(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/04 20060101AFI20221206BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20221206BHJP
H01M 10/0587 20100101ALI20221206BHJP
【FI】
H01M10/04 W
H01M10/052
H01M10/0587
(21)【出願番号】P 2019000791
(22)【出願日】2019-01-07
【審査請求日】2021-07-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100136423
【氏名又は名称】大井 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【氏名又は名称】山根 広昭
(72)【発明者】
【氏名】上田 賢治
(72)【発明者】
【氏名】神谷 正人
【審査官】松嶋 秀忠
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-192753(JP,A)
【文献】特開2016-152071(JP,A)
【文献】特開2018-206628(JP,A)
【文献】特開平11-204142(JP,A)
【文献】特開2014-002836(JP,A)
【文献】特開2011-134634(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/04-39
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャットダウン機能を有するセパレータを介して正極および負極が重ね合わされ軸芯の周りに捲回された捲回電極体と、電解質と、を備えた二次電池であって、
前記捲回電極体の軸方向の中央部には、前記正極および前記負極の活物質層が巻き重ねられたコア部が形成されており、
前記軸芯は、前記捲回電極体の発熱を吸熱する吸熱材を含み、当該軸芯の他の部分よりも強度が低い第1破断線が前記捲回電極体の捲回軸と交差するように少なくとも1つ形成されており、熱収縮した際に前記第1破断線において破断して側縁吸熱部を含む複数の領域に分割され
ており、
前記側縁吸熱部は、前記第1破断線よりも前記軸芯の軸方向の外側に設けられた領域である、二次電池。
【請求項2】
前記第1破断線と前記捲回軸とがなす鋭角θが45°以上90°以下である、請求項1に記載の二次電池。
【請求項3】
前記第1破断線が前記軸芯の軸方向の両側縁部の各々に形成されており、前記軸方向における前記第1破断線の両外側の各々に前記側縁吸熱部が設けられ、当該側縁吸熱部の間に中央吸熱部が設けられている、請求項1または2に記載の二次電池。
【請求項4】
前記側縁吸熱部に、当該側縁吸熱部の他の部分よりも強度が低い第2破断線が前記第1破断線と交差するように少なくとも1つ形成されており、
前記軸芯が熱収縮した際に前記第2破断線において前記側縁吸熱部が破断することによって、前記側縁吸熱部が複数の領域に分割される、請求項1~3のいずれか一項に記載の二次電池。
【請求項5】
前記側縁吸熱部は、前記軸芯の外側縁から軸方向外側に向かって突出する突出部を備えている、請求項1~4のいずれか一項に記載の二次電池。
【請求項6】
前記突出部は、前記軸芯の外側縁の上端部と下端部の各々に形成されている、請求項5に記載の二次電池。
【請求項7】
前記吸熱材が溶解する温度である吸熱ピークが100℃以上である、請求項1~6のいずれか一項に記載の二次電池。
【請求項8】
前記軸芯の少なくとも表面に、耐電解液性および絶縁性を有する樹脂材料若しくはセラミック材料が含まれている、請求項1~7のいずれか一項に記載の二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、捲回電極体を備えた二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リチウムイオン二次電池、ニッケル水素電池その他の二次電池は、車両搭載用電源、或いはパソコンおよび携帯端末の電源として重要性が高まっている。特に、リチウムイオン二次電池は、軽量で高エネルギー密度が得られるため、車両搭載用の高出力電源として好ましく用いられている。これらの二次電池の電極体の一例として、捲回電極体が挙げられる。かかる捲回電極体は、セパレータを介して正極と負極とを重ねた積層体を軸芯の周りに捲回することによって作製される。
【0003】
ところで、この種の二次電池は、誤操作等によって所定以上の電流が供給されると、通常使用時の電圧を超えて過充電となることがある。この過充電が進行すると、活物質(典型的には正極活物質)の発熱や電解液の分解等が顕著となる。その結果、電池内部の捲回電極体の温度が過度に上昇して、電池性能の劣化等が生じる可能性がある。このような過充電の進行を停止する安全機構の一例として、所謂シャットダウン機能を有するセパレータが知られている。かかるセパレータでは、電池内部の温度がシャットダウン温度まで上昇すると、構成材料が軟化(溶融)あるいは熱収縮(以下、纏めて「収縮」という場合もある)して、微細孔が閉塞する。その結果、正負極間の電荷担体の移動が遮断されて、充放電反応が停止する。
【0004】
また、過充電時の捲回電極体の温度上昇を抑制する従来技術の一例として、特許文献1~3に記載の技術が挙げられる。特許文献1、2には、捲回電極体の中心に配置される軸芯に吸熱材を使用し、捲回電極体で生じた熱を軸芯に吸収させる技術が開示されている。また、特許文献3には、電極活物質層が塗工される集電体の内部に吸熱材を埋設させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-33707号公報
【文献】特開2016-152071号公報
【文献】特開2012-64501号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、本発明者らの検討によれば、上記過充電時の捲回電極体の温度上昇は、電池性能の劣化だけでなく、セパレータの破損による内部短絡の原因にもなり得ることが判明した。そして、この捲回電極体の温度上昇による内部短絡は、上述したシャットダウン機能を有するセパレータや特許文献1~3に記載の技術を使用しても防止することが困難であった。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、過充電時の捲回電極体の温度上昇による内部短絡の発生を好適に防止できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を実現するべく、ここに開示される二次電池は、シャットダウン機能を有するセパレータを介して正極および負極が重ね合わされ軸芯の周りに捲回された捲回電極体と、電解質と、を備えている。この二次電池の捲回電極体の軸方向の中央部には、正極および負極の活物質層が巻き重ねられたコア部が形成されており、軸芯は、捲回電極体の発熱を吸熱する吸熱材を含む。そして、ここに開示される二次電池の軸芯は、当該軸芯の他の部分よりも強度が低い第1破断線が捲回電極体の捲回軸と交差するように少なくとも1つ形成されており、熱収縮した際に第1破断線において破断して側縁吸熱部を含む複数の領域に分割される。
【0009】
上記目的を実現するべく、本発明者らは、捲回電極体の温度上昇による内部短絡が発生する原因について鋭意検討を重ね、次の知見を見出した。過充電が生じた際の捲回電極体の発熱量は、正極および負極の活物質層が巻き重ねられたコア部の中心において特に大きくなる。吸熱材を含む軸芯が捲回電極体の内部に配置されている場合、軸芯は、コア部の中心で生じた熱を吸収し、当該コア部の中心に向かって熱収縮する。この軸芯の熱収縮が進むと、コア部の両側縁部から吸熱材(軸芯)が遠ざかり、当該コア部の両側縁部における吸熱性が低下する。この結果、コア部の両側縁部の温度が大きく上昇し、当該領域においてセパレータの急速な熱収縮が発生する。そして、この急速な熱収縮による引張応力でセパレータの両側縁部が破損すると、当該破損部分において正極と負極が接触して内部短絡が生じる。
ここに開示される二次電池は、上述のように、内部短絡が発生する原因とセパレータが破損する箇所とを明らかにしたことによってなされたものであり、軸芯に、当該軸芯の他の部分よりも強度が低い第1破断線が捲回電極体の捲回軸と交差するように少なくとも1つ形成されている。かかる第1破断線が形成された軸芯は、熱収縮した際の引張応力によって第1破断線において破断し、側縁吸熱部を含む複数の領域に分割される。そして、分割後の軸芯は、分割後の各領域の中心に向かって収縮するため、軸芯の全体がコア部の中心に向かって熱収縮してコア部の両側縁部から遠ざかることを防止できる。このため、軸芯が熱収縮した場合でも、コア部の両側縁部の内部に側縁吸熱部を適切に配置させることができるため、コア部の両側縁部における吸熱性を維持し、急速な熱収縮によるセパレータの破損を防止できる。このため、ここに開示される二次電池によると、過充電時の捲回電極体の温度上昇による内部短絡の発生を好適に防止できる。
【0010】
また、ここに開示される二次電池の好ましい一態様では、第1破断線と捲回軸とがなす鋭角θが45°以上90°以下であることが好ましい。
第1破断線と捲回軸とが交差する角度をこのように設定することによって、軸芯が熱収縮した際に、当該軸芯を第1破断線において容易に破断させることができる。
【0011】
また、ここに開示される二次電池の好ましい一態様では、第1破断線が、軸芯の軸方向の両側縁部の各々に形成されており、軸方向における第1破断線の両外側の各々に側縁吸熱部が設けられ、当該側縁吸熱部の間に中央吸熱部が設けられていることが好ましい。
このように軸芯を3つの領域に分割することによって、コア部の両側縁部の内部に側縁吸熱部をより適切に配置させ、当該領域における吸熱性をより好適に維持することができるため、セパレータの破損による内部短絡をより好適に防止できる。
【0012】
また、ここに開示される二次電池の好ましい一態様では、側縁吸熱部に、当該側縁吸熱部の他の部分よりも強度が低い第2破断線が第1破断線と交差するように少なくとも1つ形成されており、軸芯が熱収縮した際に第2破断線において側縁吸熱部が破断することによって、側縁吸熱部が複数の領域に分割されることが好ましい。
上述したように、捲回電極体の発熱が進行すると、コア部の中心に向かって軸芯が収縮する。このとき、コア部の両側縁部の上端部と下端部は、軸芯との距離が最も長くなり、吸熱性が特に大きく低下する傾向があるため、熱収縮によるセパレータの破損が生じやすい。これに対して、本態様では、第1破断線と交差する第2破断線を形成し、側縁吸熱部を上下に分割するため、コア部の両側縁部の上端部と下端部における吸熱性を好適に維持し、セパレータの破損による内部短絡をより好適に防止できる。
【0013】
また、ここに開示される二次電池の好ましい一態様では、側縁吸熱部が、軸芯の外側縁から軸方向外側に向かって突出する突出部を備えている。
軸芯の外側縁から軸方向外側に向かって突出する突出部を側縁吸熱部に設けることにより、側縁吸熱部が大きく熱収縮した場合でも、突出部をコア部の両側縁部の内部に配置させることができる。これによって、コア部の両側縁部における吸熱性を維持し、セパレータの破損による内部短絡を好適に防止できる。
【0014】
また、上記突出部を設ける態様では、突出部が、軸芯の外側縁の上端部と下端部の各々に形成されていることが好ましい。
これによって、コア部の両側縁部の上端部と下端部の各々の内部に突出部を配置し、当該領域における吸熱性を好適に維持することができる。
【0015】
ここに開示される二次電池の好ましい一態様では、吸熱材が溶解する温度である吸熱ピークが100℃以上である。
上記吸熱材は、セパレータの収縮温度(シャットダウン温度)を考慮し、好適な材料を適宜選択することが好ましい。かかる吸熱材の好適例として、吸熱ピークが100℃以上の吸熱材が挙げられる。
【0016】
ここに開示される二次電池の好ましい一態様では、軸芯の少なくとも表面に、耐電解液性および絶縁性を有する樹脂材料若しくはセラミック材料が含まれている。
これによって、軸芯が充放電反応に影響することを防止することができると共に、所定の耐久力を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態に係る二次電池の内部構成を模式的に示す縦断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態における捲回電極体を模式的に示す斜視図である。
【
図3】
図1におけるIII-III線矢視方向断面図である。
【
図4】本実施形態における軸芯に用いられる吸熱材のDSC測定結果を示すチャートである。
【
図5】本発明の一実施形態における捲回電極体を模式的に示す正面図である。
【
図6】本発明の一実施形態における捲回電極体の作製手順の軸芯の形成を説明する図である。
【
図7】本発明の一実施形態における捲回電極体の作製手順の電極シートの捲回を説明する図である。
【
図8】本発明の他の実施形態における捲回電極体を模式的に示す正面図である。
【
図9】本発明の他の実施形態における捲回電極体を模式的に示す正面図である。
【
図10】本発明の他の実施形態における捲回電極体を模式的に示す正面図である。
【
図11】本発明の他の実施形態における捲回電極体を模式的に示す正面図である。
【
図12】本発明の他の実施形態における捲回電極体を模式的に示す正面図である。
【
図13】サンプル1~4の過充電試験における温度変化の測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本開示における典型的な実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。なお、以下の図面においては、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明している。また、各図における寸法関係(長さ、幅、厚み等)は実際の寸法関係を反映するものではない。
【0019】
1.本実施形態に係る二次電池
図1は本実施形態に係る二次電池の内部構成を模式的に示す縦断面図である。
図2は本実施形態における捲回電極体を模式的に示す斜視図である。また、
図3は
図1におけるIII-III線矢視方向断面図である。なお、本明細書の各図における符号Xは(二次電池の)幅方向であり、符号Yは(二次電池の)厚み方向であり、符号Zは(二次電池の)高さ方向である。
【0020】
(1)全体構成
図1に示すように、本実施形態に係る二次電池1は、捲回電極体20、電解質としての電解液(図示省略)、および電池ケース10を備えた密閉型のリチウムイオン二次電池である。本実施形態に係る二次電池1では、捲回電極体20の捲回軸L(
図2参照)と、二次電池1の幅方向Xとが略同じ方向になるように、捲回電極体20が電池ケース10内に収容されている。このため、以下では、図中の符号Xを「(捲回電極体の)軸方向」とも称する。
【0021】
(2)電池ケース
電池ケース10は、扁平形状の捲回電極体20および電解液を内部に密閉した状態で収容する。本実施形態に係る二次電池1では、電池ケース10として、扁平な箱型、即ち直方体形状(いわゆる角形形状)のケースが用いられている。具体的には、本実施形態に係る電池ケース10は、上面に開口部を有する箱型の本体12と、該本体12の開口部を塞ぐ板状の蓋体14を備える。電池ケース10の材質としては、例えば、アルミニウム等の軽量で熱伝導性の良い金属材料が用いられる。ただし、電池ケースの構成を変更することも可能である。例えば、電池ケースとして、可撓性を有するラミネートが用いられてもよい。
【0022】
電池ケース10(詳細には蓋体14)には、外部接続用の正極端子16および負極端子18が取り付けられている。この正極端子16および負極端子18は、高さ方向Zに延びる長尺な板状部材を備えている。この正極端子16の下端部は、捲回電極体20の軸方向(幅方向)Xの一方の側縁部に形成された正極接続部24に接続されている。負極端子18の下端部は、捲回電極体20の軸方向Xの他方の側縁部に形成された負極接続部26に接続されている。そして、正極端子16および負極端子18の各々の上端部は電池ケース10の外部に露出している。
【0023】
(3)電解液
電解液は、典型的には溶媒と支持塩を含む。溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)等の非水溶媒を用いることができる。支持塩としては、種々のリチウム塩を用いることができ、なかでもLiPF6、LiBF4等のリチウム塩が好適である。なお、ここに開示される二次電池がリチウムイオン二次電池以外の二次電池の場合は、それぞれの電池に適する溶媒と支持塩(例えばナトリウムイオン二次電池の場合はナトリウム塩、マグネシウム二次電池の場合はマグネシウム塩等)が用いられる。なお、電解質としては、上述したような電解液(液体電解質)のほか、所定のポリマーに電解液を含ませてゲル化したポリマー電解質であってもよい。
【0024】
(4)捲回電極体
図2に示すように、捲回電極体20は、正極30および負極40がセパレータ52、54を介して重ね合わされて(積層されて)、軸芯60(
図1および
図3参照)の周りに捲回された構造を有している。この捲回電極体20の軸方向Xの中央部には、後述する正極活物質層34と負極活物質層44とが巻き重ねられたコア部22が形成されている。
また、
図1に示すように、本実施形態では、扁平な板状の軸芯60が用いられている。
図3に示すように、本実施形態では、上記扁平な板状の軸芯60に2枚のセパレータ52、54を2回捲回した後、中心部から外側に向けて順に正極30、セパレータ52、負極40、およびセパレータ54の順で巻き重ねていくことによって捲回電極体20が形成される。
以下、本実施形態における捲回電極体20を構成する各部材について説明する。
【0025】
(a)正極
図2に示すように、正極30は、典型的には、長尺状の正極集電体32と、当該正極集電体32の表面に形成された正極活物質層34を備える。正極集電体32としては、良好な導電性を有する金属材(例えば、アルミニウム、ニッケル、チタン、ステンレス鋼等)を採用できる。正極活物質層34は、典型的には、正極集電体32の表面に長尺方向に沿って所定の幅で(帯状に)形成されている。正極30の幅方向Xの一方の側縁部には、正極活物質層34が形成されておらず、正極集電体32が露出した正極露出部36が形成されている。この正極露出部36が負極40からはみ出して捲回されることによって正極接続部24が形成される。上述したように、この正極接続部24に正極端子16(
図1参照)が電気的に接続される
【0026】
正極活物質層34には、正極活物質が含まれている。この正極活物質としては、例えば層状構造やスピネル構造等のリチウム複合金属酸化物(例えば、LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2、LiNiO2、LiCoO2、LiFeO2、LiMn2O4、LiNi0.5Mn1.5O4,LiCrMnO4、LiFePO4等)が挙げられる。正極活物質層は、正極活物質と必要に応じて用いられる材料(導電材、バインダ等)とを適当な溶媒(例えばN-メチル-2-ピロリドン:NMP)に分散させ、ペースト状(またはスラリー状)の組成物を調製し、該組成物の適当量を正極集電体32の表面に付与し、乾燥することによって形成することができる。
なお、ここに開示される二次電池がリチウムイオン二次電池以外の二次電池の場合は、それぞれの電池に適する正極活物質が用いられる。例えば、ナトリウムイオン二次電池の場合はナトリウム遷移金属複合酸化物、マグネシウム二次電池の場合はマグネシウム遷移金属複合酸化物、硫化物等が用いられる。
【0027】
(b)負極
負極40は、典型的には、長尺状の負極集電体42と、当該負極集電体42の表面に形成された負極活物質層を備える。負極集電体42としては、良好な導電性を有する金属材(例えば、銅、ニッケル等)を採用できる。負極活物質層は、典型的には、負極集電体42の表面に、正極活物質層34よりも広い幅で(帯状に)形成されている。負極集電体42の幅方向Xの側縁部のうち、正極露出部36が位置する側と反対側の側縁部には、負極活物質層44が形成されておらず、負極集電体42が露出した負極露出部46が形成されている。この負極露出部46が正極30からはみ出して捲回されることによって負極接続部26が形成される。上述したように、この負極接続部26に負極端子18(
図1参照)が電気的に接続される
【0028】
負極活物質層44には、負極活物質が含まれている。この負極活物質としては、例えば、少なくとも一部にグラファイト構造(層状構造)を含む粒子状(或いは球状、鱗片状)の炭素材料、リチウム遷移金属複合酸化物、リチウム遷移金属複合窒化物等が挙げられる。負極活物質層は、負極活物質と必要に応じて用いられる材料(バインダ等)とを適当な溶媒(例えばイオン交換水)に分散させ、ペースト状(またはスラリー状)の組成物を調製し、該組成物の適当量を負極集電体42の表面に付与し、乾燥することによって形成することができる。なお、ここに開示される二次電池がリチウムイオン二次電池以外の二次電池の場合は、それぞれの電池に適する負極活物質が用いられる。
【0029】
(c)セパレータ
セパレータ52、54には、シャットダウン温度で軟化(溶融)あるいは熱収縮して微細孔が閉塞するシャットダウン機能を有する材料が用いられる。かかるセパレータ52、54の材料としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエステル、セルロース、ポリアミド、ポリイミド等の樹脂から成る多孔質樹脂シート(フィルム、不織布等)が挙げられる。典型的には、セパレータ52、54のシャットダウン温度(樹脂の融点)は、100℃以上、例えば110℃以上、あるいは120℃以上であり、170℃以下、例えば150℃以下、あるいは140℃以下である。捲回電極体20の内部温度が過度に上昇する前にセパレータ52、54がシャットダウンすることで、正負極間の充放電反応を停止することができる。
【0030】
(d)軸芯
図3に示すように、本実施形態における捲回電極体20では、扁平な板状の軸芯60の周りに、セパレータ52、54、正極30、負極40が捲回されている。この軸芯60には、捲回電極体20(典型的には、正極活物質層34)の発熱を吸熱する吸熱材が含まれている。これによって、捲回電極体20の温度上昇による電池性能の劣化等を抑制できる。なお、ここに開示される二次電池において、吸熱材を軸芯60に含ませる態様は特に限定されない。例えば、吸熱材からなる層(吸熱層)を含む多層構造の板状部材を軸芯60として用いることもできる。
【0031】
軸芯60に含まれる吸熱材には、セパレータの収縮温度(シャットダウン温度)を考慮した上で、この種の電池の軸芯に使用され得る吸熱材を特に制限なく使用することができる。かかる吸熱材には、吸熱ピーク(溶解温度)が100℃以上であり、かつ、セパレータ52、54のシャットダウン温度未満である材料が好ましく用いられる。より具体的には、吸熱材には、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリカーボネート等が用いられる。
【0032】
図4に示すチャートは、吸熱材として用いられ得る樹脂材料のDSC(Differential Scanning Calorimetry:示差走査熱量測定)による測定結果を示す。
図4に示すチャートでは、横軸が温度、縦軸が熱量を示す。また、高密度ポリエチレンおよびポリプロピレンは電解液を含まない状態で測定され、セルロースは電解液を含む状態で測定されている。かかる
図4に示すように、高密度ポリエチレンが吸熱反応を生じる温度域には、セパレータ52、54のシャットダウン温度が含まれている。また、高密度ポリエチレンにおける吸熱のピーク温度は、セパレータのシャットダウン温度未満である。従って、上述の材料のなかでも、高密度ポリエチレンが吸熱材に最も適していることが分かる。
【0033】
なお、軸芯60の少なくとも表面には、耐電解液性および絶縁性を有する樹脂材料若しくはセラミック材料を含む層が形成されていることが好ましい。これによって、軸芯60が充放電反応に影響することを防止すると共に、所定の耐久力を確保することができる。また、軸芯60の強度を考慮すると、軸芯60の厚みは15μm以上が好ましく、50μm以上がより好ましく、100μm以上がさらに好ましく、150μm以上が特に好ましい。一方で、正極30および負極40の捲回数を増やし、十分な電池性能を確保するという観点から、軸芯60の厚みは500μm以下が好ましく、400μm以下がより好ましく、300μm以下がさらに好ましい。かかる軸芯60の厚みの好適な一例として、200μm程度が挙げられる。
【0034】
図5は本実施形態における捲回電極体を模式的に示す正面図である。この
図5に示すように、本実施形態に係る二次電池1では、軸芯60の軸方向Xの両側縁部の各々に側縁吸熱部61が設けられている。この側縁吸熱部61は、軸芯60が熱収縮した際に、コア部22の軸方向Xの両側縁部22aの内部に配置されるように構成されている。これによって、軸芯60がコア部22の中心に向かって熱収縮した場合でも、コア部22の両側縁部22aにおける吸熱性を維持し、急速な熱収縮によるセパレータの破損を防止し、内部短絡の発生を好適に防止することができる。
【0035】
具体的には、本実施形態に係る二次電池1は、軸芯60に第1破断線66を形成することによって、軸芯60の熱収縮時におけるコア部22の両側縁部22aの内部に側縁吸熱部61が配置されるようにしている。以下、本実施形態における軸芯60の構造について具体的に説明する。
本実施形態では、捲回電極体20の捲回軸Lと略垂直(約90°)に交差する第1破断線66が軸芯60の軸方向Xの両側縁部の各々に形成されている。本実施形態における側縁吸熱部61は、この第1破断線66よりも軸方向Xの外側に設けられた領域を指す。また、本実施形態では、この一対の側縁吸熱部61の間に中央吸熱部63が設けられている。そして、上述した第1破断線66は、例えば、切込みやミシン線などによって構成されており、軸芯60の他の部分よりも強度が低くなっている。このため、捲回電極体20が発熱して軸芯60が熱収縮すると、当該熱収縮時の引張応力によって第1破断線66において軸芯60が破断し、一対の側縁吸熱部61と中央吸熱部63の各々が切り離される。換言すると、本実施形態における軸芯60は、熱収縮した際に、側縁吸熱部61を含む3つの領域に分割される。このとき、分割後の側縁吸熱部61と中央吸熱部63は、
図5中の矢印に示すように、各々の中心に向かって収縮するため、軸芯60の全体がコア部22の中心に向かって収縮することがない。このため、捲回電極体20の発熱が進行しても、コア部22の両側縁部22aの内部に側縁吸熱部61を配置させることができるため、当該領域における吸熱性を維持できる。従って、本実施形態によれば、コア部22の両側縁部22aにおけるセパレータの急速な熱収縮による破損を防止し、内部短絡の発生を好適に防止できる。
【0036】
また、上記したように、捲回電極体20の正極接続部24は正極端子16と接続され、負極接続部26は負極端子18と接続される(
図1参照)。これらの電極端子との接続部分は、コア部22の中心の次に発熱量が大きくなる部位であり、ここで生じた熱がコア部22の両側縁部22aに伝達されてセパレータを急速に収縮させるおそれがある。しかし、本実施形態では、コア部22の両側縁部22aの内部に側縁吸熱部61が配置されているため、電極端子との接続部分で生じた熱も適切に吸収することができる。
【0037】
なお、側縁吸熱部61の幅w1(換言すると、第1破断線66の形成位置)は、特に限定されず、軸芯60に含まれる吸熱材の吸熱性や収縮量、コア部22の両側縁部22aの形成位置等を考慮して適宜調節することが好ましい。典型的には、軸芯60の幅w1に対する側縁吸熱部61の幅w2の割合(w2/w1)が1/20~1/3(好ましくは1/10~1/4、より好ましくは1/8~1/5、例えば1/6)を満たすように、第1破断線66の形成位置を定めることが好ましい。
【0038】
また、本実施形態に係る二次電池1は、捲回電極体20の扁平面に拘束荷重が掛かるように電池ケース10を挟み込んで拘束する拘束部材を備えていることが好ましい。このように捲回電極体20を挟み込んで荷重を加えることによって、軸芯60やセパレータ52、54の熱収縮を抑制できる。さらに、拘束荷重を加えた状態で軸芯60が熱収縮すると、第1破断線66において軸芯60が破断されやすいため、本実施形態の効果をより好適に発揮させることができる。なお、本実施形態に係る二次電池1は、複数の二次電池を単電池として配列し、各々の単電池を電気的に接続する組電池の構築に好ましく用いることができる。このような組電池では、複数の単電池が1つの拘束部材によって同時に拘束されるため、各々の単電池(二次電池1)の軸芯60をより適切に分割することができる。
【0039】
(5)捲回電極体の作製
次に、本実施形態に係る二次電池の捲回電極体を作製する手順について説明する。
図6は本実施形態における捲回電極体の作製手順の軸芯の形成を説明する図である。また、
図7は本実施形態における捲回電極体の作製手順の電極シートの捲回を説明する図である。
【0040】
本実施形態における捲回電極体20を作製する際には、まず、
図6に示すように、回転軸200に吸熱シート60Sを巻きつける。この吸熱シート60Sは、捲回電極体20の作製後に軸芯60となるフィルム状の部材であり、上述した吸熱材によって構成されている。なお、多層構造の軸芯を作製する場合には、本工程において、吸熱シートを含む複数のシートを回転軸に巻きつけると好ましい。
【0041】
本実施形態では、次に、
図7に示すように、吸熱シート60Sが巻きつけられた回転軸200に、捲回電極体20を構成するシート状部材(正極30、負極40、セパレータ52、54)を供給し、各々のシート状部材に所定のテンションを掛けながら吸熱シート60Sの上に順次巻き重ねる。そして、所望の回数の捲回を行った後に、各々のシート状部材を裁断し、回転軸200から捲回体を取り外す。そして、得られた捲回体を所定の圧力で押し潰す。これによって、捲回体の中心に位置する吸熱シート60Sが押し潰されて扁平な板状の軸芯60が成形され、当該軸芯60の周りに、正極30、負極40、セパレータ52、54が捲回された捲回電極体20が作製される。
【0042】
そして、
図6に示すように、本実施形態では、吸熱シート60Sを回転軸200に供給する供給ライン上に穿孔装置210が配置されている。この穿孔装置210は、供給される吸熱シート60Sに所定のタイミングで針を突き刺し、当該吸熱シート60Sの長さ方向(捲回方向)に沿って所定の間隔で連続した複数の穴を形成する。このように複数の穴が形成された吸熱シート60Sを捲回した後に押し潰すことによって、ミシン線からなる第1破断線66を有する軸芯60が成形される。
なお、第1破断線66を有する軸芯60を成形する方法は、上記の方法に限定されない。例えば、
図6中の穿孔装置210の位置に罫書き針を配置し、長さ方向(捲回方向)に沿って連続した溝を吸熱シート60Sの表面に形成した場合には、切込みからなる第1破断線66を有する軸芯60が成形される。また、扁平な板状の軸芯60を予め成形し、この板状の軸芯60の周りに正極30、負極40、セパレータ52、54を捲回することによって捲回電極体20を作製することもできる。このような場合には、正極30等のシート状部材を捲回させる前に、軸芯60に第1破断線66を予め形成することが好ましい。
【0043】
2.他の実施形態
以上、本発明の一実施形態に係る二次電池を説明した。なお、上記した実施形態は、本発明を限定することを意図したものではなく、種々の構成を変更することができる。
図8~
図12は、本発明の他の実施形態における捲回電極体を模式的に示す正面図である。
【0044】
(1)第1破断線の角度
図5に示すように、上述した実施形態では、捲回電極体20の捲回軸Lと略垂直(約90°)に交差する第1破断線66が形成されている。しかし、第1破断線66は、捲回軸Lと交差するように形成されていればよく、その交差角度は特に限定されない。例えば、
図8に示すように、捲回電極体20の捲回軸Lに対して第1破断線66が傾斜して交差している場合であっても、軸芯60が熱収縮した際に、第1破断線66において軸芯60を分割させ、側縁吸熱部61をコア部22の両側縁部22aの内部に配置することができる。なお、熱収縮時の引張応力が第1破断線66に適切に加わるようにするという観点から、第1破断線66と捲回電極体20の捲回軸Lとがなす鋭角θは、45°以上90°以下であることが好ましく、60°以上90°以下であることがより好ましく、70°以上90°以下であることがさらに好ましく、80°以上90°以下であることが特に好ましい。
【0045】
(2)第1破断線の形成位置
また、上述した実施形態では、軸芯60の軸方向Xの両側縁部の各々に第1破断線66が形成されている。しかし、第1破断線66は、軸芯60に少なくとも1つ形成されていればよく、また、第1破断線66が形成される位置も特に限定されない。例えば、
図9に示すように、軸芯60の軸方向Xの中央に、第1破断線66が1つ形成されていてもよい。このように第1破断線66を形成した場合、当該第1破断線66を挟んで一対の側縁吸熱部61が設けられる。そして、第1破断線66において軸芯60を破断させることによって、一対の側縁吸熱部61が各々の中心に向かって熱収縮するため、捲回電極体20の発熱が進行しても、コア部22の両側縁部22aの内部に側縁吸熱部61を配置させることができる。なお、上記したように、捲回電極体20と電極端子との接続部分(正極接続部24および負極接続部26)は、発熱量が大きくなる傾向があり、電池の材料や構造によっては、コア部の中心よりも発熱量が大きくなることがあり得る。
図9に示される形態は、このような正極接続部24および負極接続部26(すなわち、捲回電極体20の両側縁部)における発熱量が特に大きくなり得る電池において好適に使用できる。
【0046】
また、
図10に示すように、第1破断線66は、軸芯60に3つ以上形成されていてもよい。このように第1破断線66を形成した場合、軸芯60の軸方向Xの最外側に一対の側縁吸熱部61が設けられ、かかる側縁吸熱部61の間に配置される中央吸熱部63がさらに複数(
図10では5つ)の領域に分割される。このように、3つ以上の第1破断線66を形成した場合でも、上述した実施形態と同様に、コア部22の両側縁部22aの内部に側縁吸熱部61を配置させ、当該コア部22の両側縁部22aにおけるセパレータの急速な熱収縮を抑制できる。しかし、生産効率や軸芯60の強度等を考慮すると、
図5に示される実施形態のように、軸芯60の軸方向Xの両側縁部の各々に第1破断線66を形成し、軸芯60が3つの領域に分割されるようにした方が好ましい。
【0047】
(3)第2破断線
また、本発明の他の実施形態に係る二次電池として、
図11に示される軸芯60を備えた二次電池が挙げられる。この
図11に示される軸芯60には、捲回電極体20の捲回軸Lと交差する第1破断線66の他に、第2破断線68が形成されている。この第2破断線68は、第1破断線66と交差するように側縁吸熱部61に形成されている。また、第2破断線68は、第1破断線66と同様に、切込みやミシン線などによって、側縁吸熱部61の他の部分よりも強度が低くなるように構成されている。このような第2破断線68を形成することによって、軸芯60の熱収縮時に側縁吸熱部61を高さ方向Zにおける上部と下部に分割することができる。コア部22の両側縁部22aの中でも両側縁部22aの上端部22bおよび下端部22cは、軸芯60が熱収縮した際に当該軸芯60からの距離が特に長くなりやすく、セパレータの熱収縮による破損が生じやすい。この実施形態のように、第2破断線68を形成して側縁吸熱部61を上部と下部に分割することによって、上記両側縁部22aの上端部22bと下端部22cの内部に、側縁吸熱部61を適切に配置させることができるため、当該領域におけるセパレータの熱収縮による破損をより好適に防止できる。
なお、側縁吸熱部61を上部と下部に適切に分割するという観点から、第1破断線66と第2破断線68とがなす鋭角は、45°以上90°以下であることが好ましく、60°以上90°以下であることがより好ましく、70°以上90°以下であることがさらに好ましく、80°以上90°以下であることが特に好ましい。
【0048】
(4)突出部
また、
図12に示されるように、側縁吸熱部61に突出部69を形成するという構造を採用することもできる。この突出部69は、軸芯60の外側縁60aから軸方向Xの外側に向かって突出している。かかる突出部69を備えた側縁吸熱部61を設けることによって、分割後の側縁吸熱部61が大きく収縮した場合でも、突出部69をコア部22の両側縁部22aの内部に配置させることができるため、内部短絡の発生を確実に防止できる。
なお、この突出部69は、軸芯60の外側縁60aの上端部と下端部に形成されていることが好ましい。これによって、軸芯60からの距離が長くなりやすい両側縁部22aの上端部22bおよび下端部22cの内部に、突出部69をより適切に配置させることができる。また、
図12に示す形態では、側縁吸熱部61に突出部69を形成した上で、第1破断線66や第2破断線68をさらに形成している。これによって、内部短絡の発生を確実に防止できる。
【0049】
[試験例]
以下、本発明に関係する試験を説明するが、以下の説明は本発明を限定することを意図したものではない。
【0050】
1.サンプルの作製
本試験例では、正極として、正極活物質(LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2)と、導電材(アセチレンブラック)と、バインダ(ポリフッ化ビニリデン)とが、質量比で94:3:3の割合で混合された正極活物質層が、アルミニウム製の正極集電体の両面に形成された電極シートを作製した。一方、負極として、負極活物質(カーボンブラック)と、増粘剤(カルボキシメチルセルロース)と、バインダ(スチレンブタジエンゴム)とが、質量比で98:1:1の割合で混合された負極活物質層が、銅製の負極集電体の両面に形成された電極シートを作製した。また、セパレータとして、厚み0.02mmのポリエチレンシートを準備した。そして、捲回軸に樹脂フィルム(ポリエチレンテレフタレート)を巻き付けた後に、セパレータを介して正極シートと負極シートとを捲回させた後、捲回体を押し潰すことによって、ポリエチレンテレフタレート製の軸芯(厚み:200μm)の周囲に正極と負極とセパレータが捲回された捲回電極体を作製した。
【0051】
そして、捲回電極体の正極接続部に正極端子(アルミニウム製)を接続し、負極接続部に負極端子(銅製)を接続した。そして、捲回電極体をケース内に収容した後に非水電解液を注液した。なお、非水電解液には、メチル2,2,2-トリフルオロエチルカーボネート(MTFEC)とモノフルオロエチレンカーボネート(MFEC)との体積比1:1の混合溶媒に1mol/LのLiPF6を溶解させたものを使用した。そして、電解液注液後に、ケースを密閉することによって試験用のリチウムイオン二次電池(サンプル1)を作製した。
【0052】
(2)サンプル2
軸芯の材料を吸熱材(ポリプロピレン)に変更したことを除いて、サンプル1と同じ手順で試験用のリチウムイオン二次電池(サンプル2)を作製した。
【0053】
(3)サンプル3
図5に示すように軸芯60に第1破断線66を形成したことを除いて、サンプル2と同じ手順で試験用のリチウムイオン二次電池(サンプル3)を作製した。なお、捲回電極体20の捲回軸Lと1破断線66との交差角度は約90°に設定した。
【0054】
(4)サンプル4
図11に示すように、軸芯60に第1破断線66と第2破断線68を形成したことを除いて、サンプル2と同じ手順で試験用のリチウムイオン二次電池(サンプル4)を作製した。
【0055】
2.評価試験
各サンプルの電池に温度センサを取り付け、SOC(State of charge)を100%に調整した後、40Aの充電レートで充電上限電圧30V(即ち過充電状態)まで充電を行い、充電中の各サンプルの電池の温度変化を測定した。測定結果を
図13および表1に示す。
図13中の縦軸は温度であり、横軸は充電時間である。なお、表1中の「吸熱効果」について、「可」はセパレータのシャットダウンがサンプル1と比較して5秒遅延した場合を示し、「良」は10秒遅延した場合を示し、「優」は15秒遅延した場合を示す。また、かかる過充電試験において、各例に係る電池が内部短絡に陥るか否かを確認した。結果を表1に示す。
【0056】
【0057】
図13に示されるように、サンプル2~4では、電池温度がシャットダウン温度に昇温するまでの時間がサンプル1と比較して遅くなっていた。このことから、吸熱材を含む軸芯を使用することによって、セパレータのシャットダウンを遅延させて、充電中止等の対応を取りやすくすることができることが確認された。
【0058】
次に、サンプル2~4を比較すると、サンプル3、4において、セパレータのシャットダウンがさらに遅延されていることが確認された。これは、温度上昇に伴い吸熱材を含む軸芯が複数の領域に分割されることによって、捲回電極体全体における吸熱効率が向上したためと解される。
【0059】
そして、過充電を長期間継続した結果、サンプル1、2では、セパレータのシャットダウン温度を超えた後も、温度が上昇し続けて内部短絡が発生した。これに対して、サンプル3、4では、セパレータのシャットダウン温度を超えた後に充放電が停止し、電池温度が低下し、内部短絡が発生しなかった。サンプル1、2では、コア部の両側縁部においてセパレータが破損し、内部短絡が生じたため、セパレータのシャットダウン後も温度が上昇し続けたと解される。一方、サンプル3、4では、コア部の側縁部の内部におけるセパレータの破損による内部短絡が防止されたため、セパレータのシャットダウンによって充放電反応が適切に停止し、電池温度が低下したと解される。これらの結果から、温度上昇による軸芯の収縮時において、コア部の両側縁部の内部に軸芯の側縁吸熱部が配置されるように、軸芯を構成することによって、内部短絡の発生を好適に防止できることが判明した。
【0060】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【符号の説明】
【0061】
1 二次電池
10 電池ケース
12 本体
14 蓋体
16 正極端子
18 負極端子
20 捲回電極体
22 コア部
22a コア部の両側縁部
22b 上端部
22c 下端部
24 正極接続部
26 負極接続部
30 正極
32 正極集電体
34 負極活物質層
36 正極露出部
40 負極
42 負極集電体
44 負極活物質層
46 負極露出部
52、54 セパレータ
60 軸芯
60a 軸芯の外側縁
60S 吸熱シート
61 側縁吸熱部
63 中央吸熱部
66 第1破断線
68 第2破断線
69 突出部
200 回転軸
210 穿孔装置
L 捲回軸
X 幅方向(軸方向)
Y 厚み方向
Z 高さ方向
w1 軸部の幅
w2 側縁吸熱部の幅
θ 鋭角