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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60L 58/18 20190101AFI20221206BHJP
   B60L 15/20 20060101ALI20221206BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
B60L58/18
B60L15/20 J
H02J7/00 K
H02J7/00 P
H02J7/00 302C
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018240938
(22)【出願日】2018-12-25
(65)【公開番号】P2020102992
(43)【公開日】2020-07-02
【審査請求日】2021-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 俊也
(72)【発明者】
【氏名】新見 嘉崇
(72)【発明者】
【氏名】高松 直義
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 悟
(72)【発明者】
【氏名】坂本 拓弥
(72)【発明者】
【氏名】大畠 弘嗣
(72)【発明者】
【氏名】後藤 成晶
(72)【発明者】
【氏名】戸村 修二
(72)【発明者】
【氏名】柳沢 直樹
【審査官】清水 康
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-093923(JP,A)
【文献】特開2014-057459(JP,A)
【文献】特開平10-094182(JP,A)
【文献】特開2014-003858(JP,A)
【文献】特開2010-057288(JP,A)
【文献】特開2015-047012(JP,A)
【文献】特開2008-067432(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00 - 3/12
B60L 7/00 - 13/00
B60L 15/00 - 58/40
H01M 10/60 - 10/667
H02J 7/00
B60W 20/00 - 20/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正線と第1ノードとの間に接続された第1スイッチ素子と、第1ノードと第2ノードとの間に接続された第2スイッチ素子と、第2ノードと負線との間に接続された第3スイッチ素子と、前記第1ノード及び前記負線にそれぞれ正極及び負極が接続された第1電源と、前記正線と第3ノードとの間に接続されたリアクトル素子と、前記第3ノード及び前記第2ノードにそれぞれ正極及び負極が接続された第2電源と、を備え、前記第1スイッチ素子、前記第2スイッチ素子、及び前記第3スイッチ素子のオン/オフ状態を切り換えることにより、前記第1電源及び前記第2電源が直列に接続された状態で電気負荷に接続されている直列接続状態、前記第1電源及び前記第2電源が並列に接続された状態で前記電気負荷に接続されている並列接続状態、及び前記第1電源及び前記第2電源の一方のみが前記電気負荷に接続されている単独接続状態の間で、前記第1電源及び前記第2電源と電気負荷との接続状態を切り換え可能な車両の制御装置であって、
前記第1電源及び前記第2電源の残容量差が大きい場合、前記残容量差が小さい場合と比較して、前記電気負荷との接続状態を前記直列接続状態に制御する第1運転領域の大きさを減少させると共に、前記電気負荷との接続状態を前記並列接続状態又は残容量が高い方の電源の前記単独接続状態に制御する第2運転領域の大きさを拡大する制御手段を備え
前記制御手段は、前記第1電源及び前記第2電源の残容量に相関する指標が低い場合、前記指標が高い場合と比較して、前記第1運転領域の大きさを減少させると共に前記第2運転領域の大きさを拡大することを特徴とする車両の制御装置。
【請求項2】
前記制御手段は、出力が大きい運転領域では、前記第運転領域の大きさを減少させる共に前記電気負荷との接続状態を前記直列接続状態に制御する運転領域の大きさを拡大し、出力が小さい運転領域では、前記第1運転領域の大きさを減少させると共に前記第2運転領域の大きさを拡大することを特徴とする請求項1に記載の車両の制御装置。
【請求項3】
前記制御手段は、出力が小さい運転領域では、前記残容量差が第1所定値以上該第1所定値より大きい第2所定値以下である場合、前記第1運転領域の大きさの減少分だけ前記電気負荷との接続状態を前記並列接続状態に制御する運転領域の大きさを拡大し、前記残容量差が前記第2所定値より大きい場合には、前記電気負荷との接続状態を残容量が高い方の電源の前記単独接続状態に制御する運転領域の大きさを拡大することを特徴とする請求項に記載の車両の制御装置。
【請求項4】
正線と第1ノードとの間に接続された第1スイッチ素子と、第1ノードと第2ノードとの間に接続された第2スイッチ素子と、第2ノードと負線との間に接続された第3スイッチ素子と、前記第1ノード及び前記負線にそれぞれ正極及び負極が接続された第1電源と、前記正線と第3ノードとの間に接続されたリアクトル素子と、前記第3ノード及び前記第2ノードにそれぞれ正極及び負極が接続された第2電源と、を備え、前記第1スイッチ素子、前記第2スイッチ素子、及び前記第3スイッチ素子のオン/オフ状態を切り換えることにより、前記第1電源及び前記第2電源が直列に接続された状態で電気負荷に接続されている直列接続状態、前記第1電源及び前記第2電源が並列に接続された状態で前記電気負荷に接続されている並列接続状態、及び前記第1電源及び前記第2電源の一方のみが前記電気負荷に接続されている単独接続状態の間で、前記第1電源及び前記第2電源と電気負荷との接続状態を切り換え可能な車両の制御装置であって、
ある出力を得るのに際し、前記第1電源及び前記第2電源の残容量差が小さい場合、前記電気負荷との接続状態を前記直列接続状態に制御し、前記第1電源及び前記第2電源の残容量差が大きい場合には、前記電気負荷との接続状態を前記並列接続状態又は残容量が大きい方の電源の前記単独接続状態に制御する制御手段を備え
前記制御手段は、出力が大きい第1運転領域では、ある出力を得るのに際し、前記電気負荷との接続状態を前記直列接続状態に制御し、前記第1運転領域における前記出力より該出力が小さい第2運転領域では、ある出力を得るのに際し、前記第1電源及び前記第2電源の残容量差が小さい場合、前記電気負荷との接続状態を前記直列接続状態に制御し、前記第1電源及び前記第2電源の残容量差が大きい場合には、前記電気負荷との接続状態を前記並列接続状態又は残容量が大きい方の電源の前記単独接続状態に制御することを特徴とする車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直列接続状態、並列接続状態、及び単独接続状態の間で電気負荷との接続状態を切り換え可能な2つの電源を備える車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、2つの電源と、少なくとも一つのリアクトル素子と、スイッチ回路と、を備え、2つの電源の接続状態を並列接続状態と直列接続状態との間で交互に切り換えることにより負荷に対する出力電圧を調整する電源装置が記載されている。特許文献2には、モータの回転数及び目標出力トルクに基づいてモータシステム損失が最小となるインバータ入力電圧を出力するように昇圧コンバータを制御する制御装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-3858号公報
【文献】国際公開第2012/144019号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献2に記載の制御装置を特許文献1に記載の電源装置に適用することによって、2つの電源の接続状態を直列接続状態にしかできない動作点以外では、モータの回転数及び目標出力トルクに基づいてモータを効率的に運転可能である接続状態が並列接続状態、直列接続状態、及び一方の電源による単独駆動状態のうちのいずれかであるかを判断して2つの電源の接続状態を制御することが考えられる。なお、2つの電源の接続状態を直列接続状態にしかできない動作点としては、2つの電源の単体電力が要求電力未満であり、且つ、2つの電源の単体電力がモータの逆起電力未満である場合を例示できる。
【0005】
しかしながら、このような制御では、2つの電源の接続状態が2つの電源の残容量が不均衡である状態(一方の電源による単独駆動状態)から直列接続状態へ移行した際、定常走行等によって直列接続状態が継続された場合には、2つの電源の残容量が不均衡なまま減少することになる。結果、一方の電源の残容量が先に下限値に達して直列接続状態を維持できなくなり、他方の電源による単独駆動状態となって出力制限が発生する可能性がある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、2つの電源間における残容量の不均衡のために出力制限が発生することを抑制可能な車両の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る車両の制御装置は、正線と第1ノードとの間に接続された第1スイッチ素子と、第1ノードと第2ノードとの間に接続された第2スイッチ素子と、第2ノードと負線との間に接続された第3スイッチ素子と、前記第1ノード及び前記負線にそれぞれ正極及び負極が接続された第1電源と、前記正線と第3ノードとの間に接続されたリアクトル素子と、前記第3ノード及び前記第2ノードにそれぞれ正極及び負極が接続された第2電源と、を備え、前記第1スイッチ素子、前記第2スイッチ素子、及び前記第3スイッチ素子のオン/オフ状態を切り換えることにより、前記第1電源及び前記第2電源が直列に接続された状態で電気負荷に接続されている直列接続状態、前記第1電源及び前記第2電源が並列に接続された状態で前記電気負荷に接続されている並列接続状態、及び前記第1電源及び前記第2電源の一方のみが前記電気負荷に接続されている単独接続状態の間で、前記第1電源及び前記第2電源と電気負荷との接続状態を切り換え可能な車両の制御装置であって、前記第1電源及び前記第2電源の残容量差が大きい場合、前記残容量差が小さい場合と比較して、前記電気負荷との接続状態を前記直列接続状態に制御する第1運転領域の大きさを減少させると共に、前記電気負荷との接続状態を前記並列接続状態又は残容量が高い方の電源の前記単独接続状態に制御する第2運転領域の大きさを拡大する制御手段を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る車両の制御装置は、上記発明において、前記制御手段は、前記第1電源及び前記第2電源の残容量に相関する指標が低い場合、前記指標が高い場合と比較して、前記第1運転領域の大きさを減少させると共に前記第2運転領域の大きさを拡大することを特徴とする。このような構成によれば、残容量に余裕があり、すぐに出力制限が掛からない場合には、当初の設定通り直列接続状態での運転が可能になるので、並列接続状態で運転することによって損失が増大することを抑制できる。
【0009】
本発明に係る車両の制御装置は、上記発明において、前記制御手段は、出力が大きい運転領域では、前記第1運転領域の大きさを減少させる共に前記電気負荷との接続状態を前記直列接続状態に制御する運転領域の大きさを拡大し、出力が小さい運転領域では、前記第1運転領域の大きさを減少させると共に前記第2運転領域の大きさを拡大することを特徴とする。このような構成によれば、出力が大きい運転領域において単独接続状態で運転することにより要求出力を出力できなくなることを抑制できる。
【0010】
本発明に係る車両の制御装置は、上記発明において、前記制御手段は、出力が小さい運転領域では、前記残容量差が第1所定値以上該第1所定値より大きい第2所定値以下である場合、前記第1運転領域の大きさの減少分だけ前記電気負荷との接続状態を前記並列接続状態に制御する運転領域の大きさを拡大し、前記残容量差が前記第2所定値より大きい場合には、前記電気負荷との接続状態を残容量が高い方の電源の前記単独接続状態に制御する運転領域の大きさを拡大することを特徴とする。このような構成によれば、できるだけ並列接続状態で運転することにより、単独接続状態で運転する場合より損失が悪化することを抑制できる。
【0011】
本発明に係る車両の制御装置は、正線と第1ノードとの間に接続された第1スイッチ素子と、第1ノードと第2ノードとの間に接続された第2スイッチ素子と、第2ノードと負線との間に接続された第3スイッチ素子と、前記第1ノード及び前記負線にそれぞれ正極及び負極が接続された第1電源と、前記正線と第3ノードとの間に接続されたリアクトル素子と、前記第3ノード及び前記第2ノードにそれぞれ正極及び負極が接続された第2電源と、を備え、前記第1スイッチ素子、前記第2スイッチ素子、及び前記第3スイッチ素子のオン/オフ状態を切り換えることにより、前記第1電源及び前記第2電源が直列に接続された状態で電気負荷に接続されている直列接続状態、前記第1電源及び前記第2電源が並列に接続された状態で前記電気負荷に接続されている並列接続状態、及び前記第1電源及び前記第2電源の一方のみが前記電気負荷に接続されている単独接続状態の間で、前記第1電源及び前記第2電源と電気負荷との接続状態を切り換え可能な車両の制御装置であって、ある出力を得るのに際し、前記第1電源及び前記第2電源の残容量差が小さい場合、前記電気負荷との接続状態を前記直列接続状態に制御し、前記第1電源及び前記第2電源の残容量差が大きい場合には、前記電気負荷との接続状態を前記並列接続状態又は残容量が大きい方の電源の前記単独接続状態に制御する制御手段を備えることを特徴とする。
【0012】
本発明に係る車両の制御装置は、上記発明において、前記制御手段は、出力が大きい第1運転領域では、ある出力を得るのに際し、前記電気負荷との接続状態を前記直列接続状態に制御し、前記第1運転領域における前記出力より該出力が小さい第2運転領域では、ある出力を得るのに際し、前記第1電源及び前記第2電源の残容量差が小さい場合、前記電気負荷との接続状態を前記直列接続状態に制御し、前記第1電源及び前記第2電源の残容量差が大きい場合には、前記電気負荷との接続状態を前記並列接続状態又は残容量が大きい方の電源の前記単独接続状態に制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る車両の制御装置によれば、2つの電源のうちの一方の電源の残容量のみが減少することを抑制できるので、2つの電源間における残容量の不均衡のために出力制限が発生することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の一実施形態である車両の制御装置が適用される車両の構成を示すブロック図である。
図2図2は、図1に示す電源装置の構成を示す回路図である。
図3図3は、モータ回転数及びモータトルクと第1バッテリ及び第2バッテリの接続状態との関係の一例を示す図である。
図4図4は、モータの必要最低電圧を表す曲線の一例を示す図である。
図5図5は、従来の電源装置における課題を説明するための図である。
図6図6は、本発明の一実施形態である接続状態制御処理の流れを示すフローチャートである。
図7図7は、本発明の一実施形態である接続状態制御処理の作用効果を説明するための図である。
図8図8は、本発明の一実施形態である接続状態制御処理の作用効果を説明するための図である。
図9図9は、本発明の一実施形態である接続状態制御処理の変形例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態である車両の制御装置の構成について説明する。
【0016】
〔車両の構成〕
まず、図1を参照して、本発明の一実施形態である車両の制御装置が適用される車両の構成について説明する。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態である車両の制御装置が適用される車両の構成を示すブロック図である。図1に示すように、本発明の一実施形態である車両の制御装置が適用される車両1は、HV(Hybrid Vehicle)車両により構成され、エンジン(ENG)2、電源装置3、第1インバータ(INV1)4a、第2インバータ(INV2)4b、第1電動機(MG1)5a、及び第2電動機(MG2)5bを備えている。なお、車両1は、HV車両に限定されることはなく、EV(Electric Vehicle),PHV(Plug-in Hybrid Vehicle),FCEV(Fuel Cell Electric Vehicle)等であってもよい。
【0018】
エンジン2は、ガソリンや軽油等を燃料として動力を出力する内燃機関によって構成され、後述するHV電子制御ユニット(以下、HV-ECUと表記)102によって駆動制御される。
【0019】
電源装置3は、正線PL及び負線NLを介して第1インバータ4a及び第2インバータ4bに接続され、後述する電池電子制御ユニット(以下、電池ECUと標記)101によって制御される。
【0020】
第1インバータ4a及び第2インバータ4bは、複数のスイッチ素子を備え、直流電力と交流電力とを相互に変換する機能を有している。第1インバータ4a及び第2インバータ4bは、HV-ECU102による複数のスイッチ素子のオン/オフ制御によって、電源装置3から供給された直流電力を交流電力に変換して第1電動機5a及び第2電動機5bに供給すると共に、第1電動機5a及び第2電動機5bが発電した交流電力を直流電力に変換して電源装置3に供給する。
【0021】
第1電動機5a及び第2電動機5bは、同期発電電動機により構成されている。第1電動機5a及び第2電動機5bはそれぞれ、第1インバータ4a及び第2インバータ4bから供給された交流電力によって駆動されることにより車両駆動用の電動機として機能すると共に、車両1の駆動力を利用して交流電力を発電する発電機として機能する。
【0022】
車両1は、制御系として、電池ECU101及びHV-ECU102を備えている。
【0023】
電池ECU101は、電源装置3を構成する複数のバッテリの充電状態の管理や異常検出や電圧制御を実行する。電池ECU101には、各バッテリの温度Tbを示す電気信号、各バッテリの出力電圧Vbを示す電気信号、各バッテリの出力電流Ibを示す電気信号等の各種電気信号が入力される。電池ECU101は、温度Tb、出力電圧Vb、電流Ib等に基づいて各バッテリの残容量を算出する。電池ECU101は、出力電圧Vb、温度Tb、各バッテリの残容量等の各種信号をHV-ECU102に送信する。また、電池ECU101は、HV-ECU102から受信した指令信号に基づいて電源装置3に対する制御信号を出力する。
【0024】
HV-ECU102は、電池ECU101と相互に通信可能に構成されており、各種指令や各種センサの検知結果等の各種信号の送受信を行う。HV-ECU102は、車両1の走行時においてドライバの要求に応じた車両駆動力を発生させるために、エンジン2、第1インバータ4a、及び第2インバータ4bを制御すると共に、電源装置3の出力電圧を制御する。HV-ECU102には、イグニッションスイッチの操作信号IGCN、エンジン2の回転数NE、第1電動機5a及び第2電動機5bの回転数、車速、アクセル開度、電源装置3の出力電圧Vh、温度Tb、各バッテリの残容量等の各種信号が入力される。また、HV-ECU102は、入力された情報に基づいて算出された、エンジン2に対する制御信号NRef、第1インバータ4a及び第2インバータ4bに対するPWM(Pulse Width Modulation)制御信号である信号PWM1,PWM2、電源装置3の出力電圧を要求電圧に切り替えるための指令信号、及び電源装置3内のスイッチ素子に対するPWM制御信号である信号PWC等を出力する。
【0025】
電池ECU101及びHV-ECU102は、物理的には、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、及び入出力インターフェース等を含む周知のマイクロコンピュータを主体とする電子回路によって構成されている。電池ECU101及びHV-ECU102の機能は、CPUがROMに保持されているコンピュータプログラムをRAMにロードして実行することによって、制御対象を動作させると共にRAMやROMにおけるデータの読み出し及び書き込みを行うことで実現される。
【0026】
〔電源装置の構成〕
次に、図2及び図3を参照して、電源装置3の構成について説明する。
【0027】
図2は、図1に示す電源装置3の構成を示す回路図である。図2に示すように、電源装置3は、正線PLと第1ノードN1との間に接続された第1スイッチ素子S1と、第1ノードN1と第2ノードN2との間に接続された第2スイッチ素子S2と、第2ノードN2と負線NLとの間に接続された第3スイッチ素子S3と、第1ノードN1及び負線NLにそれぞれ正極及び負極が接続された第1バッテリB1と、正線PLと第3ノードN3との間に接続されたリアクトル素子Rと、第3ノードN3及び第2ノードN2にそれぞれ正極及び負極が接続された第2バッテリB2と、正線PLと負線NLとの間に接続された平滑コンデンサCと、を備えている。ここで、第1バッテリB1及び第2バッテリB2はキャパシタであってもよい。
【0028】
なお、第1スイッチ素子S1、第2スイッチ素子S2、及び第3スイッチ素子S3は、半導体スイッチング素子によって構成されている。半導体スイッチング素子としては、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)が用いられる。IGBTのコレクタ端子とエミッタ端子との間には、エミッタ端子に接続される側をアノードとしてダイオード(整流素子)が接続されている。半導体スイッチング素子としてIGBT以外のものを用いる場合、スイッチ素子が導通したときに流れる電流とは逆向きの電流が流れるように半導体スイッチング素子にダイオードを並列に接続する。ダイオードは、半導体スイッチング素子に伴う寄生ダイオードであってもよい。本明細書では、半導体スイッチング素子とダイオードとを併せたものをスイッチ素子という。
【0029】
[電気負荷との接続状態]
この電源装置3では、HV-ECU102が、第1スイッチ素子S1、第2スイッチ素子S2、及び第3スイッチ素子S3のオン/オフ状態を制御することにより、第1バッテリB1及び第2バッテリB2と第1インバータ4a及び第2インバータ4b(電気負荷)との接続状態を直列接続状態、並列接続状態、第1バッテリB1の単独接続状態、及び第2バッテリB2の単独接続状態の間で切り換えることができる。
【0030】
具体的には、HV-ECU102は、第1スイッチ素子S1及び第3スイッチ素子S3をオフ状態、第2スイッチ素子S2をオン状態に制御することにより、第1バッテリB1と第2バッテリB2とを直列に接続された状態で第1インバータ4a及び第2インバータ4bに接続する(直列接続状態)。また、HV-ECU102は、第1スイッチ素子S1及び第3スイッチ素子S3をオン状態、第2スイッチ素子S2をオフ状態に制御することにより、第1バッテリB1と第2バッテリB2とを並列に接続された状態で第1インバータ4a及び第2インバータ4bに接続する(並列接続状態)。また、HV-ECU102は、第1スイッチ素子S1をオン状態、第2スイッチ素子S2及び第3スイッチ素子S3をオフ状態に制御することにより、第1バッテリB1のみを第1インバータ4a及び第2インバータ4bに接続する(第1バッテリB1の単独接続状態)。また、HV-ECU102は、第1スイッチ素子S1及び第2スイッチ素子S2をオフ状態、第3スイッチ素子S3をオン状態に制御することにより、第2バッテリB2のみを第1インバータ4a及び第2インバータ4bに接続する(第2バッテリB2の単独接続状態)。
【0031】
[電気負荷との接続状態の切り換え]
また、この電源装置3では、HV-ECU102が、第1電動機5a及び第2電動機5b(以下、モータと総称)の回転数(以下、モータ回転数と表記)及び出力トルク(以下、モータトルクの表記)に応じて、第1バッテリB1及び第2バッテリB2と第1インバータ4a及び第2インバータ4b(以下、インバータと総称)との接続状態を切り換える。以下、図3及び図4を参照して、モータ回転数及びモータトルクと第1バッテリB1及び第2バッテリB2とインバータとの接続状態との関係について説明する。
【0032】
図3は、モータ回転数及びモータトルクと第1バッテリB1及び第2バッテリB2とインバータとの接続状態との関係の一例を示す図である。図4は、モータの必要最低電圧を表す曲線の一例を示す図である。図3において、曲線L1は、図4に示すモータ回転数とモータトルクとから決まるモータの必要最低電圧を表す曲線L11~L14のうちの一つを示す。第1バッテリB1の出力電圧と第2バッテリB2の出力電圧のうち、大きい方の出力電圧が曲線L1に示す必要最低電圧より小さいモータの運転領域R11では、第1バッテリB1の出力電圧と第2バッテリB2の出力電圧との和をインバータに供給するために、第1バッテリB1及び第2バッテリB2とインバータとの接続状態は直列接続状態に切り換えられる(運転領域R11)。一方、曲線L2は、第1バッテリB1単独又は第2バッテリB2単独で出力可能な電力を示す曲線である。曲線L1と曲線L2とによって囲まれるモータの運転領域R12では、第1バッテリB1及び第2バッテリB2とインバータとの接続状態は直列接続状態又は並列接続状態に切り換えられる。
【0033】
また、曲線L2に対応するモータ回転数及びモータトルクよりモータ回転数及びモータトルクが小さいモータの運転領域R13では、第1バッテリB1及び第2バッテリB2とインバータとの接続状態は直列接続状態、並列接続状態、第1バッテリB1の単独接続状態、及び第2バッテリB2の単独接続状態のうちのいずれかの接続状態に切り換えられる。なお、モータの運転領域R12,R13では、第1バッテリB1及び第2バッテリB2とインバータとの接続状態は、モータの動作点と損失との関係を示すマップデータを参照してモータの動作点における電源装置3の回路損失、インバータの損失、及びモータの損失を接続状態毎に算出し、算出された損失の和が低い接続状態、すなわちモータを最も効率的に運転可能な接続状態を選択することによって決定される。
【0034】
ところで、上述のように、モータの運転領域R12,R13においてモータを最も効率的に運転可能な接続状態を選択するようにした場合、図5に示すような課題が発生する。図5は、従来の電源装置における課題を説明するための図である。モータの運転領域R12,R13においてモータを最も効率的に運転可能な接続状態を選択するようにした場合、図5に示すように、第1バッテリB1の残容量(SOC)と第2バッテリB2の残容量とが不均衡である状態から、換言すれば、第1バッテリB1の単独接続状態又は第2バッテリB2の単独接続状態(要求動作点P11)から直列接続状態(要求動作点P12)に移行することが考えられる(図5に示す時間t=t1)。
【0035】
この際、車両1の定常走行等によって直列接続状態が継続された場合(図5に示す時間t=t1~t2)、第1バッテリB1の残容量と第2バッテリB2の残容量とが不均衡である状態のまま第1バッテリB1の残容量と第2バッテリB2の残容量とが同じ分だけ減少する。結果、どちらか一方のバッテリ(図5に示す例では第2バッテリB2)の残容量が先に下限値(SOC)に達することにより直列接続状態を維持できなくなり、接続状態が単独接続状態となって(要求動作点P12から動作点P13に移動)要求出力に対して出力制限が掛かる可能性がある(図5に示す時間t=t3)。
【0036】
そこで、本実施形態では、HV-ECU102が以下に示す接続状態制御処理を実行することにより、第1バッテリB1と第2バッテリB2との間における残容量の不均衡のために出力制限が発生することを抑制する。以下、図6図8を参照して、この接続状態制御処理を実行する際のHV-ECU102の動作について説明する。
【0037】
〔接続状態制御処理〕
図6は、本発明の一実施形態である接続状態制御処理の流れを示すフローチャートである。図6に示すフローチャートは、車両1のイグニッションスイッチがオフ状態からオン状態に切り換えられたタイミングで開始となり、接続状態制御処理はステップS1の処理に進む。接続状態制御処理は、車両1のイグニッションスイッチがオン状態である間、前回の接続制御処理が終了してから所定時間経過したタイミングで再度実行される。
【0038】
ステップS1の処理では、HV-ECU102が、第1バッテリB1及び第2バッテリB2とインバータとの接続状態が並列接続状態であるときの電源装置3の出力電圧(並列時電源電圧)がモータの最低必要電圧より大きいか否かを判別する。なお、並列時電源電圧は第1バッテリB1の出力電圧と第2バッテリB2の出力電圧とから算出でき、モータの最低必要電圧はモータ回転数及びモータトルクから算出することができる。また、並列時電源電圧は、第1バッテリB1の出力電圧と第2バッテリB2の出力電圧のうちの小さい方の出力電圧としてもよい。判別の結果、並列時電源電圧がモータの最低必要電圧より大きい場合(ステップS1:Yes)、HV-ECU102は、接続状態制御処理をステップS3の処理に進める。一方、並列時電源電圧がモータの最低必要電圧以下である場合には(ステップS1:No)、HV-ECU102は、接続状態制御処理をステップS2の処理に進める。なお、HV-ECU102は、並列時電源電圧とモータの最低必要電圧以下の所定電圧との大小関係に基づいてステップS1の処理を実行してもよい。
【0039】
ステップS2の処理では、HV-ECU102が、第1バッテリB1及び第2バッテリB2とインバータとの接続状態を直列接続状態に決定する。これにより、ステップS2の処理は完了し、一連の接続状態制御処理は終了する。
【0040】
ステップS3の処理では、HV-ECU102が、第1バッテリB1及び第2バッテリB2の出力電圧と電源装置3の損失との関係を示すマップを参照して、第1バッテリB1及び第2バッテリB2とインバータとの接続状態が直列接続状態であるときの効率(直列時効率)と第1バッテリB1及び第2バッテリB2とインバータとの接続状態が並列接続状態であるときの効率(並列時効率)とを算出する。そして、HV-ECU102は、直列時効率が並列時効率より大きいか否かを判別する。判別の結果、直列時効率が並列時効率より大きい場合(ステップS3:Yes)、HV-ECU102は、接続状態制御処理をステップS4の処理に進める。一方、直列時効率が並列時効率以下である場合には(ステップS3:No)、HV-ECU102は、接続状態制御処理をステップS6の処理に進める。
【0041】
ステップS4の処理では、HV-ECU102が、第1バッテリB1及び第2バッテリB2とインバータとの接続状態を直列接続状態に決定する。これにより、ステップS4の処理は完了し、接続状態制御処理はステップS5の処理に進む。
【0042】
ステップS5の処理では、HV-ECU102が、第1バッテリB1の残容量SOCB1及び第2バッテリB2の残容量SOCB2を算出し、残容量SOCB1と残容量SOCB2との差|SOCB1-SOCB2|を算出する。また、HV-ECU102は、第1バッテリB1及び第2バッテリB2の残容量に相関する指標として、残容量SOCB1と残容量SOCB2との小さい方を特定する。そして、HV-ECU102が、差|SOCB1-SOCB2|が閾値A1より大きく、且つ、残容量SOCB1と残容量SOCB2との小さい方が閾値B未満であるか否かを判別する。
【0043】
なお、HV-ECU102は、モータの要求電力やモータ回転数及びモータトルクに応じて閾値A1及び閾値Bを変化させてもよい。また、本実施形態では、HV-ECU102は、残容量SOCB1と残容量SOCB2と差を用いたが、残容量SOCB1に対する残容量SOCB2の比率等、差に相関するその他のパラメータを算出して用いてもよい。また、HV-ECU102は、第1バッテリB1及び第2バッテリB2の残容量に相関する指標として、残容量SOCB1と残容量SOCB2との小さい方の代わりに残容量SOCB1及び残容量SOCB2の平均値を算出して用いてもよい。
【0044】
判別の結果、差|SOCB1-SOCB2|が閾値A1より大きく、且つ、残容量SOCB1と残容量SOCB2との小さい方が閾値B未満である場合(ステップS5:Yes)、HV-ECU102は、接続状態制御処理をステップS6の処理に進める。一方、差|SOCB1-SOCB2|が閾値A1以下である、又は、残容量SOCB1と残容量SOCB2との小さい方が閾値B以上である場合(ステップS5:No)、HV-ECU102は、接続状態制御処理をステップS7の処理に進める。なお、HV-ECU102は、差|SOCB1-SOCB2|が閾値A1より大きい場合、又は、残容量SOCB1と残容量SOCB2との小さい方が閾値B未満である場合に接続状態制御処理をステップS6の処理に進め、そうでない場合に接続状態制御処理をステップS7の処理に進めるようにしてもよい。
【0045】
ステップS6の処理では、HV-ECU102が、第1バッテリB1及び第2バッテリB2とインバータとの接続状態を並列接続状態に決定する。これにより、ステップS6の処理は完了し、接続状態制御処理はステップS7の処理に進む。
【0046】
ステップS7の処理では、HV-ECU102が、ステップS5の処理において算出した差|SOCB1-SOCB2|が閾値A2(>閾値A1)より大きいか否かを判別する。判別の結果、差|SOCB1-SOCB2|が閾値A2より大きい場合(ステップS7:Yes)、HV-ECU102は、接続状態制御処理をステップS8の処理に進める。一方、差|SOCB1-SOCB2|が閾値A2未満である場合には(ステップS7:No)、HV-ECU102は、一連の接続状態制御処理を終了する。なお、HV-ECU102は、モータの要求電力やモータ回転数及びモータトルクに応じて閾値A2を変化させてもよい。
【0047】
ステップS8の処理では、HV-ECU102が、残容量SOCB1が残容量SOCB2より大きいか否かを判別する。判別の結果、残容量SOCB1が残容量SOCB2より大きい場合(ステップS8:Yes)、HV-ECU102は、接続状態制御処理をステップS9の処理に進める。一方、残容量SOCB1が残容量SOCB2未満である場合には(ステップS8:No)、HV-ECU102は、接続状態制御処理をステップS11の処理に進める。
【0048】
ステップS9の処理では、HV-ECU102が、モータの要求電力が第1バッテリB1の出力可能電圧WoutB1未満であるか否かを判別する。判別の結果、モータの要求電力が第1バッテリB1の出力可能電圧WoutB1未満である場合(ステップS9:Yes)、HV-ECU102は、接続状態制御処理はステップS10の処理に進める。一方、モータの要求電力が第1バッテリB1の出力可能電圧WoutB1より大きい場合(ステップS9:No)、HV-ECU102は、一連の接続状態制御処理を終了する。
【0049】
ステップS10の処理では、HV-ECU102が、インバータとの接続状態を第1バッテリB1の単独接続状態に決定する。これにより、ステップS10の処理は完了し、一連の接続状態制御処理は終了する。
【0050】
ステップS11の処理では、HV-ECU102が、モータの要求電力が第2バッテリB2の出力可能電圧WoutB2未満であるか否かを判別する。判別の結果、モータの要求電力が第2バッテリB2の出力可能電圧WoutB2未満である場合(ステップS11:Yes)、HV-ECU102は、接続状態制御処理はステップS12の処理に進める。一方、モータの要求電力が第2バッテリB2の出力可能電圧WoutB2より大きい場合(ステップS11:No)、HV-ECU102は、一連の接続状態制御処理を終了する。
【0051】
ステップS12の処理では、HV-ECU102が、インバータとの接続状態を第2バッテリB2の単独接続状態に決定する。これにより、ステップS12の処理は完了し、一連の接続状態制御処理は終了する。以後、HV-ECU102は、ステップS2,S4,S6,S10,S12の処理の結果に基づいて第1バッテリB1及び第2バッテリB2とインバータとの接続状態を制御する。
【0052】
以上の説明から明らかなように、本発明の一実施形態である接続状態制御処理では、図7に示すように、第1バッテリB1及び第2バッテリB2の残容量差(SOC差)が大きい場合、HV-ECU102が、残容量差が小さい場合と比較して、直列接続状態で運転する領域R2aを減少させると共に、並列接続状態又は残容量が大きい方のバッテリの単独接続状態で運転する領域R2b,R3を拡大する。このような処理によれば、図8に示すように、第1バッテリB1の単独接続状態又は第2バッテリB2の単独接続状態である要求動作点P1から要求動作点P2に移行する際、第1バッテリB1の残容量と第2バッテリB2の残量量との差が大きい場合には、並列接続状態で運転される。これにより、残容量が多いバッテリから電力が消費されるので、残容量が少ない方のバッテリが下限SOCに到達することが抑制され、時間t4(図5における時間t2に相当)を経過しても要求出力に対して出力制限が掛かることを抑制できる。
【0053】
また、本発明の一実施形態である接続状態制御処理では、図7に示すように、第1バッテリB1及び第2バッテリB2の残容量に相関する指標が低い場合、HV-ECU102が、指標が高い場合と比較して、直列接続状態で運転する領域R2aを減少させると共に並列接続状態又は残容量が大きい方のバッテリの単独接続状態で運転する領域R2b,R3を拡大する。このような構成によれば、残容量に余裕があり、すぐに出力制限が掛からない場合には、当初の設定通り直列接続状態での運転が可能になるので、並列接続状態で運転することによって損失が増大することを抑制できる。
【0054】
また、本発明の一実施形態である接続状態制御処理では、HV-ECU102が、出力が大きい運転領域では、直列接続状態で運転する領域を減少させると共に並列接続状態で運転する領域を拡大し、出力が小さい運転領域では、直列接続状態で運転する領域を減少させると共に並列接続状態又は残容量が大きい方のバッテリの単独接続状態で運転する領域を拡大する。このような構成によれば、出力が大きい運転領域において単独接続状態で運転することにより要求出力を出力できなくなることを抑制できる。
【0055】
また、本発明の一実施形態である接続状態制御処理では、HV-ECU102は、出力が小さい運転領域では、残容量差が閾値A1以上閾値A2以下である場合、直列接続状態で運転する領域の減少分だけ並列接続状態で運転する領域を拡大し、残容量差が閾値A2より大きい場合には、残容量が大きい方のバッテリの単独接続状態で運転する領域を拡大する。このような構成によれば、できるだけ並列接続状態で運転することにより、単独接続状態で運転する場合より損失が悪化することを抑制できる。
【0056】
なお、d軸電流増加制御、いわゆる弱め界磁制御を用いてモータの逆起電圧を下げることにより、これまで直列接続状態で運転していた領域も並列接続状態で運転可能となることを利用して、図9に示すように、第1バッテリB1及び第2バッテリB2の残容量差が大きい場合、HV-ECU102が、残容量差が小さい場合と比較して、弱め界磁制御を用いた並列接続状態の割合を増加させてもよい。
【0057】
また、上記の説明では、運転領域の増減に着目して本発明の一実施形態である接続状態制御処理を説明したが、特定の運転点に着目した場合には、本発明の一実施形態である接続状態制御処理は、以下のように表現することができる。
【0058】
すなわち、本発明の一実施形態である接続状態制御処理では、HV-ECU102は、ある出力を得るのに際し、第1バッテリB1及び第2バッテリB2の残容量差が小さい場合、直列接続状態で運転し、残容量差が大きい場合には、並列接続状態又は残容量が大きい方のバッテリの単独接続状態で運転する。このような構成によれば、第1バッテリB1及び第2バッテリB2の一方のバッテリの残容量のみが減少することを抑制できるので、第1バッテリB1及び第2バッテリB2間における残容量の不均衡のために出力制限が発生することを抑制できる。
【0059】
また、本発明の一実施形態である接続状態制御処理では、HV-ECU102は、出力が大きい運転領域R1では、ある出力を得るのに際し、直列接続状態で運転し、運転領域における出力より出力が小さい運転領域R2a,R2b,R3では、ある出力を得るのに際し、第1バッテリB1及び第2バッテリB2の残容量差が小さい場合、直列接続状態で運転し、残容量差が大きい場合には、並列接続状態又は残容量が大きい方のバッテリの単独接続状態で運転する。但し、一方のバッテリの残容量が非常に低い場合には、運転領域R1であっても直列接続状態では運転しないものとする。
【0060】
以上、本発明者らによってなされた発明を適用した実施形態について説明したが、本実施形態による本発明の開示の一部をなす記述及び図面により本発明は限定されることはない。すなわち、本実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例、及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれる。
【符号の説明】
【0061】
1 車両
2 エンジン(ENG)
3 電源装置
4a 第1インバータ(INV1)
4b 第2インバータ(INV2)
5a 第1電動機(MG1)
5b 第2電動機(MG2)
101 電池電子制御ユニット(電池ECU)
102 HV電子制御ユニット(HV-ECU)
B1 第1バッテリ
B2 第2バッテリ
平滑コンデンサ
NL 負線
N1 第1ノード
N2 第2ノード
PL 正線
R リアクトル素子
S1 第1スイッチ素子
S2 第2スイッチ素子
S3 第3スイッチ素子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9