすくして筒部10内に閉塞体11が残留してしまうことがより確実に回避されることになる。
【0070】
[第3実施形態]
<カバー部材付きスパウト300>
図12は、第3実施形態におけるカバー部材付きスパウト300を、
図5に対応してXY平面で切った断面をそれぞれ示す模式図である。
上記と同様に、本実施形態では、既述した第1実施形態及び第2実施形態と機能が同じ構成要素については同じ番号を付してその説明は適宜省略する。
【0071】
図12に示すとおり、本実施形態におけるカバー部材付きスパウト300は、以下に詳述する点を除いて第1実施形態におけるカバー部材付きスパウト100と等しく構成されている。
すなわち本実施形態では、折り取り用プラグ41の突起部44における幅L
1(
図12のY方向長さ)が、カバー部材付きスパウト100の突起部44における幅よりも大きくなるように構成されている。したがって本実施形態では、閉塞体11に設けられた収容溝部15aの大きさも、上記突起部44の幅L
1に対応して拡大されている。
【0072】
なお本実施形態における突起部44の幅L1は、例えば閉塞体11の裾柱部14における外径L2に対して以下の関係を有していてもよい。
(L2/4)<L1<(L2/1.5)
より好ましくは(L2/3)<L1<(L2/2)
なお上記関係は一例であって、弱化部WPを破断するために必要とする折り取り力を発揮させるため、突起部44の幅L1は適宜調整可能である。
【0073】
以上説明した第3実施形態のカバー部材付きスパウト300においても、上記各実施形態と同様に、容器に保存された内容物の衛生状態を維持しつつ最適な開封性と組み立ての容易性とを高い次元で両立させることが可能となっている。
【0074】
なお上記した各実施形態は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
例えば
図2及び5のとおり上記した実施形態では、嵌合用円柱部12の頂点(+Z方向の端部)と係合リブ13の頂点(+Z方向の端部)とは、ほぼZ方向における高さ(底面部19からの高さ)が等しくなっていた。しかしながら、例えば嵌合用円柱部12の頂点を係合リブ13の頂点よりも高くしてもよい。
【0075】
このとき、嵌合用円柱部12の頂点と対向するカバー部材40の頂部40c内に筒状凹部を設けることで、当該筒状凹部内に嵌合用円柱部12の頂点を収容可能としてもよい。これにより、カバー部材40を筒部10に装着する際には、嵌合用円柱部12の頂点が基準となって筒状凹部内で安定して配置されるため、カバー部材40が更にガタツキなく筒部10に装着されることが可能となる。
【0076】
また、上記した各実施形態および変形例では、スパウト30とカバー部材40の材質を同一としてポリプロピレン樹脂を用いたが、これらの材質を異ならせてもよい。例えばカバー部材40の材質をスパウト30よりも硬い材料(例えばスパウト30がポリエチレン樹脂であればカバー部材40をポリプロピレン樹脂とする等)としてもよい。
【0077】
また、上記実施形態および変形例では、規格で口径が小さく規定されたISO80369-3に対応する注出ポートに最適であるが、この規格に必ずしも適合した注出ポートでなくともよく、通常のスパウトなど種々の注出ポートとしても適用が可能である。
また、ガタつき抑制リブ18は、筒部10の外周面10b又はカバー部材40の内周面40bの全周(Z軸周り)にわたって形成してもよいし、断続した複数個所(2つなど)のように全周の少なくとも一部で形成される形態であってもよい。
【0078】
また、開封の容易性などの観点から、折り取り用プラグ41と閉塞体11(嵌合用円柱部12、一対の係合リブ13および裾柱部14)とは、互いの機械的強度がほぼ等しいことが好ましい。しかしながら本発明はこの形態に限られず、閉塞体11又は折り取り用プラグ41が意図せず捩れたりして弱化部WPの破断を阻害しない範囲において、互いの材質を異ならせてもよい。
また、上記各実施形態や変形例では、スパウト40とカバー部材40とは分離可能な態様で説明したが、この形態に限られず、これらが折り取り時に容易に破断可能な破断部などを介して初期は一体として構成されていてもよい。
【0079】
上記した実施形態や変形例は一例であって、本願の趣旨を逸脱しない限りにおいて、各実施形態および変形例を適宜組み合わせて新たなカバー部材付きスパウトを構成してもよい。また、上記した実施形態は各図に示されていない任意の部材を備えていてもよい。また、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、各図に示された部材を変更し又は省略してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明の利用分野は、制限はなく、液状物を取り扱う任意の分野、例えば、医療、食品、化学等において広範囲に利用することができる。中でも、医療分野、特に注出ポートを用いた経腸栄養において好ましく利用できる。
【符号の説明】
【0081】
10:筒部
20:溶着部
30:スパウト
40:カバー部材
WP:弱化部
FTM:第1ねじり機構
STM:第2ねじり機構
100、200、300:カバー部材付きスパウト