(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】車両サービス提供装置および車両サービス提供方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 30/06 20120101AFI20221206BHJP
G06Q 10/08 20120101ALI20221206BHJP
G06Q 30/02 20120101ALI20221206BHJP
【FI】
G06Q30/06 350
G06Q10/08 300
G06Q30/02 320
(21)【出願番号】P 2019001301
(22)【出願日】2019-01-08
【審査請求日】2021-03-29
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154380
【氏名又は名称】西村 隆一
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 滉樹
(72)【発明者】
【氏名】大久保 諭
(72)【発明者】
【氏名】横山 浩紀
(72)【発明者】
【氏名】益田 卓朗
【審査官】久宗 義明
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第108960711(CN,A)
【文献】特開2013-075742(JP,A)
【文献】特開2017-091409(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0189717(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の利用時に荷物を搬送する車両利用者にインセンティブを付与するように構成された車両サービス提供装置であって、
車両利用時の目的地の情報および利用日時の情報を含む車両利用の申込情報を取得する申込情報取得部と、
道路を含む地図情報を記憶する地図情報記憶部と、
前記申込情報取得部により取得された目的地の情報と前記地図情報記憶部に記憶された地図情報とに基づいて、前記目的地に到るまでの前記車両の走行経路を演算する経路演算部と、
前記荷物の配送により得られる料金収入の情報と、前記荷物の配達希望日時の情報とを含む荷物情報を取得する荷物情報取得部と、
前記荷物情報取得部により取得された荷物情報と前記経路演算部により演算された走行経路とに基づいて、車両利用者が前記車両の利用時における前記荷物の搬送要件を満たすか否かを判定する判定部と、
前記判定部により前記搬送要件を満たすと判定されると、前記荷物情報取得部により取得された荷物情報に基づいて、車両利用者に付与するインセンティブを決定するインセンティブ決定部と、
前記インセンティブ決定部により決定された前記インセンティブの情報を車両利用者に対し出力する出力部と、を備え、
前記判定部は、さらに、前記荷物情報により示される前記荷物の配達希望日時が、前記申込情報取得部により取得された申込情報により示される利用日時に含まれるか否かに基づき、車両利用者が前記車両の利用時における前記荷物の搬送要件を満たすか否かを判定
し、
前記経路演算部により演算された走行経路は、第1走行経路であり、
前記荷物情報はさらに、前記荷物の配達地点と集荷地点の情報を含み、
前記出力部は、前記判定部により車両利用者が複数の荷物の前記搬送要件を満たすと判定されると、所定の順序に従い、前記複数の荷物のそれぞれに対応する前記荷物情報と、前記インセンティブ決定部により決定された、前記複数の荷物のそれぞれに対応する前記インセンティブの情報とを出力し、
前記所定の順序は、前記インセンティブの大きい順、前記第1走行経路と、前記配達地点と前記集荷地点とを経由して前記目的地に到るまでの前記車両の走行経路である第2走行経路との距離差が小さい順、および、前記第1走行経路で前記目的地に到るまでに要すると予想される時間と前記第2走行経路で前記目的地に到るまでに要すると予想される時間との差が小さい順のいずれかを含むことを特徴とする車両サービス提供装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両サービス提供装置において、
前記車両の体格の情報を含む車両情報を取得する車両情報取得部をさらに備え、
前記判定部は、さらに前記車両情報取得部により取得された車両情報に基づいて、車両利用者が前記車両の利用時における前記荷物の搬送要件を満たすか否かを判定することを特徴とする車両サービス提供装置。
【請求項3】
請求項1
または2に記載の車両サービス提供装置において、
前記車両は、複数のユーザへ貸出可能な共有車両であり、
前記インセンティブ決定部は、前記共有車両の利用料の割引額を決定することを特徴とする車両サービス提供装置。
【請求項4】
請求項1~
3のいずれか1項に記載の車両サービス提供装置において、
車両利用者の信用情報を含む利用者情報を取得する利用者情報取得部をさらに備え、
前記判定部は、さらに前記利用者情報取得部により取得された利用者情報に基づいて、車両利用者が前記車両の利用時における前記荷物の搬送要件を満たすか否かを判定することを特徴とする車両サービス提供装置。
【請求項5】
請求項
4に記載の車両サービス提供装置において、
前記利用者情報は、車両利用者の居住地、荷物配送履歴、車両事故履歴、および交通違反の履歴のいずれかを含むことを特徴とする車両サービス提供装置。
【請求項6】
請求項
5に記載の車両サービス提供装置において、
前記車両または車両利用者の位置情報を取得する位置情報取得部と、
前記位置情報取得部により取得された位置情報に基づいて、前記利用者情報に含まれる交通違反の発生の有無を推定する違反判定部と、をさらに備えることを特徴とする車両サービス提供装置。
【請求項7】
車両の利用時に荷物を搬送する車両利用者にインセンティブを付与する車両サービス提供方法であって、コンピュータによりそれぞれ実行される、
車両利用者の目的地の情報および利用日時の情報を含む車両利用の申込情報を取得する第1取得ステップと、
取得された目的地の情報と予め記憶された道路を含む地図情報とに基づいて、前記目的地に到るまでの前記車両の走行経路を演算する演算ステップと、
前記荷物の配送により得られる料金収入の情報と、前記荷物の配達希望日時の情報とを含む荷物情報を取得する第2取得ステップと、
取得された荷物情報と演算された走行経路とに基づいて、車両利用者が前記車両の利用時における前記荷物の搬送要件を満たすか否かを判定する判定ステップと、
前記搬送要件を満たすと判定されると、取得された荷物情報に基づいて、車両利用者に付与するインセンティブを決定する決定ステップと、
決定された前記インセンティブの情報を車両利用者に対し出力する出力ステップと、を含み、
前記判定ステップにおいて、さらに、前記荷物情報により示される前記荷物の配達希望日時が、前記取得された申込情報により示される利用日時に含まれるか否かに基づき、車両利用者が前記車両の利用時における前記荷物の搬送要件を満たすか否かを判定
し、
前記演算ステップにおいて演算された走行経路は、第1走行経路であり、
前記荷物情報はさらに、前記荷物の配達地点と集荷地点の情報を含み、
前記出力ステップにおいて、前記判定ステップにおいて車両利用者が複数の荷物の前記搬送要件を満たすと判定されると、所定の順序に従い、前記複数の荷物のそれぞれに対応する前記荷物情報と、前記決定ステップにおいて決定された、前記複数の荷物のそれぞれに対応する前記インセンティブの情報とを出力し、
前記所定の順序は、前記インセンティブの大きい順、前記第1走行経路と、前記配達地点と前記集荷地点とを経由して前記目的地に到るまでの前記車両の走行経路である第2走行経路との距離差が小さい順、および、前記第1走行経路で前記目的地に到るまでに要すると予想される時間と前記第2走行経路で前記目的地に到るまでに要すると予想される時間との差が小さい順のいずれかを含むことを特徴とする車両サービス提供方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の利用者にサービスを提供する車両サービス提供装置および車両サービス提供方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の装置として、従来、カーシェアリングの利用者に対し料金割引のサービスを提供する装置が知られている(例えば特許文献1参照)。この特許文献1記載の装置では、利用者の目的地であるステーションの混雑度が高いとき、代替の目的地のステーションを提示し、提示されたステーションを利用した利用者に、代替の目的地のステーションを利用したことにより増加した所要時間に応じて割引料金を適用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1記載の装置のように、増加した所要時間に応じて割引料金を適用するといったサービスは、車両の利用を促進させるためのサービスとしては不十分である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、車両の利用時に荷物を搬送する車両利用者にインセンティブを付与するように構成された車両サービス提供装置であって、車両利用時の目的地の情報および利用日時の情報を含む車両利用の申込情報を取得する申込情報取得部と、道路を含む地図情報を記憶する地図情報記憶部と、申込情報取得部により取得された目的地の情報と地図情報記憶部に記憶された地図情報とに基づいて、目的地に到るまでの車両の走行経路を演算する経路演算部と、荷物の配送により得られる料金収入の情報と、荷物の配達希望日時の情報とを含む荷物情報を取得する荷物情報取得部と、荷物情報取得部により取得された荷物情報と経路演算部により演算された走行経路とに基づいて、車両利用者が車両の利用時における荷物の搬送要件を満たすか否かを判定する判定部と、判定部により搬送要件を満たすと判定されると、荷物情報取得部により取得された荷物情報に基づいて、車両利用者に付与するインセンティブを決定するインセンティブ決定部と、インセンティブ決定部により決定されたインセンティブの情報を車両利用者に対し出力する出力部と、を備える。判定部は、さらに、荷物情報により示される荷物の配達希望日時が、申込情報取得部により取得された申込情報により示される利用日時に含まれるか否かに基づき、車両利用者が車両の利用時における荷物の搬送要件を満たすか否かを判定する。経路演算部により演算された走行経路は、第1走行経路であり、荷物情報はさらに、荷物の配達地点と集荷地点の情報を含む。出力部は、判定部により車両利用者が複数の荷物の搬送要件を満たすと判定されると、所定の順序に従い、複数の荷物のそれぞれに対応する荷物情報と、インセンティブ決定部により決定された、複数の荷物のそれぞれに対応するインセンティブの情報とを出力する。所定の順序は、インセンティブの大きい順、第1走行経路と、配達地点と集荷地点とを経由して目的地に到るまでの車両の走行経路である第2走行経路との距離差が小さい順、および、第1走行経路で目的地に到るまでに要すると予想される時間と第2走行経路で目的地に到るまでに要すると予想される時間との差が小さい順のいずれかを含む。
【0006】
本発明の他の態様は、車両の利用時に荷物を搬送する車両利用者にインセンティブを付与する車両サービス提供方法であって、コンピュータによりそれぞれ実行される、車両利用者の目的地の情報および利用日時の情報を含む車両利用の申込情報を取得する第1取得ステップと、取得された目的地情報と予め記憶された道路を含む地図情報とに基づいて、目的地に到るまでの車両の走行経路を演算する演算ステップと、荷物の配送により得られる料金収入の情報と、荷物の配達希望日時の情報とを含む荷物情報を取得する第2取得ステップと、取得された荷物情報と演算された走行経路とに基づいて、車両利用者が車両の利用時における荷物の搬送要件を満たすか否かを判定する判定ステップと、搬送要件を満たすと判定されると、取得された荷物情報に基づいて、車両利用者に付与するインセンティブを決定する決定ステップと、決定されたインセンティブの情報を車両利用者に対し出力する出力ステップと、を含む。判定ステップにおいて、さらに、荷物情報により示される荷物の配達希望日時が、取得された申込情報により示される利用日時に含まれるか否かに基づき、車両利用者が車両の利用時における荷物の搬送要件を満たすか否かを判定する。演算ステップにおいて演算された走行経路は、第1走行経路であり、荷物情報はさらに、荷物の配達地点と集荷地点の情報を含む。出力ステップにおいて、判定ステップにおいて車両利用者が複数の荷物の搬送要件を満たすと判定されると、所定の順序に従い、複数の荷物のそれぞれに対応する荷物情報と、決定ステップにおいて決定された、複数の荷物のそれぞれに対応するインセンティブの情報とを出力する。所定の順序は、インセンティブの大きい順、第1走行経路と、配達地点と集荷地点とを経由して目的地に到るまでの車両の走行経路である第2走行経路との距離差が小さい順、および、第1走行経路で目的地に到るまでに要すると予想される時間と第2走行経路で目的地に到るまでに要すると予想される時間との差が小さい順のいずれかを含む。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ユーザに対し車両の利用を十分に促進させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係る車両サービス提供装置による動作の一例を示す図。
【
図2】本発明の実施形態に係る車両サービス提供装置を有する車両サービス提供システムの全体構成を示すブロック図。
【
図3】
図2のサーバ装置の演算部で実行される処理の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、
図1~
図4を参照して本発明の一実施形態について説明する。本発明の実施形態に係る車両サービス提供装置は、例えばカーシェアリング事業やレンタカー事業等を行う事業体が、複数人が利用可能な車両(共有車両)を利用する利用者に対し、所定条件を満たした場合にインセンティブを付与するといったサービスを提供し、これにより共有車両の利用を促進するように構成される。
【0010】
レンタカー事業は、店員と対面して車両の貸出が行われるのに対し、カーシェアリング事業は、予め登録したICカード等を用いて無人での車両の貸出が行われる点でレンタカー事業と異なる。本実施形態に係る車両サービス提供装置は、カーシェアリング事業とレンタカー事業のいずれにも適用可能であるが、以下では、カーシェアリング事業に適用する例を説明する。
【0011】
図1は、本発明の実施形態に係る車両サービス提供装置による動作の一例を示す図である。カーシェアリング事業に供される車両1には、セダン、ミニバン、ワンボックスカー、ワゴン、トラック等の体格(車体の大きさ、荷室容量等)の異なる種々のタイプの四輪車両が含まれる。これらの車両1は、ユーザが利用する前および利用した後に、所定場所の駐車場(ステーションと呼ぶ)2に駐車される。したがって、ユーザは、ステーション2を出発地および返却地として車両1を利用する。
図1には、ユーザが配送業者からの依頼を受けて、ステーション2から目的地3までの往路の途中で、集荷から配達までの荷物4の配送を行う例が示される。なお、目的地3からステーション2までの復路の途中で荷物4の配送を行うこともできる。
【0012】
図1の例では、ユーザは、ステーション2を出発後に、配送業者の配送センター5に立ち寄って荷物4を集荷する(経路R1)。そして、車両1に荷物4を搭載して配達先6(例えば個人宅)まで移動した後、配達先6で荷物4を相手に渡す(経路R2)。その後、目的地3まで車両1を走行させる(経路R3)。これにより、ユーザは配送業者の仕事の一部を請け負うことになるため、配送業者から報酬を受け、報酬の分だけ車両1の利用料が割り引かれる。
【0013】
配送センター5と配達先6とを経由してステーション2から目的地3に向かう経路R1~R3(寄り道経路と呼ぶ)は、ステーション2から目的地3に直接向かう経路R4(直接経路と呼ぶ)に比べて遠回りであり、ステーション2から目的地3に到るまでより多くの時間を要する。したがって、車両1の利用時間が増加し、利用料金が増加するおそれがある。しかしながら、例えば増加した利用料金以上の車両利用料の割引サービスを受けることで、多少の時間がかかっても荷物4を配送しながら目的地3へ向かうことを好むユーザが増加し、これにより車両1の利用頻度が高まる。また、荷物4の搬送を主たる目的として車両1を利用するユーザが増加することも考えられる。さらに、配送業者にとっては、ユーザに配送を請け負わせることで、配送員の人手不足の解消になる。このような動作を良好に実現するため、本実施形態は、以下のように車両サービス提供装置を構成する。
【0014】
図2は、本発明の実施形態に係る車両サービス提供装置101を有する車両サービス提供システム100の全体構成を示すブロック図である。
図2に示すように、車両サービス提供システム100は、荷物の配送業務を行う配送業者が有する配送端末10と、カーシェアリングサービスを行う事業体が保有する車両1に設けられた車載端末20と、車両1を利用するユーザが有するユーザ端末30と、サーバ装置40とを有する。なお、本実施形態に係る車両サービス提供装置101は、主にサーバ装置40により構成される。
【0015】
配送端末10と車載端末20とユーザ端末30とサーバ装置40とは、無線通信網、インターネット網、電話回線網などの通信ネットワーク7に接続される。
図2には、便宜上、配送端末10と車載端末20とユーザ端末30とがそれぞれ1つずつ示されるが、複数の配送業者のそれぞれの配送端末10、複数の車両1のそれぞれの車載端末20、複数のユーザのそれぞれのユーザ端末30を含んで車両サービス提供システム100が構成されてもよい。また、図
2では、単一のサーバ装置40が示されるが、図
2のサーバ装置40に示す機能を、複数のサーバ装置に分散させてもよい。
【0016】
配送端末10は、通信部11と、入出力部12と、演算部13と、記憶部14と、を有する。
【0017】
通信部11は、通信ネットワーク7を介してサーバ装置40と無線通信可能に構成される。通信部11は、顧客から配送を依頼された荷物に関する情報、すなわち荷物情報を、サーバ装置40に送信する。荷物情報には、荷物の配達地点(例えば
図1の配達先6)と集荷地点(例えば
図1の配送センター5)、荷物の大きさ、重量および品名、荷物の配達希望日時、集荷希望日時等の情報が含まれる。
【0018】
入出力部12は、いわゆるヒューマンマシンインターフェース(HMI)であり、配送業者が操作可能なキーボード、マウス、モニタ、タッチパネル、プリンタ等を有する。配送業者は、入出力部12を介し、荷物を識別する荷物IDに対応付けて荷物情報を入力することができる。
【0019】
演算部13はCPU(プロセッサ)を有し、入出力部12を介して入力された信号、通信部11を介して配送端末10の外部から受信した信号、および記憶部14に記憶されたデータ等に基づいて所定の処理を実行し、通信部11と、入出力部12と、記憶部14とにそれぞれ制御信号を出力する。
【0020】
演算部13は、機能的構成として、配送受付部131と、配送管理部132とを有する。配送受付部131は、電話、メール、ファックス等を介して顧客から依頼された荷物の配送を受け付ける。このとき、配送受付部131は、各荷物に対応する荷物情報を同時に取得する。配送管理部132は、取得した荷物情報に基づいて各荷物の配送予定を作成するとともに、配送予定に従い荷物を配送員に割り当て、配送が完了するまで荷物の流れを管理する。配送員には、常時配送業に従事する配送業者の社員の他、カーシェアリングのユーザである臨時の配送員が含まれる。
【0021】
記憶部14は、図示しない揮発性または不揮発性メモリを有する。記憶部14には、荷物IDに対応付けられた荷物情報の他、演算部13が実行する各種のプログラムや、各種のデータが記憶される。
【0022】
車載端末20は、例えば車載ナビゲーション装置を含んで構成される。車載端末20は、通信部21と、入出力部22と、演算部23と、記憶部24とを有する。車載端末20には、センサ群25と、アクチュエータ26とが接続される。
【0023】
センサ群25は、車両状態を検出する各種センサを含む。センサ群25は、一例として、GPS衛星からの信号を受信して車両1の位置を検出するGPSセンサ251と、車速を検出する車速センサ252と、荷室の出入口のドアの開閉を検出するドア開閉センサ253とを有する。なお、図示は省略するが、車両1に作用する加速度を検出する加速度センサ、角速度を検出するジャイロセンサ、走行距離を検出する走行距離センサ、残燃料量を検出する残燃料検出センサ、残バッテリ容量を検出する残バッテリ容量検出センサなどもセンサ群25に含まれる。
【0024】
アクチュエータ26は、車載端末20(演算部23)からの指令により車両1に搭載された各種機器を駆動する。アクチュエータ26は、一例として、ドアロックを解錠または施錠するロックアクチュエータ261を有する。ロックアクチュエータ261は演算部23から解錠信号が出力されるとドアロックを解錠し、施錠信号が出力されるとドアロックを施錠する。なお、エンジン駆動用アクチュエータ、変速機駆動用アクチェータ、制動装置駆動用アクチュエータ、転舵用アクチュエータ等もアクチュエータ26に含まれる。
【0025】
通信部21は、通信ネットワーク7を介してサーバ装置40と無線通信可能に構成される。通信部21は、車両1を識別する車両IDとともに、センサ群25からの信号の一部を、所定時間毎にサーバ装置40に送信する。
【0026】
入出力部22は、ユーザが操作可能な各種スイッチやボタン、マイク、スピーカ、モニタ等を有する。この他、入出力部22は、ユーザが有する認証カードからユーザ情報を読み取るカードリーダ221を有する。認証カードには、例えば集積回路(IC)が組み込まれてユーザの個人情報が格納された運転免許証(ICカード免許証)が用いられる。カードリーダ221は、車両外部から近づけられた認証カードを認識可能なように、車両1の所定部位(例えばリアウインドの下方)に設けられる。
【0027】
演算部23はCPUを有し、入出力部22を介して入力された信号、センサ群25で検出された信号、通信部21を介して車載端末20の外部から受信した信号、および記憶部24に記憶されたデータに基づいて所定の処理を実行し、車両1の各部のアクチュエータ26、入出力部22、および記憶部24に制御信号を出力する。
【0028】
演算部23は、さらに通信部21に制御信号を出力し、車載端末20とサーバ装置40との間の信号の送受信を制御する。例えば、演算部23は、車両利用開始時にユーザがカードリーダ221に認証カードを近づけたとき、カードリーダ221を介して読み取ったユーザ情報を、通信部21を介してサーバ装置40に送信する。サーバ装置40は、受信したユーザ情報に対応する予約情報の有無を判定し、対応する予約情報があれば演算部23に解錠指令を送信し、対応する予約情報がなければ施錠信号を送信する。演算部23は、解錠指令を受信すると解錠信号を、施錠指令を受信すると施錠信号を、それぞれロックアクチュエータ261に出力する。
【0029】
記憶部24は、図示しない揮発性または不揮発性メモリを有する。記憶部24には、演算部23が実行する各種のプログラムや、各種のデータが記憶される。例えばセンサ群25による検出データが一時的に記憶される。記憶された検出データは、演算部23での処理により、通信部21を介して所定時間毎にサーバ装置40に送信される。
【0030】
ユーザ端末30は、ユーザにより操作されるパーソナルコンピュータや、スマートフォンに代表される携帯無線端末等により構成される。ユーザ端末30は、通信部31と、入出力部32と、演算部33と、記憶部34と、を有する。
【0031】
通信部31は、通信ネットワーク7を介してサーバ装置40と無線通信可能に構成される。通信部31は、ユーザを識別するユーザIDとともに、車両1の予約申し込みやキャンセル等を指令する信号をサーバ装置40に送信する。さらに通信部31は、車両利用時の荷物の配送に関する情報、すなわち、荷物の配送の提案、配送により受け取るインセンティブの情報等をサーバ装置40から受信する。
【0032】
入出力部32は、例えばキーボード、マウス、モニタ、タッチパネル等を有する。ユーザは、入出力部32を介してユーザ情報を入力する。ユーザ情報には、ユーザの住所、氏名、連絡先、免許証番号、決済に必要な情報(例えばクレジットカード番号)等が含まれる。ユーザは、ユーザ情報を入力して会員登録した後に、共有車両の利用が可能となる。
【0033】
車両予約の申し込み時には、車種、利用するステーション、および車両1の利用日時(利用開始日時と利用終了日時)がユーザにより指令される。このとき、サーバ装置40は、指令された車種、ステーション、利用日時のいずれかまたは全ての条件を満たす予約可能な車両1を検索するとともに、検索された車両1の情報をユーザ端末30に送信する。この車両情報は入出力部32に表示される。表示された車両1の中から入出力部32を介してユーザが所望の車両1を選択すると、あるいは表示された車両1をユーザが承諾すると、車両予約が確定する。
【0034】
さらに、入出力部32を介してユーザは、車両予約の申し込み、変更、キャンセル等の指令、目的地と目的地の到着希望日時および出発希望日時等の目的地の情報、サーバ装置40から荷物の配達が提案されたときの提案に対する承諾等の指令を入力することができる。
【0035】
演算部33はCPUを有し、入出力部32を介して入力された信号、通信部31を介してユーザ端末30の外部から受信した信号、および記憶部34に記憶されたデータに基づいて所定の処理を実行し、通信部31と入出力部32と記憶部34とにそれぞれ制御信号を出力する。演算部33での処理により、ユーザは入出力部32(モニタなど)を介して予約車両の変更や確認を行うことができる。
【0036】
記憶部34は、図示しない揮発性または不揮発性メモリを有する。記憶部34には、演算部33が実行する各種のプログラムや、各種のデータが記憶される。
【0037】
サーバ装置40は、例えばカーシェアリングサービスを行う事業体に設けられる。クラウド上で仮想サーバ機能を利用して、サーバ装置40を構成することもできる。サーバ装置40は、通信部41と、入出力部42と、演算部43と、記憶部44と、を有する。
【0038】
通信部41は、通信ネットワーク7を介して配送端末10、車載端末20およびユーザ端末30とそれぞれ無線通信可能に構成される。入出力部42は、例えばキーボード、マウス、モニタ、タッチパネル等を有する。演算部43はCPUを有し、入出力部42を介して入力された信号、通信部41を介してサーバ装置40の外部から受信した信号、および記憶部44に記憶されたデータに基づいて所定の処理を実行し、入出力部42や記憶部44に制御信号を出力する。
【0039】
記憶部44は、図示しない揮発性または不揮発性メモリを有する。記憶部44には、演算部43が実行する各種のプログラムや、各種のデータが記憶される。記憶部44は、メモリが担う機能的構成として、地図データベース441と、車両データベース442と、ユーザデータベース443とを有する。
【0040】
地図データベース441は、道路を含む地図情報を記憶する。地図情報には、現時点におけるまたは将来時点に予想される、道路の渋滞情報や道路工事、通行止め等の情報が含まれる他、荷物の配達先における駐車場の情報等も含まれ、これらの情報は、随時更新される。
【0041】
車両データベース442は、カーシェアリングに供される複数の車両1のそれぞれの車両情報、すなわち、車両1の車種、年式、車体番号、車両番号、走行距離、メンテナンス履歴、稼働率等の車両状態や車両特性を表す車両情報と、各車両1の利用計画とを記憶する。利用計画には、各車両1の過去、現在および未来の時系列の予約情報が含まれる。
【0042】
ユーザデータベース443は、ユーザ端末30(入出力部32)を介して入力された各ユーザのユーザID,住所,氏名,連絡先,免許証番号等のユーザ個人の情報、および各ユーザの車両1の利用履歴、事故履歴、交通違反の履歴、さらに荷物の配送履歴などのユーザの信用度を表す情報(信用情報)が記憶される。すなわち、ユーザデータベース443は、ユーザIDに対応付けて各ユーザの利用者情報を記憶する。信用度は、交通違反がある度にダウンし、交通違反の程度が少ないほどアップする。荷物が正常に配送された配送履歴がある場合にも、信用度はアップする。
【0043】
演算部43は、プロセッサが担う機能的構成、特にカーシェアリング利用時の荷物の配送に関する構成として、情報取得部431と、違反判定部432と、経路演算部433と、配送可否判定部434と、インセンティブ決定部435と、出力部436と、配送完了判定部437とを有する。
【0044】
情報取得部431は、通信ネットワーク7を介して各種の情報を取得するように構成され、機能的構成として、申込情報取得部431aと、荷物情報取得部431bと、車両情報取得部431cと、利用者情報取得部431dとを有する。
【0045】
申込情報取得部431aは、ユーザ端末30の入出力部32を介してユーザにより入力された車両利用の申込情報を取得する。この申込情報には、車種、車両1の利用開始予定日時および返却予定日時の他、車両利用時の目的地の情報、すなわち、目的地の住所、目的地の到着予定日時等の情報が含まれる。荷物情報取得部431bは、配送端末10から送信された荷物情報を、対応する荷物IDとともに取得する。車両情報取得部431cは、車両データベース442に記憶された車両情報を取得するとともに、ユーザへの車両貸出の処理が終了した後、車載端末20から送信された車両情報を、対応する車両IDとともに取得する。利用者情報取得部431dは、ユーザ端末30から送信されたユーザIDに対応する利用者情報を、ユーザデータベース443から取得する。
【0046】
違反判定部432は、車載端末20のセンサ群25により取得された信号に基づいて、車両1を利用するユーザによる交通違反の有無を判定する。例えば、GPSセンサ251からの信号に基づいて車両1の現在位置を特定するとともに、その位置における車両1の制限速度と、車速センサ252からの信号により得られる車速との大小を判定することにより、ユーザが速度超過の違反をしているか否かを判定する。GPSセンサ251からの信号により駐車禁止の地点に車両1が駐車されているか否かを判定することで、駐車違反の有無を判定してもよい。速度違反ありと判定されると、ユーザデータベース443に記憶されるユーザの信用度をダウンして信用情報を更新する。
【0047】
経路演算部433は、地図データベース441に記憶された地図情報に基づいて、ユーザが予約した車両1が駐車されているステーション2から、目的地3に到るまでの合理的な目標経路、すなわち直接経路R4(
図1)を演算する。経路演算部433は、距離優先、時間優先、道幅優先等の条件に応じて複数の直接経路R4を演算する場合がある。
【0048】
配送可否判定部434は、申込情報取得部431aにより取得された車両1の申込情報と、荷物情報取得部431bにより取得された荷物情報とに基づいて、予約した車両1を用いてユーザにより配送可能な荷物が存在するか否かを判定する。具体的には、配送可否判定部434は、まず、経路演算部433により演算された直接経路R4と、荷物を搬送するための寄り道経路R1~R3(
図1)との距離の差(距離差)、および直接経路R4を通ってステーション2から目的地3に到るまでに要すると予想される時間と、寄り道経路R1~R3を通ってステーション2から目的地3に到るまでに要すると予想される時間との差(時間差)を、それぞれ算出する。そして、荷物情報に含まれる荷物の配達希望日時が車両1の利用日時に含まれ、かつ、荷物の大きさが車両1の荷室容量以下であり、かつ、距離差が予め定めた閾値(距離閾値)以下、かつ、時間差が予め定めた閾値(時間閾値)以下の条件を満たす荷物がある場合に、配送可能な荷物が存在すると判定する。
【0049】
なお、距離差と時間差の要件が同時に成立することを条件とするのではなく、距離差と時間差のいずれかの要件が成立することを、配送可能な荷物が存在するか否かの条件としてもよい。配送可否判定部434は、配送可能な荷物が存在すると判定すると、さらに利用者情報取得部431dにより取得された利用者情報を考慮して、ユーザが当該荷物を搬送可能であるか否かを判定する。すなわち、信用情報により定義されるユーザの信用度が所定値以上であるか否かを判定する。配送可否判定部434による配送可能な荷物の有無の判定は、ユーザが荷物搬送要件を満たすか否かの判定である。
【0050】
なお、複数のユーザの中には、遠回りをしてでも荷物の配送によりインセンティブを得ることを望むものが存在する。そこで、そのようなユーザの特性を利用者情報に含め、距離閾値と時間閾値とを、各ユーザの特性に応じて設定してもよい。例えば、距離閾値と時間閾値とに1より大きな係数を乗じて重み付けをするようにしてもよい。配送可否判定部434により荷物搬送要件を満たすと判定される荷物の個数は1つに限らず、複数であってもよい。荷物搬送要件を満たす荷物の個数が複数である場合、各荷物に対応する寄り道経路R1~R3と直接経路R4との距離差が短いものほどおよび時間差が短いものほど優先順位を高くしてもよい。
【0051】
インセンティブ決定部435は、配送可否判定部434により配送可能な荷物が存在すると判定されると、ユーザがその荷物の配送を行った場合にユーザに与えるインセンティブを決定する。例えば荷物情報取得部431bにより取得された荷物情報に基づいて荷物の配送により配送業者が得る配送料金を求めるとともに、配送料金に一定割合を乗じた料金を割引料金として算出し、これをユーザに与えるインセンティブとして決定する。なお、配送料金に拘らずに所定の割引料金(固定料金)を、ユーザに与えるインセンティブとして決定してもよい。インセンティブ決定部435が決定した割引料金は、カーシェアリングにおける車両1の利用料から割り引かれ、その分、ユーザの金額的な負担が軽くなる。
【0052】
出力部436は、配送可否判定部434により配送可能な荷物が存在すると判定されると、荷物情報とともに、その荷物の配送を提案するような情報(配達提案情報)をユーザ端末30に出力する。このとき、インセンティブ決定部435が決定したインセンティブ情報を同時に出力する。配送可否判定部434により配送可能な複数の荷物が存在すると判定されると、複数の荷物の荷物情報とそれに対応するインセンティブ情報とを出力する。これらの情報は、例えばユーザ端末30の表示部(入出力部32)に表示され、入出力部32を介してユーザが荷物の配送の承諾指令を入力すると、ユーザが当該荷物に対応する臨時の配送員として割り当てられる。
【0053】
ユーザが配送員に割り当てられると、出力部436は、ユーザデータベース443に記憶されたユーザの情報(利用者情報)を、荷物割り当て情報として配送端末10に出力する。これにより配送業者は、荷物と配送員(ユーザ)とを紐付けて管理することができる。さらに、出力部436は、荷物の配送時の寄り道経路R1~R3を含む地図情報を車載端末20に出力する。これによりナビゲーション装置のモニタに、荷物の集荷地点と配達先とを経由した推奨ルートを表示することができ、ユーザは、容易に荷物の配送を行うことができる。
【0054】
配送完了判定部437は、車両情報取得部431cにより取得されたGPSセンサ251とドア開閉センサ253とからの信号に基づいて、ユーザによる荷物の配送が完了したか否かを判定する。すなわち、GPSセンサ251によりユーザが荷物の配達先6(
図1)にいることが検出され、かつ、ドア開閉センサ253により荷室の出入口のドアが開閉したことが検出されると、ユーザが車両1から荷物を取り出して荷物の配送が完了したと判定する。なお、車載カメラからの信号により、荷室からの荷物の運搬を検出し、これにより荷物の配送完了の有無を判定してもよい。配送完了判定部437により荷物の配送が完了したと判定されると、ユーザへのインセンティブの付与が確定する。
【0055】
図3は、予め記憶されたプログラムに従いサーバ装置40の演算部43で実行される処理の一例、特に車両利用時の荷物の配送に係る処理の一例を示すフローチャートである。このフローチャートに示す処理は、例えばユーザ端末30を介して車両1の利用の予約が申し込まれると開始され、所定周期で繰り返される。
【0056】
まず、ステップS1で、情報取得部431を介して各種情報を読み込む。次いで、ステップS2で、地図データベース441に記憶された地図情報とステップS1で読み込まれた申込情報とに基づいて、ステーション2から目的地3までの直接経路R4を演算する。
【0057】
次いで、ステップS3で、ステップS2で演算された直接経路R4とステップS1で取得された荷物情報および車両情報とに基づいて、車両1を利用するユーザにより配送可能な荷物があるか否かを判定する。すなわち、荷物の配達希望日時がユーザの車両利用日時に含まれ、かつ、荷物の大きさが車両1の荷室容量以下であり、かつ、直接経路R4と寄り道経路R1~R3との距離差が距離閾値以下、かつ、直接経路R4と寄り道経路R1~R3との時間差が時間閾値以下の条件を満たす荷物があるか否かを判定する。ステップS3で肯定されるとステップS4に進み、否定されると処理を終了する。
【0058】
ステップS4では、ステップS1で取得された利用者情報(信用情報)に基づいて、ユーザの信用度が所定値以上か否かを判定する。ステップS4で肯定されるとステップS5に進み、否定されると処理を終了する。すなわち、ステップS3およびステップS4は、ユーザが荷物搬送要件を満たすか否かの判定であり、荷物搬送要件を満たすと判定されると、ステップS5で、荷物情報に基づいて、荷物の搬送を行った場合にユーザに与えるインセンティブを決定する。
【0059】
次いで、ステップS6で、ステップS5で決定されたインセンティブ情報を、荷物情報とともに、対応するユーザ端末30に送信する。次いで、ステップS7で、ステップS6の送信に対応してユーザ端末30から荷物の配送を承諾する指令が送信されたか否かを判定する。ステップS7で肯定されるとステップS8に進み、否定されると処理を終了する。ステップS8では、ユーザを臨時の配送員としてユーザに荷物の配送を割り当て、配送端末10に荷物割り当て情報を出力するとともに、寄り道経路R1~R3を含む地図情報を車載端末20に出力する。
【0060】
本実施形態の動作をまとめると以下のようになる。ユーザが、ユーザ端末30を介してカーシェアリングによる車両1の申込情報を入力すると、申込情報に含まれるステーション2から目的地3までの経路(
図1の直接経路R4)が演算される(ステップS2)。さらに、ユーザにより配送可能な荷物があるか否か、すなわちユーザが荷物搬送要件を満たすか否かが判定される(ステップS3、ステップS4)。例えば荷物の配達希望日時が車両1の利用日時に含まれ、かつ、車両1の荷室容量以下の荷物であり、かつ、配送時の経路(
図1の寄り道経路R1~R3)と直接経路R4との距離および時間の差異が所定値以下であり、かつ、ユーザの信用度が所定値以上であるとき、荷物搬送要件を満たすと判定される。
【0061】
荷物搬送要件を満たすと判定されると、配送によって得られるインセンティブの情報がユーザ端末30に送信される(ステップS6)。ユーザは、インセンティブの内容を見てから荷物の配送を承諾するか否かを判断する。インセンティブを得られることが、ユーザにとっては荷物の配送を行うことの動機付けとなる。ユーザが荷物配送の承諾の指令を入力すると、車載端末20に寄り道経路R1~R3の地図情報が送信される(ステップS8)。これにより車載端末20を介して寄り道経路R1~R3のルート案内を行うことができ、ユーザは荷物の配送を容易に行うことができる。
【0062】
本実施形態によれば以下のような作用効果を奏することができる。
(1)本実施形態に係る車両サービス提供装置101は、カーシェアリングに供される車両1をユーザが利用するとき、荷物を搬送するユーザに対しインセンティブを付与するように構成される。すなわち、車両サービス提供装置101は、車両利用時の目的地の情報を含む車両利用の申込情報を取得する申込情報取得部431aと、道路を含む地図情報を記憶する地図データベース441と、申込情報取得部431aにより取得された目的地の情報と地図データベース441に記憶された地図情報とに基づいて、目的地に到るまでの車両1の走行経路(直接経路R4)を演算する経路演算部433と、荷物の配送により得られる料金収入を含む荷物情報を取得する荷物情報取得部431bと、荷物情報取得部431bにより取得された荷物情報と経路演算部433により演算された直接経路R4とに基づいて、ユーザが車両1の利用時における荷物の搬送要件を満たすか否かを判定する配送可否判定部434と、配送可否判定部434により搬送要件を満たすと判定されると、荷物情報取得部431bにより取得された荷物情報に基づいて、ユーザに付与するインセンティブを決定するインセンティブ決定部435と、インセンティブ決定部435により決定されたインセンティブの情報をユーザに対し出力する出力部436と、を備える(
図2)。
【0063】
この構成により、カーシェアリングを利用するユーザがステーション2と目的地3とを結ぶ経路の途中で荷物の搬送を行うと、利用料金の割引などのインセンティブを受けることが可能となる。このことが、ユーザがカーシェアリングを利用することの動機付けとなり、ユーザのカーシェアリングの利用を促進させることができる。また、配送業者にとっても、配送員の人手不足を解消できるというメリットがある。
【0064】
(2)車両サービス提供装置101は、カーシェアリングに供される車両1の体格の情報を含む車両情報を取得する車両情報取得部431cをさらに備える(
図2)。配送可否判定部434は、さらに車両情報取得部431cにより取得された車両情報に基づいて、ユーザが車両1の利用時における荷物搬送要件を満たすか否かを判定する。これにより、ユーザの利用する車両1の大きさ(荷室容量等)に適した荷物の搬送がユーザに提案されるようになるため、ユーザにとっての負担は少ない。
【0065】
(3)荷物情報は、荷物の配達地点、集荷地点、大きさ、重量、および、配達または集荷の希望時間のいずれかを含むことが好ましい。これにより、ユーザの車両利用に対して最適な荷物の搬送を、ユーザに提案することができる。
【0066】
(4)車両1は、複数のユーザへ貸出可能な共有車両であり、インセンティブ決定部435は、車両1の利用料の割引額を決定するように構成される。すなわち、本実施形態の車両サービス提供装置は、カーシェアリングに適用される。カーシェアリングを利用するユーザのタイプは様々であり、目的地も様々であるため、車両サービス提供装置を広範囲にわたって適用することができる。
【0067】
(5)車両サービス提供装置101は、ユーザの信用情報を含む利用者情報を取得する利用者情報取得部431dをさらに備える(
図2)。配送可否判定部434は、さらに利用者情報取得部431dにより取得された利用者情報に基づいて、ユーザが車両1の利用時における荷物搬送要件を満たすか否かを判定するように構成される。これにより信用度の低いユーザは荷物の配送員とならいため、配送業者は安心してユーザを臨時の配送員として利用することができる。
【0068】
(6)利用者情報は、ユーザの居住地、荷物配送履歴、車両事故履歴、および交通違反の履歴のいずれかを含むことが好ましい。利用者情報が居住地の情報を含むことで、配送業者は、土地勘のある地元のユーザに荷物の搬送を依頼することができる。利用者情報が配送履歴の情報を含むことで、配送業者は、配送履歴のあるユーザに安心して荷物の搬送を依頼することができる。利用者情報が車両事故履歴および交通違反の履歴の情報を含むことで、配送業者は、安全運転をするユーザに安心して荷物の搬送を依頼できる。
【0069】
(7)車両サービス提供装置は、車両の位置情報を取得する車両情報取得部431cと、車両情報取得部431cにより取得された位置情報に基づいて、利用者情報に含まれる交通違反の発生の有無を推定する違反判定部432と、をさらに備える(
図2)。これにより、ユーザの申告によらずに交通違反の有無を判定することができ、ユーザの信用度を精度よく求めることができる。
【0070】
(8)本実施形態による車両の利用時に荷物を搬送する車両利用者にインセンティブを付与する車両サービス提供方法は、コンピュータである演算部43によりそれぞれ実行される、ユーザの目的地に関する目的地情報を取得するステップ(S1)と、取得された目的地情報と予め記憶された道路を含む地図情報とに基づいて、目的地に到るまでの車両1の走行経路(直接経路R4)を演算するステップ(S2)と、荷物の配送により得られる料金収入を含む荷物情報を取得するステップ(S1)と、取得された荷物情報と演算された走行経路とに基づいて、ユーザが車両1の利用時における荷物の搬送要件を満たすか否かを判定するステップ(S3,S4)と、荷物搬送要件を満たすと判定されると、取得された荷物情報に基づいて、車両利用者に付与するインセンティブを決定するステップ(S5)と、決定されたインセンティブの情報をユーザに対し出力するステップ(S6)と、を含む(
図3)。これにより、ユーザのカーシェアリングの利用を効果的に促進させることができる。
【0071】
上記実施形態は、種々の形態に変形することができる。以下、変形例について説明する。上記実施形態では、配送可否判定部434が、集荷と配達とを含む荷物の配送の可否を判定したが、荷物情報と目的地までの直接経路とに基づいて車両利用者が車両利用時における荷物の搬送要件を満たすか否かを判定するのであれば、判定部の構成はいかなるものでもよい。例えば判定部が、荷物の集荷のみ、あるいは配達のみの可否を判定するようにしてもよい。
図4は、その一例を示す図である。
【0072】
図4では、例えばステーション2に駐車中の車両1に予め荷物4が搭載される。ユーザは、この車両1を配達先6まで走行させ(経路R5)、配達先6にて荷物4を相手に渡した後、目的地3まで車両1を走行させる(経路R6)。さらに、車両1を目的地3から配送センター5まで走行させ(経路R7)、配送センター5で荷物4を集荷した後、ステーション2まで車両1を走行させる(経路R8)。これにより、ユーザに提案する配送可能な荷物の範囲が広がる。このような配達のみまたは集荷のみを行う場合でも、ユーザにインセンティブを付与する。これにより、ユーザの車両利用を促進することができる。
【0073】
上記実施形態では、配送可否判定部434により荷物の搬送要件を満たすと判定されると、出力部436が配達提案情報とインセンティブ情報とを出力し、これらの情報がユーザ端末30の入出力部32に表示されるようにしたが、配送可否判定部434により複数の荷物の搬送要件を満たすと判定されると、所定の順序に従い複数の配達提案情報とインセンティブ情報とを表示するようにしてもよい。例えば直接経路R4からの距離差と時間差とが小さい順、すなわちユーザの負担の軽い順、あるいはインセンティブの大きい順に、各情報を表示することができる。
【0074】
配達提案情報に対しユーザが承諾して荷物の配送予定が確定した後、配達先6の相手に対し、ユーザの利用する車両1の情報(車種等)と、ユーザ自身の利用者情報とを送信するようにしてもよい。これにより、配達先6の相手は、安心してユーザから荷物を受け取ることができる。すなわち、ユーザは配送業者の制服を着用していないため、配達先6の相手はユーザを不審者と思うおそれがあるが、車両情報や利用者情報を事前に通知しておくことで、配達先6の相手の安心感が増す。
【0075】
本実施形態の車両サービス提供装置101で扱う荷物は、個人間で売買される荷物、特に市町村単位や隣接する複数の市町村内での個人間で売買される荷物であってもよい。すなわち、近年、インターネット等の普及により個人間売買が流行しており、限定された地域内での取引に特化した個人間売買も流行している。このような地域内での個人間売買では、迅速な配送が求められることは少なく、配送料金が安価であることが好ましい。したがって、本実施形態の車両サービス提供装置101を効果的に適用できる。
【0076】
上記実施形態では、配送料金に一定割合を乗じた割引料金、あるいは固定の割引料金をインセンティブとして決定したが、直接経路R4と寄り道経路R1~R3との距離差および時間差が大きいほど、インセンティブ(割引料金)を大きくしてもよい。この場合、配送可否判定部434が、ユーザの配達履歴から過去にインセンティブが大きい(距離差および時間差が大きい)配送を承諾したユーザであるか否かを判定し、そのようなユーザに対しては、インセンティブが所定値以上となる荷物の配送を、初めから提案するようにしてもよい。
【0077】
配送センター5で複数の荷物を集荷し、複数の配達先に配送してもよい。配送センター5の代わりに例えばスーパーマーケット等の小売店から荷物を集荷して複数の家庭に配送してもよい。これにより、例えば過疎地域の複数の家庭に荷物を配送する、いわゆる移動スーパーとして活用することができる。
【0078】
配送業者が配送を希望する荷物の形態に応じた車両を、ユーザに利用すべき車両1として提案するようにしてもよい。例えば、配送業者が大きな荷物を配送する必要があるとき、荷室容量の大きいミニバンタイプの車両の利用を、配送業者からの求めに応じて、出力部436を介してユーザに提案するようにしてもよい。この場合、ミニバンタイプの車両を利用することで増加した利用料を、インセンティブに含めるようにしてもよい。
【0079】
上記実施形態では、インセンティブ決定部435が、車両利用者に利用料の割引料金のインセンティブを付与するようにしたが、インセンティブ決定部の構成はこれに限らない。例えばクーポンやポイントをインセンティブとして付与するようにしてもよい。上記実施形態では、車両サービス提供装置をカーシェアリング事業に適用したが、本発明の車両サービス提供装置は、カーシェアリング以外にも同様に適用することができる。例えば自己の所有する車両で駐車場から目的地まで走行するときに、寄り道して荷物を搬送させるようにしてもよい。この場合には、ユーザに対しインセンティブとして割引料金以外の報酬を付与すればよい。上記実施形態では、車両情報取得部431cが車両の位置情報を取得するようにしたが、位置情報取得部はこれに限らない。例えば、ユーザ端末に設けられたGPSセンサからの信号に基づいて位置情報を取得するようにしてもよい。
【0080】
以上の説明はあくまで一例であり、本発明の特徴を損なわない限り、上述した実施形態および変形例により本発明が限定されるものではない。上記実施形態と変形例の1つまたは複数を任意に組み合わせることも可能であり、変形例同士を組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0081】
1 車両、3 目的地、4 荷物、101 車両サービス提供装置、431a 申込情報取得部、431b 荷物情報取得部、431c 車両情報取得部、431d 利用者情報取得部、432 違反判定部、433 経路演算部、434 配送可否判定部、435 インセンティブ決定部、436 出力部、441 地図データベース