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特許7189016アルコール溶剤を含有するポリウレタン結合剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】アルコール溶剤を含有するポリウレタン結合剤
(51)【国際特許分類】
   B22C 1/22 20060101AFI20221206BHJP
   B22C 1/00 20060101ALI20221206BHJP
   B22C 1/10 20060101ALI20221206BHJP
   C08G 18/08 20060101ALI20221206BHJP
   C08G 18/18 20060101ALI20221206BHJP
   C08G 18/28 20060101ALI20221206BHJP
   C08G 18/76 20060101ALI20221206BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20221206BHJP
   C08L 75/04 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
B22C1/22 P
B22C1/00 B
B22C1/10 E
B22C1/22 G
C08G18/08 042
C08G18/18
C08G18/28 015
C08G18/76 057
C08K3/013
C08L75/04
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2018521517
(86)(22)【出願日】2016-10-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-01-31
(86)【国際出願番号】 US2016059324
(87)【国際公開番号】W WO2017075351
(87)【国際公開日】2017-05-04
【審査請求日】2019-07-22
(31)【優先権主張番号】62/248,543
(32)【優先日】2015-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517387317
【氏名又は名称】アーエスカー ケミカルズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】ボロニェージ,パウロ,ロジェリオ
(72)【発明者】
【氏名】ソーザ,アレクサンドレ,ブルーノ ディアス
(72)【発明者】
【氏名】ヴィエリア,ファビアナ,コルデイロ
(72)【発明者】
【氏名】サントス,ダヴィ
(72)【発明者】
【氏名】ノセラ,マイケル
【審査官】吉田 早希
(56)【参考文献】
【文献】特表平08-510007(JP,A)
【文献】特表2011-510818(JP,A)
【文献】特開平05-271380(JP,A)
【文献】特開平09-253786(JP,A)
【文献】特表2012-533433(JP,A)
【文献】特表昭61-502387(JP,A)
【文献】豪国特許出願公開第0199958259(AU,A1)
【文献】特開平03-047647(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC C08G 18/00 - 18/87
C08G 71/00 - 71/04
C08K 3/00 - 13/08
C08L 1/00 - 101/14
C09J 1/00 - 5/10
C09J 9/00 - 201/10
B22C 1/00 - 3/02
B22C 5/00 - 9/30
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融金属の鋳造のためのモールドまたはコアを生産するための方法であって、
分子当り少なくとも2つの-OH基を有するポリオールベース樹脂と、溶剤としての2から5の炭素原子を有するアルキルアルコールとを有する第1の成分と、
分子当り少なくとも2つの-NCO基を有するポリイソシアネートを有する第2の成分と
を含み、
前記それぞれの成分は別々に包装されて、使用の際に組み合わされ、
前記ポリオールベース樹脂はフェノール樹脂であり、
前記第1の成分は、
前記ポリオールベース樹脂及び前記アルキルアルコールに加え、1以上の脂肪酸アルキルエステルと、
1以上の二塩基エステル
を含む、
耐火性成形材料を含む成形材料混合物のための結合剤系
を提供するステップと、
前記結合剤系の前記第1の成分および前記第2の成分を前記耐火性成形材料と混合して、成形可能な鋳造混合物を提供するステップと、
前記成形可能な鋳造混合物で前記モールドまたはコアを形成するステップと、
形成された前記モールドまたはコアを硬化させるステップと
を含み、
前記方法は、ポリウレタン「非焼成」法であり、前記硬化させるステップは、前記第1の成分、前記第2の成分、および前記耐火性成形材料に液相の三級アミンを加えることによって達成される、
方法。
【請求項2】
前記アルキルアルコールは無水エタノールである、請求項1に記載の方法
【請求項3】
少なくとも前記第1の成分は、芳香族炭化水素溶剤を含まない、請求項1または請求項2に記載の方法
【請求項4】
前記それぞれ第1および第2の成分は、前記第1の成分が前記第2の成分よりも少ない重さになる重量比で存在する、請求項1または請求項2に記載の方法
【請求項5】
前記第2の成分は、0.1%未満のベンチライフエクステンダーを伴うジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を含み、
前記ベンチライフエクステンダーは、ホスホールオキシトリクロリド(POCl )、フェニルジクロロホスフェート、およびベンジルホスホールオキシジクロリドからなる群から選択される、請求項1または請求項2に記載の方法
【請求項6】
前記第1の成分は、前記ポリオールベース樹脂および前記アルキルアルコールに加えて、少なくとも1つの脂肪酸メチルエステルを含む、請求項1または請求項2に記載の方法
【請求項7】
前記第1の成分は、56.8重量%の前記ポリオールベース樹脂と、23.9重量%の前記1以上の二塩基エステルと、16.9重量%の前記アルキルアルコールとを含有し、残部は前記少なくとも1つの脂肪酸メチルエステルである、請求項6に記載の方法
【請求項8】
48重量部の前記第1の成分が52重量部の前記第2の成分とともに用いられるように、前記第1および第2の成分が包装される、請求項1または請求項2に記載の方法
【請求項9】
前記耐火性成形材料は、石英鉱石砂、ジルコニウム鉱石砂、クロム鉱石砂、カンラン石、シャモット、ボーキサイト、ケイ酸アルミニウム中空球、ガラスビーズ、ガラス顆粒、球状セラミック成形材料、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項に記載の方法
【請求項10】
前記結合剤系は、前記耐火性成形材料の重量に基づいて0.2~5重量%の量で存在する、請求項に記載の方法
【請求項11】
前記結合剤系は、前記耐火性成形材料の重量に基づいて0.3~4重量%の範囲で存在する、請求項に記載の方法
【請求項12】
前記結合剤系は、前記耐火性成形材料の重量に基づいて0.4~3重量%の範囲で存在する、請求項に記載の方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、本明細書に完全に述べられているのと同様に引用により援用される2015年10月30日に出願された米国特許仮出願第62/248,543号の非仮出願であり、それに対する優先権の主張を行うものである。
【0002】
技術分野
本発明は、コールドボックスまたは非焼成プロセスにおいて用いるためのポリウレタンベースの結合剤系に関する。この系においては、芳香族溶剤を少なくとも部分的に置き換えるためにアルコールが用いられる。特に、選択されるアルコールは2から5の炭素原子を有するアルキルアルコールである。最も具体的には、選択されるアルコールはエタノールである。加えてより具体的には、2成分ポリウレタンベース結合剤系のポリオール含有成分においてアルコールが用いられる。
【背景技術】
【0003】
モールドおよびコアを生産するときは、特にコールドボックスまたはポリウレタン非焼成プロセスを用いたモールドおよびコア生産のために大量のポリウレタンベース結合剤系が用いられる。これらの系は溶剤を必要とし、使用されるときのこれらの系からの放出を低減することが必要とされ続けている。
【0004】
典型的なポリウレタンベース結合剤系においては、ユーザに対して2成分系が提供される。第1の成分は、分子当り少なくとも2つの-OH基を有する化合物を含むポリオール成分を含有する。第2の成分は、分子当り少なくとも2つのイソシアネート基を有する化合物を含むポリイソシアネート成分である。これらの成分の少なくとも1つに溶剤が含まれることはほぼ公理的であると考えられ、多くの場合には両方の成分が溶剤を含有する。それぞれの成分とともに溶剤が含まれるとき、それらの成分は通常別々の容器に入れられて販売されており、使用時にのみ組み合わされるようになっている。
【0005】
ポリオールおよびポリイソシアネート成分の特定の詳細は当該技術分野において十分に実証されているため、それらをここにより詳細に説明する必要はない。しかし、各成分に溶剤が用いられるときは、成分が混合されるときに溶剤が適合性であることが特に有用であることを注記することは有用である。ポリオールおよびポリイソシアネート成分の両方が液体の形で使用されるだろう。液体ポリイソシアネートが未希釈の形で使用されてもよいが、固体または粘性のポリイソシアネートが有機溶剤の溶液の形で使用されてもよい。当該技術分野において公知のいくつかの場合に、溶剤はポリイソシアネート溶液の最大80重量%を占め得る。第1の成分に用いられるポリオールが固体または高粘性の液体であるとき、適切な適用特性を可能にするように粘度を調整するために、好適な溶剤が用いられる。
【0006】
先行技術から容易に教示されるとおり、選択される溶剤(または複数の溶剤)は、ポリイソシアネートおよびポリオール化合物間の触媒反応に任意の関連する態様で関与することは意図されていないが、それらは反応に非常によく影響し得る。たとえば、2つの結合剤成分は実質的に異なる極性を有する。このことは、使用され得る溶剤の数を制限する。もしそれらの溶剤が両方の結合剤成分と適合性でなければ、結合剤系の完全な反応および硬化は非常に困難である。プロトン性および非プロトン性のタイプの極性溶剤は、通常ポリオール化合物に対する良好な溶剤であるが、それらはポリイソシアネート化合物に対してあまり好適ではない。一方、芳香族溶剤はポリイソシアネートに対して適合性であるが、ポリオール樹脂に対しては完全に好適ではない。
【0007】
当該技術分野において、一般的な芳香族溶剤はいわゆる「BTX」溶剤を含む。すなわちベンゼン(benzene)、トルエン(toluene)、およびキシレン(xylene)である。工業的に受容されるために、所与の溶剤は溶剤のコスト、その環境との関わり、ならびにその健康および安全性との関わりを含むいくつかの基準を満たす必要がある。いくつかの状況においては、これらの組み合わせによって、これらの基準を満たすために芳香族溶剤、特にBTX溶剤の量を低減または除去したポリウレタンベース結合剤系が要求されることがある。
【0008】
したがって、コールドボックスまたは非焼成プロセスで用いるための、BTX溶剤または揮発性有機炭素(VOC:volatile organic carbon)放出に対する低くした限界を満たすポリウレタンベース結合剤系を提供することは、先行技術のまだ対処されていない目標である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
先行技術のこれらの欠点は、以下により詳細に説明される本発明によって少なくとも部分的に克服される。芳香族溶剤の低放出が必要とされるときに、成形材料混合物のための結合剤系が用いられる。この結合剤系は、使用時に組み合わせるために別々に包装された2つの成分を有する。第1の成分は、分子当り少なくとも2つの-OH基を有するポリオールベース樹脂と、溶剤としての2から5の炭素原子を有するアルキルアルコールとを有する。第2の成分は、分子当り少なくとも2つの-NCO基を有するポリイソシアネートを有する。アルキルアルコールは無水エタノールであってもよく、第1の成分は実質的に芳香族炭化水素溶剤を含まない。第2の成分は典型的に、0.1%未満のベンチライフエクステンダーを伴うジフェニルメタンジイソシアネート(MDI:diphenylmethane diisocyanate)から本質的になる。第1の成分は、少なくとも1つの脂肪酸メチルエステルと、少なくとも1つの二塩基エステルとを含有してもよい。この結合剤系は、「コールドボックス」または「非焼成」法を実施するために用いられてもよい。
【0010】
いくつかの実施形態において、それぞれ第1および第2の成分は、第1の成分が第2の成分よりも少ない重さになるような重量比で存在する。より具体的には、好ましい実施形態は、約48重量部の第1の成分と、約52重量部の第2の成分とを用いる。
【0011】
好ましい実施形態の1つにおいて、第1の成分は約56.8重量%のポリオール樹脂と、23.9重量%の少なくとも1つの二塩基エステルと、16.9重量%のアルキルアルコールとを含有し、残部は少なくとも1つの脂肪酸メチルエステルである。
【0012】
成形材料混合物として使用するために、ある量の耐火性モールドベース材料が結合剤系成分と混合される。
【0013】
好ましい耐火性モールドベース材料は、以下を含む。石英鉱石砂、ジルコニウム鉱石砂、クロム鉱石砂、カンラン石、シャモット、ボーキサイト、ケイ酸アルミニウム中空球、ガラスビーズ、ガラス顆粒、球状セラミック成形材料、およびそれらの組み合わせ。
【0014】
成形材料混合物において、結合剤系は耐火性モールドベース材料の重量に基づいて0.2~5重量%の量で存在し、好ましくは0.3~4重量%の範囲、最も好ましくは0.4~3重量%の範囲で存在する。
【0015】
このアルコール溶剤の使用によって、溶融金属の鋳造のためのモールドまたはコアを生産する方法は、硬化剤が結合剤系にどのように適用されるかによってポリウレタン「コールドボックス」法またはポリウレタン「非焼成」法となり得る。
【発明を実施するための形態】
【0016】
「コールドボックス法」と呼ばれる、コアを生産するための公知の方法は、鋳造産業において非常に重要になってきた。この方法においては、基本的な耐火性成形材料を結合するために2成分ポリウレタン系が用いられる。ポリオール成分は、分子当り少なくとも2つのOH基を有するポリオールからなり、イソシアネート成分は、分子当り少なくとも2つのNCO基を有するポリイソシアネートからなる。成形材料/結合剤系混合物を成形キャビティに注入する際に気体三級アミンをそこに通すことによって、結合剤系が硬化する(米国特許第3,409,579号)。非焼成プロセスにおいては、成形前の結合剤系に液体アミンを加えて、2つの成分を反応させる(米国特許第3,676,392号)。
【0017】
米国特許第3,676,392号および米国特許第3,409,579号に従うと、ポリオールとしてフェノール樹脂が用いられ、これは触媒量の金属イオンの存在下で最大約130℃の温度にて液相においてアルデヒド、好ましくはホルムアルデヒドをフェノールと縮合することによって得られる。米国特許第3,485,797号は、こうしたフェノール樹脂の生成を詳細に記載している。未置換フェノールに加えて、置換フェノール、好ましくはo-クレゾールおよびp-ノニルフェノールが用いられ得る(たとえば米国特許第4,590,229号などを参照)。付加的な反応成分として、欧州特許出願公開第0177871 A2号に従うと、1から8の炭素原子を有する脂肪族モノアルコール基で修飾されたフェノール樹脂が用いられ得る。アルコキシル化の結果として、結合剤系の熱安定性が増加したはずである。ポリオール成分に対する溶剤として、主に高沸点極性溶剤(例、エステルおよびケトン)および高沸点芳香族炭化水素の混合物が用いられる。これに対し、ポリイソシアネートは好ましくは高沸点芳香族炭化水素に溶解される。
【0018】
欧州特許出願公開第0771599 A1号および国際公開第00/25957 A1号が記載する調合物においては、脂肪酸エステルを用いることによって、芳香族溶剤の全体または少なくとも大部分が置き換えられ得る。
【0019】
米国特許第4,051,092号によって公知であるポリウレタン系においては、たとえばジブトキシメタン、ジプロポキシメタン、ジイソブトキシメタン、ジペンチルオキシメタン、ジヘキシルオキシメタン、ジシクロヘキシルオキシメタン、n-ブトキシイソプロポキシメタン、イソブトキシブトキシメタンおよびイソプロポキシペンチルオキシメタン、アセトアルデヒド-n-プロピルアセタール、ベンズアルデヒド-n-ブチルアセタール、アセトアルデヒド-n-ブチルアセタール、アセトン-ジ-n-ブチルケタールおよびアセトフェノン-ジプロピルケタールなどの溶剤の存在下で、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、または水性フェノールホルムアルデヒド樹脂がジイソシアネートと反応する。実施例においては、ケタールブチラール(1-(ブトキシメトキシ)ブタン)が用いられる。米国特許第4,116,916号および米国特許第4,172,068号は、類似の開示内容を有する。
【0020】
ポリウレタン系におけるジアセタール、具体的にはCからCジアルデヒドおよびCからC12アルコールの転換生成物の使用が国際公開第2006/092716 A1号に開示されている。ジアセタールとして挙げられているのは1,1,2,2-テトラメトキシエタン、1,1,2,2-テトラエトキシエタン、1,1,2,2-テトラプロポキシエタン、1,1,3,3-テトラメトキシプロパン、および1,1,3,3-テトラエトキシプロパンである。ジアセタールは、成形材料混合物の加工時間の延長を可能にすることが定められた。しかし、これは新鮮な混合物の安定性に対して実質的に不利な影響を有する(「即時発射」)。非修飾結合剤に関する安定性の損失は、約15%から約20%である。
【0021】
ほとんどの適用に対して、公知のポリウレタン結合剤によって生産されたコアおよびモールドの強度は十分に高い。
【0022】
しかしながら、もし可能であれば強度を失うことなく、すなわち良好な鋳造および安全な取り扱いのために必要なレベルより落とすことなく結合剤含有量を低くするために、強度レベルをさらに増加させることへの関心が高まっている。結合剤の量を減らすことにはいくつかの理由があり、それはたとえば、鋳造の欠陥をもたらすことがありかつ環境を汚染し得る、鋳造中に生成される気体および縮合物の量を減らすためなどである。さらに、結合剤含有量が低いことによって、前に使用した使用済みの砂を再生するコストが低減され、特に鋳造工場は、商業的理由のために可能な限り少量の結合剤を用いることに関心がある。
【0023】
強度レベルに関してとりわけ重要なのは、特に複雑なコアパッケージを形成するために(部分的に)自動化した設備においてコアが生産の直後に組み立てられるか、または永続的な金属モールドに入れられるときに、適切な初期強度レベルを確実にすることである。
【0024】
したがって本発明によって対処される課題は、より低く低められたBTXおよび揮発性有機炭素(VOC)排出をもたらす経済的および生態学的に有利な溶剤を用いて、鋳造産業のための成形物品を生産することを可能にする、ポリウレタンベースの成形材料混合物を提供することであった。
【0025】
本発明の目的は、分子当り少なくとも2つの-OH基を有するポリオールを有する少なくとも1つのポリオール成分と、分子当り少なくとも2つの-NCO基を有するポリイソシアネートを有する少なくとも1つのイソシアネート成分とを含有する、成形材料混合物のための結合剤を提供することである。ポリオール成分はさらに、少なくとも少なくとも1つのアルキルアルコール、特に2から5の炭素原子を有するアルキルアルコールを含む。最も具体的には、アルキルアルコールは無水エタノールである。
【0026】
本発明はさらに、基本的耐火性成形材料と、その基本的耐火性成形材料の重量に対して最大5wt%、好ましくは最大4wt%、特に好ましくは最大3wt%の本発明に従う結合剤系とを含む成形材料混合物に関する。好適な耐火性材料は、たとえば石英鉱石砂、ジルコニウム鉱石砂、またはクロム鉱石砂、カンラン石、シャモット、およびボーキサイトなどを含む。たとえばケイ酸アルミニウム中空球(いわゆるミクロスフェア)、ガラスビーズ、ガラス顆粒、または「セラビーズ(cerabeads)」もしくは「carboaccucast」として公知の球状セラミック成形材料などの、合成によって生産された成形材料も使用され得る。上述の耐火性材料の混合物も可能である。
【0027】
加えて本発明は、鋳造モールドピースまたはコアを生産するための方法に関する。これは、耐火性材料を、耐火性材料の量に対して0.2~5wt%、好ましくは0.3~4wt%、特に好ましくは0.4~3wt%の結合量の本発明の結合剤系と混合して、成形混合物を得ることによって達成される。この成形混合物をモールドに入れてパターン内で硬化させて、自立する鋳造モールドピースを得る。硬化した成形混合物をパターンから分離して、必要であればさらに硬化させて、硬い固体の硬化鋳造モールドピースを得る。この時点で、溶融金属が鋳造モールドに注ぎ込まれてもよい。
【0028】
驚くべきことに、結合剤調合物の一部としてアルキルアルコール、特にエタノールを使用すると、結合剤の経済的、生態学的および実際的な性能基準が容易に果たされることが見出された。さらなる利点として、アルキルアルコールは結合剤成分の低い温度抵抗性を改善することが見出された。
【0029】
ポリウレタンコールドボックス(PUCB:polyurethane cold-box)またはポリウレタン非焼成(PUNB:polyurethane no-bake)結合剤系を提供するために2成分アプローチを用いる結合剤組成物においては、放出問題に対する解決策が見出されているようにみえる。こうした系において、パートI成分はポリオールベース樹脂と、一組の好適な補体と、アルキルアルコールとを含み、パートII成分は一組の好適な補体を伴うポリイソシアネートを含む。
【0030】
フェノール樹脂およびポリイソシアネートは、コールドボックスプロセスまたは非焼成プロセスに用いられることが従来から公知である化合物からなる群れより選択され得る。なぜなら、本発明の概念は組成物のこれらの部分に固有のものではないと考えられるからである。
【0031】
フェノール樹脂により具体的に言及すると、フェノール樹脂は一般的にフェノールとアルデヒド、特に式RCHOのアルデヒドとの縮合生成物より選択され、ここでRは水素または1から8の炭素原子を有するアルキル部分である。縮合反応は液相において、典型的には130℃未満の温度にて行われる。いくつかのこうしたフェノール樹脂は商業的に入手可能であり、容易に知られるであろう。
【0032】
好ましいフェノール樹脂成分は、ベンジルエーテルタイプのフェノール樹脂を含むであろう。個々の場合において、フェノール樹脂の調製のために、たとえばo-クレゾール、p-ノニルフェノール、またはp-tert-ブチルフェノールなどのアルキルフェノールを、特にフェノールとの混合物にて用いることが好都合であり得る。必要に応じて、これらの樹脂は、たとえばメチル、エチル、プロピル、およびブチル基などのアルキル基によってヒドロキシメチレン基をキャッピングすることによって得られるアルコキシル化末端基を特徴としてもよい。
【0033】
ポリマーイソシアネートに関しては、いくつかの商業的に入手可能なポリマーイソシアネートがこの特定の市場に向けられているが、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を含むポリイソシアネート成分を用いることが好ましいかもしれない。ポリウレタンコールドボックスまたは非焼成プロセスのための2成分結合剤系のイソシアネート成分(第2の成分)は通常、好ましくは2から5のイソシアネート基を有する脂肪族、脂環式、または芳香族ポリイソシアネートを含み、こうしたポリイソシアネートの混合物も使用されてもよい。脂肪族ポリイソシアネートの中でも特に好適なポリイソシアネートは、たとえばヘキサメチレンジイソシアネートなどであり、脂環式ポリイソシアネートの中でも特に好適なものは、たとえば4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートなどであり、芳香族ポリイソシアネートの中でも特に好適なものは、たとえば2,4’-および2,6’-トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、およびそれらのジメチル誘導体などである。好適なポリイソシアネートのさらなる例は、1,5-ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、キシレンジイソシアネート、およびそれらのメチル誘導体、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート(ポリマーMDI)などである。すべてのポリイソシアネートが架橋ポリマー構造の形成を伴ってフェノール樹脂と反応するが、実際には芳香族ポリイソシアネートが好ましい。ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トリフェニルメタントリイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート(ポリマーMDI)、およびそれらの混合物が特に好ましい。
【0034】
ポリイソシアネートは、フェノール樹脂の硬化をもたらすために十分な濃度で用いられる。一般的に、使用される(未希釈)フェノール樹脂の質量に基づいて10~500重量%、好ましくは20~300重量%のポリイソシアネートが使用される。ポリイソシアネートは液体の形で用いられる。液体ポリイソシアネートが未希釈の形で用いられてもよく、固体または粘性のポリイソシアネートは有機溶剤の溶液の形で用いられ、溶剤はポリイソシアネート溶液の最大80重量%を占めることが可能である。
【0035】
従来より、いくつかの溶剤がパートIおよびパートII成分に用いられてきた。1つは二塩基エステル、一般的にはジカルボン酸のメチルエステルである。シグマアルドリッチ(Sigma-Aldrich)は、このタイプの二塩基エステルをDBEという商品名で販売しており、これは構造式CHC(CHCOCHを有すると考えられ、ここでnは2から4の整数である。別の溶剤は灯油であり、これは150~275℃の範囲の沸点を有する石油留出物カットの一般名称であると理解される。
【0036】
有用な他の溶剤は芳香族溶剤は、AROMATIC SOLVENT 100、AROMATIC SOLVENT 150、およびAROMATIC SOLVENT 200として商業的に販売されており、これらはそれぞれSOLVESSO100、SOLVESSO150、およびSOLVESSO200としても公知である。これらはそれぞれCAS登録番号(Registry numbers)64742-95-6、64742-95-5、および64742-94-5を有する。SOLVESSOはエクソン(Exxon)の存続期間が満了した登録商標であるが、これらの溶剤はたとえ他の供給源に由来するものであってもそれらの名称で呼ばれている。
【0037】
調合物のそれぞれの部分には、性能添加剤も含まれる。パートI成分における特に好ましい性能添加剤は、フッ化水素酸である(これは通常49%水溶液として用いられるが、異なる希釈度または異なる希釈剤によって用いられてもよい)。カップリング剤および脂肪酸に基づく添加剤も使用され得る。パートII成分における好ましい性能添加剤は、修飾脂肪油およびベンチライフエクステンダーを含み、それはホスホールオキシトリクロリド(POCl)、フェニルジクロロホスフェート、およびベンジルホスホールオキシジクロリドを含むだろう。
【0038】
近年開発された結合剤系は、従来用いられていた芳香族溶剤の代わりに溶剤としてアルキルアルコール、特にエタノールを用いる。従来の系と同様に、結合剤は2つの部分にして提供され、これら2つの部分は好ましくは別々に包装されて、使用の際にのみ組み合わされる。パートI成分はベースポリオール樹脂と、二塩基エステル(「DBE」)と、たとえばナタネメチルエステルまたはダイズメチルエステルなどの脂肪酸アルキルエステルと、エタノールとを含有する。パートII成分は実質的にジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)であるが、一般的には少量だが有効量(約0.05重量%)の従来のベンチライフエクステンダーを含む。この調合物は芳香族溶剤ベンゼン、トルエン、およびキシレン(一般的に集合的に「BTX」と呼ばれる)を含まないことが直ちに注目されるだろう。したがって、この組成を有する結合剤系はBTX排出が厳しく制限される市場においては有用であろうが、この系の引火点は、引火点の制限が実施される市場においては不利であり得る。しかし、エタノールの経済性および「グリーン」性は、選択された市場に利点を提供するだろう。
【0039】
エタノールが溶剤のBTXファミリーと異なるのは、エタノールが結合剤系における反応性希釈剤だからである。単なる例示の目的として、他の反応性希釈剤はフラン、エポキシ、およびウレタン樹脂調合物に用いられる。再び単なる例示の目的として、これらの反応性希釈剤のいくつかは、トリエチレングリコール、レゾルシノール、およびさまざまな単官能または二官能グリシジルエーテルを含む。しかし、従来のフェノールポリウレタンにおいて反応性希釈剤の使用は、主にコストを下げる目的のために一般的ではない。反応性溶剤または希釈剤は、硬化プロセスの間に重合できて、ポリマーマトリックス内に分散される。反応性希釈剤が反応に関与するため、より低い量の揮発性有機化合物(「VOC」)が予期される。エタノールは単官能アルコールであるため、パートII組成物のイソシアネートと反応してポリウレタンを終結できる。より高い官能性を有するアルコールは、ポリマーを延長または架橋し得る。
【0040】
反応性ヒドロキシル基を有する溶剤を用いるときは、ポリオールおよび溶剤の総量と完全に反応するために必要とされるイソシアネート基の量を考慮することが重要である。低「当量」溶剤は、必要なイソシアネートの量を大きく増加させる。当量に対する公式はこの産業において公知であり、当業者が容易に使用できる。「当量(equivalent weight)」の逆数は「当量(equivalent)」であり、これも公知の等式に従って各成分に対して算出され得る。最も有用には、-NCO対-OHの比率に最も一般的には100を掛けたものが「指数」として表される。
【0041】
一般的な原則として、この指数は100の約15%以内であるべきである。しかし、エタノールおよび115g/eqの当量を有するポリオール樹脂を含有し、かつパートIおよびIIを60/40の比率で含有する結合剤組成物に基づいてこれらの算出が行われるとき、指数58が得られる。たとえパートIIが99.95%MDIであっても、この系は完全な反応のために十分なイソシアネートを欠いている。比率を48/52に調整するとき、指数は理想的な範囲内の94に改善する。この算出は、混合の際の蒸発によるエタノール損失を想定していない。したがって、比率をさらに精密にすることによって、改善した性能が得られるかもしれない。
【0042】
加えてこの算出は、1重量%のエタノールが2.94重量%のMDIを消費することを明らかにする。よって、エタノールの使用によってMDI量の増加が必要となり、その結果としてコストが伴い得ることを考慮する必要がある。
【0043】
第一アルコールとしてのエタノールは、結合剤系における溶剤として使用されてきたジアセトンアルコール(CAS Reg.Nr.123-42-2)よりも反応性が高い。この反応性の増加は、実際の作業時間の結果などにおいて明らかである。ベンチライフエクステンダーの添加によっていくつかの反応性の問題を解決できるが、他の問題が引き起こされる。エタノールが用いられるとき、標準的な系に匹敵する反応性を達成するために、結合剤は付加的な触媒を必要とし得る。加えて非焼成結合剤系は、非常に強力な触媒を伴っても2.5分間の作業時間よりも速く加速する問題を有する。混合される砂は、溶剤の総量が低くなること、またはエタノールの反応が未熟であることによって、流動性が低くなることが観察される。最後に、ベンチライフエクステンダーは、硬化したコアおよびモールドの全体的強度性能を減少させる。
【0044】
この概念を実証するために、いくつかの実験調合物を考案し、次いで引張り強度テストに用いた。これらの実施例において、ポリオール樹脂は、ヒドロキシル当量115g/eqを有するベンジリックエーテルフェノール樹脂、CAS Reg.Nr.9003-35-4である。使用される二塩基エステルは、グルタル酸ジメチルと、コハク酸ジメチルと、アジピン酸ジメチルとの混合物である。INNOVATI 170は、ダイズ油の脂肪酸の商業的に入手可能なメチルエステル、CAS Reg.Nr.67784-80-9である。
【0045】
提供される実施例において、イソシアネートタイプ1は、31~33%のNCO含有量を有するポリマージフェニルメタンジイソシアネートである。4-PPPは4-(3-フェニルプロピル)ピリジン(4-(3-phenylpropyl)pyridine)、CAS Reg.Nr.2057-49-0である。NMIはN-メチルイミダゾール(N-methyl imidazole)、CAS Reg.Nr.616-47-7である。エタノールに対する言及は、無水エタノールに対するものである。
【0046】
組成物A
組成物Aと呼ばれる第1の調合物は、次のパートI成分を有した。
【0047】
【0048】
組成物Aに対するパートII成分は次のとおりであった。
【0049】
【0050】
モノフェニルジクロロホスフェートは、CAS Reg No770-12-7を有する。組成物Aは一般的に、パートI成分のエタノールによってBTX溶剤が完全に置き換えられた結合剤系と特徴付けられてもよい。こうした系は、エタノールが容易に入手可能であり、かつBTX放出が厳しく制限されるような市場において商業的適用を有してもよい。一例として、こうした市場はブラジル(Brazil)に見出され得る。
【0051】
組成物B
組成物Bと呼ばれる第2の調合物は、次のパートI成分を有した。
【0052】
【0053】
組成物Bに対するパートII成分は次のとおりであった。
【0054】
【0055】
組成物BのパートI成分は、組成物AのパートIのDBEおよびINNOVATI 170溶剤を芳香族炭化水素溶剤(「BTX溶剤」)で置き換えることによって変更したものである。加えて組成物Bは、組成物AのパートIIと同一のパートII成分を有する。
【0056】
組成物C
組成物Cと呼ばれる第3の調合物は、次のパートI成分を有した。
【0057】
【0058】
組成物Cに対するパートII成分は次のとおりであった。
【0059】
【0060】
組成物Cは、合衆国(United States)で用いられる従来のフェノール結合剤系と特徴付けられ、その市場に対するフェノールウレタン非焼成結合剤ベースライン比較として提供される。ともに用いられるパートI成分にエタノールがないため、パートIIは組成物AおよびBよりも低いパーセンテージのイソシアネートタイプIを有する。
【0061】
引張り強度テスト
各場合に1.2重量%の結合剤レベルを有するウェドロン(Wedron)410,51GFNケイ砂に対して、引張り強度テストを行った。
【0062】
下の表1に示される最初のテストにおいて、従来のフェノールウレタン非焼成結合剤調合物(組成物C)を、エタノール含有パートIを有する結合剤(組成物AおよびB)と比較した。予想に反することなく、エタノール含有系は比較可能な作業時間およびストリップ時間を達成するためにより多くの触媒を必要とし、組成物Cの88という高い指数に対して-NCO対-OHの指数が58しかなかったため、イソシアネートが不十分であったために時間とともに引張り強度を発達させることができなかった。なお、組成物AおよびBはエタノールとイソシアネートとの未熟な反応を抑制するためにパートIIにベンチライフエクステンダーを含んだために、高い触媒要求がもたらされた。
【0063】
【0064】
周知であるとおり、上記で用いられる「作業時間」とは、結合剤成分と砂とを混合してから、形成された鋳造形状がパターン内のさらなる作業を有効に妨げる硬さに達するまでの間に経過する時間の表現であると大まかに理解され得る。より技術的には、「作業時間」とは、形成された鋳造形状が、デトロイト(Detroit)、MIのハリー(Harry)W.ディタート(Dietert)社の販売するゲージを用いてグリーン硬度(Green Hardness)「B」スケールにおいて60のレベルに達するまでに経過した時間のことである。このテストの詳細は、共有された米国特許第6,602,931号を含む多くの場所で見出される。「ストリップ時間」は、結合剤成分と砂とを混合してから、形成された鋳造形状がパターンから取り出され得るまでの経過時間を大まかに定義するものである。本明細書において用いられる技術的な意味では、「ストリップ時間」とは、形成された鋳造形状が同じグリーン硬度「B」スケールにおいて90のレベルを達成するために必要とされる時間である。したがって、ストリップ時間と作業時間との差は、形成されたモールドに対して作業を行うことができないが、まだパターンから取り出すことができない無駄時間の量である。
【0065】
より早い作業時間を提供するための「よりホットな」NMI触媒を用いて、組成物CおよびAを再びテストした。組成物Aは、所望の作業時間/ストリップ時間特性を達成するために、混合された触媒系においてより高いNMI含有量を必要とした。下の表2に示されるとおり、その結果は表1の結果と一致しており、予想に反しないものである。
【0066】
【0067】
表1に関して述べられたとおり、組成物Aは最初に、約90から110という所望の指数よりもかなり低い指数にてテストされた。所望の指数は、パートI対パートIIの比率を60/40から48/52に調整することによって得ることができる。これを行って表1の条件を繰り返すとき、ここでも引張り強度は従来のフェノールウレタン非焼成結合剤ベースライン(表1の組成物C)と一致できないが、この結合剤は時間とともに強度を発達させ続ける。
【0068】
【0069】
述べられたとおり、表1において結合剤は1.2重量%にて適用された。結合剤を1.48重量%に増やし、かつ48/52の比率を用いることによって、組成物Aは157の1hr引張り強度と、3hrおよび24hrにおけるそれぞれ302および309の引張り強度とを有することが判定された。よって組成物A(1.48%結合剤)は、使用される結合剤の比率および量を調整することによって、組成物Cベースラインの場合(1.2%結合剤)の性能に近づき得ることが分かる。
【0070】
VOCテスト
揮発性有機炭素(「VOC」)は、いくつかの異なるテストによって測定され得る。これらのテストの第1のものは、EPAメソッド(Method)24である。そのテストにおいては、重量0.3~0.5gのサンプルを3mlのアセトンに溶解して、110℃のオーブンに1時間入れる。VOCのパーセンテージは失った重量に基づく。組成物C、AおよびB、すなわちフェノールウレタン非焼成結合剤ベースラインと、2つのエタノール含有系とのパートI成分に対して、このテストを行った。それぞれの%VOCは53.9%、51.8%、および49.8%であった。これらの結果は本質的に等しく、区別できるものではない。パートII成分は実際にEPAメソッド24に従ってテストされなかったが、組成物AおよびBについては、高いイソシアネートおよびAROMATIC 100構成要素の不在のために5%VOC未満であると考えられる。従来のパートII成分は、20%から40%の範囲のEPAメソッド24に従うVOC含有量を有するため、エタノール含有系は系全体に対するVOC含有量を低減させることが予期されるだろう。
【0071】
第2のタイプのVOCテストは、EPAメソッド24「反応」テストである。このテストにおいては、重量約0.3gの多成分結合剤(すなわちパートI、パートII、および触媒を含む)のサンプルを好ましい比率で混合し、次いで3mlのアセトンに溶解する。これを1~24時間順化して、110℃のオーブンに1時間入れる。VOCのパーセンテージは失った重量に基づく。ベースライン組成物(C)は、EPAメソッド24「反応」テストにおいて30.2%VOCを有した。エタノール含有組成物AをパートI/パートII比率60/40にて測定したとき、EPAメソッド24「反応」は14.4%VOCであった。同じ組成物をより好ましい48/52の比率で測定したとき、EPAメソッド24「反応」VOC含有量は7.2%に落ち、これは50%の低減であり、ベースライン組成物の約20%の量である。
【0072】
1つまたはそれ以上の規制当局によって関連性があると考えられている第3のタイプのVOCテストは、OCMAテスト(オハイオ・キャスト・メタルズ・アソシエーション(Ohio Cast Metals Association))である。このテストにおいては、24時間にわたって砂と結合剤との混合ボウルに対する重量損失が測定される。結合剤の量が変わり得るため、結果は混合した砂1トン当りのVOCのポンド数、または結合剤1ポンド当りのVOCのポンド数として報告され得る。ベースライン組成物Cを、55/45の比率および1.25重量%BOBの4-PPPを用いてテストしたとき、砂1トン当りのVOCのポンド数は12時間後に1.03、24時間後に1.41と測定され、これらはそれぞれ結合剤1ポンド当り0.050および0.069ポンドのVOCに変換される。エタノール含有組成物Aの重量損失の大部分は混合の際に起こったことが注目され、これは予想に反しない。
【0073】
低分子量を有するアルコールの中でも、エタノールはこの適用に対する一意の位置にあるだろう。メタノールは引火点がより低く、毒性がより高い。加えて、メタノールは再生可能な「グリーン」供給源から入手できないと思われる。プロパノールのいずれの異性体も、より高分子量のアルコールも、すべてエタノールよりも高い引火点を有するが、典型的に再生可能な資源の発酵によって入手できない。