IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 積水化学工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-放熱シート床下設置方法 図1
  • 特許-放熱シート床下設置方法 図2
  • 特許-放熱シート床下設置方法 図3
  • 特許-放熱シート床下設置方法 図4
  • 特許-放熱シート床下設置方法 図5
  • 特許-放熱シート床下設置方法 図6
  • 特許-放熱シート床下設置方法 図7
  • 特許-放熱シート床下設置方法 図8
  • 特許-放熱シート床下設置方法 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】放熱シート床下設置方法
(51)【国際特許分類】
   F24D 3/16 20060101AFI20221206BHJP
   E04F 15/18 20060101ALI20221206BHJP
   E04B 5/43 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
F24D3/16 E
E04F15/18 Y
E04B5/43 Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019016284
(22)【出願日】2019-01-31
(65)【公開番号】P2020122643
(43)【公開日】2020-08-13
【審査請求日】2021-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊勢嶋 留美
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-281173(JP,A)
【文献】特開2000-035225(JP,A)
【文献】特開2011-149235(JP,A)
【文献】実開平02-120614(JP,U)
【文献】特開2005-282944(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24D 3/16
E04F 15/18
E04B 5/43
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱媒体を通す単一の暖房用配管が互いに掛け渡して設けられた複数の長尺な短冊状部を備え、各前記短冊状部がその長尺方向に直交する幅方向で並列され、各前記短冊状部において前記長尺方向の一端側に前記暖房用配管が折り返される折返箇所が設けられるとともに前記長尺方向の他端側に前記暖房用配管が隣接する前記短冊状部へと伸びる出入箇所が設けられた放熱シートを、床下空間に設置する放熱シート床下設置方法であって、
前記長尺方向で並列する複数の小梁の上方で前記幅方向に並列する複数の根太の間の各根太間空間に、前記折返箇所側から複数の前記短冊状部を挿入する挿入工程を行い、
前記挿入工程の後であって、前記小梁の間の各梁間空間に、断熱材を充填する充填工程を行い、
前記充填工程の後であって、各前記梁間空間の下方において、複数の前記小梁を前記長尺方向に掛け渡しつつ前記幅方向に並列させて複数の木桟を設ける支持工程を行うことを特徴とする放熱シート床下設置方法。
【請求項2】
熱媒体を通す単一の暖房用配管が互いに掛け渡して設けられた複数の長尺な短冊状部を備え、各前記短冊状部がその長尺方向に直交する幅方向で並列され、各前記短冊状部において前記長尺方向の一端側に前記暖房用配管が折り返される折返箇所が設けられるとともに前記長尺方向の他端側に前記暖房用配管が隣接する前記短冊状部へと伸びる出入箇所が設けられた放熱シートを、床下空間に設置する放熱シート床下設置方法であって、
前記長尺方向で並列する複数の小梁の上方で前記幅方向に並列する複数の根太の間の各根太間空間に、前記折返箇所側から複数の前記短冊状部を挿入する挿入工程を行い、
前記放熱シートは、前記幅方向で並列された複数の前記短冊状部が、前記長尺方向で前記出入箇所を向き合わせて前記長尺方向で対を為して設けられ、
前記挿入工程では、前記長尺方向で対を為す前記短冊状部を、前記長尺方向で近接する位置から互いに離間するように前記折返箇所側から各前記根太間空間に挿入することを特徴とする放熱シート床下設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、建物の床下空間に放熱シートを設置する放熱シート床下設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建物において、床下空間に放熱シートを設け、輻射熱や床部を介する伝導熱や暖められた床下空間の空気の熱により、床や室内を暖めるものがある。この放熱シートは、効率良く暖めるために、暖房用配管(温水パイプ)が設けられた短冊状部(放熱マット)を床部における根太の間(根太間空間)のそれぞれに設置することが考えられている(例えば、特許文献1参照)。この放熱シートは、各短冊状部の暖房用配管を連結可能な構成として、各短冊状部の根太間空間への設置の後に暖房用配管を連結することで、各根太間空間に短冊状部を設置しつつそれぞれの暖房用配管を連結した状態として床下空間に設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-35225号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した放熱シートは、床下空間において、各短冊状部を各根太間空間に設置した後に、それぞれの暖房用配管を連結する工程が必要となり、各短冊状部の設置を簡易にする観点から改良の余地がある。
【0005】
本開示は、上記の事情に鑑みて為されたもので、各短冊状部を各根太間空間に設置して放熱シートを設けることを容易にできる放熱シート床下設置方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した目的を達成するために、本開示の放熱シートは、熱媒体を通す単一の暖房用配管が互いに掛け渡して設けられた複数の長尺な短冊状部を備え、各前記短冊状部がその長尺方向に直交する幅方向で並列され、各前記短冊状部において前記長尺方向の一端側に前記暖房用配管が折り返される折返箇所が設けられるとともに前記長尺方向の他端側に前記暖房用配管が隣接する前記短冊状部へと伸びる出入箇所が設けられた放熱シートを、床下空間に設置する放熱シート床下設置方法であって、前記長尺方向で並列する複数の小梁の上方で前記幅方向に並列する複数の根太の間の各根太間空間に、前記折返箇所側から前記小梁の上を滑らせつつ全ての前記短冊状部を挿入する挿入工程を行うことを特徴とする。
【0007】
ここで、前記挿入工程の後であって、前記小梁の間の各梁間空間に、断熱材を充填する充填工程を行う構成とすることができる。また、前記充填工程の後であって、各前記梁間空間の下方において、複数の前記小梁を前記長尺方向に掛け渡しつつ前記幅方向に並列させて複数の木桟を設ける支持工程を行う構成とすることができる。前記放熱シートは、前記幅方向で並列された複数の前記短冊状部が、前記長尺方向で前記出入箇所を向き合わせて前記長尺方向で対を為して設けられ、前記挿入工程では、前記長尺方向で対を為す前記短冊状部を、前記長尺方向で近接する位置から互いに離間するように前記折返箇所側から各前記根太間空間に挿入する構成とすることができる。
【発明の効果】
【0008】
このように構成された本開示の放熱シートは、各短冊状部を各根太間空間に設置して放熱シートを設けることが容易にできる。
【0009】
ここで、前記挿入工程の後であって、前記小梁の間の各梁間空間に、断熱材を充填する充填工程を行う構成であれば、充填工程も、床下空間において各梁間空間に断熱材を充填するだけであるので、各断熱材の設置を簡易としつつ各短冊状部からの熱が床下空間に漏れることを極力防止でき、各放熱シートで放出した熱を効率良く利用させることができる。また、前記充填工程の後であって、各前記梁間空間の下方において、複数の前記小梁を前記長尺方向に掛け渡しつつ前記幅方向に並列させて複数の木桟を設ける支持工程を行う構成であれば、支持工程も、床下空間において各木桟を設けるだけであるので、各断熱材の支持を簡易にかつ確実なものとしつつ各短冊状部からの熱が床下空間に漏れることを極力防止できる。
【0010】
前記放熱シートは、前記幅方向で並列された複数の前記短冊状部が、前記長尺方向で前記出入箇所を向き合わせて前記長尺方向で対を為して設けられ、前記挿入工程では、前記長尺方向で対を為す前記短冊状部を、前記長尺方向で近接する位置から互いに離間するように前記折返箇所側から各前記根太間空間に挿入する構成であれば、両外側へと拡げるように各短冊状部を各根太間空間へと挿入することで、単一の暖房用配管により連結された各短冊状部が長尺方向で対を為す構成の放熱シートを床下空間に設けることができる。これにより、放熱シート床下設置方法は、より広い範囲であっても、効率良く簡易な作業で各根太間空間に各短冊状部を設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示に係る放熱シート床下設置方法の一例としての放熱シート床下設置方法により設置された放熱シートを備える床暖房システムの構成を模式的に示す説明図である。
図2】床部の構成を示す説明図である。
図3】放熱シートを上方から見た様子を示す説明図である。
図4】放熱シートの短冊状部の構成を示す説明図である。
図5】床上空間側から床板の下方を見た各根太間空間に各短冊状部が設置された様子を示す説明図である。
図6】根太間空間に短冊状部を挿入する様子(挿入工程)を上下3つに分けて段階的に示す説明図である。
図7】梁間空間に断熱材を充填する様子(充填工程)を示す説明図である。
図8】各梁間空間の下方において、複数の小梁を長尺方向に掛け渡しつつ幅方向に並列させて複数の木桟を設ける様子(支持工程)を示す説明図である。
図9】床下空間側から見た複数の木桟が設けられた様子を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本開示に係る放熱シート床下設置方法の一例について、図面を参照しつつ説明する。
【実施例1】
【0013】
本開示に係る実施例1の放熱シート床下設置方法により建物1の床下空間8に放熱シート21を設置する様子(放熱シート床下設置構造)を、図1から図9を用いて説明する。放熱シート21は、建物1の床下空間8を利用して室内や床を暖めるものであり、実施例1では、ユニット建物等の建物1に用いる床暖房システム20を構成するものとされている。
【0014】
建物1は、図1に示すように、断熱基礎として構築された基礎底盤コンクリート2と、その側縁から立ち上がる基礎側壁コンクリート3と、その上から立ち上がる外壁部4と、その外壁部4に囲まれた上端を塞ぐ天井部5と、を備える。建物1では、外壁部4と天井部5とに囲まれる空間に床部6が設けられ、上方の床上空間7と下方の床下空間8とに区切られている。床上空間7は、屋内に設けられる空間として機能する箇所で、複数の内壁部により区画されて居室や非居室等が設けられる。床下空間8は、基礎側壁コンクリート3の内側にグラスウール等の断熱材9が取り付けられ、内部の熱が屋外に極力漏れない断熱構造とされている。
【0015】
床暖房システム20は、床下空間8の床部6に設けられた放熱シート21に、熱源としてのヒートポンプ22が接続されて構成される。床暖房システム20は、ヒートポンプ22から伸びる暖房用配管23が放熱シート21の全域(後述する各短冊状部25)を通りヒートポンプ22へと戻る循環路を形成する。床暖房システム20は、ヒートポンプ22が空気中の熱エネルギーを吸収させた温水等の熱媒体を、放熱シート21の全域を通る暖房用配管23の循環路を循環させることで、放熱シート21が設置された箇所の周辺に向けて放熱して床部6等を暖める。床暖房システム20は、温度設定等の所望の運転を設定するためのコントローラ24を有し、放熱シート21が設けられた床下空間8の上の居室空間等の床上空間7にコントローラ24が適宜設けられる。
【0016】
床部6は、図2に示すように、矩形状に設けられた大梁11の内側に複数の小梁12が並列して掛け渡され、その上側に複数の根太13が並列して掛け渡され、その各根太13の上側に床板14が設けられて構成されている。各小梁12は、矩形状の大梁11の内側でその短辺方向に掛け渡して設けられており、各根太13は、各小梁12の上方で矩形状の大梁11の長辺方向に掛け渡して設けられている。実施例1では、各小梁12は、角型鋼管で形成され、各根太13は、木材料で形成されて断面が矩形状の長尺な棒状とされている。
【0017】
床部6では、床板14の下側において、隣接する2つの根太13に挟まれるとともに各根太13が伸びる方向(後述する長尺方向Dl)に長尺な直方体状の根太間空間15が形成される。この根太間空間15は、並列された各小梁12の上方であって、各根太13が並列される方向(後述する幅方向Dw)に並列されて複数形成されている。また、床下空間8では、隣接する2つの小梁12(両端では大梁11)に挟まれるとともに各小梁12が伸びる方向(幅方向Dw)に長尺な直方体状の梁間空間16が形成される。この梁間空間16は、並列された各根太間空間15の下方であって、各根太間空間15が並列される方向と直交する方向(長尺方向Dl)に並列されて複数形成されている。各根太間空間15すなわち各根太13の間を利用して、床下空間8に放熱シート21が設けられる(図1参照)。
【0018】
放熱シート21は、図3に示すように、複数の短冊状部25が並べられて構成されている。短冊状部25は、全体に長尺な正面視長方形状の板状とされ、その短尺方向に複数が並列されて設けられている。以下では、各短冊状部25が伸びる方向を長尺方向Dlとし、そこに直交する短尺方向を幅方向Dwとする。また、床部6(床下空間8)では、後述するように、各根太間空間15が伸びる方向に沿って各短冊状部25が設けられるので、以下では、各根太間空間15(各根太13)が伸びる方向を長尺方向Dlとし、各根太間空間15(各根太13)が並列される方向を幅方向Dwとする。各短冊状部25は、図4に示すように、平板部材26の上に暖房用配管23が設けられ、その上に放熱部材27が設けられて構成される。
【0019】
平板部材26は、暖房用配管23を載せる箇所を構成するとともに、後述するように暖房用配管23の位置関係を変化させることなく各小梁12上を滑らせることを可能とする。平板部材26は、実施例1ではポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリカーボネート(PC)などのプラスチック製のダンボール(通称、「プラダン」)で形成している。
【0020】
暖房用配管23は、ヒートポンプ22から供給される熱媒体を通す配管であり、各平板部材26上を全体に行き渡るように這い回されて設けられる。暖房用配管23は、実施例1では、架橋ポリエチレンで形成され、平板部材26の長尺方向Dlにおける一端側でU字状に折り返された折返箇所23aが形成されて、平板部材26上を1往復するものとされている。暖房用配管23は、平板部材26の長尺方向Dlにおける他端側で、幅方向Dwで隣接する平板部材26(短冊状部25)上に伸びるものとされており(図3参照)、短冊状部25における熱媒体の出入口となる出入箇所23bが形成されている。このため、暖房用配管23は、長尺方向Dlの等しい位置で、各折返箇所23aが幅方向Dwに並んでいるとともに、各出入箇所23bが幅方向Dwに並んでいる(図3参照)。
【0021】
放熱部材27は、熱伝導性の高い熱媒体で形成されており、実施例1ではアルミ材料からなる黒色の薄膜部材(シート)とされている。放熱部材27は、上記した状態で設けられた暖房用配管23を平板部材26との間に挟み込むことで、暖房用配管23と平板部材26との位置関係を固定している。放熱部材27は、暖房用配管23から発せられた熱を伝導させることで、表面全体から放熱させることができる。
【0022】
なお、暖房用配管23は、平板部材26上に載せられていたが、平板部材26に設けた溝に嵌め込んでもよく、テープや止具等で平板部材26に固定したりしてもよく、実施例1の構成に限定されない。また、暖房用配管23は、幅方向Dwに並べられた各平板部材26(短冊状部25)において、各折返箇所23aおよび各出入箇所23bがそれぞれ幅方向Dwに並ぶものとされていれば、平板部材26上での配置は適宜設定すればよく、実施例1の構成に限定されない。
【0023】
各短冊状部25(平板部材26)は、実施例1では、幅方向Dwで根太間空間15と略等しい寸法とするとともに、長尺方向Dlで根太間空間15の半分よりも小さな寸法としている。これにより、放熱シート21は、各根太間空間15において、幅方向Dwを略埋めるとともに、長尺方向Dlに2つの短冊状部25を縦に並べる(直列させる)ことができる(図5参照)。
【0024】
実施例1の放熱シート21は、図2の床部6に合わせた構成とされており、図3に示すように、長尺方向Dlで対を為す短冊状部25が幅方向Dwに7つずつ並列されて構成されている。このとき、各平板部材26は、長尺方向Dlで各出入箇所23bを向き合わせた位置関係とされている。換言すると、放熱シート21は、幅方向Dwに7つの短冊状部25が並列された状態で、各出入箇所23bが長尺方向Dlで向き合うように対を為すものとされている。そして、放熱シート21は、各短冊状部25に対して単一の暖房用配管23を用いるものとし、全ての短冊状部25とヒートポンプ22との間で単一(一筆書き)の熱媒体の経路(循環路)を形成する。
【0025】
詳細には、放熱シート21では、暖房用配管23(その各出入箇所23b)が、図3を正面視して、ヒートポンプ22から右下の短冊状部25上に伸び、そこから上側へと隣接する短冊状部25上に順番に伸びるものとしている。このとき、放熱シート21では、正面視で下側に位置する短冊状部25の下側の暖房用配管23と、正面視で上側に位置する短冊状部25の下側の暖房用配管23と、が連続するものとしており、それらの間隔よりも各出入箇所23bを長い寸法としている。このため、放熱シート21では、正面視で上下方向に並ぶ2つの短冊状部25の間における暖房用配管23(各出入箇所23b)の湾曲度合いを緩やかなものとしている。
【0026】
そして、放熱シート21では、暖房用配管23(各出入箇所23b)が、正面視で右上の短冊状部25上から正面視で左上の短冊状部25上へと伸びた後、そこから正面視で下側へと隣接する短冊状部25上に順番に伸びるものとし、正面視で左下の短冊状部25上からヒートポンプ22に伸びるものとしている。このとき、放熱シート21では、暖房用配管23において正面視で右上の短冊状部25上から正面視で左上の短冊状部25上へと伸びる(両短冊状部25を掛け渡す)掛渡箇所23cを、両短冊状部25の間隔よりも長い寸法としている。これにより、暖房用配管23では、正面視で右上と左上との短冊状部25上を掛け渡す掛渡箇所23cにおいて、後述するように小梁12の下方を通して両短冊状部25を掛け渡すことが可能となる(図6の一番下参照)。暖房用配管23は、実施例1では、各平板部材26に対して、折返箇所23aおよび出入箇所23bが長尺方向Dlの両側に突出されている。
【0027】
次に、放熱シート21を床下空間8に設置する放熱シート床下設置方法について説明する。先ず、各根太間空間15(隣接する根太13間)において、図6の一番上に示すように、真ん中の小梁12の下側から外側に向けて、各短冊状部25の折返箇所23a側を隣接する小梁12の上に載せる。そして、図6の真ん中に示すように、各短冊状部25を小梁12の上で外側へと滑らせていき、図6の一番下に示すように、各短冊状部25が3つの小梁12を掛け渡すように各根太間空間15に配置する。これを全ての短冊状部25に対して行うことが、全ての短冊状部25を各根太間空間15に挿入する挿入工程となる。このとき、各短冊状部25は、折返箇所23a側から各根太間空間15に挿入されて出入箇所23b側が最後まで各根太間空間15に挿入されないので、並列された2つの短冊状部25間を伸びる暖房用配管23の出入箇所23bにより、挿入が阻害されることが防止されている。また、各出入箇所23bは、可撓性の暖房用配管23が幅方向Dwで隣り合う短冊状部25を連続させるものであるので、両短冊状部25に対する位置の変化が容易であり、各短冊状部25の挿入を阻害することが防止されている。
【0028】
この挿入工程により、放熱シート21は、図5に示すように、床下空間8において、各根太間空間15に一対の短冊状部25が直列に設けられる。このとき、隣り合う2つの根太間空間15に配置された両短冊状部25では、各出入箇所23bの湾曲度合いを緩やかなものとしているので、根太13の下方を通して掛け渡すことが可能とされている。また、図5を正面視して右上と左上との根太間空間15に配置された両短冊状部25では、掛渡箇所23cを両短冊状部25の間隔よりも長い寸法としているので、暖房用配管23の掛渡箇所23cが真ん中の小梁12の下方を通して掛け渡すことが可能とされている(図6の一番下参照)。このため、放熱シート21は、挿入工程により各短冊状部25が根太間空間15に配置された状態において、そこに配置される前と同様に暖房用配管23が全ての短冊状部25とヒートポンプ22との間で単一(一筆書き)の熱媒体の経路(循環路)を形成できる。
【0029】
その後、床下空間8において、図7に示すように、各梁間空間16(隣接する小梁12(大梁11)間)に断熱材28が設けられる。断熱材28は、各根太間空間15に設けられた短冊状部25からの熱を遮断するものであり、実施例1ではグラスウールが用いられている。断熱材28は、各梁間空間16を充填するように設けられ、床下空間8側には各短冊状部25が露出しないようにする。このため、各断熱材28は、各梁間空間16に沿って(幅方向Dwに)伸びる長尺な長方形状とされている。これが、各梁間空間16に断熱材28を充填する充填工程となる。
【0030】
その後、床下空間8において、図8および図9に示すように、各断熱材28(各梁間空間16)の下方でそれらを掛け渡すように、複数の木桟29を取り付ける。各木桟29は、細長い木材であり、実施例1では真ん中の小梁12から両外側の大梁11に至る寸法とされている。各木桟29は、床下空間8において、4つの断熱材28(梁間空間16)の下方を掛け渡すように配置され、ビス等を小梁12に打ちつけることで固定される(図8参照)。これにより、各断熱材28は、複数の木桟29により下側から支えられることで、各梁間空間16内に設けられる(図9参照)。これが、各断熱材28を支持させるように、各梁間空間16の下方において、複数の小梁12を長尺方向Dlに掛け渡しつつ幅方向Dwに並列させて複数の木桟29を設ける支持工程となる。
【0031】
この放熱シート床下設置方法により、放熱シート21は、床板14の下方で各根太間空間15に各短冊状部25が配置されて設けられ、その下方が各木桟29により支えられた各断熱材28により覆われた構成(放熱シート床下設置構造)とされて、床下空間8に設けられる。床暖房システム20では、ヒートポンプ22からの熱媒体を、各短冊状部25を通る循環路とされた暖房用配管23に循環させることで、床部6全体をムラなくかつ効率良く暖めることができる。このとき、床暖房システム20では、各短冊状部25の下方が各断熱材28で覆われているので、熱が床下空間8に漏れることを極力防止でき、各放熱シート21で放出した熱を効率良く利用できる。
【0032】
床暖房システム20は、上記した放熱シート床下設置方法により、放熱シート21を床下空間8に設けている。その放熱シート床下設置方法では、挿入工程において、単一の暖房用配管23により各短冊状部25が連結された状態の放熱シート21を床下空間8に設けることから、各短冊状部25の暖房用配管23を互いに繋げる作業を床下空間8で行う必要がないので、各短冊状部25の設置を簡易にすることができる。ここで、放熱シート21は、各短冊状部25において各折返箇所23aで暖房用配管23が折り返されているので、並列された各根太間空間15に各折返箇所23a側から各短冊状部25を挿入することで、並列された2つの短冊状部25間を伸びる暖房用配管23の出入箇所23bによる挿入の阻害を防止できる。
【0033】
また、放熱シート21は、各出入箇所23b側で向き合う位置関係として、並列する複数の短冊状部25を長尺方向Dlで対を為すものとしている。このため、真ん中の根太13の下方から両外側へと拡げるように各短冊状部25を各根太間空間15へと挿入することで、単一の暖房用配管23により連結された各短冊状部25が長尺方向Dlで対を為す構成の放熱シート21を床下空間8に設けることができる。ここで、放熱シート21は、暖房用配管23において長尺方向Dlで対を為す2つの短冊状部25を掛け渡す掛渡箇所23cが、各短冊状部25の間隔よりも長い寸法とされているので、真ん中の根太13の下方を通して両短冊状部25を掛け渡すことができる。このため、放熱シート21は、掛渡箇所23cによる両短冊状部25の挿入の阻害を防止しつつ、真ん中の根太13を挟んだ両側に幅方向Dwに並列する各短冊状部25を各根太間空間15に設けることができる。
【0034】
放熱シート床下設置方法では、挿入工程により床下空間8において各短冊状部25を各根太間空間15に挿入し、充填工程により床下空間8において各梁間空間16に断熱材28を充填し、支持工程により床下空間8において各小梁12を長尺方向Dlに掛け渡して各木桟29を設ける。このため、放熱シート床下設置方法は、上記した構成の床部6に対して、床下空間8での作業で放熱シート21を設ける(放熱シート床下設置構造を構築する)ことができるので、リフォーム等のように既存の床部6(床下空間8)に対しても容易に設けることができる。これにより、放熱シート床下設置方法は、新築物件や改修物件等の様々な建物に対して、簡易な作業で各短冊状部25を各根太間空間15に設けて設置した放熱シート21を用いた床暖房システム20を設けることができる。
【0035】
本開示に係る放熱シート床下設置方法の一実施例の放熱シート床下設置方法は、以下の各作用効果を得ることができる。
【0036】
放熱シート床下設置方法は、熱媒体を通す単一の暖房用配管23が互いに掛け渡して設けられた複数の長尺な短冊状部25が幅方向Dwで並列され、各短冊状部25において長尺方向Dlの一端側に折返箇所23aが設けられるとともに他端側に出入箇所23bが設けられた放熱シート21を床下空間8に設置する。放熱シート床下設置方法は、長尺方向Dlで並列する複数の小梁12の上方で、幅方向Dwに並列する複数の根太13の間の各根太間空間15に、折返箇所23a側から小梁12の上を滑らせつつ全ての短冊状部25を挿入する挿入工程を行う。このため、放熱シート床下設置方法は、挿入工程が、床下空間8において各短冊状部25を各根太間空間15に挿入するだけで、各根太間空間15に各短冊状部25を設置することができ、その設置を簡易なものにできる。
【0037】
放熱シート床下設置方法は、挿入工程の後に、小梁12の間の各梁間空間16に断熱材28を充填する充填工程を行う。このため、放熱シート床下設置方法は、充填工程も、床下空間8において各梁間空間16に断熱材28を充填するだけであるので、各断熱材28の設置を簡易としつつ各短冊状部25からの熱が床下空間8に漏れることを極力防止でき、各放熱シート21で放出した熱を効率良く利用させることができる。
【0038】
放熱シート床下設置方法は、充填工程の後に、各梁間空間16の下方において、複数の小梁12を長尺方向Dlに掛け渡しつつ幅方向Dwに並列させて複数の木桟29を設ける支持工程を行う。このため、放熱シート床下設置方法は、支持工程も、床下空間8において各木桟29を設けるだけであるので、各断熱材28の支持を簡易にかつ確実なものとしつつ各短冊状部25からの熱が床下空間8に漏れることを極力防止できる。特に、放熱シート床下設置方法は、各木桟29を複数の小梁12を長尺方向Dlに掛け渡して設けているので、幅方向Dwに並列する各木桟29で複数の断熱材28を同時に支持させることができ、支持工程をより簡易なものにできる。
【0039】
放熱シート床下設置方法は、放熱シート21が、幅方向Dwで並列された複数の短冊状部25が、長尺方向Dlで出入箇所23bを向き合わせて長尺方向Dlで対を為して設けられているものとする。そして、放熱シート床下設置方法は、挿入工程において、長尺方向Dlで対を為す短冊状部25を、長尺方向Dlで近接する位置(実施例1では真ん中の小梁12の下側)から互いに離間するように折返箇所23a側から各根太間空間15に挿入する。このため、放熱シート床下設置方法は、両外側へと拡げるように各短冊状部25を各根太間空間15へと挿入することで、単一の暖房用配管23により連結された各短冊状部25が長尺方向Dlで対を為す構成の放熱シート21を床下空間8に設けることができる。これにより、放熱シート床下設置方法は、より広い範囲であっても、効率良く簡易な作業で各根太間空間15に各短冊状部25を設置することができる。
【0040】
放熱シート床下設置構造は、熱媒体を通す単一の暖房用配管23が互いに掛け渡して設けられた複数の長尺な短冊状部25が幅方向Dwで並列され、各短冊状部25において長尺方向Dlの一端に折返箇所23aが設けられるとともに他端に出入箇所23bが設けられた放熱シート21を用いる。放熱シート床下設置構造は、長尺方向Dlで並列する複数の小梁12の上方で、幅方向Dwに並列する複数の根太13の間の各根太間空間15に、折返箇所23aを幅方向Dwに並列させて各短冊状部25が設置され、小梁12の間の各梁間空間16に断熱材28が充填されている。このため、放熱シート床下設置構造は、簡易な作業での各根太間空間15への各短冊状部25の設置が可能であるとともに、各短冊状部25からの熱が床下空間8に漏れることを極力防止でき、各放熱シート21で放出した熱を効率良く利用できる。
【0041】
放熱シート床下設置構造は、各梁間空間16の下方において、複数の小梁12を長尺方向Dlに掛け渡しつつ幅方向Dwに並列されて複数の木桟29が設けられている。このため、放熱シート床下設置構造は、床下空間8において設けた各木桟29により各梁間空間16の断熱材28を支持しているので、各断熱材28の支持を簡易にかつ確実なものとしつつ各短冊状部25からの熱が床下空間8に漏れることを極力防止できる。
【0042】
したがって、本開示の放熱シート床下設置方法では、各短冊状部25を各根太間空間15に設置して放熱シート21を設けることを容易にできる。
【0043】
以上、本開示の放熱シート床下設置方法を実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については実施例1に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0044】
例えば、実施例1では、長尺方向Dlで対を為しつつ幅方向Dwに7枚の短冊状部25が並列された計14枚の短冊状部25に対して単一の暖房用配管23が這い回されて、放熱シート21が構成されている。しかしながら、放熱シート21は、少なくとも幅方向Dwに複数の短冊状部25が並列されるとともに単一の暖房用配管23が這い回されて構成されていれば、短冊状部25の数や長尺方向Dlで対を為すか否かは適宜設定すればよく、実施例1の構成に限定されない。
【0045】
また、実施例1では、14枚の短冊状部25に対して単一の暖房用配管23が這い回されて放熱シート21が構成されている。しかしながら、放熱シート21は、複数の短冊状部25に対して単一の暖房用配管23を用いるものであれば、例えば、実施例1の14枚の短冊状部25に対して複数の熱媒体の経路(循環路(一筆書きが複数))を形成するものでもよく、実施例1の構成に限定されない。
【0046】
さらに、実施例1では、7つの根太間空間15が幅方向Dwに並列され、かつそれらの下方で8つの梁間空間16が長尺方向Dlに並列されて、床部6が構成されている。しかしながら、床部6は、複数の根太間空間15が幅方向Dwに並列され、かつそれらの下方で複数の梁間空間16が長尺方向Dlに並列されて構成されていれば、根太間空間15および梁間空間16の数や位置関係は適宜設定すればよく、実施例1の構成に限定されない。
【符号の説明】
【0047】
8 床下空間 12 小梁 13 根太 15 根太間空間 16 梁間空間 21 放熱シート 23 暖房用配管 23a 折返箇所 23b 出入箇所 25 短冊状部 28 断熱材 29 木桟 Dl 長尺方向 Dw 幅方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9