(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】縦管構造体
(51)【国際特許分類】
E03F 5/02 20060101AFI20221206BHJP
F16L 55/00 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
E03F5/02
F16L55/00 G
(21)【出願番号】P 2018216912
(22)【出願日】2018-11-19
【審査請求日】2021-08-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【氏名又は名称】立花 顕治
(74)【代理人】
【識別番号】100179213
【氏名又は名称】山下 未知子
(74)【代理人】
【識別番号】100170542
【氏名又は名称】桝田 剛
(72)【発明者】
【氏名】加藤 雅治
(72)【発明者】
【氏名】南 吾郎
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-127332(JP,A)
【文献】特開2009-108614(JP,A)
【文献】特開2002-322729(JP,A)
【文献】特開平10-008536(JP,A)
【文献】特開2013-091955(JP,A)
【文献】特開2000-205457(JP,A)
【文献】特開平08-041915(JP,A)
【文献】特開平11-210062(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 29/00
29/045-37/00
E03F 1/00-11/00
F16L 55/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部水路と下部水路とを連通する縦坑に配置される縦管構造体であって、
前記縦坑に沿って上下方向に延びるように配置され、下端部の側壁に前記下部水路に連通する開口が形成された人孔部材と、
前記人孔部材に沿って上下方向に延びるように配置され、前記上部水路と連通する上端部、及び前記開口と連通する下端部を有する、円筒状の縦管と、
前記縦管の下端部に配置され、貫通孔が形成された端部材と、
前記縦管内に配置される軸管と、
前記軸管の外周面と前記縦管の内周面とを連結するように、前記軸管の軸方向に螺旋状に延びる案内板と
、
を備え
、
前記人孔部材の下面と前記縦管の下端部との間に、第1空間が形成され、
前記端部材と前記軸管の下端部との間に、第2空間が形成され、
前記案内板を伝って流れる流水が、前記貫通孔を介して排出され、前記開口に流れるように構成されて
おり、
前記端部材から前記第1空間へ延びる第1排出管をさらに備え、
前記第1排出管は、
前記端部材の貫通孔から前記人孔部材の下面まで延びる第1管部材と、
前記第1管部材の下端部に連結され、前記人孔部材の下面に沿って前記開口側に延びる第2管部材と、
を備えている、縦管構造体。
【請求項2】
上部水路と下部水路とを連通する縦坑に配置される縦管構造体であって、
前記縦坑に沿って上下方向に延びるように配置され、下端部の側壁に前記下部水路に連通する開口が形成された人孔部材と、
前記人孔部材に沿って上下方向に延びるように配置され、前記上部水路と連通する上端部、及び前記開口と連通する下端部を有する、円筒状の縦管と、
前記縦管の下端部に配置され、貫通孔が形成された端部材と、
前記縦管内に配置される軸管と、
前記軸管の外周面と前記縦管の内周面とを連結するように、前記軸管の軸方向に螺旋状に延びる案内板と、
を備え、
前記人孔部材の下面と前記縦管の下端部との間に、第1空間が形成され、
前記端部材と前記軸管の下端部との間に、第2空間が形成され、
前記案内板を伝って流れる流水が、前記貫通孔を介して排出され、前記開口に流れるように構成されており、
前記端部材から前記第1空間へ延びる第2排出管をさらに備えており、
前記
第2排出管は、
前記端部材の貫通孔から下方へ円弧状に延びる曲管状に形成され、
前記排出管の下端開口が前記開口側を向くように形成されている
、縦管構造体。
【請求項3】
前記縦坑の下面に配置され、前記第2排出管を支持する支持台をさらに備えている、請求項
2に記載の縦管構造体。
【請求項4】
前記縦管の下端部と前記軸管の下端部との距離が、前記縦管の内径の1/3~3/4である、請求項1から
3のいずれかに記載の縦管構造体。
【請求項5】
前記縦管の軸心は、前記人孔部材の軸心を挟んで、前記開口と反対側に配置されるように、前記縦管が配置されている、請求項1から
4のいずれかに記載の縦管構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上部水路と下部水路とを連通する縦坑に配置される縦管構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
下水や雨水を落差処理する地下構造としては、種々のものが提案されている。例えば、特許文献1には、上部水路と、これよりも下方に配置された下部水路とを結ぶ縦坑内に配置された縦管構造体が開示されている。この縦管構造体は、縦坑内に配置される円筒状の人孔部材と、この人孔部材に配置される縦管と、この縦管の内部に配置される軸管と、軸管の外周面に取り付けられた螺旋状の案内板と、を有している。そして、上部水路から人孔部材を介して縦管内に流れ込んだ水は、案内板を伝って螺旋を描きながら、縦管から排出され、人孔部材の下端部から下部水路に流れ込むようになっている。このような螺旋状の案内板に伝って水が下方に流れるようにしているので、落下する水の衝撃で縦管、縦坑等が損傷するのを防止することができる。
【0003】
また、縦管の下端部の側面には径方向に突出する流出管が設けられており、案内板に沿って流れる水は、この流出管から縦管の外部に排出される。この流出管の軸方向の長さは、縦管の内径の1/2程度と規定されることがあり、これによって、排出された水が乱れるのを抑制しつつ、水を下部水路、具体的には接続管に誘導することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、人孔部材の内壁面と縦管の外周面との間には、点検などを行うために、作業者が入るスペースが必要である。さらに、上述した流出管は縦管から径方向に突出するため、これに合わせて人孔部材の内径を大きくする必要があり、作業スペースを確保することも考慮すると、人孔部材が大型化するという問題があった。本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、人孔部材の径を小型化することができる、縦管構造体を提供することを目的する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上部水路と下部水路とを連通する縦坑に配置される縦管構造体であって、前記縦坑に沿って上下方向に延びるように配置され、下端部の側壁に前記下部水路に連通する開口が形成された人孔部材と、前記人孔部材に沿って上下方向に延びるように配置され、前記上部水路と連通する上端部、及び前記開口と連通する下端部を有する、円筒状の縦管と、前記縦管の下端部に配置され、貫通孔が形成された端部材と、前記縦管内に配置される軸管と、前記軸管の外周面と前記縦管の内周面とを連結するように、前記軸管の軸方向に螺旋状に延びる案内板と、を備え、前記人孔部材体の下面と前記縦管の下端部との間に、第1空間が形成され、前記端部材と前記軸管の下端部との間に、第2空間が形成され、前記案内板を伝って流れる流水が、前記貫通孔を介して排出され、前記開口に流れるように構成されている。
【0007】
この構成によれば、従来例において、縦管から側方に延びていた流出管の代わりに、液体の排出用の空間として、縦管の下端部と人孔部材の下面との間に第1空間を形成している。すなわち、縦管から側方に延びる流出管が不要になるため、径方向において、縦管の外周面と人孔部材の内周面との間の距離を小さくすることができる。したがって、本発明に係る縦管構造体は、人孔部材の内径を小さくすることに寄与する。また、流出管が不要になるため、縦管の外周面と人孔部材の内周面との間の空間を、流出管によって狭められることがない。したがって、この空間を管理空間として有効に活用することができる。
【0008】
上記縦管構造体においては、前記人孔部材の内周面に連結され、前記縦管の下端部を支持する支持部材をさらに備えることができ、前記支持部材を介して、前記人孔部材の内周面と縦管の外周面との間に形成される管理空間と、前記第1空間とが連通するように構成することができる。
【0009】
この構成によれば、人孔部材に支持部材が設けられているため、この支持部材によって人孔部材内に縦管を固定することができる。例えば、支持部材を人孔部材に設けておけば、人孔部材の上方から縦管を下ろして支持部材に設置することができ、施工を効率的に行うことができる。また、支持部材を介して、管理空間と第1空間とが連通するため、第1空間から管理空間へ入ることができる。これにより、管理空間において、人孔部材や縦管のメンテナンス等を行うことができる。
【0010】
上記縦管構造体においては、前記端部材から前記第1空間へ延びる第1排出管をさらに備えることができ、前記排出管は、前記端部材の貫通孔から前記縦坑の下面まで延びる第1管部材と、前記第1管部材の下端部に連結され、前記人孔部材の下面に沿って前記開口側に延びる第2管部材と、を備えることができる。
【0011】
この構成によれば、従来例において、縦管から側方に延びていた流出管の代わりに、第1空間に向けて延びる排出管を設けている。そして、この第1排出管は、縦方向に延びる第1管部材と、側方に延びる第2管部材とを連結することで構成されているため、縦管から排出された液体を開口へ導くことができる。また、第2管部材は、人孔部材の下面に沿って配置されるため、縦管の下端部に第1排出管を取り付けた状態で、この縦管を人孔部材の上方から下方に下ろせば、第2管部材が人孔部材の下面に接するため、縦管の上下方向の位置決めを容易に行うことができる。
【0012】
上記縦管構造体においては、前記端部材から前記第2空間へ延びる第2排出管をさらに備えることができ、前記排出管は、前記端部材の貫通孔から下方へ円弧状に延びる曲管状に形成され、前記排出管の下端開口が前記開口側を向くように形成することができる。
【0013】
この構成によれば、従来例において、縦管から側方に延びていた流出管の代わりに、第1空間に向けて延びる第2排出管を設けている。そして、この第2排出管は、曲管状に形成され、開口側を向くように形成されているため、縦管から排出された液体を開口へスムーズに導くことができる。
【0014】
上記縦管構造体においては、前記縦坑の下面に配置され、前記第2排出管を支持する支持台をさらに備えることができる。
【0015】
第2排出管は、曲管状に形成されているため、縦管の下端部に第2排出管を取り付けた状態で、この縦管を人孔部材の上方から下方に下ろせば、曲管状の第2排出管が人孔部材の下面に接するため、安定的ではない。そこで、第2排出管を支持する支持台を人孔部材の下面に配置しておけば、上方から下ろした第2排出管が支持されるため、縦管の上下方向の位置決めを容易に行うことができる。
【0016】
上記縦管構造体においては、前記縦管の下端部と前記軸管の下端部との距離を、例えば、前記縦管の内径の1/3~3/4にすることができる。
【0017】
上記縦管構造体において、前記縦管の軸心が、前記人孔部材の軸心を挟んで、前記開口と反対側に配置されるように、前記縦管を配置することができる。
【0018】
これにより、縦管から液体が流れ出す側と開口との間に広い空間を形成できるため、この空間を管理空間として活用することができる。また、縦管の開口と反対側の外周面が人孔部材の内周面に近づくため、縦管を人孔部材の内周面に固定しやすくなる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、人孔部材の内径を小さくすることに寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明に係る縦管構造体の一実施形態を示す断面図である。
【
図4】本発明の縦管構造体の他の例を示す断面図である。
【
図5】本発明の縦管構造体の他の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<1.縦管構造体の概要>
以下、本発明の一実施形態に係る縦管構造体について、図面を参照しつつ説明する。
図1は縦坑に配置された縦管構造体の断面図、
図2は
図1のA-A線断面図、
図3は
図1のB-B線断面図である。なお、これらの図面において、縦管構造体の内部は、説明の便宜上、部分的に透視的に示している。
【0022】
図1~
図3に示すように、この縦管構造体500は、ドロップシャフトとも呼ばれ、コンクリート地下構造物内に設けられる。より詳細には、下水、雨水などの水が流れ、水平に延びる上部水路100と、この上部水路100よりも下方に配置され、水平に延びる下部水路200とを連結する縦坑300内に配置されている。縦坑300の下端部の側面には円形状の下部開口301が形成されており、この下部開口301と下部水路200とが第1連結管400によって連結されている。また、この縦坑300は、上部水路100よりも上方に延びており、地上に設けられたマンホール等(図示省略)につながっている。そして、このマンホールから、点検作業員が、縦管構造体500内に入るようになっている。
【0023】
そして、縦坑300に配置される縦管構造体500は、上下方向に延びる人孔部材1と、この人孔部材1内に配置され、上下方向に延びる円筒状の縦管2と、この縦管2内に配置され、上下方向に延びる円筒状の軸管3と、この軸管3の外周面に取り付けられる螺旋状の案内板4と、を備えている。以下、縦管構造体について、詳細に説明する。
【0024】
<2.人孔部材>
図1に示すように、人孔部材1は、上部水路100の上方から下方へ延び、縦坑300の下面付近まで延びている。縦坑300に対する人孔部材1の固定は、特には限定されず、種々の構成が可能である。例えば、人孔部材1と縦坑300との間に、エアモルタルなどの充填材を充填したり、バンドなどで固定することができる。なお、人孔部材1と縦坑300の軸芯は概ね一致している。また、
図1及び
図3に示すように、人孔部材1の下端部の側面には円形状の第1開口11が形成されており、この第1開口11と上述した下部開口301とが第2連結管600によって接続されている。したがって、人孔部材1の内部は、第2連結管600、第1連結管400を介して、下部水路200に連通している。
【0025】
図1及び
図2に示すように、人孔部材1の上部の側面には第2開口12が形成されており、この第2開口12には、上部水路100が連結されている。
【0026】
<3.縦管>
次に、縦管2について説明する。
図1に示すように、縦管2は、円筒状に形成され、人孔部材1内で上下方向に延びるように配置されている。但し、縦管2は、人孔部材1の軸芯から外れた位置に配置されている。すなわち、
図1に示すように、縦管2の軸芯X2は、人孔部材1の軸芯X1を挟んで、第1開口11とは反対側に配置されている。これにより、縦管2は人孔部材1の内壁面に近づくため、例えば、人孔部材1の内周面に設けられたアンカー28などによって固定することができる。また、縦管2の下端部には貫通孔51が形成された端部材5が配置されており、この端部材5は、人孔部材1の下面15よりも上方、より詳細には、第1開口11よりも上方に配置されている。端部材5の貫通孔51は、縦管2の径よりも小さく形成されており、この貫通孔51には下方へ延びる排出管6が取り付けられている。また、端部材5と人孔部材1の下面との間には、コンクリートなどで形成された支持台7が配置され、この支持台7によって縦管2が支持されている。そして、排出管6は、この支持台7の内部に配置されている。ここで、縦管2の下端部と人孔部材1の下面との間の空間70が、本発明の第1空間に相当するが、支持台7が配置されている場合でも、縦管2の下端部と人孔部材1の下面との間に距離がある場合には、これが第1空間となる。
【0027】
縦管2の上端部は、人孔部材1の上端部よりも下方に位置し、上部が外部に開放している。また、
図1及び
図2に示すように、縦管2の上端部の側面には円形状の側面開口21が形成されており、この側面開口21と人孔部材1の第2開口12とは第3連結管22によって連結されている。したがって、上部水路100から流れる水は、第3連結管22を介して、縦管2内に流れるようになっている。
【0028】
<4.軸管及び案内板>
図1に示すように、軸管3は、円筒状に形成され、縦管2の内部の中心軸に沿って延びている。そして、軸管3の上端部は、縦管2よりも上方に延びており、上端が外部に開放されている。一方、軸管3の下端部は、端部材5よりも上方に配置されており、軸管3の下端部と端部材5との距離Dは、水の流れをスムーズにするため、縦管2の内径の1/3~3/4、具体的には1/2程度とされている。この距離Dを形成する空間20が、本発明の第2空間に相当する。また、軸管3の下端は、上端と同様に、外部に開放されている。
【0029】
案内板4は、軸管3の外周面と縦管2の内周面とを連結するように配置され、螺旋状に延びている。したがって、案内板4の径方向の外縁は、縦管2の内周面に隙間なく固定されている。また、本実施形態では、案内板4は軸管3全体に設けられているのではなく、軸管3の軸方向の中心よりも下方に設けられている。したがって、上部水路100から縦管2に流入した水は、側面開口21から案内板4まで落下し、案内板4に沿って螺旋を描きながら下方に流れていく。
【0030】
<5.排出管>
次に、排出管6について説明する。
図1に示すように、排出管6は、曲管により形成されている。すなわち、軸線が、端部材5の貫通孔51から、人孔部材1の第1開口11側に向くように、中心角が約90度の円弧状に形成されている。そして、
図1に示すように、排出管6の下端開口61は、人孔部材1の第1開口11と概ね対向するように配置されており、側面視において、排出管6の下端開口61は、縦管2の外周面からやや突出した位置にある。したがって、下端開口61と人孔部材1の第1開口11との間にはスペースが形成される。これにより、作業員が、下端開口61から排出管6へ進入可能となっている。なお、このような排出管6を含め、上述した人孔部材1、縦管2、軸管3、案内板4、その他の管部材等は、種々の材料で形成することができるが、例えば、繊維強化プラスチックなどにより形成することができる。
【0031】
<6.縦管構造体での作業>
次に、上記のように構成された縦管構造体での作業について説明する。作業員は、マンホールを介して、地上から縦坑300内に入り、さらに人孔部材1の上端から、人孔部材1内に入る。そして、図示を省略するが、人孔部材1の内壁面には、梯子が設けられており、作業者は梯子を伝って、人孔部材1の下面15まで到達する。この過程において、人孔部材1の内周面の点検を行うことができる。その後、
図1に示すように、作業者は、排出管6の下端開口61から、排出管6に進入し、排出管6を伝って、縦管2の内部に入ることができる。そして、例えば、端部材5の上に立って、縦管2の内周面、軸管3、及び案内板4の点検を行うことができる。
【0032】
<7.縦管構造体での水の流れ>
上述したように、縦管2の側面開口21には、上部水路100からの水が流れ込む。そして、この水は、案内板4を伝って下方に流され、縦管2の下端を塞ぐ端部材5の貫通孔51から排出管6を介して排出される。そして、排出管6が排出された水は、第2連結管600及び第1連結管400を介して、下部水路200に流れ込む。このとき、縦管2内の空気の一部は、流れ込んだ水で押され、軸管3を通じて上方に流れ出す。また、水は逆流することもあるが、このときには、案内板4を伝って上方に流れるほか、軸管3の下部開口から軸管3の内部に入り込むことがある。但し、逆流した場合でも、上部水路100までは至らないのか通常である。さらに排出管6から排出された水により人孔部材1の下部にある空気や下水から発生するガスは、縦管2と人孔部材1との間の空間を通じて上方に押しやられる。したがって、空気が下部水路200に流れるのを抑制することができ、空気連行率を低減することができる。
【0033】
<8.特徴>
上記のように構成された縦管構造体は、以下の効果を奏する。
(1) 本実施形態においては、従来例で縦管から側方に延びていた流出管の代わりに、縦管2の下端部と人孔部材1の下面15との間に空間を形成し、この空間に排出管6を配置し、縦管2からの水が下部水路200に向かうようにしている。したがって、縦管2から側方に延びる流出管が不要になるため、径方向において、縦管2の外周面と人孔部材1の内周面との間の距離を小さくすることができる。したがって、この縦管構造体は、人孔部材1の内径を小さくすることができる。また、流出管が不要になるため、縦管2の外周面と人孔部材1の内周面との間の空間を、流出管によって狭められることがない。したがって、この空間を管理空間として有効に活用することができる。
【0034】
(2) 本実施形態では、曲管状に形成された排出管6を用いているため、縦管2から排出された水をスムーズに人孔部材1の第1開口11へ誘導することができる。また、このような排出管6は、繊維強化プラスチックにより安価に製造することができる。
【0035】
(3) 縦管2の下端を閉鎖する端部材5には、縦管2の内径よりも小さい貫通孔51が形成されているため、縦管2内の空気が排出されるのを抑制することができる。すなわち、縦管2から水が排出されるに当たって、空気連行率を小さくすることができる。この貫通孔51の径は、大きいと空気の排出が抑制できなくなり、小さいと水の排出量が少なくなる。この観点から、貫通孔51の径は、例えば、縦管2の内径の40~60%、具体的には50%であることが好ましい。
【0036】
(4) この縦管構造体を組み立てる方法は、特には限定されないが、例えば、縦管2の下端部に、端部材5及び排出管6を取り付けた状態で、この縦管2を人孔部材1の上部開口から挿入する。ここで、排出管6は、曲管であるため、上述した支持台7を予め人孔部材1の下面15に設けておく。この支持台7は、上面が平坦に形成され、さらに排出管6が配置される凹部が形成されている。これにより、上方から下ろした排出管6が支持台7の凹部に収納されるとともに、支持台7の上面よって縦管2を支持することができる。
【0037】
<9.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。なお、以下の変形例は、適宜組み合わせ可能である。
【0038】
<9-1>
上記実施形態では、縦管の下部の貫通孔51に曲管状の排出管6を設けているが、これに限定されない。例えば、
図4に示すように、縦管2の下端部と人孔部材1の下面との間の空間(第1空間)70に、側面視L字状の排出管8を設けることもできる。この排出管8は、端部材5の貫通孔51から下方に延び、人孔部材1の下面15に接する円筒状の第1管部材81と、この第1管部材81の側面に連結され、人孔部材1の第1開口11に向かって延びる円筒状の第2管部材82と、を備えている。第2管部材82の開口83、つまりこの排出管8の排出口は、上記実施形態の排出管6の下端開口61と同様の位置に配置されている。
【0039】
このような排出管8を用いても、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。そのためには、この排出管8の軸線の長さは、従来例の流出管と同様に、概ね縦管2の内径の半分程度、またはそれ以上とすることができる。また、施工においては、例えば、上記実施形態と同様に、縦管2の下端部に、端部材5及び排出管8を取り付けた状態で、この縦管2を人孔部材1の上部開口から挿入するが、この排出管8の下端、つまり第1管部材81の下端及び第2管部材82の下端は、人孔部材1の下面15に接するため、上記実施形態のような支持台7は不要となる。したがって、排出管8の下端が人孔部材1の下面15に接し、位置決めがなされた後、縦管2をアンカー28等によって人孔部材1に固定することができる。
【0040】
<9-2>
あるいは、
図5及び
図6のように構成することもできる。
図5は縦管構造体の他の例を示す断面図であり、
図6は
図5の縦管の下端部付近の拡大断面図である。
図5及び
図6に示すように、この例では、人孔部材1の下端付近に、いわゆるコンクリート等のスラブなどで構成される板状の支持部材9を配置する。この支持部材9は、人孔部材1の内部空間を軸方向に仕切るように配置され、縦管2の貫通孔51と対応する部分に円形の挿入口91が形成されている。縦管2の下端部の端部材5には、貫通孔51の周縁からやや下方に延びる係合管52を設けておき、この係合管52を支持部材9の挿入口91にはめ込む。これにより、上方から下ろされた縦管2は支持部材9によって支持される。また、支持部材9には、径方向に縦管2からずれた位置に貫通孔92が形成されており、この貫通孔92を介して、作業者は、支持部材9の下方の空間から支持部材9上に登ることができる。したがって、縦管2の外周面や人孔部材1の内周面の点検を行うことができる。なお、このような貫通孔は、複数設けられていてもよく、その形状も特には限定されない。
【0041】
このような構成であっても、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。すなわち、縦管2の下端部と人孔部材1の下面15との間には空間(第1空間)70が形成されているため、この空間が、従来例の流出管の代わりとなって機能する。また、排出管6,8がないため、コストが安価であるという利点がある。なお、支持部材9は、人孔部材1の第1開口11よりも上方に配置されることが好ましい。特に、支持部材9と人孔部材1との距離は、従来例の流出管と同様に、概ね縦管2の内径の半分程度以上とすることができる。
【0042】
<9-3>
案内板4は、上記のように軸管3の一部に設けられていればよい。例えば、軸管3の上端部及び下端部の2箇所など、複数箇所に設けることもできるし、軸管3の全長に亘って設けることもできる。
【0043】
<9-5>
人孔部材1、縦管2及び軸管3の上下方向の高さは特には限定されず、人孔部材1は、縦坑300のいずれかの位置に配置されていればよい。そして、人孔不在を介して、上部水路の水が、縦管内に流入するように構成されていればよい。また、人孔部材の第1開口から排出された水が、下部水路200に流れればよいため、連結管400,600の構成は特には限定されない。
【符号の説明】
【0044】
1 人孔部材
2 縦管
20 空間(第2空間)
3 軸管
4 案内板
5 端部材
51 貫通孔
6 排出管(第1排出管)
7 支持台
70 空間(第1空間)
8 排出管(第2排出管)
9 支持部材