(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/514 20060101AFI20221206BHJP
【FI】
A61F13/514 321
A61F13/514 310
(21)【出願番号】P 2018209184
(22)【出願日】2018-11-06
【審査請求日】2021-09-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 岳志
(72)【発明者】
【氏名】幸田 拓也
【審査官】冨江 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-143696(JP,A)
【文献】特開2015-112319(JP,A)
【文献】特開2008-212278(JP,A)
【文献】特開2013-192848(JP,A)
【文献】特開2014-139357(JP,A)
【文献】特開昭61-187855(JP,A)
【文献】特開2001-198997(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15-13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
肌対向面側に配された表面シートと、非肌対向面側に配された裏面シートと、これらシートの間に配された吸収体とを備えた吸収性物品であって、
前記裏面シートは、前記吸収体の非肌対向面側に配され且つ液難透過性又は液不透過性である内層シートと、該内層シートの非肌対向面側に配され且つ繊維材料からなる外層シートとを備え、
前記外層シートは、その一方の面に、構成繊維が起立し且つ自由端部を有する複数の起毛繊維を有し、該外層シートの他方の面では構成繊維が起毛されておらず、
前記外層シート
が有する前記起毛繊維
における自由端部域のみと、前記内層シートとが、接着剤によって接合されている、吸収性物品。
【請求項2】
前記接着剤は、前記外層シートと前記内層シートとの間に、シート面方向に間欠的に配されている、請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記外層シートは、非肌対向面側に突出する複数の凸部を有している、請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記接着剤は帯状に塗工されている、請求項1ないし3のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記起毛繊維は捲縮している、請求項1ないし4のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
使い捨ておむつ等の吸収性物品は、風合いや柔軟性の向上を目的として、吸収性物品の構成材料として、不織布の構成繊維が起毛した起毛不織布が用いられている。例えば特許文献1には、吸収性物品の肌対向面側におけるクッション性の向上を目的として、表面シートに起毛繊維を備えた液透過性の不織布が用いられた吸収性物品が開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、不織布の構成繊維が起毛された起毛領域と、該構成繊維が起毛されていない非起毛領域とが不織布の一方の面に形成された繊維積層体が記載されている。この繊維積層体は、起毛領域を有する面が該積層体の外方を向くように形成されていることが同文献に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-27686号公報
【文献】特開2016-64566号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の吸収性物品は、その非肌対向面側における肌触り及び柔軟性の向上に関して改善の余地があった。また特許文献2に記載の繊維積層体を吸収性物品に用いた場合、起毛された繊維が吸収性物品の外面に存在していることに起因して、衣類との擦れ等により起毛繊維が脱落して衣類に付着したり、不織布特有の肌触りが発現できなくなったりして、見栄え及び風合いの点で改善の余地があった。
【0006】
したがって、本発明の課題は、柔軟性、見栄え及び風合いが改善された吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、肌対向面側に配された表面シートと、非肌対向面側に配された裏面シートと、これらシートの間に配された吸収体とを備えた吸収性物品であって、
前記裏面シートは、前記吸収体の非肌対向面側に配され且つ液難透過性又は液不透過性である内層シートと、該内層シートの非肌対向面側に配され且つ繊維材料からなる外層シートとを備え、
前記外層シートは、その一方の面に、構成繊維が起立し且つ自由端部を有する複数の起毛繊維を有し、該外層シートの他方の面では構成繊維が起毛されておらず、
前記外層シートにおける前記起毛繊維と、前記内層シートとが、接着剤によって接合されている、吸収性物品を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、柔軟性が高く、見栄え及び風合いに優れた吸収性物品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、吸収性物品の一実施形態を示す断面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す吸収性物品の裏面シートの拡大図である。
【
図3】
図3(a)ないし(c)は、外層シートにおける起毛繊維の本数の測定方法を示した模式図である。
【
図4】
図4(a)及び(b)は、
図1に示す吸収性物品の裏面シートの別の実施形態の拡大図であり、
図4(c)は接着剤及び起毛繊維の接合状態を示す拡大図である。
【
図5】
図5は、裏面シートを製造するための好適な製造装置を示す模式図である。
【
図6】
図6は、裏面シートを製造するための好適な製造装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。本発明の吸収性物品としては、例えば、使い捨ておむつ、生理用ナプキン、パンティライナー、失禁パッド、尿とりパッド等が挙げられ、これらに限定されない。
【0011】
本発明の吸収性物品は一般に、着用者の腹側から股間部を介して背側に延びる方向に相当する長手方向とこれに直交する幅方向とを有する縦長の形状をしている。そして吸収性物品は、着用者の股間部に配される股下部並びにその前後に延在する腹側部及び背側部を有する。股下部は、吸収性物品の着用時に着用者の排泄部に対向配置される排泄部対向部を有しており、該排泄部対向部は通常、吸収性物品の長手方向の中央部又はその近傍に位置している。
【0012】
本明細書において、「肌対向面」は、吸収性物品又はその構成部材(例えば吸収性本体)に着目したときに、吸収性物品の着用時に着用者の肌に向けられる面であり、「非肌対向面」は、吸収性物品の着用時に着用者の肌とは反対側に向けられる面である。つまり、肌対向面は、着用者の肌に相対的に近い側の面であり、非肌対向面は、着用者の肌から相対的に遠い側の面である。「着用時」は、吸収性物品の適正な着用位置が維持された状態を指す。
【0013】
図1に示すように、吸収性物品1は、着用者の肌対向面側に配された表面シート2と、非肌対向面側に配された裏面シート3と、両シート間に介在して配された吸収体4とを備える。表面シート2としては、液透過性を有するシート、例えば不織布や穿孔フィルムなどを用いることができる。表面シート2は、その肌対向面側が凹凸形状になっていてもよい。例えば表面シートの肌対向面側に、散点状に複数の凸部を形成することができる。あるいは、表面シートの肌対向面側に、一方向に延びる畝部と溝部とを交互に形成することができる。そのような目的のために、2枚以上の不織布を用いて表面シートを形成することもできる。
【0014】
吸収体4は、吸収性コア41を備えている。吸収性コア41は例えばパルプをはじめとするセルロース等の親水性繊維の積繊体、該親水性繊維と吸収性ポリマーとの混合積繊体、吸収性ポリマーの堆積体、2枚の吸収性シート間に吸収性ポリマーが担持された積層構造体などから構成される。吸収性コア41は、少なくともその肌対向面が液透過性のコアラップシート42で覆われていてもよく、
図1に示すように、肌対向面及び非肌対向面を含む表面の全域がコアラップシート42で覆われていてもよい。コアラップシート42としては、例えば親水性繊維からなる薄葉紙や、液透過性を有する不織布などを用いることができる。
【0015】
上述の表面シート2、裏面シート3及び吸収体4に加え、吸収性物品には、該吸収性物品の具体的な用途に応じ、肌対向面側の長手方向に沿う両側部に、長手方向に沿って延びる防漏カフが配される場合がある。防漏カフは一般に、基端部と自由端とを備えている。防漏カフは、吸収性物品の肌対向面側に基端部を有し、肌対向面側から起立している。防漏カフは、液抵抗性ないし撥水性で且つ通気性の素材から構成されている。防漏カフの自由端又はその近傍には、糸ゴム等からなる弾性部材を伸長状態で配してもよい。吸収性物品の着用状態においてこの弾性部材が収縮することによって、防漏カフが着用者の身体に向けて起立するようになり、表面シート上に排泄された液が、表面シート上を伝い吸収性物品の幅方向外方へ漏れ出すことが効果的に阻止される。
【0016】
吸収性物品は更に、非肌対向面の表面に粘着剤層を有していてもよい。粘着剤層は、吸収性物品の着用状態において、該吸収性物品を、下着や別の吸収性物品に固定するために用いられる。
【0017】
本発明の吸収性物品に配されている裏面シート3について詳細に説明すると、
図2に示すように、裏面シート3は、該裏面シート3の肌対向面側を構成する内層シート31と、該裏面シート3の非肌対向面側を構成する外層シート32とから構成されている。内層シート31と外層シート32とは、両シート31,32間に塗工されたホットメルト接着剤等の接着剤35によって接合されており、
図2における接着剤35は内層シート31の非肌対向面の全面に塗工されている。
【0018】
図2に示す内層シート31は、吸収体4の非肌対向面側に配されており、吸収体4と、外層シート32との間に配されている。内層シート31は、液難透過性又は液不透過性のシートであり、例えば上述した液難透過性又は液不透過性のフィルムや、スパンボンド・メルトブローン・スパンボンド積層不織布などを用いることができる。液難透過性又は液不透過性のフィルムに、複数の微細孔を設け、該フィルムに水蒸気透過性を付与してもよい。
【0019】
図2に示す外層シート32は、内層シート31の非肌対向面側に配されており、吸収性物品1の外面を構成している。外層シート32は、スパンボンド不織布やメルトブローン不織布等の一枚の不織布、又はこれらの積層不織布等といった繊維材料から構成されている。同図に示すように、外層シート32はその一方の面に、該面から構成繊維が起立した複数の起毛繊維33を有しており、他方の面では構成繊維が起毛されていない。起毛繊維33は、その一端が外層シート32に位置する固定端と、他端が自由端である自由端部33aとから構成されている。このような構成を有する外層シート32は、起毛繊維33を有する面と内層シート31とが対向するように接合されている。つまり、裏面シート3は、外層シート32における起毛繊維と、内層シート31とが接着剤によって接合されて構成されているものである。
【0020】
「構成繊維が起毛されていない」とは、外層シート32の他方の面、すなわち吸収性物品1の外面に、起毛繊維33を意図的に存在させることを含まないことを意味し、起毛繊維33を有する外層シート32を製造する際に、外層シート32の他方の面に起毛した構成繊維が不可避的に存在することは許容される。「起毛繊維を意図的に存在させる」とは、後述する測定方法において、測定面における起毛繊維が5本/cm以上であることをいい、測定面における起毛繊維が5本/cm未満である場合は「構成繊維が起毛されていない」とする。
【0021】
以上の構成を有する本発明の吸収性物品によれば、吸収性物品の外面を構成する外層シート32が起毛繊維33を有しているとともに、外層シート32における起毛繊維33は、内層シート31と対向する面側に配されて接合されているので、外層シート32と内層シート31とがそれぞれ独立して高い自由度をもって可動するので、外力に起因した不織布の変形量を大きくしたり、外層シート32を構成する繊維材料に起因した良好な肌触りを発現したりすることができる。その結果、吸収性物品の柔軟性及び風合いに優れ、見栄えも良好となる。これに加えて、起毛繊維33は吸収性物品の外面に実質的に存在していないので、吸収性物品と衣類との擦れに起因した起毛繊維33の脱落を防ぐことができ、起毛繊維の脱落に伴う柔軟性及び風合いの低下や、吸収性物品の外観すなわち見栄えの悪化を防ぐことができる。
【0022】
外層シート32の一方の面に存在する起毛繊維33は、その本数が、5本/cm以上であることが好ましく、8本/cm以上であることが更に好ましく、またその上限は100本/cm以下であることが好ましく、40本/cm以下であることが好ましい。起毛繊維33の本数がこのような範囲となっていることによって、起毛繊維の自由度を高くすることができ、その結果、より優れた柔軟性及び風合いとなり、また見栄えにも優れた吸収性物品となる。
【0023】
起毛繊維33の本数は、以下の測定方法によって測定することができる。サンプリングおよび測定環境は22℃、65%RH環境下にて行う。
まず、測定する不織布から、鋭利な刃物(かみそり)で、20cm×20cmの測定片を切り出し、
図3(a)に示すように、測定片を起毛側が外向きになるように山折り(
図3(a)の矢印の方向)して測定サンプル104を形成する。次に、この測定サンプル104をA4サイズの黒い台紙の上に載せ、
図3(b)に示すように、さらにその上に、縦1cm×横1cmの窓107をあけたA4サイズの黒い台紙を重ねる。このとき、
図3(b)に示すように、測定サンプル104の折り目105が、上側の黒い台紙の窓107から見えるように配置する。両台紙には、富士共和製紙株式会社の「ケンラン(黒)連量265g」を用いた。その後、上側の台紙の窓107の両側それぞれから、折り目105に沿って外方に5cmはなれた位置に、50gのおもりをそれぞれ載せ、測定サンプル104が完全に折りたたまれた状態を作る。
【0024】
次に、
図3(c)に示すように、マイクロスコープ(KEYENCE社製VHX-900)を用いて、30倍の倍率で、台紙の窓107内を観察し、測定サンプル104の折り目105から0.2mm上方に平行移動した位置に形成される仮想線108よりも上方に起毛している起毛した繊維の本数を計測する。このとき測定する不織布において、起毛加工の施された部位の幅が1cm以上の場合は、起毛加工の施された部位を含むように、20cm×20cmの測定片を3片切り出して計測する。また、起毛加工の施された部位の幅が1cm以下の場合は、無作為に20cm×20cmの測定片を3片切り出して計測する。以上の操作を、測定する不織布に対して3枚分計測し、計9箇所の平均をとり、起毛繊維の本数とする。
【0025】
上述のとおり、接着剤35は、内層シート31と外層シート32との間に配されており、これによって両シート31,32は接合されている。
図4(a)に示すように、接着剤35は、外層シート32と内層シート31との間に、これらのシート面方向に間欠的に配されるように塗工されていることが好ましく、吸収性物品の長手方向(紙面中奥行き方向)に帯状に複数条塗工されていることが更に好ましい。接着剤35による接合がこのような構成となっていることによって、外層シート32と接着剤35との接合点を減らして、外層シート32の自由度を更に高めることができ、その結果、柔軟性、見栄え及び風合いに一層優れた吸収性物品となる。
【0026】
柔軟性、見栄え及び風合いを優れたものとする観点から、接着剤35が間欠的に塗工されている場合、隣り合う接着剤35どうしの間隔は、0.3mm以上であることが好ましく、0.5mm以上であることが更に好ましく、10mm以下であることが好ましく、5mm以下であることが更に好ましい。
【0027】
柔軟性、見栄え及び風合いの向上と、接合強度の向上とを両立する観点から、接着剤35の坪量は、0.5g/m2以上であることが好ましく、0.8g/m2以上であることが更に好ましく、5.0g/m2以下であることが好ましく、3.0g/m2以下であることが更に好ましい。接着剤の坪量は、例えば内層シート31の接着剤の塗工領域を含む一定の領域を切り取ってサンプルとし、接着剤の塗布量(g)からサンプルの平面視における面積(m2)を除することによって求めることができる。
【0028】
図4(b)に示すように、外層シート32は、非肌対向面側に突出する複数の凸部37を有していることが好ましい。同図に示す外層シート32は、複数の凸部37と、該凸部37間に位置する凹部38とが交互に形成されている。凸部37は、内層シート31から離間するように突出して形成されており、凸部37における外層シート32と内層シート31とで画成された領域は起毛繊維33が充填されており、嵩高の領域となっている。一方、内層シート31の吸収体対向面はほぼ平坦である。外層シート32は、凹部38が形成されている位置に接着剤35が間欠的に塗工されており、凹部38に位置する起毛繊維33と内層シート31とが接着剤35によって接合されている。すなわち、接着剤35の塗工位置に対応して、外層シート32の凹部38が形成されている。このような構成を備えていることによって、凸部37と凹部38とで構成された嵩高の領域を複数形成することができ、その結果、吸収性物品の柔軟性、見栄え及び風合いが一層優れたものとなる。特に、接着剤35が吸収性物品の長手方向に帯状に塗工されていることによって、凸部37及び凹部38が接着剤35の延びる方向に連続した畝溝形状となるので、吸収性物品の幅方向(同図中CD方向)での肌触りが一層良好なものとなり、風合いがより一層向上する。
【0029】
外層シート32に複数の凸部37を形成するためには、例えば、一方の面に存在する起毛繊維の本数を多くした外層シート32と、内層シート31との間に、接着剤35を間欠的に配置して、外層シート32と内層シート31とを接合することによって行うことができる。このときの起毛繊維33の本数は、10本/cm以上であることが好ましく、15本/cm以上であることが更に好ましく、またその上限は100本/cm以下であることが好ましく、60本/cm以下であることが好ましい。
【0030】
外層シート32における起毛繊維33は、起毛繊維33の自由端部33aが存在する領域である自由端部域33Rのみが、接着剤35を介して内層シート31と接合されていることが好ましい。詳細には、
図4(c)に示すように、外層シート32は、その一方の面に形成されている起毛繊維33の自由端部域33Rのみが内層シートと接合され、且つ自由端部域33R以外の領域である中間領域33Mは接合されていない。したがって、外層シート32と内層シート31とは、これらの面どうしが隙間なく密着しているものではなく、起毛繊維33によって形成された嵩高の領域が両シート31,32間に形成されている。このような構成を有していることによって、吸収性物品の外面を形成する外層シートが外力によって容易に変形でき、その結果、柔軟性が高く、見栄え及び風合いが一層優れた吸収性物品となる。
【0031】
外層シート32の一方の面に有する起毛繊維33は、捲縮していることが好ましい。このような構成を有していることによって、起毛繊維33の捲縮に起因した弾性力を発現させることができ、その結果、柔軟性がより一層高いものとなる。
【0032】
捲縮した繊維とは、その捲縮形態が、螺旋状、ジグザグ状、U字状又はこれらの組み合わせの形態を有している繊維である。起毛繊維の捲縮の度合いは、繊維の捲縮数として、10以上が好ましく、20以上が更に好ましく、また50以下が好ましく、40以下が更に好ましい。繊維の捲縮数は、JIS L 1015に記載の方法に準じて測定することができる。外層シート32における任意の10箇所から取り出した起毛繊維33について行い、これらの起毛繊維33の捲縮数の平均値を起毛繊維の捲縮の度合いとする。
【0033】
外層シート32を構成する繊維としては、例えば、熱可塑性樹脂からなる繊維が好ましく用いられる。熱可塑性樹脂としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリアミド等が挙げられ、特に、これらの熱可塑性樹脂の組み合わせからなる芯鞘型複合繊維(例えば、ポリエチレンテレフタレート又はポリプロピレンを芯成分とし、ポリエチレンを鞘成分とするもの等)やサイド・バイ・サイド型複合繊維等が挙げられる。
【0034】
以上は本発明の吸収性物品に関する説明であったところ、以下に本発明の吸収性物品に用いられる裏面シートの製造方法の一実施形態を
図5及び
図6を参照しながら説明する。本製造方法に好ましく用いられる製造装置は、シートの構成繊維に部分延伸を行うプレ加工部200と、プレ加工部200の下流側に配され且つ外層シートの一方の面を起毛加工する起毛加工部300とに大別される。以下の説明では、搬送方向をMD方向とし、搬送方向MDに直交する方向をCD方向として説明する。
【0035】
プレ加工部200は、
図5に示すように、互いに噛み合う凸部211と凹部221とが周面に設けられた一対のロール210,220からなるスチールマッチングエンボスローラー230を備えている。
図5に示すように、スチールマッチングエンボスローラー230は、ロール210の周面に設けられた複数個の凸部211とロール220の周面に設けられた複数個の凹部221とが、互いに噛み合うように形成されており、複数個の凸部211は、ロール210の回転軸方向及び周方向にそれぞれ均一に且つ規則的に配されている。一対のロール210,220は、何れか一方の回転軸に駆動手段(図示せず)からの駆動力が伝達されることによって噛み合って回転する。また、プレ加工部200は、例えば
図5に示すように、スチールマッチングエンボスローラー230の上流側及び下流側に、外層シート32の原反である帯状の外層不織布32Sを搬送する搬送ロール250,260を備えている。
【0036】
起毛加工部300は、
図6に示すように、周面に凸部311が設けられた凸ロール310を備え、凸ロール310の上流側及び下流側に、帯状の外層不織布32Sを搬送する搬送ロール320,330を備えている。凸ロール310は、その回転軸に駆動手段(図示せず)からの駆動力が伝達されることによって回転する。プレ加工部200及び起毛加工部300を備える製造装置の詳細は、例えば先に述べた特開2013-27686号公報及び特開2016-64566号公報等に記載されている。
【0037】
プレ加工部200及び起毛加工部300を備える製造装置を用いた外層シート32の起毛加工工程は、以下のとおりである。すなわち、帯状の外層不織布32Sを原反ロール(図示せず)から巻き出して、搬送ロール250,260によって、外層不織布32Sをプレ加工部200におけるスチールマッチングエンボスローラー230の一対のロール210,220間に搬送する。プレ加工部200においては、
図5に示すように、外層不織布32Sを一対のロール210,220間で挟圧し、外層不織布32Sの構成繊維に部分延伸を施し、ダメージを与える。部分延伸を施す際、不織布の構成繊維間で熱融着を起こさないようにする観点から、スチールマッチングエンボスローラー230の一対のロール210,220は、積極的に加熱をしないか、又は外層不織布32Sを構成する繊維の成分のうち最も低い融点を有する成分の融点以下の温度で加工することが好ましい。
【0038】
次に、部分延伸が施された外層不織布32Sを、搬送ロール320,330を用いて、周面に凸部311が設けられた凸ロール310に搬送する。起毛加工部300においては、部分延伸を施された外層不織布32Sを、凸ロール310によって、外層不織布32Sの一方の面を構成する繊維の一部を破断する。この工程を経て、外層不織布32Sの一方の面に、自由端部33aを有する起毛繊維33が形成される。
【0039】
起毛繊維33を効率よく形成する観点から、凸ロール310の回転方向を、外層不織布32Sの搬送方向に対して逆方向に回転させることが好ましく、外層不織布32Sの搬送速度に対し、0.3倍以上10倍以下の速度で凸ロール310を回転させることが好ましい。また周方向(搬送方向に対して順方向)に回転させる場合には1.5倍以上20倍以下の速度で凸ロール310を回転させることが好ましい。ここで、凸ロール310の速度は、凸ロール310の周面での周速度のことを意味する。起毛繊維33の本数を増加させるためには、例えば凸ロール310を外層不織布32Sの搬送方向に対して逆方向に回転させて、凸ロール310の回転速度を外層不織布32Sの搬送速度に対して遅くして行うことができる。
【0040】
同様の観点から、
図6に示すように、凸ロール310より搬送ロール330の位置を高く設定することが好ましい。詳細には、外層不織布32Sが凸ロール310の接触面に、10°以上180°以下の抱き角αで接触していることが好ましく、30°以上120°以下の抱き角αで接触していることが更に好ましい。起毛繊維33の本数を増加させるためには、例えば凸ロール310の抱き角を上述の範囲で大きくすることによって行うことができる。
【0041】
なお、外層シート32に捲縮した起毛繊維33を形成させる場合には、外層不織布32Sをプレ加工部200及び起毛加工部300に供給する前に、外層不織布32Sに対して予め熱処理を施すことによって、構成繊維に捲縮を発現させることができる。繊維を捲縮させる場合における熱処理の温度は、原料となる樹脂の融点等に応じて適宜調整することができる。
【0042】
続いて、押圧部(図示せず)において、起毛繊維33が形成された外層不織布32Sと、内層シート31の原反である内層不織布31Sとを、起毛繊維33が形成されている面が内層不織布31Sと対向するように積層して、不織布どうしを接着剤によって接合して、裏面シート連続体を形成する。詳細には、内層不織布31Sに対して、接着剤35をシート面方向に全面に又は間欠的に塗工し、次いで、起毛繊維33を一方の面に有する外層不織布32Sを、起毛繊維33と内層不織布31Sとが対向するように積層し、然る後に、押圧部で押圧することによって、裏面シート連続体を形成することができる。
【0043】
押圧部における押圧の際には、押圧部におけるプレス圧、接着剤の溶融の度合い、又はこれらの組み合わせを調節することによって、外層シート32と内層シート31との接合度合を調整することができ、その結果、起毛繊維33が、好ましくは起毛繊維33の自由端部域33Rのみが、内層シート31と接合した嵩高の裏面シート3を製造することができる。詳細には、外層不織布32Sと内層不織布31Sとの押圧部分において、該不織布どうしが密着しない程度にプレス圧を調整して接合したり、塗工した接着剤が固化しない程度に接着剤の温度を冷却して接合したり、又はこれらを組み合わせて接合したりすることができる。
【0044】
シートの風合いと接合強度とを両立させる観点から、押圧部におけるプレス圧は、例えば押圧部としてプレスロールを用いた場合、その線圧として、0.5N/m以上であることが好ましく、1.0N/m以上であることが更に好ましく、10.0N/m以下であることが好ましく、8.0N/m以下であることが更に好ましい。プレス圧は、プレスロールどうしの間隔(クリアランス)を変更することによって適宜調整することができる。
【0045】
同様の観点から、シートの押圧時における接着剤の温度は、接着剤の組成にも依存するが、接着剤の軟化点以上が好ましく、軟化点+5℃以上が更に好ましく、また、軟化点+20℃以下が好ましく、軟化点+15℃以下が更に好ましい。このような接着剤の温度範囲とするためには、例えば溶融状態のホットメルト接着剤を内層シート31に塗工し、その状態で一定時間搬送して、接着剤が固化しない程度(接着剤が軟化点未満の温度とならない程度)に冷却することによって調整することができる。また、押圧部の少なくとも一方を接着剤の軟化点以上に加温して、シートの押圧時における接着剤の温度を上述の範囲となるようにしてもよい。このような接着剤の温度範囲とすることで、内層シート31及び外層シート32の面どうしが隙間なく密着せず、起毛繊維33によって形成された嵩高の領域を形成することができる。
【0046】
以上の工程を経て得られた裏面シート連続体は、任意の大きさ及び形状に切り取られて、
図4(a)又は(b)に示す構成を有する部材として、例えば使い捨ておむつ等の吸収性物品における裏面シートに用いられる。裏面シート連続体における内層不織布31S、外層不織布32S及び接着剤35は、裏面シート3における内層シート31、外層シート32及び接着剤35と実質的に同一のものである。本工程によって得られたシートは、例えば外装材やレッグカフ等の吸収性物品における他の構成部材にも用いることができる。
【0047】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されない。
【0048】
上述した本発明の実施形態に関し、更に以下の吸収性物品を開示する。
<1>
肌対向面側に配された表面シートと、非肌対向面側に配された裏面シートと、これらシートの間に配された吸収体とを備えた吸収性物品であって、
前記裏面シートは、前記吸収体の非肌対向面側に配され且つ液難透過性又は液不透過性である内層シートと、該内層シートの非肌対向面側に配され且つ繊維材料からなる外層シートとを備え、
前記外層シートは、その一方の面に、構成繊維が起立し且つ自由端部を有する複数の起毛繊維を有し、該外層シートの他方の面では構成繊維が起毛されておらず、
前記外層シートにおける前記起毛繊維と、前記内層シートとが、接着剤によって接合されている、吸収性物品。
【0049】
<2>
前記接着剤は、前記外層シートと前記内層シートとの間に、シート面方向に間欠的に配されている、前記<1>に記載の吸収性物品。
<3>
隣り合う前記接着剤どうしの間隔が、0.3mm以上10mm以下、好ましくは0.5mm以上5mm以下である、前記<2>に記載の吸収性物品。
<4>
前記接着剤の坪量が、0.5g/m2以上5.0g/m2以下、好ましくは0.8g/m2以上3.0g/m2以下である、前記<1>ないし<3>のいずれか一に記載の吸収性物品。
<5>
前記外層シートは、非肌対向面側に突出する複数の凸部を有している、前記<1>ないし<4>のいずれか一に記載の吸収性物品。
<6>
前記起毛繊維の本数が、10本/cm以上100本/cm以下、好ましくは15本/cm以上60本/cm以下である、前記<5>に記載の吸収性物品。
【0050】
<7>
前記接着剤は帯状に塗工されている、前記<1>ないし<6>のいずれか一に記載の吸収性物品。
<8>
前記起毛繊維は捲縮している、前記<1>ないし<7>のいずれか一に記載の吸収性物品。
<9>
前記捲縮している起毛繊維の捲縮数が10以上50以下、好ましくは20以上40以下である、前記<8>に記載の吸収性物品。
<10>
前記起毛繊維における自由端部域のみが、前記内層シートと接合されている、前記<1>ないし<9>のいずれか一に記載の吸収性物品。
【符号の説明】
【0051】
1 吸収性物品
2 表面シート
3 裏面シート
31 内層シート
32 外層シート
33 起毛繊維
33a 自由端部
33R 自由端部域
35 接着剤
37 凸部
38 凹部
4 吸収体
200 プレ加工部
300 起毛加工部