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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】現像ローラ、および、画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/08 20060101AFI20221206BHJP
   F16C 13/00 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
G03G15/08 235
F16C13/00 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018222699
(22)【出願日】2018-11-28
(65)【公開番号】P2020086241
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-06-25
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】522345803
【氏名又は名称】株式会社アーケム
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100225543
【弁理士】
【氏名又は名称】上原 真
(72)【発明者】
【氏名】佐野 武宏
【審査官】山下 清隆
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-325598(JP,A)
【文献】特開2004-191561(JP,A)
【文献】国際公開第2012/117659(WO,A1)
【文献】特開2018-091883(JP,A)
【文献】特開2010-113177(JP,A)
【文献】特開2012-220567(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/08
G03G 15/00
F16C 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフト部材と、当該シャフト部材の径方向外側に位置する基層と、当該基層の径方向外側に位置し、表面を形成する表層とを備える、現像ローラであって、
前記表層が、平均粒径2μm以下のトリアジン系樹脂粒子を含み、
前記表層に含まれるバインダー樹脂100質量部に対する前記トリアジン系樹脂粒子の含有量(質量部)を、前記トリアジン系樹脂粒子の平均粒径(μm)で除した値が、350~750であり、
トナー単位質量あたりの帯電量が50(μC/g)以下であり、
且つ、現像ローラ表面の単位面積あたりのトナー質量が0.25~0.35(mg/cm2)であることを特徴とする、現像ローラ。
【請求項2】
前記表層に含まれるバインダー樹脂100質量部に対する前記トリアジン系樹脂粒子の含有量(質量部)が、1~200質量部である、請求項1に記載の現像ローラ。
【請求項3】
前記表層に含まれるバインダー樹脂100質量部に対する前記トリアジン系樹脂粒子の含有量(質量部)が、5~120質量部である、請求項1に記載の現像ローラ。
【請求項4】
前記トリアジン系樹脂粒子の平均粒径が、1μm以下である、請求項1~のいずれかに記載の現像ローラ。
【請求項5】
請求項1~のいずれかの現像ローラを備える、画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現像ローラ、および、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機やプリンタ、ファクシミリ等の電子写真方式を用いた画像形成装置では、まず、感光体の表面を一様に帯電させ、この感光体に光学系から映像を投射して、光の当たった部分の帯電を消去することによって潜像を形成する静電潜像プロセスにより静電潜像を得、次いで、トナーの付着によるトナー像の形成、紙等の記録媒体へのトナー像の転写により、プリントする方法が採られている。
【0003】
図1に、画像形成装置の一構成例を示す。図示する画像形成装置においては、現像ローラ10が、トナーを供給するためのトナー供給ローラ11と静電潜像を保持した感光ドラム(感光体)12との間に配置され、これら現像ローラ10、感光ドラム12およびトナー供給ローラ11がそれぞれ図中の矢印方向に回転することで、トナー13がトナー供給ローラ11により現像ローラ10の表面に供給される。供給されたトナーは成層ブレード14により均一な薄層に整えられ、この状態で現像ローラ10が感光ドラム12と回転することにより、薄層に形成されたトナーが現像ローラ10から感光ドラム12の潜像に付着して、潜像が可視化されるようになっている。
潜像は、感光ドラム12の表面が帯電ローラ15により帯電され、帯電された表面に対して露光装置16により画像情報が露光されることで形成される。また、図中の符号17は転写部を示し、ここで紙等の記録媒体18にトナー画像が転写される。また、符号19はクリーニング部を示し、転写後に感光ドラム12の表面に残留するトナーをクリーニングブレード20により除去している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-65188号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、紙等の記録媒体上の画質を向上させるために、現像ローラにおいて、例えば平均粒径4~10μm程度のウレタン粒子を現像ローラの表層に含有させて、当該粒子によりトナーが担持されるようにし、そして、現像ローラ表面の単位面積あたりのトナー質量(M/A)(以下、単にトナー質量とも称す)が所定量となるよう調整している。しかし、画質向上の観点からは、トナー質量だけではなくトナー単位質量あたりの帯電量(Q/M)(以下、単にトナー帯電量とも称す)も調整することが重要であるが、従来の現像ローラ(例えば特許文献1)では、トナー帯電量(Q/M)を調整しようとすると、トナー質量(M/A)の調整が困難になり、それぞれを十分適正に調整することができなかった(例えば正帯電性のトナーのトナー帯電量(Q/M)を下げようとするとトナー質量(M/A)が高くなりすぎていた)。また、トナー帯電量(Q/M)を制御する方法としてイオン液体を用いる方法もあるが、かかる方法では、トナーを汚染する懸念があった。
【0006】
そこで、本発明は、トナー単位質量あたりの帯電量(Q/M)と、現像ローラの単位面積あたりのトナー質量(M/A)とを適正に調整することができる現像ローラ、および、画質を向上させることができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の現像ローラは、シャフト部材と、当該シャフト部材の径方向外側に位置する基層と、当該基層の径方向外側に位置し、表面を形成する表層とを備える、現像ローラであって、
前記表層が、平均粒径2μm以下のトリアジン系樹脂粒子を含み、
前記表層に含まれるバインダー樹脂100質量部に対する前記トリアジン系樹脂粒子の含有量(質量部)を、前記トリアジン系樹脂粒子の平均粒径(μm)で除した値が、38~750であることを特徴とする。
本発明の現像ローラによれば、トナー帯電量(Q/M)とトナー質量(M/A)とを適正に調整することができる。
【0008】
本発明の現像ローラでは、前記表層に含まれるバインダー樹脂100質量部に対する前記トリアジン系樹脂粒子の含有量(質量部)を、前記トリアジン系樹脂粒子の平均粒径(μm)で除した値が、150~750であることが好ましく、より好ましくは、350~750である。この構成によれば、トナー帯電量(Q/M)とトナー質量(M/A)とをより適正に調整することができる。
【0009】
本発明の現像ローラでは、前記トリアジン系樹脂粒子の平均粒径が、1μm以下であることが好ましい。この構成によれば、トナー質量(M/A)の上昇を抑えることができる。
【0010】
本発明の画像形成装置は、上記の現像ローラを備えることを特徴とする。本発明の画像形成装置によれば、画質を向上させることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、トナー単位質量あたりの帯電量(Q/M)と、単位面積あたりのトナー質量(M/A)とを適正に調整することができる現像ローラ、および、画質を向上させることができる画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】画像形成装置の一構成例を示す概略図である。
図2】本発明の一実施形態に係る現像ローラを、軸方向に沿う断面により示す、断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態について例示説明する。
本実施形態の現像ローラは、図1に示すような画像形成装置(例えばレーザープリンター)において用いることができ、図2の軸方向断面図に示すように、現像ローラ1は、シャフト部材2と、当該シャフト部材2の径方向外側に位置する基層3と、当該基層3の径方向外側に位置し、現像ローラ1の表面を形成する表層4とを備える。また、本実施形態の現像ローラ1の表層4は、平均粒径2μm以下のトリアジン系樹脂粒子を含み、表層4に含まれるバインダー樹脂100質量部に対するトリアジン系樹脂粒子の含有量(質量部)を、トリアジン系樹脂粒子の平均粒径(μm)で除した値が、38~750である。
なお、本実施形態の現像ローラ1は、シャフト部材2上に形成する層として基層3および表層4に限定されることはなく、基層3と表層4との間やシャフト部材2と基層3との間には、任意に、単層または複数層の他の層を形成することができる。例えば、基層3、表層4の間に接着性や電気抵抗調整等のローラ特性を発現させるために、複数の層を設けてもよい。
【0014】
シャフト部材2は、図2に示す例では、シャフト部材2の軸方向一端から他端まで外径が略一定の棒状である。しかし、シャフト部材2は、図示の例に限らず、例えば、中空円筒状のパイプと、当該パイプの両端に取り付けられ、シャフト部材2の軸方向両端となる軸を有する1対の軸付きキャップと、から構成される中空体にすることもできる。
【0015】
シャフト部材2は、金属材料により形成することができ、金属材料としては特に限定されず例えば、鉄やステンレス、アルミニウム、これらを含む合金等が挙げられる。また、シャフト部材2としては、導電剤を含有させた高剛性の樹脂材料により形成することもできる。
また、シャフト部材2の外径は、十分な強度を備えつつ軽量化の観点から、3~8mmとすることができる。
【0016】
基層3は、シャフト部材2の径方向外側に位置し、導電性および弾性を有する層とすることができる。具体的には、基層3は、公知のゴム若しくは樹脂、または、これらに気泡を分散させたフォーム体により形成することができる。具体的には、基層3を形成する材料としては、ポリウレタン樹脂(ウレタン骨格を複数有するアクリレート重合体も含む)や、シリコーンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、エチレン-プロピレンゴム、ポリノルボルネンゴム、スチレン-ブタジエン-スチレンゴム、エピクロルヒドリンゴム等を基材ゴムとするゴム組成物等が例示されるが、特に、ポリウレタン樹脂が好ましい。発泡体の場合の発泡倍率としては、特に制限されるものではないが、1.2~50倍が好ましく、より好ましくは1.5~10倍である。また、フォーム密度は、0.1~0.7g/cm3が適当である。
【0017】
基層3は、導電性を備えるために、イオン導電剤や電子導電剤等の導電剤を含有することができる。導電剤としては、限定されるものではないが、例えば、イオン導電剤としては、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、ドデシルトリメチルアンモニウム(例えば、ラウリルトリメチルアンモニウム)、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、オクタデシルトリメチルアンモニウム(例えば、ステアリルトリメチルアンモニウム)、ベンジルトリメチルアンモニウム、変性脂肪酸ジメチルエチルアンモニウムなどと過塩素酸、塩素酸、塩酸、臭素酸、ヨウ素酸、ホウフッ化水素酸、硫酸、エチル硫酸、カルボン酸、スルホン酸などとのアンモニウム塩;リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ金属やアルカリ土類金属と過塩素酸、塩素酸、塩酸、臭素酸、ヨウ素酸、ホウフッ化水素酸、トリフルオロメチル硫酸、スルホン酸などとのアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩;等が挙げられる。また、電子導電剤の例としては、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等の導電性カーボン;SAF、ISAF、HAF、FEF、GPF、SRF、FT、MT等のゴム用カーボン;酸化処理を施したインク用カーボン、熱分解カーボン、天然グラファイト、人造グラファイト;酸化スズ、酸化チタン、酸化亜鉛等の導電性金属酸化物;ニッケル、銅、銀、ゲルマニウム等の金属などが挙げられる。これらの導電剤は単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0018】
基層3は、特に制限されるものではないが、良好な画質を得る観点から、その体積抵抗率を103~1010Ωcmとすることが好ましく、より好ましくは104~108Ωcmである。体積抵抗率を上記の範囲とすることにより良好な画質を得ることができる。
【0019】
また、基層3には、上記導電剤の他にも、必要に応じて、発泡剤、整泡剤、硬化剤、増粘剤、消泡剤、レベリング剤、分散剤、チクソトロピー性付与剤、ブロッキング防止剤、架橋剤、成膜助剤等の公知の添加剤を適量配合することができる。
さらに、基層3は、特に限定されないが例えば、基層3の原料となる樹脂組成物の塗料をシャフト部材2の表面に塗装することにより形成することができ、当該塗装方法としては、ダイコート法、ロールコート法、ディッピング法、スプレー法、コンマコート法等を用いることができる。
【0020】
基層3の厚さとしては、0.2~5mmであることが好ましく、0.5~5mmであることがより好ましい。基層3の厚さをかかる範囲とすることで柔軟性を向上させるとともに軽量化することができる。
【0021】
表層4は、基層3の径方向外側に位置し、現像ローラ1の表面を形成する層である。表層4は、後述するバインダー樹脂と、平均粒径2μm以下のトリアジン系樹脂粒子を含む樹脂組成物により形成され、表層4に含まれるバインダー樹脂100質量部に対するトリアジン系樹脂粒子の含有量(質量部)を、トリアジン系樹脂粒子の平均粒径(μm)で除した値が、38~750である。
このように、表層4が、平均粒径2μm以下のトリアジン系樹脂粒子を、その含有量と平均粒径とが所定の関係を満たすように含有することで、トナー帯電量(Q/M)とトナー質量(M/A)とを適正に調整することができる。
具体的には、正帯電性のトナーを用いた場合、現像ローラのトナー質量(M/A)が高くなりすぎると、トナー搬送が過多となり、印字不良や感光体の汚れが発生する場合があり、また、トナー帯電量(Q/M)が高くなりすぎると、現像ローラ1から感光体へのトナーの受け渡しが円滑に行われず、所定の印字濃度を得ることができない場合がある。また、負帯電性のトナーの場合、トナー帯電量(Q/M)が小さくなりすぎる場合も同様に所定の印字濃度を得ることができない場合がある。したがって、記録媒体上の画質を向上させる観点からトナー帯電量(Q/M)とトナー質量(M/A)とを適正に調整することが求められている。
そして、従来の現像ローラでは、正帯電性のトナーを用いた場合、現像ローラのトナー質量(M/A)を高くさせすぎずにトナー帯電量(Q/M)を小さくなるように調整することが困難であった(なお、逆に、負帯電性のトナーの場合ではトナー質量(M/A)を高くさせすぎずにトナー帯電量(Q/M)を高く調整することが困難であった。以下、正帯電性のトナーに着目して説明する)。具体的には、従来の現像ローラでは、現像ローラのトナー質量(M/A)を所定量とするため、例えば平均粒径4~10μm程度のウレタン粒子を現像ローラの表層に含有させると、トナーが帯電しやすくなりトナー帯電量(Q/M)が大きくなりすぎることとなり、逆に、トナーの帯電を抑えてトナー帯電量(Q/M)が小さくなるようにウレタン粒子の平均粒径を大きくすると、粒子にトナーが多く担持されてトナー質量(M/A)が大きくなりすぎていた。
これに対して、本実施形態の現像ローラ1では、表層4が平均粒径2μm以下のトリアジン系樹脂粒子を含有することにより、現像ローラ1がトナーを多く担持しすぎることを避けつつ(すなわち、トナー質量(M/A)が高くなるのを避けつつ)、正電荷を帯びやすいトリアジン系樹脂粒子によってトナー帯電量(Q/M)を小さくしやすくすることができる。さらに、本実施形態では、トリアジン系樹脂粒子の含有量と平均粒径とが所定の関係を満すことにより、表層4の表面においてトナーとトリアジン系樹脂粒子とが接触・擦れやすくなり(帯電列の観点より正帯電性のトナーを帯電させにくくなり)、トナー帯電量(Q/M)を効果的に小さくすることができる。したがって、トナー帯電量(Q/M)とトナー質量(M/A)とを適正に調整することができる。
なお、本発明の現像ローラは、正帯電性のトナーだけでなく負帯電性のトナーを用いる場合にも使用することができる。
【0022】
トリアジン系樹脂粒子に用いられるトリアジン系樹脂としては、トリアジン骨格を有するものであれば限定されることはなく、例えば、メラミン・ホルムアルデヒド縮合樹脂(メラミン樹脂)、メラミンを主成分とする、メラミン・ユリア・ホルムアルデヒド共縮合樹脂、メラミン・ベンゾグアナミン・ホルムアルデヒド共縮合樹脂、ベンゾグアナミン・ホルムアルデヒド縮合物等も用いることができる。このような粒子を用いることにより、トナー質量(M/A)が高くなるのを避けつつ、トナー帯電量(Q/M)を小さくしやすくすることができる。なお、トリアジン系樹脂粒子はトリアジン系樹脂により構成することができるが、トリアジン系樹脂粒子中には、トリアジン系樹脂粒子による発明の効果を損なわない範囲で他の化合物(例えばシリカ等)が含まれることは許容される。
【0023】
本実施形態において、トリアジン系樹脂粒子は、平均粒径が2μm以下であり、より好ましくは1μm以下である。平均粒径を2μm以下とすることにより、トナー質量(M/A)をより低くすることができる。また、平均粒径を1μm以下とすることにより、トナー質量(M/A)の上昇を抑えることができる。
なお、平均粒径とは、レーザー回折・散乱法によって求められる体積平均粒径(Mv)を意味している。
【0024】
本実施形態において、表層4に含まれるバインダー樹脂100質量部に対するトリアジン系樹脂粒子の含有量(質量部)を、トリアジン系樹脂粒子の平均粒径(μm)で除した値は、38~750であり、より好ましくは150~750であり、さらに好ましくは、350~750である。
トリアジン系樹脂粒子の含有量(質量部)を平均粒径(μm)で除した値を38以上にすることにより、表層4の表面においてトナーとトリアジン系樹脂粒子とが接触・擦れやすくなり(トナーを帯電させにくくなり)、正帯電性のトナーのトナー帯電量(Q/M)を効果的に小さくすることができる。また、トリアジン系樹脂粒子の含有量(質量部)を平均粒径(μm)で除した値を750以下にすることにより、トリアジン系樹脂粒子が多くなりすぎるのを抑制して、表層4を形成するためのバインダー樹脂(硬化させる前の塗料の状態)の貯蔵安定性を向上させることができたり、トリアジン系樹脂粒子の脱落を防止して表層4の耐久性を向上させることができる。
【0025】
トリアジン系樹脂粒子の含有量は、表層4のバインダー樹脂100質量部に対して、1~200質量部が好ましく、より好ましくは5~120質量部である。上記の範囲とすることにより、トナー帯電量(Q/M)とトナー質量(M/A)とを調整しやすくすることができる。
【0026】
ところで、表層4のバインダー樹脂としては、特に限定されることなく、通常用いられる樹脂材料のうちから所望に応じ適宜選択して用いることができる。具体的には例えば、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、アクリルウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、エポキシ樹脂、アミノ樹脂、アルキッド樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂などが挙げられる。また、紫外線(UV)照射等により硬化する紫外線硬化型樹脂等の光硬化性樹脂も好適に用いることができる。光硬化性樹脂を用いた場合、長い乾燥工程が不要となるので、生産性やコスト性の面で優れるものとなる。かかる紫外線硬化型樹脂は、例えば、(A)(メタ)アクリレートオリゴマー、(B)(メタ)アクリレートモノマーおよび(C)光重合開始剤により構成することができる。
【0027】
(A)(メタ)アクリレートオリゴマーは、アクリロイルオキシ基(CH2=CHCOO-)またはメタクリロイルオキシ基(CH2=C(CH3)COO-)を1つ以上有するオリゴマーである。(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、具体的には、ウレタン系(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ系(メタ)アクリレートオリゴマー、エーテル系(メタ)アクリレートオリゴマー、エステル系(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリカーボネート系(メタ)アクリレートオリゴマー、フッ素系(メタ)アクリレートオリゴマー、シリコーン系(メタ)アクリレートオリゴマー等が挙げられ、これらの中でも、ウレタン系(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましい。かかる(メタ)アクリレートオリゴマーは、ポリエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、多価アルコールとε-カプロラクトンの付加物等と、(メタ)アクリル酸との反応により、あるいはポリイソシアネート化合物および水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物をウレタン化することにより、合成することができる。なお、(メタ)アクリレートオリゴマーは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
ウレタン系(メタ)アクリレートオリゴマーは、ポリオールと、イソシアネート化合物と、水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物と、をウレタン化することによって得ることができる。また、エポキシ系(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、グリシジル基を有する化合物と(メタ)アクリル酸との反応生成物が好ましく、ベンゼン環、ナフタレン環、スピロ環、ジシクロペンタジエン、トリシクロデカン等の環状構造を有し、かつ、グリシジル基を有する化合物と、(メタ)アクリル酸との反応生成物がより好ましい。さらに、エーテル系(メタ)アクリレートオリゴマー、エステル系(メタ)アクリレートオリゴマーおよびポリカーボネート系(メタ)アクリレートオリゴマーは、各々に対するポリオール(ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールおよびポリカーボネートポリオール)と、(メタ)アクリル酸との反応によって得られる。
【0029】
(メタ)アクリレートオリゴマーは、特に制限されないが、重量平均分子量が500以上であることが好ましく、1000以上であることがより好ましい。また、かかる重量平均分子量は、40000以下であることが好ましい。ここで、この重量平均分子量が500以上であると、表層4を形成するための硬化する前の塗膜に伸び特性を付与することができ、現像ローラの耐久性が改善される。一方、重量平均分子量が40000を超えると、塗膜の粘着性が増加し、作業性が低下してしまう場合がある。
【0030】
(メタ)アクリレートオリゴマーは、特に制限されないが、官能基数が2~4であることが好ましく、2~3であることが更に好ましい。ここで、官能基とは、アクリロイルオキシ基およびメタクリロイルオキシ基を指し、官能基数とは、平均官能基数を指す。(メタ)アクリレートオリゴマーの官能基数が上記特定範囲にあれば、紫外線硬化型樹脂の架橋密度が低下し、その弾性率を低減することができる。また、(メタ)アクリレートオリゴマーの官能基数が2未満では、反応速度が低下するだけでなく、反応点が減少するために、未反応物が増加し、感光体等の隣接部材への汚染物質の付着等が起こる場合がある。一方、(メタ)アクリレートオリゴマーの官能基数が4を超えると、硬度が高くなり過ぎるだけでなく、脆くなってしまい、表層4の削れが発生する虞が生じる。
【0031】
また、(B)(メタ)アクリレートモノマーは、アクリロイルオキシ基(CH2=CHCOO-)またはメタクリロイルオキシ基(CH2=C(CH3)COO-)を1つ以上有するモノマーであり、反応性希釈剤として作用し、すなわち、紫外線で硬化する上、表層形成用の原料の粘度を低下させることが可能である。(メタ)アクリレートモノマーの分子量は、特に制限されないが、70~2000であることが好ましい。
【0032】
(メタ)アクリレートモノマーは、官能基数が1~4であることが好ましい。ここで、官能基とは、アクリロイルオキシ基およびメタクリロイルオキシ基を指し、官能基数とは、平均官能基数を指す。(メタ)アクリレートモノマーの官能基数が4を超えると、紫外線硬化型樹脂中の架橋密度が増加するため、弾性率が上昇するおそれがある。
【0033】
(メタ)アクリレートモノマーは、アクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基の他、嵩高い置換基または極性基を有するものが好ましい。(メタ)アクリレートモノマーが嵩高い置換基または極性基を有することで、重合後の高分子鎖は立体的に嵩高くなり、または高分子鎖内の極性基相互作用が強くなる結果、高分子の結晶性が低下する。一般に、非晶性高分子は、結晶性高分子より伸び特性が良好である傾向があるため、嵩高い置換基または極性基を有する(メタ)アクリレートモノマーは、紫外線硬化型樹脂の弾性率の低下に有効であると考えられる。かかる(メタ)アクリレートモノマーとして、具体的には、アクリロイルモルホリン、N,N-ジエチルアミノエチルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート等が好適に挙げられる。(メタ)アクリレートモノマーは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
また、(メタ)アクリレートモノマーは、分子内にケイ素またはフッ素を含有することもできる。(メタ)アクリレートモノマーが分子内にケイ素またはフッ素を有することで、紫外線硬化型樹脂の表面の摩擦係数を増加させることなく、樹脂の柔軟性を高めることができる。これは、ケイ素またはフッ素が持つ撥水性、撥油性に起因していると考えられる。これにより、紫外線硬化型樹脂の弾性率を低減することができる。
【0035】
上記ケイ素を含む(メタ)アクリレートモノマーとしては、両末端反応性シリコーンオイル類、片末端反応性シリコーンオイル類、(メタ)アクリロキシアルキルシラン類が好ましい。ここで、両末端反応性シリコーンオイル類および片末端反応性シリコーンオイル類とは、反応性末端としてアクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基を末端に導入したものを指す。
【0036】
上記両末端反応性シリコーンオイル類としては、下記式(I)、
【化1】
(式中、mは繰り返し単位数である)で表されるシリコーンオイルが挙げられる。かかる両末端反応性シリコーンオイル類としては、市販品を使用することができ、例えば、信越化学工業(株)製の品名「X-22-164A」(粘度25mm2/s、官能基当量860g/mol)、品名「X-22-164B」(粘度55mm2/s、官能基当量1630g/mol)、品名「X-22-164C」(粘度90mm2/s、官能基当量2370g/mol)、東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製の品番「BX16-152B」(粘度40cs/25℃、メタクリル基当量1300g/mol、25℃での比重0.97)、品番「BY16-152」(粘度85cs/25℃、メタクリル基当量2800g/mol、25℃での比重0.97)、品番「BX2-152C」(粘度330cs/25℃、メタクリル基当量5100g/mol、25℃での比重0.97)等を用いることができる。
【0037】
また、片末端反応性シリコーンオイル類としては、下記式(II)、
【化2】
(式中、R1は、メチル基またはブチル基であり、nは繰り返し単位数である)で表されるシリコーンオイル、および、下記式(III)、
【化3】
で表されるシリコーンオイルが挙げられる。かかる片末端反応性シリコーンオイル類としては、市販品を使用することができ、例えば、信越化学工業(株)製の品名「X-24-8201」(粘度25mm2/s、官能基当量2100g/mol)、品名「X-22-174DX」(粘度60mm2/s、官能基当量4600g/mol)、品名「X-22-2426」(粘度180mm2/s、官能基当量12000g/mol)、東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製の品番「BX16-122A」(粘度5cs/25℃、屈折率1.417、25℃での比重0.92)等を用いることができる。
【0038】
さらに、上記(メタ)アクリロキシアルキルシラン類としては、3-メタクリロキシプロピルジクロロメチルシラン[CH2=C(CH3)COO(CH23SiCl2CH3]、3-アクリロキシプロピルジメトキシメチルシラン[CH2=CHCOO(CH23Si(OCH32CH3]、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン[CH2=CHCOO(CH23Si(OCH33]、3-メタクリロキシプロピルジメトキシメチルシラン[CH2=C(CH3)COO(CH23Si(OCH32CH3]、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン[CH2=C(CH3)COO(CH23Si(OCH33]、3-メタクリロキシプロピルジエトキシメチルシラン[CH2=C(CH3)COO(CH23Si(OC252CH3]、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン[CH2=C(CH3)COO(CH23Si(OC253]等が挙げられる。(メタ)アクリロキシアルキルシラン類としては、市販品を利用することができ、例えば、信越化学工業(株)製の品番「LS-2080」、「LS-2826」、「LS-2827」、「LS-3375」、「LS-3380」、「LS-4548」、「LS-5118」等を用いることができる。
【0039】
一方、上記フッ素を含む(メタ)アクリレートモノマーとしては、水素原子の1つ以上がフッ素で置換された炭素数5~16のアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、具体的には、2,2,2-トリフルオロエチルアクリレート[CF3CH2OCOCH=CH2,フッ素含有率37質量%]、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピルアクリレート[CF3CF2CH2OCOCH=CH2,フッ素含有率47質量%]、2-(パーフルオロブチル)エチルアクリレート[CF3(CF23CH2CH2OCOCH=CH2,フッ素含有率54質量%]、3-(パーフルオロブチル)-2-ヒドロキシプロピルアクリレート[CF3(CF23CH2CH(OH)CH2OCOCH=CH2,フッ素含有率49質量%]、2-(パーフルオロヘキシル)エチルアクリレート[CF3(CF25CH2CH2OCOCH=CH2,フッ素含有率59質量%]、3-(パーフルオロヘキシル)-2-ヒドロキシプロピルアクリレート[CF3(CF25CH2CH(OH)CH2OCOCH=CH2,フッ素含有率55質量%]、2-(パーフルオロオクチル)エチルアクリレート[CF3(CF27CH2CH2OCOCH=CH2,フッ素含有率62質量%]、3-(パーフルオロオクチル)-2-ヒドロキシプロピルアクリレート[CF3(CF27CH2CH(OH)CH2OCOCH=CH2,フッ素含有率59質量%]、2-(パーフルオロデシル)エチルアクリレート[CF3(CF29CH2CH2OCOCH=CH2,フッ素含有率65質量%]、2-(パーフルオロ-3-メチルブチル)エチルアクリレート[(CF32CF(CF22CH2CH2OCOCH=CH2,フッ素含有率57質量%]、3-(パーフルオロ-3-メチルブチル)-2-ヒドロキシプロピルアクリレート[(CF32CF(CF22CH2CH(OH)CH2OCOCH=CH2,フッ素含有率52質量%]、2-(パーフルオロ-5-メチルヘキシル)エチルアクリレート[(CF32CF(CF24CH2CH2OCOCH=CH2,フッ素含有率61質量%]、3-(パーフルオロ-5-メチルヘキシル)-2-ヒドロキシプロピルアクリレート[(CF32CF(CF24CH2CH(OH)CH2OCOCH=CH2,フッ素含有率57質量%]、2-(パーフルオロ-7-メチルオクチル)エチルアクリレート[(CF32CF(CF26CH2CH2OCOCH=CH2,フッ素含有率64質量]、3-(パーフルオロ-7-メチルオクチル)-2-ヒドロキシプロピルアクリレート[(CF32CF(CF26CH2CH(OH)CH2OCOCH=CH2,フッ素含有率60質量%]、1H,1H,3H-テトラフルオロプロピルアクリレート[CHF2CF2CH2OCOCH=CH2,フッ素含有率41質量%]、1H,1H,5H-オクタフルオロペンチルアクリレート[CHF2(CF23CH2OCOCH=CH2,フッ素含有率53質量%]、1H,1H,7H-ドデカフルオロヘプチルアクリレート[CHF2(CF25CH2OCOCH=CH2,フッ素含有率59質量%]、1H,1H,9H-ヘキサデカフルオロノニルアクリレート[CHF2(CF27CH2OCOCH=CH2,フッ素含有率63質量%]、1H-1-(トリフルオロメチル)トリフルオロエチルアクリレート[(CF32CHOCOCH=CH2,フッ素含有率51質量%]、1H,1H,3H-ヘキサフルオロブチルアクリレート[CF3CHFCF2CH2OCOCH=CH2,フッ素含有率48質量%]、2,2,2-トリフルオロエチルメタクリレート[CF3CH2OCOC(CH3)=CH2,フッ素含有率34質量%]、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピルメタクリレート[CF3CF2CH2OCOC(CH3)=CH2,フッ素含有率44質量%]、2-(パーフルオロブチル)エチルメタクリレート[CF3(CF23CH2CH2OCOC(CH3)=CH2,フッ素含有率51質量%]、3-(パーフルオロブチル)-2-ヒドロキシプロピルメタクリレート[CF3(CF23CH2CH(OH)CH2OCOC(CH3)=CH2,フッ素含有率47質量%]、2-(パーフルオロヘキシル)エチルメタクリレート[CF3(CF25CH2CH2OCOC(CH3)=CH2,フッ素含有率57質量%]、3-(パーフルオロヘキシル)-2-ヒドロキシプロピルメタクリレート[CF3(CF25CH2CH(OH)CH2OCOC(CH3)=CH2,フッ素含有率53質量%]、2-(パーフルオロオクチル)エチルメタクリレート[CF3(CF27CH2CH2OCOC(CH3)=CH2,フッ素含有率61質量%]、3-パーフルオロオクチル-2-ヒドロキシプロピルメタクリレート[CF3(CF27CH2CH(OH)CH2OCOC(CH3)=CH2,フッ素含有率57質量%]、2-(パーフルオロデシル)エチルメタクリレート[CF3(CF29CH2CH2OCOC(CH3)=CH2,フッ素含有率63質量%]、2-(パーフルオロ-3-メチルブチル)エチルメタクリレート[(CF32CF(CF22CH2CH2OCOC(CH3)=CH2,フッ素含有率55質量%]、3-(パーフルオロ-3-メチルブチル)-2-ヒドロキシプロピルメタクリレート[(CF32CF(CF22CH2CH(OH)CH2OCOC(CH3)=CH2,フッ素含有率51質量%]、2-(パーフルオロ-5-メチルヘキシル)エチルメタクリレート[(CF32CF(CF24CH2CH2OCOC(CH3)=CH2,フッ素含有率59質量%]、3-(パーフルオロ-5-メチルヘキシル)-2-ヒドロキシプロピルメタクリレート[(CF32CF(CF24CH2CH(OH)CH2OCOC(CH3)=CH2,フッ素含有率56質量%]、2-(パーフルオロ-7-メチルオクチル)エチルメタクリレート[(CF32CF(CF26CH2CH2OCOC(CH3)=CH2,フッ素含有率62質量%]、3-(パーフルオロ-7-メチルオクチル)-2-ヒドロキシプロピルメタクリレート[(CF32CF(CF26CH2CH(OH)CH2OCOC(CH3)=CH2,フッ素含有率59質量%]、1H,1H,3H-テトラフルオロプロピルメタクリレート[CHF2CF2CH2OCOC(CH3)=CH2,フッ素含有率51質量%]、1H,1H,5H-オクタフルオロペンチルメタクリレート[CHF2(CF23CH2OCOC(CH3)=CH2,フッ素含有率51質量%]、1H,1H,7H-ドデカフルオロヘプチルメタクリレート[CHF2(CF25CH2OCOC(CH3)=CH2,フッ素含有率57質量%]、1H,1H,9H-ヘキサデカフルオロノニルメタクリレート[CHF2(CF27CH2OCOC(CH3)=CH2,フッ素含有率61質量%]、1H-1-(トリフルオロメチル)トリフルオロエチルメタクリレート[(CF32CHOCOC(CH3)=CH2,フッ素含有率48質量%]、1H,1H,3H-ヘキサフルオロブチルメタクリレート[CF3CHFCF2CH2OCOC(CH3)=CH2,フッ素含有率46質量%]等が挙げられる。
【0040】
紫外線硬化型樹脂において、(A)(メタ)アクリレートオリゴマーおよび(B)(メタ)アクリレートモノマーの合計に占める(B)(メタ)アクリレートモノマーの割合は、0~60質量%の範囲が好ましい。(B)(メタ)アクリレートモノマーの含有により、紫外線硬化膜にタック感が生じることを抑制し、摩擦による摩耗が発生しにくくすることができる。一方、当該含有量を60質量%以下とすることにより、紫外線硬化膜に未反応のモノマーが残ることを抑制し、未硬化成分のブリードを生じにくくすることができる。
【0041】
さらに、(C)光重合開始剤は、紫外線を照射されることによって、(A)(メタ)アクリレートオリゴマーおよび(B)(メタ)アクリレートモノマーの重合を開始させる作用を有する。かかる光重合開始剤としては、4-ジメチルアミノ安息香酸、4-ジメチルアミノ安息香酸エステル、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、アセトフェノンジエチルケタール、アルコキシアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、ベンゾフェノン、3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン、4,4’-ジメトキシベンゾフェノンおよび4,4’-ジアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体、ベンゾイル安息香酸アルキル、ビス(4-ジアルキルアミノフェニル)ケトン、ベンジルおよびベンジルメチルケタール等のベンジル誘導体、ベンゾインおよびベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン誘導体、ベンゾインイソプロピルエーテル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、キサントン、チオキサントンおよびチオキサントン誘導体、フルオレン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1,2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(モルホリノフェニル)-ブタノン-1等が挙げられる。これら光重合開始剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。紫外線硬化型樹脂における(C)光重合開始剤の配合量は、上記(A)オリゴマーおよび(B)モノマーの合計100質量部に対して、0.2~5.0質量部の範囲が好ましい。
【0042】
紫外線硬化型樹脂においては、(C)光重合開始剤による重合反応を促進するために、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等の第3級アミン系光重合促進剤、トリフェニルホスフィン等のホスフィン系光重合促進剤、チオジグリコール等のチオエーテル系光重合促進剤等を、さらに添加してもよい。これら光重合促進剤の添加量は、上記(A)オリゴマーおよび(B)モノマーの合計100質量部に対して0.01~10質量部の範囲が好ましい。
【0043】
また、紫外線硬化型樹脂には、さらに、重合禁止剤を含有してもよい。重合禁止剤を添加することで、紫外線照射前の熱重合を防止することができる。重合禁止剤としては、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエ-テル、p-メトキシフェノール、2,4-ジメチル-6-t-ブチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール、ブチルヒドロキシアニソール、3-ヒドロキシチオフェノール、α-ニトロソ-β-ナフトール、p-ベンゾキノン、2,5-ジヒドロキシ-p-キノン等が挙げられる。重合禁止剤の含有量は、上記(A)オリゴマーおよび(B)モノマーの合計100質量部に対して、0.001~0.2質量部の範囲が好ましい。
【0044】
表層4には、導電性を付与するために導電剤を含有してもよく、かかる導電剤としては、上記の基層3に用いることができる導電剤と同様のものが挙げられる。また、表層4には、導電剤以外にも、必要に応じ、各種添加剤を適宜配合することができ、特に制限されるものではない。
【0045】
なお、表層4を紫外線硬化型樹脂以外の樹脂を用いて形成する場合には、通常、メチルエチルケトン(MEK)、アセトン、メタノール、エタノール、トルエン、キシレン、ヘキサン、酢酸エチル、クロロホルム、イソプロピルエーテルなどの溶剤に、上記樹脂や添加剤を溶解、分散した塗料を塗布することにより、表層4を形成することができる。
さらに、表層4を、紫外線硬化型樹脂を用いて形成する場合や、紫外線硬化型樹脂以外の樹脂を用いて形成する場合であっても、表層4には、トリアジン系樹脂粒子の他に、ゴム又は合成樹脂の粒子や無機粒子、カーボン粒子、具体的にはシリコーンゴム、アクリル樹脂、スチレン樹脂、アクリル/スチレン共重合体、フッ素樹脂、ウレタン、ウレタンアクリレート、フェノール樹脂、シリカ等の粒子を含有せることができる。
【0046】
また、本実施形態において、表層4は、特に限定されないが例えば、表層4の原料となる樹脂組成物の塗料を基層3の表面に塗装することにより形成することができ、当該塗装方法としては、ダイコート法、ロールコート法、ディッピング法、スプレー法、コンマコート法等を用いることができる。
【0047】
ところで、本実施形態においては、トナー帯電量(Q/M)が50(μC/g)以下であることが好ましい。また、トナー質量(M/A)が0.25~0.35(mg/cm2)であることが好ましい。このような範囲にすることにより、紙等の記録媒体上の画質を向上させることができる。
【0048】
表層4の厚さは、例えば、0.1~30μmとすることができる。厚さを当該範囲にすることにより、ローラの電気特性、力学特性、表面性状の制御をしやすくすることができる。
【0049】
また、表層4の表面粗さ、すなわち、ローラの表面粗さは、JIS B 0610に準拠する十点平均粗さRzで、1~20μmとすることが好ましい。表面粗さを当該範囲にすることにより良好なトナー搬送性を得やすくすることができる。
【0050】
次に、本実施形態の画像形成装置について、図1を用いて説明する。本実施形態の画像形成装置は、上記の本実施形態の現像ローラ1を備える。
具体的には、本実施形態の画像形成装置では、図1に示すように、現像ローラ1が、トナーを供給するためのトナー供給ローラ11と静電潜像を保持した感光ドラム12との間に配置され、これら現像ローラ1、感光ドラム12およびトナー供給ローラ11がそれぞれ図中の矢印方向に回転することで、トナー13がトナー供給ローラ11により現像ローラ1の表面に供給される。供給されたトナーは成層ブレード14により均一な薄層に整えられ、この状態で現像ローラ1が感光ドラム12と回転することにより、薄層に形成されたトナーが現像ローラ1から感光ドラム12の潜像に付着して、潜像が可視化されるようになっている。
潜像は、感光ドラム12の表面が帯電ローラ15で帯電され、帯電された表面に対して露光装置16により画像情報が露光されることで形成される。また、図中の符号17は転写部を示し、ここで紙等の記録媒体18にトナー画像が転写される。また、符号19はクリーニング部を示し、転写後に感光ドラム12の表面に残留するトナーをクリーニングブレード20により除去している。
なお、本実施形態の画像形成装置には、さらに、画像形成装置に通常用いられる公知の部品を設けることができる(図示せず)。
本実施形態の画像形成装置においては、現像ローラ1として、上記の、トナー帯電量(Q/M)とトナー質量(M/A)とを適正に調整された、本実施形態の現像ローラ1を用いたので、紙等の記録媒体上の画質を向上させることができる。
【0051】
以上、図面を参照して本発明の実施形態を説明したが、本発明の現像ローラおよび画像形成装置は、上記の例に限定されることは無く、本発明の現像ローラおよび画像形成装置には、適宜変更を加えることができる。
【実施例
【0052】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は下記の実施例になんら限定されるものではない。
【0053】
(粒子)
(a-1)トリアジン系樹脂粒子:メラミン樹脂、平均粒径0.1μm(日本触媒社製、エポスターSS)
(a-2)トリアジン系樹脂粒子:メラミン樹脂、平均粒径0.4μm(日本触媒社製、エポスターS6)
(a-3)トリアジン系樹脂粒子:メラミン樹脂、平均粒径2μm(日産化学工業社製、オプトビーズ2000ML)
(a-4)トリアジン系樹脂粒子:メラミン樹脂、平均粒径3.5μm(日産化学工業社製、オプトビーズ3500ML)
(a-5)ウレタン粒子:平均粒径2μm(根上工業社製、MM120T)
(a-6)アクリル粒子:平均粒径0.15μm(綜研化学社製、MP-1451)
【0054】
(実施例1~6、比較例1~5)
実施例1~6、比較例1~5の現像ローラとして、図2に示すような、シャフト部材とその外周に順次形成された基層および表層とを備える現像ローラを作製した。
具体的には、実施例1~6、比較例1~5では、シャフト部材として、外径が7.5mmのアルミ製芯金を用いた。このシャフト部材のパイプの表面上に、基層を、ウレタンアクリレート(亜細亜工業社製、ASBC375)、導電剤(カーボンブラック(電気化学工業株社製、デンカブラック))を用いてダイコート法にて作製した。その後、基層の表面上に、表層を形成させた。表層は、バインダー樹脂(亜細亜工業製、PX31-96)に、表1に示す粒子、開始剤(BASF製、Irg.907)を含有させた塗料を、基層の表面上にロールコート法にて塗布し、紫外線を照射して硬化させて、表層を形成した。
得られた現像ローラを、後述する測定方法により、トナー単位質量あたりの帯電量(Q/M)と、現像ローラの単位面積あたりのトナー質量(M/A)とを測定した。その結果を表1に示す。
【0055】
(トナー帯電量(Q/M)、トナー質量(M/A))
トナー帯電量(Q/M)およびトナー質量(M/A)を次の方法で測定した。
画像形成装置に、表1中の各現像ローラを装着したカートリッジを組み込み、印刷させずに現像ローラを400V、50PPMの条件で空回転させたあとカートリッジを取りだして、現像ローラ表面のトナーをファラデーゲージ内へ吸引して取り込むことで、「トナーの総電気量Q(μC)」と「取り込んだ全てのトナーの質量M(g)」を測定して、トナー帯電量(Q/M(μC/g))を得た。また、上記のようにしてトナー帯電量を測定した際に、トナーを取り去った現像ローラ表面部分の面積(A)を算出することにより、トナー質量(M/A(mg/cm2)を得た。その結果を表1に示す。トナー帯電量(Q/M)が50(μC/g)以下であり、且つ、トナー質量(M/A)が0.25~0.35(mg/cm2)である場合を、良好な値として判断した。
【0056】
【表1】
【0057】
表1より、表層が平均粒径2μm以下のトリアジン系樹脂粒子を、その含有量と平均粒径とが所定の関係を満たすよう含有している実施例1~6の現像ローラは、トナー単位質量あたりの帯電量(Q/M)と、単位面積あたりのトナー質量(M/A)とを所定の範囲内にすることが可能であり、さらに画質を向上させることが可能であることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明によれば、トナー単位質量あたりの帯電量(Q/M)と、現像ローラの単位面積あたりのトナー質量(M/A)とを適正に調整することができる現像ローラ、および、画質を向上させることができる画像形成装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0059】
1,10:現像ローラ、 2:シャフト部材、 3:基層、 4:表層、
11:トナー供給ローラ、 12:感光ドラム(感光体)、 13:トナー、
14:成層ブレード、 15:帯電ローラ、 16:露光装置、 17:転写部、
18:記録媒体、 19:クリーニング部、 20:クリーニングブレード
図1
図2