(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】組成物およびその使用
(51)【国際特許分類】
A61K 35/747 20150101AFI20221206BHJP
A01N 63/20 20200101ALI20221206BHJP
A01N 63/50 20200101ALI20221206BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20221206BHJP
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A61P 43/00 20060101ALI20221206BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20221206BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20221206BHJP
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A61K 9/107 20060101ALI20221206BHJP
A61K 9/12 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
A61K35/747
A01N63/20
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A01P3/00
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A61K8/73
A61K8/99
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A61K38/51
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A61P31/04
A61P43/00 121
A61Q19/00
A61K9/06
A61K9/08
A61K9/107
A61K9/12
(21)【出願番号】P 2018561009
(86)(22)【出願日】2017-05-17
(86)【国際出願番号】 GB2017051372
(87)【国際公開番号】W WO2017199022
(87)【国際公開日】2017-11-23
【審査請求日】2020-05-15
(32)【優先日】2016-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】518407607
【氏名又は名称】スキンバイオセラピューティクス ピーエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】オニール キャサリン
【審査官】原口 美和
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/181534(WO,A1)
【文献】ACTA BIOCHEMICA POLONICA,2014年,Vol. 61, No. 2,pp. 341-347
【文献】Applied and Environmental Microbiology,2014年,Vol. 80, No. 18,pp. 5773-5781
【文献】SCIENTIFIC REPORTS,2015年,Vol. 5, article number 16147,pp. 1-11
【文献】Pediatric RESEARCH,2015年,Vol. 77, No. 4,pp. 528-535
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/747
A01N 63/20
A01N 63/50
A01P 3/00
A23L 33/135
A61K 8/66
A61K 8/73
A61K 8/99
A61K 31/715
A61K 38/02
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A61P 17/00
A61P 17/02
A61P 31/04
A61P 43/00
A61Q 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロバイオティック抽出物を含む
抗菌用組成物であって、前記抽出物が、
L.ラムノサスGG(ATCC53103)の菌株に由来するタンパク質画分を含み、前記タンパク質画分中のタンパク質が50kDa以下の分子量のタンパク質からなり、トリオースリン酸イソメラーゼ(TPI)および/またはエノラーゼを含む、
抗菌用組成物。
【請求項2】
前記タンパク質画分が、1種または複数のエキソポリサッカライドを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
SpaCタンパク質ならびに以下のタンパク質:トリオースリン酸イソメラーゼ(TPI);および/またはエノラーゼを含む
請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物が、1種または複数の薬学的または化粧品的に許容される成分または賦形剤をさらに含む、請求項1~
3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
微生物によるコロニー形成を阻害する際または再コロニー形成を阻止する際に使用する
ための、請求項1~
4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
微生物感染またはコロニー形成の阻止、管理または処置に使用するための、請求項1~
4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記微生物感染またはコロニー形成がブドウ球菌による、請求項
6に記載の使用のための組成物。
【請求項8】
前記ブドウ球菌が黄色ブドウ球菌である、請求項
7に記載の組成物。
【請求項9】
前記黄色ブドウ球菌がメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)である、請求項
8に記載の組成物。
【請求項10】
前記感染またはコロニー形成が、皮膚感染または皮膚コロニー形成を含む、請求項
6~
9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
剤型がクリーム、ゲル、オイル、またはスプレー
である、請求項
4に記載の組成物。
【請求項12】
細菌感染、コロニー形成または再コロニー形成の阻止、管理または処置のための医薬の製造に使用するための請求項1~
3のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項13】
前記細菌感染またはコロニー形成がブドウ球菌による、請求項
12に記載の使用。
【請求項14】
前記感染またはコロニー形成が、黄色ブドウ球菌による感染またはコロニー形成である、請求項
13に記載の使用。
【請求項15】
前記黄色ブドウ球菌がメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)である、請求項
14に記載の使用。
【請求項16】
皮膚障害または創傷ケアの処置または管理に使用するための請求項1~
3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
皮膚用の化粧品として使用するための、請求項1~
3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
ケラチノサイトに関与する状態の管理または処置のための医薬の製造に使用するための、請求項1~
3のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項19】
ケラチノサイトの増殖および/または移動の増強のための医薬または化粧品の製造に使用するための請求項1~
3のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項20】
ブドウ球菌の基質への付着を減少させるのに使用するための請求項1~
3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
前記基質が皮膚または粘膜を含む、請求項
20に記載の組成物。
【請求項22】
ブドウ球菌の基質への付着を阻害または低減させる非治療的な方法であって、請求項1~
3のいずれか一項に記載の組成物を前記基質へ塗布することを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロバイオティック細菌溶解物またはその成分から形成されるか、またはそれらを模倣する組成物に関する。本発明は、皮膚または粘膜上での使用に特に適している。
【背景技術】
【0002】
プロバイオティックは、「適切な量で投与された場合、宿主に健康上の利益を与える、生きている微生物」と定義されている。通常、乳酸菌およびビフィズス菌属のメンバーであるプロバイオティックは、経口摂取された場合、抗生物質関連下痢の予防およびアトピー性疾患の予防などの有益な効果を有することが報告されている。プラスの効果を発揮するために細菌によって使用される機構は様々であり、免疫応答の病原体調節の阻害および上皮障壁機能の増強を含む。しかしながら、一般的に、共生の基礎となる細菌分子の性質はほとんど特徴づけられておらず、プロバイオティックの観察された効果を媒介する分子機構に関して利用可能な情報は比較的少ない。
【0003】
プロバイオティックは消化管にプラスの影響を及ぼす可能性があるため、口腔および尿生殖器などの他の系に対するそれらの潜在的効果も研究され始めている。細菌性膣炎の女性を対象とした臨床試験において乳酸菌の経口投与の影響を調べた研究では、乳酸菌は実際に病原体による尿道上皮細胞のコロニー形成を阻害できることが示された。最近、皮膚へのプロバイオティックの局所適用が、限られた数の研究において調査されている。アトピー性皮膚炎に罹患している患者に超音波処理したストレプトコッカス・サリバリウス(Streptococcus salivarius)株を局所適用すると、明らかに、角質層中のセラミドのレベルの増加によって障壁機能が改善された。感染した創傷の処置のために局所的に適用されたL.プランタルム(L.plantarum)により、マウス火傷モデルにおける改善された組織修復、ならびにヒトにおける慢性下腿潰瘍および火傷における感染の予防がもたらされた。しかしながら、一般に、これらの効果の根底にある機構は十分に理解されていない。
【0004】
L.ラムノサス(L.rhamnosus)GG(本明細書においてLGGとも称される)が腸粘液に付着する機構は、LGGの表面で産生され、胃腸管におけるLGGの保持を促進するように見える線毛に関与することが以前に示されている。LGGにおける線毛産生は、LGGの高い粘液結合活性に主に関与することが示されているSpaCタンパク質を有する遺伝子クラスターSpaCBAによってコードされる。
【0005】
本発明者らは、黄色ブドウ球菌(S.aureus)などの病原菌による感染から細胞を保護する際のプロバイオティック細菌およびその溶解物を以前に実証した(特許文献1および特許文献2を参照のこと)。黄色ブドウ球菌は、皮膚の一時的な生着菌および主要な日和見性皮膚病原体の両方であり、膿痂疹から敗血症などの生命を脅かす状態までの範囲の疾患を引き起こす。本発明者らは、現在、LGGが表皮ケラチノサイトを黄色ブドウ球菌の毒性作用から保護できることを実証した。特に、LGGは原発性ヒトケラチノサイトへの黄色ブドウ球菌の付着を阻害し、競合的に黄色ブドウ球菌をケラチノサイト結合部位から排除し、移動させることができる。これは、黄色ブドウ球菌の存在下でのケラチノサイト生存の増加をもたらす。重要なことに、本発明者らは、この効果がLGGの無細胞溶解物によって産生されることを示し、生きた細菌が黄色ブドウ球菌の付着を阻害する際のLGGのプラスの効果に必要ではなく、この発見が多くの治療的および化粧品的用途において使用され得ることを示した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2013/153358号
【文献】国際公開第2015/181534号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、添付の特許請求の範囲において定義され、組み合わせが明らかに許容できないか、または明白に回避される場合を除いて、本明細書以下に記載される態様および好ましい特徴の組み合わせも含む。
【0008】
本発明の一態様によれば、プロバイオティック抽出物を含む組成物であって、抽出物は、分泌物または溶解物に由来し、約100kDa以下の分子量のタンパク質を有するタンパク質画分を含む、組成物が提供される。
【0009】
抽出物は1種または複数のプロバイオティック株由来であってもよい。プロバイオティック株は、L.ラムノサス(L.rhamnosus)などの乳酸菌(Lactobacilli)であることが好ましい。
【0010】
好ましくは、タンパク質は、約90kDa以下の分子量、または約9~約90kDaの範囲の分子量を有する。タンパク質が約25~約90kDaの範囲の分子量を有することがより好ましい。タンパク質が約27kDa~約90kDaの範囲の分子量を有することが最も好ましい。
【0011】
タンパク質画分は、好ましくは、スブチリン生合成タンパク質C(SpaC)および約50kDa以下の分子量を有するタンパク質、ならびに任意選択に1種または複数のエキソポリサッカライドを含む。タンパク質画分がSpaCを含む場合、約49kDa以下、約48kDa以下、または約47kDa以下の分子量を有するタンパク質も含むことが好ましい。タンパク質画分がSpaCを含む場合、それはまた、約20kDa~50kDaの範囲、または約25kDa~約49kDaの範囲、または約26kDa~約48kDaの範囲、または約27kDa~約47kDaの範囲の分子量を有するタンパク質を含んでもよい。
【0012】
好ましくは、約50kDa以下の分子量を有するタンパク質は、以下:グリセルアルデヒド-3リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH);伸長因子TU(EF-Tu);トリオースリン酸イソメラーゼ(TPI);および/またはエノラーゼのうちの1つまたは複数を含む。
【0013】
本発明の関連する態様によれば、SpaCタンパク質ならびに以下のタンパク質:グリセルアルデヒド-3リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH);伸長因子TU(EF-Tu);トリオースリン酸イソメラーゼ(TPI);エノラーゼ;アシルキャリアタンパク質;転写伸長因子greA;ホスホペントムターゼ;50Sリボソームタンパク質S11;ジヒドロキシアセトン(Dihydroxyecetone)キナーゼ;50sリボソームタンパク質;アスパラギニルtRNA合成酵素;UPF0342タンパク質;および/または50Sリボソームタンパク質L22のうちの1つまたは複数を含む組成物が提供される。
【0014】
この関連する態様において、以下のタンパク質:グリセルアルデヒド-3リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH);伸長因子TU(EF-Tu);トリオースリン酸イソメラーゼ(TPI);および/またはエノラーゼのうちの1つまたは複数を含んでもよい。
【0015】
所望の場合、タンパク質の1つまたは複数は、組換えであってもよく、および/またはプロバイオティックの分泌物または溶解物に由来してもよい。タンパク質の1つまたは複数がプロバイオティックの分泌物または溶解物に由来する場合、プロバイオティックはL.ラムノサスであることが好ましい。タンパク質の1つまたは複数が組換えである場合、これらのタンパク質は、L.ラムノサスにおけるタンパク質と同一または類似であるアミノ酸配列を有することが好ましい。アミノ酸配列が発現および/または生物活性のために最適化され得ることは当業者に明白である。
【0016】
両方の態様の本発明は特に、ラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)種のプロバイオティック菌に関する。そのような細菌は、最初、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)の亜種と考えられていたが、その後の遺伝子研究により、ラクトバチルス・カゼイはその独自の種であることが判明した。L.ラムノサス株の番号は公知である。例えば、I-1720株(Pasteur collection Nationale de Cultures de Microorganismes)、AC413、GR-1(Karlssonら、BMC microbiology 2012、12:15)、JB-1(Bravoら、PNAS 2011 108(38)16050-16055)GGおよびLC705(Savijokら、J.Proteome Research 2011 10(8)3460-3474)。L.ラムノサスの他の株は容易に単離され得る。
【0017】
特に、本発明は、L.ラムノサスGGに関する。L.ラムノサスGG(本明細書においてLGGとも称される)は、受託番号ATCC53103としてATCC(American Tissue Culture Collection)に寄託されている。LGGは1983年にGorbachおよびGoldinによって健康なヒトの腸管から単離された。
【0018】
本発明の態様による組成物は、1種または複数の薬学的または化粧品的に許容される成分または賦形剤をさらに含んでもよい。
【0019】
本発明の態様による組成物は、担体をさらに含んでもよい。担体は、通常、分泌または溶解した物質が、溶解、懸濁、希釈または混合されている溶液である。
【0020】
いくつかの場合、担体は、培養の間に細菌と接触している培地を含んでもよい。培地の組成は、例えば、細菌からの物質の分泌によって培養の間に変化してもよい。組成物は、細菌が増殖している培養培地からなってもよいか、またはそれを含んでもよい。
【0021】
細菌(L.ラムノサスなど)を培養するのに適した培地は当業者に周知である。本明細書に使用される場合、「媒体」および「培地」という用語は、細菌が、支持され、生存し続け、成長しおよび/または増殖し得る任意の栄養素を含有する液体を包含する。培地は、細菌の生命を支持するための最小限の栄養素、および任意選択で他の栄養素を含んでもよい。ブロス内に含まれる例示的な栄養素には、糖、マグネシウム、リン酸塩、リンおよび硫黄が含まれる。培地は、Wilkins-Chalgrenブロスなどの当該技術分野において周知の栄養素の組み合わせで作製されてもよいか、またはそれから改変されてもよい。培地は、商業的供給源から予め混合して得られてもよいか、または社内で作製されてもよい。
【0022】
好ましくは、組成物は無細胞であり、生きた細菌細胞を全く含まない。細菌細胞全体は、例えば、遠心分離および/または濾過によって培地から除去されていてもよい。例えば、細菌は、実質的に全ての細菌を培地から沈殿させるのに十分な時間、15,000×gの遠心分離機で培地から沈殿させることによって除去されてもよい。培地は、培地から実質的に全ての細菌を除去するのに適したサイズの細孔を有する微孔性フィルターを使用して濾過することができる。これらの方法は、抽出物が細胞溶解によって得られる場合、無傷の細菌を除去することができ、細菌残渣もまた除去することができる。
【0023】
組成物は無菌であってもよい。すなわち、組成物は、照射、加熱、化学薬品、加圧もしくはろ過、またはそれらの任意の組み合わせなどの滅菌処理に供されている。しかしながら、このような滅菌手順は、関連するタンパク質の有効性を損なわないように、または低下させないように適合されなければならない。抽出物を含有する培地の場合、培地は、プロバイオティック細菌を導入および培養する前、ならびに細菌をその培地から除去した後に滅菌されてもよい。
【0024】
いくつかの場合、組成物の抽出物は無傷の細菌を実質的に含まない。組成物はまた、溶解した細菌または細菌断片を実質的に含まなくてもよい。無傷の細菌および/または溶解した細菌もしくは細菌断片は、抽出物から分離されていてもよい。分離は、遠心分離または濾過などの当該技術分野において公知の任意の好適な手段によって行うことができる。「実質的に含まない」とは、抽出物が、全細菌、溶解した細菌、または細菌断片などの非分泌細菌成分の夾雑を全く含まないか、または最小限しか含まないことを意味する。したがって、組成物は、100%の抽出物、少なくとも99%の抽出物、少なくとも95%の抽出物、少なくとも90%の抽出物、少なくとも85%の抽出物、少なくとも80%の抽出物、少なくとも75%の抽出物、または少なくとも70%の抽出物を含有することができる。抽出物は、本明細書に記載される、担体溶液、他の活性剤、または保存剤などの非細菌起源のさらなる成分を含んでもよい。
【0025】
本明細書に記載される組成物は、培地中で細菌を培養し、培地から細菌を分離し、培地から組成物を調製することによって調製することができる。細菌は、嫌気性条件下で培養することができる。細菌は、人体の正常な温度より高い温度で培養することができる。細菌は、30℃、31℃、32℃、33℃、34℃、35℃、36℃、37℃、38℃、39℃、40℃、または41℃で培養することができる。好ましくは、細菌は37℃で培養される。細菌は、1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間または14日間、培地中で培養することができる。細菌または溶解した細菌もしくは細菌断片は、15000×gでの遠心分離などの遠心分離によって培地から分離することができる。培地は、濾過によって、細菌、溶解した細菌、または細菌断片から分離することができる。培地は、濾過および遠心分離の組み合わせによって分離することができる。培地は、細菌が除去される前または後に滅菌に供されてもよい。例えば、全細菌、溶解した細菌または細菌断片から培地を分離した後、培地は滅菌に供されてもよい。培地は、抽出物の比率が培地の全体積に対して増加するように濃縮に供されてもよい。濃縮は、蒸発などの当該技術分野において公知の任意の方法によって行うことができる。抽出物は培地から分離することができる。担体溶液から物質を分離する任意の方法を使用することができる。例えば、抽出物は、クロマトグラフィー、結晶化、蒸留、乾燥、電気泳動または沈殿によって培地から分離されてもよい。培地から単離されるか、または培地中で濃縮されると、抽出物は、担体に溶解されるか、もしくは希釈されるか、または本明細書に開示される組成物に製剤化されてもよい。
【0026】
抽出物は、関連するタンパク質画分を得るために1つまたは複数の方法を受けていてもよい。タンパク質画分は、アセトニトリル分画または任意の他の好適な分画技術を使用して得られてもよい。
【0027】
本発明の組成物は、広範囲の疾患および状態の処置において有用である。特に、それらは、皮膚の健康の改善、ならびに細菌感染を含む皮膚感染の処置、管理および予防において有用である。特に、この化合物および組成物は、黄色ブドウ球菌感染の処置、管理または予防において有用である。この化合物および組成物は、皮膚感染などの軟組織細菌感染の処置に特に有用である。本発明の化合物および組成物は、黄色ブドウ球菌皮膚感染の予防、管理または処置に特に有用である。
【0028】
本発明は、感染の予防、管理または処置に関する。組成物は、抗菌組成物として使用するために製剤化することができる。抗菌組成物は、広範囲の微生物(細菌、ウイルスおよび酵母など)に対して広範囲の活性を有し得る。組成物は、抗菌組成物として使用するために製剤化することができる。特に、本発明の組成物は、微生物によるコロニー形成の阻害または再コロニー形成の阻止に使用するために製剤化することができる。本発明のプロバイオティック組成物は、抗感染活性を示す。例えば、抗付着活性は、細胞への黄色ブドウ球菌の付着の阻止およびケラチノサイトの移動および増殖の増強、感染に対する皮膚障壁の改善を含む。したがって、組成物は、多剤耐性細菌感染、院内細菌感染、抗生物質耐性細菌感染、グラム陰性および/またはグラム陽性細菌感染による感染の予防、管理または処置などの、微生物感染を含む感染の予防、管理または処置に有用である。組成物はまた、微生物コロニー形成の予防、管理および処置における使用に有用である。
【0029】
本発明の組成物は、S.サプロフィティカス(S.saprophyticus)、S.キシローサス(S.xylosus)、S.ルグデネンシス(S.lugdenensis)、S.シュレイフェリ(S.schleiferi)、S.カプラエ(S.caprae)、S.エピデルミディス(S.epidermidis)、S.サプロフィティカス、S.ワルネリ(S.warneri)、黄色ブドウ球菌、S.ホミニス(S.hominis)、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、および連鎖球菌種(Streptococcus species)、S.ピオゲネス(S.pyogenes)、S.サリバリウス(S.salivarius)、S.ミュータンス(S.mutans)およびS.ニューモニエ(S.pneumoniae)などのブドウ球菌種(Staphylococcus spp)による微生物感染の予防に有用である。
【0030】
特に、本発明の組成物は抗ブドウ球菌付着活性を示し、したがって、ブドウ球菌感染の予防、管理または処置に有用である。例えば、本発明の組成物は抗黄色ブドウ球菌活性を示し、したがって、黄色ブドウ球菌感染の予防、管理または処置に有用である。
【0031】
感染症は、疾患を引き起こす微生物が身体の組織に侵入する場合に起こる。これらの微生物およびそれらが産生する毒素の増殖は身体の組織と反応し、しばしば、感染した宿主による免疫反応を引き起こす。感染症は、身体の組織のいずれかを介して起こり得る。特定の態様において、本発明は、身体、特に皮膚の外面の感染の処置、管理または予防に関する。しかしながら、本発明はまた、粘膜、特に気道および生殖管粘膜の感染の処置、管理または予防に関する。本発明はまた、胃腸管の粘膜の感染の処置、管理、または予防のために使用され得る。
【0032】
本発明による組成物は、皮膚感染症の予防、管理または処置において使用され得る。本発明による組成物はまた、コロニー形成、特に皮膚コロニー形成の予防、管理において使用され得る。感染症は、黄色ブドウ球菌、およびMRSAを含むブドウ球菌種などの細菌に起因し得る。組成物は、感染因子への曝露と別に、連続して、または同時に適用することができる。好ましくは、組成物は感染因子への曝露前に適用される。
【0033】
本発明の組成物は、好ましくは、細菌感染症の予防、管理のために使用される。それらは対象に優先的に投与され、その後、その対象は黄色ブドウ球菌などの感染因子に曝露される。対象は、感染因子による感染の危険性があると同定され得る。対象は、その環境、例えば、本発明の因子が存在することが知られている環境にあるために、または開放傷の存在または不十分な免疫健康などの対象の健康に起因して、感染因子による感染の危険性があると同定され得る。例えば、組成物は、病原菌が存在することが知られているか、もしくは疑われるか、またはMRSAなどの抗菌耐性生物によるコロニー形成を阻止する必要性がある病院または他の診療所で使用することができる。
【0034】
いくつかの場合、患者は手術を受けようとしているか、または最近手術を受けている。本明細書に記載される組成物は、病原菌による外科的切開または移植などの開放傷の感染を阻止するために、または身体部位のコロニー形成を阻止することによって感染の危険性を低減するために使用され得る。
【0035】
いくつかの場合、対象は、感染因子による感染を有さないことが決定される。例えば、対象は、黄色ブドウ球菌感染を有さないと決定され得る。対象が感染を有するかどうかを決定するための方法は当該技術分野において周知であり、感染因子の存在について対象から得られる試料の分析を含み得る。
【0036】
組成物は、単独で、または他の処置と組み合わせて、処置される状態に応じて同時にまたは連続的に投与され得る。
【0037】
組成物は、1種または複数の他の薬学的に許容される成分に溶解、懸濁、または混合されてもよい。
【0038】
いくつかの実施形態において、組成物は、薬学的に許容される賦形剤、希釈剤または担体中の懸濁液として提供され得る。
【0039】
本発明はまた、ヒトまたは動物の身体の医学的処置用ではない洗浄製品、洗浄剤、表面コーティングまたは他の組成物の形態の抗菌組成物を提供する。
【0040】
組成物は、基質からのブドウ球菌の付着を減少させるのに使用するためのものであってもよい。
【0041】
このような組成物は、表面上の細菌の蓄積、コロニー形成、または再コロニー形成を除去するか、死滅させるか、もしくは阻止するため、または細菌の作用もしくは増殖を阻害するために有用であり得る。組成物は抗菌組成物として製剤化される。
【0042】
本発明による抗菌組成物は、患者もしくは対象への投与前、または患者もしくは対象の処置前、または患者もしくは対象と共に使用する前に、生体材料、インプラントおよびプロテーゼ(ステント、弁、眼、補聴器、胃バンド、義歯、人工関節置換などを含む)、外科用器具、または他の医療装置を処理するために有用であり得る。抗菌組成物は、手すり、食品調製表面、台所表面または機器、テーブル、流し、トイレ、もしくは他の浴室金物類などの、コロニー形成しやすいか、または細菌に曝露されやすい表面を処理するのに有用であり得る。
【0043】
抗菌組成物は、溶解物に加えて洗浄剤、安定剤、アニオン性界面活性剤、香料、キレート剤、酸、アルカリ、緩衝剤または洗剤などの薬剤を含んでもよい。このような薬剤は、細菌を死滅させるか、もしくは阻害するなどの、薬剤の抗菌特性を促進もしくは増強し得るか、または洗浄した表面の再コロニー形成を阻止し得る。
【0044】
本発明はまた、組成物を表面に塗布することを含む、表面を調製する方法ももたらす。その方法は、病原性微生物による表面のコロニー形成の低減をもたらし得る。
【0045】
組成物は、ケラチノサイト修飾因子として使用するために製剤化することができる。修飾因子は、ケラチノサイトの増殖および/または移動を増強し得る。修飾因子は、皮膚および/または創傷の修復を改善するために使用することができる。
【0046】
組成物は、ケラチノサイトまたは損傷した皮膚、皮膚障害または創傷ケアを含む状態の処置または管理に使用するためのものであってもよい。
【0047】
関連する態様によれば、皮膚用の化粧品調製物として使用するための組成物が提供される。
【0048】
関連する態様によれば、ケラチノサイトまたは損傷した皮膚を含む状態の管理または処置のための医薬の製造における使用のための、本明細書上記の組成物の使用が提供される。
【0049】
別の関連する態様によれば、ケラチノサイトの増殖および/または移動を増強するための医薬または化粧品の製造における使用のための、本明細書上記の組成物の使用が提供される。
【0050】
組成物を単独で使用することができるが、物質および担体を含む製剤として提供することが好ましい。組成物は、1種以上の他の成分に溶解、懸濁、または混合されてもよい。いくつかの場合、組成物は、リポソームまたは他の微粒子で提供される。本明細書に開示される製剤には、医療、パーソナルケアおよび消費者製品、ならびに院内感染の発生を予防または低減させるための処置を含む、スキンケア、創傷ケア、呼吸ケア、および口腔ケア製剤が含まれる。
【0051】
製剤は、好適には、液体、溶液(例えば、水性、非水性)、懸濁液(例えば、水性、非水性)、エマルション(例えば、水中油型、油中水型)、エリキシル剤、シロップ剤、舐剤、口内洗浄液、ドロップ、錠剤(例えば、被覆錠剤を含む)、顆粒、散剤、ロゼンジ、トローチ剤、カプセル剤(例えば、硬質および軟質ゼラチンカプセルを含む)、カシュ剤、丸剤、アンプル、ボーラス、坐剤、ペッサリー、チンキ剤、ゲル、ペースト、軟膏、クリーム、ローション、オイル、フォーム、スプレー、ミストまたはエアロゾルの形態であってもよい。
【0052】
製剤は、好適には、1種以上の活性化合物、および任意選択で1種以上の他の薬学的に許容される成分(例えば、浸透、透過、および吸収増強剤を含む)を含浸させたパッチ、ばんそうこう、包帯、ドレッシングなどとして提供されてもよい。製剤はまた、好適には、デポ剤またはリザーバの形態で提供されてもよい。
【0053】
いくつかの製剤において、組成物は1種以上の薬学的に許容される成分と共に製剤化される。薬学的に許容される成分は当業者に周知であり、薬学的に許容される担体、アジュバント、賦形剤、希釈剤、充填剤、緩衝剤、保存剤、抗酸化剤、潤滑剤、安定剤、可溶化剤、界面活性剤(例えば、湿潤剤)、マスキング剤、着色剤、香味剤、および甘味剤を含むが、これらに限定されない。製剤は、他の活性剤、例えば、他の治療剤または予防剤をさらに含んでもよい。
【0054】
本明細書における特定の製品および製剤は、スキンケアまたは創傷ケアに適している。「スキンケア」とは、皮膚の健康を維持もしくは改善するか、または皮膚の外見を改善するための成人または幼児の皮膚の処置に有用な製品を含む、局所パーソナルケアおよび/またはヘルスケア製品を意味する。皮膚ケアはまた、アトピー性皮膚炎、乾癬および湿疹などの特定の皮膚状態を包含し得る。「創傷ケア」は、創傷の閉鎖もしくは治癒を支援し、および/または創傷に関連する疼痛もしくは瘢痕を低減させ、そのような組織もしくは皮膚の健康を維持もしくは改善し、そのような組織もしくは皮膚を修復し、そのような組織もしくは皮膚の刺激、かゆみおよび/もしくは発赤を低減させるための創傷の処置のための製品を含む。
【0055】
いくつかの実施形態において、本発明による組成物は、局所投与のために、特に皮膚への使用もしくは適用のために、または皮膚上への使用もしくは適用のために製剤化される。
【0056】
局所投与に適した製剤には、ゲル、ペースト、軟膏、クリーム、ローション、およびオイル、ならびにパッチ、ばんそうこう、包帯、ドレッシング、デポ剤、セメント、接着剤、およびリザーバが含まれる。
【0057】
軟膏は、典型的に、組成物およびパラフィン系または水混和性軟膏基剤から調製される。
【0058】
クリームは、典型的に、抽出物および水中油型クリーム基剤から調製される。所望の場合、クリーム基剤の水相には、例えば、少なくとも約30%w/wの多価アルコール、すなわち、プロピレングリコール、ブタン-1,3-ジオール、マンニトール、ソルビトール、グリセロールおよびポリエチレングリコールなどの2つ以上の水酸基を有するアルコール、ならびにそれらの混合物が含まれ得る。局所製剤は、望ましくは、皮膚または他の罹患領域を通る活性化合物の吸収または透過を増強する化合物を含み得る。このような皮膚透過増強剤の例には、ジメチルスルホキシドおよび関連する類似体が含まれる。
【0059】
エマルションは、典型的に、プロバイオティック菌または溶解物および油性相から調製され、これは任意選択で、単に乳化剤(別様でエマルジェント(emulgent)として知られる)を含み得るか、あるいは少なくとも1種の乳化剤と脂肪もしくは油との混合物、または脂肪および油の両方との混合物を含み得る。好ましくは、親水性乳化剤が、安定剤として作用する親油性乳化剤と共に含まれる。それは油及び脂肪の両方を含むことも好ましい。まとめると、安定剤(複数を含む)を含むかまたは含まない乳化剤(複数を含む)は、いわゆる乳化ワックスを構成し、ワックスは油および/または脂肪と一緒に、クリーム製剤の油性分散相を形成するいわゆる乳化軟膏基剤を構成する。
【0060】
適切なエマルジェントおよび乳化安定剤には、Tween 60、Span 80、セトステアリルアルコール、ミリスチルアルコール、モノステアリン酸グリセリンおよびラウリル硫酸ナトリウムが含まれる。製剤に適した油または脂肪の選択は、医薬エマルション製剤に使用される可能性が高い大部分の油中の活性化合物の溶解度が非常に低い可能性があるので、所望の化粧特性を達成することに基づく。したがって、クリームは、好ましくは、管または他の容器からの漏出を回避するために適切な稠度を有する、べたべたせず、染色せず、洗浄可能な製品であるべきである。ジイソアジペート(di-isoadipate)、ステアリン酸イソセチル、ココナッツ脂肪酸のプロピレングリコールジエステル、ミリスチン酸イソプロピル、オレイン酸デシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、あるいはCrodamol CAPとして知られている分枝鎖エステルの混合物などの、直鎖または分枝鎖の一塩基性または二塩基性アルキルエステルが使用されてもよく、最後の3つが好ましいエステルである。これらは必要な特性に応じて単独で、または組み合わせて使用されてもよい。あるいは、白色軟パラフィンおよび/または流動パラフィンまたは他の鉱油などの高融点脂質が使用されてもよい。
【0061】
本明細書に記載されるいくつかの製品および製剤は口腔ケアに適している。「口腔ケア」とは、歯、粘膜、舌などにおける使用のための製品を含む、口腔もしくはその任意の部分における物質の使用、および/または使用のための製品を意味する。口腔ケアの分野における製品および使用には、例えば歯のホワイトニング、着色予防などを含む歯の美観、ならびに抗歯垢、抗歯肉炎、抗過敏(anti-sensitivity)、虫歯予防、口臭除去、口渇緩和、酸蝕の修復および予防、活性送達(active delivery)および保持、感覚の強化および食感の変化(mouth feel alteration)などを対象としたものが含まれる。
【0062】
口腔ケアのための製剤には、歯科スプレー、口内洗浄液、練り歯磨き、ロゼンジ、抗菌洗浄剤、飲料(例えば牛乳、ヨーグルト)、食品(例えばヨーグルト、アイスクリーム、キャンディーバー)、または粉末食品(例えば粉ミルク)が含まれる。口腔ケアに適している製剤は、口腔および/または頬側投与に適している製剤を含む。
【0063】
経口投与に適している製剤(例えば摂取による)には、液体、溶液(例えば、水性、非水性)、懸濁液(例えば、水性、非水性)、エマルション(例えば、水中油型、油中水型)、エリキシル剤、シロップ剤、舐剤、錠剤、顆粒、散剤、カプセル剤、カシュ剤、丸剤、アンプル、ボーラスが含まれる。
【0064】
頬側投与に適している製剤には、口内洗浄液、ロゼンジ、トローチ剤、ならびにパッチ、ばんそうこう、デポ剤、及びリザーバが含まれる。ロゼンジは、典型的に、風味付けした基剤(flavored basis)中、通常はスクロースおよびアカシアまたはトラガカントに、活性化合物を含む。トローチ剤は、典型的に、不活性マトリックス中、例えばゼラチンおよびグリセリン、またはスクロースおよびアカシアに、活性化合物を含む。口内洗浄液は、典型的に、好適な液体担体中に活性化合物を含む。
【0065】
本明細書に開示されるいくつかの製剤は、好適には、1つまたは複数の本発明に係る組成物、ならびに任意に、例えば浸透、透過および吸収促進剤を含む、1つ又は複数の他の薬学的に許容される成分を染み込ませ、あるいはそれらでコートされた、パッチ、ばんそうこう、包帯、ドレッシングなどとして提供される。組成物はまた、医療機器、例えばインプラント、補綴、手術器具、手袋、カテーテル、バルブ、ペースメーカーなどのためのコーティングの形態で提供されてもよい。
【0066】
本明細書に開示されるいくつかの組成物および製剤は呼吸器ケアに適している。「呼吸器ケア」とは、鼻炎、副鼻腔炎、季節性アレルギー、鼻詰まりおよび風邪の予防および治療を含む、状態の治療のための製品を意味する。当該組成物は、鼻腔、洞、気道、喉または肺を含む、呼吸器の細菌コロニー形成または感染を予防するために有用で有り得る。ある場合には、そのような製剤は鼻腔内投与または肺内投与のために製剤化される。
【0067】
担体が液体である鼻腔内投与に適している製剤は、例えば鼻腔用スプレー、点鼻薬を含み、あるいはネブライザーによるエアロゾル投与では、活性化合物の水性または油性溶液を含む。
【0068】
担体が固体である鼻腔内投与に適している製剤は、例えば約20から約500ミクロンの範囲内の粒子サイズを有する粗粉末として提供されるものを例として含み、当該製剤は嗅ぎ薬を吸う方法で、すなわち、鼻の近くに保持した粉末の容器から鼻腔を通じた急速な吸引によって投与される。
【0069】
肺内投与に適している製剤(例えば、吸入または通気療法による)は、好適な噴射剤、例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロ-テトラフルオロエタン、二酸化炭素、またはその他の好適なガスを使用して、加圧パックからエアロゾルスプレーとして提供されるものを含む。
【0070】
本発明に係る組成物および製剤はさらに、他の活性成分、例えば殺菌剤などの他の抗菌剤を含んでもよい。
【0071】
いくつかの実施形態において、本発明による使用のための製剤は、組成物の少なくとも約0.01重量%、約0.05重量%、約0.1重量%、約0.2重量%、約0.3重量%、約0.4重量%、約0.5重量%、約0.6重量%、約0.7重量%、約0.8重量%、約0.9重量%、約1.0重量%、約1.5重量%、約2.0重量%、約3.0重量%、約4.0重量%、約5.0重量%、約6.0重量%、約7.0重量%、約8.0重量%、約9.0重量%、約10.0重量%、約11.0重量%、約12.0重量%、約13.0重量%、約14.0重量%、約15.0重量%、約16.0重量%、約17.0重量%、約18.0重量%、約19.0重量%、約20.0重量%、約25.0重量%、約30.0重量%、約35.0重量%、約40.0重量%、約45.0重量%、約50.0重量%を含んでもよい。
【0072】
いくつかの実施形態において、当該製剤は、組成物の少なくとも約0.01重量%から約30重量%、約0.01重量%から約20重量%、約0.01重量%から約5重量%、約0.1重量%から約30重量%、約0.1重量%から約20重量%、約0.1重量%から約15重量%、約0.1重量%から約10重量%、約0.1重量%から約5重量%、約0.2重量%から約5重量%、約0.3重量%から約5重量%、約0.4重量%から約5重量%、約0.5重量%から約5重量%、約1重量%から約5重量%の1つを含んでもよい。
【0073】
本発明によるプロバイオティック調製物は、臨床使用のための医薬組成物として製剤化されてもよく、薬学的に許容される担体、希釈剤またはアジュバントを含んでもよい。それらは局所投与のために製剤化されてもよい。
【0074】
投与は好ましくは予防的又は治療的に有効量であり、これは個体に効果を示すのに十分な量である。投与される実際の量、ならびに投与の速度および経時変化は、治療されている疾患の性質および重症度に依存するであろう。治療の処方、例えば投与量の決定などは、一般開業医および他の医師の責任の範囲内であり、典型的には治療または予防されることになる障害、個々の患者の状態、送達部位、投与方法、および医師に知られているその他の要因を考慮する。上述の技術およびプロトコルの例は、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第20版、2000年、pub.Lippincott,Williams & Wilkinsに見出され得る。活性化合物および活性化合物を含む組成物の適切な用量は患者によって異なり得ることが当業者によって理解されるであろう。
【0075】
本発明の組成物は医薬として製剤化されてもよい、すなわち、医薬品または医療装置として製剤化されてもよい。当該医薬は、当業者に周知である他の薬学的に許容される成分を含んでもよく、薬学的に許容される担体、アジュバント、賦形剤、希釈剤、充填剤、緩衝剤、保存剤、抗酸化剤、潤滑剤、安定剤、可溶化剤、界面活性剤(例えば湿潤剤)、マスキング剤、着色剤、香味剤、および甘味剤を含むが、これらに限定されない。当該製剤はさらに、他の活性成分、例えば他の治療剤または予防剤を含んでもよい。
【0076】
本発明の組成物は、化粧用として、すなわち化粧品として製剤化されてもよい。化粧品は、限定されないが、化粧品的に許容される担体、賦形剤、希釈剤、充填剤、緩衝剤、保存剤、抗酸化剤、潤滑剤、安定剤、可溶化剤、界面活性剤(例えば湿潤剤)、マスキング剤、着色剤、芳香剤を含む、当業者に周知の他の化粧品的に許容される成分を含んでもよい。
【0077】
本発明の態様および実施形態をこれより添付図面を参照して例として説明することになる。さらなる態様および実施形態が当業者に明らかになるであろう。本文書に記述された全ての文献は参照により本明細書に組み込まれる。
【0078】
本発明の原理を説明する実施形態および実験を、以下の添付図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【
図1】タンパク質は、黄色ブドウ球菌に対するLGG溶解物の効果を媒介する。A:黄色ブドウ球菌(S.a)とL.ラムノサスGG溶解物(Lgg lys)の組み合わせは、黄色ブドウ球菌単独に感染した単層におけるよりも有意に高いパーセンテージの生存ケラチノサイトをもたらした(p=0.006)。全てのデータを未処理の単層(Con)の生存率と比較する。熱(Lgg+熱)またはプロテアーゼ処理(Lgg+tryp)は、黄色ブドウ球菌からケラチノサイトを保護する溶解物の能力を破壊した。B:溶解物を分画し、タンパク質を10~70%アセトニトリルで溶出すると、黄色ブドウ球菌に対して有効性を有するタンパク質は30~60%の画分中に含まれた。NS=有意ではない。*は有意なデータを示す。
【
図2】特定の画分はブドウ球菌のケラチノサイトへの付着を阻害する。A:L.ラムノサスGG溶解物(LGG lys)で前処理した細胞は、黄色ブドウ球菌(SA)単独に感染した細胞と比較して、付着性ブドウ球菌が有意に少なかった。ケラチノサイトへの病原体の付着は、30%、40%、50%および60%アセトニトリル中で溶出する画分で処理した培養物において有意に低かった(それぞれ、P=0.01、P=0.016、P=0.012、P=0.015、n=3)。B:同じ画分を、病原体とのインキュベーションの2時間後にケラチノサイトに添加した場合にも効果的であった(それぞれ、0%、40%、50%および60%について、P=0.034、P=0.035、P=0.01、P=0.033、n=3)。いずれのアッセイにおいても、20%アセトニトリル画分に曝露された細胞に付着するブドウ球菌の数の間に差はなかった(P=0.06、n=3)。しかしながら、両方のアッセイにおいて、他の画分と比較して、50%アセトニトリル画分に曝露した細胞に付着したブドウ球菌の数に有意な差が存在した(
**P=0.02)。結果を平均±SEM、
*P<0.05として表す。N.S=有意ではない。
【
図3】線毛タンパク質SpaCは溶解物の抗付着機能に関与する。A:特異的抗SpaC血清による免疫ブロッティングにより、50%画分中のSpaCタンパク質の存在が実証された。B:組換えSpaC(rSpaC)は用量依存的にブドウ球菌のケラチノサイトへの付着を阻害し、25および50μg/mlのrSpaCは有意な保護を提供した(それぞれ0.03および0.013)。C:50μg/mlのBSAはブドウ球菌付着を阻害しなかった。
【
図4】SpaCは、黄色ブドウ球菌の毒性作用からケラチノサイトを保護する。A:50μg/mlの組換えSpaC(rSpaC)は、黄色ブドウ球菌(S.a)の存在下でケラチノサイト単層生存率に有意な保護を与えた(p=0.013)。しかしながら、これは、全溶解物によって与えられる保護よりも有意に低かった(Lgg lys、p=0.008)。B:対照的に、LGGのSpaC欠損株(KO SpaC)は依然としてケラチノサイトを保護することができた。全てのデータは未処理の単層(Con)の生存率と比較した。
【実施例】
【0080】
実施例1:方法
細菌細胞培養
ラクトバチルス・ラムノサスGG(ATCC53103)を、37℃にてWilkins-Chalgrenブロス中で嫌気的に培養し、黄色ブドウ球菌を、Mohammedsaeedら(2014)およびPrinceら(2011)(Mohammedsaeed M.ら、(2014). Appl.Environ.Microbiol.80(18):5773およびPrince T.ら、(2011) Appl Environ. Microbiol. 78(15):5119-26)に記載されるように栄養ブロス(Oxoid)中で好気的に培養した。LGG SpaCノックアウトを、Lebeerら(2012)(Lebeer S.ら、(2012). Appl Environ. Microbiol. 78:185-193)に記載されるように生成した。LGG溶解物を、Mohammedsaeedら、(2014)に公表されたプロトコルに従って生成した。タンパク質の関与を調べるいくつかの実験において、溶解物を沸騰水浴に5分間入れるか、またはリン酸緩衝生理食塩水中のトリプシン(tryspin)(0.2%w/v)で37℃にて1時間処理してタンパク質を変性させた。
【0081】
L.ラムノサスGG溶解物の分画
LGG溶解物の30ml調製物を、0.1%トリフルオロ酢酸を使用してpH5.8に調整し、Strata XLカラム(細孔径100μm、Phenomenex Ltd、Cheshire、UK)に適用した。結合したタンパク質を、pH2の90%メタノール60ml中でカラムから溶出した。試料を、3時間、遠心分離蒸発システム(Biotek、Bedfordshire、UK)において回転させ、得られた試料(5ml)を、5mlのSep-Pak C18カートリッジ(細孔径37~55μm、Fischer Scientific、Loughborough、UK)に適用した。タンパク質を、0.1%(v/v)TFA溶液を含有する10~70%(v/v)アセトニトリルの漸増濃度の5mlアリコートを使用して溶出した。各5mlの画分を別々のチューブに集め、溶出した画分を遠心分離蒸発システム(Biotek、Bedfordshire、UK)において3時間蒸発させてアセトニトリルを除去した。得られたそれぞれの画分1mlをSDSページ分析に供し、Instant Blue(Harston、Cambridgeshire、UK)で染色してタンパク質バンドを可視化した。付着および生存率アッセイにおけるさらなる分析のために、画分を4℃に維持した。濃縮および精製を増加させるために、最も有効な画分を、50分にわたって適用した10~99%アセトニトリルの勾配でJupiter 90Aカラム(Phemonenex、Cheshire、UK)を使用するHPLCによってさらに分離した。
【0082】
タンパク質画分のタンデム質量分析
タンパク質のタンデム質量分析(MS/MS)同定を、「ゲルトップ(gel top)」法を使用して行った。タンパク質をSDS-PAGEにより150Vにて10分間電気泳動により分離し、次いでInstant Blueを使用して染色した。目的のバンドをゲルから切り出し、アセトニトリルを使用して脱水し、続いて真空遠心分離した。乾燥ゲル片を10mMジチオスレイトールで還元し、55mMヨードアセトアミドでアルキル化した。次いで、ゲル片を25mM重炭酸アンモニウム、続いてアセトニトリルで交互に洗浄した。これを繰り返し、ゲル片を真空遠心分離により乾燥させた。試料をトリプシンで一晩37℃にて消化した。消化した試料を、LTQ Velos Pro(Thermo Fisher Scientific、Waltham、MA)質量分析計に結合したUltiMate(登録商標)3000 Rapid Separation LC(RSLC、Dionex Corporation、Sunnyvale、CA)を使用して、LC-MS/MSにより分析した。ペプチド混合物を、75mm×250μm i.d.、1.7μM BEH C18、分析カラム(Waters)を使用して、300nL min-1にて44分間、92%A(水中の0.1%FA)および8%B(アセトニトリル中の0.1%FA)から33%Bまでの勾配を使用して分離した。ペプチドを、データ依存性分析による自動的断片化のために選択した。作成したデータを、Mascotデータベース検索エンジン(Matrix Science UK)を使用して検索した。データを、Scaffold(Proteome Software、Portland、OR)を使用して検証した。
【0083】
初代ヒトケラチノサイトの増殖、生存率および付着アッセイ
初代ヒトケラチノサイトならびに関連する付着および生存率アッセイを、Mohammedsaeedら(2014)に記載されるように正確に実施した。
【0084】
組換えSpaCの産生
骨格(残基31~302)をコードするが、N末端シグナルペプチドおよびC末端分類モチーフ領域を欠くL.ラムノサスGG(ATCC53103)SpaC遺伝子からなる発現プラスミド構築物(pKTH5319)を、Kankainenら(2009)(Kankainen M.ら、(2009)Proc Natl Acad Sci USA 106(40):17193-8に記載されるプロトコルに従って生成した。組換えSpaC pilinをC末端においてヘキサヒスチジン標識化した。次いで大腸菌BL21細胞における組換えタンパク質発現を、1mMイソプロピル-d-1-チオガラクトピラノシドを加えることによって誘導し、その後、培養物を18℃にて一晩増殖させた。細胞を遠心分離によって回収し、40mMのNaH2PO4(pH7.4)、150mMのNaClおよびEDTAを含まないプロテアーゼ阻害剤カクテル錠剤(Roche Ltd、Sussex UK)からなる溶解緩衝液中に再懸濁した。次いで細胞溶解物を48、400×gにて20分間遠心分離し、無細胞溶解物を、40mMのNaH2PO4(pH7.4)、150mMのNaClを含有する緩衝液で予め平衡化した5mlのNiCl2を充填したHiTrap chelating HPカラム(GE Healthcare、Amersham、UK)にロードした。次いで樹脂が結合したSpaAタンパク質を、10カラム体積に等しい直線勾配を使用して40mMのNaH2PO4(pH7.4)、150mMのNaCl、250mMのイミダゾールを含有する緩衝液で溶出した。SpaCを含有する画分をSDS-PAGEによって決定し、プールし、20mMのHEPES(pH7.0)、150mMのNaCl、1mMのEDTAに対して透析した。次いで透析したタンパク質溶液を、10kDaの分子量カットオフを備えたAmicon限外濾過装置(Amicon technologies Ltd、Kent、UK)を使用して濃縮し、その後、透析緩衝液で平衡化したSephacryl S-200 26/60ゲル濾過カラム(GE Healthcare)によってさらに精製した。
【0085】
SDS-PAGEおよび免疫染色
SDS-PAGEおよび免疫染色を、Kankainenら(2009)(Kankainen M.ら、(2009) Proc Natl Acad Sci USA 106(40):17193-8)に記載されるSpaC抗血清を使用してSultannaら(2013)(Sultanna R.ら、(2013)Appl.Environ、Microbiol.79(16)4887-4894)に記載されるように実施した。
【0086】
統計的分析
全てのデータは、各々の独立した実験内の3連の試料を用いた3回の独立した実験の平均±SEMとして提示した。生成したデータを、SPSS(IBM SPSS Statisticsバージョン16.0)プログラムを使用して一元配置分散分析(ANOVA)および事後Tukey検定によって分析した。P値が<0.05である場合、データは有意であるとみなした。
【0087】
実施例2:結果
熱またはプロテアーゼ処理溶解物は、黄色ブドウ球菌の作用からケラチノサイトを保護しない。
黄色ブドウ球菌に対するその抗付着効果を媒介するLGG溶解物内の有効な分子の性質を最初に検出した。この目的のために、溶解物を熱またはプロテアーゼにより処理し、次いで黄色ブドウ球菌の存在下でケラチノサイト単層生存能を保護するその能力を調べた。ケラチノサイト単層の約30%のみが、黄色ブドウ球菌との24時間のインキュベーション後に生存可能であった。しかしながら、LGG溶解物の存在下では、単層生存率は約65%に増加した。熱またはプロテアーゼにより処理した溶解物は単層生存能を保護せず(
図1aを参照のこと)、溶解物内のタンパク質が有効な分子であることを示唆した。
【0088】
LGG溶解物を、疎水性相互作用カラムを使用して部分分別に供し、タンパク質を10~70%アセトニトリルの勾配で溶出した。ケラチノサイトの生存能を保護するそれぞれの画分中に溶出するタンパク質の能力を調べた。30~60%アセトニトリルで溶出するタンパク質は、黄色ブドウ球菌の作用からケラチノサイトを保護することができたが、他の画分中に溶出するタンパク質は保護することができなかった(
図1bを参照のこと)。
【0089】
50%アセトニトリル画分はケラチノサイトから黄色ブドウ球菌を排除し、移動させる。
溶解物の30~60%画分がケラチノサイト結合部位から黄色ブドウ球菌を排除または移動させる能力を調べた。
図2のデータは、50%画分が黄色ブドウ球菌の排除および移動の両方において最も有効であることを示す。重要なことに、「芝生上のスポット」アッセイで試験した場合、この画分は、以下の表1に示されるように、ケラチノサイトに保護を与える他の画分と比較して、黄色ブドウ球菌増殖に対して最小の活性を有した。
【0090】
【0091】
50%アセトニトリル画分は線毛タンパク質SpaCを含有する。
付着防止プロセスにおけるSpaCの関与を理解するために、50%画分を、抗SpaC抗体を使用したイムノブロッティングに供した。これはSpaCについての正確な分子量で単一のバンドを生成し、溶解物の50%画分がこのタンパク質を含有することを示唆している(
図3aを参照のこと)。抗黄色ブドウ球菌付着機構としてのSpaCの関与を確認するために、組換えSpaCを産生し、その付着防止活性を粗溶解物のものと比較した。組換えSpaCは、用量依存的に黄色ブドウ球菌のケラチノサイトへの付着を阻害し、50μg/mlが最も有効であった(
図3b)。対照的に、50μg/mlの対照タンパク質、ウシ血清アルブミンは、ケラチノサイトへのブドウ球菌付着を阻害しなかった(
図3cを参照のこと)。しかしながら、SpaCは、病原体の後ではなく、前にケラチノサイトに添加した場合にのみ、ケラチノサイトへの黄色ブドウ球菌の付着を阻害することができた。
【0092】
SpaCは黄色ブドウ球菌の存在下でケラチノサイト単層生存能を部分的に保存する。
組換えSpaCを試験して、黄色ブドウ球菌の毒性作用からケラチノサイト単層を保護できるかどうかを確認した。50μg/mlの組換えSpaCに対する50μg/mlの粗溶解物の効果を比較した。組換えSpaCは実際にケラチノサイトを保護することができたが、粗溶解物よりも有効性が有意に低かった(
図4aを参照のこと)。さらに、SpaC産生を欠損したLGG株は、ケラチノサイト生存能を依然として保護することができ(
図4bを参照のこと)、黄色ブドウ球菌付着を阻害する能力の有意な低下を示さなかった。
【0093】
50%アセトニトリル画分は、さらなる潜在的な付着防止タンパク質を含有する。
LGG突然変異株におけるSpaCの欠失は、黄色ブドウ球菌に応答するケラチノサイト生存能に対する溶解物の効果をなくさなかったので、LGG溶解物中の他のタンパク質がまた、ブドウ球菌のケラチノサイトへの付着に影響を及ぼし得る可能性を評価した。LGG溶解物の50%画分内に含まれるタンパク質のタンデム質量分析(MS/MS)法を行った。データを以下の表2にまとめる。
【0094】
【0095】
表2 LGG溶解物の50%アセトニトリル画分中のタンデム質量分析により同定されたタンパク質。注記:これらのタンパク質は、n=3のカラム分別において一貫して見出された。太字の文字は、SDS-PAGEによって判断される試料中の豊富なタンパク質に対応する分子量を有するタンパク質を強調している。
【0096】
目的のタンパク質をさらに濃縮し、同定するために、逆相HPLCを使用した50%画分のさらなる精製ラウンドを行い、タンパク質を0~100%アセトニトリルの勾配を使用してC18逆相カラムから溶出した。濃縮した画分を215nmでの紫外吸収に基づいて回収し、タンパク質を含有する4つの特定のピークを21~32分の溶出で回収した。F1~4と名付けたこれらのピーク(カラム上でのそれらの保持時間を区別するため)を、ブドウ球菌付着アッセイおよびケラチノサイト生存率アッセイの両方において使用した。F4内に含まれるタンパク質は両方のアッセイにおいて最も有効であった(データは示さず)。したがって、F4をゲル電気泳動およびMS/MS分析の両方による分析に供した。F4内に含まれるタンパク質を以下の表3に示す。
【0097】
【0098】
表3 溶解物のF4画分におけるタンデム質量分析により同定されたタンパク質。注記:太字の文字は、SDS-PAGEによって判断される画分中の豊富なタンパク質に対応する分子量を有するタンパク質を示す。
【0099】
表2に太字で強調したタンパク質、伸長因子Tu、(EF-Tu)グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)、エノラーゼおよびトリオースリン酸イソメラーゼ(TPI)は、50%アセトニトリル画分およびF4画分の両方に共通している。これらのタンパク質は、F4画分中の最も豊富なタンパク質(電気泳動によって判断される)がこれらのタンパク質の既知の分子量に対応するので、F4の主要な構成成分である可能性がある。重要なことに、EF-Tu、GAPDH、エノラーゼおよびTPIは、他の乳酸菌において公知の付着分子である。
【0100】
考察
本発明者らは、黄色ブドウ球菌感染の予防/処置を標的とする局所療法としてのLGG無細胞溶解物の可能性を研究してきた。局所適用に関して、無細胞溶解物は生存細菌の使用よりも多くの利点を有する。重要なことに、皮膚上での生きた細菌の使用に関する安全性は、生きた細菌を処方することに関連する潜在的な問題があるので、否定される。しかしながら、LGGのようなプロバイオティックが局所治療剤としてそれらの可能性を満たす場合、それらの効果を媒介する細菌分子の理解が必須条件である。
【0101】
現在の実験において、本発明者らは、黄色ブドウ球菌に対するLGGの付着防止効果を媒介する分子を調査した。有効な分子は、熱変性またはプロテアーゼ処理が黄色ブドウ球菌に対する溶解物の活性を完全に破壊したので、タンパク質であると思われる。しかしながら、LGG表面の糖などの他の分子もまた、その付着作用にとって重要であり得る可能性を完全に排除することはできない。実際に、エキソポリサッカライドは、腸内の宿主へのLGG結合に重要であることが示されている。エキソポリサッカライドおよび他の分子はLGG溶解物の活性に関与し得るが、LGG溶解物のグリコシダーゼ処理は黄色ブドウ球菌に対する有効性の有意な喪失をもたらさなかったので、主に、黄色ブドウ球菌付着に対する溶解物の阻害作用はタンパク質によって媒介されると結論付けられた。
【0102】
多くのタンパク質付着因子が乳酸菌において以前に同定されている。これらのうち、粘液結合タンパク質としての線毛タンパク質SpaCの関与が多くの研究において示されている。SpaCはまた、LGGが黄色ブドウ球菌付着を阻害する機構に関与し得る。これは多くの観察によって示唆されている:第1に、溶解物の分画および画分の分析は、最も有効な画分がSpaCを含有することを示す。第2に、組換えSpaCは黄色ブドウ球菌の付着を用量依存的に阻害し、最後に、ケラチノサイト生存能に対する黄色ブドウ球菌の毒性作用はSpaCによって打ち消されるが、対照タンパク質BSAによっては打ち消されない。
【0103】
概して、これらのデータは、SpaCが、LGGが黄色ブドウ球菌のケラチノサイトへの付着を阻害する機構に関与しているが、それは単独ではほぼ確実に作用せず、他のタンパク質が関与している可能性が高いという結論と一致している。注目すべきことに、SpaCノックダウンは、黄色ブドウ球菌の存在下でケラチノサイト生存能を保護する能力を依然として保持していた。このことは、付着の阻害が黄色ブドウ球菌の毒性作用からケラチノサイトを保護するためにLGGによって使用される唯一の機構ではないという、本発明者らによる以前の観察によって説明され得る。以前の研究は、LGG溶解物が黄色ブドウ球菌の増殖も阻害することを示した。このことは、なぜSpaCノックアウトLGG株がケラチノサイト生存能を保護する能力を依然として保持しているのか、すなわちノックアウト株がブドウ球菌増殖を阻害する分子を依然として保持しているのかについての説明の一部である可能性が高い。黄色ブドウ球菌の増殖の阻害は、別の実験では50%アセトニトリル画分によって黄色ブドウ球菌の増殖の阻害を示さなかったので、付着因子と完全に異なる分子によってほぼ確実に媒介される。実際に、病原体増殖の阻害は溶解物の他の別の画分に含まれることが見出された。
【0104】
SpaCがLGG溶解物の付着防止効果の全ての説明ではないことを示唆する第2の証拠は、組換えSpaCが黄色ブドウ球菌に対する溶解物および50%画分の置換活性を再現できないという観察に由来する。このことは、他のタンパク質が溶解物の完全な付着防止活性に関与し得ることを示唆している。実際に、いくつかの他のタンパク質が50%画分中に見出され、さらにHPLCによって画分(F4)中に濃縮され、付着および生存率アッセイの両方において最も高い効力を示した。このF4画分における最も豊富なタンパク質は、画分の主要成分(ゲル電気泳動によって判断される)がこれらと同じ分子量のタンパク質であったので、伸長因子Tu(EFTU)、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)、エノラーゼおよびトリオースリン酸イソメラーゼ(TPI)である可能性が高い。興味深いことに、タンパク質のタンデム質量分析同定では検出しなかったので、50%およびF4画分の両方においてSpaCは少量のタンパク質であるはずである。実際に、この技術は、豊富なタンパク質の同定にのみ信頼できることが知られている。しかしながら、SpaCはウェスタンブロッティングによって存在することが示され、それは画分中に存在し、したがって、付着防止機構の一部であり得ることを示唆している。
【0105】
タンパク質EFTU、GAPDH、エノラーゼおよびTPIは、いくつかの種の乳酸菌における付着機能にとって重要であると以前に報告されている。これらのタンパク質は全て、いわゆる「ムーンライティング(moonlighting)タンパク質」、すなわち、タンパク質に起因する標準機能とは無関係な機能を実施する能力を備えたタンパク質として以前に説明されている。例えば、GAPDHは、解糖の中心となる細胞内酵素である。しかしながら、それは、L.プランタルム(L.plantarum)およびL.クリスパタス(L.crispatus)を含むいくつかの原核生物における細胞表面付着タンパク質として見出されている。別の解糖酵素であるTPIは、L.プランタルムによるCaco-2細胞からのクロストリジウム・スポロゲネス(Clostridium sporogenes)およびエンテロコッカス・フェカーリス(Enterococcus faecalis)の競合的排除および移動に関与することが示されている。EF-Tuはタンパク質の翻訳に関与するが、乳酸菌のムチンへの付着を媒介する付着因子として細胞表面において見出される。これらのムーンライティングタンパク質の多くは、フィブロネクチンなどの特異的真核生物タンパク質に結合することによって、真核細胞への細菌の付着を媒介することが示されている。EFTU、GAPDH、エノラーゼおよびTPIは、LGGにおいて特異的な付着因子であることが示されていないが、ごく最近の証拠は、それらのうちの3つ(エノラーゼ、EFTU、GPDH)がLGGの細胞表層タンパク質であり、それらの正常な細胞質位置を有することを実証している。このような二重局在化は、通常、ムーンライティング機能を示唆する。残念なことに、これらのタンパク質は全て、中央細菌代謝にとって重要な標準的機能を有するため、ノックダウンは一般に致死をもたらし、LGGの抗ブドウ球菌付着機能に対するそれらの正確な寄与を実証することを困難にする。
【0106】
まとめると、黄色ブドウ球菌に対するLGGの全体的な付着防止機能は、SpaC、および細胞表面で発現されるいくつかのムーンライティングタンパク質を含む多くのタンパク質によって促進され得ると考えられる。これらは、TPI、エノラーゼ、GAPDHおよびEFTUを含み得るが、他のものも含まれてもよい。観察は、多くの画分が本発明者らのアッセイにおいて有効であることを示し、本発明者らは、最大の効果を示す画分のみを分析した。
【0107】
前述の実施形態は、特許請求の範囲によって提供される保護の範囲を限定することを意図するものではなく、むしろ、どのように本発明が実施され得るかの例を説明することを意図する。