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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】導電率センサ
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/07 20060101AFI20221206BHJP
   G01N 27/06 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
G01N27/07
G01N27/06 A
【請求項の数】 15
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018209397
(22)【出願日】2018-11-07
(65)【公開番号】P2019109224
(43)【公開日】2019-07-04
【審査請求日】2021-11-05
(31)【優先権主張番号】17207983.2
(32)【優先日】2017-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508223789
【氏名又は名称】スティヒティング・イメック・ネーデルラント
【氏名又は名称原語表記】Stichting IMEC Nederland
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100112911
【弁理士】
【氏名又は名称】中野 晴夫
(72)【発明者】
【氏名】フレヤ・ブロム-フェルヘイデン
(72)【発明者】
【氏名】マルセル・ゼーフェンベルヘン
(72)【発明者】
【氏名】マルテイン・フートブルート
【審査官】清水 靖記
(56)【参考文献】
【文献】実開昭57-101954(JP,U)
【文献】特開2013-210208(JP,A)
【文献】国際公開第2012/148254(WO,A1)
【文献】特開平03-142350(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/00 - G01N 27/10
G01N 27/14 - G01N 27/24
G01R 27/00 - G01R 27/32
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体の導電率計測センサであって、
複数のフィンガー電極(21-N,22-N)を有し、それぞれの電極が前記センサのセル定数(Kcell)を決定する表面積を有する第1電極(21)及び第2電極(22)を備え、
少なくとも一の前記電極(21,22)には、前記フィンガー電極を電極端子に切り替え可能な状態で接続できるようすることで、それぞれの電極の表面積が変更可能であり、それにより前記センサの前記セル定数(Kcell)を変化させるように配置されたスイッチング手段(S1,S2)が備えられている、液体の導電率計測センサ。
【請求項2】
両方の前記電極(21,22)には、スイッチング手段(S1,S2)が備えられ、一又は両方の前記電極の前記表面積は可変である、請求項1に記載の液体の導電率計測センサ。
【請求項3】
前記第1電極(21)及び前記第2電極(22)は、電極の互いに噛み合ったアレイを形成する請求項1又は2に記載の液体の導電率計測センサ。
【請求項4】
前記スイッチング手段(S1,S2)は、一又は両方の電極(21,22)の少なくとも一のフィンガー電極(21-N)が、それぞれの電極の残りのフィンガー電極と並列に切り替え可能な状態で接続できるように配置される、請求項1乃至3のいずれか1に記載の液体の導電率計測センサ。
【請求項5】
前記第1電極(21)及び前記第2電極(22)は、電極の曲がりくねったアレイを形成する、請求項1又は2に記載の液体の導電率計測センサ。
【請求項6】
前記スイッチング手段(S1,S2)は、一又は両方の電極(21,22)の少なくとも一のフィンガー電極(21-N)が、それぞれの電極の残りのフィンガー電極と直列に切り替え可能な状態で接続できるように配置される、請求項5に記載の液体の導電率計測センサ。
【請求項7】
さらに、第3電極(23)及び第4電極(24)を備え、
それぞれ一又は複数のフィンガー電極を有し、前記第3及び第4電極は、電極の互いに噛み合ったアレイを形成するように配置され、前記第1及び第2電極が、前記第3及び第4電極のフィンガー電極の間で曲がりくねって配置される、請求項6に記載の液体の導電率計測センサ。
【請求項8】
前記第3及び第4の電極(23,24)は、電流注入に利用され、前記第3又は第4電極の一方又は両方の少なくとも一のフィンガー電極は、スイッチング手段(S3,S4)を有する、請求項7に記載の液体の導電率計測センサ。
【請求項9】
さらに、前記電極に電位を加え、かつ、前記スイッチング手段を制御する読み出し回路(210)を備える、請求項1乃至8のいずれか1に記載の液体の導電率計測センサ。
【請求項10】
前記読み出し回路が前記スイッチング手段を備える、請求項1乃至9のいずれか1に記載の液体の導電率計測センサ。
【請求項11】
前記スイッチング手段はトランジスタである、請求項1乃至10のいずれか1に記載の液体の導電率計測センサ。
【請求項12】
前記センサは、小型であって、前記電極は、絶縁基板に配置される、請求項1乃至11のいずれか1に記載の液体の導電率計測センサ。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか1に記載の液体の導電率計測センサを備える計測システム。
【請求項14】
請求項1乃至12のいずれか1に記載の液体の導電率計測センサを複数備え、そのうち少なくとも1のセンサは、異なる構成のセンサである、請求項13に記載の計測システム。
【請求項15】
請求項1乃至12のいずれか1に記載の液体の導電率計測センサ、及び/又は、請求項13又は14に記載の計測システムを備える、センサネットワーク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、導電率センサに関し、より具体的には、統合された導電率センサに関する。
【背景技術】
【0002】
電解液のコンダクタンス(単位:ジーメンス1/Ω,S)又は導電率(S/m)は、溶解イオンの総量の尺度となる。コンダクタンスは、物理的寸法及び電極の配置を含めた電解質の特性であり、導電率は、電解質及びそれに影響するパラメータの固有の特性である。
【0003】
コンダクタンスは、レジスタンスの逆数(1/R)と定義される。コンダクタンスを計測するため、反対荷電の少なくとも二極を有する導電率センサが必要である。溶液(k)の導電率を決定するため、センサのセル定数(Kcell)に計測されたコンダクタンス(G)が乗じられ、又は、センサのセル定数(Kcell)が計測された液体のレジスタンス(R)で除される。
【数1】
k = 導電率[Scm-1
G = (計測)コンダクタンス[S]
R = (計測)レジスタンス[Ω]
【0004】
センサのセル定数は、この二極の配置に依存する。2の平らな平面の並列する電極の場合、それは、電極間の距離を、電極間の有効電解液領域で除した値である。
【数2】
Kcell = セル定数[cm-1
l = 電極間距離[cm]
A = 電極間の電解液の有効領域[cm2
【0005】
液体の電気抵抗を計測するため、既存の計測装置が利用され、2の電極に交流の電位又は電流が加えられる。仮に、Kcell値が高いセンサを利用するとき、計測されるレジスタンスは、Kcellの低いセンサで同一の溶液を計測する場合よりも高くなる。仮に高い導電性溶液に低いKcellのセンサが使用されると、レジスタンスは非常に低くなる。その結果、計測において、溶液及び電極を流れる電流は高くなり、かつ、計測及びその精度にノイズが大きな影響を与える。極端に(低い導電率)、レジスタンスは高くなり、その導電率を一般的な読み出し電子機器で計測することはできない。したがって、目的の溶質に合わせて予想される濃度のレンジに一致する適切なKcell値の導電率センサが選択される。
【0006】
2の平らな、互いにかみ合った電極は、液状媒体で導電率を検出するための小型センサの一般的な電極の形状とされる。例えば、Timmerらによる「Optimization of an electrolyte conductivity detector for measuring low ion concentrations」、Lab on Chip June 2002, page 121-124、は、チップに配置されるこのような電極構成について説明し、また、かかるセンサのKcell値の計算及び設計の方法を開示する。
【0007】
しかしながら、導電率センサを小型化するディメリットは、既存のマクロ電極と比較して、界面のキャパシタンスの影響により、マイクロ電極が非常に高いインピーダンスを有する点である。したがって、小型導電率センサは、マクロ電極のセンサと同様に、広い導電率のレンジの計測には適していない。これは、正確な小型導電率センサ(例えば、正しいKcell値を使用するもの)を、目的の利用に対して予想される濃度のレンジに合わせて選択する必要があるという結果となる。
【発明の概要】
【0008】
本開示は、計測領域が小さい場合でも、広い導電率のレンジを計測可能な小型導電率センサを提供することを目的とする。
【0009】
液体の導電率計測センサであって、それぞれの電極が前記センサのセル定数を決定する表面積を有する第1電極及び第2電極を備え、少なくとも一の前記電極には、それぞれの電極の表面積が変更可能であり、それにより前記センサの前記セル定数を変化させるように配置されたスイッチング手段が備えられている。
【0010】
第1及び第2の電極は、検出電極として機能する。スイッチング手段は、検出電極の有効範囲を変化させることが可能であり、これにより、センサの導電率のレンジ(Kcell)を、異なる溶質に合わせて変化させることができる。
【0011】
一実施形態の第1及び第2の両電極は、スイッチング手段を備える。スイッチング手段は、効果的に、両電極の表面積の増減し、センサの前記Kcellを増減させる。
【0012】
センサの感度は、計測された入力量が変化したときに、センサの出力がどの程度変化するかを示すものである。センサの感度は出力信号及び計測特性の比率によって定められる。例えば、レジスタンス出力の導電率センサの場合、これらのセンサの感度は単位cm-1の定数(Kcell)である。
【0013】
センサの分解能は、計測される量においてセンサが検出可能な最小変化である。デジタル出力のセンサの分解能は、通常、デジタル出力の分解能である。その分解能は、その計測がされる際の精密さに依存し、しかしながら、センサの精度は、その分解能より大幅に低い。
【0014】
一実施形態の第1電極及び第2電極は、電極が互いにかみ合う配列に形成される。本実施形態の第1電極及び第2電極は、複数のフィンガー電極を備え、スイッチング手段は、一又は両方の電極の少なくとも1のフィンガー電極が、それぞれの電極の残りのフィンガー電極と並列に切り替え可能な状態で接続できるように配置される。本実施形態では、両電極は電流の注入及び検出に利用される。
【0015】
他の実施形態において、第1電極及び第2電極は曲がりくねった配列の電極に形成される。本実施形態の第1電極及び第2電極は、複数のフィンガー電極を備え、一又は両方の電極の少なくとも一のフィンガー電極はスイッチング手段を備え、少なくとも1のフィンガー電極は残りのフィンガー電極と直列に切り替え可能な状態で接続できるように配置される。この例では、各電極の効果的な計測領域は、計測電極の長さの増減によって実現することができる。
【0016】
センサは、さらに、それぞれが1以上のフィンガー電極を有する第3電極及び第4電極を備え、第3及び第4電極のフィンガー電極は、互いにかみ合ったアレイを形成するよう配置され、第1及び第2電極が第3及び第4電極の電極フィンガーの間で曲がりくねって配置されることが好ましい。本実施形態では、第3及び第4電極は電流の注入に利用され、第1及び第2電極は計測のみに利用される。本実施形態では、センサの一部のみが計測に利用されるという追加的利点を提案する。故障した時点で、その部分を、容易に他のセンサの部分に置き換えることができる。追加の実施形態では、少なくとも1のフィンガー電極、又は、第3及び第4電極のうちの一方又は両方は、スイッチング手段を備える。上記に追加して、かかるセンサの構造は、より大きい線形Kcell応答を提供する。
【0017】
4電極(4極)センサの利用は、測定レジスタンスに対する電極-電解質の界面抵抗の影響を低減することができる。4極計測システムの他の利点は、これらの電極において電流の流れが(ほとんど)生じないため、計測電極において、電気化学反応(例えば、電気めっき、腐食)の発生が生じない。電気化学反応は、センサの有効範囲及びKcell値の変化に影響する。提案する4電極センサは、内側電極が外側電極の周囲に折りたたまれる。これは、外側電極が両側で利用されるので、センサ領域を縮小させるのに好ましい効果が得られる。
【0018】
一実施形態では、センサは、さらに、電極への流電位に適合し、スイッチング手段を生業する読み出し回路を備える。加えて、読み出し回路はさらに、スイッチング手段を備える。読み出し回路にスイッチング手段を備えることにより、導電率センサは、寄生電流が少なくなり、体積が小さくなり、電極の構造(例えば、フィンガー電極の数、フィンガー電極間の距離等)を容易に変えられるようになり、これによりKcellが変化する。
【0019】
一実施形態では、スイッチング手段は、トランジスタである。センサの製造に利用される技術に応じて、トランジスタは例えば、CMOS、MEMS、リレー等である。
【0020】
一実施形態では、センサは小型化され、かつ、電極は絶縁基板上に配置される。基板は、例えば、シリコン(Si)やガラス基板である。
【0021】
他の実施形態では、本開示は、1以上の上述した液体の導電率を計測するセンサを備える計測装置に関する。かかるシステムは、全体のKcell値が、それぞれの有効計測領域と同様に、計測に利用されるセンサの数に応じて定められる。
【0022】
一実施形態では、少なくとも1の導電率センサは同一又は異なるセンサ構造である。
【0023】
他の実施形態では、本開示は、上述した導電率センサ、及び/又は、本開示に係る計測装置を備えるセンサネットワークに関する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1A】一対の互いにかみ合う平面状の電極を有する導電率センサの一例である。
図1B】一対の互いにかみ合う平面状の電極を有する導電率センサの一例である。
図2A】一対の互いにかみ合う平面状の電極を有する従来の導電率センサの一の例である。
図2B】一対の互いにかみ合う平面状の電極を有する従来の導電率センサの一の例である。
図3A】本開示に係る2電極導電率センサの実施形態の一例である。
図3B】本開示に係る2電極導電率センサの実施形態の一例である。
図4A図3A及び3Bの導電率センサの詳細図である。
図4B図3A及び3Bの導電率センサの詳細図である。
図5】本開示に係る2電極導電率センサの他の実施形態である。
図6】本開示に係る2電極導電率センサの他の実施形態である。
図7A】本開示に係る4電極導電率センサの実施形態の一例である。
図7B】本開示に係る4電極導電率センサの実施形態の一例である。
図7C】本開示に係る4電極導電率センサの実施形態の一例である。
図8】本開示に係る4電極導電率センサの断面図である。
図9】本開示の他の実施形態に係る導電率センサである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本開示のより良い理解のため、以下に実施形態の複数例を添付の図面を用いて説明する。
本開示は、詳細な実施形態及び一例の図面を参照して説明するが、これらに限定するものではない。図面は、単に図表であって、限定するものではない。図面において、各構成のサイズは、誇張されたものであって、説明のためのものでオンスケールで図示したものではない。この開示において、寸法及び相対寸法は、必ずしも実際の縮図と対応しているとはいえない。
【0026】
さらに、説明及び請求項中の第1、第2、第3等の用語は、特徴が類似する構成について使用され、処理又は実際の順序について述べるものではない。各用語は、適切な状況に応じて変更可能であり、開示の実施形態は開示される又は図示される方法とは別の処理によって動作可能である。
【0027】
また、説明及び請求項中の上(top)、下(bottom)、上(over)、下(under)等の用語は、便宜的に使用されるものであって、相対位置を表すために必須なものではない。したがって、用語は、適切な状況に応じて変更可能であって、開示される実施形態はここで説明又は図示される他の方向によって動作可能である。
【0028】
請求項で利用される「備える」の用語は、それに続いて列挙される手段に限定すると解釈されるものではなく、他の構成や処理を排除するものではない。言及する所定の特徴、数値、ステップ又は構成の存在を明確に説明すべきであるが、一又は複数の他の特徴、数値、ステップ若しくは構成、又は、これらのグループの存在や追加を除外しない。「装置は、A手段及びB手段を備える」の表現の範囲は、装置がA及びBの構成のみから成ることを限定するものではない。これは、本開示に関しては、装置に関連ある構成がAとBであることを意味する。
【0029】
図1は、電極アレイがかみ合って形成される第1電極21及び第2電極22を備える液体の導電率計測センサの一例を示す図である。図1Aに示す例は、各電極が2つのフィンガー電極21-1,21-2及び22-1,22-2を備えるのに対し、図1Bに示す例は、第1電極21が2つのフィンガー電極を備え、第2電極が3つのフィンガー電極を備える。両者の例において、一対のかみ合うフィンガー電極は互いに間隔が比較的近い位置関係(例えば、距離d)である。電極の表面積は、計測に利用可能な有効表面積により定められ、これにより、センサのセル定数Kcellが定められる。
【0030】
図2は、一対のかみ合うフィンガー電極の間隔(例えば、距離d+Δd)が離れている点を除いて、図1のセンサと類似する構成の液体の導電率計測センサの他の例である。このセンサは、Kcell値が図1のセンサより大きい。上述したように、フィンガー電極間の距離が大きい場合、Kcell値が高くなる。
【0031】
図3Aは、本開示に係る2電極の液体の導電率計測センサの一例である。上述と同様に、センサは、かみ合う電極アレイが形成される第1電極21及び第2電極22を備える。各電極は、それぞれ電極端子21-0及び22-0に接続される複数のフィンガー電極21-1~21-N及び22-1~22-Mを有する。この例では、第1電極21は、電極の構造は固定である。第2電極22はスイッチング手段(例えば、トランジスタ)S2を備え、そのため、例えば、1のフィンガー電極又は複数のフィンガー電極を電極端子20-0に接続する等、フィンガー電極の接続数に応じて電極の表面積22Aが可変である。各フィンガー電極は並列に残りのフィンガー電極とスイッチ手段を介して接続される。1以上のフィンガーのスイッチを切り替えて、例えば、計測に効果的なフィンガー電極の数、フィンガー電極間の距離等、電極端子へ接続される電極の構造を変化させることができる。これによりセンサのセル定数(Kcell)を変更することができる。スイッチング手段を備えるフィンガーの数は、要求される導電率のレンジによって定まる。広い導電率のレンジを満たすためには、外側の又は内側のフィンガー電極のうち少なくとも1のフィンガーにスイッチング手段を備えれば足りる(フィンガー電極はセンサ領域の境界の近くに又は遠くに配置される)。例えば、図示するように、全てのフィンガー電極21-1~22-Mはスイッチング手段を介して共通電導端子20-0に接続される。
【0032】
フィンガー電極及び端子は、計測対象の溶液との化学的相互作用を避けるために、金(Au)、プラチナ(Pt)又は他の不活性の導電性材料で生成される。かかる化学的相互作用は、計測に影響を与え、又は、計測領域及びそれによるセンサのKcell値を変化させる。しかしながら、例えば、Au、C、Ti等の他の不活性の導電性材料は使用される。
【0033】
代わりに、端子は、例えば、銅(Cu)等の別の材料で生成される。
【0034】
図3Bは、本実施形態の2電極導電率センサの他の例を示す。図3Aのセンサとの唯一の違いは、本例で両方の電極21及び22のフィンガー電極がスイッチング手段S1及びS2を備える点である。これにより、電極の構造を大きく変えることができる。この例では、測定可能なKcellは拡大した。
【0035】
図4A及び図4Bは、図3A及び図3Bの2電極導電率センサと後述する点で異なる例である。本例では、各フィンガー電極はそれぞれ電導端子と接続されており、電導端子はスイッチング手段を備える。スイッチを制御する各導電性ラインは、センサの計測領域の外側にある。これは、導電性ラインが計測内領域に存在しないためセンサの製造を単純化する。他の違いは、フィンガー電極及び端子が異なる材料で生成されることである。例えば、フィンガーはAuで端子はCuである。
【0036】
図5及び図6は、電極構造が図4Aと異なる2電極導電率センサである。図5は、第2電極は、電導端子に接続される一対のフィンガー電極を有し、図6で示すのは両電極が同一の構造である。図5は、Kcellが変化した場合に図4と比較して分解能が小さくなる構造を示すものであり、図6は、接続線及びスイッチング手段の数を減少させることにより、センサ領域が小さい付加的利点を有する構造を示す。
【0037】
図7A~図7Cは、4電極導電率センサの一例を示す。図7Aは、2の外側の電極及び2の内側の電極を有する導電センサを示す。第1電極21及び第2電極22は、例えば、第3及び第4電極の外側電極の間で曲がりくねって配置される。この配列では、外部電極が内部電極の周りに配置されるので、外部電極がかみ合ったアレイを形成し、内部電極が有利なことにセンサ領域を減少させる曲がりくねったアレイを形成する。2電極の構造と比較し、4電極の構造は、単調周波数においてKcellの計測のレンジを広げることが可能である。内側電極はそれぞれ電極端子(図示せず)21-0及び22-0に接続される複数のフィンガー電極21-1~21-N及び22-1~22-Mを有する。この例で、両内側電極は、スイッチング手段S1及びS2を有する。2電極の構造と異なり、4電極の構造は、スイッチング手段がそれぞれ並列ではなく直列にフィンガー電極に接続され、センサのKcell値は同一効果が得られる。2電極の構造と同様に、スイッチング手段を有するフィンガーの数は求められる導電性レンジによる。
【0038】
図7Aと比較して、図7Bは、内側電極の各フィンガー電極が並列に接続される4電極構造を示す。ここでは、2電極構造と同様に、効果的な計測領域及びそれに応じたKcell値は、フィンガーの数の増減と組み合わせて、フィンガー電極間の距離の変化に応じて変わる。有利なことに、この電極構造はセンサの故障に対処する。例えば、電極の一部(例えば、下方半分)のみ計測に利用され、故障したとき、その故障した下方半分は、未接続にされ、故障していない電極(上方半分)で置き換える。そのKcellレンジは、内側電極の有効長の増減に応じて変化し、有効計測領域も変化する。
【0039】
図7Cは、図7Bと同様、第3電極23及び第4電極24のフィンガー電極を切り替えるスイッチング手段S3及びS4を有する4電極センサを示す。上述した利点に加え、この構造は、より大きな線形Kcell応答を得ることができる。
【0040】
図7に示したセンサ構造の組み合わせもまた可能であり、少ない又は多い数のフィンガー電極を有する区分に分類されたフィンガー電極であってもよい。かかる構造で、一部のスイッチング手段は、図7Bに示すように、区分毎で並列に接続されるように配置され、図7Aに示すように、残りは区分毎のフィンガー電極が直列で接続されるように配置される。上述と同様に、故障した電極区分は、他の電極で容易に置き換えられる。
【0041】
4電極センサの使用は、抵抗測定における電極-電解質の界面抵抗の影響を低減することができる。4極計測装置の他の利点は、これらの電極で電流の流れが無いため、測定電極において電気化学的反応(電気めっき、腐食)が起こらないことである。電気化学的反応は、センサの有効領域に影響を与え、Kcell値を変更する。提案する4電極導電率センサは、内側電極は、外側電極の周囲で折り込まれている。外側電極で両端の使用は、計測領域の増大に効果的である。
【0042】
2電極センサ構造に関し、定電測定のため、第1及び第2電極は計測と同様に、電流注入に利用される。これは、電位差は電流の測定において同一の電極に位置するためである。4電極センサ構造に関し、定電流計測のため、電圧が内側電極(例えば、第1及び第2電極)で計測される間、電流は外側電極(例えば、第3及び第4電極)から注入される。
【0043】
導電率センサは、電極に電位を適用させ、また、導電性ラインを介してスイッチング手段を制御する読み出し回路210を有する。この読み出し回路は、接続線を介してセンサ(図示せず)のボンドパッドに接続される。接続線は、銅(Cu)又は他の導電性材料により生成される。
【0044】
一部の実施形態では、代わりに、スイッチング手段S1、S2、S3及びS4が、読み出し回路に備えられる。この例では、導電性ラインが無いため、計測領域内で経路が定められ電極に関する水溶液の保護の必要性が取り除かれ、結果、製造コストを低減できる。加えて、センサの故障時、読み出し回路及び/又はスイッチング手段を置き換える必要なく、電極センサを置き換えればよい。これは、メンテナンスの簡易化低コスト化をもたらす。
【0045】
一部の実施形態では、センサは小型化され、電極は絶縁基板に配置された。回路基板は、例えば、シリコン(Si)、ガラス、又はプラスチック基板である。
【0046】
本開示の他の態様は、計測方法に関する。この方法は、図7の4電極センサ構造を参照して説明されるが、実施形態では、スイッチング手段は読み出し回路に備えられる。図8は、4電極導電率センサのA-A'軸の横断面の概略図を示す。
【0047】
導電率センサは、シリコン(Si)の回路基板10上に製造することができる。シリコンは導体であるため、第1に絶縁層11の熱酸化物が成長する。10nmのTa(接着層)及び200nmの白金(Pt)の電極層がスパッタリングにより皮膜される。このステップでは、例えば、物理的気相成長法(PVD)が用いられる。その後、物理的なドライエッチングプロセスであるイオンビームエッチングを組み合わせた一般的なリソグラフィーを利用するパターニングにより電極21~24が形成される。ボンドパッドからセンサへの接続線も、電極生成と同一のステップにおいて、Ptにより生成され、これにより導電率計測がされる。これを打開するため、酸化物、窒化物、酸化物及び窒化物の絶縁スタック12は、プラズマ化学気相成長法(PECVD)により堆積される。このスタックは、その後、センサ及びボンドパッドがコンタクトリソグラフィ及び反応性イオンエッチング(RIE)が利用されて形成されなければならないために、オープンになる。
【0048】
白金(Pt)材料が、測定溶液との化学的相互作用を避けるために不活性材料であることを理由に、電極材料として利用される。この化学的相互作用は、計測に影響し、又は、有効エリアを変更することからKcell値を変更する。しかしながら、例えば、Au、C及びTi等の他の不活性導電性材料は、電極材料として利用することができる。
【0049】
絶縁スタック12は、酸化物、窒化物、酸化物及び窒化物によって生成されるが、リード線と計測溶液との接続を避けるため、SU-8TM(エポキシレジスト)のような他の無機物又は重合体の隔離された層から構成されてもよい。
【0050】
また、最上部に酸化物分離11が配置されるシリコン基板10は、ガラスやプラスチック等の他の絶縁基板に置き換えることができる。
【0051】
ダイシングステップは、溶液中で異なるシリーズのセンサを分離するように機能する。ダイシングの後、各センサは、プリント基板(PCB)の上に取り付けられる。PCBに向かう電気的接続は、既存のワイヤボンディング技術を用いる。ボンドパッド及びワイヤボンドは計測溶液から電気的に絶縁するため、金で覆われる。
【0052】
本開示の他の態様は、上述した1又は複数の導電センサ100~104を備える計測システム200に関する。
【0053】
図9は、4の導電率センサ101~104及びスイッチング手段が一体化される読み出し回路210を備える計測システムの一例を示す。各センサは、レンジを広げ、及び/又は、計測精度を向上するため、異なるセンサ構造であってもよい。各導電率センサは、異なる導電率レンジ、及び/又は、異なる精度の中で、液体の導電率を計測することができる。これらのセンサは、それぞれ電位が外側電極23及び24に適用され、計測は内側電極21及び22に影響を受ける導電線201~204を介して読み出し回路210に接続される。加えて、導電線201~204も使われる。
【0054】
処理、及び/又は、無線機能を提供するため、導電率センサ、及び/又は、計測装置は、PCB回路、CMOS、MEMSチップに一体化されても良い。これは、センサ又は計測装置の遠隔制御を可能とする。例えば、計測間の周期で計測が影響を受ける周波数は、必要に応じて計測データと同様に中央制御装置/中央処理装置のような外部装置に展開される。かかる装置で、全体のKcell値は、計測に用いられるセンサの数に応じて定められる。したがって、マイクロシステムは、マクロ電極を使用するシステムと同じような導電率レンジの計測を可能とする。
【0055】
本開示の他の態様は、上述した一又は複数の導電率センサ、及び/又は、明細書で要求された一又は複数の計測システムを備えるセンサネットワークに関する。例えば、導電率センサの数は、試験用の溶質によって決定される。センサ、及び/又は計測回路は、中央読み出し回路の計測を提供するために配置される。計測の分析は、中央読み出し回路により、部分的又は全部が実施される。第1のケースでは、各センサの読み出し回路は、ネットワークの全てのセンサから受信する計測の分析を行う読み出し回路に対し、中央前処理測定を実行してもよい。
【0056】
本開示に係る導電率センサは、提案する広いレンジの溶液濃度で使用されるセンサによるKcellの可変を提案する。有利なことに、4電極システムで効果的な計測領域は、電流方向が内側電極に切り替えられていない場合、内側電極を外側電極の間で折りたたむことで減少する。例えば、外部電極を互いにかみ合ったフィンガー形状にすることにより、その間で内側電極を違いに並列な曲がりくねった形状にすることができる。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8
図9